JP2021171814A - 鋳型の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳型の改良された製造法であって、強度や耐湿性、引っ掻き硬度等の鋳型特性の向上された鋳型を、工業的に有利に製造し得る方法を、提供する。【解決手段】耐火性骨材を加熱した後、水溶性バインダと混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を該水溶性バインダにて被覆してなる湿態のコーテッドサンドを、加温状態において形成せしめ、そしてその加温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された所定の成形型に充填して、造型する。【選択図】なし

Description

本発明は、鋳型の製造法に係り、特に、鋳型特性に優れた鋳型を有利に製造し得る方法に関するものである。
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性骨材(鋳物砂)の表面を、所定のバインダ(粘結剤)にて被覆してなる構造のコーテッドサンド(鋳型材料)を用いて、目的とする形状に造型して得られたものが、用いられてきている。そして、そのようなコーテッドサンドにおけるバインダとしては、水ガラスの如き無機系バインダの他、フェノール樹脂やフラン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂からなる有機系バインダが用いられており、また、それらバインダを用いて、自硬性鋳型を造型する手法も、実用化されている。
そして、それらバインダのうちの水溶性バインダは、水溶液の形態において用いられており、それが所定の耐火性骨材に混練せしめられることにより、かかる耐火性骨材の表面を水溶性バインダにて被覆してなる形態のコーテッドサンドとして形成された後、鋳型の造型を行なう手法としても、各種の方法が提案されている。また、そのようなコーテッドサンドを用いた鋳型の造型においては、一般に、コーテッドサンドの固化や硬化を迅速に進めて、所望の強度等の特性を得るべく、コーテッドサンドの充填される成形型は、所定の温度に予熱せしめられている。
例えば、特開2012−76115号公報や特表2012−501850号公報においては、かかる水溶性バインダの一つである水ガラスを用いて、所定の耐火性骨材(鋳物砂)を被覆せしめてなるコーテッドサンドが、20℃乃至250℃の温度に予熱された成形型内に充填されて、目的とする形状の鋳型を造型する手法が提案され、それによって、造形時間の短縮等が図られ得るとされている。
また、特表2010−506731号公報においても、耐火性の成形基礎材料(耐火性骨材)に、水溶性バインダである水ガラスを混合せしめて得られる湿態状態の成形材料混合物、所謂湿態のコーテッドサンドに、所定の金属酸化物粒子やリン酸塩を添加、含有せしめることによって、薄壁状の部位を含んだ鋳型の製造を可能にすると共に、金属鋳造に際して、かかる鋳型の薄壁の部位に変形が生じないようにすることが出来ることが、明らかにされている。
しかしながら、かかる造型手法において、成形型に充填されるコーテッドサンドは、一般に、常温状態で提供されるものであるところから、そのような常温状態のコーテッドサンドが、予熱された成形型内に充填されて、造型が行なわれると、その充填されたコーテッドサンドに対する熱の伝達が不均一となり易く、そのために、コーテッドサンドの固化乃至は硬化にムラが惹起されて、鋳型強度が低下する等の、鋳型物性の安定した発現が困難となる問題が内在している。また、形成された湿態のコーテッドサンドが常温下に放置されることによって、含有水分が部分的に抜けて、コーテッドサンド集合体(マス)において、水分率が不均一となる問題が惹起されることに加えて、そのような常温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された成形型に充填して加熱したときに、特に、コーテッドサンドの構成成分たるバインダの粘性が高い場合において、コーテッドサンドの接着面積が小さくなる問題があり、それによって、造型された鋳型の強度が発現され難くなる問題に加えて、残留する水分が充分に除去出来ないために、耐湿特性の悪化をもたらす問題も内在しているのである。
特開2012−76115号公報 特表2012−501850号公報 特表2010−506731号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、鋳型の改良された製造法を提供することにあり、また、他の課題とするところは、強度や耐湿性、引っ掻き硬度等の鋳型特性の向上された鋳型を、工業的に有利に製造し得る方法を、提供することにある。
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されるものではなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、耐火性骨材を加熱した後、水溶性バインダと混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を該水溶性バインダにて被覆してなる湿態のコーテッドサンドを、加温状態において形成せしめ、そしてその加温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された所定の成形型に充填して、造型することを特徴とする鋳型の製造法を、その基本的な態様の一つとするものである。
なお、このような本発明に従う鋳型の製造法の望ましい態様の一つによれば、加温状態にある湿態のコーテッドサンドが、30℃〜100℃であり、また前記耐火性骨材は、32℃〜150℃の温度に加熱されることとなる。
また、本発明にあっては、前記した課題を解決する基本的な態様の他の一つとして、常温状態の耐火性骨材を混練しつつ、加熱せしめた後、水溶性バインダを添加して、該加熱された耐火性骨材と混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を該水溶性バインダにて被覆してなる湿態のコーテッドサンドを、加温状態において形成せしめ、そしてその加温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された所定の成形型に充填して、造型することを特徴とする鋳型の製造法を、その要旨とするものである。
なお、そのような基本的な態様の他の一つにおいて、前記耐火性骨材は、前記ミキサ内において、加温状態にある湿態のコーテッドサンドが、30℃〜100℃であり、また前記水溶性バインダの添加に先立って、32℃〜150℃の温度に加熱されることが望ましく、加えて、前記耐火性骨材の混練に先立ち、該耐火性骨材を混錬する混合装置が、予熱されていることが望ましい。
さらに、本発明にあっては、前記成形型は、一般に、40℃〜250℃の温度に予熱されていることが望ましいのである。
そして、本発明に従う鋳型の製造法の望ましい態様の他の一つによれば、前記水溶性バインダは、その沸点未満の温度に予熱されていることが望ましく、また、水溶性バインダの予熱温度としては、30℃〜100℃であることが望ましい。
さらに、本発明に従う鋳型の製造法の別の望ましい態様によれば、前記耐火性骨材と前記水溶性バインダとの混練に際して、充填性向上剤が更に添加されて、得られる湿態のコーテッドサンド中に該充填性向上剤が含有せしめられることとなる。
更にまた、本発明に従う鋳型の製造法の他の望ましい態様によれば、前記耐火性骨材と前記水溶性バインダとの混練に際して、耐湿性改善剤が更に添加されて、得られる湿態のコーテッドサンド中に該耐湿性改善剤が含有せしめられることとなる。
そして、本発明に従う鋳型の製造法の更に別の望ましい態様によれば、前記湿態のコーテッドサンドは、水溶性バインダの固形分量に対して55質量%を超える割合の含水分量を有しているものである。
加えて、本発明にあっては、前記水溶性バインダとしては、可溶性のケイ酸化合物が、好適に用いられることとなる。
このように、本発明に従う鋳型の製造法においては、粘結剤として、水ガラス等の水溶性バインダを、耐火性骨材に混合せしめて得られる湿態のコーテッドサンドが、加温状態において形成され、そしてそのような加温状態下において、予熱された所定の成形型に充填されて、造型が行なわれるようになっているところから、安定した湿度を保持しつつ、造型せしめられ得ることとなり、これによって、湿態のコーテッドサンドの均一性が有利に確保され得ることに加えて、耐火性骨材の表面に存在するバインダの粘度が効果的に低下せしめられ得て、バインダとしての効果が有利に高められ、特に、耐火性骨材の熱容量が高いことにより、コーテッドサンドの温度低下を極力回避しつつ、造型することが可能となることによって、所期の効果を有利に得ることが出来ることとなったのである。かくして、本発明によれば、得られる鋳型の曲げ強度や耐湿性が効果的に向上せしめられ得ることとなることに加えて、鋳型の引っ掻き硬度をも有利に向上せしめられ得たのであり、以て、鋳型特性に優れた鋳型を、工業的に有利に製造し得ることとなったのである。
ところで、耐火性骨材と水溶性バインダとを混練して得られるコーテッドサンド(鋳型材料)は、その調製後の状態によって、乾態のコーテッドサンドと湿態のコーテッドサンドとに分類されている。その中で、本発明は、水溶性バインダが粘着性を発現した状態にある、全体として湿った状態(外観)を呈する湿態のコーテッドサンドを、その対象としている。そして、そのような湿態のコーテッドサンドは、例えば、成形型内(成形キャビティ内)に充填され、かかる成形型内にて加熱及び乾燥せしめられることにより、固化乃至硬化反応が進行し、以て、目的とする鋳型が造型されることとなるものである。なお、コーテッドサンドが乾態を呈するか、或いは湿態を呈するかについては、コーテッドサンドにおける水溶性バインダの固形分量に対する含水分量によって決まるものの、水溶性バインダの種類によって、コーテッドサンドが乾態若しくは湿態を呈することとなる含水分量は、異なるものとなる。しかしながら、一般に、水溶性バインダの固形分量の5〜55質量%に相当する量の水分を含有するコーテッドサンドは、乾態を呈し、一方、水溶性バインダの固形分量の55質量%を超える量に相当する水分量を含有するコーテッドサンドは、湿態を呈するようになる。
そして、本発明に従う湿態のコーテッドサンドとは、常温流動性を有しないものであって、その水分量に拘わらず、動的安息角を測定した時に、動的安息角の測定値が得られないコーテッドサンドをいうものである。ここで、動的安息角とは、軸方向の一方の端部が透明な板材で閉塞されてなる円筒内にコーテッドサンドを収容して(例えば、直径7.2cm×高さ10cmの容器に、その体積の半分まで、コーテッドサンドを入れる)、軸心が水平方向となるように保持し、一定速度(例えば、25rpm)で、水平な軸心回りに回転させることにより、円筒内で流動しているコーテッドサンド層の斜面が平坦面状となり、斜面と水平面との間で形成する角度を測定したものである。従って、コーテッドサンドが湿ったような状態で、円筒内で流動せずに、コーテッドサンドの層の斜面が平面として形成されず、それ故に、動的安息角が測定出来ないものが、湿態のコーテッドサンドとなるのである。
なお、上述の如きコーテッドサンドを構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来から鋳型用として利用されている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂を始め、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。また、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂または回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40〜130程度の粒度のものとして、好ましくは、60〜110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
このような耐火性骨材は、球状のものであることが好ましく、具体的には粒形係数が1.2以下、より好ましくは1.0〜1.1であることが望ましい。粒形係数が1.2以下である耐火性骨材を用いることにより、流動性や充填性がよくなって、骨材同士の接点数が多くなるところから、同じ強度を発現するために必要な粘結剤の量や添加物量を少なくすることが出来る。なお、ここで用いられる骨材の粒形係数は、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として採用され、粒形指数とも称されるものであって、その値が1に近付く程、球形(真球)に近付くことを意味しているものである。そして、そのような粒形係数は、公知の各種の手法で測定された砂表面積を用いて算出された値にて表わされるものであって、例えば、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の砂粒の表面積を測定し、それを、理論的表面積で除した値を意味するものである。なお、理論的表面積とは、砂粒が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
また、上述の如き耐火性骨材を被覆するバインダは、粘結剤とも呼称されるものであって、本発明においては、水溶性のバインダが用いられることとなる。この水溶性バインダとしては、水溶性である限りにおいて、無機高分子、熱硬化性樹脂、糖類、合成高分子、塩類、タンパク質等の公知の何れをも用いることが出来る。そして、これらは、単独で用いられてもよく、また二つ以上を組み合わせて用いられてもよいが、特に、無機高分子を用いることが好ましい。また、これらの水溶性バインダは、事前に水や溶剤で希釈して、用いられてもよい。
そして、そのような水溶性バインダとして用いられる無機高分子としては、水ガラス、コロイダルシリカ、アルキルシリケート、ベントナイト、セメント等を挙げることが出来るが、それらの中でも、水ガラスが好適に用いられることとなる。また、かかる水ガラスは、可溶性のケイ酸化合物の溶液であって、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等やそれらの水和物、例えば、メタケイ酸ナトリウム9水和物、メタケイ酸ナトリウム5水和物等を挙げることが出来るが、特に、本発明にあっては、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が有利に用いられることとなる。
さらに、そのようなケイ酸ナトリウムは、通常、SiO2/Na2Oのモル比により、1号〜5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO2/Na2Oのモル比が2.0〜2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO2/Na2Oのモル比が2.4〜2.6であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO2/Na2Oのモル比が2.8〜3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO2/Na2Oのモル比が3.3〜3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO2/Na2Oのモル比が3.6〜3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号〜3号は、JIS−K−1408にても規定されている。そして、これらのケイ酸ナトリウムは、単独での使用の他、混合して用いられてもよく、また混合することで、SiO2/Na2Oのモル比を調製することも可能である。なお、SiO2/Na2Oのモル比は、上記したケイ酸ナトリウム1号〜5号にて規定されている範囲に限定されるものではなく、例えば0.8〜4.0の範囲であればよい。
なお、本発明において用いられる湿態のコーテッドサンドを有利に得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムは、SiO2/Na2Oのモル比が、一般に1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上であることが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号及び2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号及び2号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な湿態のコーテッドサンドを与えるものである。また、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO2/Na2Oのモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。
また、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の、揮発する物質を除いた固形分(水ガラス成分)を不揮発分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するものである。また、そのような不揮発分(固形分)の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度は、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの不揮発分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた割合に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた残余の量が、使用される水ガラスの不揮発分に相当することとなる。
そして、そのような水ガラス中の不揮発分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20〜50質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この不揮発分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめることによって、耐火性骨材との混合(混練)時に、かかる耐火性骨材に対して、ムラなく、均一に、水ガラス成分を被覆させることが出来、それによって、目的とする鋳型を、本発明に従って有利に造型することが可能となる。
ところで、上記した無機高分子以外の水溶性バインダの一つである熱硬化性樹脂としては、レゾール型のフェノール樹脂、フラン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性不飽和ポリエステル樹脂、水溶性アルキド樹脂等を挙げることが出来る。また、この熱硬化性樹脂に対して、酸やエステル類等の硬化剤を配合して、その熱硬化特性を向上せしめることも、有利に採用されるところである。なお、それら熱硬化性樹脂の中でも、レゾール型のフェノール樹脂の使用が好ましく、そのようなフェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で反応させることによって、調製することが出来る。また、本発明においては、かかるフェノール樹脂として、水溶性のアルカリレゾール樹脂が好適なものとして挙げられる。このようなアルカリレゾール樹脂を用いると、鋳鉄・鋳鋼等の幅広い分野で用いられ得る鋳型を提供することが出来る。
また、水溶性バインダの他の一つである糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類等の公知のものを用いることが出来、各種の単糖類、少糖類、多糖類の中から、1種を選んで単独で用いても、また複数種を併用して用いても、何等差支えない。それらのうち、単糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等を挙げることが出来、少糖類としては、マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、セロビオース等の二糖類を挙げることが出来る。そして、多糖類としては、でんぷん糖、デキストリン、ザンサンガム、カードラン、プルラン、シクロアミロース、キチン、セルロース、でんぷん等を挙げることが出来る。この他にも、アラビアガム等の植物粘質物のガム類を用いてもよく、更に糖類、特に多糖類の硬化剤として、カルボン酸を用いることも出来る。
さらに、水溶性バインダとして用いられる合成高分子としては、ポリエチレンオキシド、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、アクリル酸系共重合体、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、カチオン化ポリアクリルアミド、ポリアミノアルキルメタクリレート、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化マレイン酸重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリ酢酸ビニル、またはこれらの変性物等を挙げることが出来る。そして、これらは単独で用いられたり、複数を組み合わせて用いられたりされることとなる。
更にまた、塩類としては、水を加えた後、乾燥させることによって、固まるものが用いられ、例えば硫酸マグネシウムや硫酸ナトリウム等の硫酸塩、臭化ナトリウムや臭化カリウム等の臭化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸塩、塩化バリウムや塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物等を挙げることが出来る。加えて、タンパク質としては、ゼラチン、膠等を挙げることが出来る。
そして、上述の如き水溶性バインダは、耐火性骨材の100質量部に対して、不揮発分のみとして考えた場合の固形分換算で0.1〜5質量部の割合において用いられることが望ましく、中でも、0.2〜2.5質量部の割合が特に有利に採用されて、耐火性骨材の表面に、所定の被覆層が形成されることとなる。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施される。即ち、アルミ箔製の試料皿(縦:90mm、横:90mm、高さ:15mm)内に、試料10gを秤量して収容し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を、反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。次いで、かかる試料皿を、加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行なって、次式により、固形分(質量%)が算出される。
固形分(質量%)={[乾燥後の試料皿の質量(g)−試料皿のみの質量(g)]
/[乾燥前の試料皿の質量(g)−試料皿のみの質量(g)]}×100
なお、この水溶性バインダの使用量が少なくなり過ぎると、耐火性骨材の表面に、被覆層が形成され難くなって、コーテッドサンドの固化乃至は硬化が充分に行なわれ難くなる問題を生じる。また、水溶性バインダの使用量が多くなり過ぎても、耐火性骨材の表面に、余分に、水溶性バインダが付着して、均一な被覆層が形成され難くなると共に、コーテッドサンドが相互に固着して団塊化(複合粒子化)する恐れもあり、そのために、鋳型物性に悪影響をもたらし、また金属を鋳込んだ後の中子の砂落としを難しくする問題も惹起するようになる。
そして、本発明にあっては、上記した水溶性バインダを用いて、それによる被覆層を耐火性骨材の表面に形成してなる湿態のコーテッドサンドが、その対象とされるものであるが、そのような被覆層には、必要に応じて、公知の添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。なお、そのような添加剤を被覆層に含有せしめるには、水溶性バインダに、所定の添加剤を予め配合した後、耐火性骨材と混練又は混合せしめる方法や、水溶性バインダとは別個に、所定の添加剤を、耐火性骨材に対して添加して、水溶性バインダと共に、全体を均一に混練乃至は混合せしめる方法等が、採用される。なお、水溶性バインダと添加剤は、同時に、または時間差を設けて、混練乃至は混合せしめることが出来る。
そのような添加剤の一つとして、本発明においては、充填性向上剤が、有利に用いられることとなる。かかる充填性向上剤は粒子状の物であり、この充填性向上剤が、得られるコーテッドサンドの粒子表面、換言すれば、耐火性骨材を被覆する水溶性バインダ層の表面に存在せしめられることによって、成形型(金型)にコーテッドサンドを充填すべく、コーテッドサンドを流動させる際に、コーテッドサンド同士が、充填性向上剤を介して接触するようになることで、コーテッドサンドの粒子間の摩擦が効果的に低減され得て、その流動性が有利に向上するようになることに加えて、成形型へのコーテッドサンドの充填性の向上や、成形型等の造型装置へのコーテッドサンドの付着の防止等の効果を有利に享受し得ることとなる。この充填性向上剤としては、球状のシリコーン樹脂パウダ(粒子)や無機酸化物粒子等が挙げられるが、特に球状シリコーン樹脂パウダ(粒子)が有利に用いられることとなる。
なお、かかる球状シリコーン樹脂パウダにおける球状とは、一般に認識される程度の球状を意味するものであって、必ずしも真球状であることが必要とされるものではないが、通常、真球度が0.5以上であるものが用いられ、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上であるものが、有利に用いられることとなる。ここで、真球度とは、走査型電子顕微鏡を用いた観察において、単粒子のものを無作為に10個選択し、その投影形状から得られたアスペクト比(短径/長径の比)の平均値を意味するものである。
また、そのような球状シリコーン樹脂パウダとしては、耐火性骨材よりも粒子径が小さなものであって、その平均粒子径が、一般に0.01μm以上50μm以下、好ましくは0.05μm以上25μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、更に好ましくは0.2μm以上3μm以下であるものが、有利に用いられることとなる。このような平均粒子径の球状シリコーン樹脂パウダは、混合せしめられる耐火性骨材よりも粒径が小さなものであるために、耐火性骨材間に入り込み易く、均一に分散せしめられ得て、コーテッドサンドの粒子表面に均一に存在せしめられ得ることとなる。
さらに、かかる球状シリコーン樹脂パウダの使用量としては、耐火性骨材の表面の被覆層を構成する水溶性バインダの固形分の100質量部に対して、0.1〜500質量部、好ましくは0.3〜300質量部、より好ましくは0.5〜200質量部、更に好ましくは0.75〜100質量部、最も好ましくは1〜50質量部の割合が採用される。このように、所定の平均粒子径を有する球状シリコーン樹脂パウダを、所定の割合において、耐火性骨材表面の水溶性バインダ被覆層に含有せしめることにより、本発明に従う効果をより有利に享受することが可能となるのである。なお、シリコーン樹脂パウダの平均粒子径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置等によって測定される粒度分布より、求めることが出来る。
ところで、上述の如き球状のシリコーン樹脂パウダは、球状で、撥粘結剤性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、公知の各種のシリコーン樹脂粒子が適宜に選択されて、用いられることとなる。なお、シリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサンを主成分とするものであることが好ましく、またオルガノポリシロキサンは、シルセスキオキサンからなるものがより好ましい。更に、かかるシルセスキオキサンは、ポリメチルシルセスキオキサンであることが、特に望ましい。球状のシリコーン樹脂パウダを構成するオルガノポリシロキサンが、シルセスキオキサンであることにより、更にシルセスキオキサンが、ポリメチルシルセスキオキサンであることにより、有効な撥粘結剤性を有すると共に、ケイ素の含有率が高くなり、耐熱性が優れた球状粒子を得ることが出来る。そして、そのような特性が付与されることにより、鋳型造型時の熱によって熱分解や融解が惹起され難いために、造形時や鋳造時でも球形を有利に保つことが出来、以て充填性や強度向上の効果を有利に維持することが出来ると共に、造型の際の臭気や煙を抑えることが出来るために、鋳造時においても、砂付着の防止効果や鋳肌の向上効果をより一層有利に発揮することが出来ることとなる。
また、無機酸化物粒子としては、球状粒子でも、非球状粒子でもよいが、球状粒子である方が、より良好な鋳肌を有する鋳造製品を得ることが可能となる点において、好ましい。無機酸化物粒子を構成する材質については、特に限定されるものではないが、無機金属酸化物であることが好ましい。この無機金属酸化物からなる粒子としては、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等からなる粒子が有利に用いられる。なお、二酸化珪素には、結晶質と非晶質とがあるが、非晶質の方が望ましく、そして非晶質二酸化珪素としては、沈殿シリカ、電気アーク中において、又は火炎加水分解により生成した焼成シリカ、ZrSiO4 の熱分解により生成したシリカ、酸素を含むガスで金属珪素を酸化することにより生成した二酸化珪素、溶融及びその後の急冷により結晶石英から生成される球状粒子である石英ガラス粉末等を、例示することが出来る。このような無機酸化物粒子の球状の状態や平均粒子径、及びその使用量の範囲は、それぞれ、前述せる球状のシリコーン樹脂パウダと同様である。
さらに、本発明においては、上述の如き充填性向上剤と共に、又はそれとは別個に、耐湿性改善剤が、添加剤として用いられて、含有せしめられていることが好ましい。このように、コーテッドサンドに耐湿性改善剤が含有せしめられることにより、最終的に得られる鋳型の更なる耐湿性の向上を図ることが出来ることとなる。
ここで、そのような耐湿性改善剤としては、コーテッドサンドにおいて従来より用いられているものであれば、本発明の効果を阻害しないものである限り、如何なるものであっても、使用可能である。具体的には、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸マンガン、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ストロンチウム、四ホウ酸銀、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸銀、メタホウ酸銅、メタホウ酸鉛、メタホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、珪素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、銅、鉄、ホウ素、ジルコニウム等の酸化物等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に塩基性炭酸亜鉛、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、硫酸リチウム、水酸化リチウムは、水溶性バインダとして水ガラスを用いた場合に、より有利に耐湿性を向上させることが可能である。上記したものを始めとする耐湿性改善剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを併用することも可能である。なお、先に列記した耐湿性改善剤の中には、水溶性バインダとして使用可能な化合物も含まれているが、かかる化合物にあっては、それとは異なる水溶性バインダを用いる場合に、耐湿性改善剤として作用させることが可能である。
そして、そのような耐湿性改善剤の使用量としては、その総量において、液状の水溶性バインダの固形分の100質量部に対して、一般に0.5〜50質量部程度であることが好ましく、中でも1〜20質量部がより好ましく、特に2〜15質量部が更に好ましいものである。この耐湿性改善剤の添加効果を有利に享受するためには、0.5質量部以上の使用量であることが望ましいのであり、一方、その添加量が多過ぎると、水溶性バインダの結合を阻害し、最終的に得られる鋳型の強度が低下する等の問題を惹起する恐れがあるところから、50質量部以下とされることが望ましいのである。
また、その他の添加剤として、耐火性骨材と水溶性バインダとの結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。また、コーテッドサンドの流動性の向上に寄与する滑剤の含有も有効であり、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール;ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も使用可能である。そして、これらその他の添加剤は、それぞれ、水溶性バインダ中の不揮発成分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合において、含有せしめられる。
ところで、本発明において、上述の如き耐火性骨材、水溶性バインダ、更には必要に応じて添加される添加剤を用いて、常温流動性を有しない湿態のコーテッドサンドを製造するに際しては、次の(a)及び(b)のうちの何れか一方の手法が、採用されることとなる。即ち、(a)に係る手法は、耐火性骨材を加熱した後、それを混合装置であるミキサに投入して、水溶性バインダと混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を、該水溶性バインダにて被覆する方法であり、また、(b)に係る手法は、常温の耐火性骨材をミキサに投入して、かかるミキサ内で混練しつつ、加熱せしめた後、水溶性バインダを添加して、該加熱された耐火性骨材と混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を、該水溶性バインダにて被覆する手法である。
具体的には、上記(a)の方法においては、前記した耐火性骨材が加熱された後、適当なミキサ(混合装置)に投入される一方、前記した水溶性バインダを、必要に応じて用いられる添加剤と共に、かかるミキサに添加して、従来と同様にして、混練乃至は混合せしめることにより、均一に混和して、かかる耐火性骨材の表面が水溶性バインダにて被覆されるようにするのである。なお、そこにおいて、耐火性骨材の加熱温度としては、水溶性バインダ中の水分の蒸発を避け、所定の含水分量の湿態のコーテッドサンドが得られるように、適宜に選定されることとなるが、一般に、32℃〜150℃、好ましくは35℃〜120℃、より好ましくは40℃〜110℃の温度に加熱せしめられていることが望ましい。また、耐火性骨材を加熱する方法としては、耐火性骨材を所定の温度に加熱することの出来る手法であれば何等差支えないが、恒温槽による加熱手法や、特開2001−321886号公報、特開2009−142830号公報、国際公開公報:WO2010/143746号等に記載の温度調節ユニットを用いた加熱手法等が、好適に用いられる。
次いで、上記した(b)の方法にあっては、常温の耐火性骨材がミキサに投入されて、かかるミキサ内で耐火性骨材を混練(撹拌)しつつ、加熱が行なわれた後、水溶性バインダがミキサに添加されて、かかる加熱された耐火性骨材に混練せしめられることにより、耐火性骨材の表面が水溶性バインダにて被覆されるようにするのである。なお、そこにおいて、水溶性バインダの添加に先立って実施される、耐火性骨材のミキサ内での加熱温度は、上記(a)の方法の場合と同様に、水溶性バインダ中の水分の極端な蒸散を避け、目的とする含水分率の湿態のコーテッドサンドが得られるように、適宜に選定されることとなるが、一般に、32℃〜150℃の温度に加熱されていることが望ましい。かかる加熱温度が低くなり過ぎると、有効な湿態のコーテッドサンドを得ることが困難となる。また、この加熱温度が高くなり過ぎると、コーテッドサンドの乾態化が生じる恐れがある他、均一な湿態化が困難となる問題を生じる。
なお、上述の如き耐火性骨材と水溶性バインダとの混練に用いられるミキサとしては、投入される耐火性骨材が充分に撹拌・混合(混練)され得るものであると共に、必要に応じて、ヒータや循環する熱媒体の如き加熱手段や、熱風等の吹き込み手段を備えて、混練されている耐火性骨材を加熱し得るようにした公知の各種の混合装置が、適宜に選択されて、用いられることとなる。そして、そのようなミキサ内において、耐火性骨材を所定の温度に加熱する場合においては、一般に、0.5分〜30分程度、好ましくは1分〜15分程度、より好ましくは3分〜10分程度の時間を要して実施され、また、所定の温度に加熱された耐火性骨材と水溶性バインダとを混練せしめて、湿態のコーテッドサンドを形成するに際しては、一般に、0.5分〜15分程度、好ましくは1分〜10分程度、より好ましくは1.5分〜5分程度の混練時間が採用されることとなる。
また、上述の如き耐火性骨材の混練・加熱操作や耐火性骨材と水溶性バインダとの混練操作に際しては、ミキサ(混合装置)は、耐火性骨材の投入に先立って、予熱されていることが望ましく、所定の温度に予熱可能である構成であれば何れの構成でもよいが、具体的には、ミキサに設けられたヒータや循環する熱媒体等の加熱手段や熱風等の吹込み手段を用いて、ミキサにおいて混合されるコーテッドサンドが接触する壁面の予熱温度が、前述した(a)の方法の場合は、32℃〜150℃程度、好ましくは35℃〜120℃程度、より好ましくは40℃〜110℃程度となるように、また(b)の方法の場合は、50℃〜200℃程度、好ましくは55℃〜180℃程度、より好ましくは60℃〜150℃程度となるように、加熱せしめられる。これによって、投入された耐火性骨材の加熱や、加熱された耐火性骨材と水溶性バインダとの混練が、効果的に且つ迅速に行なわれ得て、本発明の目的が有利に実現され得ることとなる。なお、前述した(a)の方法では、加熱した耐火性骨材をミキサ内で混練するに際して、ミキサにおけるコーテッドサンド接触壁面を予熱しておくことも、有効である。
さらに、耐火性骨材との混練のために、ミキサに添加せしめられる水溶性バインダにあっても、それが、その沸点未満の温度に予熱されていることが、望ましく、一般に、30℃〜100℃、好ましくは35℃〜90℃、より好ましくは40℃〜80℃の範囲内の予熱温度が採用されることとなる。このように予熱された水溶性バインダが、加熱された耐火性骨材に含有せしめられることによって、耐火性骨材の表面に、水溶性バインダからなる被覆層が効果的に形成せしめられ得ることとなるのであり、以て、本発明の効果がより一層有利に実現せしめられ得るのである。そのような混練形態の採用によって、特に、水溶性バインダの粘度が低い状態に維持され得て、添加剤として用いられる球状シリコーン樹脂パウダが混練せしめられたときに、それが、湿態のコーテッドサンドの表面に露呈され易く、それによって、シリコーン樹脂パウダの添加効果をより一層有利に発揮せしめることが出来ることとなる。
ところで、このようにして得られる常温流動性を有しない湿態のコーテッドサンドは、湿態を呈する程度において、その含水分量が適宜に調整され得るものであるところ、一般に、その含水分量は、水溶性バインダの固形分量に対して55質量%より多くなるように調整され、好ましくは70〜900質量%となるように、より好ましくは95〜500質量%となるように調整されて製造される。このような含水分量に調整された湿態のコーテッドサンドにあっては、鋳型造型時に、成形型内へ充填する際のブローエアによって、乾燥し、成形型内への充填が阻害されることを効果的に防止しつつ、湿態のコーテッドサンドとしての湿潤さを保つことが出来ることに加え、そのようなコーテッドサンドを用いて造型された鋳型においても、優れた特性が付与されたものとなる。
また、本発明に従う湿態のコーテッドサンドの製造工程において、必要に応じて用いられる各種の添加剤は、耐火性骨材や水溶性バインダと同時に添加して、混練乃至は混合することが出来るが、また、その混練時に別個に添加して混練してもよく、更に混練時に時間差を設けて混練することも可能である。また、粘結剤としての水溶性バインダは、水溶液の形態において耐火性骨材に混練せしめられるものであるが、水溶性バインダ自体が通常固体状のものである場合には、予め、水に溶かした状態において、用いられることとなる。また、液体状の水溶性バインダにあっても、水で希釈して、その粘度を調整したものを用いることが可能である。かかる水の添加は、予め、水溶性バインダと混ぜてもよく、また、耐火性骨材との混練乃至は混合時に、水溶性バインダと水とを別々に添加するようにすることも可能である。
そして、本発明にあっては、上述の如くして形成される湿態のコーテッドサンドをミキサから取り出して得られる加温状態のもの、具体的には、30℃〜100℃程度、好ましくは35℃〜90℃、より好ましくは40℃〜80℃の温度の湿態コーテッドサンドを、そのまま、その加温状態を保持しつつ、予熱された所定の成形型、具体的には、成形型の成形キャビティ内に充填して、かかる湿態のコーテッドサンドの乾燥を実施して、固化乃至は硬化させることにより、得られる鋳型の特性が効果的に向上せしめられ得ることとなるのである。即ち、加温状態、特に30℃〜100℃の温度でミキサから取り出された湿態のコーテッドサンドは、そのような温度に加温された状態のまま、予熱された成形型に充填せしめられることとなるところから、かかる充填された湿態コーテッドサンドに対する熱の伝達が、効果的に行なわれ得ることとなるのであり、以て、均一な熱伝達の促進が有利に図られ得て、鋳型強度が安定して実現され得ることとなるのであり、加えて、鋳型の耐湿特性の向上、更には引っ掻き硬度の向上をも、有利に実現され得ることとなるのである。
なお、ここで、湿態のコーテッドサンドを、その加温状態を保持しつつ、成形型に充填するとは、ミキサから取り出された湿態のコーテッドサンドは、加温状態、特に30℃〜100℃の温度となっているところから、かかる湿態のコーテッドサンドが、そのような温度範囲内の温度に維持されるようにして、換言すれば、30℃以上の温度を保持している状態において、所定の成形型に充填されることを意味するものである。なお、ミキサから取り出された湿態のコーテッドサンドの温度が、30℃よりも低くなると、成形型における熱伝達のムラの発生の抑制が困難となるのであり、一方、100℃よりも高い温度となると、湿態のコーテッドサンドからの水分の蒸発が多くなり、そしてこの水分の蒸発にて、水溶性バインダの粘度が上がるため、バインダによる接着面積が充分に取れずに、強度が低下する等という問題が惹起されるようになる。
また、このように、成形型内に充填された湿態のコーテッドサンドを乾燥させて、固化乃至は硬化させることにより、目的とする鋳型の造型を行なうに際しては、かかる湿態のコーテッドサンドの乾燥を有利に行なうべく、予め加熱された成形型が、有利に用いられることとなる。この予め加熱された成形型を用いることにより、充填された湿態のコーテッドサンドの乾燥が、効果的に進行せしめられることによって、造型時間が有利に短縮せしめられ得るのである。なお、そのような成形型の加熱温度としては、一般に、40℃〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、更に好ましくは100℃〜175℃の範囲内の温度が採用されることとなる。この加熱温度が、40℃未満となると、加熱による乾燥促進効果を充分に発揮させ難く、造型時間が長くなる問題があり、また250℃よりも高くなると、成形型内に充填される湿態のコーテッドサンドの固化乃至は硬化が早くなり過ぎて、その充填性が悪化することとなる他、湿態のコーテッドサンドが乾燥し過ぎて、粘着性がなくなり、接着効果が低くなって、得られる鋳型の強度が低下する等の問題も惹起されるようになる。
そして、成形型内に充填された湿態のコーテッドサンドの乾燥を促進せしめるべく、かかる充填された湿態のコーテッドサンドを、マイクロ波にて、直接に加熱するようにすることも有効であり、特に鋳型成形型が樹脂型である場合において、好適に採用されるところである。更に、湿態のコーテッドサンドを充填した成形型内に、加熱空気または乾燥空気を通気せしめて、かかる湿態のコーテッドサンドの充填層を通過させることによって、乾燥を促進し、より迅速に、充填された湿態のコーテッドサンドの固化乃至は硬化を図るようにすることも有効である。加えて、湿態のコーテッドサンドを充填した成形型を減圧吸引することにより、かかる成形型内を減圧乾燥させることも、有効な乾燥手段の一つであり、特に、樹脂型の如き熱影響を受け易い材質の成形型においては、有利に採用されるところである。
さらに、本発明にあっては、上述の如く、成形型内に充填された湿態のコーテッドサンドから、その湿態化に用いられた水性媒体の水分を除去せしめることにより、目的とする鋳型が造型されることとなるのであるが、その際、コーテッドサンドの表面の被覆層を構成する水ガラスは、通常、何等の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また硬化剤として、酸化物や塩等が加えられておれば、硬化せしめられることとなる。そして、そのような水ガラスの硬化のために、湿態のコーテッドサンドを充填した成形型内に、炭酸ガス又は有機エステルガスを、通気せしめることも有効であり、これによって、従来と同様に、水ガラスを迅速に硬化せしめて、造型速度を有利に高めることが可能となる。なお、有機エステルガスとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、トリアセチン、プロピレンカーボネート等がガス状又は霧状にされて、用いられる。
なお、本発明に従って、耐火性骨材と水溶性バインダとを加熱、混練せしめて、所定の湿態のコーテッドサンドを形成せしめた後、それを、加温状態下において、予熱された成形型に充填して、造型する方法としては、公知の各種の造型手法が適宜に採用されるところであり、これによって、目的とする鋳型が工業的に有利に製造されることとなる。
以上、本発明の実施形態について詳述して来たが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではない。そして、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において、実施され得るものであり、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、また、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものでないことが理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されている。また、実施例や比較例で得られた鋳型の曲げ強度や引っ掻き硬度は、それぞれ、以下のようにして測定した。
−曲げ強度(kgf/cm2)の測定−
実施例や比較例で得られた湿態のコーテッドサンドを用いて造型された、幅:25.4mm×高さ:25.4mm×長さ:200mmの大きさの試験片について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製:デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、測定して、その測定により得られた破壊荷重を用いて、曲げ強度(抗折強度)を、下記の式により、算出する。
曲げ強度=1.5×LW/ab2
[但し、L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(kgf)、a:試験片の幅(cm)、b:試験片の厚み(cm)]
そして、かかる曲げ強度の測定を、造型直後の鋳型について、更には、造型から1時間又は24時間の間、23℃×60%RHの環境下において保持された鋳型について、実施すると共に、その得られた造型24時間後の曲げ強度と1時間後の曲げ強度の比率を用いて、強度保持率を求めて、得られた鋳型の耐湿特性を評価した。
−引っ掻き硬度(mm)の測定−
実施例や比較例で得られた湿態のコーテッドサンドを用いて造型された、幅:25.4mm×高さ:25.4mm×長さ:200mmの大きさの試験片について、造型から1時間の間、23℃×60%RHの環境下に保持されたものの引っ掻き硬度を、引っ掻き硬度計(GF式)を用いて、測定する(n=3、平均値)。具体的には、引っ掻き硬度の測定は、先ず、試験片表面に引っ掻き硬度計の先端の歯を押し当てて、上部の黒いレバーを時計回りに1周、そして反時計回りに1周回し、更にその回転作業を5回繰り返すことで、徐々に歯がめり込んでいくところから、かかる歯のめり込んだ深さを、側面の目盛(mm)から、読み取ることにより、行なわれる。引っ掻き硬度は、その測定値が小さい程高く、また大きい程低いことを示している。
−鋳型の造型例−
(実施例1)
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるエスパール#60L(商品名:山川産業株式会社製)を準備すると共に、粘結剤(水溶性バインダ)として用いられる水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2/Na2Oのモル比:2.5、固形分:35%)を準備した。そして、上記のエスパール#60Lの100部を約58℃の温度に加熱した後、品川式万能撹拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入し、更に、前記水ガラスの1.0部を添加して、混練を行なうことにより、常温では自由流動性を有しない湿態のコーテッドサンド(WCS)を得た。かかるWCSの含水分量を測定したところ、WCS中の水ガラスの固形分量に対して180%であった。
次いで、かかる得られた湿態のコーテッドサンドを、品川式万能撹拌機から約50℃の温度で取り出し、その加温状態下において、直ちに、150℃の温度に予熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填せしめて、30秒間保持した後、約150℃の熱風を30秒間吹き込むことにより、乾燥固化させ、そしてその後、成形金型より取り出すことにより、試験片としての鋳型を得た。
(実施例2)
水ガラスと共に、更に必要に応じて用いられる添加剤である充填性向上剤として、球状シリコーン樹脂粒子であるTospearl 120(商品名:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)の0.05部を加えて、混練せしめること、耐火性骨材の加熱温度を約35℃としたこと、及び品川式万能撹拌機からの取出し温度を約30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、含水分量が182%のWCSを得た後、このWCSを用いて、前記取出し温度を保持しつつ、実施例1と同様にして、造型を行ない、試験片としての鋳型を得た。
(実施例3)
実施例2において、品川式万能撹拌機に投入される耐火性骨材の加熱温度を約58℃としたこと、及びかかる撹拌機からの取出し温度を約50℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、含水分量が180%のWCSを形成せしめ、そしてそれを撹拌機から取り出した後、冷却することなく、そのままの加温状態において、実施例2と同様にして造型を行なって、試験片としての鋳型を得た。
(実施例4)
実施例2において、耐火性骨材の加熱温度を約80℃としたこと、及びかかる撹拌機からの湿態のコーテッドサンドの取出し温度を約70℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、含水分量が177%のWCSを得た後、このWCSを用いて、前記取出し温度を保持しつつ、実施例2と同様にして造型を行なって、試験片としての鋳型を得た。
(実施例5)
実施例2において、耐火性骨材の加熱温度を約100℃とすること、そして湿態のコーテッドサンドの撹拌機からの取出し温度を約90℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、含水分量が175%のWCSを得た後、このWCSを用いて、前記取出し温度を保持しつつ、実施例2と同様にして、試験片としての鋳型を得た。
(実施例6)
品川式万能撹拌機への添加に先立ち、水ガラスを約50℃の温度に予熱せしめたこと以外は、実施例3と同様にして、含水分量が180%のWCSを形成せしめ、そしてそれを撹拌機から取り出した後、冷却することなく、そのままの加温状態において、実施例3と同様にして造型を行ない、試験片としての鋳型を得た。
(実施例7)
実施例3において、添加剤として、耐湿性改善剤である炭酸亜鉛の0.10部を加えたこと以外は、実施例3と同様にして、含水分量が181%のWCSを得た後、このWCSを用いて、前記取出し温度を保持しつつ、実施例3と同様にして、試験片としての鋳型を得た。
(比較例1)
実施例1において、耐火性骨材であるエスパール#60Lの加熱を行なうことなく、常温状態のままで、品川式万能撹拌機に投入したこと以外は、実施例1と同様にして、含水分量が184%の湿態のコーテッドサンドを形成せしめた後、その得られたWCSを、常温状態下において、実施例1と同様にして、成形金型に充填して、試験片としての鋳型を作製した。
(比較例2)
実施例2において、耐火性骨材としてのエスパール#60Lの加熱をしなかったこと、従って、品川式万能撹拌機から取り出された湿態のコーテッドサンド(含水分量:184%)が常温であったこと以外は、実施例2と同様にして、造型を行ない、試験片としての鋳型を作製した。
−鋳型物性の評価−
上記の実施例1〜7及び比較例1〜2において得られた各鋳型(試験片)を用いて、それぞれの曲げ強度や引っ掻き硬度を、前記した手法に従って測定し、それらの結果を、下記表1及び表2に示した。
Figure 2021171814
Figure 2021171814
かかる表1及び表2の結果から明らかな如く、耐火性骨材(エスパール#60L)を加熱して得られた湿態のコーテッドサンド(WCS)を、その加温状態下において、予熱された成形金型にて造型されてなる実施例1〜7に係る鋳型(試験片)にあっては、優れた曲げ強度や引っ掻き硬度を有していると共に、耐湿強度、更には経時的な強度保持率においても、優れていることが認められるのである。
これに対して、比較例1〜2に示される如く、耐火性骨材(エスパール#60L)を、予備加熱することなく用いて得られた湿態のコーテッドサンドや、湿態のコーテッドサンドを後から加熱したものを用いて造型された鋳型にあっては、造型直後の曲げ強度が低く、また、造型1時間後や24時間後の曲げ強度においても充分ではなく、且つ吸湿後の強度保持率においても見劣りがするものであり、更に、造型1時間後の鋳型の引っ掻き硬度も充分ではないことが認められる。
(実施例8)
予め、200℃の温度の熱風を吹き込んで、壁面温度(内壁面の5箇所での測定値の平均)が約50℃となった品川式万能撹拌機(5DM−r型)に、耐火性骨材としてのエスパール#60Lの100部を常温状態において投入して、かかる熱風の吹込みを続行しつつ、5分間混練して、その混練されているエスパール#60Lを加熱せしめた後、粘結剤(水溶性バインダ)として用いられる水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(SiO2/Na2Oのモル比:2.5、固形分:35%)の1.0部を添加せしめて、更に2分間の混練を行なうことにより、常温流動性を有しない含水分量が182%の湿態のコーテッドサンド(WCS)を得た。
次いで、かかるWCSを、品川式万能撹拌機から、約30℃の温度で取り出し、その加温状態下において、直ちに、150℃の温度に予熱された成形型内に圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで充填せしめて、30秒間保持した後、約120℃の熱風を30秒間吹き込むことにより、乾燥固化させ、そしてその後、成形金型より取り出すことにより、試験片としての鋳型を得た。
(実施例9)
実施例8において、品川式万能撹拌機の内壁面の予熱温度を約70℃としたこと、加熱混練時間を6分(水ガラスを添加して、更に2分)としたこと、及びかかる撹拌機からの取出し温度を約50℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、含水分量が180%のWCSを形成せしめ、そしてそれを撹拌機から取り出した後、冷却することなく、そのままの加温状態において、実施例1と同様にして造型を行なうことにより、試験片としての鋳型を得た。
(実施例10)
実施例1において、品川式万能撹拌機の内壁面の予熱温度を約90℃としたこと、加熱混練時間を7分(水ガラスを添加して、更に2分)としたこと、及びかかる撹拌機からの取出し温度を約70℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、含水分量が177%のWCSを形成せしめ、そしてそれを撹拌機から取り出した後、冷却することなく、そのままの加温状態において、実施例1と同様にして造型を行なうことにより、試験片としての鋳型を得た。
(実施例11)
実施例8において、熱風の吹込みによる品川式万能撹拌機の内壁面の予熱に代えて、かかる撹拌機に配設されている温調装置に、100℃の熱媒を流通せしめて、加熱することにより、かかる撹拌機の内壁面の温度を約70℃に予熱すること、及び混練時間を6分(水ガラスを添加して、更に2分)としたこと以外は、実施例8と同様にして、含水分量が179%のWCSを形成せしめた後、約50℃の加温状態下において撹拌機から取り出し、そのまま、実施例8と同様にして造型を行なうことにより、試験片としての鋳型を作製した。
(比較例3)
実施例8において、熱風の吹込みを行なうことなく(加熱することなく)、従って、品川式万能撹拌機の内壁面は常温(20℃)の状態のまま、混練時間:2分において、含水分量が185%のWCSを形成せしめ、そしてその得られたWCSを、常温状態下において、実施例8と同様にして、成形金型に充填して、試験片としての鋳型を作製した。
−鋳型物性の評価−
上記の実施例8〜11及び比較例3において得られた各鋳型(試験片)を用いて、それぞれの曲げ強度や引っ掻き硬度を、前記した手法に従って測定し、それらの結果を、下記表3に示した。
Figure 2021171814
かかる表3の結果から明らかな如く、常温の耐火性骨材を、品川式万能撹拌機内において撹拌しつつ加熱せしめた後、水溶性バインダとして水ガラスを添加して、混練せしめることにより、得られる湿態のコーテッドサンド(WCS)を、その加温状態下において、予熱された成形金型にて造型してなる実施例8〜11に係る鋳型(試験片)にあっては、曲げ強度や引っ掻き硬度において優れた特性を有するものであることが認められた。
これに対して、比較例3に示されるように、耐火性骨材を予備加熱することなく、常温状態下において、粘結剤である水ガラスと混練して、形成される湿態のコーテッドサンド(WCS)から造型された鋳型にあっては、曲げ強度及び引っ掻き硬度共に、充分ではないことが認められるのである。

Claims (14)

  1. 耐火性骨材を加熱した後、水溶性バインダと混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を該水溶性バインダにて被覆してなる湿態のコーテッドサンドを、加温状態において形成せしめ、そしてその加温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された所定の成形型に充填して、造型することを特徴とする鋳型の製造法。
  2. 加温状態にある湿態のコーテッドサンドが、30℃〜100℃であることを特徴とする請求項1に記載の鋳型の製造法。
  3. 前記耐火性骨材が、32℃〜150℃の温度に加熱されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳型の製造法。
  4. 常温状態の耐火性骨材を混練しつつ、加熱せしめた後、水溶性バインダを添加して、該加熱された耐火性骨材と混練することにより、かかる耐火性骨材の表面を該水溶性バインダにて被覆してなる湿態のコーテッドサンドを、加温状態において形成せしめ、そしてその加温状態にある湿態のコーテッドサンドを、予熱された所定の成形型に充填して、造型することを特徴とする鋳型の製造法。
  5. 加温状態にある湿態のコーテッドサンドが、30℃〜100℃であることを特徴とする請求項4に記載の鋳型の製造法。
  6. 前記耐火性骨材が、前記水溶性バインダの添加に先立って、32℃〜150℃の温度に加熱されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の鋳型の製造法。
  7. 前記耐火性骨材の混練に先立ち、該耐火性骨材を混錬する混合装置が、予熱されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  8. 前記水溶性バインダが、その沸点未満の温度に予熱されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  9. 前記水溶性バインダの予熱温度が、30℃〜100℃であることを特徴とする請求項8に記載の鋳型の製造法。
  10. 前記耐火性骨材と前記水溶性バインダとの混練に際して、充填性向上剤が更に添加されて、得られる湿態のコーテッドサンド中に該充填性向上剤が含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  11. 前記耐火性骨材と前記水溶性バインダとの混練に際して、耐湿性改善剤が更に添加されて、得られる湿態のコーテッドサンド中に該耐湿性改善剤が含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  12. 前記湿態のコーテッドサンドが、水溶性バインダの固形分量に対して55質量%を超える割合の含水分量を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  13. 前記成形型が、40℃〜250℃の温度に加熱されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
  14. 前記水溶性バインダが、可溶性のケイ酸化合物であること特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の鋳型の製造法。
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