JP2021144281A - 最適化装置、最適化方法、及び最適化プログラム - Google Patents

最適化装置、最適化方法、及び最適化プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができる最適化装置等の提供。【解決手段】磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、Nc個のコイル領域とし、コイル領域Niに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxiとし、左回りコイルの補助変数をyiとし、コイル領域Niにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφirightとし、コイル領域Niにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφileftとしたとき、Δφirightxi(i=1〜Nc)とΔφileftyi(i=1〜Nc)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化処理部を有する最適化装置等である。【選択図】図38

Description

本件は、最適化装置、最適化方法、及び最適化プログラムに関する。
コイルと磁石を有する磁気デバイスは、様々な用途で使用されており、例えば、振動発電デバイス、平面モータ、リニアモータ、磁気浮上装置などとして用いられている。これらの磁気デバイスにおいては、電磁誘導という物理現象を利用しているので、磁気デバイスの性能を向上させるためには、例えば、磁石から発生してコイルに鎖交する(コイルをくぐり抜ける)磁束の変化量を大きくすることが求められる場合がある。
磁気デバイスにおけるコイルに鎖交する磁束(鎖交磁束)の変化量は、例えば、磁気デバイスにおけるコイルと磁石の形状や配置に影響される。このため、例えば、磁気デバイスにおけるコイルと磁石の形状や配置を最適化することにより、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最大化することができる。
磁気デバイスの設計を最適化する従来技術としては、例えば、電動機や発電機などの電磁機器について、設計パラメータであるギャップ半径、ティース幅、固定子巻線数などを変数として含む目的関数を最適化することにより設計を行う技術が提案されている。このような従来技術では、例えば、広い範囲を取り得る連続値である設計パラメータを含む目的関数を、数理計画法を用いて最適化するとしている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、このような従来技術において、例えば、コイルの形状を最適化するために、コイルの形状を設計パラメータにより表す場合、当該設計パラメータとして円の半径を指定したときには、最適化するコイルの形状は円に限定される。このように、従来技術においては、設定した設計パラメータの性質により、コイルの形状等が限定され、十分な最適化が行えない場合がある。
また、目的関数を最適化する技術としては、例えば、組合せ最適化問題を解く際に、組合せ最適化問題を、複数の離散化されたパラメータで表される目的関数で表現し、焼き鈍し法により当該目的関数を最適化する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような従来技術においては、アニーリングマシンなどを用いて、焼き鈍し法(アニーリング)による計算を行うことにより、組合せ最適化問題を表現する目的関数の最適化を短時間で効率的に行うことができるとしている。
ここで、このような従来技術を用いて効率的に目的関数の最適化を行うためには、上述したように、例えば、最適化する目的関数が複数の離散化されたパラメータで表されることが求められる。しかしながら、上述した電磁機器の設計を最適化する従来技術において、目的関数に含まれる設計パラメータは、ギャップ半径など比較的少数の、広い範囲を取り得る連続値である。
このため、上述した電磁機器の設計を最適化する従来技術では、組合せ最適化問題の形式で目的関数を表すことができず、したがって、コイル形状等の設計自由度をより大きくした場合の最適化を効率的に行うことができない。
特開2011−243126号公報 特開2019−121137号公報
一つの側面では、本件は、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができる最適化装置等を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段の一つの実施態様は、以下の通りである。
すなわち、一つの実施態様では、最適化装置は、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化装置であって、
磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化処理部を有する。
一つの側面では、本件は、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができる最適化装置等を提供できる。
図1は、振動発電デバイスの一例を示す図である。 図2は、磁気デバイスにおけるコイルと磁石の配置の一例を示す図である。 図3は、従来技術において、コイルの形状を最適化する場合の設計パラメータの一例を示す図である。 図4は、従来技術において、コイルの形状を最適化する場合の設計パラメータの他の一例を示す図である。 図5は、QUBO形式のイジングモデル式に最小値を与えるビットの組合せを探索する際の様子の一例を示す図である。 図6は、コイル配置領域と磁石配置領域の位置関係の一例を示す図である。 図7は、コイル配置領域の一例を示す図である。 図8は、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする際の処理の一例を示す図である。 図9は、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする際の処理の他の一例を示す図である。 図10は、隣接する多種のコイル領域に対する処理の一例を示す図である。 図11は、同一のコイル領域に、異なる向きのコイルが存在する場合の処理の一例を示す図である。 図12は、磁石配置領域の一例を示す図である。 図13は、磁石の状態変数sj,kと、磁石の状態変数sj,kが表すj番目の磁石領域Nにおける磁化の向きとの対応の一例を示す図である。 図14は、磁石配置領域をz軸方向に移動させる際の様子の一例を示す図である。 図15は、本件で開示する最適化装置のハードウェア構成の一例を示す図である。 図16は、本件で開示する最適化装置のハードウェア構成の他の一例を示す図である。 図17は、本件で開示する最適化装置の機能構成の一例を示す図である。 図18は、本件で開示する技術の一例を用いて、磁気デバイスのコイルの形状、配置、個数を最適化することにより、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の流れの一例を示すフローチャートである。 図19は、本件で開示する技術の一例を用いて、磁気デバイスのコイルの形状、配置、及び個数、並びに磁石の向き及び配置を最適化することにより、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の流れの一例を示すフローチャートである。 図20は、本件で開示する技術の一例を用いて、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする際の流れの一例を示すフローチャートである。 図21は、コイル配置領域CAにおける、y軸方向の分割数Ncyの一例を示す図である。 図22は、焼き鈍し法に用いるアニーリングマシンの機能構成の一例を示す図である。 図23は、遷移制御部の動作フローの一例を示す図である。 図24は、実施例1における、コイル配置領域と磁石配置領域の位置関係の変化の一例を示す図である。 図25は、実施例1における、コイル配置領域と磁石配置領域の位置関係の変化の一例を示す図である。 図26は、実施例1において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図27は、実施例1において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図28は、実施例1において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図29は、実施例1において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図30は、実施例2において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図31は、実施例2において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図32は、実施例2において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図33は、実施例2において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図34は、実施例3において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図35は、実施例3において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図36は、実施例3において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図37は、実施例3において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。 図38は、本件で開示する技術の一実施形態及び従来技術における、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の関係の一例を示す図である。
(最適化装置)
本件で開示する技術は、従来技術では、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、効率的かつ十分に最適化することができないという、本発明者らの知見に基づくものである。そこで、本件で開示する技術の詳細を説明する前に、従来技術の問題点等について、磁気デバイスが振動発電デバイスである場合を例として説明する。
振動発電デバイスは、振動による運動エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換することができるデバイスであり、環境発電(エネルギーハーベスティング)デバイスの一つとして注目されている。また、橋や建物などの振動を電力に変えることができる振動発電デバイスは、車載機器やウェアラブル機器の自家発電、屋内外の様々な場所に配置されるIoT(Internet of Things)デバイスへの電力供給手段としても注目されている。
振動発電デバイスでは、通常、振動発電デバイスが設置された対象物が振動することにより、振動発電デバイスにおけるコイルと磁石(永久磁石)の位置関係が変化することにより生じる電磁誘導という物理現象を利用して、振動を電力に変換する。
例えば、図1に示すように、振動発電デバイスGが振動することにより、板バネ1に接続された磁石2が矢印の方向に振動することで、振動発電デバイスGに固定されたコイル3との位置関係が変化する。そうすると、振動発電デバイスGのコイル3における鎖交磁束(コイル3をくぐり抜ける磁束)が変化するため、電磁誘導によってコイル3に誘導電流(誘導起電力)が生じるので、振動による運動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
電磁誘導により生じる誘導電流(コイルに発生する誘導起電力)は、コイルにおける鎖交磁束の変化量が大きいほど大きくなるため、コイルにおける鎖交磁束の変化量を大きくすることにより、振動発電デバイスの発電量を多くすることができる。
振動発電デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量は、例えば、コイルと磁石の形状や配置に影響されるため、振動発電デバイスの設計の際には、コイルにおける鎖交磁束の変化量を大きくできるように、コイルと磁石の形状や配置を最適化することが好ましい。
振動発電デバイスなどの磁気デバイスにおけるコイルと磁石の形状や配置を最適化する際には、図2に示すように、例えば、面状に配置した磁石2と、磁石2と相対する(互いに向かい合う)コイル3とにおける形状や配置を最適化する。なお、図2に示したように、振動発電デバイスにおいては、磁石2として、多数の小さな磁石(小磁石)を配列させたものを用いることが効果的な場合がある。なお、図2では、多数の小磁石をy軸とz軸を含む平面(y−z平面)と平行に配列させて形成した磁石2に、4つのコイル3が相対するように配置した例を示している。
ここで、例えば、上述した特許文献1などで開示されている従来技術においては、発電機などの設計を行う際に、磁気デバイスにおける設計パラメータを含む目的関数を最適化することで、磁気デバイスの性能を最適化するとしている。
磁気デバイスが振動発電デバイスである場合において、コイルの形状を最適化する場合の設計パラメータとしては、コイルの形状を四角形とするときは、図3に示すように、例えば、コイルの一辺の長さA1、辺と辺の間の角度A2などとすることができる。また、コイルの形状を最適化する場合の設計パラメータは、コイルの形状を円とするときは、図4に示すように、例えば、コイルの半径A3とすることができる。
上記の従来技術においては、例えば、このようにして設定した設計パラメータを変数として含む目的関数を最適化することにより、デバイスの設計を行う。このように、対象物の形状を一意に決めることができるパラメータを定め、そのパラメータを変化させることにより最適化を行う手法は、「パラメータ最適化」と呼ばれる場合がある。
ここで、パラメータ最適化を用いる手法においては、上述したように、対象物の形状を一意に決めることができるパラメータを定めて最適化するため、設定したパラメータの性質により、最適化の条件が限定され、十分な最適化を行うことができない場合がある。例えば、コイルの形状を最適化する際に、円の半径を設計パラメータとして選択した場合には、コイルの形状は円に限定されることになり、円以外の形状は最適化の際に考慮されずに限定的な解となる。この場合、例えば、実際には長方形のコイルとすることで、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最大化できるときであっても、コイルの形状が円に限定されてしまうため、コイルの形状を十分に最適化できない。
また、上述したパラメータ最適化を用いる手法においては、変化させるパラメータ(設計パラメータ)は、通常、広い範囲を取り得る連続値である。このため、パラメータ最適化を用いる従来技術では、コイルの形状を円とする場合に最適なコイルの半径を求める際には、例えば、最小値と最大値をあらかじめ設定し、その間で値を連続的に変化させて最適なコイルの半径を求める。
上述した従来技術においては、このような連続値の設計パラメータを含む目的関数の最適化には、当該目的関数に制約条件を加えて極小化又は最大化を行う数理計画法などを用いるとされている。
振動発電デバイスなどの磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化するためには、コイルの形状だけはなく、コイルを配置する位置や個数などについても最適化することが好ましい。このため、上述した従来技術を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化しようとする場合には、広い連続値と取り得る設計パラメータを複数含む目的関数の最適化を行う必要がある。
しかしながら、目的関数の最適化を数理計画法などのアルゴリズムで行う際には、目的関数に含まれる設計パラメータの数が多い場合や、目的関数で表された問題が組合せ最適化問題などのNP困難な問題である場合は、計算時間が長くなるときがある。
ここで、上記の組合せ最適化問題においては、考慮する要因の数が増えると、要因の組合せの数が指数関数的に膨大に増えるため、逐次的に処理を行う従来の計算手法では、考慮する要因の数が多いと実用的な時間内に解くことが特に難しい。
そこで、組合せ最適化問題を高速に解くことができる技術として、上述したように、アニーリングマシンなどを用いて、焼き鈍し法(アニーリング)による計算を行う技術が提案されている。組合せ最適化問題の求解を焼き鈍し法により行う手法としては、例えば、組合せ最適化問題における条件や制約に基づいた目的関数を用いる手法が提案されている。なお、目的関数は、エネルギー関数、コスト関数、ハミルトニアンなどと称される場合もある。
目的関数(目的関数式)は、当該目的関数におけるパラメータ(変数)が、組合せ最適化問題における最適な組合せとなるときに、最小の値をとる関数である。このため、目的関数が最小の値となる変数の組合せを探索する(目的関数を最小化する)ことにより、組合せ最適化問題の解を探索することができる。
また、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法(アニーリング)により、高速で効率的に目的関数の最小化を行うためには、目的関数がQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization;制限なし二次形式二値変数最適化)形式で表現されていることが必要となる場合がある。ここで、QUBO形式とは、0又は1などの2つの値のみを取り得る変数に対して、最大化又は最小化すべき目的関数が、その2次の項までで表現でき、かつ変数空間の範囲に明示的な制限がない形式を意味する。
アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法においては、例えば、QUBO形式でされた目的関数をイジングモデルと呼ばれる形式に変換し、イジングモデルに変換した目的関数の値を最小化することにより、組合せ最適化問題を求解する。
QUBO形式の目的関数をイジングモデルに変換した式(イジングモデル式)としては、例えば、次式で表されるQUBO形式のイジングモデル式とすることができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、E(s)は、最小化することが組合せ最適化問題を求解することを意味する目的関数である。
ijは、i番目の要素(ビット)とj番目の要素(ビット)の間の重み付けのための係数(ウエイト)である。
は、i番目の要素(ビット)が0又は1であることを表すバイナリ変数であり、sは、j番目の要素(ビット)が0又は1であることを表すバイナリ変数である。
は、i番目の要素(ビット)に対するバイアスを表す数値である。
const.は定数である。
アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法においては、例えば、上記のQUBO形式のイジングモデル式における各ビット(要素)を様々に変化させながら、当該イジングモデル式の最小値の探索を短時間で効率的に行うことができる。
例えば、図5に示すように、上記のQUBO形式のイジングモデル式に最小値を与えるビット(s;0又は1)の組合せを探索する(丸で囲った部分を探索する)ことにより、当該イジングモデル式を最適化することができるビットの状態を特定することができる。なお、図5において、縦軸はイジングモデル式(E(s))の値の大きさであり、横軸はビット(s)の組合せである。
そして、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法では、特定したビットの状態に基づいて、目的関数を最適化するパラメータを求めることができるため、短時間で効率的に目的関数を最適化することができる。このように、目的関数をQUBO形式で表現することができれば、当該目的関数をQUBO形式のイジングモデル式に変換することができ、当該イジングモデル式は、焼き鈍し法により短時間で効率的に最適化(最小化)することができる。
ここで、上述したように、目的関数をQUBO形式で表現するためには、最適化する目的関数に含まれる変数(パラメータ)が、0又は1などの2つの値のみを取り得る二値の変数であることが求められる。
しかしながら、上述したように、従来技術においては、例えば、コイルの形状や配置を最適化するための目的関数のパラメータ(設計パラメータ)は広い範囲を取り得る連続値である。したがって、上記の従来技術では、設計パラメータが広い範囲を取り得る連続値であるため、焼き鈍し法に適したQUBO形式で目的関数を表すことができず、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法による効率的な最適化を行うことができない。このため、従来技術では、振動発電デバイスなどの磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化するために、コイルの形状や配置を最適化するための計算を効率的に行うことができず、計算時間が長くなってしまう場合があった。
このように、従来技術では、振動発電デバイスなどの磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化を最適化する際に、コイルの形状がパラメータにより制限される場合や、効率的な最適化を行うことができず最適化に長い時間が必要となる場合があった。すなわち、従来技術においては、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができない場合があった。
そこで、本発明者らは、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができる装置等について鋭意検討を重ね、以下の知見を得た。
すなわち、本発明者らは、下記の最適化装置等により、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができることを知見した。
本件で開示する技術の一例としての最適化装置は、磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化処理部を有する。
ここで、本件で開示する技術の一例では、磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とする。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、磁気デバイスにおいてコイルを配置し得る面を所定の数(N)に分割して、N個のコイル領域とする。
また、以下では、N個のコイル領域のうちのi番目のコイル領域を、コイル領域Nと称する場合がある。なお、N個のコイル領域における個々のコイル領域を意味する場合は「コイル領域」と称するものとし、N個のコイル領域の全体(N個のコイル領域の集合)を意味する場合は「コイル配置領域」と称するものとする。
そして、本件で開示する技術の一例では、i番目のコイル領域Nにおいて、コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとする。
さらに、本件で開示する技術の一例では、上記の補助変数について、右回りコイルが存在する場合をx=1とし、右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、左回りコイルが存在する場合をy=1とし、左回りコイルが存在しない場合をy=0とする。加えて、本件で開示する技術の一例では、x=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとする。
本件で開示する技術の一例では、このように0又は1で表される補助変数を用いて、i番目のコイル領域Nに右回りコイルか存在するか否か、及び左回りコイルが存在するか否かを表現する。こうすることにより、本件で開示する技術の一例では、N個のコイル領域のそれぞれについて、右回りコイルが存在する場合と、左回りコイルが存在する場合と、コイルが存在しない場合とを、0又は1で表される補助変数により表現することができる。
このように、本件で開示する技術の一例においては、磁気デバイスのコイルが配置され得る面を分割してコイル領域とし、コイル領域ごとに、右回りコイルの存在を表現するための補助変数及び左回りコイルの存在を表現するための補助変数を用意する。つまり、本件で開示する技術の一例では、コイルを配置する面を分割してコイル領域とし、各コイル領域のコイルの状態を補助変数により表現することにより、コイル領域の集合として、磁気デバイスにおけるコイルの形状、位置、個数などを表すことができる。
このため、本件で開示する技術の一例では、これらの補助変数をパラメータとして含む目的関数式を最適化することにより、コイルの形状、位置、個数などについて制限を設けずに、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができる。言い換えると、本件で開示する技術の一例おいては、コイルの形状等が目的関数式のパラメータにより限定されないため、コイルの形状を十分に最適化することができるので、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができる。
さらに、本件で開示する技術の一例において、上記の補助変数は、0又は1で表される離散化された二値の変数である。このため、本件で開示する技術の一例では、0又は1で表される離散化された二値の補助変数を、目的関数式の変数(パラメータ)とすることができるため、目的関数式をQUBO形式で表す(QUBO化する)ことができる。
より具体的には、本件で開示する技術の一例では、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとする。そして、本件で開示する技術の一例では、Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。
ここで、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightとコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftは、例えば、磁気デバイスにおける磁石の向き及び配置を固定とする場合は、一定の値とすることができる。このため、上記のΔφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式は、補助変数xとyを変数(パラメータ)とする関数式となる。補助変数xとyは、上述したように、0又は1で表される離散化された二値の変数であるため、これらの補助変数をパラメータとする目的関数式は、QUBO形式で表すことができる。
つまり、本件で開示する技術の一例では、Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する、QUBO化可能な目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。このため、本件で開示する技術の一例では、QUBO形式のイジングモデル式に変換可能な目的関数式を用いるため、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法による効率的な最適化を行うことができる。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、焼き鈍し法に適したQUBO形式で目的関数式を表すことができるため、当該目的関数式の最適化を効率的に行うことができる。
以上、説明したように、本件で開示する技術では、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化を最適化する際に、コイルの形状等が目的関数式のパラメータにより制限されず、更には、目的関数式をQUBO形式で表すことができる。このため、本件で開示する技術では、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を、十分かつ効率的に最適化することができる。
以下では、本件で開示する技術の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本件で開示する技術の一例としての最適化装置における、コイルにおける鎖交磁束の変化量の最適化などの処理(動作)は、例えば、最適化装置が有する最適化処理部により行うことができる。ここで、本件で開示する最適化装置は、更に必要に応じてその他の部(手段)を有していてもよい。
本件で開示する最適化装置は、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する装置である。
ここで、本件で開示する技術の一例を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する磁気デバイスとしては、コイルと磁石を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。磁気デバイスとしては、例えば、振動発電デバイス、平面モータ、リニアモータ、磁気浮上装置などが挙げられる。
本件で開示する技術の一例において、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束とは、磁気デバイスが備える磁石から発生してコイルを鎖交する(くぐり抜ける)磁束を意味する。また、磁気デバイスがコイルを複数備える場合(コイル領域の集団が複数個存在する場合)、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束は、例えば、複数のコイルにおける鎖交磁束の合計とすることができる。
磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量は、例えば、磁気デバイスにおけるコイル及び磁石の少なくともいずれかが移動し、コイルと磁石の相対的な位置関係が変化したときの、変化前の鎖交磁束と変化後の鎖交磁束との差とすることができる。
<コイルの最適化>
まず、本件で開示する技術の一例として、磁気デバイスにおける磁石の向き及び配置を固定として、コイルの形状や配置を最適化することにより、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する場合について説明する。
<<コイル領域>>
本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とする。言い換えると、最適化処理部は、磁気デバイスにおいてコイルを配置し得る面を所定の数(N)に分割して、N個のコイル領域とする。
また、「コイルが配される面を分割する」とは、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際、つまり、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化された磁気デバイスを設計する際に、コイルを配置し得る面を仮想的に分割することを意味する。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイルが配される面を分割することにより、当該面を、N個のコイル領域の集合(コイル配置領域)として扱う。
また、磁気デバイスにおけるコイルが配される面は、例えば、コイルにおける鎖交磁束を大きくすることができるため、磁気デバイスにおける磁石が配される領域と相対する(互いに向かい合う)面とすることが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイル配置領域と磁石配置領域とが、互いに相対するようにすることが好ましい。例えば、図6に示すように、磁石が配される(磁石配置領域MA)をy軸とz軸を含む平面(y−z平面)と平行に設定する場合、コイルが配される面(コイル配置領域CA)もy−z平面と平行に設定することが好ましい。
コイルが配される面を分割する際の分割方法としては、コイルが配される面をN個のコイル領域に分割することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。コイルが配される面を分割する際の分割方法としては、例えば、各コイル領域が長方形となるよう分割する方法(碁盤目状(グリッドパターン)に分割する方法)、各コイル領域が三角形となるように分割する方法などが挙げられる。
例えば、図7に示すように、コイルが配される面(コイル配置領域CA)を、各コイル領域が長方形の一例である正方形になるようにN個に分割すると、コイルが配される面(コイル配置領域CA)は、N個の正方形のコイル領域の集合となる。また、図7に示すように、1からNの間の整数であるiを用いて、N個のコイル領域のうちのi番目のコイル領域を、コイル領域Nと称する場合がある。
ここで、コイルが配される面を分割する数(コイル領域の数)である「N」としては、2以上の整数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
より具体的には、「N」は、例えば、目的関数式の最適化に用いる計算機(例えば、アニーリングマシン)で用いることができるビットの数、求められる計算精度、実際に作製することができるコイルの大きさなどに応じて、適宜選択することができる。
<<補助変数>>
本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、i番目のコイル領域Nにおいて、コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとする。さらに、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、右回りコイルが存在する場合をx=1とし、右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、左回りコイルが存在する場合をy=1とし、左回りコイルが存在しない場合をy=0とする。
言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイル領域ごとに、右回りコイルの存在を表現するための補助変数及び左回りコイルの存在を表現するための、0又は1で表される補助変数を用意する。そして、本件で開示する技術の一例では、右回りコイルと左回りコイルを区別した上で、i番目のコイル領域Nにコイルが存在する場合には補助変数を1とし、コイルが存在しない場合には補助変数を0とする。
加えて、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、i番目のコイル領域Nにおいて、x=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとする。また同様に、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、i番目のコイル領域Nにおいて、x=0かつy=0のときは、右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとして扱う。
本件で開示する技術の一例では、右回りコイルの補助変数xと左回りコイルの補助変数yとを用いて、各コイル領域について、右回りコイルが存在する場合と、左回りコイルが存在する場合と、コイルが存在しない場合とを一意に矛盾なく表現することができる。
このように、本件で開示する技術の一例においては、各コイル領域のコイルの状態を補助変数により一意に矛盾なく表現できるため、補助変数の値の組合せにより、コイル領域の集合として、磁気デバイスにおけるコイルの形状、位置、個数を表すことができる。このため、本件で開示する技術の一例では、これらの補助変数をパラメータとする目的関数式を最適化することにより、コイルの形状、位置、及び個数を最適化して、コイルにおける鎖交磁束の変化量を十分に最適化することができる。
ここで、本件で開示する技術の一例において、右回りコイルと左回りコイルとは、導線が巻かれる向きが互いに異なるコイルを意味する。本件で開示する技術の一例では、例えば、コイルが配される面における、磁石が配される領域(磁石配置領域)が位置する側とは反対側から見たときに、時計回りであるコイルを右回りコイルとし、反時計回りであるコイルを左回りコイルとすることができる。
また、本件で開示する技術の一例においては、i番目のコイル領域Nに存在するコイルと、コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種である場合には、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とすることが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイル領域Nに右回りコイル又は左回りコイルが存在する場合に、コイル領域Nと隣接するコイル領域にも、コイル領域Nと同じ向きのコイルが存在するときには、これらのコイル領域を結合する。例えば、i番目のコイル領域Nに右回りコイルが存在する場合に、コイル領域Nに隣接するi+1番目のコイル領域Ni+1にも右回りコイルが存在するときには、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とすることができる。また、コイル領域Nと隣接するコイル領域は、例えば、図7におけるi番目のコイル領域Nに対して、y軸方向に隣接するコイルであってもよいし、z軸方向に隣接するコイルであってもよい。
本件で開示する技術の一例では、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とすることにより、実際の磁気デバイスの設計に、より利用しやすい形式として、磁気デバイスにおける最適なコイルの形状、個数、位置などを求めることができる。
例えば、図8に示すように、本件で開示する技術の一例では、y軸方向に隣接する3つコイル領域において、3つの右回りコイルが隣接している場合は、これらの3つのコイル領域を1つに結合して、1つの長方形の右回りコイルとしてもよい。また、図9に示すように、本件で開示する技術の一例では、y軸とz軸とに隣接する4つのコイル領域において、4つの右回りコイルが隣接している場合は、これらの4つのコイル領域を1つに結合して、1つの正方形の右回りコイルとしてもよい。
本件で開示する技術の一例において、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする場合、このコイル領域の結合は、コイル配置領域における各コイル領域について行うことが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイル配置領域の各コイル領域について、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とすることを繰り返して、コイル配置領域の全体に対して、コイルを結合する処理を行うことが好ましい。
こうすることにより、本件で開示する技術の一例では、実際の磁気デバイスの設計に、より利用しやすい形式として、コイルが配される面(コイル配置領域)の全体について、磁気デバイスにおける最適なコイルの形状、個数、位置などを求めることができる。
また、本件で開示する技術の一例では、i番目のコイル領域Nに存在するコイルと、コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種でない(異種である)場合には、それぞれのコイル領域を別のコイル領域とする。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、コイル領域Nに右回りコイル又は左回りコイルが存在する場合に、コイル領域Nと隣接するコイル領域に、コイル領域Nと異なる向きのコイルが存在するときには、これらのコイル領域を別のコイル領域として扱う。
例えば、図10に示すように、本件で開示する技術の一例では、y軸方向に隣接する2つコイル領域において、コイルの向きが互いに異なる場合は、これらの2つのコイル領域を別のコイル領域として扱う。
加えて、本件で開示する技術の一例では、上述したように、i番目のコイル領域Nにおいて、x=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとする。言い換えると、本件で開示する技術の一例においては、異なる向きのコイルが、一つのコイル領域に配置されるような条件となったときには、当該コイル領域にはコイルが存在しないものとして扱う。
例えば、図11に示すように、本件で開示する技術の一例では、同一のコイル領域に、異なる向きのコイル(右回りコイルと左回りコイル)が存在する条件となる場合は、このコイル領域にはコイルが存在しないものとして扱う。
<<目的関数式>>
本件で開示する技術の一例では、最適化処理部は、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとする。そして、本件で開示する技術の一例では、Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。
ここで、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightとコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftは、上述したように、磁気デバイスにおける磁石の向き及び配置を固定とする場合、一定の値とすることができる。言い換えると、磁気デバイスにおける磁石の向き及び配置を固定とする場合、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightとコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftは、コイル領域Nについて定めることができる定数とすることができる。
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式としては、補助変数x及び補助変数yを変数(パラメータ)とする関数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、右回りコイルの補助変数x及び左回りコイルの補助変数yは、0又は1で表される離散化された二値の変数であるため、これらの補助変数をパラメータとする目的関数式は、QUBO形式で表すことができる。つまり、本件で開示する技術の一例では、焼き鈍し法に適したQUBO形式で目的関数式を表すことができるため、当該目的関数式の最適化を効率的に行うことができる。
ここでは、本件で開示する技術の一例で用いる、コイルの形状等を最適化する場合の目的関数式の具体例について説明する。
例えば、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化(最大化)する目的変数式は、磁気デバイスのコイルの全体における鎖交磁束の変化量をΔφとすると、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
Hは、値が最大化されることにより最適化される目的関数式である。
Δφは、磁気デバイスのコイルの全体における鎖交磁束の変化量である。
なお、「→ max」は、目的関数式を最大化することを意味する記号である。
ここで、上記の式における磁気デバイスのコイルの全体における鎖交磁束の変化量Δφは、コイルが配される面(コイル配置領域)を分割したコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightとコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftを、コイル配置領域について足し合わせた合計と考えることができる。
また、ファラデーの電磁誘導の法則から、i番目のコイル領域Nに、右回りコイルが存在するか、左回りコイルが存在するかによって、i番目のコイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量の正負の符号は異なる。つまり、i番目のコイル領域Nに、右回りコイルが存在する場合の鎖交磁束の変化量と、左回りコイルが存在する場合の鎖交磁束の変化量とは、同じ大きさで異符号の値となる。
例えば、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとすると、次式の関係を満たす。
Figure 2021144281
したがって、コイルの全体における鎖交磁束の変化量Δφで表された目的関数式は、右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightと、左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftと、補助変数xと、補助変数yとを用いて、次式のように表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
Hは、値が最大化されることにより最適化される目的関数式である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
Δφ rightは、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ leftは、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
は、コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
なお、「→ max」は、目的関数式を最大化することを意味する記号である。
この目的関数式(H)を最大化することにより、N個のコイル領域に存在し得るコイルにおける鎖交磁束の変化量の合計を最大化することができるため、磁気デバイスのコイルの全体における鎖交磁束の変化量を最大化することができる。このため、この目的関数式(H)を最大化することで、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができる。
また、上述したアニーリングマシンを用いた焼き鈍し法(アニーリング)により、目的関数式の最適化を行う場合は、目的関数式を最小化したときに当該目的関数が最適化される形式とする必要があることがある。このため、上記の目的関数式を、最小化したときに最適化されるように変形すると、次式のように表せる。
Figure 2021144281
この式は、上記の目的関数式の両辺に「マイナス(−)」をかけることにより、最小化したときに最適化されるように変形した式である。
ただし、Eは、値が最小化されることにより最適化される目的関数式である。
なお、「→ min」は、目的関数式を最小化することを意味する記号である。
つまり、本件で開示する技術の一例では、最適化処理部が、例えば、下記式(1)で表される目的関数式に基づき最適化を行うことが好ましい。
Figure 2021144281
ただし、式(1)において、
Eは、目的関数式である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
Δφ rightは、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ leftは、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
は、コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
上記式(1)は、目的関数式(E)を最小化することにより最適化される式、即ち目的関数式(E)を最小化することにより、磁気デバイスにおける鎖交磁束の変化量を最適化できる式である。このため、上記式(1)は、アニーリングマシンを用いた焼き鈍し法(アニーリング)により、目的関数式の最適化を行う際に好適に用いることができる。なお、上記式(1)は、0又は1で表される離散化された二値の補助変数x及びyを変数とする目的関数式であり、QUBO形式の目的関数式となっている。
ここで、目的関数式を最適化する手法としては、例えば、目的関数式をQUBO形式のイジングモデル式に変換し、イジングモデル式に変換し目的関数式の値を最小化する手法が好ましい。
イジングモデル式に変換した目的関数式としては、例えば、下記の数式(3)で表される数式を用いることが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、最適化処理部が、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した目的関数式に基づき最適化を行うことが好ましい。
Figure 2021144281
ただし、上記式(3)において、
Eは、イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
ijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
は、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
は、i番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
は、j番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
ここで、上記式(3)におけるwijは、例えば、イジングモデル式に変換する前の目的関数式における各パラメータの数値などを、siとsjの組み合わせ毎に抽出することにより求めることができ、通常は行列となる。
上記式(3)における右辺の一項目は、全回路から選択可能な2つの回路の全組み合わせについて、漏れと重複なく、2つの回路の状態(ステート)と重み値(ウエイト)との積を積算したものである。
また、上記式(3)における右辺の二項目は、全回路のそれぞれのバイアスの値と状態との積を積算したものである。
つまり、イジングモデル式に変換する前の目的関数式のパラメータを抽出して、wij及びbを求めることにより、目的関数式を、上記式(3)で表されるイジングモデル式に変換することができる。
上記のようにしてイジングモデル式に変換した目的関数式の最適化(最小化)は、例えば、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法(アニーリング)を行うことにより、短時間で実行することができる。つまり、本件で開示する技術の一例では、最適化処理部が、焼き鈍し法により、目的関数式を最適化することが好ましい。
目的関数式の最適化に用いるアニーリングマシンとしては、例えば、量子アニーリングマシン、半導体技術を用いた半導体アニーリングマシン、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を用いてソフトウェアにより実行されるシミュレーテッド・アニーリング(Simulated Annealing)を行うマシンなどが挙げられる。また、アニーリングマシンとしては、例えば、デジタルアニーラ(登録商標)を用いてもよい。
なお、アニーリングマシンを用いた焼き鈍し法の詳細については後述する。
<コイルと磁石の最適化>
ここからは、本件で開示する技術の一例として、磁気デバイスにおける磁石の向きと配置を固定とせずに、コイルの形状等だけでなく、磁石の向きと配置等についても最適化を行う場合について説明する。なお、上述したコイルの形状等の最適化と同様に行うことができる部分については、説明を省略する場合がある。
ここで、上述したように、従来技術においては、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化を最適化しようとする際に、コイルの形状がパラメータにより制限される場合や、効率的な最適化を行うことができず最適化に長い時間が必要となる場合があった。このため、このような従来技術を用いて、磁気デバイスのコイルと磁石の両方の配置等を最適化しようとすると、特にコイルの最適化が不十分かつ非効率的なものとなり、磁気デバイスの性能の最適化を十分かつ効率的に行うことができない場合がある。
磁気デバイスのコイルと磁石の両方の配置等を最適化する際に、例えば、コイルの最適化に上述したパラメータ最適化を用いる技術を利用し、磁石の最適化を焼き鈍し法により行う場合を考える。なお、磁気デバイスの磁石の配置を最適化する技術としては、例えば、磁石を多数の小磁石により形成する際に、各小磁石を配置する向きの最適化を、組み合わせ最適化問題として定式化して、アニーリングマシンにより最適化する技術が提案されている。このような技術としては、例えば、「A. Maruo, H. Igarashi, H. Oshima and S. Shimokawa, “Optimization of Planar Magnet Array Using Digital Annealer,” in IEEE Transactions on Magnetics. doi:10.1109/TMAG.2019.2957805.」で提案されている技術を用いることができる。なお、以下で説明する磁石の向き及び配置の最適化には、上記の文献で開示された技術を利用することもできる。
例えば、パラメータ最適化によるコイルの形状等の最適化と、焼き鈍し法による磁石の配置等の最適化とを交互に行う場合、計算結果が、最適化の初期値に依存することになり、最適解に到達しない(局所解に陥る)場合があり、十分に最適化できないときがある。また、パラメータ最適化によるコイルの形状等の最適化と、焼き鈍し法による磁石の配置等の最適化とを交互に行う場合には、最適化を行うための計算が、これらの2つの最適化の繰り返し計算となるため、計算時間が長くなり、効率的に最適化できないときがある。
このように、従来技術を利用した手法では、磁気デバイスのコイルと磁石の両方の配置等を最適化による、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量の最適化を、十分かつ効率的に行うことができない場合あった。
本件で開示する技術の一例では、例えば、下記のようにすることにより、コイルの形状等だけでなく、磁石の向きと配置等についても最適化を行うことができる。すなわち、本件で開示する技術の一例では、磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とし、
j番目の磁石領域Nにおいて、
磁石領域Nにおける磁化の向きが、
x軸の正の向きの場合をsj,1とし、
x軸の負の向きの場合をsj,2とし、
y軸の正の向きの場合をsj,3とし、
y軸の負の向きの場合をsj,4とし、
z軸の正の向きの場合をsj,5とし、
z軸の負の向きの場合をsj,6としたとき、
j,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、
磁石領域と相対するコイル領域において、磁石領域Nから発生する、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとしたとき、
最適化処理部が、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。
<<磁石領域>>
本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とする。言い換えると、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、磁気デバイスにおいて磁石を配置し得る領域を所定の数(N)に分割して、N個の磁石領域とする。
また、以下では、N個の磁石領域のうちのj番目の磁石領域を、磁石領域Nと称する場合がある。なお、N個の磁石領域における個々の磁石領域を意味する場合は「磁石領域」と称するものとし、N個の磁石領域の全体(N個の磁石領域の集合)を意味する場合は「磁石配置領域」と称するものとする。
また、「磁石が配される領域を分割する」とは、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際、つまり、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化された磁気デバイスを設計する際に、磁石を配置し得る領域を仮想的に分割することを意味する。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、磁石が配される領域を分割することにより、当該領域を、N個の磁石領域の集合(磁石配置領域)として扱う。
例えば、実際に磁気デバイスを作製する際などには、各磁石領域に小さな磁石を配置して、各磁石領域について任意の磁化の向きを有する磁石を用いることができる。
磁石が配される領域を分割する際の分割方法としては、磁石が配される領域をN個の磁石領域に分割することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各磁石領域が直方体となるよう分割する方法などが挙げられる。また、各磁石領域が直方体となるよう分割する際には、各磁石領域が立方体となるように分割することが好ましい。
例えば、図12に示すように、磁石が配される領域(磁石配置領域MA)を、各磁石領域が立方体になるようにN個に分割すると、磁石が配される領域(磁石配置領域MA)は、N個の直方体の磁石領域の集合となる。なお、図12においては、磁石配置領域MAをx軸方向から平面視した場合の一例を示している。
また、図12に示すように、1からNの間の整数であるjを用いて、N個の磁石領域のうちのj番目の磁石領域を、磁石領域Nと称する場合がある。
ここで、磁石が配される領域を分割する数(磁石領域の数)である「N」としては、2以上の整数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
より具体的には、「N」は、例えば、目的関数式の最適化に用いる計算機(例えば、アニーリングマシン)で用いることができるビットの数、求められる計算精度、実際に配置する磁石(小磁石)の数などに応じて、適宜選択することができる。
<<磁石領域における磁化の向き>>
本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、例えば、j番目の磁石領域Nにおいて、磁石領域Nにおける磁化の向きが、x軸の正の向きの場合をsj,1とし、x軸の負の向きの場合をsj,2とし、y軸の正の向きの場合をsj,3とし、y軸の負の向きの場合をsj,4とし、z軸の正の向きの場合をsj,5とし、z軸の負の向きの場合をsj,6とする。
さらに、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、例えば、sj,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約を、後述する目的関数式に課す。
ここで、磁石領域Nにおける磁化の向きを表す磁石の状態変数sj,kについて説明する。磁石の状態変数sj,kは、上述したように、磁石における磁化の向きを表す状態番号k(k=1,2,3,4,5,6)によって、j番目の磁石領域Nにおける磁化の向きを表す変数である。
図13は、磁石の状態変数sj,kと、磁石の状態変数sj,kが表すj番目の磁石領域Nにおける磁化の向きとの対応の一例を示す図である。図13に示すように、磁石の状態変数sj,kは、状態番号k(k=1,2,3,4,5,6)ごとに、異なる磁化の向きを表すことができる。
また、磁石の状態変数sj,kは、0又は1で表される離散化された二値の変数とすることができる。このため、磁石の状態変数sj,kについて、状態番号k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれか「1」である場合には、j番目の磁石領域Nにおける磁化の向きを一意に表すことができる。つまり、本件で開示する技術の一例では、j番目の磁石領域Nについて、磁石の状態変数sj,kが「1」となっている状態番号kに対応する向きの磁化が存在する(状態番号kに対応する向きがN極となる磁石が存在する)と扱う。
同様に、本件で開示する技術の一例では、j番目の磁石領域Nについて、磁石の状態変数sj,k(k=1,2,3,4,5,6)がすべて「0」である場合は、j番目の磁石領域Nには磁化(磁石)が存在しないものとして扱う。
このため、sj,kの内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約を目的関数式に課すことにより、j番目の磁石領域Nに、磁化(磁石)が存在するか否か、及び磁化が存在する場合の磁化の向き(磁石の向き)を一意に矛盾なく表現することができる。
<<目的関数式>>
本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、例えば、磁石領域と相対するコイル領域において、磁石領域Nから発生する、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとする。さらに、本件で開示する技術の一例において、最適化処理部は、例えば、磁石の状態変数sj,kの内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。
Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式としては、状態変数sj,kの制約を考慮でき、補助変数x及び補助変数yを変数とする関数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、右回りコイルの補助変数x及び左回りコイルの補助変数yは、0又は1で表される離散化された二値の変数であるため、これらの補助変数をパラメータとする目的関数式は、QUBO形式で表すことができる。さらに、磁石の状態変数sj,kも0又は1で表される離散化された二値の変数であるため、例えば、磁石の状態変数sj,kをパラメータとする制約項を、目的関数式が含む場合であっても、当該目的関数式は、QUBO形式で表すことができる。
このため、本件で開示する技術の一例では、焼き鈍し法に適したQUBO形式で目的関数式を表すことができるため、当該目的関数式の最適化を効率的に行うことができる。
本件で開示する技術の一例においては、上述したように磁石の状態変数sj,kの内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いる。こうすることにより、本件で開示する技術の一例においては、コイルの形状等に加えて、磁石の向きや配置なども最適化することができるため、磁石の向きと配置を考慮して、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量をより効果的に最適化することができる。
例えば、最適化された磁石の向きと配置に従って、磁石領域に小さな磁石を配置することにより、磁石の向きや配置などが最適化された磁気デバイスを作製(設計)することができる。
続いて、コイルの形状等だけでなく、磁石の向きと配置等についても最適化を行う場合の目的関数式の具体例について説明する。ここでは、図14に示すように、コイル配置領域CAに対して、磁石配置領域MAをz軸方向にΔz移動させる(磁石をΔz移動させる)場合を例として説明する。
まず、磁石領域Nにおける、状態番号kで表される向きの磁化(磁石)により発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量Δφ′i,j,kは、例えば、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
Δφ′i,j,kは、磁石領域Nにおける、状態番号kで表される向きの磁化(磁石)により発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量である。
i,j,k(z)は、i番目のコイル領域Nの中心点に、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化(磁石)から発生する、変化前におけるx軸方向の磁束密度を意味する。
i,j,k(z+Δz)は、i番目のコイル領域Nの中心点に、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化(磁石)から発生する、磁石配置領域MAをz軸方向にΔz移動させた後におけるx軸方向の磁束密度を意味する。
Aは、コイル領域の面積(コイルの断面積)である。
なお、上記の式では、変化前(移動前)の鎖交磁束から変化後(移動後)の鎖交磁束を引くことにより、鎖交磁束の変化量を算出する例を示したが、例えば、変化後の鎖交磁束から変化前の鎖交磁束を引くことにより、鎖交磁束の変化量を算出してもよい。
ここで、上記の式におけるB i,j,k(z)について、更に詳しく説明する。
電磁気学の物理法則であるビオ・サバールの法則を用いると、磁化Mの磁石から観測点Pに発生する磁束密度B(Bはベクトル量)は、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、rは、ソース点(例えば、磁石領域の中心点)から、観測点Pへの距離である。
上記の式を用いると、i番目のコイル領域Nの中心点に、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化(磁石)から発生する磁束密度Bi,j,k(Bi,j,kはベクトル量)は、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
は、ソース点(例えば、磁石領域の中心点)から、i番目のコイル領域Nへの距離である。
j,kは、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化である。
ここで、図14に示す例においては、x軸方向の磁束密度の成分が、コイルと鎖交する成分となるため、上記の式におけるBi,j,kのx成分であるB i,j,kが、コイルと鎖交する磁束密度となる。このため、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量Δφ′i,j,kは、B i,j,kを用いて表すことができる。
また、上記の式にソース点からi番目のコイル領域Nへの距離rが含まれていることからも明らかであるように、B i,j,kは、コイル領域Nと磁石領域Nとの間の距離によって変化する。このため、上記の式に基づいて、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量Δφ′i,j,kを求めることにより、コイル領域Nと磁石領域Nとの間の距離を考慮して、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができる。
そして、上記のようにして求めたΔφ′i,j,kを用いて、状態変数sj,kの磁石領域Nにより発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量は、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
Δφ′ rightは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ′ leftは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ′i,j,kは、磁石領域Nにおける、状態番号kで表される向きの磁化(磁石)により発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量である。
j,kは、磁石領域Nにおける磁化の向きを表す磁石の状態変数である。
は、磁石領域の数を表す整数である。
上記の式においては、磁石配置領域における各磁石領域から発生する磁化の大きさと向きを考慮して、i番目のコイル領域Nにおける磁束の変化量を算出することができる。また、上述したように、i番目のコイル領域Nに、右回りコイルが存在する場合の鎖交磁束の変化量と、左回りコイルが存在する場合の鎖交磁束の変化量とは、同じ大きさで異符号の値となるため、Δφ′ rightは、−Δφ′ leftと等しくなる。
上述したようにして求めたΔφ′ right及びΔφ′ leftを用いると、磁気デバイスにおけるコイルと磁石との両方の最適化を行うことができる目的関数式は、次式で表すことができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
H′は、目的関数式である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
は、磁石領域の数を表す整数である。
Δφ′ rightは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ′ leftは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
αは、正の数である。
j,nは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
j,uは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
なお、「→ max」は、目的関数式を最大化することを意味する記号である。
この目的関数式(H′)を最大化することで、磁石の向きと配置を考慮して、N個のコイル領域に存在し得るコイルにおける鎖交磁束の変化量の合計を最大化することができるため、磁気デバイスのコイルの全体における鎖交磁束の変化量を最大化することができる。このため、この目的関数式(H′)を最大化することで、コイルの形状、位置、個数などに加えて、磁石(小磁石)の向き、配置なども最適化することができるため、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量をより効果的に最適化することができる。
また、上述したアニーリングマシンを用いた焼き鈍し法(アニーリング)により、目的関数式の最適化を行う場合は、目的関数式を最小化したときに当該目的関数が最適化される形式とする必要があることがある。このため、上記の目的関数式を、最小化したときに最適化されるように変形すると、次式のように表せる。
Figure 2021144281
この式は、上記の目的関数式の両辺に「マイナス(−)」をかけることにより、最小化したときに最適化されるように変形した式である。
ただし、E′は、値が最小化されることにより最適化される目的関数式である。
なお、「→ min」は、目的関数式を最小化することを意味する記号である。
つまり、本件で開示する技術の一例では、最適化処理部が、例えば、下記式(2)で表される目的関数式に基づき最適化を行うことが好ましい。
Figure 2021144281
ただし、式(2)において、
E′は、目的関数式である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
は、磁石領域の数を表す整数である。
Δφ′ rightは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ′ leftは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
αは、正の数である。
j,nは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
j,uは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
ここで、上記式(2)における右辺の3項目は、sj,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約を意味する制約項である。つまり、上記式(2)における右辺の3項目は、sj,k(k=1,2,3,4,5,6)が、複数の状態番号kにおいて「1」となる場合、即ち、sj,kの内の複数が「1」となる場合に、目的関数式の値を大きくさせるペナルティーの項である。つまり、上記式(2)においては、sj,kの内の複数が「1」となる場合には、右辺の3項目が正の値をとり、目的関数式の値を大きくさせるので、sj,kの内の複数が「1」となる場合に目的関数式は最適化されない。例えば、上記式(2)におけるαを大きな値とすることにより、sj,kの内の複数が「1」となる場合をより確実に排除して、最適化を行うことができる。
また、上記式(2)に、更に他の制約項を加えて、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化するための目的関数式として用いてもよい。
上記式(2)に加える他の制約項としては、例えば、磁気デバイスにおけるコイルの断面積が所定の面積となるように制約する制約項、磁気デバイスに用いる磁石(小磁石)の数が所定数となるように制約する制約項などが挙げられる。
磁気デバイスにおけるコイルの断面積が所定の面積となるように制約する制約項としては、例えば、次式で表す項を用いることができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の項において、
βは、正の数である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
は、コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
coilは、コイル配置領域に配置する右回りコイルと左回りコイルの合計の数を指定する整数である。
例えば、N個のコイル領域の集合であるコイル配置領域において、右回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数と、左回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数との合計が、Ncoilと等しい場合、上記の項の値は「0」になる。一方、右回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数と、左回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数との合計が、Ncoilと異なる場合は、上記の項は正の値をとるため、目的関数式の値は大きくなる。つまり、上記の項は、右回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数と、左回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数との合計が、Ncoilと異なる場合は、目的関数式の値を大きくさせるので、この場合に目的関数式は最小値とならない。
このため、上記の項は、右回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数と、左回りコイルが存在すると扱うコイル領域の数との合計がNcoilと異なる場合、即ちコイルの断面積が所定の面積でない場合に、目的関数式の値を大きくさせるペナルティーの項である。
また、磁気デバイスに用いる磁石(小磁石)の数が所定数となるように制約する制約項としては、例えば、次式で表す項を用いることができる。
Figure 2021144281
ただし、上記の項において、
γは、正の数である。
は、磁石領域の数を表す整数である。
j,kは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号k(k=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
magは、磁石配置領域に配置する磁石の合計の数を指定する整数である。
例えば、N個の磁石領域の集合である磁石配置領域において、磁石を配置する(磁化の向きが「0」でない)磁石領域の数が、Nmagと等しい場合、上記の項の値は「0」になる。一方、磁石を配置する(磁化の向きが「0」でない)磁石領域の数が、Nmagと異なる場合は、上記の項は正の値をとるため、目的関数式の値は大きくなる。つまり、上記の項は、磁石を配置する磁石領域の数が、Nmagと異なる場合は、目的関数式の値を大きくさせるので、この場合に目的関数式は最小値とならない。
したがって、上記の項は、磁石を配置する磁石領域の数がNmagと異なる場合に、目的関数式の値を大きくさせるペナルティーの項である。
ここで、上記式(2)は、目的関数式(E′)を最小化することにより最適化される式、即ち目的関数式(E′)を最小化することにより、磁気デバイスにおける鎖交磁束の変化量を最適化できる式である。このため、上記式(2)は、アニーリングマシンを用いた焼き鈍し法(アニーリング)により、目的関数式の最適化を行う際に好適に用いることができる。なお、上記式(2)は、0又は1で表される離散化された二値の補助変数x、y、sj,kを変数とする目的関数式であり、QUBO形式の目的関数式となっている。
コイルの形状等だけでなく、磁石の向きと配置等についても最適化を行う場合の目的関数式を最適化する手法としては、コイルの形状等を最適化する目的関数式を最適化する場合と同様とすることができる。つまり、コイルと磁石の最適化を行う目的関数式を最適化する手法としては、目的関数式をQUBO形式のイジングモデル式に変換し、イジングモデル式に変換し目的関数式の値を最小化する手法が好ましい。
コイルと磁石の最適化を行う目的関数式を変換したイジングモデル式としては、コイルの形状等を最適化する場合と同様に、下記の数式(3)で表される数式を用いることが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例では、最適化処理部が、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した目的関数式に基づき最適化を行うことが好ましい。
Figure 2021144281
ただし、上記式(3)において、
Eは、イジングモデル式に変換した目的関数式である。
ijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値である。
は、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値である。
は、i番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
は、j番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
上記のようにしてイジングモデル式に変換した目的関数式の最適化(最小化)は、例えば、アニーリングマシンなどを用いた焼き鈍し法(アニーリング)を行うことにより、短時間で実行することができる。
以下では、装置の構成例やフローチャートなどを用いて、本件で開示する技術の一例を更に詳細に説明する。
図15に、本件で開示する最適化装置のハードウェア構成例を示す。
最適化装置100においては、例えば、制御部101、主記憶装置102、補助記憶装置103、I/Oインターフェイス104、通信インターフェイス105、入力装置106、出力装置107、表示装置108が、システムバス109を介して接続されている。
制御部101は、演算(四則演算、比較演算、焼き鈍し法の演算等)、ハードウェア及びソフトウェアの動作制御などを行う。制御部101としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、焼き鈍し法に用いるアニーリングマシンの一部であってもよく、これらの組み合わせでもよい。
制御部101は、例えば、主記憶装置102などに読み込まれたプログラム(例えば、本件で開示する最適化プログラムなど)を実行することにより、種々の機能を実現する。
本件で開示する最適化装置における最適化処理部が行う処理は、例えば、制御部101により行うことができる。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶するとともに、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。主記憶装置102としては、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)の少なくともいずれかを有するものを用いることができる。
ROMは、例えば、BIOS(Basic Input/Output System)などの各種プログラムなどを記憶する。また、ROMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)などが挙げられる。
RAMは、例えば、ROMや補助記憶装置103などに記憶された各種プログラムが、制御部101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。また、補助記憶装置103は、CDドライブ、DVDドライブ、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
また、本件で開示する最適化装置プログラムは、例えば、補助記憶装置103に格納され、主記憶装置102のRAM(主メモリ)にロードされ、制御部101により実行される。
I/Oインターフェイス104は、各種の外部装置を接続するためのインターフェイスである。I/Oインターフェイス104は、例えば、CD−ROM(Compact Disc ROM)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk ROM)、MOディスク(Magneto−Optical disk)、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などのデータの入出力を可能にする。
通信インターフェイス105としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
入力装置106としては、最適化装置100に対する各種要求や情報の入力を受け付けることができれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが挙げられる。また、入力装置106がタッチパネル(タッチディスプレイ)である場合は、入力装置106が表示装置108を兼ねることができる。
出力装置107としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、プリンタなどが挙げられる。
表示装置108としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
図16に、本件で開示する最適化装置の他のハードウェア構成例を示す。
図16に示す例において、最適化装置100は、目的関数式を定義する処理や当該目的関数式をイジングモデル式に変換する処理を行うコンピュータ200と、イジングモデル式の最適化を行うアニーリングマシン300とに分かれている。また、図16に示す例において、最適化装置100におけるコンピュータ200とアニーリングマシン300は、ネットワーク400により接続されている。
図16に示す例では、例えば、コンピュータ200における制御部101aとしてはCPUなどを用いることができ、アニーリングマシン300における制御部101bとしては焼き鈍し法(アニーリング)に特化した装置を用いることができる。
図16に示す例においては、例えば、コンピュータ200により、目的関数式を定義するための各種の設定を行って目的関数式を定義し、定義した目的関数式をイジングモデル式に変換する。そして、イジングモデル式におけるウエイト(wij)及びバイアス(b)の値の情報を、コンピュータ200からアニーリングマシン300にネットワーク400を介して送信する。
次いで、アニーリングマシン300により、受信したウエイト(wij)及びバイアス(b)の値の情報に基づいてイジングモデル式の最適化(最小化)を行い、イジングモデル式の最小値と、当該最小値を与えるビットの状態(ステート)を求める。そして、求めたイジングモデル式の最小値と、当該最小値を与えるビットの状態(ステート)とを、アニーリングマシン300からコンピュータ200にネットワーク400を介して送信する。
続いて、コンピュータ200により、受信したイジングモデル式に最小値を与えるビットの状態(ステート)に基づいて、磁気デバイスにおけるコイルの鎖交磁束を最適化できるコイルの形状等や磁石の配置等を求める。
図17に、本件で開示する最適化装置の機能構成例を示す。
図17に示すように、最適化装置100は、通信機能部120と、入力機能部130と、出力機能部140と、表示機能部150と、記憶機能部160と、制御機能部170とを備える。
通信機能部120は、例えば、各種のデータを外部の装置と送受信する。通信機能部120は、例えば、外部の装置から、イジングモデル式に変換した目的関数式におけるバイアス及びウエイトのデータを受信してもよい。
入力機能部130は、例えば、最適化装置100に対する各種指示を受け付ける。また、入力機能部130は、例えば、イジングモデル式に変換した目的関数式におけるバイアス及びウエイトのデータの入力を受け付けてもよい。
出力機能部140は、例えば、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化した磁気デバイスにおける、コイルや磁石の形状、配置、向きに関する情報などをプリントして出力する。
表示機能部150は、例えば、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化した磁気デバイスにおける、コイルや磁石の形状、配置、向きに関する情報などをディスプレイに表示する。
記憶機能部160は、例えば、各種プログラム、最適化した磁気デバイスにおけるコイルや磁石の形状、配置、向きに関する情報などを記憶する。
制御機能部170は、最適化処理部171を有する。制御機能部170は、例えば、記憶機能部160に記憶された各種プログラムを実行するとともに、最適化装置100全体の動作を制御する。
最適化処理部171は、例えば、Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する処理を行う。
ここで、図18を参照して、本件で開示する技術の一例を用いて、磁気デバイスのコイルの形状、配置、個数を最適化することにより、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の流れの一例について説明する。
まず、最適化処理部171は、磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とする(S101)。言い換えると、S101において、最適化処理部171は、磁気デバイスにおいてコイルを配置し得る面(コイル配置領域)を所定の数(N)に分割して、N個のコイル領域とする。
次に、最適化処理部171は、磁気デバイスにおける磁石の向き及び配置を固定として、各コイル領域における鎖交磁束の変化量Δφを計算する(S102)。言い換えると、S102において、最適化処理部171は、磁石の向き及び配置を固定した条件で、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightと、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftを、それぞれのコイル領域Nについて求める。
続いて、最適化処理部171は、各コイル領域Nについて、右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yとを割り当てる(S103)。言い換えると、S103で、最適化処理部171は、右回りコイルが存在する場合をx=1とし、右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、左回りコイルが存在する場合をy=1とし、左回りコイルが存在しない場合をy=0とする補助変数を割り当てる。
次いで、最適化処理部171は、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ rightと、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ leftと、補助変数xと、補助変数yを用いて、Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を定義する(S104)。言い換えると、S104において、最適化処理部171は、0又は1で表される離散化された二値の変数である補助変数をパラメータとする、QUBO形式で表現可能な目的関数式を定義する。
そして、最適化処理部171は、定義した目的関数式を、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換する(S105)。言い換えると、S105において、最適化処理部171は、定義した目的関数式におけるパラメータを抽出して、下記式(3)におけるb(バイアス)及びwij(ウエイト)を求めることにより、目的関数式を、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換する。
Figure 2021144281
ただし、上記式(3)において、
Eは、イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
ijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
は、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
は、i番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
は、j番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
次に、最適化処理部171は、アニーリングマシンを用いて、上記式(3)を最小化する(S106)。言い換えると、S106において、最適化処理部171は、上記式(3)についての焼き鈍し法を用いた基底状態探索(最適化計算)を実行することにより、上記式(3)の最小値を算出することで、目的関数式に最小値を与えるビットの状態を特定する。
続いて、最適化処理部171は、上記式(3)に最小値を与えるビットの状態(ステート)に基づいて、各コイル領域における右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yとを特定する(S107)。
次いで、最適化処理部171は、特定した各コイル領域における右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yに基づいて、各コイル領域に右回りコイル又は回りコイルを割り当てる(S108)。より具体的には、S108において、最適化処理部171は、x=1のコイル領域に右回りコイルを割り当て、y=1のコイル領域に左回りコイルを割り当て、x=1かつy=1又はx=0かつy=0ときはコイルが存在しないものとする。
そして、最適化処理部171は、コイル配置領域における各コイル領域について、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して、1つのコイル領域とし、実際のコイルの形状として利用しやすい形式に変換する(S109)。なお、S109において最適化処理部171が行う処理の詳細については後述する。
続いて、図19を参照して、本件で開示する技術の一例を用いて、磁気デバイスのコイルの形状、配置、及び個数、並びに磁石の向き及び配置を最適化することにより、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の流れの一例について説明する。
まず、最適化処理部171は、磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とする(S201)。言い換えると、S201において、最適化処理部171は、磁気デバイスにおいて磁石を配置し得る領域(磁石配置領域)を所定の数(N)に分割して、N個の磁石領域とする。
次に、最適化処理部171は、各磁石領域Nについて、磁石領域Nにおける磁化の向きを表す磁石の状態変数sj,kを割り当てる(S202)。言い換えると、S202において、最適化処理部171は、磁石領域Nにおける磁化の向きを、状態番号k(k=1,2,3,4,5,6)により表すことができる、0又は1で表される離散化された二値の変数である磁石の状態変数sj,kを割り当てる。
続いて、最適化処理部171は、磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とする(S203)。なお、S203は、上述したS101と同様の処理とすることができる。
次いで、最適化処理部171は、各コイル領域から生じ得る、各コイル領域における鎖交磁束の変化量Δφ′を計算する(S204)。より具体的には、S204において、最適化処理部171は、ビオ・サバールの法則に従い、磁石配置領域を所定の距離移動させたときの磁束密度の変化量に基づき、コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ′ rightと、左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ′ leftを、それぞれのコイル領域Nについて求める。
そして、最適化処理部171は、各コイル領域Nについて、右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yとを割り当てる(S205)。なお、S205は、上述したS103と同様の処理とすることができる。
次に、最適化処理部171は、右回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ′ rightと、左回りコイルの鎖交磁束の変化量Δφ′ leftと、補助変数xと、補助変数yと、状態変数sj,kを用いて、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化し、磁化の向き関する制約を満たす目的関数式を定義する(S206)。つまり、S206において、最適化処理部171は、0又は1で表される離散化された二値の変数である補助変数xとy及び状態変数sj,kをパラメータとする、QUBO形式で表現可能な目的関数式を定義する。また、S206においては、sj,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約を表す制約項を目的関数式が含むように定義することで、目的関数式に磁化の向き関する制約を課す。
続いて、最適化処理部171は、定義した目的関数式を、下記式(3)で表されるイジング式に変換する(S207)。なお、S207は、上述したS105と同様の処理とすることができる。
次いで、最適化処理部171は、アニーリングマシンを用いて、上記式(3)を最小化する(S208)。なお、S208は、上述したS106と同様の処理とすることができる。
そして、最適化処理部171は、上記式(3)に最小値を与えるビットの状態(ステート)に基づいて、各磁石領域における磁化(磁石)の向きと配置を特定する(S209)。より具体的には、S209において、最適化処理部171は、状態変数sj,kの値を特定し、各磁石領域Nについて、ある一つの向きの磁化(磁石)が存在する(sj,kの内のいずれかが「1」)か、磁化が存在しないか(sj,kの内のすべてが「0」)を特定する。つまり、S209においては、磁気デバイスにおける磁石の向きと配置を特定することができる。
次に、最適化処理部171は、上記式(3)に最小値を与えるビットの状態(ステート)に基づいて、各コイル領域における右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yとを特定する(S210)。なお、S210は、上述したS107と同様の処理とすることができる。
続いて、最適化処理部171は、特定した各コイル領域における右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yに基づいて、各コイル領域に右回りコイル又は回りコイルを割り当てる(S211)。なお、S211は、上述したS108と同様の処理とすることができる。
そして、最適化処理部171は、コイル配置領域における各コイル領域について、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して、1つのコイル領域とし、実際のコイルの形状として利用しやすい形式に変換する(S212)。なお、S212は、上述したS109と同様の処理とすることができる。
次に、図20を参照して、本件で開示する技術の一例を用いて、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする際の流れの一例について説明する。具体的には、上記のS109及びS212で説明した処理の詳細について説明する。
また、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする際の流れの一例を説明するにあたり、図21に示すように、コイル配置領域CAにおける、y軸方向の分割数をNcyとする。
まず、最適化処理部171は、コイル領域Nにおける、右回りコイルの補助変数xと、左回りコイルの補助変数yとについて、「x=1かつy=1」又は「x=0かつy=0」であるか否かを判定する(S301)。S301において、最適化処理部171は、「x=1かつy=1」又は「x=0かつy=0」であると判定した場合は処理をS302に移し、「x=1かつy=1」又は「x=0かつy=0」でないと判定した場合は処理をS303に移す。
そして、最適化処理部171は、i番目のコイル領域Nには、コイルが存在しないものとすると、処理を終了させる(S302)。言い換えると、S302において、最適化処理部171は、i番目のコイル領域Nには、右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとして、処理を終了させる。
次に、最適化処理部171は、コイル領域Nにおける右回りコイルの補助変数xが「x=1」であるか否かを判定する(S303)。S303において、最適化処理部171は、「x=1」であると判定した場合は処理をS304に移し、「x=1」でないと判定した場合は処理をS308に移す。
続いて、最適化処理部171は、コイル領域Nについて「x=1」かつ「iをNcyで割ったあまりが0以外」である否かを判定する(S304)。言い換えると、S304において、図21に示した例について、最適化処理部171は、コイル領域Nの右隣にコイル領域が存在し、かつ当該右隣のコイル領域の補助変数xが1であるか否かを判定する。
S304において、最適化処理部171は、「x=1」かつ「iをNcyで割ったあまりが0以外」であると判定した場合は処理をS305に移し、「x=1」かつ「iをNcyで割ったあまりが0以外」でないと判定した場合は処理をS306に移す。
次いで、最適化処理部171は、i番目のコイル領域Nと、i+1番目のコイル領域Ni+1を1つのコイルに結合する(S305)。言い換えると、S305において、最適化処理部171は、右回りコイルが存在するコイル領域の右隣にも、右回りコイルが存在するコイル領域が配置される場合には、これらのコイル領域を結合して、1つの右回りコイルが存在するコイル領域とする。
続いて、最適化処理部171は、コイル領域Nについて「xi+Ncy=1」かつ「N−Ncyがi以上」であるか否かを判定する(S306)。言い換えると、S306においては、図21に示した例について、最適化処理部171は、コイル領域Nの下隣にコイル領域が存在し、かつ当該下隣のコイル領域の補助変数xが1であるか否かを判定する。
S304において、最適化処理部171は、「xi+Ncy=1」かつ「N−Ncyがi以上」である判定した場合は処理をS307に移し、「xi+Ncy=1」かつ「N−Ncyがi以上」でないと判定した場合は処理をS308に移す。
そして、最適化処理部171は、i番目のコイル領域Nと、i+Ncy番目のコイル領域Ni+Ncyを1つのコイルに結合する(S307)。言い換えると、S305において、最適化処理部171は、右回りコイルが存在するコイル領域の下隣にも、右回りコイルが存在するコイル領域が配置される場合には、これらのコイル領域を結合して、1つの右回りコイルが存在するコイル領域とする。
そして、S308からS312においては、S303からS307で説明した処理を、左回りコイルの補助変数yについて同様に行い、処理を終了させる。こうすることにより、右回りコイルと左回りコイルとについて、隣接する同種のコイル領域を、もれなく互いに結合して1つのコイル領域とすることができる。
本件で開示する技術の一例では、例えば、図20に示した処理を、各コイル領域に(i番目からN番目まで)行い、コイル配置領域の全体についてコイルを結合する処理を行う。こうすることにより、実際の磁気デバイスの設計に、より利用しやすい形式として、コイルが配される面(コイル配置領域)の全体について、磁気デバイスにおける最適なコイルの形状、個数、位置などを求めることができる。
また、図18〜20においては、本件で開示する技術の一例における処理の流れについて、特定の順序に従って説明したが、本件で開示する技術においては、技術的に可能な範囲で、適宜各ステップの順序を入れ替えることができる。また本件で開示する技術においては、技術的に可能な範囲で、複数のステップを一括して行ってもよい。
以下に、焼き鈍し法及びアニーリングマシンの一例について説明する。
焼き鈍し法は、乱数値や量子ビットの重ね合わせを用いて確率的に解を求める方法である。以下では最適化したい評価関数の値を最小化する問題を例に説明し、評価関数の値をエネルギーと呼ぶことにする。また、評価関数の値を最大化する場合は、評価関数の符号を変えればよい。
まず、各変数に離散値の1つを代入した初期状態からはじめ、現在の状態(変数の値の組み合わせ)から、それに近い状態(例えば、1つの変数だけ変化させた状態)を選び、その状態遷移を考える。その状態遷移に対するエネルギーの変化を計算し、その値に応じてその状態遷移を採択して状態を変化させるか、採択せずに元の状態を保つかを確率的に決める。エネルギーが下がる場合の採択確率をエネルギーが上がる場合より大きく選ぶと、平均的にはエネルギーが下がる方向に状態変化が起こり、時間の経過とともにより適切な状態へ状態遷移することが期待できる。このため、最終的には最適解又は最適値に近いエネルギーを与える近似解を得られる可能性がある。
もし、これを決定論的にエネルギーが下がる場合に採択とし、上がる場合に不採択とすれば、エネルギーの変化は時間に対して広義単調減少となるが、局所解に到達したらそれ以上変化が起こらなくなってしまう。上記のように離散最適化問題には非常に多数の局所解が存在するために、状態が、ほとんど確実にあまり最適値に近くない局所解に捕まってしまう。したがって、離散最適化問題を解く際には、その状態を採択するかどうかを確率的に決定することが重要である。
焼き鈍し法においては、状態遷移の採択(許容)確率を次のように決めれば、時刻(反復回数)無限大の極限で状態が最適解に到達することが証明されている。
以下では、焼き鈍し法を用いて最適解を求める方法について、順序を追って説明する。
(1)状態遷移に伴うエネルギー変化(エネルギー減少)値(−ΔE)に対して、その状態遷移の許容確率pを、次のいずれかの関数f( )により決める。
Figure 2021144281
Figure 2021144281
Figure 2021144281
ここで、Tは、温度値と呼ばれるパラメータであり、例えば、次のように変化させることができる。
(2)温度値Tを次式で表されるように反復回数tに対数的に減少させる。
Figure 2021144281
ここで、Tは、初期温度値であり問題に応じて、十分大きくとることが望ましい。
(1)の式で表される許容確率を用いた場合、十分な反復後に定常状態に達したとすると、各状態の占有確率は熱力学における熱平衡状態に対するボルツマン分布に従う。
そして、高い温度から徐々に下げていくとエネルギーの低い状態の占有確率が増加するため、十分温度が下がるとエネルギーの低い状態が得られると考えられる。この様子が、材料を焼き鈍したときの状態変化とよく似ているため、この方法は焼き鈍し法(または、疑似焼き鈍し法)と称される。なお、エネルギーが上がる状態遷移が確率的に起こることは、物理学における熱励起に相当する。
図22に焼き鈍し法を行うアニーリングマシンの機能構成の一例を示す。ただし、下記説明では、状態遷移の候補を複数発生させる場合についても述べるが、基本的な焼き鈍し法は、遷移候補を1つずつ発生させるものである。
アニーリングマシン300は、現在の状態S(複数の状態変数の値)を保持する状態保持部111を有する。また、アニーリングマシン300は、複数の状態変数の値のいずれかが変化することによる現在の状態Sからの状態遷移が起こった場合における、各状態遷移のエネルギー変化値{−ΔEi}を計算するエネルギー計算部112を有する。さらに、アニーリングマシン300は、温度値Tを制御する温度制御部113、状態変化を制御するための遷移制御部114を有する。なお、アニーリングマシン300は、上記の最適化装置100の一部とすることができる。
遷移制御部114は、温度値Tとエネルギー変化値{−ΔEi}と乱数値とに基づいて、エネルギー変化値{−ΔEi}と熱励起エネルギーとの相対関係によって複数の状態遷移のいずれかを受け入れるか否かを確率的に決定する。
ここで、遷移制御部114は、状態遷移の候補を発生する候補発生部114a、各候補に対して、そのエネルギー変化値{−ΔEi}と温度値Tとから状態遷移を許可するかどうかを確率的に決定するための可否判定部114bを有する。さらに、遷移制御部114は、可となった候補から採用される候補を決定する遷移決定部114c、及び確率変数を発生させるための乱数発生部114dを有する。
アニーリングマシン300における、一回の反復における動作は次のようなものである。
まず、候補発生部114aは、状態保持部111に保持された現在の状態Sから次の状態への状態遷移の候補(候補番号{Ni})を1つまたは複数発生する。次に、エネルギー計算部112は、現在の状態Sと状態遷移の候補を用いて候補に挙げられた各状態遷移に対するエネルギー変化値{−ΔEi}を計算する。可否判定部114bは、温度制御部113で発生した温度値Tと乱数発生部114dで生成した確率変数(乱数値)を用い、各状態遷移のエネルギー変化値{−ΔEi}に応じて、上記(1)の式の許容確率でその状態遷移を許容する。
そして、可否判定部114bは、各状態遷移の可否{fi}を出力する。許容された状態遷移が複数ある場合には、遷移決定部114cは、乱数値を用いてランダムにそのうちの1つを選択する。そして、遷移決定部114cは、選択した状態遷移の遷移番号Nと、遷移可否fを出力する。許容された状態遷移が存在した場合、採択された状態遷移に応じて状態保持部111に記憶された状態変数の値が更新される。
初期状態から始めて、温度制御部113で温度値を下げながら上記反復を繰り返し、一定の反復回数に達する、又はエネルギーが一定の値を下回る等の終了判定条件が満たされたときに動作が終了する。アニーリングマシン300が出力する答えは、終了時の状態である。
図22に示されるアニーリングマシン300は、例えば、半導体集積回路を用いて実現され得る。例えば、遷移制御部114は、乱数発生部114dとして機能する乱数発生回路や、可否判定部114bの少なくとも一部として機能する比較回路や、後述のノイズテーブルなどを含んでもよい。
図22に示されている遷移制御部114に関し、(1)の式で表される許容確率で状態遷移を許容するメカニズムについて、更に詳細に説明する。
許容確率pで1を、(1−p)で0を出力する回路は、2つの入力A,Bを持ち、A>Bのとき1を出力し、A<Bのとき0を出力する比較器の入力Aに許容確率pを、入力Bに区間[0,1)の値をとる一様乱数を入力することで実現することができる。したがって、この比較器の入力Aに、エネルギー変化値と温度値Tにより(1)の式を用いて計算される許容確率pの値を入力すれば、上記の機能を実現することができる。
すなわち、fを(1)の式で用いる関数、uを区間[0,1)の値をとる一様乱数とするとき、f(ΔE/T)がuより大きいとき1を出力する回路により、上記の機能を実現できる。
また、次のような変形を行っても、上記の機能と同じ機能が実現できる。
2つの数に同じ単調増加関数を作用させても大小関係は変化しない。したがって、比較器の2つの入力に同じ単調増加関数を作用させても出力は変わらない。この単調増加関数として、fの逆関数f−1を採用すると、−ΔE/Tがf−1(u)より大きいとき1を出力する回路とすることができることがわかる。さらに、温度値Tが正であることから、−ΔEがTf−1(u)より大きいとき1を出力する回路でよいことがわかる。
図22中の遷移制御部114は、逆関数f−1(u)を実現するための変換テーブルであり、区間[0,1)を離散化した入力に対して次の関数の値を出力するノイズテーブルを含んでもよい。
Figure 2021144281
Figure 2021144281
図23は、遷移制御部114の動作フローの一例を示す図である。図22に示す動作フローは、1つの状態遷移を候補として選ぶステップ(S0001)、その状態遷移に対するエネルギー変化値と温度値と乱数値の積の比較で状態遷移の可否を決定するステップ(S0002)、状態遷移が可ならばその状態遷移を採用し、否ならば不採用とするステップ(S0003)を有する。
(最適化方法)
本件で開示する最適化方法は、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化方法であって、
磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化工程を含む。
本件で開示する最適化方法は、例えば、本件で開示する最適化装置により行うことができる。また、本件で開示する最適化方法における好適な態様は、例えば、本件で開示する最適化装置における好適な態様と同様にすることができる。
(最適化プログラム)
本件で開示する最適化プログラムは、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化プログラムであって、
磁気デバイスにおけるコイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する処理をコンピュータに行わせる。
本件で開示する最適化プログラムは、例えば、本件で開示する最適化方法をコンピュータに実行させるプログラムとすることができる。また、本件で開示する最適化プログラムにおける好適な態様は、例えば、本件で開示する最適化装置における好適な態様と同様にすることができる。
本件で開示する最適化プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成及びオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
本件で開示する最適化プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどの記録媒体に記録しておいてもよい。
さらに、本件で開示する最適化プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本件で開示する最適化プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本件で開示する最適化プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本件で開示する最適化プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
(コンピュータが読み取り可能な記録媒体)
本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本件で開示する最適化プログラムを記録してなる。
本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
また、本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本件で開示する最適化プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
本件で開示する技術の一実施例について説明するが、本件で開示する技術は、この実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、本件で開示する最適化装置の一例を用いて、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の最適化を行い、磁気デバイスにおける最適なコイルと磁石の配置などを求めた。実施例1では、図16に示すようなハードウェア構成を有する最適化装置を用いて、図19のフローチャートに示した流れに従って、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の最適化を行った。また、目的関数式の最小化(式(3)イジングモデル式の最小化)には、デジタルアニーラ(登録商標)を用いた。
実施例1においては、図24及び25に示すように、コイルが配される面(コイル配置領域CA)を、縦20×横20の分割数となるように、碁盤目状(グリッドパターン)に分割し、N=400となる正方形のコイル領域を形成した。なお、1つのコイル領域の一辺は10mmに設定した。
また、実施例1においては、図24及び25に示すように、磁石が配される領域(磁石配置領域MA)を、縦10×横10の分割数となるように、碁盤目状(グリッドパターン)に分割し、N=100となる立方体の磁石領域を形成した。なお、1つの磁石領域の一辺は10mmに設定した。
上記のコイル配置領域CAと磁石配置領域MAの設定には、デジタルアニーラ(登録商標)において、約1400ビットを使用した。
実施例1では、上記のようにして設定したコイル領域及び磁石領域を用いて、上記式(2)に、コイルの断面積が所定の面積となるように制約する制約項を加えた、次式で表されるQUBO形式の目的関数式を定義した。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
E′は、目的関数式である。
は、コイル領域の数を表す整数である。
は、磁石領域の数を表す整数である。
Δφ′ rightは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
Δφ′ leftは、磁石領域Nから発生する、i番目のコイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数である。
は、i番目のコイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
αは、正の数である。
j,nは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
j,uは、j番目の磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
βは、正の数である。
coilは、コイル配置領域に配置する右回りコイルと左回りコイルの合計の数を指定する整数である。
上記の式において、Ncoil=24として、コイルを配置するコイル領域の数(コイルの断面積)が24個になるような制約を課した。なお、磁石を配置する磁石領域の数(小磁石の数)には制約を課さなかった。
また、上記の式におけるΔφ′ right及びΔφ′ leftの算出するために用いる、磁石領域Nにおける、状態番号kで表される向きの磁化(磁石)により発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量Δφ′i,j,kは、次式により求めた。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
Δφ′i,j,kは、磁石領域Nにおける、状態番号kで表される向きの磁化(磁石)により発生する、コイル領域Nにおける鎖交磁束の変化量である。
i,j,k(z)は、i番目のコイル領域Nの中心点に、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化(磁石)から発生する、変化前におけるx軸方向の磁束密度を意味する。
i,j,k(z+Δz)は、i番目のコイル領域Nの中心点に、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化(磁石)から発生する、磁石配置領域MAをz軸方向にΔz移動させた後におけるx軸方向の磁束密度を意味する。
Aは、コイル領域の面積(コイルの断面積)である。
また、上記のB i,j,kについては、次式により求めた。
Figure 2021144281
ただし、上記の式において、
は、ソース点(例えば、磁石領域の中心点)から、i番目のコイル領域Nへの距離である。
j,kは、磁石領域Nの状態番号kで表される向きの磁化である。
ここで、実施例1においては、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離を1mmに設定した。コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離は、上記の式の「r」に反映されるため、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離が変化すると、B i,j,kも変化する。このため、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離が変化すると、Δφ′i,j,kも変化するので、結果として、目的関数式におけるΔφ′ right及びΔφ′ leftが変化する。
したがって、本件で開示する技術の一例においては、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離を適切に考慮して、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができる。
実施例1においては、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を1mmに設定した。
そして、実施例1では、上記の目的関数式を、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換し、変換したイジングモデル式をデジタルアニーラ(登録商標)により、焼き鈍し法(アニーリング)を用いて最小化した。
Figure 2021144281
ただし、上記式(3)において、
Eは、イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
ijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
は、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
は、i番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
は、j番目のビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
実施例1においては、イジングモデル式を最小化したときのビットの状態に基づいて、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化されるときの、コイルの形状、位置、及び個数、並びに、磁石の向き及び配置を特定した。
また、実施例1においては、図20に示したフローチャートの流れに従って、コイル配置領域CAにおける各コイル領域について、隣接する同種のコイル領域を互いに結合して、1つのコイル領域とした。
図26及び27は、実施例1において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
図28及び29は、実施例1において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
図26から29において、コイル配置領域MAの矢印はコイル領域における磁化の向きが矢印の指す方向であることを意味する。また、図26から29において、コイル配置領域MAの丸印は、コイル領域における磁化の向きが紙面手前方向(x軸のプラスの方向)であることを意味する。さらに、図26から29において、コイル配置領域MAの六角形の記号は、コイル領域における磁化の向きが紙面奥方向(x軸のマイナスの方向)であることを意味する。
コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を1mmに設定した実施例1においては、図26から29に示すように、5個の右回りコイルCRと5個の左回りコイルCLが配置されるときに、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化された。
(実施例2)
実施例2では、実施例1において、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を5mmに設定した以外は、実施例1と同様にして、コイルにおける鎖交磁束の変化量の最適化を行った。
図30及び31は、実施例2において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイル領域を移動させる前のコイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
図32及び33は、実施例2において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイル領域を移動させる前のコイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を5mmに設定した実施例3においては、図30から33に示すように、3個の右回りコイルCRと3個の左回りコイルCLが配置されるときに、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化された。
(実施例3)
実施例3では、実施例1において、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を10mmに設定した以外は、実施例1と同様にして、コイルにおける鎖交磁束の変化量の最適化を行った。
図34及び35は、実施例3において、コイル領域を移動させる前における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイル領域を移動させる前のコイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
図36及び37は、実施例3において、コイル領域を移動させた後における、コイルの鎖交磁束の変化量を最適化したときの、コイル領域を移動させる前のコイルと磁石の配置等の一例を示す図である。
コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離(ギャップ幅)を10mmに設定した実施例3においては、図34から37に示すように、1個の右回りコイルCRと1個の左回りコイルCLが配置されるときに、コイルにおける鎖交磁束の変化量が最適化された。
実施例1から3においては、上述したように、コイル配置領域CAと磁石配置領域MAとの距離に応じて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化することができ、実施例ごとに異なるコイルと磁石の配置が得られた。
また、実施例1から3の結果から、コイルと磁石の間の距離が近いほど、磁石の向きが細かく変化し、かつ、右回りコイルと左回りコイルが小さく交互に配置される状態が、最適化された状態となることがわかる。
図38は、本件で開示する技術の一実施形態及び従来技術における、磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際の関係の一例を示す図である。
図38の例に示すように、従来技術では、磁石2とコイル3を有する磁気デバイスについて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化しようとする際には、例えば、コイルの形状を一意に表す連続値のパラメータを用いる。この場合、従来技術においては、例えば、
パラメータとして円の半径(A3)を指定したときには、最適化するコイルの形状は円に限定されるなど、十分な最適化が行えない場合がある。
さらに、図38に示すように、従来技術では、パラメータとして広い範囲を取り得る連続値を用いるため、焼き鈍し法に適した形式(組合せ最適化問題の形式)で目的関数を表すことができず、焼き鈍し法による効率的な最適化を行うことができない。
一方、本件で開示する技術の一実施形態では、図38に示すように、磁石2とコイル3を有する磁気デバイスについて、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する際に、コイルを配する面(コイル配置領域CA)を分割して、コイル領域の集合として扱う。さらに、本件で開示する技術の一実施形態では、各コイル領域に存在し得る、右回りコイルと左回りコイルを、二値の補助変数により表現する。そして、本件で開示する技術の一実施形態では、これらの補助変数を用いて目的関数式を定義し、当該目的関数式を最適化することにより、コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する。
本件で開示する技術の一実施形態においては、上述したように、各コイル領域に存在し得る、右回りコイルと左回りコイルを補助変数により表現するため、コイルの形状等が目的関数式のパラメータにより限定されず、十分に最適化を行うことができる。
さらに、本件で開示する技術の一実施形態においては、上述したように、離散化された二値の補助変数をパラメータとする目的関数式を用いるため、目的関数式を焼き鈍し法に適したQUBO形式で表すことできるので、効率的に最適化を行うことができる。
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化装置であって、
前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化処理部を有することを特徴とする最適化装置。
(付記2)
前記最適化処理部が、下記式(1)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記1に記載の最適化装置。
Figure 2021144281
ただし、前記式(1)において、
前記Eは、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Δφ rightは、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ leftは、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
(付記3)
i番目の前記コイル領域Nに存在するコイルと、前記コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種である場合には、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする、付記1又は2に記載の最適化装置。
(付記4)
前記磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とし、
j番目の磁石領域Nにおいて、
前記磁石領域Nにおける磁化の向きが、
x軸の正の向きの場合をsj,1とし、
x軸の負の向きの場合をsj,2とし、
y軸の正の向きの場合をsj,3とし、
y軸の負の向きの場合をsj,4とし、
z軸の正の向きの場合をsj,5とし、
z軸の負の向きの場合をsj,6としたとき、
j,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、
前記磁石領域と相対する前記コイル領域において、前記磁石領域Nから発生する、前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとしたとき、
前記最適化処理部が、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する、付記1から3のいずれかに記載の最適化装置。
(付記5)
前記最適化処理部が、下記式(2)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記4に記載の最適化装置。
Figure 2021144281
ただし、前記式(2)において、
前記E′は、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Nは、前記磁石領域の数を表す整数であり、
前記Δφ′ rightは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ′ leftは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数であり、
前記αは、正の数であり、
前記sj,nは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数であり、
前記sj,uは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
(付記6)
前記最適化処理部が、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記1から5のいずれかに記載の最適化装置。
Figure 2021144281
ただし、前記式(3)において、
前記Eは、前記イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
前記wijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
前記bは、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
前記xは、i番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
前記xは、j番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
(付記7)
前記最適化処理部が、焼き鈍し法により、前記イジングモデル式に変換した前記目的関数式を最小化することにより最適化を行う、付記6に記載の最適化装置。
(付記8)
磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化方法であって、
前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化工程を含むことを特徴とする最適化方法。
(付記9)
前記最適化工程において、下記式(1)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記8に記載の最適化方法。
Figure 2021144281
ただし、前記式(1)において、
前記Eは、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Δφ rightは、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ leftは、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
(付記10)
i番目の前記コイル領域Nに存在するコイルと、前記コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種である場合には、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする、付記8又は9に記載の最適化方法。
(付記11)
前記磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とし、
j番目の磁石領域Nにおいて、
前記磁石領域Nにおける磁化の向きが、
x軸の正の向きの場合をsj,1とし、
x軸の負の向きの場合をsj,2とし、
y軸の正の向きの場合をsj,3とし、
y軸の負の向きの場合をsj,4とし、
z軸の正の向きの場合をsj,5とし、
z軸の負の向きの場合をsj,6としたとき、
j,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、
前記磁石領域と相対する前記コイル領域において、前記磁石領域Nから発生する、前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとしたとき、
前記最適化工程において、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する、付記8から10のいずれかに記載の最適化方法。
(付記12)
前記最適化工程において、下記式(2)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記11に記載の最適化方法。
Figure 2021144281
ただし、前記式(2)において、
前記E′は、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Nは、前記磁石領域の数を表す整数であり、
前記Δφ′ rightは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ′ leftは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数であり、
前記αは、正の数であり、
前記sj,nは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数であり、
前記sj,uは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
(付記13)
前記最適化工程において、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記8から12のいずれかに記載の最適化方法。
Figure 2021144281
ただし、前記式(3)において、
前記Eは、前記イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
前記wijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
前記bは、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
前記xは、i番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
前記xは、j番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
(付記14)
前記最適化工程において、焼き鈍し法により、前記イジングモデル式に変換した前記目的関数式を最小化することにより最適化を行う、付記13に記載の最適化方法。
(付記15)
磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化プログラムであって、
前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
i番目のコイル領域Nにおいて、
前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
=1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する処理をコンピュータに行わせることを特徴とする最適化プログラム。
(付記16)
前記処理において、下記式(1)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記15に記載の最適化プログラム。
Figure 2021144281
ただし、前記式(1)において、
前記Eは、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Δφ rightは、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ leftは、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
(付記17)
i番目の前記コイル領域Nに存在するコイルと、前記コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種である場合には、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする、付記15又は16に記載の最適化プログラム。
(付記18)
前記磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とし、
j番目の磁石領域Nにおいて、
前記磁石領域Nにおける磁化の向きが、
x軸の正の向きの場合をsj,1とし、
x軸の負の向きの場合をsj,2とし、
y軸の正の向きの場合をsj,3とし、
y軸の負の向きの場合をsj,4とし、
z軸の正の向きの場合をsj,5とし、
z軸の負の向きの場合をsj,6としたとき、
j,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、
コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとしたとき、
前記処理において、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する、付記15から17のいずれかに記載の最適化プログラム。
(付記19)
前記処理において、下記式(2)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記18に記載の最適化プログラム。
Figure 2021144281
ただし、前記式(2)において、
前記E′は、前記目的関数式であり、
前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
前記Nは、前記磁石領域の数を表す整数であり、
前記Δφ′ rightは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記Δφ′ leftは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
前記xは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
前記yは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数であり、
前記αは、正の数であり、
前記sj,nは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数であり、
前記sj,uは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
(付記20)
前記処理において、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した前記目的関数式に基づき最適化を行う、付記15から19のいずれかに記載の最適化プログラム。
Figure 2021144281
ただし、前記式(3)において、
前記Eは、前記イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
前記wijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
前記bは、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
前記xは、i番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
前記xは、j番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
(付記21)
前記処理において、焼き鈍し法により、前記イジングモデル式に変換した前記目的関数式を最小化することにより最適化を行う、付記20に記載の最適化プログラム。
2 磁石
3 コイル
100 最適化装置
101 制御部
102 主記憶装置
103 補助記憶装置
104 I/Oインターフェイス
105 通信インターフェイス
106 入力装置
107 出力装置
108 表示装置
109 バス
120 通信機能部
130 入力機能部
140 出力機能部
150 表示機能部
160 記憶機能部
170 制御機能部
171 最適化処理部
G 振動発電デバイス(磁気デバイスの一例)
CA コイル配置領域
MA 磁石配置領域

Claims (9)

  1. 磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化装置であって、
    前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
    i番目のコイル領域Nにおいて、
    前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
    右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
    右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
    左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
    左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
    =1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
    前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
    Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化処理部を有することを特徴とする最適化装置。
  2. 前記最適化処理部が、下記式(1)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、請求項1に記載の最適化装置。
    Figure 2021144281
    ただし、前記式(1)において、
    前記Eは、前記目的関数式であり、
    前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
    前記Δφ rightは、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
    前記Δφ leftは、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
    前記xは、前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
    前記yは、前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数である。
  3. i番目の前記コイル領域Nに存在するコイルと、前記コイル領域Nと隣接するコイル領域に存在するコイルとが同種である場合には、これらのコイル領域を互いに結合して1つのコイル領域とする、請求項1又は2に記載の最適化装置。
  4. 前記磁気デバイスにおける磁石が配される領域を分割して、N個(Nは整数)の磁石領域とし、
    j番目の磁石領域Nにおいて、
    前記磁石領域Nにおける磁化の向きが、
    x軸の正の向きの場合をsj,1とし、
    x軸の負の向きの場合をsj,2とし、
    y軸の正の向きの場合をsj,3とし、
    y軸の負の向きの場合をsj,4とし、
    z軸の正の向きの場合をsj,5とし、
    z軸の負の向きの場合をsj,6としたとき、
    j,k(k=1,2,3,4,5,6)の内のいずれかが「1」又はすべてが「0」であるものとの制約の下、
    前記磁石領域と相対する前記コイル領域において、前記磁石領域Nから発生する、前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ′ leftとしたとき、
    前記最適化処理部が、Δφ′ right(i=1〜N)とΔφ′ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する、請求項1から3のいずれかに記載の最適化装置。
  5. 前記最適化処理部が、下記式(2)で表される前記目的関数式に基づき最適化を行う、請求項4に記載の最適化装置。
    Figure 2021144281
    ただし、前記式(2)において、
    前記E′は、前記目的関数式であり、
    前記Nは、前記コイル領域の数を表す整数であり、
    前記Nは、前記磁石領域の数を表す整数であり、
    前記Δφ′ rightは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
    前記Δφ′ leftは、前記磁石領域Nから発生する、i番目の前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量を表す数値であり、
    前記αは、正の数であり、
    前記xは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数であり、
    前記yは、i番目の前記コイル領域Nに存在し得る、左回りコイルの補助変数であり、
    前記sj,nは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号n(n=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数であり、
    前記sj,uは、j番目の前記磁石領域Nにおける、状態番号u(u=1,2,3,4,5,6)のときの磁化の向きを表す、0又は1のバイナリ変数である。
  6. 前記最適化処理部が、下記式(3)で表されるイジングモデル式に変換した前記目的関数式に基づき最適化を行う、請求項1から5のいずれかに記載の最適化装置。
    Figure 2021144281
    ただし、前記式(3)において、
    前記Eは、前記イジングモデル式に変換した目的関数式であり、
    前記wijは、i番目のビットとj番目のビットとの間の相互作用を表す数値であり、
    前記bは、i番目の前記ビットに対するバイアスを表す数値であり、
    前記xは、i番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数であり、
    前記xは、j番目の前記ビットが0又は1であることを表すバイナリ変数である。
  7. 前記最適化処理部が、焼き鈍し法により、前記イジングモデル式に変換した前記目的関数式を最小化することにより最適化を行う、請求項6に記載の最適化装置。
  8. 磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化方法であって、
    前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
    i番目の前記コイル領域Nにおいて、
    前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
    右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
    右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
    左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
    左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
    =1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
    前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
    Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化工程を含むことを特徴とする最適化方法。
  9. 磁気デバイスのコイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する最適化プログラムであって、
    前記磁気デバイスにおける前記コイルが配される面を分割して、N個(Nは整数)のコイル領域とし、
    i番目の前記コイル領域Nにおいて、
    前記コイル領域Nに存在し得る、右回りコイルの補助変数をxとし、左回りコイルの補助変数をyとし、
    右回りコイルが存在する場合をx=1とし、
    右回りコイルが存在しない場合をx=0とし、
    左回りコイルが存在する場合をy=1とし、
    左回りコイルが存在しない場合をy=0とし、
    =1かつy=1のときは右回りコイル及び左回りコイルはいずれも存在しないものとし、
    前記コイル領域Nにおける右回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ rightとし、前記コイル領域Nにおける左回りコイルの鎖交磁束の変化量をΔφ leftとしたとき、
    Δφ right(i=1〜N)とΔφ left(i=1〜N)の総和を最大化する目的関数式を用いて、前記コイルにおける鎖交磁束の変化量を最適化する処理をコンピュータに行わせることを特徴とする最適化プログラム。
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