JP2021157890A - 高分子電解質膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄い電解質膜であっても膜中の微小欠陥位置を特定しやすく、かつ、寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜の提供。【解決手段】プロトン伝導性ポリマーと、長尺方向の長さが50m以上、短尺方向の長さが270mm以上のナノファイバーシートと、が複合化したシート形状を有する高分子電解質膜であって、曇り度が83%以上、平行透過率が10%以下、短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であることを特徴とする高分子電解質膜。【選択図】図1

Description

本発明は、高分子電解質膜に関する。
燃料電池は、電池内で、水素、又はメタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを、直接電気エネルギーに変換して取り出すものである。したがって、燃料電池は、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、その他の燃料電池と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源、家庭用コージェネレーションシステム及び携帯用発電機等として期待されている。
このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極が電解質膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいう電解質膜は、高分子鎖中にスルホン酸基又はカルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する材料である。
燃料電池自動車用途での高分子電解質膜は、加速や減速時のアクセルワークにより、80℃程度に加温された水分量の大きく変化する環境で用いられる。この際、高分子電解質膜は、水分の膨潤と乾燥収縮による寸法変化が非常に大きく、耐久性・信頼性の点で改善の余地がある。そこで、その寸法変化を小さくするために、電解質中に補強材を埋め込む手法が種々提案されている。
近年、この燃料電池自動車の用途では、120℃近辺のより厳しい燃料電池駆動環境における化学耐久性と物理耐久性、及び発電性能が求められている。この高温環境での運転による効果として、ラジエータの容量を半減でき小型車への搭載が可能となること、燃料ガス中のCOによる触媒被毒の低減、及び熱利用の拡大が期待できる。また、燃料電池として用いる際に、電解質膜は、それ自体の膜抵抗を低くする必要がある。そのためには、電解質膜の厚さはできるだけ薄い方が望ましい。また、燃料電池自動車の普及の弊害の一因となっているコスト面からも薄膜化や生産性の向上は、とても望ましく、発電性能の向上にもなる。しかしながら、電解質の補強材に適した非PTFE系の多孔体は、発電時の抵抗低減するために、低目付、高空隙率とすると、低強度で極めて扱いにくくなり大面積で均質な複合電解質膜を得る事が難しい。さらに電解質膜の厚さを過剰に薄くすると、製膜時のピンホールや電極成形時に膜が破れてしまう物理強度低下の問題、及び電極間の短絡が発生しやすいという問題がある。他にも電解質の薄膜化に伴い、従来に増して、膜中の微小なゲルや異物、クラックなどの対策が重要になっている。それに伴い、電解質膜の生産段階で欠陥を把握し、製品として流通させないことも重要である。
従来の燃料電池の駆動環境温度である80℃と異なり、120℃の厳しい環境においては、極めて大きな水の膨潤と乾燥収縮の繰り返しストレスが電解質膜に加わる。よって、そのような環境に用いられる電解質膜は、加湿膨潤乾燥と熱変形ストレスの両方の耐久性を向上する必要がある。特に、電解質膜は、加熱下で何らかの外部応力が加わると応力歪を蓄積し、そのストレスにより永久変形してしまい、薄膜化の進行と高分子の劣化が促進される。これらを抑制するには、電解質膜自身の熱変形の耐性を向上することの他、高いガラス転移温度を有する補強材を含有することが有効である。しかしながら、補強材の含有率を増やすと、プロトン伝導性を妨げ膜抵抗が大きくなる弊害を引き起こす。よって、ガラス転移温度の高い補強材に頼るのだけではなく、電解質膜自身の耐熱性も向上させ、電解質膜の耐久性と高いプロトン伝導性とを両立することが求められている。
例えば、特許文献1には、ナノファイバーシートによって強化された第1のプロトン伝導性ポリマーを有する電解質膜を含み、ナノファイバーシートは、ポリマー及びポリマー配合物から選択される繊維材料を含むナノファイバーから作られ、繊維材料は、高フッ化ポリマー、過フッ化ポリマー、炭化水素ポリマー、及びそれらの配合物並びに組み合わせを含み得ることが記載されている。特許文献1に開示されている実施の形態では、ナノファイバーシートが140℃でカレンダー処理されている。これにより、ナノファイバーシートの強度が向上する効果を奏する反面、部分的にナノファイバー繊維同士が重なる結着部を形成し空隙率が減る領域が生じる。このような部位がナノファイバーシート中に点在すると電解質を含む溶液と接触させて、溶媒を蒸発させて乾燥する際にナノファイバーシートの撓みシワを生じ、ナノファイバーシートへ張力を加えても解消が困難となる。またナノファイバー繊維同士が重なり決着した部位は、溶媒を気化させながら電解質をナノファイバー繊維間の空隙に充填する際に、ナノファイバーが膜厚方向へ追従変形することが出来ずにボイド不良を生じるなど、均質な耐久性を有する大面積の燃料電池用の電解質膜に適さない。
特許文献2には、多孔質材料の進行方向に張力をかけ高分子電解質と複合化する方法が記載されているが、多孔質材料が二軸配向多孔質ポリプロピレンフィルムで、ナノファイバーと構造が異なるため、基材の幅より多孔材料の幅が広いなど設計思想が全く別なものである。
ナノファイバーと電解質膜の複合化の先行技術としては、特許文献1の他に、特許文献3〜7もある。しかし、いずれの先行技術も実験室レベルの小サイズのナノファイバーシートを複合化したサンプル作成に留まり、ナノファイバーシートを複合化した電解質膜で、均一な耐久性を有し連続する大面積の高分子電解質膜の製作に至っていない。
特許第5798186号公報 特開2011−222499号公報 国際公開第2017/141878号 特許第5830654号公報 特表2014−525115号公報 特表2017−532716号公報 特開2016−58152号公報
本発明は、薄い電解質膜であっても膜中の微小欠陥位置を特定しやすく、かつ、寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記目的を達成することのできる大面積の高分子電解質膜を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
プロトン伝導性ポリマーと、長尺方向の長さが50m以上、短尺方向の長さが270mm以上のナノファイバーシートと、が複合化したシート形状を有する高分子電解質膜であって、
曇り度が83%以上、平行透過率が10%以下、短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
[2]
前記高分子電解質膜の断面視において、隣接したナノファイバー間の最近接距離が0μm〜3μmである、[1]に記載の高分子電解質膜。
[3]
前記ナノファイバーシートを構成するナノファイバーの平均繊維径が200nm以上500nm以下であり、前記ナノファイバーシートの屈折率が1.5以上である、[1]又は[2]に記載の高分子電解質膜。
[4]
前記ナノファイバーシートが、ポリエーテルスルホンを少なくとも含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質膜。
本発明によれば、薄い電解質膜において、膜中の微小欠陥位置特定の精度を向上させ、かつ、寸法が均一に変化する大面積のスタックセルサイズにも適用できる高分子電解質膜を提供できる。
高分子電解質膜(第1末端及び第2末端がプロトン伝導性ポリマーと複合化)の断面の模式図である。 高分子電解質膜(第1末端又は第2末端がプロトン伝導性ポリマーと複合化)の断面の模式図である。 本実施形態の高分子電解質膜の製造装置の一例である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態の一態様は、長尺方向の長さが50m以上、短尺方向の長さが270mm以上のナノファイバーシートと、プロトン伝導性ポリマーとが複合化したシート形状を有する高分子電解質膜であって、曇り度が85%以上、平行透過率が10%以下、短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であることを特徴とする高分子電解質膜に関する。
<ナノファイバーシート>
本実施形態におけるナノファイバーシートは、電解質膜を強化する補強材として機能するものである。
本実施形態のナノファイバーシートは空隙率(%)が75%以上88%以下であると好ましく、79%以上84%以下であるとより好ましい。また、本実施形態のナノファイバーシートは、プロトン伝導性ポリマー(フッ素系高分子電解質)との複合化前に比べて、すなわち、フッ素系高分子電解質と複合化される際に、膜厚が40%以上75%以下の範囲で収縮したものであると好ましい。さらに、本実施形態の電解質膜において、その厚さに対する、ナノファイバーシートの厚さの比率が25%以上60%未満であると好ましい。これらにより、電解質は埋め込み性、すなわちナノファイバー繊維間の空隙へのフッ素系高分子電解質の充填性に更に優れ、膜抵抗がより小さく、かつ、更に高いプロトン伝導性と一層優れた面方向の寸法変化抑制とを実現できる。空隙率が75%以上となると、ナノファイバーシートへのフッ素系高分子電解質の埋め込み不良をより抑制できる。一方、空隙率が88%以下、より好ましく86%以下であることにより、ナノファイバーシートの自立性が向上するため、取扱いが簡便となり、ナノファイバーシートによる補強作用も更に十分になる傾向となる。空隙率は下記式から導き出される。
P=[1−Mn/(t×SG)]×100
ここで、Pはナノファイバーシートの空隙率(%)、Mnはナノファイバーシートの目付(g/m2)、tはナノファイバーシートの厚さ(μm)、SGはナノファイバーシートを構成する繊維の比重(g/cm3)をそれぞれ表す。
本実施形態におけるナノファイバーシートの目付は、1.5g/m2以上4.0g/m2以下であると好ましく、2.0g/m2以上3.5g/m2以下であるとより好ましく、2.5g/m2以上3.1g/m2以下であると更に好ましい。目付が1.5g/m2以上であると、膜の自立性があり、複合化の際に破膜することなく、取扱いが容易でプロセスが安定化する。さらに、単位面積あたりの繊維本数も十分であるので、平面方向における電解質膜の膨潤収縮が均一に抑制される。一方、目付が4.0g/m2以下であると、ポリマーの充填性とプロトン伝導性に優れ、電解質膜の膨潤収縮を抑制することが可能となる。
ナノファイバーシートの目付は、採取可能な任意の最も面積の広い面の面積と質量とを測定し、1m2当たりの質量に換算した値である。ナノファイバーシートの厚さは下記のようにして導き出す。すなわち、膜厚計(例えば、株式会社ミツトヨ製のABSデジマチックインジケータID−F125(製品名))を用いて、同じナノファーバーシート内における任意の5点で厚さを計測し、その相加平均をナノファイバーシートの厚さとする。
本実施形態における複合化前のナノファイバーシートは、長尺方向に8%変形させるために必要な荷重が0.2N/10mm以上であることが好ましい。以下、長尺方向に8%変形した際の荷重を、「8%変形荷重」ともいう。8%変形荷重が0.2N以上/10mmであることによって、ナノファイバーシートへ張力を加えた際に、破断することなく、シワのない均質な特性を有する大面積の高分子電解質を得る事ができる。8%変形荷重は、より好ましくは0.3N/10mmであり、更に好ましくは0.4N/10mmである。8%変形荷重の上限は特に限定されないが、例えば、0.6N/10mm、0.8N/10mm等を挙げることができる。
8%変形荷重は次の方法で決定することができる。ナノファイバーシートの短尺方向幅に対し、ほぼ等間隔となる位置で5点サンプリングする。サンプルは、長尺方向(MD)70mm、短尺方向(TD)10mmの大きさに切り出す。切り出した5枚の試料について、JIS K−7127に準拠してMD方向の引張試験を行い、得られた5点の8%伸度時の算術平均荷重値を8%変形荷重とする。測定は50Nロードセルを備える引っ張り試験機(エー・アンド・デイ社製、製品名「テンシロン万能材料試験機 RTG−1210」)を用いる。チャック間距離は50mm、クロスヘッド速度300mm/minとして、24℃、相対湿度45%の環境下で行う。
本実施形態における複合化前のナノファイバーシートを構成するナノファイバーの平均繊維径は200nm〜500nmである事が好ましい。これにより、薄膜(例えば厚さ25μm以下)の電解質膜であっても、フッ素系高分子電解質の埋め込み性がより良好であり、電解質膜の平面方向における寸法変化をより有効かつ均一に抑制することができる。ナノファイバーシートにおける繊維の繊維径は、同等の目付量で比較すると、細径の方がナノファイバー繊維で囲まれる孔径を小さくすることが可能となる。それにより、高分子電解質膜中に隣接したナノファイバー間の最近接距離を短くすることができ、燃料電池動作環境で電解質膜の平面方向で均一な寸法変化とすることができる。繊維径が200nm未満になると、生産性が低下しコストアップや加工難易度も高まり、ナノファイバーシート繊維の均一性(繊維径のばらつき、目付、空隙率)の確保が困難になる傾向にある。一方、繊維径が500nmを超えると、プロトン伝導性ポリマーと複合化する際に、繊維同士の重なり合う部位で膜厚収縮が不十分となる傾向にあり、電解質であるプロトン伝導性ポリマーの埋め込み性が低下し、ボイド欠陥の発生が生じやすく、高分子電解質膜中に隣接したナノファイバー間の最近接距離が長くなることで、燃料電池動作環境で電解質膜の平面方向の寸法変化の均一性が難しくなる。平均繊維径は、より好ましくは300nm〜500nmであり、更に好ましくは350nm〜450nmである。平均繊維径は実施例に記載の方法に従って決定することができる。
本実施形態における複合化前のナノファイバーシートは、短尺方向のシート幅と長尺方向の長さ100mmの範囲において、直径1mm以上2mm未満のピンホール欠陥が3個以下であることが好ましく、0個であるとより好ましい。本明細書において「ピンポール欠陥」とは、ナノファイバーシートの厚み方向で繊維が存在しない領域や一部の繊維が結着溶解し薄膜を張ったような場所も含む。このピンホール欠陥は、正常部に対し透過率が高く、ピンホールの外周と明暗差がある。ピンホール欠陥部を含む部位に張力を加えると、ピンホール欠陥を起点に破膜しやすい傾向がある。ピンホール欠陥を有しないナノファイバーシートを使用することによって、ナノファイバーシートを破断することなく連続的に複合化することが可能となり、燃料電池の動作環境において膜の寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜となる。ピンホール欠陥が不定形の場合の直径は、欠陥範囲の一番長い範囲を直径と定める。ピンホール欠陥が少ないナノファイバーシートは、例えば1.5g/m2の低目付であってもプロトン伝導性ポリマー溶液に接触させた際にナノファイバーシートが破断することなく、連続的に複合化することができ、燃料電池の動作環境において、均一な寸法変化抑制能を有する大面積の高分子電解質膜となる。ピンホール欠陥が2mm以上の場合は、ナノファイバーシートをプロトン伝導性ポリマー溶液に接触させた際にナノファイバーシートが破断する確率が増大する。ピンホール欠陥の検出は、投光器からナノファイバーシートへ検査光を照射し、シートを透過した光を受光器で受け、電気信号に変換する。この変換された電気信号は、複数の画像処理フィルターなど専用の検出回路・判定回路で信号処理されピンホール欠陥として検出する方法が好適である。また、1mm以上のピンホール欠陥は、形状の判断までは難しいが、ナノファイバーシートの背面から照明を照らし、ナノファイバーシート越しに目視で観察することでも、明暗差によりピンホール欠陥の分布と頻度の概要把握が可能である。
本実施形態における複合化前のナノファイバーシートは、長尺方向において、50m以上の長さを有することが好ましい。なお、長尺方向は、本実施形態の高分子電解質膜を製造する際に繰り出されたナノファイバーシートが流れる方向(MD)に相当する。長尺方向の長さが50mm以上であることによって、シワが無く、燃料電池動作環境において寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜を低コストで提供することが可能となり、大型の燃料電池セルスタックにも搭載できる。長尺方向の長さは、より好ましくは300m以上であり、更に好ましくは800m以上である。
本実施形態における複合化前のナノファイバーシートは、短尺方向において、270mm以上の長さを有することが好ましい。なお、短尺方向は、MDに直行する方向(TD)に相当する。短尺方向の長さが270mm以上であることによって、プロトン伝導性ポリマー溶液とナノファイバーシートを複合化する際に、ナノファイバーシートの繰り出し時の張力を低張力で一定に保つ事ができ、ナノファイバーシート面内の応力を分散でき、シワが無く寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜を低コストで提供することが出来る。短尺方向の長さは、より好ましくは270mm〜1000mmであり、更に好ましくは600mm〜1000mmである。
本実施形態におけるナノファイバーシートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン)、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート及び全芳香族ポリエステル樹脂)、アクリル系樹脂(例えばポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸メチル)、ポリアミド系樹脂(例えば6ナイロン、66ナイロン及び芳香族ポリアミド系樹脂)、ポリエーテル系樹脂(例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル及び芳香族ポリエーテルケトン)、ウレタン系樹脂、塩素系樹脂(例えばポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン)、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフルオライド(PVDF))、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂(PI)、ポリエーテルイミド系樹脂、芳香族ポリエーテルアミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えばポリスルホン及びポリエーテルスルホン(PES))、ポリアゾール系樹脂(例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール及びポリピロール)、セルロース系樹脂、並びにポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含む。
それらの中でも、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群より選ばれる1種以上を含むナノファイバーシートは、ナノファイバー化し易く、耐薬品性及び耐熱性に優れ、低目付でも高強度で好ましい。同様の観点から、特に、PES、PBI及びPIからなる群より選ばれる1種以上を含むナノファイバーシートがより好ましく、屈折率を1.5以上のナノファイバーに構成できる。かかるナノファイバーシートは、耐薬品性及び耐熱性に更に優れ、プロトン伝導性ポリマーと複合化する際に一層安定である。
このようなナノファイバーシートは、例えば、静電紡糸法(エレクトロスピニング法)、メルトブロー法、及びスパンボンド法などにより製造することが可能である。これらの中でも、静電紡糸法は、平均繊維径が1μm以下のナノファイバーシートを調製することができ、繊維径の均一性が高く、実質的に連続した繊維からなり、70%を超える空隙率の大きな1000mmを超える広幅なナノファイバーを連続的に生産することも可能であるため、好適に用いられる。ナノファイバーシートを製造する量産用の装置としては、例えば、エルマルコ株式会社製の「Nanospider」(商品名)のNS8S1600U(型式名、ワイヤー電極方式)、株式会社メック社のEDEN(NF−1001S)(製品名、ノズル吐出電極方式)、株式会社フューエンス社のエスプレイヤー量産機(ノズル吐出電極方式)を好適に用いることができる。静電紡糸法の適用が難しいPPSのナノファイバーは、例えば、特開2013−79486号公報を参考にして加工することが可能である。
静電紡糸法によるナノファイバーシートの繊維は、上記装置の印加電圧、電極間距離、温度、湿度、紡糸溶液の溶媒種、及び紡糸溶液濃度など複数条件の組み合わせにより、所望のナノファイバー繊維径に加工することができる。本実施形態のナノファイバーシートは、複合化の前に熱処理を施されることが好ましい。その熱処理方法としては、例えば、赤外線ヒータやオーブンを用いた熱風乾燥による加熱が挙げられる。この熱処理方法によると、ナノファイバーシートの高空隙率を保持したまま、部分的に適度に繊維同士が接触する点において融着させることができるので、不織布表面の毛羽立ちの更なる抑制とシート強度のいっそうの向上を可能とする。
ナノファイバーシートの屈折率は、1.5以上であることが好ましく、1.5〜2.0であることがより好ましく、1.5〜1.8であることがさらに好ましく、1.6〜1.7であることが特に好ましい。ナノファイバーシートの屈折率を前記範囲とすることによって、膜中の微小欠陥位置をより特定しやすくできる。ナノファイバーシートの屈折率は、ナノファイバーシートの材料を変更することによって調節することができる。また、ナノファイバーを形成する過程で、ナノファイバーに分子配向が掛かるように、例えば、圧縮空気のブロー環境下の気流中での形成や、捕集の際にコレクター基材の速度を調整してナノファイバー繊維が切れない程度に引き伸ばす事でも屈折率を微調整できる。
ナノファイバーシートの屈折率は、次の方法で測定することができる。静電紡糸法(エレクトロスピニング法)用に準備したポリマー溶液をガラスや、フィルム基材などに数マイクロから数十マイクロメーター厚みにキャスト成膜する。このキャストフィルムの溶媒を乾燥除去した後、種々基材から剥がし、そのフィルムの反射率から解析する。例えば、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE3000は、波長分散を含む屈折率と減衰係数の算出に好適に用いることができる。
<プロトン伝導性ポリマー>
本実施形態におけるプロトン伝導性ポリマーは高分子電解質である。プロトン伝導性ポリマーは特に限定されないが、例えば、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物、及び、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物にイオン交換基を導入したものが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、化学的安定性に一層優れる観点から、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が好適で、550nm波長における屈折率が1.35〜1.45程度である。
プロトン伝導性ポリマーの屈折率は、次の方法で測定することができる。プロトン伝導性ポリマー溶液をガラスや、フィルム基材などに数マイクロから数十マイクロメーター厚みにキャスト成膜する。このキャストフィルムの溶媒を乾燥除去し、140℃以上にアニール処理した後、種々基材から剥がし、そのフィルムの反射率から解析する。例えば、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE3000は、波長分散を含む屈折率と減衰係数の算出に好適に用いることができる。
プロトン伝導性ポリマーのイオン交換容量は、0.5ミリ当量/g以上3.0ミリ当量/g以下であると好ましく、0.65ミリ当量/g以上2.0ミリ当量/g以下であるとより好ましく、0.8ミリ当量/g以上1.5ミリ当量/g以下であるとさらに好ましい。イオン交換当量が3.0ミリ当量/g以下であることにより、電解質膜として利用した際に、燃料電池運転中の高温高加湿下における電解質膜の膨潤がより低減される傾向にある。このように膨潤が低減されることにより、電解質膜の強度の低下や、しわが発生して電極から剥離したりするなどの問題、さらには、ガス遮断性が低下する問題を低減できる傾向にある。また、イオン交換容量が0.5ミリ当量/g以上であることにより、得られた電解質膜を備えた燃料電池の発電能力がより向上する傾向にある。
イオン交換容量は、以下の方法により求めることができる。すなわち、イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている電解質膜(シート面積でおよそ2cm2以上20cm2以下)を、25℃の飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜を、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンである電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式(C)により当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22 (C)
さらに、得られたEWの値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出する。
イオン交換基としては、特に限定されないが、例えばスルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボン酸基及びリン酸基が挙げられ、中でもスルホン酸基であることが好ましい。イオン交換基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、及びポリカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、化学的安定性に一層優れるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂、パーフルオロカーボンスルホンイミド樹脂、パーフルオロカーボンスルホンアミド樹脂、及びパーフルオロカーボンリン酸樹脂、並びにこれら樹脂のアミン塩及び金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
パーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、より具体的には、下記式[1]で表される重合体が挙げられる。
−[CF2CX12a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b−Oc−(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X4)]g− [1]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X4はCOOZ、SO3Z、PO32又はPO3HZを示す。ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH4、NH33、NH234、NHR345、又はNR3456)を示す。また、R3、R4、R5及びR6は、各々独立してアルキル基又はアレーン基を示す。
これらの中でも、下記式[2]又は式[3]で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂若しくはその金属塩が好ましい。
−[CF2CF2a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2c−SO3X)]d− [2]
ここで、式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1を満たす。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
−[CF2CF2e−[CF2−CF(−O−(CF2f−SO3Y)]g− [3]
ここで、式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1を満たす。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
上記パーフルオロカーボン高分子化合物の中でも、上記式[3]で表されるパーフルオロカーボン高分子化合物は、耐熱性に更に優れ、イオン交換基導入量を一層増やすことができるので好ましい。
本実施形態において用いられ得るイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式[4]で表される前駆体ポリマーを重合した後、アルカリ加水分解、酸処理等を行って製造することができる。
−[CF2CX12a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b−Oc−(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X5)]g− [4]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X5はCOOR7、COR8又はSO28を示す。ここで、R7は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R8はハロゲン元素を示す。
上記前駆体ポリマーは、特に限定されないが、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造することができる。
ここで、フッ化オレフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式[5]で表される化合物が挙げられる。
CF2=CFZ [5]
ここで、式中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。
また、フッ化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
CF2=CFO(CF2z−SO2F,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2z−SO2F,
CF2=CF(CF2z−SO2F,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2z−SO2F,
CF2=CFO(CF2z−CO2R,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2z−CO2R,
CF2=CF(CF2z−CO2R,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF22−CO2
ここで、式中、Zは1〜8の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。
<高分子電解質膜>
本実施形態の高分子電解質膜は、ナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーとが複合化したシート形状を有している。複合化シートは、ナノファイバーシートの空隙部にプロトン伝導性ポリマーが入り込むことによって形成されている。
本実施形態の高分子電解質膜では、ナノファイバーシートが、短尺方向において、第1末端及び第2末端を有しており、第1末端及び第2末端の少なくとも一方がプロトン伝導性ポリマーと複合化していることが好ましい。なお、ナノファイバーシートの末端がプロトン伝導性ポリマーと複合化しているとは、ナノファイバーシートの末端の空隙部にまでプロトン伝導性ポリマーが入り込んでいることを意味する。第1末端及び第2末端の少なくとも一方がプロトン伝導性ポリマーと複合化していることによって、シワ欠陥が無く、寸法が均一に変化する高分子電解質膜を得る事が可能となる。ナファイバーシートは、適度な熱処理により高空隙率を保ち繊維間がわずかに結着している。大半の繊維は繊維同士が絡みながら接触し、それが大きな摩擦抵抗となりナノファイバーシートの自立性を実現している。このナノファイバーシートは、プロトン伝導性ポリマー溶液と接触した際に、溶液中の溶媒がナノファイバー繊維表面を濡らし繊維間の摩擦を大きく低減させるので、あたかも膨潤したかのようにシート面積が拡大する。この時、第1末端及び第2末端の両端がプロトン伝導性ポリマーと複合化しない場合は、高分子電解質中に長尺方向(MD)へシワを発生させる。シワとは、ナノファイバーシートが折れや湾曲した形態でプロトン伝導性ポリマーと複合化されて、正常部の膜厚に対し4μm以上の厚み差があり、長尺方向へ100mm以上の長さで延在する欠陥をいう。このシワ欠陥は、大きく2種に分類することができる。1つは、ナノファイバーが大きな湾曲または折れて、長尺方向へ100mm以上の長さの「折れシワ」欠陥。2つ目は、例えば「折れシワ」欠陥ほどではないが、高分子電解質膜中で短尺方向に2mm〜6mmの間隔の周期的に湾曲を生じ、電解質厚み層が不均一になるシワがある。これを「等ピッチシワ」という。シワ欠陥は、第1末端及び第2末端のいずれか一方のみをプロトン伝導性ポリマーと複合化(例えば図2参照)し、ナノファイバーシートの長尺方向へ適切な張力をかけ、ナノファイバーシートの短尺方向長さを−3%から0.5%の変化とすることで抑制できる。ナノファイバーシートの第1末端及び第2末端は、両方がプロトン伝導性ポリマーと複合化していることによりナノファイバーシート面に、安定した張力バランス保つことができ、ナノファイバーシートが露出していないので、取り扱い中にナノファイバーシートが破断してしまうこともなく、均質な大面積の高分子電解質膜を得る上でより好ましい(例えば図1参照)。
本実施形態の高分子電解質膜は、長尺方向において、50m以上の長さを有することが好ましく、300m以上の長さを有することがより好ましく、800m以上の長さを有することが更に好ましい。
本実施形態の高分子電解質膜に含まれるナノファイバーシートは、短尺方向において、270mm以上の長さを有することが好ましく、270mm〜1000mmの長さを有することがより好ましく、600mm〜1000mmの長さを有することが更に好ましい。
本実施形態の高分子電解質膜は、曇り度(Haze)が83%以上であり、平行透過率が10%以下であり、短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であることが好ましい。曇り度が83から99%であると薄い電解質膜であっても色差の違いから膜中の微小欠陥位置を特定する事が可能となり、90%を超えると膜厚が10μm未満と薄い電解質膜であっても容易に膜中の微小欠陥を特定する事が可能となる。平行透過率が10%以下であると微小な明欠陥の特定が容易となり、7%以下がさらに好ましい。短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であると寸法が均一に変化する大面積の高分子電解質膜を得る事が可能となり、8%以下がさらに好ましく、6%以下がより好ましい。
高分子電解質膜の曇り度は、ナノファイバーの平均繊維径を長くすることによって、大きくすることができる。高分子電解質膜の平行透過率は、ナノファイバーの平均繊維径を短くすることによって、大きくすることができ、また、ナノファイバーシートの材料を変更することによって調節することができる。高分子電解質膜の全光線透過率は、ナノファイバーシートの材料を変更することによって調節することができる。
本実施形態の高分子電解質膜に含まれるナノファイバーシートの短尺方向の長さは、プロトン伝導性ポリマーと複合化する前のナノファイバーシートの短尺方向の長さを基準として、−3.0%〜0.5%変化していることが好ましい。以下、複合化前の短尺方向の長さを基準とした、短尺方向の長さの変化率を「複合化変化率」ともいう。複合化変化率が−3.0%以上であることによって、プロトン伝導性ポリマー溶液とナノファイバーシートを複合化する際に、等ピッチシワ欠陥がなく、均質な大面積の高分子電解質膜を得ることが出来る。複合化変化率が0.5%以下であることによって、折れシワ欠陥が無く、均質な大面積の高分子電解質膜を得ることが出来る。複合化変化率は、より好ましくは−3.0%〜0.0%であり、更に好ましくは−2.5%〜0.0%である。複合化変化率は、次の方法に従って決定することができる。複合化前のナノファイバーシートの短尺方向の長さAを、JIS1級規格の1000mmの鋼尺で測定する。複合化後のナノファイバーシートの短尺方向の長さBを同様に測定し、B/A×100−100にて、複合化変化率を算出する。
本実施形態の高分子電解質膜に含まれるナノファイバーシートにおいて、隣接したナノファイバー間の最近接距離は、0μm〜3μmであることが好ましい。本明細書において「隣接したナノファイバー間の最近接距離」は次の方法で測定することができる。高分子電解質膜の膜厚方向の3000倍から5000倍の膜厚方向の断面視SEM像を測定する。断面SEM像のコントラスト差を利用し、任意のナノファイバー繊維に対し、最近接距離に位置する他のナノファイバー繊維との距離を測定する。最近接距離が0μm以上3μm以下であることによって、燃料電池動作環境(例えば、120℃、100%RH)において、シワ欠陥が無く、寸法が均一に変化し、発電性能の均質な大面積の高分子電解質膜を得る事ができる。最近接距離は、より好ましくは0μm〜2μmである。最近接距離は実施例に記載の方法に従って決定することができる。
本実施形態の高分子電解質膜は、120℃及び100%相対湿度(RH)の環境に2時間暴露した際に、短尺方向において均一に変化することが好ましい。具体的には、短尺方向における一方の末端から他方の末端までの間の複数の箇所について、上記環境に暴露する前後の短尺方向の長さを測定し、その長さの変化が最も大きい箇所の変化率から、最も小さい箇所の変化率を引いた差が小さいことが好ましい。一例として、長さの変化が最も大きい箇所において、短尺方向に20mmから22mmに10%変化し、長さの変化が最も小さい箇所において、短尺方向に20mmから21mmに5%変化した場合、その差は5%となる。以下、上記の変化率の差を「短尺方向変化率差」ともいう。短尺方向変化率差は、好ましくは0%〜4%であり、より好ましくは0%〜3%であり、更に好ましくは0%〜2%である。短尺方向変化率差は実施例に記載の方法に従って決定することができる。
<高分子電解質膜の製造方法>
本実施形態の一態様は、高分子電解質膜を連続的に製造する方法であって、基材シートを繰り出す工程と、前記基材シートに第1プロトン伝導性ポリマー溶液を連続的に塗布する塗布工程と、ナノファイバーシートを非鏡面ロールに接触させながら張力をかけて繰り出す工程と、塗布された前記第1プロトン伝導性ポリマー溶液に、前記ナノファイバーシートの第1表面を連続的に接触させて、第1表面処理ナノファイバーシートを得る第1処理工程と、前記第1表面処理ナノファイバーシートを乾燥させる第1乾燥工程と、を含み、前記ナノファイバーシートを繰り出す張力が、前記ナノファイバーの短尺方向の長さが−3.0%〜0.5%変化する張力であり、前記ナノファイバーシートが短尺方向において第1末端及び第2末端を有し、前記第1処理工程において前記第1末端及び前記第2末端の少なくとも一方を前記第1プロトン伝導性ポリマー溶液に接触させる方法である。
前記方法は、前記第1乾燥工程を経た前記第1表面処理ナノファイバーシートの第2表面に、第2プロトン伝導性ポリマー溶液を連続的に接触させて、両表面処理ナノファイバーシートを得る第2処理工程と、前記両表面処理ナノファイバーシートを乾燥させる第2乾燥工程と、を更に含んでいてもよい。
前記方法によりナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーとが複合化したシート形状を得る事ができる。
本実施形態の製造方法において、高分子電解質膜を連続的に50m以上製造することが好ましく、300m以上製造することがより好ましく、800m以上製造することが更に好ましい。
本実施形態の電解質膜は、上述のように製造された後、さらに熱処理を施されることが好ましい。この熱処理は、複数回に分けてもよく、熱処理によりプロトン伝導性ポリマーの例えばパーフルオロアルキル骨格の結晶化が進み、その結果、電解質膜の機械的強度が更に安定化され得る。この熱処理の温度は、好ましくは100℃以上230℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下、更に好ましくは140℃以上200℃以下である。熱処理の温度を上記範囲に調整することで、結晶化が十分に進み電解質膜の機械的強度が向上する。また、電解質膜の含水率を適切に保持しつつ、機械強度を一層高く維持する観点からも、上記温度範囲は好適である。熱処理の時間は、熱処理の温度にもよるが、より高耐久性を有する電解質膜を得る観点から、好ましくは5分間〜3時間、より好ましくは10分間〜2時間である。この熱処理の途中で、水や有機溶剤を混合した水浴に浸漬させ、表面の異物や膜中の不要成分を除去させる工程を途中入れることも可能である。
本実施形態の製造方法において使用するナノファイバーシート及びプロトン伝導性ポリマーとしては、上記の<ナノファイバーシート>及び<プロトン伝導性ポリマー>の項目において説明したものを挙げることができる。
ナノファイバーシートとして、2mm以上のピンホール欠陥がないシートを使用することによって、連続的に安定して高分子電解質膜を製造することができる。ナノファイバーシートとして、270mm以上の短尺方向の長さを有するものを使用することによって、連続的に安定して高分子電解質膜を製造することができる。ナノファイバーシートとして、平均繊維径が200nm〜500nmであるナノファイバーを含むものを使用することによって、短尺方向変化率差を小さくすることができる。ナノファイバーシートの短尺方向における第1末端及び第2末端の少なくとも一方を前記第1プロトン伝導性ポリマー溶液に接触させることによって、連続的に安定して均質な高分子電解質膜を製造することができる。
以下、図3を適宜参照して本実施形態の製造方法について説明するが、図3はその製造方法の一部を示す一例に過ぎず、これによって本実施形態の製造方法が限定されるものではない。
<塗布工程>
塗布工程では、繰り出されている基材シート13に、第1プロトン伝導性ポリマー溶液14を連続的に塗布する。塗布する面積(つまり、流れ方向(MD)に直交する方向(TD)の長さ)は、ナノファイバーシート11の短尺方向の長さ等に基づいて適宜決定すればよい。基材シートに第1プロトン伝導性ポリマー溶液を塗工する方式としては、特に限定されないが、例えば、スロットダイ以外にもグラビアコーター、バーコーター、ロールコーター、ドクターコーター、PDNコーター、ブレードコーター、含浸コーター等の様々な方式が挙げられる。これら方式は、作製したい塗工液層の厚み、塗工液等の材料の物性、塗工条件を考慮して、適宜選択できる。
<ナノファイバーシート繰出工程>
塗布工程と平行して、ナノファイバーシート11を非鏡面ロール18に接触させながら張力をかけて繰り出す。ナノファイバーシート11を繰出すロールには、ナノファイバーシート11の張力を検出するユニットと制御するユニットがあり、それにより張力を制御できる。
ナノファイバーシートを繰り出す張力は、ナノファイバーシートの短尺方向の長さが−3.0%〜0.5%変化する張力であることが好ましく、−3.0%〜0.0%変化する張力であることがより好ましく、−2.5%〜0.0%変化する張力であることが更に好ましい。張力を上記範囲内で調整することにより、高分子電解質膜のシワの発生を抑制し連続的に安定した均質な高分子電解質膜を製造することができる。
光を照射した際に反射光が鏡のように正反射する鏡面ロールは、ナノファイバーシートの密着性が強く、滑り性が悪いため、短尺方向の長さコントロールが難しく、シワ欠陥が発生しやすい。これに対し、光を照射した際に反射光が拡散反射する非鏡面ロールは、ナノファイバーシートとの滑り性が良く、ナノファイバーシートの短尺方向の長さの変化率を容易に制御でき、シワ欠陥を抑制できる。非鏡面ロールとしては、ブラスト処理され、ロール表面が微細凹凸化された梨地ロールが好適に適用され、鏡面ロールに滑り性のよいPTFE系、シリコーン系の樹脂製テープやそれらを樹脂ラミネートしたロールも好適に使用できる。ロール表面の微細凹凸の程度は、算術平均粗さ(Ra)で0.5〜10.0μmの範囲が好ましく、0.6〜5.0μmの範囲がより好ましく、0.7〜3.0μmの範囲が更に好ましい。
Raが0.5μmより小さい場合は、ナノファイバーシートとの滑り性が悪く、短尺方向の長さを−3.0〜0.5%に張力をコントロールする事が難しい。Raが10.0μmを超えると微細凹凸の凸部にナノファイバー繊維が引っ掛かるなど局所的な摩擦でナノファイバーシート繊維の解れなど損傷する事があり好ましくない。
ロール面の微細凹凸の算術平均粗さ(Ra)は、コンフォーカル光学系の光学顕微鏡タイプにより測定が可能である。例えば、レーザーテック株式会社製のOPTELICS S130装置が好適である。なお、非鏡面ロールのRaは、例えば、以下の条件により測定できる。対物レンズ倍率20倍、波長選択546nmでロール表面の凹凸データを取得後、Z Image(Z画像)データをロールと平行方向およそ100μmの処理範囲となるように処理範囲(ラインROIボタン)を選択し、LM計測モードで算術平均粗さ(Ra)を求める。Ra値は、ナノファイバーシートが接触する任意の位置の5か所を測定し、その平均値を採用できる。
ナノファイバーシートを繰り出してから第1プロトン伝導性ポリマー溶液に接触させるまでの搬送時に、イオンナイザーなどでナノファイバーシートの静電気を除去することが好ましい。これにより、ナノファイバーシートと接触するロールの抵抗を下げ、ナノファイバーシート表面へ付着した異物を除去する事が可能となる。
<第1処理工程>
第1処理工程では、ナノファイバーシート11が非鏡面ロール18に接触した後、ナノファイバーシート11の第1表面11Aが、基材シート13に塗布された第1プロトン伝導性ポリマー溶液14に接触して、第1表面処理ナノファイバーシートを得る。
ナノファイバーシートは、短尺方向において、第1末端及び第2末端を有し、第1末端及び第2末端の少なくとも一方が第1プロトン伝導性ポリマー溶液に接触することが好ましい。第1末端及び第2末端の少なくとも一方が第1プロトン伝導性ポリマー溶液に接触することによって、高分子電解質膜のシワの発生を抑制することができる。第1末端及び第2末端のいずれか一方のみが第1プロトン伝導性ポリマー溶液と接触していてもよいが、第1末端及び第2末端の両方が第1プロトン伝導性ポリマー溶液と接触していることがより好ましい。
<第1乾燥工程>
第1乾燥工程は、第1プロトン伝導性ポリマー溶液が含浸したナノファイバーシート(第1表面処理ナノファイバーシート)を乾燥して高分子電解質膜を得る工程である。第1乾燥工程においては、乾燥機16の入口から徐々に加熱し、乾燥させることが好ましい。なお、「徐々に加熱」とは、昇温速度2.5〜150℃/分の範囲で加熱することをいう。上記乾燥は、例えば、50〜350℃で加熱することが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風炉及びヒータ炉が一般的に用いられる。巻取機17による巻取り速度(乾燥速度)は、塗布液層の厚さ、使用溶剤の揮発性によるが、通常10.0±5.0m/分程度が好ましく、5.0±2.5m/分がより好ましい。
<第2処理工程>
第2処理工程では、第1乾燥工程を経た第1表面処理ナノファイバーシートの第2表面11Bに、第2プロトン伝導性ポリマー溶液(図示せず)を連続的に接触(オーバーコート)させて、両表面処理ナノファイバーシートを得る。
第1表面処理ナノファイバーシートの第1末端及び第2末端は、第2プロトン伝導性ポリマー溶液に接触することが好ましい。第1末端及び第2末端が第2プロトン伝導性ポリマー溶液に接触することによって、帯電しやすく低強度のナノファイバーシートの露出をなくす事ができ、安定した長尺巻きロールの加工が可能となる。
<第2乾燥工程>
第2乾燥工程は、両表面処理ナノファイバーシートを乾燥して高分子電解質膜を得る工程である。第2乾燥工程は、<第1乾燥工程>の項目において記載した条件で実施することができる。
<プロトン伝導性ポリマー溶液>
第1プロトン伝導性ポリマー溶液及び第2プロトン伝導性ポリマー溶液は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。以下、これらを総称してプロトン伝導性ポリマー溶液と称し、これについて具体的に説明する。
プロトン伝導性ポリマー溶液は、上記プロトン伝導性ポリマーと溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを含むものである。このプロトン伝導性ポリマー溶液は、そのまま、又はろ過若しくは濃縮等の工程を経た後、ナノファイバーシートとの複合化に用いられる。あるいは、この溶液を単独又は他の電解質溶液と混合して用いることもできる。
次いで、プロトン伝導性ポリマー溶液の製造方法について、より詳細に説明する。このプロトン伝導性ポリマー溶液の製造方法は特に限定されず、例えば、プロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散させた溶液を得た後、必要に応じてその液に添加剤を分散させる。あるいは、まず、プロトン伝導性ポリマーを溶融押出し、延伸等の工程を経ることによりプロトン伝導性ポリマーと添加剤とを混合し、その混合物を溶媒に溶解又は分散させる。このようにしてプロトン伝導性ポリマー溶液が得られる。
より具体的には、まず、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーからなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、上記プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーはプロトン伝導性ポリマーに変換される。次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、成形物に酸処理を施す。酸処理に用いられる酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーはプロトン化され、プロトン伝導性ポリマー、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が得られる。
上述のように酸処理された上記成形物(プロトン伝導性ポリマーを含む成形物)は、上記プロトン伝導性ポリマーを溶解又は懸濁させ得る溶媒(ポリマーとの親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、例えば、水やエタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。特に、1種の溶媒を用いる場合、溶媒が水であると好ましい。また、2種以上を組み合わせて用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
プロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散(懸濁)する方法としては、特に限定されない。例えば、上記溶媒中にそのままプロトン伝導性ポリマーを溶解又は分散させてもよい。ただし、大気圧下又はオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲でプロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散するのが好ましい。特に、溶媒として水及びプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合比は、溶解方法、溶解条件、プロトン伝導性ポリマーの種類、総固形分濃度、溶解温度、攪拌速度等に応じて適宜選択できる。ただし、水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜10であると好ましく、より好ましくは水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜5である。
なお、プロトン伝導性ポリマー溶液には、乳濁液、懸濁液、コロイド状液体及びミセル状液体のうち1種又は2種以上が含まれてもよい。ここで、乳濁液は、液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなすものである。また、懸濁液は、液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散したものである。さらに、コロイド状液体は、巨大分子が分散した状態のものであり、ミセル状液体は、多数の小分子が分子間力で会合してできた親液コロイド分散系である。
また、電解質膜の成形方法や用途に応じて、プロトン伝導性ポリマー溶液を、濃縮したり、ろ過したりすることも可能である。濃縮の方法としては特に限定されないが、例えば、プロトン伝導性ポリマー溶液を加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法が挙げられる。プロトン伝導性ポリマー溶液を塗工用溶液として用いる場合、プロトン伝導性ポリマー溶液の固形分率は、粘度の上昇を抑制して取扱い性を更に高める観点、及び、生産性を向上させる観点から、0.5質量%以上50質量%以下であると好ましい。
プロトン伝導性ポリマー溶液をろ過する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルターを用いて、加圧ろ過する方法が代表的に挙げられる。上記フィルターには、90%捕集粒子径がプロトン伝導性ポリマー溶液に含まれる固体粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を用いることが好ましい。この濾材の材質としては、例えば、紙及び金属が挙げられる。特に濾材が紙の場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の10倍〜50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の50倍〜100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒子径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制したりするのに効果がある。一方、90%捕集粒子径を平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<ナノファイバーの平均繊維径>
ナノファイバーシートに含まれるナノファイバーの平均繊維径を、以下のとおり測定した。不織布における繊維の平均繊維径として、50本の繊維の繊維径の算術平均値を用いた。ここで、「繊維径」は、繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいう。また、繊維径が細過ぎて測定が困難である場合には、5000倍よりも高い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。なお、繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなした。
<ナノファイバーシートの屈折率>
ナノファイバーシートの屈折率は、構成するポリマーのポリマー溶液をキャスト成膜し、そのフィルムの屈折率をナノファイバーシートの屈折率とした。フィルムの屈折率は、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE300にて反射率を測定し、その反射率から基板解析から求めた。
<隣接ナノファイバー間の最近接距離>
ナノファイバー間の最近接距離は、高分子電解質膜の膜厚方向の3000倍から5000倍の膜厚方向の断面視SEM像で測定する。断面SEM像のコントラスト差を利用し、任意のナノファイバー繊維に対し、最近接距離に位置する他のナノファイバー繊維との距離を測定する。
<曇り度>
高分子電解質膜の曇り度(Haze)は、以下の通り測定した。
ナノファイバーシートの短尺方向幅に対し、ほぼ等間隔となる位置で7点サンプリングした。サンプルは、長尺方向(MD)45mm、短尺方向(TD)50mmの大きさに切り出した。各サンプルは、日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH2000を用いて測定条件Light:D65、ホウホウ3で同一サンプルにつき3回Haze測定し、その平均値を各サンプルの曇り度とした。7点のサンプルのHazeの平均値を高分子電解質膜の曇り度とした。
<平行透過率>
高分子電解質膜の平行透過率(PT)は、以下の通り測定した。
ナノファイバーシートの短尺方向幅に対し、ほぼ等間隔となる位置で7点サンプリングした。サンプルは、長尺方向(MD)45mm、短尺方向(TD)50mmの大きさに切り出した。各サンプルは、日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH2000を用いて測定条件Light:D65、ホウホウ3で同一サンプルにつき3回平行透過率を測定し、その平均値を各サンプルの平行透過率とした。7点のサンプルのHazeの平均値を高分子電解質膜の平行透過率とした。
<全光線透過率の差>
高分子電解質膜の全光線透過率(TT)の差は、以下の通り測定した。
ナノファイバーシートの短尺方向幅に対し、ほぼ等間隔となる位置で7点サンプリングした。サンプルは、長尺方向(MD)45mm、短尺方向(TD)50mmの大きさに切り出した。各サンプルは、日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH2000を用いて測定条件Light:D65、ホウホウ3で同一サンプルにつき3回全光線透過率測定し、その平均値を各サンプルの全光線透過率とした。7点のサンプルのサンプル間で最も大きい箇所の全光線透過率から、最も小さい箇所の全光線透過率を引いた差を全光線透過率の差とした。
<明欠陥の視認性>
明欠陥の視認性は、50m以上加工した長尺高分子電解質膜ロールから任意の位置で長尺方向(MD)10cmと短尺方向全幅(TD)の5枚をサンプリングした。サンプリングした高分子電解質膜の背面から照明を照らし、高分子電解質膜越しに目視観察により、明暗差の点欠陥の外周にラボマーカー(2017年AS ONEカタログ品番2−5674−02)で印をつけた。このように明暗差のある点欠陥(不均一な部位)の特定ができた場合を可。明暗差が不明慮で視認できない場合を否と判定した。
<明欠陥の個数>
前記、印をつけた明欠陥を顕微鏡等で20から500倍に拡大観察し、直径1mm以上2mm未満のピンホール欠陥数を数え、サンプル5枚の合計数を明欠陥の個数とした。不定形形状の明欠陥は、欠陥の最大長さをその欠陥の長さとした。3mm以上の欠陥が一つでもあった場合を×とした。明欠陥の視認性が否の場合は、不明とした。
<短尺方向変化率差>
高分子電解質膜の短尺方向における一方の末端から他方の末端までの間の複数の箇所における、短尺方向の長さの最大変化率と最小変化率との差を、以下のとおり測定した。ナノファイバーシートの短尺方向幅に対し、ほぼ等間隔となる位置で5点サンプリングした。サンプルは、長尺方向(MD)30mm、短尺方向(TD)40mmの大きさに切り出した。切り出した5枚の高分子電解質膜の中央部に、およそ15mm×20mm(MD:15mm、TD:20mm)の長方形の枠をラボマーカー(2017年AS ONEカタログ品番2−5674−02)で記入し、20℃、65%RHでのTDの長さを測定顕微鏡(OLYMPUS製、型式「STM6」)で計測した。次いで、その電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST:エスペック株式会社製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、含水状態を保持した状態で、すみやかにTDの長さを計測した。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での2辺のTD寸法の変化率を、それぞれ算出し、その平均値をもって各位置の短尺方向TDの寸法変化率とした。5点のサンプル間で最も大きい箇所の変化率から、最も小さい箇所の変化率を引いた差を短尺方向変化率差とした。
[実施例1]
<高分子電解質膜の製造>
まず、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーである、テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF22−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂の前駆体(加水分解及び酸処理後のイオン交換容量:1.4ミリ当量/g)ペレットを準備した。次に、その前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、ペレットを60℃の水中に5時間浸漬した。次いで、水中に浸漬した後のペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。そして、塩酸水溶液に繰り返し浸漬させた後のペレットを、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、プロトン伝導性ポリマーであるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(−[CF2CF2]−[CF2−CF(−O−(CF22−SO3H)]−;PFSA)を得た。
このペレットを、エタノール水溶液(水:エタノール=50.0/50.0(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に収容して密閉し、撹拌翼で攪拌しながら160℃まで昇温して、その温度で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を自然冷却して、固形分濃度5質量%の均一なパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液を得た。これを80℃で減圧濃縮した後、水とエタノールとを用いて希釈し、固形分15.0質量%のエタノール:水=60:40(質量比)の溶液を調整し、溶液1とした。
まず、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン300H」)を走行させ、表1の実施例1に記載の長尺ナノファイバーシートの端部をテープでポリイミドフィルムへ装着しライン速度1m/minで走行させ通紙した。次にライン速度を5m/minに設定し、上記溶液1を吐出圧0.17MPaでスリットダイコーターを用いてポリイミドフィルム上に塗工幅615mmで連続塗工した。表1の実施例1に記載のナノファイバーシート(目付3g/m2)を、張力14Nで繰出し、鏡面ロールに日東電工社製のニトフロンNo.903ULテープを貼った非鏡面ロールに接触させた後、ナノファイバーシートの短尺方向における両末端が溶液1に含浸するように配置させ、60℃、100℃、120℃、140℃、140℃に設定した5ゾーンの乾燥炉中へ搬送し乾燥後巻き取った。次に、乾燥後の膜の上から溶液1を再度上記と同様にして塗工し、乾燥炉にて連続乾燥した。こうして得られた膜に対して160℃の設定で20分間アニール処理を施し、厚さ15μmの高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜に関して、明欠陥の視認性と個数、短尺方向変化率差について評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
目付3g/m2で表1の実施例2のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
目付3g/m2で表1の実施例3のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
目付3g/m2で表1の比較例1のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
目付3g/m2で表1の比較例2のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021157890
1、11…ナノファイバーシート
1A…第1末端
1B…第2末端
2…プロトン電導性ポリマー
3、13…基材シート
11A…第1表面
11B…第2表面
14…第1プロトン電導性ポリマー溶液
15…スリットダイ
16…乾燥機
17…巻取機
18…非鏡面ロール

Claims (4)

  1. プロトン伝導性ポリマーと、長尺方向の長さが50m以上、短尺方向の長さが270mm以上のナノファイバーシートと、が複合化したシート形状を有する高分子電解質膜であって、
    曇り度が83%以上、平行透過率が10%以下、短尺方向の全光線透過率の差が10%以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
  2. 前記高分子電解質膜の断面視において、隣接したナノファイバー間の最近接距離が0μm〜3μmである、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 前記ナノファイバーシートを構成するナノファイバーの平均繊維径が200nm以上500nm以下であり、前記ナノファイバーシートの屈折率が1.5以上である、請求項1又は2に記載の高分子電解質膜。
  4. 前記ナノファイバーシートが、ポリエーテルスルホンを少なくとも含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質膜。
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