本発明は見る角度を変えると、画像の色彩が変化することにより、セキュリティー性能を与えることもできる商品のラベルやパッケージ、装飾シール、カレンダー、名刺、その他の疑似ホログラム印刷物に関する。
見る角度によって画像の色彩が変化する印刷物やその製造法、製造装置については、特許文献1、2に開示されている。
その特許文献1のFig.2Aに記載された印刷物は、片面に反射材料を有する基板(28)の上面(30)に、異なる2色(R)(B)の画像(38)とその画像(38)を被覆する透明な凸レンズ(34)とが直接印刷されており、その凸レンズ(34)同士の隣り合う相互間が平坦部(46)として、一定間隔を保つ関係に図示されている点で、本発明に近似すると考えられる。
他方、特許文献2には金属膜などが蒸着されたプラスチックフィルムなどから成る記録部材(2)上に、異なる色彩の画像(26A)と画像(26B)を形成する手段と、その両画像(26A)(26B)を被覆するレンチキュラーレンズ(22)の形成手段とを備えた画像形成装置が記載されており、その画像(26A)(26B)とレンチキュラーレンズ(22)を何れもインクジェット印刷している点で、本発明に近似すると考えられる。
米国特許第6856462号明細書
特許第3555420号公報
ところが、特許文献1にはレンズアレイ(44)の凸レンズ(34)が透明な熱可塑性又は熱硬化性のプラスチック材から成ることや、これを基板(28)の表面に対する印刷のほか、成形、押し出し又はエンボス加工しても良い旨が記載されており、また画像(38)はシルクスクリーンやリソグラフィ、フレキソ、その他の印刷技術により印刷される旨の記載もある。
つまり、特許文献1に記載された印刷物の画像(38)やレンズアレイ(44)の凸レンズ(34)は、その印刷用の版や金型を必要とするものであり、これらを使用して形成するため、その画像(38)や凸レンズ(34)につき、言わば設計した通りの太さ(幅や高さ)・表面形状として、別個独立した分離状態に配列設置することができ、その画像(38)の隣り合う同士や凸レンズ(34)の隣り合う同士があたかも山脈のように連結するおそれはない反面、同種の画像を大量生産的に形成する場合であればともかく、多種・多様な画像を少量生産的に形成する場合、その画像毎に金型や印刷用の版を作成準備しなければならないので、その作成費用が著しく高価となり、特にセキュリティー性能を発揮させたい特異な疑似ホログラム印刷物の形成には不向きである。
他方、特許文献2に記載の画像形成装置はインクジェットプリンターを用いて、その有色インク(61)の液滴や透明インク(71)の液滴を記録部材(2)へ着弾させるようになっているため、特許文献1の上記金型や印刷用の版を必要とせず、その有色インク(61)による画像(26A)(26B)の形成と透明インク(71)によるレンチキュラーレンズ(22)の形成を行える利点があると言えるが、インクジェット印刷方式のインクは硬化するまで液状であり、特に有色インク(61)の異なる画像(26A)(26B)を被覆するレンチキュラーレンズ(22)の透明インク(71)は、その有色インク(61)よりも太い線幅(体積/液量)を有するため、そのシリンドリカルレンズ(51)同士の隣り合う相互間隔を画像(26A)(26B)同士のそれよりも広く確保せず、記録部材(2)の搬送上先行する透明インク(71)の液滴が着弾してから硬化するまでの間に、後行する透明インク(71)の液滴が着弾すると、そのシリンドリカルレンズ(51)同士が濡れ広がり連結して、頂面(凸曲面)の低く沈下すると共に変形する結果、所期する焦点距離でのレンズ作用を発揮せず、設計どおりの高精細な色彩変化を得られないのである。
この点、特許文献2に記載の画像形成装置はあくまでも画像とレンチキュラーレンズとの高精度な位置合わせを行うものであり、図2〜5の記載からも明白なように、そのレンチキュラーレンズ(22)をなすシリンドリカルレンズ(51)の隣り合う同士は接触しているため、上記問題の解決に役立たず、その解決を企図してもいない。
その場合、隣り合うシリンドリカルレンズ(51)同士の接触する部分が、仮に実質上レンズとして利用されない領域であるとしても、その液滴の連結により、レンズとして利用されるべき頂面が上記したように低く下がり形崩れして、平面に近づく欠陥があることに変わりはない。
本発明は上記課題の相克を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では表面に光反射層を有する印刷基材又は裏面に光反射層を有する透明な印刷基材と、
色彩が異なる複数の平行な有色画線から成る1組ずつを規則正しく離隔的に繰り返し並列する万線として、上記印刷基材の表面へ有色インクによりインクジェット印刷した可飾線画像層と、
上記有色画線から成る1組ずつのうちの少なくとも任意な1本ずつを表側から被覆すべく、その有色画線よりも太い万線として、透明ニスによりカマボコ状にインクジェット印刷したシリンドリカルレンズとを備え、
上記シリンドリカルレンズをその線幅の少なくとも3倍又は少なくとも2列おきの間隔ピッチに配列設置したことを特徴とする。
また、請求項2ではシリンドリカルレンズをその線幅の3〜4倍又は2〜3列おきの間隔ピッチとして、可飾線画像層の有色画線上へ位置合わせ状態に重ね刷りしたことを特徴とする。
請求項3ではシリンドリカルレンズの線幅を可飾線画像層における有色画線の線幅の約1.5〜4.0倍に設定したことを特徴とする。
請求項4では可飾線画像層における有色画線の線幅とその隣り合う間隔ピッチ並びに1組ずつの隣り合う間隔ピッチを、すべて同等の寸法に設定したことを特徴とする。
請求項5では可飾線画像層における有色画線同士の隣り合う相互間に、混合比率が異なる少なくとも2色の混合色を有色背景帯域としてインクジェット印刷したことを特徴とする。
請求項6では可飾線画像層の中に無印刷の空白部を区画形成して、その空白部に露出した印刷基材の表面へ反射層の反射を防ぐ白色下地層と、その白色下地層の表面へ白色以外の有色インクから成る文字や図形、その他の標章とを各々インクジェット印刷したことを特徴とする。
請求項7では可飾線画像層を万線としての有色画線から幾何学的な模様に表示すると共に、
印刷基材の表面へ反射層の反射を防ぐ白色下地層と、その白色下地層の表面へ白色以外の有色区画線とを各々インクジェット印刷して、
その有色区画線により上記可飾線画像層の幾何学的な模様を縁取り状態に区画したことを特徴とする。
請求項1の構成によれば、冒頭に述べた従来技術の課題を相克することができ、分離状態を確保した安定なカマボコ形のシリンドリカルレンズにより、疑似ホログラム印刷物としての高精細な色彩変化を得られる効果がある。
しかも、上記疑似ホログラム印刷物はその印刷用の版や金型を必要とせず、色彩が異なる複数の有色インクと透明ニスにより、インクジェット印刷されるようになっているため、多種・多様な可飾線画像層が描画された疑似ホログラム印刷物を、少量生産的に作成することができ、セキュリティ性能の付与に役立つ。
この点、従来のレンチキュラーレンズシート(シリンドリカルレンズシート)ではその並列するレンズの隣り合う同士が間隙なく連続するため、却って個性的・独創的な画像の色彩変化を得られ難く、画一的な同種の疑似ホログラム印刷物を大量に作成する場合であればともかく、多種・多様な画像を備えた疑似ホログラム印刷物の少量生産には不向きである。
特に、請求項2の構成を採用するならば、上記分離状態にある別個独立のシリンドリカルレンズと、これによって表側から被覆された少なくとも任意な1本の有色画線とが、同一中心線上での位置合わせ状態に重ね刷りされるようになっているため、高精細な色彩変化の疑似ホログラム印刷物を得るべく、その有色インクと透明ニスによる印刷上の制御を容易・正確に行える効果がある。
また、請求項3の構成を採用するならば、可飾線画像層における有色画線の任意な1本(1列)ずつを、その表側からシリンドリカルレンズによって確実に安定良く被覆することができ、しかもその有色画線とシリンドリカルレンズとの高精度な位置合わせを容易に得られる効果もある。
更に、請求項4の構成を採用するならば、やはり上記有色画線とシリンドリカルレンズとの高精度な位置合わせを容易に得られ、その位置合わせに基づき複数の有色画線から成る可飾線画像層と、これが描画された疑似ホログラム印刷物の印刷上、その制御も高精度に行えるのであり、このような効果は請求項4の構成を上記請求項2又は/及び請求項3の構成と組み合わせることにより、ますます向上する。
請求項5の構成を採用するならば、その混合比率が異なる少なくとも2色の混合色を、例えばイエローインク:90%とマゼンタインク:5%とのそれとして、これから印刷した有色背景帯域を、可飾線画像層における有色画線同士の隣り合う相互間へ介在させることにより、その可飾線画像層の全体に豪華なゴールド色の印象を付与することができる。
請求項6の構成を採用するならば、印刷基材における反射層の反射を防いだ(隠蔽した)白色下地層の表面へ、白色以外の適当な有色インクから成る標章を印刷することにより、その標章が鮮明に極立った疑似ホログラム印刷物を得られ、特に商品ラベルなどに有効である。
更に、請求項7の構成を採用するならば、同じく印刷基材における反射層の反射を防いだ白色下地層の表面へ、白色以外の適当な有色インクから成る区画線を印刷して、その有色区画線により可飾線画像層の幾何学的な模様が鮮明に縁取られた特異性や興趣変化などに富む疑似ホログラム印刷物を得られる。
本発明の第1実施形態を示す正面図である。
図1の一部を抽出して示す模式的な拡大斜面図である。
図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
可飾線画像層における曲線の有色画線を示す正面図である。
可飾線画像層における波線の有色画線を示す正面図である。
可飾線画像層における各種区画線と折れ線の有色画線を示す正面図である。
上記第1実施形態の第1部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
上記第1実施形態の第2部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
上記第1実施形態の第3部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
上記第1実施形態の第4部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
本発明の第2実施形態を示す図2に対応する模式的な斜面図である。
図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
本発明の第3実施形態を示す図1に対応する正面図である。
図13の14−14線に沿う拡大断面図である。
インクジェットプリンターの概略構成を示す平面図である。
以下、図面に基づいて本発明の各種実施形態を詳述する。先ず、図1〜3はその本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第1実施形態を示しており、図1は正面図、図2は図1の一部を抽出して示す模式的な拡大斜面図、図3は図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
本発明の疑似ホログラム印刷物(A)は印刷基材(記録媒体)(10)における表面の全体又は一部へ、紫外線硬化型の有色インクによりインクジェット印刷された可飾線画像層(万線パターン層)(B)を具備している。その印刷基材(10)は不透明な紙やプラスチックフィルム、その他の可撓性を有するシート材から成り、その表面に光の反射層(11)となるアルミホイルが貼り付け一体化されている。
但し、そのアルミホイルの貼り付けに代わるアルミ蒸着膜を表面に備えた印刷基材(10)や、図9のような光の反射層(11)となるアルミニウムや銀などが裏面に真空蒸着された透明プラスチックフィルム(蒸着フィルム)を、本発明の印刷基材(10)として採用しても良い。何れにしても、その印刷基材(10)の裏面には剥離可能な離型シート(図示省略)が貼り付けられることもある。
上記可飾線画像層(B)は図2、3の部分拡大図に示唆する如く、色彩が異なる複数の平行な有色画線(12C)(12M)(12Y)から成る1組(1単位)(U)ずつが、規則正しく離隔的に(整然と所定間隔おきに)繰り返し並列する万線から形成されている。
この点、図1〜3の第1実施形態ではシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)とイエローの画線(12Y)との三原色から成る有色画線の合計3本(3列)を、色彩が異なる複数の平行な1組(1単位)(U)として、その1組(1単位)(U)ずつを所定間隔ピッチ(P1)での繰り返し並列設置することにより、上記有色画線(12C)(12M)(12Y)の万線(群数)から可飾線画像層(B)を形成している。
しかも、その際1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は、その複数(上記3本/3列)のすべて同じ寸法に設定されていると共に、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)もすべて同じ寸法に設定されている。更に言えば、図2、3から明白なように、各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)とその1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)と1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)とが悉く同等の寸法として、例えば0.04mmに設定されている。
つまり、上記第1実施形態の場合可飾線画像層(B)を形成する万線である有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う相互間は、その1組(1単位)(U)の内外を問わず、すべて同じ寸法(先に例示した0.04mm)の印刷されていない空白部(13)をなしており、その空白部(13)から上記印刷基材(10)の反射層(11)が露出している。尚、反射層(11)が図9のような裏面に蒸着された印刷基材(10)であっても、その印刷基材(10)は透過性を有するため、表面から光が反射されることに変わりはない。
また、同じく第1実施形態の場合、可飾線画像層(B)における万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)を、すべて両端がある所要長さの直線(a)として、その長さと配列角度(方向性)が異なる万線の組み合わせにより、図1のような全体の幾何学的な模様の可飾線画像層(B)を表示している。
但し、その可飾線画像層(B)を形成する万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)は、その両端のある所要長さの直線(a)のみならず、図4、5に例示するような両端がある所要長さの曲線(b)や波線(c)、図6(イ)に例示するような両端がある所要長さの折れ線(d)や破線、図6(ロ)(ハ)(ニ)に例示するような無端の連続する円形や楕円形、多角形、十文字形などの区画線(e)であっても良い。このような線形状が異なる各種万線の組み合わせや、その万線の配列角度(方向性)、幅(太さ)、長さ又は/及び隣り合う間隔ピッチなどの異なる組み合わせによって、独創性や興趣変化などに富む幾何学的な模様の可飾線画像層(B)を描画することができる。
更に、(14)は上記可飾線画像層(B)における1組(1単位)(U)ずつをなす色彩が異なる複数の有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その少なくとも任意な1本(1列)ずつを表側から被覆する透明なシリンドリカルレンズであり、各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)よりも太い線幅(W2)の万線として、上記印刷基材(10)へ紫外線硬化型の透明ニス(透明インク)によりカマボコ状にインクジェット印刷されている。
その場合、各シリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)は上記有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)の約1.5〜4.0倍、好ましくは図2、3に示すような2倍の寸法として、例えば0.08mmに設定する。その各シリンドリカルレンズ(14)の背丈(盛り付け高さ)(H)は、上記可飾線画像層(B)を透視する時の焦点距離となるが、図例では有色画線(12C)(12M)(12Y)のそれの約1.5倍(0.03〜0.04mm)に設定されている。
そして、上記シリンドリカルレンズ(14)の隣り合う同士をその線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)(例えば0.24〜0.32mm)として、好ましくは図2、3に示すような3倍(2列おき)の間隔ピッチ(P3)として、例えば0.24mmの寸法に設定するのである。
インクジェット印刷方式のインクは硬化するまで液状であるところ、発明者が上記第1実施形態を実験した後述の知見によれば、その可飾線画像層(B)における有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は細いため、その1組(1単位)(U)内における隣り合う同士の間隔ピッチ(P2)や1組(1単位)(U)ずつの隣り合う間隔ピッチ(P1)が、上記寸法(0.04mm)として比較的狭小であっても、その有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の濡れ広がり連結してしまうおそれはないが、上記有色画線(12C)(12M)(12Y)を被覆するシリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)は相当太いため、そのシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が線幅(太さ)(W2)の3倍(2列おき)よりも狭小な寸法であると、互いに濡れ広がり連結して、その頂面(凸曲面)の低く沈下し形崩れする結果、所期する焦点距離でのレンズ作用を発揮し難くなる。
他方、同じく隣り合う間隔ピッチ(P3)がそのシリンドリカルレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の4倍(3列おき)よりも広大な寸法であると、上記可飾線画像層(B)の全体に占めるシリンドリカルレンズ(14)の本数(配列数)が、有色画線(12C)(12M)(12Y)のそれに比して過少となり、設計どおりの高精細な色彩変化を得られない。
換言すれば、確保しなければならないシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)として設定した上記3〜4倍(2、3列おき)の寸法は、そのシリンドリカルレンズ(14)を造形する紫外線硬化型透明ニスの液滴が、印刷基材(10)上へ着弾してから硬化するまでに、その印刷基材(10)の移動する距離又は時間を意味する。
しかも、シリンドリカルレンズ(14)はその線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)に相当する寸法の上記間隔ピッチ(P3)を保ちつつも、図2、3に示す如く、上記可飾線画像層(B)における1組(1単位)(U)ずつの有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その少なくとも任意な1本(1列)の有色画線(12M)上へ言わば位置合わせする同芯状態に重ね刷りすることが好ましい。そうすれば、設計どおりの高精細な色彩変化を得るべき、印刷インクの吐出タイミングなどを正確に制御しやすくなる。
この点、上記第1実施形態では色彩が異なる有色画線(12C)(12M)(12Y)の3本(3列)のうち、そのマゼンタの画線(12M)上にのみ透明なシリンドリカルレンズ(14)が規則的に繰り返し並列する位置合わせ状態としてインクジェット印刷されている。(O−O)はその1本(1列)の有色画線(マゼンタ)(12M)とシリンドリカルレンズ(14)との対応合致した中心線を示している。
先の図1〜3に示した第1実施形態では、色彩が異なる有色画線(12C)(12M)(12Y)の3本(3列)を1組(1単位)(U)とし、その線幅(太さ)(W1)と1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)並びに1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)を悉く同等の寸法(先に例示した0.04mm)として、規則正しく繰り返し並列設置しているが、図3と対応する図7の第1部分変形実施形態に示す如く、例えばシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)との合計2本(2列)を、色彩が異なる有色画線(12C)(12M)の1組(1単位)(U)として、図3とすべて同じ寸法(上記した0.04mm)での規則正しく離隔的に繰り返し並列設置しても良い。この場合、マゼンタの画線(12M)とシアンの画線(12C)とがシリンドリカルレンズ(14)によって、交互に被覆されることになる。
また、図8の第2部分変形実施形態に示す如く、1組(1単位)(U)をなす複数(例えば3本/3列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は同じ寸法(先に例示した0.04mm)としつつも、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)を広狭変化させたり、逆に図9の第3部分変形実施形態に示す如く、その1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)は同じ寸法(例えば0.02mm)としつつも、その有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)を例えば大中小として相違変化させたりしてもさしつかえない。
上記1組(1単位)(U)における有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)やその有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)がたとえ異なっていても、その1組(1単位)(U)ずつがすべて同一の配列状態として、規則正しく離隔的に繰り返し並列する万線から構成されておれば足りる。
尚、図8、9の上記部分変形実施形態では1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)が例えば0.07〜0.08mmの寸法として、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)よりも広大に設定されており、その同じ広大な寸法の間隔ピッチ(P1)おきに整然と並列した状態を示している。
図7〜9の第1〜3部分変形実施形態でも、上記1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)の任意な1本(1列)は、これよりも広大な線幅(太さ)(W2)のシリンドリカルレンズ(14)によって表側から被覆されており、シリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)として、好ましくは図示のような3倍(2列おき)の寸法(先に例示した0.24mm)に設定されている。しかも、そのシリンドリカルレンズ(14)とこれにより被覆された任意な1本(1列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)とが、同じ中心線(O−O)上に位置合わせされた状態にある点で、図1〜3の第1実施形態と共通する構成を備えている。
この点、図10に示す第4部分変形実施形態では上記1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)とその隣り合う間隔ピッチ(P2)とが、何れも相違変化されており、その相違変化した状態にある1組(1単位)(U)ずつが、同じ一定の隣り合う間隔ピッチ(P1)を保って、規則正しく繰り返し並列設置されている。
その場合、1組(1単位)(U)をなす複数(3本/3列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その任意なマゼンタの画線(12M)とイエローの画線(12Y)との2本(2列)がシリンドリカルレンズ(14)によって被覆された状態にあるが、またそのシリンドリカルレンズ(14)とこれにより被覆された有色画線(12C)(12M)(12Y)とは、必ずしも同じ中心線(O−O)上に位置合わせされておらず、言わば偏心した状態にあるが、そのシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が図1〜3の上記第1実施形態や、その図7〜9の上記第1〜3部分変形実施形態と同様に、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)として、好ましくは3倍(2列おき)の寸法(先に例示した0.24mm)に設定されれば、そのシリンドリカルレンズ(14)の正規なレンズ作用と設計どおりの高精細な色彩変化を得られるので、さしつかえなく採用できる構成である。このことは、複数の有色画線(12C)(12M)(12Y)から成る1組(1単位)(U)の全体を、シリンドリカルレンズ(14)により被覆する形態についても同様に言うことができる。
尚、図7〜10の第1〜4部分変形実施形態におけるその他の構成は、図1〜3の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図7〜10に図1〜3との同一符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略するが、上記各種実施形態の何れにあっても、その1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)は、その線幅(太さ)(W1)よりも広大に寸法化されることがあり得る。
更に、図11、12は本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第2実施形態を示しており、その構成上図1〜3の上記第1実施形態と異なる点は、次のとおりである。
つまり、図1〜3の第1実施形態では1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う相互間と、その1組(1単位)(U)同士の隣り合う相互間とが、何れも無印刷の空白部(13)として言わば放置されており、その空白部(13)から印刷基材(10)の表面が露呈しているに比し、図11、12の第2実施形態ではイエローの有色インク:90%とマゼンタの有色インク:5%とが混合された混合色を、その第1実施形態の空白部(13)に相当する個所へインクジェット印刷することにより、その印刷した個所を上記混合色から成る有色背景帯域(15)として、可飾線画像層(万線パターン層)(B)の全体を豪華な黄金色に印象付けることができるようになっている。
このような第2実施形態の構成は図7〜10の第1〜4部分変形実施形態の疑似ホログラム印刷物(A)についても、適用することができる。その場合、上記混合されたイエローとマゼンタとの2色は、あくまでも一例であるに過ぎず、混合比率が異なる少なくとも2色の混合色から形成された有色背景帯域(15)であれば、何色を採用しても良い。
また、図13、14は本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第3実施形態を示しており、これでは図1〜3の上記第1実施形態に次の構成を加えている。
即ち、図13、14の第3実施形態では上記有色画線(12C)(12M)(12Y)によって形成された可飾線画像層(万線パターン層)(B)の中へ、一旦無印刷の空白部(16)を適当な大きさ・形状に区画形成すると共に、その空白部(16)に露出した印刷基材(10)の表面へ、上記反射層(11)の反射を防ぐ(隠蔽する)白色下地層(17)をインクジェット印刷する。
そして、その白色の有色インクにより印刷した下地層(17)の表面へ、白色以外の適当な有色インクから成る文字や図形、その他の標章(18)をインクジェット印刷しており、これにより上記可飾線画像層(B)を言わば背景として、これから標章(18)が鮮明に極立ち表示されるようになっている。その標章(18)と同じ大きさ・輪郭形状に予め区成された空白部(16)へ、白色下地層(17)と白色以外の有色インクによる標章(18)とが順次インクジェット印刷されているわけである。
上記第3実施形態の場合、「KIANU」というアルファベット5文字の標章(18)をブラックの有色インクにより印刷しているが、例えば図1のような可飾線画像層(B)の周囲に無印刷のサークル状空白部(16)を区成して、その空白部(16)に露出した印刷基材(10)の表面へ、反射層(11)の反射を防ぐ白色下地層(17)をインクジェット印刷すると共に、その白色下地層(17)の表面に白色以外の適当な有色インクから成る有色区画線(19)をインクジェット印刷して、これにより可飾線画像層(B)を鮮明に縁取りしても良い。
このような標章(18)や可飾線画像層(B)の縁取り用有色区画線(19)を印刷する実施形態の構成も、図7〜10の第1〜4部分変形実施形態の疑似ホログラム印刷物(A)に適用することができる。尚、図11〜14の第2、3実施形態におけるその他の構成は、図1〜3の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図11〜14に図1〜3との同一符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を割愛する。
上記第1〜3実施形態とその第1実施形態の第1〜4部分変形実施形態に係る疑似ホログラム印刷物(A)は、何れも図15に例示するようなインクジェットプリンター(J)を用いて作成される。
そのインクジェットプリンター(J)の概略構成を示す図15の平面図において、(20)は上記印刷基材(10)を支持するプラテン又は回転ドラム、(21)はその印刷基材(10)を矢印方向(F)へ搬送する複数のローラー、(22W)(22C)(22M)(22Y)(22B)はその搬送方向(F)と直交する印刷基材(10)の幅方向(X)に沿って配列設置された第1〜5インクジェットヘッドであり、これらに開口分布する多数のインク吐出ノズル(23w)(23c)(23m)(23y)(23b)からは、各々指定の有色インクが吐出される。
その場合、上流側から下流側へ順次並列する第1〜5インクジェットヘッド(22W)〜(22B)のうち、その第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)からはホワイトインク、第2インクジェットヘッド(22C)のインク吐出ノズル(23c)からはシアンインク、第3インクジェットヘッド(22M)のインク吐出ノズル(23m)からはマゼンタインク、第4インクジェットヘッド(22Y)のインク吐出ノズル(23y)からはイエローインク、図例の予備となっている第5インクジェットヘッド(22B)のインク吐出ノズル(23b)からはブラックインクが、各々吐出されるようになっている。
また、上記第5インクジェットヘッド(22B)の下流側にはその有色インクを硬化するための紫外線照射装置(24)が並列設置されている。(22V)はその有色インク硬化用紫外線照射装置(24)の下流側に並列設置された第6インクジェットヘッドであって、これに開口分布する多数のインク吐出ノズル(23v)からは、透明ニス(透明インク)が吐出されるようになっている。(25)はその透明ニスを硬化するための紫外線照射装置であり、上記第6インクジェットヘッド(22V)の下流側に並列設置されている。
上記インクジェットプリンター(J)を用いて、図1〜3の第1実施形態に係る疑似ホログラム印刷物(A)を作成する方法について言えば、その印刷物(A)の可飾線画像層(B)やシリンドリカルレンズ(14)を含む構成が設計データとして、インクジェットプリンター(J)の制御部(コントローラー)(図示省略)に記憶されている。
その制御部には印刷基材(10)の搬送ローラー(21)や第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)、有色インク硬化用並びに透明ニス硬化用の紫外線照射装置(24)(25)などが電気的に接続されており、その制御部によって上記搬送ローラー(21)の回転や第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)の移動、その吐出ノズル(23w)〜(23v)からの有色インクの吐出量並びに透明ニスの吐出量や吐出タイミング、上記紫外線照射装置(24)(25)からの紫外線照射量や照射タイミングなどの駆動制御が行われるようになっている。
上記色彩が異なる有色インクにより、可飾線画像層(B)を形成する有色画線(12C)(12M)(12Y)の印刷と、透明ニスによるシリンドリカルレンズ(14)の印刷とは別個に行われ、その印刷時には印刷基材(10)が搬送方向(F)への移動を繰り返し、そのたび毎に第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)が順次に各々幅方向(X)へ移動されることになる。
そして、上記可飾線画像層(B)における万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)を順次印刷すべく、その第2〜4インクジェットヘッド(22C)(22M)(22Y)のインク吐出ノズル(23c)(23m)(23y)から吐出された有色インクの液滴(ドット)は、印刷基材(10)の表面へ各々着弾するや否や、その後有色インク用紫外線照射装置(24)によって硬化されるまでの間に濡れ広がり、1本(1列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)となって、その硬化するまでの作用を繰り返すことにより、全体として設計どおりの可飾線画像層(B)が形成される。
この点、上記第1実施形態ではシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)とイエローの画線(12Y)との合計3本(3列)からなる1組(1単位)(U)ずつが、その1組(1単位)(U)同士の隣り合う所定間隔(P1)を保って繰り返し並列設置されており、その各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は上記0.04mmとして細いため、その有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)が線幅(太さ)(W1)と同じ寸法であることとも相俟って、その先行する有色インクの液滴(ドット)が着弾してから硬化する前に、後行する有色インクのそれが着弾するおそれはない。
また、上記1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その任意な1本(1列)であるマゼンタの画線(12M)を表側から被覆するためのシリンドリカルレンズ(14)を印刷すべく、その第6インクジェットヘッド(22V)のインク吐出ノズル(23v)から吐出された透明ニスの液滴(ドット)は、上記マゼンタの画線(12M)上へ位置合わせされた同芯状態に着弾し、その透明ニス用紫外線照射装置(25)によって硬化されるまでの間に濡れ広がり、やはり1本(1列)のカマボコ状シリンドリカルレンズ(14)となる。
その場合、第1実施形態ではシリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)が上記0.08mmとして、これにより被覆される上記有色画線(12M)の線幅(太さ)(W1)(0.04mm)の2倍であり、しかもそのシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)がレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3倍(2列おき)として、上記0.24mmの寸法に設定されている。
今、上記有色画線(12M)を印刷する有色インクの液滴(ドット)とシリンドリカルレンズ(14)を印刷する透明ニスの液滴(ドット)が、何れもその上記0.04mmと0.08mmの線幅(太さ)(W1)(W2)を直径とする半球形であるとみなして試算すると、その透明ニスの液滴(ドット)の体積は有色インクの液滴(ドット)のそれの約8倍に相当する程大きいため、その大きさに相応する分だけシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)を、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の少なくとも3倍(2列おき)として広大に確保しており、その結果隣り合うシリンドリカルレンズ(14)同士の不慮に連結して、その頂面(凸曲面)が低く沈下して平面化したり、形崩れしたりするおそれはなく、上記可飾線画像層(B)と相俟って、高精細に色彩変化する疑似ホログラム印刷物(A)を得られるのである。
尚、図11、12の第2実施形態に説示した有色背景帯域(15)の混合色は、インクジェットプリンター(J)における上記第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)から、そのホワイトインクに代わる有色インクとして吐出される。図13、14の第3実施形態に説示した白色下地層(17)のホワイトインクは、同じくプリンター(J)における第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)から吐出すれば良く、上記標章(18)や可飾線画像層(B)を縁取る有色区画線(19)のブラックインクは、インクジェットプリンター(J)における上記第5インクジェットヘッド(22B)のインク吐出ノズル(23b)から吐出すれば良い。
(10)・・・・・印刷基材
(11)・・・・・反射層
(12C)(12M)(12Y)・・・有色画線
(13)(16)・・・空白部
(14)・・・・・シリンドリカルレンズ
(15)・・・・・有色背景帯域
(17)・・・・・白色下地層
(18)・・・・・標章
(19)・・・・・有色区画線
(A)・・・・・・疑似ホログラム印刷物
(B)・・・・・・可飾線画像層
(J)・・・・・・インクジェットプリンター
(O−O)・・・・位置合わせ状態の中心線
(P1)(P2)(P3)・・・間隔ピッチ
(U)・・・・・・1組(1単位)
(W1)(W2)・・・線幅(太さ)
本発明は見る角度を変えると、画像の色彩が変化することにより、セキュリティー性能を与えることもできる商品のラベルやパッケージ、装飾シール、カレンダー、名刺、その他の疑似ホログラム印刷物に関する。
見る角度によって画像の色彩が変化する印刷物やその製造法、製造装置については、特許文献1、2に開示されている。
その特許文献1のFig.2Aに記載された印刷物は、片面に反射材料を有する基板(28)の上面(30)に、異なる2色(R)(B)の画像(38)とその画像(38)を被覆する透明な凸レンズ(34)とが直接印刷されており、その凸レンズ(34)同士の隣り合う相互間が平坦部(46)として、一定間隔を保つ関係に図示されている点で、本発明に近似すると考えられる。
他方、特許文献2には金属膜などが蒸着されたプラスチックフィルムなどから成る記録部材(2)上に、異なる色彩の画像(26A)と画像(26B)を形成する手段と、その両画像(26A)(26B)を被覆するレンチキュラーレンズ(22)の形成手段とを備えた画像形成装置が記載されており、その画像(26A)(26B)とレンチキュラーレンズ(22)を何れもインクジェット印刷している点で、本発明に近似すると考えられる。
米国特許第6856462号明細書
特許第3555420号公報
ところが、特許文献1にはレンズアレイ(44)の凸レンズ(34)が透明な熱可塑性又は熱硬化性のプラスチック材から成ることや、これを基板(28)の表面に対する印刷のほか、成形、押し出し又はエンボス加工しても良い旨が記載されており、また画像(38)はシルクスクリーンやリソグラフィ、フレキソ、その他の印刷技術により印刷される旨の記載もある。
つまり、特許文献1に記載された印刷物の画像(38)やレンズアレイ(44)の凸レンズ(34)は、その印刷用の版や金型を必要とするものであり、これらを使用して形成するため、その画像(38)や凸レンズ(34)につき、言わば設計した通りの太さ(幅や高さ)・表面形状として、別個独立した分離状態に配列設置することができ、その画像(38)の隣り合う同士や凸レンズ(34)の隣り合う同士があたかも山脈のように連結するおそれはない反面、同種の画像を大量生産的に形成する場合であればともかく、多種・多様な画像を少量生産的に形成する場合、その画像毎に金型や印刷用の版を作成準備しなければならないので、その作成費用が著しく高価となり、特にセキュリティー性能を発揮させたい特異な疑似ホログラム印刷物の形成には不向きである。
他方、特許文献2に記載の画像形成装置はインクジェットプリンターを用いて、その有色インク(61)の液滴や透明インク(71)の液滴を記録部材(2)へ着弾させるようになっているため、特許文献1の上記金型や印刷用の版を必要とせず、その有色インク(61)による画像(26A)(26B)の形成と透明インク(71)によるレンチキュラーレンズ(22)の形成を行える利点があると言えるが、インクジェット印刷方式のインクは硬化するまで液状であり、特に有色インク(61)の異なる画像(26A)(26B)を被覆するレンチキュラーレンズ(22)の透明インク(71)は、その有色インク(61)よりも太い線幅(体積/液量)を有するため、そのシリンドリカルレンズ(51)同士の隣り合う相互間隔を画像(26A)(26B)同士のそれよりも広く確保せず、記録部材(2)の搬送上先行する透明インク(71)の液滴が着弾してから硬化するまでの間に、後行する透明インク(71)の液滴が着弾すると、そのシリンドリカルレンズ(51)同士が濡れ広がり連結して、頂面(凸曲面)の低く沈下すると共に変形する結果、所期する焦点距離でのレンズ作用を発揮せず、設計どおりの高精細な色彩変化を得られないのである。
この点、特許文献2に記載の画像形成装置はあくまでも画像とレンチキュラーレンズとの高精度な位置合わせを行うものであり、図2〜5の記載からも明白なように、そのレンチキュラーレンズ(22)をなすシリンドリカルレンズ(51)の隣り合う同士は接触しているため、上記問題の解決に役立たず、その解決を企図してもいない。
その場合、隣り合うシリンドリカルレンズ(51)同士の接触する部分が、仮に実質上レンズとして利用されない領域であるとしても、その液滴の連結により、レンズとして利用されるべき頂面が上記したように低く下がり形崩れして、平面に近づく欠陥があることに変わりはない。
本発明は上記課題の相克を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では表面に光反射層を有する印刷基材又は裏面に光反射層を有する透明な印刷基材と、
色彩が異なる複数の平行な有色画線から成る1組ずつを規則正しく離隔的に繰り返し並列する万線として、上記印刷基材の表面へ紫外線硬化型の有色インクによりインクジェット印刷された可飾線画像層と、
上記有色画線から成る1組ずつのうちの少なくとも任意な1本ずつを表側から被覆すべく、その有色画線よりも太い万線として、紫外線硬化型の透明ニスによりカマボコ状にインクジェット印刷されたシリンドリカルレンズとを備え、
上記可飾線画像層における有色画線同士の隣り合う相互間が無印刷の空白部として、その空白部から上記印刷基材の表面が露出している疑似ホログラム印刷物であって、
上記可飾線画像層をその万線の線形状が異なる組み合わせの有色画線や、その万線の配列角度・幅・長さ又は/及び隣り合う間隔ピッチが異なる組み合わせの有色画線によって、全体の幾何学的な模様に描画すると共に、
上記シリンドリカルレンズの線幅を可飾線画像層における有色画線の線幅の1.5〜4.0倍とし、しかもシリンドリカルレンズ同士の隣り合う間隔ピッチをその線幅の3〜4倍又は2〜3列おきとして、そのシリンドリカルレンズを上記可飾線画像層における任意な1本の有色画線と同じ中心線上での位置合わせ状態に重ね刷りしたことを特徴とする。
また、請求項2では可飾線画像層における有色画線同士の隣り合う相互間をなす空白部に、混合比率が異なる少なくとも2色の混合色を有色背景帯域としてインクジェット印刷したことを特徴とする。
請求項3では可飾線画像層における有色画線の線幅と1組内における有色画線同士の隣り合う間隔ピッチとその1組ずつの隣り合う間隔ピッチとをすべて同等の寸法として、
その複数の有色画線から成る1組ずつを規則正しく離隔的に繰り返し並列設置したことを特徴とする。
請求項4では可飾線画像層における有色画線の線幅を同じ寸法とし、1組内における有色画線同士の隣り合う間隔ピッチを広く又は狭く相違変化させると共に、その1組ずつの隣り合う間隔ピッチは同じ寸法として、
その複数の有色画線から成る1組ずつを規則正しく離隔的に繰り返し並列設置したことを特徴とする。
更に、請求項5では可飾線画像層における有色画線の線幅を大きく又は小さく相違変化させ、1組内における有色画線同士の隣り合う間隔ピッチを同じ寸法とすると共に、その1組ずつの隣り合う間隔ピッチも同じ寸法として、
その複数の有色画線から成る1組ずつを規則正しく離隔的に繰り返し並列設置したことを特徴とする。
請求項1の構成によれば、冒頭に述べた従来技術の課題を相克することができ、上記シリンドリカルレンズ同士の隣り合う間隔ピッチがそのレンズ自身の線幅の3〜4倍(2〜3列おき)として、相互の分離状態を確保した安定なカマボコ形のシリンドリカルレンズにより、疑似ホログラム印刷物としての高精細な色彩変化を得られる効果がある。
しかも、上記疑似ホログラム印刷物はその印刷用の版や金型を必要とせず、色彩が異なる複数の有色インクと透明ニスにより、インクジェット印刷されるようになっているため、独創性や興趣変化などに富む全体の幾何学的な模様の可飾線画像層が描画された疑似ホログラム印刷物を、少量生産的に作成することができ、セキュリティ性能の付与に役立つ。
この点、従来のレンチキュラーレンズシート(シリンドリカルレンズシート)ではその並列するレンズの隣り合う同士が間隙なく連続するため、却って個性的・独創的な画像の色彩変化を得られ難く、画一的な同種の疑似ホログラム印刷物を大量に作成する場合であればともかく、多種・多様な画像を備えた疑似ホログラム印刷物の少量生産には不向きである。
また、上記分離状態にある別個独立のシリンドリカルレンズと、これによって表側から被覆された少なくとも任意な1本の有色画線とが、同一中心線上での位置合わせ状態に重ね刷りされるため、高精細な色彩変化の疑似ホログラム印刷物を得るべく、その有色インクと透明ニスによる印刷上の制御を容易・正確に行える効果がある。
更に、シリンドリカルレンズの線幅が可飾線画像層における有色画線の線幅の1.5〜4.0倍に設定されているため、その可飾線画像層における有色画線の任意な1本(1列)ずつを、表側からシリンドリカルレンズによって確実に安定良く被覆することができ、しかもその有色画線とシリンドリカルレンズとの高精度な位置合わせを容易に得られる効果もある。
その場合、請求項2の構成を採用するならば、その混合比率が異なる少なくとも2色の混合色を、例えばイエローインク:90%とマゼンタインク:5%とのそれとして、これから印刷した有色背景帯域を、可飾線画像層における有色画線同士の隣り合う相互間へ介在させることにより、その可飾線画像層の全体に豪華なゴールド色の印象を付与することができる。
特に、請求項3の構成を採用するならば、上記有色画線とシリンドリカルレンズとの高精度な位置合わせを容易に得られるほか、その位置合わせに基づき複数の有色画線から成る可飾線画像層と、これが描画された疑似ホログラム印刷物の印刷上、その制御も高精度に行える効果がある。
本発明の第1実施形態を示す正面図である。
図1の一部を抽出して示す模式的な拡大斜面図である。
図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
可飾線画像層における曲線の有色画線を示す正面図である。
可飾線画像層における波線の有色画線を示す正面図である。
可飾線画像層における各種区画線と折れ線の有色画線を示す正面図である。
上記第1実施形態の第1部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
上記第1実施形態の第2部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
上記第1実施形態の第3部分変形実施形態を示す図3に対応する断面図である。
本発明の第2実施形態を示す図2に対応する模式的な斜面図である。
図10の11−11線に沿う拡大断面図である。
本発明の第3実施形態を示す図1に対応する正面図である。
図12の13−13線に沿う拡大断面図である。
インクジェットプリンターの概略構成を示す平面図である。
以下、図面に基づいて本発明の各種実施形態を詳述する。先ず、図1〜3はその本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第1実施形態を示しており、図1は正面図、図2は図1の一部を抽出して示す模式的な拡大斜面図、図3は図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
本発明の疑似ホログラム印刷物(A)は印刷基材(記録媒体)(10)における表面の全体又は一部へ、紫外線硬化型の有色インクによりインクジェット印刷された可飾線画像層(万線パターン層)(B)を具備している。その印刷基材(10)は不透明な紙やプラスチックフィルム、その他の可撓性を有するシート材から成り、その表面に光の反射層(11)となるアルミホイルが貼り付け一体化されている。
但し、そのアルミホイルの貼り付けに代わるアルミ蒸着膜を表面に備えた印刷基材(10)や、図9のような光の反射層(11)となるアルミニウムや銀などが裏面に真空蒸着された透明プラスチックフィルム(蒸着フィルム)を、本発明の印刷基材(10)として採用しても良い。何れにしても、その印刷基材(10)の裏面には剥離可能な離型シート(図示省略)が貼り付けられることもある。
上記可飾線画像層(B)は図2、3の部分拡大図に示唆する如く、色彩が異なる複数の平行な有色画線(12C)(12M)(12Y)から成る1組(1単位)(U)ずつが、規則正しく離隔的に(整然と所定間隔おきに)繰り返し並列する万線から形成されている。
この点、図1〜3の第1実施形態ではシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)とイエローの画線(12Y)との三原色から成る有色画線の合計3本(3列)を、色彩が異なる複数の平行な1組(1単位)(U)として、その1組(1単位)(U)ずつを所定間隔ピッチ(P1)での繰り返し並列設置することにより、上記有色画線(12C)(12M)(12Y)の万線(群数)から可飾線画像層(B)を形成している。
しかも、その際1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は、その複数(上記3本/3列)のすべて同じ寸法に設定されていると共に、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)もすべて同じ寸法に設定されている。更に言えば、図2、3から明白なように、各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)とその1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)と1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)とが悉く同等の寸法として、例えば0.04mmに設定されている。
つまり、上記第1実施形態の場合可飾線画像層(B)を形成する万線である有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う相互間は、その1組(1単位)(U)の内外を問わず、すべて同じ寸法(先に例示した0.04mm)の印刷されていない空白部(13)をなしており、その空白部(13)から上記印刷基材(10)の反射層(11)が露出している。尚、反射層(11)が図9のような裏面に蒸着された印刷基材(10)であっても、その印刷基材(10)は透過性を有するため、表面から光が反射されることに変わりはない。
また、同じく第1実施形態の場合、可飾線画像層(B)における万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)を、すべて両端がある所要長さの直線(a)として、その長さと配列角度(方向性)が異なる万線の組み合わせにより、図1のような全体の幾何学的な模様の可飾線画像層(B)を表示している。
但し、その可飾線画像層(B)を形成する万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)は、その両端のある所要長さの直線(a)のみならず、図4、5に例示するような両端がある所要長さの曲線(b)や波線(c)、図6(イ)に例示するような両端がある所要長さの折れ線(d)や破線、図6(ロ)(ハ)(ニ)に例示するような無端の連続する円形や楕円形、多角形、十文字形などの区画線(e)であっても良い。このような線形状が異なる各種万線の組み合わせや、その万線の配列角度(方向性)、幅(太さ)、長さ又は/及び隣り合う間隔ピッチなどの異なる組み合わせによって、独創性や興趣変化などに富む幾何学的な模様の可飾線画像層(B)を描画することができる。
更に、(14)は上記可飾線画像層(B)における1組(1単位)(U)ずつをなす色彩が異なる複数の有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その少なくとも任意な1本(1列)ずつを表側から被覆する透明なシリンドリカルレンズであり、各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)よりも太い線幅(W2)の万線として、上記印刷基材(10)へ紫外線硬化型の透明ニス(透明インク)によりカマボコ状にインクジェット印刷されている。
その場合、各シリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)は上記有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)の約1.5〜4.0倍、好ましくは図2、3に示すような2倍の寸法として、例えば0.08mmに設定する。その各シリンドリカルレンズ(14)の背丈(盛り付け高さ)(H)は、上記可飾線画像層(B)を透視する時の焦点距離となるが、図例では有色画線(12C)(12M)(12Y)のそれの約1.5倍(0.03〜0.04mm)に設定されている。
そして、上記シリンドリカルレンズ(14)の隣り合う同士をその線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)(例えば0.24〜0.32mm)として、好ましくは図2、3に示すような3倍(2列おき)の間隔ピッチ(P3)として、例えば0.24mmの寸法に設定するのである。
インクジェット印刷方式のインクは硬化するまで液状であるところ、発明者が上記第1実施形態を実験した後述の知見によれば、その可飾線画像層(B)における有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は細いため、その1組(1単位)(U)内における隣り合う同士の間隔ピッチ(P2)や1組(1単位)(U)ずつの隣り合う間隔ピッチ(P1)が、上記寸法(0.04mm)として比較的狭小であっても、その有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の濡れ広がり連結してしまうおそれはないが、上記有色画線(12C)(12M)(12Y)を被覆するシリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)は相当太いため、そのシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が線幅(太さ)(W2)の3倍(2列おき)よりも狭小な寸法であると、互いに濡れ広がり連結して、その頂面(凸曲面)の低く沈下し形崩れする結果、所期する焦点距離でのレンズ作用を発揮し難くなる。
他方、同じく隣り合う間隔ピッチ(P3)がそのシリンドリカルレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の4倍(3列おき)よりも広大な寸法であると、上記可飾線画像層(B)の全体に占めるシリンドリカルレンズ(14)の本数(配列数)が、有色画線(12C)(12M)(12Y)のそれに比して過少となり、設計どおりの高精細な色彩変化を得られない。
しかも、シリンドリカルレンズ(14)はその線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)に相当する寸法の上記間隔ピッチ(P3)を保ちつつも、図2、3に示す如く、上記可飾線画像層(B)における1組(1単位)(U)ずつの有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その少なくとも任意な1本(1列)の有色画線(12M)上へ言わば位置合わせする同芯状態に重ね刷りされている。そのため、設計どおりの高精細な色彩変化を得るべき、印刷インクの吐出タイミングなどを正確に制御することができる。
この点、上記第1実施形態では色彩が異なる有色画線(12C)(12M)(12Y)の3本(3列)のうち、そのマゼンタの画線(12M)上にのみ透明なシリンドリカルレンズ(14)が規則的に繰り返し並列する位置合わせ状態としてインクジェット印刷されている。(O−O)はその1本(1列)の有色画線(マゼンタ)(12M)とシリンドリカルレンズ(14)との対応合致した中心線を示している。
先の図1〜3に示した第1実施形態では、色彩が異なる有色画線(12C)(12M)(12Y)の3本(3列)を1組(1単位)(U)とし、その線幅(太さ)(W1)と1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)並びに1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)を悉く同等の寸法(先に例示した0.04mm)として、規則正しく繰り返し並列設置しているが、図3と対応する図7の第1部分変形実施形態に示す如く、例えばシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)との合計2本(2列)を、色彩が異なる有色画線(12C)(12M)の1組(1単位)(U)として、図3とすべて同じ寸法(上記した0.04mm)での規則正しく離隔的に繰り返し並列設置しても良い。この場合、マゼンタの画線(12M)とシアンの画線(12C)とがシリンドリカルレンズ(14)によって、交互に被覆されることになる。
また、図8の第2部分変形実施形態に示す如く、1組(1単位)(U)をなす複数(例えば3本/3列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は同じ寸法(先に例示した0.04mm)としつつも、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)を広狭変化させたり、逆に図9の第3部分変形実施形態に示す如く、その1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)は同じ寸法(例えば0.02mm)としつつも、その有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)を例えば大中小として相違変化させたりしてもさしつかえない。
上記1組(1単位)(U)における有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)やその有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)がたとえ異なっていても、その1組(1単位)(U)ずつがすべて同一の配列状態として、規則正しく離隔的に繰り返し並列する万線から構成されておれば足りる。
尚、図8、9の上記部分変形実施形態では1組(1単位)(U)同士の隣り合う間隔ピッチ(P1)が例えば0.07〜0.08mmの寸法として、その1組(1単位)(U)内における有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)よりも広大に設定されており、その同じ広大な寸法の間隔ピッチ(P1)おきに整然と並列した状態を示している。
図7〜9の第1〜3部分変形実施形態でも、上記1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)の任意な1本(1列)は、これよりも広大な線幅(太さ)(W2)のシリンドリカルレンズ(14)によって表側から被覆されており、シリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)として、好ましくは図示のような3倍(2列おき)の寸法(先に例示した0.24mm)に設定されている。しかも、そのシリンドリカルレンズ(14)とこれにより被覆された任意な1本(1列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)とが、同じ中心線(O−O)上に位置合わせされた状態にある点で、図1〜3の第1実施形態と共通する構成を備えている。
その場合、シリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)が図1〜3の第1実施形態や、その図7〜9の第1〜3部分変形実施形態と同様に、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3〜4倍(2〜3列おき)として、好ましくは3倍(2列おき)の寸法(先に例示した0.24mm)に設定されることにより、既述したようなシリンドリカルレンズ(14)の正規なレンズ作用と設計どおりの高精細な色彩変化を得られる限りでは、複数(例えば3本/3列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)から成る1組(1単位)(U)の全体を、シリンドリカルレンズ(14)によって被覆する形態を採用しても良い。
尚、図7〜9の第1〜3部分変形実施形態におけるその他の構成は、図1〜3の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図7〜9に図1〜3との同一符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略するが、上記各種実施形態の何れにあっても、その1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)は、その線幅(太さ)(W1)よりも広大に寸法化されることがあり得る。
更に、図10、11は本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第2実施形態を示しており、その構成上図1〜3の上記第1実施形態と異なる点は、次のとおりである。
つまり、図1〜3の第1実施形態では1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う相互間と、その1組(1単位)(U)同士の隣り合う相互間とが、何れも無印刷の空白部(13)として言わば放置されており、その空白部(13)から印刷基材(10)の表面が露呈しているに比し、図10、11の第2実施形態ではイエローの有色インク:90%とマゼンタの有色インク:5%とが混合された混合色を、その第1実施形態の空白部(13)に相当する個所へインクジェット印刷することにより、その印刷した個所を上記混合色から成る有色背景帯域(15)として、可飾線画像層(万線パターン層)(B)の全体を豪華な黄金色に印象付けることができるようになっている。
このような第2実施形態の構成は図7〜9の第1〜3部分変形実施形態の疑似ホログラム印刷物(A)についても、適用することができる。その場合、上記混合されたイエローとマゼンタとの2色は、あくまでも一例であるに過ぎず、混合比率が異なる少なくとも2色の混合色から形成された有色背景帯域(15)であれば、何色を採用しても良い。
また、図12、13は本発明に係る疑似ホログラム印刷物(A)の第3実施形態を示しており、これでは図1〜3の上記第1実施形態に次の構成を加えている。
即ち、図12、13の第3実施形態では上記有色画線(12C)(12M)(12Y)によって形成された可飾線画像層(万線パターン層)(B)の中へ、一旦無印刷の空白部(16)を適当な大きさ・形状に区画形成すると共に、その空白部(16)に露出した印刷基材(10)の表面へ、上記反射層(11)の反射を防ぐ(隠蔽する)白色下地層(17)をインクジェット印刷する。
そして、その白色の有色インクにより印刷した下地層(17)の表面へ、白色以外の適当な有色インクから成る文字や図形、その他の標章(18)をインクジェット印刷しており、これにより上記可飾線画像層(B)を言わば背景として、これから標章(18)が鮮明に極立ち表示されるようになっている。その標章(18)と同じ大きさ・輪郭形状に予め区成された空白部(16)へ、白色下地層(17)と白色以外の有色インクによる標章(18)とが順次インクジェット印刷されているわけである。
上記第3実施形態の場合、「KIANU」というアルファベット5文字の標章(18)をブラックの有色インクにより印刷しているが、例えば図1のような可飾線画像層(B)の周囲に無印刷のサークル状空白部(16)を区成して、その空白部(16)に露出した印刷基材(10)の表面へ、反射層(11)の反射を防ぐ白色下地層(17)をインクジェット印刷すると共に、その白色下地層(17)の表面に白色以外の適当な有色インクから成る有色区画線(19)をインクジェット印刷して、これにより可飾線画像層(B)を鮮明に縁取りしても良い。
このような標章(18)や可飾線画像層(B)の縁取り用有色区画線(19)を印刷する実施形態の構成も、図7〜9の第1〜3部分変形実施形態の疑似ホログラム印刷物(A)に適用することができる。尚、図10〜13の第2、3実施形態におけるその他の構成は、図1〜3の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図10〜13に図1〜3との同一符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を割愛する。
上記第1〜3実施形態とその第1実施形態の第1〜3部分変形実施形態に係る疑似ホログラム印刷物(A)は、何れも図14に例示するようなインクジェットプリンター(J)を用いて作成される。
そのインクジェットプリンター(J)の概略構成を示す図14の平面図において、(20)は上記印刷基材(10)を支持するプラテン又は回転ドラム、(21)はその印刷基材(10)を矢印方向(F)へ搬送する複数のローラー、(22W)(22C)(22M)(22Y)(22B)はその搬送方向(F)と直交する印刷基材(10)の幅方向(X)に沿って配列設置された第1〜5インクジェットヘッドであり、これらに開口分布する多数のインク吐出ノズル(23w)(23c)(23m)(23y)(23b)からは、各々指定の有色インクが吐出される。
その場合、上流側から下流側へ順次並列する第1〜5インクジェットヘッド(22W)〜(22B)のうち、その第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)からはホワイトインク、第2インクジェットヘッド(22C)のインク吐出ノズル(23c)からはシアンインク、第3インクジェットヘッド(22M)のインク吐出ノズル(23m)からはマゼンタインク、第4インクジェットヘッド(22Y)のインク吐出ノズル(23y)からはイエローインク、図例の予備となっている第5インクジェットヘッド(22B)のインク吐出ノズル(23b)からはブラックインクが、各々吐出されるようになっている。
また、上記第5インクジェットヘッド(22B)の下流側にはその有色インクを硬化するための紫外線照射装置(24)が並列設置されている。(22V)はその有色インク硬化用紫外線照射装置(24)の下流側に並列設置された第6インクジェットヘッドであって、これに開口分布する多数のインク吐出ノズル(23v)からは、透明ニス(透明インク)が吐出されるようになっている。(25)はその透明ニスを硬化するための紫外線照射装置であり、上記第6インクジェットヘッド(22V)の下流側に並列設置されている。
上記インクジェットプリンター(J)を用いて、図1〜3の第1実施形態に係る疑似ホログラム印刷物(A)を作成する方法について言えば、その印刷物(A)の可飾線画像層(B)やシリンドリカルレンズ(14)を含む構成が設計データとして、インクジェットプリンター(J)の制御部(コントローラー)(図示省略)に記憶されている。
その制御部には印刷基材(10)の搬送ローラー(21)や第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)、有色インク硬化用並びに透明ニス硬化用の紫外線照射装置(24)(25)などが電気的に接続されており、その制御部によって上記搬送ローラー(21)の回転や第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)の移動、その吐出ノズル(23w)〜(23v)からの有色インクの吐出量並びに透明ニスの吐出量や吐出タイミング、上記紫外線照射装置(24)(25)からの紫外線照射量や照射タイミングなどの駆動制御が行われるようになっている。
上記色彩が異なる有色インクにより、可飾線画像層(B)を形成する有色画線(12C)(12M)(12Y)の印刷と、透明ニスによるシリンドリカルレンズ(14)の印刷とは別個に行われ、その印刷時には印刷基材(10)が搬送方向(F)への移動を繰り返し、そのたび毎に第1〜6インクジェットヘッド(22W)〜(22V)が順次に各々幅方向(X)へ移動されることになる。
そして、上記可飾線画像層(B)における万線としての有色画線(12C)(12M)(12Y)を順次印刷すべく、その第2〜4インクジェットヘッド(22C)(22M)(22Y)のインク吐出ノズル(23c)(23m)(23y)から吐出された有色インクの液滴(ドット)は、印刷基材(10)の表面へ各々着弾するや否や、その後有色インク用紫外線照射装置(24)によって硬化されるまでの間に濡れ広がり、1本(1列)の有色画線(12C)(12M)(12Y)となって、その硬化するまでの作用を繰り返すことにより、全体として設計どおりの可飾線画像層(B)が形成される。
この点、上記第1実施形態ではシアンの画線(12C)とマゼンタの画線(12M)とイエローの画線(12Y)との合計3本(3列)からなる1組(1単位)(U)ずつが、その1組(1単位)(U)同士の隣り合う所定間隔(P1)を保って繰り返し並列設置されており、その各有色画線(12C)(12M)(12Y)の線幅(太さ)(W1)は上記0.04mmとして細いため、その有色画線(12C)(12M)(12Y)同士の隣り合う間隔ピッチ(P2)が線幅(太さ)(W1)と同じ寸法であることとも相俟って、その先行する有色インクの液滴(ドット)が着弾してから硬化する前に、後行する有色インクのそれが着弾するおそれはない。
また、上記1組(1単位)(U)をなす有色画線(12C)(12M)(12Y)のうち、その任意な1本(1列)であるマゼンタの画線(12M)を表側から被覆するためのシリンドリカルレンズ(14)を印刷すべく、その第6インクジェットヘッド(22V)のインク吐出ノズル(23v)から吐出された透明ニスの液滴(ドット)は、上記マゼンタの画線(12M)上へ位置合わせされた同芯状態に着弾し、その透明ニス用紫外線照射装置(25)によって硬化されるまでの間に濡れ広がり、やはり1本(1列)のカマボコ状シリンドリカルレンズ(14)となる。
その場合、第1実施形態ではシリンドリカルレンズ(14)の線幅(太さ)(W2)が上記0.08mmとして、これにより被覆される上記有色画線(12M)の線幅(太さ)(W1)(0.04mm)の2倍であり、しかもそのシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)がレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の3倍(2列おき)として、上記0.24mmの寸法に設定されている。
今、上記有色画線(12M)を印刷する有色インクの液滴(ドット)とシリンドリカルレンズ(14)を印刷する透明ニスの液滴(ドット)が、何れもその上記0.04mmと0.08mmの線幅(太さ)(W1)(W2)を直径とする半球形であるとみなして試算すると、その透明ニスの液滴(ドット)の体積は有色インクの液滴(ドット)のそれの約8倍に相当する程大きいため、その大きさに相応する分だけシリンドリカルレンズ(14)同士の隣り合う間隔ピッチ(P3)を、そのレンズ(14)自身の線幅(太さ)(W2)の少なくとも3倍(2列おき)として広大に確保しており、その結果隣り合うシリンドリカルレンズ(14)同士の不慮に連結して、その頂面(凸曲面)が低く沈下して平面化したり、形崩れしたりするおそれはなく、上記可飾線画像層(B)と相俟って、高精細に色彩変化する疑似ホログラム印刷物(A)を得られるのである。
尚、図10、11の第2実施形態に説示した有色背景帯域(15)の混合色は、インクジェットプリンター(J)における上記第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)から、そのホワイトインクに代わる有色インクとして吐出される。図12、13の第3実施形態に説示した白色下地層(17)のホワイトインクは、同じくプリンター(J)における第1インクジェットヘッド(22W)のインク吐出ノズル(23w)から吐出すれば良く、上記標章(18)や可飾線画像層(B)を縁取る有色区画線(19)のブラックインクは、インクジェットプリンター(J)における上記第5インクジェットヘッド(22B)のインク吐出ノズル(23b)から吐出すれば良い。
(10)・・・・・印刷基材
(11)・・・・・反射層
(12C)(12M)(12Y)・・・有色画線
(13)(16)・・・空白部
(14)・・・・・シリンドリカルレンズ
(15)・・・・・有色背景帯域
(17)・・・・・白色下地層
(18)・・・・・標章
(19)・・・・・有色区画線
(A)・・・・・・疑似ホログラム印刷物
(B)・・・・・・可飾線画像層
(J)・・・・・・インクジェットプリンター
(O−O)・・・・位置合わせ状態の中心線
(P1)(P2)(P3)・・・間隔ピッチ
(U)・・・・・・1組(1単位)
(W1)(W2)・・・線幅(太さ)