最初の3つの目的は、請求項1、2、および5に記載の方法によって解決される。
請求項1に記載の本発明の方法は、補償係数を判定し、その補償係数は、サンプルからイオン化されたサンプルイオンの量を制御するためのパラメータであり、そのサンプルイオンは、質量分析計のイオン貯蔵装置からそのイオントラップ質量分析器に注入され、次いで、そのイオントラップ質量分析器は、注入されたサンプルイオンの質量分析を実施する。
請求項1に記載の本発明の方法は、以下のステップを含む。
第1のステップにおいて、少なくとも1つの質量スペクトルが、イオントラップ質量分析器によって、少なくとも1つの量のサンプルイオンに対して検出される。その少なくとも1つの量のサンプルイオンは、イオン貯蔵装置からイオントラップ質量分析器に注入される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つの質量スペクトルは、少なくとも1つの事前選択された量のサンプルイオンに対して検出される。第1のステップにおいて質量スペクトルが検出されるサンプルイオンの量は、質量スペクトルの検出が開始される前に選択される。特に、第1のステップにおいて質量スペクトルが検出される全量は、最初の質量スペクトルが検出される前に選択される。事前選択される量の選択は、例えば、制御装置によって、制御装置のインターフェースを介したユーザによって、またはイオントラップ質量分析器を用いて分析される質量分析もしくは特定のクラスのサンプルを選択するユーザによって、提供され得る。少なくとも1つの量のサンプルイオンの事前選択はまた、一定のサンプルイオン流がイオン貯蔵装置に提供される場合、サンプルイオンの、イオン貯蔵装置への少なくとも1つの注入期間の事前選択によっても提供され得る。
一般に、任意の量のサンプルイオン、または任意の注入期間を使用して、第1のステップにおける少なくとも1つの質量スペクトルを検出することができる。これは、最適化された総電荷Qopt未満である現実の総電荷Qrealを有するサンプルイオンの量を使用することが好ましい。これはまた、最適化された総電荷Qoptのイオンパッケージがイオン貯蔵装置に蓄積される場合、最適化された注入期間topt,real未満であるサンプルイオンの、イオン貯蔵装置への注入期間を使用することも好ましい。
請求項1に記載の方法の別の実施形態において、第1のステップで、少なくとも1つの質量スペクトルが判定される、少なくとも1つの量のサンプルイオンは、選択されない。代わりに、定義された期間である特定の期間に、サンプルイオンがイオン源からイオン経路に沿って供給され、イオン光学部品または別のイオン貯蔵装置を介して、イオン貯蔵装置まで供給され得る場合、少なくとも1つの特定の瞬間を選択することができ、そこでは、異なる量のサンプルイオンが、各特定の瞬間でイオン貯蔵装置に蓄積される。イオン貯蔵装置に提供されるサンプルイオンの流れに応じて、特定の量のサンプルイオンが、その特定の期間中の各特定の瞬間の間にイオン貯蔵装置に蓄積され得、次いでイオントラップ質量分析器に注入され得る。例えば、イオン源がゆらぎを有するイオン流を提供している場合、異なる量のサンプルイオンは、異なる瞬間でイオン貯蔵装置に蓄積されることになる。サンプルイオンの蓄積された量の可視総電荷Qv、および/またはそれらの検出された質量スペクトルから導出されたサンプルイオンの質量ピークのm/z値の観測されたシフトによって、少量または大量のサンプルイオンが蓄積されたかどうかを観測することができる。
次のステップにおいて、少なくとも1つの検出された質量スペクトルは、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの相対的なm/zシフトの線形相関のサンプル勾配を判定するために使用され、そのサンプル勾配は、サンプルからイオン化されるイオンが検査対象である場合に、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトル可視総電荷Qvとの相対的なm/zシフトの線形相関の勾配である。したがって、各サンプルは、その固有のサンプル勾配値を有する。サンプル勾配の値は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルから導出される検査対象サンプルイオンの可視総電荷Qvの、検査対象サンプルイオンの総電荷Qrealに対する比に依存する。
両方の相関パラメータである相対的なm/zシフト、および可視総電荷Qvは、イオントラップ質量分析器を用いて検出され、質量分析器でのサンプルイオンの量に依存する場合、サンプルイオンの質量スペクトルにおいて観測される。
サンプル勾配は、質量分析が実施され得るサンプルに対して、サンプルイオンの質量スペクトルで観測された相対的なm/zシフトが、サンプルイオンの検出された質量スペクトルから判定され得る可視総電荷Qvとどのように相関するかを説明する。サンプル勾配を判定し、特に計算するための実施形態が、以下に説明されている。
相対的なm/zシフトの、サンプルの可視総電荷Qvとの相関は、線形関数のサンプル勾配による線形関数であるため、相対的なm/zシフトは、検査対象サンプルイオンの量の任意の観測された可視総電荷Qvに対して判定することができる。
請求項1に記載の本発明の方法の一実施形態では、以下に詳細に説明される空間電荷によって誘起される相対的なm/zシフトの観測可能な差異のみが、異なる量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルから観測される。2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、2つの量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルからの、少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異の判定によって、2つの検出された質量スペクトルから評価される。m/z値の相対的な差異が2つ以上の種のサンプルイオンに対して判定される場合、2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、その2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から、サンプルイオンのm/z値の相対的な差異の典型的な値を導出することによって、その2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から導出される。この典型的な値−2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異−は、好ましくは、m/z値の判定された相対的な差異を平均することによって、m/z値の判定された相対的な差異から、その2つ以上の種のサンプルイオンを導出される。
可視総電荷Qvが、少なくとも1つの検出された質量スペクトルから評価され、かつ/または可視総電荷Qvの差異は、2つの異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルvから評価される。
異なる量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルから観測された相対的なm/zシフトの観測可能な差異の、2つの検出された質量スペクトルから評価された可視総電荷Qv、または2つの検出された質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvの差異との相関を使用して、相対的なm/zシフトの、サンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定することができる。この相関は、異なる量のサンプルイオンの質量スペクトルから導出することができ、そこでは、相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、2つの検出された質量スペクトルのペアから観測されるまた、可視総電荷Qvの対応する差異は、2つの検出された質量スペクトルのこれらのペアから評価される。
請求項1に記載の本発明の方法の別の実施形態において、相対的なm/zシフトは、検出された質量スペクトルから直接評価することができ、その理由は、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z比が既知であり、この少なくとも1つのサンプルイオンの質量ピークが、少なくとも1つの検出された質量スペクトルにおいて識別することができるからである。可視総電荷Qvはまた、この検出された質量スペクトルからも評価される。
相対的なm/zシフトの評価は、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異の判定に基づいている。少なくとも1つのサンプルイオンのm/z比が既知である場合に、検出された質量スペクトルから相対的なm/zシフトを判定する方法のさらなる詳細については、以下に説明されており、この実施形態において適用することができる。
少なくとも1つの検出された質量スペクトルから観測された相対的なm/zシフトの、少なくとも1つの検出された質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvとの相関を使用して、相対的なm/zシフトの、サンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvに対する線形相関のサンプル勾配を判定することができる。この相関は、異なる量のサンプルイオンの質量スペクトル、特に2つの異なる量のサンプルイオンの質量スペクトルから導出することができる。
本発明の方法の一実施形態では、以前に例証したように、2つの量のサンプルイオンの質量スペクトルを使用して、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を計算する。この方法では、質量スペクトルが検出されることになる2つの量のサンプルイオンが選択されていることが好ましい。次いで、線形相関のサンプル勾配は、検出された2つの質量スペクトルを評価することによって、計算され得る。サンプルイオンの検査対象量は、例えば、2つの注入期間を定義することによって選択され得、その期間に、サンプルイオンが、イオン貯蔵装置に注入され、次いで、イオントラップ質量分析器に注入されて、それらのサンプルイオンの質量スペクトルを検出する。
また、サンプルイオンの3つ以上の異なる量の質量スペクトルを使用して、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定することができる。
よって、一実施形態において、サンプル勾配を判定する第1のステップにおいて、相対的なm/zシフトの観測可能な差異と、可視総電荷Qvの差異との比は、異なる量のサンプルイオンのうちの2つの異なるペアの質量スペクトルに対して判定され、次いで、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配は、その異なる量のサンプルイオンのうちの2つの異なるペアに対して判定された比を平均することによって計算されることが可能である。
別の実施形態において、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z比が既知である場合、サンプル勾配を判定する第1のステップにおいて、検出された質量スペクトルから判定された相対的なm/zシフトと、この検出された質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvとの比は、サンプルイオンの少なくとも2つの異なる量の質量スペクトルから判定され、次いで、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配は、サンプルイオンの少なくとも2つの異なる量の質量スペクトルに対して判定された比を平均することによって計算されることが可能である。
別の実施形態において、異なる量のサンプルイオンに対して検出された質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定し、そこでは、線形フィッティングが使用される。このフィッティングは、相対的なm/zシフトと、評価された可視総電荷Qvとの評価された観測可能な差異、および/または可視総電荷Qvの差異を考慮している。線形相関のサンプル勾配の判定の場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたそれらの質量スペクトルにおけるサンプルイオンの相対的なm/zシフトの値を知ることは重要ではない。相対的なm/zシフトの差異、および可視総電荷Qvの相関差異を知れば十分であり得、以下に説明するように、請求項1に記載の本発明の方法のこの実施形態において、また、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配の判定のために、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異、および検出された質量スペクトルの可視総電荷Qvの相関差異を知れば十分でもある。これらの値に基づいて、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフト、および可視総電荷Qvの相関値または可視総電荷Qvの相関差異(以下に説明するように、全可視電荷Qv,spに対する)の観測可能な差異の二次元データセットを作成することができ、その二次元データセットに対して、これらの質量スペクトルの可視総電荷Qvを用いて相対的なm/zシフトの線形相関のサンプル勾配を、フィッティングされた線形関数の勾配として判定している線形フィッティング法を適用することができる。このデータセットに必要とされないことは、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値が0を有する場合を定義することである。よって、質量分析器内のある量のサンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spに対して、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値が0を有し得るものと定義することができる。これは、総電荷Qvとは無関係に、相対的なm/zの観測可能な差異が、値0に設定されている。この定義により、相対的なm/zの観測可能な差異の値が0である場合、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値は、二次元データセットのすべての質量スペクトルに対して定義される。相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、その質量スペクトルに関連するすべてのスペクトルに対して定義され、サンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spが判定される。したがって、各質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、質量スペクトル、およびサンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spが観測される当該質量スペクトルにおける少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異の判定によって評価することができる。
別の実施形態において、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z比が既知である場合、異なる量のサンプルイオンに対して検出された質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を、線形フィッティングによって判定する。この線形フィッティングは、検出された質量スペクトルの評価された相対的なm/zシフト、およびその対応する評価された可視総電荷Qvを考慮しており、サンプル勾配であるそれらの相関の勾配を判定している。
請求項1に記載の本発明の方法の次のステップにおいて、補償係数cが判定され、これは、質量分析を実施するためにイオン貯蔵装置に注入されるサンプルイオンのイオン注入期間topt,vを調整するために使用される。このイオン注入期間topt,vは、注入期間であり、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する。この基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optは、その可視総電荷Qvの量であり、基準サンプルからイオン化されたイオンである基準イオンの検査対象量の現実の総電荷Qrealが、最適化された総電荷Qoptの値を有する場合、基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である。したがって、基準イオンの最適化された可視電荷Qref,optが、基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である場合、質量スペクトルは、検査対象の基準イオンの最適化された総電荷Qoptを用いて検出される。このような量の検査対象の基準イオンの場合、基準サンプルの質量スペクトルは、高品質性能で検出される。質量分析を実施するために、サンプルイオンがイオン貯蔵装置に注入されるイオン注入期間topt,vは、そのイオン注入期間を定義しており、これにより、イオン貯蔵装置に注入されたサンプルイオンが、質量スペクトルを検出するためのイオントラップ質量分析器に排出された場合に、基準サンプルイオンの最適化された可視電荷Qref,optが、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして観測される。通常、現実の総電荷Qrealの別の比は、基準イオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視である現実の総電荷Qrealの比と比較すると、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視であるため、サンプルイオンの質量スペクトルは、それらがイオン注入期間topt,v中にイオン貯蔵装置に注入された場合、最適化された現実の総電荷Qoptを用いても検出されない。したがって、請求項1に記載の本発明の方法は、最適化された総電荷Qoptのある量のサンプルイオンがイオン貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析器を用いて分析されるというそのような方法でイオン注入期間topt,vを調整するための補償係数cを判定することである。イオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの、イオントラップ質量分析器を用いて検出された少なくとも1つの質量スペクトルから評価された可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。検出された質量スペクトルにおける可視総電荷Qvと、サンプルイオンの注入期間との間の線形相関は、基準イオンの最適化された可視総電荷Qref,optがサンプルイオンの質量スペクトルにおいて可視である場合、イオン注入期間topt,vを定義するために使用される。
基準サンプルの場合、最適化された可視総電荷Qref,optは既知であり、これは、基準サンプルのイオンパッケージが、最適化された総電荷Qoptを有する場合の、基準サンプルの可視総電荷Qvの値である。注入期間topt,vは、サンプルイオンの質量スペクトルから観測された可視総電荷Qvが基準サンプルの最適化された可視総電荷Qref,optの値を有する場合の、サンプルイオンの、イオン貯蔵装置への注入期間である。このサンプルおよびこの基準サンプルに対して、現実の総電荷Qrealの異なる部分が、それらの質量スペクトルの可視総電荷Qvとして観測される場合、判定された注入期間topt,vは、そのサンプルの注入されたイオンが、最適化された現実の総電荷Qoptを実際に含む場合には、サンプルイオンの最適な注入期間topt,realではない。
少なくとも1つの量のサンプルイオンが、イオントラップ質量分析器に注入されて、注入期間topt,vを判定し、この量は、サンプルイオンの注入期間と相関する。これらの量のサンプルイオンの各々に対して、イオントラップ質量分析器は、質量スペクトルを検出しており、次いでこれらの質量スペクトルから可視総電荷Qvが評価される。それらの量のサンプルイオンの観測された可視総電荷Qv、およびそれらの対応する注入期間から、それらの相関を使用して、イオン注入期間topt,vが判定される。
イオン注入期間topt,vは、第1のステップの少なくとも1つの量のサンプルイオンの、少なくとも1つの検出された質量スペクトルを使用して判定されることが好ましい。
請求項2に記載の本発明の方法に関して以下に詳細に説明される、イオン注入期間topt,vを判定するための他の実施形態もまた、使用することができるが、請求項1に記載の本発明の方法においても使用することができる。
特に、請求項1に記載の本発明の方法で使用される基準サンプルは、清浄なサンプルとすることができ、トラップされたイオンの現実の総電荷Qrealに対して、この清浄なサンプルイオンは、イオントラップ質量分析器を用いて検出された清浄なサンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視であるか、または少なくとも実質的に可視である。この清浄なサンプルイオンは、清浄なサンプルから、イオン化プロセスによって生成される。
サンプルイオンの現実の総電荷Qrealが、検出されたスペクトルで可視である場合、イオン注入期間topt,vは、清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係し、サンプルイオンの質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvから判定され、最適化された可視電荷Qclean,optもまた、最適化された総電荷Qoptであることから、最適化された全イオン電荷Qoptのための最適化された蓄積時間topt,realである。したがって、補償係数cは、1である。
しかし、補償係数cは、実験に対しても請求項1に記載の本発明の方法によって判定することができ、サンプルイオンのイオンパッケージの完全な現実の総電荷Qrealは、検出されたスペクトルにおいて不可視であり、その結果、Qv<Qrealである。したがって、観測された相対的なm/zシフトは、可視総電荷値Qvがサンプルイオンの現実の総電荷Qrealである場合、サンプルイオンの質量スペクトルから評価される可視総電荷値Qvから予想される値よりも大きい。さらに、清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係する最適化されたイオン注入期間topt,vは、topt,vを含む式(1)に基づいて可視総電荷Qvから判定され、これは、Qvが、topt,realを判定するために必要とされるような完全な総電荷Qrealを表していないため、あまりに大きな値である。これを補償するために、補償係数cが提供される。その補償係数は、イオントラップ質量分析器内でトラップされた清浄なサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である清浄な勾配を、以前に判定されたサンプル勾配によって除算することによって判定される。
清浄な勾配が判定された清浄なサンプルは、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealが、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたその質量スペクトルにおいて、可視総電荷Qvとして、可視であるか、または実質的に可視であるサンプルである。清浄なサンプルの場合、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも95%が、質量スペクトルにおいて可視総電荷Qvとして可視であることが好ましく、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも99%が可視であることがより好ましく、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも99.8%が可視であることが最も好ましい。したがって、最適化された蓄積時間topt,realは、以前説明したように、予備走査実験の質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvから清浄なサンプルに対して直接判定することができる。
一般に、本発明の方法のこのステップにおいて、補償係数cはまた、清浄なサンプルだけでなく、任意の種類の基準サンプルからも判定される。そのような基準サンプルの場合、基準イオンのイオンパッケージの完全な総電荷Qrealは、イオン化によって基準サンプルから生成されたイオンであり、その検出されたスペクトルにおいて不可視である場合がある。したがって、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係しているイオン注入期間topt,vは、式(1)によって定義され得、この式は、式中で清浄なサンプルの最適化された総電荷Qoptを置き換えている基準サンプルの質量スペクトルを検出するために、可視総電荷Qref,optの最適化された値を考慮している。よって、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するイオン注入期間topt,vは、サンプルイオンのイオンパッケージに対して基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optがそれらの検出された質量スペクトルにおいて可視である場合に、質量分析を実施するためのサンプルイオンの注入期間である。このイオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルから評価された、イオントラップ質量分析器にトラップされた可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。よって、サンプルイオンが、判定されたイオン注入期間topt,vでイオン貯蔵装置に注入されると、基準サンプルの質量スペクトルを検出するための最適化された可視総電荷Qref,optはまた、分析されたサンプルの質量スペクトルにおいても可視総電荷Qvとして可視である。
しかし、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされたサンプルイオンの総電荷の、トラップされたサンプルイオンの現実の総電荷に対する比が、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされた基準イオンの総電荷の、トラップされた基準イオンの現実の総電荷に対する比から逸脱している場合、サンプルもまた、基準サンプルの場合である最適化されたイオン注入期間topt,realで分析されているという前提は、正しくない。特に、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされたサンプルイオンの総電荷の、トラップされたサンプルイオンの現実の総電荷に対する比が、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされた基準イオンの総電荷の、トラップされた基準イオンの現実の総電荷に対する比よりも小さい場合、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するサンプルイオンのイオン注入期間topt,vは、Qvが、topt,realを判定するために必要とされる、その質量スペクトルでの基準サンプルに可視である完全な総電荷Qv,refを表していないため、あまりに大きい値のtopt,vを有する。これを補償するために、補償係数cは、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルからイオン化された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である基準勾配を、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配によって除算することによって判定される。次いで、サンプルイオンを分析するための、また特にサンプルイオンの質量スペクトルを検出するための最適化されたイオン注入期間topt,realは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するサンプルイオンのイオン注入期間topt,vの、判定された補償係数cとの乗算によって判定される。
基準サンプルからイオン化された基準イオンが検査対象である場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である。基準サンプルの基準勾配を判定する方法の詳細が、以下に提供される。この基準勾配の判定は、本発明のすべての方法で、同じ方法で実施することができる。
イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルの基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配が判定された基準サンプルは、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの特定の部分が、その質量スペクトル、すなわち可視総電荷Qvにおいて可視であるサンプルである。基準サンプルの場合、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも20%が可視であることが好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも65%が可視であることがより好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの90%が可視であることが最も好ましい。
請求項2に記載の本発明の方法は、補償係数を判定し、その補償係数は、サンプルからイオン化されたサンプルイオンの量を制御するためのパラメータであり、そのサンプルイオンは、質量分析計のイオン貯蔵装置からそのイオントラップ質量分析器に注入され、次いで、そのイオントラップ質量分析器は、注入されたサンプルイオンの質量分析を実施する。
請求項2に記載の本発明の方法は、以下のステップを含む。
第1のステップにおいて、イオントラップ質量分析器によって、異なる量のサンプルイオンの質量スペクトルが検出される。この異なる量のサンプルイオンは、イオン貯蔵装置からイオントラップ質量分析器に注入される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、質量スペクトルは、異なる事前選択された量のサンプルイオンに対して検出される。第1のステップにおいて質量スペクトルが検出されるサンプルイオンの量は、質量スペクトルの検出が開始される前に選択される。特に、第1のステップにおいて質量スペクトルが検出される全量は、最初の質量スペクトルが検出される前に選択される。事前選択される量の選択は、例えば、制御装置によって、制御装置のインターフェースを介したユーザによって、またはイオントラップ質量分析器を用いて分析される質量分析もしくは特定のクラスのサンプルを選択するユーザによって、提供され得る。異なる量のサンプルイオンの事前選択はまた、一定のサンプルイオン流がイオン貯蔵装置に提供されると場合、サンプルイオンの、イオン貯蔵装置への異なる注入期間の事前選択によっても提供することができる。
一般に、任意の量のサンプルイオン、または任意の注入期間を使用して、第1のステップにおいて質量スペクトルを検出することができる。これは、最適化された総電荷Qopt未満である現実の総電荷Qrealを有するサンプルイオンの量を使用することが好ましい。これはまた、最適化された総電荷Qoptのイオンパッケージがイオン貯蔵装置に蓄積される場合、最適化された注入期間topt,real未満であるサンプルイオンの、イオン貯蔵装置への注入期間を使用することも好ましい。
請求項2に記載の方法の別の実施形態において、第1のステップで質量スペクトルが判定される、異なる量のサンプルイオンは、選択されない。逆に、特定の瞬間が、定義された期間である特定の期間内に選択され得、サンプルイオンが、イオン源からイオン経路に沿って供給され、イオン光学系または別のイオン貯蔵装置を介してイオン貯蔵装置に達し得、そこでは、異なる量のサンプルイオンが、各特定の瞬間でイオン貯蔵装置に蓄積される。イオン貯蔵装置に提供されるサンプルイオンの流れに応じて、特定の量のサンプルイオンが、その特定の期間中の各特定の瞬間の間にイオン貯蔵装置に蓄積され得、次いでイオントラップ質量分析器に注入され得る。例えば、イオン源がゆらぎを有するイオン流を提供している場合、異なる量のサンプルイオンは、異なる瞬間でイオン貯蔵装置に蓄積されることになる。サンプルイオンの蓄積された量の可視総電荷Qv、および/またはそれらの検出された質量スペクトルから導出されたサンプルイオンの質量ピークのm/z値の観測されたシフトによって、少量または大量のサンプルイオンが蓄積されたかどうかを観測することができる。
次のステップにおいて、異なる量のサンプルイオンの、少なくとも2つの質量スペクトルが比較されて、質量スペクトルで観測された少なくとも1つの種のサンプルイオンから相対的なm/zシフト−以下に定義される−の観測可能な差異を評価する。サンプルイオンのm/zシフトは、質量スペクトルにおけるサンプルイオンのピークのm/z値のシフトであり、質量分析器で検出されたサンプルイオンの空間電荷によって誘起される。このステップにおいて、相対的なm/zシフトの、サンプルイオンの量に関する依存性が検査される。
この評価の場合、2つの比較される質量スペクトルで観測された少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異が判定され、サンプルイオンの観測されたm/z値は、質量スペクトルにおけるサンプルイオンのピークのm/z値である。この判定の開始時に、ピークまたはピーク構造が、2つの比較される質量スペクトルで識別され、それらのピークは、両方の質量スペクトルの同じサンプルイオンに割り当てられ、それらは、特に、サンプルイオンの同位体分布の同じ同位体分子種であり、それらは、同位体分布を有する。次いで、同じサンプルイオンのピークのm/z値の差異は、2つの質量スペクトルを比較することによって判定される。この差異はまた、2つの比較される検出された質量スペクトルにおいて観測される分析対象のサンプルイオンの量の空間電荷によって誘起されるピークのm/zシフトの差異でもある。次いで、サンプルイオンの識別されたピークのm/z値の差異から、2つの比較される質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、同じサンプルイオンのピークのm/z値の判定された差異からのピークのm/z値の相対的な差異の判定と、少なくとも1つの種のイオンのこれらの相対的な差異から、m/z値の典型的な相対的な差異を、好ましくは判定された相対的な差異を平均することにより導出する方法と、によって評価される。
2つの比較された質量スペクトルのm/z値のこの典型的な相対的な差異−本明細書では、2つの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異と名付けられる−は、2つの比較された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの差異にほぼ正確に対応し、その理由は、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフト値が、ppmの範囲であり、ほとんどの場合20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に6ppm未満であるためである。検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフト値は、イオンの物理的なm/z値に関して前に示された式(2)によって計算される。検査対象のサンプルイオンの量ごとに空間電荷効果が存在するため、物理的に正しいm/z値は、イオントラップ質量分析器によって検出された質量スペクトルにおいて測定することができない。ただし、同じサンプルイオンのピークのm/z値の差異は、2つの質量スペクトルを比較することによって判定することができる。
サンプルイオンのピークの2つの質量スペクトルのうちの第1の質量スペクトルMS1に対して、m/zシフトであるΔm/z(1)が、観測されたm/z値に起因するイオンの物理的に正しい質量対電荷値m/zに関して、観測される場合、
M/z
obs(1)=m/z+Δm/z(1) (3)
であり、同じサンプルイオンのピークの2つの質量スペクトルのうちの第2の質量スペクトルMS2に対して、m/zシフトΔm/z(2)が、観測されたm/z値に起因するイオンの物理的に正しい質量対電荷値m/zに関して、観測される場合、
M/z
obs(2)=m/z+Δm/z(2) (4)
であり、式(2)に従うサンプルイオンの相対的なm/zシフト値は、第1の質量スペクトルMS1に対しては、次式であり、
第2の質量スペクトルMS2に対しては、次式である。
したがって、2つの比較される質量スペクトルMS1およびMS2の相対的なm/zシフトの差異は、次式となる。
サンプルイオンのピークのm/z値の差異は、2つの検出された質量スペクトルMS1およびMS2を比較することによって判定することができ、次式となる。
m/zobs(1)−m/zobs(2)=m/z+Δm/z(1)−(m/z+Δm/z(2))=Δm/z(1)−Δm/z(2) (8)
さらに、2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異を判定することができる。一般に、この相対的な差異は、通常、第1の質量スペクトルMS1のピークに関して、もしくは第2の質量スペクトルMS2のピークに関して、または第1の質量スペクトルMS1のピークと第2の質量スペクトルMS2のピークとの平均値に関して、判定される。
2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異が、第1の質量スペクトルMS1のイオンのピークに関して判定される場合、そのイオンのピークのm/z値の相対的な差異は、次式となる。
2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異が、第2の質量スペクトルMS2のイオンのピークに関して判定される場合、そのイオンのピークのm/z値の相対的な差異は、次式となる。
2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異が、第1の質量スペクトルMS1のピークと、第2の質量スペクトルMS2のピークとの平均値に関して判定される場合、そのイオンのピークのm/z値の相対的な差異は、次式となる。
2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異が判定される詳細な方法に関係なく、この相対的な差異は、2つの比較された質量スペクトルMS1およびMS2の相対的なm/zシフトの差異から、Δm/z(1)、Δm/z(2)の各値、および分母の(Δm/z(1)+Δm/z(2))/2の各値だけのみ逸脱する。検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフト値は、ppmの範囲にあるため、したがって、分母内の各値のΔm/z(1)、Δm/z(2)、および(Δm/z(1)+Δm/z(2))/2は、分母のm/z値と比較してppmの範囲にすぎず、したがって、イオンの物理的に正しい質量対電荷値m/zよりも5〜6桁小さい大きさであるためである。これにより、2つの比較された質量スペクトルM1およびM2のサンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異の値、したがって、2つの質量スペクトルMS1およびMS2の相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、ほぼ正確に、2つの比較された質量スペクトルMS1およびMS2の相対的なm/zシフトの差異である。
請求項2に記載の本発明の方法は、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定するために、少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異から導出される、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異を使用することである。サンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの差異ではなく、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異が使用される。この置換の影響は、非常に小さいので、請求項2に記載の本発明の方法は、異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルから、貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析計によって分析されるサンプルイオンの量を最適化するためのパラメータを判定することができ、以下に詳細に説明される補償係数cは、そのイオンの完全な総電荷Qrealが質量分析によって不可視であるサンプルの、イオントラップ質量分析計を用いた質量分析の性能が、少なくとも、清浄なサンプルの質量分析の性能にほぼ等しいような精度を有する。これは、そのサンプルイオンの完全な総電荷Qrealが質量分析によって可視であるサンプルである。
別のステップにおいて、サンプルイオンの異なる量のうちの少なくとも2つの検出された質量スペクトルは、質量スペクトルの検出中にイオントラップ質量分析器にトラップされたサンプルイオンの可視総電荷Qvを判定するために評価される。次いで、可視総電荷Qvの差異は、サンプルイオンの異なる量のうちの少なくとも2つのうちの少なくとも一部に対して評価することができる。
次のステップにおいて、2つ直前のステップの結果を使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定し、そのサンプル勾配は、サンプルからイオン化されたイオンが検査対象である場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である。したがって、各サンプルは、その固有のサンプル勾配値を有する。このサンプル勾配の値は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルから導出された検査対象サンプルイオンの可視総電荷Qvの、検査対象サンプルイオンの総電荷Qrealに対する比に依存する。
両方の相関パラメータ、すなわち、相対的なm/zシフト、および可視総電荷Qvは、イオントラップ質量分析器を用いて検出され、質量分析器でのサンプルイオンの量に依存する場合、サンプルイオンの質量スペクトルにおいて観測される。
このサンプル勾配は、請求項2に記載の本発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの空間電荷によって誘起された相対的なm/zシフトの観測可能な差異と、イオントラップ質量分析器内で注入およびトラップされた2つの量のサンプルイオンの可視総電荷Qvの差異との比として計算され得、これらの差異は、イオントラップ質量分析器内で検出された2つの量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルから2つの直前のステップで評価される。2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、2つの量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルからの、少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異の判定によって、2つの検出された質量スペクトルから評価される。m/z値の相対的な差異が、2つ以上の種のサンプルイオンに対して判定されると、2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から、サンプルイオンのm/z値の相対的な差異の典型的な値を導出することによって、2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から、導出される。この典型的な値−2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの観測可能な差異−は、m/z値の判定された相対的な差異を平均することによって、2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から導出されることが好ましい。
サンプル勾配は、質量分析が実施され得るサンプルに対して、サンプルイオンの質量スペクトルで観測された相対的なm/zシフトが、サンプルイオンの検出された質量スペクトルから判定され得る可視総電荷Qvとどのように相関するかを説明する。サンプル勾配を判定し、特に計算するためのさらなる実施形態が、以下に説明される。
相対的なm/zシフトの、サンプルの可視総電荷Qvとの相関は、線形関数のサンプル勾配による線形関数であるため、相対的なm/zシフトは、検査対象サンプルイオンの量の任意の観測された可視総電荷Qvに対して判定することができる。
本発明の方法の一実施形態において、以前に例証したように、2つの量のサンプルイオンの質量スペクトルを使用して、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を計算する。この方法において、質量スペクトルが検出されることになる2つの量のサンプルイオンが選択されていることが好ましい。次いで、線形相関のサンプル勾配は、検出された2つの質量スペクトルを評価することによって、計算され得る。サンプルイオンの検査対象量は、例えば、2つの注入期間を定義することによって選択され得、その期間に、サンプルイオンが、イオン貯蔵装置に注入され、次いで、イオントラップ質量分析器に注入されて、それらのサンプルイオンの質量スペクトルを検出する。
本発明の方法において、質量スペクトルがイオントラップ質量分析器を用いて検出される異なる量のサンプルは、サンプルイオンの量、または注入期間が、典型的に、そのより小さい値に関して少なくとも10%の差異を有するように、好ましくはそのより小さい値に関して少なくとも30%の差異を有するように、より好ましくはそのより小さい値に関して少なくとも50%の差異を有するように、選択されることが好ましい。
また、サンプルイオンの3つ以上の異なる量の質量スペクトルを使用して、相対的なm/zシフトの、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定することができる。
よって、別の実施形態において、サンプル勾配を判定する第1のステップにおいて、相対的なm/zシフトの観測可能な差異と、可視総電荷Qvの差異との比は、2つの異なる量のサンプルイオンの異なるペアの質量スペクトルに対して判定され、次いで、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配は、異なる量のサンプルイオンのうちの2つの異なるペアに対して判定された比を平均することによって計算される。
別の実施形態において、異なる量のサンプルイオンに対して検出された質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定し、そこでは、線形フィッティングが使用される。このフィッティングは、評価された相対的なm/zシフトの観測可能な差異、ならびに評価された可視総電荷Qvおよび/または可視総電荷Qvの差異を考慮している。線形相関のサンプル勾配の判定の場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたそれらの質量スペクトルにおけるサンプルイオンの相対的なm/zシフトの値を知ることは重要ではない。相対的なm/zシフトの差異、および可視総電荷Qvの相関する差異を知れば十分であり、以前に説明したように、請求項2に記載の本発明の方法においても、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異と、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配の判定のための、検出された質量スペクトルの可視総電荷Qvの相関する差異とを知れば十分である。これらの値に基づいて、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの、相対的なm/zシフトの観測可能な差異と、可視総電荷Qvの相関値、または可視総電荷Qvの相関差異(全可視電荷Qv,0)との二次元データセットを作成することができ、その二次元データセットに対して、これらの質量スペクトルの可視総電荷Qvを用いて相対的なm/zシフトの線形相関のサンプル勾配を判定している線形フィッティング法を適用することができ、そのサンプル勾配は、フィッティングされた線形関数の勾配である。このデータセットに必要とされないことは、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値が0を有する場合を定義することである。よって、質量分析器内のある量のサンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spに対して、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値が0を有し得るものと定義することができる。これは、総電荷Qvとは無関係に、相対的なm/zの観測可能な差異が、値0に設定されている。この定義により、相対的なm/zの観測可能な差異の値が0である場合、相対的なm/zシフトの観測可能な差異の値は、二次元データセットのすべての質量スペクトルに対して定義される。相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、その質量スペクトルに関連するすべてのスペクトルに対して定義され、サンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spが判定される。したがって、各質量スペクトルの相対的なm/zシフトの観測可能な差異は、質量スペクトル、およびサンプルイオンの特定の可視総電荷Qv,spが観測される当該質量スペクトルにおける少なくとも1つの種のサンプルイオンのm/z値の相対的な差異の判定によって評価することができる。
請求項2に記載の本発明の方法の次のステップにおいて、補償係数cが判定され、これは、質量分析を実施するためにイオン貯蔵装置に注入されるサンプルイオンのイオン注入期間topt,vを調整するために使用される。このイオン注入期間topt,vは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する注入期間である。この基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optは、その可視総電荷Qvの量であり、基準サンプルからイオン化されたイオンである基準イオンの検査対象量の現実の総電荷Qrealが、最適化された総電荷Qoptの値を有する場合、基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である。したがって、基準イオンの最適化された可視電荷Qref,optが、基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である場合、質量スペクトルは、検査対象の基準イオンの最適化された総電荷Qoptを用いて検出されている。このような量の検査対象の基準イオンの場合、基準サンプルの質量スペクトルは、高品質性能で検出される。サンプルイオンが質量分析を実施するためにイオン貯蔵装置に注入されるイオン注入期間topt,vは、イオン貯蔵装置に注入されたサンプルイオンが、質量スペクトルの検出のためのイオントラップ質量分析器に排出された場合、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optが、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視電荷として観測されるそのイオン注入期間を定義している。通常、現実の総電荷Qrealの別の比が、基準イオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視である現実の総電荷Qrealの比と比較して、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視であるため、サンプルイオンの質量スペクトルは、それらがイオン注入期間topt,vの間にイオン貯蔵装置に注入された場合、最適化された総電荷Qoptを用いても検出されない。したがって、請求項2に記載の本発明の方法は、最適化された総電荷Qoptのサンプルイオンの量がイオン貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析器を用いて分析されるようにして、イオン注入期間topt,vを調整するための補償係数cを判定している。イオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの、イオントラップ質量分析器を用いて検出された少なくとも1つの質量スペクトルから評価された可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。検出された質量スペクトルにおける可視総電荷Qvと、サンプルイオンの注入期間との間の線形相関は、基準イオンの最適化された可視総電荷Qref,optがサンプルイオンの質量スペクトルにおいて可視である場合、イオン注入期間topt,vを定義するために使用される。
基準サンプルの場合、最適化された可視総電荷Qref,optは既知であり、これは、基準サンプルのイオンパッケージが、最適化された総電荷Qoptを有する場合の、基準サンプルの可視総電荷Qvの値である。最適化された注入期間topt,vは、質量スペクトルサンプルイオンから観測された可視総電荷Qvが基準サンプルの最適化された可視総電荷Qref,optの値を有している場合、イオン貯蔵装置内のサンプルイオンの注入期間である。サンプルおよび基準サンプルの場合、現実の総電荷Qrealの異なる部分が、それらの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして観測され、その判定された注入期間topt,vは、注入されたサンプルイオンが最適化された実際の総電荷Qoptを実際に含む場合、サンプルイオンの最適な注入期間topt,realではない。
少なくとも1つの量のサンプルイオンが、イオントラップ質量分析器に注入されて、注入期間topt,vを判定し、この量は、サンプルイオンの注入期間と相関する。これらの量のサンプルイオンの各々に対して、イオントラップ質量分析器は、質量スペクトルを検出しており、次いでこれらの質量スペクトルから可視総電荷Qvが評価される。それらの量のサンプルイオンの観測された可視総電荷Qv、およびそれらの対応する注入期間から、それらの相関を使用して、イオン注入期間topt,vが判定される。
イオン注入期間topt,vは、第1のステップの異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルの少なくとも1つを使用して判定されることが好ましい。
さらに質量スペクトルは、可視総電荷Qvの追加の値を提供するサンプルイオンの少なくとも1つの量のうちの少なくとも一部に対して検出されるイオン注入期間topt,vもまた、判定することができる。これは、改善された統計によって、サンプルイオンの量の可視総電荷Qvの精度を改善するために行うことができる。サンプルイオンの量の可視総電荷Qvの値から、平均値を判定することが好ましい。この方法は、変動のあるイオン流がサンプルイオンをイオン貯蔵装置に提供しているときに、イオン注入期間topt,vを判定するために適用される必要がある。
好ましい実施形態において、イオン注入期間topt,vは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係しており、1つの量のサンプルイオンの質量スペクトルからのみ判定される。次いで、式(1)を使用して、イオン注入期間topt,vを判定することができる。
2つ以上の量のサンプルイオンが、イオン注入期間topt,vの判定のために使用される場合、1つの好ましい実施形態において、線形フィッティングを使用して、異なる量のサンプルイオンの可視総電荷Qvの、対応する注入期間との線形相関を判定することができ、次いでこの線形相関から、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optと相関するイオン注入期間topt,vを導出することができる。
特に、基準サンプルは、清浄なサンプルとすることができ、そこにトラップされた清浄なサンプルイオンの現実の総電荷Qrealは、その質量スペクトルにおいて、可視総電荷Qvとして可視であり、または少なくとも実質的に可視である。
サンプルイオンの実際の総電荷Qrealが、検出されたスペクトルにおいて可視である場合、清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係するイオン注入期間topt,vは、サンプルイオンの質量スペクトルから評価される可視総電荷Qvから判定され、最適化された可視電荷Qclean,optもまた、最適化された総電荷Qoptでもあることから、最適化された総イオン電荷Qoptの最適化された蓄積時間topt,realである。したがって、そのとき、補償係数cは、1である。
しかし、補償係数cはまた、実験についても、請求項2に記載の本発明の方法によっても判定され得、サンプルイオンのイオンパッケージの完全な総電荷Qrealは、検出されたスペクトルにおいては不可視であり、すなわち、Qv<Qrealである。したがって、観測された相対的なm/zシフトは、この値が現実の総電荷Qrealの値である場合、サンプルイオンの質量スペクトルから評価された可視総電荷値Qvから予想されたシフトよりも大きい。さらに、清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係する、式(1)に基づく可視総電荷Qvから判定された、最適化されたイオン注入期間topt,vは、Qvが、Qoptに等しい場合にtoptを判定するために必要とされるサンプルイオンの完全な総電荷Qrealを表していないため、あまりにも大きいtopt,vの値を有する。これを補償するために、補償係数cが提供される。この補償係数は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された清浄なサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の清浄な勾配、すなわち、イオントラップ質量分析器を用いて検出された清浄なサンプルの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配を、以前に判定されたサンプル勾配により除算することによって判定される。
清浄な勾配が判定された清浄なサンプルは、そのサンプルイオンのイオンパッケージの現実の総電荷Qrealが、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたその質量スペクトルにおいて、可視であるか、または実質的に可視である、サンプルである。清浄なサンプルの場合、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも95%がその質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視であることが好ましく、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも99%が可視であることがより好ましく、イオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも99.8%が可視であることが最も好ましい。したがって、最適化された蓄積時間topt,realは、以前説明したように、予備走査実験の質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvから清浄なサンプルに対して直接判定することができる。
一般に、本発明の方法のこのステップにおいて、補償係数cはまた、清浄なサンプルだけでなく、任意の種類の基準サンプルからも判定される。そのような基準サンプルの場合、基準イオンのイオンパッケージの完全な総電荷Qrealは、その検出されたスペクトルにおいて不可視であり得る。したがって、イオン注入期間topt,vは、式中で清浄なサンプルの最適化された総電荷Qoptを置き換える、基準サンプルの質量スペクトルを検出するために可視総電荷Qref,optの最適化された値を考慮している式(1)に基づいて定義される。よって、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するイオン注入期間topt,vは、サンプルイオンのイオンパッケージに対して基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optがそれらの検出された質量スペクトルにおいて可視である場合に、質量分析を実施するためのサンプルイオンの注入期間である。このイオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルから評価された、イオントラップ質量分析器にトラップされた可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。よって、サンプルイオンが、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する、最適化されたイオン注入期間topt,vでイオン貯蔵装置に注入されると、基準サンプルの質量スペクトルを検出するための最適化された可視総電荷Qref,optもまた、分析対象サンプルの質量スペクトルにおいて可視である。
ただし、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされたサンプルイオンの総電荷の、分析対象サンプルのトラップされたサンプルイオンの現実の総電荷に対する比が、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされた基準イオンの総電荷の、基準対象サンプルのトラップされた基準イオンの現実の総電荷に対する比から逸脱する場合、そのサンプルが、基準サンプルに対しての場合である最適化されたイオン注入期間topt,realでも分析されるという前提は正しくない。特に、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされたサンプルイオンの総電荷の、トラップされたサンプルイオンの現実の総電荷に対する比が、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされた基準イオンの総電荷の、トラップされた基準イオンの現実の総電荷に対する比よりも小さい場合、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する、サンプルイオンの判定されたイオン注入期間topt,vは、Qvが、topt,realを判定するために必要とされる、その質量スペクトルにおける基準サンプルに対して可視である完全な総電荷Qv,refを表していないため、あまりに大きい値のtopt,vを有する。これを補償するために、補償係数cは、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルからイオン化された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配を、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配により除算することによって判定される。サンプルイオンを分析し、特にサンプルイオンの質量スペクトルを検出するための最適化されたイオン注入期間topt,realは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する、サンプルイオンのイオン注入期間topt,vの、判定された補償係数cとの乗算によって判定される。
基準サンプルからイオン化された基準イオンが検査対象である場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である。
イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルの基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配が判定された基準サンプルは、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの実際の総電荷Qrealの特定の部分が、その質量スペクトル、すなわち可視総電荷Qvにおいて可視であるサンプルである。基準サンプルの場合、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも20%が可視であることが好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも65%が可視であることがより好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの90%が可視であることが最も好ましい。
請求項5に記載の本発明の方法は、補償係数を判定し、その補償係数は、サンプルからイオン化されたサンプルイオンの量を制御するためのパラメータであり、そのサンプルイオンは、質量分析計のイオン貯蔵装置からそのイオントラップ質量分析器に注入され、次いで、そのイオントラップ質量分析器は、注入されたサンプルイオンの質量分析を実施する。この方法を用いた検査対象サンプルには、少なくとも1つの特定の標準成分−ロック質量とも名付けられる−が含まれる。
サンプルに含まれる各特定の標準成分に対して、少なくとも1つの特定のサンプルイオンが、イオン化によって生成される。場合によっては、異なる種のサンプルイオンが、1つの標準成分からイオン化によって生成され得る。
サンプル中に含まれる少なくとも1つの特定の標準成分の各特定のサンプルイオンは、m/z比を有し、この比は、既知であり得、使用されるイオン化プロセスに関係する。したがって、請求項5に記載の本発明の方法は、サンプルイオンのうちの少なくとも1つのm/z比が既知であるサンプルに使用される。
請求項5に記載の本発明の方法は、以下のステップを含む。
第1のステップにおいて、少なくとも1つの質量スペクトルが、イオントラップ質量分析器によって、少なくとも1つの量のサンプルイオンに対して検出される。その少なくとも1つの量のサンプルイオンは、イオン貯蔵装置からイオントラップ質量分析器に注入される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つの質量スペクトルは、少なくとも1つの事前選択された量のサンプルイオンに対して検出される。質量スペクトルが第1のステップで検出されるサンプルイオンの各量は、質量スペクトルの検出が開始される前に選択される。特に、第1のステップにおいて質量スペクトルが検出される全量は、第1の質量スペクトルが検出される前に選択される。事前選択される量の選択は、例えば、制御装置によって、制御装置のインターフェースを介したユーザによって、またはイオントラップ質量分析器を用いて分析される質量分析もしくは特定のクラスのサンプルを選択するユーザによって、提供され得る。一定のサンプルイオン流がイオン貯蔵装置に提供される場合、少なくとも1つの量のサンプルイオンの事前選択はまた、サンプルイオンのイオン貯蔵装置への少なくとも1つの注入期間の事前選択によっても提供することができる。
一般に、任意の量のサンプルイオン、または任意の注入期間を使用して、第1のステップにおいて、少なくとも1つの質量スペクトルを検出することができる。これは、最適化された総電荷Qoptを下回る総電荷Qrealを有するサンプルイオンの量を使用することが好ましい。また、最適化された総電荷Qoptのサンプルイオンのイオンパッケージがイオン貯蔵装置に蓄積された場合、最適化された注入期間topt,realを下回る、サンプルイオンのイオン貯蔵装置への注入期間を使用することが好ましい。
請求項5に記載の方法の別の実施形態において、第1のステップで少なくとも1つの質量スペクトルが判定されるサンプルイオンの少なくとも1つの量は、選択されない。逆に、サンプルイオンがイオン源からイオン経路に沿って供給される場合、少なくとも1つの特定の瞬間が、定義された期間である特定の期間内に選択され得、イオン光学系または別のイオン貯蔵装置を介してイオン貯蔵装置に達し得、そこでは、異なる量のサンプルイオンが、各特定の瞬間にイオン貯蔵装置に蓄積される。イオン貯蔵装置に提供されるサンプルイオンの流れに応じて、特定の量のサンプルイオンが、特定の期間中の各特定の瞬間にイオン貯蔵装置に蓄積され、次いでイオントラップ質量分析器に注入される。例えば、イオン源がゆらぎを有するイオン流を提供している場合、異なる量のサンプルイオンが、異なる瞬間でイオン貯蔵装置に蓄積されることになる。サンプルイオンの蓄積された量の可視総電荷Qv、および/またはそれらの検出された質量スペクトルから導出された、サンプルイオンの質量ピークのm/z値の観測されたシフトによって、少量または多量のサンプルイオンが蓄積されたかどうか観測することができる。
次のステップにおいて、サンプルイオンの空間電荷によって誘起された相対的なm/zシフトは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの少なくとも1つの検出された質量スペクトルから評価される。この相対的なm/zシフトは、その既知のm/z比に対する少なくとも1つの検出された質量スペクトルにおいて、その既知のm/z比の少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値の相対的な差異の判定によって評価される。
このステップにおいて、相対的なm/zシフトの、サンプルイオンの量に関する依存性が検査される。
検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、検出された質量スペクトルにけるサンプルイオンのピークを識別すること、検出された質量スペクトルからピークのm/z値を判定すること、およびピークのm/z値であるm/z
obの、サンプルイオンの既知のm/z比であるm/zに対する相対的な差異d
rを計算することによって判定される。この計算された相対的な差異d
rは、検出された質量スペクトルにおけるサンプルイオンの相対的なm/zシフトの値、すなわち次式である。
m/z比が既知であるサンプルイオンのピークは、その特定の高い相対的な量により、検出された質量スペクトルにおいて識別することができ、サンプルイオンのピークパターンの特定のピーク構造が、その特定の標準成分のイオン化によって生成され、そこからサンプルイオンが、サンプルイオンのイオン化および/または既知のm/z比によって生成される。
サンプルイオンが標準成分からイオン化されているため、そのサンプルイオンが、検出された質量スペクトルにおいて非常に高い相対的な量を有し、そのような非常に高い相対的な量のピークが、サンプルイオンの予想されるm/z値に近い質量範囲内に生じることがわかると、このピークは、サンプルイオンのピークとして識別することができる。この非常に高い相対的な量は、その相対的な量の閾値によって定義することができ、その閾値は、例えば、質量スペクトル内のすべてのイオンの全相対量、もしくは質量スペクトルの一部の範囲、または、好ましくはサンプルの標準成分がイオン化によって生成されないサンプルイオンの別のピークの相対な量の最高値によって定義することができる。閾値を上回る相対的な量を有するピークのみが、非常に高い相対的な量を有するピークである。質量スペクトルにおける全イオンの全相対量に関係する相対量の閾値は、質量スペクトルにおける全イオンの全相対量の2%よりも高く、好ましくは質量スペクトルにおける全イオンの全相対量の5%よりも高く、より好ましくは質量スペクトルにおける全イオンの全相対量の10%よりも高く、最も好ましくは質量スペクトルにおける全イオンの全相対量の15%よりも高くすることができる。質量スペクトルの範囲における全イオンの全相対量に関係する相対量の閾値は、質量スペクトルのその範囲における全イオンの全相対量の2%よりも高く、好ましくは質量スペクトルのその範囲における全イオンの全相対量の10%よりも高く、より好ましくは質量スペクトルのその範囲における全イオンの全相対量の20%よりも高く、最も好ましくは質量スペクトルのその範囲における全イオンの全相対量の30%よりも高くすることができる。閾値が定義される質量範囲は、典型的には、50トムソン未満、好ましくは20トムソン未満、より好ましくは5トムソン未満、および最も好ましくは1トムソン未満である。サンプルイオンの既知のm/z比に関連して、閾値が定義されている質量範囲は、典型的に、既知のm/z比の10%未満、好ましくは既知のm/z比の1%未満、より好ましくは既知のm/z比の1,000ppm未満、および最も好ましくは既知のm/z比の50ppm未満である。サンプルイオンの別のピークの相対量の最高値に関係する相対量の閾値は、典型的に、サンプルイオンの別のピークの相対量の最高値よりも30%高く、好ましくはサンプルイオンの別のピークの相対量の最高値よりも70%高く、より好ましくはサンプルイオンの別のピークの相対量の最高値よりも100%高く、および最も好ましくはサンプルイオンの別のピークの相対量の最高値よりも200%高い。
非常に高い量のピークがサンプルイオンのピークとして識別される質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z比付近であることが好ましい。典型的に、この質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z比に対して対称形であり得、その結果、既知のm/z値は、質量範囲の中心にある。当然のことながら、既知のm/z値は、質量範囲の中央に正確に存在することはできないが、質量範囲の10%、好ましくは質量範囲の5%を包含する質量範囲の中央部分に存在し得る。典型的に、質量範囲の境界とその中心との間の最大距離は、サンプルイオンの既知のm/z値の20ppm未満、好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の15ppm未満、より好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の10ppm未満、および最も好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の6ppm未満である。イオントラップ質量分析器の場合、最大m/zシフト値が、可能であるか、または許容される閾値として定義される場合がある。次いで、質量範囲の境界とその中央との間の最大距離は、典型的に、最大m/zシフト値の100%未満、好ましくは最大m/zシフト値の80%未満、および特に好ましくは最大m/zシフト値の60%未満である。
ただし、質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z値から、サンプルイオンのピークのm/z値がm/zシフトに起因して、検出された質量スペクトルにおいて予想されるさらに高いm/z値まで拡張することができる。この場合、質量範囲の下界とその中央との間の距離は、典型的に、質量範囲の20%未満、好ましくは質量範囲の10%未満、より好ましくは質量範囲の5%未満、および最も好ましくは質量範囲の2%未満である。
一般に、既知のm/z値を有するサンプルイオンのピークは、検出された質量スペクトルにおいて、サンプルイオンの既知のm/z値に近い質量範囲内で最も高い相対量のピークとして識別することができる。識別されたピークが、標準成分のサンプルイオンの既知のm/z値に近い、質量範囲内のm/z値をも有する未知のm/z値の別のサンプルイオンから生じている可能性があるため、この識別が正しいかどうかを定義するための追加の基準が適用される場合がある。
サンプルイオンのピークが最も高い相対量のピークとして識別される質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z比付近のあることが好ましい。典型的に、この質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z比に対して対称形であり得、その結果、既知のm/z値は質量範囲の中央にある。当然のことながら、既知のm/z値は、質量範囲の中央に正確に存在することはできないが、質量範囲の10%、好ましくは質量範囲の5%を包含する質量範囲の中央部分に存在し得る。典型的に、質量範囲の境界とその中心との間の最大距離は、サンプルイオンの既知のm/z値の20ppm未満、好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の15ppm未満、より好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の10ppm未満、および最も好ましくはサンプルイオンの既知のm/z値の6ppm未満である。イオントラップ質量分析計の場合、最大m/zシフト値が可能であるか、または許容される閾値として定義される場合がある。次いで、質量範囲の境界とその中央との間の最大距離は、典型的に、最大m/zシフト値の100%未満、好ましくは最大m/zシフト値の80%未満、および特に好ましくは最大m/zシフト値の60%未満である。
ただし、質量範囲は、サンプルイオンの既知のm/z値から、サンプルイオンのピークのm/z値がm/zシフトに起因して、検出された質量スペクトルにおいて予想されるさらに高いm/z値まで拡張することができる。この場合、質量範囲の下界とその中央との間の距離は、典型的に、質量範囲の20%未満、好ましくは質量範囲の10%未満、より好ましくは質量範囲の5%未満、および最も好ましくは質量範囲の2%未満である。
標準成分のサンプルイオンのピークが質量範囲内に予想される場合、ピーク、または該当する量を有するピークが、サンプルの他の分子のサンプルイオンから予想されない場合には、これらのピークは、標準成分のサンプルイオンのピークとして識別することができる。特に、場合によっては、標準成分のサンプルイオンは、標準成分の、小さいフラグメントへのフラグメント化によって生成され、その結果、これらのサンプルイオンは、そのサンプルの他の成分のサンプルイオンよりも低いm/z値を有し、せいぜい非常に小さい確率で同様の低いm/z値のフラグメントでフラグメントされるのみである。したがって、観測された低いm/z値の質量範囲内の、標準成分のサンプルイオンの観測された最大ピーク強度は、サンプルの他の成分のサンプルイオンの観測された最大ピーク強度よりも少なくとも3倍、好ましくは5倍、特に好ましくは10倍高い。
サンプルイオンのピークとして識別されるピークのm/z値は、当業者にとって既知の方法によって、特にピークの重心または極大値を定義することによって判定される。極大値の重心のm/z値は、ピークのm/z値となる。
次いで、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値の、その既知のm/z比に対する判定された相対的な差異から、検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトは、好ましくは少なくとも1つのサンプルイオンの判定された相対的な差異を平均することによって、検出された質量スペクトルにおける少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値のこれらの相対的な差異から、検出された質量スペクトルにおけるm/z値の典型的な相対的な差異を導出する方法によって評価される。
別のステップにおいて、少なくとも1つの量のサンプルイオンの少なくとも1つの検出された質量スペクトルを評価して、質量スペクトルの検出中に、イオントラップ質量分析器にトラップされたサンプルイオンの可視総電荷Qvを判定する。
次のステップにおいて、2つ直前のステップの結果を使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定する。各サンプルは、その特定のサンプル勾配値を有する。サンプル勾配の値は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルから導出された検査対象サンプルイオンの可視総電荷Qvの、検査対象サンプルイオンの実際の総電荷Qrealに対する比に依存する。
両方の相関パラメータである相対的なm/zシフト、および可視総電荷Qvは、イオントラップ質量分析器を用いて検出され、質量分析器でのサンプルイオンの量に依存する場合、サンプルの質量スペクトルにおいて観測される。
本発明の方法の一実施形態において、このサンプル勾配は、サンプルイオンの空間電荷によって誘起された相対的なm/zシフトと、イオントラップ質量分析器内に注入およびトラップされた1つの量のサンプルイオンの可視総電荷Qvとの比として計算することができ、それらは、イオントラップ質量分析器で検出された1つの量のサンプルイオンの1つの質量スペクトルから、2つの直前のステップにおいて評価される。1つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトは、1つの検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異の判定によって、1つの検出された質量スペクトルから評価される。m/z値の相対的な差異が2つ以上の種のサンプルイオンに対して判定されると、その1つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトは、2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から、サンプルイオンのm/z値の相対的な差異の典型的な値を導出することによって、2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から導出される。この典型的な値−1つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフト−は、m/z値の判定された相対的な差異を平均することによって、その2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異から導出されることが好ましい。
本発明の方法の別の実施形態において、このサンプル勾配は、サンプルイオンの空間電荷によって誘起された相対的なm/zシフトの差異と、イオントラップ質量分析器内に注入およびトラップされたサンプルイオンの2つの異なる量の可視総電荷Qvの差異との比として計算することができ、それらは、イオントラップ質量分析器内で検出された2つの量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルから、2つの直前のステップにおいて評価される。2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの差異は、2つの量のサンプルイオンの2つの検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、少なくとも1つのサンプルイオンのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異の判定によって、2つの検出された質量スペクトルから評価される。m/z値の相対的な差異が、2つ以上の種のサンプルイオンに対して判定されると、2つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトの差異は、2つの量のサンプルイオンの各々の評価された相対的なm/zシフトから導出される。
1つの量のサンプルイオンの相対的なm/zシフトが、m/z比が既知である2つ以上の種のサンプルイオンのm/z値の判定された相対的な差異からどのように導出され得るのかについては、既に説明した。
サンプル勾配は、質量分析が実施され得るサンプルの場合、サンプルイオンの質量スペクトルにおいて観測された相対的なm/zシフトが、サンプルイオンの検出された質量スペクトルから判定され得る可視総電荷Qvとどのように相関しているかについて説明する。サンプル勾配を判定し、特に計算するためのさらなる実施形態が、以下に説明される。
相対的なm/zシフトの、サンプルの可視総電荷Qvとの相関は、線形関数のサンプル勾配による線形関数であるため、相対的なm/zシフトは、検査対象サンプルイオンの量の任意の観測された可視総電荷Qvに対して判定することができる。
請求項5に記載の本発明の方法の一実施形態において、以前に例証したように、1つの量のサンプルイオンの質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を計算する。この方法において、質量スペクトルが検出されることになる1つの量のサンプルイオンを選択することが好ましい。次いで、線形相関のサンプル勾配は、検出された質量スペクトルを評価することによって、計算することができる。検査対象のサンプルイオンの量は、例えば、サンプルイオンがイオン貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析器に注入されてそれらの質量スペクトルを検出する注入期間を定義することによって選択され得る。
請求項5に記載の本発明の方法の別の実施形態において、以前に例証したように、2つの量のサンプルイオンの質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を計算する。この方法において、質量スペクトルが検出されることになる2つの異なる量のサンプルイオンを選択することが好ましい。次いで、線形相関のサンプル勾配は、検出された2つの質量スペクトルを評価することによって、計算され得る。検査対象のサンプルイオンの量は、例えば、サンプルイオンがイオン貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析器に注入されてそれらの質量スペクトルを検出する2つの異なる注入期間を定義することによって選択され得る。
また、請求項5に記載の本発明の方法において、3つ以上の異なる量のサンプルイオンの質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定することができる。
よって、別の実施形態において、サンプル勾配を判定する第1のステップにおいて、相対的なm/zシフトの差異と、可視総電荷Qvの差異との比は、2つの異なる量のサンプルイオンの異なるペアの質量スペクトルに対して判定され、次いで、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配は、2つの異なる量のサンプルイオンの異なるペアに対して判定された比を平均することによって計算されることが可能である。
別の実施形態において、異なる量のサンプルイオンに対して検出された質量スペクトルを使用して、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配を判定し、そこでは、線形フィッティングが使用される。このフィッティングは、異なる量のサンプルイオンの質量スペクトルの、評価された相対的なm/zシフト、および評価された可視総電荷Qvを考慮に入れている。これらの値に基づいて、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフト、および可視総電荷Qvの相関値の二次元データセットを作成することができ、その二次元データセットに対して、これらの質量スペクトルの可視総電荷Qvを用いて相対的なm/zシフトの線形相関のサンプル勾配を判定している線形フィッティング法を適用することができ、そのサンプル勾配は、フィッティングされた線形関数の勾配である。
請求項5に記載の本発明の方法の次のステップにおいて、補償係数cが判定され、これは、質量分析を実施するためにイオン貯蔵装置に注入されるサンプルイオンのイオン注入期間topt,vを調整するために使用される。このイオン注入期間topt,vは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する注入期間である。基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optは、基準サンプルからイオン化されたイオンである基準イオンの検査対象の量の現実の総電荷Qrealが、最適化された現実の総電荷Qoptの値を有する場合、基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である可視総電荷Qvのその量である。したがって、基準イオンの最適化された可視電荷Qref,optが基準サンプルの質量スペクトルにおいて可視である場合、質量スペクトルは、検査対象のイオンの最適化された現実の総電荷Qoptを用いて検出されている。このような量の検査対象の基準イオンの場合、基準サンプルの質量スペクトルは、高品質性能で検出される。サンプルイオンが質量分析を実施するためにイオン貯蔵装置に注入されるイオン注入期間topt,vは、イオン貯蔵装置に注入されたサンプルイオンが、質量スペクトルの検出のためのイオントラップ質量分析器に排出された場合、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optが、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視電荷として観測されるそのイオン注入期間を定義している。通常、現実の総電荷Qrealの別の比が、基準イオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視である現実の総電荷Qrealの比と比較して、サンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvとして可視であるため、サンプルイオンの質量スペクトルは、それらがイオン注入期間topt,vの間にイオン貯蔵装置に注入された場合、最適化された総電荷Qoptを用いても検出されない。したがって、請求項5に記載の本発明の方法は、最適化された総電荷Qoptのサンプルイオンの量がイオン貯蔵装置に注入され、次いでイオントラップ質量分析器を用いて分析されるようにして、イオン注入期間topt,vを調整するための補償係数cを判定している。イオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの、イオントラップ質量分析器を用いて検出された少なくとも1つの質量スペクトルから評価された可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。検出された質量スペクトルにおける可視総電荷Qvと、サンプルイオンの注入期間との間の線形相関は、基準イオンの最適化された可視電荷Qref,optがサンプルイオンの質量スペクトルにおいて可視である場合、イオン注入期間topt,vを定義するために使用される。
少なくとも1つの量のサンプルイオンが、イオントラップ質量分析器に注入されて、イオン注入期間topt,vを判定し、この量は、サンプルイオンの注入期間と相関する。これらの量のサンプルイオンの各々に対して、イオントラップ質量分析器は、質量スペクトルを検出しており、次いでこれらの質量スペクトルから可視総電荷Qvが評価される。それらの量のサンプルイオンの観測された可視総電荷Qv、およびそれらの対応する注入期間から、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optと関係するイオン注入期間topt,vが判定される。
イオン注入期間topt,vは、第1のステップの少なくとも1つの量のサンプルイオンの少なくとも1つの検出された質量スペクトルを使用して判定されることが好ましい。
さらに質量スペクトルは、可視総電荷Qvの追加の値を提供するサンプルイオンの少なくとも1つの量のうちの少なくとも一部に対して検出されるイオン注入期間topt,vもまた、判定することができる。これは、改善された統計データによって、サンプルイオンの量の可視総電荷Qvの精度を改善するために行うことができる。サンプルイオンの量の可視総電荷Qvの値から、平均値を判定することが好ましい。この方法は、変動のあるイオン流がサンプルイオンをイオン貯蔵装置に提供しているときに、イオン注入期間topt,vを判定するために適用される必要がある。
イオン注入期間topt,vを判定するための他の好ましい実施形態は、すでに以前説明しており、請求項5に記載の本発明の方法にも使用することができる。
サンプルイオンの実際の総電荷Qrealが、検出されたスペクトルにおいて可視である場合、サンプルイオンの質量スペクトルから評価された可視総電荷Qvから判定された清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係するイオン注入期間topt,vは、最適化された可視電荷Qclean,optもまた、最適化された総電荷Qoptであるため、最適化された総イオン電荷Qoptに対する最適化された蓄積時間topt,realである。したがって、補償係数は、1となる。
しかし、補償係数cは、実験に対しても請求項5に記載の本発明の方法によって判定することができ、サンプルイオンのイオンパッケージの完全な現実の総電荷Qrealは、検出されたスペクトルにおいて不可視であり、その結果、Qv<Qrealである。したがって、観測された相対的なm/zシフトは、この値が現実の総電荷Qrealの値である場合、サンプルイオンの質量スペクトルから評価された可視総電荷値Qvから予想されたシフトよりも大きい。さらに、可視総電荷Qvから判定された、清浄なサンプルの最適化された可視電荷Qoptに関係する、最適化されたイオン注入期間topt,vは、Qvが、toptを判定するために必要とされるサンプルイオンの完全な総電荷Qrealを表していないため、あまりにも大きい値のtopt,vを有する。これを補償するために、補償係数cが提供される。この補償係数は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された清浄なサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の清浄な勾配を、以前に判定されたサンプル勾配により除算することによって判定される。清浄な勾配に関するさらに多くの詳細については、請求項1および2に記載の本発明の方法に関して既に提供されている。同じ清浄な勾配はまた、請求項5に記載の本発明の方法においても使用される。
一般に、本発明の方法のこのステップにおいて、補償係数cはまた、清浄なサンプルだけでなく、任意の種類の基準サンプルからも判定される。このような基準サンプルに対して、イオンパッケージの完全な総電荷Qrealは、その基準サンプルの検出されたスペクトルにおいて不可視である場合がある。したがって、イオン注入期間topt,vは、式(1)に基づいて定義され、この式は、式中で清浄なサンプルの最適化された総電荷Qoptを置き換えている基準サンプルの質量スペクトルを検出するために、可視総電荷Qref,optの最適化された値を考慮している。よって、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するイオン注入期間topt,vは、サンプルイオンのイオンパッケージに対して基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optがそれらの検出された質量スペクトルにおいて可視である場合に、質量分析を実施するためのサンプルイオンの注入期間である。このイオン注入期間topt,vは、少なくとも1つの量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルから評価された、イオントラップ質量分析器にトラップされた可視総電荷Qv、およびサンプルイオンの対応する注入期間のみから判定される。よって、サンプルイオンが、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係する、最適化されたイオン注入期間topt,vでイオン貯蔵装置に注入されると、基準サンプルの質量スペクトルを検出するための最適化された可視総電荷Qref,optもまた、分析対象サンプルの質量スペクトルにおいて可視である。
しかし、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされたサンプルイオンの現実の総電荷の、分析対象サンプルのトラップされたサンプルイオンの現実の総電荷に対する比が、質量スペクトルにおいて可視であるトラップされた基準イオンの総電荷の、分析対象サンプルのトラップされた基準イオンの現実の総電荷に対する比から逸脱している場合、サンプルもまた、基準サンプルの場合である最適化されたイオン注入期間topt,realでも分析されているという前提は正しくなく、これに対しては、以前にさらに詳細に説明されている。
これを補償するために、補償係数cは、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルからイオン化された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配を、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配により除算することによって判定され、これは、請求項5に記載の本発明の方法のステップにおいて、以前に判定されている。次いで、サンプルイオンを分析するための、また特にサンプルイオンの質量スペクトルを検出するための最適化されたイオン注入期間topt,realは、基準サンプルの最適化された可視電荷Qref,optに関係するサンプルイオンのイオン注入期間topt,vの、判定された補償係数cとの乗算によって判定される。
基準サンプルからイオン化された基準イオンが検査対象である場合、イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配は、イオントラップ質量分析器を用いて検出された質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の勾配である。
イオントラップ質量分析器を用いて検出された基準サンプルの基準イオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配が判定された基準サンプルは、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの特定の部分が、その質量スペクトル、すなわち可視総電荷QVにおいて可視であるサンプルである。基準サンプルの場合、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも20%が可視であることが好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの少なくとも65%が可視であることがより好ましく、基準イオンの検査対象のイオンパッケージの現実の総電荷Qrealの90%が可視であることが最も好ましい。
請求項9において、イオントラップ質量分析器内のサンプルからイオン化されたサンプルイオンの質量分析を実施するための、判定された補償係数cを使用する方法が提供されている。サンプルイオンの質量分析を実施するための、イオン貯蔵装置内のサンプルイオンの最適化されたイオン注入期間topt,realは、次のように定義される。
topt,real=c*topt,v。 (13)
質量シフト補正に関する第4の目的は、請求項10および11に記載の方法によって解決される。
相対的なm/zシフトの変化が、サンプルからイオン化されたサンプルイオンの質量スペクトルにおける可視総電荷Qvの変化とどのように相関しているかを説明し、また、上述した検査対象サンプルのイオンの、1つの検出された質量スペクトルまたは2つ以上の検出された質量スペクトルから判定することができる、サンプルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のサンプル勾配は、イオントラップ質量分析器により検出されたサンプルイオンの質量スペクトルにおいて観測された質量シフトを補正するための方法に使用され得る。この相関は、この場合には、判定されたサンプル勾配による線形関数であるため、相対的なm/zシフトは、検査対象のイオンの量の各観測された可視総電荷Qvに対して判定される。相対的なm/zシフトは、ある量の検査対象サンプルイオンの観測された可視総電荷Qvと、サンプル勾配との乗算によって判定され、これは、相対的なm/zシフトの変化が可視総電荷Qvとどのように相関しているかを説明する。次いで、判定された相対的なm/zシフトを使用して、サンプルイオンの検出された質量スペクトルのm/z値を補正する。
請求項1、2、および5に記載の方法に関して説明されたサンプルのサンプル勾配を判定する方法のすべての詳細な実施形態はまた、請求項10および11に記載の方法にも使用することができる。
本発明の方法の好ましい実施形態において、イオントラップ質量分析器は、フーリエ変換質量分析器である。特に、フーリエ変換質量分析器の質量スペクトルでは、サンプルイオンの注入されたイオンパッケージの完全な総電荷は、不可視であり得、その理由は、画像電流信号の強力な破壊的干渉効果、および質量分析器内のイオン相互作用に起因する合体効果が生じ得るからである。
検出器を用いてイオンを検出する、線形イオントラップ質量分析器および3Dイオントラップ質量分析器などの他のイオントラップ質量分析器では、例えば、サンプルイオンの注入されたイオンパッケージの完全な総電荷は、検出器の飽和効果に起因して不可視である場合がある。
発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの質量分析は、質量スペクトルを検出することによって実施される。
本発明の方法の一実施形態において、質量スペクトルは、2つの異なる量のサンプルイオンに対して検出される。
本発明の方法の別の実施形態において、質量スペクトルは、少なくとも3つの異なる量のサンプルイオンに対して検出される。
発明の方法の一実施形態において、異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおける、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトは、可視総電荷Qvに寄与しないサンプルイオンの少なくとも1つの検出される質量スペクトルにおける低ピーク強度、干渉および/または非分解イオンピークによって誘起される。干渉および/または非分解イオンピークのサンプルイオンは、高電荷状態を有するサンプルイオンであることが好ましい。多くのサンプルにおいて、サンプルイオンは、それらの電荷状態がそのサンプルイオンの80%を超える電荷状態である場合、高電荷状態を有する。多くのサンプルにおいて、サンプルイオンは、それらの電荷状態がそのサンプルイオンの90%を超える電荷状態である場合、高電荷状態のみを有する。多くのサンプルにおいて、サンプルイオンは、それらの電荷状態がそのサンプルイオンの95%を超える電荷状態である場合、高電荷状態のみを有する。どのサンプルイオンが高電荷状態を持っているかは、検査対象サンプル、特にサンプルイオンのサイズに依存する。サンプルが、例えば、完全なたんぱく質を含む場合、高電荷状態のサンプルイオンは、少なくとも20以上、好ましくは少なくとも15以上、および特に好ましくは10以上の電荷状態を有することができる。サンプルが、例えば、たんぱく質の構成要素であるペプチドを含む場合、高電荷状態のサンプルイオンは、少なくとも6以上、好ましくは少なくとも4以上、および特に好ましくは少なくとも3以上の電荷状態を有することができる。
本発明の方法の一実施形態において、異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルにおいて、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトは、サンプルイオンがイオン化されたサンプル内に含まれる巨大分子によって誘起される。典型的に、巨大分子は、サンプルの分子の平均質量よりも少なくとも1.4倍、特に少なくとも1.6倍の質量を有する。
異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルにおける、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトは、それらのサンプルイオンが、イオントラップ質量分析器によっては分解されない1u(統一原子質量単位)の質量差異でのm/z値を有する場合、巨大分子に対して誘起される。次いで、それらの分子の単一の同位体のピークは、その分子の1個の原子が別の質量を有する原子の同位体によって置き換えられ、したがって、非分解同位体ピークが、検出された質量スペクトルにおける可視総電荷Qvに寄与しない場合には、分解されない。
異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルにおける、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトは、それらの同位体分布のそれらの同位体分子種のピークがイオントラップ質量分析器によっては分解されない場合、巨大分子に対して誘起されることが好ましい。次いで、それらの分子のサンプルイオンの単一の同位体のピークは、分解されず、それらは、結果として、分子中に含まれる異なる原子の異なる質量欠陥となり(例えば、異なる原子が、より重い同位体によって置き換えられる同位体分子種となる)、したがって、非分解同位体のピークは、検出された質量スペクトルにおける可視総電荷Qvに寄与しない。
サンプル内に含まれる巨大分子は、長い保持時間で、クロマトグラフィーカラム、特に液体クロマトグラフィーカラムから溶出されることが好ましい。この巨大分子は、典型的に、サンプルイオンがイオン化されるサンプル内に含まれるすべての溶出分子の80%の保持時間を超える保持時間で溶出される。この巨大分子は、すべての溶出分子の90%の保持時間を超える保持時間で溶出されることが好ましい。この巨大分子は、すべての溶出分子の95%の保持時間を超える保持時間で溶出されることがより好ましい。巨大分子は、溶出される時点で、使用されるクロマトグラフィープロセスの実験的な詳細によって定義することができる。重要なことは、異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおける、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトが、特に、クロマトグラフィープロセスの終了時にクロマトグラフィーカラムから溶出される分子に対して誘起されることである。
本発明の方法の一実施形態において、フーリエ変換質量分析器で注入されたサンプルイオンの少なくとも1つの量に対しての、可視総電荷Qvに対して増加して観測された相対的なm/zシフトは、ほぼ同じ質量を有する注入されたイオンの特定のサンプルイオンの質量スペクトルにおける合体ピークによって引き起こされる。そのような実施形態において、注入されたイオンのこれらの特定のサンプルイオンは、相対的なm/zシフトの観測可能な差異、または相対的なm/zシフトを評価するためには使用されないが、特定のサンプルイオンのm/z比は既知である。
本発明の方法の一実施形態において、質量スペクトルは、イオン貯蔵装置からイオントラップ質量分析器に注入された異なる量のサンプルイオンに対して検出され、イオン化されたイオンサンプルの異なる量の差異は、結果として、サンプルイオンの、イオン貯蔵装置への供給変動からもたらされる。この場合、異なる量のサンプルイオン、同じ注入期間の異なる瞬間に、イオン貯蔵装置に注入されることが好ましい。供給されるサンプルイオンの変動は、LCプロセス、イオン化条件、ガスの流れ、サンプルの流れ、電圧変動、電流変動、およびAGC不具合によって引き起こされる可能性がある。
サンプルイオンの異なる量の差異はまた、イオンの、イオン貯蔵装置への注入期間、または他の実験パラメータを変更することによっても制御することができる。
本発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの異なる量の質量スペクトルの連続的な検出は、0.3〜60秒、好ましくは1〜30秒、および特に好ましくは3〜10秒の時間遅延で実行される。
本発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの少なくとも1つの量の少なくとも1つの質量スペクトルの検出は、0.3〜60秒、好ましくは1〜30秒、および特に好ましくは3〜10秒の、少なくとも1つの質量スペクトルの連続的な検出の時間遅延を有する所要時間にわたって繰り返される。
本発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの異なる量の質量スペクトルの連続的な検出は、0.3〜60秒、好ましくは1〜30秒、および特に好ましくは3〜10秒の、少なくとも1つの質量スペクトルの連続的な検出の時間遅延を有する所要時間にわたって繰り返される。
本発明の方法の一実施形態において、サンプルイオンの少なくとも1つの量、好ましくはサンプルイオンの異なる量の、質量スペクトルの連続的な検出の時間遅延は、以前に判定された補償係数、特にサンプルイオンの異なる量の検出された質量スペクトルからの補償係数に依存する。
補償係数について、1に近い値が判定された場合、少なくとも1つの質量スペクトルの繰り返し検出の時間遅延は、延長することができる。典型的に、補償係数の判定値が0.7〜1.3であり、好ましくは補償係数の判定値が0.8〜1.2である場合、および特に好ましくは補償係数の判定値が0.9〜1.1である場合、時間遅延は、延長されることになる。典型的に、時間遅延の値は、その値の約50%、好ましくはその値の約100%、および特に好ましくはその値の約300%延長されることになる。
補償係数について、1に近くない値が判定された場合、少なくとも質量スペクトルの繰り返し検出の時間遅延は、減少することができる。典型的に、補償係数の判定値が0.2未満または3超である場合、好ましくは補償係数の判定値が0.35未満または2超である場合、および特に好ましくは補償係数の判定値が0.5未満または1.5超である場合、時間遅延は減少することになる。典型的には、時間遅延の値は、その値の約50%、好ましくはその値の約65%、および特に好ましくはその値の約80%減少することになる。
補償係数の判定値が時間の経過とともに変化する場合、質量スペクトルの繰り返し検出の時間遅延は減少させることができる。典型的に、補償係数の値が、時間の経過とともに、約0.2、好ましくは約0.1、および特に好ましくは約0.05変化する場合、減少することになる。典型的には、時間遅延の値は、その値の約50%、好ましくはその値の約65%、および特に好ましくはその値の約80%減少することになる。
本発明の方法1または2の好ましい実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、少なくとも3種、好ましくは少なくとも100種、および特に好ましくは少なくとも1,000種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1または5の好ましい実施形態において、少なくとも1つの検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、少なくとも2種、好ましくは少なくとも5種、および特に好ましくは少なくとも20種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1または2の好ましい実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、そのピークが、5よりも高い、好ましくは10よりも高い、および特に好ましくは50よりも高い、検出された質量スペクトルにおける信号対雑音比を有する場合、複数の種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1または5の好ましい実施形態において、少なくとも1つの検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、そのピークが、5よりも高い、好ましくは10よりも高い、およおび特に好ましくは50よりも高い、検出された質量スペクトルにおける信号対雑音比を有する場合、複数の種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1および2の好ましい実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/zシフト値の、比較による相対的な差異は、ピーク幅が、予想ピーク形状のピーク幅から20%以下逸脱する、好ましくは予想ピーク形状のピーク幅から5%以下逸脱する、および特に好ましくは予想ピーク形状のピーク幅から2%以下逸脱する、検出された質量スペクトルにおけるピーク形状を有する複数の種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1または5の好ましい実施形態において、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、ピーク幅が、予想ピーク形状のピーク幅から20%以下逸脱する、好ましくは予想ピーク形状のピーク幅から5%以下逸脱する、および特に好ましくは予想ピーク形状のピーク幅から2%以下逸脱する、検出された質量スペクトルにおけるピーク形状を有する複数の種のサンプルイオンに対して判定される。
本発明の方法1または2の別の好ましい実施形態において、少なくとも2つの異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、予想ピーク形状から20%以下の平均二乗誤差で逸脱する、好ましくは予想ピーク形状から5%以下の平均二乗誤差で逸脱する、および特に好ましくは予想ピーク形状から2%以下の平均二乗誤差で逸脱する、検出された質量スペクトルにおけるピーク形状を有する複数の種のサンプルイオンに対して評価される。
本発明の方法1または5の好ましい実施形態において、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、検出された質量スペクトルにおいてピーク形状を有する複数の種のサンプルイオンに対して判定され、その質量スペクトルのピーク幅は、予想ピーク形状から20%以下の平均二乗誤差で逸脱する、好ましくは予想ピーク形状から5%以下の平均二乗誤差で逸脱する、および特に好ましくは予想ピーク形状から2%以下の平均二乗誤差で逸脱する。
本発明の方法1または2の好ましい実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、いくつかの種のサンプルイオンに対して判定され、いくつかの種のサンプルイオンの、サンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異(「相対的なm/z値の集合的な、相対的な差異」)は、それらのピークのm/z値の、それらの評価された相対的な差異が、すべてのいくつかの種のイオンのピークのm/z値の平均の相対的な差異からの期待値以下で逸脱する場合に、いくつかの種のサンプルイオンのうちのそのような種のみから判定される。その期待値は、イオントラップ質量分析器に対して期待されるm/z値の相対的な差異の変動に関係し、典型的には、その変動の1.5倍、好ましくはその変動分、および特に好ましくはその変動の0.7倍である。
本発明の方法1または5の好ましい実施形態において、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、いくつかの種のサンプルイオンに対して判定され、それらのサンプルイオンに対しては、m/z比は、既知であり、いくつかの種のサンプルイオンの、サンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異(「m/z値の、既知のm/z比に対する集合的な、相対的な差異」)は、それらのピークのm/z値の、既知のm/z比に対するそれらの判定された相対的な差異が、すべてのいくつかの種のイオンのピークのm/z値の平均の相対的な差異からの期待値以下で逸脱する場合に、いくつかの種のサンプルイオンのうちのそのような種からのみ判定される。その期待値は、イオントラップ質量分析計に対して期待されるm/z値の相対的な差異の変動に関係し、典型的には、その変動の1.5倍、好ましくはその変動分、および特に好ましくはその変動の0.7倍である。
本発明の方法1または2の一実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、複数の種のサンプルイオンに対して判定され、それらの種は、検出された質量スペクトルにおけるイオン化された分子の同位体パターンの要素、すなわち、この同位体パターンの一部として、検出された質量スペクトルで観測されたイオン化された分子の同位体パターンの種である。
本発明の方法1および5の好ましい実施形態において、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、すべての種のサンプルイオンに対して判定され、それらの種は、標準成分のピークパターン、特に標準成分のサンプルイオンのピークパターン、すなわち、標準成分の同位体パターンの同位体分子種であるすべての種のサンプルイオンに対しての要素である。
請求項1または2に記載の本発明の方法の一実施形態において、少なくとも2つの異なる量のイオンの検出された質量スペクトルにおいて観測されたサンプルイオンのピークのm/z値の、比較による相対的な差異は、1つ以上の種のサンプルイオンに対してのみ判定され、それらの種のサンプルイオンは、質量スペクトルからは除外されず、または外れ値として分類される。
外れ値とは、観測された大部分のデータから逸脱した極端な強度値を有する質量スペクトルのピークである。
外れ値もまた、ピークであり、そのm/z値の相対的な差異が質量スペクトルから判定され、観測されたm/z値の相対的な差異の期待値から逸脱する。観測されたm/z値の相対的な差異のこの期待値は、各測定において、またはイオントラップ質量分析器での電極構成、イオントラップ質量分析器内に注入されるイオンの印加電界および分布を考慮した理論的考察によって、予め判定することができる。典型的に、期待値からの偏差は、80%以下である必要がある。好ましくは、その偏差異は、50%以下である必要がある。特に好ましくは、その偏差は、35%以下である必要がある。
サンプルイオンのピークのm/z値の相対的な差異のこの評価は、それらのピークのm/z値の相対的な差異があまりに大きくまたは小さく、かつ/または極端な強度値を有するピークである複数の種のサンプルイオンを除外する、当業者とって既知である統計学的外れ値除去アルゴリズムによって実施することができる。
本発明の方法1および5の一実施形態において、検出された質量スペクトルにおける、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークのm/z値の、その既知のm/z比に対する相対的な差異は、1つ以上の種のサンプルイオンに対してのみ判定され、それらの種のサンプルイオンは、質量スペクトルからは除外されず、または外れ値として分類される。
外れ値はまた、検出された質量スペクトルにおけるそのm/z値の、既知のm/z比に対する相対的な差異が、相対的な差異の期待値から逸脱する、m/z比が既知である、サンプルイオンのピークでもある。サンプルイオンの観測されたm/z値の、既知のm/z比に対する相対的な差異のこの期待値は、各測定において、またはイオントラップ質量分析器での電極構成、イオントラップ質量分析器内に注入されるイオンの印加電界および分布を考慮した理論的考察によって、予め判定することができる。典型的に、期待値からの偏差は、80%以下である必要がある。好ましくは、その偏差異は、50%以下である必要がある。特に好ましくは、その偏差は、35%以下である必要がある。
本発明の方法の一実施形態において、イオントラップ質量分析器内でトラップされた清浄なサンプルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の清浄な勾配は、較正プロセスによって判定される。
本発明の方法の別の実施形態において、イオントラップ質量分析器内でトラップされた基準サンプルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の基準勾配は、較正プロセスによって判定される。
これらの較正プロセスは、イオントラップ質量分析器に対して1回、または特定の較正時に実行することができる。このような較正プロセスにおいて、清浄なサンプルからイオン化されたサンプルイオン、すなわち清浄なサンプルイオンと、それぞれ、基準サンプル、すなわち基準イオンのある量の少なくとも1つの質量スペクトルが検出され、次いで、この少なくとも1つの質量スペクトルから、イオントラップ質量分析器を用いてそれぞれ検出された清浄なサンプル、基準サンプルの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のそれぞれの清浄な勾配、基準勾配は、本発明の方法における、イオントラップ質量分析器を用いて検出されたサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の判定されたサンプル勾配と同じ方法で判定され、その方法は、サンプルイオンの量の完全な総電荷が、検出された質量スペクトルに不可視である場合に、イオントラップ変換質量分析器に注入されたサンプルイオンの量を制御するためのパラメータを提供する。このようなサンプルは、清浄なサンプルではなく、ほとんどの場合、そのサンプルの検出された質量スペクトルにおいて可視であるサンプルイオンの総電荷の一部は、基準サンプルの検出された質量スペクトルにおいて可視である基準イオンの総電荷の一部よりも小さい。
好ましい実施形態において、清浄なサンプルは、そのサンプルの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の、そのサンプルの清浄な勾配を判定するための較正サンプルとして使用される。清浄なサンプルについて、その清浄なサンプルの分析対象のイオンパッケージの完全な総電荷Qrealが、その質量スペクトルにおいて視認可能であるか、または実質的に視認可能であることは、周知である。
また、基準サンプルは、イオントラップ質量分析器で検出されたその質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関のその基準勾配を判定するための較正サンプルとして使用することができる。このような較正サンプルの場合、較正サンプルの分析対象のイオンパッケージの完全な総電荷Qrealのどの部分が、その質量スペクトルにおいて可視であるかは、周知である。
本発明の方法の一実施形態において、イオントラップ質量分析器内でトラップされた清浄なサンプルイオンの質量スペクトルの相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の清浄な勾配は、理論的なアプローチによって提供される。このようなアプローチとしては、Ledford et al.,「Space Charge Effects in Fourier Transform Mass Spectrometry.Mass Calibration」Anal.Chem.1984,56,2744−2748によって提供されている。一般に、イオントラップ質量分析器のm/zシフトの挙動を提供している、イオントラップ質量分析器内のイオンの電磁界および電荷分布を考慮に入れて、数学的または数値的アプローチを使用することができる。
本発明の方法の一実施形態において、判定された補償係数は、補償係数を判定するために使用されたサンプルと同等な、具体的には、それに類似するサンプルイオンの質量分析のために保存される。サンプルは、例えば、それらが同じ源、例えば血液、特定の細胞などを有し、かつ/または同じ実験条件によって作製されている場合に、同等である。それらのサンプルは、実験条件がほぼ一定であり、特に時間の経過とともにわずかな勾配を伴って変化している場合、例えば、MALDIサンプルの同じスポットからイオン化されるか、または液体クロマトグラフィー実行の特定の時間範囲内で作製され得る。同等なサンプルの実験パラメータは、典型的に、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、および最も好ましくは2%以下で変化している。
本発明の方法の一実施形態において、相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の補償係数またはサンプル勾配は、少なくとも1つの検出された質量スペクトルから判定された補償係数値またはサンプル勾配値の判定を繰り返すことによって、特に異なる量のサンプルイオンの検出された質量スペクトルを比較し、その判定された補償係数値またはサンプル勾配値をその時間にわたって平均することによって、判定される。この平均によって、その判定は、良好な統計に基づいている。
例えば、補償係数cまたはサンプル勾配に関する、最終測定および相関判定のNサイクルの特定回数の丸め平均が、この判定のために使用することができる。
それは、補償係数値またはサンプル勾配値の平均による、相対的なm/zシフトの、可視総電荷Qvとの線形相関の補償係数またはサンプル勾配の判定には不可欠であり、測定されたサンプルの特性が繰り返し判定の期間中に大幅に変化しないそれらの値は、経時的に判定されている。例えば、MSスペクトルがLC実行時に測定される場合、連続走査からの結果は、その連続走査の特性(可視/不可視電荷比に関して)が、すでに以前説明したように、ゆっくり変化するように、特定の時間フレーム内で平均することができる。
請求項14は、請求項1、2、および5、ならびに対応する副請求項に記載の本発明の方法を実行する、イオン貯蔵装置を備える、イオントラップ質量分析計の制御装置を請求している。
制御装置は、少なくとも1つのプロセッサまたは少なくとも1つの電気回路を備え、それらは、信号および/またはデータ、例えば、画像電流または質量スペクトルを受信し、データおよび/または信号、例えば、補償係数cもしくはイオン注入期間topt,real、またはこれらの値に関係する信号を提供する。
請求項15は、本発明の方法を実行することができる、好ましくは実行しているイオン貯蔵装置およびイオントラップ質量分析器を備える、質量分析計を請求している。