JP2021176272A - 刺激物質と産生物質との相関関係を明らかにする方法 - Google Patents

刺激物質と産生物質との相関関係を明らかにする方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生体に対する刺激物質と、該刺激物質によって該生体内に産生される産生物質との相関関係を明らかにする方法、また、該方法によって得られた知見を基にした、刺激物質、産生物質、それらの組み合わせをスクリーニングする方法を提供すること。【解決手段】刺激物質を、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させた後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにすることを特徴とする方法、及び、該方法を使用する、刺激物質、産生物質、又は、「刺激物質と産生物質の組み合わせ」のスクリーニング方法。【選択図】図3

Description

本発明は、水泡眼金魚の水泡内の細胞を用いて、刺激物質と該細胞が産生した産生物質との相関関係を明らかにする方法、及び、該相関関係の温度依存性を明らかにする方法に関し、更に、該方法を用いた刺激物質、産生物質、又は、「刺激物質と産生物質との組み合わせ」をスクリーニングする方法に関する。
ヒトは、外部の環境から、種々のストレスや刺激物質を受ける。該刺激物質としては、例えば、真菌、細菌、ウイルス等の他に、食品、食品添加物、医薬、農薬、汚染物質等、様々のものが挙げられる。また、それらが産生する物質、それらに含まれる不純物等も挙げられる。
このような刺激物質を、例えばマウス等の被験動物等に投与して、該投与によって「該被検動物内に生じた物質A」を同定又は定量すれば、該刺激物質と該物質Aとの相関関係が明らかになり、その相関関係を基にすれば、(検討等で)着目すべき刺激物質や物質Aが明らかになる。そして、該物質Aが分かれば、該刺激(物質)に対する防御方法が明らかになり、該防御(方法)に役立つ医薬、健康食品、生活習慣等の発見、開発、スクリーニング、製造等が可能になる。
しかしながら、被検動物に刺激物質を「投与する方法」や「被検動物における投与部位」、及び、「被験動物から物質Aを採取する方法」や「被検動物における物質Aの採取部位」等に関しては、該刺激物質や物質Aによっては、最適な方法や投与部位・採取部位がなかった又は少なかった。投与部位と採取部位は、組織液、血液、リンパ液等を含む。
また、in vitroで検討するにしても、該検討に必要な生体物質を入手する実験動物や該動物の部位(組織液、血液、リンパ液等を含む)等については、最適なものが少なかった。
特許文献1には、水泡眼金魚に抗原を投与して抗体を作る「抗体の製造方法」が記載されている。
また、特許文献2には、水泡眼金魚の水泡内液を含有する「動物細胞用の培地添加剤」が記載されている。
しかしながら、上記特許文献1、2には、刺激物質を水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させて、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等と言った「該細胞の産生物質」を同定若しくは定量することについては記載も示唆もない。
従って、上記特許文献1、2には、その産生物質が産生される際の「金魚の飼育温度や水泡内細胞の培養温度」に関しては、尚更、記載も示唆もない。
一方、細菌感染症は、細菌の病原性ばかりでなく、自然免疫及び獲得免疫からなる宿主抵抗性に影響される。
また、魚類等に関しては、水質、水温等の環境因子は、(魚類等の)宿主の抵抗性に大きな影響を与えることが報告されている(例えば、非特許文献1等)。
免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等の「ヒトに影響を与える物質」の検討に際し、動物の細胞や体液を利用することは有効であるが、「魚類に出来た、又は、魚類の眼付近に(交配等で)安定して生じさせた水泡」の内液を利用したものはなかった。
また、ヒト等の哺乳類を念頭においた上記検討は重要であるが、更に、魚類の感染症に対して抵抗性を増強する方法や、そのモニタリング方法の開発は、水産養殖産業にとっても極めて重要であった。
特開2012−120515号公報 特開2013−082664号公報
Avtalion RR, Willian Clem L. (1981) Environmental control of the immune response in fish. Crit Rev Environ Sci Tech. 11: 163–88.
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、生体に対する刺激物質と、該刺激物質によって該生体内に産生される産生物質との相関関係を明らかにする方法を提供することにある。また、該方法によって得られた知見を基にした、刺激物質、産生物質、それらの組み合わせをスクリーニングする方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水泡眼金魚の水泡内の細胞と、外部から導入した刺激物質とを接触(共存)させることで、該刺激物質と該細胞の産生物質との相関関係(対応関係)を容易に明らかにすることができ、それによって、該刺激物質に対応した種々の産生物質のスクリーニング等が容易に精度良くできることを見出した。
また、上記相関関係(対応関係)を定量的に求めることができ、更に、該定量的な相関関係に温度依存性があることをも見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、刺激物質を、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させた後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにすることを特徴とする方法を提供するものである。
また、上記本発明の方法は、以下のin vivoである態様1、及び、in vitroである態様2に分けられる。
本発明のin vivoである態様1は、上記刺激物質を、水泡眼金魚に投与し、該水泡眼金魚を特定温度で飼育した後に、該水泡眼金魚の水泡内の細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにする上記の方法を提供するものである。
また、本発明のin vivoである態様1は、更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする上記の方法を提供するものである。
本発明のin vitroである態様2は、上記刺激物質を、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地に配合し、特定温度で該細胞を培養した後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質の相関関係を明らかにする上記の方法を提供するものである。
また、本発明のin vitroである態様2は、更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする上記の方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の態様1又は態様2の方法を使用することを特徴とする刺激物質及び/又は産生物質のスクリーニング方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の態様1又は態様2の方法を使用し、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性が大きい若しくは小さい、又は、該産生物質が産生される限界温度が低い若しくは高い「刺激物質と産生物質の組み合わせ」をスクリーニングすることを特徴とする組み合わせのスクリーニング方法を提供するものである。
本発明によれば、前記問題点や課題を解決し、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等と言った「ヒトに影響を与える物質」の発見・検討等を、極めて容易に、また正確に行うことができる。
すなわち、言い換えれば、水泡眼金魚の水泡内の液を用いれば、ヒトに対して好ましい例えば上記物質を、該水泡内細胞の産生した産生物質として、極めて容易に、また正確に、捕捉(発見)、(定量的)検討、スクリーニング等することができる。
そして、該産生物質と、該産生物質を産生させた刺激物質との対応関係が分かれば、該刺激(物質)に対する防御方法が明らかになり、該防御(方法)に役立つ、すなわち該産生物質の産生を促進する、医薬、健康食品、生活習慣等の発見、開発、スクリーニング、製造等が可能になる。
詳しくは、水泡眼金魚の水泡内の細胞に、刺激物質を、魚の体に投与(注射、給餌等を含む)する、又は、該水泡内に直接注射する等によって接触させることによって、該水泡内細胞が産生する産生物質を同定したり、該産生物質の産生量を定量的に求めたり、また更に、該水泡眼金魚(個体)の該刺激物質による、生死、又は、発病若しくは異常の有無を確認したりすることによって、「該刺激物質と該産生物質との相関関係」を、好ましくは更に「該相関関係の温度依存性」を、特に好ましくは更に「該刺激物質の投与による個体の生死、発病又は異常」等を、極めて容易・正確に検討等することができる。
上記のような検討に、一般に、動物の細胞;組織液、血液、リンパ液等の体液;等を利用することは有効であるが、これまで、水泡眼金魚の水泡内の「リンパ液等の液」又は「細胞」を利用したものはなかった。
水泡眼金魚は、交配を繰り返した結果、安定的に生産することができるようになったものなので、本発明の方法を実施するに当たって、容易に入手することができる。また、当然のことながら、検討に使用する液も細胞も、個体内で容易に見つけて採取できる。
更に、水泡内の液も容易に採取できるので、in vitroでの検討も容易である。
水泡と水泡内液は、動物の他の部位や他の体液に比べ、上記の種々の点で優れている。
また、魚であるので、マウス等の哺乳類で問題となっている「実験動物に関する道義的問題」も少なくできる。
例えば、刺激物質を投与した動物の体内から、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等と言った「該動物内に生じる物質(産生物)」を取り出そうとしたら、困難な場合があるところ、水泡眼金魚の水泡から、それらを取り出すことは、注射器等によって取り出せばよいので極めて容易である。
水泡眼金魚の水泡内には、リンパ液が貯留されており、このリンパ液中に産生される物質を同定・定量すれば、極めて容易に的確に上記物質の捕捉・定量が可能である。
また、該水泡内の液体は、該金魚(個体)を生かしたまま採取し続けられるので、容易に水泡内細胞を何度も採集することが可能であり、金魚(個体)内で産生される産生物量の時間変化も求められる。
なお、特許文献1、2では、水泡内液を、本発明とは異なる目的・方法で使用している。更に、これまで、水泡内の細胞について検討した報告はなく、個体を生かしたまま水泡内液の変化を検討した報告もない。
本発明によれば、従来の方法に比べ、リンパ液等を容易に取り出せるのみならず、水泡内細胞を容易に採取することが可能である。
本発明によって初めて、水泡眼金魚の水泡内細胞が、緑膿菌の加熱死菌、T細胞マイトジェンPHA、TLR3アゴニストPolyI:C、と言った刺激物質に対して、免疫関連物質を産生することが見出された。
更に、上記産生応答の温度感受性も見出された。すなわち、本発明によって初めて、「上記刺激物質と産生物質との相関関係」の温度依存性が明らかになった。
具体的には、例えば、免疫関連物質の水泡眼金魚の水泡内での産生が、温度が低い程多くなる(低温で産生能が上がる)ことが分かった。更に具体的には、免疫関連物質等の産生物質が(好適に)産生される限界温度(好適に産生されるための最高温度)が存在し、該温度より高い温度では、該物質が産生しない若しくは産生し難いことが分かった。
このことは、魚等のような変温動物においては、飼育温度(水温等)が高いと、該変温動物の免疫力が下がることを意味する。
本発明によって、上記「刺激物質と産生物質の相関関係の温度依存性」の結果を用いれば、新たな「免疫関連物質の検討」が可能になり、環境温度が関係する新たな免疫関連物質のスクリーニングが可能になる。
本発明によれば、個体への損傷を極めて軽微に抑え、容易に水泡内細胞を採集して免疫応答等を評価することが可能である。水泡眼金魚の水泡内細胞は、in vitroの免疫刺激に対しても、例えばサイトカイン遺伝子の発現が誘導された。しかも、該発現の誘導は高温感受性を示した。
従って、本発明を利用すれば、免疫系及びその高温感受性の、機序や制御方法が明らかとなることが期待される。
また、魚類の感染症に対して抵抗性を増強することは、水産養殖産業にとって極めて重要であるが、本発明の知見を利用すれば、養殖魚類の生産性を上げることができる。
更に、本発明の態様2によれば、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を培地で培養した後に、該細胞が産生した産生物質自体若しくは該産生物質の遺伝子を、in vitroで定量して、該刺激物質と該産生物質の相関関係を明らかにすることができる。
本発明によって、in vivoである態様1において上記相関関係(例えば、産生物質の産生量)に温度依存性(高温感受性)があることが分かったことに加え、更に、in vitroである態様2においても、すなわち、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地においても、該温度依存性(高温感受性)があることが明らかになった。
本発明の態様2(in vitro)によっても、上記「刺激物質と産生物質の相関関係の温度依存性」の結果を用いれば、例えば、新たな「免疫関連物質の検討」等が可能になり、更に、環境温度が関係する新たな免疫関連物質等のスクリーニングが可能になる。
水泡眼金魚の水泡内細胞を採取してギムザ染色後に撮影した光学顕微鏡写真(対物40倍、写真内の白線は20μm)である。 水泡眼金魚の上後ろから見て左側水泡に生理食塩水、右側水泡に緑膿菌死菌(10倍濃縮)、それぞれ50μLを注射し、室内放置(22〜24℃)にて20時間飼育後に観察したときの写真である(実施例1)。 水泡眼金魚の水泡内細胞の緑膿菌死菌接種に対する4種の炎症性サイトカイン産生応答の時間経過を示すグラフである(実施例2)。(A)IL1β1及びIL1β2のmRNA量の時間ごとの推移 (B)TNFα1及びTNFα2のmRNA量の時間ごとの推移 水泡眼金魚の水泡内細胞の緑膿菌死菌(P)に対する4種のサイトカインの産生応答の温度依存性(高温感受性)を示すグラフである(実施例3)。 水泡眼金魚の水泡内細胞の緑膿菌死菌(PAO1)に対する4種のサイトカインの産生応答(in vitro)の経時変化を示すグラフである(実施例4)。 水泡眼金魚の水泡内細胞の緑膿菌死菌(PAO1)に対する4種のサイトカインの産生応答(in vitro)に及ぼす培養温度の影響を示すグラフである(実施例5)。 3種の水泡眼金魚における、水泡内細胞の緑膿菌死菌に対する「4種のサイトカインの産生応答(in vitro)に及ぼす温度の影響」の個体差を示すグラフである(実施例6)。 緑膿菌生菌を接種した金魚の生存時間(生存率)に及ぼす温度の影響を示すグラフである(実施例7)。 水泡眼金魚の水泡内細胞のPHA及びPolyI:C刺激によるサイトカイン産生応答(in vitro)を示すグラフである(実施例8)。 水泡眼金魚の水泡内細胞のPHA及びPolyI:C刺激によるサイトカイン(IFNγ及びIL1β1)産生応答(in vitro)の細胞数依存性を示すグラフである(実施例9)。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明は、刺激物質を、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させた後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにすることを特徴とする方法である。
<水泡眼金魚>
「水泡眼(金魚)」は、観賞用として中国で開発された金魚の一品種であり、眼球の下に袋状の水泡を有する金魚である。該水泡内にはリンパ液等が貯留されている。
ただし、本明細書等で用いられる「水泡眼金魚」とは、所謂「水泡眼」として、観賞用に中国で開発された金魚の特定品種に留まらず、新たに、「水泡眼金魚の水泡と同等の内包液を含有した水泡」を眼の付近に有する魚類が含まれる。すなわち、魚であれば、観賞用に作出された品種に留まらず、金魚にも限定はされない。
図1に、水泡眼金魚の水泡内細胞の顕微鏡写真を示す。健康な水泡眼金魚の水泡内細胞は、殆どが単核球であった(図1のGiemsa染色像参照)。その中には、in vitroでの実験で、プラスチックに接着性を示す細胞が多く存在した。
<接触>
本発明では、上記刺激物質を、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させることが必須であるが、該「接触」は、in vivoにおいては、該刺激物質を水泡眼金魚の水泡に直接注射等で投与した結果、直接該刺激物質が該細胞に接触することを含み、また、該刺激物質を水泡眼金魚の水泡以外の部位に投与、例えば、注射による腹腔内、血液内への投与;給餌による消化器内への投与;該刺激物質を含有する水(刺激物質の水溶液)に水泡眼金魚を浸漬することによる投与;等を行った結果、該刺激物質が該水泡眼金魚の体内を巡り、水泡内の細胞に達して、該細胞に接触することを含む。
また、該「接触」は、in vitroにおいては、該刺激物質を、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地に配合することで、該刺激物質を該細胞に接触させることを含む。
水泡眼金魚の水泡内に、刺激物質を投与すると、該水泡内で、該刺激物質と該水泡内の細胞が接触し、該水泡表面に血管の拡張及び発赤が見られ、炎症応答が誘導された(実施例1、図2参照)
<刺激物質>
上記刺激物質とは、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させることで、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等と言った「該動物内に生じる物質(産生物)」を産生させる物質のことであり、評価の対象となる物質全般を言う。
具体的には、例えば、細菌、真菌等の、生菌、死菌、菌の一部、菌産生物、菌由来物;ウイルス自体等の「ウイルス若しくは微生物に関係(由来)する物質」;一般食品、健康食品等の食品;医薬、農薬等の薬剤;食品添加物、大気汚染物質、海洋汚染物質等の危険性予想物質;種々の恒常性打破物質(トランジスタシス惹起物質);マイトジェン等のレクチン;等が挙げられる。
<産生物質>
本発明では、上記刺激物質を、水泡内の細胞に接触させた後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量する。
ここで「産生物質」は、該刺激物質の接触により、水泡内の細胞が産生する物質であれば、特に限定はないが、有用性等から、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質、病原体認識物質等と言った「ヒトに影響を与える物質」であることが好ましい。
言い換えれば、本発明の方法を使用することによって、未知の、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質、病原体認識物質等を捉えることが可能であり、また、刺激物質と、既知の「免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質、病原体認識物質等」との相関関係を評価する(求める)ことができる。
また、既知の「免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質、病原体認識物質等」を産生させる未知の刺激物質の探索が可能である。
上記免疫関連物質としては、例えば、サイトカイン、インターロイキン類等の免疫調節物質;インターフェロン等の抗ウイルス性物質;等が挙げられ、上記ストレス抑制物質としては、例えば、スーパーオキサイドジスムターゼ、NO合成酵素等の抗酸化物質等が挙げられる。
また、上記自然免疫活性化物質としては、例えば、TNFα1、TNFα2、IL1β1、IL1β2等の炎症性サイトカイン;等が挙げられ、上記病原体認識物質としては、Toll様受容体TLR等が挙げられる。
<定性・定量の相関関係>
ここで、「相関関係を評価する(求める)」とは、定性的な評価と、定量的な評価とが挙げられる。
「定性的な評価」には、特定の刺激物質と特定の産生物質との対応関係の評価等が挙げられる。
「定量的な評価」には、特定の刺激物質の接触量(使用量)(in vivoの場合は投与量、in vitroの場合は配合量)と、それによる特定の産生物質の産生量との相関関係等が含まれる。
定量的な相関関係の評価において、上記産生物質の定量は、該産生物質を公知の化学的手法・分析的手法で直接行ってもよく、該産生物質に対応した遺伝子の定量により行ってもよい。上記「遺伝子の定量」は、上記細胞から抽出した「産生物質のmRNAの定量」であることが、当初の段階では微量の場合でも、定量化できる点等から好ましい。
より具体的には、水泡内の液に含有される細胞を採取してRNAを抽出し、qRT−PCRにより、mRNA量を測定することが特に好ましい。
遺伝子を定量したときには、上記した「免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等と言った『ヒトに影響を与える物質』」等の産生物質は、該遺伝子の遺伝子産物と言うことになる。
<in vivoである態様1発明、及び、in vitroである態様2発明>
本発明は、in vivoである態様1の発明と、in vitroである態様2の発明とを有してなる。
態様1は、上記刺激物質を、水泡眼金魚に投与し、該水泡眼金魚を特定温度で飼育した後に、該水泡眼金魚の水泡内の細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにする上記の方法であり、in vivoの方法である。
態様2は、上記刺激物質を、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地に配合し、特定温度で該細胞を培養した後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質の相関関係を明らかにする上記の方法であり、in vitroの方法である。
<<態様1(in vivo)>>
態様1において、刺激物質の投与方法としては、水泡眼金魚の水泡内への注射、水泡眼金魚の水泡外への注射、水泡眼金魚への給餌、又は、上記刺激物質の水溶液への水泡眼金魚の浸漬(すなわち、水泡眼金魚の飼育水槽に刺激物質を配合することによる水泡眼金魚への投与(取り込み))等が挙げられる。刺激物質が、水泡外への注射、給餌、浸漬等によって水泡外に投与された場合は、該刺激物質は水泡眼金魚の体内を巡って水泡内の細胞に接触する。
刺激物質を投与した後、水泡眼金魚を特定温度で飼育する。該特定温度(飼育温度)は重要であり、飼育温度が高いと産生物質の産生量が徐々に減少する場合がある。また、ある限界温度を境に、それより高い温度だと、急激に産生物質の産生量が減少する場合がある。
従って、本発明において、刺激物質と産生物質との相関関係を明らかにする場合には、該特定温度(水槽の温度等の飼育温度等)を30℃以下にすることが好ましく、28℃以下にすることがより好ましく、25℃以下にすることが特に好ましい。上記温度より高いと、測定目標である産生物質の量が減少し過ぎて測定ができない場合がある。
<<<in vivoでの温度依存性>>>
本発明の態様1は、更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする上記の方法でもある。ここで、「限界温度」とは、それより高い温度では産生物質の産生量が極端に減少する温度のことである。
詳細には、本発明の態様1は、更に、水泡眼金魚の飼育温度を変化させて、上記刺激物質を投与することで産生される上記産生物質の量の温度依存性を求め、該温度依存性(高温感受性)の有無若しくは大小、又は、該産生物質が好適に産生される(実質的)最高温度を明らかにする上記の方法である。
なお、(水泡眼金魚等の)魚は変温動物であるから、飼育温度と、水泡内液体や水泡内細胞の温度とは、等しいと考えられる。
本発明において、産生物質がサイトカイン等の免疫関連物質であるとき、飼育温度が高いと変温動物における免疫機能が落ちることが初めて明らかになった(in vivoの実施例参照)。
また、本発明において、緑膿菌死菌(刺激物質)に対するサイトカイン(産生物質)の産生量が、培養温度(細胞の温度)の上昇と共に減少することが、in vitroでも確認された(in vitroの実施例参照)。
上記温度依存性を求めるときには、飼育温度の幅は、当然前記30℃以下であることに限定されず、測定温度範囲として、0℃以上45℃以下が好ましく、5℃以上40℃以下がより好ましく10℃以上37℃以下が更に好ましく、15℃以上34℃以下が特に好ましい。上記した下限温度同士は入れ替えることができ、上記した上限温度同士は入れ替えることができる。
<<<個体の変化>>>
また、本発明の態様1には、刺激物質を投与した後に、水泡内液中に産生された産生物質を同定・定量することに加えて、水泡眼金魚と言う個体の変化をも求めることが好ましい(含まれる)。すなわち、本発明の態様1は、更に、上記水泡眼金魚の、生死、又は、発病若しくは異常の有無を確認する上記の方法であることが好ましい。
この際に使用される個体は、水泡内の産生物質を実際に調べた水泡眼金魚には必ずしも限定されず、水泡眼金魚にも限定されない。すなわち、水泡が発達していない魚を用いて、別途、個体の生死、発病、異常等を確認してもよい。
また、複数の個体を使用して、生存率、発病率等を求めてもよい。
個体の生死、又は、発病若しくは異常の有無を観察することによって、「刺激物質、及び/又は、刺激物質の投与によって(水泡内に)産生される産生物質」が、個体に及ぼす影響・影響が明らかになる。刺激物質及び/又は産生物質と、個体の変化との相関を知ることができる。
特に限定はされないが、上記個体の発病としては、口の潰瘍、尾腐れ、ヒレ腐れ、穴あき病、松かさ病、眼球突出等が挙げられ、上記個体の異常としては、食思不振、平行失調等が挙げられる。
<<態様2(in vitro)>>
本発明の態様2は、上記刺激物質を、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地に配合し、特定温度で該細胞を培養した後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質の相関関係を明らかにすることを特徴とする前記の方法である。
上記培地は、特に限定されず、培養できれば何れのものも使用できるが、特に好ましくは、RPMI1640培地、Leibovitz’s L−15培地等である。培地には、抗生物質、鯉血清、牛胎仔血清、水泡眼金魚の水泡液(自家水泡液)等を配合することも好ましい。
上記特定温度(培養温度)としては、培養できれば特に限定はないが、好ましくは、上記態様1(in vivo)の個所で飼育温度として記載した温度(範囲)が挙げられる。
上記培養時間は、特に限定はないが、1時間以上48時間以下が好ましく、1.5時間以上24時間以下がより好ましく、2時間以上12時間以下が特に好ましい。
上記「配合」を含めた培地の調製方法は、特に限定はなく公知の方法が使用できる。例えば、上記刺激物質と上記細胞の添加の順番は、特に限定はなく、どちらが先でもよい。
態様2(in vitro)における「細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子」を定量する方法は、上記態様1(in vivo)の個所で記載した方法と同様の方法が使用できる。
<<<in vitroでの温度依存性>>>
本発明の態様1は、更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする上記の方法でもある。「相関関係」としては、刺激物質と産生物質の定性的な種類の組み合わせ関係、一定量の刺激物質とそれによる産生物質の産生量との関係、等が挙げられる。
「温度依存性」、「限界温度」等については、上記態様1(in vivo)の飼育温度を、細胞の培養温度と読み換えれば、上記態様1(in vivo)の個所での記載と同様である。
なお、(水泡眼金魚等の)魚は変温動物であるから、水泡内から取り出した細胞のin vitroでの培養温度は、in vivoにおける実際の水槽の温度に対応すると考えられる。
本発明において、緑膿菌死菌(刺激物質)に対するサイトカイン(産生物質)の産生量が、培養温度(細胞の温度)の上昇と共に減少することが、in vitroでも確認された(in vitroの実施例参照)。
このことから、初めて、温度が高いと変温動物における免疫機能が低下することが明らかになった(実施例参照)。
<刺激物質のスクリーニング方法>
本発明は、上記の方法を使用することを特徴とする刺激物質のスクリーニング方法でもある。
上記の方法を使用して、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等の産生の有無若しくは産生量を確認・測定・モニターすれば、態様1では投与した、態様2では配合した物質が、刺激物質となり得るか、刺激物質として有用か否か等が明らかになり、刺激物質のスクリーニングができる。
<産生物質のスクリーニング方法>
本発明は、上記の方法を使用することを特徴とする産生物質のスクリーニング方法でもある。
上記の方法を使用して、特定の刺激物質を、態様1では投与し、態様2では配合すれば、該特定の刺激物質により、水泡内に、すなわち個体内に産生される産生物質がスクリーニングできる。すなわち、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等の「個体に影響を与える物質」が明らかになり、それらのスクリーニングが可能となる。
<組み合わせのスクリーニング方法>
本発明は、上記の方法を使用し、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性が大きい若しくは小さい、又は、該産生物質が産生される限界温度が低い若しくは高い「刺激物質と産生物質の組み合わせ」をスクリーニングすることを特徴とする、組み合わせのスクリーニング方法でもある。
本発明によれば、刺激物質と産生物質との組み合わせのスクリーニングが可能である。
例えば、前記したように、「特定の刺激物質により産生される特定の産生物質」が明らかになれば(対応関係(組み合わせ)が明らかになれば)、該刺激物質の侵入に対して、体内でどのような物質で対抗しているかが分かり、例えば、医薬、健康食品、生活習慣等の開発・創出に資することができる。
また、上記刺激物質と上記産生物質の相関関係の温度依存性が分かれば、免疫系等の研究に役立ち、例えば、医薬等の開発にも利用できる可能性がある。また、基礎研究の発展に資することとなる。また、魚の養殖業の発展にも貢献する。
以下、実施例及び検討例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。以下、「%」と言う記載は、それが質量に関するものについては「質量%」を意味する。
実施例1
<緑膿菌死菌の水泡内注射による自然免疫モニタリング>
水泡眼金魚(22〜24℃の水温にて飼育)の上後ろから見て右側の水泡に、オートクレーブ処理した緑膿菌死菌(10倍濃縮)を、上後ろから見て左側の水泡に生理食塩液を、それぞれ50μL注射し、22〜24℃の水温にて20時間飼育後に、その外観を観察した(図2参照)。
その結果、上後ろから見て右側の水泡表面に血管の拡張及び発赤が見られ、炎症応答が誘導されていることが示唆された(図2参照)。
実施例2
<緑膿菌死菌の水泡内注射による水泡内細胞のサイトカイン産生応答>
水泡内への緑膿菌死菌の投与(注射)後、同一個体の水泡内細胞を経時的に採取して、緑膿菌死菌による炎症性サイトカイン遺伝子の発現誘導を調べた(図3A、図3B)。
すなわち、一方の水泡内(1R)に緑膿菌死菌(10倍濃縮50μL)、他方の水泡内(1L)に生理食塩液(50μL)を接種し、接種後に23℃で飼育し、経過時間ごとに水泡内細胞を採取してRNAを抽出し、qRT−PCRにより5種のmRNA量を測定し、EF1αのmRNA量に対してノーマライズしたときの値を縦軸にとったグラフを図3(A)(B)に示す。図3(A)は、IL1β1及びIL1β2のmRNA量の時間ごとの推移であり、図3(B)は、TNFα1及びTNFα2のmRNA量の時間ごとの推移である。
緑膿菌死菌を注射した水泡(1R)(図2の上から見て右側)から採取した細胞は、IL1β1、IL1β2、TNFα1及びTNFα2のmRNAレベルが上昇し、何れも2〜4時間でピークに達した(図3全図)。
IL1β1及びIL1β2のmRNAは、高いレベルが24時間以上持続した(図3(A))。
8時間以降、生理食塩液を注射した水泡(1L)(図2の上から見て左側)から採取した細胞においても、IL1β1では、高いmRNAレベルが認められた(図3(A)の左側のグラフ)。
左右の水泡ともに、生理食塩液を注射した場合には、IL1β1のmRNAレベルの変化は僅かであった。
一方、他の炎症性サイトカインIL1β2、TNFα1及びTNFα2については、生理食塩液を注射した水泡から採取した細胞のmRNAレベル(変化)は、反対側水泡への緑膿菌死菌注射の有無に拘らず軽微であった(図3(A)の右のグラフ、図3(B)の左右のグラフ)。
これらの結果から、水泡内への緑膿菌死菌の注射によって、炎症性サイトカインの局所発現が早期に誘導されることが示唆された。すなわち、水泡内への緑膿菌死菌の接種により、水泡局所で強い免疫・炎症応答が誘導されることがサイトカインレベルで明らかになった。
また、水泡眼金魚の水泡内細胞は、免疫・炎症性細胞から成り、水泡眼金魚は、免疫・炎症の研究に有用であることが分かった。
実施例3
<水泡内細胞の炎症性サイトカイン遺伝子の発現に及ぼす飼育温度の影響>
水泡内細胞における炎症性サイトカイン遺伝子の発現に及ぼす水泡眼金魚の飼育温度の影響を調べた。すなわち、様々な水温で飼育した水泡眼金魚を用いて、水泡内細胞のサイトカイン産生応答の温度感受性について検討した(図4参照)。
すなわち、一方の水泡内に緑膿菌死菌(P)を接種し、他方の水泡内に生理食塩液(S)を接種して1日後、水泡内細胞を採取してRNAを抽出し、RT−qPCRにより、IL1β1、IL1β2、TNFα1、TNFα2及びEF1αのmRNA量を測定し、EF1αのmRNA量に対してノーマライズしたときの値を縦軸にとったグラフを図4に示す。図4中の「S」は生理食塩液接種、「P」は緑膿菌死菌接種を示す。
30℃〜35℃の飼育温度では、通常の飼育温度である24℃に比べて、炎症性サイトカインのmRNAレベルの上昇は低かった(図4参照)。
これらの結果から、緑膿菌死菌の水泡内接種により誘導される炎症性サイトカインの産生応答は、高温感受性であることが示唆された。
(図4参照)。
実施例4
<緑膿菌死菌のin vitro刺激による水泡内細胞のサイトカイン産生応答>
水泡から採取した細胞を、in vitroで緑膿菌死菌と混合培養し、炎症性サイトカインの発現(の時間変化)を、qRT−PCRにより調べた(図5参照)。図5中、「PAO1」は、緑膿菌死菌を配合した方の水泡内細胞が産生したサイトカインのmRNA量を示す。
すなわち、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を、10%BCS、3%自家水泡液、及び、抗生物質を加えたRPMI1640培地に懸濁し、24穴プレート(8×10/穴)にて、オートクレーブ処理緑膿菌(PAO1)存在下/非存在下(−)に、25℃で、2〜6時間培養した。本明細書において、「自家水泡液」とは、水泡内細胞を採取した水泡眼金魚の水泡液のことを言う。
その後、RNAを抽出して、RT−qPCRにより、mRNA量を測定し、EF1αのmRNA量に対してノーマライズした結果を図5に示す。
緑膿菌死菌の2〜6時間刺激により、何れの時間でも、炎症性サイトカインIL1β1、IL1β2、TNFα1及びTNFα2のmRNAレベルが上昇した(図5参照)。
水泡眼金魚の水泡内細胞は、免疫・炎症性細胞から成り、該細胞は、in vitroにおいても、免疫及び炎症の研究に有用であることが分かった。
実施例5
<緑膿菌死菌のin vitro刺激による水泡内細胞におけるサイトカイン遺伝子の発現の培養温度依存性>
緑膿菌死菌のin vitro刺激(4時間)による、水泡内細胞における炎症性サイトカイン遺伝子の発現に及ぼす培養温度の影響を調べた(図6参照)。図6中、「PAO1」は、緑膿菌死菌を、「Saline」は生理食塩液を配合した方の水泡内細胞が産生したサイトカインのmRNA量を示す。
25℃に比べ、29℃以上で、IL1β1、TNFα1及びTNFα2のmRNAレベルの上昇が低下し、33℃では、これらの炎症性サイトカインに加えて、IL1β2のmRNAレベル上昇も低下した(図6参照)。
実施例6
<複数の水泡眼金魚でのin vitro刺激によるサイトカイン発現の温度依存性>
次に、3匹の水泡眼金魚(金魚1、金魚2、金魚3)を用いて、実施例5の再現性を確かめた。すなわち、複数の水泡眼金魚から水泡内細胞を採取して、25℃と33℃の炎症性サイトカインの発現レベルを比較した(図7参照)。
具体的には、水泡眼金魚3匹の水泡から採取した細胞を、それぞれ、10%BCS、3%自家水泡液、及び、抗生物質を加えたRPMI1640培地に懸濁し、オートクレーブ処理緑膿菌(PAO1)存在下に、24穴プレート(8×10/穴)で、25℃及び33℃で、4時間培養した。
その後、RNAを抽出してRT−qPCRにより、mRNA量を測定し、EF1αのmRNA量に対してノーマライズした結果を図7に示す。
その結果、IL1β1、TNFα1及びTNFα2のmRNAレベルの上昇は、25℃に対して33℃で統計学的に有意に低かった(図7参照)。IL1β2のmRNAレベルの上昇も、25℃に対して33℃で低下傾向が認められた(図7参照)。
[実施例3〜6の結果まとめ]
上記した実施例4、5、6の結果は、水泡内の単核球が、緑膿菌死菌に反応して炎症性サイトカインを発現誘導すること、及び、その応答が、実施例3のin vivoと同様に、高温感受性であることが示唆された。
これより、自然免疫、すなわち細菌感染に対する抵抗性は、高い水温での飼育で低下することが推測された。
実施例7
<金魚の緑膿菌感染抵抗性に及ぼす飼育温度の影響>
そこで、緑膿菌生菌を金魚の腹腔内に接種し、生存時間に及ぼす飼育温度の影響を調べた。すなわち、体重が4.2g±0.6gの金魚(n=3/グループ、2グループ)に、緑膿菌の生菌(P. aeruginosa(PAO1))のフルグロースの懸濁液50μLを腹腔内に注射し、飼育水温(水槽の温度)で、生存率(個数)を測定した(図8参照)。
その結果、29℃では、通常の飼育温度である21℃に比べて、平均生存時間が1/6以下に短縮した(図8参照)。これより、高温で細菌感染に対する金魚の抵抗性が低下することが示唆された。
実施例8
水泡眼金魚の水泡内細胞の培養系を用いて、in vitro刺激によるサイトカイン産生応答について検討した。
水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を、10%BCS及び抗生物質を加えたRPMI1640培地に懸濁し、PHA(50μg/mL)、又は、PolyI:C(50μg/mL)存在下に、24穴プレート(2x10/穴)で、4時間又は24時間培養し、水泡内細胞を採取してRNAを抽出し、RT−qPCRにより、それぞれのmRNA量を測定し、EF1αのmRNA量に対してノーマライズし、4時間培養のコントロール群のmRNA量を1としたときの相対量を縦軸に示す(図9参照)。
T細胞マイトジェンPHA、又は、TLR3アゴニストPolyI:Cで、in vitro刺激した結果、以下が分かった(図9参照)。
(1)PHAの4時間刺激により、IFNγ(生理食塩液対照に対し13倍)、IL1β(同12倍)、及び、TNFα2(同15倍)のmRNAレベルが高まった。
(2)PolyI:Cの4時間刺激により、IL1β1(生理食塩液対照に対し80倍)、IL1β2(同30倍)のmRNAレベルが高まった。
(3)24時間刺激では、これらのサイトカインのmRNAレベルは低かった。
図9の結果は、水泡眼金魚の水泡内細胞は、in vitroの免疫刺激に応答して免疫・炎症性サイトカインを産生し、その応答は数時間以内の早い応答であることを示唆している。
実施例9
水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を、10%BCS及び抗生物質を加えたRPMI1640培地に懸濁し、24穴プレートに、1穴当りの細胞数が、2×10、6×10、2×10、6×10 となるように撒き、PHA(50μg/mL)、又は、PolyI:C(50μg/mL)存在下に、4時間培養した。
RNAを抽出して、RT−qPCRにより、それぞれのmRNA量を測定した。図10の縦軸は、EF1αのmRNA量に対してノーマライズし、細胞数2×10のコントロール群のmRNA量を1としたときの相対量を示す(図10参照)。
水泡眼金魚の水泡内細胞のin vitro刺激によるサイトカイン発現応答は、細胞数に依存した(図10参照)。
1穴当りの細胞数6×10個(24穴プレート)でも、PHA刺激によるIFNγmRNAの発現応答、及び、PolyI:C刺激によるIL1β1mRNAの発現応答が認められた(図10参照)。
本発明によれば、すなわち、水泡眼金魚の水泡内の液を用いれば、ヒトに対して好ましい、例えば、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質等を、水泡内の細胞の産生した産生物として、容易に、正確に、定量的に捉えることができるので、本発明は、種々の刺激物質、ヒトの体内での産生物質等の検討に広く利用されるものであり、更には、水産養殖産業にも利用されるものである。

Claims (15)

  1. 刺激物質を、水泡眼金魚の水泡内の細胞に接触させた後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにすることを特徴とする方法。
  2. 上記刺激物質を、水泡眼金魚に投与し、該水泡眼金魚を特定温度で飼育した後に、該水泡眼金魚の水泡内の細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質との相関関係を明らかにする請求項1に記載の方法。
  3. 上記投与が、水泡眼金魚の水泡内への注射、水泡眼金魚の水泡外への注射、水泡眼金魚への給餌、又は、上記刺激物質の水溶液への水泡眼金魚の浸漬である請求項2に記載の方法。
  4. 上記特定温度が30℃以下である請求項2に記載の方法。
  5. 更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする請求項2ないし請求項4の何れかの請求項に記載の方法。
  6. 更に、上記水泡眼金魚の、生死、又は、発病若しくは異常の有無を確認する請求項2ないし請求項5の何れかの請求項に記載の方法。
  7. 上記刺激物質を、水泡眼金魚の水泡から採取した細胞を含有する培地に配合し、特定温度で該細胞を培養した後に、該細胞が産生した産生物質若しくは該産生物質の遺伝子を定量して、該刺激物質と該産生物質の相関関係を明らかにする請求項1に記載の方法。
  8. 更に、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性の有無、又は、該産生物質が産生される限界温度を明らかにする請求項1又は請求項7に記載の方法。
  9. 上記刺激物質が、細菌若しくは真菌の、生菌、死菌、菌の一部、菌産生物、又は、菌由来物;ウイルス若しくは微生物、又は、それら由来物;食品;医薬;農薬;食品添加物;大気汚染物質;海洋汚染物質;又は;レクチンである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の方法。
  10. 上記産生物質が、免疫関連物質、ストレス抑制物質、自然免疫活性化物質、又は、病原体認識物質である請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の方法。
  11. 上記免疫関連物質がサイトカインである請求項10に記載の方法。
  12. 上記「産生物質の遺伝子の定量」が、上記細胞から抽出した「産生物質のmRNAの定量」である請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載の方法。
  13. 請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の方法を使用することを特徴とする刺激物質のスクリーニング方法。
  14. 請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の方法を使用することを特徴とする産生物質のスクリーニング方法。
  15. 請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の方法を使用し、「上記刺激物質と『上記産生物質若しくは該産生物質の遺伝子』の相関関係」の温度依存性を求め、該温度依存性が大きい若しくは小さい、又は、該産生物質が産生される限界温度が低い若しくは高い「刺激物質と産生物質の組み合わせ」をスクリーニングすることを特徴とする組み合わせのスクリーニング方法。
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