JP2021127492A - 塩浴式着色方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄鋼へのパティナの着色効率を高めて、量産性を確保し、外壁、ガーデニング、装飾品、表札、置物等の多様な分野での利用を図る。
【解決手段】
本発明は、塩浴炉の中の溶融した塩浴剤に、浸漬時間5〜30分、塩浴剤の温度650〜850℃で浸漬する塩浴炉加熱処理と、当該塩浴炉加熱処理を終えた鉄鋼を、塩浴剤が付着したまま、前記塩浴炉から引き上げ、冷媒により急冷することにより、まだら模様のパティナ層を形成する急冷処理と、当該急冷処理を終えた鉄鋼を洗浄する洗浄工程と、を備えた塩浴式着色方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、合金鋼、ステンレス鋼等の鉄鋼に、意匠性のある着色された模様を有するパティナを施す塩浴式着色方法に関する。
Wikipediaによれば、一般的には、パティナ(英語:Patina)とは、石、銅、青銅や似たような物質(酸化や化学的処理による)、木製家具(経年、摩耗、摩擦による)、皮革製品等の表層のうち、経年や曝露により変化を生じたものを言う。
金属の表面に人工的にパティナを形成する方法としては、(1)〜(3)がある。(1)は非特許文献1に示す金属表面に塗装するパティナ形成方法である。(2)は非特許文献2に記載された小銃器に関する、ケースハードゥン仕上げ(case hardening:肌焼)よるパティナ形成方法であり、銃に焼き入れして表面を硬化させるもので、青や灰色などの、まだら模様が浮き出て、観賞用として十分に使えるほど綺麗な模様に仕上がる。(3)は非特許文献3に記載された亜鉛、ニッケル、チタン等の非鉄金属表面のめっき、酸性・アルカリ性の薬品に浸漬させる化成的な表面処理によるパティナ形成方法である。
http://www.shimoda-kaemon.co.jp/news/n20180525blue.htmlモダンマスターズ 酸化金属仕上げ緑青塗料(水性) メタルエフェクツキット ブルーパティナ https://kakuyomu.jp/works/1177354054881138798/episodes/1177354054881424485 小火器についての資料 表面処理について https://jp.pandahall.com/p-1309757-antique-bronze-green-patina-plated-flat-round-zinc-alloy-slide-charms-with-constellation-zodiac-sign-cadmium-free-nickel-free-lead-free-scorpio-17x アンティークブロンズ&グリーンパティナメッキフラットラウンド亜鉛合金スライドチャーム
しかしながら、上記従来技術の(1)、(2)は職人的な技量を要求されて、生産効率が悪く、量産性とコスト削減が期待できない。(3)は種類によって、量産は可能ではあるが、材料の種類が限定され、色、模様の多様性も十分ではなく、しかも、鉄鋼には適応できない。製品に均一な色味を持たせる事は可能であるが、まだら模様を作ることは難しく、鉄鋼製品に趣向ある意匠性を持たせることは出来なかった。
本発明の課題は、鉄鋼へのパティナの着色効率を高めて、量産性を確保し、外壁、ガーデニング、装飾品、表札、置物等の多様な分野での利用を図ることである。
本発明は、塩浴炉の中の溶融した塩浴剤に、浸漬時間5〜30分、塩浴剤の温度650〜850℃で浸漬する塩浴炉加熱処理と、当該塩浴炉加熱処理を終えた鉄鋼を、塩浴剤が付着したまま、前記塩浴炉から引き上げ、冷媒により急冷することにより、まだら模様のパティナ層を形成する急冷処理と、当該急冷処理を終えた鉄鋼を洗浄する洗浄工程と、を備えた塩浴式着色方法である。
「塩浴炉」とは、塩浴熱処理を行う炉である。
「塩浴剤」とは、塩浴熱処理剤(熱処理塩浴剤ともいう。)が例示される。塩浴剤の溶融温度は、580℃以上が好ましい。パーカー熱処理工業株式会社が製造する熱処理塩浴剤C-10(R)とC-10(T)を、およそ50%ずつ配合することが例示される。配合は適宜の割合で実施可能である。或いは日新化熱製の液体浸炭剤AL−101等、入手可能な同様の成分を有する塩浴熱処理材でもよい。内容物はシアン化ナトリウム、塩化バリウム、その他、塩化物が含まれている。冷却温度が100℃を超える場合に使用できる冷却剤として油、若しくは冷却専用剤としてマルクエンチを使用する。
浸漬時間が5分を下回ると「加熱不足」という不都合が生じ、30分を超えると、「加熱過多」という不都合が生じる。
塩浴剤の温度が650℃を下回ると「加熱のムラ」という不都合が生じ、850℃を超えると「過酸化状態」という不都合が生じる。
このため、上記温度、浸漬時間が好ましい。この範囲内で、温度、浸漬時間を適宜選択することで、色の濃さ、模様のパターンを変えることができる。顧客の色のニーズの幅が広いが、本発明は、幅広い色の要求に答えることができる。
ここでいう冷媒は、水、マルクエンチ液(パーカー熱処理工業株式会社、T-3G、又は日新化熱製の同等品)等が適用できる。
「急冷」とは、加熱された状態から一瞬で酸化反応温度以下に下げることである。急冷前後の温度範囲の変化は650℃〜850℃の加熱状態から200℃以下の冷却状態に下げることである。10〜200℃の範囲の温度の冷媒へ鉄鋼を投入する。
「まだら模様」とは、複数色又は同色の濃淡の入り交じった模様である。
「着色」は色合いである。色の3要素の色相・明度・彩度のうちの、色相が主である。
「パティナ層」は、鉄鋼の表層にまだら模様に着色された層である。「パティナ層」は鉄鋼の表面に所定の深さで形成され、例えば、1〜3μmが好ましい。
「洗浄」は、パティナ層の表面に付着する塩浴剤の残滓を除去するためである。例えば、水洗、湯洗等が好ましい。
前記鉄鋼がステンレス鋼以外の場合、前記洗浄工程の後に、防錆油槽にて水分を分離除去し、防錆処理を施すことが好ましい。
「防錆処理」は、鉄鋼の錆を防止するための一般的な技術でよい。例えば、防錆剤や樹脂コーティング等によって金属表面を被覆する方法等が挙げられる。
前記急冷は、水冷又はマルクエンチ冷却であることが好ましい。
「水冷」は、水による冷却である。塩浴炉から鉄鋼板を取り出してすぐに冷却する。
「急冷」の方法は鉄鋼の材質によって適宜選択する。例えば、ステンレス鋼以外の鉄鋼の場合には水冷、ステンレス鋼の場合にはマルクエンチを用いる。ステンレス鋼の表面に不働態被膜が存在する為に他の鉄鋼材と同条件にて処理を行っても、うまくパティナ層を形成することができないからである。
鉄鋼を冷却するときに一定温度に保持してから変態させることを恒温処理といい、恒温処理の1つの方法がマルクエンチである。「マルクエンチ冷却」は、マルテンサイト生成温度域の上部、又はそれよりやや高い温度に保持した冷却剤中に焼入れして、各部が一様にその温度になるまで保持した後、徐冷する処理である。マルクエンチ焼入槽を用いることが一般的である。これにより、ステンレス鋼の表面にパティナ層を形成することができる。
前記塩浴材が、相違する熱処理塩浴剤を混合したものであり、1つはシアン化ナトリウム、塩化バリウム、塩化物を含み、他はシアン化ナトリウム、塩化バリウム、塩化物、及び炭酸塩を含むことが好ましい。
例えば、熱処理塩浴剤C-10(R)とC-10(T)を混合したもの、あるいは、熱処理塩浴剤C-10(R)又はC-10(T)と、液体浸炭剤AL−101とを混合したものが例示される。
本発明方法を適用した鉄鋼製品は反ることがあるが、レンガの代替品としては、風合いを出すのに反っていると、好適である。レンガであれば、アンティークらしく見えるので、反っていても製品に問題はない。
本発明の対象分野は、建築材、外装、外壁、置物、食器関係、門、表札、看板、銃、装飾品、ガーデニング用品等に適用できる。
塩浴炉を用いて鉄鋼表面に塩浴剤を残した状態で冷却工程に移行することで模様を付けた着色ができる。塩浴炉の温度と冷却工程での速度や投入の仕方を工夫することで模様に変化を付けられる。
塩浴炉を使用し、加熱温度と浸漬時間のコントロールを行うことで、独特な色味や唯一無二のまだら模様を施すことができる。
実施形態1の塩浴式着色方法の工程図である。 実施形態2の塩浴式着色方法の工程図である。 実施例1の鉄鋼板の斜視図である。 図3の部分拡大図である。 実施例2の鉄管の斜視図である。
実施形態1の塩浴式着色方法について図面を参照して説明する。実施形態1は、ステンレス鋼以外の鉄鋼に適用するものである。
図1に示す通り、ステップ1で、塩浴炉の中の溶融した塩浴剤に、浸漬時間5〜30分、塩浴剤の温度650〜850℃で浸漬する塩浴炉加熱処理を行う。
塩浴炉の大きさは、直径600mmΦ、深さ600mmが例示されるが、限定されるわけではない。例えば、直径300mmΦ、深さ300mmでもよい。
塩浴剤は、最初は固形で650〜850℃に加熱するとドロドロに溶融し、真赤な高温の溶融液になる。基本的には、塩浴剤の他には塩浴炉には何も入れないが、付加的な添加剤を投入することも可能である。塩浴炉の溶融した塩浴剤中に鉄鋼を漬け込む。鉄鋼は板状、管状、塊状のいずれでもよい。基本的には、浸漬時間は5〜30分である。
塩浴剤の成分と分量は予め決まっている。本実施形態で使用する塩浴剤としては、パーカー熱処理工業(株)のC−10(R)とC−10(T)を混合したものが例示される。塩浴剤は、鉄鋼に付着して引き上げられたり、熱乾したりすることによって分量が減り、塩浴剤が不足してくる。塩浴剤が不足してきたら、塩浴剤を継ぎ足して塩浴炉を使用するが、塩浴剤の分量を増やすだけで、薄めたりはしない。
C−10(R)パーカー熱処理工業(株)、PN−079Gの成分は表1の通りである。塩浴剤はシアン化ナトリウムと塩化バリウムと塩化物(アルカリ及びアルカリ土類金属)の混合物である。
Figure 2021127492
C−10(T)パーカー熱処理工業(株)、PN−175の成分は表2の通りである。塩浴剤はシアン化ナトリウムと塩化バリウムと塩化物(アルカリ金属)と炭酸塩(アルカリ及びアルカリ土類金属)の混合物である。
Figure 2021127492
C−10(R)とC−10(T)を混合した塩浴剤は、最初の常温では粉の状態で、それをバーナーで加熱して、C−10(R)の融点である580℃に達するとドロドロ解け始めて次第に真っ赤になる。浸漬した鉄鋼を引き上げた段階では、鉄鋼に付着して真っ赤になって出てくるがしばらくすると真っ白になってくる。
ステップ2で、ステップ1の塩浴炉加熱処理を終えた鉄鋼を、塩浴剤が付着したまま、塩浴炉から引き上げ、その後、10〜200度の冷媒(ここでは水)に入れて急冷する急冷処理を行う。冷媒槽中の冷水により鉄鋼と付着した塩浴剤をともに急冷することにより、まだら模様のパティナ層を形成する。塩浴だけではまだら模様は十分には完成せず、急冷後の段階で完成する。鉄鋼を塩浴槽から引き上げると、塩浴剤が鉄鋼の表面に付着していて、それが冷えると鉄鋼表面に固着する。
空冷では時間がかかり過ぎ、模様が明確には生成されないおそれがあるので、水冷で急冷する。
ステップ3で、ステップ2の急冷処理を終えた鉄鋼を湯で洗浄する湯洗浄工程を行う。湯槽中の鉄鋼をブラシで洗浄したり、ノズルから噴射した湯で洗浄したりする等、適宜の手段で湯洗浄を行う。急冷処理済の鉄鋼の表面から塩浴剤を洗い落とすためである。急冷時では、ある程度、塩浴剤の粉が取れるが、鉄鋼表面はきれいにならない。ステップ3で湯洗すると細かな粉が取り除かれて、表面はきれいになる。
まだら模様の出方の要因は、詳らかではないが、冷媒の微妙な滞留が関係していると思量される。模様の出方は均一ではなくて、ランダムで、ある程度変化してくる。
ステップ4にて、鉄鋼の防錆処理を行う。防錆油槽にて水分を分離除去し、防錆処理をする。
ステンレス鋼以外の鉄鋼は多孔質なので、水分や汚染物質が簡単に浸透し、保護被膜の役割を果たせない。そこで、錆を防止するために防錆処理をする。防錆剤としての防錆塗料又は樹脂でコーティング処理を行う。防錆塗料と防錆樹脂のどちらにするかは用途によって異なっている。例えば、外壁材として使用する場合には、防錆剤に代えて、防錆樹脂のコーティングをする必要がある。
塩浴炉の容積は、φ600xL650(mm)、183783170mm3である。原材料の鉄板の製造者は、株式会社メイネツである。鉄板の大きさ(縦横厚み寸法)は70x30xt3(mm)である。鉄板の材質は熱間圧延鋼板(SPHC)、塩浴剤の種類は前記のC-10(T)(50%)、C-10(R) (50%)である。塩浴炉での加熱温度は680℃である。浸漬時間は5分である。冷却は水冷である。錆止めは一般的技術に従う。
実施形態2の塩浴式着色方法について図2を参照して説明する。実施形態2では、ステンレス鋼が材料となる。ステンレス鋼における急冷処理が水に代えてマルクエンチによる急冷処理になる点、洗浄が2段階になる点、防錆処理は行わない点で相違し、他は同様であるので、説明は援用する。
実施形態1の説明を援用し、主に、相違点について説明する。実施形態2において、水冷に代えて、マルクエンチ冷却を採用し、洗浄は水洗浄処理と湯洗浄処理の2段階となる。冷却材(マルクエンチ液)の原料は粉状であり、電気ヒーター等で加熱すると溶解する。
ステップ101において、ステップ1と同様のステンレス鋼の塩浴炉加熱処理を行う。
ステップ102において、マルクエンチ処理を行う。冷媒としてのマルクエンチ液の温度は150℃〜200℃(例えば、200℃)が例示される。冷却槽のマルクエンチ液にステンレス鋼を浸漬し、冷却槽からステンレス鋼を引き上げたときには、塩浴剤の残滓が付着している。マルクエンチ液の温度として200℃の温度を採用した場合、冷却槽から引き上げたステンレス鋼には、200℃の粉が付着している。また、処理中は、常に200℃にて温度が維持される。
ステップ103−1では、ステップ102で処理を終えて引き上げたステンレス鋼を水洗処理する。
ステップ103−2において、ステップ103−1でステンレス鋼表面からは取り切れなかった塩浴剤の細かな残滓を湯洗浄処理する。
塩浴炉の容積は、φ600xL650(mm)、183783170mm3である。基本的には実施例1と共通するが、相違点を説明する。材料はステンレス鋼の管であり、製造者は、株式会社メイネツである。鉄管の大きさ(直径長さ寸法)はφ9x20(mm)に24mmのフランジを有するものとなる。ステンレス鋼の材質はSUS304である。塩浴剤の種類はC-10(T)(50%)、C-10(R) (50%)である。塩浴炉での加熱温度は850℃である。浸漬時間は5分である。冷却はマルクエンチであり、処理温度は200℃である。錆止めは行わない。
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、前記技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは言うまでもない。

Claims (4)

  1. 塩浴炉の中の溶融した塩浴剤に、浸漬時間5〜30分、塩浴剤の温度650〜850℃で浸漬する塩浴炉加熱処理と、
    当該塩浴炉加熱処理を終えた鉄鋼を、塩浴剤が付着したまま、前記塩浴炉から引き上げ、冷媒により急冷することにより、まだら模様のパティナ層を形成する急冷処理と、
    当該急冷処理を終えた鉄鋼を洗浄する洗浄工程と、を備えた塩浴式着色方法。
  2. 前記鉄鋼がステンレス鋼以外の場合、前記洗浄工程の後に、防錆油槽にて水分を分離除去し、防錆処理を施す請求項1の塩浴式着色方法。
  3. 前記急冷は、水冷又はマルクエンチ冷却である請求項1又は2の塩浴式着色方法。
  4. 前記塩浴材が、相違する熱処理塩浴剤を混合したものであり、1つはシアン化ナトリウム、塩化バリウム、塩化物を含み、他はシアン化ナトリウム、塩化バリウム、塩化物、及び炭酸塩を含む1ないし3いずれかの塩浴式着色方法。
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