以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
[実施形態1]
[情報処理装置]
実施形態1に係る情報処理装置は、印刷装置が行う出力に関わる属性を示す属性情報に基づいて、前記印刷装置による出力から欠陥を検出するためのパラメータを、インターネットを介して取得する。次いで、取得したパラメータに基づいて出力である印刷画像から欠陥を検出する。特に、実施形態1に係る情報処理装置は、印刷装置の製造業者によってインターネット上で提供されている印刷装置の機種に基づく検査パラメータを取得して欠陥の検出を行う。
図1は、本実施形態に係る情報処理装置100を含む印刷物の出力と検査とを行う印刷システムの構成の一例を示す図である。本実施形態に係る印刷システムは、情報処理装置100、印刷用サーバ180、及び印刷装置190を有する。印刷用サーバ180は、印刷する原稿の印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを印刷装置190へと投入する。印刷装置190は、投入された印刷ジョブに基づいて、給紙部191上にセットされた記憶媒体の表面または両面に画像を形成しながら、搬送路192に沿って記録媒体を情報処理装置100へと搬送する。印刷装置190が行う印刷の方式は特に限定されない。例えば、印刷装置190は、オフセット印刷方式、電子写真方式、又はインクジェット方式で印刷を行ってもよいが、以下においては電子写真方式で印刷を行うものとする。また、ここで用いられる記憶媒体の種類は特に限定されないが、以下においては説明のため、紙(印刷用紙)が用いられるものとして説明を行う。
情報処理装置100は、印刷装置190が搬送路192を通じて送ってきた紙、すなわち印刷物に対して、搬送路192から接続される搬送路110で搬送しながら参照データに対する欠陥を検知するための検査処理を行い、検査結果に応じたトレーへと送る。情報処理装置100は、内部にCPU101、RAM102、ROM103、主記憶装置104、読取装置105、印刷インターフェース(I/F)106、汎用I/F107、ユーザインターフェース(UI)パネル108、及びメインバス109を有する。また、情報処理装置100は、搬送路192と接続された印刷物の搬送路110、検査処理で合格した印刷成果物の出力トレー111、及び欠陥が検出され検査不合格となった印刷物の出力トレー112を有する。以下、情報処理装置100が行う検査によって欠陥が検出されず合格とされた印刷物を印刷成果物と呼ぶものとする。
CPU101は、情報処理装置100が有する各部を統括的に制御するプロセッサである。RAM102は、CPU101の主メモリ、及びワークエリアとして機能する。ROM103は、CPU101によって実行されるプログラム群を格納している。主記憶装置104は、CPU101によって実行されるアプリケーションや、画像処理に用いられるデータなどを記憶する。読取装置105は、例えばスキャナであり、印刷装置から送られてきた印刷物の片面又は両面を、搬送路110上で読み取り、画像データとして取得することができる。なお、読取装置105は特にスキャナに限定されるわけではなく、例えば撮像装置によって画像データを取得してもよい。印刷I/F106は、印刷装置190と接続されており、印刷装置190と印刷物の処理タイミングの同期を取り、互いの稼働状況を連絡しあうことができる。汎用I/F107は、USB又はIEEE1394などのシリアルバスインターフェースであり、例えばユーザがログなどのデータを取得し持ちだすため、又は何らかのデータを情報処理装置100に取り込むために用いられる。UIパネル108は、例えば液晶ディスプレイであり、情報処理装置100のUIとして機能し、現在の状況や設定を表示してユーザに伝える。また、UIパネル108は、ユーザからの指示を受け付けるために、タッチパネル方式であってもよく、入力用のボタンを備えていてもよい。メインバス109は、情報処理装置100の各部分を接続している。また、CPU101は、情報処理装置100又は印刷システムの内部各所を動作させることができる。例えば、CPU101は、各搬送路を同期して動かし、検査結果に応じて印刷物を合格の出力トレー111と不合格の出力トレー112とのどちらかに送るかを切り替えることができる。また、情報処理装置100は、CPU101に加えてGPUを有していてもよい。
情報処理装置100は、印刷装置190から搬送される印刷物を搬送路110で搬送しつつ、読取装置105で読み取った印刷物の画像データに基づいて、欠陥に対する検査処理を行う(処理の詳細は後述する)。情報処理装置100は、検査処理の結果、検査対象の印刷物が合格であれば合格の出力トレー111へと搬送し、不合格であれば不合格のトレー112へと搬送する。そのために、情報処理装置100は、入力端子201、読取部202、参照データ保持部203、印刷データ保持部204、差分生成部205、検査部206、取得部207、パラメータ生成部208、設定部209、管理部210、及び出力端子211を備える。
図2は、図1に示される情報処理装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。入力端子201は、印刷装置190からの印刷物の出力と同期して又は必要に応じて送信される、情報処理装置100への入力である制御信号を受信する。出力端子211は、検査部206によって行われた検査結果に基づく印刷システムの内部動作のための制御信号を出力する。入力端子201に制御信号が入力された場合、読取部202は、搬送路110上の印刷物の画像データを取得する。読取部202に取得される画像データは、読取装置105が読み取った画像に応じて参照データ又は印刷データに区別される。参照データは参照データ保持部203に格納され、印刷データは印刷データ保持部204に格納される。差分生成部205は、参照データと印刷データとを比較し、比較結果となる差分データを生成する。検査部206は、差分生成部205が生成した差分データに基づいて、印刷物に欠陥があるか否かを判定する。ここで、検査部206は、後述する設定部209が設定した検査パラメータを用いて検査を行う。
取得部207は、検査用のパラメータ(検査パラメータ)が格納されているサーバへとアクセスし、印刷の出力に関わる属性を示す情報(属性情報)に対応する検査パラメータを取得する。以下においては説明のため、取得部207は、属性情報として、印刷装置190を特定する情報(機種情報)を取得し、取得した機種情報に基づいて検査パラメータを取得するものとする。パラメータ生成部208は、ユーザの指示に応じて、検査パラメータを生成する。以下、パラメータ生成部208が生成する検査パラメータを生成パラメータと呼ぶ。設定部209は、取得部207が取得した検査パラメータと、パラメータ生成部308が生成したパラメータ(生成パラメータ)と、を組み合わせて情報処理装置100に設定する。検査パラメータ及び検査パラメータに関連する処理についての詳細な説明は図3〜図6を参照して後述する。
また、検査部206は、判定結果に基づいて、印刷システムの内部駆動部に対する制御信号を、出力端子211を介して出力する。管理部210は、各機能部と情報をやり取りし、例えば現在の処理画像数又はエラーの有無などの稼働情報を収集管理し、必要に応じてログとして出力、又は印刷システム全体への制御信号を発信する。
以下、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る情報処理装置100が行う処理についての説明を行う。図4は、本実施形態に係るインターネットを介したパラメータ取得を行う環境を示す模式図である。楕円(ユーザ環境)401は、情報処理装置100を含むユーザ環境を示す。楕円(サイト)402は、印刷装置の製造業者がインターネット上に公開している検査パラメータを表す図である。情報処理装置100は、ユーザ環境401からインターネットを介してサイト402へとアクセスすることができる。サイト402においては、パラメータ403〜405が保持されている。
パラメータ403〜405は、印刷装置の製造業者が保有する、ユーザ環境の印刷装置190と同じ機種かつ異なる機体の印刷装置を用いて、印刷装置の製造業者が作成した検査パラメータである。以下、簡単のため、印刷装置の製造業者を指して、単に「製造業者」と呼ぶものとする。製造業者は、印刷装置の開発製造を行う過程で見出した検査パラメータを、サイト402を介してユーザに公開する。製造業者は、サイト402上のパラメータを更新または追加することにより、例えば新たに発売された紙種に対応する検査パラメータ、更新用パラメータ、新規に見出したパラメータなど、新たなパラメータをユーザに提供することができる。
本実施形態においては、検査パラメータとは、印刷画像から所定の欠陥を検出するために用いられるパラメータであるが、検査パラメータとして用いられるパラメータの形式は特に限定はされない。以下においては、検査パラメータは畳み込み演算を行うためのフィルタの係数と閾値との情報(図5で後述)であるものとするが、例えば、ある画像欠陥を分類及び検出するために機械学習などによって構築及び調整された識別モデルなどの係数であってもよい。また、検査パラメータは、予め情報処理装置が備える、検査用画像処理の実行/非実行を制御するフラグ情報、又は実行される処理のモジュール自体を含むものであってもよい。本実施形態では、参照データと印刷データとの差分に検査パラメータを適用することにより欠陥の検知処理が行われるが、詳細な説明は図7を参照して後述する。また、各機能部が取得又は生成する検査用の各種パラメータも検査パラメータと同様の形式であるものとする。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。CPU101は、図3に示すフローチャートに沿ったプログラムを読み出し実行する。ステップS301で取得部207は、使用される印刷装置190の機種情報を取得する、機種情報は、印刷装置I/F106を介して印刷装置にアクセスすることによって取得される。また、機種情報は、内部的に機種やそのバージョンを特定できるのであれば必ずしもユーザにわかりやすい形式の情報である必要はなく、例えば機種ID記号列であってもよい。
ステップS302で取得部207は、検査に用いるパラメータが格納されているサーバへとアクセスする。次いで取得部207は、ステップS301で取得した機種情報をキーとして、対応するパラメータを検索して特定し、特定できた場合はそのパラメータをダウンロードして取得する。この例では、取得部207が上述のサイト402へとアクセスするものとして説明を行う。サイト402のアドレスは予め情報処理装置100に設定されていてもよい。サイト402には、ステップS301で取得される属性情報に対応する(すなわち、この例では様々な印刷装置の機種に対応する)パラメータが保持されている。図4においては、保持されたパラメータのうちの403(グレーで表示)が印刷装置190に対応するパラメータであり、他のパラメータ404及び405は異なる機種の印刷装置用のパラメータである。
ステップS303で設定部209は、ステップS302で取得した検査パラメータを、情報処理装置100に適用する。すなわち、検査に用いるパラメータとして設定する。検査パラメータには、所定の画像欠陥を検出するためのフィルタ係数と閾値との組が1つ以上含まれている。
ステップS304で設定部209は、パラメータ生成部208が生成した生成パラメータが存在するか否かを確認する。存在する場合は、ステップS305で設定部209は、ステップS303で取得したパラメータとパラメータ生成部208が生成したパラメータを組み合わせて、後続する処理で用いる検査パラメータとして設定する。生成パラメータが存在しない場合は、ステップS305で設定部209は、検査パラメータの追加は行わない。複数のパラメータを組み合わせる処理については、図5を参照して後述する。
ここまでの処理によって、検査パラメータの設定が完了する。図5は、ステップS301〜ステップS305の処理によって設定される検査パラメータの一例を説明するための模式図である。検査パラメータのセット500は、ステップS303で情報処理装置100に適用された検査パラメータ501と、ステップS305で設定された生成パラメータ502と、を含んでいる。検査パラメータ501はさらに2つの検査パラメータ(フィルタ、閾値)511及び512を有しており、生成パラメータ502はフィルタ521を有している。検査パラメータはそれぞれフィルタの係数と閾値との情報(以下、これらをまとめて単にフィルタと呼ぶ)を含んでいる。
フィルタ511、512、及び521は、それぞれ画像欠陥A1、A2、及びB1を検出するのに適したフィルタ情報である。ここでは、画像欠陥A1は斑点状に生じる印刷のヌケであり、画像欠陥A2はスジ状に生じる印刷の掠れであり、画像欠陥B1は斑点状に生じる濃い点であるものとする。本実施形態においては、このように複数のフィルタ(検査用のパラメータ)が組み合わされ、検査パラメータとして情報処理装置100に設定されている。なお、各フィルタの係数又は閾値は、後述する処理対象画像に対して、RGBのチャンネル全てに共通の値が設定されていてもよく、チャンネルごとに異なる値が設定されていてもよい。
図6は、斑点状のヌケ(画像欠陥A1)を検出するために用いられるフィルタの一例である。図6に示されるフィルタ600は、1つのチャンネルに対応し、11×11の係数群からなる。また、フィルタ600内のグレーで示される中央の画素が注目画素に対する係数を有する。フィルタ600は、注目画素を中心とする幅3画素の領域に渡って係数1を有しており、その外側に係数−1を、さらにその外の領域においては係数0を有している。このフィルタ600は3画素程度の幅を有する大きさの斑点状の欠課を検出するのに適しており、この係数1と−1とで構成される領域が縦又は横に線状に並んでいればスジ検出に対応するフィルタとなる。このようなフィルタを用いた処理については図7にて後述する。
ステップS306で検査部206は、ステップS305で設定した検査パラメータ(フィルタ)を用いた検査処理を行う。以下、図7を参照して、ステップS306で行われる検査処理についての詳細な説明を行う。図7は、本実施形態に係る検査部206が行う検査処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS701で検査部206は、参照データを取得する。そのために、ユーザは、印刷装置によって印刷物を少量印刷し、その内から欠陥がなく成果物として納品して差し支えのない良品を選定する。次いで読取部202は、選定された良品の印刷物を読み取ることによって画像データを取得する。良品の画像データは参照データとして区別され、参照データ保持部に格納される。参照データの形式は特に限定されないが、以下においてはRGB8ビット形式で取得される(つまり、画素あたり、RGBの各チャンネルを要素として有する3次元ベクトルで表される)ものとする。この例においては、ステップS701においては良品の選定のために目視検査が必要となるが、後続する処理においては以下に説明するように自動化処理を行うことが可能である。ステップS702で管理部210は、内部に有する印刷成果物の数量を示すカウントを1とする。このカウントは、後述するステップS703でのループにおいて印刷成果物が所定数に達するまでのカウントとして用いられる。
続くステップS703〜ステップS711において、印刷装置190は本稼働を行い、印刷物を印刷成果物と検査不合格のものとに区別する。ここで、情報処理装置100は、印刷成果物が所定の数に達するまで、印刷装置190と同期した入力制御信号に基づいて、印刷装置190から順次流されてくる印刷物に対してステップS703〜711の処理を繰り返す。ステップS704で読取部202は、印刷装置190から出力された印刷物を読み取り、被検査画像となる印刷データを生成し取得する。印刷データは印刷データ保持部204に格納される。印刷データの形式は特に限定されないが、参照データと同様の形式とされ、ここではRGB8ビット形式となる。
ステップS705で差分生成部205は、ステップS701で取得した参照データ(以下、R)とステップS704で取得した印刷データ(以下、P)とに基づいて、良品である参照データと印刷データとの差を示すデータである差分データDを取得する。ステップS705においては、差分データは、参照データ及び印刷データと同じサイズを有する画像データとして取得されるものとする。本実施形態においては、差分データDの画素位置(x,y)における画素値D(x,y)は以下の式(1)によって算出される。
D(x,y)=abs_each(P(x,y)−R(x,y)) 式(1)
ここで、abs_each()は、括弧内の要素(チャンネル)ごとの絶対値を取る事を表す。また、P(x,y)は印刷データPの画素位置(x,y)における画素値であり、R(x,y)は参照データRの画素位置(x,y)における画素値である。印刷データPの全画素について、式(1)を適用することによって、差分データDの全画素値が決定され、差分画像Dが得られる。この計算の結果から差分データDは、印刷データP及び参照データRと同じサイズと同じチャンネル数とを有し、画素位置(x,y)はそれらの画像の同じ位置に対応する。
なお、スキャン時の位置ずれ又は回転ずれなどにより、画素位置(x,y)が各画像データの同じ位置にあるとみなせない場合には、そのずれを補正するような処理を行ってもよい。例えば、各画像の対応点を特徴点抽出によって探し出し、それらを同じ座標(x,y)に対応付けるような幾何変換(アフィン変換等)を掛けてもよい。特徴点抽出は、例えばSIFT又はSURFなどの任意の公知の手法を用いることができ、ずれ補正の処理についての詳細な説明は省略する。
S706で検査部206は、差分データDに対して印刷物の欠陥検出処理を行う。差分データDは画素ごとに画像間の差を示す値を記録しているので、検査部206は、差分データD上に所定の条件を満たす領域が存在する場合に、その領域を印刷物の欠陥を示す領域として検出することができる。ここで、印刷物の欠陥を示す差分データ上の領域は、例えば、差の値が一定の大きさを超えている画素部分、又はそのような画素領域が一定の面積を超えている領域、若しくはそのような画素領域がスジなどの一定の形状を構成している領域であるとしてもよい。このように差の値が一定の大きさを超えている差分データ上の領域を、説明のため差分領域と呼ぶものとする。検査部206は、ステップS305で設定された検査パラメータを用いたフィルタ処理(フィルタ係数の畳み込み演算)によって、そのような差分領域を検出することができる。検査部206は、注目画素とその周辺領域の画素とにフィルタ係数をかけて畳み込み演算を行い、その演算結果がフィルタに設定されている閾値を超える場合に、欠陥を検出したと判定する。つまり、閾値が小さいほど、小さな差分に対しても欠陥として検出が行われやすい。
図6に示されるフィルタ600は、上述のように3画素程度の幅を持つ大きさの欠陥を検出するのに適している。フィルタ600は、差分データの注目画素付近の領域に記録されている差分(>0)を、係数1の働きによって、畳み込み演算の和として集める。差分領域が、係数1の存在する幅を超えて係数−1を有する領域にも存在する場合には、係数−1の働きにより、畳み込みの和は抑制される。また、差分領域が、係数1で構成される領域よりも幅が小さい場合には、係数1で構成される領域内に存在していたとしても、畳み込み演算の和の値への反映率は小さくなる。差分領域が係数1で構成される領域と同等程度の幅を有する場合のみ畳み込み演算の和が大きくなるため、フィルタ600を用いたフィルタ計算により、3画素程度の幅を持つ大きさの欠陥を選択的に検出することができる。検査部206は、用いるフィルタの係数に応じて異なる欠陥を検出することができ、上述のように係数1で構成される領域が縦又は横に並んでいればスジ状の欠陥を検出することができる。また、係数1で構成される領域の幅の大小に応じて、検出される差分領域の大小も変化する。フィルタは、例えば後述する図12のリスト行1201に示されているように、11×11個の各係数の値を要素として有するベクトルとして、閾値と共に設定されているものとして説明を行う。
検査パラメータのセットは、図5に示したように複数のフィルタによって構成される。検査部206は、これらのフィルタを組み合わせたフィルタ処理を行う際、図5に示されるようなリスト内の上のフィルタから順番に適用していくことができる。
ステップS707で検査部206は、ステップS706における欠陥検出処理によって欠陥が検出されたか否かを判定する。欠陥が検出されていない場合は合格であり、処理がステップS708へと移る。ステップS708で検査部206は、印刷物を印刷成果物用のトレー111に流すように、印刷システムへと制御信号を出力する。続くステップS709で管理部210は、印刷成果物のカウントを1増やし、処理をステップS711へと進める。また、ステップS707で検査部206が、欠陥が検出されたと判定した場合、検査は不合格であるとして、処理がステップS710へと進む。ステップS710で検査部206は、印刷物を不合格のトレー112に流すように、印刷システムへと制御信号を出力し、処理をステップS711へと進める。なお、情報処理装置100は、不合格のトレー112を複数備え、検出された欠陥の種類や程度に応じて分別して各トレーに流すようにしてもよい。ステップS711で検査部206は、印刷成果物のカウントが所定数に達しているかを判定し、達している場合は処理を終了し、達していない場合は処理をステップS703へと戻す。このような処理によれば、印刷物を自動的に合格品と不合格品にわけることができ、最終的な成果物として合格品を採用することで一定の品質を確保した所定数の成果物を得ることができる。
[情報処理装置の構成の意味]
以下、本実施形態に係る情報処理装置100の構成の意味について説明を行う。前提として、本実施形態では上述のように、情報処理装置は、印刷物の検査処理として差分画像データから欠陥の抽出を行う際に検査パラメータを参照する。典型的に起こる画像欠陥の情報が既知であれば、既知である画像欠陥に対応した検査パラメータを備えておくことは容易である。しかしながら、画像欠陥が必ずしも頻繁に起こるわけではないことから、ユーザが適切な検査パラメータを設定することは一般的には難しい。
印刷装置が物理的な精密装置である以上、出力時の種々の自然に生じる物理的なゆらぎによって画像欠陥が生じることを完全に抑制することは困難である。一方で、印刷装置の開発製造技術の創意工夫によって、画像欠陥の生じる可能性は可能な限り低減されていることから、ユーザにとっては、ある時に生じた欠陥に対して検査パラメータを作成する価値があるのかを判断することは困難であることが多い。また、ユーザは本来の目的(印刷成果物の作成)のために印刷装置を利用していることが多く、その目的の傍ら、検査処理のための画像欠陥の情報管理の負担が生じることは、ユーザにとっては好ましいとはいえない。さらに、上述したように、画像欠陥と検出処理に用いられるパラメータとの関係は、非専門的なユーザにとって容易に理解できるものであるとは限らない。
これらの理由から、典型的に生じやすい画像欠陥に関する検査パラメータの生成と管理とは、ユーザの手を煩わせることのない方が望ましい。情報処理装置が予め備えている検査パラメータによって画像欠陥に適切に対応することができるのであればユーザがパラメータを作成する必要性は生じないが、必ずしも予め全ての必要な検査パラメータを具備させられるとは限らない。例えば、印刷装置のリリース時には発売していなかった紙種が発売された場合、この紙種を用いたときに生じやすい画像欠陥(例えば、紙粉が発生しやすい等)に対する検査パラメータを予め情報処理装置に備えさせることは困難である。また、既存の検査パラメータよりも適切なパラメータが見出される可能性もある。
一方で、本実施形態に係る情報処理装置は、インターネット上に提供される検査用のパラメータを取得する構成を有している。このような構成によれば、パラメータの追加及び更新が容易となり、ユーザの負担を軽減することができる。例えば新規紙種のような対応拡大した条件において典型的に生じる画像欠陥に対する検査パラメータを、印刷装置の製造業者が公開した時点で、ユーザは自ら検査パラメータを作成することなくそれを利用することができる。また、新たに発見された画像欠陥がある場合、又は既存の画像欠陥に対してより適切な検査パラメータが発見された場合であっても、製造業者はインターネットを介してフィルタを公開することにより対応することが可能となる。
また、本実施形態においては、検査用のパラメータは製造業者が公開するものとした。印刷装置の製造業者は、開発の過程において、使用部材及び制御方法を把握しており、装置の特徴の分析を長い時間行っている他、通常のユーザよりも厳しい環境(温度又は湿度等)及び条件(稼働時間等)における使用テストを実施していると考えられる。すなわち、製造業者はユーザよりも、生じやすい画像欠陥への知見を蓄積している。加えて、製造業者は、印刷装置の形成する画像についても研究を重ねていると考えられるため、ユーザによっては見逃してしまいかねない欠陥に対応するパラメータを提供できる可能性がある。また製造業者は、印刷装置内部で行われる検査処理についても熟知しているため、画像欠陥に対して、ユーザよりも適切なパラメータを提供しやすい。したがって、ユーザは、そのような製造業者が提供するパラメータをインターネットを介して取得することにより、自身で作成するよりも適切なパラメータを用いた検査を行うことができる。
さらに、本実施形態に係る構成を有する情報処理装置は、印刷装置からある程度切り離された検査ソフトウェアとして使用されることができる。例えば、検査ソフトウェアが、使用する印刷装置と密接な関係にあり、その印刷装置に関する検査パラメータを備える専用の検査ソフトウェアとして機能する場合には、印刷装置を置き換えるときに検査ソフトウェアも置き換える必要が生じる。結果としてユーザは新しい検査ソフトウェアに再度習熟する必要が生じ、ユーザへの負担が発生する。一方で、本実施形態に係る情報処理装置を用いることによって、印刷装置を置き換えた場合でも、新たな印刷装置の機種に応じた検査パラメータをダウンロードして適用することにより、使い慣れた検査ソフトウェアを継続使用することが可能となる。
また例えば、同一の印刷成果物をできるだけ短手番で、かつ複数箇所で一斉に配布したい場合について考える。検査ソフトウェアが印刷装置から独立していれば、遠隔地間で異なる機種の印刷装置を用いて印刷成果物を作成する場合であっても、各印刷装置で同一の検査ソフトウェアを用いて対応する検査パラメータを取得することにより、検査基準を統一することができる。
以上、説明したように、印刷業者が作成した検査パラメータをインターネット上から取得することにより、検査パラメータの追加及び更新を容易にし、情報処理装置、特に検査ソフトウェアの柔軟性及び拡張性を拡張することに繋がる。
なお、本実施形態に係る情報処理装置100は、図5及びステップS304〜ステップS305で説明したように、インターネットを介して提供されるパラメータに加えて、ユーザが作成したパラメータをさらに取得することができる。このような構成によれば、典型的な画像欠陥とは別に、ユーザ独自の観点から排除したい画像欠陥を検査対象として加えることにより、ユーザの意図により近い印刷成果物を確保することが可能となる。
以下、図8を参照してユーザによるパラメータの作成処理について説明を行う。図8は、ユーザが検査用のパラメータを作成する際に用いるユーザインターフェースの一例を示す模式図である。この例においては、ディスプレイ800がUIパネル108と同一であるものとして説明を行うが、特にそのように限定されるわけではない。ディスプレイ800は、例えば汎用I/F107から接続した異なるディスプレイであってもよい。
ユーザが印刷装置190の運用中に気付いた画像欠陥を対象とする検査パラメータを作成したい場合に、ユーザは情報処理装置100を操作して図8に示されるUIを表示する。図8は追加したい検査対象を選択するための画面である。ボタン801〜803にはそれぞれ「斑点」、「縦スジ」、及び「横スジ」の記載が描画されており、ユーザは、検出したい画像欠陥に対応するボタンをディスプレイ800上から選択する。ボタン805〜809にはそれぞれ色を示す記載が描画されており、ユーザは、検出したい画像欠陥の色に対応するボタンを選択する。ボックス810は画像欠陥の大きさを入力するためのボックスである。ユーザは、例えばディスプレイ上に描画されたテンキー(不図示)を用いて値を入力してもよく、キーボードなどの外部デバイスを用いて入力を行ってもよい。また、パラメータ生成部208は、ボタン804「スキャン画像から選択」が選択された場合には、読取装置105が読み取ったスキャン画像をUIパネル108上に表示してもよい。この場合、パラメータ生成部208は、ユーザがスキャン画像内に指定した領域を追加した検査対象としてもよい。
追加したい検査対象の情報が入力された場合、パラメータ生成部208は、入力された情報に基づいて、その画像欠陥の検出に適したフィルタの係数及び閾値を有するパラメータを生成する。このパラメータは、上述したように、インターネットを介して取得したパラメータとステップS305で組み合わされて検査処理に用いられる。このような処理によれば、ユーザが特に排除したい画像欠陥を検査する検査処理をさらに行うことが可能となる。
[変形例]
本実施形態においては、印刷装置の機種に紐づいて提供される検査パラメータがそのまま検査で用いられるパラメータとして情報処理装置に適用された。しかしながら、情報処理装置100は、パラメータに対応する検査の合格基準の厳しさを考慮した上でパラメータの取得を行ってもよい。検査で用いられる検査パラメータは、合格基準の厳しさにそのまま結びついている。また、合格基準の厳しさは、印刷成果物における品質と生産性のトレードオフに影響する。すなわち、基準が厳しすぎると生産性が悪化し、基準が緩やかすぎると品質の確保が疎かになる。このような観点から、合格基準は画一的ではなく、ユースケースに応じて柔軟に対応させられることが望ましいといえる。
そのために、インターネットを介して提供される検査パラメータは、対応する印刷装置の機種の情報に加えて、合格基準の厳しさを表す情報(一例としては「厳しい」、「普通」、又は「緩やか」)を有していてもよい。例えば、検査パラメータの取得後の検査処理時に、ユーザが所望の検査処理の厳しさをUIパネル108を介して指定してもよい。その場合、設定部209は、指定された厳しさに応じて検査パラメータを設定する。なお、検査パラメータの有するフィルタが、それぞれ厳しさを表す情報を有していてもよい。また、上述の厳しさは、画像欠陥の形状ごと(例えば、スジは「普通」の設定となり、斑点は「厳しい」の設定となるように)に設定されてもよい。情報処理装置100は、例えばユーザがUIパネル108を介して所望の検査処理の厳しさを選択した場合に、対応する検査パラメータをユーザに提示し、さらにユーザによる入力を受け付けてもよい。例えば、情報処理装置100は、所望の厳しさに応じて提示された検査パラメータに対して、さらにその中でのユーザによる所望の厳しさの選択を受け付けてもよく、提示されたパラメータごとに検査に用いるか否かの選択を受け付けてもよい。情報処理装置100は、ユーザにフィルタを提示する場合、そのフィルタに対応する画像欠陥の情報と同時に提示を行ってもよい。
このような構成によれば、製造業者が作成した一定の品質用の検査パラメータをインターネットを介して取得しつつ、ユーザ側のケースに応じた意図を反映させた検査処理を実施することができる。
また、本実施形態に係る情報処理装置100は、自動的にサイト402へとアクセスして検査パラメータを取得する(ステップS301〜ステップS302)ものとして説明を行った。しかしながら、インターネットを介した検査パラメータの取得処置はこれには限定されず、例えばユーザがネットワーク上のサイトに任意にアクセスを行うことで検査用のパラメータを含むデータを取得し、情報処理装置100に適用する形式であってもよい。この場合、ユーザが他機種向けの検査パラメータを誤って適用することがないよう、対応しない機種には適用できないようにしてもよく、印刷装置に関する認証を経るなどの措置が講じられていてもよい。
また、本実施形態に係る情報処理装置100は、印刷装置の機種に紐づいて分類される検査パラメータを取得する。印刷装置において生じる画像欠陥は、印刷装置を構成している部材、使用する色材、画像形成の方式及び制御方法、データ処理方法、又はそれらの組み合わせに起因するものがある。同一の機種ではこれらの要素が同一であることから、生じやすい画像欠陥も自ずと定まり、機種ごとに適した検査用のパラメータが生成されやすくなる。一方で、パラメータの取得に用いられる属性情報は特に機種に限定されるわけではない。情報処理装置100は、画像欠陥の発生の仕方に特徴が生じる条件に基づいて、その画像欠陥に対応する検査用のパラメータを取得してもよい。例えば、情報処理装置100は、記録媒体の種別(紙種)、印刷のモード(印刷設定)、使用環境、入力原稿の種別などを属性情報として、これらのいずれか又は複数に応じて、インターネットを介して検査用のパラメータを取得してもよい。
各属性情報に応じた画像欠陥について説明する。例えば、ある種の紙を用いた場合に「印刷が掠れる可能性が高くなる」、「紙から発生する紙粉が生じやすい」、又は「シール紙の粘着成分が印刷物を汚す」など、紙種ごとに想定される画像欠陥に対応する検査パラメータが紙種の情報と紐づけられていてもよい。また、「高速印刷モードでは印刷にスジが生じやすい」など、印刷モード特有の画像欠陥に対応する検査パラメータが印刷モードを示す情報と紐づけられていてもよい。ここでは、高速モードとは、紙の搬送を速くする、又は処理解像度を下げるなどによって実現されるものとする。同様に、温度若しくは湿度の高低などの環境の条件に応じて想定される画像欠陥、又は「特定の色調を多く持つ」、「文字及び線が多い」、若しくは「厳密性を要する」などの入力原稿の種別に応じて想定される画像欠陥に対応していてもよい。このように、情報処理装置100は、検査対象となる画像欠陥に特徴が生じる条件に基づいて、検査に用いるパラメータを取得することが可能である。したがって、ユーザの検査処理の利便性を向上させることができる。
なお、情報処理装置100は、これらの条件(属性情報)を複数組み合わせて、インターネットを介したパラメータの取得を行ってもよい。例えば、情報処理装置100は、機種に応じて検索されるパラメータのうちから、さらに紙種に対応する画像欠陥を示すパラメータを検索し、取得してもよい。
このような構成によって設定される検査パラメータのセットの模式図を図9に示す。図5と共通する構成は同一の参照番号で表され、重複する説明は省略する。検査パラメータのセット900は、印刷装置の機種に基づく検査パラメータ901、印刷条件に基づく検査パラメータ902、及び生成パラメータ502を含んでいる。検査パラメータ901はさらに3つのフィルタ511、512、及び911を有しており、フィルタ911は機種に対応することに加え、高速モードにおいて起こりやすい画像欠陥A3(横スジとする)にも対応している。つまり、フィルタ911は機種と条件との両方に基づいて設定されている。印刷条件に基づく検査パラメータ902はフィルタ921を含んでおり、機種によらず、印刷条件(この例では紙種)に応じて生じやすい画像欠陥C1(この例では紙粉汚れ)に対応する。このように設定部209は、各フィルタで構成された検査パラメータのセット900を設定することができる。検査処理にあたっては、情報処理装置100は、例えば図9に示されるリストに表示されているフィルタの上から順番に適用していくことができる。
このような構成によれば、印刷装置の出力に関わる属性に基づいて、インターネットを介して検査用のパラメータを取得し、印刷画像から欠陥の検出を行うことができる。したがって、ユーザの負担を抑制しつつ、適切な検査パラメータを設定することができる。
[実施形態2]
実施形態1に係る情報処理装置は、インターネットを介して提供される検査パラメータを取得して印刷画像から欠陥の検出を行った。上述したように、検査処理を行う際に必ずしも必要な検査パラメータを予め情報処理装置に具備させられるとは限らず、例えば経年劣化による画像欠陥に対応するパラメータも予め考慮することが難しい場合がある。印刷装置の経年劣化による画像欠陥とは、例えば印刷装置の内部部材等が劣化することにより生じる画像欠陥を指す。製造業者は、通常のユーザによる使用環境よりも厳しい使用テストを課してその影響を予測することはできるものの、印刷装置のリリース前に実使用と同じ時間をかけてテストを行うことは、印刷装置の適時リリース性を損なわせるため困難である。すなわち、長時間の経過によって現れる画像欠陥があるとすれば、それはリリース時には未知の画像欠陥ということになる。
そのため、本実施形態に係る情報処理装置は、印刷装置の経年劣化により生じやすい画像欠陥に対応する検査用のパラメータをインターネットを介して取得し、取得したパラメータに基づいて印刷画像から欠陥の検出を行う。なお、本実施形態に係る印刷装置及び情報処理装置は図1及び図2に示されるものと基本的に同様の構成を有するため、同様の処理が可能であり、重複する説明は省略する。
まず、サイト402に公開される、製造業者による検査パラメータの作成方法について説明する。図10は、複数台の印刷装置を用いて検査パラメータの作成を行う場合の処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1001〜ステップS1009において、製造業者は、時間をかけたテストの結果、経年劣化に応じて典型的に生じる画像欠陥を見出した場合に、その欠陥に対応する検査パラメータを生成する。そのために、ある機種の中でも特に典型的な(中心的な)性質を有すると選別及び判断された機体を用いたテストの結果、又はそのような機体を複数台用いたテストにおいて、各機体で同一の画像欠陥が生じたか否かを判定するテストの結果から判断してもよい。
ステップS1001では、製造業者が有するある機種の印刷装置を用いて、テストのための画像の出力が行われる。ステップS1002では、ステップS1001で出力された画像における画像欠陥の有無が検査される。この画像欠陥の検査には、実施形態1に係る情報処理装置100として使用される上述の検査ソフトウェアを用いることができる。ただし、この工程における画像出力の目的はテストであるため、ユーザの行う出力とは異なり生産性(所定時間内に作成しなければならない印刷成果物の数)の重要度は低い。そのため、多くの画像欠陥に対応可能な厳しい検査パラメータのセットが用いられてもよい。
ステップS1003〜ステップS1006は、ステップS1002で検査された画像欠陥の有無と、画像欠陥が存在する場合の分類と、に係る判断を行う処理である。ステップS1003では、ステップS1002で画像欠陥が検出されたか否かが判定される。画像欠陥が検出された場合(YES)には、処理はステップS1003に移り、検出された画像欠陥が、その機種の画像欠陥として未知であるか、すなわち未登録であるか否かが判定される。未登録である場合(YES)には処理がステップS1005に移り、検出された画像欠陥の発生頻度が所定の頻度を超えるか否かを判定する。発生頻度が所定頻度を超える場合(YES)にはステップS1006に移り、複数機体で同種の画像欠陥が同様に生じているか否かが判定される。他の機体でも同種の画像欠陥が生じている場合には処理がステップS1007に移る。なお、これまでの判定において、ステップS1004でNoの場合は、検出された画像欠陥は既知のものであり検査パラメータは作成済であるから、新たに検査パラメータを作成し登録する必要はないことを意味し、処理はステップS1009へと進む。ステップS1005でNoの場合は、検出された画像欠陥がその機種で典型的に起こる画像欠陥とは判断できないことを意味し、処理はステップS1009へと進む。ステップS1006でNoの場合は、検出された画像欠陥は、生じた機体では起こりやすいもののその機種で典型的に起こる画像欠陥とは判断できないことを意味し、処理はステップS1009へと進む。ステップS1003〜ステップS1006における判定が全てYESとなる画像欠陥が存在する場合は、その欠陥は機種に典型的に起こると判断され、処理がステップS1007に進む。
図11は、同一機種の異なる2つの機体X、Yにおける出力画像の欠陥のテストにおけるある特定の画像欠陥の発生を、時間の経過に対して表示したグラフである。図11で示される特定の画像欠陥A4は、斑点状に生じるヌケであるものとする。上側のグラフ(a)が機体Xによる画像欠陥A4の発生の有無を、下側のグラフ(b)が機体Yによる画像欠陥A4の発生の有無を示す。横軸はテストにおける各機体の稼働時間であり、印刷装置が画像形成を実施していた時間の累積(累積画像形成時間)であるものとする。縦軸は欠陥の発生を示し、機体Xにおいては稼働時間t1〜t4に、及び機体Yにおいては稼働時間t5〜t7に存在するスパイクが、各稼働時間において画像欠陥A4が発生したことを示す。グラフに示したt1より以前にこの画像欠陥A4の発生は観察できなかったものとする。図11の下部に示した所定時間は欠陥の頻度の判定に用いられる時間の長さである。この例では、所定時間のうちに同種の画像欠陥が3度以上発生している場合には所定頻度を超える(すなわち、典型的な)欠陥であると判定される。またこの例においては、機体Xと機体Yの双方において、未登録かつ同一種の画像欠陥A4が所定頻度を超えて発生しているために、ステップS1003〜ステップS1006の判定をYESで通過し処理がステップS1007に至る。
ステップS1007では、製造業者が、検出された画像欠陥に対する検査パラメータを作成する。この例では、画像欠陥は斑点状のヌケであるので、その大きさに基づく図6に示したようなフィルタ係数と、その濃度差に応じた閾値と、が作成される。
次いでステップS1008では、ステップS1007で作成した検査パラメータに、その画像欠陥に対する印刷装置の稼働時間を表す情報(稼働時間情報)が紐づけられる。また、その画像欠陥が既知の画像欠陥として登録される。印刷装置の稼働時間情報とは図11に示した欠陥が生じるようになる印刷装置の稼働時間(グラフの横軸)である。本実施形態では、時間経過に対して典型的に生じるようになると判断された画像欠陥が最初に生じた稼働時間t1が、稼働時間情報として検査パラメータに関連付けられる。関連付けられた稼働時間情報と検査パラメータは、図12に示すようなリスト1200上に管理される。以下、このような検査パラメータが表示されるリストを、検査パラメータリストと呼ぶものとする。リスト1200は、少なくとも稼働時間情報と検査パラメータを持ち、ステップS1007で新たな検査パラメータが作成される度、下欄に情報が追加される。図12のリスト行1201には、上述のステップS1007で作成された検査パラメータが稼働時間t1と共に登録されている。リスト1200は稼働時間情報と検査パラメータの他に、対応する画像欠陥の情報(画像欠陥の種類等)を含んでいてもよい。印刷装置の稼働情報と検査パラメータとが紐づけられて検査パラメータリストに登録された場合、この画像欠陥は既知の画像欠陥として登録される。この処理によって、テストを継続し同じ画像欠陥を検出した場合でも、ステップS1004によって検査パラメータが重複して作成されることはなくなる。
処理がステップS1009に至ると、テスト期間が終了したか否かが判定される。終了していなければ、処理がステップS1001に戻って再度画像の出力が行われる。テスト期間が終了していれば、この処理全体が終了する。以上が、サイト402に公開する印刷装置の製造業者の検査パラメータの作成方法である。
次いで、図13を参照して、本実施形態においてユーザ側が検査パラメータを取得する処理について説明する。すなわち、実施形態1におけるステップS302の処理について、詳細な説明を行う。図13は、ステップS302において情報処理装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS1301で管理部210は、印刷装置190の稼働時間情報を取得する。この例では、印刷装置190が画像形成を実施していた累積時間を取得する。ステップS1302で取得部207は、サイト402にアクセスして、印刷装置190に対応する検査パラメータのリスト1200を検索する。ステップS1303で取得部207は、リスト1200の中に、ステップS1301で取得した稼働時間に適合するパラメータが存在するかどうかを判定する。すなわち、リスト1200に含まれるパラメータのうちで、紐づけられた稼働時間情報がステップS1301で取得された稼働時間以下となるパラメータが存在するかどうかを判定する。存在すると判定された場合は、処理がステップS1304へと移り、そのパラメータが未取得であるかどうかを判定する。そうでない場合は新たな検査パラメータの取得は行わずに処理が終了する。ステップS1304で未取得であると判定された場合、処理はステップS1305へと進み、取得部207はそのパラメータを検査に用いるパラメータとして取得する。そうでない場合は、新たな検査パラメータの取得は行わずに処理が終了する。
図14は、ステップS1305によって新たな検査パラメータが追加取得された場合における、検査パラメータの変化を説明するための模式図である。図14においては、印刷装置190が稼働時間t1を迎えたことにより、印刷装置の機種に基づく検査パラメータ501が検査パラメータ1401へと更新されている。検査パラメータ1401は、検査パラメータ501が有していたフィルタ511及び512に加え、印刷装置の経年劣化により生じやすくなった画像欠陥A4に対応するフィルタ1401をさらに含んでいる。このフィルタは、リスト1200のリスト行1201に含まれていた検査パラメータである。
このような処理によれば、印刷装置の稼働時間に応じたパラメータをインターネットを介して取得することにより、経年劣化によって生じやすくなる画像欠陥について検出を行うことができる。また、印刷装置190がまだ新しく経年劣化による画像欠陥が生じるリスクが低いうちにはそれらの画像欠陥の検出処理を省略し、時間の経過に応じてそれらの検出処理を追加することができる。したがって、ユーザが検査パラメータを作成する負担を軽減しつつ、効率的な検査処理を行うことができる。
[変形例]
実施形態2に係る情報処理装置は、ステップS302で稼働時間情報を参照して適合する検査パラメータを取得するか否かを決定した。しかしながら、稼働時間情報を参照するタイミングはこれには限定されない。例えば、取得部207は、サイト402に公開された印刷装置190の検査パラメータを、パラメータに紐づけられた稼働時間情報と共に取得するようにしてもよい。その場合、ステップS303で設定部209は、印刷装置190の稼働時間とステップS302で取得した稼働時間情報とを比較し、実際の検査処理にそのパラメータを適用するかどうかを決定する。
また、本実施形態に係る情報処理装置は、印刷装置の稼働時間情報として画像形成の累積時間を用いて各処理を行うものとして説明されたが、稼働時間情報の算出処理は特にこのようには限定されない。例えば、印刷装置の累積稼働時間、印刷装置がユーザの手に渡ってからの経過時間、印刷装置の累積画像出力数、又は印刷装置が消費した累積色材量(トナー量)などが、印刷装置の稼働時間情報として用いられてもよい。なお、印刷装置がユーザの手に渡ってからの時間とは、ユーザが初めて印刷装置を起動してからの時間であってもよい。また例えば、ユーザの手に渡ってからの時間は、印刷装置をユーザが購入してからの経過日数であってもよく、ユーザが印刷装置を使い始めてからの経過日数であってもよい。
また、経年劣化が印刷装置の内部部材の劣化によるものであるとする観点から、印刷装置内部の所定部材が用いられている間の累積時間が、印刷装置の稼働時間として用いられてもよい。そのような場合には、製造業者が検査パラメータを作成するとき、この所定部材を交換することなく図10に示したような処理によるテストを行い、図11に示したような時間の経過に対する特定の画像欠陥の発生の傾向を把握する。一方で、ユーザ側(取得部207)は、印刷装置のメンテナンスを行って上述の所定部材を新品と交換している場合には、交換の時点で印刷装置の稼働時間の情報をリセットした上で検査パラメータの取得を行う。そのような処理のために、印刷装置190は、内部部材が交換された場合にその検出を行う検出部(不図示)を備えていてもよく、メンテナンスを実施するサービス員が印刷装置内に記録(メンテナンスログ)を残すようにしてもよい。
また、本実施形態に係る情報処理装置は、例えば図11に示されるように、新たな検査パラメータを取得するための条件として設定する稼働時間情報を、初めて画像欠陥A4が検出されたt1に設定した。しかし、稼働時間情報として設定される稼働時間は特にこれには限定されない。例えば、検査に用いることを考慮すると、画像欠陥が生じ始める前にパラメータが追加されていた方が安全性が高まることから、t1より所定のマージン期間だけ前の稼働時間を稼働時間情報として設定してもよい。例えば、所定のマージン期間をΔtとして、稼働時間t1−Δtが稼働時間情報として検査パラメータに紐づけられてリスト1200に追加される。
また、本実施形態に係る情報処理装置は、自動的にサイト402へとアクセスして検査パラメータを取得及び更新するものとして説明を行った。しかしながら、情報処理装置は、検査パラメータに変更がある場合には、ユーザにその旨を通知し、検査パラメータの取得又は適用を行うかどうかのユーザ指示を取得してもよい。ユーザに上記旨を通知する際、情報処理装置は、検査パラメータを追加する際の基準となる稼働時間情報、印刷装置の現在の稼働時間、及び追加する検査パラメータが対応する画像欠陥の内容などを、さらにユーザに提示してもよい。その場合、ユーザは、提示された検査パラメータに対して「更新する」、「今は更新しない(後で更新する)」、又は「更新しない」などの指示を選択して入力する。このような処理によれば、経年劣化に対する検査パラメータの更新をユーザに提示しつつ、印刷装置190の制御自体はユーザ自身が管理することができるようになる。
実施形態2に係る情報処理装置は、経年劣化により生じやすくなる画像欠陥に対する検査パラメータを、検査に用いる検査パラメータのセット内に追加するものとして説明を行った。しかしながら、時間の経過に対して行われる更新処理が、必ずしもパラメータの追加である必要はない。例えば、上述の斑点状の画像欠陥A4が、経年劣化の進行度合いに応じて、つまり稼働時間が長くなるにつれて大きくなっていく場合を考える。このような場合、情報処理装置は、ある稼働時間情報を更新の条件として、画像欠陥A4に対応するフィルタを、その稼働時間の斑点の大きさに対応する係数を有するフィルタへと差し替えることができる。すなわち、パラメータの追加ではなく変更が行われてもよい。同様に、経年劣化により生じる画像欠陥とその周囲との濃度差の変化に応じて、フィルタの係数ではなく閾値が変更されてもよい。
ステップS1003〜ステップS1006において、検出される画像欠陥が経年劣化によるものであるかどうかの判定が行われた。本実施形態においては、それらの処理に加え、検出された画像欠陥が経年劣化により生じるものであることを確認する分析処理がさらに行われてもよい。例えば、製造業者は、印刷装置の内部の使用部材の劣化状況を新品の状態と比較してもよく、使用部材を新品と交換した場合にその画像欠陥が生じなくなるかどうかを確認してもよい。このような処理によれば、検出された画像欠陥が経年劣化により生じやすくなるものであるかどうかの確認の正確性を向上させることができる。また、テストに使用される印刷装置が1台の場合でも、上述の確認を行うことができる。
さらに、実施形態2に係る情報処理装置は、実施形態1と同様に、インターネットを介して取得する検査パラメータとは別に、ユーザが独自に作成する検査パラメータをさらに取得してもよい。この場合、例えば、検査パラメータが更新される稼働時間よりも前に追加で検査される画像欠陥が生じた場合について考える。追加で取得される予定の画像欠陥に対応するパラメータをユーザが作成した場合には、稼働時間に基づいて検査パラメータの更新が行われた後には同一の画像欠陥に対応する内容のパラメータが重複して登録されてしまう。そのような観点から、情報処理装置は、検査パラメータの更新を行う際に、ユーザが作成した生成パラメータと同様の内容の更新用パラメータが存在する場合には、その旨をユーザに通知し、どちらかを削除する又はオフにするためのユーザ指示を取得してもよい。このような処理によれば、非効率な検査処理の実施を抑制することができる。
[実施形態3]
実施形態3に係る情報処理装置は、印刷装置が行う出力に関わる属性を示す属性情報に基づいて、経年劣化によって印刷画像に欠陥が検出される確率を取得する。次いで、取得した確率と、欠陥に対するユーザの所望の条件と、に基づいて決定される種類の画像欠陥について、その画像欠陥に対応する検査パラメータを、属性情報に基づいて取得し、欠陥の検出を行う。
図18は、本実施形態に係る情報処理装置1800の機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1800は、確率取得部1801と決定部1802を備えることを除き、実施形態1の情報処理装置100と同様の構成を有する。また、実施形態3に係る印刷装置は、図1に示される印刷装置の同様の構成を有する。したがって、重複する説明は省略する。
確率取得部1801は、印刷装置の稼働時間に対して印刷画像に欠陥が生じる確率を表す情報を取得する。本実施形態においては、確率取得部1801は、モデルが格納されているサーバへとアクセスして、属性情報に対応する経年劣化のモデルを取得し、取得したモデルに基づいて、稼働時間に対する所定の欠陥が生じる確率を取得する。以下、そのような経年劣化のモデルを指して単に「モデル」と呼ぶものとする。モデルに関する詳細な説明は図15を参照して後述する。以下においては、各モデルはそれぞれ対応するフィルタに紐づけられて格納されている(すなわち、実施形態1におけるサイト402に格納されている)ものとするが、特にそのようには限定されない。例えば、モデルは、フィルタと対応付けられる形式で、フィルタと異なるサーバに格納されていてもよい。
決定部1802は、取得したモデルと、ユーザが入力する欠陥に対する希望の条件に基づいて、検査部206が行う検査処理で用いる検査パラメータを決定する。本実施形態においては、決定部1802は、例えば、ユーザが希望する出力に対する印刷成果物の生産性を満たすように、取得したモデル(確率)に基づいて、画像欠陥ごとに設定された優先順位の高い方から順に検査に用いるパラメータを取得することができる。決定部1802が行う処理はこれには限定されないが、詳細な説明は図16及び図17を参照して後述する。
以下、上述のモデルについての説明を行う。図11においては上述の通り、同一機種の異なる機体X及びYによる経時的な出力における画像欠陥A4の発生の様子を図示している。このグラフより、定性的には、画像欠陥A4の発生確率は、稼働時間tが小さいうちには0とみなしてよいが、稼働時間t1に近づくにつれて上昇し、その後はある程度一定の確率で生じているとみなせることが読み取れる。この考えをさらに推し進めることで取得される、稼働時間に対する画像欠陥の発生確率を示すモデルが本実施形態に係る経年劣化のモデルである。このモデルの推定のため、図11のように観測された同種の画像欠陥を全て(この例では図11(a)と図11(b)とを)同一軸上にプロットする。次いで、図11の所定時間を単位時間として、単位時間あたりの画像欠陥発生数を、稼働時間ごとに算出する。さらに、算出した画像欠陥発生数を、単位時間ごとの印刷装置の画像出力数で割ることにより、各稼働時間におけるその画像欠陥の平均発生率が算出される。
図15は、そのような考えから作成された経年劣化のモデルの一例を表す図である。図15(a)は画像欠陥A5(斑点(小))が発生する確率を示すモデルであり、図15(b)は画像欠陥A6(斑点(大))が発生する確率を示すモデルである。図15(a)及び図15(b)において、横軸は印刷装置の稼働時間であり、縦軸はそれぞれの画像欠陥が発生する確率である。画像欠陥A5及びA6は共に斑点状に発生する画像欠陥であるが、その大きさはA6の方が大きく、両者の発生濃度は同等であるものとする。また、両者の発生する確率は独立であるものとして説明を行う。
図15(a)に示されるように、画像欠陥A5が発生する確率は、稼働時間tが0≦t<t11の範囲では0であり、t11≦t<t12の範囲では線形に上昇し、t12≦tの範囲ではある発生確率α(0<α≪1)を取る。また図15(b)に示されるように、画像欠陥A6が発生する確率は、稼働時間tが0≦t<t13の範囲では0であり、t13≦t<t14の範囲では線形に上昇し、t14≦tの範囲ではある発生確率β(0<β≪1)を取る。つまり、図15に示す稼働時間τ(t13よりも後、かつt14よりも後)においては、確率αで画像欠陥A5が、確率βで画像欠陥A6がそれぞれ独立に発生する。また、αとβとは、それぞれ1より十分に小さい値である。
本実施形態においては、このように生成されるモデルがサーバ上に格納され、情報処理装置によって取得及び利用される。図16は、サイト402でアクセス可能な上述の経年劣化のモデルを参照しながら検査パラメータを設定する際にユーザが使用するユーザインターフェースの一例を示す模式図である。この例においては、ディスプレイ1600がUIパネル108と同一であるものとして説明を行うが、特にそのように限定されるわけではない。ディスプレイ1600は、例えば汎用I/F107から接続した異なるディスプレイであってもよい。
ディスプレイ1600の表示は、検出対象とする斑点の大きさを設定する上側のUI1601と、生産性を予測又は設定する下側のUI1602と、に分かれている。UI1601は、スライダー1603と、スライダーバー1604と、を有する。ユーザは、スライダーバー1604を動かすことにより、画像欠陥である斑点に関する検出の厳しさを、レベル0〜2の3段階で選択することができる。レベル0はこの中で最も緩やかな設定であり、斑点の検出を行わないことを示す。レベル1はこの中では中間的な設定であり、画像欠陥A6の大きさを有する斑点を検出対象とすることを示す。この設定では、画像欠陥A6は検出するが、画像欠陥A5の大きさを有する斑点は検出されない。レベル2はこの中で最も厳しい設定であり、画像欠陥A6に加えてA5の大きさを有する斑点を検出対象とすることを示す。すなわち、画像欠陥A5以上の大きさを有する斑点状の欠陥を全て画像欠陥として検出し、それらを有する印刷データを不合格品とする。
次いで、このモデルを用いて生産性を予測する方法、又は設定した生産性から適切な検査パラメータを選択する方法の原理について説明する。今、印刷装置190の合格不合格を問わない印刷出力の生産性が1時間あたりN枚であるとする。このとき生じ得る画像欠陥がA5及びA6であるとすると、上述の稼働時間τにおいて画像欠陥が生じる確率はそれぞれα及びβであり、A5とA6とが同時に起こる確率はα×βである。したがって、どちらの画像欠陥も生じない、すなわち出力が印刷成果物となる確率P2(τ)は、以下の式(2)で算出される。
P2(τ)=1−α−β+α×β 式(2)
ここで、αもβも1よりも十分に小さい数字であることから、P2(τ)は2次の項を無視した以下の式(3)を用いた近似値とすることができる。
P2(τ)≒1−α−β 式(3)
したがって、画像欠陥A5及びA6をともに欠陥として検出するレベル2における、不合格品を含まない印刷成果物の生産性である成果物生産性N2は、以下の式(4)で表される。
N2=P2(τ)×N=(1−(α+β))×N 式(4)
また、レベルが2ではなく1に設定されている場合は、画像欠陥A6のみを考慮すればよいので、出力が印刷成果物となる確率P1及び成果物生産性N1は、以下の式(5)で表される。
P1(τ)=1−β
N1(τ)=(1−β)N 式(5)
またレベルが0に設定されている場合には斑点を検出対象としないので、出力が印刷成果物となる確率P0及び成果物生産性N0は、以下の式(6)で表される。
P0(τ)=1
N0(τ)=N 式(6)
このように経年劣化のモデルを参照することにより、ある稼働時間tにおける、ユーザが設定した検査の厳しさでの印刷成果物の生産性を予測することができる。図16のUIにおいては、そのような予測はUI1601によって入力され、ボタン1605がトリガーとして機能する。決定部1802は、ユーザによってボタン1605が押下された場合にスライダーバー1604が示しているユーザ所望の設定を取得し、上述の計算を行うことで予測される成果物生産性をテキストボックス1606に表示する。なお、成果物生産性は総出力数に対する印刷成果物の割合で表示されてもよく、図17に示されるように時間当たりの印刷成果物の出力枚数で表示されてもよく、特にその形式は限定されない。
なお、この例では画像欠陥が2つの場合について説明を行ったが、生じ得る画像欠陥の数は特にそのようには限定されない。各画像欠陥が確率的に独立に発生すると仮定すると、画像欠陥が生じる確率は基本的には1よりも十分小さいため、上述の式(3)のように、次数の高いものを除く近似によって成果物生産性の近似値を得ることができる。つまり、検査パラメータに含まれている各画像欠陥が個別に生じる確率の和を1から引いたものが、成果物生産性(割合)の近似値であるとすることができる。
また、決定部1802は、上述と逆の計算を行うことにより、ユーザが設定した所望の成果物生産性から、推奨される検査パラメータを算出して提案及び設定することができる。すなわち、上述の例でいえば、ユーザが所望の成果物生産性Nd(0≦Nd≦N)を入力した場合に決定部1802は、Nd≦N2であればレベル2を、N2<Nd≦N1であればレベル1を、N1<Ndであればレベル0をユーザに提案する。なお、図16のUIにおいては、そのような予測はUI1602によって入力され、ボタン1607がトリガーとして機能する。決定部1802は、ユーザがボタン1607を押下した場合にテキストボックス1606に入力されているユーザ所望の成果物生産性を取得し、後述する図17のフローチャートで示される処理によって検査パラメータを決定し、スライダーバーを移動させる。
図17は、ユーザに提案する検査パラメータをユーザが入力する所望の成果物生産性に基づいて決定する処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る情報処理装置は、ステップS302の処理に代わって図17に示される処理を行うことでインターネットを介した検査パラメータを取得することを除き、実施形態1のステップS301〜ステップS306と同様の処理を行う。したがって、重複する説明は省略する。なお、本実施形態においては、サイト402に提供される各検査パラメータ(とそれに対応する画像欠陥)には、更新されたパラメータも含めて、予め優先順位が設定されている。この優先順位は、画像欠陥が印刷画像に生じた場合に与える影響の大きさに応じて設定される。本実施形態においては、優先順位は1からの自然数で表され、設定された値が小さな画像欠陥ほど重大な画像欠陥であることを示している。上述の例では、より視覚的に目立つ(サイズが大きい)画像欠陥A6に対しては優先順位1が設定され、画像欠陥A5に対しては優先順位2が設定される。優先順位は、製造業者が画像欠陥の内容を考慮して決定し、割り振ってもよい。
ステップS1701で管理部210は、印刷装置190の稼働時間の情報と、ユーザが設定する所望の成果物生産性Ndと、を取得する。ステップS1702で取得部207はサイト402へとアクセスし、属性情報(機種情報)と対応する各フィルタに紐づけられているモデルを取得する。
ステップS1703及びステップS1704は変数の初期化を行う処理である。ステップS1703で取得部207は、何らかの画像欠陥が発生して出力が不合格品になる確率を表す変数P_sumに0を代入する。ステップS1704で取得部207は、処理中のフィルタの優先順位を表す変数Prに1を代入する。
ステップS1705〜ステップS1711において、取得部207は本動作を行い、ユーザの所望の条件に応じた検査パラメータを取得する。ステップS1705で取得部207は、ステップS1701で取得した印刷装置190の稼働時間を参照して、優先順位Prの画像欠陥が現在の稼働時間において生じる確率Pを、ステップS1702で取得したモデルを参照して求める。ステップS1706で取得部207は、Pが0であるか否かを判定する。0である場合には、その画像欠陥は現在の稼働時間では生じないと判断して、処理をステップS1710へと進める。そうでない場合には、処理をステップS1707へと進める。
ステップS1707で取得部207は、変数P_sumにPを加算する。上述のように、検査パラメータに含まれている各画像欠陥が生じる確率の和を1から引いたものが、その検査による成果物生産性の近似値であるとすることができる。すなわち、P_sumはループ処理によって、処理対象の各画像欠陥が生じる確率を足した値となることから、印刷成果物の成果物生産性は(1−P_sum)×N(Nは印刷装置の総出力生産性)に近似することができる。なお、この例においては、各画像欠陥は確率的に独立に発生するものとする。
ステップS1708で取得部207は、(1−P_sum)×NとNdとを比較する。Ndの方が小さい又は等しい場合には処理対象の画像欠陥を検出対象としても所望の生産性Ndを割り込まない可能性が高いと考えられることから、処理はステップS1709へと進み、その画像欠陥に対応する検査パラメータが検査に用いるものとして取得される。Ndの方が大きい場合には、これ以上検査パラメータを追加するとユーザ所望の成果物生産性Ndを達成できなくなる可能性が高いと考えられることから、ループ処理は終了し、取得した検査パラメータを検査に用いるパラメータとしてステップS303へと進む。
ステップS1709に後続するステップS1710で取得部207は、まだ処理対象となっていない検査パラメータが残っているかどうかを判定する。残っている場合には、取得部207は、処理をステップS1711へと進めてPrの値を1増やし、次いで処理をステップS1705へと戻す。そうでない場合はループ処理は終了し、取得した検査パラメータを検査に用いるパラメータとして処理がステップS303へと進む。
このような処理によれば、現在の稼働時間(印刷装置の状態)に応じて、ユーザの所望する成果物生産性を実現する範囲内で、優先順位の高いものから検査パラメータを選択してユーザに提示することができる。実施形態2に係る情報処理装置は、印刷装置の経年劣化を考慮して検査パラメータを更新する処理を行ったが、実施形態3に係る情報処理装置1800は、印刷装置の経年劣化に対して、品質と生産性のバランスを調整する。とくに、経年劣化のモデルが印刷装置に詳しい製造業者によって提供されることにより、ユーザは格段の負担を払うことなくその情報を検査処理に活用することが可能となる。また、ユーザは、所望の成果物生産性を変更した場合に検査パラメータがどのように設定されるかを確認し、インタラクティブに品質と生産性のバランスを決定することができる。さらに、製造業者側は、テストの進行に応じて検査パラメータ又はモデルの更新を行うことにより、それらを広くユーザに提供し浸透させることが可能となる。
実施形態3に係る情報処理装置1800は、図17に示すようなモデルを参照した上での検査パラメータの取得処理に加えて、実施形態1におけるステップS303〜ステップS306の処理を行ってもよい。すなわち、ユーザによる生成パラメータを検査パラメータのセットに追加してもよい。また、情報処理装置1800は、モデルを参照したうえで取得した検査パラメータと対応する画像欠陥をユーザに提示し、ユーザによるフィルタの追加、削除、又は更新などの操作を受け付けてもよい。
なお、画像欠陥の生じる確率は、稼働時間によって変動する可能性がある。例えば、メンテナンスによって(内部部材を新品と交換することによって)、画像欠陥が生じる確率が低下することがある。そのような観点から、情報処理装置1800は、印刷装置のメンテナンスを実施することによって所望の成果物生産性が達成可能となる見通しが立つ場合には、メンテナンスの実行をユーザに提案してもよい。
[その他の実施形態]
これまでの実施形態では、機種に対応する検査パラメータは、インターネットを介して取得されるものとして説明を行ったが、印刷装置のリリース時点で初期値としての検査パラメータが情報処理装置内に提供されていてもよい。その場合、インターネットを介したパラメータの取得などによって検査パラメータが更新される場合に、情報処理装置内の検査パラメータが置き換えられる。
また、上述の実施形態では、印刷装置の製造業者がインターネットを介して各種パラメータの提供を行うものとして行ったが、これを行うのは印刷装置の製造業者に限定はされない。例えば、(印刷装置の製造業者から情報提供を受けた)情報処理装置の製造業者がパラメータの提供を行ってもよく、委託を受けた第三者が行ってもよい。情報処理装置は、パラメータの提供を行うユーザが管理するサーバにアクセスしてパラメータの取得を行うことができる。
また、上述の実施形態で行われたパラメータの検索及び取得処理は、定期的に行われてもよい。例えば、情報処理装置は、印刷装置の起動時に検査パラメータの取得を行ってもよく、所定の間隔で検査パラメータの取得を追加で行ってもよい。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。