以下、本開示のレーザ加工装置について、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる図1及び図2では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
[1.レーザ加工装置の概略構成]
先ず、図1及び図2に基づいて、本実施形態のレーザ加工装置1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
レーザ加工部3は、加工レーザ光Rを加工対象物7上で2次元走査してレーザマーキング(印字)加工(以下、「マーキング加工」という。)を行うものである。レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。ここで、印字データとは、加工対象物7上において加工レーザ光Rによりマーキング加工される印字パターンの加工位置を示すXY座標データと、XY座標データにマーキング加工の条件である加工条件を示す加工条件データとが対応付けられたデータである。尚、印字データには、印字パターンを構成する複数の線分各々について、始点と終点を示すXY座標データが設定されている。
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、加工レーザ光源12、可視レーザ光源15、ダイクロイックミラー101、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
加工レーザ光源12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成されており、加工レーザ光Rを発振し出射する。尚、加工レーザ光Rの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
可視レーザ光源15は、半導体レーザドライバ38及び可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光である可視レーザ光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。可視レーザ光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、更に、2次元走査されることによって、加工レーザ光Rでマーキング加工すべき印字パターンの像を、加工対象物7上に軌跡(時間残像)で映し出すものである。つまり、可視レーザ光Qには、マーキング加工の能力がない。尚、可視レーザ光Qによって、加工レーザ光Rでマーキング加工すべき印字パターンの像を取り囲んだ矩形の像、又は所定形状の像等が、加工対象物7上に軌跡(時間残像)で映し出されてもよい。
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Rのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Rが透過する略中央位置にて、可視レーザ光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Rの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、可視レーザ光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
ガルバノスキャナ18は、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた第1ガルバノミラー18X及び第2ガルバノミラー18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、第1ガルバノミラー18X及び第2ガルバノミラー18Yを回転させることによって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。X方向の走査は、第1ガルバノミラー18Xの回転で行われる。Y方向の走査は、第2ガルバノミラー18Yの回転で行われる。第1ガルバノミラー18Xには、指向性に優れた加工レーザ光Rが入射する。これに対して、第2ガルバノミラー18Yには、回転する第1ガルバノミラー18Xで反射した加工レーザ光Rが入射する。
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを加工対象物7上に集光するものである。従って、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7上でX方向とY方向に2次元走査される。
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
図2に表されたように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、及び半導体レーザドライバ38等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、及び半導体レーザドライバ38等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字データ、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンのデータ等を一時的に記憶させておくためのものである。
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字データに基づいて印字パターンのXY座標データを算出して、加工データ44としてRAM42に記憶するプログラムや、印字情報作成部2から送信された印字データに基づいて可視レーザ光Qのレーザパルス幅を算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。もっとも、RAM42に記憶される可視レーザ光Qのレーザパルス幅は、印字情報作成部2において算出されてもよい。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、印字情報作成部2から入力された印字データに対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Rのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度(以下、「可視レーザ光Qの走査速度」という。)等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
CPU41は、加工データ44、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、及び可視レーザ光Qの走査速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、加工データ44に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示す加工レーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号、及び可視レーザ光Qのレーザパルス幅等を示す可視レーザ駆動情報を、半導体レーザドライバ38に出力する。その詳細は、後述する。
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、加工データ44、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qを2次元走査する。
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示す加工レーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号、及び可視レーザ光Qのレーザパルス幅等を示す可視レーザ駆動情報に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。その詳細は、後述する。
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD−ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD−ROMドライブ58等が接続されている。
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
CD−ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD−ROM57から読み込むものである。
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御するものであって、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
[2.描画]
次に、可視レーザ光Qによる描画について説明する。ここでは、図3に表されたように、印字パターンとして「Y」の英文字が設定された一例を用いて、具体的に説明する。以下、「Y」の英文字を、オブジェクトOと表記する。「Y」の英文字は、第1線分70、第2線分72、及び第3線分74で構成される。
また、オブジェクトOが可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出される際の、加工対象物7上では、ガルバノスキャナ18によって2次元走査される可視レーザ光Qの位置(以下、「可視レーザ光Qの走査位置5」又は「走査位置5」という。)が、待機位置iから、6つの各矢印j1,m1−1,m1−2,j2,m2,j3で示す方向へ、その記載順で直進し、待機位置iに戻るものとする。尚、可視レーザ光Qの走査位置5には、加工レーザ光Rが照射及び走査されない位置と、加工レーザ光Rが照射及び走査される位置とがある。
矢印j1の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、待機位置iから、オブジェクトOの第1線分70の始点がある位置o1にまで移動する。矢印m1−1の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、上記位置o1から、オブジェクトOの第1線分70の終点がある位置o2にまで移動する。矢印m1−2の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、上記位置o2であって、オブジェクトOの第2線分72の始点がある位置から、オブジェクトOの第2線分72の終点がある位置o3にまで移動する。
矢印j2の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、上記位置o3から、オブジェクトOの第3線分74の始点がある位置o4にまで移動する。矢印m2の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、上記位置o4から、上記位置o2であって、オブジェクトOの第3線分74の終点がある位置にまで移動する。矢印j3の直進では、可視レーザ光Qの走査位置5が、上記位置o2から、待機位置iにまで移動する。
尚、待機位置iは、予め設定されており、そのXY座標データがROM43に記憶されている。これに対して、各位置o1,o2,o3,o4は、それらのXY座標データが上記加工データ44から求められる。
図4に表されたように、オブジェクトOが可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出される際は、第1信号100が、オフ状態からオン状態にされる。第1信号100は、ユーザが入力操作部55を操作することによって、レーザ加工装置1が可視レーザ光Qの使用モードに移行したときに、半導体レーザドライバ38に入力される信号である。半導体レーザドライバ38では、第1信号100がオン状態であるときに、蓄電が行われる。半導体レーザドライバ38の蓄電に伴って、可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーは増加する。
半導体レーザドライバ38にて蓄電が行われている間、つまり第1信号100がオン状態である間は、第1待機期間I1、第1非描画期間J1、第1描画期間M1、第2非描画期間J2、第2描画期間M2、第3非描画期間J3、及び第2待機期間I2に区分けされる。
尚、以下では、第1待機期間I1及び第2待機期間I2を区別せずに総称する場合、「待機期間I」と表記する。第1非描画期間J1、第2非描画期間J2、及び第3非描画期間J3を区別せずに総称する場合、「非描画期間J」と表記する。第1描画期間M1及び第2描画期間M2を区別せずに総称する場合、「描画期間M」と表記する。
第1待機期間I1は、可視レーザ光Qの走査位置5が待機位置iに最初に停止している期間であって、第1信号100がオフ状態からオン状態に切り替わった時点から始まり、半導体レーザドライバ38に第2信号102が入力された時点で終わる。第2信号102は、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)によるオブジェクトOの映し出しを開始させるための指令信号であって、入力操作部55におけるユーザの操作に基づいて、半導体レーザドライバ38に入力される。第1非描画期間J1は、可視レーザ光Qの走査位置5が矢印j1で示す方向へ直進している期間である。従って、第1非描画期間J1では、可視レーザ光Qの走査位置5が、待機位置iから、オブジェクトOの第1線分70の始点がある位置o1にまで移動している。尚、第1非描画期間J1は、半導体レーザドライバ38に第2信号102が入力された時点から始まる。
第1描画期間M1は、可視レーザ光Qの走査位置5が、矢印m1−1で示す方向及び矢印m1−2で示す方向へ、その記載順に直進している期間である。従って、第1描画期間M1では、可視レーザ光Qの走査位置5が、オブジェクトOの第1線分70の始点がある位置o1からその終点がある位置o2まで移動し、更に、オブジェクトOの第2線分72の始点がある位置o2からその終点がある位置o3まで移動している。
更に、第1描画期間M1は、最初期間MF、中間期間MM、及び最後期間MLに区分けされる。最初期間MFは、第1描画期間M1の開始から第1所定時間の経過までの期間である。最後期間MLは、第1描画期間M1の終了よりも第2所定時間前から第1描画期間M1の終了までの期間である。中間期間MMは、最初期間MFと最後期間MLとに挟まれた期間である。尚、第1所定時間及び第2所定時間は、予め設定されており、ROM43に記憶されている。
第2非描画期間J2は、可視レーザ光Qの走査位置5が矢印j2で示す方向へ直進している期間である。従って、第2非描画期間J2では、可視レーザ光Qの走査位置5が、オブジェクトOの第2線分72の終点がある位置o3から、オブジェクトOの第3線分74の始点がある位置o4まで移動している。
第2描画期間M2は、可視レーザ光Qの走査位置5が矢印m2で示す方向へ直進している期間である。従って、第2描画期間M2では、可視レーザ光Qの走査位置5が、オブジェクトOの第3線分74の始点がある位置o4から、その終点がある位置o2まで移動している。更に、第2描画期間M2は、第1描画期間M1と同様にして、最初期間MF、中間期間MM、及び最後期間MLに区分けされる。
第3非描画期間J3は、可視レーザ光Qの走査位置5が矢印j3で示す方向へ直進している期間である。従って、第3非描画期間J3では、可視レーザ光Qの走査位置5が、オブジェクトOの第3線分74の終点がある位置o2から、待機位置iにまで移動している。第2待機期間I2は、可視レーザ光Qの走査位置5が待機位置iに再び停止している期間であって、第1信号100がオン状態からオフ状態に切り替わった時点で終わる。尚、第1信号100は、ユーザが入力操作部55を操作することによって、レーザ加工装置1が可視レーザ光Qの使用モードから他のモードに移行したとき等に、オン状態からオフ状に切り替わる。
従って、第1描画期間M1及び第2描画期間M2は、オブジェクトOの全ての線分70,72,74のうち、少なくとも一つが、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出される期間である。以下、オブジェクトOの全ての線分70,72,74のうち、少なくとも一つを可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出すことを、「描画」と表記する。
これに対して、第1待機期間I1、第1非描画期間J1、第2非描画期間J2、第3非描画期間J3、及び第2待機期間I2は、オブジェクトOの全ての線分70,72,74が、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出されない期間、つまり描画は行われない期間である。
尚、描画が行われない期間のうち、第1待機期間I1及び第2待機時間I2は、可視レーザ光Qの走査位置5が停止している期間であり、第1非描画期間J1、第2非描画期間J2、及び第3非描画期間J3は、可視レーザ光Qの走査位置5が移動している期間である。
半導体レーザドライバ38にて蓄電が行われている間では、つまり第1待機期間I1、第1非描画期間J1、第1描画期間M1、第2非描画期間J2、第2描画期間M2、第3非描画期間J3、及び第2待機期間I2では、図5に表されたパルス信号104に基づいて、可視半導体レーザ28から可視レーザ光Qが出射される。可視半導体レーザ28から可視レーザ光Qが出射されると、ガルバノスキャナ18等を経由して、加工対象物7上の走査位置5において、可視レーザ光Qが照射される。
図5において、符号fは、パルス信号104のパルス周期を示している。符号hは、パルス信号104のオン状態の継続時間(以下、「オン時間」という。)を示している。従って、パルス信号104のデューティ比Dは、オン時間hをパルス周期fで割った値である。
パルス信号104は、半導体レーザドライバ38から、可視半導体レーザ28に送信される電圧信号である。可視半導体レーザ28では、パルス信号104がオン状態のときに、可視レーザ光Qが出射する。従って、パルス信号104のオン時間(パルス信号104のパルス幅)は、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qのパルス幅を示している。よって、可視レーザ光Qの発振状態、つまり、加工対象物7上での可視レーザ光Qの照射状態は、パルス信号104のデューティ比D及びパルス周期fで示される。
待機期間Iのパルス信号104は、そのデューティ比D及びパルス周期fが所定デューティ比及び所定パルス周期に設定され、待機期間Iが開始されるときに、半導体レーザドライバ38から可視半導体レーザ28に送信される。尚、所定デューティ比及び所定パルス周期は、予め設定されており、ROM43に記憶されている。
これに対して、第1非描画期間J1、第1描画期間M1、第2非描画期間J2、第2描画期間M2、及び第3非描画期間J3の各パルス信号104は、半導体レーザドライバ38に第2信号102が入力されたときに、その記載順に連続して、半導体レーザドライバ38から可視半導体レーザ28に送信される。
描画期間Mを構成する最初期間MF、中間期間MM、及び最後期間MLのうち、中間期間MMのパルス信号104は、そのデューティ比Dが「1」に設定される。もっとも、可視レーザ光Qによる描画の視認性が確保されるのであれば、中間期間MMのパルス信号104は、そのデューティ比Dが「1」未満の比較的大きな値に設定されてもよいし、そのパルス周期fが比較的小さな値に設定されてもよい。
これに対して、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fは、可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量を中間期間MMの時よりも小さくするものに設定される。従って、最初期間MFのパルス信号104は、中間期間MMのパルス信号104と比べ、デューティ比Dが小さく、又はパルス周期fが大きい。
但し、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qのエネルギー量にオーバーシュートが生じないのであれば、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fは、中間期間MMのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fと同一であってもよい。尚、オーバーシュートについては、後述する。
また、最後期間MLのパルス信号104のデューティ比Dは、可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量を中間期間MMの時よりも小さくするものに設定される。従って、最後期間MLのパルス信号104は、中間期間MMのパルス信号104と比べ、デューティ比Dが小さい。
非描画期間Jのパルス信号104は、そのデューティ比D又はパルス周期fが、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離、つまり非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間に応じ、例えば、図6のグラフに表された各関係式106,108に基づいて設定される。
但し、この設定では、非描画期間Jの加工対象物7上に照射及び走査される可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、描画期間M(より具体的には、描画期間Mの中間期間MM)の加工対象物7上に照射及び走査される可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量よりも大きくならないことが条件とされる。
図6のグラフにおいて、横軸は、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tの長さを示している。これに対して、縦軸は、半導体レーザドライバ38の蓄電に伴って可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーEの量を示している。
符号Efは、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qのエネルギーがオーバーシュートする励起エネルギーEの最小量(以下、「第1エネルギー量Ef」という。)を示している。可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qのエネルギーがオーバーシュートするということは、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qの光量が大きいということである。そのため、可視レーザ光Qのエネルギーのオーバーシュートは、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で加工対象物7上に映し出されるオブジェクトOに対し、その視認性に影響を及ぼす虞がある。従って、照射される可視レーザ光Qのエネルギーがオーバーシュートすることは、望ましくない。
レーザ加工装置1では、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で加工対象物7上にオブジェクトOを視認性良く映し出すために、描画期間Mにおいて可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qのエネルギーの上限値を設定している。つまり、本実施形態において、オーバーシュートとは、その設定された上限値を超えたエネルギー量で可視レーザ光Qが出射されることを示しており、具体的には、第1エネルギー量Efである。
符号Ebは、第1エネルギー量Efよりも大きな値であって、半導体レーザドライバ38を破壊する励起エネルギーEの最小量(以下、「第2エネルギー量Eb」という。)を示している。尚、半導体レーザドライバ38の破壊は、半導体レーザドライバ38の蓄電量が許容量を超えることによって起こる。
符号E0は、非描画期間Jの開始時に、可視レーザ光源15内に保持されている励起エネルギーEの量(以下、「初期エネルギー量E0」という。)を示している。初期エネルギー量E0は、「0」のときもあるが、ここでは、「0」よりも大きいものとする。
関係式106は、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dが「0」、すなわち、パルス信号104がオン状態となることがない場合において、可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーEの量と、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tとの関係を、直線で近似したものである。
関係式106によれば、例えば、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが時間tf1未満である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比Dが「0」であっても、半導体レーザドライバ38は破壊されないし、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において上記オーバーシュートを生じさせることもない。そこで、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比Dが「0」に設定される。この点は、第2非描画期間J2及び第3非描画期間J3についても同様である。
また、関係式106によれば、例えば、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが、時間tf1以上で時間tb未満である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比Dが「0」であると、半導体レーザドライバ38は破壊されないけれども、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において上記オーバーシュートを生じさせてしまう。そこで、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比Dが「0」に設定される一方で、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の最初期間MFのパルス信号104は、上述したように、中間期間MMのパルス信号104と比べ、デューティ比Dが小さくされ、又はパルス周期fが大きくされる。これにより、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において、上記オーバーシュートが生じることをなくす。この点は、第2非描画期間J2及び第3非描画期間J3についても同様である。
更に、関係式106によれば、例えば、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが時間tb以上である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比Dが「0」であると、半導体レーザドライバ38は破壊されてしまう。そこで、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比D又はパルス周期fが、半導体レーザドライバ38が破壊されず、且つ、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において上記オーバーシュートが生じないものに変更される。
関係式108は、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fについて上記変更がなされた場合において、可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーEの量と、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tとの関係を、直線で近似したものである。従って、関係式108によれば、例えば、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが、時間tb以上で時間tf2未満である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比D又はパルス周期fについて、上記変更がなされる。この点は、第2非描画期間J2及び第3非描画期間J3についても同様である。
但し、関係式108に基づいて上記変更がなされたデューティ比Dは、描画期間Mの中間期間MMのデューティ比Dの「1」よりも小さく、且つ、待機期間Iの所定デューティ比よりも小さい。尚、関係式108に基づいて上記変更がなされると、デューティ比Dが「0」よりも大きくなるので、非描画期間Jでは、可視半導体レーザ28から可視レーザ光Qが一定間隔で出射される。そのため、関係式108は、関係式106よりも、近似直線の傾きが小さい。従って、同一の移動時間tで可視レーザ光源15内に蓄積される励起エネルギーEの量は、関係式108の方が関係式106の方よりも小さい。
また、関係式108によれば、例えば、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが、時間tf2以上である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fについて上記変更がなされると、半導体レーザドライバ38は破壊されないけれども、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において上記オーバーシュートを生じさせてしまう。そこで、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比D又はパルス周期fについて、上記変更がなされる一方で、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の最初期間MFのパルス信号104は、中間期間MMのパルス信号104と比べ、デューティ比Dがより一層に小さくされ、又はパルス周期fがより一層に大きくされる。これにより、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において、上記オーバーシュートが生じることをなくす。この点は、第2非描画期間J2及び第3非描画期間J3についても同様である。
また、第1非描画期間J1において、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが、時間tf2以上である場合、第1非描画期間J1のパルス信号104は、そのデューティ比D又はパルス周期fが、関係式108とは異なる関係式に基づいて、半導体レーザドライバ38が破壊されず、且つ、第1非描画期間J1に後続する第1描画期間M1の開始時において上記オーバーシュートが生じないものに変更されてもよい。この点は、第2非描画期間J2及び第3非描画期間J3についても同様である。
尚、各関係式106,108、第1エネルギー量Ef、第2エネルギー量Eb、及び各時間tf1,tb,tf2に関するデータは、ROM43に記憶されている。
[3.制御フロー]
図7乃至図9のフローチャートで表された制御プログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、加工対象物7上においてオブジェクトOが可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出される際に、制御部51のCPU61により実行される。従って、後述する処理において、制御対象がレーザ加工部3の構成要素である場合、レーザコントローラ6を介した制御が行われる。尚、本制御プログラムは、CD−ROM57に保存されており、CD−ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。以下、本制御プログラムを、図3乃至図6に表された具体例を参照しながら説明する。
図7のフローチャートで表された制御プログラムでは、先ず、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)10において、半導体レーザドライバ38に入力される第1信号100がオン状態であるかが判定される。第1信号100がオフ状態である場合(S10:NO)、この判定が繰り返される。これに対して、第1信号100がオン状態である場合(S10:YES)、半導体レーザドライバ38の蓄電が開始され、その後に、待機処理S12が行われる。
待機処理S12では、デューティ比D及びパルス周期fを所定デューティ比及び所定パルス周期とする、待機期間Iのパルス信号104が、半導体レーザドライバ38から可視半導体レーザ28に送信される。これにより、第1待機期間I1では、可視レーザ光Qが可視半導体レーザ28から所定間隔で出射され、その所定間隔で出射される可視レーザ光Qが、ガルバノスキャナ18によって、加工対象物7上の待機位置iに照射される。このようにして、待機期間Iでは、可視レーザ光Qが所定間隔で出射されることによって、可視レーザ光源15内に蓄電される励起エネルギーEが、第1エネルギー量Ef及び第2エネルギー量Ebを超えないように制御される。
S14では、第1信号100がオフ状態であるかが判定される。第1信号100がオフ状態である場合(S14:YES)、半導体レーザドライバ38において、蓄電と、可視半導体レーザ28に対する待機期間Iのパルス信号104の送信とが終了する。これにより、本制御プログラムが終了する。
これに対して、第1信号100がオン状態である場合(S14:NO)、S16において、印字情報作成部2から送信される上記印字データをレーザコントローラ6が受信したかが判定される。レーザコントローラ6が上記印字データを受信していない場合(S16:NO)、この判定が繰り返される。これに対して、レーザコントローラ6が上記印字データを受信した場合(S16:YES)、計算処理S18が行われる。尚、上述したように、オブジェクトOのXY座標データは、レーザコントローラ6が受信した上記印字データに基づいて加工データ44として算出され、その加工データ44がRAM42に記憶される。
計算処理S18では、図8に表されたように、先ず、特定処理S30が行われる。この処理では、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが算出される。その算出は、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離を、上述した可視レーザ光Qの走査速度で割ることによって行われる。その際、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離は、上記加工データ44から特定される。尚、ここでは、第1非描画期間J1における可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間t(以下、「第1非描画期間J1における移動時間t」という。)が算出されたものとする。
決定処理S32では、図9に表されたように、先ず、S50において、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf1未満であるかが判定される。第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf1未満である場合(S50:YES)、第1モード処理S52が行われる。第1モード処理S52では、第1非描画期間J1のパルス信号104について、そのデューティ比Dが、上記所定デューティ比よりも小さな「0」に設定される。その後、本制御プログラムは、図8のS34に進む。
これに対して、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf1以上である場合(S50:NO)、S54において、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tb未満であるかが判定される。第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tb未満である場合(S54:YES)、第2モード処理S56が行われる。第2モード処理S56では、上記第1モード処理S52と同様にして、第1非描画期間J1のパルス信号104について、そのデューティ比Dが、上記所定デューティ比よりも小さな「0」に設定される。その後、本制御プログラムは、図8のS34に進む。
これに対して、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tb以上である場合(S54:NO)、S58において、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf2未満であるかが判定される。第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf2未満である場合(S58:YES)、第3モード処理S60が行われる。第3モード処理S60では、第1非描画期間J1のパルス信号104について、そのデューティ比D又はパルス周期fが、上記関係式108に基づいて上記変更がなされたものに設定される。これにより、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比Dが、上記所定デューティ比よりも小さな値に設定され、あるいは、第1非描画期間J1のパルス信号104のパルス周期fが、上記所定パルス周期よりも大きな値に設定される。その後、本制御プログラムは、図8のS34に進む。
これに対して、第1非描画期間J1における移動時間tが、上記時間tf2以上である場合(S58:NO)、第4モード処理S62が行われる。第4モード処理S62では、上記第3モード処理S60と同様にして、第1非描画期間J1のパルス信号104について、そのデューティ比D又はパルス周期fが、上記関係式108に基づいて上記変更がなされたものに設定される。これにより、第1非描画期間J1のパルス信号104のデューティ比Dが、上記所定デューティ比よりも小さな値に設定され、あるいは、第1非描画期間J1のパルス信号104のパルス周期fが、上記所定パルス周期よりも大きな値に設定される。
但し、第4モード処理S62では、第1非描画期間J1のパルス信号104について、そのデューティ比D又はパルス周期fが、上記関係式108とは異なる関係式に基づいて、上記変更がなされたものに設定されてもよい。その後、本制御プログラムは、図8のS34に進む。
図8のS34では、非描画期間Jの全てについて上記特定処理S30及び上記決定処理S32が行われたかが判定される。非描画期間Jの全てについて上記特定処理S30及び上記決定処理S32が行われていない場合(S34:NO)、上記特定処理S30及び上記決定処理S32が繰り返される。これにより、第1非描画期間J1、第2非描画期間J2、及び第3非描画期間J3の各パルス信号104について、そのデューティ比D又はパルス周期fが設定される。
尚、この時点では、描画期間Mを構成する最初期間MF、中間期間MM、及び最後期間MLの各パルス信号104は、そのデューティ比Dが、デフォルト値の「1」に設定されているものとする。そのため、可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量の初期値は、描画期間M、最初期間MF、中間期間MM、及び最後期間MLのいずれにおいても、同一である。また、上記決定処理S32で設定された非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dは、描画期間Mのパルス信号104のデューティ比Dよりも小さい。更に、後述するようにして、描画期間Mを構成する最初期間MF又は中間期間MMのパルス信号104について、そのパルス周期fが設定される場合、そのパルス周期fは、上記決定処理S32で設定された非描画期間Jのパルス信号104のパルス周期fよりも小さくされる。上記デフォルト値は、ROM43に記憶されている。
これに対して、非描画期間Jの全てについて上記特定処理S30及び上記決定処理S32が行われた場合(S34:YES)、第1変換処理S36が実行される。この処理では、非描画期間Jに後続する描画期間Mにおける、可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量について、最初期間MFの時の方が中間期間MMの時の方よりも小さくなるように、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fが変更される。
具体的には、中間期間MMのパルス信号104について、そのデューティ比Dが「1」に維持されることによって、中間期間MMにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、描画期間Mにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量の初期値と同一にされる場合、最初期間MFのパルス信号104について、そのデューティ比Dが「1」よりも小さな値に変更される。これにより、最初期間MFにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、描画期間Mにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量の初期値よりも小さくされる。その際、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比Dは、その最初期間MFの描画期間Mに先行する非描画期間Jにおける、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが長くなるほど、より一層に小さな値に変更されてもよい。
また、中間期間MMのパルス信号104について、そのパルス周期fが設定されている場合には、最初期間MFのパルス信号104のパルス周期fが、中間期間MMのパルス信号104のパルス周期fよりも大きな値に変更されてもよい。その際、最初期間MFのパルス信号104のパルス周期fは、その最初期間MFの描画期間Mに先行する非描画期間Jにおける、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが長くなるほど、より一層に大きな値に変更されてもよい。
このような変更は、最初期間MFの開始時においてオーバーシュートを生じさせないために行うのであれば、少なくとも、上記第2モード処理S56又は上記第4モード処理S62の対象となった非描画期間Jに後続する、描画期間Mに対して行われる。これに対して、最初期間MFの開始時においてオーバーシュートが生じる可能性を一掃するために行うのであれば、非描画期間Jが上記第2モード処理S56又は上記第4モード処理S62の対象となったか否かに関係なく、全ての描画期間Mに対して行われる。
第2変換処理S38では、非描画期間Jに先行する描画期間Mにおける、可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量について、最後期間MLの時の方が中間期間MMの時の方よりも小さくなるように、最後期間MLのパルス信号104のデューティ比Dが変更される。
具体的には、中間期間MMのパルス信号104について、そのデューティ比Dが「1」に維持されることによって、中間期間MMにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、描画期間Mにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量の初期値と同一にされる場合、最後期間MLのパルス信号104について、そのデューティ比Dが「1」よりも小さな値に変更される。これにより、最後期間MLにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、描画期間Mにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量の初期値よりも小さくされる。
尚、第2変換処理S38は、省略されてもよい。
記憶処理S40では、上記決定処理S32で設定された非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fや、上記第1変換処理S36又は上記第2変換処理S38で変更された描画期間Mのパルス信号104のデューティ比D又はパルス周期fが、上記可視レーザ駆動情報の一部としてRAM42に記憶される。その後、本制御プログラムは、図7のS20に進む。
図7のS20では、半導体レーザドライバ38に第2信号102が入力されたかが判定される。第2信号102が入力されていない場合(S20:NO)、この判定が繰り返される。これに対して、第2信号102が入力された場合(S20:YES)、残像処理S22が行われる。
残像処理S22では、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Qがガルバノスキャナ18で照射及び走査されることによって、加工対象物7上において、オブジェクトOが可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出される。そのために、上記モータ駆動情報が、ガルバノドライバ36に出力される。また、上記可視レーザ駆動情報が、半導体レーザドライバ38に出力される。半導体レーザドライバ38は、上記可視レーザ駆動情報で示されたパルス信号104、つまり、第1非描画期間J1、第1描画期間M1、第2非描画期間J2、第2描画期間M2、及び第3非描画期間J3の各パルス信号104を、その記載順で連続させながら、可視半導体レーザ28に送信する。これにより、可視レーザ光源15では、半導体レーザドライバ38に第2信号102が入力されると、非描画期間J及び描画期間Mにおける可視レーザ光Qの出射制御が行われる。
尚、半導体レーザドライバ38は、各パルス信号104を、その記載順で連続させながら、可視半導体レーザ28に送信することを、例えば、第2信号102に含まれる情報に基づいて、所定回数又は無限に繰り返してもよい。無限の繰り返しは、入力操作部55におけるユーザの操作に基づいて半導体レーザドライバ38に入力される指令信号によって終了し、あるいはタイムアウトを知らせる指令信号によって終了する。尚、タイムアウトの時間は、ROM43に記憶されている。
その後は、上記待機処理S12が再び行われる。これにより、第2待機期間I2では、可視レーザ光Qが可視半導体レーザ28から所定間隔で出射され、その所定間隔で出射される可視レーザ光Qが、ガルバノスキャナ18によって、加工対象物7上の待機位置iに照射される。更に、第1信号100がオフ状態になると(S14:YES)、本制御プログラムが終了する。
[4.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザ加工装置1では、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間t、つまり非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離に応じて、可視半導体レーザ28から可視レーザ光Qを出射させるための、非描画期間Jのパルス信号104が決定される(S18)。その決定において、非描画期間Jのパルス信号104のパルス周期fが、描画期間Mのパルス信号104のパルス周期fよりも大きくされることによって、あるいは、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dが、描画期間Mのパルス信号104のデューティ比Dよりも小さくされることによって、非描画期間Jの加工対象物7上における可視レーザ光Qの照射時間が少なくなると、可視レーザ光Qで加工対象物7上に描画されるオブジェクトOの視認性が向上する。
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、待機期間Iのパルス信号104のパルス周期f(所定パルス周期)が、非描画期間Jのパルス信号104のパルス周期fよりも小さいことによって、あるいは、待機期間Iのパルス信号104のデューティ比D(所定デューティ比)が、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dよりも大きいことによって、待機期間Iにおける可視レーザ光Qの照射時間が、非描画期間Jにおける可視レーザ光Qの照射時間よりも大きくなると、待機期間Iにおける半導体レーザドライバ38の放電量が多くなる。これにより、待機期間Iの終了時における半導体レーザドライバ38の蓄電量が抑えられる。また、待機期間Iのパルス信号104のデューティ比D(所定デューティ比)が、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dと異なるため、レーザ加工装置1のユーザは、可視レーザ光Qの照射状態を加工対象物7上で確認することによって、待機期間Iであるのか非描画期間Jであるのかを容易に判断できる。
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、非描画期間Jに後続する描画期間Mにおいて、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比Dが、中間期間MMのパルス信号104のデューティ比Dよりも小さくされることによって、あるいは、最初期間MFのパルス信号104のパルス周期fが、中間期間MMのパルス信号104のパルス周期fよりも大きくされることによって、最初期間MFにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、中間期間MMにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量よりも小さくされる(S36)。
これにより、本実施の形態のレーザ加工装置1は、最初期間MFの開始時においてオーバーシュートをなくすことによって、非描画期間Jに後続する描画期間Mの開始時において、つまり、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で加工対象物7上に映し出されるオブジェクトOの各線分70,74の始点(位置o1、位置o4)において、照射される可視レーザ光Qの光量が一瞬増大することを防止する。これにより、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出されるオブジェクトOの各線分70,74における光量が安定するので、可視レーザ光Qで加工対象物7上に描画されるオブジェクトOの視認性が向上する。
その際、描画期間Mに先行する非描画期間Jにおいて、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが長くなるほど、つまり可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離が長くなるほど、可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーEの最大量が増える傾向にあるので、最初期間MFのパルス信号104のデューティ比Dが、より一層小さくされ、あるいは、最初期間MFのパルス信号104のパルス周期fが、より一層大きくされると、描画期間Mにおける最初期間MFの開始時においてオーバーシュートを適切になくすことができる。これにより、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出されるオブジェクトOの各線分70,74における光量が安定するので、可視レーザ光Qで加工対象物7上に描画されるオブジェクトOの視認性が向上する。
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、非描画期間Jに先行する描画期間Mにおいて、最後期間MLのパルス信号104のデューティ比Dが、中間期間MMのパルス信号104のデューティ比Dよりも小さくされることによって、最後期間MLにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量が、中間期間MMにおける可視レーザ光Qの時間当たりのエネルギー量よりも小さくされる(S38)。
これにより、本実施の形態のレーザ加工装置1は、非描画期間Jに先行する描画期間Mの終了時において、照射される可視レーザ光Qの光量を少なくすることによって、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で加工対象物7上に映し出されるオブジェクトOの各線分72,74の終点(位置o3、位置o2)において、照射される可視レーザ光Qが尾を引くように見える現象を防止する。そのため、可視レーザ光Qで加工対象物7上に描画されるオブジェクトOの視認性が向上する。
ちなみに、本実施形態において、レーザコントローラ6及び制御部51は、「制御部」の一例である。ガルバノスキャナ18は、「走査部」の一例である。可視半導体レーザ28は、「可視レーザ発振器」の一例である。RAM42は、「記憶部」の一例である。パルス信号104は、「描画期間パルス信号」、「非描画期間パルス信号」、又は「待機期間パルス信号」の一例である。更に、パルス信号104は、「第1パルス信号」、「第2パルス信号」、「第3パルス信号」、又は「第4パルス信号」の一例である。
各矢印j1,j2,j3の長さは、「可視レーザ光の走査位置の移動距離」の一例である。最初期間MFは、「第1期間」の一例である。中間期間MMは、「第2期間」及び「第4期間」の一例である。最後期間MLは、「第3期間」の一例である。オブジェクトOは、「加工内容」の一例である。待機処理S12は、「パルス信号制御処理」の一例である。残像処理S22は、「パルス信号制御処理」の一例である。
[5.その他]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態のレーザ加工装置1は、非描画期間Jにおいて、可視レーザ光Qの走査位置5の移動時間tが所定時間を超える場合、つまり可視レーザ光Qの走査位置5の移動距離が所定距離を超える場合、可視レーザ光源15内に保持される励起エネルギーEの最大量が増える傾向にあるので、非描画期間Jのパルス信号104のデューティ比Dを、大きくするために、待機時間Iのパルス信号104の所定デューティ比に変更してもよいし、あるいは、非描画期間Jのパルス信号104のパルス周期fを、小さくするために、待機時間Iのパルス信号104の所定パルス周期に変更してもよい。これにより、非描画期間Jに後続する描画期間Mの開始時において、オーバーシュートの発生を抑制することができ、可視レーザ光Qの軌跡(時間残像)で映し出されるオブジェクトOの各線分70,74における光量が安定する。よって、可視レーザ光Qで加工対象物7上に描画されるオブジェクトOの視認性が向上する。尚、上記所定距離及び上記所定時間は、予め設定されており、ROM43に記憶されている。