JP2021166505A - メイタンシノールの生産方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】AP3等のアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する方法の提供。【解決手段】下記(A)〜(C)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法を提供する:(A)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質;(B)(A)のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;(C)(A)のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。【選択図】なし
Description
本発明は、メイタンシノールの生産方法に関する。
メイタンシノールは、抗体薬物複合体の薬物部分に使用されるエムタンシン等のメイタンシン系物質の製造に使用される重要中間体であり、Actinosynnema pretiosum等の微生物が産生するアンサマイトシンP3(以下、AP3と表記。その他類縁体も同様)の3位イソブチルエステルを加水分解することによって得られる。
メイタンシノールは、化学変換法、微生物変換法又は発酵法で製造される。化学変換法としては、例えば、発酵で得られたアンサマイトシン類化合物を基質とし、水素化トリメトキシアルミニウムリチウムヒドリド(Lithiumu tri-methoxyaluminum hydride: LATH)又は他のアルカリ金属(alkali)アルコキシアルミニウム水素化物を用いた還元的開裂により、メイタンシノールを得ることができる(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1)。しかしながらこれら化学変換法で使用するLATHや他の誘導体は発火性を有する危険な試薬であること、また、発酵と化学変換の2工程分のコストが掛かることから、工業化の上で必ずしも満足できる技術ではなかった。
微生物変換法としては、放線菌Streptomyces属菌株の培養液にメイタナシン、メイタンシノール・プロピオネート、AP3、AP4、AP8'を添加して加水分解する方法(特許文献4)が知られている。しかしながら微生物変換法においても、発酵で得られたアンサマイトシン類化合物を要し、発酵と微生物変換の2工程分のコストが掛かることから、工業化の上で必ずしも満足できる技術ではなかった。
また発酵法としては、Nocardia No. C-15003 (IFO 13726; FERM 3992; ATCC 31281)株の培養物からメイタンシノール単離が可能との報告があるが、主要発酵産物であるメイタンシノール・プロピネートの生産量が25 μg/mLであることから、副産物であるメイタンシノールの生産量は微量である蓋然性が高い(特許文献5)。実際Nocardia No. C-15003株が生産する主要活性化合物がAP3及びAP4であるとの既報がある(非特許文献2)。
一方で、本出願人は、アンサマイトシン種から酵素的にメイタンシノールを生産する方法を提供した(特許文献6)。
J Am Chem Soc. 1975 Sep 3;97(18):5294-5.
Nature. 1977 Dec 22-29;270(5639):721-2.
AP3をメイタンシノールに化学変換する工程はすでに確立された技術であるが、発火性のある水素化アルミニウムリチウム及びその誘導体を使用し、その危険性から工業化の上で必ずしも満足できる技術ではない。また特定の放線菌培養物を用いてAP3をメイタンシノールへと加水分解する技術は、工業化に向けた十分な知見獲得や技術確立が成されていない。また、特定の放線菌の培養物からメイタンシノールを精製する技術は、その生産量の低さから工業化の上で必ずしも満足できる技術ではない。
本発明の目的は危険な試薬を用いず、多くの反応工程を要さずに、主要産物としてメイタンシノールを生産する技術を提供することにある。
本発明は以下を提供する:
[1] 下記(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(A)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(C)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
[2] 下記(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含むアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(a)配列番号1又は2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1又は2に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号8に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[3] アンサマイトシン種が、アンサマイトシンP2(AP2)、アンサマイトシンP3(AP3)、又はアンサマイトシンP4(AP4)である、1又は2に記載の生産方法。
[4] アンサマイトシン種が、AP3である、1又は2に記載の生産方法。
[5] アンサマイトシン種生産菌が、アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)である、1から4のいずれか1項に記載の生産方法。
[6] 1に定義した(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能な、又は2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含む、アンサマイトシン種生産菌。
[7] Actinosynnema pretiosumである、6に記載のアンサマイトシン種生産菌。
[8] 2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを含む、アンサマイトシン種生産菌形質転換用ベクター。
[9] 配列番号3に記載の塩基配列を有する、8に記載のベクター。
[10] 9又は10に記載のベクターの、メイタンシノールの生産のための使用。
[11] 6又は7に記載のアンサマイトシン種生産菌の培養のための、炭素源、窒素源、エキス類、及びイソブチルアルコールを含む、培地。
[1] 下記(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(A)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(C)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
[2] 下記(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含むアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(a)配列番号1又は2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1又は2に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号8に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[3] アンサマイトシン種が、アンサマイトシンP2(AP2)、アンサマイトシンP3(AP3)、又はアンサマイトシンP4(AP4)である、1又は2に記載の生産方法。
[4] アンサマイトシン種が、AP3である、1又は2に記載の生産方法。
[5] アンサマイトシン種生産菌が、アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)である、1から4のいずれか1項に記載の生産方法。
[6] 1に定義した(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能な、又は2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含む、アンサマイトシン種生産菌。
[7] Actinosynnema pretiosumである、6に記載のアンサマイトシン種生産菌。
[8] 2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを含む、アンサマイトシン種生産菌形質転換用ベクター。
[9] 配列番号3に記載の塩基配列を有する、8に記載のベクター。
[10] 9又は10に記載のベクターの、メイタンシノールの生産のための使用。
[11] 6又は7に記載のアンサマイトシン種生産菌の培養のための、炭素源、窒素源、エキス類、及びイソブチルアルコールを含む、培地。
[メイタンシノールの生産方法]
本発明は、アンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法に関する。
本発明は、アンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法に関する。
(アンサマイトシン種)
本発明に関し、アンサマイトシン種というときは、特に記載した場合を除き、3位に異なるエステル置換基を有する下式で表される、RがH以外のもの(RがHであるP0は、メイタンシノールである。)をいう。
本発明に関し、アンサマイトシン種というときは、特に記載した場合を除き、3位に異なるエステル置換基を有する下式で表される、RがH以外のもの(RがHであるP0は、メイタンシノールである。)をいう。
本発明のメイタンシノールの生産方法は、上記のアンサマイトシンP0〜P4'のうち、好ましくはアンサマイトシンP2(AP2)、アンサマイトシンP3(AP3)、又はアンサマイトシンP4(AP4)からのメイタンシノールの生産に適しており、より好ましくはAP3からのメイタンシノールの生産に適している。
AP3は、具体的には下式で表される。
なお本明細書では、本発明を、アンサマイトシン種のうちAP3からメイタンシノールを生産する場合を例に説明することがあるが、当業者であれば、その説明を、他のアンサトマイシン種からメイタンシノールを生産する場合にも適宜当てはめて理解することができる。
(アンサマイトシン種生産菌)
本発明においては、アンサマイトシン種生産菌を用いる。アンサマイトシン種生産菌として、アクチノシネマ(Actinosynnema)属の菌が知られており、本発明においても好適に用いることができる。Actinosynnema属の菌の例として、アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)ATCC 31565、Actinosynnema pretiosum PF4-4(ATCC PTA-3921)(米国特許第4,450,234号、特表2005-510226)、Actinosynnema pretiosum ATCC 31280が知られている。
本発明においては、アンサマイトシン種生産菌を用いる。アンサマイトシン種生産菌として、アクチノシネマ(Actinosynnema)属の菌が知られており、本発明においても好適に用いることができる。Actinosynnema属の菌の例として、アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)ATCC 31565、Actinosynnema pretiosum PF4-4(ATCC PTA-3921)(米国特許第4,450,234号、特表2005-510226)、Actinosynnema pretiosum ATCC 31280が知られている。
本発明においては、アンサマイトシン種生産菌として、野生株を用いてもよく、変異株を用いてもよい。Actinosynnema pretiosum ATCC 31280においてAP3生合成のためのN-デメチル-AP3(PND-3)中間体と競合する糖転移酵素をコードする遺伝子ansa30を不活性化した変異体が、AP3の産生能が高いことが知られている(Biotechnol. J. 2017, 1700484)。
(微生物学的生産)
本発明のメイタンシノールの生産方法の一態様は、下記(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む。
本発明のメイタンシノールの生産方法の一態様は、下記(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む。
(A)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(C)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
(B)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(C)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
配列番号6に、Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来のAP3を加水分解してメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有する酵素・パラ−ニトロベンジルエステラーゼ(pnbA)のアミノ酸配列を示す。また配列番号7に、Actinosynnema pretiosum型のpnbAのアミノ酸配列を示す。配列番号6の配列と配列番号7の配列とは、全長489アミノ酸残基のうち488が一致しており、同一性は99.8%と計算される。さらに配列番号9は、Actinosynnema pretiosum型の変異型pnbA酵素・pnbA A107G(後述する。)のアミノ酸配列を示す。
本発明のメイタンシノールの生産方法の他の態様は、下記(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含むアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む。
(a)配列番号1又は2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1又は2に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号8に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(b)配列番号1又は2に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号8に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
配列番号1にBacillus subtilis subsp. subtilis str168由来pnbAの塩基配列を示す。また配列番号2に、Actinosynnema pretiosum型のpnbAの塩基配列を示す。さらに配列番号8に、Actinosynnema pretiosum型のpnbA A107Gの塩基配列を示す。配列番号1の配列と配列番号2の配列とは、全長1470塩基長のうち1099が一致しており、同一性は74.76%と計算される。
アンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性は、好ましくは、AP3からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性であり、より好ましくは、AP3を加水分解してメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性をいう。このような活性の有無は、反応により生じたメイタンシノールの有無、又はその量を、HPLC等で分析することにより、確認することができる。
本発明に関し、あるタンパク質が「アンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有する」というときは、特に記載した場合を除き、少なくとも、100μg/mLのAP3にタンパク質を適した条件で作用させた場合に、1.0μg/mL以上(好ましくは2.0μg/mL以上、より好ましくは3.0μg/mL以上、さらに好ましくは4.0μg/mL以上)のメイタンシノールを生成できることをいう。適した条件の例は、十分量の酵素を用い、20〜30℃、pH3.0〜8.0で、48時間以上反応させることである。
(酵素pnbA)
配列番号1の塩基配列でコードされる配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質である、Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来のパラ−ニトロベンジルエステラーゼ(pnbA。Bacillus subtilis由来のものを、特にbspnbAと称することもある。)のアンサマイトシン種をメイタンシノールに変換する能力は、本発明者らにより見出され、利用可能となった(前掲特許文献6)。それ以前に、アンサマイトシン種をメイタンシノールへ変換する特定の酵素を見出した報告はなく、また類似構造との共結晶による構造情報も存在しない。bspnbAのアミノ酸配列及び立体構造情報から、アンサマイトシン種をメイタンシノールに変換する活性を予測することは極めて困難である。
配列番号1の塩基配列でコードされる配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質である、Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来のパラ−ニトロベンジルエステラーゼ(pnbA。Bacillus subtilis由来のものを、特にbspnbAと称することもある。)のアンサマイトシン種をメイタンシノールに変換する能力は、本発明者らにより見出され、利用可能となった(前掲特許文献6)。それ以前に、アンサマイトシン種をメイタンシノールへ変換する特定の酵素を見出した報告はなく、また類似構造との共結晶による構造情報も存在しない。bspnbAのアミノ酸配列及び立体構造情報から、アンサマイトシン種をメイタンシノールに変換する活性を予測することは極めて困難である。
本発明者らの検討によると、bspnbAは、carboxylesterase familyに属し、α/β hydrolase foldを有することがわかっている。なおモチーフ解析は、配列が示されていれば、公開されているwebsite、例えば、GenomeNet(http://www.genome.jp/)おけるPfam等を利用して、当業者であれば適宜実施でき、また、あるタンパク質がアンサマイトシン種を基質としてメイタンシノールを生成する反応を触媒する活性を有するか否かは、当業者であれば、本明細書の記載を参照にして、適宜評価することができる。
本発明の一態様においては、変異型pnbAが用いられる。変異型pnbAの例は、前掲特許文献6の配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質である。この配列番号12の変異型bspnbAのアミノ酸配列は、野生型のbspnbA(本願の配列番号6)のアミノ酸配列とは1アミノ酸(489アミノ酸中)が異なる。具体的には、野生型のbspnbA(本願の配列番号6)のアミノ酸配列において107番目のA(アラニン)をG(グリシン)に置換したものである。
変異型pnbAの他の例は、配列番号9に示す、Actinosynnema pretiosum型の変異型pnbA酵素・pnbA A107Gである。
このようなActinosynnema pretiosum型のpnbA A107Gは、タンパク質として新規なものである。したがって、本発明は、下記(D)〜(F)のいずれか一のタンパク質を提供するものでもある。
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
また本発明は、上記のActinosynnema pretiosum型のpnbA A107Gをコードするポリヌクレオチド(配列番号8)、ポリヌクレオチドを含有するベクター、ベクターにより形質転換された菌を提供するものでもある。
(酵素pnbAを産生可能なアンサマイトシン種生産菌)
本発明によるメイタンシノールの生産は、上で定義した(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能な、又は上で定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含む、アンサマイトシン種生産菌により行われる。このようなアンサマイトシン種生産菌は、典型的には、上で定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを含有するベクター用いて、宿主となるアンサマイトシン種生産菌、好ましくはActinosynnema pretiosumを形質転換することにより得られる。
本発明によるメイタンシノールの生産は、上で定義した(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能な、又は上で定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含む、アンサマイトシン種生産菌により行われる。このようなアンサマイトシン種生産菌は、典型的には、上で定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを含有するベクター用いて、宿主となるアンサマイトシン種生産菌、好ましくはActinosynnema pretiosumを形質転換することにより得られる。
形質転換の手段は、特に制限はなく、Actinosynnema pretiosumなどの放線菌の遺伝子の発現調節に関する基礎的な解析が行われており、それらの知見を本発明にも活用することができる。一般的に放線菌の形質転換にはプロトプラスト法が用いられており、それに用いる再生培地もよく知られている。形質転換に用いるベクター、プラスミドには、目的のポリヌクレオチド以外に、自律複製配列、プロモーター配列、ターミネーター配列、薬剤耐性遺伝子等を含んでいてもよい。
(メイタンシノール生産条件)
形質転換菌によるメイタンシノールの生産条件は、当業者であれば、適宜設計することができる。例えば、適切な培地に適切な量の微生物を接種し、20℃〜40℃で、6時間〜数日間、好ましくは12時間〜7日間、より好ましくは1〜5日間、必要に応じて100〜400 rpmで撹拌又は振盪しながら培養し、菌体を増殖させることができる。得られた培養液を、適切な成分を含む生産用培地に接種し、20℃〜40℃で、1日間〜数週間、好ましくは3日間〜4週間、より好ましくは1〜3週間、必要に応じて100〜400 rpmで撹拌又は振盪することにより、培養液中に目的物質が得られる。培養の終点は、当業者であれば、目的物質の生産量等を勘案し、適宜決定できる。
形質転換菌によるメイタンシノールの生産条件は、当業者であれば、適宜設計することができる。例えば、適切な培地に適切な量の微生物を接種し、20℃〜40℃で、6時間〜数日間、好ましくは12時間〜7日間、より好ましくは1〜5日間、必要に応じて100〜400 rpmで撹拌又は振盪しながら培養し、菌体を増殖させることができる。得られた培養液を、適切な成分を含む生産用培地に接種し、20℃〜40℃で、1日間〜数週間、好ましくは3日間〜4週間、より好ましくは1〜3週間、必要に応じて100〜400 rpmで撹拌又は振盪することにより、培養液中に目的物質が得られる。培養の終点は、当業者であれば、目的物質の生産量等を勘案し、適宜決定できる。
(培地)
本発明は、アンサマイトシン種生産菌のための培地を提供する。放線菌の培養のためには、YMG寒天培地(0.4% 酵母エキス、1.0% 麦芽エキス、0.4% グルコース、2.0% 寒天、p H7.2-7.3)、接種用培地(3.0% トリプトン大豆ブロス粉末、0.5% 酵母エキス、5.0% ショ糖、pH7.5)、培養用培地(0.8% 酵母エキス、1.0% 麦芽エキス、1.5% ショ糖、2.5% 可溶性でんぷん、pH7.5)等が知られており、またAP3の生産のためには、これらの培地にさらにイソブタノール、及びイソプロパノールが添加されることが知られている。
本発明は、アンサマイトシン種生産菌のための培地を提供する。放線菌の培養のためには、YMG寒天培地(0.4% 酵母エキス、1.0% 麦芽エキス、0.4% グルコース、2.0% 寒天、p H7.2-7.3)、接種用培地(3.0% トリプトン大豆ブロス粉末、0.5% 酵母エキス、5.0% ショ糖、pH7.5)、培養用培地(0.8% 酵母エキス、1.0% 麦芽エキス、1.5% ショ糖、2.5% 可溶性でんぷん、pH7.5)等が知られており、またAP3の生産のためには、これらの培地にさらにイソブタノール、及びイソプロパノールが添加されることが知られている。
本発明により提供される、アンサマイトシン種生産菌の培養のための培地には、炭素源として、麦芽エキス、グルコース、ショ糖、でんぷん、及びコーンスティープリカーから選択されるいずれかを含んでいてもよく、窒素源として、大豆加水分解物、及び綿実粕から選択されるいずれかを含んでいてもよく、エキス類として、酵母エキス、及び麦芽エキスからなる群より選択されるいずれかを含んでいてもよく、その他の成分として、グリセロール、菜種油、L-バリン、レシチン、シクロデキストリンからなる群より選択されるいずれかを含んでいてもよい。特に、アンサマイトシン種生産のためには、培地に、イソプロピルアルコール(C3H8O、イソプロパノールと称されることもある。)、及びイソブチルアルコール(C4H10O、イソブタノールと称されることもある。)のいずれかを添加することができ、これらのうちイソブチルアルコールを添加することがより好ましい。イソブチルアルコールの濃度は、目的の生産が十分に行える限り特に限定されず、例えば0.030〜1.0%であり、好ましくは0.075〜0.75%であり、より好ましくは0.10〜0.50%である。なお、本発明に関し、培地の成分濃度を表すときは、特に記載した場合を除き、成分の重量と培地の容積に基づく値(w/v)である。
特に好ましい態様においては、本発明の培地は、でんぷん、グリセロール、綿実粕、コーンスティープリカー、大豆加水分解物、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、菜種油、L-バリン、シクロデキストリン、イソブチルアルコールを含む。
(塩基配列又はアミノ酸配列の同一性について)
本発明でポリヌクレオチドに関し、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」というときは、特に記載した場合を除き、いずれのポリヌクレオチドにおいても、ハイブリダイゼーションの条件は、Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 4th ed. (Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)及びHybridization of Nucleic Acid Immobilization on Solid Supports(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 138,267-284(1984))の記載に従い、取得しようとするポリヌクレオチドに合わせて適宜選定することができる。例えば85%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液及び50%ホルムアミドの存在下、40℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、55℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。また90%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液及び50%ホルムアミドの存在下、55℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液を用い、60℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。
本発明でポリヌクレオチドに関し、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」というときは、特に記載した場合を除き、いずれのポリヌクレオチドにおいても、ハイブリダイゼーションの条件は、Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 4th ed. (Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)及びHybridization of Nucleic Acid Immobilization on Solid Supports(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 138,267-284(1984))の記載に従い、取得しようとするポリヌクレオチドに合わせて適宜選定することができる。例えば85%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液及び50%ホルムアミドの存在下、40℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、55℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。また90%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液及び50%ホルムアミドの存在下、55℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液を用い、60℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。
また、本発明でタンパク質に関し、「1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」というときの置換等されるアミノ酸の個数は、特に記載した場合を除き、いずれのタンパク質においても、そのアミノ酸配列からなるタンパク質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個又は1〜4個程度であるか、性質の似たアミノ酸への置換であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このようなアミノ酸配列に係るポリヌクレオチド又はタンパク質を調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
本発明で塩基配列(ヌクレオチド配列ということもある。)又はアミノ酸配列に関し「同一性」というときは、特に記載した場合を除き、いずれの塩基配列又はアミノ酸配列においても、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチド又はアミノ酸の個数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。また、このようなアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(1990)403-410に記載されるNBLAST及びXBLASTプログラム中に組込まれている。より詳細には、塩基配列又はアミノ酸配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。同一性の計算には遺伝子情報処理ソフトウェア GENETIX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)を用いてもよい。
本明細書において、塩基配列又はアミノ酸配列に関し、同一性というときは、特に記載した場合を除き、いずれの場合も、少なくとも74.76%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97.5%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.8%以上の配列の同一性を指す。
本発明で用いるポリヌクレオチド又は遺伝子、及びタンパク質又は酵素は、当業者であれば、従来技術を利用して調製することができる。
[pnbAの同定、機能確認]
(実験1:AP3エステラーゼのクローニング)
データベースを参考に、Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来のパラ−ニトロベンジルエステラーゼ(bspnbA)の塩基配列(配列番号1)を、E. coli発現用にコドン最適化した配列にて人工合成し(Genscript社)(配列番号10)、これらの配列をPCRにより増幅した。同様にpCDF-capAベクター(pCDFDuet-1のマルチクローニングサイトにCapA family protein [Bacillus]がクローニングされたベクター。アミノ酸配列 WP 013082012.1)を、PCRにより増幅した。得られた2断片をTAKARA社の In-Fusion kitを使用してクローニングした。
(実験1:AP3エステラーゼのクローニング)
データベースを参考に、Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来のパラ−ニトロベンジルエステラーゼ(bspnbA)の塩基配列(配列番号1)を、E. coli発現用にコドン最適化した配列にて人工合成し(Genscript社)(配列番号10)、これらの配列をPCRにより増幅した。同様にpCDF-capAベクター(pCDFDuet-1のマルチクローニングサイトにCapA family protein [Bacillus]がクローニングされたベクター。アミノ酸配列 WP 013082012.1)を、PCRにより増幅した。得られた2断片をTAKARA社の In-Fusion kitを使用してクローニングした。
得られたIn-Fusion溶液を用いてE. coli JM109 (TAKARA)を形質転換し、37℃で一晩インキュベートした。得られたコロニーに対してコロニーPCRを行うことでインサートが挿入されたプラスミドを探索し、プラスミド調製を行った。得られたプラスミドはpCDF-capA-bspnbAとした。
(実験2:BspnbA活性評価試験)
pRSF-bspnbA(pRSFDuet-1のマルチクローニングサイトへ配列番号10の配列をクローニングしたもの。)、及びpCDF-capA-bspnbAでE. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社)を形質転換し、得られたコロニーをそれぞれカナマイシン硫酸塩(25 μg/mL)、ストレプトマイシン硫酸塩(10 μg/mL)を含むM9seed液体培地(0.68% Na2HPO4、0.3% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、1.0% casamino acid、0.002% thymine、0.1mM CaCl2、0.4% D-glucose、1.0 mM MgCl2)に接種し、28℃、20時間、220 rpmで振盪培養した。
pRSF-bspnbA(pRSFDuet-1のマルチクローニングサイトへ配列番号10の配列をクローニングしたもの。)、及びpCDF-capA-bspnbAでE. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社)を形質転換し、得られたコロニーをそれぞれカナマイシン硫酸塩(25 μg/mL)、ストレプトマイシン硫酸塩(10 μg/mL)を含むM9seed液体培地(0.68% Na2HPO4、0.3% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、1.0% casamino acid、0.002% thymine、0.1mM CaCl2、0.4% D-glucose、1.0 mM MgCl2)に接種し、28℃、20時間、220 rpmで振盪培養した。
この培養液をカナマイシン硫酸塩(25 μg/mL)とOvernight Express Autoinduction Systems(メルク社)を含むM9main培地(0.68% Na2HPO4、0.3% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、1.0% casamino acid、0.002% thymine、0.1 mM CaCl2)に添加した後、28℃、6時間、220 pmで振盪培養した。その後終濃度1 mMのIPTGを添加し、28℃、約16時間、220 rpmで振盪培養した。得られた培養液0.5 mLを遠心分離により集菌し、上清を破棄した後、終濃度10 mM Tris-HCl、100μg/mL AP3(アセトニトリルに溶解)を添加し、30℃、220 rpmで変換反応を行った。24〜96時間後、等量のアセトンを添加し、10分間撹拌後、遠心分離し、上清をHPLC分析に供した。
(実験3:HPLC分析)
分析条件を以下に記す。
分析機器:SHIMAZDU Nexera XR
使用カラム:Imtakt Unison UK-C8 (3 i.d.× 50 mm)
溶離液A:5 mM HCOONH4 (0.02% HCOOH)
溶離液B:MeCN (0.02% HCOOH)
分離条件:0-9 min (3-90% B), 9-9.50 min (90% B), 9.51-12 min (3% B), 12.01 min (stop)
流速:0.7 mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
分析条件を以下に記す。
分析機器:SHIMAZDU Nexera XR
使用カラム:Imtakt Unison UK-C8 (3 i.d.× 50 mm)
溶離液A:5 mM HCOONH4 (0.02% HCOOH)
溶離液B:MeCN (0.02% HCOOH)
分離条件:0-9 min (3-90% B), 9-9.50 min (90% B), 9.51-12 min (3% B), 12.01 min (stop)
流速:0.7 mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
空ベクターであるpCDFDuet-1ではメイタンシノールを生成しなかったのに対して、pCDF-capA-bspnbAはメイタンシノールと同じリテンションタイムにピークを検出した。またLC/MSの結果より、本生成物がメイタンシノールのポジティブMSと一致したことから、pnbエステラーゼはAP3をメイタンシノールに変換する反応を触媒する酵素であると結論付けた。
AP3をメイタンシノールへ変換する特定の酵素を見出した報告はなく、また類似構造との共結晶による構造情報も存在せず、アミノ酸配列及び立体構造情報から本酵素活性を予測することは極めて困難であると考えられた。
なお本発明者らの検討では、AP3の代わりにAP2を用いた場合も、同様にHPLCでメイタンシノールのピークが検出できた。また、pnbエステラーゼは、AP4(イソブチルエステル)も、AP2(エチルエステル)及びAP3(イソプロピルエステル)と同様に作用すると容易に類推できる。したがって、pnbエステラーゼは、種々のアンサマイトシン種をメイタンシノールに変換する反応を触媒する酵素である。
(実験4:部位特異的飽和変異導入による高活性化スクリーニング)
実験2及び実験3の活性評価は酵素精製を行っておらず、タンパク質濃度や菌体生育量などでも標準化していないが、本酵素のAP3に対する活性をさらに高めることができることが想定されたため、bspnbAの活性中心に部位特異的飽和変異を導入し、高活性化酵素をスクリーニングした。
実験2及び実験3の活性評価は酵素精製を行っておらず、タンパク質濃度や菌体生育量などでも標準化していないが、本酵素のAP3に対する活性をさらに高めることができることが想定されたため、bspnbAの活性中心に部位特異的飽和変異を導入し、高活性化酵素をスクリーニングした。
pCDF-capA-bspnbAを鋳型としてインバースPCRにより変異酵素ライブラリ断片を増幅し、T4 kinase(東洋紡社)及びLigation high(東洋紡社)を用いて環状化し、E. coli JM109 (TAKARA)を形質転換し、37℃で一晩インキュベートした。得られたコロニー全てをLB液体培地に懸濁して回収し、そこからプラスミドを抽出して変異酵素ライブラリを構築した。それを実験2の方法に準じてE. coli BL21(DE3)へ導入し、93クローンを96 deep wellプレートに添加したストレプトマイシン硫酸塩(10 μg/mL)を含むM9seed液体培地へ植菌し、800 rpm、30℃、20時間振盪培養した。この培養液をストレプトマイシン硫酸塩(10μg/mL)とOvernight Express Autoinducton Systems(メルク社)を含むM9main培地(0.68% Na2HPO4、0.3% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、1.0% casamino acid、0.002% thymine、0.1mM CaCl2)に添加した後、30℃、6時間、800 rpmで振盪培養した。その後終濃度10 mMのIPTGを添加し、30℃、24時間、800 rpmで振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、上清を破棄した後、終濃度10 mM Tris-HCl、100μg/mL AP3(アセトニトリルに溶解)を添加し、37℃、800 rpmで変換反応を行った。24時間後、等量のアセトンを添加し、10分間撹拌後、遠心分離し、上清をHPLC分析に供した。
(実験5:スクリーニング結果)
分析条件は実験3を参照。本試験の結果、AP3変換活性が野生型エステラーゼの約5倍に向上したA107G変異酵素(pnbAのアミノ酸配列(配列番号1)において107番目のAをGに置換した変異酵素)を得た。
分析条件は実験3を参照。本試験の結果、AP3変換活性が野生型エステラーゼの約5倍に向上したA107G変異酵素(pnbAのアミノ酸配列(配列番号1)において107番目のAをGに置換した変異酵素)を得た。
[実施例1] 放線菌Actinosynnema pretiosumへの導入
AP3変換活性を有した配列番号7のアミノ酸配列からなるAP3エステラーゼ(pnbA、Actinosynnema pretiosum型)をコードする遺伝子(本酵素遺伝子)を、Actinosynnema pretiosumのコドン使用頻度を参考に最適化された塩基配列として人工合成した(GenScript社)(配列番号2)。
AP3変換活性を有した配列番号7のアミノ酸配列からなるAP3エステラーゼ(pnbA、Actinosynnema pretiosum型)をコードする遺伝子(本酵素遺伝子)を、Actinosynnema pretiosumのコドン使用頻度を参考に最適化された塩基配列として人工合成した(GenScript社)(配列番号2)。
なお、Bacillus subtilis由来pnbA遺伝子配列をActinosynnema pretiosum型に最適化した際、プラスミド構築時の制限酵素認識配列に合わせ、pnbA遺伝子配列の4塩基目を変え、その結果、アミノ酸配列としては2番目アミノ酸T→A変異が導入された。その配列で活性が得られたため、T→Aの変更を残した。配列番号7は、配列番号6の配列と1カ所異なる(488/489)。
本酵素遺伝子をpKU592AT-aac(3)IV-2cisへとクローニングされたプラスミドを、Actinosynnema pretiosum AP3生産株(以下AP3株とする)の形質転換へと用いた(図1及び配列番号3)。また本プラスミドを元に変異プライマー(配列番号4及び5)を用いたインバースPCRにより断片を増幅し、反応液中の鋳型プラスミドをFastDigest DpnI(Thermo Fisher Scientific社)を用いて消化し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ社)を用いてPCR断片を精製した。得られたPCR断片を用いてE. coli JM109 (TAKARA社)を形質転換し、37 ℃で一晩培養した。コロニーよりプラスミドを調製し、pKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA A107Gとした。なお、pnbA A107Gは、pnbA(Actinosynnema pretiosum型)のアミノ酸配列において107番目のAをGに置換した変異酵素である(塩基配列は配列番号8、アミノ酸配列は配列番号9)。
[実施例2] 放線菌形質転換準備
E. coli S17-1株のコンピテントセル 100 μLをエレクトロポレーション用キュベットへ添加し、約50 ng/μLのpKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA、pKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA A107Gをそれぞれのキュベットへ添加して懸濁した。エレクトロポレーターGENE PULSER II(Bio-Rad社)にてCAPACITANCE 25 μF、18 kV/cmの条件でエレクトロポレーションを行い、SOC培地1 mLを添加後、37℃、1時間復帰培養を行った後、アプラマイシン硫酸塩(50μg/mL)を含むLBプレートへとプレーティングし、37℃、約16時間静置培養を行った。得られたコロニーを20μg/mLアプラマイシンを含むLB液体培地で37 ℃、定常期まで振盪培養した培養液を接合に用いた。
E. coli S17-1株のコンピテントセル 100 μLをエレクトロポレーション用キュベットへ添加し、約50 ng/μLのpKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA、pKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA A107Gをそれぞれのキュベットへ添加して懸濁した。エレクトロポレーターGENE PULSER II(Bio-Rad社)にてCAPACITANCE 25 μF、18 kV/cmの条件でエレクトロポレーションを行い、SOC培地1 mLを添加後、37℃、1時間復帰培養を行った後、アプラマイシン硫酸塩(50μg/mL)を含むLBプレートへとプレーティングし、37℃、約16時間静置培養を行った。得られたコロニーを20μg/mLアプラマイシンを含むLB液体培地で37 ℃、定常期まで振盪培養した培養液を接合に用いた。
一方AP3株を20 mL TSB液体培地(BD社)にて28 ℃、250 rpmにて24-48時間ほど振盪培養し、得られた培養液1 mLを10 mL TSB液体培地(BD社)へ接種し、28℃、約6時間振盪培養した培養液を接合に用いた。
[実施例3] 接合
大腸菌:培養液3 mL 分を遠心分離により集菌し、同量のTSB液体培地(BD社)で2回洗浄後、1 mL TSB液体培地(BD社)に再度懸濁し、それを20倍希釈して100μLをM4+10 mM 塩化マグネシウムプレートへ接種した。
大腸菌:培養液3 mL 分を遠心分離により集菌し、同量のTSB液体培地(BD社)で2回洗浄後、1 mL TSB液体培地(BD社)に再度懸濁し、それを20倍希釈して100μLをM4+10 mM 塩化マグネシウムプレートへ接種した。
放線菌:培養液1 mL-10 mL分を遠心分離により集菌し、1 mL TSB液体培地(BD社)で1回洗浄後、1 mL TSB液体培地(BD社)に再懸濁し、原液、10-1、10-2倍希釈液をそれぞれ100μLをISP medium No. 4+10 mM 塩化マグネシウムプレートへ接種した。
大腸菌及び放線菌を接種したISP medium No. 4+10 mM 塩化マグネシウムプレート上で2菌種を混ぜ合わせるようにプレーティングし、28℃で24時間培養した。その後、50μg/mL ナリジクス酸、250μg/mL アプラマイシン硫酸塩を含むソフトアガーを2 mLを接合プレートへ重層し、28℃、7-12日間静置培養した。
生育したコロニーを20μg/mL ナリジクス酸、20μg/mL アプラマイシン硫酸塩を含むISP medium 2(BD社)培地へ単離し、28℃で培養した。得られた菌株をそれぞれMay株(pKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbAを有する大腸菌と接合)、May変異株(pKU592AT-aac(3)IV-2cis-pnbA A107Gを有する大腸菌と接合)とした。
[実施例4] HPLC分析
分析条件を以下に記す。
分析機器:SHIMAZDU Nexera XR
使用カラム:Imtakt Unison UK-C8 (3 i.d.×50 mm)
溶離液A:5 mM HCOONH4 (0.02% HCOOH)
溶離液B:MeCN (0.02% HCOOH)
分離条件:0-9 min (3-90% B), 9-9.50 min (90% B), 9.51-12 min (3% B), 12.01 min (stop)
流速:0.7 mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
分析条件を以下に記す。
分析機器:SHIMAZDU Nexera XR
使用カラム:Imtakt Unison UK-C8 (3 i.d.×50 mm)
溶離液A:5 mM HCOONH4 (0.02% HCOOH)
溶離液B:MeCN (0.02% HCOOH)
分離条件:0-9 min (3-90% B), 9-9.50 min (90% B), 9.51-12 min (3% B), 12.01 min (stop)
流速:0.7 mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
[実施例5] エステラーゼ導入放線菌のメイタンシノール生産試験
生育したコロニーを前培養培地(2.0% 可溶性でんぷん, 1.0% グルコース, 1.0% 大豆粉, 0.5 コーンスティープリカー, 0.5% バクトソイトン, 0.5% 炭酸カルシウム, 0.3% 塩化ナトリウム, pH6.8に調整)に接種し、28 ℃、220 rpm、2日間振盪培養した。得られた培養液を、本培養培地(2.0% 可溶性でんぷん, 4.0% グリセロール, 4.0% 綿実粕, 0.5% コーンスティープリカー, 0.5% バクトソイトン, 1.0% 炭酸カルシウム, 0.3% 塩化ナトリウム, 4.0% 菜種油, 1.2% L-バリン, 0.3% レシチン, 0.5% シクロデキストリン, 0.375% イソブチルアルコール)に3%量接種し、28℃、220 rpm、14日間振盪培養を行った。本培養6、10、14日目に500μLサンプリングし、等量のアセトンを添加して10分間撹拌後、遠心分離した上清を、実施例3に記したHPLC分析条件にて分析した。
生育したコロニーを前培養培地(2.0% 可溶性でんぷん, 1.0% グルコース, 1.0% 大豆粉, 0.5 コーンスティープリカー, 0.5% バクトソイトン, 0.5% 炭酸カルシウム, 0.3% 塩化ナトリウム, pH6.8に調整)に接種し、28 ℃、220 rpm、2日間振盪培養した。得られた培養液を、本培養培地(2.0% 可溶性でんぷん, 4.0% グリセロール, 4.0% 綿実粕, 0.5% コーンスティープリカー, 0.5% バクトソイトン, 1.0% 炭酸カルシウム, 0.3% 塩化ナトリウム, 4.0% 菜種油, 1.2% L-バリン, 0.3% レシチン, 0.5% シクロデキストリン, 0.375% イソブチルアルコール)に3%量接種し、28℃、220 rpm、14日間振盪培養を行った。本培養6、10、14日目に500μLサンプリングし、等量のアセトンを添加して10分間撹拌後、遠心分離した上清を、実施例3に記したHPLC分析条件にて分析した。
その結果を図2及び図3に示す。May株ではAP3株よりもメイタンシノール生産性が優位に増加していた。May変異株では更に蓄積量が増加する結果が得られた。May株はAP3株と比較してメイタンシノールと同リテンションタイムに新規ピークが出現し、May変異株ではその新規ピーク面積が更に増加する結果が得られた。一方でAP3生産量はMay株で親株より減少し、May変異株では更に減少した。本結果より、形質転換体で出現した新規ピークはAP3が変換されたメイタンシノールのピークであることが強く示唆された。
[実施例6]エステラーゼ導入放線菌の培養産物の同定
May株を実施例5に記載の方法にて336時間の生産培養で得られた生産培養液1.2 Lを、5,000 rpmで15分間遠心分離して上清及び菌体に分離した。菌体をメタノール800 mLで抽出し、再び5,000 rpmで15分間遠心分離した。メタノール抽出液を取り除き、菌体残渣に対してメタノール400 mLで抽出、同条件で遠心分離を行った。同条件で菌体残渣からの抽出を再度行い、メタノール抽出液1.6 Lを得た。抽出液からメタノールを留去し、水道水で800 mLまでメスアップを行い、等量の酢酸エチルで2回溶媒抽出した。その後、酢酸エチル抽出液を減圧下で濃縮乾固し、酢酸エチル抽出物2.0 gを得た。
May株を実施例5に記載の方法にて336時間の生産培養で得られた生産培養液1.2 Lを、5,000 rpmで15分間遠心分離して上清及び菌体に分離した。菌体をメタノール800 mLで抽出し、再び5,000 rpmで15分間遠心分離した。メタノール抽出液を取り除き、菌体残渣に対してメタノール400 mLで抽出、同条件で遠心分離を行った。同条件で菌体残渣からの抽出を再度行い、メタノール抽出液1.6 Lを得た。抽出液からメタノールを留去し、水道水で800 mLまでメスアップを行い、等量の酢酸エチルで2回溶媒抽出した。その後、酢酸エチル抽出液を減圧下で濃縮乾固し、酢酸エチル抽出物2.0 gを得た。
得られた粗精製物を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(60 i.d.×60 mm、関東化学シリカゲル 60N 40-50μm、乾燥重量81 g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。クロロホルム/メタノール系にて分画を行い、100:0、100:2及び0:100は500 mLで1画分に、100:5から8:2までの4つの移動相は250 mLずつ、8画分、合計で11画分に分けた。100:5-2画分にメイタンシノールと同じ保持時間及びUV極大吸収を有する物質確認し、そのピークのHPLC面積%純度(215 nm)-87.3%であった。
得られたサンプル及びAP3から化学合成した標品のメイタンシノールをそれぞれ1H NMR及び13C NMR解析を行った結果、図4に示す通りシグナルパターンが酷似していた。両サンプルを混ぜ合わせた状態で、1H NMR及び13C NMR解析したところ、メイタンシノール由来の各シグナルが一致したため、本物質をメイタンシノールと同定した。
SEQ ID NO: 1 Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来pnbAの塩基配列
SEQ ID NO: 2 pnbAの塩基配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 3 pKU592AT-aac(3)IV-2Cis-pnbA
SEQ ID NO: 4 PCR Primer F bspnbA-A107G 2の塩基配列
SEQ ID NO: 5 PCR Primer R bspnbA-A107G 2の塩基配列
SEQ ID NO: 6 Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来pnbAのアミノ酸配列
SEQ ID NO: 7 pnbAのアミノ酸配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 8 pnbA A107Gの塩基配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 9 pnbA A107Gのアミノ酸配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 10 pnbAの塩基配列(E. coli型)
SEQ ID NO: 2 pnbAの塩基配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 3 pKU592AT-aac(3)IV-2Cis-pnbA
SEQ ID NO: 4 PCR Primer F bspnbA-A107G 2の塩基配列
SEQ ID NO: 5 PCR Primer R bspnbA-A107G 2の塩基配列
SEQ ID NO: 6 Bacillus subtilis subsp. subtilis str168由来pnbAのアミノ酸配列
SEQ ID NO: 7 pnbAのアミノ酸配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 8 pnbA A107Gの塩基配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 9 pnbA A107Gのアミノ酸配列(Actinosynnema pretiosum型)
SEQ ID NO: 10 pnbAの塩基配列(E. coli型)
Claims (11)
- 下記(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能なアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(A)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(C)配列番号6又は7に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(D)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号9に記載のアミノ酸配列において複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号9に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ただし107番目はGであり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質。 - 下記(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含むアンサマイトシン種生産菌により、アンサマイトシン種からメイタンシノールを生成する工程を含む、メイタンシノールの生産方法:
(a)配列番号1又は2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1又は2に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載の塩基配列とは相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号8に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつアンサマイトシン種からメイタンシノールを生産する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってアミノ酸配列において107番目はGであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - アンサマイトシン種が、アンサマイトシンP2(AP2)、アンサマイトシンP3(AP3)、又はアンサマイトシンP4(AP4)である、請求項1又は2に記載の生産方法。
- アンサマイトシン種が、AP3である、請求項1又は2に記載の生産方法。
- アンサマイトシン種生産菌が、アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)である、請求項1から4のいずれか1項に記載の生産方法。
- 請求項1に定義した(A)〜(F)のいずれか一のタンパク質を産生可能な、又は請求項2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを発現可能に含む、アンサマイトシン種生産菌。
- Actinosynnema pretiosumである、請求項6に記載のアンサマイトシン種生産菌。
- 請求項2に定義した(a)〜(f)のいずれか一のポリヌクレオチドを含む、アンサマイトシン種生産菌形質転換用ベクター。
- 配列番号3に記載の塩基配列を有する、請求項8に記載のベクター。
- 請求項9又は10に記載のベクターの、メイタンシノールの生産のための使用。
- 請求項6又は7に記載のアンサマイトシン種生産菌の培養のための、炭素源、窒素源、エキス類、及びイソブチルアルコールを含む、培地。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020181964A JP2021166505A (ja) | 2020-10-30 | 2020-10-30 | メイタンシノールの生産方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2020181964A JP2021166505A (ja) | 2020-10-30 | 2020-10-30 | メイタンシノールの生産方法 |
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- 2020-10-30 JP JP2020181964A patent/JP2021166505A/ja active Pending
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