JP2021176932A - カルボキシ化分解性ポリロタキサン及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カルボキシ基で修飾された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を提供することを目的とする。【解決手段】酸分解性ポリロタキサンの環状分子にカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でエステルの脱保護を行う工程とを含む製造方法により、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を提供することができる。【選択図】図2

Description

本発明は、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を有する、酸分解性のポリロタキサン化合物、およびその合成方法に関する。より詳細には、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリンを有する、酸分解性のポリロタキサン化合物、およびその合成方法に関する。また、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を有する、酸分解性のポリロタキサン化合物の疾患治療薬としての使用にも関する。
近年、グルコースが環状に結合したシクロデキストリン類の類縁体であるヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリン(HP−β−CD)がニーマン・ピック病C型(NPC病)に対する医薬として期待されている。米国で進められているフェーズI/II試験の結果では、HP−β−CDによる治療効果が認められたものの、全例で聴覚障害を示すことが明らかとなり、安全性が懸念されている(非特許文献1)。
本発明者らは、このようなHP−β−CDの体内動態、副作用の問題点を改善し、より安全かつ効果的な薬剤の確立を目的に、β−CD空洞部に高分子鎖が貫通した骨格のポリロタキサンを用いたNPC 病治療を提唱してきた(特許文献1)。ポリロタキサンはβ−CD空洞部が高分子鎖によって占められているため、β−CD空洞部に由来する毒性等を回避できることを明らかにしている。また、ポリロタキサンが細胞内へと取り込まれた後に、酸性pHのリソソームで分解する設計を施すことで、細胞内環境特異的にβ−CDを放出し、リソソームに蓄積したコレステロールに作用することが可能となり、医薬としての機能(コレステロールの包接と排泄の促進)も示す。実際に酸分解型ポリロタキサンはNPC病モデルマウスに対し、従来のHP−β−CDよりも低濃度でコレステロール蓄積を抑制し、治療効果を示すことが明らかにされている(非特許文献2)。
特許第6464087号
Lancet 2017, 390, 1758-1768 A. Tamura, N. Yui. J. Control.Release 2018, 269, 148-158
これまでに使用してきた酸分解型ポリロタキサンは親水性官能基である2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基(HEE基)を化学修飾することで、ポリロタキサンの水溶化を行ってきた。HEE基は水溶性に優れる反面、細胞内への取り込み効率が低いことが課題であった。ポリロタキサンの投与量をさらに低減させる、治療効果を増加させるためには、単に水溶性だけではなく、細胞内への取り込み効率を改善する官能基の化学修飾が必要である。これまでに、負電荷のカルボキシ基を化学修飾したポリロタキサン(非分解型)がマクロファージのスカベンジャーレセプターに作用し、取り込みを顕著に増加させることを明らかにしている(H. Matsui et al. Macromol. Biosci. 2018, 18,1800059;この論文では非分解性のα−CD/PEG型ポリロタキサンで実験を行っている)。よってカルボキシ基はポリロタキサンの医薬応用において有用な化学修飾であると期待される。しかしながら、上記の酸分解性ポリロタキサンへのカルボキシ基の化学修飾は、カルボキシ基に由来する酸のため合成反応中に分解を引き起こすため困難であった。また、これまでに報告した合成方法は強アルカリ性条件での反応が必要であるが、この条件でも酸分解性ポリロタキサンの分解が起こる。よって、酸分解性ポリロタキサンへのカルボキシ基の化学修飾は非常に困難な課題であった。
本技術では、医薬応用のための酸分解型ポリロタキサンへのカルボキシ基の化学修飾を可能とする合成方法を提供する。具体的には、保護基を用いた多段階の合成ステップにより、強アルカリ条件での反応を避けるとともに、弱アルカリ条件で脱保護を行うことで、カルボキシ基に由来する酸による酸分解型ポリロタキサンの分解を抑制する合成方法を考案し、カルボキシ基修飾ポリロタキサンを得ることに成功した。この方法を用いることで複数種のリンカー構造の異なるカルボキシ基修飾酸分解型ポリロタキサンの合成に成功した。
本発明者らは、カルボキシ基修飾ポリロタキサンはスカベンジャーレセプターが発現しているマウス樹上細胞(DC2.4細胞)、マウスマクロファージ様細胞(RAW264.7細胞)への取り込みが従来のHEE基修飾ポリロタキサンよりも顕著に増加することを明らかにした。また、スカベンジャーレセプターが発現していないマウス線維芽細胞(NIH/3T3細胞)、NPC病患者由来皮膚線維芽細胞においても、カルボキシ基修飾ポリロタキサンは、従来のHEE基修飾酸分解型ポリロタキサンよりも高い取り込みを示すことが明らかになった。よって、カルボキシ基修飾酸分解型ポリロタキサンは従来の課題であった細胞への取り込み効率を改善することから、有用な設計であると考えられる。
本発明の態様は以下の事項に関する。
[1]カルボキシ基で修飾された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
[2]細胞内の酸性環境下で分解する、[1]記載のポリロタキサン化合物。
[3]pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する、[1]または[2]記載のポリロタキサン化合物。
[4]環状分子がβ−シクロデキストリンである、[1]〜[3]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[5]シクロデキストリンの水酸基が修飾されている、[1]〜[4]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[6]シクロデキストリンが1分子あたり1〜21個のカルボキシ基を有する、[1]〜[5]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[7]シクロデキストリンがリンカーを介してカルボキシ基により修飾されている、[1]〜[6]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[8]リンカーが、−O−CO−NH−、−O−CO−、−O−CO−O−、又は−O−を含む、[1]〜[7]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[9]カルボキシ基が置換又は非置換のアルキルカルボキシ基である、[1]〜[8]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[10]カルボキシ基が、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基、プロピルカルボキシ基、ブチルカルボキシ基、ペンチルカルボキシ基、又はヘキシルカルボキシ基である、[1]〜[9]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[11]カルボキシ基が、−CO−OCH、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC65、−CH−CO−OCH、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C6、又は−R−CO−OR(ここで、Rは単結合又はC1−6アルキレン基、RはH又は直鎖状、分岐状又は環状のC1−6アルキル基をそれぞれ表す)で表される置換カルボキシ基である、[1]〜[9]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[12]カルボキシ基が、カルボキシメチルカルバメート基、カルボキシエチルカルバメート基、又はカルボキシプロピルカルバメート基である、[1]〜[10]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[13]直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む、[1]〜[12]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[14]直鎖状分子がポロキサマーを含む、[1]〜[13]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[15]直鎖状分子の分子量が4000〜7000である、[1]〜[14]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[16]直鎖状分子と環状分子との分子数の比率が1:10〜1:20あることを特徴とする、[1]〜[15]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[17]末端基が、置換基を有する又は有さないO−トリフェニルメチル基、置換基を有する又は有さないS−トリフェニルメチル基、および置換基を有する又は有さないN−トリフェニルメチル基から成る群より選択される、[1]〜[16]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[18]末端基が直鎖状分子にペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、またはエーテル結合を介して連結されている、[1]〜[17]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[19]カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、酸分解性ポリロタキサンの環状分子にカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でエステルの脱保護を行う工程とを含む、方法。
[20]カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程(工程A)、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程(工程B)、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程(工程C)、カルボキシエステルを酸分解性ポリロタキサンの環状分子に導入する工程(工程D)、および弱アルカリ水溶液下でエステルを脱保護させる工程(工程E)とを含む、方法。
[21]水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、又はナトリウムメトキシド溶液を用いて、カルボキシエステルを環状分子に導入した酸分解性ポリロタキサンのエステルを脱保護させる[19]又は[20]記載の方法。
[22]カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを促進するための組成物。
[23]カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物。
[24]カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
[25]カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを促進するための方法。
[26]対象に対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための方法。
[27]対象に対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法。
[28]細胞においてオートファジーを誘導するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[29]癌を治療するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[30]細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[31]ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[32]環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
[33]環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
本発明の一態様によると、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物が提供される。このようなポリロタキサン化合物は、酸性環境下で分解し、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を放出することができる。
擬ポリロタキサン及びポリロタキサンを得るための反応スキームを示した図である。 ポリロタキサンのβ−シクロデキストリンにカルボキシ基(カルボキシメチルカルバメート基)を導入するための反応スキームを示した図である。 サイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。PRX、及びEMC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く、高分子量化していることから、合成が確認される。 EMC−PRX及びCMC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果を示した図である。 EMC−PRX及びCMC−PRXのフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果を示した図である。 ポリロタキサンのβ−シクロデキストリンにカルボキシ基(カルボキシエチルカルバメート基)を導入するための反応スキームを示した図である。 サイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。PRX、及びMEC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く、高分子量化していることから、合成が確認される。 MEC−PRX及びCEC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果を示した図である。 MEC−PRX及びCEC−PRXのフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果を示した図である。 ポリロタキサンのβ−シクロデキストリンにカルボキシ基(カルボキシプロピルカルバメート基)を導入するための反応スキームを示した図である。 サイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。PRX、及びMPC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く、高分子量化していることから、合成が確認される。 MPC−PRX及びCPC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果を示した図である。 MPC−PRX及びCPC−PRXのフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果を示した図である。 各種カルボキシ化ポリロタキサンのpHに応じたイオン化度の変化を示した図である。 さまざまなpHの各種カルボキシ化ポリロタキサンの600nmにおける透過率の測定結果を示した図である。 各種カルボキシ化ポリロタキサン誘導体の細胞(NIH/3T3細胞、DC2.4細胞、RAW264.7細胞)への取り込み量を蛍光強度に基づき測定した結果を示した図である。 NPC病患者由来皮膚線維芽細胞への取り込み量を蛍光強度に基づき測定した結果を示した図である。 NPC病患者由来皮膚線維芽細胞、及びヒト正常皮膚線維芽細胞のコレステロール含量変化を測定した結果を示した図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、酸分解性ポリロタキサンにカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でのエステルの脱保護を含む方法により、カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を製造した。
ポリロタキサン(PRX)化合物
ロタキサンは、大環状分子を直鎖状分子が貫通し、直鎖状分子の両末端に嵩高い部位を結合させることで、立体障害でリングが軸から抜けなくなったものである。ポリロタキサンでは、複数の大環状分子の環内を1本の直鎖状分子が貫いている。
本発明において用いられる直鎖状分子や環状分子は特に限定されないが、直鎖状分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体(ポロキサマー)、ポリエチレンイミン、ポリアミノ酸、及びポリメチルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。また、直鎖状分子の平均分子量は1000〜20000、特に2000〜10000あるいは4000〜7000であることが好ましく、例えば、分子量およそ5000のポロキサマーが使用されうる。
環状分子としては、α、β又はγ−シクロデキストリンであることが好ましいが、これと類似の環状構造を持つものであってもよく、そのような環状構造としては環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等が挙げられる。コレステロール包接能の観点から好ましい環状分子は、β−またはγ−シクロデキストリンであり、β−シクロデキストリンが特に好ましい。
本発明に係るポリロタキサンに含まれる環状分子はカルボキシ基を有する。環状分子は、好ましくはシクロデキストリンであり、シクロデキストリンの水酸基がカルボキシ化されている。シクロデキストリンは、好ましくはβ−シクロデキストリンである。β−シクロデキストリンは、例えば、1分子あたり1〜21個、好ましくは2〜7個のカルボキシ基を有するように修飾されうる。カルボキシ基は、置換された又は非置換のアルキルカルボキシ基の一部であっても良く、例えば、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基、プロピルカルボキシ基、ブチルカルボキシ基、ペンチルカルボキシ基、又はヘキシルカルボキシ基であっても良い。カルボキシ基は場合により、置換基を含んでいてもよく、例えば、−CO−OCH、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC65、−CH−CO−OCH、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C6、又は−R−CO−ORにより表される基であっても良い(ここで、Rは単結合又はC1−6アルキレン基、RはH又は直鎖状、分岐状又は環状のC1−6アルキル基をそれぞれ表す)。また、環状分子は、カルボキシ基以外の置換基をさらに有していても良い。他の置換基としては、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(DMAE基と称することもある)、メチル基、一級アミノ基、糖鎖、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、トランスフェリンや抗体などのタンパク質分子、オリゴアルギニンなどのペプチド分子などが挙げられる。これらの基は、環状分子に直接結合していても、リンカーを介して結合していても良い。リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、エーテル結合(−O−)などが挙げられる。一実施態様においては、リンカーとして、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)が好適に用いられる。よって、カルボキシ基は、カルボキシメチルカルバメート基、カルボキシエチルカルバメート基、又はカルボキシプロピルカルバメート基の形をとっていても良い。
直鎖状分子と環状分子の組み合わせとしては、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せが好ましい。なお、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せによるポリロタキサンの合成は、上記の特許文献1にも開示されており、その内容は参照により本明細書にも取り込まれる。好ましい直鎖状分子の分子数と環状分子の分子数との比率は1:4〜1:50であり、1:8〜1:20の比率がより好ましく、例えば、1:10〜1:20の比率が用いられる。すなわち、好ましくは直鎖状分子1分子に4〜50個の環状分子が含まれ、より好ましくは8〜30個の環状分子が含まれ、例えば、10〜20個の環状分子が含まれうる。
本発明において用いられる末端基(嵩高い置換基とも言う)としては、例えば、O−トリフェニルメチル(O−Trt)基、S−トリフェニルメチル(S−Trt)基、N−トリフェニルメチル(N−Trt)基が挙げられるが、限定はされない。末端基は立体障害効果により、ポリロタキサンの環状分子が線状分子から抜け出ることを防ぐ働きを有する。末端基は、置換基を有するO−トリフェニルメチル基、S−トリフェニルメチル基、N−トリフェニルメチル基などであってもよい。好ましくは、N−トリフェニルメチル基が用いられる。N−Trt基は、弱酸性環境下において分解され、ポリロタキサン骨格が崩壊し、β−CDなどの環状分子がリリースされる。末端基は、ペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、エーテル結合などを介して直鎖状分子に連結されうるが、好ましくはペプチド結合が用いられる。よって、本発明の一態様は、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物に関する。β−シクロデキストリンが有する置換基は、好ましくはカルボキシ基であるが、限定はされず、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(DMAE基と称することもある)、メチル基、一級アミノ基、糖鎖、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、トランスフェリンや抗体などのタンパク質分子、オリゴアルギニンなどのペプチド分子などであってもよい。これらの基は、環状分子に直接結合していても、リンカーを介して結合していても良い。リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、エーテル結合(−O−)などが挙げられる。
本発明に係るポリロタキサン化合物は、酸分解性の結合を直鎖状分子内に含む構造、又は酸分解性の結合を介して末端基が直鎖状分子に連結された構造を有していても良い。酸分解性の結合としては、例えば、アセタール結合、ケタール結合、ジスルフィド結合、エステル結合、オルトエステル結合、ビニルエーテル結合、ヒドラジド結合、アミド結合などが挙げられるが、限定はされない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。末端基としては、例えば、N−トリチルグリシン、1以上のベンゼン環を有する基、1以上の第三ブチルを有する基等が使用されうるが、これらに限定はされない。1以上のベンゼン環を有する基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基等が挙げられ、また、1以上の第三ブチルを有する基としては、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)等が挙げられる。なお、酸分解性の結合と末端基とは、直接的に連結されている必要はなく、当業者に公知のリンカー部分を介して連結されていてもよい。
本発明に係るポリロタキサンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1万〜10万程度とすることが好ましい。
本発明に係るポリロタキサン化合物としては、直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)を含むポロキサマーであり、環状分子がβ−シクロデキストリンであり、末端基がN−トリフェニルメチル基であり、末端基が直鎖状分子にペプチド結合を介して連結されていることが特に好ましい。この場合、ポロキサマーの分子量は4000〜7000(例えば、約5000)であり、直鎖状分子1分子あたりのβ−シクロデキストリンの数は10〜20個(例えば、約12個)でありうる。よって、本発明に係るポリロタキサン化合物は、以下に示す化学構造を有するポリロタキサンを含む:
Figure 2021176932
ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である(ここでは、括弧内にポリプロピレングリコールの繰返し単位を3つ記載しているため、「m/3」と記載しているが、mが3の倍数である必要は無い)。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。m及びnはそれぞれ例えば0から200の整数、10から100の整数、又は30から70の整数であり、使用するポロキサマーに応じて適宜決定されうる。xは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。Rは、置換基を示しており化学結合Lを介してβ−シクロデキストリンに結合している。化学結合Lは、例えば、シクロデキストリンの水酸基を修飾することにより形成されるカルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、またはエーテル結合(−O−)でありうる。本開示において、置換基Rは、置換された又は非置換のカルボキシ基又はアルキルカルボキシ基であり、例えば、−CO−OH、−CO−OCH、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC65、−CHーCO−OH、−CH−CO−OCH、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OCH2−C65、−CーCO−OH、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C65、−CーCO−OH、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C6、又は−R−CO−OR(ここで、Rは単結合又はC1−6アルキレン基、Rは直鎖状、分岐状又は環状のC1−6アルキル基をそれぞれ表す)でありうる。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基(例えば、カルボキシメチル基)は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。場合によっては、化学結合Lは介さなくてもよい。Zは、キャッピング分子(例えば、N−トリフェニルメチル基などの末端基)を示しており、化学結合Y(例えば、ペプチド結合)を介して主軸高分子両末端に結合している。化学結合Yは酸分解性の結合でありうるが、場合によっては、化学結合Yは介さなくてもよい。
細胞内環境
本発明に係るポリロタキサン化合物は、酸性環境下で分解する酸分解性のポリロタキサン化合物であり、例えば、pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する。上述のとおり、末端基としてN−Trt基を用いた場合、N−Trt基は弱酸性環境下において分解され、ポリロタキサン骨格が崩壊し、β−CDなどの環状分子がリリースされる。
ヒトを含む真核生物の細胞内には、リソソームや後期エンドソームといった小胞が存在しており、これらの小胞の内腔は酸性化されていることが知られている。例えば、リソソームの内腔のpHは5前後である。よって、本発明に係るポリロタキサン化合物は、これらの小胞に取り込まれることにより分解されうる。本発明に係るポリロタキサン化合物は、分解に伴い、β−CDなどの環状分子をリリースする。例えば、リソソーム内でβ−シクロデキストリンが放出された場合、リソソーム内に存在するコレステロールを包接することができ、それにより、リソソーム内のコレステロールの過剰蓄積を原因とするニーマン・ピック病C型などのライソゾーム病が治療もしくは予防されうる。
上述のとおり、β−シクロデキストリンは、コレステロールの包接能を有することが知られている。細胞内のコレステロールをβ−シクロデキストリンが包接することで、細胞内の過剰なコレステロールが引き起こす疾患の治療が可能であることが当業者には理解される。よって、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患としては、ライソゾーム病、より具体的には、ゴーシェ病(Gaucher病)、ニーマン・ピック病A型(Niemann−Pick病A型)、ニーマン・ピック病B型(Niemann−Pick病B型)、ニーマン・ピック病C型(Niemann−Pick病C型)、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(「Tay−Sachs Sandhoff AB型」と称することもある。)、クラッベ病(Krabbe病)、異染性白質変性症、マルチプルサルタファーゼ欠損症(Multiple sulfatese欠損症)、ファーバー病(Farber病)、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型(「ハンター病」と称することもある。)、ムコ多糖症III型(「サンフィリポ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IV型、ムコ多糖症VI型(「マロトー・ラミー病」と称することもある。)、ムコ多糖症VII型(「スライ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IX型(「Hyaluronidase欠損症」と称することもある。)、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、I−cell病/ムコリピドーシスIII型、α−マンノシドーシス、β−マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、シンドラー/神崎病(Schindler/神崎病)、ウォルマン病(Wolman病)、ダノン病(Danon病)、遊離シアル酸蓄積症、セロイドリポフスチノーシス、ファブリー病が挙げられる。なお、前記ライソゾーム病は、オートファゴソームの蓄積を生じる、オートファジー機能異常に起因する疾患でもある。
よって、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。また、本発明の一態様は、上述のように、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物にも関する。さらに、本発明の一態様は、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマン・ピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物にも関する。
オートファジー
本発明者らは、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を作用させることにより、細胞にオートファジーを誘導できることを見出した。シクロデキストリンは、好ましくはβ−シクロデキストリンである。よって、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、細胞においてオートファジーを誘導するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明に係るカルボキシ基で修飾されたポリロタキサンは、細胞にオートファジー性細胞死を誘発しうる。オートファジー性細胞死を利用して、癌細胞に細胞死を誘導できることが当業者には知られている。よって、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、癌を治療するための医薬組成物、好ましくはアポトーシス耐性の癌を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、癌を治療するため、特にアポトーシス耐性の癌を治療するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明に係るカルボキシ基で修飾されたポリロタキサンは、細胞にオートファジーを誘導することから、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するために使用されうることが当業者には理解される。よって、本発明の一態様は、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。オートファジーの機能障害に起因する疾患としては、例えば、上述のライソゾーム病や、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患が挙げられる。
製造方法
カルボキシ化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物は、酸分解性ポリロタキサンの環状分子にカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でのエステルの脱保護を含む方法により、製造されうる。より具体的には、本発明に係る製造方法の一態様は、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程(工程A)、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程(工程B)、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程(工程C)、前記カルボキシエステルを酸分解性ポリロタキサンの環状分子に導入する工程(工程D)、および弱アルカリ水溶液下でエステルを脱保護させる工程(工程E)を含む。カルボキシエステルは、例えば、カルボキシメチルカルバメートメチルエステル、カルボキシメチルカルバメートエチルエステル(EMC)、カルボキシメチルカルバメートプロピルエステル、カルボキシメチルカルバメートブチルエステル、カルボキシメチルカルバメートベンジルエステル、カルボキシエチルカルバメートメチルエステル(MEC)、カルボキシエチルカルバメートエチルエステル、カルボキシエチルカルバメートプロピルエステル、カルボキシエチルカルバメートブチルエステル、カルボキシエチルカルバメートベンジルエステル、又はカルボキシプロピルカルバメートメチルエステル(MPC)、カルボキシプロピルカルバメートエチルエステル、カルボキシプロピルカルバメートプロピルエステル、カルボキシプロピルカルバメートブチルエステル、カルボキシプロピルカルバメートベンジルエステル、でありうるが、これらに限定はされない。
本発明に係る方法において、カルボキシエステルを環状分子に導入した酸分解性ポリロタキサンのエステルを脱保護させる際には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、又はナトリウムメトキシド溶液などの弱アルカリ水溶液を用いることができ、水酸化ナトリウムによる脱保護が望ましく、水酸化ナトリウムなどの弱アルカリ水溶液の濃度は、0.1mol/Lから2mol/L程度、好ましくは、0.4mol/Lから6mol/L程度、より具体的には例えば、0.5mol/L、反応時間は1時間から24時間程度、好ましくは約3時間から6時間、反応温度は10℃から80℃程度、好ましくは20℃から40℃で撹拌することで行うことができる。
医薬組成物
本発明に係るポリロタキサン化合物は、上記のような疾患の治療または予防に用いる医薬組成物中の有効成分として利用することができる。よって、本発明の一つの態様は、疾患の治療または予防に用いる医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物中のその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。担体にも、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。本発明に係る医薬組成物における含有量についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、体温付近、例えば、34℃〜42℃、より好ましくは35℃〜38℃あるいは37℃において水溶性である。
本発明に係る医薬組成物の剤形としては、特に制限はなく、所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、吸入散剤などが挙げられる。注射剤としては、例えば、本発明に係るポリロタキサン化合物に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、医薬組成物の剤形、患者の状態等に応じて、局所投与、全身投与のいずれかを選択することができる。例えば、局所投与としては、脳室内投与などが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、好ましくはヒトである。
本発明に係る医薬組成物の投与量としては、特に制限はなく、投与形態や、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
本発明に係る医薬組成物の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記疾患に感受性の患者に対して予防的に投与されてもよいし、症状を呈する患者に治療的に投与されてもよい。また、投与回数としても、特に制限はなく、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<例1:ポリロタキサンの製造>
線状高分子としてプルロニック(登録商標)P123(シグマ−アルドリッチ社製、ポリエチレングリコ−ル(以下、「PEG」と称することがある。)とポリプロピレングリコ−ル(以下、「PPG」と称することがある。)が、PEG−PPG−PEGの順に重合した共重合体;PPG部分の数平均分子量は3850、PEG部分の数平均分子量は860×2)を用い、以下のようにして、その両末端を一級アミノ基に変換させた(図1)。
前記プルロニック(登録商標)P123を20g量り取り、三方コックを取り付けたナス型フラスコへ加えた。反応容器内を窒素に置換後、窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン(関東化学社製)を100mL加えて溶解させた。窒素雰囲気下でトリエチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を7.5mL、塩化メタンスルホニル(富士フイルム和光純薬社製)を4.2mL加え、室温で24時間撹拌した。反応後、反応中に生じた沈殿物をろ過により除き、ロータリーエバポレーターで濃縮した。メタノールで希釈後、透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、2日間透析をすることで未反応物を除去した。ロータリーエバポレーターで濃縮することで両末端にメシル基を有するプルロニック(登録商標)P123(以下、「P123−Ms」と称することがある。)を14.2g得た。
前記P123を10g量り取り、アンモニア水(関東化学社製)を50mL加えて溶解させ、室温で72時間撹拌した。反応後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することで両末端に一級アミノ基を有するプルロニック(登録商標)P123(以下、「P123−NH」と称することがある。)を6.1g得た。
前記P123−NHと、β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」と称することがある。)を用い、以下のようにして、擬ポリロタキサンを調製した(図1)。
前記β−CD(日本食品化工社製、商品名:セルデックスB−100)を40g、塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製)を9.0g量り取り、広口瓶に加え、超純水2Lに溶解させた。前記P103−NHを4.08g量り取り、少量の超純水に溶解させた。P123−NH溶液をβ−CD溶液に加え、室温で24時間撹拌した。反応後、得られた沈殿物を遠心分離(6500rpm、5分)により回収した。回収した固体を凍結乾燥することで擬ポリロタキサンを得た。
前記擬ポリロタキサンの両端部を、以下のようにしてN−トリチルグリシン(シグマ−アルドリッチ社製)でキャッピングすることにより、複数のβ−CDを貫通した線状高分子の両端部に酸性pH環境下で脱離する嵩高い置換基を有するポリロタキサン(以下、「PRX」と称することがある。)を得た(図1)。
前記擬ポリロタキサンを全量、N−トリチルグリシンを4.55g、DMT−MM(富士フイルム和光純薬社製)を3.97g量り取り、広口瓶に加え、アセトニトリル(関東化学社製)を203mL、メタノール(関東化学社製)を61mL加え、室温で24時間撹拌した。反応後、得られた沈殿物を遠心分離(6500rpm、10分)により回収した。アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、超純水の順で得られた沈殿物を洗浄し、未反応物を除去した。回収した固体を凍結乾燥することで末端がN−トリチルグリシンでキャッピングされたポリロタキサンを3.85g得た。
<例2:カルボキシメチルカルバメート化ポリロタキサンの製造>
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシメチルカルバメートエチルエステル(以下、「EMC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図2)、カルボキシメチルカルバメートエチルエステル化ポリロタキサン(以下、「EMC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、EMC修飾数は31.3)。
前記ポリロタキサンを200mg、1,1’−カルボニルジイミダゾール(シグマ−アルドリッチ社製)を140mg量り取り、三方コックを取り付けたナス型フラスコへ加えた。反応容器内を窒素に置換後、窒素雰囲気下で脱水ジメチルスルホオキシド(富士フイルム和光純薬社製)10mLに溶解させた。広口瓶にグリシンエチル塩酸塩(東京化成社製)を1.2g、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を1.2mL、ジメチルスルホキシド(関東化学社製)を5mL量り取り、室温で10分間攪拌させ、ポリロタキサン溶液に加えた。室温で24時間攪拌後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでEMC−PRXを240mg得た。
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシメチルカルバメート(以下、「CMC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図2)、カルボキシメチルカルバメート化ポリロタキサン(以下、「CMC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、CMC修飾数は31.3)。CMC−PRXの一般化学構造を以下に示す:
Figure 2021176932
ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。lは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。
前記EMC−PRXを200mg量り取り、広口瓶へ加えた。0.5M水酸化ナトリウム水溶液を10mL加え、室温で6時間攪拌させた。反応後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、pH9のアンモニア水溶液で3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでCMC−PRXを140mg得た。
前記EMC−PRXについて、溶離液を10mM LiBr含有ジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフィー測定(島津製作所社製)、ジメチルスルホキシド−d(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定(ブルカー社製)、及びフーリエ変換赤外分光測定(パーキンエルマー社製)を行った。また、前記CMC−PRXについて、重水(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定、及びフーリエ変換赤外分光測定を行った。
図3に示すサイズクロマトグラフィーの結果において、PRX、及びEMC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く高分子量化していることから、合成が確認された。また、遊離β−CDやN−トリチル基のピークが見られないことから、EMC−PRXは超分子構造を損なうことなく高純度で合成されたことが示された。図4のEMC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、ポリロタキサンのβ−CDに導入されたEMC基の修飾数がPRX1分子あたり31.1であることが明らかとなった。また、図4のCMC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、エチルエステル基に由来するピークが消失していることより、エチルエステル基の脱保護を確認した。図5のフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果から、EMC−PRXのエステル結合に由来する1724、1208cm−1のピークがCMC−PRXでは変化し、カルボキシアニオン由来のピークが1604、1402cm−1に表れたことからもエチルエステル基の脱保護を確認した。
<例3:カルボキシエチルカルバメート化ポリロタキサンの製造>
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシエチルカルバメートメチルエステル(以下、「MEC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図6)、カルボキシメチルカルバメートエチルエステル化ポリロタキサン(以下、「MEC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、MEC修飾数は27.5)。
前記ポリロタキサンを200mg、1,1’−カルボニルジイミダゾール(シグマ−アルドリッチ社製)を140mg量り取り、三方コックを取り付けたナス型フラスコへ加えた。反応容器内を窒素に置換後、窒素雰囲気下で脱水ジメチルスルホオキシド(富士フイルム和光純薬社製)10mLに溶解させた。広口瓶にβ−アラニンメチルエステル塩酸塩(東京化成社製)を1.2g、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を1.2mL、ジメチルスルホキシド(関東化学社製)を5mL量り取り、室温で10分間攪拌させ、ポリロタキサン溶液に加えた。室温で24時間攪拌後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでMEC−PRXを224mg得た。
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシエチルカルバメート(以下、「CEC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図6)、カルボキシメエルカルバメート化ポリロタキサン(以下、「CEC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、CEC修飾数は27.5)。CEC−PRXの一般化学構造を以下に示す:
Figure 2021176932
ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。lは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。
前記MEC−PRXを200mg量り取り、広口瓶へ加えた。0.5M水酸化ナトリウム水溶液を10mL加え、室温で6時間攪拌させた。反応後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、pH9のアンモニア水溶液で3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでCEC−PRXを146mg得た。
前記MEC−PRXについて、溶離液を10mM LiBr含有ジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフィー測定(島津製作所社製)、ジメチルスルホキシド−d(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定(ブルカー社製)、及びフーリエ変換赤外分光測定(パーキンエルマー社製)を行った。また、前記CEC−PRXについて、重水(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定、及びフーリエ変換赤外分光測定を行った。
図7に示すサイズクロマトグラフィーの結果において、MEC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く高分子量化していることから、合成が確認された。また、遊離β−CDやN−トリチル基のピークが見られないことから、MEC−PRXは超分子構造を損なうことなく高純度で合成されたことが示された。図8のMEC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、ポリロタキサンのβ−CDに導入されたMEC基の修飾数がPRX1分子あたり27.5であることが明らかとなった。また、図8のCEC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、エチルエステル基に由来するピークが消失していることより、エチルエステル基の脱保護を確認した。図9のフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果から、MEC−PRXのエステル結合に由来する1727、1255cm−1のピークがCEC−PRXでは変化し、カルボキシアニオン由来のピークが1579、1407cm−1に表れたことからもエチルエステル基の脱保護を確認した。
<例4:カルボキシプロピルカルバメート化ポリロタキサンの製造>
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシプロピルカルバメートメチルエステル(以下、「MPC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図10)、カルボキシメチルカルバメートエチルエステル化ポリロタキサン(以下、「MPC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、MPC修飾数は22.5)。
前記ポリロタキサンを200mg、1,1’−カルボニルジイミダゾール(シグマ−アルドリッチ社製)を140mg量り取り、三方コックを取り付けたナス型フラスコへ加えた。反応容器内を窒素に置換後、窒素雰囲気下で脱水ジメチルスルホオキシド(富士フイルム和光純薬社製)10mLに溶解させた。広口瓶に4−アミノ酪酸メチル塩酸塩(東京化成社製)を1.3g、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を1.2mL、ジメチルスルホキシド(関東化学社製)を5mL量り取り、室温で10分間攪拌させ、ポリロタキサン溶液に加えた。室温で24時間攪拌後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでMPC−PRXを218mg得た。
前記ポリロタキサンのβ−CDにカルボキシプロピルカルバメート(以下、「CPC」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図10)、カルボキシメエルカルバメート化ポリロタキサン(以下、「CPC−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.5、CPC修飾数は22.5)。CPC−PRXの一般化学構造を以下に示す:
Figure 2021176932
ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。lは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。
前記MPC−PRXを200mg量り取り、広口瓶へ加えた。0.5M水酸化ナトリウム水溶液を10mL加え、室温で6時間攪拌させた。反応後、得られた溶液を透析膜に封入し(スペクトルポア社製、分画分子量1000)、pH9のアンモニア水溶液で3日間透析をすることで未反応物を除去した。回収した溶液を凍結乾燥することでCPC−PRXを163mg得た。
前記MPC−PRXについて、溶離液を10mmol/Lで臭化リチウムを溶解したジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフィー測定(島津製作所社製)、ジメチルスルホキシド−d(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定(ブルカー社製)、及びフーリエ変換赤外分光測定(パーキンエルマー社製)を行った。また、前記CPC−PRXについて、重水(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定、及びフーリエ変換赤外分光測定を行った。
図11に示すサイズクロマトグラフィーの結果において、MPC−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く高分子量化していることから、合成が確認された。また、遊離β−CDやN−トリチル基のピークが見られないことから、MPC−PRXは超分子構造を損なうことなく高純度で合成されたことが示された。図12のMPC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、ポリロタキサンのβ−CDに導入されたMPC基の修飾数がPRX1分子あたり22.5であることが明らかとなった。また、図12のCPC−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、エチルエステル基に由来するピークが消失していることより、エチルエステル基の脱保護を確認した。図13のフーリエ変換赤外分光スペクトルの結果から、MPC−PRXのエステル結合に由来する1723、1255cm−1のピークがCPC−PRXでは変化し、カルボキシアニオン由来のピークが1571、1406cm−1に表れたことからもエチルエステル基の脱保護を確認した。
<例5:pKa測定>
各カルボキシ化ポリロタキサンをカルボキシ基の濃度が10mmol/Lとなるように20mmol/L水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。これらの溶液に対し、自動滴定装置(AUT−701、東亜ディーケーケー社製)を用いて10mmol/L塩酸水溶液を40μLずつ、10秒間隔で滴下し、pHの変化を記録した。結果を図14に示す。
[試料]
(1)CMC−PRX(例2で作製)
(2)CEC−PRX(例3で作製)
(3)CPC−PRX(例4で作製)
図14の結果から、いずれのカルボキシ化ポリロタキサンもpH7.4では約90%がイオン化していることが明らかとなった。また、CMC−PRX、CEC−PRX、CPC−PRXのpKa値はそれぞれ4.87、5.21、5.27であり、カルボキシ基と環状分子間のアルキル基の数によってpKaが変化することが明らかになった。
<例6:透過率測定>
各カルボキシ化ポリロタキサンをpH2.2から7.4の間に調整した各緩衝溶液に5mg/mLとなるように溶解させた。これらの溶液に対し、紫外−可視分光光度計(V−550、日本分光社製)を用いて600nmの波長の透過率を測定した。結果を図15に示す。
[試料]
(1)CMC−PRX(例2で作製)
(2)CEC−PRX(例3で作製)
(3)CPC−PRX(例4で作製)
図15の結果から、いずれのカルボキシ化ポリロタキサンもpHの低下により、溶液の透過率が減少し、沈殿を生じた。これはカルボキシ基がpKa以下のpHで脱イオン化することで水への溶解性が低下したためであると考えられる。透過率の低下を生じるpHは、CMC−PRXではpH3.1、CEC−PRXではpH3.7、CPC−PRXではpH4.2であり、カルボキシ基と環状分子間のアルキル基の数が少ないほど低いpHで透過率の低下を生じた。これはアルキル鎖長が長くなることで分子の疎水性が増大し、脱イオン化による溶解性の低下が起こりやすいことを示唆している。
<例7:細胞への取り込み量評価>
<試料の調製>
培養細胞と接触した際のカルボキシ化ポリロタキサン誘導体の取り込み量を明らかとするために、試料として用いる4,4−difluoro−5,7−dimethyl−4−bora−3a,4a−diaza−s−Indacene−3−propionyl ethylenediamine(BODIPY―EDA)で修飾したCMC−PRX(以下、「BODIPY−CMC−PRX」と称する)、CEC−PRX(以下、「BODIPY−CEC−PRX」と称する)、CPC−PRX(以下、「BODIPY−CPC−PRX」と称する)を以下のようにして調製した。
−BODIPY−CMC−PRXの調製−
例2で調製したCMC−PRX 5mg、BODIPY−EDA 0.76mg、DMT−MM 2.86mgをサンプル瓶に測り取り5mLの炭酸緩衝溶液(pH9.2)に溶解し、室温で24時間撹拌した。反応後、分画分子量6,000の透析膜(スペクトラポア社製)へ加え、超純水に対し透析をすることで未反応物を除去した。回収した水溶液を凍結乾燥することでBODIPY−CMC−PRXを得た。BODIPYの修飾数は紫外−可視分光光度計を用いて502nmの吸光度より算出した。未標識CMC−PRXとBODIPY−CMC−PRXを混合し、CMC−PRX一分子に対するFITC修飾数が0.1分子となるよう調整した。
−BODIPY−CEC−PRXの調製−
例3で調製したCEC−PRX 5mg、BODIPY−EDA 0.76mg、DMT−MM 2.86mgをサンプル瓶に測り取り5mLの炭酸緩衝溶液(pH9.2)に溶解し室温で24時間撹拌した。反応後、分画分子量6,000の透析膜(スペクトラポア社製)へ加え、超純水に対し透析をすることで未反応物を除去した。回収した水溶液を凍結乾燥することでBODIPY−CEC−PRXを得た。BODIPYの修飾数は紫外−可視分光光度計を用いて502nmの吸光度より算出した。未標識CEC−PRXとBODIPY−CEC−PRXを混合し、CEC−PRX一分子に対するFITC修飾数が0.1分子となるよう調整した。
−BODIPY−CPC−PRXの調製−
例4で調製したCPC−PRX 5mg、BODIPY−EDA 0.76mg、DMT−MM 2.86mgをサンプル瓶に測り取り5mLの炭酸緩衝溶液(pH9.2)に溶解し、室温で24時間撹拌した。反応後、分画分子量6,000の透析膜(スペクトラポア社製)へ加え、超純水に対し透析をすることで未反応物を除去した。回収した水溶液を凍結乾燥することでBODIPY−CPC−PRXを得た。BODIPYの修飾数は紫外−可視分光光度計を用いて502nmの吸光度より算出した。未標識CPC−PRXとBODIPY−CPC−PRXを混合し、CPC−PRX一分子に対するFITC修飾数が0.1分子となるよう調整した。
<フローサイトメトリー>
24wellプレート(Nunc社製)にNIH/3T3、DC 2.4、RAW264.7細胞を0.5×10cells/well播種し、一日37℃で培養した。培地を270μLの培地に交換後、シクロデキストリン濃度に換算して2mMに調整した下記試料を30μLずつ各ウエルに添加し、さらに37℃で24時間培養した。その後、リン酸緩衝溶液で細胞を2回洗浄後、0.25%トリプシン−EDTA溶液(富士フイルム和光純薬社製)を各ウエルに添加し細胞を剥離させた。細胞を1.5mLチューブに集め、リン酸緩衝溶液で1回洗浄した。その後、0.1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝溶液を加え、35μmセルストレーナー(BD Falcon社製)により濾過した。
細胞の蛍光強度をNovo−Cyte 2000(ACEA Biosciences社製)により求めた。細胞10,000個を数え、その平均値を図16に示す。
[試料]
(1)BODIPY−CMC−PRX(例2で作製)
(2)BODIPY−CEC−PRX(例3で作製)
(3)BODIPY−CPC−PRX(例4で作製)
(4)BODIPY−2−(2−hydroxyethoxy)ethyl carbamate修飾PRX(以下、「BODIPY−HEE−PRX」と称することがある。;下記構造式(1)で表される化合物;WO2017/188257A1を参考に合成し、BODIPYを化学修飾し、PRX1分子当たりの修飾数が0.1となるように調整した;下記構造式(1)では、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、lは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されている前記HEE基の修飾が1個の場合を示している。)
Figure 2021176932
BODIPY−CMC−PRX、BODIPY−CEC−PRX、BODIPY−CPC−PRXはいずれの細胞においても従来品であるBODIPY−HEE−PRXよりも顕著に高い細胞内への取り込みを示した。NIH/3T3細胞においてはBODIPY−CMC−PRXの取り込みが最も高く、DC2.4細胞とRAW264.7細胞においてはBODIPY−CPC−PRXの取り込みが最も高い結果となった。これらの結果より、カルボキシ基とポリロタキサン間のアルキル鎖長により細胞への取り込み効率が変化すること、及び細胞種によって取り込まれやすいアルキル鎖長があることが明らかになった。
<例8:NPC病患者由来皮膚線維芽への取り込み量評価>
<フローサイトメトリー>
24wellプレート(Nunc社製)にNPC病患者由来皮膚線維芽細胞(Coriell Instiuteより入手)を1×10cells/well播種し、一日37℃で培養した。培地を270μLの培地に交換後、シクロデキストリン濃度に換算して2mMに調整した下記試料を30μLずつ各ウエルに添加し、さらに37℃で24時間培養した。その後、リン酸緩衝溶液で細胞を2回洗浄後、0.25%トリプシン−EDTA溶液(富士フイルム和光純薬社製)を各ウエルに添加し細胞を剥離させた。細胞を1.5mLチューブに集め、リン酸緩衝溶液で1回洗浄した。その後、0.1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝溶液を加え、35μmセルストレーナー(BD Falcon社製)により濾過した。
細胞の蛍光強度をNovo−Cyte 2000(ACEA Biosciences社製)により求めた。細胞10,000個を数え、その平均値を図16に示す。
[試料]
(1)BODIPY−CMC−PRX
(2)BODIPY−CEC−PRX
(3)BODIPY−CPC−PRX
(4)BODIPY−HEE−PRX
BODIPY−CMC−PRX、BODIPY−CEC−PRX、BODIPY−CPC−PRXはNPC病患者由来皮膚線維芽細胞において従来品であるBODIPY−HEE−PRXよりも有意に高い細胞内への取り込みを示した。特にBODIPY−CMC−PRX、BODIPY−CEC−PRXの取り込みが高い結果となった。これらの結果より、カルボキシ基とポリロタキサン間のアルキル鎖長がメチル、エチルの場合にNPC病患者由来皮膚線維芽細胞への取り込みが顕著に増加することが明らかになった。
<例9:NPC病患者由来皮膚線維芽のコレステロール量変化>
NPC病患者由来皮膚繊維芽細胞、およびヒト正常皮膚線維芽細胞(Coreill Instituteより入手)を用い、以下のようにして細胞中のコレステロール量を調べた。
24wellプレート(Nunc社製)にNPC病患者由来皮膚線維芽細胞、またはヒト正常皮膚線維芽細胞を1×10cells/well播種し、一日37℃で培養した。培地を270μLの培地に交換後、シクロデキストリン濃度に換算して5mMに調整した下記試料を30μLずつ各ウエルに添加し、さらに37℃で24時間培養した。その後、リン酸緩衝溶液で細胞を2回洗浄後、0.25%トリプシン−EDTA溶液を各ウエルに添加し細胞を剥離させた。細胞を1.5mLチューブに集め、リン酸緩衝溶液で1回洗浄した。その後、RIPA buffer(富士フイルム和光純薬社製)を1mL加え、細胞を溶解させた。
各細胞溶解液を50μL用いて、micro BCA Protein Assay Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により総タンパク質量を定量した。
また、残りの細胞溶解液を10mLガラスチューブに移し、内部標準であるコレステロールーd(Avanti社製)を8μL(50μg/mL)、クロロホルム:メタノール混合溶媒(体積比で1:2)を3.75mL、クロロホルムを1.25mL、超純水を1.25mL加え混合した。分離した下層を回収し、窒素フローにより乾燥させた。脱水ピリジンを150μL、N−メチルーN−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(富士フイルム和光純薬社製)を50μL加え、60℃で30分間反応させ、誘導体化を行った。
なお、比較として、ヒト正常皮膚線維芽細胞を用い、試料を投与しなかった場合、及びNPC病患者由来皮膚繊維芽細胞を用い、試料を投与しなかった場合についても同様にして試験した。
コレステロールはガスクロマトグラフィー質量分析装置GCMS−QP2020(島津製作所社製)を用いて定量した。細胞内の遊離コレステロール量は、遊離コレステロール量(nmol)/総タンパク質量(mg)で表記した。その平均値を図18に示す。
[試料]
(1)CMC−PRX
(2)CEC−PRX
(3)CPC−PRX
(4)HEE−PRX
NPC病患者由来皮膚線維芽細胞中のコレステロール量はCMC−PRX、CEC−PRXを作用させた場合に、従来品であるHEE−PRXよりも有意に低下した。これらの結果より、カルボキシ基とポリロタキサン間のアルキル鎖長がメチル、エチルの場合にNPC病患者由来皮膚線維芽細胞中の遊離コレステロールを従来品よりも効果的に低下させることが明らかになった。
本明細書には、本発明の好ましい実施態様を示してあるが、そのような実施態様が単に例示の目的で提供されていることは、当業者には明らかであり、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変形、変更、置換を加えることが可能であろう。本明細書に記載されている発明の様々な代替的実施形態が、本発明を実施する際に使用されうることが理解されるべきである。また、本明細書中において参照している特許および特許出願書類を含む、全ての刊行物に記載の内容は、その引用によって、本明細書中に明記された内容と同様に取り込まれていると解釈すべきである。
上記のとおり、酸分解性ポリロタキサンへカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でエステルの脱保護を行う工程を含む製造方法によって、カルボキシ化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物が製造された。特に、カルボキシ基で修飾された複数のβ−シクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物は、細胞への取り込み効率の面で優れており、リソソーム内のコレステロールの過剰蓄積を原因とするニーマン・ピック病C型などのライソゾーム病の治療もしくは予防等において有用となりうる。

Claims (24)

  1. カルボキシ基で修飾された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
  2. 細胞内の酸性環境下で分解する、請求項1記載のポリロタキサン化合物。
  3. pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する、請求項1または2記載のポリロタキサン化合物。
  4. 環状分子がβ−シクロデキストリンである、請求項1〜3のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  5. シクロデキストリンの水酸基が修飾されている、請求項1〜4のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  6. シクロデキストリンが1分子あたり1〜21個のカルボキシ基を有する、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  7. シクロデキストリンがリンカーを介してカルボキシ基により修飾されている、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  8. リンカーが、−O−CO−NH−、−O−CO−、−O−CO−O−、又は−O−を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  9. カルボキシ基が置換又は非置換のアルキルカルボキシ基である、請求項1〜8のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  10. カルボキシ基が、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基、プロピルカルボキシ基、ブチルカルボキシ基、ペンチルカルボキシ基、又はヘキシルカルボキシ基である、請求項1〜9のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  11. カルボキシ基が、−CO−OCH、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC、−CO−OC65、−CH−CO−OCH、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OC、−CH−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C65、−C−CO−OCH、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OC、−C−CO−OCH2−C6、又は−R−CO−OR(ここで、Rは単結合又はC1−6アルキレン基、RはH又は直鎖状、分岐状又は環状のC1−6アルキル基をそれぞれ表す)で表される置換カルボキシ基である、請求項1〜9のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  12. カルボキシ基が、カルボキシメチルカルバメート基、カルボキシエチルカルバメート基、又はカルボキシプロピルカルバメート基である、請求項1〜11のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  13. 直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む、請求項1〜12のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  14. 直鎖状分子がポロキサマーを含む、請求項1〜13のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  15. 直鎖状分子の分子量が4000〜7000である、請求項1〜14のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  16. 直鎖状分子と環状分子との分子数の比率が1:10〜1:20であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  17. 末端基が、置換基を有する又は有さないO−トリフェニルメチル基、置換基を有する又は有さないS−トリフェニルメチル基、および置換基を有する又は有さないN−トリフェニルメチル基から成る群より選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  18. 末端基が直鎖状分子にペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、またはエーテル結合を介して連結されている、請求項1〜17のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  19. カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、酸分解性ポリロタキサンの環状分子にカルボキシエステルを導入する工程と、弱アルカリ水溶液下でエステルの脱保護を行う工程とを含む、方法。
  20. カルボキシ基で修飾された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程、カルボキシエステルを酸分解性ポリロタキサンの環状分子に導入する工程、および弱アルカリ水溶液下でエステルを脱保護させる工程とを含む、方法。
  21. 水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、又はナトリウムメトキシド溶液を用いて、カルボキシエステルを環状分子に導入した酸分解性ポリロタキサンのエステルを脱保護させる、請求項19又は20記載の方法。
  22. カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物。
  23. カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物。
  24. カルボキシ基で修飾された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマン・ピック病C型を治療または予防するための医薬組成物。

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WO2023190243A1 (ja) * 2022-03-30 2023-10-05 デンカ株式会社 超分子ハイドロゲルの調製方法、及び生体材料としての応用

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