JP2021129437A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】バッテリの高電圧化やモータの大型化を回避できるモータ制御装置を提供する。【解決手段】ロータ33の磁石35とギャップを隔てて対向する複数のコイル36が設置されているステータ34を有するモータ3と、駆動電流制御部21aおよび磁化電流制御部21bを有する制御装置21とを備える。磁極35aとコイル36とが対向して軸線Jpと軸線Jcとが近接するように位置を合わせる位置合わせ制御を実行し、磁極35aとコイル36とが位置合わせされた状態で、磁石35の磁力を変更する磁力変更制御を実行する。【選択図】図6

Description

開示する技術は、モータ制御装置に関する。
近年、モータは、電気自動車やハイブリッド車などへの利用も増えつつある。例えば、特許文献1には、そのような駆動モータ(発電機としても利用)とエンジンとを搭載したハイブリッド車が開示されている。そのハイブリッド車には、駆動モータの電源として、充電スタンドや家庭用電源に接続して充電できる、定格電圧が数百Vの強電バッテリが備えられている。
開示する技術に関し、洗濯機用であるが、マグネットの磁力を増磁および減磁できるモータが、特許文献2に開示されている。
洗濯機では、洗いや濯ぎの工程で、高トルク低回転のモータ出力が要求され、脱水工程で、低トルク高回転のモータ出力が要求される。そのため、洗濯機には、変速機が備えられていて、その変速機で、これら両工程に合わせてモータの出力が2段階に切り替えられる。特許文献2の洗濯機では更に、変速機で切り替えられた各モータ出力を、マグネットの磁力を通常の磁力から、増磁または減磁させることにより、モータの出力特性を変化させ、負荷に応じて最適化できるようにしている。
特開2014−231290号公報 特開2011−200545号公報
上述したように、洗濯機では、モータに要求される高頻度な出力は、2つの出力範囲に限られている。そのため、変速機でいずれか一方に切り替えるとともに、各出力範囲で通常の磁力を基準に、負荷の大小に応じてマグネットを増磁または減磁するだけで、モータ出力の最適化を図ることができる。
ところが、自動車などに搭載される駆動モータでは、負荷方向および回転方向の双方において、非常に広い範囲で駆動できる、極めて高度な出力が要求される。しかも、それ自体が移動するため、その電源には、バッテリを使用するしかない。
そのような制約下で、高出力な駆動モータを実現するには、特許文献1のハイブリッド車のように高電圧のバッテリを搭載することや、大型のモータを搭載することが考えられる。しかし、いずれの場合も、装備が大型化、高重量化する。
そこで開示する技術の主たる目的は、バッテリの高電圧化やモータの大型化を回避できるモータ制御装置を提供することにある。
開示する技術は、モータ制御装置に関する。
前記モータ制御装置は、複数の磁極が周方向に並ぶように磁石が設置されていて、回転動力を出力するロータ、および、前記磁石とギャップを隔てて対向する複数のコイルが周方向に並ぶように設置されているステータを有するモータと、前記コイルに流れる駆動電流を制御して、前記ロータに発生するトルクを変更する駆動電流制御部、および、前記コイルに流れる磁化電流を制御して、当該コイルに発生する磁力を変更する磁化電流制御部を有する制御装置と、を備える。
前記制御装置は、少なくとも1つの前記磁極と少なくとも1つの前記コイルとが対向し、かつ、当該磁極の軸線と当該コイルの軸線とが近接するように、前記駆動電流制御部が、前記ロータを回転させる位置合わせ制御を実行し、前記位置合わせ制御がなされた状態で、前記磁化電流制御部が、前記磁化電流を制御することによって前記磁石の磁力を変更する磁力変更制御を実行するように構成されている。
すなわち、このモータ制御装置によれば、制御装置は、コイルに流れる磁化電流を制御して、そのコイルに発生する磁力を変更する磁化電流制御部を有している。そして、その磁化電流制御部が、その磁化電流を制御することによって磁石の磁力を変更する。すなわち、ロータの磁石の磁力は、大小に変化させることができる。
それにより、モータの負荷に合わせて、磁極の磁力を変更できるので、モータの力率を高めることができる。モータの力率が高まれば、少ない電力で高い出力が得られるので、モータを軽量かつコンパクトにできるし、広い範囲で適切な出力を発揮できるようになる。従って、バッテリの高電圧化やモータの大型化を回避できる。
ところが、磁石の磁力を変更するためには、磁力を変更する磁極と所定のコイルとを対向させ、そのコイルで強い磁界を発生させる必要がある。その際、磁極に印加される磁界に偏りが生じると、磁極の磁化分布が不均一になるおそれがある。
すなわち、磁極とコイルとの位置関係は、ロータの回転に伴い刻々と変化するため、コイルに強い磁界を発生させた時に形成される磁界分布も刻々と変化する。そのため、コイルに強い磁界を発生させる着磁のタイミングが、磁極の軸線とコイルの軸線とが近接して磁界の偏りが小さくなるタイミングからずれて、磁極の磁気分布が不均一になり易い。その結果、モータは、回転動力を適切に出力できなくなって、モータ出力が低下する。
そこで、このモータ制御装置では、磁力変更する磁極と、その磁極に強い磁力を印加するコイルとが対向して、その磁極の軸線とそのコイルの軸線とが近接するように、これら磁極およびコイルの双方の位置を合わせる位置合わせ制御が実行される。そして、磁極とコイルとが位置合わせされた状態で、磁力を変更する磁力変更制御が実行される。
そうすることにより、制御対象の磁極とコイルとが最適な位置に保持されるので、着磁のタイミングのずれが抑制され、制御対象のコイルに磁化電流が流れることによって形成される磁界は、制御対象の磁極に対してバランスよく印加される。従って、制御対象の磁極を略均一に磁化できる。その結果、モータは、適切な回転動力を安定して出力できるようになるので、モータ出力を十分に高出力化できる。
前記モータ制御装置はまた、自動車に搭載されており、前記自動車が停止しているときに、前記位置合わせ制御および前記磁力変更制御が実行される、としてもよい。
自動車が移動していると、モータは、常に大きく揺れ動くし、その姿勢も常に変化する。従って、その状態で磁力の変更を行うと、磁界が大きく乱れて、磁極の磁化分布がよりいっそう不均一になり易い。一方、自動車が停止しているときであれば、モータの揺れや姿勢は比較的安定しているので、磁極とコイルとの位置合わせの精度が向上する。従って、磁極の磁化分布の均一性が高まるので、モータ出力をより安定して高出力化できる。
しかも、上述したように、磁石の磁力を変更するためには、コイルで強い磁界を発生させる必要があり、そのためには、コイルに大きな磁化電流を流す必要がある。従って、磁力変更制御は、電力の消耗が激しいという問題がある。
そして、自動車が停止しているときには、発電したり外部電源を用いたりしなければ、電源を充電できない。それに対し、このモータ制御装置では、位置合わせにより、最適な状態で磁力の変更が行えるので、必要かつ最小限の大きさの磁化電流により、1回の磁力変更制御で、磁力の変更を適切に行える。従って、電力の消費量を最小限にできる。
前記モータ制御装置はまた、前記複数のコイルは、流れる電流の位相が異なる複数のコイル群で構成されていて、前記制御装置が、前記位置合わせ制御の開始時に、前記複数の磁極のうち、前記磁力変更制御の対象とされる制御対象磁極に最も近接して位置している前記コイル群に対して前記位置合わせ制御を実行し、その後、当該コイル群に流れる前記磁化電流を制御することによって前記制御対象磁極に対して前記磁力変更制御を実行する、としてもよい。
すなわち、このモータ制御装置によれば、複数のコイルは、流れる電流の位相が異なる複数のコイル群で構成されているので、いずれかのコイル群のコイルに磁化電流を流すことで、同時に複数のコイルで磁力の変更が行える。従って、磁力変更制御の実行回数を少なくできる。
更に、磁力の変更が開始される時点では、磁力変更制御の対象とされる磁極(制御対象磁極)の位置は、様々であり一定していない。それに対し、このモータ制御装置では、位置合わせ制御の開始時に、複数の磁極のうち、制御対象磁極に最も近接して位置しているコイル群に対して位置合わせ制御が実行される。従って、最短の時間で位置合わせ制御が行えるので、磁力の変更を短時間で行える。
前記モータ制御装置はまた、前記制御装置が、前記位置合わせ制御の実行前に、前記自動車の車輪と前記モータとの間に介在しているクラッチを切り離す、としてもよい。
すなわち、モータは、クラッチを介して車輪に連結されている。クラッチを連結したり切り離したりすることにより、車輪に対するモータの回転動力の出力が調整される。そして、このモータ制御装置では、位置合わせ制御の実行前に、そのクラッチが切り離される。そうすることにより、位置合わせ制御および磁力変更制御の実行時には、モータが独立した状態、つまりロータがフリーで回転する状態になる。その結果、位置合わせ制御および磁力変更制御の精度が向上するので、モータ出力を十分に高出力化できる。
前記モータ制御装置はまた、いずれかの前記磁極に対して前記磁力変更制御の実行が開始された場合に、全ての前記磁極に対して前記磁力変更制御の実行が終了するまで、前記クラッチの連結を禁止する、としてもよい。
磁力変更制御を開始した後に、全ての磁極に対して磁力変更制御の実行が終了する前に、クラッチを連結すると、ロータに外力が作用するので、位置合わせ制御が不安定になり、高精度な磁力変更制御が行えない。また、磁力変更制御を中断し、その状態でモータを駆動すると、磁力の異なる磁極が混在することになるので、モータは適切に機能しない。
それに対し、このモータ制御装置によれば、全ての磁極に対して磁力変更制御の実行が終了するまではクラッチを連結しないので、全ての磁極に対して、安定した磁力の変更が行える。そして、クラッチが連結可能なったときには、全ての磁極の磁力が適切に変更されているので、モータは適切に機能する。
前記モータ制御装置はまた、前記モータの電源を構成し、前記コイルに前記駆動電流および前記磁化電流を通電させるバッテリを更に備え、前記バッテリの電圧が所定の下限値未満の場合には、前記磁力変更制御の実行を制限する、としてもよい。
すなわち、このモータ制御装置では、モータの電源にバッテリが用いられていて、磁力の変更に用いられる磁化電流も、そのバッテリから通電されるようになっている。上述したように、磁石の磁力を変更するためには、コイルに大きな磁化電流を流す必要がある。従って、磁力変更制御を行うと、バッテリの急激な消耗を招き、電圧異常が発生するおそれがある。
それに対し、このモータ制御装置によれば、バッテリの電圧が所定の下限値未満の場合には、磁力変更制御の実行が制限されるので、電圧異常の発生を抑制することができる。
前記モータ制御装置はまた、前記自動車がエンジンを備え、アクセルの操作に基づいて、前記モータおよび前記エンジンが協働して前記自動車を駆動するように構成されていて、前記バッテリの定格電圧が50V以下である、としてもよい。
すなわち、このモータ制御装置は、エンジンとモータで駆動する自動車に搭載されている。そして、バッテリには、いわゆる低電圧バッテリが用いられているので、バッテリの高電圧化を回避できる。更に、上述したように、モータ出力を十分に高出力化できるモータ制御装置が搭載されていて、これらが効果的に組み合わされているので、モータを含めた装備の大型化、高重量化を回避できる。
開示する技術によれば、バッテリの高電圧化やモータの大型化を回避できるモータ制御装置を実現できる。
開示する技術を適用した自動車の主な構成を示す概略図である。 モータの構成を示す概略断面図である。 MCUおよびこれに関連する主な入出力装置を示すブロック図である。 モータ制御装置の構成を簡略化して示す図である。 MCUが行うモータの制御の一例を示すフローチャートである。 静的な磁力変更制御を説明するための図である。 動的な磁力変更制御を説明するための図である。 動的な磁力変更制御を説明するための図である。 磁力変更制御の主な処理の一例を示すフローチャートである。 位置合わせ制御の一例を示すフローチャートである。 静的な磁力変更制御の一例を示すフローチャートである。 動的な磁力変更制御の一例を示すフローチャートである。 磁化実行制限制御の一例を示すフローチャートである。
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<自動車>
図1に、開示する技術を適用した4輪の自動車1を示す。この自動車1は、ハイブリッド車である。自動車1の駆動源に、エンジン2およびモータ3が搭載されている。これらが協働して、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、左右対称状に位置する2輪(駆動輪4R)を回転駆動する。それにより、自動車1は移動(走行)する。
この自動車1の場合、エンジン2は車体の前側に配置されており、駆動輪4Rは車体の後側に配置されている。すなわち、この自動車1は、いわゆるFR車である。更にこの自動車1の場合、駆動源としては、モータ3よりもエンジン2が主体となっており、モータ3は、エンジン2の駆動をアシストする形で利用される(いわゆるマイルドハイブリット)。モータ3はまた、駆動源としてだけでなく、回生時には発電機としても利用される。
自動車1には、エンジン2、モータ3の他、駆動系の装置として、第1クラッチ5、インバータ6、第2クラッチ7、変速機8、デファレンシャルギア9、バッテリ10などが備えられている。これら装置の複合体(駆動システム)の作用により、自動車1は走行する。
自動車1にはまた、制御系の装置として、エンジンコントロールユニット(ECU)20、モータコントロールユニット(MCU)21、変速機コントロールユニット(TCU)22、ブレーキコントロールユニット(BCU)23、総合コントロールユニット(GCU)24などが備えられている。
エンジン回転センサ50、モータ回転センサ51、電流センサ52、磁力センサ53、アクセルセンサ54なども、制御系の装置に付随して自動車1に設置されている。
[駆動系の装置]
エンジン2は、例えばガソリンを燃料にして燃焼を行う内燃機関である。エンジン2はまた、吸気、圧縮、膨張、排気の各サイクルを繰り返すことで回転動力を発生させる、いわゆる4サイクルエンジンである。エンジン2には、ディーゼルエンジン等、様々な種類や形態があるが、開示する技術では、特にエンジンの種類や形態は限定しない。
この自動車1では、エンジン2は、回転動力を出力する出力軸を、車体の前後方向に向けた状態で、車幅方向の略中央部に配置されている。自動車1には、吸気システム、排気システム、燃量供給システムなど、エンジン2に付随した様々な装置や機構が設置されているが、これらの図示および説明は省略する。
(モータ)
モータ3は、第1クラッチ5を介してエンジン2の後方に直列に配置されている。モータ3は、三相の交流によって駆動する永久磁石型の同期モータである。図2に示すように、モータ3は、大略、モータケース31、シャフト32、ロータ33、ステータ34などで構成されている。
モータケース31は、その内部に、前端面および後端面が封止された円筒状のスペースを有する容器からなり、自動車1の車体に固定されている。ロータ33およびステータ34は、モータケース31に収容されている。シャフト32は、その前端部および後端部の各々をモータケース31から突出させた状態で、モータケース31に回転自在に軸支されている。
シャフト32の前端部と、エンジン2の出力軸との間に介在するように、第1クラッチ5が設置されている。第1クラッチ5は、出力軸とシャフト32とが連結された状態(第1クラッチ5が連結された状態、連結状態)と、出力軸とシャフト32とが分離した状態(第1クラッチ5が切り離された状態、解放状態)との間で切り替え可能に構成されている。
シャフト32の後端部と、変速機8の入力軸との間に介在するように、第2クラッチ7が設置されている。第2クラッチ7は、シャフト32と変速機8の入力軸とが連結された状態(第2クラッチ7が連結された状態、連結状態)と、シャフト32と変速機8の入力軸とが分離した状態(第2クラッチ7が切り離された状態、解放状態)とに切り替え可能に構成されている。なお、これら第1クラッチ5および第2クラッチ7の各々では、連結状態と解放状態との間の状態(部分連結状態)において、伝達される動力の大きさの調整が可能に構成されている。
(ロータ)
ロータ33は、中心に軸孔を有する複数の金属板を積層して構成された円柱状の部材からなる。ロータ33の軸孔にシャフト32の中間部分を固定することで、ロータ33はシャフト32と一体化されている。
ロータ33の外周部分には、全周にわたってマグネット(磁石)35が設置されている。マグネット35は、S極とN極とからなる複数(この図例では8個)の磁極35aが周方向に等間隔で交互に並ぶように構成されている。マグネット35は、複数の磁極35aを有する1つの円筒状の磁石で構成してもよいし、各磁極35aを構成する複数の弧状の磁石で構成してもよい(図例では、複数の弧状の磁石で構成されている)。
このモータ3では、更に、マグネット35が、磁力の大きさを大小に可変できるように構成されている(磁力可変マグネット)。通常、この種のモータ3には、保磁力(抗磁力)が大きく、磁力が長期にわたって保持できる磁石(永久磁石)が使用される。このモータ3では、磁力を比較的容易に変更できるように、保持力の小さい永久磁石がマグネット35として使用される。
永久磁石には、例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石など様々な種類があり、保持力も様々である。マグネット35の種類や素材は、仕様に応じて選択可能であり、特に限定されない。
この自動車1では、このマグネット35を利用して、モータ3を軽量かつコンパクトにできるように、モータ制御装置が構成されている。モータ制御装置の詳細については後述する。
(ステータ)
ロータ33の周囲には、僅かな隙間(ギャップ)を隔てて円筒状のステータ34が設置されている(インナーロータ型)。ステータ34は、複数の金属板を積層して構成されたステータコア34aと、そのステータコア34aに電線を巻回して構成された複数のコイル36とを有している。
ステータコア34aには、内側に放射状に張り出す複数のティース34bが設けられていて、これらティース34bの間に形成されている空間(スロット)に電線を所定の順序で巻き掛けることで複数(この図例では12個)のコイル36が形成されている(いわゆる集中巻き)。これらコイル36は、流れる電流の位相が異なるU相、V相、およびW相からなる三相のコイル群を構成している。各相のコイルは、周方向に順番に配置されている。
なお、本実施形態では、8極12スロットのモータ3を例示したが、モータ3の構成は、これに限るものでない。モータ3は、より多くの極数およびスロット数で構成してもよい。例えば、2のN倍の磁極35aと、3のN倍のスロット(Nは整数)とで、モータ3を構成することができる。
コイル36に通電するため、モータケース31の外側に、これらコイル36から3本の接続ケーブル36a,36a,36aが導出されている。これら接続ケーブル36a,36a,36aは、インバータ6を介して、車載されているバッテリ10と接続されている。この自動車1の場合、バッテリ10は、定格電圧が50V以下、具体的には48Vの直流バッテリ(低電圧バッテリ)10が用いられている。
そのため、上述した特許文献1のハイブリッド車のように、高電圧ではないので、バッテリ10自体を軽量かつコンパクトにできる。しかも、高度な感電対策が不要なため、絶縁部材等も簡素化でき、よりいっそう軽量かつコンパクトに構成できる。従って、自動車1の車両重量を抑制できるので、燃費や電力消費を抑制できる。
バッテリ10は、インバータ6に直流電力を供給する。インバータ6は、その直流電力を3相の交流に変換してモータ3に通電する。それにより、各コイル36に電磁力が発生する。その電磁力と、マグネット35の磁力との間に作用する吸引力と反発力により、ロータ33が回転駆動され、シャフト32および第2クラッチ7を通じて変速機8にその回転動力が出力される。
この自動車1の場合、変速機8は、多段式自動変速機(いわゆるAT)である。変速機8は、一方の端部に入力軸を有し、他方の端部に出力軸を有している。これら入力軸と出力軸との間に、複数の遊星歯車機構、クラッチ、ブレーキなどの変速機構が組み込まれている。
これら変速機構を切り替えることにより、前進または後進の切り替えや、変速機8の入力と出力との間で、異なる回転数に変更できるように構成されている。変速機8の出力軸は、車体の前後方向に延びて出力軸と同軸に配置されているプロペラシャフト11を介してデファレンシャルギア9に連結されている。
デファレンシャルギア9には、車幅方向に延びて、左右の駆動輪4R,4Rに連結された一対の駆動シャフト13,13が連結されている。プロペラシャフト11を通じて出力される回転動力は、デファレンシャルギア9で振り分けられた後、これら一対の駆動シャフト13,13を通じて各駆動輪4Rに伝達される。各車輪4F,4F,4R,4Rには、その回転を制動するために、ブレーキ14が取り付けられている。
[制御系の装置]
自動車1には、運転者の操作に応じて、その走行をコントロールするために、上述した、ECU20、MCU21、TCU22、BCU23、およびGCU24の各ユニットが設置されている。これらユニットの各々は、CPUやメモリ、インターフェースなどのハードウエアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されている。
ECU20は、エンジン2の作動を主に制御するユニットである。MCU21は、モータ3の作動を主に制御するユニットである。TCU22は、第1クラッチ5、第2クラッチ7、および変速機8の作動を主に制御するユニットである。BCU23、ブレーキ14の作動を主に制御するユニットである。GCU24は、これらECU20、MCU21、TCU22、BCU23と電気的に接続されていて、これらを総合的に制御する上位ユニットである。MCU21は、「制御装置」の主体を構成している。GCU24等のユニットは、MCU21と協働することによって「制御装置」を構成している。
エンジン回転センサ50は、エンジン2に取り付けられており、エンジン2の回転数を検出してECU20に出力する。モータ回転センサ51は、モータ3に取り付けられており、ロータ33の回転数や回転位置を検出してMCU21に出力する。電流センサ52は接続ケーブル36aに取り付けられており、各コイル36に通電される電流値を検出してMCU21に出力する。
磁力センサ53は、モータ3に取り付けられており、マグネット35の磁力を検出してMCU21に出力する。アクセルセンサ54は、運転者が自動車1を駆動する時に踏み込むアクセルのペダル(アクセルペダル15)に取り付けられており、自動車1の駆動に要求される出力に相当するアクセル開度を検出してECU20に出力する。
これらセンサから入力される検出値の信号に基づいて、各ユニットが協働して駆動システムを制御することで、自動車1が走行する。例えば、自動車1がエンジン2の駆動力で走行する時には、アクセルセンサ54およびエンジン回転センサ50の検出値に基づいて、ECU20がエンジン2の運転を制御する。
そして、TCU22は、第1クラッチ5および第2クラッチ7が連結状態になるように制御する。自動車1の制動時には、BCU23が各ブレーキ14を制御する。回生による制動時には、TCU22は、第1クラッチ5は解放状態ないし部分連結状態となるように制御し、第2クラッチ7は連結状態となるように制御する。そうして、MCU21は、モータ3で発電し、その電力がバッテリ10に回収されるように制御する。
<モータ制御装置>
MCU21は、モータ3が単独で出力する状態で、あるいは、必要に応じてエンジン2の出力をアシストする状態で、モータ3の回転動力によって自動車1が走行するように制御する。
具体的には、アクセルセンサ54、エンジン回転センサ50等の検出値に基づいて、ECU20が、エンジン2の回転動力を設定する。それに伴って、予め設定されたエンジン2とモータ3との間での出力の分配比率に従って、GCU24が、所定の出力範囲でモータ3の回転動力の要求量を設定する。MCU21は、その要求量が出力されるようにモータ3を制御する。
図3に、MCU21およびこれに関連する主な入出力装置を示す。MCU21には、駆動電流制御部21aおよび磁化電流制御部21bが設けられている。駆動電流制御部21aは、モータ3の駆動を制御する機能を有し、コイル36に流れる駆動電流を制御することにより、ロータ33に発生するトルクを変更する。それによって、モータ3に、回転動力の要求量を出力させる。
一方、磁化電流制御部21bは、モータ3の力率を高める機能を有し、コイル36に流れる磁化電流を制御することにより、コイル36に発生する磁力を変更する。そうすることにより、マグネット35の磁力を変更する。具体的には、マグネット35の磁力が、駆動電流によってコイル36に発生する電磁力と略一致するように、マグネット35の磁力を変更する。
力率とは、皮相電力(モータ3に供給される電力)に対する有効電力(実際に消費される電力)の割合である。力率が低いと、同じ出力を得るのに大きな電流を通電する必要があるため、それだけモータが大型化する。従って、モータ3の力率を高めることで、モータ3を軽量かつコンパクトにできる。また、力率が高まれば、回生時の発電力も高めることができる。
モータ3の力率を上限まで高めるためには、コイル36で発生する電磁力と、永久磁石の磁力とを略一致させる必要がある(電磁力と磁力とが略一致すれば、力率は略1となる)。それに対し、通常の永久磁石型モータの場合、永久磁石の磁力が不変であるため、そのモータが出力する最も使用頻度の高い領域で、力率が略1となる磁力の永久磁石が用いられている。
すなわち、永久磁石の種類や素材、構造などが、仕様に合わせて設計されていて、製造工場から出荷される初期状態では、その磁力に着磁された状態になっている。
家電などの用途では、モータの出力が要求される範囲は比較的限られているので、このようなモータ特性であっても、それほど大きな問題にはならない。ところが、自動車1を駆動する場合には、非常に広い範囲で高頻度な出力が要求される。そのため、このようなモータ特性では、バッテリの高電圧化やモータの大型化が必要になるなどの不具合がある。
それに対し、このモータ制御装置では、磁力の変更が可能なマグネット35が用いられ、MCU21に磁化電流制御部21bが設けられているので、力率の向上が図れ、そのような不具合が解消できるようになっている。
すなわち、モータ3に対する負荷が変化した場合に、マグネット35の磁力がその負荷に合わせて変更される。例えば、中負荷では、力率が略1となるように、低負荷での磁力に対して、マグネット35の磁力が増大される(増磁)。低負荷では、力率が略1となるように、中負荷での磁力に対して、マグネット35の磁力が減少される(減磁)。
具体的には、MCU21には、モータ3の負荷および回転数に基づいて、モータ3の回転動力の出力範囲を画定したマップやテーブルなどのデータが予め設定されている。その出力範囲が、複数の領域に区画されている。そして、これら領域の各々では、その領域に適した力率となるように、磁化電流制御部21bがマグネット35の磁力を変更する。すなわち、モータ3の回転動力の出力範囲は、マグネット35の磁力が異なる複数の領域(磁化領域)に区画されている。
なお、マグネット35の磁力は、その初期状態において、モータ3の出力範囲の負荷上限領域で発生する電磁力と略一致する磁力(負荷上限磁力)に設定するのが好ましい。そうすれば、高負荷でも、力率を略1にして高めることができる。従って、この場合、高負荷でもモータ3を効率よく駆動させることができるので、軽量かつコンパクトなモータ3であっても出力不足が抑制でき、安定した走行を実現できる。
そして、中負荷や低負荷では、その負荷に応じて電磁力は小さくなるが、マグネット35であれば、その電磁力に合わせて減磁することで力率を略1にできる。従って、この場合、モータの出力範囲の略全域で、力率を高めることができ、モータ3を効率よく駆動させることができる。
このように、このモータ制御装置では、マグネット35の磁力を変更することにより、モータ3の力率が高まるように構成されているので、バッテリの高電圧化やモータの大型化を回避できる。
本実施形態のモータ制御装置では、このマグネット35の磁力を変更する制御(磁力変更制御)が、自動車1が停止している状態、自動車1が走行している状態のいずれの状態においても、精度高く実行できるように工夫されている。これらの詳細については後述する。
<モータ制御装置によるモータの制御>
図4に、簡略化したモータ制御装置のシステム図を示す。図5に、MCU21が行うモータ3の制御の一例を示す。これらを参照しながら、モータ3の具体的な制御の流れについて説明する。なお、モータ3は、駆動電流に対応したトルク電流指令Iqと、磁化電流に対応した励磁電流指令Idと、を用いたベクトル制御によって制御されている。
MCU21は、自動車1が走行可能な状態になると、電流センサ52、モータ回転センサ51、磁力センサ53から、常時、検出値が入力されるようになる(ステップS1)。また、ECU20でも同様に、アクセルセンサ54やエンジン回転センサ50から、常時、検出値が入力されるようになる。
GCU24は、ECU20からアクセルセンサ54の検出値を取得し、予め設定されているエンジン2とモータ3との間での出力の分配比率に従って、モータ3の回転動力の要求量を設定する。GCU24は、MCU21に、その要求量に相当するトルクを出力するコマンド(トルク指令値T)を出力する。
MCU21(駆動電流制御部21a)は、トルク指令値Tが入力されると(ステップS2でYes)、そのトルクを発生させる駆動電流(トルク電流成分)の変化量を出力するコマンド(駆動電流指令値Idq)の演算処理を実行する(ステップS3)。また、MCU21(磁化電流制御部21b)は、トルク指令値Tおよびモータ3の回転数に基づいて、その磁化領域に対応した磁力最適値を出力するコマンド(磁化状態指令値Φ)の演算処理を実行する(ステップS4)。そして、磁化電流制御部21bは、マグネット35の磁力および磁化状態指令値Φに基づいて、マグネット35の磁力の変化量に相当するトルク電流成分を出力するコマンド(磁力電流指令値Idq)の演算処理を実行する(ステップS5)。
MCU21は、演算した駆動電流指令値Idqと磁力電流指令値Idqとに基づいて、マグネット35の磁力の変更が必要か否かを判定する(ステップS6)。例えば、要求されたトルクを出力すると、異なる磁化領域に移行する場合には、マグネット35の磁力の変更が必要と判定する。要求されたトルクを出力しても、同じ磁化領域に位置する場合には、マグネット35の磁力の変更は不要と判定する。
そして、MCU21は、マグネット35の磁力の変更は不要と判定した場合、出力するトルクが、モータ3が空運転するトルクT1より大きいか否かを判定する(ステップS7)。そして、MCU21は、出力するトルクがトルクT1より大きい場合には、通常のベクトル制御によってモータ3を制御する。
すなわち、駆動電流制御部21aが、電流制御により、電流センサ52およびモータ回転センサ51の検出値に基づいて、PWM制御を行うために出力するコマンド(電圧指令値Vuvw)の演算処理を実行する(ステップS8)。そして、PWM制御により、スイッチング指令値が演算される(ステップS9)。
そのスイッチング指令値が、ドライバ回路を通じてインバータ6に出力されることにより、インバータ6の内部で、複数のスイッチング素子がオンオフ制御される。それにより、所定の3相の交流(駆動電流)が各コイル群に通電されて、モータ3が回転し、要求されたトルクを出力する(ステップS10)。
一方、MCU21が、マグネット35の磁力の変更が必要と判定した場合には(ステップS6でNo)、磁化電流制御部21bによって磁力変更制御が実行される(ステップS11)。
また、MCU21が、マグネット35の磁力の変更は不要と判定した場合でも、出力するトルクが、モータ3が空運転するトルクT1以下と判定した場合には(ステップS7でNo)、磁化電流制御部21bによって磁力変更制御が実行される(ステップS11)。
モータ3が空運転、すなわち、モータ3の回転動力の要求量が、ほとんど0(ゼロ)となった場合には、マグネット35は、その磁力がリセットされて、初期状態の磁力(負荷上限磁力)に変更される。自動車1の場合、例えば、アイドリング状態や停止状態から、一気にアクセルペダル15が踏み込まれて急加速するような場合がある。空運転時に負荷上限磁力に変更すれば、そのような急加速が行われた場合でも、モータ3を適切に駆動することができる。
<磁力変更制御>
上述したように、このモータ3には、磁力を変更できるマグネット35が用いられている。そして、MCU21(磁化電流制御部21b)が、マグネット35の磁力を変更する制御(磁力変更制御)を実行する。マグネット35の磁力を変更するためには、短時間ではあるが、マグネット35の各磁極35aとコイル36との間に、通常の駆動時よりも大きな磁界が形成されるように、強い磁力(磁化磁力)を印加する必要がある。
磁化磁力は、マグネット35の性能によって異なるが、例えば、マグネット35が保持している磁力の数倍から数十倍の磁力が用いられる。そして、一度、そのような強い磁力でマグネット35の磁力が変更されると、多少強い磁力がマグネット35に作用しても、その影響はほとんど受けない。従って、モータ3が普通に駆動している程度では、変更後の磁極35aの磁力は保持される。
磁力変更制御では、磁力変更制御の対象とされる磁極35a(制御対象磁極)と、磁力変更制御の対象とされるコイル36(制御対象コイル)とが、互いに対向するように配置される。そうして、制御対象コイルに流れる電流のうち、径方向に向かう磁力を制御対象コイルに発生させる電流成分(磁化電流)の調整が行われる。
例えば、増磁する場合には、制御対象磁極の磁束と同じ方向に強力な磁束が発生するように、制御対象コイルに大きなパルス状の磁化電流が流される。減磁する場合には、制御対象磁極の磁束とは逆の方向に強力な磁束が発生するように、制御対象コイルに大きなパルス状の磁化電流が流される。
その際、制御対象磁極に印加される磁界に偏りが生じると、磁極35aの各部位の磁化にばらつきが発生し、磁極35aの磁化分布が不均一になるおそれがある。
すなわち、制御対象磁極と制御対象コイルとの位置関係は、ロータ33が回転していると、その回転に伴って刻々と変化する。従って、その場合、制御対象コイルに強い磁界を発生させた時に形成される磁界分布も刻々と変化する。そのため、制御対象コイルに強い磁界を発生させる着磁のタイミングがずれて、磁極の磁気分布が不均一になり易い。その結果、モータ3は、回転動力を適切に出力できなくなって、モータ出力が低下する。
自動車1の場合、移動しない家電製品とは異なり、常にモータが安定した状態で磁力変更制御が行えるとは限らない。走行中であればモータは揺れ動くし、停止中であってもエンジンが作動していたり乗員が動いたりすればモータは揺れ動く。また、モータの姿勢も一定ではない。モータが揺れ動いた状態や姿勢が不安定な状態で磁力変更制御を実行すると、制御対象磁極に印加される磁界が乱れ易くなるので、磁力変更の精度が低下する。従って、自動車1に搭載されているモータ3の場合、磁極35aの磁力を均一に変更するのは難しい。
それに対し、このモータ制御装置では、磁力変更制御が、自動車1が停止している状態、自動車1が走行している状態のいずれの状態においても、精度高く実行できるように工夫されている。
具体的には、MCU21は、モータ3を駆動システムから分離した状態で行うのに適した磁力変更制御(静的な磁力変更制御)と、モータ3を駆動システムから分離していない状態で行うのに適した磁力変更制御(動的な磁力変更制御)とが実行可能に構成されている。そして、MCU21は、これら制御のいずれか1つを選択して実行する。
静的な磁力変更制御は、主に自動車1が停止している状態で実行される。その状態は、エンジン2が作動していない状態だけでなく、アイドリング状態など、エンジン2が作動している状態であってもよい。また、自動車1が惰性で走行している場合などでは、自動車1が停止していない状態でも実行可能である。
動的な磁力変更制御は、主に自動車1が走行している状態で実行される。自動車1が停止している状態でも、動的な磁力変更制御は実行できる。ただし、後述するように、磁力変更の精度やバッテリ10の電力消費などの点から、自動車1が停止している状態では、静的な磁力変更制御を実行する方が好ましい。
[静的な磁力変更制御]
静的な磁力変更制御では、磁極35aとコイル36とを位置合わせし、ロータ33の回転を実質的に停止させた状態で磁力変更制御が実行される。具体的には、MCU21(駆動電流制御部21a)が、制御対象磁極および制御対象コイルの双方の位置を合わせる制御(位置合わせ制御)を実行し、制御対象磁極と制御対象コイルとが位置合わせされた状態で、MCU21(磁化電流制御部21b)が磁力変更制御を実行する。
位置合わせ制御を実行する前に、モータ3は、駆動システムから分離するのが好ましい。すなわち、TCU22によって第1クラッチ5および第2クラッチ7を切り離す。そうすることにより、モータ3を、エンジン2および変速機8の双方から独立した状態にする。それにより、ロータ33およびシャフト32はフリーな状態、つまり回転自在な状態となる。その結果、制御対象磁極と制御対象コイルとの位置合わせが容易になり、位置合わせ制御の精度を向上できる。
位置合わせ制御では、制御対象磁極と制御対象コイルとが対向して、制御対象磁極の軸線と制御対象コイルの軸線とが近接するように、ロータ33を回転させる。なお、同時に位置合わせ制御される制御対象磁極および制御対象コイルの数は、モータ3の構成によって異なる場合がある。
図6を参照して、静的な磁力変更制御について説明する。説明の便宜上、構成を簡略化した4極6スロットのモータを示す。符号Jpは、磁極35aの軸線を示しており、符号Jcは、コイル36の軸線を示している。磁極35aの軸線Jpは、シャフト32が延びる方向(回転軸方向)から見た時に、回転中心を通って磁極35aを二等分する線である。コイルの軸線Jcは、回転軸方向から見て、回転中心を通ってコイル36を二等分する線である。
例えば、静的な磁力変更制御を開始する時に、図6の上図に示す位置に、ロータ33があった場合を想定する。ロータ33は停止していても回転していてもよい。そして、U相のコイル群のコイル36を制御対象コイルとし、N極の磁極35aを制御対象磁極とした場合、MCU21(駆動電流制御部21a)は、モータ回転センサ51から入力される信号(ロータ33の回転位置情報)に基づいて、所定角度分だけロータ33を回転させる。そうすることにより、MCU21は、図6の中図に示すように、制御対象コイルの軸線Jcと、制御対象磁極の軸線Jpとが近接するように、制御対象磁極および制御対象コイルの双方の位置を合わせる。
好ましくは、両軸線Jc,Jpが略一致するように位置を合わせる。それにより、制御対象磁極と制御対象コイルとの位置関係のずれが防止でき、制御対象磁極に印加される磁界の偏りを小さくできる、最適な着磁のタイミングを確保できる。このとき、モータ3が駆動システムから分離していれば、安定して位置合わせができるし、振動などの外因の影響を抑制できる。従って、位置合わせ制御の精度が向上する。
またこのとき、位置合わせ制御の開始時において、複数の磁極35aのうち、制御対象磁極の軸線Jpに、軸線Jcが最も近接して位置している位相のコイル36に対して位置合わせ制御を実行するのが好ましい。ロータ33が回転している場合には、その回転方向において、制御対象磁極の軸線Jpに、最も軸線Jcが近接して位置している位相のコイル36に対して位置合わせ制御を実行するのがより好ましい。そうすれば、ロータ33の回転を最小限にできる。従って、位置合わせ制御に要する時間を短縮できるし、位置合わせ制御に要する電力も低減できる。
例えば、位置合わせ制御の開始時において、回転していないロータ33が、図6の上図に示す位置にあったとする。その場合に、N極の磁極35aが制御対象磁極とされると、U相のコイル群のコイル36の軸線Jcが最も制御対象磁極の軸線Jpに近接して位置している。従って、この場合は、図例のように、ロータ33を回転して位置合わせ制御を実行するのが好ましい。
また、それと同じ場合に、S極の磁極35aが制御対象磁極とされると、V相のコイル群のコイル36の軸線Jcが最も制御対象磁極の軸線Jpに近接して位置している。従って、この場合は、時計回りに、ロータ33を回転して位置合わせ制御を実行するのが好ましい。
そして、このように制御対象磁極と制御対象コイルとが位置合わせされた状態で、MCU21(磁化電流制御部21b)が、制御対象コイルであるU相のコイル群に、所定の強度でパルス状の磁化電流が流れるように制御する。制御対象磁極の軸線Jpと制御対象コイルの軸線Jcとが近接(略一致)しているので、制御対象コイルに磁化電流が流れることによって形成される磁界は、図6の中図に破線で模式的に示すように、制御対象磁極に対してバランスよく印加される。従って、制御対象磁極を略均一に磁化できる。
図例のモータの場合、2つの磁極(N極)35a,35aが、同時に、U相のコイル群と位置合わされて磁力変更制御が実行される。そして、図例のモータの場合、残り2つの磁極(S極)35a,35aについて磁力の変更が必要である。従って、これら2つの磁極35a,35aが新たな制御対象磁極となる。
MCU21(駆動電流制御部21a)は、モータ回転センサ51から入力される信号に基づいて、所定角度、更にロータ33を回転させる。そうすることにより、MCU21は、図6の下図に示すように、新たな制御対象磁極の軸線Jpと、制御対象コイル(新たな制御対象磁極に最も近接して位置している位相のコイル36、図例ではW相またはV相のコイル36)の軸線Jcとが近接(略一致)するように、制御対象磁極および制御対象コイルの双方の位置を合わせる。
そうして、MCU21(磁化電流制御部21b)は、先と同様に、図例ではW相のコイル36を用いて磁力変更制御を実行し、これら新たな制御対象磁極の磁力についても変更する。磁極数が更に多い場合には、全ての磁極35aに対して位置合わせ制御および磁力変更制御を実行し、全ての磁極35aの磁力が変更されるまで、MCU21は、このような一連の処理を繰り返し実行する。
このような一連の処理は、いずれかの磁極35aに対して磁力変更制御の実行が開始された場合、全ての磁極35aに対して磁力変更制御の実行が終了するまで、クラッチの連結を禁止するのが好ましい。
すなわち、MCU21は、GCU24が、第1クラッチ5および/または第2クラッチ7を連結する指示を出力しても、磁極35aの磁力の変更を開始した後は、全ての磁極35aの磁力の変更が終了するまでは、その処理を優先して実行する。
全ての磁極35aに対して磁力変更制御の実行が終了する前に、第1クラッチ5および/または第2クラッチ7を連結すると、ロータ33に外力が作用するので、位置合わせ制御が不安定になり、高精度な磁力変更制御が行えない。また、磁力変更制御を中断し、その状態でモータ3を駆動すると、磁力の異なる磁極35aが混在することになるので、モータ3は適切に機能しない。従って、MCU21が求める回転動力をモータ3が出力できないおそれがある。
それに対し、全ての磁極35aの磁力の変更が終了すれば、モータ3は、適切に機能する。従って、モータ3は、MCU21が求める回転動力を安定して出力できるようになる。
このような静的な磁力変更制御は、自動車1が停止しているときに有効ある。自動車1の場合、商用電源から常に一定電力の供給を受けられる家電製品とは異なり、その電源はバッテリ10に限られる。しかも、この自動車1のバッテリ10は、低電圧バッテリである。磁力変更制御では大電流が求められるので、自動車1の場合、バッテリ10の急激な消耗を招くという問題がある。
自動車1が停止しているときには、走行を利用した回生ができないので、エンジン2を用いて発電したり外部電源を用いたりしなければ、バッテリ10を充電できない。その点、静的な磁力変更制御では、各磁極35aに対して、最適な状態で磁力の変更が行えるので、必要かつ最小限の大きさの磁化電流により、1回の磁力変更制御で、磁力の変更を適切に行える。従って、電力の消費量を最小限にできるので、バッテリ10の急激な消耗を抑制できる。
[動的な磁力変更制御]
動的な磁力変更制御では、ロータ33の回転中に所定のコイル36が磁極35aを通過する過程で磁力変更制御が実行される。具体的には、ロータ33が回転していて、制御対象コイルが制御対象磁極の周方向における一端から他端まで通過する時に、MCU21(磁化電流制御部21b)が磁力変更制御を実行する。
動的な磁力変更制御は、ロータ33が回転している状態で行われるので、自動車1が走行している状態でも実行できる。従って、静的な磁力変更制御に比べて、実行するのに制約が少ない利点がある。例えば、エンジン2のみの駆動で自動車1が走行している場合、エンジン2の駆動をモータ3がアシストした状態で自動車1が走行している場合、モータ3のみの駆動で自動車1が走行している場合、のいずれの場合でも、動的な磁力変更制御は実行できる。また、自動車1が停止している状態でも、ロータ33を回転させれば実行できる。
特に、動的な磁力変更制御の場合、モータ3で車輪に回転動力を出力しながら、マグネット35の磁力の変更ができるので、モータ3を駆動システムから分離するなど、モータ3の通常の制御を大きく制限しないでよい利点がある。従って、制御の複雑化を回避できる。
図7を参照して、動的な磁力変更制御について説明する。例えば、動的な磁力変更制御を開始する時に、図7の上図に示すように、ロータ33が、反時計回りに回転している場合を想定する。そして、U相のコイル群のコイル36を制御対象コイルとし、磁極35a(N極)を制御対象磁極とすると、MCU21(磁化電流制御部21b)は、モータ回転センサ51から入力される信号(ロータ33の回転位置情報および回転数)に基づいて、制御対象磁極が、制御対象コイル1つ分を通過するのに要する時間(磁化時間)を演算する。
そして、図7の中図に示すように、ロータ33が回転して、制御対象磁極の周方向における一方の端部(回転方向の進行側に位置する端部、進角側端部Epf)が、制御対象コイル(実質的にはティース34bの突端)の周方向における一方の端部(回転方向の反進行側に位置する端部、遅角側端部Ecr)と、径方向に一致する位置に達すると、MCU21(磁化電流制御部21b)は、制御対象コイルであるU相のコイル群に、所定の強度で磁化電流が流れ始めるように制御し、時間計測を開始する。
そうして、磁化時間が経過すると、図7の下図に示すように、ロータ33が更に回転して、制御対象磁極の周方向における他方の端部(遅角側端部Epr)が、制御対象コイルの周方向における他方の端部(進角側端部Ecf)と、径方向に一致する位置に達する。つまり、制御対象磁極が、制御対象コイルを通過する。
その間、MCU21(磁化電流制御部21b)は、所定の強度の磁化電流が継続して制御対象コイルに流れるように制御し、制御対象磁極が、制御対象コイルを通過した時点でその制御を終了する。
制御対象磁極が、制御対象コイルを通過している間は、制御対象コイルから一定の磁化磁力が、制御対象磁極に印加される。従って、ロータ33の回転によって磁界が変化しても、制御対象磁極の磁化分布の不均一化を抑制することができる。
なお、制御対象コイルに磁化電流を印加している間も、MCU21(駆動電流制御部21a)は、各コイル群に所定の駆動電流が流れるように制御できる。従って、動的な磁力変更制御の実行中でも、モータ3から回転動力を出力できる。ただし、その間は、制御対象磁極の磁力の変化に伴って、モータ3から出力される回転動力も変化する。
動的な磁力変更制御を実行する時には、ロータ33の回転数は一定になるように制御するのが好ましい。例えば、MCU21(駆動電流制御部21a)が、一定期間、所定の回転数でロータ33が回転するように制御する(一定回転制御)。そして、ロータ33が一定の回転数で回転している間に、動的な磁力変更制御を実行する。ロータ33の回転数が一定であれば、磁化時間の演算が簡略になる。制御対象磁極に印加される磁界の乱れもよりいっそう抑制できる。従って、磁力変更制御の精度が更に向上する。
また、動的な磁力変更制御は、極力、ロータ33の回転数が低い時に実行するのが好ましい。すなわち、動的な磁力変更制御は、ロータ33の回転が、所定の回転数未満の時に実行し、所定の回転数以上の時に実行しないのが好ましい。ロータ33の回転数が高くなるほど、磁化時間が短くなるので、一回の磁化では、要求された磁力まで変更できないおそれがある。また、磁極35aの磁化分布も不均一になり易い。対して、ロータ33の回転数が低くなるほど、磁化時間が長くなるので、一回の磁力変更制御で変更できる磁力量が増加するし、磁極35aの磁化分布も均一になり易い。従って、磁力変更制御の精度が向上する。
判断基準となる所定の回転数は、モータ3の仕様等に応じて適宜設定すればよい。例えば、モータ3の出力可能な回転数の領域を低中高に三等分し、その中領域における任意の回転数を所定の回転数としてもよい。また、その低領域における任意の回転数を所定の回転数としてもよい。
図例のモータ3の場合、2つの磁極(N極)35a,35aが、同時に、U相のコイル群と位置合わされて磁力変更制御が実行される。そして、図例のモータ3の場合、残り2つの磁極(S極)35a,35aについて磁力の変更が必要である。従って、これら2つの磁極35aが新たな制御対象磁極となる。
U相のコイル群のコイル36を制御対象コイルとして、新たな制御対象磁極についても、同様の処理によって磁力変更制御を行うことができる。すなわち、S極の磁極35aが、U相のコイル群のコイル36を通過する過程で、U相のコイル群に磁化電流を通電する。しかし、動的な磁力変更制御の場合、別のコイル群を利用して、全ての磁極35aの磁力を一括して変更するのが好ましい。
図8の上図に、磁極35a(N極)に対して磁力変更制御を実行している途中の状態を示す。制御対象コイル(U相)が制御対象磁極を通過している時に、S極の磁極35aは、W相のコイル群のコイル36を通過し始める。すなわち、W相のコイル群のコイル36を制御対象コイルとし、磁極35a(S極)を制御対象磁極とすることができる。
従って、MCU21(磁化電流制御部21b)は、その制御対象磁極(S極)の進角側端部Epfが、制御対象コイル(W相のコイル36)の遅角側端部Ecrと、径方向に一致する位置に達すると、U相のコイル群と同様に、W相のコイル群にも、所定の強度で磁化電流が流れ始めるように制御し、時間計測を開始する。
そうして、磁化時間が経過し、図8の下図に示すように、制御対象磁極(S極)の遅角側端部Eprが、制御対象コイル(W相のコイル36)の進角側端部Ecfと、径方向に一致する位置に達するまで、MCU21(磁化電流制御部21b)は、所定の強度の磁化電流が継続して制御対象コイル(W相のコイル36)に流れるように制御する。
このように、2つの異なるコイル群を用いて磁力変更制御を実行することで、全ての磁極35aの磁力を一括して変更できる。短時間で全ての磁極35aの磁力を変更できるので、時間的に有利である。磁化時間も共用できるので、演算処理も簡略化できる。
動的な磁力変更制御の場合、制御対象磁極に磁化磁力を印加する磁化時間は、ロータ33の回転数によって変化する。そして、上述したように、回転数が高いと、一回の磁化では、要求された磁力まで変更できないおそれがある。従って、そのような場合、MCU21(磁化電流制御部21b)は、同じ制御対象磁極に対して、複数回、動的な磁力変更制御を実行するのが好ましい。
すなわち、MCU21(磁化電流制御部21b)は、磁力センサ53から入力される信号に基づいて、マグネット35が要求される磁力(磁力最適値)になったか否かを判定する。そうして、マグネット35が要求される磁力になるまで、MCU21(磁化電流制御部21b)は、同じ制御対象磁極に対して、複数回、動的な磁力変更制御を実行する。
そうすることにより、ロータ33の回転数のばらつきにより、磁化される磁極35aの磁力がばらついても、要求される磁力に変更できる。特に、動的な磁力変更制御の場合、静的な磁力変更制御と異なり、高調波の影響を受けるため、磁化分布が不均一になり易い。それに対し、複数回、磁化すれば、高調波の影響を低減できるので、磁極35aの磁化分布の均一性も向上できる。
U,V,Wの各相のコイル群を用いて動的な磁力変更制御を連続的に実行し、全ての磁極35aの磁力を一括して変更すれば、複数回であっても、短時間で行える。
動的な磁力変更制御は、静的な磁力変更制御よりも磁化効率が低下するので、電力消費は、静的な磁力変更制御よりも大きくなる。そのため、バッテリ10は、急激に限界以下まで電力が低下し、電力トラブルを生じるおそれがある。従って、自動車1が停止している時は、静的な磁力変更制御を実行するのが好ましい。
それに対し、動的な磁力変更制御の場合は、自動車1の走行中やエンジン2の駆動中に実行できるので、エンジン2の動力や制動時の回生によってバッテリ10を充電できる。従って、電力消費が大きくても、充電によってバッテリ10の電力を補充できるので、バッテリ10の電力低下を防止できる。
[磁力変更制御の具体例]
図9に、磁力変更制御の主な処理を例示する。MCU21は、GCU24を介して、自動車1が停止しているか否かを判定する(ステップS20)。この例の場合、MCU21は、自動車1が停止している時には、静的な磁力変更制御を実行し、自動車1が走行している時には、動的な磁力変更制御を実行する。
自動車1が停止していると判定された場合、MCU21は、制御対象磁極を決定する(ステップS21)。そして、制御対象磁極が決定すると、MCU21は、位置合わせ制御を実行する(ステップS22)。
図10に示すように、MCU21が位置合わせ制御を開始すると、GCU24は、TCU22を通じて、クラッチを切り離す制御を実行する(ステップS31)。具体的には、第1クラッチ5および第2クラッチ7を解放状態に切り換える。それにより、モータ3は、駆動システムから分離され、独立した状態になる。
MCU21は、続いて、制御対象コイルの判定を行う(ステップS32)。具体的には、位置合わせ制御の開始時に、制御対象磁極の軸線Jpに、軸線Jcが最も近接しているコイル36を制御対象コイルに選択する。そして、制御対象コイルが選択されると、MCU21は、モータ回転センサ51から入力される信号に基づいて、位置合わせに必要となる角度分だけロータ33を回転させる電流の指令値(位置合わせ電流指令Iuvw)の演算を行う(ステップS33)。
MCU21は、位置合わせ電流指令Iuvwに基づいてインバータ6を制御し、モータ3に位置合わせ電流Iuvwを出力して、所定の角度分だけロータ33を回転させる(ステップS34)。そうして、MCU21は、モータ回転センサ51から入力される信号に基づいて、ロータ33の位置は適正であるか否か、つまり制御対象磁極の軸線Jpと制御対象コイルの軸線Jcとが略一致した状態(位置合わせされた状態)になっているか否かを判定する(ステップS35)。ロータ33の位置が適正と判定されるまで、MCU21は、モータ3に位置合わせ電流Iuvwを出力する(ステップS35でNo)。
ロータ33の位置が適正と判定されると、MCU21は、静的な磁力変更制御の実行が可能になる。その後、MCU21は、静的な磁力変更制御が終了したか否かを判定し(ステップS36)、静的な磁力変更制御が終了するまで、位置合わせされた状態が保持されるように制御する(ステップS36でNo)。
そして、静的な磁力変更制御が終了すれば、GCU24は、TCU22を通じて、クラッチを連結する制御を実行する(ステップS37)。具体的には、全ての磁極35aに対して静的な磁力変更制御の実行が終了すれば、第1クラッチ5および第2クラッチ7を連結状態に切り換える。それにより、モータ3は、駆動システムに連結される。
図9に示すように、位置合わせ制御が実行されて、制御対象磁極と制御対象コイルとが位置合わせされた状態になると、MCU21は、静的な磁力変更制御を実行する(ステップS23)。
図11に示すように、静的な磁力変更制御が開始されると、MCU21は、磁化電流制御を実行する(ステップS40)。具体的には、MCU21は、制御対象磁極に求められる増磁量または減磁量のいずれかに応じて、インバータ6を通じて制御対象コイルに所定のパルス状の磁化電流を印加する。その結果、制御対象磁極の磁力が、求められた値(磁力最適値)になれば、静的な磁力変更制御は終了となる。なお、制御対象磁極の磁力が求められた値になったか否かは、磁力センサ53から入力される信号に基づいて判定できる。
図9に示すように、全ての磁極35aの磁力の変更が完了するまで、このような静的な磁力変更制御が繰り返し実行される(ステップS24)。
一方、図9において、自動車1が停止していない、つまり自動車1が走行していると判定された場合、MCU21は、動的な磁力変更制御を実行する。例えば、モータ3が駆動システムに連結された状態で回転しており、エンジン2をアシストしながら、あるいは単独で、モータ3が回転動力を出力しているような状況が想定される。
図12に、動的な磁力変更制御の一例を示す。MCU21は、モータ回転センサ51から入力される信号に基づいて、ロータ33の回転数を特定し、磁化時間を指示する指令値を演算する(ステップS50)。MCU21はまた、モータ回転センサ51から入力される信号に基づいて、ロータ33の回転位置を特定し、制御対象磁極の進角側端部Epfが、制御対象コイルの遅角側端部Ecrと径方向に一致する位置に達するまで待機する制御(待機制御)を実行する(ステップS51)。なお、制御対象磁極および制御対象コイルは、動的な磁力変更制御が開始された時に、回転方向において最も近接して位置している磁極35aおよびコイルを選択するのが好ましい。
そして、制御対象磁極の進角側端部Epfが、制御対象コイルの遅角側端部Ecrと径方向に一致する位置に達すると、MCU21は、制御対象コイルを構成しているコイル群に、所定の強度で磁化電流が流れ始めるように制御し、時間計測を開始する(ステップS52)。そうして、磁化時間が経過するまで、磁化電流の印加を継続する。
このとき、MCU21は、複数の異なるコイル群を用いて、このような動的な磁力変更制御を連続的に実行する。そうすることで、MCU21は全ての磁極35aの磁力を一括して変更する。
磁化電流の印加により、制御対象磁極の磁力は変化する。それに伴って、ロータ33に発生するトルクも変化する。その結果、モータ3から出力される回転動力も変化するので、自動車1の走行が乱れるおそれがある。
それに対し、この自動車1の場合、そのようなトルク変化の影響を抑制できるように、エンジン2、ブレーキ14、および/または、クラッチ5,7を利用して、トルクを調整する制御(トルク調整制御)を実行する(ステップS53)。例えば、磁極35aを減磁する時には、ロータ33のトルクが小さく変化するので、それに応じた回転動力をエンジン2で出力する制御を実行する。磁極35aを増磁する時には、ロータ33のトルクが大きく変化するので、それに応じた回転動力をブレーキ14で制動する制御を実行する。そして、これら制御と共に、または、これら制御とは別に、第1クラッチ5および第2クラッチ7の各々を部分連結状態にして、伝達される動力の大きさを調整することで、トルク変化の影響を抑制できる。
そうして、磁化時間が経過し、制御対象磁極が、制御対象コイルを通過すると、磁化電流の印加および待機制御を終了する(ステップS54)。MCU21は、磁力センサ53から入力される信号に基づいて、マグネット35が、要求される磁力(磁力最適値)になったか否かを判定する(ステップS55)。そうして、マグネット35の磁力が磁力最適値になるまで、MCU21は、動的な磁力変更制御を繰り返し実行する(ステップS55でNo)。
このような磁力変更制御の実行には、大電流が求められる。そのため、自動車1の場合、バッテリ10の急激な消耗を招くという問題がある。特に、低電圧バッテリの場合、満充電の状態でも電圧が低いので、電圧異常を頻発するおそれがある。
そこで、この自動車1では、バッテリ10の電圧値に基づいて、静的な磁力変更制御および動的な磁力変更制御の各々の実行が制限されるように構成されている(磁化実行制限制御)。具体的には、MCU21に、予め、動的な磁力変更制御に対応した第1下限値V1と、静的な磁力変更制御に対応した第2下限値V2とが設定されている。
静的な磁力変更制御は、動的な磁力変更制御よりも、マグネット35を効率的に磁化できるので、電力の消費量を少なくできる。従って、第1下限値V1は、第2下限値V2よりも高い値となっている(V1>V2)。なお、第1下限値V1および第2下限値V2の値は、モータ3の仕様や制限の内容に応じて適宜選択できる。
図13に、その磁化実行制限制御の一例を示す。自動車1の運転中、MCU21は、常時、バッテリ10の電圧が第1下限値V1以上であるか否かを判定する(ステップS60)。そして、バッテリ10が満充電状態であるなど、バッテリ10の電圧が第1下限値V1以上である場合には、電力消費が大きい動的な磁力変更制御でも、支障無く実行できるので、磁化実行制限制御は行われない。
一方、バッテリ10の電圧が第1下限値V1未満である場合には、動的な磁力変更制御の実行を制限する(ステップS61)。例えば、動的な磁力変更制御の実行禁止や、その実行回数の制限などが行われる。ただし、静的な磁力変更制御は、電力消費が少ないので、その実行は制限しない。
更にバッテリ10の電圧が低下すると、静的な磁力変更制御でも電圧異常が頻発するおそれがある。従って、MCU21は、バッテリ10の電圧が第2下限値V2以上であるか否かについても判定する(ステップS62)。そして、バッテリ10の電圧が第2下限値V2未満である場合には、静的な磁力変更制御についても、その実行を制限する(ステップS63)。例えば、静的な磁力変更制御の実行禁止や、その実行回数の制限などが行われる。
バッテリ10が充電されることによって、その電圧が高まれば、その程度に応じて、各磁力変更制御の制限は、解除される。従って、このモータ制御装置によれば、電圧異常の発生を抑制できるので、自動車1を安定して走行できる。
なお、開示する技術にかかるモータ制御装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
例えば、上述した実施形態では、ハイブリッド車への適用を例に説明したが、モータのみで走行する電気自動車であってもよいし、バイクや電動自転車等の2輪車であってもよい。なお、開示する技術は、このような移動するものだけでなく、移動しないものにも適用可能である。
制御装置の構成は仕様に応じて変更できる。例えば、1つのユニットだけで制御装置を構成してもよいし、実施形態のように複数のユニットを組み合わせて制御装置を構成してもよい。モータの構成も同様である。
1 自動車
2 エンジン
3 モータ
4 車輪
4R 駆動輪
5 第1クラッチ
6 インバータ
7 第2クラッチ
8 変速機
10 バッテリ
20 エンジンコントロールユニット(ECU)
21 モータコントロールユニット(MCU)
21a 駆動電流制御部
21b 磁化電流制御部
22 変速機コントロールユニット(TCU)
23 ブレーキコントロールユニット(BCU)
24 総合コントロールユニット(GCU)
33 ロータ
34 ステータ
35 マグネット(磁力可変マグネット)
35a 磁極
36 コイル

Claims (7)

  1. 複数の磁極が周方向に並ぶように磁石が設置されていて、回転動力を出力するロータ、および、前記磁石とギャップを隔てて対向する複数のコイルが周方向に並ぶように設置されているステータを有するモータと、
    前記コイルに流れる駆動電流を制御して、前記ロータに発生するトルクを変更する駆動電流制御部、および、前記コイルに流れる磁化電流を制御して、当該コイルに発生する磁力を変更する磁化電流制御部を有する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    少なくとも1つの前記磁極と少なくとも1つの前記コイルとが対向し、かつ、当該磁極の軸線と当該コイルの軸線とが近接するように、前記駆動電流制御部が、前記ロータを回転させる位置合わせ制御を実行し、前記位置合わせ制御がなされた状態で、前記磁化電流制御部が、前記磁化電流を制御することによって前記磁石の磁力を変更する磁力変更制御を実行するモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記モータ制御装置は自動車に搭載されており、
    前記自動車が停止しているときに、前記位置合わせ制御および前記磁力変更制御が実行されるモータ制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のモータ制御装置において、
    前記複数のコイルは、流れる電流の位相が異なる複数のコイル群で構成されていて、
    前記制御装置が、前記位置合わせ制御の開始時に、前記複数の磁極のうち、前記磁力変更制御の対象とされる制御対象磁極に最も近接して位置している前記コイル群に対して前記位置合わせ制御を実行し、その後、当該コイル群に流れる前記磁化電流を制御することによって前記制御対象磁極に対して前記磁力変更制御を実行するモータ制御装置。
  4. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    前記制御装置が、前記位置合わせ制御の実行前に、前記自動車の車輪と前記モータとの間に介在しているクラッチを切り離すモータ制御装置。
  5. 請求項4に記載のモータ制御装置において、
    いずれかの前記磁極に対して前記磁力変更制御の実行が開始された場合に、全ての前記磁極に対して前記磁力変更制御の実行が終了するまで、前記クラッチの連結を禁止するモータ制御装置。
  6. 請求項4または5に記載のモータ制御装置において、
    前記モータの電源を構成し、前記コイルに前記駆動電流および前記磁化電流を通電させるバッテリを更に備え、
    前記バッテリの電圧が所定の下限値未満の場合には、前記磁力変更制御の実行を制限するモータ制御装置。
  7. 請求項6に記載のモータ制御装置において、
    前記自動車がエンジンを備え、
    アクセルの操作に基づいて、前記モータおよび前記エンジンが協働して前記自動車を駆動するように構成されていて、
    前記バッテリの定格電圧が50V以下であるモータ制御装置。
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