JP2021165607A - 吸収式冷温水機の性能診断方法 - Google Patents
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Abstract
Description
性能劣化を検知するためには、定格運転状態を一定時間継続させ計測を行う必要があるため、負荷が常に変化している通常の運転状態では性能劣化を検知することは困難であり、年に1回から2回の定期整備時に計測を行っている。
そこで、運転中においても、吸収式冷温水機の各種センサ情報などから劣化度合いを判断する性能診断方法が従来から提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されるように負荷変動が大きな当該装置において、変動度合い(幅や速度)は納入先の運転状態や付帯設備、季節の影響といった様々な側面に依存するため、出荷時の検査データや設置当初の運転時の計測データだけでは安定運転時を精度良く推定することは困難であり、さらには平均化処理を行うことでより精度が低下し、劣化の誤判定に至る場合もある。誤判定を行わない高精度の推定を行うためには、あらゆる運転状態での計測データが必要となるが、納入先設備毎のあらゆる運転状態の計測データを収集することは実質困難である。また、前述の解決策として、各物理量が相関を持つ当該装置において、特定負荷での運転時の計測データから標準的な関係式を導出することも考えられるが、当該装置や付帯設備等の個体差等により、誤差が増加し診断精度が保証されないことが懸念される。
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
図1は、本発明の性能診断方法を適用する吸収式冷温水機の概略構成を示す。
図1に示す吸収式冷温水機は、建物内で、冷暖房用の冷水(温水)を供給するものであり、図1では一重効用と呼ばれる最も基本的な吸収冷凍サイクルを示す。なお、吸収式冷温水機には、熱交換器を追設して高効率化を図った二重効用あるいは三重効用と呼ばれるタイプの製品もがあるが、基本原理は一重効用のタイプと同じであり、本発明はいずれのタイプの吸収式冷温水機であっても適用が可能である。
これらの冷水入口温度センサー12、冷水出口温度センサー13、および冷水流量計15の計測データは、制御盤(又はデータ収集装置)19に供給される。
なお、燃料制御弁開度センサー10は、燃料制御弁11の開度を検出する代わりに、吸収式冷温水機が備える制御盤の開度指令信号を取り込むようにしてもよい。あるいは、燃料制御弁11の開度の代わりに、燃料流量を計測してもよい。さらに、駆動源が蒸気の場合には、蒸気流量または蒸気制御弁開度を、燃料制御弁開度と同じデータとして扱うようにしてもよい。これらの流量、制御弁開度、または開度指令信号を取り込むことで、駆動源の入力に関わる物理量を正確に検出できるようになる。
性能診断装置23で得られた性能診断結果は、出力部24から出力される。出力部24としては、例えば表示装置やプリンタが使用され、表示や印刷による性能診断結果の出力が行われる。
1 データ収集
制御盤(又はデータ収集装置)19において、例えば、1分間隔で運転時の計測データ(物理量データ)を収集する。
収集する運転時の計測データ(物理量データ)は、一例として、冷水入口温度、冷水出口温度、冷却水入口温度、冷却水出口温度及び高温再生器温度である。冷水流量、冷却水流量があるとなお良い。性能診断装置23では、これらのデータの実測値から実測燃焼量が算出される。
制御盤(又はデータ収集装置)19にて収集した、納入後もしくはメンテナンス実施後1年間の劣化していない正常な運転時(「所定の基準状態」の典型例)の計測データから燃焼量を推定するための関係式(モデル)を算出する。これを学習と呼ぶ。上記の関係式(モデル)を算出することで、関係式を算出するための試験運転等は必要なくなる。性能診断装置23にて燃焼量推定モデルが構築される(学習が行われる)。
なお、燃焼開始直後及び制御範囲外の運転時(過負荷、超低負荷)の計測データについては、物理量の関係性が通常と異なるため学習および診断には使用しない。燃焼量推定モデル作成の詳細は後述する。
また、学習期間は納入後もしくはメンテナンス実施後1年間に限定するわけではなく、燃焼量を推定するための関係式を算出可能であれば、1年以上または1年未満としてもよい。
学習に使用した納入後1年間の正常な運転時の計測データから学習に用いたデータとは別に残したデータを燃焼量推定モデルに入力し、算出される推定燃焼量と実測燃焼量との差より、モデルの平均予測誤差を算出し、これのN倍を以て劣化判定閾値とする。これにより、吸収式冷温水機毎のモデル精度により適切な劣化判定閾値を自動で決定することができる。
学習期間以降の運転時の計測データを前記の燃焼量推定モデルに入力することで、算出される予測誤差が劣化判定閾値を超過した場合を劣化状態とし、この劣化状態を、例えば、10分間継続することが1月に3回発生すると本物件が劣化したと判断し、劣化した物件をパソコン等の出力部24に表示させる。
モデルの作成にあたっては、推定値に遅れがあることを考慮する。
また、燃焼開始直後や制御範囲外の運転時(過負荷、超低負荷)は物理量の関係性が通常と異なることを考慮し、当該データを対象から除外する。
さらに、負荷変動時の燃焼量の振れの影響を考慮する。一例として、変化が緩やかな高温再生器温度を内部変数として介在させることにより、燃焼量の振れによる影響を除去可能である(後述の図2参照)。
現場の吸収式冷温水機より、1分間隔24時間の運転時の計測データが、随時、携帯電話またはインターネット通信にて遠隔のサーバーに送られ、蓄積される。このデータを用いて劣化診断を行う。
学習1
1台毎に蓄積された最古1年分のデータより、下記項目、かつ、燃焼60分以上継続しているデータを抽出する。
X1:冷水入口温度
X2:冷水出口温度
X3:冷却水入口温度
X4:冷却水出口温度
Y1:燃焼量(1次遅れフィルタ後)
Y2:高温再生器温度
上記のデータより重回帰をとり、モデルを作成する。このように、モデルの作成にあたっては、統計モデル(重回帰モデル)を採用する。
X1〜X4、Y1〜Y2より係数a0、a1、b0〜b14を算出する。
燃焼量推定モデル
Y1=a0+a1×Y2
高温再生器温度推定モデル(重回帰モデル)
Y2=b0+X1×b1+X2×b2+X3×b3+X4×b4+X1^2×b5+X2^2×b6+X3^2×b7+X4^2×b8+X1×X2×b9+X1×X3×b10+X1×X4×b11+X2×X3×b12+X2×X4×b13+X3×X4×b14
a0 : −75.831
a1 : 0.97
b0 : −105.118
b1 : 14.166
b2 : −2.728
b3 : 9.381
b4 : −2.289
b5 : 0.279
b6 : 0.774
b7 : 0.057
b8 : 0.057
b9 : −0.138
b10 : −1.065
b11 : 0.84
b12 : −0.391
b13 : −0.131
b14 : −0.06
例えば、図3に示すように、MD値は学習時の計測データの平均(中心)からの距離を表している。MD値の数値が高いほど、推定誤差が大となる可能性が高く、劣化の誤判定となる可能性が高い。なお、図3では、簡素化するため、学習時の計測データを「学習データ」と表記している。
上記で算出された係数を用い、学習2で蓄積されたX1〜X4からY1’(燃焼量推定値)を算出する。
そして、実際の燃焼量Y1と、推定燃焼量Y1’の差分平均値を学習誤差とする。
一例として、上記の係数を使用した場合、
学習誤差=0.81
となる。
劣化診断1
学習2で作成したモデル(算出した係数)を使用して、1分毎の燃焼量推定値を算出する。
燃焼量推定値は、実測値に比べて遅れが生じるため、以下の式により遅れを考慮する。
Y1’’(t)={Y1(t-1)−Y1’’(t-1)}×{1− e^(-1/T)} + Y1’’(t-1)
Y1’’:燃焼量実測値(一次遅れフィルタ後)
T :遅れ時間
1分毎に燃焼量を推定し、実測値との差を比較する。
一例として、実測値と推定値をそれぞれプロットした結果が、図4に示すグラフである。
例えば、推定誤差が、学習3で算出した劣化判定閾値を10分連続して超過した場合に劣化と推定する。さらには、1ヶ月間に5回以上劣化と推定された場合に劣化と断定し、遠隔にて監視している監視者に知らせる。
2…吸収器
3…再生器
4…凝縮器
5…冷水
6a…冷媒(蒸発器内)
6b…冷媒(凝縮器内)
7a…希溶液
7b…濃溶液
8…冷却水
9…燃料
10…燃料制御弁開度センサー
11…燃料制御弁
12…冷水入口温度センサー
13…冷水出口温度センサー
14…吸収液温度センサー
15…冷水流量計
16…冷却水入口温度センサー
17…冷却水出口温度センサー
18…冷却水流量計
19…制御盤(又はデータ収集装置)
21…通信部
22…ネットワーク
23…性能診断装置
24…出力部
Claims (8)
- 燃料あるいは熱源を駆動源とし、冷熱媒体を冷却することにより冷熱を発生する吸収式冷温水機の性能診断方法において、
吸収式冷温水機の入出力に関わる物理量もしくは内部状態に関わる物理量のうち、燃焼量を、冷水入口温度、冷水出口温度、冷却水入口温度、冷却水出口温度及び高温再生器温度から算出する関係式を求める学習処理工程と、
診断対象とする計測データの内で、前記工程での学習時の計測データと近しい状態の計測データを抽出するデータ抽出処理工程と、
診断対象とする計測データと前記関係式から劣化する以前の適正燃焼量を推定する評価処理工程と、
前記適正燃焼量と実測された燃焼量とを比較判定する劣化判定工程と、
を含むことを特徴とする吸収式冷温水機の性能診断方法。 - 学習処理工程において、燃焼量を、冷水入口温度、冷水出口温度、冷却水入口温度、冷却水出口温度、高温再生器温度、冷水流量及び冷却水流量から算出する関係式を求める請求項1に記載の吸収式冷温水機の性能診断方法。
- 所定の基準状態において、複数の物理量の相関を考慮した関係式を算出することにより、負荷変動を含んだ通常運転時の計測データを診断可能とする請求項1又は2に記載の吸収式冷温水機の性能診断方法。
- 診断対象となる運転時の計測データが、関係式算出時と異なる運転状態もしくは負荷域となっている場合、推定誤差精度を保証できないため、関係式算出時の運転時の計測データとのマハラノビス距離を算出して、閾値を超過したデータについては、診断対象から除外する請求項1、2又は3に記載の吸収式冷温水機の性能診断方法。
- 設備の個体差や付帯設備、運転状況によって、推定誤差と性能劣化度合いの関係は変化するため、劣化判定の閾値を関係式算出時の運転時の計測データから設備毎に自動的に算出する請求項1、2、3又は4に記載の吸収式冷温水機の性能診断方法。
- 燃料あるいは熱源を駆動源とし、冷熱媒体を冷却することにより冷熱を発生する吸収式冷温水機の性能診断装置において、
吸収式冷温水機の入出力に関わる物理量もしくは内部状態に関わる物理量のうち、燃焼量を運転時の計測データから算出する関係式を求めるための学習処理手段と、
診断対象とする計測データの内で、前記工程での学習時の計測データと近しい状態の計測データを抽出するためのデータ抽出処理手段と、
診断対象とする計測データと前記関係式から劣化する以前の適正燃焼量を推定するための評価処理手段と、
前記適正燃焼量と実測された燃焼量とを比較判定し、劣化判定した診断結果を表示するための診断結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする吸収式冷温水機の性能診断装置。 - 診断結果表示手段が吸収式冷温水機の制御盤に組み込まれている請求項6に記載の吸収式冷温水機の性能診断装置。
- 診断結果表示手段が、遠隔監視装置で収集された計測データを用いて、吸収式冷温水機とは別の場所のサーバ上で診断・表示するように構成された請求項6に記載の吸収式冷温水機の性能診断装置。
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