JP2021154328A - 鍛造用材料、鍛造部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理後の表層硬さ及び硬化層深さが浸炭焼入焼戻し処理材と同等以上であり、耐摩耗性に優れ、かつ、部品成形時の加工性にも優れた鍛造部材並びに、この鍛造部材の材料となる鍛造用材料、及びこの鍛造部材の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の鍛造用材料1は、所定の化学成分を有する外側鋼材11と内側鋼材12とを備え、鍛造用材料が、鍛造用材料の軸方向と垂直な面における外側鋼材の面積S1と内側鋼材の面積S2とが0.90≧S2/(S1+S2)を満たす箇所を有し、端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s−1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における外側鋼材の変形抵抗σ’1と内側鋼材の変形抵抗σ’2とが、σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa]を満たす。【選択図】図2

Description

本発明は鍛造用材料、鍛造部材、および鍛造部材の製造方法に関するものである。
自動車には、内燃機関等のエンジンの駆動力をタイヤまで伝達するための駆動力伝達機構が組み込まれる。この駆動力伝達機構は複数の回転軸を有し、該回転軸同士はプロペラシャフトや等速ジョイントによって連結中継される。(特許文献19参考)
等速ジョイントの1種であるトリポード型等速ジョイントを例示すると、第1回転軸がアウタ部材に連結される一方、第2回転軸の先端にトリポードが嵌合され、該トリポードがアウタ部材の開口端部内に挿入される。トリポードは、環状部と、該環状部の外周面から互いに120°の間隔で離間して突出した3本のトラニオンとを有し、この中のトラニオンに転動自在に通されたローラが前記アウタ部材の内周壁に設けられた案内溝に挿入される。(特許文献19参考)
等速ジョイントのトリポードやユニバーサルジョイント用の十字スパイダーなど、ボス部に放射状に軸部が形成されている製品を閉塞鍛造で成形する場合、閉塞鍛造金型が用いられる。(特許文献2参考)
閉塞鍛造金型は、特許文献1等に記載され、図1に示すように、開閉可能なダイスA,Bと、このダイスA,Bの中心軸上で駆動可能なように配置されるパンチD,Eとを備える。すなわち、ダイスA,Bを閉状態としてパンチD,Eにて押圧することによって、製品Fの軸部Gとボス部Hの形状に相当したキャビティIが形成されている。そのため、ビレット(材料)をダイス内に投入した後型締めしてパンチD,Eにより押圧すると、ビレットが塑性変形して図1に示すように、ボス部Hおよび軸部Gが形成されてなる製品Fを構成することができる。(特許文献2参考)
前記のような閉塞鍛造では、油圧またはバネなどの閉塞装置を使用して、上下のダイスを接触させた状態を維持するために、閉塞力を負荷している。このため、対象とする製品のサイズが大きくなると、成形時に必要とする閉塞力も増大し、場合によっては定格閉塞力の上限で使用することがあった。しかしながら、定格閉塞の上限で使用することは、前記閉塞装置の寿命の低下を招くこととなる。また、より大きな閉塞力を必要とする大型サイズの製品を成形する場合には、所望の大きな閉塞力を負荷できる閉塞装置を使用しなければならず、それに伴いプレス機も大型化してコストも高額になる。(特許文献2参考)
前記課題に対して、特許文献2では、ボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくすることで、製品サイズが大型化しても閉塞時のダイスに作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できることが示されている。
ところで、成形荷重の増加は、一般的に前記閉塞装置の寿命の低下だけでなく、閉塞鍛造金型の寿命の低下を招くことが知られている。前記閉塞鍛造金型の寿命の低下は、製品サイズの大型化だけでなく、鍛造に用いる素材の変形抵抗の増大によっても発生する。したがって、鍛造前には変形抵抗の低減を目的に、球状化焼鈍が施され、鍛造後には、部品の耐摩耗性の向上等の目的から、表面硬化処理を施されて使用されることがほとんどである。複数の表面硬化処理が知られている中でも、浸炭焼入焼戻し処理は表面の硬さ、硬化層の深さ等の点で他の表面硬化処理よりも優れているため、適用部品が非常に多い。トリポードやスパイダーのみならず、歯車や軸受部品の製造工程では、通常はJISのSCM420、SCR420、SNCM220等の中炭素合金鋼を用いて、熱間鍛造、冷間鍛造、又はこれらの組み合わせによって所定の形状を得るように機械加工を施し、その後浸炭焼入焼戻し処理や浸炭窒化焼入焼戻し処理を行う。(特許文献18参考)
しかしながら、浸炭焼入焼戻し処理はガス雰囲気中でのバッチ処理であり、たとえば930℃近傍で数時間以上の加熱保持を要するため、多大な設備費および処理エネルギーとコストが費やされる。また、浸炭焼入焼戻し処理はCOの排出量が多く、環境面でも問題がある。(特許文献18参考)
前記問題を解決するため、浸炭焼入焼戻し処理の代替を目的とした高周波焼入焼戻し(電磁誘導焼入焼戻し)処理の適用に関する研究がなされてきた。高周波焼入焼戻し処理は浸炭焼入焼戻し処理に比べて処理時間の大幅な短縮や処理に要するエネルギーを低減できるため、生産性や低コスト化の面で有利である。さらには、COの排出も少なく、また焼入油の環境への排出もないため、環境面でも有利である。(特許文献18参考)
一方、前記のような長所があるにも関わらず、浸炭焼入焼戻し処理の代替として高周波焼入焼戻し処理が普及していない最大の理由は、部品の耐摩耗性(表層硬さ等)の確保と、部品成形時の加工性(被削性、冷鍛性)との両立が極めて困難であるためである。浸炭焼入焼戻し処理や高周波焼入焼戻し処理で得られるマルテンサイト組織の焼戻し硬さは、表層の炭素量が多いほど向上する。焼戻し硬さは合金元素の添加によっても影響を受けるが、炭素量の影響の方が大きい。また、合金元素の添加による焼戻し硬さの改善の効果は、炭素量が多いほど大きくなる。したがって、浸炭焼入焼戻し処理部品と同等の耐摩耗性を得ようとする場合、浸炭焼入焼戻し処理された部品の表層部と同等程度の炭素量(0.80%近傍)にする必要がある。しかしながら部品の炭素量の増加は鋼素材の硬さの上昇を招くため、部品の加工性(被削性、冷鍛性)が著しく低下し、工業生産には適さない。すなわち、鋼素材の高炭素化と加工性の確保の両立が不可欠である。(特許文献18参考)
例えば、特許文献3、4には、中炭素鋼(C:〜0.65%)に対して高周波焼入焼戻しを施すことによって部品を製造する技術が記載されている。しかしながら、炭素量が浸炭焼入焼戻し処理された部品の表層部よりも大幅に少ないため、加工性はそれほど劣化しないものの、浸炭部品と比べて耐摩耗性が低下する。このため、この技術で浸炭を代替することはできない。例えば、特許文献5〜9には、比較的高炭素の鋼(C:〜0.75%)に対して高周波焼入焼戻しを施すことによって歯面疲労強度を改善した部品を得る技術が記載されている。しかしながら、依然として炭素量が浸炭焼入焼戻し処理された部品の表層部よりも少ないため、浸炭部品に匹敵する耐摩耗性には達しない。また、これらの鋼では炭素量の増加に伴って加工性が顕著に低下するが、これに対する改善技術が不十分であるため、結局歯面疲労強度、加工性ともに不十分であり、浸炭を代替することはできない。(特許文献18参考)
例えば、特許文献10〜13には、比較的高炭素の鋼(C:〜0.75%)に対して適切な圧延条件、鍛造条件、冷却条件を規定することにより加工性等を改善することを意図した技術が記載されている。しかしながら、上記と同様、依然として炭素量が浸炭焼入焼戻し処理部品(浸炭部品)よりも少ないため、浸炭部品に匹敵する歯面疲労強度には達せず、浸炭を代替することはできない。(特許文献18参考)
例えば、特許文献14〜16に記載された技術では、浸炭焼入焼戻し処理された部品の表層部に匹敵する高炭素成分を含む鋼に対して必要に応じて熱処理を施し、その後高周波焼入焼戻しを施す。これによってマルテンサイト組織中に合金炭化物が分散した組織を持つ硬化層を形成し、これにより高い耐摩耗性を持つ部品を得る。しかしながらこれらの技術では、合金炭化物を分散させるため、CrやV、Ti、Nb等の合金添加量が多い。従って耐摩耗性は浸炭部品以上の性能が得られるものの、炭素量の増加と合金添加量の増加が相俟って加工性が顕著に低下する。従って、一部の特殊な部品への適用を除いて、コスト・生産性等の観点から大量生産品への適用・実用化は難しいため、浸炭を代替する実用的な技術とは言えない。(特許文献18参考)
例えば、特許文献17には、浸炭焼入焼戻し処理された部品の表層部に匹敵する高炭素成分を含む鋼に対して必要に応じて熱処理を施し、その後高周波焼入焼戻しを施すことによって耐摩耗性を改善した部品を得る技術が記載されている。しかしながら加工性に対する改善技術が不十分であるため、やはり浸炭を代替することはできない。(特許文献18参考)
例えば、特許文献18には、炭素量が0.75%を超える高炭素鋼素材に対して、切削加工や冷間鍛造前の粗形材を製造する際に、適正な条件で焼鈍を行うことでパーライトラメラを崩す、もしくは熱間加工後の冷却を適切に行うことでパーライトラメラ間隔を大きくすることで、軟質化を図り、被削性及び鍛造性を向上させている。しかしながら、部品成形時の加工は熱間鍛造を想定しており、冷間鍛造時の加工性に対する改善技術が不十分である。
特許第4100602号公報 特許第5253991号公報 特許第4006857号公報 特許第3419333号公報 特許第3823413号公報 特許第3562192号公報 特許第3503289号公報 特許第3428282号公報 特許第3208960号公報 特許第3458604号公報 特許第3550886号公報 特許第3644217号公報 特許第3606024号公報 特許第4390576号公報 特許第4390526号公報 特許第3607583号公報 特許第4757831号公報 特許第5135558号公報 特開2010−285682号公報
本発明は上記の実状に鑑み、焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理後の表層硬さ及び硬化層深さが浸炭焼入焼戻し処理材と同等以上であるので耐摩耗性に優れ、かつ、部品成形時の加工性にも優れた鍛造部材を提供すること、並びに、この鍛造部材の材料となる鍛造用材料、及びこの鍛造部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る鍛造用材料は、外側鋼材と内側鋼材とを備える、側方押出しによる鍛造用材料であって、前記外側鋼材の組成が、質量%で、C:0.60〜1.60%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.20〜1.50%、P:0.001〜0.030%、S:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.100%、N:0.0010〜0.0250%を含有し、さらに、Cr:0.50〜2.00%、Mo:0.20〜2.00%、V:0.40〜1.50%、W:0.30〜1.50%からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、前記内側鋼材の組成が、質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.00%、P:0.001〜0.030%、S:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.100%、N:0.0010〜0.0250%、Cr:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、前記鍛造用材料が、側方押出しされる箇所において、前記鍛造用材料の軸方向と垂直な面における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2とが式1を満たし、端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s−1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における前記外側鋼材の変形抵抗σ’1と前記内側鋼材の変形抵抗σ’2とが、式2を満たす。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
(2)上記(1)に記載の鍛造用材料では、前記外側鋼材と前記内側鋼材との間のクリアランスが0.1mm〜2mmであってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の鍛造用材料では、前記外側鋼材が、ボンデリューベ処理皮膜を有してもよい。
(4)本発明の別の態様に係る鍛造部材は、上記(1)に記載の化学成分を備える外側鋼材と内側鋼材とで形成された基部と、前記基部から外方に突出した突出部とを備え、前記突出部が、前記基部における前記外側鋼材の部分から突設させた外側突部と、前記基部における前記内側鋼材の部分から突設され、且つ前記外側突部内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部とを備え、前記外側突部の厚さが0.5mm以上である。
(5)上記(4)に記載の鍛造部材では、前記突出部の根元における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2との比率Rと、前記基部における、前記突出部の近傍における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2との比率Rとが、下記式3〜式5を満たしてもよい。
=S2/(S1+S2) <式3>
=S2/(S1+S2) <式4>
|(R−R)/R|≦5% <式5>
(6)上記(4)又は(5)に記載の鍛造部材では、前記外側突部のビッカース硬さが660HV以上であってもよい。
(7)本発明の別の態様に係る鍛造部材の製造方法は、上記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の鍛造部材の製造方法であって、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の鍛造用材料を鍛造加工する工程と、鍛造された前記鍛造用材料に焼入焼戻し処理をする工程と、を備え、前記鍛造加工を、前記鍛造用材料に対する側方押出しとし、前記側方押出しによって、前記基部および前記突出部を成形し、前記突出部は、前記側方押出しに際して、前記内側突部が前記外側突部内に入り込んだ状態とし、前記突出部を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける。
(8)上記(7)に記載の鍛造部材の製造方法では、前記焼入焼戻し処理が、高周波焼入焼戻し処理であってもよい。
本発明によれば、硬く耐摩耗性に優れた表層部と、軟らかい基材部とを有することにより、優れた鍛造性と表層硬度・硬化層深さを同時に満たす鍛造用材料、その鍛造用材料を用いた鍛造部材および鍛造部材の製造方法を得ることができる。
また、本発明によれば、浸炭焼入焼戻し処理を焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理によって代替することが可能となる。これにより、熱処理時間を短時間化でき、環境への負担の低下に大きく貢献できる。
従来の閉塞鍛造金型の断面図である。 本発明の鍛造用材料および鍛造部材の図である。 本発明の鍛造用材料および鍛造部材の図である。 本発明の鍛造用材料および鍛造部材の図である。 本発明の鍛造用材料および鍛造部材の図である。 鍛造部材の形状を説明する図である。 実施例の鍛造用材料及びその鍛造用材料を鍛造して成形された鍛造部材の形状を説明する図である。ただし、(a)鍛造前の鍛造用材料の正面図、(b)鍛造により成形された鍛造部材の正面図、(c)同平面図をそれぞれ示す。 (a)端面拘束圧縮試験に用いる試験片の形状、及び(b)使用する治具の形状をそれぞれ説明する図である。 西原式摩耗試験片の形状を説明する図である。
鍛造部材の耐摩耗性を高めるためには、鍛造部材の表層硬さを高め、硬化層深さを増大させる必要がある。一方、鍛造部材の製造段階での加工性を高めるためには、鍛造部材の素材(鍛造用材料)の硬さを低くする必要がある。
従来技術では、鍛造用材料を軟質な鋼とすることによって、部品成形時の加工性を確保していた。さらに、この鍛造用材料に鍛造加工を施した後に浸炭焼入焼戻し処理を施すことによって、鍛造部材の表層硬さを高め、硬化層深さを増大させていた。しかしながら浸炭焼入焼戻し処理は、コスト及びCO排出量の観点からは好ましくない。
従来技術では、浸炭焼入焼戻し処理を代替する熱処理として、焼入焼戻し(特に、高周波焼入焼戻し)の利用が検討されてきた。しかしながら、焼入焼戻し処理によって鍛造部材の表層硬さ及び硬化層深さを確保するためには、鍛造用材料の炭素含有量及び焼入性を高める必要がある。鍛造用材料に合金元素(炭素など)を添加すると、鍛造用材料の硬さが増大し、鍛造用材料の加工性が損なわれる。
本発明者らは、焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理後の表層硬さ及び硬化層深さが浸炭焼入焼戻し処理材と同等以上であるので耐摩耗性に優れ、かつ、部品成形時の加工性にも優れた鍛造部材を提供する方法について検討を重ねた。そして本発明者らは、以下の4点を解決手段として採用することとした。
1.鍛造用材料を、外側鋼材と内側鋼材とから構成される複合材料とした。
2.鍛造用材料の外側鋼材においては、C含有量を高め、さらにMo、及びV等の合金炭化物生成元素を含有させることとした。鍛造用材料の外側鋼材は、鍛造後に鍛造部材の表層部を構成することとなる。従って、鍛造用材料の外側鋼材の成分を上述のように制御することで、鍛造部材の表面硬さ及び硬化層深さを増大させ、鍛造部材の耐摩耗性を高めることができた。
3.鍛造用材料の内側鋼材においては、外側鋼材と比較して、C含有量、及びその他の合金元素の含有量を低いものとした。これにより、鍛造用材料の鍛造における成形荷重を低減し、加工性を高めることができた。
4.外側鋼材と内側鋼材とから構成される複合材料に大きな塑性変形を生じさせると、外側鋼材の破断などが生じる場合がある。そこで、外側鋼材の面積S1と内側鋼材の面積S2との比率を所定範囲内とした。さらに、外側鋼材の変形抵抗と内側鋼材の変形抵抗とが所定の関係を満たすこととした。これにより、例えば側方押出しのような複雑形状を形成する鍛造加工を、複合材料に適用することが可能となった。
上述の知見によって得られた、本発明の一態様に係る鍛造用材料1は、側方押出しによる鍛造用材料であって、外側鋼材11と、内側鋼材12とを備え、外側鋼材11の組成が、質量%で、C:0.60〜1.60%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.20〜1.50%、P:0.001〜0.030%、S:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.100%、N:0.0010〜0.0250%を含有し、さらに、Cr:0.50〜2.00%、Mo:0.20〜2.00%、V:0.40〜1.50%、W:0.30〜1.50%からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、内側鋼材12の組成が、質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.00%、P:0.001〜0.030%、S:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.100%、N:0.0010〜0.0250%、Cr:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、鍛造用材料1が、側方押出しされる箇所において、鍛造用材料1の軸方向と垂直な面における外側鋼材11の面積S1と内側鋼材12の面積S2とが式1を満たし、端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s−1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における外側鋼材11の変形抵抗σ’1と内側鋼材12の変形抵抗σ’2とが、式2を満たす。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
以下に、まず、本実施形態に係る鍛造用材料について詳細に述べる。
(鋼材成分)
まず、本実施形態に係る鍛造用材料1を構成する外側鋼材11と内側鋼材12の化学成分について説明する。以下に示す各元素の割合(%)は全て質量%を意味する。
C(外側鋼材):0.60〜1.60%
C(内側鋼材):0.05〜0.40%
炭素(C)は鋼材の強度を確保する上で必須の元素である。鍛造後に鍛造部材の表層部を構成することとなる、鍛造用材料の外側鋼材は、高い耐摩耗性を実現するために、焼入焼戻し後の硬さが660HV以上である必要がある。そのため、外側鋼材のC含有量は0.60〜1.60%の範囲とする。外側鋼材のC含有量が0.60%未満では、焼入焼戻し後でも660HV以上のビッカース硬さが得られない。一方、外側鋼材のC含有量が1.60%を超えると、外側鋼材の鋳造及び熱間圧延時の延性を劣化させる。そのため、外側鋼材のC含有量を0.60〜1.60%とする。外側鋼材のC含有量を0.70%以上、0.80%以上、又は1.00%以上としてもよい。外側鋼材のC含有量を1.50%以下、1.40%以下、又は1.20%以下としてもよい。
一方、鍛造後に鍛造部材の基材部には高い耐摩耗性は必要ない。従って、鍛造後に基材部を構成することとなる鍛造用材料の内側鋼材には、鍛造性(鍛造時の加工性)が優先して求められる。そのため、内側鋼材のC含有量は、外側鋼材よりも低い0.05〜0.40%とする。内側鋼材のC含有量を0.08%以上、0.10%以上、又は0.15%以上としてもよい。内側鋼材のC含有量を0.35%以下、0.32%以下、又は0.30%以下としてもよい。
Si(外側鋼材):0.05〜2.00%
Si(内側鋼材):0.05〜0.50%
シリコン(Si)は焼戻し軟化抵抗を向上させ、温度上昇に伴う軟化を抑制する効果を有する、有用な元素である。外側鋼材において、Si含有量が0.05%未満では前記作用が発揮できない。一方、外側鋼材において、Si含有量が2.00%を超えると前記作用が飽和し始め、含有量に見合う効果が期待できない。そのため、外側鋼材のSi含有量を0.05〜2.00%とする。外側鋼材のSi含有量を0.10%以上、0.20%以上、又は0.50%以上としてもよい。外側鋼材のSi含有量を1.50%以下、1.40%以下、又は1.20%以下としてもよい。
一方、内側鋼材には高い焼戻し軟化抵抗は必要なく、鍛造性および機械加工時の被削性が優先して求められる。そのため、内側鋼材のSi含有量を0.05〜0.50%とする。内側鋼材のSi含有量を0.08%以上、0.10%以上、又は0.15%以上としてもよい。内側鋼材のSi含有量を0.35%以下、0.32%以下、又は0.30%以下としてもよい。
Mn(外側鋼材):0.20〜1.50%
Mn(内側鋼材):0.20〜1.00%
マンガン(Mn)は焼入性を高めると同時に、赤熱脆性を抑制し、熱間延性を向上させる元素である。外側鋼材のMn含有量が0.20%未満では、前記作用が発揮できない。一方、外側鋼材のMn含有量が1.50%を超えると、含有量に見合う効果が期待できない。そのため、外側鋼材のMn含有量を0.20〜1.50%とする。外側鋼材のMn含有量を0.25%以上、0.30%以上、又は0.40%以上としてもよい。外側鋼材のMn含有量を1.40%以下、1.30%以下、又は1.20%以下としてもよい。
また、内側鋼材には高い焼入性は必要なく、鍛造性および機械加工時の被削性が優先して求められる。内側鋼材のMn含有量が1.00%を超えると、鍛造用材料の鍛造性が悪化する。そのため、内側鋼材のMn含有量を0.20〜1.00%とする。内側鋼材のMn含有量を0.25%以上、0.30%以上、又は0.40%以上としてもよい。内側鋼材のMn含有量を0.90%以下、0.80%以下、又は0.70%以下としてもよい。
P(外側鋼材および内側鋼材):0.001〜0.030%
リン(P)は不純物として含まれる元素である。Pは粒界に偏析して粒界強度を下げる。そのため、P含有量はなるべく低い方が良い。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の上限を0.030%以下とする。外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の好ましい上限は0.020%、0.018%、又は0.015%である。一方、Pは製鋼工程において低減することができるものの、0.001%未満とするには製造コストがかかり、また0.001%未満としても粒界強度が顕著に向上することはない。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の下限を0.001%以上、0.002%以上、又は0.005%以上としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてP含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
S(外側鋼材および内側鋼材):0.005〜0.025%
硫黄(S)は鍛造用材料の被削性を向上させるため、0.005%以上を含有させる。しかし、S含有量が多すぎると、Mnによって固定されなかったSがFeSとして粒界に生成することで、熱間延性が低下する。また、大量に生成したMnSによって、耐摩耗性が低下する。そのため、鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材および基材部を構成する内側鋼材におけるS含有量の上限を0.025%以下とする。したがって、外側鋼材および内側鋼材のS含有量をともに0.005〜0.025%とする。外側鋼材および内側鋼材のS含有量を0.008%以上、0.010%以上、又は0.015%以上としてもよい。外側鋼材および内側鋼材のS含有量を0.022%以下、0.020%以下、又は0.018%以下としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてS含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
Al(外側鋼材および内側鋼材):0.005〜0.100%
アルミニウム(Al)は脱酸作用を有するとともに、熱処理の際、Nと結合してAlNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化を防止し、靭性を高める効果を持つ。鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材および基材部を構成する内側鋼材のAl含有量が0.005%未満ではこれらの効果が発揮されず、一方、0.100%を超えると上記効果が飽和する。そのため、外側鋼材および内側鋼材のAl含有量をともに0.005〜0.100%とする。外側鋼材および内側鋼材のAl含有量を0.008%以上、0.010%以上、又は0.015%以上としてもよい。外側鋼材および内側鋼材のAl含有量を0.080%以下、0.060%以下、又は0.050%以下としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてAl含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
N(外側鋼材および内側鋼材):0.0010〜0.0250%
窒素(N)はAl、Vと結合して窒化物を形成することによりオーステナイト粒の粗大化を防止し、靭性を高める効果を有する。鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材および基材部を構成する内側鋼材のN含有量が0.0010%未満ではその効果が小さく、一方、0.0250%を超えると上記効果が飽和する。そのため、外側鋼材および内側鋼材のN含有量をともに0.0010〜0.0250%とする。好ましくは、外側鋼材および内側鋼材のN含有量を0.0030〜0.0150%とする。外側鋼材及び内側鋼材においてN含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
Cr(内側鋼材):0.01〜0.30%
クロム(Cr)は鋼材の焼入性を高めると同時に、硬い炭化物を形成し耐摩耗性を向上させる有用な元素である。鍛造部材の基材部を構成する内側鋼材には高い焼入性・耐摩耗性は必要なく、部品加工時の鍛造性および被削性が優先される。また、Crはセメンタイトを安定化させる元素でもあり、球状化焼鈍時に球状セメンタイト生成に必要な核をわずかに残すために、微量添加する。0.01%未満だとその効果が小さく、一方、0.30%を超えると、部品加工時の鍛造性および被削性を悪化させる。そのため、内側鋼材のCr含有量を0.01〜0.30%とする。内側鋼材のCr含有量を0.02%以上、0.05%以上、又は0.10%以上としてもよい。内側鋼材のCr含有量を0.25%以下、0.20%以下、又は0.18%以下としてもよい。
外側鋼材のCrは、Mo、VおよびWとともに選択的に含有される元素であるため、内側鋼材のCrとは別に説明する。
鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材において、Cr、Mo、VおよびWは、1種または2種以上を含有する。以下、各元素について説明する。
Cr(外側鋼材):0.50〜2.00%
前述のように、クロム(Cr)は鋼材の焼入性を高め、耐摩耗性を向上させる元素である。鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材のCr含有量が0.50%未満では上記作用が発揮できず、一方、2.00%を超えると部品加工時の鍛造性および被削性を低下させる。そのため、外側鋼材のCr含有量を0.50〜2.00%とする。外側鋼材のCr含有量を0.60%以上、0.80%以上、又は1.00%以上としてもよい。外側鋼材のCr含有量を1.80%以下、1.60%以下、又は1.40%以下としてもよい。
Mo(外側鋼材):0.20〜2.00%
モリブデン(Mo)は鋼材の焼入性を高めると同時に、硬い炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる有用な元素である。鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材のMo含有量が0.20%未満では上記作用が発揮できず、一方、2.00%を超えると部品加工時の鍛造性および被削性を低下させる。そのため、外側鋼材のMo含有量を0.20〜2.00%とする。外側鋼材のMo含有量を0.30%以上、0.50%以上、又は0.80%以上としてもよい。外側鋼材のMo含有量を1.50%以下、1.20%以下、又は1.00%以下としてもよい。
V(外側鋼材):0.40〜1.50%
バナジウム(V)は硬い炭化物を形成して耐摩耗性を向上させるとともに、結晶粒を微細化して靭性を向上させる有用な元素である。表層部のV含有量が0.40%未満では耐摩耗性向上効果が発揮できず、一方、1.50%を超えると部品加工時の鍛造性および被削性を低下させる。そのため、外側鋼材のV含有量を0.40〜1.50%とする。外側鋼材のV含有量を0.50%以上、0.60%以上、又は0.80%以上としてもよい。外側鋼材のV含有量を1.40%以下、1.30%以下、又は1.00%以下としてもよい。
W(外側鋼材):0.30〜1.50%
タングステン(W)は鋼材の焼戻し軟化抵抗を高めると同時に、硬い炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる有用な元素である。鍛造部材の表層部を構成する外側鋼材のW含有量が0.30%未満では上記作用が発揮できず、一方、1.50%を超えると部品加工時の鍛造性および被削性を低下させる。そのため、外側鋼材のW含有量を0.30〜1.50%とする。外側鋼材のW含有量を0.40%以上、0.50%以上、又は0.80%以上としてもよい。外側鋼材のW含有量を1.40%以下、1.30%以下、又は1.00%以下としてもよい。
外側鋼材及び内側鋼材の化学組成の残部は鉄(Fe)及び不純物である。不純物とは、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップ、又は、製造工程の環境等から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
次に、外側鋼材11及び内側鋼材12の化学成分以外の構成について説明する。
外側鋼材11は中空状の鋼材であり、内側鋼材12は外側鋼材11の内部に配置されている。本実施形態に係る鍛造用材料1を側方押出しに供する場合、図2に示されるように、内側鋼材12を例えば棒鋼とし、外側鋼材11をパイプ状形状とすることが好ましい。図2に示される鍛造用材料1を側方押出しすることによって、図7に示される鍛造部材2を得ることができる。
(外側鋼材)
外側鋼材11は、本実施形態に係る鍛造用材料1を加工して得られる鍛造部材2において、他の鋼部材と接触して摺動する部位である表層部を構成する。よって、本実施形態に係る鍛造用材料1の外側鋼材11は、少なくとも、鍛造部材2の表面のうち摺動を受ける部分を覆ったものでなければならない。さらに外側鋼材11は、所定条件の焼入焼戻し後に高い耐摩耗性を有する必要がある。そのため、外側鋼材11には、前述のようにCr、Mo等の硬質な合金炭化物生成元素と、高濃度のCとを含有させ、これにより所定条件の焼入焼戻し後のビッカース硬さが660HV以上となるようにする。鍛造用材料1の表層部にあたる外側鋼材11のビッカース硬さが、所定条件の焼入焼戻し後に660HV未満であると、鍛造部材2の表層部の耐摩耗性を確保できなくなる。ただし、焼入焼戻し前の段階における外側鋼材11の硬さは特に規定されない。鍛造加工前の段階では、加工性を考慮すると、外側鋼材11の硬さが低いほうが好ましい。
さらに、外側鋼材11の断面積割合も重要である。外側鋼材11の肉厚が薄い場合、鍛造時に外側鋼材11が破壊されてしまう。よって、側方押出しされる箇所において、鍛造用材料1の軸方向と垂直な面における外側鋼材11の面積S1と内側鋼材12の面積S2とが、式1を満たさなければならない。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
なお、鍛造用材料1の全域にわたり式1が満たされる必要はない。少なくとも鍛造によって大きな変形を受ける箇所、即ち側方押出しされる箇所において式1が満たされていればよい。例えば、図3に示されるように、外側鋼材11の面積S1と内側鋼材12の面積S2との割合が一様であってもよい。一方、鍛造用材料1が側方押出しによる鍛造加工用である場合、少なくとも側方押出される箇所において式1が満たされていれば足りる。従って、例えば図4に示されるように、鍛造用材料1の一部に外側鋼材11が配されていてもよい。図4の鍛造用材料1では、その両端において式1が満たされないこととなるが、側方押出される箇所に外側鋼材11が配されており、この箇所において式1が満たされていればよい。また、例えば図5に示されるように、外側鋼材11の両端がテーパー形状を有することも妨げられない。図5の鍛造用材料1でも、その両端において式1が満たされないこととなるが、側方押出される箇所に外側鋼材11が配されており、この箇所において式1が満たされていればよい。
S2/(S1+S2)の上限を、鍛造部材の形状に応じて変更してもよい。例えば、S2/(S1+S2)を0.90未満、0.85未満、又は0.80未満としてもよい。例えば鍛造用材料1から自動車のスパイダーを製造する場合、外側突部241の厚さを確保する観点から、S2/(S1+S2)を0.90未満としておくことが好ましいと考えられる。
一方、外側鋼材11の断面積割合が多すぎると、変形抵抗が高い外側鋼材11が鍛造用材料1に占める割合が過剰となる。そのため、鍛造用材料1の鍛造性が悪化し、金型負荷が増大する。金型負荷は、外側鋼材11の面積S1及び内側鋼材12の面積S2に加え、外側鋼材11及び内側鋼材12それぞれの変形抵抗に大きく影響される。十字軸継手のように、側方押出し加工により成形された鍛造部材2の、側方押出し軸表層部に発生するひずみは1.2〜1.7である。この範囲における鍛造用材料1の変形抵抗が750[MPa]を超えると、成形荷重が高くなり、金型寿命の低下が顕著になる。よって、外側鋼材11の面積S1、外側鋼材11の相当塑性ひずみ量が1.5となる変形抵抗σ’1、内側鋼材12の面積S2、及び内側鋼材12の相当塑性ひずみ量が1.5となる変形抵抗σ’2の関係が式2を満たすことが必要である。
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
ここで、上記変形抵抗は、ひずみ速度10s−1で端面拘束圧縮試験を行って得られる値である。
外側鋼材11が、表面処理されていてもよい。例えば、外側鋼材11がボンデリューベ処理皮膜を有していてもよい。ボンデリューベ処理皮膜とは、リン酸亜鉛系化成皮膜と石けん系潤滑剤を用いた処理によって得られる潤滑皮膜である。通常、ボンデリューベ皮膜はリン酸塩皮膜と、未反応石けん(例えばステアリン酸ナトリウム)と、これらの間に形成された金属石けんとの三層構造を有する(「冷間鍛造用潤滑技術」清水秋雄、素形材、素形材センター、2010年、Vol.51、No.10、第24〜25頁等参照)。ボンデリューベ処理皮膜によって、型離れを良くし、冷間鍛造時に生じる熱や接触圧力による金型の破損が防止される。
(内側鋼材)
本実施形態の鍛造用材料における内側鋼材12は、必ずしもその全面が外側鋼材11に覆われていなくともよい。他の部品と接触しない表面において、内側鋼材12が露出していてもよい(図4参照)。例えば、本実施形態の鍛造用材料1からなる十字軸継手における中心軸方向には内側鋼材12が露出する場合があるが、この部分には耐摩耗性が要求されないため、内側鋼材12が露出していてもよい。また、内側鋼材12の内部に空洞が設けられてもよい。このような鍛造用材料を側方押出しに供した場合、内側鋼材12の内部の空洞は、側方押出し軸が形成される前に内側鋼材12によって充填され、消失すると考えられる。従って、上述した鍛造用材料1の軸方向と垂直な面における内側鋼材12の面積S2に、空洞部の面積は算入しない。
外側鋼材11と、内側鋼材12との間にクリアランスが設けられていてもよい。クリアランスを設けることにより、外側鋼材11を内側鋼材12の内部に配置する工程の実施が容易となり、鍛造用材料1の製造効率が改善される。また、側方押出しの際には、外側鋼材11および内側鋼材12によってクリアランスが充填されるので、クリアランスが鍛造部材2の製造を妨げることもない。クリアランスの大きさは特に限定されず、外側鋼材11及び内側鋼材12の形状に応じて適宜定めることができる。例えば、クリアランスを0.1mm〜2.0mmとしてもよい。
鍛造用材料1の大きさ(具体的には、鍛造によって大きな変形を受ける箇所である、側方押出しされる箇所の外径)は特に限定されない。例えば、鍛造用材料1を冷間鍛造に供する場合、加工性を考慮すると、鍛造用材料1の外径をφ20mm〜φ55mmの範囲内とすることが望ましい。一方、鍛造用材料1を熱間鍛造に供するのであれば、鍛造用材料1のサイズを上述の範囲を超えるものとしても、鍛造設備に負荷をかけることがないと考えられる。
鍛造用材料1の形状も、目的に応じて適宜選択することができる。図2において、鍛造用材料1、及び内側鋼材12は丸棒形状であるが、鍛造用材料1、及び/又は内側鋼材12が角棒形状であってもよい。この場合、鍛造用材料1、外側鋼材11、及び内側鋼材12の「径」(内径及び外径の両方を含む)とは、円相当径を意味する。
次に、本発明の別の態様に係る鍛造部材2について説明する。図6に示されるように、本実施形態に係る鍛造部材2は、外側鋼材21と内側鋼材22とで形成された基部23と、該基部23から外方に突出した突出部24とを備え、突出部24が、基部23における外側鋼材21の部分から突設させた外側突部241と、基部23における内側鋼材22の部分から突設され、且つ外側突部241内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部242とで一体に成形されており、外側突部241の厚さが0.5mm以上である。
(鍛造部材)
本実施形態の鍛造用材料1を鍛造加工することにより鍛造部材2が成形される。本実施形態の鍛造部材2は、外側鋼材21と内側鋼材22とで形成された基部23と、基部23から外方に突出した突出部24とを備えている。鍛造部材2の外側鋼材21及び内側鋼材22の成分は、上述された鍛造用材料1の外側鋼材11及び内側鋼材12の成分と同じである。また、突出部24は、基部23を形成する外側鋼材21の所定の部分から突設させた外側突部241と、基部23を形成する内側鋼材22の部分から突設され、且つ外側突部241内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部242とで一体に成形されている。ここで、突出部24を形成する内側突部242は、外側突部241内の全空間に充填されていてもよいが、必ずしも外側突部241内の全空間に充填されている必要はなく、外側突部241内の一部に入り込んだ状態、すなわち、外側突部241と内側突部242との間に空間が形成された状態であってもよい。
また、外側突部241の厚さは、0.5mm以上とされる。これにより、十分な耐摩耗性を得ることができる。外側突部241の厚さを0.6mm以上、0.8mm以上、又は1.0mm以上としてもよい。外側突部241の厚さの上限を規定する必要はないが、例えば厚さを5.0mm以下、4.0mm以下、又は3.0mm以下と規定してもよい。
また、鍛造部材2において、下記式3〜5が満たされることがさらに好ましい。
=S2/(S1+S2) <式3>
=S2/(S1+S2) <式4>
|(R−R)/R|≦5% <式5>
ここで、式3〜5における記号は、以下の事項を示す。
1:突出部24の根元における外側鋼材21の面積
2:突出部24の根元における内側鋼材22の面積
:S1及びS2の比率
1:基部23における、突出部24の近傍における外側鋼材21の面積
2:基部23における、突出部24の近傍における内側鋼材22の面積
:S1及びS2の比率
式3〜式5が満たされる鍛造部材2では、比率RとRが、実質的に等しい。このような鍛造部材2は、鍛造部材2における外側鋼材21の破断が抑制されるように鍛造がなされていると考えられる。
さらに、外側突部241において、外側鋼材21の面積と内側鋼材22の面積との割合は、上述した鍛造用材料1における割合を引き継いでいると推定される。従って、鍛造用材料1と同様に、0.90≧Rと規定してもよい。0.90>R、0.85>R、又は0.80>Rとしてもよい。
鍛造部材2において、外側鋼材21のビッカース硬さが660Hv以上であることが好ましい。これにより、鍛造部材2の耐摩耗性が一層高められることとなる。なお、外側鋼材21のビッカース硬さとは、外側鋼材21の表面から50μm深さの位置におけるビッカース硬さのことである。外側鋼材21のビッカース硬さを測定する際の荷重は2.94Nとする。
鍛造部材2の種類には、例えば自動車用部品のスパイダー、その他インナーレース、トリポード、あるいは歯車等が含まれる。図6は、本実施形態に係る鍛造用材料1を側方押出しすることで成形したスパイダーを示す。中央部分が基部23に該当し、この基部23の周面から外方に突出している部分が突出部24に相当する。
(鍛造部材の製造方法)
以下、本実施形態の鍛造用材料を用いた鍛造部材の製造方法を説明する。本実施形態に係る鍛造部材の製造方法は、本実施形態に係る鍛造用材料1を鍛造加工する工程と、鍛造された鍛造用材料1に焼入焼戻し処理をする工程と、を備え、鍛造加工を、鍛造用材料1に対する側方押出しとし、側方押出しによって基部23および突出部24を成形し、突出部24は、側方押出しに際して、内側突部242が外側突部241内に入り込んだ状態とし、突出部24を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける。以下、この製造方法について詳細に説明する。
上述したように、本実施形態の鍛造用材料1は、外側鋼材11の化学成分を有する鋼材の内側に、内側鋼材12の化学成分を有する鋼材を挿入したものである。例えば図2及び図3に示される実施形態の場合、内側鋼材12は例えば円柱状であり、外側鋼材11は内側鋼材12の外径とほぼ同径の内径と、ほぼ同じ軸線方向長さ(高さ)を有する円筒状である。なお、図2及び図3に示される鍛造用材料1においては、その全長にわたり0.90≧S2/(S1+S2)の関係が満たされている。
そして、この鍛造用材料1の軸線方向の両端(上下端)を挟圧して、側方押出しによる鍛造加工を行うことにより、基部23および突出部24を成形する。側方押出しを行うことにより、外側鋼材11(21)および内側鋼材12(22)の所定の部分が、軸線と交差する方向に押出される。そのため、外側鋼材11(21)には外側突部241が、内側鋼材12(22)には内側突部242がそれぞれ成形される。このとき、内側鋼材は外側突部241内に押出され、外側突部241内の空間には内側突部242が入り込んだ状態となる。そのため、突出部24は、外側突部241と内側突部242とが一体に成形されたものとなる。
上述したように、鍛造用材料1の形状は図2及び図3に例示されたものに限られず、図4又は図5に例示されるような、その他の形状を有する鍛造用材料1に対しても、適宜側方押出しを実施することができる。この際は、突出部を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設けることが必要である。例えば、図4に示される鍛造用材料1を、側方押出しによって鍛造する場合、突出部24を設ける箇所が、外側鋼材11が配された箇所と一致するように金型を設計する必要がある。これにより、突出部24における外側鋼材21の破断を防ぎ、突出部24の外側突部241の厚さを0.5mm以上とすることができる。
また、鍛造加工の後は、鍛造部材に焼入焼戻しを施す。これにより、外側鋼材21の硬さを高め、鍛造部材2の耐摩耗性を確保することができる。焼入焼戻しの条件は特に限定されないが、例えば焼入温度850℃で油焼入れを行った後、120℃で焼戻しを行うことが好ましい。この条件を、上述した化学成分を有する外側鋼材21に適用することにより、外側突部241のビッカース硬さを660HV以上とすることができる。また、焼入焼戻し処理を高周波焼入焼戻し処理とすることが一層好ましい。これにより、熱処理時間の大幅な削減と熱処理に要するエネルギーを低減できる。
なお、本実施形態の鍛造部材は、表層部を構成する外側鋼材と基材部を構成する内側鋼材との境界で成分、硬さが急激に変化するため、表層部の厚さや使用条件によっては、当該境界が破壊起点となることが考えられる。そのような場合、鍛造部材において、外側鋼材と内側鋼材との中間の成分を有する層を間に挟んで成分を段階的に変化させる、あるいは、高温で拡散処理を施して成分を連続的に変化させるなどの対策を講じることができる。
本発明の効果を確認するため、本発明に係る鍛造用材料から鍛造部材を製造し、所定の性能について評価を行った。
まず、表1の「外側鋼材」と「内側鋼材」に示す化学成分を有する鋼を溶製し、連続鋳造によりビレットを作製した。表1において、下線が付された値は、本発明の発明範囲外である。また、表1において、意図的に添加されていない元素の含有量は、空白で示した。
次に、このビレットに熱間圧延を施して直径55mmの丸棒を製造した。さらに、丸棒を球状化焼鈍(SA:Spherodizing Annealing)に供した。
表1の「外側鋼材」に示す化学成分を有し、球状化焼鈍後(SA工程後)の丸棒から外径50mm、内径45.8mmの中空筒上の外側鋼材を作製した。また、表1の「内側鋼材」に示す化学成分を有し、球状化焼鈍後(SA工程後)の丸棒から外径45.8mmの棒状の内側鋼材を作製した。
ただし、表1の本発明例1は、外側鋼材の内径と内側鋼材の外径を47.5mmとし、比較例10は外側鋼材の内径と内側鋼材の外径を48.7mmとすることで、内側鋼材の割合を増加させた。また、比較例9は、外側鋼材の内径と内側鋼材の外径を35.5mmとすることで、内側鋼材の割合を減少させた。さらに、単一鋼材からなる比較例19〜21も作成した。これらの製造方法などについては後述する。
次に、外側鋼材の内側に内側鋼材を挿入した状態で(比較例19〜21に関しては、単一鋼材に対して)側方押出し加工を行い、図7(B)及び図7(C)に示す十字軸形状の鍛造部材を成形した。成形時の最大荷重が324kN以下の場合を、鍛造性に優れるとして合格と判定した。また、成形時の最大荷重が324kN超の場合を、鍛造性に劣るとして不合格と判定した。
また、上記球状化焼鈍後(SA工程後)の丸棒のr/2位置(丸棒の半径rの1/2の深さの位置)から、図8の端面拘束溝付き圧縮試験片を作製した。端面拘束溝付き圧縮試験片は、直径R/2位置を中心とした直径8mm、長さ12mmの試験片であり、丸棒試験片の長手方向は、直径55mmの丸棒の鍛伸軸と平行であった。切欠き形状は、「冷間据込み試験方法」冷間鍛造材料強度班、塑性と加工、vol.22.no.241、p139に記載の1号試験片の切欠きに準じた。
各鋼について、図8の端面拘束圧縮試験片を3個作製した。冷間圧縮試験には、富士電波工機(株)製、サーメックマスターZ(登録商標)を使用した。使用した治具はJIS SKH51製で、φ40mm×L50mmの端面拘束溝付き治具である。試験片を圧縮させるときのひずみ速度は、10s−1として、75%以上の圧縮率で冷間圧縮を行い、その後、相当塑性ひずみ量が1.5となる変形抵抗を求めた。
前記外側鋼材の面積S1および相当塑性ひずみ量が1.5となる変形抵抗σ’1と、内側鋼材の面積S2と相当塑性ひずみ量が1.5となる変形抵抗σ’2が以下の関係
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa]
を満たす場合を、本発明の範囲内であるとして合格と判定した。
耐摩耗性は、西原式摩耗試験によって評価した。ただし、この摩耗試験を、作製した上記鍛造部材に対して実施することはできない。図9に示す西原式摩耗試験片を上記鍛造部材から製造した場合、外側鋼材が空転するので、試験片を回転させて摺動を生じさせることができない。そこで、上記鍛造部材の外側鋼材を模擬するために、外側鋼材と同一の化学成分を有する鋼材に対して西原式摩耗試験を実施した。具体的には、「外側鋼材」に示す化学成分を有する、球状化焼鈍後の丸棒の中心位置からそれぞれ1個ずつ計4個、図9に示す西原式摩耗試験片(評価材)を機械加工にて作製し、焼入れ温度850℃で油焼入れ処理を行った後、120℃で焼戻し処理を行った。
次に、焼入焼戻し後の上記西原式摩耗試験片について摩耗試験前の重量を測定し、すべり率9.1%、油潤滑2cc/min、面圧1.5MPa、回転数100rpm、相手材JIS G4805 SUJ2の条件で、摩耗試験を4時間行った。その後、西原式摩耗試験片の重量を再測定し、試験前後の西原式摩耗試験片の重量を算出した。上記西原式摩耗試験を同一水準で3回実施し、摩耗重量の平均値を求めた。摩耗重量の平均値が10mg以下の場合を、耐摩耗性に優れるとして合格と判定した。また、摩耗重量の平均値が10mg超の場合を、耐摩耗性に劣るとして不合格と判定した。
また、上記鍛造部材に対しても、摩耗試験片と同じ条件での焼入焼戻しを行った。そして、鍛造部材の側方押出し軸の、長手方向に対して垂直な面において、半径方向外側の表面50μm深さの位置で、JIS Z 2244に準拠して、試験力を2.94Nとしてビッカース硬さを測定した。表層部のビッカース硬さが660HV以上の場合を、本発明の範囲内であるとして合格と判定した。
比較例19は、SCM420浸炭材のみから構成されたものである。その外径は、上述の例1〜18の外側鋼材の外径と同一とした。その製造方法は、上述の例1〜18の内側鋼材の製造方法と同一とした。これに、例1〜18と同じ条件で側方押出しをした。そして、焼入焼戻しに代えて浸炭焼入焼戻しを行った後で、例1〜18と同じ方法で耐摩耗性評価と硬さ測定を行った。浸炭焼入れでは、930℃で浸炭処理工程と保持工程を200分間行ったのち油焼入れを行った。その後、130℃にて焼戻し処理を行った。
比較例20及び21も、単一鋼材から構成されたものである。その外径は、上述の例1〜18の外側鋼材の外径と同一とした。その製造方法は、上述の例1〜18の内側鋼材の製造方法と同一とした。これに、例1〜18と同じ条件で側方押出をした。そして、例1〜18と同じ方法で耐摩耗性評価と硬さ測定を行った。
表1のNo.1〜8が本発明例で、その他(No.9〜21)は比較例である。これら発明例及び比較例の内側鋼材面積割合、σ、最大成形荷重、摩耗重量、及び外側鋼材の焼入れ焼戻し後硬さを表2に記載した。表2において、発明範囲外の値、及び合否基準に満たない値には下線を付した。なお、表中の「σ」とは、σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)によって得られる値である。
Figure 2021154328
Figure 2021154328
本発明例1〜8の鍛造用材料は、化学成分が本発明の範囲内であり、S2/(S1+S2)が90%以下であり、さらにσが750MPa以下であった。そのため、本発明例1〜8の鍛造用材料は側方押出の際の成形荷重が抑制された。さらに、本発明例1〜8の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、摩耗重量が小さく、耐摩耗性に優れていた。なお、比較例19はSCM420浸炭材(浸炭焼入焼戻し処理材)である。本発明例1〜8の硬さ及び耐摩耗性は、比較例19と同等以上であった。従って、本発明例1〜8の鍛造用材料からは、焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理後の表層硬さ及び硬化層深さが浸炭焼入焼戻し処理材と同等以上であるので耐摩耗性に優れ、かつ、部品成形時の加工性にも優れた鍛造部材を提供することができた。
一方、比較例9の鍛造用材料は、外側鋼材が占める面積率が大きすぎて、σが750MPaを上回ったので、側方押出の際の成形荷重が過剰となった。
比較例10の鍛造用材料は、外側鋼材の厚さが小さすぎたので、側方押出の際に外側鋼材が割れてしまった。このため、比較例10の鍛造用材料からは、鍛造部材を製造することができなかった。
比較例11の鍛造用材料は、その外側鋼材の炭素量が不足しており、さらにCr、Mo、VおよびWの含有量が不足していた。そのため、比較例11の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例12の鍛造用材料は、その内側鋼材の炭素量が過剰であった。そのため、比較例12の鍛造用材料の側方押出の際には、成形荷重が過剰となった。
比較例13〜16の鍛造用材料は、その外側鋼材においてCr、Mo、VおよびWの含有量が不足していた。そのため、比較例13〜16の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例17の鍛造用材料は、その内側鋼材のSi量が過剰であり、σが750MPaを上回った。そのため、比較例17の鍛造用材料の側方押出の際には、成形荷重が過剰となった。
比較例18の鍛造用材料は、その内側鋼材のMnが過剰であり、σが750MPaを上回った。そのため、比較例18の鍛造用材料の側方押出の際には、成形荷重が過剰となった。
比較例20の鍛造用材料は、単一鋼材からなるものであり、その化学成分は本発明の内側鋼材の化学成分と近い。ただし、Cr量が本発明の内側鋼材よりも高くされており、さらにMoを含有する。この比較例20の側方押出の際には、成形荷重が過剰となった。その一方で、比較例20の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例21の鍛造用材料は、単一鋼材からなるものであり、その化学成分は本発明の外側鋼材の範囲に属する。比較例21の鍛造用材料から得られた鍛造部材の耐摩耗性は合格範囲内であったが、比較例21の側方押出の際には、成形荷重が過剰となった。
本発明によれば、焼入焼戻し処理又は高周波焼入焼戻し処理後の表層硬さ及び硬化層深さが浸炭焼入焼戻し処理材と同等以上であるので耐摩耗性に優れ、かつ、部品成形時の加工性にも優れた鍛造部材を提供することができる。これにより、浸炭焼入焼戻し処理の省略によるCO排出量の削減、鍛造時の成形荷重の抑制による金型の長寿命化などの効果が得られる。従って、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。
1 鍛造用材料
11 外側鋼材
12 内側鋼材
2 鍛造部材
21 外側鋼材
22 内側鋼材
23 基部
24 突出部
241 外側突部
242 内側突部

Claims (8)

  1. 外側鋼材と内側鋼材とを備える、側方押出しによる鍛造用材料であって、
    前記外側鋼材の組成が、質量%で、
    C:0.60〜1.60%、
    Si:0.05〜2.00%、
    Mn:0.20〜1.50%、
    P:0.001〜0.030%、
    S:0.005〜0.025%、
    Al:0.005〜0.100%、
    N:0.0010〜0.0250%
    を含有し、さらに、
    Cr:0.50〜2.00%
    Mo:0.20〜2.00%
    V:0.40〜1.50%
    W:0.30〜1.50%
    からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、
    前記内側鋼材の組成が、質量%で、
    C:0.05〜0.40%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.20〜1.00%、
    P:0.001〜0.030%、
    S:0.005〜0.025%、
    Al:0.005〜0.100%、
    N:0.0010〜0.0250%、
    Cr:0.01〜0.30%
    を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、
    前記鍛造用材料が、側方押出しされる箇所において、前記鍛造用材料の軸方向と垂直な面における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2とが式1を満たし、
    端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s−1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における前記外側鋼材の変形抵抗σ’1と前記内側鋼材の変形抵抗σ’2とが、式2を満たす
    鍛造用材料。
    0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
    σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
  2. 前記外側鋼材と前記内側鋼材との間のクリアランスが0.1mm〜2mmであることを特徴とする請求項1に記載の鍛造用材料。
  3. 前記外側鋼材が、ボンデリューベ処理皮膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鍛造用材料。
  4. 請求項1に記載の化学成分を備える外側鋼材と内側鋼材とで形成された基部と、前記基部から外方に突出した突出部とを備え、
    前記突出部が、前記基部における前記外側鋼材の部分から突設させた外側突部と、前記基部における前記内側鋼材の部分から突設され、且つ前記外側突部内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部とを備え、
    前記外側突部の厚さが0.5mm以上である
    ことを特徴とする鍛造部材。
  5. 前記突出部の根元における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2との比率Rと、
    前記基部における、前記突出部の近傍における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2との比率Rとが、下記式3〜式5を満たすことを特徴とする請求項4に記載の鍛造部材。
    =S2/(S1+S2) <式3>
    =S2/(S1+S2) <式4>
    |(R−R)/R|≦5% <式5>
  6. 前記外側突部のビッカース硬さが660HV以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の鍛造部材。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の鍛造部材の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の鍛造用材料を鍛造加工する工程と、
    鍛造された前記鍛造用材料に焼入焼戻し処理をする工程と、
    を備え、
    前記鍛造加工を、前記鍛造用材料に対する側方押出しとし、
    前記側方押出しによって、前記基部および前記突出部を成形し、
    前記突出部は、前記側方押出しに際して、前記内側突部が前記外側突部内に入り込んだ状態とし、
    前記突出部を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける
    ことを特徴とする鍛造部材の製造方法。
  8. 前記焼入焼戻し処理が、高周波焼入焼戻し処理であることを特徴とする請求項7に記載の鍛造部材の製造方法。
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