JP2021165233A - Runx結合配列を標的とする医薬組成物およびrunx阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】RUNX結合配列を標的とする、優れた効力を有する医薬組成物、特に抗腫瘍組成物および抗アレルギー組成物、およびRUNX阻害剤を提供すること。【解決手段】本発明は、RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドであって、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の1以上がβアラニンによって置換されているピロール−イミダゾールポリアミドを含む抗腫瘍組成物および抗アレルギー組成物、ならびにRUNX阻害剤を提供する。【選択図】なし
Description
本開示は、RUNX結合配列を標的とするピロール−イミダゾールポリアミドを含む抗腫瘍組成物、RUNX阻害剤、および抗アレルギー組成物に関する。
ラント関連転写因子(Runt-related transcription factor:以下、「RUNX」と略す)ファミリーは、血液関連遺伝子および造血幹細胞関連遺伝子の発現を制御する重要な転写因子である。RUNXファミリーのメンバーには、RUNX1、RUNX2、およびRUNX3があり、RUNX1は二次造血等、RUNX2は骨の発達等、RUNX3は神経発生、胸腺細胞増殖等に関与することが知られている。RUNXファミリーの各メンバーは、コア結合因子βサブユニット(CBFβ)とヘテロ二量体複合体を形成する。RUNXは、ラントドメインを介して、標的遺伝子の転写調節領域中にあるコンセンサス結合配列5’−TGTGGT−3’、および非常に稀には5’−TGCGGT−3’を認識し、結合することにより、標的遺伝子の発現を制御する。一方、CBFβは、非DNA結合調節サブユニットである。CBFβは、アロステリックにRUNXのDNA結合能を増強する。
RUNX1は、急性骨髄性白血病1タンパク質(AML1)としても知られ、白血病発症における腫瘍抑制因子と考えられている。一方、近年の研究では、RUNX1が急性骨髄性白血病(AML)の発症において腫瘍形成特性を有することが示唆され、白血病の治療を目的に、RUNX1とCBFβ間の結合を阻害する低分子化合物の研究が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、今までに、白血病をはじめ種々の癌治療のために、ゲノムDNA上のRUNXファミリー結合部位を標的とする試みは報告されていない。
一方、ピロール−イミダゾールポリアミド(以下、「PIポリアミド」と略す)は、合成オリゴマーであり、ヘアピン連結によって対面するピロール(P)およびイミダゾール(I)対により、DNAの副溝内に結合して特定の配列を認識することが知られている。PIポリアミドは、P/I対がC・G塩基対を、P/P対がA・TまたはT・A塩基対を、I/P対がG・C塩基対を認識し、これにより任意の二重鎖DNA配列に特異的に結合することができる。したがって、様々な順序のP/I対を設計することにより、所望のゲノム上の標的部位へのPIポリアミドのインビボデリバリーが可能になる。
PIポリアミドは、その比較的大きい分子量にもかかわらず、細胞膜透過性であり、細胞の核に局在し、ナノモルレベルで内在性遺伝子発現に影響を及ぼす。標的遺伝子に結合したPIポリアミドは、転写因子のDNAへの結合を阻害し、特定の遺伝子発現を制御する遺伝子スイッチとして研究されている。さらに、近年の発明者らの研究により、RUNXファミリーを標的としたPIポリアミド、該PIポリアミドとアルキル化剤等の化合物とのコンジュゲート、および該コンジュゲートを利用した抗腫瘍剤について報告された(特許文献1)。
Cunningham, L et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2012 Sep 4; 109(36), 14592-7
本開示は、RUNX結合配列を標的として、優れた効力を有する医薬組成物、特に抗腫瘍組成物および抗アレルギー組成物、およびRUNX阻害剤を開発することを目的とした。
本発明者らは、鋭意研究の結果、驚くべきことに、ゲノム上のRUNXコンセンサス結合部位を標的とするPIポリアミドを合成する際に、PIポリアミドを構成する少なくとも1つのピロール単位をβアラニンに置き換えることにより、標的配列に対する結合性が向上することを見出した。さらに、該PIポリアミドとアルキル化剤との複合体が種々の器官に由来する腫瘍に対して抑制効果があることを見出した。
本発明は、限定するものではないが、下記の態様を提供する。
[1]RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗腫瘍組成物、
[2]前記ピロール−イミダゾールポリアミドと作用剤との複合体を含む、[1]記載の抗腫瘍組成物、
[3]前記複合体が、式I:
[式I中、
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R10は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R11は、H、ビオチン、または蛍光基を示し、
Aは、
から選択されるいずれかの基、または−Ym−Zを示し、
Bは、アセチル基、または−Ym−Zを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり
Zは、作用剤を示し、
整数nは、0〜5の値のいずれかであり、
ここに、R9、R10、A、およびBの少なくとも1つは、−Ym−Zであり、
式Iの複合体が、複数のYm−Zで示される構造を含むとき、それらの複数のYm−Zにおける、Ymの各々は、他のYmと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、かつ、それらの複数のYm−Zにおける、Zの各々は、他のZと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、
さらに、式I中、下記式:
(式中、XはX1〜X8のいずれかであって、かつ、CHまたはCOHを示し、R’はR1〜R8のいずれかであって、Hまたはアルキル基を示す。)
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
で示されるβアラニンによって置換されている。]
によって示される化合物からなる群から選ばれる、[2]記載の抗腫瘍組成物、
[4]前記複合体が式II:
および
式III:
[式IIおよび式III中、
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はHまたは−NHR11を示し、
R10はHまたは−NHR11を示し、
R11はH、ビオチン、または蛍光基を示し、
Zは作用剤を示し、
ここに、下記式:
(式中、XはX1〜X8のいずれかであって、かつ、CHまたはCOHを示し、R’はR1〜R8のいずれかであって、Hまたはアルキル基を示す。)
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
で示されるβアラニンによって置換されている。]
によって示される化合物からなる群から選ばれる、[3]記載の抗腫瘍組成物、
[5] 作用剤Zのうち少なくとも1つが、アルキル化剤である、[2]〜[4]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[6] 前記アルキル化剤が、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択される、[5]記載の抗腫瘍組成物、
[7] 前記アルキル化剤が、クロラムブシルである、[6]記載の抗腫瘍組成物、
[8] 前記複合体が、式:
によって示される、[7]記載の抗腫瘍組成物、
[9] 前記ピロール−イミダゾールポリアミドが、DNA上のRUNX結合配列に結合してRUNXファミリーメンバーの該結合配列への結合を阻害する、[1]〜[8]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[10] RUNXファミリーの全てのメンバーのRUNX結合配列への結合を阻害する、[9]記載の抗腫瘍組成物、
[11] 他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用される、[1]〜[10]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[12] 白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、腎細胞癌、神経芽細胞腫、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、脳腫瘍、および骨肉腫からなる群から選択される1以上を予防または治療するための、[1]〜[11]のいずれか1項記載の抗腫瘍医薬組成物、
[13] RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、RUNX阻害剤、および
[14] RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗アレルギー組成物。
[1]RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗腫瘍組成物、
[2]前記ピロール−イミダゾールポリアミドと作用剤との複合体を含む、[1]記載の抗腫瘍組成物、
[3]前記複合体が、式I:
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R10は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R11は、H、ビオチン、または蛍光基を示し、
Aは、
Bは、アセチル基、または−Ym−Zを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり
Zは、作用剤を示し、
整数nは、0〜5の値のいずれかであり、
ここに、R9、R10、A、およびBの少なくとも1つは、−Ym−Zであり、
式Iの複合体が、複数のYm−Zで示される構造を含むとき、それらの複数のYm−Zにおける、Ymの各々は、他のYmと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、かつ、それらの複数のYm−Zにおける、Zの各々は、他のZと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、
さらに、式I中、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物からなる群から選ばれる、[2]記載の抗腫瘍組成物、
[4]前記複合体が式II:
式III:
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はHまたは−NHR11を示し、
R10はHまたは−NHR11を示し、
R11はH、ビオチン、または蛍光基を示し、
Zは作用剤を示し、
ここに、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物からなる群から選ばれる、[3]記載の抗腫瘍組成物、
[5] 作用剤Zのうち少なくとも1つが、アルキル化剤である、[2]〜[4]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[6] 前記アルキル化剤が、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択される、[5]記載の抗腫瘍組成物、
[7] 前記アルキル化剤が、クロラムブシルである、[6]記載の抗腫瘍組成物、
[8] 前記複合体が、式:
[9] 前記ピロール−イミダゾールポリアミドが、DNA上のRUNX結合配列に結合してRUNXファミリーメンバーの該結合配列への結合を阻害する、[1]〜[8]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[10] RUNXファミリーの全てのメンバーのRUNX結合配列への結合を阻害する、[9]記載の抗腫瘍組成物、
[11] 他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用される、[1]〜[10]のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物、
[12] 白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、腎細胞癌、神経芽細胞腫、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、脳腫瘍、および骨肉腫からなる群から選択される1以上を予防または治療するための、[1]〜[11]のいずれか1項記載の抗腫瘍医薬組成物、
[13] RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、RUNX阻害剤、および
[14] RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗アレルギー組成物。
本開示は、標的に対する優れた結合性を有するPIポリアミドを利用して、優れた効力を有する医薬組成物、特に、抗腫瘍組成物および抗アレルギー組成物、ならびにRUNX阻害剤を提供する。本開示によれば、DNA上のRUNX結合配列を認識するように設計されたPIポリアミドであって、該PIポリアミドを構成するピロール−イミダゾール対の少なくとも1つのピロール単位がβアラニンに置換されたPIポリアミドを用いることによって、優れた効力を有する抗腫瘍組成物およびRUNX阻害剤が得られる。本開示における一態様において、抗腫瘍組成物は、白血病をはじめ、様々な種類の癌に対して抗腫瘍効果を有する。また、特定の実施態様においては、抗腫瘍組成物は、他の分子標的治療薬に対して耐性を示す腫瘍に対しても効果を示す。さらに、本開示において、そのRUNX阻害剤は、抗アレルギー組成物としても使用できる。さらに、一態様において、PIポリアミドを含む複合体は、Pがβアラニンによって置換されていないPIポリアミドを含む複合体よりも標的配列に対する結合親和性が顕著に高いことが示され、さらに、強い抗腫瘍効果を発揮することが示された。
1.PIポリアミド
PIポリアミドは、一般に、N−メチルピロール単位(P)とN−メチルイミダゾール単位(I)と、γ−アミノ酪酸部分とを含むポリアミドであり、PとIとγ−アミノ酪酸部分とは互いにアミド結合(−C(=O)−NH−)で連結される(Trauger et al, Nature, 382, 559-61(1996); White et al, Chem.Biol., 4,569-78(1997);およびDervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 2215-35(2001))。PIポリアミドは、γ−アミノ酪酸部分がリンカー(以下、「γ−リンカー」という)となって全体が折りたたまれてU字型のコンフォメーション(ヘアピン型)をとる。U字型のコンフォメーションにおいては、γ−リンカーを挟んでPとIとを含む2本の鎖が並列に並ぶ。この2本の鎖の向かい合うPおよび/またはIからなる対(以下、「ピロール−イミダゾール対」ともいう)が特定の組み合わせ(P/I対、I/P対、またはP/P対)のときに、PIポリアミドは、DNA中の特定の塩基対に高い親和性で結合する。例えば、P/I対はC・G塩基対に結合することができ、I/P対はG・C塩基対に結合することができる。また、P/P対はA・T塩基対およびT・A塩基対の両方に結合することができる。また、PIポリアミドには、PおよびIの他に、3−ヒドロキシピロール(Hp)またはβアラニンが含まれていてもよく、PをHpまたはβアラニンに置き換えることができる。Hp/P対は、T・A塩基対に結合することができる(White at al., Nature, 391, 468-71 (1998))。βアラニン/βアラニン対は、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。βアラニン/I対はC・G塩基対に、I/βアラニン対はG・C塩基対に結合することができる。βアラニン/P対およびP/βアラニン対は、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。また、γ−リンカー部分や、PIポリアミドのN末端に付加したβアラニン部分も、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。P、I、Hp、および/またはβアラニンによって形成される対の構成、順序、および組み合わせ等を適宜変更することにより、標的のDNA配列を認識し、結合するPIポリアミドを設計することができる。
PIポリアミドは、一般に、N−メチルピロール単位(P)とN−メチルイミダゾール単位(I)と、γ−アミノ酪酸部分とを含むポリアミドであり、PとIとγ−アミノ酪酸部分とは互いにアミド結合(−C(=O)−NH−)で連結される(Trauger et al, Nature, 382, 559-61(1996); White et al, Chem.Biol., 4,569-78(1997);およびDervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 2215-35(2001))。PIポリアミドは、γ−アミノ酪酸部分がリンカー(以下、「γ−リンカー」という)となって全体が折りたたまれてU字型のコンフォメーション(ヘアピン型)をとる。U字型のコンフォメーションにおいては、γ−リンカーを挟んでPとIとを含む2本の鎖が並列に並ぶ。この2本の鎖の向かい合うPおよび/またはIからなる対(以下、「ピロール−イミダゾール対」ともいう)が特定の組み合わせ(P/I対、I/P対、またはP/P対)のときに、PIポリアミドは、DNA中の特定の塩基対に高い親和性で結合する。例えば、P/I対はC・G塩基対に結合することができ、I/P対はG・C塩基対に結合することができる。また、P/P対はA・T塩基対およびT・A塩基対の両方に結合することができる。また、PIポリアミドには、PおよびIの他に、3−ヒドロキシピロール(Hp)またはβアラニンが含まれていてもよく、PをHpまたはβアラニンに置き換えることができる。Hp/P対は、T・A塩基対に結合することができる(White at al., Nature, 391, 468-71 (1998))。βアラニン/βアラニン対は、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。βアラニン/I対はC・G塩基対に、I/βアラニン対はG・C塩基対に結合することができる。βアラニン/P対およびP/βアラニン対は、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。また、γ−リンカー部分や、PIポリアミドのN末端に付加したβアラニン部分も、T・A塩基対もしくはA・T塩基対に結合することができる。P、I、Hp、および/またはβアラニンによって形成される対の構成、順序、および組み合わせ等を適宜変更することにより、標的のDNA配列を認識し、結合するPIポリアミドを設計することができる。
本開示において、PIポリアミドを構成するPおよびIの1位の窒素上のメチル基は、水素またはメチル基以外のアルキル基で置き換わっていてもよい。メチル基以外のアルキル基の例としては、炭素数2〜10個の直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和アルキル基、好ましくは、炭素数2〜5個の直鎖、分枝鎖直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和アルキル基が挙げられ、例えば、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等が挙げられる。また、メチル基を含め、アルキル基は置換されていてもよく、例えば、アルキル基中のメチレンは、酸素等で置換されていてもよい。さらに、本開示において、PIポリアミドを構成するPの3位はヒドロキシ基で置換されていてもよい。本明細書で用いる場合、「P」または「ピロール単位」および「I」または「イミダゾール単位」なる語は、上記したようなN置換またはN非置換ピロール単位、3−ヒドロキシピロール単位、およびN置換またはN非置換イミダゾール単位を包含する。
本発明において、PIポリアミドを構成するγ−リンカーは、α位またはβ位に側鎖を有していてもよい。例えば、α位またはβ位がアミノ基で置換されたγ−リンカー、すなわち、N−α−N−γ−アミノ酪酸残基またはN−β−N−γ−アミノ酪酸残基からなるリンカーであってもよく、さらに該アミノ基が蛍光基やビオチン等の分子で修飾されていてもよい。
本開示において、PIポリアミドのN末端およびC末端には、種々の官能基が付加されていてもよい。PIポリアミドのN末端およびC末端に付加する官能基または分子は、当業者が適宜決定することができる。例えば、アミド結合を介して様々な官能基を付加することができる。該官能基の例としては、限定するものではないが、β−アラニン残基、γ−アミノ酪酸残基などのカルボキシル基、アセチル基、アミノ基等が挙げられる。例えば、限定するものではないが、N末端にはアセチル基が付加されていてもよい。例えば、限定するものではないが、C末端にはジメチルアミノプロピルアミノ基が付加されていてもよい。また、PIポリアミドのN末端およびC末端は、蛍光基やビオチン、イソフタル酸等の分子で修飾されていてもよい。本願明細書において、蛍光基としては、限定するものではないが、例えば、フルオレセイン、ローダミン系色素、シアニン系色素、ATTO系色素、Alexa Fluor系色素、BODIPYが挙げられる。フルオレセインには、フルオレセイン誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート等)も含まれる。
PIポリアミドの設計方法および製造方法は公知である(例えば、特許第3045706号、特開2001−136974号、WO03/000683号、特開2013−234135号、特開2014−173032号参照)。例えば、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)を用いた固相合成法(Fmoc固相合成法)による自動合成法によって簡便に製造することができる。また、液相合成法によって製造することもできる。
また、本開示における一態様において、PIポリアミドは、DNAに対する結合能力を維持または向上するように修飾されたPIポリアミド修飾物であってもよい。該PIポリアミド修飾物としては、例えば、PIポリアミドのγ−リンカーのα位またはβ位にアミノ基を付加した修飾物、すなわち、N−α−N−γ−アミノ酪酸残基またはN−β−N−γ−アミノ酪酸残基からなるγ−リンカーを有する修飾物、該修飾物の上記アミノ基を蛍光基やビオチン等の分子で修飾した修飾物、PIポリアミドのN末端を蛍光基やビオチン等の分子で修飾した修飾物、およびPIポリアミドのC末端をイソフタル酸等の分子で修飾した修飾物等が挙げられる。
本開示において使用されるPIポリアミドは、ゲノム上のRUNX結合部位のコンセンサス配列(「RUNXコンセンサス結合配列」または「RUNX結合配列」ともいう)を認識するように設計されたPIポリアミドであり、故に、該RUNXコンセンサス結合配列に結合し得るPIポリアミドである。該RUNXコンセンサス配列は、5’−TGTGGT−3’または5’−TGCGGT−3’であることが知られている。したがって、該RUNXコンセンサス結合配列に基づいて、PIポリアミドを構成するピロール−イミダゾール対の組み合わせを決定すればよい。なお、本明細書において用いる場合、「ピロール−イミダゾール対」なる語は、P、I、Hp、およびβアラニンのいずれの組み合わせからなる対も包含する。
本開示において使用されるPIポリアミドは、少なくとも1つのβアラニンを含むピロール−イミダゾール対を含む。すなわち、本開示において使用されるPIポリアミドは、ピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている。ここで、βアラニンは、下記式:
によって表される。
本開示において使用されるPIポリアミドに含まれるβアラニンの数は、1以上であればよく、特に限定されない。PIポリアミドを構成するPおよびIの総数にもよるが、例えば、1〜3個、好ましくは1または2個のβアラニンが含まれる。また、本発明において使用されるPIポリアミドに含まれるβアラニンの位置(すなわち、βアラニンに置換されるピロール単位の位置)は、γリンカー、C末端またはN末端に隣接する位置、あるいはγリンカー、C末端またはN末端付近の位置であってもよいし、あるいはそれ以外の位置、例えば、γリンカーとC末端またはN末端との間の中央付近または中央であってもよい。好ましくは、γリンカーとC末端またはN末端との間の中央付近または中央の位置である。
本開示における上記PIポリアミドは、標的となるRUNX結合配列に対する親和性が高い。特に驚くべきことに、該PIポリアミドは、ピロール単位がβアラニンによって置換されていないPIポリアミドと比べて、標的となるRUNX結合配列に対する親和性が高い。したがって、本開示における上記PIポリアミドは、DNA上のRUNX結合配列への結合についてRUNXファミリーのメンバーと競合し、ゲノム上のRUNX結合配列へのRUNXファミリーの結合を阻害することができる。
2.PIポリアミドコンジュゲート
本開示において、RUNX結合配列を認識する上記PIポリアミドは、作用剤と複合体を形成していてもよい。本明細書において、「作用剤」とは、DNAおよびその周囲のクロマチン状態に影響を与える物質であり、例えば、限定するものではないが、アルキル化剤、クロマチン修飾酵素制御剤等が挙げられる。クロマチン修飾酵素制御剤の例としては、限定するものではないが、ヒストンアセチル化酵素(HAT)制御剤、例えば、HAT阻害剤(例えば、C646等)、またはHAT活性化剤(例えば、N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−エトキシベンズアミド(CTB)等)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)制御剤、例えば、HDAC阻害剤(例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸等)、またはHDAC活性化剤、ヒストンメチル化酵素制御剤、ヒストン脱メチル化酵素制御剤等が挙げられる。本開示において、好ましくは、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体が使用される。
本開示において、RUNX結合配列を認識する上記PIポリアミドは、作用剤と複合体を形成していてもよい。本明細書において、「作用剤」とは、DNAおよびその周囲のクロマチン状態に影響を与える物質であり、例えば、限定するものではないが、アルキル化剤、クロマチン修飾酵素制御剤等が挙げられる。クロマチン修飾酵素制御剤の例としては、限定するものではないが、ヒストンアセチル化酵素(HAT)制御剤、例えば、HAT阻害剤(例えば、C646等)、またはHAT活性化剤(例えば、N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−エトキシベンズアミド(CTB)等)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)制御剤、例えば、HDAC阻害剤(例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸等)、またはHDAC活性化剤、ヒストンメチル化酵素制御剤、ヒストン脱メチル化酵素制御剤等が挙げられる。本開示において、好ましくは、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体が使用される。
アルキル化剤とは、DNAと共有結合を作る官能基を有する化合物である。本開示において使用されるアルキル化剤としては、特に限定されないが、後述する医薬組成物における使用を考慮して、細胞毒性が低いまたは無いものが好ましい。アルキル化剤の例としては、限定するものではないが、クロラムブシル(chlorambucil)、デュオカルマイシン(duocarmycin)、seco−CBI(1−クロロメチル−5−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール)、CBI(1,2,9,9a−テトラヒドロシクロプロパン[c]ベンゾ[e]インドール−4−オン)、ピロロベンゾジアゼピン、ナイトロジェンマスタード等が挙げられる。seco−CBIまたはCBIをPIポリアミドにコンジュゲートする場合は、PIポリアミドとseco−CBIまたはCBIとの間にインドールを挿入してもよい。
上記作用剤と、上記PIポリアミドとを結合(以下、「コンジュゲート」ともいう)すること等により複合体を合成する。本明細書においては、該複合体を「コンジュゲート」ともいう。合成方法は公知の方法によって行うことができる(例えば、J. Am. Chem. SOC. 1995, 117, 2479-2490参照)。作用剤は、PIポリアミドのN末端、C末端、またはγリンカー部位のいずれか、またはそれらの組み合わせに結合される。例えば、作用剤は、PIポリアミドのN末端またはC末端に結合される。作用剤がPIポリアミドのN末端、C末端およびγリンカー部位から選ばれる2以上の位置に結合する場合、各位置に結合する作用剤は同一であってもよく、または異なっていてもよい。ここで、PIポリアミドと作用剤との「結合」様式は、直接結合してもよいし、リンカーを介して結合してもよい。リンカーとしては、作用剤の作用を妨げず、かつRUNX結合部位の認識を妨げないものであれば特に限定されないが、例えば、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合等そのもの、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む分子を例示することができる。「これらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む分子」は、PIポリアミドおよび/または作用剤の末端部分と共に、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、およびエーテル結合等からなる群から選択される1種類以上の結合を形成する官能基を含む分子である。「これらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む分子」はまた、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、およびエーテル結合等からなる群から選択される1種類以上の結合を1個以上含む分子であってもよい。好ましいリンカーとしては、アミド結合、またはアミド結合を形成する官能基を含む分子が挙げられる。
本開示における作用剤とPIポリアミドの複合体の例としては、式I:
[式I中、
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、ここに、X1〜X8は、PIポリアミドがRUNXコンセンサス配列を認識可能になる組み合わせで選択される、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はH、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R10はH、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R11はH、またはビオチン、蛍光基等の分子を示し、
Aは、
から選択されるいずれかの基、または−Ym−Zを示し、
Bは、アセチル基、または−Ym−Zを示し、
整数nは、0〜5の値のいずれかであり、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
Ymは、リンカー部分を示し、
整数mは0〜5の値のいずれかであり、好ましくは0〜3、より好ましくは0または1であり、
ここに、R9、R10、A、およびBの少なくとも1つは、−Ym−Zであり、
式Iの複合体が、複数のYm−Zで示される構造を含むとき、それらの複数のYm−Zにおける、Ymの各々は、他のYmと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、かつ、それらの複数のYm−Zにおける、Zの各々は、他のZと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、
さらに、式I中、下記式:
(式中、XはX1〜X8のいずれかであって、かつ、CHまたはCOHを示し、R’はR1〜R8のいずれかであって、Hまたはアルキル基を示す。)
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
で示されるβアラニンによって置換されている。]
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、ここに、X1〜X8は、PIポリアミドがRUNXコンセンサス配列を認識可能になる組み合わせで選択される、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はH、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R10はH、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R11はH、またはビオチン、蛍光基等の分子を示し、
Aは、
Bは、アセチル基、または−Ym−Zを示し、
整数nは、0〜5の値のいずれかであり、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
Ymは、リンカー部分を示し、
整数mは0〜5の値のいずれかであり、好ましくは0〜3、より好ましくは0または1であり、
ここに、R9、R10、A、およびBの少なくとも1つは、−Ym−Zであり、
式Iの複合体が、複数のYm−Zで示される構造を含むとき、それらの複数のYm−Zにおける、Ymの各々は、他のYmと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、かつ、それらの複数のYm−Zにおける、Zの各々は、他のZと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、
さらに、式I中、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
上記式Iで表される複合体の好ましい態様において、
Aは、
[式中、整数nは、0〜5の値のいずれかである]
から選択されるいずれかの基を示すか、または−Ym−Zを示し、ここに、−Ym−Zは下記の式:
で表されるいずれかの基であり、
Bは、−Ym−Zを示し、ここに、−Ym−Zは下記の式:
[式中、整数nは、0〜5の値のいずれかであり、好ましくは0〜2の値のいずれかである]
で表されるいずれかの基ある。
Aは、
から選択されるいずれかの基を示すか、または−Ym−Zを示し、ここに、−Ym−Zは下記の式:
Bは、−Ym−Zを示し、ここに、−Ym−Zは下記の式:
で表されるいずれかの基ある。
本開示における作用剤とPIポリアミドの複合体のさらなる例としては、式II:
または式III:
[式IIおよび式III中、
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、ここに、X1〜X8は、PIポリアミドがRUNXコンセンサス配列を認識可能になる組み合わせで選択される、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はHまたは−NHR11を示し、R10はHまたは−NHR11を示し、
R11はH、またはビオチン、蛍光基等の分子を示し、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
Ymは、リンカー部分を示し、
整数mは0〜5のいずれかの値であり、好ましくは0〜3、より好ましくは0または1であり、
ここに、下記式:
(式中、XはX1〜X8のいずれかであって、かつ、CHまたはCOHを示し、R’はR1〜R8のいずれかであって、Hまたはアルキル基を示す。)
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
で示されるβアラニンによって置換されている。]
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、ここに、X1〜X8は、PIポリアミドがRUNXコンセンサス配列を認識可能になる組み合わせで選択される、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はHまたは−NHR11を示し、R10はHまたは−NHR11を示し、
R11はH、またはビオチン、蛍光基等の分子を示し、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
Ymは、リンカー部分を示し、
整数mは0〜5のいずれかの値であり、好ましくは0〜3、より好ましくは0または1であり、
ここに、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
上記式I〜IIIにおいて、Ymは、例えば、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、エーテル結合等を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示す。ここで、「これらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分」とは、PIポリアミドおよび/または作用剤の末端部分と共に、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、およびエーテル結合等からなる群から選択される1種類以上の結合を形成する官能基を含む部分である。また、「これらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分」は、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、およびエーテル結合等からなる群から選択される1種類以上の結合を1個以上含んでいてもよい。
一実施態様において、上記式I〜IIIにおいて、Ymは「これらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分」であり、その一例としては、下記式IV:
[式中、
Qは、カルボニル[−C(=O)−]またはイミノ(−NH−)であり、
Q’は、エーテル結合(−O−)またはイミノ(−NH−)もしくはメチルイミノ[−N(−CH3)−]であり、
整数gおよびkは各々独立して、1〜3の値のいずれかであり、
整数hおよびjは各々独立して、0〜5の値のいずれかであり、
整数iは、0〜2の値のいずれかである]
で示される構造が挙げられる。例えば、整数hおよびjは各々独立して、0〜3の値のいずれかであることが好ましい。また、上記の式VI中、エステル結合の位置と、Q’で表されるエーテル結合またはイミノ結合の位置は入れ替わっていてもよい。上記式IVで示されるリンカー部分において、例えば、右端の位置は作用剤と連結し、左端の位置はPIポリアミドと連結するが、該連結位置は逆であってもよい。例えば、上記式VIで示されるリンカー部分の左端の位置がPIポリアミドのC末端と連結する場合、Qはイミノであることが好ましい。
Qは、カルボニル[−C(=O)−]またはイミノ(−NH−)であり、
Q’は、エーテル結合(−O−)またはイミノ(−NH−)もしくはメチルイミノ[−N(−CH3)−]であり、
整数gおよびkは各々独立して、1〜3の値のいずれかであり、
整数hおよびjは各々独立して、0〜5の値のいずれかであり、
整数iは、0〜2の値のいずれかである]
で示される構造が挙げられる。例えば、整数hおよびjは各々独立して、0〜3の値のいずれかであることが好ましい。また、上記の式VI中、エステル結合の位置と、Q’で表されるエーテル結合またはイミノ結合の位置は入れ替わっていてもよい。上記式IVで示されるリンカー部分において、例えば、右端の位置は作用剤と連結し、左端の位置はPIポリアミドと連結するが、該連結位置は逆であってもよい。例えば、上記式VIで示されるリンカー部分の左端の位置がPIポリアミドのC末端と連結する場合、Qはイミノであることが好ましい。
上記式IV〜式VIIで示されるリンカー部分において、例えば、右端の位置は作用剤と連結し、左端の位置はPIポリアミドと連結するが、該連結位置は逆であってもよい。
上記式I〜IIIにおいて、βアラニンによって置換されるピロール単位は、好ましくは、N末端またはC末端から2番目、3番目または4番目の位置にある。
本明細書において、アルキル基の例としては、炭素数1〜10個の直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和アルキル基、好ましくは、炭素数1〜5個の直鎖、分枝鎖直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等が挙げられる。また、アルキル基は置換されていてもよく、例えば、アルキル基中のメチレンは、酸素等で置換されていてもよい。
本開示において、作用剤とPIポリアミドとの複合体の例示的な態様としては、さらに、下記式:
[式中、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤を示し、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
nは0、1、2、3、4、または5を示し、好ましくは1、2、または3を示し、さらに好ましくはnは1を示し、かつ、
ピロール単位の少なくとも1つは、βアラニンによって置換されており、好ましくはN末端またはC末端から2番目、3番目または4番目のピロール単位、さらに好ましくはN末端またはC末端から2番目または3番目のピロール単位がβアラニンによって置換されている]
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
[式中、
Zは作用剤を示し、好ましくは、アルキル化剤を示し、さらに好ましくは、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択されるアルキル化剤を示し、
nは0、1、2、3、4、または5を示し、好ましくは1、2、または3を示し、さらに好ましくはnは1を示し、かつ、
ピロール単位の少なくとも1つは、βアラニンによって置換されており、好ましくはN末端またはC末端から2番目、3番目または4番目のピロール単位、さらに好ましくはN末端またはC末端から2番目または3番目のピロール単位がβアラニンによって置換されている]
によって示される化合物、ならびにその修飾物が挙げられる。
さらに、本発明における上記複合体の別の好ましい例としては、下式によって示されるクロラムブシルとPIポリアミドとの複合体、ならびにその修飾物が挙げられる。
[式中、
nは、0、1、2、3、4、または5を示し、好ましくは1、2、または3を示し、さらに好ましくはnは1を示し、かつ、
ピロール単位の少なくとも1つは、βアラニンによって置換されており、好ましくはN末端またはC末端から2番目、3番目または4番目のピロール単位、さらに好ましくはN末端またはC末端から2番目または3番目のピロール単位がβアラニンによって置換されている。]
nは、0、1、2、3、4、または5を示し、好ましくは1、2、または3を示し、さらに好ましくはnは1を示し、かつ、
ピロール単位の少なくとも1つは、βアラニンによって置換されており、好ましくはN末端またはC末端から2番目、3番目または4番目のピロール単位、さらに好ましくはN末端またはC末端から2番目または3番目のピロール単位がβアラニンによって置換されている。]
PIポリアミドと作用剤との複合体は、薬理学的に許容し得る塩の形態であってもよい。例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩もしくは臭化水素酸塩等の無機酸塩、または酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩もしくはトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
上記複合体は、PIポリアミド、作用剤、および/またはPIポリアミドと作用剤とを連結するリンカー部分の少なくとも1つ以上の部分または分子が、エナンチオマーもしくはジアステレオマーの形態またはこれらの混合物で存在し得る。上記複合体は、立体異性体の混合物またはそれぞれ純粋なもしくは実質的に純粋な異性体を包含する。上記複合体がジアステレオマーまたはエナンチオマーの形態で得られる場合、これらを当該技術で周知の慣用方法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶法等で分離することができる。
また、上記複合体は、PIポリアミド、作用剤、および/またはPIポリアミドと作用剤とを連結するリンカー部分の少なくとも1つ以上の部分または分子上で、同位元素(例えば、3H、13C、14C、15N、18F、32P、35S、125I等)等で標識されていてもよく、または重水素変換体であってもよい。
3.RUNX阻害剤
本開示において、RUNX阻害剤は、上記PIポリアミドを含む組成物である。本発明のRUNX阻害剤は、好ましくは、上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含んでいてもよい。本開示におけるRUNX阻害剤のさらに好ましい例は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。
本開示において、RUNX阻害剤は、上記PIポリアミドを含む組成物である。本発明のRUNX阻害剤は、好ましくは、上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含んでいてもよい。本開示におけるRUNX阻害剤のさらに好ましい例は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。
RUNXコンセンサス結合配列は、RUNXファミリーの各メンバーで共通の結合配列である。したがって、本開示において、RUNX阻害剤は、ゲノム上のRUNXコンセンサス結合配列を認識するように設計された上記PIポリアミドを含むため、DNAへのRUNXファミリーの各メンバーの結合によって引き起こされるあらゆる活性を阻害する。好ましくは、本開示におけるRUNX阻害剤は、ゲノム上のRUNXコンセンサス結合配列に結合して、RUNXファミリーメンバーの該結合配列への結合を阻害する。
RUNXコンセンサス配列(RUNXファミリー蛋白結合配列)は、様々な遺伝子の調節領域中に存在し、RUNXファミリーメンバーは、調節領域中にあるコンセンサス配列に結合することによって、様々な標的遺伝子の発現を制御する。したがって、RUNXファミリーが関与する活性としては様々なものがあり、限定するものではないが、例えば、p53抑制因子(BCL11、TRIM24など)を転写制御して活性化させる(すなわち癌では、RUNXファミリーにより腫瘍抑制因子p53が恒常的に抑制されている)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(PhALL)の原因蛋白であるBCR−ABLを転写制御して増強させる、MLL−AF4+FLT3−ITD急性骨髄性白血病においてMLL−AF4を転写亢進させる、癌遺伝子c−Mycを転写制御して増強させる等が挙げられる。
本開示において、RUNX阻害剤は、使用目的に応じ、上記PIポリアミド、または上記PIポリアミドと作用剤との複合体そのものであってもよく、あるいは上記PIポリアミドまたは上記複合体に加えて、担体や添加物を含んでいてもよい。該担体および添加物としては、限定するものではないが、例えば、水、酢酸、有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられる。本発明のRUNX阻害剤中における上記PIポリアミドまたは複合体の含有量は、使用目的に応じて適宜調節することができる。
本開示によれば、さらに、本発明のRUNX阻害剤を用いることにより、RUNXファミリーの活性を阻害する方法を提供する。本開示において、RUNXファミリー阻害方法は、RUNX1、RUNX2、またはRUNX3だけでなく、RUNXファミリーの全てのメンバーが制御する遺伝子クラスター(標的遺伝子群)を一度に阻害することができる。
本開示において、RUNX阻害剤の使用量は、使用目的によって適宜調節することができる。
本開示によれば、また、本発明のRUNX阻害剤を含むキットも提供される。該キットは、本開示におけるRUNX阻害剤の他、医薬的に許容される担体や添加物、試薬類、補助剤、専用容器、その他の必要なアクセサリー、説明書等を含み得る。本発明のキットは、例えば、癌治療用キット、研究試薬キットとして使用することができる。
4.医薬組成物
本開示において、医薬組成物は、上記PIポリアミドを含む組成物である。本開示における医薬組成物は、好ましくは、上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含んでいてもよい。本開示における医薬組成物のさらに好ましい例は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。例えば、本開示における医薬組成物は、本明細書に開示されるRUNX阻害剤を含んでいてもよい。
本開示において、医薬組成物は、上記PIポリアミドを含む組成物である。本開示における医薬組成物は、好ましくは、上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含んでいてもよい。本開示における医薬組成物のさらに好ましい例は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。例えば、本開示における医薬組成物は、本明細書に開示されるRUNX阻害剤を含んでいてもよい。
RUNXコンセンサス配列(RUNXファミリー蛋白結合配列)は、様々な遺伝子の調節領域中に存在する。RUNXファミリーメンバーは、調節領域中にあるコンセンサス配列に結合することによって、様々な標的遺伝子の発現を制御する。このような標的遺伝子の例としては、限定するものではないが、CBF白血病において高発現する遺伝子(例えば、IL3、CSF2、CSF2RB等)、RUNXファミリー自身(RUNX1、RUNX2、RUNX3)、p53抑制因子(例えば、BCL11、TRIM24等)、c−kit遺伝子等が挙げられる。本発明の医薬組成物は、ゲノム上のRUNXコンセンサス結合配列を認識するように設計された上記PIポリアミドを含むため、各RUNXファミリーメンバーが標的とする様々な遺伝子の発現をダウンレギュレートする。好ましくは、本発明の医薬組成物は、ゲノム上のRUNXコンセンサス結合配列に結合して、RUNXファミリーメンバーの該結合配列への結合を阻害する。
本開示における医薬組成物を生体内に投与することにより、種々の疾患を治療および予防をすることができる。本開示における医薬組成物は、二本鎖DNAを生体制御に利用するあらゆる生物、特に哺乳動物(例、ヒト、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に使用することができる。
本開示おける医薬組成物の対象疾患は、RUNXファミリーメンバーが関与するあらゆる疾患である。本開示における医薬組成物の対象疾患の例としては、腫瘍、特に癌が挙げられ、例えば、限定するものではないが、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、骨髄異形成症候群由来白血病、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、腎細胞癌、神経芽細胞腫、乳癌、皮膚癌(例えば、メラノーマ)、卵巣癌、肝芽腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、横紋筋肉腫、子宮癌、脳腫瘍等を挙げることができる。したがって、本開示における医薬組成物として、特に、上記PIポリアミドまたは上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含む抗腫瘍組成物が提供される。好ましくは、本開示における抗腫瘍組成物は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。
本開示における医薬組成物の対象疾患の例として、さらに、マスト細胞腫瘍、および肥満細胞症(Mastocytosis)(例えば、マスト細胞増加症、重症アレルギー疾患、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショック、重症気管支喘息発作、重症薬剤性皮膚炎など)等のマスト細胞疾患、各種アレルギー、および免疫疾患が挙げられる。マスト細胞は、アレルギーと関係の深いIgE抗体に対する特異的な受容体FceRIと、幹細胞因子(SCF)というサイトカインの受容体であるc−kitの両方を細胞表面に発現する細胞として定義される。マスト細胞は、機械的または化学的な刺激を受けたり、異種タンパクなどのアレルギー物質に触れたりすると、脱顆粒により顆粒内容物(ヒスタミン、ヘパリン等)を細胞外へ放出し、アレルギー反応を引き惹起することが知られている。本開示における医薬組成物は、マスト細胞の活性化によって引き起こされる全ての症状または疾患を抑制、治療、または予防することができる。したがって、本開示における医薬組成物として、特に、上記PIポリアミドまたは上記PIポリアミドと作用剤との複合体を含む抗アレルギー組成物が提供される。好ましくは、本発明の抗アレルギー組成物は、上記PIポリアミドとアルキル化剤との複合体を含んでいる。例えば、本開示における抗アレルギー組成物は、本明細書に開示されるRUNX阻害剤を含んでいる。
なお、発明者らは、以前の研究において、RUNX結合配列を標的としたPIポリアミドとアルキル化剤との複合体がマスト細胞においてc−kit(幹細胞因子受容体チロシンキナーゼ)の発現を抑制することを見出した(特許文献1)。したがって、同じRUNX結合配列を標的とする本開示における医薬組成物もまた、同様にc−kitの発現を抑制する。したがって、本開示における医薬組成物は、マスト細胞の活性化によって引き起こされる全ての症状または疾患を抑制、治療、または予防することができる。
本開示における医薬組成物は、経口投与および非経口投与のいずれの剤形でもよい。これらの剤形は常法にしたがって製剤化することができ、医薬的に許容される担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体および添加物として、水、酢酸、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
上記添加物は、本開示における医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独でまたは適宜組み合わせから選ばれる。剤形としては、経口投与の場合は、錠剤、カプセル剤、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤、噴霧剤、塗布剤、点眼剤、外用剤等として、または適当な剤型により投与が可能である。非経口投与の場合は、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、腫瘍内注射等により全身または局部的に投与することができる。
例えば、注射用製剤として使用する場合、本開示における医薬組成物を溶剤(例えば、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液、0.1%酢酸等)に溶解し、これに適当な添加剤(ヒト血清アルブミン、PEG、マンノース修飾デンドリマー、シクロデキストリン結合体等)を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
本開示における医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与量は、例えば成人(60kg)の場合、1日当たり0.01〜1000mg、好ましくは0.1〜100mg、より好ましくは1〜30mgである。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。投与は、例えば数日間隔に1回、1日当たり、1回または2〜4回に分けてもよい。
本開示における医薬組成物、特に抗腫瘍組成物は、他の抗腫瘍剤と併用することができる。他の抗腫瘍剤としては、特定の癌を治療するために使用されるいずれかの抗腫瘍剤、またはp53誘導剤が挙げられる。他の抗腫瘍剤としては、既知のいずれの抗腫瘍剤を使用してもよく、例えば、シタラビン(Cytarabine)、イマチニブ(Imatinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、PRIMA−1、MIRA−1、Nutlin3等が挙げられる。本開示における医薬組成物と他の抗腫瘍剤との投与比率は、特に限定されず、所望の抗腫瘍効果が得られるように当業者が適宜決定すればよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1:PIポリアミドおよびコンジュゲートの合成
4つのピロール−イミダゾール対の連続的な結合により、5’−TGTGGT−3’のRUNXコンセンサス結合配列を特異的に認識するPIポリアミドであって、1つのピロール単位がβアラニンによって置換されたPIポリアミドを設計し、該PIポリアミドはとクロラムブシルとのコンジュゲート(Chb−M)合成した。対照として、ピロール単位がβアラニンによって置換されていないPIポリアミドとクロラムブシルとのコンジュゲート(Chb−M’)を合成した。
4つのピロール−イミダゾール対の連続的な結合により、5’−TGTGGT−3’のRUNXコンセンサス結合配列を特異的に認識するPIポリアミドであって、1つのピロール単位がβアラニンによって置換されたPIポリアミドを設計し、該PIポリアミドはとクロラムブシルとのコンジュゲート(Chb−M)合成した。対照として、ピロール単位がβアラニンによって置換されていないPIポリアミドとクロラムブシルとのコンジュゲート(Chb−M’)を合成した。
さらに、上記PIポリアミドの標的DNAに対する結合アフィニティー実験(実施例2)のために、Chb−MおよびChb−M’のクロロ基をヒドロキシ基に置換したコンジュゲート(以下、各々、「Chb−Mのヒドロキシ置換体」および「Chb−M’のヒドロキシ置換体」という)を製造した。
一般的記載
試薬および溶媒は、標準的な供給元から入手し、さらに精製することなく使用した。PSSM−8システム(Shimadzu)を用いて自動ポリアミド合成を行った。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、JASCO PU−2080 Plusポンプ、JSCO UV−2075 Plus UV/vis検出器、Chemcobond5−ODS−H4.6mm×150mmカラム(Chemo Plus Scientific)で行った。移動相は、流速1.0mL/分のアセトニトリル−TFA(水中0.1%、v/v)であった。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化マススペクトロメトリー(MALDI-TOFMS)をMicroflex−KSII(Bruker Daltonics)上で得た。TA30(0.1%TFA/MeCN=7/3)中の飽和HCCA(α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸)をペプチド較正基準と共にマトリックスに用いた。
試薬および溶媒は、標準的な供給元から入手し、さらに精製することなく使用した。PSSM−8システム(Shimadzu)を用いて自動ポリアミド合成を行った。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、JASCO PU−2080 Plusポンプ、JSCO UV−2075 Plus UV/vis検出器、Chemcobond5−ODS−H4.6mm×150mmカラム(Chemo Plus Scientific)で行った。移動相は、流速1.0mL/分のアセトニトリル−TFA(水中0.1%、v/v)であった。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化マススペクトロメトリー(MALDI-TOFMS)をMicroflex−KSII(Bruker Daltonics)上で得た。TA30(0.1%TFA/MeCN=7/3)中の飽和HCCA(α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸)をペプチド較正基準と共にマトリックスに用いた。
合成
以前に報告されたFmoc固相合成法によってPIポリアミドを合成した。全ての合成においてオキシム樹脂を用いた。
以前に報告されたFmoc固相合成法によってPIポリアミドを合成した。全ての合成においてオキシム樹脂を用いた。
Chb−M
粗精製物をHPLCによって精製し、保持時間は14.2分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による33−43%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C68H88Cl2N23O11 + [M + H]+ の計算値1472.641、実測値1472.632
粗精製物をHPLCによって精製し、保持時間は14.2分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による33−43%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C68H88Cl2N23O11 + [M + H]+ の計算値1472.641、実測値1472.632
Chb−M’
粗精製物をHPLCによって精製し、保持時間は13.4分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による33−43%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C71H89Cl2N24O11 + [M + H]+ の計算値1523.651、実測値 1523.608
粗精製物をHPLCによって精製し、保持時間は13.4分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による33−43%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C71H89Cl2N24O11 + [M + H]+ の計算値1523.651、実測値 1523.608
Chb−Mのヒドロキシ置換体
Chb−M(1.2mg、0.83μmol)をMeCN/0.1%TFA(2:5)の混合物中に溶解し、45℃で24時間攪拌した。該混合物をHPLCによって精製した、標的産物の最終重量は0.84mgであった(0.58μl、70%収率)。保持時間は8.93分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による0−100%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C68H90N23O13 + [M + H]+ の計算値1436.708、実測値 1436.668
Chb−M(1.2mg、0.83μmol)をMeCN/0.1%TFA(2:5)の混合物中に溶解し、45℃で24時間攪拌した。該混合物をHPLCによって精製した、標的産物の最終重量は0.84mgであった(0.58μl、70%収率)。保持時間は8.93分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による0−100%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C68H90N23O13 + [M + H]+ の計算値1436.708、実測値 1436.668
Chb−M’のヒドロキシ置換体
Chb−M’(1.8mg、1.2μmol)をMeCN/0.1%TFA(2:5)の混合物中に溶解し、40℃で2日間攪拌した。該混合物をHPLCによって精製した、標的産物の最終重量は1.1mgであった(0.75μl、65%収率)。保持時間は9.92分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による0−100%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C71H91N24O13 + [M + H]+ の計算値1487.719、実測値 1487.715
Chb−M’(1.8mg、1.2μmol)をMeCN/0.1%TFA(2:5)の混合物中に溶解し、40℃で2日間攪拌した。該混合物をHPLCによって精製した、標的産物の最終重量は1.1mgであった(0.75μl、65%収率)。保持時間は9.92分であった(流速1.0mL/分で20分間の直線勾配による0−100%アセトニトリルを含有する0.1%TFAで、254nmで検出された)。MALDI-TOFMSスペクトル: m/z C71H91N24O13 + [M + H]+ の計算値1487.719、実測値 1487.715
実施例2:Chb−Mの標的DNAに対する結合アフィニティー
Chb−MおよびChb−M’の結合アフィニティーを、Chb−MおよびChb−M’のヒドロキシ置換体を用いて比較した。標的配列(5’−TGTGGT−3’)を含むビオチン化したヘアピンDNAを、ビオチンおよびストレプトアビジンの複合体を形成させることによってセンサーチップ上に固定化した。結合特性は、SPR(表面プラズモン共鳴)によって評価した。
Chb−MおよびChb−M’の結合アフィニティーを、Chb−MおよびChb−M’のヒドロキシ置換体を用いて比較した。標的配列(5’−TGTGGT−3’)を含むビオチン化したヘアピンDNAを、ビオチンおよびストレプトアビジンの複合体を形成させることによってセンサーチップ上に固定化した。結合特性は、SPR(表面プラズモン共鳴)によって評価した。
本実施例および他の実施例において、PIポリアミドコンジュゲートの濃度は、以下のように測定した。DMF溶液中における約305nmでのPIポリアミドのモル吸光度係数εを下記式:
ε=9900×(ピロールおよびイミダゾールの数)
にしたがって計算した。PIポリアミドコンジュゲートの濃度は、ランベルト・ベールの法則によって決定した。
Abs=εcl
[式中、Abs、cおよびlは各々、吸光度、モル濃度、および経路長を示す。]
NanoDrop 1000スペクトロフォトメーター(Thermo Fisher Scientific Inc.)を吸光度の測定に用いた。
ε=9900×(ピロールおよびイミダゾールの数)
にしたがって計算した。PIポリアミドコンジュゲートの濃度は、ランベルト・ベールの法則によって決定した。
Abs=εcl
[式中、Abs、cおよびlは各々、吸光度、モル濃度、および経路長を示す。]
NanoDrop 1000スペクトロフォトメーター(Thermo Fisher Scientific Inc.)を吸光度の測定に用いた。
SPR実験は、Biacore X装置(GE Healthcare社製)上で実施した。ビオチン化したヘアピンDNA(5’−ビオチン−CGCTTGTGGTCCGTTTTCGGACCACAAGCG−3’)をSIGMA-Aldrichから購入した。ストレプトアビジン−官能化SAセンサーチップはBiacoreから購入した。ビオチン化DNAをセンサーチップ上に固定化して、所望の固定レベルを得た(約900RU上昇する)。SPRアッセイは、HBS−EPバッファー(10mM HPES(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005%Surfactant P20)を0.1%DMSOと共に25℃で用いて実施した。種々の濃度を有するPIポリアミドコンジュゲート溶液を、0.1%DMSOを含有するバッファー中で調製し、流速20μL/分でインジェクトした。結合速度(ka)、解離速度(kd)、および解離定数(KD)を計算するために、BIAevaluation 4.1プログラムを用いて、物質移動を有する1:1結合モデル(1:1 binding model with mass transfer)を用いて、データプロセッシングを行った。得られたセンサーグラム、およびka、kdおよびKDの値を図1および表1に示す。
表1および図1AおよびBから明らかなように、Chb−MはChb−M’よりも標的に対する結合アフィニティーが100倍以上高かった。
実施例3:Chb−MのDNAアルキル化活性
Chb−MおよびChb−M’のDNAアルキル化活性をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)分析によって試験した。Chb−MおよびChb−M’を用いて、DNAフラグメントをアルキル化した。アルキル化は室温で18時間行った。アルキル化部位を視覚化するために、サンプルを95℃で10分間加熱し、次いで、1Mピペリジン処理を95℃で25分間行った。アルキル化されたDNAは熱処理によって切断された。ピペリジン処理は、修飾された糖末端を3’−リン酸末端に変換する。3’−リン酸末端を有するDNAフラグメントをアルキル化バンドとしてゲル上で観察した。
Chb−MおよびChb−M’のDNAアルキル化活性をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)分析によって試験した。Chb−MおよびChb−M’を用いて、DNAフラグメントをアルキル化した。アルキル化は室温で18時間行った。アルキル化部位を視覚化するために、サンプルを95℃で10分間加熱し、次いで、1Mピペリジン処理を95℃で25分間行った。アルキル化されたDNAは熱処理によって切断された。ピペリジン処理は、修飾された糖末端を3’−リン酸末端に変換する。3’−リン酸末端を有するDNAフラグメントをアルキル化バンドとしてゲル上で観察した。
本実施例で使用した全てのオリゴヌクレオチド(Sigma-Aldrichから購入)を表2に示す。
5’−FAM標識DNAフラグメント(30bp)の調製
DNAサンプルをTNEバッファー(10mM Tris−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA)中で調製した。2つのDNAフラグメント(30bp)を、各鎖(ODN1:5’−FAM−ATTACCACATTAACCACAATTACCACATAT−3’、およびODN2:5’−ATATGTGGTAATTGTGGTTAATGTGGTAAT−3’)10μMを含有する100μL最終容量においてアニールした。アニーリングは65℃で10分間加熱し、次いで、徐々に室温に冷却することによって行った。相補的FAM標識フラグメント(30bp)は、他のDNAフラグメント(ODN5:5’−FAM−ATATGTGGTAATTGTGGTTAATGTGGTAAT−3’、およびODN6:5’−ATTACCACATTAACCACAATTACCACATAT−3’)を用いて同じ手法によって調製した。ODN3および4ならびにODN7および8は、参照DNAとして用いた。ODN2およびODN6を除く全てのODNは、5’−末端FAM標識された。
DNAサンプルをTNEバッファー(10mM Tris−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA)中で調製した。2つのDNAフラグメント(30bp)を、各鎖(ODN1:5’−FAM−ATTACCACATTAACCACAATTACCACATAT−3’、およびODN2:5’−ATATGTGGTAATTGTGGTTAATGTGGTAAT−3’)10μMを含有する100μL最終容量においてアニールした。アニーリングは65℃で10分間加熱し、次いで、徐々に室温に冷却することによって行った。相補的FAM標識フラグメント(30bp)は、他のDNAフラグメント(ODN5:5’−FAM−ATATGTGGTAATTGTGGTTAATGTGGTAAT−3’、およびODN6:5’−ATTACCACATTAACCACAATTACCACATAT−3’)を用いて同じ手法によって調製した。ODN3および4ならびにODN7および8は、参照DNAとして用いた。ODN2およびODN6を除く全てのODNは、5’−末端FAM標識された。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)
5’−FAM標識DNAフラグメント(1μM)を、10%DMFを含有する5.0mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)10μL中、23℃で18時間、PIポリアミドコンジュゲートによってアルキル化した。アルキル化されたDNAフラグメントを95℃で10分間加熱した。1.0Mピペリジン1μLを各サンプルに加え、95℃で25分間加熱した。該サンプルを真空遠心分離によって回収した。ペレットを5μLのローディングバッファー(ニューフクシンを含有するホルムアミド)中に溶解し、95℃で25分間加熱した後、0℃に急冷した。サンプルを、7.0M尿素を含有する20%ポリアクリルアミドゲル上にロードし、1×TBEバッファー中で電気泳動した(室温、200V、2時間)。FLA−3000蛍光画像アナライザー(FujiFilm, Tokyo, Japan)上でゲルを画像化した。
5’−FAM標識DNAフラグメント(1μM)を、10%DMFを含有する5.0mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)10μL中、23℃で18時間、PIポリアミドコンジュゲートによってアルキル化した。アルキル化されたDNAフラグメントを95℃で10分間加熱した。1.0Mピペリジン1μLを各サンプルに加え、95℃で25分間加熱した。該サンプルを真空遠心分離によって回収した。ペレットを5μLのローディングバッファー(ニューフクシンを含有するホルムアミド)中に溶解し、95℃で25分間加熱した後、0℃に急冷した。サンプルを、7.0M尿素を含有する20%ポリアクリルアミドゲル上にロードし、1×TBEバッファー中で電気泳動した(室温、200V、2時間)。FLA−3000蛍光画像アナライザー(FujiFilm, Tokyo, Japan)上でゲルを画像化した。
結果
図2Aに、上の鎖についてのアルキル化活性の結果を示す。2つのバンドがODN3およびODN4と同じ位置で観察されたので、Chb−M’は、標的配列中の2つのアデニンをアルキル化した。一方、Chb−Mは、1つの部位のみをアルキル化した。ミスマッチ部位に弱いアルキル化バンドも観察されたが、Chb−Mは、Chb−M’よりも標的配列においてより高い配列特異性を有した。さらに、バンドの濃さから、Chb−Mのアルキル化活性がChb−M’よりも優れていることが示された。したがって、βアラニンの導入により、PIポリアミドの配列特異性およびアルキル化活性の両方が増加した。下の鎖についてのアルキル化活性の結果は、Chb−MとChb−M’との間に配列特異性の差異が無いことを示した(図2B)。
図2Aに、上の鎖についてのアルキル化活性の結果を示す。2つのバンドがODN3およびODN4と同じ位置で観察されたので、Chb−M’は、標的配列中の2つのアデニンをアルキル化した。一方、Chb−Mは、1つの部位のみをアルキル化した。ミスマッチ部位に弱いアルキル化バンドも観察されたが、Chb−Mは、Chb−M’よりも標的配列においてより高い配列特異性を有した。さらに、バンドの濃さから、Chb−Mのアルキル化活性がChb−M’よりも優れていることが示された。したがって、βアラニンの導入により、PIポリアミドの配列特異性およびアルキル化活性の両方が増加した。下の鎖についてのアルキル化活性の結果は、Chb−MとChb−M’との間に配列特異性の差異が無いことを示した(図2B)。
実施例4:Chb−Mによる肺癌細胞系統に対する細胞毒性
肺癌細胞に対するChb−Mの細胞毒性効果を評価するために、各種肺癌細胞株に対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。肺癌細胞株として、EGFR変異型肺癌細胞株(PC3、PC9、LU99A)、EGFR野生型細胞株(A549、ABC1、RERFLCMS)を用いた。対照として、分子標的薬であるゲフィチニブ(gefitinib)(EGFR阻害剤)、分子標的薬ではない従来の肺癌に対する頻用薬剤シスプラチン(cisplatin)、およびChb−M’を用いた。
肺癌細胞に対するChb−Mの細胞毒性効果を評価するために、各種肺癌細胞株に対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。肺癌細胞株として、EGFR変異型肺癌細胞株(PC3、PC9、LU99A)、EGFR野生型細胞株(A549、ABC1、RERFLCMS)を用いた。対照として、分子標的薬であるゲフィチニブ(gefitinib)(EGFR阻害剤)、分子標的薬ではない従来の肺癌に対する頻用薬剤シスプラチン(cisplatin)、およびChb−M’を用いた。
成長阻害アッセイのために、細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のゲフィチニブ(EGFR阻害剤)、シスプラチン、Chb−M’、またはChb−Mを培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)(Chou, T. C. & Talalay, P. Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul 22, 27-55 (1984))によって分析した。結果を表3に示す。
実施例5:Chb−Mによる脳腫瘍細胞系統に対する細胞毒性
脳腫瘍細胞に対するChb−Mの細胞毒性効果を評価するために、各種脳腫瘍細胞株に対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。
脳腫瘍細胞に対するChb−Mの細胞毒性効果を評価するために、各種脳腫瘍細胞株に対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。
(1)髄芽腫細胞株Daoyに対する抗腫瘍効果
脳腫瘍細胞株として、髄芽腫細胞株Daoy(ATCCR HTB−186TM)細胞(ATCCより入手)を用いた。対照として、Chb−M’、Chb−S、およびクロラムブシルを用いた。なお、Chb−Sは、5’−WGGCCW−3’配列(ここで、WはAもしくはTのいずれかである)を標的とするPIポリアミドとクロラムブシルとのコンジュゲートであり、実施例1と同様の手法により合成した。Chb−Sの化学式を下記に示す。
脳腫瘍細胞株として、髄芽腫細胞株Daoy(ATCCR HTB−186TM)細胞(ATCCより入手)を用いた。対照として、Chb−M’、Chb−S、およびクロラムブシルを用いた。なお、Chb−Sは、5’−WGGCCW−3’配列(ここで、WはAもしくはTのいずれかである)を標的とするPIポリアミドとクロラムブシルとのコンジュゲートであり、実施例1と同様の手法により合成した。Chb−Sの化学式を下記に示す。
成長阻害アッセイのために、髄芽腫細胞株Daoyを1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のPIポリアミド(Chb−M、Chb−M’、Chb−S)とChb(クロラムブシル)を培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法によって分析した。
結果を図3に示す。図3から明らかなように、Chb−MのIC50(0.754μM)は、対照と比べてはるかに低濃度であった。
(2)悪性グリオーマに対する抗腫瘍効果
最も予後が不良である組織型の脳腫瘍として知られる悪性グリオーマに対するChb−Mの効果を評価するために、72時間および96時間のIC50を求めた。悪性グリオーマ細胞株2種類(A172細胞、KALS−1細胞)を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、またはChb(クロラムブシル)を培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
最も予後が不良である組織型の脳腫瘍として知られる悪性グリオーマに対するChb−Mの効果を評価するために、72時間および96時間のIC50を求めた。悪性グリオーマ細胞株2種類(A172細胞、KALS−1細胞)を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、またはChb(クロラムブシル)を培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図4AおよびBに示す。図4Aから明らかなように、A172細胞に対するChb−MのIC50(72時間0.531μMおよび96時間0.421μM)は、対照Chb−M’(72時間23.066μMおよび96時間6.677μM)と比べてはるかに低濃度であった。また、図4Bから明らかなように、KALS−1細胞に対するChb−MのIC50(72時間0.214μMおよび96時間0.738μM)は、対照Chb−M’(96時間44.82μM)と比べてはるかに低濃度であった。
(3)小児脳腫瘍(悪性ラブドイド腫瘍)に対する抗腫瘍効果
小児脳腫瘍(悪性ラブドイド腫瘍)に対するChb−Mの効果を評価するために、72時間のIC50を評価した。悪性ラブドイド腫瘍細胞株2種類(MP−MRT−AN細胞、KP−MRT−NS細胞)は、京都府立医科大学大学院医学研究科 桑原康通医師よりMTAを締結し入手した。各々の細胞株を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、Chb−S、またはChbを培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
小児脳腫瘍(悪性ラブドイド腫瘍)に対するChb−Mの効果を評価するために、72時間のIC50を評価した。悪性ラブドイド腫瘍細胞株2種類(MP−MRT−AN細胞、KP−MRT−NS細胞)は、京都府立医科大学大学院医学研究科 桑原康通医師よりMTAを締結し入手した。各々の細胞株を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、Chb−S、またはChbを培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図5に示す。図5から明らかなように、MP−MRT−AN細胞に対するChb−MのIC50(1.14μM)は、Chb−M’(1.22μM)と同程度であったが、Chb−SおよびChbと比べてはるかに低濃度であった。また、KP−MRT−NS細胞に対するChb−MのIC50(1.07μM)は、Chb−M’(2.13μM)と比べて低濃度であった。
実施例6:Chb−Mによる前立腺癌細胞系統に対する細胞毒性
CRPC−Adeno:外科切除不応性前立腺癌(腺癌)に対するChb−Mの抗腫瘍効果を評価するために、72時間のIC50を求めた。外科切除不応性前立腺癌(腺癌)細胞株:DU145細胞(DU 145(ATCCR HTB−81TM):ATCCより購入)を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、Chb−S、またはChbを培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
CRPC−Adeno:外科切除不応性前立腺癌(腺癌)に対するChb−Mの抗腫瘍効果を評価するために、72時間のIC50を求めた。外科切除不応性前立腺癌(腺癌)細胞株:DU145細胞(DU 145(ATCCR HTB−81TM):ATCCより購入)を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−M、Chb−M’、Chb−S、またはChbを培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図6に示す。図6から明らかなように、DU145細胞に対するChb−MのIC50(0.29μM)は、Chb−M’(0.28μM)と同程度であったが、Chb−SおよびChbと比べてはるかに低濃度であった。
実施例7:Chb−Mによる白血病細胞系統に対する細胞毒性
(1)急性骨髄性白血病に対する抗腫瘍効果
MLL白血病細胞株に対するChb−Mの効果を評価するために、48時間のIC50を求めた。MLL白血病細胞株MOLM13[JCRB(Japanese Collection of Research Bioresources、Japan)より入手した。さらに、TP53野生型細胞株MV4−11、および53TP53 R248W変異を有するMV4−11NR細胞のAML細胞系統を、T.Ikezoe博士(Department of Hematology and Respiratory Medicine, Kochi University, Kochi, Japan)から譲り受けた。これらの細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、48時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
(1)急性骨髄性白血病に対する抗腫瘍効果
MLL白血病細胞株に対するChb−Mの効果を評価するために、48時間のIC50を求めた。MLL白血病細胞株MOLM13[JCRB(Japanese Collection of Research Bioresources、Japan)より入手した。さらに、TP53野生型細胞株MV4−11、および53TP53 R248W変異を有するMV4−11NR細胞のAML細胞系統を、T.Ikezoe博士(Department of Hematology and Respiratory Medicine, Kochi University, Kochi, Japan)から譲り受けた。これらの細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、48時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図7に示す。図7から明らかなように、MOLM13細胞に対するChb−MのIC50(0.076μM)は、Chb−M’(0.121μM)と比べてはるかに低濃度であった。また、Chb−Mは、p53変異型白血病細胞にも効果があることが分かった(IC50=0.76μM)。
(2)急性前骨髄球性白血病に対する抗腫瘍効果
急性前骨髄球性白血病(APL)細胞に対するChb−Mの効果を評価するために、48時間と72時間のIC50を求めた。NB4細胞株細胞系統は、慶應大学医学部血液腫瘍内科より入手した。NB4細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、48時間および72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
急性前骨髄球性白血病(APL)細胞に対するChb−Mの効果を評価するために、48時間と72時間のIC50を求めた。NB4細胞株細胞系統は、慶應大学医学部血液腫瘍内科より入手した。NB4細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、48時間および72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図8に示す。図8から明らかなように、48時間および72時間のいずれも、Chb−MのIC50(48時間0.98μM、72時間0.15μM)はChb−M’と比べて低濃度であった。
実施例8:Chb−Mによる骨肉腫系統に対する細胞毒性
骨肉腫に対するChb−Mの効果を評価するために、72時間のIC50を求めた。骨肉腫細胞MG63細胞株細胞系統は、京都大学小児科より入手した。MG63細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
骨肉腫に対するChb−Mの効果を評価するために、72時間のIC50を求めた。骨肉腫細胞MG63細胞株細胞系統は、京都大学小児科より入手した。MG63細胞を1×105細胞/mL密度にした。種々の濃度のChb−MまたはChb−M’を培地に加え、72時間インキュベートした。細胞生存能力を、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Inc.)およびInfiniteR 200 PROマルチモードリーダー(TECAN)を用いて、製造者の指示書にしたがって、生存細胞をカウントすることによって評価した。増殖を50%阻害する用量は、半有効法(median-effect method)によって分析した。
結果を図9に示す。図9から明らかなように、Chb−MのIC50(0.449μM)はChb−M’と比べてはるかに低濃度であった。
本発明の抗腫瘍組成物は、RUNXファミリーのクラスター制御によって白血病をはじめ、様々な種類の癌を標的とすることができる。本発明の抗腫瘍組成物は、他の分子標的治療薬に対して耐性を示す腫瘍に対しても効果を示す。特に、本発明の抗腫瘍組成物は、現在臨床で使用されている分子標的治療薬では効果がない癌に対しても効果を示すため、難治療性と言われる癌にも効果がある万能抗癌剤としての利用が期待される。さらに、本発明のRUNX阻害剤は、抗アレルギー組成物として使用することができる。
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SEQ ID NO:2: Sequence of ODN2
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SEQ ID NO:4: Sequence of ODN4
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Claims (14)
- RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗腫瘍組成物。
- 前記ピロール−イミダゾールポリアミドと作用剤との複合体を含む、請求項1記載の抗腫瘍組成物。
- 前記複合体が、式I:
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R10は、H、−NHR11、または−Ym−Zを示し、
R11は、H、ビオチン、または蛍光基を示し、
Aは、
Bは、アセチル基、または−Ym−Zを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり
Zは、作用剤を示し、
整数nは、0〜5の値のいずれかであり、
ここに、R9、R10、A、およびBの少なくとも1つは、−Ym−Zであり、
式Iの複合体が、複数のYm−Zで示される構造を含むとき、それらの複数のYm−Zにおける、Ymの各々は、他のYmと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、かつ、それらの複数のYm−Zにおける、Zの各々は、他のZと互いに同一であっても、異なっていてもよく、それぞれが独立して選択され得るものであり、
さらに、式I中、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物からなる群から選ばれる、請求項2記載の抗腫瘍組成物。 - 前記複合体が式II:
式III:
X1はCH、COHまたはNを示し、X2はCH、COHまたはNを示し、X3はCH、COHまたはNを示し、X4はCH、COHまたはNを示し、X5はCH、COHまたはNを示し、X6はCH、COHまたはNを示し、X7はCH、COHまたはNを示し、X8はCH、COHまたはNを示し、
Ymは、アミド結合、ホスホジスルフィド結合、エステル結合、配位結合、またはエーテル結合を示すか、あるいはこれらの結合の1種類以上を形成する官能基を含む部分を示し、整数mは0〜5の値のいずれかであり、
R1はHまたはアルキル基を示し、R2はHまたはアルキル基を示し、R3はHまたはアルキル基を示し、R4はHまたはアルキル基を示し、R5はHまたはアルキル基を示し、R6はHまたはアルキル基を示し、R7はHまたはアルキル基を示し、R8はHまたはアルキル基を示し、
R9はHまたは−NHR11を示し、
R10はHまたは−NHR11を示し、
R11はH、ビオチン、または蛍光基を示し、
Zは作用剤を示し、
ここに、下記式:
で示されるピロール単位の少なくとも1つは、下記式:
によって示される化合物からなる群から選ばれる、請求項3記載の抗腫瘍組成物。 - 作用剤Zのうち少なくとも1つが、アルキル化剤である、請求項2〜4のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物。
- 前記アルキル化剤が、クロラムブシル、デュオカルマイシン、seco−CBI、CBI、ピロロベンゾジアゼピン、およびナイトロジェンマスタードからなる群から選択される、請求項5記載の抗腫瘍組成物。
- 前記アルキル化剤が、クロラムブシルである、請求項6記載の抗腫瘍組成物。
- 前記ピロール−イミダゾールポリアミドが、DNA上のRUNX結合配列に結合してRUNXファミリーメンバーの該結合配列への結合を阻害する、請求項1〜8のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物。
- RUNXファミリーの全てのメンバーのRUNX結合配列への結合を阻害する、請求項9記載の抗腫瘍組成物。
- 他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用される、請求項1〜10のいずれか1項記載の抗腫瘍組成物。
- 白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、腎細胞癌、神経芽細胞腫、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、脳腫瘍、および骨肉腫からなる群から選択される1以上を予防または治療するための、請求項1〜11のいずれか1項記載の抗腫瘍医薬組成物。
- RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、RUNX阻害剤。
- RUNX結合配列に結合し得るピロール−イミダゾールポリアミドを含み、かつ、該ピロール−イミダゾールポリアミドを構成するピロール単位の少なくとも1つがβアラニンによって置換されている、抗アレルギー組成物。
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