JP2021178785A - がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法 - Google Patents

がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021178785A
JP2021178785A JP2020084260A JP2020084260A JP2021178785A JP 2021178785 A JP2021178785 A JP 2021178785A JP 2020084260 A JP2020084260 A JP 2020084260A JP 2020084260 A JP2020084260 A JP 2020084260A JP 2021178785 A JP2021178785 A JP 2021178785A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vitamin
hydrogen
aqueous solution
cancer cells
cancer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020084260A
Other languages
English (en)
Inventor
路子 宮川
Michiko Miyakawa
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hosei University
Original Assignee
Hosei University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hosei University filed Critical Hosei University
Priority to JP2020084260A priority Critical patent/JP2021178785A/ja
Publication of JP2021178785A publication Critical patent/JP2021178785A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】 身体への負担が少ないがん治療システムと、がんの治療に用いられる組み合わせ医薬、放射線障害の抑制のために用いられる組み合わせ医薬、ならびにがん細胞の増殖を抑制する方法を提供すること。【解決手段】 水素発生器と、該水素発生器に連結する水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、を少なくとも含む、がん治療システムを提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、がん治療システム、がんの治療に用いられる組み合わせ医薬およびがん細胞の増殖を抑制する方法に関する。
がんの治療として、外科的治療(手術)、放射線療法、化学療法、免疫療法(細胞療法やワクチン療法)などが行われている。放射線療法および抗がん剤を用いた化学療法による治療は広く一般的に行われている。放射線療法および化学療法は、がんに直接的に作用し、がん細胞を死滅または縮小させるが、正常細胞にも障害を与えるため、身体に対する負担が大きく、副作用も強いことが知られている。
特許文献1には、ビタミンCおよびその誘導体と、抗がん多糖類とを併用して投与するための注射組成物が開示されている。特許文献2には、空気、水素、窒素からなる群より選択される気体を曝気する事により生じた微細な気泡を含む機能水が開示されており、当該機能水が癌に関連した疾患に有用であるとされている。特許文献3には、腫瘍細胞に血漿溶解性ミネラルアスコルベートと、アルドン酸非毒性金属塩、デヒドロアスコルビン酸、トレオース、エリトレオース、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシコウジ酸並びにヒドロキシマルトールからなる群から選択される1つまたはビタミンC代謝物を含んでなる組成物を接触させる化学療法が開示されている。特許文献4には、水素とフコイダンを含むナノバブル・フコイダン水素水が開示され、当該水素水には、さらにビタミンCを含有していてもよく、抗酸化性や抗癌性があることが開示されている。
特開2005−194255号 特開2008−156320号 特表2003−508437号 特開2014−139225号
本発明は、身体への負担が少ないがん治療システムと、がんの治療に用いられる組み合わせ医薬、放射線障害の抑制のために用いられる組み合わせ医薬、ならびにがん細胞の増殖を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明の一の実施形態におけるがん治療システムは、水素発生器と、該水素発生器に連結する水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、を少なくとも含む。
本発明の二の実施形態におけるがん治療システムは、水素発生器と、該水素発生器に連結する水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、放射線照射器と、を少なくとも含む。
本発明の三の実施形態におけるがんの治療のための組み合わせ医薬は、ビタミンCと、
水素とを含む。
本発明の四の実施形態における放射線障害抑制のための組み合わせ医薬は、ビタミンCと、水素とを含む。
本発明の五の実施形態におけるがん細胞の増殖を抑制する方法は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加える工程を含む。
本発明の六の実施形態における、がん細胞の増殖を抑制する方法は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加え、該水性培地に放射線を照射する工程を含む。
本発明のがん治療システムは、がん細胞を直接損傷可能であるほか、放射線照射によるがん治療による副作用を低減し、患者の生活の質を向上させることができる。本発明のがん治療システムは簡易な構成を有し、医療従事者が比較的容易に使用することができる。本発明の組み合わせ医薬は、がん細胞を直接損傷可能で、放射線照射によるがん治療による副作用を低減できる。本発明の方法により、がん細胞の増殖を抑制することができる。
図1は、一の実施形態のがん治療システムの模式図である。 図2は、二の実施形態のがん治療システムの模式図である。 図3は、乳がん細胞のアポトーシスを検出した写真である(培養液のみ添加)。 図4は、乳がん細胞のアポトーシスを検出した写真である(ビタミンCのみを含む培養液を添加)。 図5は、乳がん細胞のアポトーシスを検出した写真である(水素のみを含む培養液を添加)。 図6は、乳がん細胞のアポトーシスを検出した写真である(ビタミンCと水素を含む培養液を添加)。
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の一の実施形態は、水素発生器と、該水素発生器に連結する水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、を少なくとも含む、がん治療システムである。
本実施形態において、がん治療システムとは、遺伝子の変異によって自律的で制御されない増殖を行うようになった細胞であって、周囲の組織に浸潤または転移を起こす悪性腫瘍による疾患を治療するための仕組みを指す。一の実施形態のがん治療システムは、水素発生器と、水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、ビタミンC水溶液導入器とから構成される。水素発生器とは、還元性の高い気体である水素を発生させる機器のことであり、水素を常時供給することができる機器を含む概念である。本明細書では、水素発生器として、いわゆる水素ボンベのほか、水素を溶解させた水素水を製造できる水素水製造機を含むものとする。水素発生器は、99%以上、好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.99%以上の水素濃度を有する気体水素を生成できるものを用いることが望ましい。水素発生器は、プロトン交換膜(PEM)水電解方式水素発生器、固体高分子電解質(SPE)水電解方式水素発生器のように、純水、蒸留水、脱イオン水を、必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分を添加した上で電気分解し、水素を発生させることができる。一の実施形態で用いる水素発生器は、発生させる水素ガス圧が、数十キロパスカル〜400キロパスカル程度、すなわち高圧ガス保安法の適用を受けない範囲のものであるか、あるいは、このような範囲の水素ガス圧に調整可能な調整器具(圧力弁等)を備えていることが望ましい。水素発生器には、水素導入器が連結されている。水素導入器とは、ヒトに水素を少なくとも曝露させるための機器のことである。ヒトに水素を導入させるに際し、鼻から吸引させるカニューラ、口から吸引させるマスク、水素水を血管から投与する点滴等のような、各種水素導入器を水素発生器に連結させることができる。
一の実施形態のがん治療システムは、ビタミンC水溶液貯蔵容器を備える。本実施形態で用いるビタミンCは、水溶性ビタミンの一種であり、アスコルビン酸のことを指す。本明細書にてビタミンCという場合、アスコルビン酸の誘導体や塩を含むものとする。ビタミンC水溶液とは、水溶性ビタミンであるビタミンCを水に所定の濃度で溶解させた水溶液のことである。ビタミンC水溶液貯蔵容器とは、ビタミンC水溶液を少なくとも一時的に、あるいは恒久的に保存することができる容器のことである。上記の通り、ビタミンCは水溶性であり、水に溶解して弱酸性を示す。このようなビタミンC水溶液を少なくとも一時的に貯蔵しておく容器として、プラスチックまたは金属容器を挙げることができる。本明細書において、ビタミンC水溶液貯蔵容器は、水とビタミンC(固体)とを各々別々に収容しておき、所定の時間ごとに水とビタミンC(固体)とを容器に投入してビタミンC水溶液を作ることができるビタミンC水溶液製造機を含む。ビタミンC水溶液貯蔵容器には、ビタミンC水溶液導入器が連結されている。ビタミンC水溶液導入器とは、ヒトにビタミンC水溶液を投与するための機器のことである。ヒトにビタミンC水溶液を導入するに際し、鼻や口から投与するカニューラ、血管から投与する点滴や注射等のような、ビタミンC水溶液導入器を用いることができ、これをビタミンC水溶液貯蔵容器に連結させる。ビタミンC水溶液導入器は、ビタミンC水溶液を一定の速度でヒトに導入することを可能とする流量速度調整器具(流量調整コック、点滴カウンタ等)を備えていることが望ましい。
一の実施形態のがん治療システムは、がんの治療を必要とする患者に水素とビタミンC水溶液とを同時または所定の時間間隔をあけて投与することにより、がんの治療効率を高めることができる。水素は還元性の気体であり、一方ビタミンCは強力な抗酸化作用を有する物質である。これらを併用して患者に投与することにより、がん細胞を傷害することが可能となると考えられる。一の実施形態のがん治療システムは、たとえば、マスク、カニューレ等の水素導入器を患者の口、鼻または鼻孔にあて、点滴等のビタミンC水溶液導入器を患者の血管に挿入することにより用いる。
本発明の二の実施形態は、水素発生器と、該水素発生器に連結する水素導入器と、ビタミンC水溶液貯蔵容器と、該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、放射線照射器と、を少なくとも含む、がん治療システムである。
本実施形態のがん治療システムは、一の実施形態で説明した、水素発生器、水素発生器に連結する水素導入器、ビタミンC水溶液貯蔵容器、ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器のほか、放射線照射器を含む。放射線照射器は、電子線、X線、α線、β線、γ線、陽子線、重粒子線、中性子線等の放射線を、ヒトの身体の内部または外部に照射可能な装置のことである。二の実施形態において、放射線照射器は、水素発生器、水素発生器に連結する水素導入器、ビタミンC水溶液貯蔵容器、およびビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器から構成される一の実施形態のがん治療システムと同じ部屋や筐体内等の同じ空間にあってもよいが、通常は、これらの機器とは別の空間に設置することが望ましい。放射線照射器は、特にがん等の疾患の治療を目的として患者の身体の内部または外部に放射線を照射して、がん細胞を死滅または数を低減させる。一方、がん患者に放射線を照射すると、身体内の水と放射線が反応して生成した活性酸素(ヒドロキシラジカル)により患者の身体への副作用を引き起こす場合がある。放射線照射器を用いた患者への放射線照射により起こりうる副作用を低減するために、還元性気体である水素と、抗酸化物質であるビタミンCを用いることができる。そこで二の実施形態のがん治療システムは、たとえば、まず放射線照射器を用いて患者に放射線を照射し、次いで当該患者の口や鼻等にマスク等の水素導入器をあて、患者の血管に点滴等のビタミンC水溶液導入器を挿入し、患者に水素とビタミンC水溶液とを投与するように用いることができる。二の実施形態のがん治療システムは、まず患者の口や鼻等にマスク等の水素導入器をあて、患者の血管に点滴等のビタミンC水溶液導入器を挿入し、患者に水素とビタミンC水溶液とを投入し、次いで放射線照射器を用いて患者に放射線を照射するように用いることもできる。さらに二の実施形態のがん治療システムは、放射線照射器を用いた患者への放射線照射と、水素導入器およびビタミンC水溶液導入器とを用いた患者への水素ならびにビタミンC水溶液の導入とを、同時に行うように用いることも可能である。一の実施形態で説明したとおり、水素とビタミンC水溶液には、それ自体にがん細胞を傷害する作用があるが、放射線照射により患者の身体に生じた活性酸素を減じて患者の副作用を低減させる。すなわち、二の実施形態のがん治療システムを使用して、水素とビタミンC水溶液とを患者に供給することで、放射線照射によるがんの治療効果を高めることが可能となる。これは、がん細胞の死滅または低減のために必要な放射線量よりも少ない量の放射線を照射するだけで、企図したがん細胞の死滅(あるいは数の低減)が図れる可能性があるということであり、必要以上に放射線を照射することなくがん患者を治療できる点で画期的である。一方、以下の実施形態でも説明するが、二の実施形態のがん治療システムで用いる水素とビタミンCには、正常細胞を保護する作用がある。このため、二の実施形態のがん治療システムを使用することにより、従来、副作用の発生を防ぐ観点からは照射が困難とされていた量の放射線を患者に照射することができるようになる。
本発明の三の実施形態は、ビタミンCと水素とを含む、がん治療のための組み合わせ医薬である。本実施形態の組み合わせ医薬において、ビタミンCは錠剤、カプセル等の固体、またはビタミンC水溶液のいずれの形態でも良い。水素は水素ガス、または水素を溶解させた水溶液であっても良い。これらを任意に組みあわせて、組み合わせ医薬として用いることができる。実施形態の組み合わせ医薬は、混合物または組成物の形態を含むものとする。実施形態において、ビタミンCの血中濃度を上げるためには、ビタミンC水溶液を点滴することによる静脈投与が好ましく、一方、高濃度の水素を摂取するためには、水素ガスを吸引することが好ましいため、両者の併用が非常に好ましい。ビタミンCと水素とを組み合わせてがん患者に投与すると、ビタミンCと水素の抗酸化作用により、患者の身体内のがん細胞の増殖が抑制され、正常細胞へのダメージを低減させることができる。したがって本実施形態の組み合わせ医薬をがん治療のために用いることができる。三の実施形態においては、たとえば、点滴時のビタミンC水溶液の濃度は0.1mM以上とすることができるが、100mM〜560mM程度とすることが好ましい。ビタミンC水溶液の濃度が高すぎると、血管障害作用を示し、血管痛の症状が現れるため、ビタミンC水溶液の濃度は実質的に560mM程度までとすることが非常に望ましい。一方、ビタミンCの固体または水溶液を経口投与する場合は、0.1mM以上で任意の濃度とすることができる。一方、水素の水への溶解度はさほど高いものではないが、低温かつ高圧下では、比較的高濃度の水素を水に溶解させることができる。三の実施形態において、がん治療のための組み合わせ医薬として用いるためには、水素は、濃度0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上水に溶解させた水素水溶液を用いることが好ましい。水素ガスを吸引する場合は、流量として10mL/分以上とすることが好ましく、100mL/分以上とすることが非常に好ましい。
本発明の四の実施形態は、ビタミンCと水素とを含む、放射線障害抑制のための組み合わせ医薬である。本実施形態の組み合わせ医薬において、ビタミンCは錠剤、カプセル等の固体、またはビタミンC水溶液のいずれの形態でも良い。水素は水素ガス、または水素を溶解させた水溶液であっても良い。これらを任意に組みあわせて、組み合わせ医薬として用いることができる。実施形態の組み合わせ医薬は、混合物または組成物の形態を含むものとする。実施形態において、ビタミンCの血中濃度を上げるためには、ビタミンC水溶液を点滴することによる静脈投与が好ましく、一方、高濃度の水素を摂取するためには、水素ガスを吸引することが好ましいため、両者の併用が非常に好ましい。ビタミンCと水素とを組み合わせて放射線照射によるがん治療を行った患者に投与すると、ビタミンCと水素の抗酸化作用により、放射線照射により患者の身体内に生成した活性酸素の数を低減させることができる。これにより放射線照射による副作用である放射線障害を低減することができる。したがって本実施形態の組み合わせ医薬を放射線障害の抑制のために用いることができる。四の実施形態においては、たとえば、点滴時のビタミンC水溶液の濃度は0.1mM以上とすることができるが、100mM〜560mM程度とすることが好ましい。ビタミンC水溶液の濃度が高すぎると、血管障害作用を示し、血管痛の症状が現れるため、ビタミンC水溶液の濃度は実質的に560mM程度までとすることが非常に望ましい。一方、ビタミンCの固体または水溶液を経口投与する場合は、0.1mM以上で任意の濃度とすることができる。一方、水素の水への溶解度はさほど高いものではないが、低温かつ高圧下では、比較的高濃度の水素を水に溶解させることができる。四の実施形態において、がん治療のための組み合わせ医薬として用いるためには、水素は、濃度0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上水に溶解させた水素水溶液を用いることが好ましい。水素ガスを吸引する場合は、流量として10mL/分以上とすることが好ましく、100mL/分以上とすることが非常に好ましい。
本発明の五の実施形態は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加える工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法である。本実施形態で水性培地とは、微生物や細胞が成長しやすいように人工的に整えられた環境のうち、特に水を基体としたものを指す。本明細書において水性培地は、水を基体とした液体培地を指す。がん細胞を含む水性培地とは、がん細胞が生育した、水を基体とした培地のことである。五の実施形態は、このような水性培地に、水素と、ビタミンCとを加える工程を含む。水素は、水素気体をバブリングするか、または水性培地に水素気体を加圧下溶解させることができる。一方水性培地に加えるビタミンCは、すでにビタミンCが溶解してある液体を生理食塩水や注射水で希釈して用いてもよく、固体のビタミンCを水に溶解させたビタミンC水溶液であってもよい。がん細胞に、水素とビタミンCとを接触させることができれば、水素とビタミンCはいかなる形態で用いてもよい。がん細胞を含む水性培地に、たとえば、水素気体をバブリングし、かつビタミンC水溶液を添加する等して、がん細胞に水素とビタミンCとを接触させることができる。還元性を有する気体である水素と、抗酸化性を有するビタミンCとが、がん細胞に接触すると、がん細胞の増殖が抑制される。ここで、がん細胞の増殖が抑制されるとは、水素とビタミンCとを接触させてがん細胞を培養した場合と、水素とビタミンCとをがん細胞に接触させずにがん細胞を培養した場合を比較したときに、前者のほうががん細胞の増殖速度が遅くなることを意味する。
本発明の六の実施形態は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加え、該水性培地に放射線を照射する工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法である。本実施形態におけるがん細胞を含む水性培地とは、五の実施形態で説明した水性培地である。六の実施形態は、このような水性培地に、水素と、ビタミンCとを加え、さらに放射線を照射する工程を含む。水素は、水性培地に水素気体をバブリングするか、または水性培地に水素気体を加圧下溶解させることができる。一方水性培地に加えるビタミンCは、すでにビタミンCが溶解してある液体を生理食塩水や注射水で希釈して用いてもよく、固体のビタミンCを水に溶解させたビタミンC水溶液であってもよい。がん細胞に水素とビタミンCとを接触させることができれば、水素とビタミンCはいかなる形態で用いてもよい。がん細胞を含む水性培地に、たとえば、水素気体をバブリングし、かつビタミンC水溶液を添加する等して、がん細胞に水素とビタミンCとを接触させることができる。この水性培地にさらに放射線を照射する。ここで放射線の照射は、電子線、X線、α線、β線、γ線、陽子線、重粒子線、中性子線等の放射線を、ヒトの身体の内部または外部に照射可能な装置である放射線照射器を用いて行うことが好ましい。水素とビタミンCとを水性培地に加える操作と、放射線を水性培地に照射する操作とは、同時に行っても良いし、所定の時間間隔をあけて行ってもよい。還元性を有する気体である水素と、抗酸化性を有するビタミンCとが、がん細胞に接触すると、がん細胞の増殖が抑制される。ここで、がん細胞の増殖が抑制されるとは、水素とビタミンCとを接触させ、放射線を照射してがん細胞を培養した場合と、水素とビタミンCとをがん細胞に接触させず、放射線を照射してがん細胞を培養した場合とを比較したときに、前者のほうががん細胞の増殖速度がより抑制されることを意味する。
続いて、一および二の各実施形態のシステムについて、図面を用いてさらに詳細に説明する。
図1は、一の実施形態のがん治療システムの模式図である。図1中、1はがん治療システム;11は水素発生器;12は水素導入器;13はビタミンC水溶液貯蔵容器;14はビタミンC水溶液導入器である。がん治療システム1は、水素発生器11、水素導入器12、ビタミンC水溶液貯蔵容器13、ビタミンC水溶液導入器14から構成されている。図1中、水素発生器11、水素導入器12、ビタミンC水溶液貯蔵容器13、およびビタミンC水溶液導入器14は、一つの筐体中に収められているように描かれているが、これらの機器は必ずしもひとまとまりになっていなくてもよい。ただし、水素発生器11と水素導入器12とは互いに連結しており、ビタミンC水溶液貯蔵容器13とビタミンC水溶液導入器14とは互いに連結している。図1に向かって、水素導入器12から右に伸びている矢印は、水素導入器12を患者に設置することを意味し、ビタミンC水溶液導入器14から右に伸びている矢印は、ビタミンC水溶液導入器14を患者に設置することを意味する。これらの機器は、同時にあるいは所定の時間をおいて併用できる状態に配置されていれば足りる。図1のがん治療システムの使用に際して、たとえば、以下のような順でシステムを作動させる:水素導入器12を患者に設置して、水素発生器11を作動させ、患者への水素の導入を開始する。次いでビタミンC水溶液貯蔵容器13内にビタミンC水溶液が所定の量あることを確かめ、ビタミンC水溶液導入器14を患者に設置し、患者にビタミンCの導入を開始する。この状態で所定の時間がん治療システム1の作動を続けて、患者に水素とビタミンCとを投与する。あるいは、まずビタミンC水溶液貯蔵容器13内にビタミンC水溶液が所定の量あることを確かめ、ビタミンC水溶液導入器14を患者に設置し、所定の時間患者にビタミンC水溶液を導入し、次に水素導入器12を患者に設置して、水素発生器11を作動させ、所定の時間患者に水素を導入することもできる。患者へのビタミンCの導入と水素の導入の順序は任意であり、同時に、又は、所定の時間間隔をあけて水素とビタミンCとを別々に患者に投与することもできる。このように、所定の時間がん治療システム1を作動させて、患者に水素とビタミンCとを投与することができる。このように一の実施形態のがん治療システムを使用して、患者にビタミンC水溶液を投与する工程と、水素を投与する工程と、を有するがん治療方法を適用し、患者のがん細胞の増殖を効果的に抑制することができる。
図2は、二の実施形態のがん治療システムの模式図である。図2中、2はがん治療システム;21は水素発生器;22は水素導入器;23はビタミンC水溶液貯蔵容器;24はビタミンC水溶液導入器;25は放射線照射器である。がん治療システム2は、水素発生器21、水素導入器22、ビタミンC水溶液貯蔵容器23、ビタミンC水溶液導入器24および放射線照射器25から構成されている。図2中、水素発生器21、水素導入器22、ビタミンC水溶液貯蔵容器23、およびビタミンC水溶液導入器24は、一つの筐体中に収められているように描かれているが、これらの機器は必ずしもひとまとまりになっていなくてもよい。また図2中、放射線照射器25は他の機器とは分離しているように描かれているが、これらの機器は、同時にあるいは所定の時間をおいて併用できる状態に配置されていれば足りる。ただし、水素発生器21と水素導入器22とは互いに連結しており、ビタミンC水溶液貯蔵容器23とビタミンC水溶液導入器24とは互いに連結している。図2に向かって、水素導入器22から右に伸びている矢印は、水素導入器22を患者に設置することを意味し、ビタミンC水溶液導入器24から右に伸びている矢印は、ビタミンC水溶液導入器24を患者に設置することを意味する。また図2に向かって放射線照射器25から右に伸びる矢印は、放射線照射器25から患者に対し放射線を照射することを意味する。図2のがん治療システムの使用に際して、たとえば、以下のような順でシステムを作動させる:放射線照射器25を作動させて、患者に放射線を照射する。次に水素導入器22を患者に設置して、水素発生器21を作動させ、患者への水素の導入を開始する。次いでビタミンC水溶液貯蔵容器23内にビタミンC水溶液が所定の量あることを確かめ、ビタミンC水溶液導入器24を患者に設置し、患者にビタミンCの導入を開始する。この状態で所定の時間がん治療システム2の作動を続けて、患者に水素とビタミンCとを投与する。なお、ビタミンC水溶液と水素とを患者に投与する際には、放射線照射器25を作動させていても作動させていなくてもよい。患者にビタミンC水溶液と水素を投与しながら一定時間放射線照射器25を作動させ、放射線照射器25の運転終了後も継続してビタミンC水溶液と水素の投与を継続することができる。また、まず放射線照射器25を作動させて、患者に放射線を照射し、次いで放射線照射器25の運転を停止し、続いてビタミンC水溶液と水素を患者に投与し、さらに放射線照射器25を再作動させて患者に放射線を照射するように使用することもできる。患者へのビタミンCの導入と水素の導入ならびに放射線照射の順序は任意であり、同時に、又は、所定の時間間隔をあけて水素とビタミンCとを別々に患者に投与することもできるし、放射線照射を複数回に分けて行うこともできる。このように二の実施形態のがん治療システムを使用して、患者にビタミンC水溶液を投与する工程と、水素を投与する工程と、放射線を照射する工程と、を有するがん治療方法を適用し、放射線照射により患者の体内に生成しうる活性酸素の量を低減しつつ、患者のがん細胞の増殖を抑制することができる。
二の実施形態のがん治療システムを使用して、がん患者に対しビタミンCと水素の併用療法を行うと、がん患者において、放射線障害(特に皮膚・粘膜障害)の抑制が認められる。皮膚の発赤の認められるがん患者において、二の実施形態のがん治療システムを用いたビタミンCと水素の併用療法後に、引き起こされる皮膚の炎症(発赤)が軽度になり、疼痛が減少する。一方口腔および頸部に放射線照射を行ったがん患者について、二の実施形態のがん治療システムを用いてビタミンCと水素の併用療法を行うと、治療後の患者に発生しうることが予測されていた口内炎が非常に軽く済み、食事への影響もほとんど認めない。
続いて、三および四の各実施形態の組み合わせ医薬について、その作用機序をさらに詳細に説明する。
三の実施形態の組み合わせ医薬で使用するビタミンCは、抗酸化性のほか、がん細胞を直接殺す作用を有する物質であることが報告されている。ビタミンCの血液濃度が充分に上昇すると、血管外に輸送され大量の過酸化水素を生成する。このとき正常細胞(すなわち健康な細胞)は、過酸化水素を中和する酵素(カタラーゼ等)を持っており、過酸化水素の影響を受けない、しかしがん細胞にはこのような酵素がない。そのため、ビタミンCを患者に投与することで、がん細胞の増殖を抑制することが可能となると考えられる。
一方、三の実施形態の組み合わせ医薬で使用する水素は、還元性気体であり、抗酸化性を有するほか、細胞が受けた酸化ストレスに対する保護の効果を有する物質であることがわかってきている。水素は、分子サイズが小さく、生体膜を急速に通過してサイトゾルに拡散することができる物質である。水素は水と脂質の両方に可溶であることから、正常細胞の細胞核やミトコンドリアにも容易に到達し、核DNAとミトコンドリアを保護することができる。また水素には、がん細胞に障害を与える作用があることも報告されている。
三の実施形態の組み合わせ医薬は、上記のようなビタミンCと水素とを併用することにより、がん細胞の増殖を抑制し、正常細胞を保護することでがん治療のために用いることができる。この目的で組み合わせ医薬を使用する場合、特にビタミンC水溶液を用いることができ、たとえば、点滴時のビタミンC水溶液の濃度は0.1mM以上、特に100mM〜560mM程度とすることが好ましい。ビタミンC水溶液の濃度が高すぎると、血管障害作用を示し、点滴中に血管痛等の症状が現れることが指摘されている。そこで、組み合わせ医薬としてビタミンC水溶液を用いる場合にその濃度は、実質的に560mM程度までとすることが非常に望ましい。なお、三の実施形態のビタミンCは、患者に対し、固体または水溶液の形態で経口的に投与することも可能であるが、点滴により静脈内に直接投与することが望ましい。一方、三の実施形態の組み合わせ医薬をがん治療のために用いるためには、水素は、濃度0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上水に溶解させた水素水溶液を用いることが好ましい。水素ガスを吸引する場合は、流量として10mL/分以上とすることが好ましく、100mL/分以上とすることが非常に好ましい。このように三の実施形態の組み合わせ医薬を使用して、患者にビタミンC水溶液を投与する工程と、水素を投与する工程と、を有するがん治療方法を適用し、患者のがん細胞の増殖を効果的に抑制することができる。
四の実施形態の組み合わせ医薬で使用するビタミンCは、上に説明したとおり、抗酸化性と、がん細胞を直接殺す作用を有する物質である。このほかビタミンCには、抗炎症作用があることがわかってきている。がん患者に対する放射線照射は、様々な副作用のほか、特に照射部分の炎症を引き起こし、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させうることが知られている。ビタミンCはがん患者の炎症を軽減し、放射線照射を受けたがん患者の皮膚・粘膜障害を軽減することができる。また、ビタミンC(アスコルビン酸)は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9というアポトーシス(細胞死)反応で重要な調節因子を活性化し、腫瘍細胞株の放射線誘発アポトーシスを増加させることがわかっている。
一方、四の実施形態の組み合わせ医薬で使用する水素は、上に説明したとおり、還元性であり、抗酸化性を有し、細胞保護作用を有する気体である。このほか、水素には、放射線照射により生成したヒドロキシラジカルを中和する放射線保護作用、抗炎症作用、高アポトーシス作用、抗アレルギー作用等、様々な生物学的ならびに医学的作用があることが知られており、血管を拡張する等の作用も報告されている。
四の実施形態の組み合わせ医薬は、上記のようなビタミンCと水素とを併用することにより、放射線照射により発生しうる放射線障害の抑制のために用いることができる。ビタミンCが血液中に充分に濃縮されると、血管外に輸送され大量の過酸化水素を生成するが、この際に、過剰な過酸化水素が生成した場合には、ヒドロキシラジカルが発生し、逆に正常細胞を損傷する可能性がある。しかしビタミンCと水素とを併用することで、水素がヒドロキシラジカルを選択的に中和し、このような正常細胞の損傷を防ぐことができる。一方、水素は、血管を拡張してビタミンCの体内への取り込み、毛細血管が栄養している部位への到達を促進する。放射線障害抑制のために四の実施形態の組み合わせ医薬を使用する場合、特にビタミンC水溶液を用いることができ、たとえば、点滴時のビタミンC水溶液の濃度は0.1mM以上、特に100mM〜560mM程度とすることが好ましい。ビタミンC水溶液の濃度が高すぎると、血管障害作用を示し、点滴中に血管痛等の症状が現れることが指摘されている。そこで、組み合わせ医薬としてビタミンC水溶液を用いる場合にその濃度は、実質的に560mM程度までとすることが非常に望ましい。なお、四の実施形態のビタミンCは、患者に対し、固体または水溶液の形態で経口的に投与することも可能であるが、点滴により静脈内に直接投与することが望ましい。一方、四の実施形態の組み合わせ医薬をがん治療のために用いるためには、水素は、濃度0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上水に溶解させた水素水溶液を用いることが好ましい。水素ガスを吸引する場合は、流量として10mL/分以上とすることが好ましく、100mL/分以上とすることが非常に好ましい。このように四の実施形態の組み合わせ医薬を使用して、患者にビタミンC水溶液を投与する工程と、水素を投与する工程と、放射線を照射する工程と、を有するがん治療方法を適用し、放射線照射により患者の体内に生成しうる活性酸素の数を低減しつつ、患者のがん細胞の増殖を抑制することができる。
次に、五および六の各実施形態の方法について、具体的な方法を以下に詳細に説明する。
五の実施形態の方法は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加える工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法である。五の実施形態は、インビトロにて、がん細胞の増殖を抑制する方法にかかる。がん細胞とは、生物の組織に浸潤または転移を起こす腫瘍の元となる、いわゆる「正常でない」細胞であり、体や周囲の状況とは無関係に増殖を繰り返す。なお、正常細胞とは、体や周囲の状況に応じて増殖したり、増殖を停止したりする細胞である。五の実施形態の方法は、まず微生物や細胞を人工的に生育させることができる水性培地を、試験管、シャーレ、ウェル等の容器に形成したものを用意する。続いて、当該水性培地にがん細胞を生育させる。ここに、水素とビタミンCとを加える。水素の添加は、水性培地に水素気体をバブリングさせるか、水性培地に水素を加圧下で溶解させる等の方法により行えばよい。水素の添加は、水素を99.9%以上含む気体を水性培地中にバブリングすることによって行うことが好ましい。水素の添加は、上記の一あるいは二の実施形態で説明した水素発生器と水素導入器とを用いて添加することもできる。ビタミンCの添加は、マイクロピペットを用いたビタミンC水溶液滴下等の手段を用いて行えばよい。ビタミンCの添加は、上記の一または二の実施形態で説明したビタミンC水溶液貯蔵器とビタミンC水溶液導入器とを用いて添加することもできる。水素の添加とビタミンCの添加は、水素の添加を先に行い、続いてビタミンCを添加することが好ましい。上記の三の実施形態で説明したとおり、還元性、抗酸化性、抗がん作用および細胞が受けた酸化ストレスに対する保護作用を有する水素と、抗酸化性および細胞損傷作用を有するビタミンCとを併用することにより、水性培地に生育していたがん細胞の増殖を抑制することができる。なお、五の実施形態の方法は、上記の一の実施形態のがん治療システムを転用して、行うこともできる。一の実施形態のがん治療システムを作動させる際に、水素導入器ならびにビタミンC水溶液導入器を各々水性培地に設置して、水素とビタミンCとを水性培地に加えることにより、水性培地内のがん細胞の増殖を抑制することができる。
六の実施形態の方法は、がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加え、該水性培地に放射線を照射する工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法である。六の実施形態は、インビトロにて、がん細胞の増殖を抑制する方法にかかる。五の実施形態で説明したとおり、がん細胞とは、生物の組織に浸潤または転移を起こす腫瘍の元となる細胞であり、正常ではない細胞のことである。また正常細胞とは、体や周囲の状況に応じて増殖したり、増殖を停止したりする細胞である。六の実施形態の方法は、まず微生物や細胞を人工的に生育させることができる水性培地を、試験管、シャーレ、ウェル等の容器に形成したものを用意する。続いて、当該水性培地にがん細胞と正常細胞とをそれぞれ別々に生育させる。ここに、水素とビタミンCとを加える。水素の添加は、水性培地に水素気体をバブリングさせるか、水性培地に水素を加圧下で溶解させる等の方法により行えばよい。水素の添加は、水素を99.9%以上含む気体を水性培地中にバブリングすることによって行うことが好ましい。水素の添加は、上記の一あるいは二の実施形態で説明した水素発生器と水素導入器とを用いて添加することもできる。ビタミンCの添加は、ビタミンC水溶液の滴下によって行う。ビタミンCの添加は、上記の一または二の実施形態で説明したビタミンC水溶液貯蔵器とビタミンC水溶液導入器とを用いて添加することもできる。水素の添加とビタミンCの添加は、水素の添加を先に行い、続いてビタミンCを添加することが好ましい。一方、放射線の照射は、上記の二の実施形態で説明した放射線照射器を用いて行ってもよい。水素の添加とビタミンCの添加は放射線照射の前に行ってもよく、後に行ってもよく、前後に行っても良い。水素とビタミンCの添加を照射前から引き続いて行い、放射線の照射と同時に行うこともできる。上記の四の実施形態で説明したとおり、還元性、抗酸化性、抗がん作用、細胞が受けた酸化ストレスに対する保護作用、放射線保護作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用および抗アレルギー作用を有する水素と、抗酸化性、細胞損傷作用および抗炎症作用を有するビタミンCとを併用することにより、水性培地のがん細胞の増殖を抑制し、正常細胞の放射線による障害を防ぐことができる。
(実験例1)水素とビタミンCの併用実験(インビトロ)
(1−1)水性培地
以下の成分を含む水性培地を用意した:
トリプルネガティブ乳がん細胞(MDA-MB-231)および脳腫瘍細胞(GL261):
10%ウシ胎児血清(Invitrogen,Cat.25149-079)と抗生物質−抗真菌剤(Gibco,Cat.15240062)を添加したダルベッコの改良イーグル培地(Gibco,Cat.41965);
正常細胞(HUVEC):Growth Medium 2 SupplementMix(PromoCell,Cat.C-39216)を添加した内皮細胞増殖培地2(PromoCell,Cat.C-22011)
(1−2)がん細胞および正常細胞の培養
がん細胞として、トリプルネガティブ乳がん細胞(MDA−MB−231)および脳腫瘍細胞(GL261)を用い、正常細胞として、ヒト臍静脈内皮細胞を用いた。各細胞を上記(1−1)で用意した水性培地にて別々に培養した。
(1−3)各細胞への水素および/またはビタミンCの添加
1ppmの濃度で水素を溶解した培養液に、0.2mMまたは1mMの濃度でビタミンCを溶解させたものを用意した。このようにして得た、水素とビタミンCとを含む培養液を、がん細胞または正常細胞を培養した各水性培地に2ミリリットルずつ添加し、各細胞の様子を顕微鏡下で観察した。
上記とは別に、1ppmの水素を溶解した培養液、0.2mMの濃度でビタミンCを溶解した培養液および1mMの濃度でビタミンCを溶解した培養液をそれぞれ用意した。これらの培養液を、がん細胞または正常細胞を培養した各水性培地を取り除いた後に、合計2ミリリットルずつ添加し、各細胞の様子を顕微鏡下で観察した。
(実験例2)細胞への放射線照射と、水素とビタミンCの併用療法
(2−1)水性培地
上記の実験例1(1−1)で用意したのと同じ水性培地を用意した。
(2−2)がん細胞および正常細胞の培養
上記の実験例2(1−2)と同じがん細胞(2種)と、正常細胞を用い、各細胞を上記(2−1)で用意した水性培地にて別々に培養した。
(2−3)各細胞への放射線の照射と、水素および/またはビタミンCの添加
上記の実験1(1−3)と同様に、水素濃度1ppm、ビタミンC濃度0.2mMの培養液;水素濃度1ppm、ビタミンC濃度1mMの培養液;水素濃度1ppmの培養液;ビタミンC濃度0.2mMの培養液;およびビタミンC濃度1mMの培養液を用意した。上記(2−2)で用意した各細胞に放射線(X線、線量:4Gy、使用した機器:Xstrahl X-Ray Irradiator CIX2[Xstrahl Inc])を照射した。放射線の照射前/照射後/照射の前および後に、各細胞の様子を顕微鏡で観察した。
Figure 2021178785
表1の見方を説明する。たとえば、表1中「実施例1−1」のカラムは、水性培地中の培養液を除去後、正常細胞に対し、順次、水素濃度1ppm、ビタミンC濃度0.2mMの培養液を添加した実験例を表す。当該カラムの上から、放射線を照射せずに培養液を添加/放射線を照射する前に培養液を添加/放射線を照射した後に培養液を添加/放射線を照射する前と後に培養液を添加した各場合について、24時間後の正常細胞の生存率を数値化した。なお、当該カラムの数値は、比較例1(水素とビタミンCとを含まない培養液を添加した実験例)の各生存率を1として標準化した値である。他のカラム(たとえば、「参考例1−1」のカラム等)についても同様である。
Figure 2021178785
表2の見方も上記の表1の見方と同じである。表2中「実施例2−1」のカラムは、水性培地中の培養液を除去後、乳がん細胞に対し、順次、水素濃度1ppm、ビタミンC濃度0.2mMの培養液を添加した実験例を表す。当該カラムの上から、放射線を照射せずに培養液を添加/放射線を照射する前に培養液を添加/放射線を照射した後に培養液を添加/放射線を照射する前と後に培養液を添加した各場合について、24時間後の乳がん細胞の生存率を数値化した。なお、当該カラムの数値は、比較例2(水素とビタミンCとを含まない培養液を添加した実験例)の各生存率を1として標準化した値である。他のカラム(たとえば、「参考例2−1」のカラム等)についても同様である。
Figure 2021178785
表3の見方も上記の表1の見方と同じである。表3中「実施例3−1」のカラムは、水性培地中の培養液を除去後、脳腫瘍細胞に対し、順次、水素濃度1ppm、ビタミンC濃度0.2mMの培養液を添加した実験例を表す。当該カラムの上から、放射線を照射せずに培養液を添加/放射線を照射する前に培養液を添加/放射線を照射した後に培養液を添加/放射線を照射する前と後に培養液を添加した各場合について、24時間後の脳腫瘍細胞の生存率を数値化した。なお、当該カラムの数値は、比較例3(水素とビタミンCとを含まない培養液を添加した実験例)の各生存率を1として標準化した値である。他のカラム(たとえば、「参考例3−1」のカラム等)についても同様である。
表1中、実施例1−1および実施例1−2は、水性培地中の培養液を除去後、順次、水素とビタミンCとを両方含む培養液を正常細胞に添加した実験例である。比較例1(対照)と比較して、正常細胞の生存率が高い。なお、参考例1−1、参考例1−2および参考例1−3は、ビタミンCのみ、あるいは水素のみを含む培養液を正常細胞に添加した実験例である。これらの実験例についても、比較例1(対照)と比較すると、正常細胞の生存率が高かった。本発明の実施例と、参考例とを検討すると、ビタミンCは正常細胞の障害を抑える効果が高いことがわかる。また、放射線の照射の前ならびに後に水素とビタミンCとを両方含む培養液を添加すると、対照と比較して正常細胞の障害を抑え、生存率は1.6倍以上となることがわかった。
表2中、実施例2−1および実施例2−2は、水性培地中の培養液を除去後、順次、水素とビタミンCとを両方含む培養液を乳がん細胞に添加した実験例である。比較例2(対照)と比較して、乳がん細胞の生存率が低い。なお、参考例2−1、参考例2−2および参考例2−3は、ビタミンCのみ、あるいは水素のみを含む培養液を正常細胞に添加した実験例である。これらの実験例についても、比較例2(対照)と比較すると、乳がん細胞の生存率が低かった。放射線の照射の前および/または後に、水素とビタミンCとを両方含む培養液を添加すると、特に効果的に乳がん細胞の増殖を抑制できた。
なお、乳がん細胞を用いた実験においては、アポトーシス検出キット(カスパーゼアッセイキットFAM-FLICARCaspase Assays)を用い、どの程度細胞死(アポトーシス)が起こっているか確認した。乳がん細胞を含む水性培地に放射線を照射し、放射線照射の前および後に水素とビタミンCとを含まない培養液を各々添加した実験例(比較例2の最下欄)について、アポトーシスアッセイを行ったのが図3である。図3中、左の写真は、生存している細胞および死亡している細胞を含む全ての細胞を着色(核染色用色素、セルステインヘキスト33342溶液使用)したものであり、右の写真は、死亡している細胞のみを着色したものである。図3の左右の写真を比較するとわかるとおり、ビタミンC、水素を加えていな場合には、乳がん細胞のアポトーシスはほとんど認められなかった。一方、乳がん細胞を含む水性培地に放射線を照射し、放射線照射の前および後にビタミンCのみを含む培養液を乳がん細胞に各々添加した実験例(参考例2−2の最下欄)について、アポトーシスアッセイを行ったのが図4である。図4中、左の写真は、生存している細胞および死亡している細胞を含む全ての細胞を着色(核染色用色素、セルステインヘキスト33342溶液使用)したものであり、右の写真は、死亡している細胞のみを着色したものである。図4の左右の写真を比較するとわかるとおり、乳がん細胞のアポトーシスがわずかに認められた。乳がん細胞を含む水性培地に放射線を照射し、放射線照射の前および後に水素のみを含む培養液を乳がん細胞に各々添加した実験例(参考例2−3の最下欄)について、アポトーシスアッセイを行ったのが図5である。図5中、左の写真は、生存している細胞および死亡している細胞を含む全ての細胞を着色(核染色用色素、セルステインヘキスト33342溶液使用)したものであり、右の写真は、死亡している細胞のみを着色したものである。図5の左右の写真を比較するとわかるとおり、乳がん細胞のアポトーシスが全体的に認められた。乳がん細胞を含む水性培地に放射線を照射し、放射線照射の前および後に水素とビタミンCとを両方含む培養液を乳がん細胞に各々添加した実験例(実施例2−2の最下欄)について、アポトーシスアッセイを行ったのが図6である。図6中、左の写真は、生存している細胞および死亡している細胞を含む全ての細胞を着色(核染色用色素、セルステインヘキスト33342溶液使用)したものであり、右の写真は、死亡している細胞のみを着色したものである。図6の左右の写真を比較するとわかるとおり、乳がん細胞のアポトーシスが多数認められた。
表3中、実施例3−1および実施例3−2は、水性培地中の培養液を除去後、順次、水素とビタミンCとを両方含む培養液を脳腫瘍細胞に添加した実験例である。比較例3(対照)と比較して、脳腫瘍細胞の生存率が低い。なお、参考例3−1、参考例3−2および参考例3−3は、ビタミンCのみ、あるいは水素のみを含む培養液を正常細胞に添加した実験例である。これらの実験例についても、比較例3(対照)と比較すると、脳腫瘍細胞の生存率が低かった。放射線の照射の前および/または後に、水素とビタミンCとを両方含む培養液を添加すると、特に効果的に脳腫瘍細胞の増殖を抑制できた。
上記の実験例の結果より、水素とビタミンCとを併用することで、がん細胞の増殖を抑制し、放射線障害により起こりうる副作用を低減することができることがわかった。上記のモデル実験は、乳がん細胞、脳腫瘍細胞および正常細胞を、別々に含む水性培地に対して水素とビタミンCとを添加して行ったが、乳がん細胞と正常細胞、あるいは、脳腫瘍細胞と正常細胞を混合した水性培地を用意し、これらに対して上記と同様の実験を行えば、がん細胞の増殖は抑制され、放射線照射により起こりうる正常細胞に対する放射線障害の副作用は低減できるものと推測される。水素とビタミンCには、それぞれ、がんの治療に有効であるとの報告もあるものの、これらを併用することの利点は報告されていない。水素はビタミンCの血中への取り込みを促進し、高濃度ビタミンCに見られると考えられている酸化促進作用を防ぐことができるので、これらを併用することに技術的な意義があると云える。水素もビタミンCもヒトの身体に安全であり、かつ取り扱いに困難な点がなく、がん患者の治療に容易に使用可能である。本発明のがん治療システムや組み合わせ医薬を利用することにより、がん患者のQOLを損なうことなく、がんの治療を安全に遂行することが可能となる。

Claims (6)

  1. 水素発生器と、
    該水素発生器に連結する水素導入器と
    ビタミンC水溶液貯蔵容器と、
    該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、
    を少なくとも含む、がん治療システム。
  2. 水素発生器と、
    該水素発生器に連結する水素導入器と
    ビタミンC水溶液貯蔵容器と、
    該ビタミンC水溶液貯蔵容器に連結するビタミンC水溶液導入器と、
    放射線照射器と、
    を少なくとも含む、がん治療システム。
  3. ビタミンCと、水素とを含む、がん治療のための組み合わせ医薬。
  4. ビタミンCと、水素とを含む、放射線障害抑制のための組み合わせ医薬。
  5. がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加える工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法。
  6. がん細胞を含む水性培地に、水素と、ビタミンCとを加え、
    該水性培地に放射線を照射する
    工程を含む、がん細胞の増殖を抑制する方法。
JP2020084260A 2020-05-13 2020-05-13 がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法 Pending JP2021178785A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020084260A JP2021178785A (ja) 2020-05-13 2020-05-13 がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020084260A JP2021178785A (ja) 2020-05-13 2020-05-13 がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021178785A true JP2021178785A (ja) 2021-11-18

Family

ID=78510862

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020084260A Pending JP2021178785A (ja) 2020-05-13 2020-05-13 がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021178785A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPS58185163A (ja) 発作治療のための組織酸素低下および虚血性障害処置用酸素添加合成栄養物の脈管外循環
CN109529023A (zh) 一种高sod活性的液体敷料、制备方法及其应用
CN107929314A (zh) 一种含氢生理盐水及其制备方法和用途
CN105311081A (zh) 山海丹野菊花注射液在雾化吸入、喷瓶气雾、直肠给药的应用及方法
CN107021961B (zh) 一类具有辐射防护作用的新化合物、其制备方法及其药物应用
JP6775589B2 (ja) 骨髄抑制を治療するための薬物の製造におけるフラーレン/金属フラーレンの使用
JP2021178785A (ja) がん治療システム、組み合わせ医薬、およびがん細胞の増殖を抑制する方法
CN105380956B (zh) 一种治疗白血病的含艾德拉尼的药物组合物及应用
CN110354133A (zh) 四氢生物蝶呤的应用及药物
RU2376985C1 (ru) Средство для активации стволовых клеток
US6733748B2 (en) Chronic lymphocytic leukemia treatment
CN104800238A (zh) 至少包含氢分子的液体/气体在制备抗神经胶质瘤的药物中的应用
JP2021185196A (ja) 水素を含む加齢黄班変性治療用組成物
CN108066337A (zh) KB-R7943或Bepridil在制备治疗神经胶质瘤的药物中的应用
CN113559261A (zh) 一种硼携带剂注射剂
EP2902032A1 (en) Liquid medicine having carbon dioxide dissolved therein, and therapeutic method using same
NL2025156A (en) Use of prostaglandin e1 in preparation of medicament for treating intracerebral hemorrhage
CN105497001A (zh) 白藜芦醇多聚体预防和治疗骨髓抑制的用途
CN118141747B (zh) 一种治疗黑色素瘤的凝胶型微针贴片
CN110354257B (zh) 鸟苷三磷酸环化水解酶1的应用及药物
CN105560218A (zh) 白藜芦醇同系物预防和治疗骨髓抑制的用途
RU2205642C1 (ru) Способ получения средства на основе пентоксифиллина
US20150011818A1 (en) Tumor vessel embolizing agent and method of embolizing tumor vessel
CN113546040A (zh) 一种过氧化碳酰胺非水溶媒注射剂、制备方法和应用
EP4119191A1 (en) Xenon gas for use in the treatment of gliomas

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230404

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240227

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240229

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240424

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240620

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240806