JP2021148625A - 磁気センサ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気検出素子と磁界を発生する導線とを含む磁気センサ装置において、磁気検出素子に印加される磁界の強度を大きくしながら、導線の抵抗値を低減する。【解決手段】磁気センサ装置1は、コイル11を構成する導線と、複数のMR素子50を含む検出回路12とを備えている。コイル11は、上側コイル部分11Uを含んでいる。上側コイル部分11Uは、導体部分11U2と導体部分11U3を含んでいる。上側コイル部分11U導体部分11U2における上側コイル部分11Uの平均の断面積は、導体部分11U3における上側コイル部分11Uの平均の断面積よりも小さい。導体部分11U2は、導体部分11U2から発生される第1の部分磁界がMR素子50に印加される位置にある。【選択図】図6
Description
本発明は、磁気検出素子と磁界を発生する導線とを含む磁気センサ装置に関する。
近年、種々の用途で、磁気検出素子と磁界を発生するコイルとが一体化された磁気センサ装置が利用されている。コイルは、例えば、磁気検出素子に印加される他の磁界を相殺する目的や、磁気検出素子を所望の状態にセットまたは磁気検出素子をリセットする目的で用いられる。
特許文献1には、磁気検出素子とコイルとが一体化された磁気センサ装置を用いた電流検知装置が記載されている。特許文献1の電流検知装置は、いわゆる磁気平衡式の電流センサである。磁気平衡式の電流センサでは、磁気センサ装置のコイルは、フィードバックコイルとして用いられる。フィードバックコイルは、導体を流れる検出対象電流によって発生する第1の磁界を相殺する第2の磁界を発生する。磁気検出素子は、第1の磁界と第2の磁界の合成磁界を検出する。フィードバックコイルには、合成磁界がゼロに近づくように、磁気検出素子の検出値に応じたフィードバックコイル電流が流れる。磁気平衡式の電流センサは、フィードバックコイル電流の検出値(以下、電流検出値とも言う。)を検出することができるように構成されている。電流検出値は、検出対象電流の値と比例関係にある。従って、電流検出値は、検出対象電流の検出値に相当する。
また、特許文献1には、フィードバックコイルが磁気検知素子に対向する素子対向部と素子対向部以外の部分とを含むことと、素子対向部におけるコイル線路の幅寸法を、素子対向部以外の部分におけるコイル線路の幅寸法よりも小さくすることが記載されている。
特許文献2には、外部磁界を相殺する、あるいはうち消す目的で磁気抵抗素子の位置に磁界を生じさせるコイル(導体)と、磁気抵抗素子の磁気ドメインをセット/リセットするコイル(導体)とが記載されている。特許文献2では、これらのコイルは、磁気抵抗素子に対向する部分において相対的に大きい幅を有し、磁気抵抗素子に対向しない部分において相対的に小さい幅を有している。
特許文献3には、磁界検知素子の内部磁化をフリップするフリップ磁界を印加するコイル(フリップ導体)が記載されている。また、特許文献3には、磁界感知素子の端部分において相対的に小さい幅を有し、磁界感知素子の中心部分において相対的に大きい幅を有するフリップ導体ストライプを配列することが記載されている。
特許文献4には、磁気抵抗検出素子を初期化する磁場と磁気抵抗効果素子を較正するための磁場を生成するコイルが記載されている。特許文献4では、このコイルは、磁気抵抗効果素子に対向する部分において、磁気抵抗素子に対向しない部分における幅以上の幅を有している。
磁気検出素子に印加される他の磁界を相殺する目的でコイルを用いる場合、コイルが発生する磁界の強度が十分に大きくないと、他の磁界の強度によっては、他の磁界を完全に相殺することができない。相殺可能な磁界の強度を大きくするためには、コイルにおける電流密度を大きくすることが必要である。同様に、磁気検出素子を所望の状態にセットまたは磁気検出素子をリセットする目的でコイルを用いる場合、磁気検出素子に十分な強度の磁界を印加するためには、コイルにおける電流密度を大きくすることが必要である。
電流密度を大きくする方法としては、例えば、コイルを構成する導線の幅を小さくする方法がある。しかし、コイル全体で導線の幅を小さくすると、コイルの抵抗値が大きくなり、消費電力や発熱量が大きくなってしまう。
特許文献1には、前述のように、素子対向部におけるコイル線路の幅寸法を、素子対向部以外の部分におけるコイル線路の幅寸法よりも小さくすることが記載されている。しかし、特許文献1に記載されたフィードバックコイルでは、フィードバックコイル全体に対する素子対向部分の割合が比較的大きく、フィードバックコイルの抵抗値を十分に低減することができない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁気検出素子と磁界を発生する導線とを含む磁気センサ装置であって、磁気検出素子に印加される磁界の強度を大きくしながら、導線の抵抗値を低減することができるようにした磁気センサ装置を提供することにある。
本発明の磁気センサ装置は、外部磁界を検出する磁気検出素子と、電流が流れる導線とを備えている。導線は、一方向から見て延在するように連続する第1の導体部分および第2の導体部分を含んでいる。電流が流れる方向に対して垂直な導線の断面積は、第1の導体部分から第2の導体部分にかけて変化する。第1の導体部分における導線の平均の断面積は、第2の導体部分における導線の平均の断面積よりも小さい。第1の導体部分は、電流に起因して第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が磁気検出素子に印加される位置にある。第2の導体部分は、電流に起因して第2の導体部分から発生される第2の部分磁界が磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは磁気検出素子に印加される第2の部分磁界の強度が、磁気検出素子に印加される第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にある。
本発明の磁気センサ装置において、導線は、更に、第1の導体部分に対して第2の導体部分とは反対側に位置する第3の導体部分を含んでいてもよい。第1ないし第3の導体部分は、一方向から見て延在するように連続してもよい。電流が流れる方向に対して垂直な導線の断面積は、第1の導体部分から第3の導体部分にかけて変化してもよい。第3の導体部分における導線の平均の断面積は、第1の導体部分における導線の平均の断面積よりも大きくてもよい。第3の導体部分は、電流に起因して第3の導体部分から発生される第3の部分磁界が磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは磁気検出素子に印加される第3の部分磁界の強度が、磁気検出素子に印加される第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にあってもよい。
また、本発明の磁気センサ装置は、検出対象電流を検出する電流センサとして用いられてもよい。この場合、導線は、検出対象電流によって発生する第1の磁界を相殺する第2の磁界を発生するためのコイルを構成してもよい。磁気検出素子は、第1の磁界と第2の磁界の合成磁界を検出する。また、磁気検出素子は、磁気抵抗効果素子であってもよい。
また、本発明の磁気センサ装置において、磁気検出素子は、磁気抵抗効果素子であってもよい。磁気抵抗効果素子は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、外部磁界に応じて方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層とを含んでいる。導線は、自由層の第2の磁化の方向を所定の方向に向かせるための磁界を発生するためのコイルを構成してもよい。この場合、磁気センサ装置は、更に、磁気検出素子を支持する支持部材を備えていてもよい。支持部材は、磁気検出素子に対向する上面と、上面とは反対側に位置する下面とを有している。支持部材の上面は、下面に対して傾斜した傾斜部を含んでいてもよい。磁気検出素子と、第1の導体部分の少なくとも一部と、第2の導体部分の少なくとも一部は、傾斜部の上に配置されていてもよい。また、支持部材の下面に垂直な方向における導線の厚みは、第1の導体部分から第2の導体部分にかけて変化してもよい。第1の導体部分における導線の平均の厚みは、第2の導体部分における導線の平均の厚みよりも小さくてもよい。
本発明の磁気センサ装置は、電流が流れる導線を備え、導線は、第1の導体部分および第2の導体部分を含んでいる。本発明では、第1の導体部分における導線の平均の断面積は、第2の導体部分における導線の平均の断面積よりも小さい。また、本発明では、第1の導体部分は、第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が磁気検出素子に印加される位置にあり、第2の導体部分は、第2の導体部分から発生される第2の部分磁界が磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは磁気検出素子に印加される第2の部分磁界の強度が、磁気検出素子に印加される第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にある。これにより、本発明によれば、磁気検出素子に印加される磁界の強度を大きくしながら、導線の抵抗値を低減することができるという効果を奏する。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサ装置を含む電流センサステムの構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ装置1は、導体を流れる検出対象電流の値を検出する電流センサとして用いられる。図1には、検出対象電流が流れる導体がバスバー2である例を示している。磁気センサ装置1は、バスバー2の近傍に配置される。以下、検出対象電流を、対象電流Itgと記す。バスバー2の周囲には、対象電流Itgによって磁界3が発生する。磁気センサ装置1は、磁界3が印加される位置に配置されている。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサ装置を含む電流センサステムの構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ装置1は、導体を流れる検出対象電流の値を検出する電流センサとして用いられる。図1には、検出対象電流が流れる導体がバスバー2である例を示している。磁気センサ装置1は、バスバー2の近傍に配置される。以下、検出対象電流を、対象電流Itgと記す。バスバー2の周囲には、対象電流Itgによって磁界3が発生する。磁気センサ装置1は、磁界3が印加される位置に配置されている。
磁気センサ装置1は、外部磁界を検出する磁気検出素子と、電流が流れる導線とを備えている。本実施の形態では特に、磁気センサ装置1は、複数の磁気検出素子を備えている。導線は、後述するコイルを構成する。
次に、磁気センサ装置1の構成について詳しく説明する。始めに、磁気センサ装置1の本体部10について説明する。図2は、磁気センサ装置1の本体部10を示す断面図である。磁気センサ装置1は、磁気平衡式電流センサである。図2に示したように、磁気センサ装置1は、前記導線によって構成されたコイル11と、前記複数の磁気検出素子を含む検出回路12とを備えている。コイル11および検出回路12は、後述する複数の絶縁層によって一体化され、磁気センサ装置1の本体部10を構成する。磁気センサ装置1の本体部10は、バスバー2とは独立している。
ここで、図1および図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、図1に示した対象電流Itgが流れる方向をY方向とする。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。また、以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。
磁気センサ装置1の本体部10は、バスバー2の上方または下方に配置される。以下、本体部10がバスバー2の上方に配置された例を示す。
ここで、対象電流Itgによって発生する磁界3のうち、検出回路12によって検出可能な磁界を第1の磁界H1と言う。コイル11は、第1の磁界H1を相殺する第2の磁界H2を発生するためのものである。検出回路12は、複数の磁気検出素子によって、第1の磁界H1と第2の磁界H2の合成磁界を、検出すべき磁界(検出対象磁界)である対象磁界として検出すると共に、対象磁界の強度に応じた磁界検出値Sを生成する。第1の磁界H1と第2の磁界H2は、後で説明する図3に示されている。
本実施の形態では、第1の磁界H1の方向と、第2の磁界H2の方向と、対象磁界の方向は、X方向に平行な方向である。検出回路12の構成については、後で詳しく説明する。
図2に示したように、磁気センサ装置1は、更に、基板61と、絶縁層62,63,64とを備えている。絶縁層62は、基板61の上に配置されている。検出回路12は、絶縁層62の上に配置されている。絶縁層63は、検出回路12および絶縁層62を覆うように配置されている。絶縁層64は、絶縁層63の上に配置されている。コイル11は、基板61に接触しないように、絶縁層62〜64に埋め込まれている。
磁気センサ装置1は、更に、図示しない磁性層を備えていてもよい。磁性層は、対象電流Itgによって発生する磁束の一部を取り込んで、磁性層が無い場合に比べて、第1の磁界H1の絶対値を小さくする機能を有している。磁性層は、例えば、絶縁層64の上に配置される。
次に、図3を参照して、磁気センサ装置1の、本体部10以外の部分について説明する。図3は、磁気センサ装置1の構成を示すブロック図である。図3に示したように、磁気センサ装置1は、更に、フィードバック回路30と、電流検出器40とを備えている。フィードバック回路30は、磁界検出値Sに応じて、第2の磁界H2を発生させるためのフィードバック電流を制御してコイル11に流す。電流検出器40は、コイル11に流れるフィードバック電流の検出値を生成する。電流検出器40は、例えば、フィードバック電流の電流路に挿入された抵抗器である。この抵抗器の両端の電位差は、フィードバック電流の検出値に相当する。以下、電流検出器40によって生成されるフィードバック電流の検出値を、電流検出値と言う。電流検出値は、対象電流Itgの値と比例関係にある。従って、電流検出値は、対象電流Itgの検出値に相当する。
フィードバック回路30は、フィードバック制御回路31を含んでいる。フィードバック制御回路31は、磁界検出値Sに応じて制御されたフィードバック電流を発生してコイル11に供給する。
次に、検出回路12の構成について詳しく説明する。前述のように、検出回路12は、複数の磁気検出素子を含んでいる。磁気検出素子は、磁気抵抗効果素子であってもよいし、ホール素子であってもよい。以下、磁気抵抗効果素子を、MR素子と記す。MR素子は、スピンバルブ型のMR素子でもよいし、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子でもよい。本実施の形態では特に、検出回路12は、複数の磁気検出素子として、複数のスピンバルブ型のMR素子50を含んでいる。
図5は、MR素子50を示す斜視図である。MR素子50は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層52と、外部磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層54と、磁化固定層52と自由層54の間に配置されたギャップ層53とを含んでいる。MR素子50は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層53はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層53は非磁性導電層である。MR素子50では、自由層54の磁化の方向が磁化固定層52の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。MR素子50において、自由層54は、磁化容易軸方向が、磁化固定層52の磁化の方向に直交する方向となる形状異方性を有している。
MR素子50は、更に、反強磁性層51を含んでいる。反強磁性層51、磁化固定層52、ギャップ層53および自由層54は、この順に積層されている。反強磁性層51は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層52との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層52の磁化の方向を固定する。
図4は、検出回路12の回路構成を示す回路図である。検出回路12は、電源端V1と、グランド端G1と、2つの信号出力端E1,E2と、差分検出器21と、4つの抵抗部R1,R2,R3,R4を有している。
抵抗部R1は、電源端V1と信号出力端E1との間に設けられている。抵抗部R2は、信号出力端E1とグランド端G1との間に設けられている。抵抗部R3は、信号出力端E2とグランド端G1との間に設けられている。抵抗部R4は、電源端V1と信号出力端E2との間に設けられている。電源端V1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランド端G1はグランドに接続される。
抵抗部R1〜R4の各々は、少なくとも1つのMR素子50を含んでいる。抵抗部R1,R3の各々におけるMR素子50の磁化固定層52の磁化の方向は第1の磁化方向である。抵抗部R2,R4の各々におけるMR素子50の磁化固定層52の磁化の方向は、第1の磁化方向とは反対方向である第2の磁化方向である。ここで、第1の磁化方向および第2の磁化方向に平行な方向を感磁方向と言う。MR素子50の自由層54は、感磁方向に直交する方向を容易軸とする形状異方性を有することが好ましい。
検出回路12には、対象電流Itgによって発生する磁界3とコイル11が発生する磁界が印加される。検出回路12は、印加される上記の2つの磁界の方向が互いに反対方向またはほぼ反対方向になる位置に配置され、且つ上記感磁方向が、印加される上記の2つの磁界の方向に対して平行またはほぼ平行になる姿勢で配置されている。
この例では、対象電流Itgによって発生して検出回路12に印加される磁界における上記感磁方向の成分が第1の磁界H1である。また、コイル11が発生して検出回路12に印加される磁界における上記感磁方向の成分が第2の磁界H2である。
前述のように、第1の磁界H1の方向と、第2の磁界H2の方向は、X方向に平行な方向である。この場合、図4に示したように、検出回路12は、第1の磁化方向がX方向になり、第2の磁化方向が−X方向になるように配置される。なお、第1および第2の磁化方向は、MR素子50の作製の精度および検出回路12のアライメントの精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
検出回路12では、対象磁界の強度に応じて、信号出力端E1,E2間の電位差が変化する。差分検出器21は、信号出力端E1,E12の電位差に対応する信号を磁界検出値Sとして出力する。なお、第1の磁界H1と第2の磁界H2の大小関係に応じて、対象磁界の強度、信号出力端E1,E2間の電位差、ならびに磁界検出値Sは、正の値または負の値となり得る。
次に、コイル11すなわち導線の構成および形状について詳しく説明する。コイル11は、検出回路12の周りに巻回されている。図2および図3に示したように、本実施の形態では、コイル11は、検出回路12の上方に位置する上側コイル部分11Uと、検出回路12の下方に位置する下側コイル部分11Lとを含んでいる。上側コイル部分11Uでは、Y方向に電流が流れる。下側コイル部分11Lでは、−Y方向に電流が流れる。
以下、上側コイル部分11Uの構成および形状について説明する。図6は、上側コイル部分11Uの平面図である。上側コイル部分11Uは、一方向から見て延在するように連続する複数の導体部分11U1,11U2,11U3,11U4,11U5,11U6,11U7,11U8,11U9を含んでいる。図6では、導体部分11U1〜11U9の境界を点線で示している。導体部分11U1〜11U9は、電流が流れる方向(Y方向)にこの順に並んでいる。
導体部分11U1〜11U9は、全体的に直線的な方向に延在している。具体的には、導体部分11U1〜11U9は、Y方向に平行な方向に沿って延在している。なお、「全体的に直線的な方向に延在している」という表現は、複数の導体部分が直線に沿って延在する場合の他、複数の導体部分が曲線に沿って延在する場合または複数の導体部分が部分的に蛇行する場合であっても、延在方向に直交する特定の方向から見れば、全体的には、複数の導体部分が直線的な方向かほぼ直線的な方向に延在する場合も含むという趣旨である。また、この表現は、複数の導体部分がU字状に延在する場合や複数の導体部分が回転方向に沿って延在する場合等のように、複数の導体部分が、所定の位置から離れた後に、所定の位置に戻ってくるように延在する場合は含まないという趣旨でもある。また、複数の導体部分が、ほぼ同じ長さの2つの線分からなる折れ線に沿って延在する場合、2つの線分がなす角度が鈍角であれば、「全体的に直線的な方向に延在している」と言えるが、2つの線分がなす角度が90°以下の角度であれば、「全体的に直線的な方向に延在している」とは言えない。
導体部分11U1〜11U9のうち隣接する任意の2つの導体部分に注目すると、Z方向に平行な方向における上側コイル部分11Uの寸法は一定であるが、X方向に平行な方向における上側コイル部分11Uの寸法は、2つの導体部分の一方から他方にかけて変化する。そのため、電流が流れる方向(Y方向)に対して垂直な上側コイル部分11Uの断面積は、2つの導体部分の一方から他方にかけて変化する。なお、以下の説明において、単に上側コイル部分11Uの断面積と言うときは、上側コイル部分11Uの、電流が流れる方向に対して垂直な断面の面積を指すものとする。
以下、X方向に平行な方向における寸法を幅と言い、Z方向に平行な方向における寸法を厚みという。2つの導体部分の一方における上側コイル部分11Uの平均の幅は、他方における上側コイル部分11Uの平均の幅よりも小さい。そのため、2つの導体部分の一方における上側コイル部分11Uの平均の断面積は、他方における上側コイル部分11Uの平均の断面積よりも小さくなる。なお、導体部分において所定の間隔毎に得られる幅(断面積)の平均値を「平均の幅(断面積)」としてもよいし、導体部分における幅(断面積)の最大値と最小値の平均値を「平均の幅(断面積)」と見なしてもよい。
ここで、2つの導体部分のうち、上側コイル部分11Uの平均の断面積が小さい方の導体部分を第1の導体部分と言い、上側コイル部分11Uの平均の断面積が大きい方の導体部分を第2の導体部分と言う。また、第1の導体部分に対して第2の導体部分とは反対側に位置して第1の導体部分に連続する導体部分を、第3の導体部分と言う。本実施の形態では、上側コイル部分11Uの厚みは一定であるが、上側コイル部分11Uの幅は、第1の導体部分から第3の導体部分にかけて変化する。そのため、上側コイル部分11Uの断面積は、第1の導体部分から第3の導体部分にかけて変化する。第2および第3の導体部分の各々における上側コイル部分11Uの平均の幅は、第1の導体部分における上側コイル部分11Uの平均の幅よりも大きい。そのため、第1ないし第3の導体部分に注目すると、上側コイル部分11Uは、第1の導体部分においてくびれた形状になる。また、第2および第3の導体部分の各々における上側コイル部分11Uの平均の断面積は、第1の導体部分における上側コイル部分11Uの平均の断面積よりも大きくなる。
第1の導体部分は、コイル11を流れる電流に起因して第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が磁気検出素子すなわちMR素子50に印加される位置にある。第2および第3の導体部分は、コイル11を流れる電流に起因して第2および第3の導体部分から発生される第2および第3の部分磁界が磁気検出素子すなわちMR素子50に印加されない位置か、あるいはMR素子50に印加される第2および第3の部分磁界の各々の強度が、MR素子50に印加される第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にある。言い換えると、MR素子50は、第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が印加され、且つ第2および第3の導体部分から発生される第2および第3の部分磁界が印加されない位置か、あるいは第1ないし第3の部分磁界が印加され、且つ第2および第3の部分磁界の各々の強度が第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にある。
図6には、検出回路12の抵抗部R1〜R4と、抵抗部R1〜R4の各々に含まれるMR素子50の位置および姿勢を示している。なお、図6では、理解を容易にするために、抵抗部R1〜R4の各々に含まれるMR素子50の数を2つにしている。しかし、抵抗部R1〜R4の各々に含まれるMR素子50の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
本実施の形態では特に、導体部分11U2,11U4,11U6,11U8は、第1の導体部分に対応する。また、導体部分11U1,11U3,11U5,11U7,11U9は、第2の導体部分または第3の導体部分に対応する。
抵抗部R1のMR素子50には、主に、導体部分11U8から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R1のMR素子50に印加される導体部分11U7,11U9の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R1のMR素子50に印加される導体部分11U8から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11U7,11U9の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R1のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R2のMR素子50には、主に、導体部分11U6から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R2のMR素子50に印加される導体部分11U5,11U7の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R2のMR素子50に印加される導体部分11U6から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11U5,11U7の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R2のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R3のMR素子50には、主に、導体部分11U4から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R3のMR素子50に印加される導体部分11U3,11U5の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R3のMR素子50に印加される導体部分11U4から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11U3,11U5の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R3のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R4のMR素子50には、主に、導体部分11U2から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R4のMR素子50に印加される導体部分11U1,11U3の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R4のMR素子50に印加される導体部分11U2から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11U1,11U3の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R4のMR素子50に印加されなくてもよい。
なお、図6に示した例では、X方向に平行な方向における上側コイル部分11Uの寸法は、連続的に変化している。そのため、上側コイル部分11Uの断面積も、連続的に変化している。しかし、上側コイル部分11Uの上記寸法と上側コイル部分11Uの断面積は、ステップ状に変化してもよいし、導体部分の少なくとも一部において一定であってもよい。
次に、下側コイル部分11Lの構成および形状について説明する。本実施の形態では、下側コイル部分11Lの構成および形状は、上側コイル部分11Uの構成および形状と同様である。図7は、下側コイル部分11Lの平面図である。下側コイル部分11Lは、一方向から見て延在するように連続する複数の導体部分11L1,11L2,11L3,11L4,11L5,11L6,11L7,11L8,11L9を含んでいる。図7では、導体部分11L1〜11L9の境界を点線で示している。導体部分11L1〜11L9は、電流が流れる方向(−Y方向)にこの順に並んでいる。
導体部分11L1〜11L9は、全体的に直線的な方向に延在している。導体部分11L1〜11L9のうち隣接する任意の2つの導体部分に注目すると、下側コイル部分11Lの厚みは一定であるが、下側コイル部分11Lの幅は、2つの導体部分の一方から他方にかけて変化する。そのため、電流が流れる方向(−Y方向)に対して垂直な下側コイル部分11Lの断面積は、2つの導体部分の一方から他方にかけて変化する。なお、以下の説明において、単に下側コイル部分11Lの断面積と言うときは、下側コイル部分11Lの、電流が流れる方向に対して垂直な断面の面積を指すものとする。
2つの導体部分の一方における下側コイル部分11Lの平均の幅は、他方における下側コイル部分11Lの平均の幅よりも小さい。2つの導体部分の一方における下側コイル部分11Lの平均の断面積は、他方における下側コイル部分11Lの平均の断面積よりも小さくなる。
上側コイル部分11Uと同様に、2つの導体部分のうち、下側コイル部分11Lの平均の断面積が小さい方の導体部分を第1の導体部分と言い、下側コイル部分11Lの平均の断面積が大きい方の導体部分を第2の導体部分と言う。また、第1の導体部分に対して第2の導体部分とは反対側に位置して第1の導体部分に連続する導体部分を、第3の導体部分と言う。本実施の形態では、下側コイル部分11Lの厚みは一定であるが、下側コイル部分11Lの幅は、第1の導体部分から第3の導体部分にかけて変化する。そのため、下側コイル部分11Lの断面積は、第1の導体部分から第3の導体部分にかけて変化する。第2および第3の導体部分の各々における下側コイル部分11Lの平均の幅は、第1の導体部分における下側コイル部分11Lの平均の幅よりも大きい。そのため、第1ないし第3の導体部分に注目すると、下側コイル部分11Lは、第1の導体部分においてくびれた形状になる。また、第2および第3の導体部分の各々における下側コイル部分11Lの平均の断面積は、第1の導体部分における下側コイル部分11Lの平均の断面積よりも大きくなる。
図7には、検出回路12の抵抗部R1〜R4と、抵抗部R1〜R4の各々に含まれるMR素子50の位置および姿勢を示している。本実施の形態では特に、導体部分11L2,11L4,11L6,11L8は、第1の導体部分に対応する。また、導体部分11L1,11L3,11L5,11L7,11L9は、第2の導体部分または第3の導体部分に対応する。
抵抗部R1のMR素子50には、主に、導体部分11L2から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R1のMR素子50に印加される導体部分11L1,11L3の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R1のMR素子50に印加される導体部分11L2から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11L1,11L3の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R1のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R2のMR素子50には、主に、導体部分11L4から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R2のMR素子50に印加される導体部分11L3,11L5の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R2のMR素子50に印加される導体部分11L4から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11L3,11L5の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R2のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R3のMR素子50には、主に、導体部分11L6から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R3のMR素子50に印加される導体部分11L5,11L7の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R3のMR素子50に印加される導体部分11L6から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11L5,11L7の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R3のMR素子50に印加されなくてもよい。
抵抗部R4のMR素子50には、主に、導体部分11L8から発生される第1の部分磁界が印加される。抵抗部R4のMR素子50に印加される導体部分11L7,11L9の各々から発生される第2の部分磁界の強度は、抵抗部R4のMR素子50に印加される導体部分11L8から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分11L7,11L9の各々から発生される第2の部分磁界は、抵抗部R4のMR素子50に印加されなくてもよい。
なお、図7に示した例では、X方向に平行な方向における下側コイル部分11Lの寸法は、連続的に変化している。そのため、下側コイル部分11Lの断面積も、連続的に変化している。しかし、下側コイル部分11Lの上記寸法と下側コイル部分11Lの断面積は、ステップ状に変化してもよいし、導体部分の少なくとも一部において一定であってもよい。
次に、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、コイル11は、導体部分11U1〜11U9,11L1〜11L9を含んでいる。本実施の形態における導線は、コイル11を構成することから、導線が導体部分11U1〜11U9,11L1〜11L9を含んでいるとも言える。導体部分11U2,11U4,11U6,11U8,11L2,11L4,11L6,11L8は、第1の導体部分に対応する。導体部分11U1,11U3,11U5,11U7,11U9,11L1,11L3,11L5,11L7,11L9は、第2の導体部分または第3の導体部分に対応する。
第1の導体部分は、コイル11を流れる電流に起因して第1の導体部分から発生される磁界がMR素子50に印加される位置にある。上側コイル部分11Uでは、第1の導体部分における上側コイル部分11Uすなわち導線の平均の断面積は、第2および第3の導体部分における上側コイル部分11Uすなわち導線の平均の断面積よりも小さい。同様に、下側コイル部分11Lでは、第1の導体部分における下側コイル部分11Lすなわち導線の平均の断面積は、第2および第3の導体部分における下側コイル部分11Lすなわち導線の平均の断面積よりも小さい。
本実施の形態によれば、コイル11を構成する導線の断面積が、導線全体にわたって第2および第3の導体部分における導線の平均の断面積と同じ場合に比べて、第1の導体部分における電流密度を大きくして、MR素子50に印加される磁界の強度を大きくすることができる。また、本実施の形態によれば、コイル11を構成する導線の断面積が、導線全体にわたって第1の導体部分における導線の平均の断面積と同じ場合に比べて、第2および第3の導体部分における抵抗値を小さくして、導線全体の抵抗値を小さくすることができる。このように、本実施の形態によれば、MR素子50に印加される磁界の強度を大きくしながら、コイル11を構成する導線の抵抗値を低減することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、図8を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ装置を含む磁気センサシステムの概略について説明する。本実施の形態における磁気センサシステム100は、本実施の形態に係る磁気センサ装置101と、磁気センサ装置101が検出すべき磁界(検出対象磁界)である対象磁界MFを発生する磁界発生器5とを備えている。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、図8を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ装置を含む磁気センサシステムの概略について説明する。本実施の形態における磁気センサシステム100は、本実施の形態に係る磁気センサ装置101と、磁気センサ装置101が検出すべき磁界(検出対象磁界)である対象磁界MFを発生する磁界発生器5とを備えている。
磁界発生器5は、回転軸Cを中心として回転可能である。磁界発生器5は、一対の磁石6A,6Bを含んでいる。磁石6A,6Bは、回転軸Cを含む仮想の平面を中心として対称な位置に配置されている。磁石6A,6Bの各々は、N極とS極を有している。磁石6A,6Bは、磁石6AのN極と磁石6BのS極が対向するような姿勢で配置されている。磁界発生器5は、磁石6AのN極から磁石6BのS極に向かう方向の対象磁界MFを発生する。
磁気センサ装置101は、所定の基準位置における対象磁界MFを検出することができる位置に配置されている。基準位置は、回転軸C上にあってもよい。以下の説明では、基準位置は、回転軸C上にあるものとする。磁気センサ装置101は、磁界発生器5が発生する対象磁界MFを検出して、検出値Vsを生成する。検出値Vsは、磁気センサ装置101に対する磁界発生器5の相対的な位置、特に回転位置と対応関係を有している。
磁気センサシステム100は、回転可能な可動部を含む機器における可動部の回転位置を検出する装置として利用することができる。このような機器としては、例えば産業用ロボットの関節がある。図8は、産業用ロボット200に磁気センサシステム100を適用した例を示している。
図8に示した産業用ロボット200は、可動部201と、可動部201を回転可能に支持する支持部202とを含んでいる。可動部201と支持部202の連結部分は関節である。可動部201は、回転軸Cを中心として回転する。磁気センサシステム100を産業用ロボット200の関節に適用する場合には、例えば、支持部202に磁気センサ装置101を固定し、可動部201に磁石6A,6Bを固定すればよい。
ここで、図8に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、回転軸Cに平行な一方向(図8では奥から手前に向かう方向)をX方向とする。図8では、Y方向を右側に向かう方向として表し、Z方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。対象磁界MFの方向は、YZ平面内において、回転軸C上の基準位置を中心として回転する。
磁気センサ装置101は、外部磁界を検出する磁気検出素子と、電流が流れる導線とを備えている。本実施の形態では特に、磁気検出素子はMR素子である。また、磁気センサ装置101は、複数のMR素子を備えている。導線は、後述するコイルを構成する。
次に、図9ないし図11を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ装置101の構成について説明する。図9は、磁気センサ装置101の一断面を示す断面図である。図10は、磁気センサ装置101を示す平面図である。図11は、磁気センサ装置101の回路構成を示す回路図である。
磁気センサ装置101は、8つのMR素子111,112,113,114,115,116,117,118と、MR素子111〜118を支持する支持部材165とを備えている。MR素子111〜118の各々は、対象磁界MFを検出することができるように構成されている。支持部材165は、例えば、SiO2等の絶縁材料よりなる絶縁層によって構成されている。
図9に示したように、支持部材165は、MR素子111〜118に対向する上面165aと、上面165aとは反対側に位置する下面165bとを有している。上面165aは、支持部材165におけるZ方向の端に位置する。下面165bは、支持部材165における−Z方向の端に位置する。下面165bは、XY平面に平行である。
支持部材165の上面165aは、ZX平面に対して対称な2つの傾斜部165a1,165a2を含んでいる。傾斜部165a1,165a2の各々は、その全体がYZ平面に垂直且つ下面165bに対して傾斜している。
支持部材165の上面165aは、更に、3つの平坦部165a3,165a4,165a5を含んでいる。平坦部165a3は、傾斜部165a1の下端部に接続されている。平坦部165a4は、傾斜部165a2の下端部に接続されている。平坦部165a5は、傾斜部165a1の上端部と傾斜部165a2の上端部に接続されている。平坦部165a3〜165a5は、いずれもXY平面に平行である。
なお、磁気センサ装置101の作製の精度等の観点から、傾斜部165a1,165a2は、湾曲していてもよい。この場合、傾斜部165a1の上端部と傾斜部165a2の上端部は、互いに接続されていてもよい。
MR素子111〜114は、傾斜部165a1の上に配置されている。MR素子115〜116は、傾斜部165a2の上に配置されている。なお、MR素子111〜118と支持部材165との間には、後述する下部電極が介在している。また、図10に示したように、MR素子111〜114は、−X方向に沿ってこの順に一列に並んでいる。MR素子115〜118は、MR素子111〜114の−Y方向の先にある位置において、−X方向に沿ってこの順に一列に並んでいる。
MR素子111,115は、Y方向に平行な方向おける平坦部165a5の中央と交差するXZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子112,116は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子113,117は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子114,118は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。
磁気センサ装置101は、更に、前記導線によって構成されたコイル130を備えている。MR素子111〜118とコイル130は、一体化されている。コイル130は、MR素子111〜118に印加するための磁界であるコイル磁界を発生する。
コイル130は、コイル130を構成する導線の長手方向の両端の位置する第1の端部130aおよび第2の端部130bを有している。第1および第2の端部130a,130bは、図示しない電源に接続されている。また、コイル130は、MR素子111〜118の周りに巻回されている。本実施の形態では特に、コイル130は、MR素子111〜118の各々に、X方向または−X方向のコイル磁界が印加されるように巻回されている。例えば、第1の端部130aから第2の端部130bに向かう方向に電流を流すと、MR素子111,113,115,117の各々には−X方向のコイル磁界が印加され、MR素子112,114,116,118の各々にはX方向のコイル磁界が印加される。第2の端部130bから第1の端部130aに向かう方向に電流を流すと、MR素子111,113,115,117の各々には−X方向のコイル磁界が印加され、MR素子112,114,116,118の各々にはX方向のコイル磁界が印加される。
コイル130は、支持部材165の下面165bよりもZ方向側に位置する上側コイル部分130Uと、支持部材165の下面165bよりも−Z方向側に位置する下側コイル部分130Lとを含んでいる。図10では、下側コイル部分130Lを破線で示している。
磁気センサ装置101は、更に、MR素子111〜118を電気的に接続する複数の下部電極141および複数の上部電極142と、基板161と、絶縁層162,163,164,166,167,168とを備えている。絶縁層162は、基板161の上に配置されている。下側コイル部分130Lは、絶縁層162の上に配置された複数の第1層130L1と、複数の第1層130L1の上に配置された複数の第2層130L2とを含んでいる。絶縁層163は、絶縁層162の上において複数の第1層130L1の周囲に配置されている。絶縁層164は、第1層130L1および絶縁層163の上において第2層130L2の周囲に配置されている。支持部材165は、第2層130L2および絶縁層164の上に配置されている。
複数の下部電極141は、支持部材165の上面165aの上に配置されている。なお、複数の下部電極141の各々は、主に、支持部材165の上面165aのうち、傾斜部165a1または傾斜部165a2の上に配置されている。絶縁層166は、支持部材165の上面165aの上において複数の下部電極141の周囲に配置されている。MR素子111〜118は、複数の下部電極141の上に配置されている。絶縁層167は、複数の下部電極141および絶縁層166の上においてMR素子111〜118の周囲に配置されている。複数の上部電極142は、MR素子111〜118および絶縁層167の上に配置されている。絶縁層168は、複数の上部電極142および絶縁層167の上に配置されている。なお、図10では、複数の下部電極141、複数の上部電極142および絶縁層166〜168を省略している。
上側コイル部分130Uは、主に、絶縁層168の上に配置されている。支持部材165および絶縁層166〜168には、絶縁層168の上面から支持部材165の下面165bにかけて貫通する複数の貫通孔が形成されている。上側コイル部分130Uと下側コイル部分130Lは、複数の貫通孔を通して互いに接続されている。
複数の下部電極141および複数の上部電極142は、例えば、Cu等の導電材料よりなる。基板161は、例えば、Si等の半導体よりなる半導体基板である。絶縁層162〜164,166〜168は、例えば、SiO2等の絶縁材料よりなる。
磁気センサ装置101は、更に、上側コイル部分130Uと絶縁層168を覆う図示しない絶縁層を備えている。図示しない絶縁層は、例えば、SiO2等の絶縁材料よりなる。
なお、下側コイル部分130Lの第2層130L2と絶縁層164は、設けられていなくてもよい。この場合、支持部材165は、下側コイル部分130Lの第1層130L1および絶縁層163の上に配置される。
図11に示したように、磁気センサ装置101は、更に、2つの電源端V11,V12と、グランド端G11と、4つの信号出力端E11,E12,E21,E22と、2つの差分検出器22,23とを備えている。MR素子111は、電源端V11と信号出力端E11との間に設けられている。MR素子112は、信号出力端E11とグランド端G11との間に設けられている。MR素子113は、信号出力端E12とグランド端G11との間に設けられている。MR素子114は、電源端V11と信号出力端E12との間に設けられている。電源端V11には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランド端G11はグランドに接続される。差分検出器22は、信号出力端E11,E12の電位差に対応する信号を検出信号S1として出力する。
MR素子115は、電源端V12と信号出力端E21との間に設けられている。MR素子116は、信号出力端E21とグランド端G11との間に設けられている。MR素子117は、信号出力端E22とグランド端G11との間に設けられている。MR素子118は、電源端V12と信号出力端E22との間に設けられている。電源端V12には、電源端V11と同様に、所定の大きさの電源電圧が印加される。差分検出器22は、信号出力端E21,E22の電位差に対応する信号を検出信号S2として出力する。
磁気センサ装置101は、更に、検出信号S1,S2に基づいて検出値Vsを生成する検出値生成回路24を備えている。検出値生成回路24は、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)あるいはマイクロコンピュータによって構成されている。検出値Vsの生成方法については、後で説明する。
次に、MR素子111〜118の構成について詳しく説明する。MR素子111〜118の各々は、第1の実施の形態における図5を参照して説明したMR素子50と同様に、スピンバルブ型のMR素子である。MR素子111〜118の各々の構成は、MR素子50の構成と同じである。すなわち、MR素子111〜118の各々は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層52と、外部磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層54と、磁化固定層52と自由層54の間に配置されたギャップ層53と、反強磁性層51とを含んでいる。
個々の下部電極141は細長い形状を有している。下部電極141の長手方向に隣接する2つの下部電極141の間には、間隙が形成されている。下部電極141の上面上において、長手方向の一端の近傍に、MR素子111〜118のうちの1つのMR素子が配置されている。図示しないが、反強磁性層51、磁化固定層52、ギャップ層53および自由層54は、下部電極141側からこの順に積層されている。
個々の上部電極142は細長い形状を有し、下部電極141の長手方向に隣接する2つの下部電極141上に配置されて隣接する2つのMR素子の自由層54同士を電気的に接続する。なお、層51〜54の配置は、上記の例とは上下が反対でもよい。
本実施の形態では、コイル130が発生するコイル磁界は、MR素子111〜118の各々の自由層54の磁化の方向を所定の方向すなわちX方向または−X方向に向かせるために用いられる。コイル磁界は、MR素子111〜118の各々に一時的に印加されるものであってもよい。これにより、本実施の形態によれば、磁気センサ装置101の使用開始時点における自由層54の磁化の方向を、所定の方向に揃えることができる。
次に、本実施の形態における検出値Vsの生成方法について説明する。以下、MR素子111〜114のうちの任意のMR素子について説明する際には、そのMR素子を符号110Aで表し、MR素子115〜118のうちの任意のMR素子について説明する際には、そのMR素子を符号110Bで表す。また、MR素子110Aを第1のMR素子110Aと言い、MR素子110Bを第2のMR素子110Bと言う。
ここで、第1のMR素子110Aを構成する各層の面に平行な一方向であって、X方向と直交する一方向をU方向とする。図9には、U方向を示している。図9に示したように、U方向は、傾斜部165a1に平行な方向でもある。また、U方向とは反対の方向を、−U方向とする。第1のMR素子110Aは、各層の面がXY平面に対して傾くような姿勢で、傾斜部165a1の上に配置されている。そのため、U方向は、Y方向または−Y方向とは異なる方向になる。本実施の形態では、U方向を、Y方向から−Z方向に向かってαだけ回転した方向とする。なお、αは、0°よりも大きく90°よりも小さい角度である。
図12は、第1のMR素子110Aが検出する対象磁界MFについて説明するための説明図である。図12では、第1のMR素子110Aが対象磁界MFを検出する位置を、記号Paで示している。本実施の形態では、位置Paにおける対象磁界MFの方向と強度は、回転軸C(図8参照)上の基準位置における対象磁界MFの方向と強度と一致するものとする。位置Paにおける対象磁界MFの方向は、位置Paを中心として回転する。以下、位置Paにおける対象磁界MFを、符号MFaで表す。
また、図12では、位置Paを通りY方向に平行な仮想の直線を記号LYaで示し、位置Paを通りZ方向に平行な仮想の直線を記号LZaで示し、位置Paを通りU方向に平行な仮想の直線を記号LUで示している。
磁気センサ装置101は、対象磁界MFaのU方向に平行な方向の成分の強度を検出することができるように、MR素子111〜114の各々の磁化固定層52の磁化の方向と、MR素子111〜114の各々の自由層54の形状異方性が設定されている。図11において、塗りつぶした矢印は、磁化固定層52の磁化の方向を表している。また、図11には、X方向とU方向を示している。図11に示したように、本実施の形態では、MR素子111,113の各々の磁化固定層52の磁化の方向は、U方向であり、MR素子112,114の各々の磁化固定層52の磁化の方向は、−U方向である。また、自由層54は、磁化容易軸方向がX方向に平行な方向となる形状異方性を有している。
図12に示したように、対象磁界MFaは、Y方向に平行な方向の磁界MFayと、Z方向に平行な方向の磁界MFazとの合成磁界と見なすことができる。MR素子111〜114の各々は、磁界MFayのU方向に平行な方向の成分と、磁界MFazのU方向に平行な方向の成分との合成磁界を検出する。以下、U方向に平行な方向の成分をU成分と言い、磁界MFayのU成分と磁界MFazのU成分の合成磁界を、第1の合成磁界と言う。差分検出器22は、第1の合成磁界の強度と対応関係を有する信号を、検出信号S1として出力する。
また、第1の合成磁界の強度は、磁界MFayのU成分の強度と、磁界MFazのU成分の強度との和と等しい。ここで、磁界MFayの強度を記号Byで表し、磁界MFazの強度を記号Bzで表す。強度Byは、磁界MFayの方向がY方向のときに正の値で表し、磁界MFayの方向が−Y方向のときに負の値で表す。強度Bzは、磁界MFazの方向がZ方向のときに正の値で表し、磁界MFazの方向が−Z方向のときに負の値で表す。また、第1の合成磁界の強度の変化に対する検出信号S1の変化の割合を、記号Saで表す。検出信号S1は、下記の式(1)で表される。
S1=Sa*(By*cosα−Bz*sinα) …(1)
なお、U成分の強度は、U成分の方向がU方向となるときに正の値で表し、U成分の方向が−U方向となるときに負の値で表すものとする。磁界MFayのU成分の強度の正負は磁界MFayの強度Byの正負と一致するが、磁界MFazのU成分の強度の正負は磁界MFazの強度Bzの正負とは逆になる。そのため、式(1)では、磁界MFayのU成分の強度を“By*cosα”とし、磁界MFazのU成分の強度を“−Bz*sinα”としている。
また、第2のMR素子110Bの構成する各層の面に平行な一方向であって、X方向と直交する一方向をV方向とする。図9には、V方向を示している。図9に示したように、V方向は、傾斜部165a2に平行な方向でもある。また、V方向とは反対の方向を、−V方向とする。第2のMR素子110Bは、各層の面がXY平面に対して傾くような姿勢で、傾斜部165a2の上に配置されている。そのため、V方向は、Y方向または−Y方向とは異なる方向になる。本実施の形態では、V方向を、Y方向からZ方向に向かってαだけ回転した方向とする。
図13は、第2のMR素子110Bが検出する対象磁界MFについて説明するための説明図である。図13では、第2のMR素子110Bが対象磁界MFを検出する位置を、記号Pbで示している。本実施の形態では、位置Pbにおける対象磁界MFの方向と強度は、回転軸C上の基準位置における対象磁界MFの方向と強度と一致するものとする。位置Pbにおける対象磁界MFの方向は、位置Pbを中心として回転する。以下、位置Pbにおける対象磁界MFを、符号MFbで表す。
また、図13では、位置Pbを通りY方向に平行な仮想の直線を記号LYbで示し、位置Pbを通りZ方向に平行な仮想の直線を記号LZbで示し、位置Pbを通りV方向に平行な仮想の直線を記号LVで示している。
また、磁気センサ装置101は、対象磁界MFbのV方向に平行な方向の成分の強度を検出することができるように、MR素子115〜118の各々の磁化固定層52の磁化の方向と、MR素子115〜118の各々の自由層54の形状異方性が設定されている。図11には、X方向とV方向を示している。なお、図11では、便宜上、V方向をU方向と同じ矢印を用いて示している。図11に示したように、本実施の形態では、MR素子115,117の各々の磁化固定層52の磁化の方向は、V方向であり、MR素子116,118の各々の磁化固定層52の磁化の方向は、−V方向である。また、自由層54は、磁化容易軸方向がX方向に平行な方向となる形状異方性を有している。
図13に示したように、対象磁界MFbは、Y方向に平行な方向の磁界MFbyと、Z方向に平行な方向の磁界MFbzとの合成磁界と見なすことができる。MR素子115〜118の各々は、磁界MFbyのV方向に平行な方向の成分と、磁界MFbzのV方向に平行な方向の成分との合成磁界を検出する。以下、V方向に平行な方向の成分をV成分と言い、磁界MFbyのV成分と磁界MFbzのV成分の合成磁界を、第2の合成磁界と言う。差分検出器23は、第2の合成磁界の強度と対応関係を有する信号を、検出信号S2として出力する。
また、第2の合成磁界の強度は、磁界MFbyのV成分の強度と、磁界MFbzのV成分の強度との和と等しい。ところで、対象磁界MFbの強度と対象磁界MFaの強度は、いずれも、基準位置における対象磁界MFの強度と等しい。そのため、磁界MFbyの強度は磁界MFayの強度と等しくなり、磁界MFbzの強度は磁界MFazの強度と等しくなる。そこで、磁界MFbyの強度を磁界MFayの強度と同様に記号Byで表し、磁界MFbzの強度を磁界MFayの強度と同様に記号Bzで表す。また、第2の合成磁界の強度の変化に対する検出信号S2の変化の割合を、記号Sbで表す。検出信号S2は、下記の式(2)で表される。
S2=Sb*(By*cosα+Bz*sinα) …(2)
なお、V成分の強度は、V成分の方向がV方向となるときに正の値で表し、V成分の方向が−V方向となるときに負の値で表すものとする。磁界MFbyのV成分の強度の正負は磁界MFbyの強度Byの正負と一致し、磁界MFbzのV成分の強度の正負も磁界MFbzの強度Bzの正負と一致する。そのため、式(2)では、磁界MFbyのV成分の強度を“By*cosα”とし、磁界MFbzのV成分の強度を“Bz*sinα”としている。
本実施の形態では、検出値生成回路24は、検出信号S1,S2に基づいて検出値Vsを生成する。検出値生成回路24は、検出値Vsとして、基準位置における対象磁界MFの方向がZ方向に対してなす角度を求めてもよい。なお、この角度は、対象磁界MFの方向がZ方向からY方向に向かって傾いたときに正の値で表し、対象磁界MFの方向がZ方向から−Y方向に向かって傾いたときに負の値で表す。この場合、検出値生成回路24は、まず、検出信号S1,S2に基づいて、基準位置における対象磁界MFのY方向に平行な方向の成分の強度を表す値Bysと、基準位置における対象磁界MFのZ方向に平行な方向の成分の強度を表す値Bzsを算出する。
基準位置における対象磁界MFのY方向の成分の強度は、磁界MFayまたは磁界MFbyの強度Byと等しい。また、第1の合成磁界の強度の変化に対する検出信号S1の変化の割合Saと、第2の合成磁界の強度の変化に対する検出信号S2の変化の割合Sbは、互いに等しいものとする。式(1)におけるSaと式(2)におけるSbをいずれもScに置き換えると、式(1)、(2)から、強度Byは、下記の式(3)で表される。
By=(S2+S1)/(2Sc*cosα) …(3)
検出値生成回路24は、例えば、式(3)の右辺を用いて、値Bysを算出する。なお、Scは、予め求められている。
また、基準位置における対象磁界MFのZ方向の成分の強度は、磁界MFazまたは磁界MFbzの強度Bzと等しい。式(3)と同様に、式(1)におけるSaと式(2)におけるSbをScに置き換えると、式(1)、(2)から、強度Bzは、下記の式(4)で表される。
Bz=(S2−S1)/(2Sc*sinα) …(4)
検出値生成回路24は、例えば、式(4)の右辺を用いて、値Bzsを算出する。
検出値生成回路24は、次に、値Bys,Bzsを用いて、検出値Vsとして、対象磁界MFの方向がZ方向に対してなす角度を求める。具体的には、検出値生成回路24は、例えば、下記の式(5)によって、検出値Vsを生成する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
Vs=90°−atan(Bzs/Bys)
=90°−θs …(5)
=90°−θs …(5)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(5)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Bys,Bzsの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(5)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。検出値生成回路24は、式(5)と、上記のBys,Bzsの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
次に、コイル130の構成および形状について更に詳しく説明する。コイル130の上側コイル部分130Uは、コイル要素131U,132U,133U,134Uを含んでいる。なお、コイル要素とは、コイル130を構成する導線の一部である。図10では、コイル要素131U〜134Uの各々の両端を点線で示している。コイル要素131Uは、Z方向から見てMR素子111,115と重なる位置に配置されている。コイル要素132Uは、Z方向から見てMR素子112,116と重なる位置に配置されている。コイル要素133Uは、Z方向から見てMR素子113,117と重なる位置に配置されている。コイル要素134Uは、Z方向から見てMR素子114,118と重なる位置に配置されている。
図9には、コイル要素131Uを示している。コイル要素131Uは、一方向から見て延在するように連続する2つの導体部分131U1,131U2と、一方向から見て延在するように連続する2つの導体部分131U4,131U5と、導体部分131U3とを含んでいる。図9では、導体部分131U1〜131U5の境界とコイル要素131Uの両端を点線で示している。導体部分131U1〜131U5は、コイル要素131UのY方向の端部からコイル要素131Uの−Y方向の端部に向かう方向に、この順に並んでいる。
導体部分131U1,131U2の各々の少なくとも一部は、傾斜部165a1の上に配置されている。図9に示した例では、導体部分131U1の大部分が傾斜部165a1の上に配置され、導体部分131U2の全体が傾斜部165a1の上に配置されている。また、導体部分131U4,131U5の各々の少なくとも一部は、傾斜部165a2の上に配置されている。図9に示した例では、導体部分131U4の全体が傾斜部165a2の上に配置され、導体部分131U5の大部分が傾斜部165a2の上に配置されている。
導体部分131U1,131U2は、全体的に直線的な方向に延在している。具体的には、導体部分131U1,131U2は、傾斜部165a1に平行な方向に沿って延在している。以下、X方向に平行な方向における寸法を幅と言い、支持部材165の下面165bに垂直な方向における寸法すなわちZ方向に平行な方向における寸法を厚みと言う。コイル要素131Uの幅は一定であるが、コイル要素131Uの厚みは、導体部分131U1から導体部分131U2にかけて変化している。本実施の形態では特に、コイル要素131Uの厚みは、導体部分131U1から導体部分131U2にかけて小さくなっている。そのため、電流が流れる方向に対して垂直なコイル要素131Uの断面積は、導体部分131U1から導体部分131U2にかけて小さくなる。なお、以下の説明において、単にコイル要素131Uの断面積と言うときは、コイル要素131Uの、電流が流れる方向に対して垂直な断面の面積を指すものとする。
導体部分131U2におけるコイル要素131Uの平均の厚みは、導体部分131U1におけるコイル要素131Uの平均の厚みよりも小さい。そのため、導体部分131U2におけるコイル要素131Uの平均の断面積は、導体部分131U1におけるコイル要素131Uの平均の断面積よりも小さくなる。
導体部分131U4,131U5は、全体的に直線的な方向に延在している。具体的には、導体部分131U4,131U5は、傾斜部165a2に平行な方向に沿って延在している。コイル要素131Uの幅は一定であるが、コイル要素131Uの厚みは、導体部分131U4から導体部分131U5にかけて変化している。本実施の形態では特に、コイル要素131Uの厚みは、導体部分131U4から導体部分131U5にかけて小さくなっている。そのため、電流が流れる方向に対して垂直なコイル要素131Uの断面積は、導体部分131U4から導体部分131U5にかけて小さくなる。導体部分131U4におけるコイル要素131Uの平均の厚みは、導体部分131U5におけるコイル要素131Uの平均の厚みよりも小さい。そのため、導体部分131U4におけるコイル要素131Uの平均の断面積は、導体部分131U5におけるコイル要素131Uの平均の断面積よりも小さくなる。
第1の実施の形態と同様に、一方向から見て延在するように連続する2つの導体部分のうち、コイル要素131Uの平均の断面積が小さい方の導体部分を第1の導体部分と言い、コイル要素131Uの平均の断面積が大きい方の導体部分を第2の導体部分と言う。第1の導体部分は、コイル130を流れる電流に起因して第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が磁気検出素子に印加される位置にある。第2の導体部分は、コイル130を流れる電流に起因して第2の導体部分から発生される第2の部分磁界が磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは磁気検出素子に印加される第2の部分磁界の強度が、磁気検出素子に印加される第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にある。本実施の形態では特に、導体部分131U2,131U4は、第1の導体部分に対応する。また、導体部分131U1,131U5は、第2の導体部分に対応する。
MR素子111には、主に、導体部分131U2から発生される第1の部分磁界が印加される。MR素子111に印加される導体部分131U1から発生される第2の部分磁界の強度は、MR素子111に印加される導体部分131U2から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分131U1から発生される第2の部分磁界は、MR素子111に印加されなくてもよい。
MR素子115には、主に、導体部分131U4から発生される第1の部分磁界が印加される。MR素子115に印加される導体部分131U5から発生される第2の部分磁界の強度は、MR素子115に印加される導体部分131U4から発生される第1の部分磁界の強度よりも小さい。導体部分131U5から発生される第2の部分磁界は、MR素子115に印加されなくてもよい。
導体部分131U3は、導体部分131U2と導体部分131U4とを接続している。コイル要素131Uの幅は一定であるが、導体部分131U3におけるコイル要素131Uの平均の厚みは、導体部分131U2,131U4におけるコイル要素131Uの平均の厚みよりも小さい。そのため、導体部分131U3におけるコイル要素131Uの平均の断面積は、導体部分131U2,131U4におけるコイル要素131Uの平均の断面積よりも小さくなる。
コイル要素132U〜134Uの構成は、コイル要素131Uの構成と同様である。上記のコイル要素131Uの導体部分についての一連の説明は、コイル要素132U〜134Uにも当てはまる。上記の一連の説明中の「131」を「132」に置き換え、MR素子111,115をそれぞれMR素子112,116に置き換えれば、コイル要素132Uの導体部分についての説明になる。同様に、上記の一連の説明中の「131」を「133」に置き換え、MR素子111,115をそれぞれMR素子113,117に置き換えれば、コイル要素133Uの導体部分についての説明になる。同様に、上記の一連の説明中の「131」を「134」に置き換え、MR素子111,115をそれぞれMR素子114,118に置き換えれば、コイル要素134Uの導体部分についての説明になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。請求の範囲の要件を満たす限り、第1および第2の導体部分の形状と、第1および第2の導体部分と磁気検出素子の配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。例えば、第1の実施の形態では、MR素子50は、Z方向から見て、上側コイル部分11Uのうち上側コイル部分11Uの幅が最も小さい部分と、下側コイル部分11Lのうち下側コイル部分11Lの幅が最も小さい部分と重なるように配置されている。しかし、MR素子50は、上側コイル部分11Uの幅が最も小さい部分および下側コイル部分11Lの幅が最も小さい部分と重ならないように配置されていてもよい。
また、第1の実施の形態では、コイル11は、上側コイル部分11Uと下側コイル部分11Lの一方のみを含んでいてもよい。あるは、コイル11は、検出回路12の周りに2回以上巻回されていてもよい。
また、第1の実施の形態では、上側コイル部分11Uと下側コイル部分11Lの各々の厚みが変化していてもよい。この場合、上側コイル部分11Uと下側コイル部分11Lの各々の幅は、一定であってもよいし、変化していてもよい。同様に、第2の実施の形態では、コイル要素131U〜134Uの各々の幅が変化していてもよい。この場合、コイル要素131U〜134Uの各々の厚みは、一定であってもよいし、変化していてもよい。
また、第1の実施の形態では、バスバー2に第1および第2の導体部分が形成されていてもよい。この場合、磁気センサ装置1の本体部10は、バスバー2のうち第1および第2の導体部分が形成された部分の上方または下方に配置される。あるいは、バスバー2に第1および第2の導体部分を含む導線が接続されていてもよい。この場合、磁気センサ装置1の本体部10は、バスバー2に接続された導線の上方または下方に配置される。
1…磁気センサ装置、2…バスバー、10…本体部、11…コイル、11L…下側コイル部分、11L1〜11L9…導体部分、11U…上側コイル部分、11U1〜11U9…導体部分、12…検出回路、30…フィードバック回路、31…フィードバック制御回路、40…電流検出器、50…MR素子、61…基板、62〜64…絶縁層、R1〜R4…抵抗部。
特許文献4には、磁気抵抗検出素子を初期化する磁場と磁気抵抗検出素子を較正するための磁場を生成するコイルが記載されている。特許文献4では、このコイルは、磁気抵抗検出素子に対向する部分において、磁気抵抗検出素子に対向しない部分における幅以上の幅を有している。
MR素子111,115は、Y方向に平行な方向における平坦部165a5の中央と交差するXZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子112,116は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子113,117は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。同様に、MR素子114,118は、上記XZ平面を中心として対称またはほぼ対称な位置に配置されている。
コイル130は、コイル130を構成する導線の長手方向の両端の位置する第1の端部130aおよび第2の端部130bを有している。第1および第2の端部130a,130bは、図示しない電源に接続されている。また、コイル130は、MR素子111〜118の周りに巻回されている。本実施の形態では特に、コイル130は、MR素子111〜118の各々に、X方向または−X方向のコイル磁界が印加されるように巻回されている。例えば、第1の端部130aから第2の端部130bに向かう方向に電流を流すと、MR素子111,113,115,117の各々には−X方向のコイル磁界が印加され、MR素子112,114,116,118の各々にはX方向のコイル磁界が印加される。第2の端部130bから第1の端部130aに向かう方向に電流を流すと、MR素子111,113,115,117の各々にはX方向のコイル磁界が印加され、MR素子112,114,116,118の各々には−X方向のコイル磁界が印加される。
MR素子115は、電源端V12と信号出力端E21との間に設けられている。MR素子116は、信号出力端E21とグランド端G11との間に設けられている。MR素子117は、信号出力端E22とグランド端G11との間に設けられている。MR素子118は、電源端V12と信号出力端E22との間に設けられている。電源端V12には、電源端V11と同様に、所定の大きさの電源電圧が印加される。差分検出器23は、信号出力端E21,E22の電位差に対応する信号を検出信号S2として出力する。
また、第2のMR素子110Bを構成する各層の面に平行な一方向であって、X方向と直交する一方向をV方向とする。図9には、V方向を示している。図9に示したように、V方向は、傾斜部165a2に平行な方向でもある。また、V方向とは反対の方向を、−V方向とする。第2のMR素子110Bは、各層の面がXY平面に対して傾くような姿勢で、傾斜部165a2の上に配置されている。そのため、V方向は、Y方向または−Y方向とは異なる方向になる。本実施の形態では、V方向を、Y方向からZ方向に向かってαだけ回転した方向とする。
また、第2の合成磁界の強度は、磁界MFbyのV成分の強度と、磁界MFbzのV成分の強度との和と等しい。ところで、対象磁界MFbの強度と対象磁界MFaの強度は、いずれも、基準位置における対象磁界MFの強度と等しい。そのため、磁界MFbyの強度は磁界MFayの強度と等しくなり、磁界MFbzの強度は磁界MFazの強度と等しくなる。そこで、磁界MFbyの強度を磁界MFayの強度と同様に記号Byで表し、磁界MFbzの強度を磁界MFazの強度と同様に記号Bzで表す。また、第2の合成磁界の強度の変化に対する検出信号S2の変化の割合を、記号Sbで表す。検出信号S2は、下記の式(2)で表される。
Claims (8)
- 外部磁界を検出する磁気検出素子と、
電流が流れる導線とを備え、
前記導線は、一方向から見て延在するように連続する第1の導体部分および第2の導体部分を含み、
前記電流が流れる方向に対して垂直な前記導線の断面積は、前記第1の導体部分から前記第2の導体部分にかけて変化し、
前記第1の導体部分における前記導線の平均の断面積は、前記第2の導体部分における前記導線の平均の断面積よりも小さく、
前記第1の導体部分は、前記電流に起因して前記第1の導体部分から発生される第1の部分磁界が前記磁気検出素子に印加される位置にあり、
前記第2の導体部分は、前記電流に起因して前記第2の導体部分から発生される第2の部分磁界が前記磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは前記磁気検出素子に印加される前記第2の部分磁界の強度が、前記磁気検出素子に印加される前記第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にあることを特徴とする磁気センサ装置。 - 前記導線は、更に、前記第1の導体部分に対して前記第2の導体部分とは反対側に位置する第3の導体部分を含み、
前記第1ないし第3の導体部分は、前記一方向から見て延在するように連続し、
前記電流が流れる方向に対して垂直な前記導線の断面積は、前記第1の導体部分から前記第3の導体部分にかけて変化し、
前記第3の導体部分における前記導線の平均の断面積は、前記第1の導体部分における前記導線の平均の断面積よりも大きく、
前記第3の導体部分は、前記電流に起因して前記第3の導体部分から発生される第3の部分磁界が前記磁気検出素子に印加されない位置か、あるいは前記磁気検出素子に印加される前記第3の部分磁界の強度が、前記磁気検出素子に印加される前記第1の部分磁界の強度よりも小さくなる位置にあることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。 - 検出対象電流を検出する電流センサとして用いられることを特徴とする請求項1または2記載の磁気センサ装置。
- 前記導線は、前記検出対象電流によって発生する第1の磁界を相殺する第2の磁界を発生するためのコイルを構成し、
前記磁気検出素子は、前記第1の磁界と前記第2の磁界の合成磁界を検出することを特徴とする請求項3記載の磁気センサ装置。 - 前記磁気検出素子は、磁気抵抗効果素子であることを特徴とする請求項3または4記載の磁気センサ装置。
- 前記磁気検出素子は、磁気抵抗効果素子であり、
前記磁気抵抗効果素子は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、前記外部磁界に応じて方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層とを含み、
前記導線は、前記自由層の前記第2の磁化の方向を所定の方向に向かせるための磁界を発生するためのコイルを構成することを特徴とする請求項1または2記載の磁気センサ装置。 - 更に、前記磁気検出素子を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記磁気検出素子に対向する上面と、前記上面とは反対側に位置する下面とを有し、
前記支持部材の前記上面は、前記下面に対して傾斜した傾斜部を含み、
前記磁気検出素子と、前記第1の導体部分の少なくとも一部と、前記第2の導体部分の少なくとも一部は、前記傾斜部の上に配置されていることを特徴とする請求項6記載の磁気センサ装置。 - 前記支持部材の前記下面に垂直な方向における前記導線の厚みは、前記第1の導体部分から前記第2の導体部分にかけて変化し、
前記第1の導体部分における前記導線の平均の厚みは、前記第2の導体部分における前記導線の平均の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項7記載の磁気センサ装置。
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