以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る空調システム(情報処理システム)の概要について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る空調システム1は、入力機器10、空調機20、環境値取得装置30及び空調制御装置40を備える。本実施形態に係る空調システム1は、空調機20が設置されている空間にいる利用者によって利用される。
入力機器10は、空調機20の運転を制御するための制御値(以下、空調機20の制御値と表記)を変更するために用いられる、例えばリモコンまたは壁に取り付けられているコントロールパネル等を含む。また、入力機器10は、制御値を変更するためのアプリケーションプログラムが動作するスマートフォンや当該制御値を変更するためのウェブサイトを表示するパーソナルコンピュータ等であってもよい。なお、空調機20の制御値には例えば運転モード(暖房運転、冷房運転、停止)及び設定温度等が含まれるが、当該制御値は湿度、風向き及び風量等の他の設定値であってもよい。以下においては、便宜的に、空調機20の制御値は運転モード及び設定温度を含むものとして主に説明する。
入力機器10は、利用者の操作を受け付け、当該受け付けられた操作結果として空調機20の制御値を入力する。また、入力機器10には、空調機20の制御値等を表示するためのディスプレイ(パネル)が設けられていてもよい。
空調機20は、入力機器10と有線のケーブルまたは無線ネットワークを介して接続されており、入力機器10に入力された制御値に基づいて運転することにより所定の空間の空調制御を実現する。なお、本実施形態における空調機20としては、様々な空調機やその他の冷暖房機器を用いることができる。具体的には、空調機20は、例えばチラー(冷却水循環装置)を利用した集中管理型のものやパッケージエアコン等であってもよいし、ボイラ及び当該ボイラで生成された温水を循環させるヒータの組み合わせ等であってもよい。
上記した入力機器10及び空調機20は、例えばオフィスや住居等の空間に設置されている。なお、本実施形態において、入力機器10及び空調機20が設置される空間とは、例えば建物内の1つの部屋等の空間を想定しているが、施設内の一区域であって、床及び内壁等で区別された空間等であってもよい。
ここでは、空調機20は、当該空調機20が設置された空間に対し空調を行うことを想定しているが、設置された空間と空調が行われる空間とが異なっていてもよい。例えば機械室に置かれた空調機20がダクト等を介して温風または冷風を送出することによって、当該空調機20が設置されている空間とは異なる空間の空調が制御されてもよい。
環境値取得装置30は、温度センサ及び湿度センサ等の各種センサを備え、空調機20の周辺の環境に関する環境値を取得する。環境値取得装置30によって取得される環境値には、空調機20が設置されている空間(室内)の温度及び湿度、または当該空間の外(室外)の温度及び湿度等が含まれる。すなわち、環境値として室内の温度または湿度を取得する場合、環境値取得装置30は当該室内に設置される。一方、環境値として室外(例えば、建物の外)の温度または湿度を取得する場合、環境値取得装置30は当該室外に設置される。
なお、環境値取得装置30は、室内及び室外の両方に設置されていてもよい。また、室内または室外の温度及び湿度は例えば温湿度計を用いて取得されてもよい。ここでは環境値取得装置30によって取得される環境値が温度及び湿度であるものとして説明したが、環境値は他の値であってもよい。
空調制御装置40は、空調機20が設置されている空間とは異なる管理室等に設置されている情報処理装置である。また、空調制御装置40は、空調機20及び環境値取得装置30と有線ネットワークまたは無線ネットワークを介して接続されている。空調制御装置40は、空調機20の制御値の履歴及び環境値の履歴を空調機20及び環境値取得装置30から取得(収集)するとともに、当該制御値の履歴及び環境値の履歴を利用して空調機20の制御値を変更する(空調機20の運転を制御する)機能を有する。なお、本実施形態においては、空調制御装置40が空調機20の制御値として例えば当該空調機20の設定温度を変更する場合について主に説明する。
ここで、図2を参照して、上記した本実施形態に係る空調システム1の適用例(使用態様の一例)について説明する。
図2に示す例では、空調システム1がオフィスビルの空調を制御する空調システム(ビル空調システム)として構成されており、当該空調システム1は、オフィスビルの執務室及び管理室に配置されている。
具体的には、執務室には、入力機器10、空調機20及び環境値取得装置30が配置されている。
一方、管理室には、空調制御装置40が配置されている。なお、空調制御装置40は、管理者が執務室(室内)の空調状態を把握する、または空調機20の設定(つまり、設定温度等)を変更する目的で導入されるBEMS(Building Energy Management System)等の機能を有していてもよい。BEMSは、ビルにおける電力使用量の管理、節電制御等を行うサーバ装置である。
また、執務室には、ローカルコントローラ50が更に配置されている。ローカルコントローラ50は、執務室に配置された入力機器10、空調機20及び環境値取得装置30と、管理室に配置された空調制御装置40とを有線または無線ネットワークで通信可能に接続する。なお、ローカルコントローラ50としては、例えば専用のマイコン装置、デスクトップPC(パーソナルコンピュータ)等の汎用のコンピュータ装置、ルータ等のネットワーク機器を用いることができる。
また、空調制御装置(BEMS)40は、例えば外部ネットワークを介して、他のビル等に設置されている他の空調システム60(空調システム1とは異なる空調システム)と通信可能に接続されていてもよい。この場合、空調制御装置40は、他の空調システム60を制御するように構成されていてもよい。
更に、空調制御装置40は、外部ネットワークを介して、クラウドサーバ(クラウドコンピューティングによって実現される仮想的なコンピュータシステム)70と通信可能に接続されていてもよい。この場合、後述する空調制御装置40機能の一部は、クラウドサーバ70に備えられていてもよい。
図2に示すように執務室には必要最低限の機器のみを配置し、空調制御装置40等のリソースを管理室に配置することにより、空調制御装置40の可用性、保守性及び気密性等を向上させることが可能となる。
なお、図2に示すように、環境値取得装置30は、執務室以外(ビルの外)に配置されてもよい。また、環境値取得装置30は、例えば外部ネットワークを介して空調制御装置40と通信可能に接続されていてもよい。
また、ここでは空調制御装置40が主にビルにおける電力使用量の管理等を行うBEMSの機能を有する場合について説明したが、当該空調制御装置40は、例えばエネルギー管理システム(EMS)の機能を有していてもよい。具体的には、空調制御装置40は、家庭内のエネルギー管理システムであるHEMS(Home Energy Management System)、工場内のエネルギー管理システムであるFEMS(Factory Energy Management System)、所定の地域内のエネルギー管理システムであるCEMS(Cluster/Community Energy Management System)等の機能を有していてもよい。
以下、本実施形態に係る空調制御装置40について説明する。図3は、空調制御装置40のハードウェア構成の一例を示す。図3に示すように、空調制御装置40は、CPU41、不揮発性メモリ42、主メモリ43及び通信デバイス44等を備える。
CPU41は、空調制御装置40内の各コンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU41は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ42から主メモリ43にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU41によって実行されるプログラムには、オペレーティングシステム(OS)及び空調機20の運転を制御するためのアプリケーションプログラム(以下、空調制御プログラムと表記)等が含まれる。
通信デバイス44は、空調機20及び環境値取得装置30等の外部装置との通信を実行するように構成されたデバイスである。
なお、図3においては、CPU41、不揮発性メモリ42、主メモリ43及び通信デバイス44のみが示されているが、空調制御装置40は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のような他の記憶装置を備えていてもよいし、キーボードやマウスのような入力装置及び液晶ディスプレイのような表示装置を備えていてもよい。
図4は、空調制御装置40の機能構成の一例を示す。図4に示すように、空調制御装置40は、設定情報格納部401、取得部402、履歴情報格納部403、算出部404、許容範囲格納部405、決定部406、第1評価部407、第2評価部408及び補正部409を含む。
本実施形態において、設定情報格納部401、履歴情報格納部403及び許容範囲格納部405は、図3に示す不揮発性メモリ42また他の記憶装置等によって実現される。
また、本実施形態において、取得部402、算出部404、決定部406、第1評価部407、第2評価部408及び補正部409の一部または全ては、CPU41に上記した空調制御プログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、これらの各部402、404及び406〜409の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
設定情報格納部401には、空調制御装置40の動作を定める設定情報が予め格納されている。設定情報格納部401に格納されている設定情報には、後述する運用期間情報、探索実施期間情報、許容範囲算出時刻情報、設定温度変更時刻情報、識別境界情報及び制御内容情報等が含まれる。なお、これらの各情報の詳細については後述する。
取得部402は、空調機20から出力される当該空調機20の現在の制御値(運転モード及び設定温度)を含む制御値履歴情報を取得する。なお、取得部402は、制御値履歴情報を例えば定期的に取得する。取得部402によって定期的に取得された制御値履歴情報は、履歴情報格納部403に格納(蓄積)される。すなわち、履歴情報格納部403に格納されている制御値履歴情報には、空調機20の制御値の履歴が含まれる。
また、取得部402は、環境値取得装置30から出力される現在の環境値を含む環境値履歴情報を取得する。なお、取得部402は、環境値履歴情報を例えば定期的に取得する。取得部402によって定期的に取得された環境値履歴情報は、履歴情報格納部403に格納(蓄積)される。すなわち、履歴情報格納部403に格納されている環境値履歴情報には、空調機20の周辺の環境に関する環境値の履歴が含まれる。
なお、上記した制御値履歴情報が取得されるタイミングと環境値履歴情報が取得されるタイミングとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、取得部402は、予め定められた時刻に到達した等の所定の条件を満たしたときに制御値履歴情報及び環境値履歴情報を取得するようにしてもよい。
算出部404は、設定情報格納部401に格納されている設定情報及び履歴情報格納部403に格納された制御値履歴情報(運転モード及び設定温度)に基づいて、空調機20の設定温度に対する利用者の許容範囲を算出する。なお、本実施形態において、許容範囲とは、利用者が不快と感じない程度の快適度を維持することができる(つまり、利用者が許容することができると推定される)空調機20の設定温度の範囲に相当する。
算出部404によって算出された許容範囲を示す情報(以下、許容範囲情報と表記)は、許容範囲格納部405に格納される。
決定部406は、設定情報格納部401に格納されている設定情報及び許容範囲格納部405に格納されている許容範囲情報に基づいて、例えば許容範囲情報によって示される許容範囲に該当する設定温度の中で最も省エネとなる空調機20の設定温度を決定する。なお、空調機20が暖房運転を行う場合には、設定温度がより低い方が省エネを実現することができる。一方、空調機20が冷房運転を行う場合には、設定温度がより高い方が省エネを実現することができる。
第1評価部407は、空調機20の現在の設定温度に基づいて、決定部406によって決定された設定温度を評価する。
第2評価部408は、履歴情報格納部403に格納されている環境値履歴情報に基づいて、決定部406によって決定された設定温度を評価する。
補正部409は、第1評価部407による評価結果及び第2評価部408による評価結果のうちの少なくとも一方に基づいて、決定部406によって決定された設定温度を補正する。
補正部409によって補正された設定温度は、空調機20に出力される。これにより、空調機20の設定温度が変更され、空調機20は、当該変更された設定温度(つまり、補正部409によって補正された設定温度)に基づく運転を行うことができる。
次に、図4に示す設定情報格納部401に格納されている設定情報について説明する。上記したように設定情報には運用期間情報、探索実施期間情報、許容範囲算出時刻情報、設定温度変更時刻情報、識別境界情報及び制御内容情報が含まれるが、ここでは、制御内容情報以外について説明する。なお、制御内容情報については後述する。
図5は、運用期間情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。図5に示すように、運用期間情報には、運用開始日時、運用終了日時及び運転モードが含まれている。なお、本実施形態において、「運用」とは、上記した空調制御装置40が空調機20の運転を制御する(つまり、空調制御装置40が空調機20の設定温度を変更する)ことをいう。
運用開始日時は、空調制御装置40が空調機20の運転制御を開始する日時(つまり、空調制御装置40による運用が開始される日時)を示す。運用終了日時は、空調制御装置40が空調機20の運転制御を終了する日時(つまり、空調制御装置40による運用が終了される日時)を示す。なお、以下の説明においては、運用開始日時から運用終了日時までの期間を、便宜的に、運用期間と称する。
運転モードは、空調機20の動作モードであり、例えば暖房(運転)または冷房(運転)を含む。なお、運転モード「暖房」は空調機20が暖房運転を行うことをいう。また、運転モード「冷房」は空調機20が冷房運転を行うことをいう。
図5に示す例では、運用期間情報には、運用開始日時「2015−12−01 00:00:00」、運用終了日時「2016−03−31 23:59:59」及び運転モード「暖房」が含まれている。この運用期間情報によれば、2015年12月1日の0時0分0秒から2016年3月31日の23時59分59秒までの運用期間において、空調機20が暖房運転を行う場合に、空調制御装置40が当該空調機20の運転を制御することが示されている。
このような運用期間情報によれば、例えば2015年12月1日の0時0分0秒から2016年3月31日の23時59分59秒までの運用期間中であっても、空調機20が冷房運転を行う場合には、空調制御装置40は空調機20の運転を制御しない。すなわち、この場合における空調機20の運転(冷房運転)は、入力機器10によって受け付けられる利用者の操作結果のみに基づいて制御される。また、2015年12月1日の0時0分0秒から2016年3月31日の23時59分59秒までの運用期間以外に空調機20が運転(暖房運転及び冷房運転)を行う場合も同様である。
なお、図5においては1つの運用期間情報のみが示されているが、当該運用期間情報は、運用期間(運用開始日時及び運用終了日時)または運転モード毎に複数用意されていてもよい。
図6は、探索実施期間情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。図6に示すように、探索実施期間情報には、探索実施日数及び探索不実施日数を含む。
探索実施日数は、上記した空調機20の設定温度に対する利用者の許容範囲の探索を実施する連続した日数(期間)を示す。探索不実施日数は、許容範囲の探索を実施しない連続した日数(期間)を示す。なお、許容範囲の探索については後述する。
図6に示す例では、探索実施期間情報には、探索実施日数「7」及び探索不実施日数「14」が含まれている。この探索実施期間情報によれば、許容範囲の探索を実施する期間(以下、探索実施期間と表記)が7日間であり、許容範囲の探索を実施しない期間(以下、探索不実施期間と表記)が14日間であることが示されている。
なお、上記した探索実施期間及び探索不実施期間は、図7に示すように、上記した運用期間内において交互に配置される(繰り返される)。
図7に示す例においては、日時t1が運用開始日時であり、日時t6が運用終了日時であり、当該日時t1から日時t6までの運用期間内において、探索実施期間及び探索不実施期間が繰り返されている。
具体的には、運用開始日時t1から探索不実施期間が開始され、当該運用開始日時t1から例えば14日間が経過した日時t2の時点で当該探索不実施期間は探索実施期間に切り替えられる。また、日時t2から例えば7日間が経過した日時t3の時点で探索実施期間は探索不実施期間に切り替えられる。以降、同様に、日時t4の時点で探索不実施期間が探索実施期間に切り替えられ、日時t5の時点で探索実施期間が探索不実施期間に切り替えられる。日時t5以降についても、運用期間が終了するまで同様に探索実施期間及び探索不実施期間が交互に繰り返される。
なお、図7においては運用開始日時t1から探索不実施期間が開始されるものとして説明したが、当該運用開始日時t1から探索実施期間が開始されてもよい。
図8は、許容範囲算出時刻情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。図8に示すように、許容範囲算出時刻情報には、許容範囲を算出する時刻(以下、許容範囲算出時刻と表記)が含まれている。
図8に示す例では、許容範囲算出時刻情報には、許容範囲算出時刻「07:00:00」が含まれている。この許容範囲算出時刻情報によれば、許容範囲の算出が7時0分0秒の時点で行われることが示されている。
なお、図8においては許容範囲算出時刻情報が許容範囲算出時刻のみを含むものとして説明したが、当該許容範囲算出時刻情報には、許容範囲を算出するタイミングに関する他の条件等が含まれていてもよい。具体的には、例えば繰り返される探索実施期間及び探索不実施期間の各々の最初の日に(つまり、探索実施期間及び探索不実施期間が切り替えられるタイミングで)許容範囲の算出が行われるような条件が許容範囲算出時刻情報に含まれていてもよい。また、例えば許容範囲の算出が毎日行われるような条件が許容範囲算出時刻情報に含まれていてもよい。なお、許容範囲算出時刻情報には、ここで説明した以外の条件が含まれていてもよい。
図9は、設定温度変更時刻情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。図9に示すように、設定温度変更時刻情報には、空調機20の設定温度を空調制御装置40が変更する時刻(以下、設定温度変更時刻と表記)が含まれている。なお、設定温度変更時刻は、空調機20の設定温度を変更することによって空調制御装置40が当該空調機20の運転を制御する時刻(制御実施時刻)に相当する。
図9に示す例では、設定温度変更時刻情報には、設定温度変更時刻「10:00:00」、「12:00:00」及び「15:00:00」が含まれている。この設定温度変更時刻情報によれば、10時0分0秒、12時0分0秒及び15時0分0秒の時点で空調制御装置40が空調機20の設定温度を変更することが示されている。
上記した空調制御装置40による空調機20の設定温度の変更は、運用期間内であれば毎日行われるが、例えば平日のみまたは休日のみのように予め定められた日に行われるようにしてもよい。
なお、図8に示す許容範囲算出時刻情報に含まれる許容範囲算出時刻及び図9に示す設定温度変更時刻情報に含まれる設定温度変更時刻によれば、許容範囲の算出及び設定温度の変更は図10に示すようなタイミングで行われる。図10においては、許容範囲が7時の時点で算出され、設定温度が10時、12時及び15時の時点で変更されることが示されている。
図11は、識別境界情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。図11に示すように、識別境界情報には、特徴量種類及び識別境界パラメータが含まれている。特徴量種類は、後述する許容範囲を算出するために利用される特徴量の種類を示す。識別境界パラメータは、特徴量種類によって示される種類の特徴量を分類するための境界を定義するパラメータである。
図11に示す例では、識別境界情報には、特徴量種類「ワイブル」及び識別境界パラメータ「(a,b)」が含まれている。この識別境界情報によれば、許容範囲を算出する際に、ワイブル分布を適用することによって特徴量を算出し、当該算出された特徴量を識別境界パラメータ「(a,b)」によって定義される境界で分類することが示されている。なお、識別境界パラメータ「(a,b)」は、例えばy=ax+bで表される一次関数(直線)を境界として用いることを定義している。
なお、上記したように識別境界情報は許容範囲を算出する際に用いられるが、当該許容範囲の算出処理の詳細については後述する。
次に、履歴情報格納部403に格納されている制御値履歴情報及び環境値履歴情報について説明する。
図12は、履歴情報格納部403に格納されている制御値履歴情報のデータ構造の一例を示す。図12に示すように、制御値履歴情報には、日時に対応づけて制御値(運転モード及び設定温度)が含まれている。
日時は、空調制御装置40において制御値履歴情報が取得された日時を表す。運転モードは、空調機20の動作モードであり、例えば暖房、冷房及び停止等が含まれる。なお、運転モード「停止」は、空調機20の運転が停止されていることをいう。運転モード「暖房」及び「冷房」については上記した通りであるため、ここでは説明を省略する。設定温度は、空調機20の運転を制御するための制御値として当該空調機20に設定される温度である。
図12に示す例では、履歴情報格納部403には、制御値履歴情報403A及び403Bを含む複数の制御値履歴情報が格納(蓄積)されている。
制御値履歴情報403Aには、日時「2016−03−01 07:59:00」に対応づけて運転モード「停止」及び設定温度「22」が含まれている。この制御値履歴情報403Aによれば、2016年3月1日の7時59分0秒の時点で空調機20の運転が停止されており、当該空調機20の設定温度(当該空調機20の運転が停止された時点での設定温度)が22℃であることが示されている。
なお、本実施形態において制御値履歴情報(空調機20の制御値)は定期的に取得されるが、空調機20の運転が停止されている場合、当該空調機20の制御値は、例えばBEMS等の機能によって空調制御装置40内で管理されていてもよいし、他の管理装置(システム)から取得されてもよい。
制御値履歴情報403Bには、日時「2016−03−01 08:00:00」に対応づけて運転モード「暖房」及び設定温度「22」が含まれている。この制御値履歴情報403Bによれば、2016年3月1日の8時0分0秒の時点で空調機20が暖房運転を行っており、当該空調機20の設定温度が22℃であることが示されている。
なお、空調機20が運転を行っている(つまり、空調機20の運転が停止されていない)場合には、当該空調機20制御値は、当該空調機20から取得することができる。
ここでは制御値履歴情報403A及び403Bについてのみ説明したが、他の制御値履歴情報についても同様である。
また、図12に示す例では制御値履歴情報が1分間隔で取得(履歴情報格納部403に格納)されているが、当該制御値履歴情報は、5分間隔または10分間隔等の他の間隔で取得されてもよい。
図13は、履歴情報格納部403に格納されている環境値履歴情報のデータ構造の一例を示す。図13に示すように、制御値履歴情報には、日時に対応づけて環境値(室温、室内湿度、外気温及び外気湿度)が含まれている。
日時は、空調制御装置40において環境値履歴情報が取得された日時を表す。室温は、室内(空調機20が設置されている空間)の温度である。室内湿度は、室内の湿度である。外気温は、室外(空調機20が設置されている空間の外)の温度である。外気湿度は、室外の湿度である。
図13に示す例では、履歴情報格納部403には、環境値履歴情報403a及び403bを含む複数の環境値履歴情報が格納(蓄積)されている。
環境値履歴情報403aには、日時「2016−03−01 07:59:00」に対応づけて室温「20.5」、室内湿度「55」、外気温「3.9」及び外気湿度「38」が含まれている。この環境値履歴情報403aによれば、2016年3月1日の7時59分0秒の時点での室内の温度が20.5℃であり、当該室内の湿度が55%であることが示されている。また、環境値履歴情報403aによれば、2016年3月1日の7時59分0秒の時点での室外の温度が3.9℃であり、当該室外の湿度が38%であることが示されている。
環境値履歴情報403bには、日時「2016−03−01 08:00:00」に対応づけて室温「20.7」、室内湿度「53」、外気温「4.0」及び外気湿度「37」が含まれている。この環境値履歴情報403bによれば、2016年3月1日の8時0分0秒の時点での室内の温度が20.7℃であり、当該室内の湿度が53%であることが示されている。また、環境値履歴情報403bによれば、2016年3月1日の8時0分0秒の時点での室外の温度が4.0℃であり、当該室外の湿度が37%であることが示されている。
ここでは環境値履歴情報403a及び403bについてのみ説明したが、他の環境値履歴情報についても同様である。なお、環境値履歴情報403a及び403bを含む複数の環境値履歴情報は、上記したように室内及び室外に設置された環境値取得装置30を介して取得される。
また、図13に示す例では環境値履歴情報に含まれる環境値が室温、室内湿度、外気温及び外気湿度であるものとして説明したが、環境値はこれら以外であってもよいし、これらのうちの少なくとも1つであってもよい。
また、図13に示す例では環境値履歴情報が1分間隔で取得(履歴情報格納部403に格納)されているが、当該環境値履歴情報は、5分間隔または10分間隔等の他の間隔で取得されてもよい。更に、環境値の種類(室温、室内湿度、外気温及び外気湿度)毎に異なる間隔(タイミング)で環境値履歴情報を取得するようにしてもよい。具体的には、室温及び室内湿度(を含む環境値履歴情報)については1分間隔で取得するが、外気温及び外気湿度(を含む環境値履歴情報)については5分(または10分)間隔で取得するようにしてもよい。
次に、図14のフローチャートを参照して、本実施形態に係る空調制御装置40の処理手順の一例について説明する。なお、図14に示す処理は、例えば空調制御装置40の電源起動後に定期的に(所定の待機時間間隔で)実行される。図14に示す処理が実行される間隔は、予め設定されており、例えば空調制御装置40に備えられるタイマ等を用いて管理されればよい。
まず、空調制御装置40は、設定情報格納部401に設定情報として格納されている運用期間情報及び探索実施期間情報を取得する(ステップS1)。
次に、空調制御装置40は、ステップS1において取得された運用期間情報に基づいて、空調制御装置40による空調機20の運転に対する制御(以下、単に空調制御装置40による空調制御と表記)を実施するか否かを判定する(ステップS2)。
なお、ステップS2においては、例えば空調制御装置40内に備えられているクロック等から現在の日時が取得され、当該現在の日時が運用期間情報に含まれる運用開始日時から運用終了日時までの運用期間内であるか否かが判定される。また、ステップS2においては、例えば空調機20から当該空調機20の現在の運転モードが取得され、当該運転モードが運用期間情報に含まれる運転モードと一致するか否かが判定される。なお、上記した現在の日時及び現在の運用モードとしては、履歴情報格納部403に格納されている直近の制御値履歴情報(最後に履歴情報格納部403に格納された制御値履歴情報)に含まれている日時及び運用モードを利用してもよい。
これにより、ステップS2においては、現在の日時が運用期間内であり、かつ、空調機20の現在の運転モードが運用期間情報に含まれる運用モードと一致する場合に、空調制御装置40による空調制御を実施すると判定される。一方、現在の日時が運用期間内でない場合、または、空調機20の現在の運転モードが運用期間情報に含まれる運用モードと一致しない場合には、空調制御装置40による空調制御を実施しないと判定される。
例えば図5に示す例では、現在の日時が2015年12月1日の0時0分0秒から2016年3月31日の23時59分59秒までの運用期間内であり、空調機20が暖房運転を行っている場合に、空調制御装置40による空調制御を実施すると判定される。以下においては、空調機20が暖房運転を行っているものとして説明する。
空調制御装置40による空調制御を実施すると判定された場合(ステップS2のYES)、空調制御装置40は、上記した現在の日時が、ステップS1において取得された運用期間情報に含まれる運用開始日時と、探索実施期間情報に含まれる探索実施日数及び探索不実施日数とに基づいて特定される探索実施期間内であるか否かを判定する(ステップS3)。なお、上記したように探索実施期間と探索不実施期間とは運用開始日時から交互に繰り返されるため、運用開始日時を基準として当該探索実施期間の日数と探索不実施期間の日数とを交互に配置していくことにより、現在の日時が探索実施期間であるか探索不実施期間であるかを判定することができる。
現在の日時が探索実施期間内であると判定された場合(ステップS3のYES)、空調制御装置40は、探索実施期間処理を実行する(ステップS4)。なお、この探索実施期間処理においては、空調機20の現在の設定温度を、許容範囲の探索を実施するような設定温度に変更するような処理が実行される。
一方、現在の日時が探索実施期間内でないと判定された場合(ステップS3のNO)、空調制御装置40は、探索不実施期間処理を実行する(ステップS5)。なお、この探索不実施期間処理においては、許容範囲の探索は実施されない。
なお、本実施形態における「探索」とは、空調システム1(空調機20)を利用する利用者が許容できる設定温度の範囲(許容範囲)を探索することを意味する。また、「許容範囲」とは、例えば空調機20が暖房運転を行う場合は利用者が寒さを許容できる設定温度の範囲であり、空調機20が冷房運転を行う場合は利用者が暑さを許容できる設定温度の範囲である。
すなわち、本実施形態においては、現在の日時が探索実施期間内であるか探索不実施期間内であるかに基づいて異なる空調制御が実施される。
なお、上記したステップS2において空調制御装置40による空調制御を実施しないと判定された場合(ステップS3のNO)、図14に示す処理は終了される。
以下、ステップS4において実行される探索実施期間処理及びステップS5において実行される探索不実施期間処理について説明する。
まず、図15のフローチャートを参照して、探索実施期間処理の処理手順の一例について説明する。
探索実施期間処理においては、許容範囲内で最も省エネとなる設定温度よりも更に省エネを実現することが可能な設定温度に基づく空調制御を利用者が許容できるか否かの探索を行う。
探索実施期間処理において、算出部404は、設定情報格納部401に設定情報として格納されている許容範囲算出時刻情報を取得する。算出部404は、取得された許容範囲算出時刻情報に基づいて、現在の時刻が許容範囲算出時刻であるか否かを判定する(ステップS11)。
具体的には、例えば上記した図8に示すように許容範囲算出時刻情報に含まれる許容範囲算出時刻が「07:00:00」である場合、ステップS11においては、現在の時刻が7時0分0秒である場合に現在の時刻が許容範囲算出時刻であると判定する。
なお、上記したように許容範囲算出時刻情報に許容範囲を算出するタイミングに関する他の条件等が含まれている場合、ステップS11においては、当該条件を満たす場合に現在の時刻(日時)が許容範囲算出時刻であると判定される。
ステップS11において現在の時刻が許容範囲算出時刻であると判定された場合(ステップS11のYES)、算出部404は、設定情報格納部401に設定情報として格納されている識別境界情報及び履歴情報格納部403に格納されている制御値履歴情報を取得する(ステップS12)。
ステップS12の処理が実行されると、算出部404は、当該ステップS12において取得された識別境界情報及び制御値履歴情報に基づいて、空調機20の設定温度に対する利用者の許容範囲を算出する(ステップS13)。
以下、ステップS13の処理について詳細に説明する。まず、算出部404は、ステップS12において取得された制御値履歴情報(に含まれる運転モード及び設定温度)に基づいて、設定温度毎の継続時間を表す情報(以下、継続時間情報と表記)を生成する。
ここで、図16を参照して、上記した継続時間情報について説明する。図16の上段は、制御値履歴情報に基づく設定温度の遷移(変化)の一部を示している。図16の上段によれば、例えば時刻(日時)t1の時点で22℃の設定温度で空調機20の運転が開始され、時刻t2の時点で当該設定温度が22℃から21℃に変更され、時刻t3の時点で当該設定温度が21℃から22℃に変更され、時刻t4の時点で空調機20の運転が停止されたことを示している。
図16の下段は、図16の上段に示す設定温度の遷移に基づいて生成される継続時間情報のデータ構造の一例を示している。
具体的には、図16の上段に示す設定温度の遷移によれば時刻t1から時刻t2までの間は22℃の設定温度で空調機20の運転(暖房運転)が継続されているため、22℃の設定温度に対応する継続時間(設定温度継続時間)は「t2−t1」である。ここで、時刻t2においては設定温度が1℃下げられている。上記したように空調機20が暖房運転を行っているものとすると、このような設定温度を下げる変更が行われた場合、イベント(の値)は「0」とする。この場合、図16の下段に示すように、設定温度「22」、設定温度継続時間「t2−t1」及びイベント「0」を対応づけて含む継続時間情報が生成される。
なお、継続時間情報に含まれるイベントは、上記したように設定温度の継続時間の終了時点における設定温度の変更(例えば、利用者の入力機器10に対する操作)に基づいて決定される。
次に、図16の上段に示す設定温度の遷移によれば時刻t2から時刻t3までの間は21℃の設定温度で空調機20の運転が継続されているため、22℃の設定温度に対応する継続時間は「t3−t2」である。ここで、時刻t3においては設定温度が1℃上げられている。この場合、空調システム1を利用する利用者(つまり、室内にいる利用者)は、21℃の設定温度に基づく空調機20の運転(つまり、現在の設定温度)では寒さを許容することができず、設定温度を上げたものと推測することができる。このような暖房運転時に設定温度を上げる変更が行われた場合、イベントは「1」とする。この場合、図16の下段に示すように、設定温度「21」、設定温度継続時間「t3−t2」及びイベント「1」を対応づけて含む継続時間情報が生成される。
更に、図16の上段に示す設定温度の遷移によれば時刻t3から時刻t4までの間は22℃の設定温度で空調機20の運転が継続されているため、22℃の設定温度に対応する継続時間は「t4−t3」である。ここで、時刻t4においては、空調機20の運転が停止されている。このように空調機20の運転が停止された場合、イベントは「0」とする。この場合、図16の下段に示すように、設定温度「22」、設定温度継続時間「t4−t3」及びイベント「0」を対応づけて含む継続時間が生成される。
なお、ここでは空調機20が暖房運転を行うものとして説明したが、空調機20が冷房運転を行っているものとすると、設定温度を下げる変更が行われた場合のイベントを「1」とし、他の変更(設定温度を上げる変更及び空調機20の運転の停止)が行われた場合のイベントを「0」とすればよい。
すなわち、本実施形態においては設定温度の許容範囲を算出するため、上記したように利用者が寒さまたは暑さを許容することができずに設定温度を変更したと推測される場合を、利用者が当該設定温度を許容できなくなったことを表すイベント「1」として抽出する。
なお、空調機20の運転が停止されている時刻t0〜t1までの期間及び時刻t4以降の期間(時間)は、設定温度の継続時間には含まれない(つまり、継続時間情報が生成されない)ものとする。
また、制御値履歴情報に含まれる運転モード(空調機20の運転の開始及び停止)及び設定温度は、利用者が入力機器10(例えば、リモコン等)を操作することによって行う場合もあるし、空調制御装置40等による空調機20の自動運転によって行われる場合もある。
次に、算出部404は、図16の下段に示す継続時間情報に基づいて、生存時間解析を行う。ここで、生存時間解析とは、観察対象の生存時間を予測する手法の一つであり、例えば機械等を観察対象とし、当該観察対象が故障(死亡)するまでの時間(生存時間)を予測するために用いられる。この観察対象の故障等を生存時間解析におけるイベントという。すなわち、生存時間は、観察開始からイベントが発生するまでの時間に相当する。
本実施形態においては、設定温度を観察対象とし、上記したように利用者が寒さを許容することができずに設定温度を変更したこと(つまり、継続時間情報に含まれるイベントが「1」であるときの設定温度の変更)をイベントとすることにより、設定温度の継続時間を当該設定温度の生存時間として予測する生存時間解析を行う。
なお、イベントが「0」であるときの設定温度の変更または空調機20の運転の停止は打ち切りとする。打ち切りとは、イベントが発生せずに、途中で観察が打ち切られることをいう。
また、上記した生存時間解析における観察開始日時及び観察終了日時は任意である。具体的には、運用期間情報に含まれる運用開始日時を観察開始時刻とし、現在の日時を観察終了日時としてもよい。また、現在の日時から一定期間前(例えば、1か月前等)を観察開始日時し、現在の日時を観察終了日時としてもよい。更に、例えば現在の日時が探索実施期間内である場合、当該探索実施期間の直前に配置されている探索不実施期間の開始日時及び終了日時を観察開始日時及び観察終了日時としてもよい。同様に、例えば現在の日時が探索不実施期間内である場合、当該探索不実施期間の直前に配置されている探索実施期間の開始日時及び終了日時を観察開始日時及び観察終了日時としてもよい。また、観察開始日時及び観察終了日時は、空調システム1の管理者によって予め指定された日時であってもよい。
なお、上記したステップS12においては、観察開始日時から観察終了日時までの期間に該当する日時を含む制御値履歴情報が取得されるものとする。
本実施形態における生存時間解析においては、各設定温度の継続時間を当該設定温度毎の生存関数S(t)で表す。生存関数S(t)は、時間t(tは0より大きい実数)において、観察対象が生存している確率(生存率)を表す関数である。本実施形態における生存関数S(t)は、確率変数Tを用いて
S(t)=Prob(T>t) (式1)
のように数学的に定義される。Prob(T>t)は、時刻t以内にイベント「1」が発生しない確率を示す。
次に、算出部404は、ステップS12において取得された識別境界情報に含まれる特徴量種類によって示される種類の特徴量を、生存時間解析によって得られる生存関数S(t)に基づいて設定温度毎に算出する。
なお、図11に示す識別境界情報には特徴量種類として「ワイブル」が含まれているため、本実施形態においては、設定温度毎の生存関数S(t)をワイブル分布でモデル化し、当該ワイブル分布の係数パラメータを特徴量として算出するものとする。具体的には、生存関数S(t)は、係数パラメータであるスケールパラメータλ及び形状パラメータpを用いて、以下の式(2)のように表すことができる。
S(t)=exp(−(λt)p) λ,p>0 式(2)
ここで、図17は、上記した設定温度毎の生存関数S(t)をワイブル分布でモデル化したグラフ(つまり、式(2)によって表される生存関数S(t))の一例を示している。なお、図17に示す例では、縦軸が生存率を表し、横軸が時間(時刻)を表している。
図17に示す曲線81〜83は、設定温度がそれぞれ19℃、20℃及び21℃である場合の生存関数S(t)をワイブル分布でモデル化したグラフに相当する。
図17に示す例によれば、例えば設定温度が19℃である場合の生存関数S(t)は、設定温度が20℃である場合の生存関数S(t)及び設定温度が21℃である場合の生存関数S(t)に対して時間tによる生存率(設定温度が維持される割合)の減少が大きい。すなわち、設定温度を19℃にした場合は、設定温度を20℃または21℃にした場合に比べて、利用者による設定温度の上昇が早く発生しやすい(イベントが発生しやすい)ことが示されている。
本実施形態において、算出部404は、上記した設定温度毎の生存関数S(t)を表す式(2)で用いられるスケールパラメータλ及び形状パラメータpを当該設定温度毎の特徴量として算出する。
なお、図18は、算出部404によって特徴量として算出された設定温度毎のスケールパラメータλ及び形状パラメータpの一例を示している。
図18に示す例では、設定温度が19℃である場合のスケールパラメータλが0.2であり、形状パラメータpが1.3であることが示されている。また、設定温度が20℃である場合のスケールパラメータλが0.02であり、形状パラメータpが5であることが示されている。更に、設定温度が21℃である場合のスケールパラメータλが0.015であり、形状パラメータpが4であることが示されている。
なお、本実施形態においては上記したように設定温度毎の特徴量が算出されるが、当該特徴量が算出される設定温度は、ステップS12において取得された制御値履歴情報に含まれる設定温度の全てであってもよいし、一部であってもよい。また、例えば同一の室内に複数の空調機20が設置されている場合には、当該空調機20毎に特徴量を算出するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、生存関数S(t)をワイブル分布でモデル化し、当該ワイブル分布のスケールパラメータλ及び形状パラメータpを特徴量として算出するものとして説明したが、当該特徴量はスケールパラメータλ及び形状パラメータpでなくてもよいし、特徴量を算出するためにワイブル分布以外の分布モデルを適用してもよい。また、例えば設定温度毎の継続時間の平均値及び分散値等を特徴量としてもよい。特徴量の算出手法としては、例えば最尤法等を用いてもよい。
また、複数の特徴量種類及び識別境界パラメータの組み合わせ(つまり、複数の識別境界情報)を用意しておき、当該複数の組み合わせの中から空調システム1の管理者等が適切な組み合わせを選択するようにしてもよい。
次に、算出部404は、算出された設定温度毎の特徴量及び上記した識別境界情報に含まれる識別境界パラメータに基づいて、当該特徴量(設定温度)を許容範囲内のグループと許容範囲外のグループとに分類する。
ここで、図19は、設定温度毎の特徴量(スケールパラメータλ及び形状パラメータp)がプロットされた結果の一例を示している。図19においては、縦軸が形状パラメータpを表し、横軸がスケールパラメータλを表している。また、図19に示す丸印は、それぞれ設定温度毎の特徴量(プロット値)を表している。
図19に示すようにプロットされた設定温度毎の特徴量は、識別境界線90によって許容範囲内のグループと許容範囲外のグループとに分類することができる。
なお、識別境界線90は、識別境界パラメータに基づいて求めることができる。具体的には、上記した図11に示す識別境界情報に含まれる識別境界パラメータは「(a,b)」であるが、この「(a,b)」は、一次関数における傾きa及び切片bを表している。すなわち、図19における識別境界線90は、傾きa、切片bの一次関数(直線)である。この識別境界パラメータは、例えば特徴量を説明変数とし、許容範囲内のグループであるか許容範囲外のグループであるか(利用者による判定結果)を目的変数としたサポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)モデル等の機械学習によって予め定められているが、他の手法を用いて定められていてもよい。また、識別境界パラメータは、例えば設定温度の継続時間の長短に対する利用者の判定結果等に基づいて定められてもよい。
図19に示す例において、識別境界線90の左上に位置する領域は、許容範囲内に相当する領域である。一方、識別境界線90の右下に位置する領域は、許容範囲外に相当する領域である。これによれば、算出部404は、設定温度「20℃」及び「21℃」を許容範囲内のグループ、設定温度「19℃」を許容範囲外のグループに分類することができる。
算出部404は、上記した分類結果に基づいて、各設定温度が許容範囲内であるか否かを判定する。算出部404は、この判定結果に基づいて許容範囲を特定し、当該許容範囲を示す許容範囲情報(テーブル)を生成する。
なお、設定温度が許容範囲内であるか否かを判定する手法は、ここで説明したものに限られない。例えば予め係数パラメータが算出されているロジスティック分布を利用して、設定温度毎に算出した特徴量をロジスティック分布の説明変数に代入して得られるロジスティック分布の値を設定温度が許容範囲内であるか否かの判定に利用するようにしてもよい。
図20は、許容範囲情報のデータ構造の一例を示す。図20に示すように、許容範囲情報には、運転モード(冷暖房種類)に対応づけて設定温度及び許容範囲判定結果が含まれる。
運転モードには「暖房」または「冷房」が含まれるが、本実施形態において空調機20は暖房運転を行っているため、図20に示す運転モードは「暖房」である。許容範囲判定結果は、対応づけられている設定温度が許容範囲内のグループに分類されている場合には「許容範囲内」となり、当該設定温度が許容範囲外のグループに分類されている場合には「許容範囲外」となる。
図20に示す例では、許容範囲情報には、運転モード「暖房」に対応づけて設定温度「21」及び許容範囲判定結果「許容範囲内」が含まれている。これによれば、空調機20が暖房運転を行っている場合において、21℃の設定温度は利用者にとって許容範囲内であることが示されている。
また、許容範囲情報には、運転モード「暖房」に対応づけて設定温度「20」及び許容範囲判定結果「許容範囲内」が含まれている。これによれば、空調機20が暖房運転を行っている場合において、20℃の設定温度は利用者にとって許容範囲内であることが示されている。
また、許容範囲情報には、運転モード「暖房」に対応づけて設定温度「19」及び許容範囲判定結果「許容範囲外」が含まれている。これによれば、空調機20が暖房運転を行っている場合において、19℃の設定温度は利用者にとって許容範囲外である(許容範囲内ではない)ことが示されている。
すなわち、図20に示す例では、設定温度「20℃」が許容範囲の境界であり、設定温度「19℃」以下は許容範囲外となることが示されている。なお、図20においては省略されているが、運転モードが「暖房」である場合において予め定められた値以上の設定温度は許容範囲外としてもよい。同様に、運転モードが「冷房」である場合において予め定められた値以下の設定温度は許容範囲外としてもよい。
本実施形態においては、上記したように制御値履歴情報に基づいて特定される空調機20の各設定温度が継続された継続時間(設定温度継続時間)に基づいて当該継続時間に関する特徴量が算出され、当該特徴量に基づいて空調機20の設定温度に対する利用者の許容範囲が算出される。
再び図15に戻ると、上記した許容範囲情報(ステップS13において算出された許容範囲を示す許容範囲情報)が許容範囲格納部405に格納される(ステップS14)。
次に、決定部406は、設定情報格納部401に設定情報として格納されている設定温度変更時刻情報を取得する。決定部406は、取得された設定温度変更時刻情報に基づいて、現在の時刻が設定温度変更時刻であるか否かを判定する(ステップS15)。
具体的には、例えば上記した図9に示すように設定温度変更時刻情報に設定温度変更時刻「10:00:00」が含まれている場合、ステップS15においては、現在の時刻が10時0分0秒である場合に現在の時刻が設定温度変更時刻であると判定する。なお、設定温度変更時刻情報に含まれる設定温度変更時刻「12:00:00」及び「15:00:00」についても同様である。
現在の時刻が設定温度変更時刻であると判定された場合(ステップS15のYES)、決定部406は、ステップS14において許容範囲格納部405に格納された許容範囲情報及び設定情報格納部401に設定情報として格納されている制御内容情報に基づいて、探索実施期間用の設定温度決定処理(以下、第1設定温度決定処理と表記)を実行する(ステップS16)。この第1設定温度決定処理により、空調機20の設定温度が決定される。
ここで、図21は、制御内容情報のデータ構造の一例を示す。図21に示すように、制御内容情報には、期間、運転モード、設定温度及び制御内容が対応づけて含まれる。なお、制御内容情報は、当該制御内容情報に含まれる期間、運転モード及び設定温度に基づく条件(絞り込み条件)を満たす場合に、これらに対応づけられている制御内容に基づく処理(制御)を実行することを示している。
図21に示す例では、第1〜第4制御内容情報を含む複数の制御内容情報が予め用意されている。
第1制御内容情報には、期間「探索実施期間」、運転モード「暖房」、設定温度「最適温度−Td以下」及び制御内容「変更しない」が対応づけて含まれている。この第1制御内容情報によれば、現在の日時が探索実施期間内であり、空調機20が暖房運転を行っており、かつ、空調機20の現在の設定温度が最適温度−Td以下である場合には、既に省エネを実現する運転が行われていると推定し、空調機20の設定温度を変更しないことが示されている。
なお、本実施形態において、最適温度(最適な設定温度)とは、上記した許容範囲情報によって示される許容範囲内の設定温度のうち、最も省エネとなる設定温度である。具体的には、図20に示す許容範囲情報の場合には最適温度は20℃である。
ここでは、許容範囲内の設定温度のうちの最も省エネとなる設定温度を最適温度とするものとして説明したが、最適温度は、許容範囲内、かつ、予め定められた範囲内(所定の閾値以上、かつ、所定の閾値以内)の設定温度のうちの最も省エネとなる設定温度としてもよいし、例えば時刻、室内にいる利用者の人数、空調機20の設置環境等の条件を考慮して決定されてもよい。なお、室内にいる利用者の人数は例えば各種センサ等によって取得可能であり、空調機20の設置環境については例えば空調制御装置40内において予め設定されていてもよい。
また、第1制御内容情報におけるTdは、例えば最適温度−Tdが空調機20に設定可能な数値(設定温度)となる範囲内で予め定められていればよい。
第2制御内容情報には、期間「探索実施期間」、運転モード「暖房」、設定温度「最適温度−Tdより高い」及び制御内容「最適温度−Td」が対応づけて含まれている。この第2制御内容情報によれば、現在の日時が探索実施期間内であり、空調機20が暖房運転を行っており、かつ、空調機20の現在の設定温度が最適温度−Tdよりも高い場合には、空調機20の設定温度を最適温度−Tdに決定(変更)することを示している。本実施形態においては、このように空調機20の設定温度を最適温度−Tdに変更することによって、現在の許容範囲の範囲外の設定温度(つまり、最適温度−Td)を利用者が許容できるか否かを探索することができる。
第3制御内容情報には、期間「探索不実施期間」、運転モード「暖房」、設定温度「最適温度以下」及び制御内容「変更しない」が対応づけて含まれている。この第3制御内容情報によれば、現在の日時が探索不実施期間内であり、空調機20が暖房運転を行っており、かつ、空調機20の現在の設定温度が最適温度以下である場合には、既に省エネを実現する運転が行われていると推定し、空調機20の設定温度を変更しないことが示されている。 第4制御内容情報には、期間「探索不実施期間」、運転モード「暖房」、設定温度「最適温度より高い」及び制御内容「最適温度」が対応づけて含まれている。この第4制御内容情報によれば、現在の日時が探索不実施期間内であり、空調機20が暖房運転を行っており、かつ、空調機20の現在の設定温度が最適温度よりも高い場合には、空調機20の設定温度を最適温度に決定(変更)することを示している。
以下、上記した図21に示す制御内容情報を用いて、ステップS16の処理(第1設定温度決定処理)について具体的に説明する。ここで、図15に示す処理は探索実施期間処理である(つまり、現在の時刻が探索実施期間内である)ため、決定部406は、図21に示す第1〜第4制御内容情報のうち、期間が「探索実施期間」である第1及び第2制御内容情報を取得する。
この場合において、上記したように空調機20が暖房運転を行っているものとすると、例えば空調機20の現在の設定温度が最適温度(例えば、20℃)−Td以下である場合には、決定部406は、第1制御内容情報に含まれる制御内容に基づいて空調機20の現在の設定温度を変更しないことを決定する。
一方、例えば空調機20の現在の設定温度が最適温度−Tdよりも高い場合には、決定部406は、第2制御内容情報に含まれる制御内容に基づいて空調機20の設定温度として最適温度−Tdを決定する。
なお、上記したように制御内容(制御内容情報)を絞り込むための空調機20の現在の運転モード及び設定温度は、例えば空調機20から取得されてもよいし、例えば履歴情報格納部403に格納されている直近の制御値履歴情報から取得されてもよい。
上記した第1設定温度決定処理において、空調機20の設定温度として最適温度−Tdが決定された場合、以下のステップS17以降の処理が実行される。一方、第1設定温度決定処理において、空調機20の設定温度として最適温度−Tdが決定されない場合(つまり、空調機20の設定温度を変更しないことが決定された場合)、図15に示す探索実施期間処理は終了される。
なお、ここでは許容範囲格納部405に許容範囲情報が格納されているものとして説明したが、例えば許容範囲情報が許容範囲格納部405に格納されていないような場合には、予め定められている設定温度を最適温度として第1設定温度決定処理が実行されても構わない。
上記したようにステップS16において空調機20の設定温度(最適温度−Td)が決定された場合、当該空調機20の設定温度を評価する処理が実行される(ステップS17)。なお、ステップS17の処理は、第1評価部407及び第2評価部408のうちの少なくとも一方によって実行される。
ステップS17の処理が第1評価部407によって実行される場合、当該第1評価部407は、ステップS16において決定された空調機20の設定温度を、空調機20の現在の設定温度に基づいて評価する。
一方、ステップS17の処理が第2評価部408によって実行される場合、当該第2評価部408は、ステップS16において決定された空調機20の設定温度を、当該空調機20の設定温度に基づいて取得される環境値履歴情報に基づいて評価する。
次に、補正部409は、ステップS17において評価された結果(第1評価部407による評価結果または第2評価部408による評価結果)に基づいて、ステップS16において決定された空調機20の設定温度を補正する(ステップS18)。
以下、上記したステップS17及びS18の処理について具体的に説明する。まず、図22を参照して、第1評価部407による評価結果(以下、第1評価結果と表記)に基づいて空調機20の制御値を補正する場合について説明する。
ここでは、ステップS16において決定された空調機20の設定温度(最適温度−Td)を設定温度Sa、空調機20の現在の設定温度を設定温度S0、空調機20の補正後の設定温度を設定温度Sとして説明する。
この場合、第1評価部407は、設定温度Saと設定温度S0とを比較し、当該設定温度Sa及び設定温度S0の差分を算出する。
ここで、図22の上段に示すように、設定温度Sa及び設定温度S0の差分が予め定められている値(以下、ΔTと表記)以上である場合を想定する。この場合、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT(℃)以上であることが第1評価結果として第1評価部407から補正部409に出力される。
このような第1評価結果が得られると、補正部409は、設定温度S0−Dsを設定温度Sとする。なお、Dsは予め定められた値であるが、0<Ds<ΔTである。
すなわち、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT以上である場合には、空調機20の設定温度が急激に変更されることにより利用者が不快と感じることを回避するために、設定温度Saを、当該設定温度Saよりも高いが設定温度S0よりも低い設定温度Sに補正する。
ここでは設定温度Saを設定温度S0からDsを減算することによって得られる設定温度Sに補正するものとして説明したが、例えば0<Ds<1とし、設定温度Saを設定温度S0にDsを乗算することによって得られる設定温度Sに補正するようにしてもよい(つまり、S=S0*Ds)。なお、設定温度Saから設定温度Sへの補正は他の手法により行われても構わない。
一方、図22の下段に示すように、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT未満である場合を想定する。この場合、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT未満であることが第1評価結果として第1評価部407から補正部409に出力される。
このような第1評価結果が得られると、補正部409は、設定温度Saを設定温度Sとする(つまり、S=Sa)。
すなわち、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT未満である場合には、当該設定温度S0を設定温度Saに変更したとしても上記したように利用者が不快と感じる可能性が低いと推定し、当該設定温度Saを補正することなく設定温度Sとして用いる。
次に、図23を参照して、第2評価部408による評価結果(以下、第2評価結果と表記)に基づいて空調機20の設定温度を補正する場合について説明する。
ここでは、上記した図22において説明したように、ステップS16において決定された空調機20の設定温度(最適温度−Td)を設定温度Sa、空調機20の現在の設定温度を設定温度S0、空調機20の補正後の設定温度を設定温度Sとして説明する。
この場合、第2評価部408は、現在の環境値(以下、環境値T0と表記)を取得する。なお、環境値T0は、環境値取得装置30から取得されてもよいし、履歴情報格納部403に格納されている直近の環境値履歴情報(最後に履歴情報格納部403に格納された環境値履歴情報)から取得されてもよい。
次に、第2評価部408は、過去に設定温度Saを用いて空調機20の運転が制御されていた際の環境値(を含む環境値履歴情報)を取得する。具体的には、第2評価部408は、履歴情報格納部403を参照して、設定温度Saを含む制御値履歴情報に含まれる日時を特定し、当該特定された日時を含む環境値履歴情報を当該履歴情報格納部403から取得する。
第2評価部408は、取得された環境値履歴情報に含まれる環境値(例えば、室温)の分布を表すヒストグラムを生成する。第2評価部408は、生成されたヒストグラムの閾値Tbを算出する。なお、閾値Tbは、例えばヒストグラムの下側10パーセントタイル点(つまり、当該ヒストグラムにおいて下から10%の位置)の環境値とすることができる。なお、閾値Tbは、取得された環境値履歴情報に含まれる環境値の他の代表値(例えば、平均値等)であってもよいし、他の手法により算出されてもよい。
次に、第2評価部408は、上記したように算出された閾値Tbと環境値T0とを比較する。
ここで、図23の上段に示すように、環境値T0が閾値Tbよりも小さい(低い)場合を想定する。この場合、環境値T0が閾値Tbよりも小さいことが第2評価結果として第2評価部408から補正部409に出力される。
このような第2評価結果が得られると、補正部409は、設定温度S0−Drを設定温度Sとする。なお、Drは、予め定められた値であるが、少なくとも設定温度S0−Dr(=S)が設定温度Saを下回らない程度の値に設定されているものとする。また、Drは、上記したDsと同じ値であってもよいし、当該Dsとは異なる値であってもよい。
すなわち、環境値T0が閾値Tbより小さい場合には、設定温度S0の設定温度Saへの変更に応じて閾値Tbよりも小さい環境値が更に悪化する(例えば、室温が下がる)ことより利用者が不快と感じることを回避するために、設定温度Saを、当該設定温度Saよりも高いが設定温度S0よりも低い設定温度Sに補正する。このような補正によれば、例えば現在の室温等が低い場合には、必要以上に設定温度を下げすぎないような制御が可能となる。
ここでは設定温度Saを設定温度S0からDrを減算することによって得られる設定温度Sに補正するものとして説明したが、例えば0<Dr<1とし、設定温度Saを設定温度S0にDrを乗算することによって得られる設定温度Sに補正するようにしてもよい(つまり、S=S0*Dr)。なお、設定温度Saから設定温度Sへの補正は他の手法により行われても構わない。
一方、図23の下段に示すように、環境値T0が閾値Tbよりも大きい(高い)場合を想定する。この場合、環境値T0が閾値Tbよりも大きいことが第2評価結果として第2評価部408から補正部409に出力される。
このような第2評価結果が得られると、補正部409は、設定温度Saを設定温度Sとする(つまり、S=Sa)。
すなわち、環境値T0が閾値Tbより大きい場合には、設定温度S0を設定温度Saに変更したとしても利用者が不快と感じる程度まで環境値が下がる可能性が低いと推定し、当該設定温度Saを補正することなく設定温度Sとして用いる。
なお、本実施形態において、環境値には例えば室温、室内湿度、外気温及び外気湿度等が含まれるが、図23において説明した処理はこれらのうちの少なくとも1つを用いて実行されてもよいし、2つ以上を用いて実行されてもよい。なお、室温、室内湿度、外気温及び外気湿度のうちの2つ以上を用いる場合には、環境値毎に図23において説明した処理を実行し、当該環境値毎に得られた設定温度Sに基づいて1つの設定温度S(例えば平均値または最頻値等)を決定してもよい。
再び図15に戻ると、補正部409は、上記したステップS18の処理が実行されることによって得られた設定温度(S)を、空調制御装置40から空調機20に出力(送信)する(ステップS19)。これにより、空調機20の現在の設定温度がステップS20において出力された設定温度に変更され、当該空調機20の運転は、当該変更された設定温度に基づいて制御される(つまり、空調制御装置40による空調制御が実施される)。
なお、ステップS11において現在の時刻が許容範囲算出時刻でないと判定された場合(ステップS11のNO)、ステップS12〜S14の処理は実行されず、ステップS15以降の処理が実行される。
また、ステップS15において現在の時刻が設定温度変更時刻でないと判定された場合(ステップS15のNO)、ステップS16〜S19の処理は実行されず、探索実施期間処理は終了される。
上記した探索実施期間処理によれば、空調機20の現在の設定温度が許容範囲情報によって示される許容範囲の範囲外の制御値(つまり、最適温度−Td)に変更されることによって利用者の許容範囲を探索することができる。
具体的には、上記した許容範囲の範囲外の設定温度に基づく空調機20による空調制御を利用者が許容できる場合には、当該空調制御(つまり、空調機20の運転)が維持される。一方、許容範囲の範囲外の設定温度に基づく空調機20による空調制御を利用者が許容できない場合には、当該利用者は入力機器10を操作することによって空調機20の設定温度を変更することになる。
なお、このような運転を行う空調機20の設定温度は、上記したように取得部402によって定期的に取得され、制御値履歴情報として履歴情報格納部403に蓄積される。
このため、上記したように例えば最適温度−Tdに基づく空調制御を利用者が許容できる場合には、当該最適温度−Tdに対応する設定温度継続時間が長くなり、次回の図15に示す処理が実行された際に、最適温度−Tdが最適温度となるような許容範囲が算出される可能性が高い。
すなわち、このような探索実施期間処理によれば、探索実施期間において利用者の許容範囲を広げるような設定温度の変更が可能となる。
また、省エネを実現するためには利用者の許容範囲を広げることが好ましいが、例えば現在の設定温度を最適温度−Tdに変更した場合に利用者が不快に感じる可能性が高い場合には、現在の設定温度は、最適温度−Tdを補正した設定温度(S0−DsまたはS0−Dr)に変更される。
なお、図15に示す探索実施期間処理は探索実施期間中に定期的に実行されるが、空調機20の現在の設定温度を上記した最適温度−Tdに変更したとしても、当該最適温度−Tdに基づく空調制御が利用者によって許容されない(つまり、当該設定温度が利用者によって変更される)ことが多い場合には、当該Tdの値を変更する(例えば、Tdの値を小さくする)ような構成としてもよい。
ここで、図15においては第1または第2評価結果を用いて決定部406によって決定された空調機20の設定温度を補正するものとして説明したが、当該設定温度を補正するために第1評価結果を用いるか第2評価結果を用いるかは、例えば探索実施期間処理を実行する日付に応じて動的に変更する構成としても構わない。
なお、図24は、設定温度を補正するために用いる評価結果が設定された評価結果設定情報(テーブル)のデータ構造の一例を示している。この評価結果設定情報は、例えば設定情報として設定情報格納部401等に格納されていればよい。
図24に示す例では、評価結果設定情報には、例えば日付「2016−12−15」に対応づけて評価結果「第1評価結果」が含まれている。この評価結果設定情報によれば、2016年12月15日に実行される探索実施期間処理(または探索不実施期間処理)においては第1評価結果を用いて設定温度を補正することが設定されている。
また、評価結果設定情報には、例えば日付「2016−12−25」に対応づけて評価結果「第2評価結果」が含まれている。この評価結果設定情報によれば、2016年12月25日に実行される探索実施期間処理(または探索不実施期間処理)においては第2評価結果を用いて設定温度を補正することが設定されている。
更に、評価結果設定情報には、例えば日付「2017−01−10」に対応づけて評価結果「選択」が含まれている。この評価結果設定情報によれば、2017年1月10日において実行される探索実施期間処理(または探索不実施期間処理)においては、例えば所定の情報に基づいて第1及び第2評価結果のうちの一方を動的に選択して当該設定温度を補正することが設定されている。
ここで、図25は、上記したように設定温度を補正するために用いる評価結果(第1または第2評価結果)を選択するための評価結果選択情報(テーブル)のデータ構造の一例を示す。なお、評価結果選択情報は、例えば履歴情報格納部403に格納されていればよい。
図25に示すように、評価結果選択情報には、例えば第1評価結果を用いて設定温度が補正された総数(以下、第1評価結果の総数と表記)とその成功数(以下、第1評価結果の成功数と表記)が含まれている。なお、評価結果選択情報に含まれる成功数における「成功」とは、例えば第1評価結果を用いて補正された設定温度が利用者によって許容された(受け入れられた)ことを意味する。具体的には、「成功」とは、補正された設定温度に基づく空調機20の運転が行われた場合に、当該空調機20の空調制御を利用者が一定期間(例えば、2時間等)許容することができた(つまり、当該設定温度が利用者によって変更されなかった)ことをいう。なお、成功数をカウントするための一定期間は例えば3時間または4時間等であってもよいし、「成功」の定義についてもここで説明したものと異なっていてもよい。
なお、評価結果選択情報には、第1評価結果と同様に、第2評価結果の総数及び成功数が含まれている。
上記した評価結果選択情報に含まれる第1評価結果の総数及び成功数は、補正部409から出力される空調機20の設定温度(補正された設定温度)及び履歴情報格納部403に格納される制御値履歴情報に基づいて、第1評価結果を用いて設定温度の補正が行われる及び当該補正された設定温度に基づいて空調機20の運転が制御される度に更新される。第2評価結果の総数及び成功数についても同様である。
ここで、評価結果選択情報に含まれる第1評価結果の総数及び成功数によれば、当該第1評価結果の成功率を算出することができる。図25に示す例では、第1評価結果の総数は180であり、第1評価結果の成功数は160であるため、第1評価結果の成功率は、89%(=160/180)である。
同様に、評価結果選択情報に含まれる第2評価結果の総数及び成功数によれば、当該第2評価結果の成功率を算出することができる。図25に示す例では、第2評価結果の総数は130であり、第2評価結果の成功数は110であるため、第2評価結果の成功率は、85%(110/130)である。
この場合、設定温度を補正するために用いられる評価結果としては、より成功率の高い評価結果(ここでは、第1評価結果)を選択するものとする。
ここでは、図25に示す評価結果選択情報を用いて算出される成功率に基づいて第1及び第2評価結果のうちの一方を選択する構成について説明したが、設定温度を補正するために用いる評価結果(第1または第2評価結果)は、例えば第1及び第2評価結果の各々に対して予め設定されている優先度(条件)等に応じて選択されてもよい。
なお、図24においては省略されているが、評価結果設定情報には評価結果「両方」が設定されていても構わない。評価結果「両方」が設定されている場合には、第1評価結果及び第2評価結果の両方を用いて設定温度を補正するものとする。以下、第1及び第2評価結果の両方を用いて設定温度を補正する場合における空調制御装置40の動作について具体的に説明する。
ここでは、図22の上段に示すように設定温度Sa(決定部406によって決定された設定温度)及び設定温度S0(空調機20の現在の設定温度)の差分がΔT以上であるという第1評価結果が得られ、図23の上段に示すように環境値T0が閾値Tbよりも小さいという第2評価結果が得られた場合を想定する。
この場合、設定温度S(補正後の設定温度)は、以下の式(3)のように表すことができる。
S=S0−ws*Ds−wr*Dr 式(3)
ここで、式(3)におけるwsはDsに対する重みであり、wrはDrに対する重みである。上記した図22及び図23においては、設定温度Sa及び設定温度S0の差分がΔT以上である場合にはS=S0−Dsとし、環境値T0が閾値Tbよりも小さい場合にはS=S0−Drとすることを説明したが、第1評価結果及び第2評価結果の両方を用いる場合には、式(3)に示すように当該Ds及びDrに対して重みws及びwrを加えた形式とすることで、第1及び第2評価結果の両方を考慮した適切な設定温度Sを得ることができる。
なお、式(3)に用いられる重みws及びwrが設定された情報(以下、重み情報と表記)は例えば設定情報として設定情報格納部401に予め格納されていればよい。
ここで、図26は、重み情報のデータ構造の一例を示す。図26に示す例では、重み情報には重みws及びwrの複数の組み合わせが含まれているが、当該複数の組み合わせのうちの1つを式(3)に適用することによって設定温度Sが算出されるものとする。具体的には、図26に示すws「0.5」及びwr「0.5」の組み合わせ(を含む重み情報)を式(3)に適用した場合には、S=S0−0.5*Ds−0.5*Drとなる。
なお、図26に示す複数のws及びwrの組み合わせのうち式(3)に適用する組み合わせは、例えば空調システム1の管理者等によって予め指定されていてもよいし、日時や空調機20の設置環境等に応じて動的に変更されてもよい。
また、図26に示すws及びwrの組み合わせは一例であり、ws及びwrは、それぞれ1よりも小さい値(つまり、0<ws<1、0<wr<1)であればよい。
例えば、図25の第1評価結果の成功率と第2評価結果の成功率からwsとwrの値を算出して利用することも考えられる。この場合、ws=(第1評価結果の成功率)/(第1評価結果の成功率+第2評価結果の成功率)、wr=(第2評価結果の成功率)/(第1評価結果の成功率+第2評価結果の成功率)のようにすればよい。図25の第1評価結果の成功率と第2評価結果の成功率からwsとwrを算出する方法はここで示したものに限定されない。
更に、第1及び第2評価結果の両方を用いて設定温度を補正する手法(つまり、設定温度Sを算出する手法)はここで説明した以外の手法であってもよく、例えば上記した第1評価結果を用いた場合の設定温度(S0−Ds)と第2評価結果を用いた場合の設定温度(S0−Dr)の平均値等を設定温度Sとしてもよい。
ここでは、第1評価結果を用いて得られる設定温度がS0−Dsであり、第2評価結果を用いて得られる設定温度がS0−Drである場合について説明したが、第1評価結果を用いて得られる設定温度及び第2評価結果を用いて得られる設定温度のうちの一方がSa(最適温度−Td)である場合であっても、同様に当該設定温度の各々に対して重み付けを行うこと等によって設定温度Sを決定すればよい。なお、第1評価結果を用いて得られる設定温度及び第2評価結果を用いて得られる設定温度の両方がSa(最適温度−Td)であれば、設定温度S=Saとすればよい。
次に、図27のフローチャートを参照して、探索不実施期間処理の処理手順の一例について説明する。
まず、決定部406は、設定情報格納部401に設定情報として格納されている設定温度変更時刻情報を取得する。決定部406は、取得された設定温度変更時刻情報に基づいて、現在の時刻が設定温度変更時刻であるか否かを判定する(ステップS21)。なお、このステップS21の処理は、上記した図15に示すステップS15の処理と同一の処理である。
現在の時刻が設定温度変更時刻であると判定された場合(ステップS21のYES)、決定部406は、許容範囲格納部405に格納されている許容範囲情報及び設定情報格納部401に設定情報として格納されている制御内容情報に基づいて、探索不実施期間用の設定温度決定処理(以下、第2設定温度決定処理と表記)を実行する(ステップS22)。
以下、上記した図21に示す制御内容情報を用いて、ステップS22の処理(第2設定温度決定処理)について具体的に説明する。ここで、図27に示す処理は探索不実施期間処理である(つまり、現在の時刻は探索不実施期間内である)ため、決定部406は、図21に示す第1〜第4制御内容情報のうち、期間が「探索不実施期間」である第3及び第4制御内容情報を取得する。
この場合において、上記したように空調機20が暖房運転を行っているものとすると、例えば空調機20の現在の設定温度が最適温度以下である場合には、決定部406は、第3制御内容情報に含まれる制御内容に基づいて空調機20の設定温度を変更しないことを決定する。
一方、例えば空調機20の現在の設定温度が最適温度よりも高い場合には、決定部406は、第4制御内容情報に含まれる制御内容に基づいて空調機20の設定温度として最適温度を決定する。
なお、上記したように制御内容(制御内容情報)を絞り込むための空調機20の現在の運転モード及び設定温度は、例えば空調機20から取得されてもよいし、例えば履歴情報格納部403に格納されている直近の制御値履歴情報から取得されてもよい。
上記した第2設定温度決定処理において、空調機20の設定温度として最適温度が決定された場合、以下のステップS23以降の処理が実行される。一方、第2設定温度決定処理において、空調機20の設定温度として最適温度が決定されない場合(つまり、空調機20の設定温度を変更しないことが決定された場合)、図27に示す探索不実施期間処理は終了される。
なお、第2設定温度決定処理は、絞り込まれる制御内容情報(つまり、決定部406によって実行される制御内容)が異なる点以外は、上記した図15に示すステップS16において実行される第1設定温度決定処理と同様の処理である。
ステップS22において空調機20の設定温度(最適温度)が決定された場合、上記した図15に示すステップS17〜S19の処理に相当するステップS23〜S25の処理が実行される。具体的には、このステップS23〜S25の処理は、図15に示すステップS17〜S19における最適温度−Tdを最適温度とする以外は当該ステップS17〜S19の処理と同様である。
上記した探索不実施期間処理によれば、空調機20の現在の設定温度を許容範囲情報によって示される許容範囲の範囲内の設定温度(つまり、最適温度)に変更することができる。
ここで、本実施形態においては、探索実施期間処理において許容範囲を算出する処理(図15に示すステップS11〜S14の処理)が実行され、探索不実施期間処理においては当該許容範囲を算出する処理が実行されないものとして説明したが、この許容範囲を算出する処理は、探索実施期間処理及び探索不実施期間処理の両方において実行されてもよいし、探索不実施期間処理においてのみ実行されても構わない。なお、上記したように許容範囲算出時刻情報に許容範囲を算出するタイミングに関する条件等が含まれている場合には、許容範囲を算出する処理は当該条件に従ったタイミングで実行されればよい。
また、本実施形態においては、探索実施期間処理及び探索不実施期間処理の両方において空調機20の設定温度を補正する処理(図15に示すステップS17及びS18、図27に示すステップS23及びS24)が実行されるが、当該設定温度を補正する処理(以下、単に補正処理と表記)は、探索実施期間処理及び探索不実施期間処理の少なくとも一方において実行されてもよいし、探索実施期間処理及び探索不実施期間処理の両方で実行されない構成としてもよい。補正処理が実行されない場合には、空調機20の現在の設定温度が決定部406によって決定された設定温度に変更されればよい。
なお、探索実施期間処理及び探索不実施期間処理において補正処理を実行するか否かは、例えば図28に示すような情報(以下、補正処理設定情報と表記)において設定可能である。この補正処理設定情報は、例えば設定情報として設定情報格納部401に格納されていればよい。
図28に示すように、補正処理設定情報には、探索実施期間(処理)及び探索不実施期間(処理)毎に、補正処理を実行するか否か(補正の有無)が設定されており、補正処理を実行することが設定されている場合には、当該補正の種類が更に設定されている。
なお、補正の種類は、「0」及び「1」を含む。補正の種類「0」は、第1評価結果を用いて設定温度を補正することを表す。補正の種類「1」は、第2評価結果を用いて設定温度を補正することを表す。なお、図28においては示されていないが、補正の種類には、例えば第1及び第2評価結果のうちの一方を選択して設定温度を補正することを表す「2」や第1及び第2評価結果の両方を用いて設定温度を補正することを表す「3」等が含まれていてもよい。
また、補正処理設定情報には、探索実施期間及び探索不実施期間の各々に設定された補正の有無及び補正の種類の組み合わせ毎に対応づけて利用フラグが含まれており、当該利用フラグを変更することによって、探索実施期間及び探索不実施期間に補正を実行するか否かまたは当該補正の種類等を変更することができる。なお、利用フラグ「1」は、当該利用フラグに対応する設定(補正の有無及び補正の種類)が有効であることを示す。一方、利用フラグ「0」は、当該利用フラグに対応する設定(補正の有無及び補正の種類)が有効でない(無効である)ことを示す。
図28に示す例では、探索実施期間の補正の有無「有」及び補正の種類「0」と、探索不実施期間の補正の有無「有」及び補正の種類「0」とに対応づけられている利用フラグが「1」である。この場合、探索実施期間処理において第1評価結果を用いた補正処理が実行され、探索不実施期間処理において第1評価結果を用いた補正処理が実行されることが設定されている。
なお、探索実施期間の補正の有無「有」及び補正の種類「0」と、探索不実施期間の補正の有無「有」及び補正の種類「0」とに対応づけられている利用フラグを「1」から「0」に変更し、探索実施期間の補正の有無「無」及び補正の種類「−」と、探索不実施期間の補正の有無「有」及び補正の種類「0」とに対応づけられている利用フラグが「0」から「1」に変更された場合には、探索実施期間処理において補正処理が実行されず、探索不実施期間処理において第1評価結果を用いた補正処理が実行される設定に変更することができる。
ここでは補正処理設定情報に補正の有無及び補正の種類が設定されているものとして説明したが、上記した評価結果設定情報が予め用意されている場合には、当該評価結果設定情報において補正の種類に相当する内容が設定されるため、補正処理設定情報には補正の有無のみが設定されるようにしてもよい。
上記したように本実施形態においては、空調機20の制御値(例えば、運転モード及び設定温度等)の履歴を含む制御値履歴情報を取得し、当該制御値履歴情報に基づいて、空調機20の設定温度に対する利用者の許容範囲を算出し、当該許容範囲に基づいて当該空調機20の設定温度(以下、省エネ設定温度と表記)を決定し、当該空調機20の現在の設定温度(以下、単に現在の設定温度と表記)に基づいて、当該省エネ設定温度を補正する。このように補正された設定温度は空調機20に出力され、当該空調機20の運転は、当該設定温度に基づいて制御される。
本実施形態においては、このような構成により、現在の設定温度を利用者の許容範囲内において省エネを実現することが可能な省エネ設定温度に変更することができるとともに、当該省エネ設定温度に変更することによって利用者に不快感を与えるような可能性がある場合には当該省エネ設定温度を補正することができるため、利用者の快適度と省エネとを両立させることが可能となる。
なお、省エネ設定温度は、当該省エネ設定温度と現在の設定温度との差分に基づいて補正される。具体的には、省エネ設定温度は、例えば当該省エネ設定温度と現在の設定温度との差分が予め定められた値(ΔT)未満である場合には補正されないが、当該差分が予め定められた値(ΔT)以上である場合に補正される。この場合、省エネ設定温度は、例えば当該省エネ設定温度と現在の設定温度との間の値に補正される。このような構成によれば、新たな設定温度(省エネ設定温度)と現在の設定温度とが大きく乖離する(つまり、設定温度が急激に変更される)ことにより利用者が不快と感じることを回避することができる。
ここでは現在の設定温度に基づいて省エネ設定温度を補正する構成について主に説明したが、本実施形態においては、空調機20の周辺の環境に関する環境値を用いて当該省エネ設定温度を補正してもよい。
この場合、省エネ設定温度は、当該省エネ設定温度を用いて空調機20の運転が制御された際の環境値(環境値履歴情報に基づいて特定される過去の環境値)と現在の環境値とに基づいて補正される。具体的には、省エネ設定温度を用いて空調機20の運転が制御された際の環境値よりも現在の環境値が大きい場合には補正されないが、当該省エネ設定温度を用いて空調機20の運転が制御された際の環境値よりも現在の環境値が小さい場合に補正される。この場合、省エネ設定温度は、例えば当該省エネ設定温度と現在の設定温度との間の値に補正される。このような構成によれば、空調機20の設定温度が変更されることによって遷移すると推定される環境値と現在の環境値とが大きく乖離することにより利用者が不快と感じることを回避することができる。すなわち、本実施形態においては、空調機20の周辺の環境(空調機20の対象とする空間や外部の環境)の影響を考慮して空調機20の設定温度を変更することができる。
更に、省エネ設定温度は、当該省エネ設定温度と現在の設定温度との差分を利用して補正するか、当該省エネ設定温度を用いて空調機20の運転が制御された際の環境値と現在の環境値の関係に基づいて補正するかのどちらかを選択可能である。また、当該省エネ設定温度と現在の設定温度との差分と、当該省エネ設定温度を用いて空調機20の運転が制御された際の環境値と現在の環境値の関係を組みわせることによって、省エネ設定温度を補正する。このような構成によれば、新たな設定温度(省エネ設定温度)と現在の設定温度の乖離と、空調機20の設定温度が変更されることによって遷移すると推定される環境値と現在の環境値との乖離のいずれかもしくは両方により、利用者が不快と感じることを回避することができる。
また、本実施形態によれば、許容範囲の探索を実施する探索実施期間(予め定められた第1期間)においては、許容範囲の範囲外の省エネ設定温度(例えば、最適気温−Td)が決定される。一方、許容範囲の探索を実行しない探索不実施期間(予め定められた第2期間)においては、許容範囲の範囲内の省エネ設定温度(例えば、最適気温)が決定される。本実施形態においては、このような探索実施期間及び探索不実施期間が繰り返されることにより、探索実施期間においては許容範囲を探索するような設定温度で空調機20の運転を制御することができるとともに、探索不実施期間においては当該探索された許容範囲に基づく最適な設定温度(最適温度)で空調機20の運転を制御することができる。
なお、本実施形態においては、例えば探索実施期間において許容範囲が算出されるものとして説明したが、当該許容範囲が算出されるタイミングは他のタイミングであってもよい。具体的には、許容範囲は、探索不実施期間に算出されてもよいし、探索実施期間及び探索不実施期間の両方で算出されてもよい。
また、許容範囲は、探索実施期間及び探索不実施期間が切り替わるタイミングで算出されてもよい。
ここで、本実施形態における探索実施期間及び探索不実施期間は交互に配置されるところ、例えば探索不実施期間から探索実施期間に切り替わるタイミングで許容範囲を算出する場合を想定する。上記したように探索不実施期間においては最適温度に基づいて空調機20の運転が制御されるが、仮に当該最適温度が利用者にとって適切でない場合には、当該最適温度(に基づく空調制御)は利用者によって変更される可能性が高い。このような利用者による設定温度の変更は制御値履歴情報として蓄積されるため、探索不実施期間(処理)が探索実施期間(処理)に切り替わるタイミングで許容範囲を算出することによって、当該制御値履歴情報に基づいて許容範囲(最適温度)を修正することが可能となる。
一方、例えば探索実施期間から探索不実施期間に切り替わるタイミングで許容範囲を算出する場合を想定する。上記したように探索実施期間(処理)においては利用者が許容することが可能な設定温度(つまり、許容範囲)が探索されるため、探索実施期間から探索不実施期間に切り替わるタイミングで許容範囲を算出することによって、当該探索された設定温度を含む許容範囲を算出する(つまり、許容範囲を広げる)ことができ、より省エネ効果を向上させることができる。
上記したように許容範囲は様々なタイミングで算出されることができるが、当該許容範囲は、例えば予め定められたタイミングで算出されればよく、ここで説明した以外のタイミングで算出されてもよい。
なお、上記した許容範囲は、空調機20の設定温度が継続された継続時間に基づいて当該継続時間に関する特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて算出することが可能である。
本実施形態においては利用者の快適度と省エネとを両立するために空調制御装置40が空調機20の設定温度を変更するものとして説明したが、当該設定温度は空調機20の制御値の一例であり、本実施形態は、設定温度以外の制御値(例えば、湿度、風向き及び風量等)を変更する場合に適用されても構わない。
また、本実施形態においては空調制御装置40が1つの装置であるものとして説明したが、当該空調制御装置40は、例えば空調機20に組み込まれてもよいし、図4に示す各部401〜409の各々が分散して配置された複数の装置から構成されていてもよい。また、図4に示す格納部401、403及び405のうちの少なくとも一部は、空調制御装置40とは別の外部のサーバ装置等に配置されていてもよい。また、空調制御装置40は、上記した図2に示すローカルコントローラ50またはクラウドサーバ70等と一体として構成されていても構わない。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。