JP2021130135A - 鍛造金型およびスプライン成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】欠肉が発生しにくい鍛造金型およびスプライン成形方法を提供することを課題とする。【解決手段】鍛造金型1は、後側からワーク9を押し出すポンチ22と、ワーク9にスプライン92を成形するスプライン歯型330を有するダイス33と、前側からワーク9に背圧を加える背圧ピン39と、スプライン92の成形中に背圧が低下しないように背圧ピン39を付勢する付勢部材36と、を備える。【選択図】図3
Description
本発明は、ワークにスプラインを成形するのに用いられる鍛造金型およびスプライン成形方法に関する。
特許文献1には、上側からポンチをワークの被成形孔に挿入し、被成形孔つまりワークを下側に伸長させながら、ワークの外周面にスプラインを成形する鍛造金型が開示されている。ポンチの外周面には、上側から下側に向かって縮径する段差が配置されている。特許文献1の鍛造金型によると、当該段差を利用して被成形孔を拡径させることにより、ワークの外周面をスプライン歯型に圧接させ、ワークの外周面にスプラインを成形することができる。
ところが、特許文献1の鍛造金型の場合、スプライン成形中に、ワークが下側から支持されていない。このため、ワークに上側から加わるポンチの押圧力が、ワークの伸長に消費されやすい。その反面、ポンチの押圧力がワークの拡径つまりスプラインの成形に消費されにくい。
この点、特許文献2には、ワークに背圧を加えながらスプラインを成形するスプライン成形方法が開示されている。特許文献2のスプライン成形方法によると、ポンチの押圧力がスプラインの成形に消費されやすい。
しかしながら、特許文献2のスプライン成形方法の場合、背圧は、スプライン成形開始時に最も高くなるように、設定されている。このため、背圧は、スプラインの成形が進行するのに従って、徐々に小さくなる。スプラインの成形が進行するのに従って背圧が小さくなると、スプライン歯型に対するワークの肉の充填性が低下してしまう。このため、成形後のスプラインに欠肉が発生しやすくなる。そこで、本発明は、欠肉が発生しにくい鍛造金型およびスプライン成形方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の鍛造金型は、後側からワークを押し出すポンチと、前記ワークにスプラインを成形するスプライン歯型を有するダイスと、前側から前記ワークに背圧を加える背圧ピンと、前記スプラインの成形中に前記背圧が低下しないように前記背圧ピンを付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明のスプライン成形方法は、前側からワークに背圧を加えながら、後側から前記ワークを押し出し、前記ワークをスプライン歯型に圧接させることにより、前記ワークにスプラインを成形するスプライン成形方法であって、前記スプラインの成形中に前記背圧が低下しないことを特徴とする。
ここで、「前側」とは、スプライン成形時におけるポンチの進行方向の前側をいう。同様に、「後側」とは、スプライン成形時におけるポンチの進行方向の後側をいう。また、「スプラインの成形中に前記背圧が低下しない」形態には、スプラインの成形中に背圧が上昇する形態、スプラインの成形中に背圧が一定に保たれる形態、これらの形態が組み合わさった形態が含まれる。
本発明の鍛造金型およびスプライン成形方法によると、スプラインの成形が完了するまで、背圧をワークに加えることができる。このため、スプライン歯型に対するワークの肉の充填性が低下しにくい。したがって、欠肉等の成形不良が発生しにくい。
以下、本発明の鍛造金型およびスプライン成形方法の実施の形態について説明する。
<鍛造金型の構成>
まず、本実施形態の鍛造金型の構成について説明する。以降の図において、上側は本発明の「後側」に、下側は本発明の「前側」に、各々対応している。図1に、本実施形態の鍛造金型の型開き状態における上下方向断面図を示す。図2に、同鍛造金型の型閉め状態における上下方向断面図を示す。図3に、図1の枠IIIA内および図2の枠IIIB内の合成拡大図を示す。図1〜図3に示すように、鍛造金型1は、上型2と下型3とを備えている。鍛造金型1は、温間鍛造用である。
まず、本実施形態の鍛造金型の構成について説明する。以降の図において、上側は本発明の「後側」に、下側は本発明の「前側」に、各々対応している。図1に、本実施形態の鍛造金型の型開き状態における上下方向断面図を示す。図2に、同鍛造金型の型閉め状態における上下方向断面図を示す。図3に、図1の枠IIIA内および図2の枠IIIB内の合成拡大図を示す。図1〜図3に示すように、鍛造金型1は、上型2と下型3とを備えている。鍛造金型1は、温間鍛造用である。
(上型2)
図1〜図3に示すように、上型2は、上下方向(一軸方向)に移動可能な可動型である。上型2は、上型ホルダ20と、上型スリーブ21と、ポンチ22と、を備えている。上型スリーブ21は、上型ホルダ20の下面に配置されている。上型スリーブ21は、上下方向に延在する円筒状を呈している。上型スリーブ21の径方向内側には、後述するポンチ22の軸部24の大径部240(上側部分)が配置されている。上型スリーブ21の下端部の形状は、後述するワーク9の上端部に転写される。すなわち、上型スリーブ21は、ワーク9の上端部を成形する、上端部成形ポンチとしての機能を有している。
図1〜図3に示すように、上型2は、上下方向(一軸方向)に移動可能な可動型である。上型2は、上型ホルダ20と、上型スリーブ21と、ポンチ22と、を備えている。上型スリーブ21は、上型ホルダ20の下面に配置されている。上型スリーブ21は、上下方向に延在する円筒状を呈している。上型スリーブ21の径方向内側には、後述するポンチ22の軸部24の大径部240(上側部分)が配置されている。上型スリーブ21の下端部の形状は、後述するワーク9の上端部に転写される。すなわち、上型スリーブ21は、ワーク9の上端部を成形する、上端部成形ポンチとしての機能を有している。
ポンチ22は、頭部23と軸部24とを備えている。頭部23は、上型ホルダ20の下面に埋設されている。軸部24は、後述するワーク9の被成形孔90に圧入される。軸部24は、上側から下側に向かって、大径部240と、テーパ部241と、小径部242と、を備えている。大径部240は、頭部23から、下側に突出している。大径部240は、上下方向に延在する同軸円柱状を呈している。テーパ部241は、上側から下側に向かって縮径している。小径部242は、上下方向に延在する同軸円柱状を呈している。小径部242は、大径部240よりも小径である。小径部242の下端面は、下側に向かって膨らむ曲面状を呈している。
(下型3)
下型3は、上型2の下側に配置されている。下型3は固定型である。下型3は、下型ホルダ30と、下型スリーブ31と、スリーブサポート32と、ダイス33と、ダイスサポート34と、ばね座35と、ばね部材36と、昇降部材37と、ピン座38と、背圧ピン39と、を備えている。
下型3は、上型2の下側に配置されている。下型3は固定型である。下型3は、下型ホルダ30と、下型スリーブ31と、スリーブサポート32と、ダイス33と、ダイスサポート34と、ばね座35と、ばね部材36と、昇降部材37と、ピン座38と、背圧ピン39と、を備えている。
下型ホルダ30には、収容孔300が開設されている。収容孔300は、下型ホルダ30を上下方向に貫通している。収容孔300は、下側から上側に向かって、大径部303と、テーパ部302と、小径部301と、を備えている。大径部303は、下型ホルダ30の下面に開口している。テーパ部302は、下側から上側に向かって縮径している。小径部301は、下型ホルダ30の上面に開口している。
ばね座35は、下型ホルダ30の下面に配置されている。ばね座35は、収容孔300の大径部303を下側から覆っている。ばね座35には、ピン挿通孔350が開設されている。
昇降部材37は、下側から上側に向かって、カップ部370と、フランジ部371と、テーパ部372と、を備えている。カップ部370は、収容孔300の大径部303に収容されている。カップ部370は、下向きに開口する有底円筒状を呈している。フランジ部371は、収容孔300の大径部303に収容されている。フランジ部371は、カップ部370の上縁から径方向外側に張り出している。テーパ部372は、収容孔300のテーパ部302に収容されている。テーパ部372は、下側から上側に向かって縮径している。テーパ部372には、ピン挿通孔373が開設されている。ピン挿通孔373は、テーパ部372の上面からカップ部370の上底面まで、上下方向に延在している。
ばね部材36は、いわゆる皿ばねである。ばね部材36は、大径部303に収容されている。ばね部材36は、カップ部370に環装されている。ばね部材36は、ばね座35とフランジ部371との間に配置されている。ばね部材36は、上下方向に、合計6枚積層されている。上側3枚のばね部材36と下側3枚のばね部材36とは、配置方向が互いに上下反対である。図1に示す型開き状態において、ばね部材36には初期荷重が設定されている。すなわち、ばね部材36は、自然状態(ばね部材36に荷重が加わっていない状態)に対して、所定量だけ上下方向に収縮した状態(付勢力(弾性復元力)が蓄積された状態)で、セットされている。
ピン座38は、小径部301に収容されている。ピン座38は、リング状を呈している。ピン座38は、テーパ部372の上面に配置されている。ピン座38の内周面には、下側から上側に向かって拡径するテーパ面380が配置されている。
ダイスサポート34は、下型ホルダ30の上面に配置されている。ダイスサポート34は、円筒状を呈している。ダイスサポート34は、収容孔300の小径部301の上側、つまりピン座38の上側に配置されている。
ダイス33は、ダイスサポート34の上面に配置されている。ダイス33は、円筒状を呈している。ダイス33の内周面には、複数のスプライン歯型330が、全周的に配置されている。スプライン歯型330は、上下方向に延在している。
スリーブサポート32は、下型ホルダ30の上面に配置されている。スリーブサポート32は、円筒状を呈している。スリーブサポート32は、ダイスサポート34の径方向外側に配置されている。
下型スリーブ31は、スリーブサポート32の上面に配置されている。下型スリーブ31は、円筒状を呈している。下型スリーブ31の内部には、下側から上側に向かって、ダイス収容部310と、成形部311と、が配置されている。ダイス収容部310には、ダイス33が収容されている。成形部311は、下側から上側に向かって拡径する、段付きの内周面を備えている。成形部311の内周面は、後述するワーク9の外周面を成形する。
背圧ピン39は、いわゆるノックアウトピンである。背圧ピン39は、下側から上側に向かって、小径部392と、テーパ部391と、大径部390と、を備えている。小径部392は、ピン挿通孔350、ピン挿通孔373、カップ部370の径方向内側に配置されている。小径部392は、上下方向に延在する同軸円柱状を呈している。テーパ部391は、ピン座38の径方向内側に配置されている。テーパ部391は、ピン座38のテーパ面380に当接している。テーパ部391は、下側から上側に向かって拡径している。大径部390は、ダイスサポート34の径方向内側に配置されている。大径部390は、上下方向に延在する同軸円柱状を呈している。大径部390は、小径部392よりも大径である。
下型ホルダ30に対して、昇降部材37、ピン座38、背圧ピン39は、上下方向に移動可能である。昇降部材37、ピン座38、背圧ピン39は、ばね部材36の付勢力により、上向きに付勢されている。
<スプライン成形方法>
次に、本実施形態のスプライン成形方法について説明する。図4(A)に、本実施形態の鍛造金型のスプライン成形方法(第一段階)における上下方向拡大断面図を示す。図4(B)に、同鍛造金型のスプライン成形方法(第二段階)における上下方向拡大断面図を示す。図5(A)に、スプライン成形方法実行前のワークの前面図を示す。図5(B)に、スプライン成形方法実行後のワークの前面図を示す。図6に、背圧ピンの下降量とばね部材の付勢力との関係を模式図で示す。なお、図4(A)、図4(B)は、図3の枠IIIB(右側部分)に対応している。また、図5(A)、図5(B)においては、ワーク9の右半分を外観図で、左半分を断面図で示す。
次に、本実施形態のスプライン成形方法について説明する。図4(A)に、本実施形態の鍛造金型のスプライン成形方法(第一段階)における上下方向拡大断面図を示す。図4(B)に、同鍛造金型のスプライン成形方法(第二段階)における上下方向拡大断面図を示す。図5(A)に、スプライン成形方法実行前のワークの前面図を示す。図5(B)に、スプライン成形方法実行後のワークの前面図を示す。図6に、背圧ピンの下降量とばね部材の付勢力との関係を模式図で示す。なお、図4(A)、図4(B)は、図3の枠IIIB(右側部分)に対応している。また、図5(A)、図5(B)においては、ワーク9の右半分を外観図で、左半分を断面図で示す。
スプライン成形方法により、図5(A)に示すワーク9は、図5(B)に示すワーク9(スプライン付きの中空シャフト部品の粗形材)に成形される。スプライン成形方法においては、まず、図1に示す下型3に、図5(A)に示すワーク9をセットする。ワーク9は、下型スリーブ31、ダイス33、ダイスサポート34の径方向内側に配置される。図5(A)に示すように、ワーク9の上端面には、被成形孔90が凹設されている。被成形孔90は、上下方向に延在している。ワーク9の外周面には、スプライン予定部91が設定されている。図3の枠IIIA(左側部分)に示すように、スプライン歯型330の径方向内側には、ワーク9のスプライン予定部91が配置されている。スプライン予定部91の上端は、被成形孔90の底面よりも、下側に配置されている。
次に、上型2を下降させる。すなわち、鍛造金型1を、図1に示す型開き状態から、図2に示す型閉め状態に切り替える。図4(A)に示すように、まず、ポンチ22の軸部24は、ワーク9の被成形孔90に挿入され、被成形孔90内を下降する。軸部24は、被成形孔90の底面に到達する。図4(B)に示すように、続いて、軸部24は、被成形孔90つまりワーク9を、下側に伸長させながら径方向外側に押し広げる。具体的には、小径部242の曲面状の下端面が、被成形孔90の底面を下側に伸長させながら、拡径させる。また、テーパ部241が、被成形孔90の内周面を拡径させる。下側に伸長したワーク9は、背圧ピン39の大径部390に当接する。
ワーク9が背圧ピン39に当接した時点において、ポンチ22の軸部24は、スプライン予定部91の上側に配置されている。他方、背圧ピン39は、スプライン予定部91の下側に配置されている。また、スプライン成形方法を実行する前から、背圧ピン39には、昇降部材37、ピン座38を介して、ばね部材36から、上向きの付勢力が加わっている。このため、スプライン予定部91には、上側からポンチ22の軸部24の押圧力が、下側から背圧ピン39の背圧(ばね部材36の付勢力)が、各々加わる。
軸部24がさらに下降すると、軸部24と背圧ピン39との間で、スプライン予定部91が上下方向から圧縮される。また、軸部24の下降に伴い、軸部24がスプライン予定部91に加える押圧力は大きくなる。このため、当該押圧力と釣り合う位置まで、背圧ピン39が下降する。この際、ばね部材36は圧縮される。したがって、図6に線L1で示すように、ばね部材36の付勢力、つまり背圧ピン39がスプライン予定部91に加える背圧は、背圧ピン39が下降するのに従って、徐々に大きくなる。
押圧力、背圧が大きくなるのに従って、スプライン予定部91の肉は、径方向外側に流動する。よって、図3の枠IIIBに示すように、スプライン予定部91には、スプライン歯型330の形状が転写される。すなわち、図5(A)に示すスプライン予定部91に、図5(B)に示すスプライン92が成形される。また、ワーク9の上端部には、上型スリーブ21の下端部の形状が転写される。ワーク9の外周面には、下型スリーブ31の成形部311の内周面の形状が転写される。このようにして、図5(A)のワーク9が、図5(B)のワーク9に成形される。
なお、図3の枠IIIBに示すように、スプライン成形方法の実行中に、背圧ピン39は、上死点A0から下死点A1まで、下降量ΔAだけ下降する。背圧ピン39の下降中に、図6に線L1で示すように、ばね部材36の付勢力は、初期荷重F0から最大荷重F1まで増加する。
背圧ピン39は、昇降部材37、ピン座38、ばね部材36から独立して、ノックアウトピンとして、上下方向に移動可能である。成形後のワーク9は、背圧ピン39により、下型3から排出される。その後、ワーク9に、サイジング加工(スプライン92の歯面を整える加工)や穴明け加工(被成形孔90を上下方向に貫通させる加工)などが適宜施されることにより、中空シャフト部品が完成する。
<作用効果>
次に、本実施形態の鍛造金型およびスプライン成形方法の作用効果について説明する。図3に示すように、本実施形態の鍛造金型1およびスプライン成形方法によると、スプライン成形中(スプライン92の成形開始から成形完了まで)に、背圧ピン39が、ワーク9に継続的に背圧を加えることができる。このため、スプライン歯型330に対するワーク9の肉の充填性が低下しにくい。したがって、図5(B)に示すように、成形後のスプライン92に成形不良(欠肉、強度不足、外観不良など)が発生しにくい。同様に、成形後のフランジ部93に成形不良が発生しにくい。また、本実施形態の鍛造金型1およびスプライン成形方法によると、スプライン92およびフランジ部93を、同一の工程でワーク9に成形することができる。
次に、本実施形態の鍛造金型およびスプライン成形方法の作用効果について説明する。図3に示すように、本実施形態の鍛造金型1およびスプライン成形方法によると、スプライン成形中(スプライン92の成形開始から成形完了まで)に、背圧ピン39が、ワーク9に継続的に背圧を加えることができる。このため、スプライン歯型330に対するワーク9の肉の充填性が低下しにくい。したがって、図5(B)に示すように、成形後のスプライン92に成形不良(欠肉、強度不足、外観不良など)が発生しにくい。同様に、成形後のフランジ部93に成形不良が発生しにくい。また、本実施形態の鍛造金型1およびスプライン成形方法によると、スプライン92およびフランジ部93を、同一の工程でワーク9に成形することができる。
図6に線L1で示すように、ばね部材36の付勢力つまりワーク9に加わる背圧は、スプライン92の成形が進行するのに従って、大きくなる。このため、スプライン歯型330の下側部分(スプライン成形方法の後期に成形される部分)に対する、ワーク9の肉の充填性が低下しにくい。
図1に示す型開き状態において、ばね部材36に図6に示す初期荷重F0が設定されていない場合を想定する(勿論、この場合も本発明の技術的範囲に含まれる)。この場合、図3に示す下死点A1においてスプライン92の成形精度を高めるのに必要な最大荷重F1を達成するためには、図6に線L2で示すように、ばね部材36のばね定数を大きくする方法が考えられる。しかしながら、この場合、スプライン成形の前半において、背圧荷重が低くなるという影響が生じる。
この点、本実施形態の鍛造金型1およびスプライン成形方法によると、図1に示す型開き状態において、ばね部材36に図6に示す初期荷重F0が設定されている。この初期荷重F0の適切な設定により、スプライン成形前半における背圧を適切に調整することが可能になるとともに、図6に線L1で示すように、ばね部材36のばね定数を小さくしても、図3に示す下死点A1において最大荷重F1を達成することができる。このように、本実施形態では、この初期荷重F0、最大荷重F1が適切な値(初期荷重F0が0となる場合も含む)となるように、ばね部材36のばね定数、ばね高さ等を適切に選択することによって、ワーク9の成形精度を高くすることができる。
図1に示すように、6枚のばね部材36のうち、上側3枚(一部)のばね部材36と下側3枚(残部)のばね部材36とは、配置方向が互いに上下反対である。このため、ばね部材36の上下方向の弾性変形量(歪み量)を大きくすることができる。したがって、ばね部材36のばね定数を小さくすることができる。
図1、図2に示すように、本実施形態の鍛造金型1には、本発明の付勢部材としてばね部材36が配置されている。このため、付勢部材として油圧シリンダを用いる場合と比較して、油圧制御が不要な分だけ、迅速にスプライン92を成形することができる。よって、スプライン成形方法に要する時間を短縮化することができる。また、ワーク9が高温の場合(温間鍛造や熱間鍛造の場合)であっても、ワーク9の熱の影響を鍛造金型1が受けにくい。また、図3に示すように、ポンチ22はテーパ部241を備えている。このため、ワーク9を拡径変形させやすい。本実施形態の鍛造金型1によると、背圧ピン39としてノックアウトピンを転用している。このため、背圧ピン39とノックアウトピンとを別々に配置する場合と比較して、鍛造金型1の部品数を削減することができる。
<その他>
以上、本発明の鍛造金型およびスプライン成形方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
以上、本発明の鍛造金型およびスプライン成形方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
図6に示すように、ばね部材36の付勢力の印加パターンは特に限定しない。適切な背圧の大きさは、部品寸法やスプライン92の寸法等部品毎に異なるため、線L1のように、0を超える初期荷重F0を設定してもよい。線L2、L4、L5のように、初期荷重は0であってもよい。線L3のように、上死点A0から下死点A1まで、付勢力は一定であってもよい。すなわち、付勢力の増加速度(付勢力/背圧ピン39の下降量)は0であってもよい。線L4のように、下側に膨らむ曲線状に付勢力を加えてもよい。線L5のように、上側に膨らむ曲線状に付勢力を加えてもよい。すなわち、付勢力の増加速度は途中で変化してもよい。なお、線L3のように付勢力を一定にする場合は、ばね部材36の代わりに油圧シリンダを設け、付勢力が一定になるように油圧を制御すればよい。
ワーク9が背圧ピン39の大径部390に当接するタイミングは特に限定しない(図4(B)参照)。スプライン92の成形が始まる前であっても、スプライン92の成形の途中であってもよい。また、スプライン92の成形完了前に背圧が低下してもよい。この場合であっても、背圧の残圧を利用して、スプライン歯型330にワーク9の肉を充填することができる。
上記実施形態においては、ばね部材36として皿ばねを用いたが、ばね部材36の種類は特に限定しない。コイルばね、板ばね等を用いてもよい。上記実施形態においては、付勢部材としてばね部材36を用いたが、付勢部材の種類は特に限定しない。油圧シリンダ、エアシリンダ、ゴムなどを用いてもよい。ばね定数の異なる複数のばね部材を、上下方向に積層してもよい。
図4に示すテーパ部241の代わりに、軸部24に、上側から下側に向かって縮径する段差を配置してもよい。上型2、下型3の配置方向は特に限定しない。上型2が固定型、下型3が可動型であってもよい。鍛造金型1は、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造のいずれに用いてもよい。
特に鉄鋼の場合で、熱間鍛造あるいは温間鍛造後のワーク9には、スプライン92の歯面精度を修正するために、冷間鍛造が施される場合がある。この場合、熱間鍛造あるいは温間鍛造後かつ冷間鍛造前のワーク9には、延性向上のために、通常焼鈍処理が施される。しかし、鍛造金型1を温間鍛造に用い、かつ鍛造温度を900℃以上1000℃以下に設定すると、延性が熱間鍛造する場合に比較して向上するため、当該焼鈍処理を省略することができる場合がある。
鍛造金型1およびスプライン成形方法を用いて製造される中空シャフト部品の種類は特に限定しない。例えば、自動車用トランスミッション部品(ドライブピニオンギア、リダクションドライブギア、ロータシャフトなど)などであってもよい。ワーク9の材質は特に限定しない。鉄鋼(機械構造用炭素鋼など)、機械構造用合金鋼(クロムモリブデン鋼など)、ステンレス鋼、アルミニウム合金などであってもよい。
以下、上述の実施形態の鍛造金型1(ただし、ばね部材36の代わりに油圧シリンダを備える油圧装置が配置されている。)およびスプライン成形方法を用いて行った実験、およびCAE(Computer Aided Engineering)解析について説明する。
<実験>
まず、実験を行った。具体的には、実際に6つのワーク9に対してスプライン成形を行った。図7に、スプライン成形方法実行後のワークの軸方向断面図を示す。
まず、実験を行った。具体的には、実際に6つのワーク9に対してスプライン成形を行った。図7に、スプライン成形方法実行後のワークの軸方向断面図を示す。
図7に示すように、ワーク9のスプライン92の軸方向長さLは、33mmである。スプライン部94(スプライン92が形成されている部分)の内径(直径)D1は、20.0mmである。なお、内径D1は、図2に示すポンチ22の小径部242の外径に対応する。小径D2(スプライン92の径方向内端を通る円(歯底円)の直径)は、36.6mmである。大径D3(スプライン92の径方向外端を通る円(歯先円)の直径)は、40mmである。スプライン部94の肉厚Tは、8.3mmである。なお、肉厚Tは、(小径D2−内径D1)/2、つまり図2に示すポンチ22の小径部242とスプライン歯型330の径方向内端との隙間の径方向幅(ただし径方向片側の幅)に対応する。モジュールは1.25である。圧力角は38°である。歯丈は1.4mmである。ワーク9の材質はSCM420である。
実験においては、0t、10t、30t、50t、70t、90tの6水準の背圧(背圧荷重)を設定し、各水準ごとにワーク9にスプライン成形を行った。また、成形後のスプライン92の肉張り性(スプライン歯型330に対するワーク9の肉の充填性)、成形不良(バリ等)などを観察した。なお、成形中の背圧は、油圧装置により、一定に保持した。例えば、背圧30tの水準で実験する場合、図6に示す線L3のように、成形中の背圧は30tに保持した。実験の結果、成形不良が発生せず、良好な肉張り性を得られる背圧範囲は、30t以上70t以下であることが判った。
<CAE解析>
次に、CAE解析を行った。CAE解析においては、寸法の異なる7つのワーク9のモデル♯1〜♯7を採用した。また、上述の実験に用いた鍛造金型1とほぼ同形状(ただし、モデル♯1〜♯7の寸法の相違に伴う形状の相違はある。)の鍛造金型を用いた。表1に、7つのモデル♯1〜♯7のスプライン92の軸方向長さL、スプライン部94の内径D1、小径D2、大径D3、スプライン部94の肉厚T、モジュール、圧力角、歯丈、面圧しきい値、背圧の最小値を示す。面圧しきい値、背圧の最小値については後述する。
次に、CAE解析を行った。CAE解析においては、寸法の異なる7つのワーク9のモデル♯1〜♯7を採用した。また、上述の実験に用いた鍛造金型1とほぼ同形状(ただし、モデル♯1〜♯7の寸法の相違に伴う形状の相違はある。)の鍛造金型を用いた。表1に、7つのモデル♯1〜♯7のスプライン92の軸方向長さL、スプライン部94の内径D1、小径D2、大径D3、スプライン部94の肉厚T、モジュール、圧力角、歯丈、面圧しきい値、背圧の最小値を示す。面圧しきい値、背圧の最小値については後述する。
背圧が小さい方が、鍛造金型1やワーク9に及ぼす悪影響が小さい。また、スプライン92に加わる面圧と、肉張り性と、は対応している(面圧が大きいほど肉張り性は良くなる)。そこで、各モデル♯1〜♯7において、上述の実験の背圧30t(良好な肉張り性を得られる背圧の最小値)の際にスプライン92に加わる面圧(良好な肉張り性を得られる面圧の最小値)を、面圧しきい値Pthとした。また、各モデル♯1〜♯7において、面圧しきい値Pthに対応する背圧(良好な肉張り性を得られる背圧の最小値)Mを取得した。
図8に、各モデルの肉厚と背圧の最小値との関係を示す。図8の7点(モデル♯1〜♯7)のデータを最小二乗法により二次関数で近似すると、肉厚T(mm)、背圧の最小値M(t)として、以下の式(1)が得られた。
M=0.66T2−2.06T+1.28 ・・・式(1)
M=0.66T2−2.06T+1.28 ・・・式(1)
表1に示す背圧の最小値Mは、式(1)の計算値である。図8、表1、式(1)に示すように、肉厚Tが小さいほど、最小値Mは小さくなる。また、任意の肉厚Tにおいて、背圧が最小値Mつまり式(1)の曲線以上の場合、スプライン92の肉張り性が良好になる。反対に、任意の肉厚Tにおいて、背圧が最小値Mつまり式(1)の曲線未満の場合、スプライン92の肉張り性が悪くなる。
一例として、図8、表1のモデル♯4のデータに着目すると、肉厚Tが7.8mmであり、式(1)から最小値Mは25tとなる。このため、図8に矢印で示すように、ワーク9に加える背圧が25t以上であれば、スプライン92の肉張り性が良好になる。
このように、式(1)から、ワーク9の肉厚T、つまり図2に示すポンチ22の小径部242とスプライン歯型330の径方向内端との隙間の径方向幅に応じて、スプライン92の肉張り性が良好な、背圧を設定することができる。
なお、スプライン成形中の背圧は、図6に線L3で示すように、一定値(最小値Mを保持)であってもよい。また、図6に線L1〜L2、L4〜L5で示すように、最小値Mから所定の最大値まで、上昇させてもよい。
また、式(1)に加えて、ワーク9に要求される強度(例えばねじり強度)や鍛造金型1の構成などにより、肉厚Tや背圧の条件(最大値、最小値)が決まる場合がある。この場合は、式(1)にこれらの条件を加えて、肉張り性が良好な背圧範囲を設定することができる。
例えば、背圧が過度に大きい場合、スプライン成形時に、ワーク9の肉が、下型3のガス抜き用の隙間などに、進入しやすい。このため、成形後のワーク9にバリが発生するおそれがある。この場合は、背圧の最大値を、バリの発生を防止可能な値(鍛造金型1の構成などにより異なる。)とすればよい。上述の実験の場合、背圧が70tを超えるとワーク9にバリが発生するため、背圧の最大値を70tとすればよい。つまり、背圧の設定範囲を最小値M以上70t以下とすればよい。また、肉厚Tが過度に小さい場合、成形後のワーク9のねじり強度が小さくなる。この場合は、肉厚Tの最小値を、ねじり強度を確保可能な値(例えば4mm。ワーク9の用途などにより異なる。)とすればよい。
1:鍛造金型、2:上型、20:上型ホルダ、21:上型スリーブ、22:ポンチ、23:頭部、24:軸部、240:大径部、241:テーパ部、242:小径部、3:下型、30:下型ホルダ、300:収容孔、301:小径部、302:テーパ部、303:大径部、31:下型スリーブ、310:ダイス収容部、311:成形部、32:スリーブサポート、33:ダイス、330:スプライン歯型、34:ダイスサポート、35:ばね座、350:ピン挿通孔、36:ばね部材、37:昇降部材、370:カップ部、371:フランジ部、372:テーパ部、373:ピン挿通孔、38:ピン座、380:テーパ面、39:背圧ピン、390:大径部、391:テーパ部、392:小径部、9:ワーク、90:被成形孔、91:スプライン予定部、92:スプライン、93:フランジ部、94:スプライン部
Claims (6)
- 後側からワークを押し出すポンチと、
前記ワークにスプラインを成形するスプライン歯型を有するダイスと、
前側から前記ワークに背圧を加える背圧ピンと、
前記スプラインの成形中に前記背圧が低下しないように前記背圧ピンを付勢する付勢部材と、
を備える鍛造金型。 - 前記付勢部材は、ばね部材である請求項1に記載の鍛造金型。
- 前記ワークは、後側に開口する被成形孔を有し、
前記ポンチは、前記被成形孔に挿入され、
前記スプラインは、前記ワークの外周面に成形される請求項1または請求項2に記載の鍛造金型。 - 前記ポンチと前記スプライン歯型の径方向内端との隙間が小さいほど、前記背圧の最小値は小さい請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鍛造金型。
- 前記隙間の径方向幅をT(mm)、前記背圧の前記最小値をM(t)として、以下の式(1)が成立する請求項4に記載の鍛造金型。
M=0.66T2−2.06T+1.28 ・・・式(1) - 前側からワークに背圧を加えながら、後側から前記ワークを押し出し、前記ワークをスプライン歯型に圧接させることにより、前記ワークにスプラインを成形するスプライン成形方法であって、
前記スプラインの成形中に前記背圧が低下しないことを特徴とするスプライン成形方法。
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JP2020026555 | 2020-02-19 | ||
JP2020026555 | 2020-02-19 |
Publications (1)
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JP2020201131A Pending JP2021130135A (ja) | 2020-02-19 | 2020-12-03 | 鍛造金型およびスプライン成形方法 |
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Cited By (2)
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JP2021178211A (ja) * | 2017-05-31 | 2021-11-18 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
JP2021178212A (ja) * | 2017-05-31 | 2021-11-18 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
-
2020
- 2020-12-03 JP JP2020201131A patent/JP2021130135A/ja active Pending
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