JP2021169640A - スパイラル鋼管 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接金属の靭性に優れたスパイラル鋼管を提供する。【解決手段】溶接金属が所定の化学組成を有し、元素の含有量(質量%)を元素記号で表すとき、0.300≦Al/O≦1.000、0≦(1.5×(O−0.89Al)+3.4×N−Ti)×1000≦60.0%、0.350%≦C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5≦0.450%、C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B≦0.250%以下を満たすことを特徴とするスパイラル鋼管。【選択図】なし

Description

本発明はスパイラル鋼管に関し、特に、溶接金属靭性に優れたスパイラル鋼管に関する。
スパイラル鋼管は、従来から、ビルディング等の建築物や、橋梁、鉄塔などの構造物に使用されている。スパイラル鋼管については、強度や生産性を重要視して、従来から検討がなされてきた。
近年、強度とともに優れた靭性を有するスパイラル鋼管が要求されている。具体的には、たとえば、シャルピー衝撃試験における0℃での靭性が27J等の値が要求されている。
さらに、スパイラル鋼管は熱延鋼板(鋼帯)をスパイラル状(螺旋状)に加工しながら、幅方向端面を突合せた部分の内外面にサブマージアーク溶接を施し製管する。そのため、スパイラル鋼管の母材だけでなく、その溶接金属部においても良好な靭性を有することが要求されるようになっている。特に、建築分野に用いられるスパイラル鋼管では、溶接金属部においても高い靭性を確保することが重要とされている。また、土木分野で用いられるスパイラル鋼管においても、溶接金属部の靭性が良好であることが要求されるようになっている。
特許文献1には、ベイニティックフェライト相を主相とし、第二相としてマルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上50%未満含む組織と、を有し、管軸方向の降伏強さYS:450MPa以上、引張強さTS:570MPa以上、降伏比YR:90%以下の低降伏比高強度で、かつシャルピー衝撃試験の試験温度:0℃の吸収エネルギーvE0:27J以上の高靭性を有する高強度スパイラル鋼管杭が開示されている。
特許文献2には、溶接金属部の組織が焼き戻しマルテンサイトとベイナイト組織とを合わせた分率が80%以上であるスパイラル鋼管が開示されている。
特開2016−47956号公報 特開2011−161500号公報
鋼管杭に一般的に用いられるSM570材では、靭性の指標として、−5℃におけるシャルピー吸収エネルギーが規定されている。しかしながら、溶接金属の靭性はSM570母材よりは低く、改善の余地がある。
本発明は、溶接金属の靭性に優れたスパイラル鋼管を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、粒界フェライトを抑制し、アシキュラーフェライト主体の溶接金属組織を形成することで、溶接金属の靭性を向上させることができることを見出した。本発明は、さらに検討を進めてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]スパイラル状に巻かれた鋼帯の幅方向端面同士を内外面から溶接したスパイラル鋼管であって、溶接金属の化学組成が、質量%で、C:0.030〜0.150%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.050%、Ti:0.002%〜0.050%、B:0%超、0.0050%以下、N:0.0100%以下、O:0.0150〜0.0600%、残部:Fe及び不純物であり、元素の含有量(質量%)を元素記号で表すとき、0.300≦Al/O≦1.000を満たし、α´=(1.5×(O−0.89Al)+3.4×N−Ti)×1000で定義されるα’が0〜60.0%であり、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5で定義されるCeqが0.350〜0.450%であり、Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPcmが0.250%以下であることを特徴とするスパイラル鋼管。
[2]前記溶接金属の組織が、面積率で、アシキュラーフェライト:70.0%以上、
粒界フェライト:20.0%以下、島状マルテンサイト:5.0%以下を含有し、EBSD粒径が15.0μm以下であることを特徴とする前記[1]のスパイラル鋼管。
[3]前記溶接金属が、前記Feの一部に代えて、さらに、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、V:0.050%以下、Nb:0.050%以下、Mg:0.0100%以下、及びCa:0.0060%以下からなる群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする前記[1]又は[2]のスパイラル鋼管。
[4]前記スパイラル鋼管の母材の化学組成が、質量%で、C:0.030〜0.150%、Si:0.55%以下、Mn:0.50〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、残部:Fe及び不純物であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかのスパイラル鋼管。
[5]前記母材が、前記Feの一部に代えて、さらに、Al:0.100%以下、Ti:0.030%以下、N:0.0060%以下、O:0.0050%以下、Ca:0.0050%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.100%以下、B:0.0020%以下、V:0.060%以下、及びMg:0.0100%以下からなる群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかのスパイラル鋼管。
本発明によれば、溶接金属の靭性に優れたスパイラル鋼管を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のスパイラル鋼管は、スパイラル状(螺旋状)に巻かれた鋼帯の幅方向端面同士が、内外面からそれぞれサブマージアーク溶接されてなる溶接金属部を有する。本発明のスパイラル鋼管は、加熱工程と冷却工程と焼き戻し工程と造管工程を備える製造方法により製造できる。以下、化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する。
はじめに、溶接金属部の化学組成について説明する。
C:0.030〜0.150%
Cの含有量が0.030%未満であると、焼き入れ性が低く、溶接金属が十分な焼入れ組織とならない。また、高温割れの感受性が高くなる。特に、スパイラル鋼管の内面に対する溶接の後に行う外面に対する溶接により形成された後続溶接金属部では、内面に対する溶接を行う際の予熱効果により冷却速度が遅くなるため、高温割れが発生する可能性が高い。また、Cの含有量が0.150%を超えると、焼入れ性が過剰となり、冷却工程における冷却時に割れる危険性が高くなる。また、C量が高い場合も高温割れが懸念される。したがって、Cの含有量は0.030〜0.150%とする。
Si:0.05〜0.50%
Siの含有量が0.05%未満であると、脱酸不足となり粗大な酸化物が形成されるおそれがある。Siの含有量が0.50%を超えると、粗大な島状マルテンサイト(MA)が形成し、その結果、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Siの含有量は0.05〜0.50%とする。
Mn:0.50〜2.00%
Mnは焼入れ性を確保する上で必要な元素である。Mnの含有量が0.50%未満であると、焼入れ性が不足する。Mnの含有量が2.00%を超えると、焼入れ性が過剰となり、冷却工程における冷却時に割れる危険性がある。また、焼入れ後の溶接金属部の靭性の回復も困難となる。さらに粗大なMnSが形成し破壊の起点となり靭性が低下する。したがって、Mnの含有量は0.50〜2.00%とする。
P:0.020%以下、
Pは不純物であり、その含有量は0.020%以下とする。含有量は0であってもよい。Pは凝固割れを助長する元素である。Pの含有量が0.020%を超えると、凝固割れの危険性が高くなるので、精錬コストを考慮し、含有量を低減する。
S:0.010%以下
Sは不純物であり、その含有量は0.010%以下とする。含有量は0であってもよい。SはPとともに凝固割れを助長する元素である。Sの含有量が0.010%を超えると、凝固割れの危険性が高くなるので、精錬コストを考慮し、含有量を低減する。
Al:0.001〜0.050%以下
Alはアシキュラーフェライト生成サイトとなる酸化物を溶接金属中に多数分散させるための酸素量制御に必要な元素である。Alは母材、溶接ワイヤ―およびフラックスから含有される。Alの含有量が0.001%未満では上記酸化物がほとんど得られない。Alの含有量が0.050%を超えると、そだいなAlが形成され、破壊の起点となり靭性が低下する。したがって、Alの含有量は0.001%以上、0.050%以下とする。
Ti:0.002%〜0.050%
Tiはアシキュラーフェライト生成サイトとなる酸化物の構成元素の1つで溶接金属組織の微細化を促す。Tiの含有量が0.002%未満では上記の効果が得られない。Tiの含有量が0.050%を超えると、固溶Tiが増加して、焼き戻し工程において炭化物を形成し、溶接金属部の靭性が低下する。したがって、Tiの含有量は0.002%以上、0.050%以下とする。
B:0%超、0.0050%以下
Bは、固溶状態のBが、溶接金属の粒界フェライト形成を抑制することにより、アシキュラーフェライトの形成を促進する効果を有する。Bは極少量でも含有すればこの効果が得られる。効果をより確実に得るためには0.0001%以上の含有が好ましい。強度が高くなりすぎることによる靭性の低下を防ぐために、0.0050%以下とする。
N:0.0100%以下
Nは不純物であり、Tiと反応せずに残った固溶Nが靭性を低下させるのを防ぐため、0.0100%以下とする。
O:0.0150〜0.0600%
Oはアシキュラーフェライトの核となる酸化物形成のため、0.0150%以上とし、酸化物の過剰形成、凝集・粗大化による靭性の低下を抑えるため、0.0600%以下とする。
溶接金属は、さらに必要に応じて、以下の元素を含有してもよい。
Cu:0.50%以下
Cuは溶接金属の強度を向上することのできる元素であり、必要に応じて添加する。含有量は0.50%以下の範囲とすることが好ましい。
Ni:0.50%以下
Niは靭性を低下させることなく、溶接金属の強度を向上することができ、また、焼入れ性を高める元素である。必須ではないが、0.50%以下の範囲で含有させることが好ましい。
Cr:0.50%以下
Crは溶接金属の強度を向上させることができ、また、焼入れ性を高める元素である。必須ではないが、0.50%以下の範囲で含有させることが好ましい。
Mo:0.50%以下
Moは溶接金属の強度を向上させることができ、また、焼入れ性を高める元素である。必須ではないが、0.50%以下の範囲で含有させることが好ましい。
V :0.050%以下
Vは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。必須ではないが、0.050%以下の範囲で含有させることが好ましい。
Nb:0.050%以下
Nbは強度向上、粒界フェライト抑制に有効な固溶Bを存在させるために有効な元素である。Nbの含有は必須ではない。島状マルテンサイトの形成による靭性の低下を防ぐため、0.050%以下とするのが好ましい。
Mg:0.0100%以下
Mgは、脱酸剤として働き溶接金属の酸素量を低減し、靭性を向上させる元素である。必須ではないが、0.0100%以下の範囲で含有させることが好ましい。
Ca:0.0060%以下
Caは形態制御による延性の改善や組織微細化に有効な元素である。Caの含有は必須ではない。硫化物や酸化物の粗大化による延性や靭性の低下を防ぐため、0.0060%以下とするのが好ましい。
溶接金属の残部はFe及び不純物である。不純物とは、溶接の過程で、溶接ワイヤ、フラックス、鋼板、周辺雰囲気等から混入する成分であり、意図的に含有させたものではない成分のことをいう。
具体的には、P、S、N、Sb、Sn、W、Co、As、Pb、Bi、及びHがあげられる。このうち、P、S、及びNは、上述のとおり、それぞれ、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.0100%以下となるように制御する必要がある。
その他の元素については、通常、Sb、Sn、W、Co、及びAsは0.1%以下、Pb及びBiは0.005%以下、Hは0.0005%以下の不可避的不純物としての混入があり得るが、通常の範囲であれば、特に制御する必要はない。
溶接金属の化学組成は、さらに、Al/O、α´、Ceq、Pcmが以下の条件を満たす必要がある。以下のAl/O、α´、Ceq、Pcmに関する説明において、元素記号は、元素の含有量(質量%)を表す。
Al/O:0.300〜1.000
Al/Oは、Al量とO量の比であり、アルミ脱酸終了後の酸素ポテンシャルを示す指標である。Al/Oを0.300〜1.000に制御することで、アシキュラーフェライトの生成量を向上できる。
Al/Oが0.300未満の場合、O量が過多となり、Ti酸化物を形成しなかった溶存酸素が鋼の清浄度を下げるため靭性が低下する。一方、Al/Oが1.000超の場合、Al量が過多となり、Tiと結合するO量が低減し、アシキュラーフェライト核となるTi酸化物が減少し、靭性が低下する。よって、Al/Oは、0.300〜1.000する。
α´:0〜60.0%
α´はAl、O及びTi、Nの化学量論比に基づいて、有効なアシキュラーフェライト生成能を示したパラメーターであり、α´=(1.5×(O−0.89Al)+3.4×N−Ti)×1000で定義される。α´を0〜60.0%の範囲に制御することによりアシキュラーフェライト核生成能が向上する。ここで、溶接金属に含有されない元素はゼロとして計算する(以降の説明で同じ)。
α´が0%未満の場合、Al、Ti量がいずれかが過多、あるいはN、O量が過少となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。α´が60.0%超の場合、Al、Ti量がいずれかが過少、あるいはN、O量が過多となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。
Ceq:0.350〜0.450%
溶接金属の化学組成は、Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCeqが0.350〜0.450%となる必要がある。
Ceqは母材の溶接熱影響による硬化能について、各合金元素の硬化能をそれぞれC量に換算して合計したものである。溶接金属が所望の引張り強さを達成するために、Ceqを0.350〜0.450%に制御する。好ましくはCeqを0.400〜0.430%とする。
Pcm:0.250%以下
溶接金属の化学組成は、Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPcmが0.250%以下となる必要がある。
Pcmは溶接感受性と呼ばれ、低温割れに対する鋼材の化学成分の影響を定量的に評価したものである。Pcmが0.250%を超えると低温割れが発生しやすくなるので、上限は0.250%とする。
本発明のスパイラル鋼管の溶接金属は、上記の化学組成とすることによって、好ましくは以下のような組織となる。以下、組織に関する「%」は「面積%」を意味する。
アシキュラーフェライト:70.0%以上
アシキュラーフェライトはTi系酸化物を核とした針状のフェライト組織であり、その割合が大きいほど、溶接金属部の破壊単位が微細化する。その効果を得るためには、アシキュラーフェライトを70.0%以上とすることが好ましい。最も好ましくはアシキュラーフェライトの割合が100%である。
粒界フェライト:20.0%以下
粒界フェライトは脆化相の1つで、破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、粒界フェライトは20.0%以下とすることが好ましい。
島状マルテンサイト:5.0%以下
島状マルテンサイト脆化相の1つで、非常に硬度が高いため破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、島状マルテンサイトは5.0%以下とすることが好ましい。
組織の残部として、粒内フェライト、フェライトサイドプレート、上部ベイナイトを含んでもよい。これらの組織は破壊の起点となり、靭性の低下の原因となる組織であるので、上述したとおり、アシキュラーフェライトにより破壊単位が微細化されていることが好ましい。
EBSD粒径:15.0μm以下
さらに、溶接金属組織においては、EBSD粒径が15.0μm以下であることが好ましい。EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)粒径は破壊単位の目安となる結晶粒径サイズである。EBSD粒径が15.0μm以下であれば破壊単位が微細であり、低温での靭性を確保できるので好ましい。
本発明のスパイラル鋼管では、適切なフラックスとワイヤを組み合わせることにより上述のとおり溶接金属の成分を制御し、さらに、溶接入熱を適切に制御することで、上述の組織を得ることができる。
これにより、溶接金属部においても優れた靭性を有するスパイラル鋼管を得ることができる。具体的には、溶接金属部の−5℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上となるスパイラル鋼管を得ることができる。
次に、好ましい母材の化学組成について説明する。
C:0.030〜0.150%
Cは鋼の強度向上に有効であり、所望の強度を得るために0.030%以上含有させるのが好ましい。C量が多すぎると焼き入れ性が向上しすぎて母材の靭性が低下するため、C量は0.150%以下とするのが好ましい。好ましくは0.060〜0.080%である。
Si:0.55%以下
Siは脱酸に必要な元素である。Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、Si量は0.55%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.35%未満である。脱酸は、Al、Tiでも行えるのでSiの添加は必須ではない。
Mn:0.50〜2.00%
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、その効果を得るために0.50%以上含有させるのが好ましい。Mn量が多いと鋼の焼入れ性が増して、HAZ靱性、溶接性を劣化し、さらに、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性が劣化するので、Mn量は2.00%以下とするのが好ましい。より好ましくは、1.00〜1.80%である。
P :0.020%以下
S :0.010%以下
P、Sは、いずれも不純物であり、継手の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pは0.020%以下、Sは0.010%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Pは0.010%以下、Sは0.003%以下である。
母材は、さらに必要に応じて、以下の元素を含有してもよい。
Al:0.100%以下
Alは通常脱酸剤として用いられ、鋼材中に含まれる元素である。Al量が多くなると、Al系非金属介在物が増加し、鋼材の清浄度が低下し、靭性が劣化するので、0.100%以下とするのが好ましい。
Ti:0.030%以下
Tiは、鋼中で微細なTiNを形成し、その単体、あるいはMg(MgAl)酸化物との複合介在物がピニング粒子として作用する。その結果、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制されミクロ組織が微細化し、低温靱性が改善する。Tiは必須の元素ではないが、この効果を得るためには、Tiは0.005%以上含有させるのが好ましい。Ti量が多くなると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、靭性が劣化するので、Ti量は0.030%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.008〜0.020%である。
N :0.0060%以下
NはTiと結合してTiNを形成する元素である。Nは必須の元素ではないが、TiNがピニング粒子として作用する効果を得るためには0.0020%以上含有させるのが好ましい。N量が多いと、Tiと結合しなかった固溶Nが靭性を低下させるので、N量は0.0060%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.0030〜0.0050%である。
O :0.0050%以下
Oはピニング粒子を形成する元素である。しかしながら、Oを含有すると鋼の清浄度が低下するので少ない方が好ましく、0.0050%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.0030%以下である。
Ca:0.0050%以下
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靱性を向上させる元素である。Ca量が多いと、CaO−CaSが大型のクラスターや介在物となり、靱性に悪影響を及ぼすおそれがある。Caはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なCa量は0.0050%以下である。
Ni:0.50%以下
Niは靭性を低下させることなく、母材の強度を向上することのできる元素である。Ni量が多くなると、効果は飽和する。Niはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なNi量は0.50%以下である。
Cr:0.50%以下
Crは母材の強度を向上することのできる元素である。Cr量が多くなると、効果は飽和する。Crはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なCr量は0.50%以下である。
Cu:0.50%以下
Cuは母材の強度を向上することのできる元素である。Cu量が多くなると、効果は飽和する。Cuはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なCu量は0.50%以下である。
Mo:0.50%以下
Moは母材の強度を向上することのできる元素である。Mo量が多くなると、効果は飽和し、さらに、靭性が低下する。Moはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なMo量は0.50%以下である。
Nb:0.100%以下
Nbは母材強度を向上させる元素である。Nb量が多くなると、島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下する。Nbはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なNb量は0.100%以下である。強度と靭性の観点から、より好ましくは0.020〜0.050%である。
B :0.0020%以下
Bは母材の焼入れ性向上、粒界フェライト形成抑制に有効な元素である。B量が多くなると、効果は飽和する。Bはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なB量は0.0020%以下である。
V :0.060%以下
Vは母材強度を向上させる元素である。V量が大きくなると、析出硬化によって降伏比が上昇することがある。Vはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なV量は0.060%以下である。
Mg:0.0100%以下
MgはMgAl、MgSのような介在物を形成する元素である。MgAlはTiN上に析出する。これらの介在物はピニング粒子として作用し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。Mg量が多くなると、効果は飽和する。Mgはスパイラル鋼管の母材には必ずしも含有される必要はなく、好適なMg量は0.0100%以下である。
以上説明した以外の残部は、Fe及び不純物である。不純物とは、原材料に含まれる、あるいは製造の過程で混入する成分であり、意図的に鋼に含有させたものではない成分のことをいう。
具体的には、P、S、O、Sb、Sn、W、Co、As、Pb、Bi、及びHがあげられる。このうち、P、S、及びOは、上述の好適な範囲となるように制御されることが好ましい。
その他の元素については、通常、Sb、Sn、W、Co、及びAsは0.1%以下、Pb及びBiは0.005%以下、Hは0.0005%以下の不可避的不純物としての混入があり得るが、通常の範囲であれば、特に制御する必要はない。
本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
種々の成分組成の鋼材を溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブにし、1200℃に加熱後、熱間圧延を行い、熱延仕上げ前温度を1000℃、巻取り温度を500〜700℃として板厚5〜25mmの鋼帯を作製した。表1に鋼板の板厚、化学組成、及び引張強さを示す。
Figure 2021169640
次に、作製した鋼帯をスパイラル状(螺旋状)に加工しながら、幅方向端面を突合せ、外面からサブマージアーク溶接し、そのあと内面をサブマージアーク溶接した。入熱は板厚によって開先部を埋めるだけ電流、電圧および溶接速度にすることで制御した。
内面および外面の溶接金属靭性は本発明の溶接金属成分に制御することで得られる。さらに、外面溶接金属部は内面溶接の熱影響によるテンパー効果で、同一成分でも内面よりもより良好な靭性を得られることから、実施例では外面溶接金属成分を例として表2、表3に示す。
Figure 2021169640
Figure 2021169640
サブマージアーク溶接後、溶接金属組織(アシキュラーフェライト、粒界フェライトと島状マルテンサイトの合計)の面積率(%)、溶接金属部のEBSD粒径、溶接金属の引張強度及びシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを測定した。
表4に、その結果を示す。表4におけるAF率、GBF率、MA率はそれぞれ、溶接金属組織におけるアシキュラーフェライト、粒界フェライト、島状マルテンサイトの面積率を示す。
Figure 2021169640
シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーは、次のように測定した。
溶接金属を含む方向に平行な板厚断面において、鋼板の表層2mm下から溶接金属部中央からシャルピー試験片を採取し、JIS Z2242に従って、0℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。吸収エネルギーは、シャルピー衝撃試験を3回行い、その平均値とし、100J未満のものを靭性が不良と判断した。
組織の面積率は、次のように測定した。
2パス目の表層から肉厚t/4位置の溶接ビード幅の1/2部を試験片採取し、研磨後、ナイタル腐食及びレペラ腐食を行い、現出した組織を光学顕微鏡にて、1000μm×1000μmの範囲で観察される組織を対象に10視野測定し、得られた像を画像解析し、各組織の平均面積率を算出して求めた。
EBSD粒径は500μm×500μmの範囲で20視野EBSD解析し、結晶方位差15°で区切ったときの結晶粒サイズの平均とした。
表3に示すように、本発明の溶接継手の化学組成を満足する発明例は、いずれも、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上であり、優れた溶接金属部靱性を有するものであった。

Claims (5)

  1. スパイラル状に巻かれた鋼帯の幅方向端面同士を内外面から溶接したスパイラル鋼管であって、
    溶接金属の化学組成が、質量%で、
    C :0.030〜0.150%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.50〜2.00%、
    P :0.020%以下、
    S :0.010%以下、
    Al:0.001〜0.050%、
    Ti:0.002%〜0.050%、
    B :0%超、0.0050%以下、
    N :0.0100%以下、
    O :0.0150〜0.0600%、
    残部:Fe及び不純物
    であり、元素の含有量(質量%)を元素記号で表すとき、
    0.300≦Al/O≦1.000を満たし、
    α´=(1.5×(O−0.89Al)+3.4×N−Ti)×1000で定義されるα´が0〜60.0%であり、
    Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5で定義されるCeqが0.350〜0.450%であり、
    Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPcmが0.250%以下である
    ことを特徴とするスパイラル鋼管。
  2. 前記溶接金属の組織が、面積率で、
    アシキュラーフェライト:70.0%以上、
    粒界フェライト:20.0%以下、
    島状マルテンサイト:5.0%以下
    を含有し、
    EBSD粒径が15.0μm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパイラル鋼管。
  3. 前記溶接金属が、前記Feの一部に代えて、さらに、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Cr:0.50%以下、
    Mo:0.50%以下、
    V :0.050%以下、
    Nb:0.050%以下、
    Mg:0.0100%以下、及び
    Ca:0.0060%以下
    からなる群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスパイラル鋼管。
  4. 前記スパイラル鋼管の母材の化学組成が、質量%で、
    C :0.030〜0.150%、
    Si:0.55%以下、
    Mn:0.50〜2.00%、
    P :0.020%以下、
    S :0.010%以下、
    残部:Fe及び不純物
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパイラル鋼管。
  5. 前記母材が、前記Feの一部に代えて、さらに、
    Al:0.100%以下、
    Ti:0.030%以下、
    N :0.0060%以下、
    O :0.0050%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Cr:0.50%以下、
    Cu:0.50%以下、
    Mo:0.50%以下、
    Nb:0.100%以下、
    B :0.0020%以下、
    V :0.060%以下、及び
    Mg:0.0100%以下
    からなる群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスパイラル鋼管。
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