JP2021136911A - 炭化木質薄板を用いた溶液反応或いは細胞培養のための、モジュール或いはユニット、及びこれを用いる溶液反応或いは細胞培養方法 - Google Patents

炭化木質薄板を用いた溶液反応或いは細胞培養のための、モジュール或いはユニット、及びこれを用いる溶液反応或いは細胞培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】仮道管の炭化物の細孔を反応場として利用するためには表面の親水化処理を必要としていた。仮道管や導管は長さ方向に数mm程度の区間ごとに閉塞部を有しており親水化処理したとしても、試料溶液を移動することはできなかった。【解決手段】炭化導管や炭化仮道管が光透過性になる長さ(1.9mm以下)であれば、表面の一端に供給された溶液は水平方向に広がることなく管内を移動し他端に効率よく到達することを発見した。この現象を利用して溶液反応や細胞培養を微小空間で行えるモジュールおよびユニットを構築し溶液反応や細胞培養に利用する。【選択図】図5

Description

本発明は、微細な多孔質構造を有する針葉樹の仮道管あるいは広葉樹の道管と木部繊維の炭化物からなる薄板を、前記炭化物が形成する多数の微小な管状空間を溶液反応あるいは細胞培養のためのモジュールあるいはユニットとして利用する低コストの溶液中での反応および培養の効率的な利用方法の提供に関するものである。
化学や生化学分野の技術的進歩に伴い少量の試薬や原料を扱う精密合成や微量分析技術等の少量での操作や多数の反応系を同時に処理するなど高効率化や自動化しやすい技術、例えばマイクロ流路技術やナノテクノロジー、マイクロアナリシス技術、などの進歩が続いている。とりわけ生体由来の機能性成分例えば生理活性成分は微量であることが多いので、これらを扱う生化学分野や医薬・医療分野では微量化に向けた技術開発に対する要請は極めて高い。これらの精密化・微量化技術の土台は少量あるいは微量の溶液反応や細胞培養の反応場を提供する小型の反応容器である。このような状況を反映して基盤技術ともいえるマイクロウェルプレートやマイクロリアクターあるいは細胞培養器等の小型化、高機能化、高効率化は溶液反応や細胞培養などに対する期待も大きく技術進歩も加速している。
溶液反応や細胞培養の反応容器を微小化する手段としては、樹脂やガラス基板にマイクロマシンなどにより微小な穿孔加工をしたものが知られている(特許文献1)。また、特許文献2にはX線リソグラフィー技術などにより樹脂に微小な多角形状の貫通孔(孔径、50μm〜500μm)設けた樹脂成形した細胞培養容器が記載されている。
微粒子グラファイト電極を用いて放電加工して得た直径0.4mm、高さ0.4mmの凸部を有する金型を用いて対応するサイズの貫通孔を有する熱硬化性樹脂性多孔板を作製し、これとカーバグラスを組み合わせたマイクロウェルプレートが開発されている(非特許文献1)。また樹脂製の微細中空体の外部を切断し50μm〜200μmの微小中空体を加工したマクロウェルプレートも知られている(特許文献3)。
しかしこれらはいずれも微細加工を前提とするなど製造工程が複雑で製造コストが高いという課題を抱えている。
いっぽう、樹木はその成長に伴い成長軸に沿って仮道管あるいは導管の途中に周期的な閉鎖構造が形成されている。特に針葉樹材の仮道管は開口径が十数μmから数十μmでほぼ規則的な配列をしている(非特許文献3)。
樹木を空気遮断下で炭化して得た木炭やこれを粉体にした木炭紛やさらに微細にしたカーボンブラックが有する諸特性を利用した機能性材料に関しても多数の技術が開発されている(非特許文献4)。
特許文献6にはカーボンブラックと結着材の混合物から成形した反応容器を用いた各種の化学反応や細胞培養を含む生物学的分野への利用技術が開示されている。しかし、木炭紛やカーボンブラックなどの粒状化物は樹木が有する最大の特長ともいえる、木質繊維構造が有する成長方向への大きな異方性(アスペクト比)を利用したものではなかった。
木質材料、特に針葉樹の仮道管はアスペクト比が極めて大きく精緻な管状の微細構造有している。仮道管の炭化物は炭化に当たって加熱処理されるので、主に炭素から構成されたセラミックスとしての諸性能を有している。この高温耐性を利用して炭化仮道管の管中に触媒などの機能性物質を担持させて物質変換などの化学反応を高温や特殊な環境下における反応場としての利用する例が知られている(非特許文献5)。
また非特許文献6には仮道管内部にCNTを成長させスーパーキャパシターなどの機能性材料について記述されており、その背景説明中には炭化木質材料を細胞や組織の培養器としての利用の可能性に触れているが具体例は示されていない。
特許文献7には針葉樹を成長方向と並行に切断した経木を炭化しこれを反応場とした例が記載されているが、経木中では仮道管は切断平面に沿って広がっているので、反応容器として利用する場合には試料溶液は水平方向への展開に限定されるものであった。
上述のように木質材料を成長方向に対して直角に切断して得られる柱状物を炭化して得られる柱状炭化物中の仮道管を反応場として利用する試みは極めて活発であり、実例も多数報告されている。しかしこれまでの公知文献では、いずれの場合も針葉樹を成長方向に対して直角方向に切り出せば、切断した一方の面で観察される微細な矩形の仮道管開口部から他端まで直線的なパイプ状あるいは網目構造を通して連続的に繋がっているという暗黙の理解に基づいて用途展開が図られていた。
しかし、例えば非特許文献7に掲載されている仮道管の炭化物の断面の電子顕微鏡写真からも理解されるように、仮道管は周期的間隔で閉塞した構造を有しており、そのため水のような表面張力の高い液体を、例えば長さ4mm以上の柱状あるいは板状に切り出した炭化仮道管内に導入しても効率良く仮道管内を通過させることは不可能であった。また非特許文献6および非特許文献7の記述からも分かるように、生化学的反応や細胞培養に適した貫通孔を有する炭化木質材料を作製、利用する方法は知られていない。
特開2005−27598 特開2011−172533 特開2009−247334 特開平4−281784 特開2017−012109 特開2012−211043 特開2013−103853
在川功一他、福岡県工業技術センター研究報告No.2416−21(2014) 津田行子他、表面科学 27巻3号(2006)176−181 古野 毅編 木材科学講座2「組織と材質」海青社(2007) 浦木康光、久保智史、木材学会誌56(6)337−346(2006) P.Gao et al.Mater.Res.Bulletin 44(2009)644−648. C.Wu et al.Carbon、150(2019)311−318 J.N.Gaguist et al.J.Anal.Appl.Pyrolysis、136(2018)77−86
本発明の第1の課題は、溶液中の化学反応、生化学的反応、あるいは細胞や生体組織等の培養等(以下これらを一括して細胞培養と称する)の際に必要とされる高度な技術的要件を満たし、作業効率を向上させ、かつコストを低減させる手段として、炭化仮道管薄板およびその底面に位置し炭化仮道管を通過した溶液を受容する受容部材をからなる細胞培養モジュールとその利用方法を提供することである。本発明の第2の課題は、細胞培養や生体組織等の培養を効率よく実行しかつ多様な要件に柔軟に対応可能な手段として、前記細胞培養モジュールを収納した細胞培養ユニットおよびそれを利用した細胞培養方法を提供することである。
本発明は、天然物である樹木が有する精緻な微細構造を細胞培養容器として利用するものであり、炭化の前あるいは後に樹木の仮道管或いは道管およびそれを取り巻く木部網目繊維構造を有する平板を成長軸方向に対して直角±15度の方向にスライスして作製した炭化薄板(以下これらを一括して炭化仮道管薄板と称する)を利用した微細な筒構造を基本単位とする細胞培養モジュール、およびこれを収納し長期的な細胞培養を可能にした細胞培養ユニットを構築することにより従来公知の方法に比べて格段に低いコストで製造、供給することを可能にした。このようにして得られた炭化木質材料薄板(以下単に炭化薄板と称する)は、化学的に極めて安定なセラミック材料としての諸特性を有しており溶液反応や細胞培養に適している。
炭化薄板からなる細胞培養モジュールは単位要素(ウェル1個)の開口部が1辺数μm〜数十μm、深さが0.1〜1.9mmの矩形の中空状の柱からなる。これが複数個整列している構造からなる厚さ0.1〜1.9mmの細胞培養モジュールおよびこれを組み込んだ細胞培養ユニットを作製することにより、上記の課題を解決した。
針葉樹の仮道管に替えて広葉樹の導管を利用することもできる。広葉樹の導管は針葉樹の仮道管に比べて一般的に太くまた短い。広葉樹の炭化物も針葉樹の仮道管炭化物とほぼ同じように機能する。
細胞や生体組織等の培養に要する高度な技術的要件を満たし、作業効率を向上させ、かつコストを低減させる手段の実現が可能になる。また細胞や生体組織等の培養に際して必要な細胞分散液や培養液の大幅な低減を可能にし、多様な要件に柔軟に対応可能な細胞培養モジュールを作製する手段の実現が可能になる。さらに細胞や生体組織の培養に当たって高効率で機能する細胞培養ユニットを実現する手段が可能になる。
さらに、本発明方法では炭化仮道管薄板を細胞培養容器の中に収納し、その上面あるいは下面に流体を供給する手段を構築することにより、空気や培養液その他の成分の供給や老廃物の排出が可能な、細胞等の培養ユニットの構築が可能となった。本発明によって作製された細胞培養容器は焼成温度にもよるが炭素を主成分とするセラミックであるので、高温耐性を有するだけでなく、各種の試薬や酵素などの活性種に対しても基本的に安定である。また、滅菌処理や酸、アルカリその他の滅菌処理に対しても安定であり、寸法や表面性も影響を受けにくいなど細胞培養に求められる諸特性を備えている。
針葉樹材(エゾマツ)の炭化仮道管薄板の電子顕微鏡写真(a)および炭化杉薄板の光学顕微鏡写真(b)である。 広葉樹の木材板を炭化して得た炭化薄板の透過型光学顕微鏡写真であり、(a)は桂、(b)はサワグルミある。 炭化仮道管薄板の厚さと光透過性を示す透過型顕微鏡写真である。 本発明に使用される基本要素である炭化仮道管薄板の構造を模式的に示した説明図である。 炭化仮道管薄板の底面に受容部材が設けられた、本発明の細胞培養モジュールの基本構成を模式的に示した説明図である。 細胞培養モジュールへの水溶液の滴下量と受容部材への到達量の関係と示したグラフである。 片面に凸部構造部(ヒルhill)を設けた炭化仮道管薄板の構造を模式的に示した説明図である。 凸部構造を有する炭化仮道管薄板とヒルを有しない仮道管薄板を重ねた構造物を模式的に示した説明図である。 上面に円形状のマスク要素を設置しコンパートメント化した細胞培養モジュールの平面図及び側面図である。 培養モジュールの下に培養液その他の成分を受容または供給する受容器を有する他の細胞培養モジュールの構造を示した説明図である。 空気、培養液その他の成分の連続的な供給や排出をするための開口を有する密閉容器中に細胞培養モジュールを収納した本発明の細胞培養ユニットを模式的に示した説明図である。
本発明者らは炭化薄板を親水化処理しなくても薄板表面に水を滴下するとその下方の仮道管内に水が充満し底面に流下することを発見し本発明に至った。
炭化薄板は針葉樹あるいは広葉樹からなる木材を、炭化後に板状に切断する方法と炭化前に板状に切断してから炭化する方法の2つの方法により得られる。以下に説明する細胞培養モジュールは木材を炭化後に薄板状に切断加工する工程によって作製される。本発明によって作製される細胞培養モジュールおよび細胞培養ユニットの作製方法および特徴について以下に図を参照しながら説明する。
木質材料を炭化して炭化木質材料を得る作製工程の一例の概略を示す。木質材料の角材を、セラミック円筒容器に入れ空気が入らないように蓋をし、所定の焼成温度まで昇温し、その温度で30分間加熱し炭化する。得られた炭化物を仮道管とほぼ直角に所定の厚さに切断し、炭化木質材料の薄板(以下には炭化薄板あるいは炭化仮道管薄板と称する)を得る。
これまでにも針葉樹の仮道管を炭化しその細孔を利用する数多くの報告がなされているが、いずれの例でも気体や液体は炭化仮道管素子を通して抵抗なく流通すると想定されていた。しかしその筒が貫通しているか途中に閉鎖部分があるかに関しては詳細に検討されていなかった。樹木の繊維構造は成長軸方向に密度の高い節目が形成されることは知られており、異なる樹種から得られる炭化仮道管の場合も、その程度に差はあるが閉塞部が隔壁となって仮道管の軸方向への流体の通過は妨げられる。
本発明に適した炭化仮道管薄板の厚さは0.1〜1.9mmの範囲である。典型的には針葉樹材の仮導管方向に対して75〜90度の角度で、光を透過する仮道管を有する厚さに切断された薄板であって、400℃以上の高温で炭化したものである。形状は任意に選べるが大きさは原木の太さに依存する。以下に説明する典型的な細胞等の培養ユニット薄板の大きさは直径が5mmから50mmの円板、あるいは最長辺が200mm以下の長方形である。多角形でもよい。
本発明に使用する炭化仮道管薄板は空気遮断下或いは不活性雰囲気で400℃以上に加熱して炭化したものである。炭素含量は焼成温度によって異なるが、一般に90%以上となる。850℃以上に加熱処理したものは実質的にセラミックとしての物性を示すことが知られている。したがって、温和な使用する試料溶液は中性領域の水溶液に限定されることはなく、強酸性から強アルカリ性まで幅広い水性溶液や各種の有機溶媒、反応性溶液や混合液も使用可能である。また超耐熱性であるので低温から場合によっては1000℃を超える高温での処理や反応にも使用可能である。
以下には主として細胞培養などに適した温和な水溶液反応系への利用に関して説明する。炭化仮道管薄板には微量のSi、Mg、K、Ca、P、S、などの元素や化合物が含まれる。これらの濃度が培養の要件を超える場合には、適宜硝酸、硫酸塩酸、フッ化水素酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリによって処理することによりその溶出量を所定の濃度以下に低下させることが出来る。
図1は本発明にしたって作製された炭化仮道管薄板の切断面写真である。(a)はエゾマツ、(b)は杉である。図1に見られるように数μm〜数10μmからなる矩形の開口を有する仮道管とそれらの隔壁を構成する繊維状物から構成されている。
図2は広葉樹材の炭化薄板を透過型光学顕微鏡で観察した結果を示す顕微鏡写真である。写真(a)は炭化桂(広葉樹の中で道管の割合が多い樹の代表的存在)の0.6mm厚薄板、(b)は炭化サワグルミ(広葉樹の中で道管の割合が少ない樹の代表)の0.7mm厚の薄板である。炭化物を1.6mm厚にスライスした板状物を顕微鏡で観察したら光不透過であった。0.1〜0.7mm厚にスライスしたものは光透過性になった。0.1mm厚ではハンドリングの際に破損しやすいので注意が必要である。安心して扱うには0.3mm以上の厚さが好ましい。
図3は炭化仮道管薄板の厚さを変えて撮影した透過型顕微鏡写真である。厚さが小さいほど多くの仮道管が貫通していることを示している。
本発明者らは、同様の工程により厚さを変えた薄板を作製しこれを透過型顕微鏡で観察すると、板の厚さに依存して光透過の度合いが変化することから、仮道管がそれを取り囲んでいる壁を形成する木質繊維によって塞がれる閉塞部位間の長さは樹種や成長によって異なるが、その周期は特定の樹木についてはほぼ一定であり、この閉塞部位の間隔より短くなるように、すなわち約1.9mm以下の厚さに切断すれば仮道管の両端が貫通している炭化木部繊維構造からなる細管が得られることを発見した。薄板の厚さが小さいほど貫通する細管が多くなり、その傾向は図3に示されるようになることが確認された。図1bの写真は杉の炭化薄板でその厚さは0.6mmであり、殆どの細孔が貫通していることが分かる。
図4は本発明の細胞培養モジュールの基本要素である炭化仮道管薄板の側面図である。図4において符号1は炭化仮道管薄板の上部表面(図1に対応)、符号2は仮道管(この柱状の空間が細胞培養容器の内側に相当する)、符号3は仮道管間の隔壁を形成する繊維構造、符号4は下部表面を示す。
図5は炭化仮道管薄板の底面に機能性部材等からなる受容部材を設けた、本発明の細胞培養モジュールの基本構成を模式的に示した説明図である。符号5は溶液(試料溶液あるいは細胞を含む培養液)受容部材を示す。炭化仮道管薄板の表面に水溶液を滴下すると表面で表面張力により液滴が半球状になりすぐには水平方向に広がらない。しかし水溶液の表面張力にもよるが数秒〜数十秒経つと水溶液滴は毛細管現象により真下にある細孔の内部に液が流下する。この際隣接する仮道管細孔へは広がらない。この際炭化仮道管薄板の底面に濾紙などの吸水性材料を接触させておくと、水溶液の流下は極めて速やかに進行し、かつ上面の同じ場所に水溶液の供給を繰り返しても炭化仮道管薄板中の流路は拡大することなく隣接する仮道管への漏出も起こらない。このように炭化薄板は試料溶液あるいは細胞を含む培養液を受容器へ導入するための機能を有する。
受容部材としては、各種の機能性物質からなり、使用する溶液に対して浸透性、不浸透性の粉体やその圧着成型物、高分子膜、濾紙、不織布、多孔体あるいは平板状の部材や平皿状の透明、半透明あるいは不透明のプラスチックやガラス、金属などが挙げられる。また、あるいは水溶液吸蔵性の寒天、ゼラチン、高分子吸収剤などのゲル状物や粉体状物が挙げられる。さらに場合によっては液状物や偽液状物などからも選び得る。これらの組み合わせでも良い。
さらには、試料溶液の仮道管中の流下に際する空気層の抵抗を低下させる目的で底面に空気が排除される機構を設けることも効果的である。受容部材に収納、増殖などに利用する液量が少ない場合などには、流下する試料溶液と試料溶液受容部材との間の空気層が流下抵抗となり時間がかかる。
上記の炭化仮道管薄板の底面と細胞培養液受容部材の間には補助部材として膜その他の平面形状の部材を設置することが出来る。補助部材の役割は、使用前には炭化仮道管薄板の全面を覆っており、試料溶液が仮道管中を流下する際にはその流れを妨げず、流下した部分のみに孔が生じ、試料溶液が試料溶液受容部材中に効率よく移行するような状況を作り出す役割を果たす機能性物質からなる。かかる補助部材は3つのカテゴリーに分けられる。第1のカテゴリーには試料溶液は通さないが空気は通す特性を有する薄膜や多孔質膜、スポンジ状物などである。その例としてはシリコーンなどのサブミクロンの薄膜や高分子膜の表面をシリコーンなどで撥水処理した通気性の膜が挙げられる。第2のカテゴリーは試料溶液の溶解作用により試料溶液の流通孔を生じるものである。その例としてはオブラート膜が挙げられる。オブラート膜は水に溶けやすいだけでなく、水溶液から生ずる湿気によって膨潤あるいは凹状に変形して試料溶液の流下に際して空気抵抗を減少させる。厚さや試料溶液の組成にもよるが比較的短時間で試料溶液の流路に対応した孔を生ずる。第3のカテゴリーの補助材としては酸、アルカリ、タンパク分解酵素、溶剤など特定な条件下の破壊される薄膜である。その例としては、酸可溶性高分子薄膜、アルカリ溶解性高分子薄膜、ゼラチン薄膜などが挙げられる。
図6は縦20mm、横20mm、厚さ1.1mmの炭化仮道管薄板の下に濾紙を溶液受容部材として用いた場合の水の滴下量と炭化仮道管薄板中を流下して濾紙に受容された水の量の関係をグラフとして示したものである。仮道管への残留分を考慮すると勾配がほぼ1の正比例関係にあり、滴下した全量が流下していることが分かる。この間水の供給に伴って炭化仮道管薄板上に観察される流通孔の形状は直径数mm〜数10mmの円に近い楕円形で水は筒のような流路を形成しながら流下し続けたことが分かる。
炭化仮道管薄板の表面特性は目的に合った物性を有する機能性物質によって被覆することにより調節、最適化が可能である。このような機能性物質の例としてはシリコーン樹脂やアクリルアミドなどの有機高分子やその誘導体、無機高分子、ゼラチンやコラーゲンなどの生体高分子、有機あるいは無機の化学物質、金属、合金などおよびこれらを目的に応じて組み合わせた混合物などが挙げられる。また、表面特性の改質だけでなく、炭化仮道管薄板中には、細胞培養に当たって必要な、あるいは流下の過程で試料溶液に含まれる各種成分と生化学的相互作用や化学的反応をする各種の活性物質を導入しておくこともできる。このような成分としては、タンパク質、コラーゲン、アミノ酸、免疫抗体、DNAやRNAなどの生体由来の化合物や生理活性物質、あるいは細胞に作用する医薬品やその候補化合物などが挙げられる。さらに計測や解析手段となるように蛍光試薬やラジオアイソトープその他の化学的、物理的標識物あるいは腫瘍マーカーなどの生化学的標識を担持した化合物であっても良い。これらの機能性化合物の炭化仮道管薄板への導入は適切な溶剤に溶解した溶液状態でも良いし、また粉末や霧状に噴霧しても良い。また上面あるいは下面の一方から導入しても良いし浸漬操作などにより両面から導入しても良い。
これらの活性物質を導入する炭化仮道管薄板は試料溶液が導入される細胞培養モジュールの最も外側に位置する構造に限定されるものではなく、以下に説明するように、積層した型式のモジュールにおいては、第2や第3番目に位置する炭化仮道管薄板中に導入しても良く、また適切な太さの中空管中に設置・導入こともできる。
炭化仮道管薄板の下端には機能性物質からなる試料溶液の受容部材がセットされる。受容部材は試料溶液に対して不浸透性であればよく、特に制限はない。試料溶液不浸透性の高分子膜や板状物でも良いし、多孔質膜や不織布、粒子状物、粉末、微粒子など、およびこれを組み合わせた部材を介在させることでも良い。場合によっては中空糸やチューブ状の細管を炭化仮道管薄板の底面に直接流体接触させ、必要に応じて1ないし2本以上の束にして、流出液を細胞培養器本体外に直接誘導することもできる。あるいは受容部材として底面を覆っている膜を溶解する溶媒や分解酵素溶液を局所的あるいは全面に供給することもできる。一例として底面を寒天やゼラチンなどのゲル状物からなる層で覆っておく方法や炭化仮道管薄板の仮道管内部に埋め込んだ構造にしておく方法も可能である。
炭化仮道管等薄板の底面には実質的に水非浸透性でかつ局所的な穿孔が可能な樹脂膜などで塞いでおき、培養反応が終了時あるいは培養途中に回収や観察、測定が必要となった時に随時炭化仮道管等薄板の下面、構成によっては上面から試料溶液を取り出すことが出来る。例えば細胞培養液受容部材を形成するプラスチックフイルムや板状物の下に外部から押圧などの操作が可能なように細工がしてある細胞培養液の容器となる受け皿を設けておき押圧あるいは穿孔などにより培養液受容部材の一部を破壊しても良い。またレーザーその他の物理的手段を用いて穿孔することでも良い。
炭化木質材料の薄板中の単一の仮道管は細いのでその容積は限られる。細胞培養液の量を必要に応じて増やす手段が望まれる。このような課題を解決する手段としては薄板を重ねる、あるいは複数の仮道管をまとめてグルーピングする方法をとることができる。
薄板の表面には微細な凹凸があるので、薄板と薄板の間の境界に微小な隙間の形成を避けることは極めて難しい。例えば単順に薄板を重ねただけでは、薄板の一方の面から細胞培養液などを注入しても、界面の微小な隙間を通って横に広がる恐れがある。位置合わせを厳密にすれば試料水溶液を第1の炭化仮道管等薄板から第2の仮道管薄板に移送できるが、実際には2枚の薄板の接続部の隙間から横方向への拡散、漏出を防ぐことは極めて難しい。
本発明者らは鋭意研究の結果、図7に示すような凸部61(ヒル)を設けることにより上記の問題を解決できることを発見した。すなわち、図8(a)のような碁盤目状に凸部を設けた薄板60(第1モジュール)と、凸部の無い薄板70(第2モジュール)とを図8(b)のように凸部を下に向けて密着させることにより微小な隙間が有っても積層境界面からの培養液等の漏出は完全に防げることを見出した。凸部の突出値を0.2mm以上にしておけば、微小間隙を表面張力で拡散する恐れがないのである。0.2mm以上ではなく、0.1mm以上でも界面の状況によっては大丈夫である。段差の程度は特に限定されるものではなく、積層される間隙に試料溶液が入り込まない厚さ、例えば0.2mm〜0.4mmであれば現実的である。
図8(b)のようにヒルを下にしてヒルの無い薄板と重ね、ヒルの無い薄板を試料溶液の受容面として使用する場合にはヒルの裏面に滴下された試料溶液はヒルの仮道管を経由してヒルの下に位置する試料溶液受容部材に流入する。受容部材に到達する液量は薄板仮道管内に保持される一定量を除けば供給液量に比例する。したがって試料溶液中の細胞などの濃度に応じて供給液量を設定することにより、受容部材に到達する細胞等の量を調整あるいは最適化できる。
ヒルの面積を適切な大きさに設定することにより、この手法を利用すればヒルの真下に位置する所定の面積の仮道管内に限定した細胞培養液の導入が可能になる。この手法により以下に説明するような複数の仮道管からなる仮道管要素のグルーピングによるコンパートメントの形成、すなわち上に述べた面積の拡大による取り扱い液量の拡大や調節が可能になる。
細胞培養容器の構成単位である個々の仮道管は、精緻ではあるが微細でかつ開口径が異なった筒状物の集合体なので、それから構築される細胞培養容モジュールの個々の構成単位もその大きさ、形状、容積は一定ではない。目的によって異なるが、処理後の液量の平準化の手段としては上記のような複数の仮道管を覆うような大きなヒルを設けることによる方法がある。さらに図9に示すような、開口径一定で適切な大きさの試料溶液注入孔を有するマスクによって覆う方法(以下マスキングと称する)によってもグルーピングあるいはコンパートメントの形成が可能である。
次にマスキング技術による導入液量の平準化について説明する。本発明に使用する炭化仮道管薄板の原料である樹木は天然物であり仮道管の形状や配列は一定ではない。したがって製造ロットごとに形状その他に伴う特性に差異が生ずる。1製造ロットの規模は原料とする木材の太さや長さにより異なる。本発明に使用する炭化仮道管薄板の厚さは1.9mm以下であるので、原理的には2mの木材から同一の開口形状をした薄板がおよそ1000枚製造できる。また面積的には1cm角の薄板であれば、太さ30cmの角材から原理的にはおよそ30枚取れる。したがって、単純に計算すれば長さ2m、太さ30cmの角材から同一ロットとして扱える薄板がおよそ6万枚製造可能ということになる。しかし、実際には心材部分と辺材部分では形状が異なること、節の存在があること等により遥かに少ない枚数になる。異なるロット間の差異については対象とする試料溶液あるいは標準液を用いて標準とする溶液を用いて流下速度と流下量などの流動特性を測定することにより補正することができる。
具体的には適切な大きさの穴(例えば直径1〜3mmの円)を開けた接着テープを炭化仮道管薄板の上表面に張り付けてその内側に試料溶液を滴下する。試料水溶液は開口によって規定される円の真下に存在する仮道管にしか流入しない。この際、炭化仮道管薄板の切断面の粗さとマスキング材の接着面の接着層の厚さや柔軟性によるが、両者の接着面に微小の空間層が形成されることがある。このような場合には試料溶液はマスキング材の開口部分だけでなくマスキング材の外縁まで広がることがある。しかし、それ以上の範囲には広がらずに流下する。
マスキングの手段としては炭化仮道管等薄板の上表面に疎水性ポリマーインク等で隣接するマスキングゾーンとの間を適切に保てるような線状の図形を描いたものでもよい。材料や粘性を調節すればポリマー溶液は描画によって規定される形状に対応して仮道管内を流下し、乾燥後には水溶液の拡散を制約する筒状の隔壁が形成される。
適切な間隔を開ければ上記の手段により、異なった組成の試料溶液を複数同時にインキュベートできる。またマスキングの大きさや形状を変えることにより、1個の細胞培養モジュールによって異なった量の細胞培養液を一挙に培養できる。
マスキング技術の具体例を図9に示す。図9の(a)は上から見た平面図、(b)はその側面の一部を模式的に示した側面図である。炭化仮道管薄板からなる細胞培養モジュールを構成する複数の仮道管をグループ化する手段としてドーナツ状のパターンを有する水溶液不浸透性のマスク材を細胞培養モジュールの上面に設置した構造を示したものである。図中の符号6はマスク部材である。(a)図の背景に碁盤目状に見えているのが薄板の上面(図4の符号1)である。また(b)図の縦線列は仮道管を示している。
グループ化するメリットとしては特に定量性と操作性の向上が挙げられる。グループ化することにより単位面積当たりのセルの面積をほぼ一定にすることが可能になるので滴下面積や細胞培養後の結果の定量性や精度が向上する。また培養の目的や試料溶液の多少に応じてマスキングの面積を変えられるので培養時の要件に従って柔軟かつ幅広い対応が可能になる。
マスキングの手段は炭化仮道管薄板の表面に気密状態で密着させても良いし、試料溶液注入口の周縁部に試料溶液がキャピラリー現象によって拡散する程度のわずかな隙間を有する状態で設置されていても良い。炭化仮道管薄板の表面は切断方法や精度によるが、微小な凹凸があるので、マスキング材やその接着面が炭化仮道管薄板の表面上の凹凸に追随できない場合には微小な面状の空間が形成される。したがってマスキングの材質や設定の仕方によっては試料溶液が開口部に滴下された後にこの周縁部にも溶液の一部が拡散することがあり、この部分に対応する試料溶液も炭化仮道管薄板中を流下する。しかし試料溶液はマスキング材の周縁部によって規定される平面以外には拡散しない。この特性は試料溶液の供給に際して要求される位置的制限あるいは滴下液量の許容範囲の緩和にも寄与する点で自動化設備の構築や作業効率の向上を図る際にも重要である。
マスキング技術を利用する他の利点として、細胞培養モジュール中に試料溶液を受容する複数の仮道管グループからなる独立したコンパートメントを形成し得ることが挙げられる。この特性を利用することにより、隣接するコンパートメントを含み同一の細胞培養モジュール中のコンパートメントを独立培養器あるいは反応容器として一括した培養が可能になる。すなわち1個あるいは少数個の細胞培養モジュールを用いて異なった条件の培養が可能になることである。例えば予め培養した細胞を含む培養試料溶液を本培養モジュール全体に均一になるように供給しておき、コンパートメントごとに予め設定した特定の目的に適合させた作用物質を含む溶液、あるいは濃度の異なる溶液を添加し、温度、時間などの環境条件を同一に保ちながら培養することが可能になる。したがって作業効率の大幅な向上が期待できる。
上記のような各種の培養モジュールの下に本格的な増殖や最終培養物の回収を必要とする場合にはさらに培養溶液受容器を設置し全体を収納する枠組みの中に設置することにより細胞培養ユニットを構築することが出来る。
細胞培養モジュールの表面の改質法としては高分子薄膜層を炭化仮道管薄板の上面あるいは下面に足場材として適性の高い材料や物質を積層する方法がある。これらの材料としては有機多孔質膜、不織布、織布、多孔質膜、炭素繊維など、公知の水浸透性の多孔質膜がある。多孔質膜としては微小孔を有する膜だけでなく、サブミクロンの薄膜でも良い。また炭化仮道管薄板の下面(底面)に多孔質膜あるいはサブミクロンの薄膜を密着させても良い。炭化仮道管薄板の仮道管を含む表面を高分子薄膜で覆うこともできる。改質に利用可能な高分子材料としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリビニルアコール、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリマー、ポリシロキサン、熱硬化性ポリマー、生体ポリマーとしてはセルロース誘導体などがあげられる。またこれらを適宜組み合わせたり、改質剤を加えたりした高分子材料を用いることもできる。
また、ゼラチン、コラーゲン、寒天のような低温処理によりゲル化する材料であれば溶液状態に保った温度で炭化仮道管の内部に導入し、その後乾燥させるか、あるいはゲル化温度以下に保つことにより安定な被膜を形成することが出来る。この手法を用いれば、密閉した培養系内にセットした後に、他の培養液や必要成分の導入に先立って、仮道管内にゲル化材を導入後に溶出が起こりにくい状態保ち、その後に試料溶液を導入することが出来る。また、必要に応じて第2の表面改質層を重層させる手法により、細胞培養の要求仕様に合わせた多様な表面改質が可能になる。
細胞培養液は薄板の下面から受容部材を収納する受容器中に受容し、予め設定された、あるいは適切な条件で細胞を培養する。受容器としてはガラス板やプラスチック板の上に寒天やゼラチンなどの親水性ゲル状物からなる適切な厚さの層を塗布したものが利用できる。またゲル状物の層を収納したシャーレのような水不浸透性の容器も受容器として使用できる。
薄板を通して流下する液量は目的に応じて幅広く選べるので、受容器は細胞培養用のマイクロウェルプレートやマイクロチューブなどでも良く、これらの受容器は薄板の下端から取り外し可能な状態でセットされていても良い。場合によっては薄板の下端から試料溶液を滴下させても良い。
図10は細胞培養モジュールの下面(底面)に設けられた細胞培養液等を受容する水溶液透過性の受容部材および培養液を貯留し細胞培養モジュールに供給する培養液貯留・供給部材(受け皿)から構成される第2の細胞培養ユニットの構成を示した説明図である。符号1〜4は図4と同じであり、細胞培養ユニットの基本構成である。符号5は細胞培養液受容部材、符号7は細胞培養液貯留・供給部材(受け皿)を示す。受け皿は細胞培養液受容部材や受容器と予め重ねて設置しておいても良いし、一連の培養操作を終了させた後にセットしても良い。
図10において細胞培養器液受容部材(符号5)を省いて寒天などのゲル状物を入れた受け皿を設置しても良いし、不織布やガラス繊維中に細胞培養液に浸した受け皿を設置しておくことでも良い。また、受け皿中に炭化仮道管薄板の一部を浸漬した状態で設置しても良い。また細胞培養液が受け皿に流下した後の拡散を防ぐ目的で受け皿に収納されている寒天層などのゲル状あるいは溶液中に横への拡散を防ぐのに十分な厚さのマスキング機能部材を設置しても良い。これらの機能性部材は目的によって、特定領域にのみ部分的に適用したり、また適宜取り外したり、再度設置したりできるようにしておいくこともできる。
疎水性の炭化仮道管等薄板を張り付けても鉛直に流下させ、水溶液を受容する手段を設けておけば貯留できる。しかし炭化仮道管等の下端で横方向の拡散が生じ個別の管を通った水溶液の混合が起こりやすい。このような底面での横方向への拡散を防ぐ手段を講じておくことが重要である。かかる手段としては、流下した液量を受容するのに十分な大きさの親水性表面を有する横への拡散が起きにくい液体拡散防止受容層を設けてもがあれば良い。このような水溶液拡散防止受容層としては、寒天やゼラチンなどの吸水性のゲル状物や、横方向への拡散を抑制した粒状物や繊維状構造物が挙げられる。
通常細胞等の培養結果の判定には個々の細胞状態を顕微鏡下での目視あるいは計測機器による。その際のハンドリングなど実用的な観点から、前記の液体受容器全体層がさらに水溶液不浸透性の容器に収納されていることが好ましい。使用する炭化仮道管等薄板に見合う大きさおよび形状の透明なシャーレ中に適度のゲル強度を有する液体受容部材を収納した液体受容用容器を炭化仮道管等薄板の下端に密着させた状態で設ければよい。実際には炭化仮道管等薄板の下端から流出する水溶液の液量はごく僅かなので、スライドグラスのようなガラスやプラスチック製の平板の上に水性ゲルからなる受容層を設けたものでも良い。
天然物である仮道管等のような木質繊維の細孔の形状や配列は一定ではない。従って前述のような顕微鏡下での結果の判定を必要とする際には予め個々の仮道管等の位置を特定する手段を講じておくことが重要である。その手段としては炭化木質繊維薄板に場所を判別するための目印をつける、あるいは電子的手段を通して炭化木質繊維薄板の画像や開口部のパターンを記憶素子に取り込んでおき、細胞培養後に受容層上のパターンと比較判定を可能にする方法などがある。簡便な方法としては炭化木質繊維薄板の周縁部や適切な部位に位置合わせをするための切り込みや目印を設けておく方法がある。かかる目印は適切なインクを用いた、転写やインクジェット方式などの、印刷技術を利用して実施することでもよい。
本細胞培養モジュールを重ね合わせることにより、溶液Aをモジュールの上面から、溶液Bを下面から供給し両者の中間部で反応や細胞培養が進行するようなモジュールを構成することもできる。
次に再生医療の基盤である細胞増殖あるいは組織培養に使用される容器を収納する培養器(以後培養ユニットと称する)について説明する。近年急速な進歩を続けている再生医療などの分野において出発点となる細胞培養や組織培養に当たっては、2次元培養に加えて3次元培養を効率的に遂行するための要件を満たす表面特性や表面構造を有する細胞培養器の開発が大きな課題であり、課題解決を目指した細胞培養器が多数提案されている。細胞培養に際しては細胞や組織と材料表面接着性や相互作用の最適化、特に細胞が接着する面の接触角の制御が重要であり、例えばシート状表面に特定の機能を有する組織を培養する場合の足場材の接触角の最適領域は、水に対して60度〜70度であることが知られている(非特許文献2)。
細胞や生体組織などを効率よく培養する際には、培養器の表面特性の制御が極めて重要である。中でも細胞や組織と直接接触する足場材の表面特性が重要である。一般に細胞表面は通常マイナスに荷電しているので培養器の表面がアニオニックな場合には細胞の接着は起こりにくく、カチオニックあるいは疎水性であれば細胞の接着がし易くなる。接着程度は対象とする細胞や組織の表面特性あるいは目的によって異なる。
驚いたことにエゾ松材を700℃で炭化して得た炭化仮道管薄板を20%硝酸水溶液で浸水化処理した表面の水に対する接触角は約60度であった。従って本発明材料は表面培養に応用する場合には特別な表面処理や足場材と組み合わせなくても利用できる。
また表面培養においては細胞の増殖が基板表面によって2次元的になるという制約があった。分散溶液状態で培養する浮遊培養においては培養器表面への過度の接着は細胞の増殖段階において細胞相互が凝集し凝集塊を生成したりするので、これを防ぐ手段を講じておくことが求められる。従って細胞や組織の培養においては培養器の表面性を目的に合わせて調整、制御できることが重要な課題である。例えば特許文献5には平滑な表面上では細胞塊が出来てしまって特定な組織構造への成育が抑えられるので3次元培養には表面に微細なピラー(凸状物)を設けて細胞凝集塊の巨大化の阻止に有効なこと、また、ピラーのサイズは細胞や細胞塊の大きさから計算によって推定し1μm〜100μmが適当であるとの記載がある。いっぽう本発明においては樹木の成長方向に対してほぼ直角に切断するので、上下の切断表面には必然的に凹凸が形成される。凹凸の形状や程度は切断方法にもよるが、最悪でもおよそ80μmであった。
図11は細胞培養モジュールと付加的な機能部材全体を収納し、かつ継続的な培養工程において適宜空気や培養液の供給を可能にした培養ユニットの構造を示したものである。符号1〜5は図5と同じであり培養モジュールおよび細胞培養液受容部材を示す。符号7は細胞培養液貯留・供給部材(受け皿)、符号8〜10は細胞培養モジュールを収納する半密閉容器(筐体)であり、符号8は筐体、符号9は空気および細胞培養液およびまたは目的によって調製される活性成分などを含む溶液の供給口、10は排気口である。
図には示していないが細胞の種類によっては足場材を形成する炭化仮道管薄板の上面を適切な状態になる様に酸やアルカリや塩などで処理するかあるいは、低分子化合物や高分子薄膜、多孔質膜、繊維状物、不織布を積層することが出来る。全体は空気や養分溶液、必要に応じて添加する作用物質溶液の供給・排出口(9、10)を除いて気密性の容器である。細胞培養液(試料溶液)は供給口9、あるいは気密性を解除した状態で最上面に供給される。以後は設計された培養条件、手順に従って細胞を増殖させる。
外部から内部の気体を制御可能な機構を備えていることにより効率的な供給が可能になる。そのような制御手段の一例としては気体の放出量や放出速度が制御可能な注射針あるいは注射器の外筒を本発明の培養モジュールの壁を通して装着しておく方法がある。あるいは注射器様のピストン機構を容器内に設置しておきモジュールの外部から電磁機構などによって制御する方法によることもできる。
上記のゲル状物中に細胞等の培養に必要な塩、養分、基質、ATPなどのエネルギー源、pH調節用化合物を含ませておき、加熱などにより適宜放出させることにより、細胞等の培養をより効率的に進行させたり停止させたりすることも可能になる。
細胞等の培養モジュールの外側を密閉ケースで覆った細胞等の培養ユニットを用いることにより、以下のことが可能になる。すなわち底面下から軽く吸引すればスムースに流下させることが出来る。また炭化仮道管等薄板を水溶液(例:細胞培養液)が入った容器と共に、吸引孔がある樹脂ケースの中に周囲をシールした炭化仮道管等の薄板を設置し、上から吸引することにより仮道管等内に水溶液を導入できる。各種の細工を施した上で、底面/側面に設けた液体注入孔から異なった組成の溶液を、間歇的に導入することも可能である。
前記のようにして複数の炭化仮道管薄板を重ね合わせ、さらに複数の異なった組成の試料溶液を何回か繰り返し供給した後でも、適度の圧で吸引すれば培養生成物を含む水溶液を流下させ、培養液貯留容器中に導入することが出来る。
炭化薄板の底面を水不浸透性の膜などで覆った状態にし、周囲からの蒸発を抑える手段を講じておき、細胞等の培養ユニット中で通常細胞培養に要する時間(例えば1週間程度)は貯留を継続的に保持可能にしておく必要がある。さらに状況や目的に応じて水、培養液あるいはその他の水溶液を補充すればさらに長期間(数日程度)培養反応系を維持できる。
前述したように本発明方法によって作製された炭化薄板においては親水化処理をしないでも、細胞培養モジュールに軽い減圧あるいは加圧を施すことによって水溶液を自由に仮道管や導管内に導入、移送できる。従って培養液や空気の導入に際する表面処理に当たっても厳密な仕様を適用しなくても良い場合もある。
その方法として3次元的な増殖を可能とする浮遊培養が採用されるのが通例である。しかし浮遊培養は培養液中の細胞濃度が低いので相対的に大きな容器中で増殖させることが前提となる。また遺伝子操作によって作成したい場合や、特異性の高い組織から採取したような希少な原細胞を増殖させるような初期段階の培養には適さない。
このためできるだけ浮遊培養に近い状態で培養することを目指した細胞培養器が提案されている。
凹凸の程度すなわち平滑度は切断に利用する切断機の精度によってさらに凹凸を低減することも可能である。レーザー切断によれば殆ど凹凸のない切断面が得られる。半導体用の高精度切断機を用いれば数μ以内の凹凸に抑えることができる。
本発明は木質材料を原料としているので、カット面の凹凸の高さ、形状は一定ではなく数μm〜数十μmの分布を有している。したがって多様な大きさや形状を有する細胞に対して幅広く柔軟に対応できる本発明によって形成されるような不規則な形状や高低差がある凹凸を有する培養器表面の方がむしろ有利な場合がある。
また、本発明による切断面において、仮道管あるいは導管の入り口付近では繊維組織の一部が入り込んでいる場合があるが、これが問題となる場合は細胞培養モジュールの表面を適切な特性を有するプラスチックなどの薄膜で覆うことで対応可能である。またゲル状物や吸水性あるいは水に親和性の表面を持った紙、不織布、布あるいは多孔質膜を用いることもできる。
上記の機能性化合物は足場材物質の特性に合わせて選ばれる。例えば足場材物質がコラーゲンやゼラチンなどのタンパク質あるいは特定のアミノ酸の組み合わせからなる化合物構造からなるタンパク質分解酵素、ポリ乳酸や分子中に被加水分解結合を有する物質である場合には対応する加水分解酵素あるいは分解促進機能を有する化合物である。足場材物質が特定の温度に感応する場合は温度条件の設定が有効な足場材物質層から培養によって形成された細胞の集合体/組織と分離するに当たって適切な調整策が必要である。
断面が30mm×30mm、長さ150mmの杉角材を、セラミック円筒容器に入れ空気が入らないようにセラミックの蓋をし、クラックが発生しないように温度調節しながら700℃まで昇温し、700℃で30分加熱炭化した。得られた炭化物を仮道管とほぼ直角に市販のダイアモンドバンドソーマシンを用い、厚さ1.4mmにスライスし、さらに中央部が3mm角で0.4mm突出して図7のような形状の炭化薄板を得た。バンドソーによる切断の際に切粉が薄板に付着するので、エアスプレーにより切粉を除去した。これを40℃の20重量%の硝酸水溶液に4時間浸漬した後2時間水洗し、吸水性スポンジの上に乗せ、上方からシャワー水をかけた。シャワーの場所を移動しながら薄板に均一にシャワー水が当たるようにした。1分間シャワー水洗した後、薄板を裏返して同様にシャワー水洗した。このシャワー水洗により薄板の仮道管中に入り込んだ切粉はほぼ完全に除去された。シャワー水洗後の薄板を立て掛け乾燥して培養モジュールが得られた。
ガラス板の上に1重量%の寒天水溶液を流して寒天膜を形成した。更に市販の乳酸菌を主成分とするヨーグルトを水に分散し、20重量%のヨーグルト分散液を用意した。上記炭化薄板を、突出部を下に向けて寒天膜の上に乗せ、突出部の反対側からヨーグルト分散液の上澄み部分をスポイトで取り、薄板に滴下した。滴下した上澄み液は、初め半球状であったが10秒後に薄板に吸い込まれた。薄板を寒天膜から剥がし顕微鏡で観察したら寒天膜の、突出部が接していた部分の表面に無数の乳酸菌が確認された。その上から牛乳を滴下し牛乳が横に広がらない程度に十分に厚く供給し、14℃〜24℃(昼間は22〜24℃、夜間は14〜16℃)で20時間放置したところ、供給した牛乳が厚さ1mm以上のヨーグルトに成長していた。このように薄板の突出部を通過した乳酸菌が寒天膜上で培養された。その上に更に牛乳を滴下したところ20時間後にヨーグルトに成長した。
突出部がない0.5mm厚の炭化桂材の薄板を用いて上記と同様にして寒天膜上にヨーグルトを培養することができた。
実施例1と同様にして作製した縦10mm、横10mm、厚さ1.8mmの炭化仮道管薄板(突出部なし)を縦30mm、横30mmの分析用濾紙(東洋ろ紙No.3)の上に載置しその4辺をプラスチックの接着テープで軽く固定して細胞培養モジュールの基本となる構造物を作製した。これを厚さ0.5mmの透明なプラスチック製平板上に置き、その4辺を囲むように金属製の重しを載せて圧着固定した。次に分析用注射筒(容量1mL)の先端に細いプラスチックチューブを取り付けた定量点着用具を用いて最上層に市販のヨーグルトを0.4mL/20mLに希釈した分散水溶液の約50μLを滴下した。滴下液は仮道管薄板の上面で半球滴を形成しているがおよそ5秒後から一挙に鉛直に吸い込まれた。裏面から観察すると炭化仮道管薄板上に形成された半球の底面の形状にほぼ完全に対応しておりそれ以上には広がらなかった。
(比較例1)
実施例2と同様の実験条件において、本発明の炭化仮道管薄板(1.8mm)の代わりに、同じ炭化条件で作製した厚さ10mmの炭化仮道管の柱状物を用いて滴下実験を行った。液滴の滴下に伴って炭化仮道管上に形成された半球状の液滴は30秒経っても流下せずに上面に残っていた。シリコーン製の吸引パッドを注射筒に繋ぎ、下面から吸引あるいは上面から加圧すると流下浸透したが、受容部材上に形成された液滴のパターンの形状、特に周縁部は滲んでおり明確な輪郭は観測されなかった。
実施例1と同様にして作製した縦20mm、横20mm、厚さ1.8mmの炭化仮道管薄板を、縦22mm、横24mm、深さ1.5mmのポリエチレンで被覆されているアルミ箔製の受容部材の中に粒子径が10μm〜50μmの吸水用に市販されているアクリル酸重合体の粉末を厚さおよそ0.5mmになるように敷き詰めた。この上に縦20mm、横20mmの炭化仮道管薄板を載置し、上から10μLの液滴を供給した。液滴は炭化仮道管薄板の上面で半球状の液滴を形成していたがおよそ10秒後に下部に吸い込まれた。同じ炭化管薄板の上に同様の滴下操作を繰り返し、合計12滴となるまで載置した。およそ1分後には全ての液滴が滴下面から炭化仮道管薄板中に吸い込まれた。滴下面に残された浸透マークの大きさはおよそ直径2mmであり各液滴の間隔はおよそ2mmであった。全ての液滴の流下が終了しておよそ1分後に、炭化仮道管薄板をはがし、アクリル重合体粉末からなる受容層を観察した。膨潤して盛り上がったアクリル酸重合体よりなる直径2.5mm〜3mmの独立した12個の浸透マークが明確に確認できた。この実験結果から、本発明方法の受容層として溶媒吸収性の微粒子を使用できること、また、液体は炭化仮道管薄板中をほぼ真直ぐに流下すること、および各液滴は相互に緩衝することなく受容部材に到達することが確認できた。また炭化仮道管は液滴の供給に伴ってそれぞれ独立した筒状の流路が形成され互いに干渉することはないことが確認された。この仮道管の独立性は炭化仮道管薄板の表面を硝酸などにより親水化した場合でも維持されることを確認できた。
実施例3と同じ条件において、アクリル酸重合体に替えて、市販の食用ゼラチン粉末を用いて上記と同様の滴下実験を行った。滴下量は約10μL、液滴の数は20滴に増やした。全ての滴下操作を終了してからおよそ1分後に化仮道管薄板をはがし、受容部材中のゼラチン粉末層を観察した。独立した20個の凹んだ上面を有するほぼ円形の液滴浸透マークが明確に観察された。各浸透マークの大きさはおよそ1mmであった。そのままの状態で室温(16℃)に1時間放置後再度ゼラチン層の浸透マークを観察した。浸透マークが一層クリアに形成されており大きさは滴下直後より小さくなっていた。水の吸収におり、乾燥状態では存在していた粒子間の空間が排除されたためと思われる。この結果から使用する溶液系や用途に受容部材層の特性を適合させることにより、多様な反応モジュールや培養モジュールを構築できることが確認できた。
実施例3と同様の実験条件において滴下液量を0.05、0.10,0.2mlの3レベルについて各2滴ずつ1枚の炭化仮道管薄板に滴下して、裏面への浸透状態と浸透マークを観察した。各点とも滴下後ほぼ5秒で浸透し、滴下面上の流下マークと裏面の浸透マークの形状はほぼ同じであり、互いに干渉し合うことはなかった。これらの結果から本発明の溶液反応あるいは細胞培養モジュールは、異なる液量や異なる組成の複数の試料溶液を互いに混和あるいは干渉させることなく、独立して設置した受容部材、容器中に導入できることが確かめられた。
またいずれの場合も炭化仮道管薄板の上面から軽く加圧するか、下から軽く吸引すると薄板の上の液滴は真下の仮道管内に流入するだけでなく仮道管の他端から流出する。しかし加圧や吸引の有無にかかわらず流入過程および流入後にも隣接する液滴の真下以外の仮道管への流出や漏出は全く見られなかった。また炭化仮道管薄板の下に受容容器としてマイクロウェルや試験管などをセットしておき、上から水溶液を繰り返し滴下すれば、受容容器中には滴下量に比例した液量が貯留されることを確認した。
縦2cm、横2cm、厚さ1.8mmの炭化仮道管薄板の上面に外径1.5mm、内径0.8mmの事務用穴あき接着性部材を接着した。また炭化仮道管薄板の底面にはジャガイモでんぷんと大豆レシチンから製造された薬用オブラート(アノン、CABABA)の周縁部を少量の霧を吹きつけて、さらにその下に通気性薄膜を積層した接着性膜(ニチバン)を張り付けて細胞培養モジュールを作製した。さらにその下に厚さ0.15mmの透明フィルムを載置した厚さ0.5mmのプラスチック性の平板をセットした。分析用注射筒(容量1mL)の先端に細いプラスチックチューブを取り付けた定量点着用具を用いて最上層にある穴あきマスクの孔の中に粉末状でんぷんを分散した液を滴下した。マスク材の開口部の液滴面が半球状に盛り上がった状態が約10秒間続き、その後かなり速やかに下部へ浸透した。所定量(100μL)の滴下を終えた後底面の裏面から浸透の様子を観察した。マスクの開口に対応した大きさ、形状の浸透円が形成されていることが観察された。
縦横2cm、厚さ1.8mmの炭化仮道管薄板の下面に実施例6と同様の受容部材構造を設けて作製した細胞培養モジュールの上面に、開口径が0.6mmの穿孔を有する縦横0.8cmに切り出した厚さ0.2mmのプラスチック製の接着テープを用いて各コーナーを合わせた状態で4枚並べて載置・接着した。4枚のそれぞれの開口部にカタクリ粉を分散した試料溶液100μLを順次滴下し、およそ10秒後に裏面から受容面を観察した。受容部材である気体透過性水不浸透性の層の上には4つの液滴に対応する形状とパターンが観察された。複数の開口を有するマスキングの独立性を確認できた。
上記と同様の実験において、厚さ0.5mmの粘着性テープに穴あけ用ポンチを用いて開口径が0.1.0.3、0.6、0.8、1.0cmのマスキング部材を張り付け、実施例6に使用したと同様の細胞培養モジュールを作製した。カタクリ粉分散液を開口面積に応じて、50、150、300、400、500μLを滴下し、約10秒後に裏面から受容部中に形成された円の面積を測定した。受容部材に到達した分散液の面積はマスキング部材の開口面積とほぼ比例することが確認された。これによりマスクの開口面積と受容部材に受容された液滴の面積が一定の関係に保たれていることが確認できた。
市販の血漿ろ過具を改造し内径15mm、深さ15mmの外円筒の中央に内径6mm、深さ6mmの内円筒(細胞受容器)がありさらに、外円筒と内円筒の間に径1mm、高さ9mmの空気吸引孔が設けられ、外円筒の底面に内径4mm、外径6mm、長さ70mmの吸気用ノズルを有する透明なろ過具を作製した。これとは別に ろ過具の上に厚さが1mmで片面が接着性のゴム板を外径30mmの円板に加工しさらに中央に直径9mmの孔を設けた固定用孔あきパッドを2枚作製し、その間に直径15mmに切り出した厚さ1.8mmの炭化仮道管薄板を挟んで、ろ過具の上端にセットした。さらにろ過具の吸気用ノズルの先端をシリコーンゴム製のチューブ差し込みその他端を容量20mLの目盛付き注射器に繋ぎ、全体を試験管立てにセットした。
在宅用血糖測定器の穿孔採血針(ニプロフリースタイルライトショット25G)および専用穿刺具(ニプロランセット25G)を用いて指先を穿孔し、直後の全血(ヘマトクリット値42%)約20μLを目盛付きのマイクロシリンジにて採取し、直後に4%のクエン酸ソーダ抗凝固液にて20倍に希釈し、ヘマトクリット値約2%の全血希釈液を得た。目盛付きマイクロシリンジを用いて全血希釈液0.2mLをろ過具の上にセットされた最上部に位置する孔あきゴムパッドの孔を通して炭化仮道管薄板の中央部に滴下し、希釈全血で孔を満たし、最上部の孔あきゴムパッドを軽く抑えながらろ過具の下端に繋がれた吸引用注射器によってゆっくり吸引した。およそ15秒後から希釈全血の液面が下がりはじめ、およそ60秒後には炭化仮道管薄板の下端からろ過具の中央に設けられた細胞受容器に滴下し始めた。3分後には細胞受容器の2/3程度が満たされた。5分程度静置してから観察したところ血球成分は全て細胞受容器の底面に沈降し、一方、上清は殆ど無色透明であり目視的には溶血していなかった。この実験結果から本発明による炭化仮道管薄板は赤血球細胞を溶血(破壊)せずに通過して受容器に到達することが確認された。
下記の手順により細胞培養ユニットを構築した。炭化仮道管薄板を直径10mm円板状に打ち抜き、その下に円形状打ち抜いた硝酸セルロースからなる多孔質膜(フジミクロフィルター)をセットし周縁部を穴あきの接着テープで張り付けて細胞培養モジュールを作製した。これとは別に樹脂成型した小型円形ロート(開口内径20mm、外形23mm深さ6mm、吸引用筒部外形6mm、内径2mm)多孔質膜をセットし周縁部の隙間をシリコーン樹脂でシールした。また樹脂製ロート下部の吸引用パイプに長さ200mmのシリコーンゴムチューブを介して容量20mLの注射筒に接続し細胞培養用容器を作製した。さらに前記細胞培養容器を天井部にシリコーンチューブを接続可能な開口がある上部部材(蓋)、および底部に前記細胞培養容器の吸引用チューブを接続可能な開口を有する内径4cm、外径4.2cm、高さ6cmの円筒状の下部部材から構成される透明な樹脂製の細胞培養器収納ケースを作製した。下部開口と吸引部と間をシリコーンシール材でシールした。次に前記細胞培養器収納容器を収納ケース中にセットし、周縁部をシリコーンシール材でシールし細胞培養ユニットを完成させた。
本発明による細胞培養モジュールおよび細胞培養ユニットを使用することにより、産業上および研究・技術開発上きわめて有用な再生医療をはじめとするバイオエンジニアリングの開発速度を加速できる。
1)微量の細胞培養液を出発試料とした細胞培養が可能になるので、微量検体による評価・分析などの効率が上がり、医薬品の開発研究等が効率化する。
2)多種類の培養細胞を同じ培養容器内において同一条件下で培養できるので医薬品の開発等を含めて研究や生産効率が向上する。
3)同一の培養細胞を異なった条件下で培養できるので研究や生産効率が向上する。
4)表面培養と浮遊培養を同じ培養器内で実施できるので研究や生産効率が向上する。
5)細胞培養モジュールは製造コストが低く、多様な仕様の培養系に使用できるので細胞培養のトータルコストの大幅な低減が可能になる。
1 培養モジュール上面
2 仮道管貫通孔
3 仮道管壁
4 培養モジュール下面
5 受容部材
6 マスク部材
7 培養液受容器
8 筐体
9 供給口
10 排気口
60 第1モジュール
61 凸部
62 切除部
70 第2モジュール(受容部材)

Claims (6)

  1. 微細な貫通した開口を1個以上有し、樹木の幹方向に対して75〜90度の角度で0.1〜1.9mmの厚さであって、400℃以上の温度で炭化して得られる仮道管、道管或いは木部繊維を有する炭化薄板が、試料溶液あるいは細胞を含む培養液を受容器へ導入するための機能を有することを特徴とする溶液反応或いは細胞培養のためのモジュール。
  2. 炭化仮道管薄板の外部表面と内部表面の少なくともいずれかに機能性物質が導入されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
  3. 炭化薄板の少なくとも一部が厚み方向に突出していることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のモジュール。
  4. 炭化薄板にマスキング部材が設置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のモジュール。
  5. 請求項1〜4のいずれかにに記載されたモジュールを収納し気体および溶液を供給・排出する機構が設けられていることを特徴とする溶液反応細胞培養ユニット。
  6. 請求項1〜請求項4に記載のモジュール、請求項5に記載のユニット、のいずれかを用いることを特徴とする溶液反応或いは細胞培養方法。
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