ところで、磁界発生コイルはその磁界が磁界受信コイル側へ向くように配置するのであるが、磁界発生コイルで発生する磁界は当該コイルを挟んで両方へそれぞれ向かっているので、磁界受信コイルと反対側へ向かう磁界も発生することになる。磁界受信コイルと反対側へ向かう磁界は、金属検出には利用されない磁界であり、むしろ問題となる場合があった。
すなわち、例えば複数台のゲート型の金属検出器を並べて使用する場合を想定すると、第1の金属検出器の磁界発生コイルで発生した磁界が、当該第1の金属検出器の磁界受信コイル側と、第2の金属検出器側とにそれぞれ向かうことになる。第1の金属検出器から第2の金属検出器へ向かう磁界は、当該第2の金属検出器の磁界に影響を与えてしまい、その結果、第2の金属検出器の検出精度が低下するおそれがある。また、金属検出器を1台で使用する場合であっても、金属検出器から漏れる磁界は、検出エリア外である金属検出器の付近に漏れた磁界が変化した際に検出エリア内の被検査体が金属を有していると誤検知するおそれや、周囲の電気機器の誤作動を招くおそれがあるので、できるだけ少なくしたいという要求がある。
そこで、磁気シールド材によって磁界を遮蔽することが考えられるが、磁気シールド材は高価であり、特にゲート型の金属検出器のように検出範囲を広くしている場合にはコストの高騰を招く結果となる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属検出器から漏れる磁界を低コストで抑制できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、第1の開示では、被検査体が通過する検出エリアを挟むように配置される磁界発生コイルユニット及び磁界受信コイルユニットと、前記磁界発生コイルユニットに接続され、当該磁界発生コイルユニットに電圧を印加する電圧印加回路と、前記検出エリアを金属物が通過したときに前記磁界受信コイルユニットから出力される検出信号に基づいて金属物の有無を判定する金属検出部とを備えた電磁誘導方式の金属検出器において、前記磁界発生コイルユニットは、前記被検査体の通過方向と略平行に配置される磁界発生側平行コイルと、当該磁界発生側平行コイルの前記通過方向の側方に、当該磁界発生側平行コイルに対して垂直に配置される磁界発生側垂直コイルとを備え、前記磁界発生側垂直コイルは、前記磁界発生側平行コイルに対して前記検出エリアと反対側に偏位していることを特徴とする。
この構成によれば、磁界発生コイルユニットに電圧印加回路から電圧が印加されると、磁界発生側平行コイルは、検出エリア側へ向かう磁界を発生するとともに、その反対側に向かう磁界も発生する。このとき、磁界発生側垂直コイルが磁界発生側平行コイルに対して垂直でかつ検出エリアと反対側に偏位しており、複数のコイルにより複数の磁界が発生している場合には各磁界のベクトルの合成により磁界の向きが決まるため、磁界発生側平行コイルから検出エリアと反対側へ向かう磁界が、磁界発生側垂直コイルから発生する磁界によって向きが変わり、金属検出器から漏れる磁界を抑制できる。これにより、磁気シールド材に比べて安価に形成できる垂直コイルによって金属検出器から漏れる磁界が広範囲で抑制されるため、金属の誤検知や周囲の電気機器の誤作動を防止できる。また、検出エリア側の磁界分布が集中するため、金属検出感度を上げることができる。
尚、金属検出器から漏れる磁界が垂直コイルによって広範囲で抑制されているので、磁気シールド材を全く使用せずに金属検出器を構成してもよいし、磁気シールド材を金属検出器の一部にのみ局所的に使用してもよく、いずれの場合もコストを低減できる。
そして、金属物を有する被検査体が通過する検出エリアを通過すると、磁界発生コイルユニットと磁界受信コイルユニットとの間の磁場が金属物によって乱れるので、磁界受信コイルユニットから所定の閾値以上の検出信号が出力される。磁界受信コイルユニットから出力された検出信号が所定の閾値以上であるため、金属検出部は金属物が存在すると判定し、これにより、金属を検出できる。
また、磁界発生側平行コイルと、磁界発生側垂直コイルにおける検出エリア側の端部とは同一平面上に配置することができる。これにより、金属検出器から漏れる磁界の抑制効果がより一層高まる。
また、磁界発生コイルユニットと、磁界受信コイルユニットとは、互いに水平方向に離して配置することができ、磁界発生コイルユニットの磁界発生側平行コイルの上端部と磁界発生側垂直コイルの上端部とは同じ高さにすることができ、また、磁界発生側平行コイルの下端部と磁界発生側垂直コイルの下端部とは同じ高さにすることができる。
第2の開示では、前記磁界発生側垂直コイルは、前記磁界発生側平行コイルの前記通過方向の両側方にそれぞれ配置されている。
この構成によれば、金属検出器の検出エリアと反対側へ向かう磁界をより一層抑制することができる。
第3の開示では、前記磁界発生側平行コイルは、前記通過方向に並ぶように配置される第1磁界発生側平行コイルと第2磁界発生側平行コイルとを含み、前記磁界発生側垂直コイルは、前記第1磁界発生側平行コイルにおける前記第2磁界発生側平行コイルと反対側に配置される第1磁界発生側垂直コイルと、前記第1磁界発生側平行コイルと前記第2磁界発生側平行コイルとの間に配置される第2磁界発生側垂直コイルと、前記第2磁界発生側平行コイルにおける前記第1磁界発生側平行コイルと反対側に配置される第3磁界発生側垂直コイルとを含んでいる。
この構成によれば、第1磁界発生側平行コイルと第2磁界発生側平行コイルとが被検査体の通過方向に並んでいるので、検出エリアを被検査体の通過方向に広く設定することができる。この場合に、第1磁界発生側垂直コイル、第2磁界発生側垂直コイル及び第3磁界発生側垂直コイルを配置したことにより、第1磁界発生側平行コイル及び第2磁界発生側平行コイルから検出エリアと反対側へ向かう磁界を抑制することができる。つまり、例えば2つの磁界発生側平行コイルを配置した場合に、4つの磁界発生側垂直コイルを配置することなく、3つの磁界発生側垂直コイルによって金属検出器から漏れる磁界を抑制することができるので、金属検出器の低コスト化及びコンパクト化を図ることができる。
第4の開示では、前記磁界受信コイルユニットは、前記被検査体の通過方向と略平行に配置される磁界受信側平行コイルと、当該磁界受信側平行コイルの前記通過方向の側方に、当該磁界受信側平行コイルに対して垂直に配置される磁界受信側垂直コイルとを備え、前記磁界受信側垂直コイルは、前記磁界受信側平行コイルに対して前記検出エリアと反対側に偏位している。
この構成によれば、磁界受信コイルユニットと磁界発生コイルユニットとを同じ構成にすることができるので、金属検出器の低コスト化を図ることができる。
第5の開示では、前記磁界発生側平行コイルと前記磁界受信側平行コイルとが前記検出エリアを挟んで互いに対向するように配置される。
この構成によれば、感度のばらつきが少なくなり、検出エリアを通過する金属物を磁界発生側平行コイルと磁界受信側平行コイルとによって確実に検出することができる。
第6の開示では、第1及び第2の金属検出器を備えた金属検出装置において、前記第1の金属検出器と前記第2の金属検出器とが前記通過方向と直交する水平方向に隣接配置されている。
この構成によれば、第1の金属検出器と第2の金属検出器とを水平方向に隣接配置することにより、各金属検出器で金属物の検出が可能になり、単位時間当たりの検出処理数を増やすことができる。この場合に、各金属検出器から漏れる磁界が抑制されているので、第1の金属検出器の磁界が第2の金属検出器の検出に影響を及ぼすことはなく、また、第2の金属検出器の磁界が第1の金属検出器の検出に影響を及ぼすことはなく、各金属検出器の検出精度を高めることができる。尚、金属検出器は、3つ以上を水平方向に並べて設置することもできる。
第7の開示では、前記第1の金属検出器は、上下方向に延びるとともに、前記磁界発生コイルユニットを収容する磁界発生側板部と、当該磁界発生側板部と対向するように配置されて上下方向に延びるとともに、前記磁界受信コイルユニットを収容する磁界受信側板部とを備え、前記第2の金属検出器は、上下方向に延びるとともに、前記磁界発生コイルユニットを収容する磁界発生側板部と、当該磁界発生側板部と対向するように配置されて上下方向に延びるとともに、前記磁界受信コイルユニットを収容する磁界受信側板部とを備え、前記第1の金属検出器の前記磁界発生側板部と、前記第2の金属検出器の前記磁界発生側板部とが前記通過方向と直交する水平方向に隣接配置され、または、前記第1の金属検出器の前記磁界受信側板部と、前記第2の金属検出器の前記磁界受信側板部とが前記通過方向と直交する水平方向に隣接配置されている。
以上説明したように、本開示によれば、被検査体の通過方向と略平行に配置される磁界発生側平行コイルの側方に磁界発生側垂直コイルを配置し、磁界発生側垂直コイルを、磁界発生側平行コイルに対して検出エリアと反対側に偏位させたので、金属検出器から漏れる磁界を安価に抑制できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る金属検出器1の斜視図である。金属検出器1は、例えばイベント会場、会議場、文化施設、仮設の入出国検査場の入口等に設置することができる装置であり、被検査体としての人が所持している金属物の有無を検出し、金属物を検出した場合には周囲に例えば光や音等で報知するように構成されている。金属物を検出した場合には外部機器(例えばゲート開閉器)等に制御信号を出力して制御することもできる。
金属検出器1は会場等の入口に設置されることが想定されているので、全体形状としては、図1に示すように、一度に1人が通過することが可能な縦長のゲート型をなしている。すなわち、金属検出器1は、電磁誘導方式の金属検出器であり、検出エリアSを挟むように配置される中空構造の磁界発生側板部2及び磁界受信側板部3と、中空構造の上側連結部4とを備えている。尚、上側連結部4は必須な構成要素ではなく、省略してもよい。この場合、磁界発生側板部2及び磁界受信側板部3で金属検出器1を構成することができる。
磁界発生側板部2及び磁界受信側板部3は上下方向に延びる一方、上側連結部4は検出エリアSの上方において水平方向に延びている。検出エリアSは、被検査体としての人が通過する通路の一部であり、この検出エリアS内に金属物があるか否かを金属検出器1によって検出することができるようになっている。人が通過する方向を矢印Aで示す。また、各図においてX方向を人が通過する方向とし、Y方向を人が通過する通路の幅方向とし、Z方向を上下方向としているが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の設置状況を限定するものではない。
図2は、第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cを備えた金属検出装置100の一例を示す平面図である。第1金属検出器1A、第2金属検出器1B及び第3金属検出器1Cは、人の通過方向(矢印Aで示す方向)と直交する水平方向(Y方向)に隣接配置されている。第1金属検出器1Aが図2の左側に配置され、第3金属検出器1Cが図2の右側に配置され、第2金属検出器1Bが第1金属検出器1Aと第3金属検出器1Cとの間に配置されている。第1金属検出器1A、第2金属検出器1B及び第3金属検出器1Cを隣接配置することが可能になるのは、後述するように、各金属検出器1A、1B、1Cからの磁界の漏れを抑制する構造を採用しているためである。尚、第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cの間に隙間が無い状態で、これら第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cを配置することもできるし、第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cの間に隙間がある状態で、これら第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cを配置することもできる。隙間がある場合には、その隙間は狭い方が好ましく、例えば10cm未満や5cm未満に設定することができる。
第1金属検出器1Aは、磁界発生側板部2が左側に配置され、磁界受信側板部3が右側に配置されるように設置される。第2金属検出器1Bは、第1金属検出器1Aとは左右反対になっており、磁界受信側板部3が左側に配置され、磁界発生側板部2が右側に配置されるように設置される。第3金属検出器1Cは、第1金属検出器1Aと同様に、磁界発生側板部2が左側に配置され、磁界受信側板部3が右側に配置されるように設置される。従って、第1金属検出器1Aの磁界受信側板部3と、第2金属検出器1Bの磁界受信側板部3とが人の通過方向と直交する水平方向に隣接配置されている。また、第2金属検出器1Bの磁界発生側板部2と、第3金属検出器1Cの磁界発生側板部2とが人の通過方向と直交する水平方向に隣接配置されている。
本例では、3台の金属検出器1A〜1Cによって金属検出装置100を構成しているが、金属検出装置100は、2台以上の任意の数の金属検出器1によって構成することができる。例えば2台の金属検出器1A、1Bで構成する場合、上述したように、第1の金属検出器1Aの磁界受信側板部3と、第2の金属検出器1Bの磁界受信側板部3とが隣接配置されていてもよいし、図示しないが、第1の金属検出器1Aの磁界発生側板部2と、第2の金属検出器1Bの磁界発生側板部2とが隣接配置されていてもよい。また、金属検出器1は1台のみで使用することもでき、使用時の台数は特に限定されない。
図2に示すように、金属検出装置100とセキュリティゲート装置200とを組み合わせて運用することもできる。すなわち、セキュリティゲート装置200は、金属検出装置100の前方に配設されており、第1〜第4本体部201〜204を備えている。第1本体部201は、第1の金属検出器1Aの磁界発生側板部2の前方に配設されている。第2本体部202は、第1の金属検出器1Aの磁界受信側板部3及び第2の金属検出器1Bの磁界受信側板部3の前方に配設されている。第3本体部203は、第2の金属検出器1Bの磁界発生側板部2及び第3の金属検出器1Cの磁界発生側板部2の前方に配設されている。第4本体部204は、第3の金属検出器1Cの磁界受信側板部3の前方に配設されている。3台の金属検出器1A〜1Cを隣接配置しているので、第1の金属検出器1Aから出た人がそのまま直進して第1本体部201と第2本体部202との間を通行することができ、また、第2の金属検出器1Bから出た人がそのまま直進して第2本体部202と第3本体部203との間を通行することができ、また、第3の金属検出器1Cから出た人がそのまま直進して第3本体部203と第4本体部204との間を通行することができる。これにより、通行がスムーズになり、単位時間当たりの検査処理数を増大させることができる。また、セキュリティゲート装置200の幅と、金属検出装置100の幅とを略一致させることができる。
第1〜第4本体部201〜204には、それぞれ、開閉動作する扉201a、202a、202b、203a、203b、204aが設けられている。扉201a、202aが第1の金属検出器1Aに対応しており、第1の金属検出器1Aにより金属物が検出されると、扉201a、202aが閉じたままになる一方、金属物が検出されなければ、扉201a、202aが開く。また、扉202b、203aが第2の金属検出器1Bに対応しており、第2の金属検出器1Bにより金属物が検出されると、扉202b、203aが閉じたままになる一方、金属物が検出されなければ、扉202b、203aが開く。また、扉203b、204aが第3の金属検出器1Cに対応しており、第3の金属検出器1Cにより金属物が検出されると、扉203b、204aが閉じたままになる一方、金属物が検出されなければ、扉203b、204aが開く。扉201a、202a、202b、203a、203b、204aの開閉構造等は、従来から周知のものである。扉201a、202a、202b、203a、203b、204aの動作トリガとなる信号は、金属検出装置100から出力される。尚、動作トリガとなる信号は、セキュリティゲート装置200での通行許可信号であってもよい。また、被検査体がセキュリティゲート装置200の扉201a、202a、202b、203a、203b、204aを通過した後に、金属検出器1A〜1Cを通過する場合もある。被検査体がセキュリティゲート装置200の扉201a、202a、202b、203a、203b、204aを先に通過する場合は、金属検出器1A〜1Cによる被検査体の検査を省略することができる。つまり、例えば入場時には金属検出器1A〜1Cによるチェックを行い、退場時には金属検出器1A〜1Cによるチェックを省略するといった運用も可能であり、現場に合わせて柔軟に対応可能である。
図3に示すように、第1及び第3の金属検出器1A、1Cは同じである。また、第1及び第2の金属検出器1A、1Bは、左右対称となっている点で異なっているが、構造は同じである。以下、第1の金属検出器1Aの構造について詳細に説明する。
第1の金属検出器1Aは、被検査体が通過する検出エリアSを挟むように配置される磁界発生コイルユニット20及び磁界受信コイルユニット30と、磁界発生コイルユニット20に接続され、当該磁界発生コイルユニット20に電圧を印加する電圧印加回路40(図5に示す)と、検出エリアSを金属物が通過したときに磁界受信コイルユニット30から出力される検出信号に基づいて金属物の有無を判定する金属検出部50(図5に示す)と、警報器60(図5に示す)とを備えている。警報器60は、スピーカ等の音声発生器であってもよいし、表示灯等の光発生器であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。
図4に拡大して示すように、磁界発生コイルユニット20は、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22と、第1磁界発生側垂直コイル23と、第2磁界発生側垂直コイル24と、第3磁界発生側垂直コイル25とを備えており、これらコイル21〜25は全て磁界発生側板部2の内部に収容されている。第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22は、検出エリアSに金属物検出用の磁界を発生させるためのコイルである。一方、第1〜第3磁界発生側垂直コイル23〜25は、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22から検出エリアSと反対側へ漏れる磁界を抑制するためのコイルである。上記各コイル21〜25の形成方法は、従来から周知の導線を巻回する方法である。
第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22は、被検査体の通過方向であるX方向と略平行に配置されている。すなわち、第1磁界発生側平行コイル21は、磁界発生側板部2の内部において被検査体の通過方向の上流側に配置され、コイルの巻き中心を通る巻き中心線C1がY方向に延びている。第1磁界発生側平行コイル21の上端部は磁界発生側板部2の上端部近傍に位置する一方、第1磁界発生側平行コイル21の下端部は磁界発生側板部2の下端部近傍に位置しており、これにより、例えば平均的な成人男性よりも高身長の人の頭部近傍から足までの全域に対して磁界を発生させることが可能になる。
第1磁界発生側平行コイル21の幅方向はX方向である。第1磁界発生側平行コイル21の幅方向の寸法は、第1磁界発生側平行コイル21の上下方向の寸法よりも短く設定されており、第1磁界発生側平行コイル21は上下方向に細長い形状になる。
第2磁界発生側平行コイル22は、第1磁界発生側平行コイル21と同様な形状とされており、磁界発生側板部2の内部において被検査体の通過方向の下流側に配置され、コイルの巻き中心を通る巻き中心線C2がY方向に延びている。これにより、第1磁界発生側平行コイル21と第2磁界発生側平行コイル22は、被検査体の通過方向に並ぶように配置されることになる。また、第1磁界発生側平行コイル21と第2磁界発生側平行コイル22とは、X方向かつ上下方向に延びる同一面D上に位置している。
第1磁界発生側垂直コイル23は、第1磁界発生側平行コイル21におけるX方向の側方に、当該第1磁界発生側平行コイル21に対して垂直に配置されており、磁界発生側板部2の内部において被検査体の通過方向最上流に位置付けられている。したがって、第1磁界発生側垂直コイル23は、第1磁界発生側平行コイル21における第2磁界発生側平行コイル22と反対側に配置されることになる。
第1磁界発生側垂直コイル23を構成するコイルの巻き中心を通る巻き中心線C3はX方向に延びている。第1磁界発生側垂直コイル23は、第1磁界発生側平行コイル21に対して検出エリアSと反対側に偏位している。つまり、第1磁界発生側垂直コイル23の巻き中心線C3は、第1磁界発生側平行コイル21よりも反検出エリア側に位置している。
第1磁界発生側垂直コイル23の上端部及び下端部は、それぞれ、第1磁界発生側平行コイル21の上端部及び下端部と同じ高さに配置されており、第1磁界発生側垂直コイル23の上下方向の寸法と、第1磁界発生側平行コイル21の上下方向の寸法とは略等しく設定されている。第1磁界発生側垂直コイル23の検出エリアS側の端部は、面D上であって第1磁界発生側平行コイル21の端部近傍に位置している。第1磁界発生側垂直コイル23の幅はY方向であり、第1磁界発生側垂直コイル23の幅方向の寸法は、第1磁界発生側垂直コイル23の上下方向の寸法よりも短く設定されており、第1磁界発生側垂直コイル23は上下方向に細長い形状になる。また、第1磁界発生側垂直コイル23の幅方向の寸法は、第1磁界発生側平行コイル21の幅方向の寸法よりも短く設定されている。
第2磁界発生側垂直コイル24は、第1磁界発生側垂直コイル23と同様な形状とされており、磁界発生側板部2の内部において被検査体の通過方向の中間部に位置している。第2磁界発生側垂直コイル24を構成するコイルの巻き中心を通る巻き中心線C4はX方向に延びており、第1磁界発生側垂直コイル23の巻き中心線C3と同軸上に配置することもできるし、巻き中心線C3から多少ずれていてもよい。第2磁界発生側垂直コイル24は、第1磁界発生側平行コイル21と第2磁界発生側平行コイル22との間において、これら磁界発生側平行コイル21、22に対して垂直に配置される。
第3磁界発生側垂直コイル25は、第1磁界発生側垂直コイル23と同様な形状とされており、磁界発生側板部2の内部において被検査体の通過方向の最下流に位置付けられている。第3磁界発生側垂直コイル25を構成するコイルの巻き中心を通る巻き中心線C5はX方向に延びており、第1磁界発生側垂直コイル23の巻き中心線C3及び第2磁界発生側垂直コイル24の巻き中心線C4と同軸上に配置することもできるし、巻き中心線C3、C4から多少ずれていてもよい。第3磁界発生側垂直コイル25は、第2磁界発生側平行コイル22における第1磁界発生側平行コイル21と反対側において、第2磁界発生側平行コイル22に対して垂直に配置される。
したがって、第1磁界発生側平行コイル21における被検査体の通過方向の両側方に、第1磁界発生側垂直コイル23と第2磁界発生側垂直コイル24とが配置されることになる。また、第2磁界発生側平行コイル22における被検査体の通過方向の両側方に、第2磁界発生側垂直コイル24と第3磁界発生側垂直コイル25とが配置されることになる。第2磁界発生側垂直コイル24は、第1磁界発生側平行コイル21と、第2磁界発生側平行コイル22とで共用されるコイルである。
図3に示すように、磁界受信コイルユニット30は、磁界発生コイルユニット20と同様な構造とされており、第1磁界受信側平行コイル31及び第2磁界受信側平行コイル32と、第1磁界受信側垂直コイル33と、第2磁界受信側垂直コイル34と、第3磁界受信側垂直コイル35とを備えており、これらコイル31〜35は全て磁界受信側板部3の内部に収容されている。第1磁界受信側平行コイル31及び第2磁界受信側平行コイル32は、被検査体の通過方向と略平行に配置され、被検査体の通過方向に並んでいる。第1磁界受信側平行コイル31及び第2磁界受信側平行コイル32の形状や巻き中心線の方向は、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22と同じである。第1磁界受信側平行コイル31と、第1磁界発生側平行コイル21とは検出エリアSを挟んで互いに対向するように配置される。また、第2磁界受信側平行コイル32と、第2磁界発生側平行コイル22とは検出エリアSを挟んで互いに対向するように配置される。
第1磁界受信側垂直コイル33及び第2磁界受信側垂直コイル34は、第1磁界受信側平行コイル31における被検査体の通過方向の両側方に、当該第1磁界受信側平行コイル31に対して垂直に配置されている。第2磁界受信側垂直コイル34及び第3磁界受信側垂直コイル35は、第2磁界受信側平行コイル32における被検査体の通過方向の両側方に、当該第2磁界受信側平行コイル32に対して垂直に配置されている。第1〜第3磁界受信側垂直コイル33〜35は、第1磁界受信側平行コイル31及び第2磁界受信側平行コイル32に対して検出エリアSと反対側に偏位している。第1〜第3磁界受信側垂直コイル33〜35の形状や巻き中心線の方向は、第1〜第3磁界発生側垂直コイル23〜25と同じである。
図5に示すように、電圧印加回路40は、磁界発生コイルユニット20に接続されて当該磁界発生コイルユニット20と共振する共振回路41と、共振回路41に接続されて任意の周波数の電圧を生成して印加する信号発生器42とを備えている。
磁界発生コイルユニット20を構成する第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22と、第1磁界発生側垂直コイル23と、第2磁界発生側垂直コイル24と、第3磁界発生側垂直コイル25とに電圧印加回路40から電圧が印加される。すると、図4に示すような磁力線が第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22と、第1磁界発生側垂直コイル23と、第2磁界発生側垂直コイル24と、第3磁界発生側垂直コイル25とに発生する。
第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22は、X方向と平行に配置されているので、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22による磁界は、検出エリアS側と、反検出エリア側とにそれぞれ発生する。このとき、第1磁界発生側垂直コイル23と第2磁界発生側垂直コイル24とが、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22に対して垂直かつ反検出エリア側に偏位しており、複数のコイルにより複数の磁界が発生している場合には各磁界のベクトルの合成により磁界の向きが決まるので、第1磁界発生側垂直コイル23及び第2磁界発生側垂直コイル24で発生した磁界により、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22の磁界のうち、反検出エリア側に発生した磁界の向きが変わり、反検出エリア側へ漏れる磁界を抑制できる。加えて、第2磁界発生側垂直コイル24と第3磁界発生側垂直コイル25も、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22に対して垂直かつ反検出エリア側に偏位しており、複数のコイルにより複数の磁界が発生している場合には各磁界のベクトルの合成により磁界の向きが決まるので、第2磁界発生側垂直コイル24及び第3磁界発生側垂直コイル25で発生した磁界により、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22の磁界のうち、反検出エリア側に発生した磁界の向きが変わり、反検出エリア側へ漏れる磁界を抑制できる。これにより、高価な磁気シールドを用いることなく、磁界発生側板部2から反検出エリア側へ漏れる磁界を抑制できる。
また、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22で発生した磁界のうち、反検出エリア側に発生した磁界の向きが変わることで、検出エリアS側に発生する磁界分布が集中し、金属検出感度を上げることができる。つまり、磁界発生側垂直コイル23〜25は、反検出エリア側への磁気漏れを抑制するだけでなく、検出エリアS内の金属検出感度を上げることができるものである。また、磁界受信側垂直コイル33〜35を設けることで、磁界受信側平行コイル31、32だけで受信するよりも、より多くの磁界を受信することができるとともに、電磁誘導は直交する磁界に対して大きく変化する特性があるため、受信側に磁界受信側垂直コイル33〜35を設けることで感度をより一層高めることができるという利点もある。
尚、図2に示すように、第1〜第3の金属検出器1A、1B、1Cを並べて使用する場合、第1の金属検出器1Aの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数と、第2の金属検出器1Bの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数とは変えるのが好ましい。同様に、第2の金属検出器1Bの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数と、第3の金属検出器1Cの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数とは変えるのが好ましい。これにより、各金属検出器1A、1B、1Cの誤検出を抑制することができる。また、第1の金属検出器1Aの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数と、第3の金属検出器1Cの磁界発生コイルユニット20に印加する電圧の周波数とは同じであってもよい。
図5に示すように、金属検出部50は、A/Dコンバータ51、フィルタ52、積算部53及び判定部54を備えている。磁界受信コイルユニット30から出力された検出信号は、A/Dコンバータ51に入力される。尚、磁界受信コイルユニット30とA/Dコンバータ51の間に増幅器(図示せず)が設けられていてもよい。
A/Dコンバータ51は、磁界受信コイルユニット30から出力された検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。A/Dコンバータ51からはデジタル信号が出力され、このデジタル信号はフィルタ52に入力される。フィルタ52は、必要に応じて、不要な周波数成分を除去するためのものであるが、金属物の検出に必要な帯域の除去は行わないように設定してある。
フィルタ52から出力された信号は、積算部53に入力される。積算部53は、フィルタ52から出力された信号を一定時間積算する部分である。すなわち、磁界発生コイルユニット20から発生する磁界内を金属物が通過したときに磁界の乱れが発生すると、その磁界の乱れは磁界受信コイルユニット30に電圧の変化として生じる。これにより、磁界受信コイルユニット30から検出信号が出力され、検出信号はA/Dコンバータ51によってデジタル信号に変換された後、フィルタ52によって不要な周波数成分の除去が行われてから積算部53に入力される。
積算部53で積算された積算値は判定部54に入力される。判定部54では、検出エリアSに金属物が無いときの信号の積算値と、積算部53から入力された積算値とを比較し、金属検出用閾値に基づいて金属物の有無を判定する。この判定手法は従来の手法を用いることができる。金属検出用閾値は調整可能になっている。
金属物が有ると判定された場合には、警報器60に対して報知音を出力させるとともに、図示しない表示灯等を発光させる。また、セキュリティゲート装置200を備えている場合には、セキュリティゲート装置200に制御信号を送信することができ、これにより、セキュリティゲート装置200を連動させることができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、磁界発生コイルユニット20に電圧印加回路40から電圧が印加されると、磁界発生側平行コイル21、22は、検出エリアS側へ向かう磁界を発生するとともに、その反対側に向かう磁界も発生し、このとき、磁界発生側垂直コイル23〜25が磁界発生側平行コイル21、22に対して垂直でかつ検出エリアSと反対側に偏位しているので、磁界発生側平行コイル21、22から検出エリアSと反対側へ向かう磁界を磁界発生側垂直コイル23〜25から発生する磁界によって向きを変えることができる。これにより、磁気シールド材に比べて安価に形成できる磁界発生側垂直コイル23〜25によって金属検出器1から漏れる磁界を広範囲で抑制できる。
尚、金属検出器1から漏れる磁界が磁界発生側垂直コイル23〜25によって広範囲で抑制されているので、磁気シールド材を全く使用せずに金属検出器1を構成してもよいし、磁気シールド材を金属検出器1の一部にのみ局所的に使用してもよい。
また、磁界発生側平行コイル21、22と、磁界発生側垂直コイル23〜25における検出エリアS側の端部とは同一平面D上に配置することができる。これにより、金属検出器1から漏れる磁界の抑制効果がより一層高まる。
また、本実施形態では、2つの磁界発生側平行コイル21、22を設けているが、これに限らず、1つの磁界発生側平行コイルまたは3つ以上の磁界発生側平行コイルを設けてもよい。これらの場合、各磁界発生側平行コイルの側方に磁界発生側垂直コイルを配置すればよい。
例えば図6に示す本実施形態の変形例1では、第1〜第3磁界発生側平行コイル221〜223を設けるとともに、第1〜4磁界発生側垂直コイル224〜227を設けている。図6の矢印は各コイル221〜227の磁界の向きを示している。このような配置であっても、第1〜第4磁界発生側垂直コイル224〜227から発生する磁界によって、第1〜第3磁界発生側平行コイル221〜223から反検出エリア側に発生した磁界が漏れるのを抑制することができる。
また、図7に示す本実施形態の変形例2では、第1磁界発生側平行コイル21及び第2磁界発生側平行コイル22が上下方向に2つ並んで設けられており、これに対応して第1磁界発生側垂直コイル23、第2磁界発生側垂直コイル24及び第3磁界発生側垂直コイル25も上下方向に2つ並んで設けられている。このようにコイル21〜25を分割することで、各コイルサイズが小さくなり、製造時の作業性が向上する。さらに、コイル21〜25を分割することで、運用時に磁界発生側ではコイルの周波数を変えることができ、磁界受信側ではコイルごとに異なる磁界の乱れを検知できる。これにより、検知エリアの絞り込みが可能になる。各コイル21〜25は、2分割に限られるものではなく、3分割以上であってもよい。
図6及び図7では、磁界発生コイルユニット20の各コイル22〜25についての変形例を示したが、磁界受信コイルユニット30の各コイル32〜35についても同様の変形例を適応できる。なお、磁界発生コイルユニット20と磁界受信コイルユニット30の各コイル22〜25、32〜35の配置や分割数は同じでもよいし、異なっていてもよい。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。