JP2021175741A - 無機抗ウイルス剤 - Google Patents

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Mariko Kimura
和彰 大橋
Kazuaki Ohashi
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Abstract

【課題】 エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する無機抗ウイルス剤を提供すること。【解決手段】 本発明の無機抗ウイルス剤は、金属がドープされたシリカからなる。金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄が挙げられる。本発明の無機抗ウイルス剤は、金属がドープされたシリカが、これを分散媒に懸濁することで調製したスラリーに含まれる形態で利用してもよい。【選択図】 なし

Description

本発明は、無機抗ウイルス剤に関する。
近年、感染することで重篤な症状を引き起こす新型のインフルエンザウイルスやコロナウイルスの出現などから、ウイルス感染対策のための抗ウイルス剤に関心が高まっていることは周知の通りである。抗ウイルス剤の有効成分は、これまでに様々なものが提案されているが、このうち有機成分に比較して化学的安定性に優れる無機成分としては、銅や銀などの金属のイオンが、抗ウイルス作用を発揮することが古くから知られている(例えば特許文献1)。また、特許文献2では、多孔質シリカであるメソポーラスシリカが、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用を発揮することが報告されている。
ところで、ウイルスは、その構造から、脂質や糖たんぱく質からなるエンベロープを持つウイルス(エンベロープウイルス)と持たないウイルス(ノンエンベロープウイルス)に大別される。インフルエンザウイルスはエンベロープウイルスの代表例であって、ノロウイルスはノンエンベロープウイルスの代表例であるが、ノンエンベロープウイルスは、エンベロープウイルスに比較して、アルコールや熱に強く、感染力も強いと言われている。そのため、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する無機抗ウイルス剤が望まれている。
特開2011−042615号公報 特開2019−151592号公報
そこで本発明は、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する無機抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、金属がドープされたシリカが、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮することを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の無機抗ウイルス剤は、請求項1記載の通り、金属がドープされたシリカからなる。
また、請求項2記載の無機抗ウイルス剤は、請求項1記載の無機抗ウイルス剤において、シリカにドープされる金属が、銅、アルミニウム、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄からなる群から選択される少なくとも一種である。
また、請求項3記載の無機抗ウイルス剤は、請求項2記載の無機抗ウイルス剤において、シリカにドープされる金属が、銅および/またはアルミニウムである。
また、請求項4記載の無機抗ウイルス剤は、請求項1乃至3のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤において、シリカが多孔質シリカである。
また、請求項5記載の無機抗ウイルス剤は、請求項1乃至3のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤において、シリカが非多孔質シリカである。
また、請求項6記載の無機抗ウイルス剤は、請求項1乃至5のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤において、金属がドープされたシリカが、これを分散媒に懸濁することで調製したスラリーに含まれる。
また、本発明の物品は、請求項7記載の通り、請求項1乃至6のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤を含む。
本発明によれば、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する無機抗ウイルス剤を提供することができる。
本発明の無機抗ウイルス剤は、金属がドープされたシリカからなる。ここで、「金属がドープされたシリカ」とは、シリカを構成するシロキサン結合からなる無機ネットワーク中に金属が化学結合して組み込まれているシリカを意味する。金属がドープされたシリカは、多孔質であってもよいし、非多孔質であってもよく、その形状に特段の制限はない。
シリカにドープされる金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属がドープされたシリカ中の金属の含量(2種以上の金属を組み合わせて用いる場合はそれぞれの合計量)は、例えば0.01〜10wt%、好ましくは0.1〜5wt%である。金属がドープされたシリカ中の金属の含量が0.01wt%を下回ると、十分な抗ウイルス作用が得られない恐れがある一方、10wt%を超える量の金属がドープされたシリカは、製造が困難な恐れがある。2種以上の金属を組み合わせて用いる場合、金属間の含量比率は、例えば1つの金属の含量に対してその他の金属の含量が0.1〜2倍であってよい。
金属がドープされたシリカが多孔質の場合、金属がドープされた多孔質シリカは、例えば本発明者らが特開2020−15640号公報に記載したものであってよい。具体的には、次の通りである。
多孔質シリカとしては、例えば直径2〜50nmの細孔(メソ孔)が規則的に配列したメソポーラスシリカが挙げられる。
多孔質シリカの比表面積は、例えば500〜2000m/gであることが、耐久性を維持することができる点において好ましい。
金属がドープされたメソポーラスシリカの製造は、例えば特開2020−15640号公報に記載した自体公知の以下の方法に従って行うことができる。
(工程1)
まず、界面活性剤と、金属をメソポーラスシリカにドープするための原料を、溶媒に溶解し、例えば30〜200℃で0.5〜10時間攪拌することで、界面活性剤にミセルを形成させる。
界面活性剤の溶媒への溶解量は、例えば10〜400mmol/L、好ましくは50〜150mmol/Lである。或いは、界面活性剤の溶媒への溶解量は、後述する工程2において添加するシリカ原料1molに対し、例えば0.01〜5.0mol、好ましくは0.05〜1.0molである。
界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の何れを用いてもよいが、好ましくはアルキルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤である。アルキルアンモニウム塩は、炭素数が8以上のアルキル基を有するものが好ましく、工業的な入手の容易さに鑑みると、炭素数が12〜18のアルキル基を有するものがより好ましい。アルキルアンモニウム塩の具体例としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属をメソポーラスシリカにドープするための原料の溶媒への溶解量(2種以上の金属を組み合わせて用いる場合はそれぞれの原料の合計量)は、後述する工程2において添加するシリカ原料1molに対し、例えば0.001〜0.5mol、好ましくは0.01〜0.1molである。
金属をメソポーラスシリカにドープするための原料としては、例えば金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、オキシ塩化物を用いることができる。銅をドープする場合は硝酸銅や塩化銅を用いることが好ましい。アルミニウムをドープする場合は塩化アルミニウムを用いることが好ましい。ジルコニウムをドープする場合はオキシ塩化ジルコニウムを用いることが好ましい。コバルトをドープする場合は硝酸コバルトを用いることが好ましい。マンガンをドープする場合は塩化マンガンを用いることが好ましい。鉄をドープする場合は塩化鉄を用いることが好ましい。金属をドープするための原料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒としては、例えば水を用いることができる。溶媒は、水と、メタノール、エタノール、ジエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールをはじめとする水溶性有機溶媒の混合溶媒であってよい。
(工程2)
次に、工程1において得た、界面活性剤がミセルを形成する溶液に、シリカ原料を例えば室温で溶解し、均一になるまで攪拌して、界面活性剤のミセルの表面にシリカ原料を集積させる。シリカ原料の溶液への溶解量は、例えば0.2〜1.8mol/Lである。或いは、溶媒として水や水と水溶性有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、水1molに対し、例えば0.001〜0.05molである。
シリカ原料は、脱水縮合することでメソポーラスシリカを構成するシロキサン結合からなる無機ネットワークを形成するものであれば特に限定されない。シリカ原料の具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシランや、ケイ酸ナトリウムが挙げられる。好ましくはテトラアルコキシシランであり、より好ましくはテトラエトキシシランである。シリカ原料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(工程3)
次に、界面活性剤のミセルの表面に集積させたシリカ原料を脱水縮合させて、メソポーラスシリカを構成するシロキサン結合からなる無機ネットワークを形成させるとともに、無機ネットワーク中に金属を化学結合させて組み込ませる。シリカ原料の脱水縮合は、例えば、系内に塩基性水溶液を添加してpHを上げた後、室温で1時間以上攪拌することで行わせることができる。塩基性水溶液は、pHが添加直後に8〜14となるように添加することが好ましく、9〜11となるように添加することがより好ましい。塩基性水溶液の具体例としては、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア水が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。塩基性水溶液は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、シリカ原料の脱水縮合は、系内に塩酸水溶液などの酸性水溶液を添加してpHを下げた後、攪拌することで行わせることもできる。
(工程4)
最後に、工程3において得た、メソポーラスシリカを構成するシロキサン結合からなり、金属が化学結合して組み込まれた無機ネットワークを表面に形成させた界面活性剤のミセルを、沈殿物として濾過して回収し、例えば、30〜70℃で10〜48時間乾燥した後、400〜600℃で1〜10時間焼成することで、目的とする金属がドープされたメソポーラスシリカを得る。こうして得た金属がドープされたメソポーラスシリカは、必要に応じてミキサーやミルで粉砕し、所望する粒径(例えばメディアン径が0.01〜100μm)を有するようにしてもよい。
なお、金属をメソポーラスシリカにドープするための原料の系内への添加は、上記の工程1において界面活性剤とともに溶媒に溶解する態様に限定されず、工程3におけるシリカ原料が脱水縮合することによるメソポーラスシリカを構成するシロキサン結合からなる無機ネットワークの形成が完結するまでであれば、工程2や工程3において溶液に溶解する態様であってもよい。
金属がドープされたシリカが非多孔質の場合、金属がドープされた非多孔質シリカは、例えば非多孔質シリカを製造する方法としてよく知られている沈降法を利用して製造することができる。具体的には、シリカ原料としてのケイ酸アルカリ金属塩と鉱酸を中和反応させる際、金属を非多孔質シリカにドープするための原料を系内に共存させることにより製造することができる。金属を非多孔質シリカにドープするための原料は、前述の金属をメソポーラスシリカにドープするための原料と同じであってよい。金属を非多孔質シリカにドープするための原料の使用量(2種以上の金属を組み合わせて用いる場合はそれぞれの原料の合計量)は、シリカ原料としてのケイ酸アルカリ金属塩1molに対し、例えば0.001〜0.5mol、好ましくは0.01〜0.1molである。シリカ原料として用いるケイ酸アルカリ金属塩は、沈降法にて非多孔質シリカを製造するために用いる一般的なものであってよい。具体的にはケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムなどが挙げられ、そのシリカとアルカリのモル比:SiO/MO(MはNaやKなど)は例えば0.5〜4である。ケイ酸アルカリ金属塩の溶媒(水など)への溶解量は、溶媒1molに対し、例えば0.001〜0.05molである。鉱酸としては塩酸や硫酸や硝酸を用いることができる。金属がドープされた非多孔質シリカは、ケイ酸アルカリ金属塩と鉱酸の中和反応によって生成する沈殿物として得られ、その濾取や洗浄や乾燥などは、沈降法にて非多孔質シリカを製造する際に採用される方法に準じればよい。必要に応じて最後に300℃以上の高温で焼成してもよい。こうして製造される金属がドープされた非多孔質シリカの比表面積(BET比表面積)は、例えば0.1〜350m/gである。必要に応じてミキサーやミルで粉砕し、所望する粒径(例えばメディアン径が0.01〜100μm)を有するようにしてもよいことは、前述の金属がドープされたメソポーラスシリカと同様である。
本発明の無機抗ウイルス剤は、繊維製品、不織布製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスチック、フィルム、セラミックス、紙、パルプ、金属加工油、水処理剤、化粧品、文房具、玩具、容器、キャップ、注出具、スパウトなどの我々の身の回りの物品に抗ウイルス性を付与するための素材として利用することができる。その利用態様は、従来から知られている、無機抗ウイルス剤の利用態様と同じであってよく、例えば、塗料などに配合して物品の表面に塗布する態様や、物品を製造するための材料(紙、繊維、不織布、樹脂など)に配合したり担持させたりして物品を製造する態様で利用することで、物品に抗ウイルス性を付与することができるとともに、物品が容器などの場合には、物品に封入や充填した内容物に対して抗ウイルス作用を発揮することも期待することができる。また、本発明の無機抗ウイルス剤は、ペレット状などに成形し、物品と混合して、或いは、それ単独で利用することもできる。
また、本発明の無機抗ウイルス剤は、金属がドープされたシリカが、これを分散媒に懸濁することで調製したスラリーに含まれる形態で利用してもよい。このような形態を採用することで、本発明の無機抗ウイルス剤を、洗剤、スプレー、エアゾールなどの各種の液状物品に、優れた分散性で配合することができる。金属がドープされたシリカの分散媒への懸濁は、スラリー中の金属がドープされたシリカの含量が例えば0.1〜30wt%、好ましくは0.5〜20wt%、より好ましくは1〜15wt%となるように行えばよい。スラリー中の金属がドープされたシリカの含量が30wt%を上回るようになる量の金属がドープされたシリカを分散媒に懸濁させることは、粘度が高くなることで困難になる恐れがある一方、金属がドープされたシリカの含量が0.1wt%を下回るスラリーは、金属がドープされたシリカが抗ウイルス作用を十分に発揮しない恐れがある。分散媒としては、例えば水を用いることができる。分散媒として用いる水は、メタノール、エタノール、ジエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールをはじめとする水溶性有機溶媒を含んでいてもよいが、水の含量は50wt%以上であることが好ましい。分散媒のpHは、例えば5〜11、好ましくは6〜9である。分散媒のpHが5を下回ると、シリカにドープされた金属が溶解する恐れがある一方、分散媒のpHが11を上回ると、シリカが溶解する恐れがある。
本発明の無機抗ウイルス剤は、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する。従って、その抗ウイルス作用の対象となるウイルスの種類は限定されるものではなく、様々な病原ウイルス、例えば、エンベロープウイルスとしては、A型,B型,C型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜウイルス)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型,C型,D型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、ガナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱ウイルス、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS−CoV−2ウイルス(COVID−19ウイルス)、ヘルペスウイルス、水痘帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルス、オニョンニョンウイルスなどを対象とすることができ、ノンエンベロープウイルスとしては、ライノウイルス、ポリオウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、A型,E型肝炎ウイルス、ヒトパルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルスなどを対象とすることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
製造例1:銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの製造
界面活性剤としてのヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、銅をメソポーラスシリカにドープするための原料としての塩化銅、アルミニウムをメソポーラスシリカにドープするための原料としての塩化アルミニウムを、溶媒としての水に溶解し、100℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却してから、シリカ原料としてのテトラエトキシシランをさらに溶解して均一になるまで攪拌した。次いで、反応液に、塩基性水溶液としての水酸化ナトリウム水溶液を、添加直後のpHが9となるように添加し、室温で20時間攪拌した。生成した沈殿物を濾過して回収し、50℃で24時間乾燥した後、570℃で5時間焼成することで、目的とする銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカをごくわずかに青みがかった白色粉末として得た。
なお、界面活性剤としてのヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、銅をメソポーラスシリカにドープするための原料としての塩化銅、アルミニウムをメソポーラスシリカにドープするための原料としての塩化アルミニウム、溶媒としての水のそれぞれの使用量は、シリカ原料としてのテトラエトキシシラン1molに対し、以下の通りとした。
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド:0.225mol
塩化銅:0.0204mol
塩化アルミニウム:0.0482mol
水:125mol
また、塩基性水溶液としての水酸化ナトリウム水溶液を調製するために、水酸化ナトリウムを、シリカ原料としてのテトラエトキシシラン1molに対し、0.195mol用いた。
以上の方法で得た銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカは、比表面積が1100m/g、細孔の直径が2.5nmであった(マイクロトラックベル社製BELSORP MAX II型を用いて多点法で液体窒素温度にて窒素ガスの吸着等温線を測定しBJH計算により算出、以下同じ)。また、銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカ約50mgを精確に量り取り、4mLの塩酸に溶解した後、塩酸溶液中の銅とアルミニウムの濃度を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Thermo Scientific社製ICP−OES、以下同じ)を用いて測定し、測定結果に基づいて、銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカ中の銅の含量とアルミニウムの含量を算出したところ、銅の含量は1.78wt%であり、アルミニウムの含量は1.84wt%であった。メソポーラスシリカに銅とアルミニウムがドープされていることは、X線光電子分光装置(Thermo Scientific社製K−Alpha Surface Analysis、以下同じ)と透過型電子顕微鏡(JEOL社製JEM2010、以下同じ)で確認した。
製造例2:アルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの製造
製造例1において用いた、銅をメソポーラスシリカにドープするための原料としての塩化銅を用いないこと以外は製造例1と同様にして、アルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを白色粉末として得た(比表面積:1151m/g、細孔の直径:2.5nm、アルミニウムの含量:1.82wt%)。
製造例3:銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを分散媒に懸濁したスラリーの製造
製造例1で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを、ミキサーで粉砕してメディアン径を25〜31μm程度としてから、その11gを、250mLのポリプロピレン製ポット(アイボーイPP広口びん:アズワン社製、以下同じ)に、分散媒としてのイオン交換水99gとメディアとしての2mmφのアルミナボール(ニッカトー社製、アルミナ純度:93%、かさ密度:3.6g/cm、以下同じ)210g(約14000個)とともに入れ、ポットミルで湿式粉砕を8時間行った後、アルミナボールを濾別することで、メディアン径が0.50μmである、スラリー中の微粒子をろ別乾燥した後測定したメソポーラスシリカのX線回折の回折強度においてd値が3.8nmの位置にピークを有する、銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)を得た(メディアン径の測定はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD−3100)による、以下同じ)。
製造例4:アルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを分散媒に懸濁したスラリーの製造
製造例3において用いた、製造例1で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカのかわりに、製造例2で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを用いること以外は製造例3と同様にして、メディアン径が0.55μmである、アルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)を得た。
試験例1:金属がドープされたメソポーラスシリカの抗ウイルス作用
(1)エンベロープウイルスに対する抗ウイルス作用
宿主細胞としてのMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)に、A型インフルエンザウイルス(H3N2、A/Hong Kong/8/68;TC adapted、ATCC VR−1679)を感染させ、培養後、遠心分離によって細胞残渣を除去し、ウイルス懸濁液(感染価:5.2×10PFU/mL)を得た。このウイルス懸濁液1.0mLを、検体としての製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のイオン交換水を分散媒とするスラリー9.0mLに加え、25℃で2時間放置した。放置後の試験液0.5mLと、薬剤不活性化剤としてのSCDLP培地4.5mLを混合し、得られた混合液0.1mLを、EMEM培地0.9mLに加え、薬剤の反応を停止させた後、プラーク測定法にて試験液のウイルス感染価を測定した。結果を表1に示す。なお、表1には、製造例4で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のイオン交換水を分散媒とするスラリー9.0mLを用いた場合の結果と、コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)9.0mLを用いた場合の結果もあわせて示す。
(2)ノンエンベロープウイルスに対する抗ウイルス作用
宿主細胞としてのCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)に、ノロウイルスの代替ウイルスとしてのネコカリシウイルス(F−9、Feline calicivirus;Strain:F−9、ATCC VR−782)を感染させ、培養後、遠心分離によって細胞残渣を除去し、ウイルス懸濁液(感染価:2.1×10PFU/mL)を得た。このウイルス懸濁液1.0mLを、検体としての製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のイオン交換水を分散媒とするスラリー9.0mLに加え、25℃で2時間放置した。放置後の試験液0.5mLと、薬剤不活性化剤としてのウシ胎児血清を終濃度が10%になるように添加したSCDLP培地4.5mLを混合し、得られた混合液0.1mLを、EMEM培地0.9mLに加え、薬剤の反応を停止させた後、プラーク測定法にて試験液のウイルス感染価を測定した。結果を表1に示す。なお、表1には、製造例4で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカの含量が10wt%のイオン交換水を分散媒とするスラリー9.0mLを用いた場合の結果と、コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水9.0mLを用いた場合の結果もあわせて示す。
(3)タンパク質吸着作用とタンパク質分解作用
抗ウイルス作用をもたらす機構として考えられているタンパク質吸着作用とタンパク質分解作用(抗菌・抗ウイルス材料の開発・評価と加工技術、技術情報協会編集、2013年、19−26頁)を次のようにして評価した。
(ア)タンパク質吸着作用
ウシ血清アルブミン(BSA)試薬(Thermo Fisher Scientific社の製品番号:23210)をイオン交換水で希釈して調製したBSA濃度が1mg/mLの溶液0.8mLに、検体としての製造例1で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカ5mgを加え、ボルテックスミキサーを用いて30秒間攪拌してから静置した。2時間後、Thermo Fisher Scientific社の商品名:Pierce 660nm Protein Assayキットを用いた比色アッセイ法によって上澄みのBSA濃度を測定し、試験に供したBSA量からの減少量を、検体に吸着したBSA量として、検体1mgあたりのBSA吸着量を算出した。結果を表2に示す。なお、表2には、製造例2で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカ5mgを用いた場合の結果もあわせて示す。
(イ)タンパク質分解作用
1.5mLのポリプロピレン製マイクロテストチューブに、BSA(和光純薬社製、グロブリン不含)200μgと、検体としての製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリー250mgを入れ、イオン交換水で全量を1mLとした後、室温にて振盪機で振盪することで、BSAと検体を接触させた。60時間後、遠心分離により上澄み液0.8mLを回収し、残存する0.2mLに、10%SDS溶液0.64mLとイオン交換水0.16mLを加え、室温にて振盪機で振盪することで、検体に含まれる銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカから、その表面に電気的に吸着しているBSAやその分解物を分離させた。2時間後、遠心分離により回収した上澄み液0.8mLに含まれるBSAやその分解物を、ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動により目視で観察した。遠心分離により回収した上澄み液のタンパク質濃度をBCA試薬を用いて定量し、ブランクとするBSA溶液の濃度(40μg/mL)と同じ濃度になるようにイオン交換水で希釈してから、その21.84μLを、1Mジチオトレイトール2.18μL、2×SDS PAGE Sumple Buffer(TCI社製)19.65μL、1M Tris−HCl buffer(富士フイルム和光純薬社製)1.31μLとともに1.5mLのポリプロピレン製マイクロテストチューブに入れて混合した後、95℃で7分間加熱し、ポリアクリルアミドゲルにロードした。ポリアクリルアミドゲルはBIO RAD社製のCriterion TGX Precast Gels,12+2well comb,45μL、1.0mmを用いた。200Vで泳動した後、ゲルをBCC試薬で染色してバンドの形態に基づいてタンパク質分解作用を評価した。
Figure 2021175741
Figure 2021175741
表1から明らかなように、製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーも、製造例4で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーも、エンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスに対して優れた抗ウイルス作用を発揮した。また、製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーは、ノンエンベロープウイルスであるネコカリシウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮した。製造例4で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーも、製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーと比較すると劣るが、ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス作用を有していた。なお、製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーも、製造例4で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーも、宿主細胞に対して毒性を有するものではなく、ウイルスへの宿主細胞の感受性を著しく低下させるものでもなかった。また、表2から明らかなように、BSA吸着量は、製造例1で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカも、製造例2で製造したアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカも、1mgあたり100μg以上という極めて高い数値であった。さらに、製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーには、タンパク質分解作用が認められた(種々の分子量のBSA分解物が存在することを意味する電気泳動におけるスメアバンドが観察された)。
なお、金属がドープされていない市販のメソポーラスシリカ(MCM−41:Aldrich社製、細孔の直径:2.1〜2.7nm(メーカー値))の抗ウイルス作用を、試験例1に従って調べたところ、結果は次の通りであった。製造例3と同様にして、この金属がドープされていないメソポーラスシリカ11gを、250mLのポリプロピレン製ポットに、イオン交換水99gと2mmφのアルミナボール210gとともに入れ、ポットミルで湿式粉砕を3時間行った後、アルミナボールを濾別することで得た、メディアン径が1.17μmである、スラリー中の微粒子をろ別乾燥した後測定したメソポーラスシリカのX線回折の回折強度においてd値が3.7nmの位置にピークを有する、金属がドープされていないメソポーラスシリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)の、インフルエンザウイルス(感染価:1.0×10PFU/mL)に対する抗ウイルス作用とネコカリシウイルス(感染価:2.6×10PFU/mL)に対する抗ウイルス作用を表3に示す。表3から明らかなように、金属がドープされていないメソポーラスシリカを含有するスラリーには、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用が認められたが、その程度は僅かであった。ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス作用は認められなかった。この金属がドープされていないメソポーラスシリカのBSA吸着量は、1mgあたり7.5μgに過ぎなかった。また、この金属がドープされていないメソポーラスシリカを含有するスラリーには、タンパク質分解作用は認められなかった(種々の分子量のBSA分解物が存在することを意味する電気泳動におけるスメアバンドは観察されなかった)。これらの結果は、金属がドープされたメソポーラスシリカの抗ウイルス作用と対照的であった。
Figure 2021175741
製造例5:銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカの製造
シリカ原料としてのケイ酸ナトリウム(メタ珪酸ソーダ(9水塩):日本化学工業社製、SiO/NaO=0.9〜1.1(メーカー値))を溶媒としての水に溶解した溶液(a)と、銅を非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化銅とアルミニウムを非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化アルミニウムを溶媒としての水に溶解した溶液(b)を、それぞれ調製した。溶液(a)と溶液(b)を室温で混合し、5分間攪拌した後、さらに攪拌しながら塩酸を30分間かけて滴下した(塩酸滴下の開始時点のpHは14で完了時点のpHは9)。約30分後、生成した沈殿物を吸引濾過し、濾液の上済み液の電気伝導度が1000μSを下回るまで濾取した沈殿物を十分に水洗してから、80℃で一晩乾燥した。こうして回収したフィルタケーキを、ミキサーで粗粉砕した後、570℃で5時間焼成することで、目的とする銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカをごくわずかに青みがかった白色粉末として得た。
なお、銅を非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化銅、アルミニウムを非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化アルミニウム、溶媒としての水のそれぞれの使用量は、シリカ原料としてのケイ酸ナトリウム1molに対し、以下の通りとした。
塩化銅:0.0201mol
塩化アルミニウム:0.0475mol
溶液(a)調製用の水:48.6mol
溶液(b)調製用の水:90.2mol
また、塩酸は、シリカ原料としてのケイ酸ナトリウム1molに対し、1.59mol用いた。
以上の方法で得た銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカは、BET比表面積が18.8m/gであった。また、銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカ中の銅の含量は1.43wt%であり、アルミニウムの含量は2.03wt%であった。非多孔質シリカに銅とアルミニウムがドープされていることは、X線光電子分光装置と透過型電子顕微鏡で確認した。
製造例6:銅がドープされた非多孔質シリカの製造
製造例5において用いた、アルミニウムを非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化アルミニウムを用いないことと、塩酸をシリカ原料としてのケイ酸ナトリウム1molに対し1.73mol用いること以外は製造例5と同様にして、銅がドープされた多孔質シリカを白色粉末として得た(BET比表面積:4.92m/g、銅の含量:1.63wt%)。
製造例7:マンガンがドープされた非多孔質シリカの製造
製造例5において用いた、銅を非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化銅のかわりにマンガンを非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化マンガンをシリカ原料としてのケイ酸ナトリウム1molに対し0.0204mol用いることと、アルミニウムを非多孔質シリカにドープするための原料としての塩化アルミニウムを用いないことと、塩酸をシリカ原料としてのケイ酸ナトリウム1molに対し1.73mol用いること以外は製造例5と同様にして、マンガンがドープされた多孔質シリカを白色粉末として得た(BET比表面積:8.74m/g、マンガンの含量:1.13wt%)。
製造例8:銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカを分散媒に懸濁したスラリーの製造
製造例3と同様にして、製造例5で製造した銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカ11gを、250mLのポリプロピレン製ポットに、イオン交換水99gと2mmφのアルミナボール210gとともに入れ、ポットミルで湿式粉砕を24時間行った後、アルミナボールを濾別することで、メディアン径が1.23μmである、銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)を得た。
製造例9:銅がドープされた非多孔質シリカを分散媒に懸濁したスラリーの製造
製造例8において用いた、製造例5で製造した銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカのかわりに、製造例6で製造した銅がドープされた非多孔質シリカを用いること以外は製造例8と同様にして、メディアン径が2.58μmである、銅がドープされた非多孔質シリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)を得た。
製造例10:マンガンがドープされた非多孔質シリカを分散媒に懸濁したスラリーの製造
製造例8において用いた、製造例5で製造した銅とアルミニウムがドープされた非多孔質シリカのかわりに、製造例7で製造したマンガンがドープされた非多孔質シリカを用いること以外は製造例8と同様にして、メディアン径が1.08μmである、マンガンがドープされた非多孔質シリカの含量が10wt%のスラリー(pH:約7)を得た。
試験例2:金属がドープされた非多孔質シリカの抗ウイルス作用
試験例1に従って、製造例8〜10で製造した金属がドープされた非多孔質シリカの含量が10wt%のイオン交換水を分散媒とするスラリーの、インフルエンザウイルス(感染価:4.8×10PFU/mL)に対する抗ウイルス作用を調べた(ただしウイルス懸濁液と検体の接触時間は24時間)。結果を表4に示す。表4から明らかなように、製造例8〜10で製造した金属がドープされた非多孔質シリカを含有するスラリーは、いずれもエンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスに対して優れた抗ウイルス作用を発揮した。また、製造例8で製造した銅がドープされた非多孔質シリカを含有するスラリーには、タンパク質分解作用が認められた(種々の分子量のBSA分解物が存在することを意味する電気泳動におけるスメアバンドが観察された)。
Figure 2021175741
(試験例1と試験例2の結果からの考察)
本発明の無機抗ウイルス剤が抗ウイルス作用を発揮する機構は、現時点において明確ではないが、少なくとも従来から知られている抗ウイルス作用を有する銅のイオンによるものではないようである。なぜなら、例えば製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを含有するスラリーは、分散媒中への銅イオンの溶出がほとんどなく(55日間静置した後においても溶出量は10ppm:誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた測定による)、また、シリカにドープされた金属が銅でなくても抗ウイルス作用を発揮するからである。こうした点に鑑みれば、本発明の無機抗ウイルス剤は、金属がシリカを構成するシロキサン結合からなる無機ネットワーク中に化学結合して組み込まれたまま、タンパク質吸着作用によってウイルスを吸着したり、ウイルスを攻撃する活性酸素種を系内に生成させたりすることで、ウイルスの構造に変性や分解をもたらし、その機能に不可逆的なダメージを与えるものと本発明者らは考えている(事実、インフルエンザウイルスの表面タンパク質であるヘマグルチニンに対する分解作用を本発明の無機抗ウイルス剤が有することも確認している)。
試験例3:金属がドープされたシリカを含む物品の抗ウイルス作用
製造例3で製造した銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカを分散媒に懸濁したスラリーを市販のアクリル系自己架橋型樹脂バインダーおよび水と混合した。これをポリエステル不織布に塗工し、150℃で7分間乾燥させて、銅とアルミニウムがドープされたメソポーラスシリカが表面に塗布された不織布を作成した(不織布に対するメソポーラスシリカは20wt%)。加工した不織布を用いて、JIS L1922「繊維製品の抗ウイルス性試験法」に従い、インフルエンザ(感染価:5.0×10PFU/mL)とネコカリシウイルス(感染価:1.5×10PFU/mL)について抗ウイルス試験を行った。結果を表5に示す。表5から明らかなように、エンベロープウイルス、ノンエンベロープウイルスのいずれに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮した。
Figure 2021175741
本発明は、エンベロープウイルスに対してのみならずノンエンベロープウイルスに対しても優れた抗ウイルス作用を発揮する無機抗ウイルス剤を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. 金属がドープされたシリカからなる無機抗ウイルス剤。
  2. シリカにドープされる金属が、銅、アルミニウム、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の無機抗ウイルス剤。
  3. シリカにドープされる金属が、銅および/またはアルミニウムである請求項2記載の無機抗ウイルス剤。
  4. シリカが多孔質シリカである請求項1乃至3のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤。
  5. シリカが非多孔質シリカである請求項1乃至3のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤。
  6. 金属がドープされたシリカが、これを分散媒に懸濁することで調製したスラリーに含まれる請求項1乃至5のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の無機抗ウイルス剤を含む物品。
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