JP2021127509A - スカンジウムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ化工程を必要とせず、かつ従来の方法よりも低温のプロセスによって低コストでスカンジウムを製造することが可能な、スカンジウムの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のスカンジウムの製造方法は、塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、を含む。前記非水溶媒が、スカンジウムイオンに配位可能な酸素原子を分子内に含む非プロトン性溶媒を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、スカンジウムの製造方法に関する。
スカンジウムは、例えば、アルミニウムに微量添加されてアルミニウムと合金を形成することによって、アルミニウムの機械的強度および溶接性を飛躍的に向上させることができる。また、スカンジウムは、固体酸化物型燃料電池のプロトン伝導体の添加元素として用いられる等、様々な用途への利用が期待されている有用な元素である。しかし、スカンジウムは、地殻中に分散した状態で存在しており、商業利用が十分に可能な程度に濃縮されたスカンジウムの鉱脈は未だ発見されていない。したがって、スカンジウムは、その産出量が少なく、さらに商業的な製錬対象となっていないため、非常に高価である。
近年、ニッケル製錬の浸出液から、多量のスカンジウムが酸化物(Sc23)の状態で回収可能となった。したがって、Sc23を原料として用いてスカンジウムを製造する方法が注目されている。Sc23を用いてスカンジウムを製造する方法として、金属熱還元法を利用する方法が主に用いられている(例えば、非特許文献1)。この方法では、熱力学的に極めて安定なSc23を還元するために、まずSc23を、還元が容易なフッ化スカンジウム(ScF3)に変換する。次に、ScF3を還元剤(金属カルシウム)を用いて高温(1600℃)で還元することによって、スカンジウムを製造する。
しかし、上記の方法はフッ化工程を必要とするので、コストが高く、かつ環境負荷が大きい。そこで、この問題を解決する方法として、非特許文献2は、金属熱還元法を利用して、フッ化工程を経ずにSc23を還元してスカンジウムを製造する方法を提案している。非特許文献2で提案されている方法によれば、Sc23をフッ化工程を経ることなく還元して、Sc23からアルミニウム−スカンジウム合金を直接製造することが可能である。
彌富信義、南條道夫、「レアメタルの精製錬 スカンジウム」、東北大学選鉱製錬研究所彙報、第45巻、第1号、1989年、pp.66−76 岡部徹、「電気化学的な手法によるスカンジウムの新しい製造法に関する研究」、公益財団法人JFE21世紀財団、2008年度 技術研究報告書
非特許文献2に開示されている上記従来の方法は、フッ化工程を必要としないので、コストを削減し、さらに環境負荷の問題を解決することができる。しかし、この方法は、非常に高温での還元処理を必要とするので、未だコスト削減が不十分である。さらに、この方法では、還元が十分に進行しないため、不純物が含まれたアルミニウム−スカンジウム合金しか得られておらず、単体のスカンジウムは得られていない。このように、スカンジウムを低コストで製造できる方法は、未だ確立されていない。
そこで、本発明は、フッ化工程を必要とせず、かつ従来の方法よりも低温(例えば常温)のプロセスによって低コストでスカンジウムを製造することが可能な、スカンジウムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様に係るスカンジウムの製造方法は、
塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、
を含み、
前記非水溶媒が、スカンジウムイオンに配位可能な酸素原子を分子内に含む非プロトン性溶媒を含む。
本発明の第2態様に係るスカンジウムの製造方法は、
塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、
を含み、
前記非水溶媒は、非プロトン性溶媒を含み、
前記非プロトン性溶媒が、鎖状エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状炭酸エステル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、尿素、およびスルホンからなる群より選択される少なくとも1つである。
本発明によれば、フッ化工程を必要とせず、かつ従来の方法よりも低温のプロセスによって低コストでスカンジウムを製造することが可能な、スカンジウムの製造方法を提供できる。
実施例1の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 実施例1の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 実施例2の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 実施例2の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 実施例3の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 実施例3の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。 (a)は実施例4の電解液を用いて行われた電析後の作用極の外観写真、(b)は実施例4の電析で析出した析出物の走査型電子顕微鏡画像、および(c)は実施例4の電析で析出した析出物のエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルを示す。 ジグライムに対する塩化スカンジウムの溶解試験の結果を示す。
以下、本発明のスカンジウムの製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のスカンジウムの製造方法は、塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、を含む。非水溶媒は、スカンジウムイオンに配位可能な酸素原子を分子内に含む非プロトン性溶媒を含む。
従来用いられているスカンジウムを製造する方法は、[背景技術]の欄で説明したような金属熱還元法や、溶融塩電解法である。これらの従来の方法では、還元によってスカンジウムを得る際に、非常に高温での処理が必要であった。
一方、本実施形態の製造方法は、非水溶媒を用いて調製されたスカンジウムイオンを含む電解液から、スカンジウムをカソード上に電析させることによって、スカンジウムを製造する方法である。したがって、従来の方法のような高温での還元処理を必要とせず、例えば100℃以下の低温でのスカンジウムの電析が可能であり、さらに常温(例えば0℃〜40℃の範囲)でのスカンジウムの電析も可能である。また、本実施形態の製造方法は、フッ化工程を必要としない。したがって、本実施形態の製造方法によれば、従来の方法のように、高温の還元処理およびフッ化工程のための設備対策が不要であり、その結果、スカンジウムの製造コストを低減することができる。
以下に、本実施形態の製造方法について、特に電解液について、より詳細に説明する。
上述のとおり、電解液は、塩化スカンジウム(ScCl3)と、非水溶媒と、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、およびヨウ化リチウム(LiI)からなる群より選択される少なくとも1つ(LiX(X:Cl、Br、またはI))と、を含む。ScCl3、非プロトン性溶媒、およびLiXとして、例えば、市販品を利用することが可能である。
本実施形態の製造方法では、スカンジウム塩としてScCl3が用いられる。ScCl3は、強いルイス酸性を示す。
非水溶媒は、上述のとおり、スカンジウムイオンに配位可能な酸素原子を分子内に含む非プロトン性溶媒を含む。このような非プロトン性溶媒として、例えば、鎖状エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状炭酸エステル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、尿素、およびスルホンが挙げられる。このような非プロトン性溶媒は、酸素の孤立電子対をルイス酸であるスカンジウムイオンに供与して配位し、スカンジウムイオンと錯体を形成し得る。ただし、ScCl3を上記の非プロトン性溶媒を含む非水溶媒に溶解させて、スカンジウムの電析が可能な程度のスカンジウムイオン濃度を有する電解液を得るためには、電解液中にLiXを共存させる必要がある。LiXをScCl3と共存させることにより、非水溶媒に対するScCl3の溶解度を高めることができる。その結果、スカンジウムの電析が可能な程度のスカンジウムイオン濃度を有し、かつ高い導電率を有する電解液を作製することができる。また、このような電解液は、電気化学的な活性を示すことも可能である。したがって、この電解液中でカソードとアノードとの間に通電した場合、スカンジウムイオンの還元反応が起こり、スカンジウムを析出させることができる。すなわち、上記の非プロトン性溶媒を含む非水溶媒、ScCl3、およびLiXを含む電解液は、スカンジウムの電析浴として使用可能である。
鎖状エーテル溶媒として、例えば、グライム類、1,2−ジメトキシエタン、および1,2−ジエトキシエタンが挙げられる。
環状エーテル溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、クラウンエーテル、1,4−ジオキサン、および1,3−ジオキソランが挙げられる。
鎖状炭酸エステル溶媒として、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートが挙げられる。
環状炭酸エステル溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびブチレンカーボネートが挙げられる。
環状エステル溶媒として、例えば、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
鎖状エステル溶媒として、例えば、酢酸メチルが挙げられる。
スルホンとして、例えば、ジメチルスルホンおよびエチルメチルスルホンが挙げられる。
非プロトン性溶媒は、鎖状エーテル溶媒、尿素、およびスルホンからなる群より選択される少なくとも1つであることが望ましい。これらを非プロトン性溶媒として含む電解液は、ScCl3の高い溶解度を実現しやすく、かつ電気化学的な活性を示しやすいので、スカンジウムの電析浴としてより利用しやすい。
鎖状エーテル溶媒は、グライム類であることが望ましい。グライム類は、ジグライムおよびトリグライムからなる群より選択される少なくとも1つであることが望ましい。グライム類、特にジグライムおよびトリグライムを非プロトン性溶媒として含む電解液は、ScCl3の高い溶解度を実現しやすく、かつ電気化学的な活性を示しやすい。したがって、グライム類、特にジグライムおよびトリグライムを含む電解液は、スカンジウムの電析浴としてより利用しやすい。
スルホンは、ジメチルスルホンであることが望ましい。ジメチルスルホンを含む電解液は、スカンジウムの電析浴としてより利用しやすい。
LiXは、LiClおよびLiBrからなる群より選択される少なくとも1つであることが望ましい。電解液がLiClおよびLiBrからなる群より選択される少なくとも1つを含むことにより、電解液におけるScCl3の高い溶解度が実現されやすい。
非水溶媒は、上記の非プロトン性溶媒の他に、イオン液体をさらに含んでいてもよい。
非水溶媒の全体に占める上記の非プロトン性溶媒の割合は、80質量%以上であることが望ましく、99質量%以上であることがより望ましい。非水溶媒が、上記の非プロトン性溶媒のみから構成されていてもよい。
スカンジウムは水よりも卑な標準電極電位を有するので、スカンジウムの電析浴として用いられる電解液は、水を含まないことが好ましい。
電解液において、ScCl3の濃度は、0.001mol・kg-1以上10mol・kg-1以下であることが望ましい。ScCl3の濃度が上記範囲を満たす電解液は、高いスカンジウムイオン濃度および高い導電率を有するので、スカンジウムの電析浴としてより利用しやすい。
電解液において、ScCl3に対するLiXのモル比(LiX/ScCl3)が、0.01以上10以下であることが望ましい。モル比LiX/ScCl3が上記範囲を満たすことにより、ScCl3の溶解度をより高めることができる。ここで、モル比LiX/ScCl3を求める際に用いられるLiXの物質量は、電解液に含まれるLiCl、LiBr、およびLiIの物質量の合計である。
上記のように調製された電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、カソード上にスカンジウムを析出させる。すなわち、カソードが、スカンジウムを析出させる電析素地である。カソードには、例えば、Li、C、Na、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、およびこれらの合金または酸化物を用いることができる。カソードとして、例えばニッケルめっき銅板を用いることもできる。
アノードには、例えば、スカンジウム、白金、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、およびIrO−Taを用いることができる。
スカンジウムを析出させる際のカソードおよびアノード間の通電条件は、特には限定されないが、例えば1μAcm-2〜100Acm-2の電流密度を満たすように通電することが好ましい。
電析時にカソードの表面に徐々に酸化被膜が形成されることによって、電流密度の減少が生じる場合がある。このような電流密度の減少を抑制するために、酸化被膜が形成されにくい電解液を調製することが望ましい。例えば、不純物が少ない電解液を調製すること、すなわち電解液の各原料に純度の高いものを使用したり、電解液から水分を除去したりすること、が望ましい。また、電流密度を増加させるために、電解液に支持電解質を添加してもよい。電解液における溶存スカンジウム錯体の濃度増加や、非対称な錯体の導入を行ってもよい。また、電析時の酸化被膜の形成を抑制するために、電析時に電解液を攪拌してもよい。
本実施形態のスカンジウムの製造方法は、別の側面から、以下のように特定することも可能である:
塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること
を含み、
前記非水溶媒は、非プロトン性溶媒を含み、
前記非プロトン性溶媒が、鎖状エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状炭酸エステル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、尿素、およびスルホンからなる群より選択される少なくとも1つである、
スカンジウムの製造方法。
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(電解液の調製)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(関東化学株式会社製)が用いられた。ScCl3(株式会社高純度化学研究所製)およびLiCl(ナカライテスク株式会社製、純度98%)をジグライムに添加して混合し、28℃で3分間攪拌して、ScCl3をジグライムに溶解させた。このような方法で実施例1の電解液が調製された。得られた電解液において、ScCl3の濃度は0.046mol・kg-1であり、LiClの濃度は0.18mol・kg-1であった。
(電気化学測定)
調製された実施例1の電解液について、電気化学測定を行った。電気化学測定は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。電気化学測定には、3電極セルが用いられた。電析素地となる作用極(カソード)には、表面にニッケル層が設けられた銅板が用いられた。対極(アノード)および参照電極には、リチウムが用いられた。掃引速度は0.020V・s-1とした。図1Aは、実施例1の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。電極電位を+2.0Vvs.Liから−1.0Vvs.Liまで掃引したところ、図1Aに示されているように、マイナス側にピーク電流が確認された。図1Aでは、このピーク電流が丸Aで囲まれている。このピーク電流は還元電流であり、スカンジウムの3価のイオンが還元されてスカンジウムが析出したと考えられる。次に、電極電位を−1.0Vvs.Liから+2.0Vvs.Liまで掃引したところ、図1Aに示されているように、プラス側にピーク電流が確認された。図1Aでは、このピーク電流が丸Bで囲まれている。このピーク電流は酸化電流であり、析出したスカンジウムが溶解したと考えられる。なお、図1Aに示されたサイクリックボルタモグラムに現れる別の還元電流および酸化電流は、それぞれ、リチウムの析出および溶解を示すと考えられる。
図1Bは、リチウムを析出させることなくスカンジウムのみを析出させるために、0Vよりもマイナス側に電位を振らずに行った電気化学測定の結果である。ここで得られる還元電流は、スカンジウムイオンの還元によると考えるのが妥当である。なお、図1Bには、6サイクル目のサイクリックボルタモグラムが示されている。
以上のように、実施例1の電解液では、スカンジウムの析出および溶解が確認された。したがって、この結果から、実施例1の電解液がスカンジウムの電析浴として適しており、実施例1の電解液を用いることによりスカンジウムの電析が可能であることが確認された。
[実施例2]
(電解液の調製)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、トリグライム(日本乳化剤株式会社製)が用いられた。ScCl3(株式会社高純度化学研究所製)およびLiCl(ナカライテスク株式会社製、純度98%)をトリグライムに添加して混合し、28℃で1時間攪拌して、ScCl3をトリグライムに溶解させた。このような方法で実施例2の電解液が調製された。得られた電解液において、ScCl3の濃度は0.042mol・kg-1であり、LiClの濃度は0.16mol・kg-1であった。
(電気化学測定)
調製された実施例2の電解液について、実施例1と同様の方法で電気化学測定を行った。図2Aは、実施例2の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。電極電位を+2.0Vvs.Liから−1.0Vvs.Liまで掃引したところ、図2Aに示されているように、マイナス側にピーク電流が確認された。図2Aでは、このピーク電流が丸Aで囲まれている。このピーク電流は還元電流であり、スカンジウムの3価のイオンが還元されてスカンジウムが析出したと考えられる。次に、電極電位を−1.0Vvs.Liから+2.0Vvs.Liまで掃引したところ、図2Aに示されているように、プラス側にピーク電流が確認された。図2Aでは、このピーク電流が丸Bで囲まれている。このピーク電流は酸化電流であり、析出したスカンジウムが溶解したと考えられる。なお、図2Aに示されたサイクリックボルタモグラムに現れる別の還元電流および酸化電流は、それぞれ、リチウムの析出および溶解を示すと考えられる。
図2Bは、リチウムを析出させることなくスカンジウムのみを析出させるために、0Vよりもマイナス側に電位を振らずに行った電気化学測定の結果である。ここで得られる還元電流は、スカンジウムイオンの還元によると考えるのが妥当である。なお、図2Bには、6サイクル目のサイクリックボルタモグラムが示されている。
以上のように、実施例2の電解液では、スカンジウムの析出および溶解が確認された。したがって、この結果から、非水溶媒にトリグライムが用いられた実施例2の電解液もスカンジウムの電析浴として適しており、実施例2の電解液を用いることによりスカンジウムの電析が可能であることが確認された。
[実施例3]
(電解液の調製)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(関東化学株式会社製)が用いられた。ScCl3(株式会社高純度化学研究所製)およびLiBr(東京化成工業株式会社製)をジグライムに添加して混合し、28℃で1時間攪拌して、ScCl3をジグライムに溶解させた。このような方法で実施例3の電解液が調製された。得られた電解液において、ScCl3の濃度は0.052mol・kg-1であり、LiBrの濃度は0.16mol・kg-1であった。
(電気化学測定)
調製された実施例3の電解液について、実施例1と同様の方法で電気化学測定を行った。図3Aは、実施例3の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。電極電位を+2.0Vvs.Liから−1.0Vvs.Liまで掃引したところ、図3Aに示されているように、マイナス側にピーク電流が確認された。図3Aでは、このピーク電流が丸Aで囲まれている。このピーク電流は還元電流であり、スカンジウムの3価のイオンが還元されてスカンジウムが析出したと考えられる。次に、電極電位を−1.0Vvs.Liから+2.0Vvs.Liまで掃引したところ、図3Aに示されているように、プラス側にピーク電流が確認された。図3Aでは、このピーク電流が丸Bで囲まれている。このピーク電流は酸化電流であり、析出したスカンジウムが溶解したと考えられる。なお、図3Aに示されたサイクリックボルタモグラムに現れる別の還元電流および酸化電流は、それぞれ、リチウムの析出および溶解を示すと考えられる。
図3Bは、リチウムを析出させることなくスカンジウムのみを析出させるために、0Vよりもマイナス側に電位を振らずに行った電気化学測定の結果である。ここで得られる還元電流は、スカンジウムイオンの還元によると考えるのが妥当である。なお、図3Bには、4サイクル目のサイクリックボルタモグラムが示されている。
以上のように、実施例3の電解液では、スカンジウムの析出および溶解が確認された。したがって、この結果から、LiClの代わりにLiBrが用いられた実施例3の電解液も、スカンジウムの電析浴として適しており、実施例3の電解液を用いることによりスカンジウムの電析が可能であることが確認された。
[実施例4]
(電解液の調製)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(関東化学株式会社製)が用いられた。ScCl3(株式会社高純度化学研究所製)およびLiCl(Sigma−Aldrich社製、純度99.998%)をジグライムに添加して混合し、温度60℃、速度500rpmで1時間攪拌して、ScCl3をジグライムに溶解させた。このような方法で実施例4の電解液が調製された。得られた電解液において、ScCl3の濃度は0.24mol・kg-1であり、LiClの濃度は0.25mol・kg-1であった。
(定電位電析)
調製された実施例4の電解液と、実施例1と同様の3電極セルとを用いて、スカンジウムの定電位電析を行った。定電位電析は、電極電位を0.05Vvs.Li(QRE:quasi-reference electrode)として、43時間行なった。定電位電析は、45℃に保持したホットスターラー上で行われ、電析中は速度700rpmで電解液を攪拌し続けた。図4(a)は、定電位電析後における作用極(カソード)の外観写真である。図4(b)は、図4(a)に示された作用極上の析出物の走査型電子顕微鏡画像である。図4(c)は、図4(b)に示された析出物のエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルである。図4(c)に示されているように、全画面のうち電析物においてのみスカンジウムが検出された。この結果から、本発明の方法によれば、電析によってスカンジウムを製造できることが確認された。
[比較例1]
(電解液の調製)
LiClが添加されなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で電解液が調製された。しかし、100℃まで温度を上げても、ScCl3はジグライムに溶解しなかった。したがって、LiXが添加されない場合、スカンジウムの電析浴として使用できる電解液を得ることができなかった。
[比較例2]
(電解液の調製)
LiClが添加されなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で電解液が調製された。しかし、130℃まで温度を上げても、ScCl3はトリグライムに溶解しなかった。したがって、LiXが添加されない場合、スカンジウムの電析浴として使用できる電解液を得ることができなかった。
[参考例A]
参考例Aとして、スカンジウムではない他の希土類元素(La、Y、およびGd)について、非水溶媒および、LiXを用いて電解液を調製した。
(参考例A1)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(参考例A1−1)、トリグライム(参考例A1−2)、およびテトラグライム(参考例A1−3)がそれぞれ用いられた。電解質として、LaCl3が用いられた。LaCl3およびLiClを、それぞれの非水溶媒に0.05mol・kg-1の濃度となるように添加して、混合した。しかし、参考例A1−1〜A1−3の全ての溶液において白色沈殿が確認され、かつ導電率も低かった。この結果から、スカンジウムと類似した性質を有する希土類元素Laの塩化物を電解質として用い、さらに非水溶媒にLiXを添加しても、電析浴として使用できる電解液を得ることができないことが確認された。
(参考例A2)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(参考例A2−1)、トリグライム(参考例A2−2)、およびテトラグライム(参考例A2−3)がそれぞれ用いられた。電解質として、YCl3が用いられた。YCl3およびLiClを、それぞれの非水溶媒に0.05mol・kg-1の濃度となるように添加して、混合した。しかし、参考例A2−1〜A2−3の全ての溶液において白色沈殿が確認され、かつ導電率も低かった。この結果から、スカンジウムと類似した性質を有する希土類元素Yの塩化物を電解質として用い、さらに非水溶媒にLiXを添加しても、電析浴として使用できる電解液を得ることができないことが確認された。
(参考例A3)
電解液の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。非水溶媒として、ジグライム(参考例A3−1)、トリグライム(参考例A3−2)、およびテトラグライム(参考例A3−3)がそれぞれ用いられた。電解質として、GdCl3が用いられた。GdCl3およびLiClを、それぞれの非水溶媒に0.05mol・kg-1の濃度となるように添加して、混合した。しかし、参考例A3−1〜A3−3の全ての溶液において白色沈殿が確認され、かつ導電率も低かった。この結果から、スカンジウムと類似した性質を有する希土類元素Gdの塩化物を電解質として用い、さらに非水溶媒にLiXを添加しても、電析浴として使用できる電解液を得ることができないことが確認された。
以上の参考例A1〜A3より、一般に類似の性質を有すると認定されている希土類元素であっても、電析可能な電解液を得るための希土類塩、非水溶媒、および添加剤の組み合わせは元素ごとに異なっており、電解液の成分等の条件を互いに適用することはできないということが確認される。
[参考例B]
ジグライムに対するScCl3の溶解試験が実施された。
溶解試験のための電解液試料の調製は、全てアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行われた。ScCl3のみ、または、ScCl3およびLiClをジグライムに添加して混合した。ScCl3およびLiClがジグライムに添加された電解液試料として、電解液におけるScCl3およびLiClの濃度が異なる複数の電解液試料が調製された。溶解試験は、温度を最大で100℃まで上昇させながら、攪拌時間を最大で18時間としてグライムに対するScCl3の溶解性を、沈殿の有無を目視で確認することによって評価した。図5は、ジグライムに対するScCl3の溶解試験の結果を示すグラフである。
図5に示された結果から、ScCl3のみの添加では沈殿が確認された場合であっても、LiClをさらに添加することにより、ScCl3をジグライムに溶解させることが可能であることが確認された。
[参考例C]
尿素およびジメチルスルホンに対するScCl3の溶解試験が実施された。表1に示す条件で、ScCl3が尿素およびジメチルスルホンにそれぞれ溶解することが確認された。条件として、温度、攪拌に用いたマグネチックスターラーの回転数、および攪拌時間を示す。
Figure 2021127509
本発明のスカンジウムの製造方法によれば、スカンジウムを低コストで製造し、安価で提供し得る。スカンジウムは、アルミニウムの機械的強度および溶接性を飛躍的に向上させたり、固体酸化物型燃料電池のプロトン伝導体の添加元素として用いられる等、様々な用途への利用が期待されている有用な元素である。したがって、本発明のスカンジウムの製造方法は、スカンジウムの利用が期待される様々な技術分野へ適用できる。

Claims (10)

  1. スカンジウムの製造方法であって、
    前記製造方法は、
    塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、
    を含み、
    前記非水溶媒が、スカンジウムイオンに配位可能な酸素原子を分子内に含む非プロトン性溶媒を含む、
    スカンジウムの製造方法。
  2. スカンジウムの製造方法であって、
    前記製造方法は、
    塩化スカンジウムと、非水溶媒と、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つとを含む前記電解液中でカソードとアノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させること、
    を含み、
    前記非水溶媒は、非プロトン性溶媒を含み、
    前記非プロトン性溶媒が、鎖状エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状炭酸エステル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、尿素、およびスルホンからなる群より選択される少なくとも1つである、
    スカンジウムの製造方法。
  3. 前記非プロトン性溶媒が、鎖状エーテル溶媒、尿素、およびスルホンからなる群より選択される少なくとも1つである、
    請求項1または2に記載のスカンジウムの製造方法。
  4. 前記鎖状エーテル溶媒が、グライム類である、
    請求項3に記載のスカンジウムの製造方法。
  5. 前記グライム類が、ジグライムおよびトリグライムからなる群より選択される少なくとも1つである、
    請求項4に記載のスカンジウムの製造方法。
  6. 前記スルホンが、ジメチルスルホンである、
    請求項3に記載のスカンジウムの製造方法。
  7. 前記電解液が、塩化リチウムおよび臭化リチウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のスカンジウムの製造方法。
  8. 0℃以上40℃以下の範囲内の温度で、前記電解液中で前記カソードと前記アノードとの間に通電し、前記カソード上にスカンジウムを析出させる、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載のスカンジウムの製造方法。
  9. 前記電解液において、塩化スカンジウムの濃度が0.001mol・kg-1以上10mol・kg-1以下である、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載のスカンジウムの製造方法。
  10. 前記電解液において、塩化スカンジウムの物質量に対する、塩化リチウム、臭化リチウム、およびヨウ化リチウムの物質量の合計のモル比((塩化リチウム+臭化リチウム+ヨウ化リチウム)/塩化スカンジウム)が、0.01以上10以下である、
    請求項1〜9のいずれか一項に記載のスカンジウムの製造方法。
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