以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1を参照しながら、本実施形態に係る設計支援システム10の構成について説明する。設計支援システム10は、建物の電気設備を設計するためのシステムとして構成されている。図1に示される複数の端末20は、使用者が設計支援システム10を使用する際におけるインターフェイスとして用いられるコンピュータ装置である。それぞれの端末20は、ネットワークシステムNWを介して設計支援システム10と繋がっており、設計支援システム10との間で双方向の通信を行うことが可能となっている。端末20を操作する使用者から見ると、設計支援システム10は、クラウド上に設置されたサーバー装置である。
端末20は、据え置き型のコンピュータ装置であってもよいが、使用者によって携帯される携帯通信端末であってもよい。ここで想定される「使用者」とは、例えば、建物のうち少なくとも電気設備の配置等を設計する建築業者である。使用者は、端末20を介して設計支援システム10にアクセスすることで、設計支援システム10による支援を受けながら建物の電気設備を設計することができる。端末20は、図1の例のように複数台用意されてもよいが、1台だけであってもよい。
設計支援システム10は、1台又は複数台のコンピュータからなるシステムとして構成されている。設計支援システム10は、機能的なブロックとして表現される要素として、提示部11と、入力部12と、取得部13と、決定部14と、記憶部15と、通信部16と、を備えている。
提示部11は、使用者が端末20を介して情報の入力を行う際に、入力される情報の選択肢を提示する部分である。ここでいう「情報」とは、建物に設置される負荷の型式に関する情報のことであり、例えば型式番号である。「負荷」とは、例えばエアコンや照明装置、電気機器を接続するためのコンセント等のことである。建物に設置される負荷の型式に関する情報のことを、以下では「型式情報」とも称する。型式情報は、負荷の型式を特定し得る情報であれば、型式番号以外の情報であってもよい。提示部11が型式情報の選択肢を提示するために、端末20に表示される画面の例等については、後に説明する。
入力部12は、端末20を介して上記の型式情報が入力される部分である。型式情報の入力を受けるために、端末20に表示される画面の例等については、後に説明する。
取得部13は、入力部12に入力された型式情報に対応する、負荷の電気的仕様を取得する処理を行う部分である。電気的仕様とは、建物に設置される高圧受電設備の仕様を決定するために必要な情報であって、例えば負荷の消費電力である。後述の記憶部15には、負荷の型式情報と、当該型式情報に対応する負荷の電気的仕様と、の対応関係が予め記憶されている。取得部13は、当該対応関係に基づいて、型式情報に対応する電気的仕様を取得する。尚、負荷の「電気的仕様」は、本実施形態のように消費電力の値でもよいが、電圧と電流のそれぞれの値であってもよい。
決定部14は、取得部13で取得された負荷の電気的仕様に基づいて、建物に設置される高圧受電設備の仕様を決定する処理を行う部分である。決定部14は、建物に設置される負荷への電力供給に支障がないように、高圧受電設備の仕様を決定する。高圧受電設備とは、例えば、建物の屋外に設置されるキュービクルである。決定部14において決定される高圧受電設備の「仕様」には、例えば、高圧受電設備に設けられるトランスの容量(つまり、トランスから出力可能な電力の最大値)や、高圧受電設備の大きさ及び重量等が含まれる。
記憶部15は、設計支援システム10に設けられた不揮発性の記憶装置であって、例えばハードディスクである。先に述べたように、記憶部15には、型式情報と、当該型式情報に対応する負荷の電気的仕様と、の対応関係が記憶されている。記憶部15には更に、建物の電気設備に関する各種の情報や、決定部14等が行う演算処理に必要な情報も予め記憶されている。
通信部16は、設計支援システム10と端末20との間における通信を実現するための通信インターフェイスである。通信部16と各端末20との間を繋ぐネットワークシステムNWは、有線の通信網であってもよく、無線の通信網であってもよい。また、ネットワークシステムNWは、例えばインターネットのような、多目的に利用される公共の通信網であってもよいが、設計支援システム10のために設けられた専用の通信回線であってもよい。
設計支援システム10の機能、すなわち、建物の電気設備の設計を支援する機能の説明に先立ち、建物の「電気設備」の概要について説明する。図2には、電気設備が設置された建物の一例が模式的に示されている。図2に示される建物700は3階建ての建物として構成されており、その屋外には高圧受電設備710が設置されている。
高圧受電設備710は、電力会社の送電網TLから供給される高電圧の電力を低電圧の電力に変圧し、当該電力を建物700の各フロアへと分配供給するための設備である。高圧受電設備710には、上記のような変圧を行うためのトランス711や、不図示のコンデンサ等が設けられている。
建物700の各フロアには、1つまたは複数の分電盤720が設置されている。図2の例では、それぞれのフロアに分電盤720が2つずつ設置されているのであるが、分電盤720の数はこれとは異なっていてもよい。高圧受電設備710とそれぞれの分電盤720との間は、幹線740によって接続されている。尚、図2においては、高圧受電設備710のトランス711から伸びる1本の幹線740が、途中で複数に分岐してそれぞれの分電盤720に繋がっているように描かれているのであるが、幹線740の態様はこれとは異なっていてもよい。例えば、高圧受電設備710と分電盤720との間が、それぞれの分電盤720毎に用意された個別の幹線740によって接続されているような態様であってもよい。
図2においては、それぞれのフロアに設置された負荷が、符号730の付されたブロックとして模式的に描かれている。以下では、それぞれの負荷のことを「負荷730」とも表記する。図2の例では、各フロアに負荷730が4つずつ設置されているように描かれているのであるが、実際の負荷730の数はこれとは異なっていてもよい。
それぞれの分電盤720は、幹線740から供給される電力を、それぞれの負荷730に分配する。分電盤720には、主幹ブレーカー721と、分岐ブレーカー722とが設けられている。主幹ブレーカー721及び分岐ブレーカー722は、いずれも回路遮断器であって、通過する電力の値が所定の遮断容量を超えると、自動的に電路を遮断するように構成されている。
よく知られているように、建物700に設置される負荷730の容量、すなわち消費電力が大きくなる程、分岐ブレーカー722の遮断容量、及び主幹ブレーカー721の遮断容量を大きくしておく必要がある。また、負荷730の数が増加するなどして、建物700の全体で消費される電力が大きくなる程、トランス711の容量も大きくしておく必要がある。設計支援システム10は、負荷730の電気的仕様に基づいて、トランス711の容量を含む高圧受電設備710の仕様等を自動的に決定する機能を有している。このため、建物700を設計する建築業者は、高圧受電設備710を提供する電気設備業者との間で情報をやり取りすることなく、設計支援システム10の操作を行うだけで、高圧受電設備710の仕様を取得することが可能となる。
以下では、端末20に表示される画面の例等を示しながら、設計支援システム10の機能について説明する。本実施形態に係る設計支援システム10は、複数の建物700の電気設備に関する各種情報を、建物700毎にまとめて管理している。1つの建物700に対応した一まとまりの情報は、「案件情報」として設計支援システム10の記憶部15に記憶されている。
使用者が、端末20を介して設計支援システム10にログインすると、図3に示される案件情報画面100が端末20の画面に表示される。案件情報画面100は、上段の案件情報登録部110と、下段の案件一覧表示部120と、により構成されている。
案件情報登録部110は、使用者が新規の案件情報を登録するために操作する部分である。使用者は、「件名」の入力欄に、案件情報を特定する名称、例えば建物700の名称を入力する。案件情報登録部110には、件名の入力欄の他に、階数設定部111と、登録ボタン112と、キャンセルボタン113と、が表示されている。
階数設定部111は、使用者が、建物700の階数、すなわちフロアの数を入力する部分である。使用者は、階数設定部111に対し、建物700の最上階と最下階とを設定する。図2の例のように建物700が三階建ての場合には、最上階として「3」が入力され、最下階として「1」が入力されることとなる。
尚、案件情報登録部110には、上記の他にも、案件に関する情報を入力するための入力欄が多数表示されているのであるが、これらについては個別の説明を省略する。使用者は、必要な情報を入力した後、登録ボタン112をクリックする。これにより、入力された新たな案件情報が設計支援システム10へと送信され、記憶部15に追加登録され記憶される。尚、登録ボタン112ではなくキャンセルボタン113がクリックされた場合には、案件情報登録部110の各入力欄に入力された情報がクリアされる。
案件一覧表示部120には、リスト表示部121と、負荷情報入力ボタン122と、削除ボタン123と、が表示されている。
リスト表示部121は、現在ログインしている使用者により、これまでに登録されている案件情報の一覧が表示される。上記のように、案件情報登録部110の登録ボタン112がクリックされ、新たな案件情報が追加登録された場合には、当該案件情報を示す文字列が、リスト表示部121に新たな行として追加される。図3の例では、案件A、案件B、案件Cからなる3つの案件情報がリスト表示部121に表示されている。尚、ここに表示される「案件A」等の文字列は、案件情報登録部110の「件名」の欄に入力されていた名称である。
使用者は、リスト表示部121に表示されている案件情報の名称をクリックすることで、当該案件情報を選択状態にすることができる。特定の案件情報を選択状態にした後、使用者が削除ボタン123をクリックすると、当該案件情報がリスト表示部121から削除されると共に、記憶部15からも削除される。
リスト表示部121に表示されている特定の案件情報を選択状態にした後、使用者が負荷情報入力ボタン122をクリックすると、端末20の画面には、図4に示される使用製品情報画面200が表示される。使用製品情報画面200は、上記のように選択された案件情報に対応した建物700の、負荷等に関する情報が入力される画面となっている。以下では、建物700が10階建ての建物である場合の例について説明する。
使用製品情報画面200には、フロア枠210と、盤ブロック211と、が表示される。フロア枠210は略矩形に描かれた枠であって、建物700のフロアの数と同じ数だけ、縦方向に並ぶように表示される。それぞれのフロア枠210は、建物700の何れかのフロアに対応するものである。設計支援システム10は、図3の階数設定部111に入力されていた階数に基づいて、建物700のフロアの数と同じ数のフロア枠210を表示させる。
図4においては、10階に対応するフロア枠210と、9階に対応するフロア枠210と、の2つのみが示されているのであるが、これらは、10個あるフロア枠210の一部である。使用者は、右端のスクロールバーを操作することにより、建物700の各フロアに対応するフロア枠210のうちのいずれかを画面に表示させることができる。同時に表示し得るフロア枠210の数は、2とは異なっていてもよい。
盤ブロック211は、建物700のフロアに設置される盤を示すアイコンである。ここでいう「盤」とは、図2の例においては分電盤720のことであるが、盤ブロック211によって示されるのは制御盤や設備盤であってもよい。尚、図4において、盤ブロック211の内側に記された「LP−10−01」等の文字列は、それぞれの盤を特定するための記号であって、使用者により任意に設定されるものである。
それぞれのフロア枠210の内側に配置された盤ブロック211は、当該フロア枠210に対応するフロアに設置された1つの盤を表している。図3の例のように、各フロアに分電盤720が2つずつ配置される場合には、1つのフロア枠210の内側に、盤ブロック211が2つ表示されることとなる。尚、案件情報が新規に登録された後、使用製品情報画面200が初めて表示される場合、すなわち、各フロアへの盤の登録が未だ行われていない場合には、フロア枠21の内側に盤ブロック211は表示されない。このような態様に替えて、所定個数の盤ブロック211が、デフォルトの初期情報としてフロア枠210の内側に表示されることとしてもよい。
それぞれのフロア枠210の上部分には、追加ボタン212が表示されている。盤ブロック211の追加等を行う際には、使用者はこの追加ボタン212をクリックする。使用者が追加ボタン212をクリックすると、端末20の画面には、図5に示されるような機器編集画面300が表示される。図5に示されるのは、10階に対応したフロア枠210の追加ボタン212が押された場合に表示される、機器編集画面300の例である。
図5に示されるように、機器編集画面300には、リスト表示部310と、行追加ボタン320と、行削除ボタン330と、登録ボタン301と、キャンセルボタン302と、が表示されている。
リスト表示部310には、フロアに設置される盤のそれぞれがリスト表示される。リスト表示部310の各行には、1つの盤に関する情報、具体的には「機器種別」、「設置場所」、「盤名称」等の情報が列挙されている。使用者は、マウスやキーボードなどの操作により、これらの情報を編集することができる。「機器種別」とは、分電盤の種類であって、「分電盤」、「制御盤」、「設備盤」の何れかを選択して入力することが可能となっている。「設置場所」とは、盤が設置されるフロアの階数を示す情報である。図5の例は、上記のように10階に対応したフロア枠210の追加ボタン212が押された場合の例であるから、全ての行の「設置場所」は「10F」と表示されている。「盤名称」とは、盤を特定するために任意に設定される記号であって、図4のように盤ブロック211の内側に表示される「LP−10−01」等の文字列のことである。
新たな行を追加したい場合、すなわち、該当フロアに設置される盤を新たに追加したい場合には、使用者は行追加ボタン320をクリックし、追加された行に必要な情報を入力すればよい。既存の行を削除したい場合には、当該業の右端にあるチェックボックスにチェックを入れた状態で、その下方にある行削除ボタン330をクリックすればよい。
使用者は、上記のように機器編集画面300に必要な情報を書き込むことにより、各フロアに盤を配置しながら電気設備の設計を進めて行くことができる。
編集の作業が終了すると、使用者は登録ボタン301をクリックする。使用者が登録ボタン301をクリックすると、機器編集画面300が閉じられて、図4の使用製品情報画面200が再度表示される。このとき、それぞれのフロア枠210における盤ブロック211の配置は、直前に編集されたリスト表示部310の内容に合致した配置となっている。また、それぞれのフロア枠210における盤ブロック211の配置は、設計支援システム10へと送信され、記憶部15に記憶される。換言すれば、記憶部15に記憶されている案件情報における盤の配置が、使用者が入力したものとなるように更新される。
使用製品情報画面200の右上部分には、追加ボタン220が表示されている。追加ボタン220は、追加ボタン212と同様に、盤ブロック211の追加等を行うためにクリックされるボタンである。使用者が追加ボタン220をクリックすると、図5と同様の機器編集画面300が端末20の画面に表示される。ただし、このとき表示される機器編集画面300のリスト表示部310には、特定のフロアに設置される盤のみがリスト表示されるのではなく、建物700の全体に設置される盤の全てがリスト表示される。つまり、図5の例のように「設置場所」が「10F」と設定されている盤のみならず、「1F」と設定されている盤、「2F」と設定されている盤、等の全てがリスト表示される。
このように、設計支援システム10によれば、建物700の各フロアに設置される盤の情報を、建物700のフロアごとに表示して使用者に個別に編集させることができるほか、全てのフロアについて一つの画面に一括表示して編集させることもできる。
図4の使用製品情報画面200において、使用者が、表示されている複数の盤ブロック211のうちの一つをクリックすると、図6に示されるような盤仕様編集画面400が表示される。盤仕様編集画面400は、盤ブロック211に対応する盤に接続される全ての負荷730、の電気的仕様を含む各種情報を表示し、当該情報を使用者に編集させるための画面である。図6に示されるのは、図4において、10階の「LP−10−01」と表示された盤ブロック211がクリックされた場合に表示される、盤仕様編集画面400の例である。
盤仕様編集画面400は、上段の盤仕様表示部410と、中段の幹線情報表示部420と、下段の負荷表示部430と、により構成されている。
盤仕様表示部410は、先ほどクリックされた盤ブロック211に対応する盤、についての情報が表示される部分である。盤仕様表示部410には、設置場所表示部411と、盤名称表示部412と、が表示されている。設置場所表示部411には、盤が設置されるフロアの階数が表示される。盤名称表示部412には、盤の名称として設定された「LP−10−01」等の文字列が表示される。
尚、盤仕様編集画面400には、上記の他にも、盤に関する情報を入力するための入力欄が多数表示されているのであるが、これらについては個別の説明を省略する。次に説明する幹線情報表示部420や負荷表示部430についても同様に、図6において表示されている各欄のうち一部のみについて説明し、他の説明については省略することとする。
幹線情報表示部420は、高圧受電設備710から盤に接続される幹線740、についての情報が表示される部分である。幹線情報表示部420には、遮断容量表示部421と、幹線仕様表示部422と、が表示されている。
遮断容量表示部421は、盤に設けられる主幹ブレーカー721の遮断容量が表示される部分である。遮断容量表示部421の左側に表示されている「AT」の文字は、所謂「アンペアトリップ」を意味している。例えば、遮断容量表示部421に「125」と表示されている場合には、盤の主幹ブレーカー721として、125Aの電流が流れた際に遮断動作を行うようなものが用いられることを意味する。
遮断容量表示部421に表示される遮断容量は、後述の負荷表示部430に表示されている負荷730の電気的仕様(具体的には消費電力)に基づいて、設計支援システム10によって自動的に入力されたものである。負荷730の消費電力の合計値が大きいほど、遮断容量表示部421に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された「AT」数値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
幹線仕様表示部422は、盤に接続される幹線740の太さを示す数値が表示される部分である。幹線仕様表示部422に表示される数値は、後述の負荷表示部430に表示されている負荷730の電気的仕様(具体的には消費電力)に基づいて、設計支援システム10によって自動的に入力されたものである。負荷730の消費電力の合計値が大きいほど、幹線仕様表示部422に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された数値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
負荷表示部430は、盤に接続され電力供給を受ける負荷730、の電気的仕様が表示される部分である。負荷表示部430には、盤に接続される負荷730のそれぞれがリスト表示される。負荷表示部430の各行には、1つの負荷730に関する情報、具体的には「負荷名称」、「消費電力」、「ブレーカー種別」、「AT」等の情報が列挙されている。
使用者は、マウスやキーボードなどの操作により、これらの情報を編集することができる。「負荷名称」とは、負荷730を特定するために任意に設定される文字列である。「消費電力」とは、負荷730の消費電力を、「W」又は「VA」を単位とする数値で表示する部分である。「ブレーカー種別」は、負荷730と盤との間に設置される分岐ブレーカー722の種類であって、「MCCB」、「ELCB」、「TB」のいずれかを選択して入力することが可能となっている。尚、上記のうち「TB」とは、端子台を意味する。盤と負荷730との間が、分岐ブレーカー722を介することなく直結されるような場合には、「ブレーカー種別」として「TB」が選択される。「AT」は、所謂「アンペアトリップ」であり、分岐ブレーカー722の遮断容量である。
負荷表示部430に表示されているこれらの情報のうち、少なくとも「負荷名称」と「消費電力」は、原則的に、使用者によって手動で入力される。負荷表示部430における「AT」は、入力された「消費電力」の数値に応じて、適切な値が設計支援システム10によって自動的に入力される。消費電力の数値が大きいほど、「AT」の欄に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された「AT」の値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
負荷表示部430に新たな行を追加したい場合、すなわち、盤に接続される負荷730を新たに追加したい場合には、使用者は行追加ボタン405をクリックすればよい。既存の行を削除したい場合には、当該業の右端にあるチェックボックスにチェックを入れた状態で、その下方にある負荷削除ボタン402をクリックすればよい。使用者は、負荷表示部430を適宜編集することで、盤に接続される負荷730の情報を書き換えていくことができる。
使用者は、上記とは別の方法で、負荷表示部430のリストに負荷730を追加することもできる。負荷表示部430の下方側には、負荷追加ボタン401が表示されている。使用者が負荷追加ボタン401をクリックすると、端末20の画面には、図7に示されるような負荷追加画面500が表示される。
負荷追加画面500は、分類表示部510と、候補表示部520とを有している。分類表示部510には、例えば「空調・換気」や「照明」のような、負荷730が属し得る分類を示す文字列が複数リスト表示されている。使用者は、表示されている分類のうちの一つをクリックして選択することができる。
候補表示部520は、負荷表示部430に追加される負荷730の候補が、選択肢として表示される部分である。候補表示部520には、分類表示部510において選択されている分類に対応する負荷730の図が、1つ又は複数表示される。それぞれの負荷730の図の右側には、当該負荷730の型式情報及び価格が表示されている。候補表示部520に負荷730の選択肢を表示して、使用者に提示する処理は、提示部11によって行われる。候補表示部520にリスト表示された負荷730の候補は、負荷730に関する型式情報の選択肢、ということもできる。尚、候補表示部520において、それぞれの負荷730の図の右側に、型式情報や価格に加えて電気的仕様が表示されることとしてもよい。
尚、候補表示部520の上部には、検索文字入力欄521と、検索ボタン522とが評されている。使用者が、検索文字入力欄521に文字列を入力してから検索ボタン522をクリックすると、当該文字列に合致する型式の負荷730が、候補表示部520にリスト表示される。
候補表示部520にリスト表示されるそれぞれの負荷730の左側には、追加ボタン530が表示されている。使用者は、いずれかの追加ボタン530をクリックすることで、その右側にある負荷730を、この時点では非表示となっている盤仕様編集画面400の負荷表示部430に追加することができる。このとき、追加された負荷730の型式情報が設計支援システム10に送信され、入力部12に入力される。続いて、取得部13は、入力された型式情報に対応する電気的仕様、具体的には負荷730の消費電力の値を取得し、負荷表示部430のうち、追加された負荷730の「消費電力」の欄に自動的に入力する。また、負荷表示部430のうち、追加された負荷730の「負荷名称」の欄には、負荷730の型式を示す文字列が自動的に入力される。
このように、本実施形態では、提示部11によって候補表示部520に提示された複数の型式情報の選択肢のうち、使用者によって選択されたものが、入力部12に入力されるように構成されている。負荷730を追加する作業が終了し、使用者が閉じるボタン540をクリックすると、負荷追加画面500が閉じられて、盤仕様編集画面400が再び表示される。
図6に戻って説明を続ける。盤仕様編集画面400において、使用者は、上記のように負荷表示部430に必要な情報を書き込むことにより、各フロアに負荷730を配置しながら、電気設備の設計を進めて行くことができる。
編集の作業が終了すると、使用者は保存ボタン403をクリックする。これにより、入力された負荷730の情報等は、設計支援システム10へと送信され、記憶部15に記憶される。換言すれば、記憶部15に記憶されている案件情報における負荷730の配置等が、使用者が入力したものとなるように更新される。
尚、保存ボタン403がクリックされる前の段階においても、負荷表示部430の各情報が使用者によって更新されると、当該情報は設計支援システム10と送信される。設計支援システム10は、更新された情報に基づいて、負荷表示部430の「AT」に表示される数値や、幹線情報表示部420の遮断容量表示部421や幹線仕様表示部422に表示される数値を都度更新する。例えば、一部の負荷730の「消費電力」が、それまでよりも大きな数値に変更された場合には、当該負荷730の「AT」の数値がより大きな値に変更されると共に、遮断容量表示部421や幹線仕様表示部422に表示される数値もより大きな値に変更される。
このような数値の自動変更を可能とするために、記憶部15には、負荷730の消費電力と分岐ブレーカー722の遮断容量との対応関係、盤に繋がる負荷730の消費電力の合計値と主幹ブレーカー721の遮断容量との対応関係、及び、盤に繋がる負荷730の消費電力の合計値と幹線740の太さとの対応関係、等が予め記憶されている。設計支援システム10は、これらの対応関係を参照することにより、上記のような各数値の自動変更を行う。
使用者によって保存ボタン403がクリックされ、記憶部15に記憶されている負荷730の情報が更新されると、設計支援システム10の決定部14は、当該情報に基づいて、建物700に設置される高圧受電設備710の仕様を決定する。具体的には、設計支援システム10の決定部14は、建物700における各負荷730への電力供給に支障が出ないように、高圧受電設備710が備えるべきトランス711の容量を決定する。また、決定部14は、トランス711やコンデンサなどの構成要素を収容するために必要な、高圧受電設備710の外形を算出し、合わせて高圧受電設備710の重量も算出する。
上記のような決定を可能とするために、記憶部15には、建物700における全ての負荷730の消費電力の合計値と、高圧受電設備710の仕様との対応関係が、予め記憶されている。決定部は、当該対応関係を参照することにより高圧受電設備710の仕様を決定する。
決定部14によって決定された高圧受電設備710の上記仕様は、記憶部15に記憶される。設計支援システム10の使用者は、必要な呼び出し操作を行うことによって、高圧受電設備710の仕様を端末20の画面に表示させることができる。
尚、保存ボタン403がクリックされることなく、盤仕様編集画面400が閉じられた場合には、それまでに使用者により入力されていた各種情報は、盤仕様編集画面400が表示される前の状態に戻される。
以上に説明したように、本実施形態に係る設計支援システム10では、型式情報が入力部12に入力されると、これに対応する負荷730の電気的仕様が取得部13によって取得される。その後、取得された電気的仕様、すなわち負荷表示部430に自動入力された電気的仕様の値に基づいて、建物700に設置される高圧受電設備710の仕様が決定部14によって決定される。
使用者は、負荷の型式情報を入力するだけでよく、負荷730の電気的仕様を手動で入力する必要が無い。このため、本実施形態に係る設計支援システム10によれば、情報の入力作業に伴う使用者への負担を軽減することが可能となる。
更に本実施形態では、提示部11が、負荷追加画面500の候補表示部520において型式情報の選択肢を複数提示し、これらの選択肢のうち使用者によって選択されたものが、入力部12に自動的に入力されることとしている。使用者が、型式情報を容易に入力することができるので、使用者の入力作業の負荷は更に軽減されている。
このような態様に替えて、使用者が、例えば型式番号のような、型式情報を示す文字列を端末20から手動でタイプ入力し、この文字列が入力部12に入力されるような態様であってもよい。
図8に示されるフローチャートは、以上に説明した機能を実現するために、設計支援システム10において実行される処理の大まかな流れを示すものである。図8に示される一連の処理は、図6の盤仕様編集画面400において、負荷追加ボタン401が使用者によりクリックされたタイミングで開始されるものである。
当該処理の最初のステップS01では、図7の負荷追加画面500を、端末20の画面に表示させる処理が行われる。その後は、提示された選択肢から負荷730を選択し、これを負荷表示部430に追加する操作が、使用者によってなされる。
ステップS01に続くステップS02では、負荷表示部430に新たな負荷730が追加されたか否かを判定する処理が行われる。負荷表示部430に新たな負荷730が追加されなかった場合には、図8に示される一連の処理を終了する。新たな負荷730が追加された場合にはステップS03に移行する。
ステップS03では、追加された負荷730の型式情報が入力部12に入力される。ステップS03に続くステップS04では、ステップS03で入力された型式情報に対応する負荷730の電気的仕様が、取得部13によって取得される。既に述べたように、取得部13は、記憶部15に予め記憶されている対応関係に基づいて、入力された型式情報に対応する電気的仕様を取得する。
ステップS04に続くステップS05では、負荷表示部430に入力された各負荷730の電気的仕様に基づいて、高圧受電設備710の仕様を決定する処理が、決定部14によって行われる。このとき、高圧受電設備710の仕様を決定するために用いられる電気的仕様の一部は、負荷表示部430において使用者が手動で入力又は更新したものであってもよい。
先に述べたように、設計支援システム10の使用者は、必要な呼び出し操作を行うことによって、上記のように決定された高圧受電設備710の仕様を端末20の画面に表示させることができる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。