JP2021127291A - Mef2d融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤を提供する。【解決手段】 プレB細胞受容体シグナル阻害剤を含む治療剤をMEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療剤とする。【選択図】なし
Description
本発明は、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤に関する。
急性リンパ性白血病(Acute lymphoblastic leukemia、ALL)は、骨髄においてリンパ芽球が増殖する悪性腫瘍性疾患であり、リンパ芽球の浸潤によるリンパ節や肝臓・脾臓などの腫大が伴うことがある。日本国内の年間の新規の発症数は約1000人である。白血病細胞が骨髄や血液中で異常に増え、正常な赤血球、白血球、血小板が作られなくなるため、1)赤血球が少なくなることによる貧血の症状(息切れや動悸)、2)白血球が少なくなることによる、抵抗力の低下(感染症にかかりやすくなる)、3)血小板が少なくなることによる出血しやすくなる(鼻血が出やすくなるなど)が初期症状として表れることがある。
ALLは主に染色体の転座、欠失などの染色体異常、その結果として生じる、他の遺伝子との融合遺伝子などの遺伝子変異によって起こることが報告されている(非特許文献1)。その染色体異常等によって、現在、以下の14のサブグループに分類されている。
グループ1:MEF2D(MADS box transcription enhancer factor 2 polypeptide D)融合型(MEF2D-BCL9、MEF2D-HNRNPUL1、MEF2D-DAZAP1、MEF2D−SS18、MEF2D-CSF1Rなど)
グループ2:TCF3-PBX1融合型
グループ3:ETV6-RUNX1融合様型
グループ4:DUX4 融合型
グループ5 ZNF384融合型(EP300-ZNF384,TCF3-ZNF384,TAF15-ZNF384、SMARCA2-ZNF362など)
グループ6:BCR-ABL1融合型/フィラデルフィア染色体様(BCR-ABL1,IGH-CRLF2など)
グループ7:染色体数異常
グループ8:KMT2A融合型(KMT2A-AFF1,KMT2A-MLLT1,KMT2A-MLLT3など)
グループ9:PAX5及びCRLF2融合型(P2RY8-CRLF2,PAX5-NOL4L,PAX5-AUTS2など)
グループ10:PAX5変異型
グループ11:IKZF1変異型
グループ12:ZEB2変異/IGH-CEBPE融合型
グループ13:TCF3/4-HLF融合型
グループ14:NUTM1融合型
グループ1:MEF2D(MADS box transcription enhancer factor 2 polypeptide D)融合型(MEF2D-BCL9、MEF2D-HNRNPUL1、MEF2D-DAZAP1、MEF2D−SS18、MEF2D-CSF1Rなど)
グループ2:TCF3-PBX1融合型
グループ3:ETV6-RUNX1融合様型
グループ4:DUX4 融合型
グループ5 ZNF384融合型(EP300-ZNF384,TCF3-ZNF384,TAF15-ZNF384、SMARCA2-ZNF362など)
グループ6:BCR-ABL1融合型/フィラデルフィア染色体様(BCR-ABL1,IGH-CRLF2など)
グループ7:染色体数異常
グループ8:KMT2A融合型(KMT2A-AFF1,KMT2A-MLLT1,KMT2A-MLLT3など)
グループ9:PAX5及びCRLF2融合型(P2RY8-CRLF2,PAX5-NOL4L,PAX5-AUTS2など)
グループ10:PAX5変異型
グループ11:IKZF1変異型
グループ12:ZEB2変異/IGH-CEBPE融合型
グループ13:TCF3/4-HLF融合型
グループ14:NUTM1融合型
ALLは主にアドリアマイシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、L−アスパラギナーゼ、メソトレキサート、シタラビン、ステロイド剤など多種類の抗がん剤を組み合わせて投与することにより、治療されるが、グループ1、6及び8のALLは予後不良であった。
グループ6の原因遺伝子であるABL1(ABL Proto-Oncogene 1, Non-Receptor Tyrosine Kinase)とグループ8の原因遺伝子であるKMT2A(Lysine Methyltransferase 2A)が酵素なのに対して、グループ1のMEF2D(Myocyte Enhancer Factor 2)融合型は、MEF2D(1q22)が転写因子であり、MEF2Dが融合するBCL9Transcription Coactivator(1q21.2)やHNRNPUL1(Heterogeneous Nuclear Ribonucleoprotein U Like 1)(19q13.2)も核内の局在する転写関連遺伝子であるため(非特許文献2)、分子標的薬を開発するのが難しかった。
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2018;115(50):E11711-E20
NATURE COMMUNICATIONS 2016 7:13331 | DOI: 10.1038/ncomms13331 |www.nature.com/naturecommunications
本発明は、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤を提供することを目的とする。
プレB細胞受容体(pre-B cell receptor)は、Bリンパ球の初期発生に不可欠な未成熟型B細胞受容体(B cell receptor; BCR)であり、膜結合型免疫グロブリン(Ig)重鎖、代替軽鎖、シグナル伝達サブユニットIgα/Igβ(CD79a/CD79b)で構成される。通常のB細胞の場合、細胞分化に伴い、膜結合型免疫グロブリン分子およびIgα/Igβ(CD79a/CD79b)ヘテロ二量体(α/β)から構成される機能的B細胞受容体(B cell receptor; BCR)となる。本願発明者らは鋭意研究の結果、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の白血病細胞には、成熟したB細胞受容体でなく、プレB細胞受容体が発現していることを新たに発見し、プレB細胞受容体を介したシグナルを阻害することにより、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療できることを新たに見出した。
本発明は、以下の実施態様を含む。
[1A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤を有効成分として含む、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物。
[2A]MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1A]に記載の医薬組成物。
[3A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[4A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[5A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[6A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[7A]チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3A]に記載の医薬組成物。
[8A]カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5A]に記載の医薬組成物。
[1A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤を有効成分として含む、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物。
[2A]MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1A]に記載の医薬組成物。
[3A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[4A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[5A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[6A]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1A]又は[2A]に記載の医薬組成物。
[7A]チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3A]に記載の医薬組成物。
[8A]カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5A]に記載の医薬組成物。
[1B]MEF2D融合型急性リンパ性白血病に罹患している患者において、前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療する方法であって、
1)前記患者において、MEF2D遺伝子の染色体転座又は他の遺伝子との遺伝子融合を検出する工程と、
2)MEF2D遺伝子の染色体転座又は他の遺伝子との遺伝子融合を検出した前記患者に、プレB細胞受容体シグナル阻害剤を投与する工程を含む方法。
[2B]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1B]に記載の方法。
[3B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[4B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[5B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[6B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[7B]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3B]に記載の方法。
[8B]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5B]に記載の方法。
1)前記患者において、MEF2D遺伝子の染色体転座又は他の遺伝子との遺伝子融合を検出する工程と、
2)MEF2D遺伝子の染色体転座又は他の遺伝子との遺伝子融合を検出した前記患者に、プレB細胞受容体シグナル阻害剤を投与する工程を含む方法。
[2B]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1B]に記載の方法。
[3B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[4B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[5B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[6B]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1B]又は[2B]に記載の方法。
[7B]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3B]に記載の方法。
[8B]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5B]に記載の方法。
[1C]MEF2D融合型急性リンパ性白血病に罹患した患者における、前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療における使用のための、プレB細胞受容体シグナル阻害剤。
[2C]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1C]に記載の使用のための阻害剤。
[3C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[4C]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1
C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[5C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[6C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[7C]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3C]に記載の使用のための阻害剤。
[8C]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5C]に記載の使用のための阻害剤。
[2C]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1C]に記載の使用のための阻害剤。
[3C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[4C]プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1
C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[5C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[6C]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1C]又は[2C]に記載の使用のための阻害剤。
[7C]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3C]に記載の使用のための阻害剤。
[8C]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5C]に記載の使用のための阻害剤。
[1D]MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療剤の製造における、プレB細胞受容体シグナル阻害剤の使用。
[2D]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1C]に記載の使用。
[3D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[4D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[5D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[6D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[7D]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3D]に記載の使用。
[8D]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5D]に記載の使用。
[2D]前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、[1C]に記載の使用。
[3D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[4D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、CREB阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[5D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[6D]前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、[1D]又は[2D]に記載の使用。
[7D]前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、[3D]に記載の使用。
[8D]前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、[5D]に記載の使用。
本発明により、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤を提供できるようになった。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
<医薬組成物>
本発明の一実施態様は、プレB細胞受容体シグナル阻害剤を有効成分として含む、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物である。なお、本明細書で用いられる「MEF2D融合型」という用語は、白血病発症の原因として、白血病細胞がMEF2D遺伝子の全部または一部とBCL9、HNRNPUL1、DAZAP1、SS18、CSF1などの遺伝子の全部または一部との融合遺伝子を有することを意味するものとする。そして、MEF2D遺伝子の全部または一部とBCL9遺伝子の全部または一部との融合遺伝子を有することをMEF2D-BCL9融合型などと称するものとし、他の融合遺伝子についても同様に表記する。
プレB細胞受容体シグナルとは、プレB細胞受容体から細胞内に伝達される、細胞増殖や細胞分化に関わるシグナルであり、その伝達には、SFK(SRK family kinase;LYN,FYN,およびBLK)、SYK、PI3K(Phosphoinositide 3-kinase;PIK3 p110delta, PIK3CDを含む)、BTK(Bruton's tyrosine kinase)、MAPK(mitogen-activated protein kinase;ERK1/2を含む)、CREB(cAMP response element binding protein)、カルシニューリン(calcineurin)等が関与する。
したがって、プレB細胞受容体シグナル阻害剤は、これらのキナーゼやホスファターゼの阻害剤を含み、例えば、SFK阻害剤、SYK阻害剤、PI3K阻害剤、BTK阻害剤、MAPK阻害剤、CREB阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、ダサチニブ(SFK阻害剤)、PRT062607(SYK阻害剤)、イデラリシブ(PI3K阻害剤)、イブルチニブ(BTK及びBLK阻害剤)、トラメチニブ(MAPK阻害剤)、3-(3-Aminopropoxy)-N-(2-((3-((4-chloro-2-hydroxyphenyl)carbamoyl)naphthalen-2-yl)oxy)ethyl)-2-naphthamide(CREB阻害剤)シクロスポリン(カルシニューリン阻害剤)、タクロリムス(カルシニューリン阻害剤)が挙げられる。
プレB細胞受容体シグナル阻害剤は、プレB細胞受容体シグナル伝達に関与する因子の機能に直接影響する化合物またはその薬学的に許容可能な塩だけでなく、その因子の転写及び/又は翻訳を阻害するアンチセンスNA、shNA、siNAやmiRNAであってもよい。その配列は、当業者であれば容易に設計できる。特に限定しないが、プレB細胞受容体の構成分子であるIg膜型μ鎖、CD79A、およびCD79BのアンチセンスRNAが好ましい。あるいは、SYK、BTK、CREBなどの転写因子のアンチセンスRNAやmiRNAであってもよい。これらの核酸(NA)は、天然型ヌクレオチド(塩基としてアデニン、グアニン、ウラシル、シトシンを有するRNA型リボヌクレオチド、あるいはアデニン、グアニン、チミン、シトシンを有するDNA型デオキシリボヌクレオチド)または非天然型ヌクレオチド(例えば、イノシンを有するヌクレオチド、天然型ヌクレオチドのα-エナンチオマー型など)から構成されてもよく、両方から構成されたキメラ分子であってもよいが、リボヌクレオチドからなるRNAであることが好ましい。ヌクレオチドは、細胞に吸収しやすくしたり、ヌクレアーゼに分解されにくくしたりすることなどを目的とし、糖および/または塩基(プリンおよび/またはピリミジン)において修飾してもよい。糖の修飾としては、例えば1つ以上のヒドロキシル基が、ハロゲン、アルキル、アミン、およびアジドによって置換されてもよく、エーテル化またはエステル化されてもよい。また、全体の糖が、アザ糖および炭素環糖アナログのような立体的および電子的に等価な構造に置換されてもよい。塩基の修飾としては、例えばアルキル化および/またはアシル化されてもよく、あるいは複素環式置換をうけていてもよい。
あるいはこれらの分子を認識して結合してその酵素活性などの活性を阻害する、抗体もしくはその抗原結合断片であってもよい。
本発明の一実施態様は、プレB細胞受容体シグナル阻害剤を有効成分として含む、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物である。なお、本明細書で用いられる「MEF2D融合型」という用語は、白血病発症の原因として、白血病細胞がMEF2D遺伝子の全部または一部とBCL9、HNRNPUL1、DAZAP1、SS18、CSF1などの遺伝子の全部または一部との融合遺伝子を有することを意味するものとする。そして、MEF2D遺伝子の全部または一部とBCL9遺伝子の全部または一部との融合遺伝子を有することをMEF2D-BCL9融合型などと称するものとし、他の融合遺伝子についても同様に表記する。
プレB細胞受容体シグナルとは、プレB細胞受容体から細胞内に伝達される、細胞増殖や細胞分化に関わるシグナルであり、その伝達には、SFK(SRK family kinase;LYN,FYN,およびBLK)、SYK、PI3K(Phosphoinositide 3-kinase;PIK3 p110delta, PIK3CDを含む)、BTK(Bruton's tyrosine kinase)、MAPK(mitogen-activated protein kinase;ERK1/2を含む)、CREB(cAMP response element binding protein)、カルシニューリン(calcineurin)等が関与する。
したがって、プレB細胞受容体シグナル阻害剤は、これらのキナーゼやホスファターゼの阻害剤を含み、例えば、SFK阻害剤、SYK阻害剤、PI3K阻害剤、BTK阻害剤、MAPK阻害剤、CREB阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、ダサチニブ(SFK阻害剤)、PRT062607(SYK阻害剤)、イデラリシブ(PI3K阻害剤)、イブルチニブ(BTK及びBLK阻害剤)、トラメチニブ(MAPK阻害剤)、3-(3-Aminopropoxy)-N-(2-((3-((4-chloro-2-hydroxyphenyl)carbamoyl)naphthalen-2-yl)oxy)ethyl)-2-naphthamide(CREB阻害剤)シクロスポリン(カルシニューリン阻害剤)、タクロリムス(カルシニューリン阻害剤)が挙げられる。
プレB細胞受容体シグナル阻害剤は、プレB細胞受容体シグナル伝達に関与する因子の機能に直接影響する化合物またはその薬学的に許容可能な塩だけでなく、その因子の転写及び/又は翻訳を阻害するアンチセンスNA、shNA、siNAやmiRNAであってもよい。その配列は、当業者であれば容易に設計できる。特に限定しないが、プレB細胞受容体の構成分子であるIg膜型μ鎖、CD79A、およびCD79BのアンチセンスRNAが好ましい。あるいは、SYK、BTK、CREBなどの転写因子のアンチセンスRNAやmiRNAであってもよい。これらの核酸(NA)は、天然型ヌクレオチド(塩基としてアデニン、グアニン、ウラシル、シトシンを有するRNA型リボヌクレオチド、あるいはアデニン、グアニン、チミン、シトシンを有するDNA型デオキシリボヌクレオチド)または非天然型ヌクレオチド(例えば、イノシンを有するヌクレオチド、天然型ヌクレオチドのα-エナンチオマー型など)から構成されてもよく、両方から構成されたキメラ分子であってもよいが、リボヌクレオチドからなるRNAであることが好ましい。ヌクレオチドは、細胞に吸収しやすくしたり、ヌクレアーゼに分解されにくくしたりすることなどを目的とし、糖および/または塩基(プリンおよび/またはピリミジン)において修飾してもよい。糖の修飾としては、例えば1つ以上のヒドロキシル基が、ハロゲン、アルキル、アミン、およびアジドによって置換されてもよく、エーテル化またはエステル化されてもよい。また、全体の糖が、アザ糖および炭素環糖アナログのような立体的および電子的に等価な構造に置換されてもよい。塩基の修飾としては、例えばアルキル化および/またはアシル化されてもよく、あるいは複素環式置換をうけていてもよい。
あるいはこれらの分子を認識して結合してその酵素活性などの活性を阻害する、抗体もしくはその抗原結合断片であってもよい。
<医薬品>
本医薬組成物を用いて製造する医薬品は、共溶媒系を含んでもよい。例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、水相、VPD共溶媒系(3w/v%のベンジルアルコール、8w/v%の非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)、および65w/v%のポリエチレングリコール300を含む無水エタノールの溶液)が挙げられるが、これらに限定されない。共溶媒系の割合は、それらの溶解度および毒性特性を著しく変化させることなく大幅に変化することができる。さらに、共溶媒成分の同一性は変更するこができる。例えば、他の界面活性剤をポリソルベート80(商標)の代わりに使用してもよく、他の生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、例えば、ポリビニルピロリドンに取って代わり、他の糖または多糖は、デキストロースと置き換わり得るが、これらに限定されない。
これらは、有効成分以外の様々な目的の各種成分を含有してもよい。例えば、1種以上の医薬的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、酸味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定化剤、コーティング剤、局所麻酔剤、等張化剤などが挙げられる。具体的には、賦形剤としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、アミラーゼ、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、カオリン、ヒドロキシメチルセルロース、微結晶セルロース、滑石、珪酸、粘性パラフィン、ポリビニルピロリドンなどを、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどを、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などを、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどを、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などを、局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどを、等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖などを例示できる。
上記医薬の投与経路は、有効成分の剤形によって、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。いずれの場合も、経口経路、非経口経路のどちらであってもよい。非経口経路としては、静脈内投与、動脈内投与、経皮投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経粘膜投与などを挙げることができる。局所投与の場合、くも膜下注入、脳室内注入、脳せき髄液内注入(例えば髄腔内注入)などが例示できる。脳関門の通過を考慮に入れて、全身投与と局所投与(特に、脳内投与)を併用してもよい。
剤形は、特に限定されず、上記投与経路に適した剤形であればよい。例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤;経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤;坐剤とすることができる。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。また本発明に係る薬剤は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
上記医薬に含有される有効成分の量は、該有効成分の用量範囲や投薬の回数などにより適宜決定できる。用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断など応じて適宜選択できる。
薬学的に許容可能な塩は、有機塩、無機塩、酸性塩、塩基性塩、金属塩、非金属塩、酸付加塩、塩基付加塩など様々な分類の塩や様々な態様の塩が考えられる。例としては、酢酸塩、酸性リン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、塩化物、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、二塩化水素化物、ヨウ化水素酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、ジエタノールアミン塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
本医薬組成物を用いて製造する医薬品は、共溶媒系を含んでもよい。例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、水相、VPD共溶媒系(3w/v%のベンジルアルコール、8w/v%の非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)、および65w/v%のポリエチレングリコール300を含む無水エタノールの溶液)が挙げられるが、これらに限定されない。共溶媒系の割合は、それらの溶解度および毒性特性を著しく変化させることなく大幅に変化することができる。さらに、共溶媒成分の同一性は変更するこができる。例えば、他の界面活性剤をポリソルベート80(商標)の代わりに使用してもよく、他の生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、例えば、ポリビニルピロリドンに取って代わり、他の糖または多糖は、デキストロースと置き換わり得るが、これらに限定されない。
これらは、有効成分以外の様々な目的の各種成分を含有してもよい。例えば、1種以上の医薬的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、酸味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定化剤、コーティング剤、局所麻酔剤、等張化剤などが挙げられる。具体的には、賦形剤としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、アミラーゼ、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、カオリン、ヒドロキシメチルセルロース、微結晶セルロース、滑石、珪酸、粘性パラフィン、ポリビニルピロリドンなどを、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどを、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などを、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどを、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などを、局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどを、等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖などを例示できる。
上記医薬の投与経路は、有効成分の剤形によって、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。いずれの場合も、経口経路、非経口経路のどちらであってもよい。非経口経路としては、静脈内投与、動脈内投与、経皮投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経粘膜投与などを挙げることができる。局所投与の場合、くも膜下注入、脳室内注入、脳せき髄液内注入(例えば髄腔内注入)などが例示できる。脳関門の通過を考慮に入れて、全身投与と局所投与(特に、脳内投与)を併用してもよい。
剤形は、特に限定されず、上記投与経路に適した剤形であればよい。例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤;経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤;坐剤とすることができる。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。また本発明に係る薬剤は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
上記医薬に含有される有効成分の量は、該有効成分の用量範囲や投薬の回数などにより適宜決定できる。用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断など応じて適宜選択できる。
薬学的に許容可能な塩は、有機塩、無機塩、酸性塩、塩基性塩、金属塩、非金属塩、酸付加塩、塩基付加塩など様々な分類の塩や様々な態様の塩が考えられる。例としては、酢酸塩、酸性リン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、塩化物、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、二塩化水素化物、ヨウ化水素酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、ジエタノールアミン塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施例で用いた細胞株
Kasumi−7(preBCR+MEF2D−HNRNPUL1融合型急性リンパ芽球性白血病細胞株)、Kasumi−9(preBCR+MEF2D−HNRNPUL1融合型急性リンパ芽球性白血病細胞株)、Kasumi−2(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)、NALL−1(preBCR―型白血病細胞株)、およびNAGL−1細胞(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)は、JCRB細胞バンクから購入した。NALM−1(preBCR+フィラデルフィア染色体型白血病細胞株)およびReh細胞(preBCR―白血病細胞株)は、American Type Culture Collectionから入手した。NALM6細胞(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)はDSMZ(https://www.dsmz.de/)から入手した。AT2細胞(preBCR―細胞株)は、シカゴ大学より提供された。TS−2細胞(preBCR+MEF2D−DAZAP1型急性リンパ芽球性白血病細胞株)は、東京医科歯科大学医学研究所より提供された。
Kasumi−7(preBCR+MEF2D−HNRNPUL1融合型急性リンパ芽球性白血病細胞株)、Kasumi−9(preBCR+MEF2D−HNRNPUL1融合型急性リンパ芽球性白血病細胞株)、Kasumi−2(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)、NALL−1(preBCR―型白血病細胞株)、およびNAGL−1細胞(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)は、JCRB細胞バンクから購入した。NALM−1(preBCR+フィラデルフィア染色体型白血病細胞株)およびReh細胞(preBCR―白血病細胞株)は、American Type Culture Collectionから入手した。NALM6細胞(preBCR+非MEF2D融合型白血病細胞株)はDSMZ(https://www.dsmz.de/)から入手した。AT2細胞(preBCR―細胞株)は、シカゴ大学より提供された。TS−2細胞(preBCR+MEF2D−DAZAP1型急性リンパ芽球性白血病細胞株)は、東京医科歯科大学医学研究所より提供された。
本実施例で用いた臨床検体
名古屋大学病院または日本赤十字社名古屋第一病院で治療された、原発性B−ALLを有する47歳の男性(症例1;MEF2D−HNRNPUL1融合型)、および16歳の男性(症例2;MEF2D−BCL9融合型)の白血病細胞試料を用いた。MEF2D融合遺伝子はRT−PCRによって検出され、配列を決定した。
名古屋大学病院または日本赤十字社名古屋第一病院で治療された、原発性B−ALLを有する47歳の男性(症例1;MEF2D−HNRNPUL1融合型)、および16歳の男性(症例2;MEF2D−BCL9融合型)の白血病細胞試料を用いた。MEF2D融合遺伝子はRT−PCRによって検出され、配列を決定した。
K7−HA−GFP細胞の作製
Kasumi−7細胞に、1)ヒトHNRNPUL1遺伝子のストップコドンの下流を標的とするgRNA(5'- GUGUGACCCAGAGGCUCCCGG -3'(配列番号17))を発現するlentiCRISPR V2(#52961、addgene、ウォータータウン、MA、USA)と、2)ヒトHNRNPUL1遺伝子のストップコドンの上流および下流のそれぞれ約1kbpを含むフラグメント、2A配列(5'- gcaacaaacttctctctgctgaaacaagccggagatgtcgaagagaatcctggacc -3'(配列番号18))、及びGFPのcDNAを含むpBluescript SKII(Agilent、カリフォルニア州サンタクララ)をトランスフェクトし、CRISPR-Cas9システムを使用して、カルボキシ末端に血球凝集素(HA)がタグとして結合した内因性MEF2D−HNRNPUL1融合タンパク質を、2A配列によりGFPと共発現するようにゲノム編集したKasumi−7GFP陽性細胞株を作製した(以降、K7−HA−GFP細胞と呼ぶ)。
Kasumi−7細胞に、1)ヒトHNRNPUL1遺伝子のストップコドンの下流を標的とするgRNA(5'- GUGUGACCCAGAGGCUCCCGG -3'(配列番号17))を発現するlentiCRISPR V2(#52961、addgene、ウォータータウン、MA、USA)と、2)ヒトHNRNPUL1遺伝子のストップコドンの上流および下流のそれぞれ約1kbpを含むフラグメント、2A配列(5'- gcaacaaacttctctctgctgaaacaagccggagatgtcgaagagaatcctggacc -3'(配列番号18))、及びGFPのcDNAを含むpBluescript SKII(Agilent、カリフォルニア州サンタクララ)をトランスフェクトし、CRISPR-Cas9システムを使用して、カルボキシ末端に血球凝集素(HA)がタグとして結合した内因性MEF2D−HNRNPUL1融合タンパク質を、2A配列によりGFPと共発現するようにゲノム編集したKasumi−7GFP陽性細胞株を作製した(以降、K7−HA−GFP細胞と呼ぶ)。
1.MEF2D−BCL9とpreBCR+B細胞の関係
MEF2D−BCL9とGFPを同時に発現させるため、MEF2D−BCL9cDNA(配列番号19)をpMSCV−IRES−GFPベクターにクローニングした。
胎児肝細胞(交尾後14日、BALB/cマウス)を、15%FBS、幹細胞因子、Flt3リガンド、インターロイキン−7、および2−メルカプトエタノールを添加したIscove’s Modified Dulbecco培地中で、OP9ストロマ細胞上で培養することにより、B220+c−Kit+pro−B細胞に分化させた。
B220+c−Kit+pro−B細胞に、pMSCV−IRES−GFPベクター(±MEF2D−BCL9cDNA)を含む組換えレトロウイルスを感染させ、GFPの発現をマーカーとして、感染した細胞を選別した。得られたpro−B細胞(+GFP±MEF2D−BCL9cDNA)を、致死量以下(2Gy)の放射線照射された免疫不全NSG(NOD scid gamma)マウス(8〜10週齢、雌)に静脈内移植(1x107細胞)した(GFPonly(Ctr):n =10;MEF2D−BCL9:n=11)。3週間後、骨髄細胞を回収し、分化したpreB細胞を検出するため、抗preBCR(プレB細胞受容体)抗体を用いてフローサイトメトリーを行った(図1A)。
その結果、MEF2D−BCL9を発現させたpro−B細胞を移植した場合(MEF2D−BCL9)、MEF2D−BCL9を発現させないpro−B細胞を移植した場合(GFP−only)に比べて有意にpreBCR陽性の細胞の割合が増えていた。これは、MEF2D−BCL9の発現が、preBCR+細胞の増加させることを示している。
MEF2D−BCL9とGFPを同時に発現させるため、MEF2D−BCL9cDNA(配列番号19)をpMSCV−IRES−GFPベクターにクローニングした。
胎児肝細胞(交尾後14日、BALB/cマウス)を、15%FBS、幹細胞因子、Flt3リガンド、インターロイキン−7、および2−メルカプトエタノールを添加したIscove’s Modified Dulbecco培地中で、OP9ストロマ細胞上で培養することにより、B220+c−Kit+pro−B細胞に分化させた。
B220+c−Kit+pro−B細胞に、pMSCV−IRES−GFPベクター(±MEF2D−BCL9cDNA)を含む組換えレトロウイルスを感染させ、GFPの発現をマーカーとして、感染した細胞を選別した。得られたpro−B細胞(+GFP±MEF2D−BCL9cDNA)を、致死量以下(2Gy)の放射線照射された免疫不全NSG(NOD scid gamma)マウス(8〜10週齢、雌)に静脈内移植(1x107細胞)した(GFPonly(Ctr):n =10;MEF2D−BCL9:n=11)。3週間後、骨髄細胞を回収し、分化したpreB細胞を検出するため、抗preBCR(プレB細胞受容体)抗体を用いてフローサイトメトリーを行った(図1A)。
その結果、MEF2D−BCL9を発現させたpro−B細胞を移植した場合(MEF2D−BCL9)、MEF2D−BCL9を発現させないpro−B細胞を移植した場合(GFP−only)に比べて有意にpreBCR陽性の細胞の割合が増えていた。これは、MEF2D−BCL9の発現が、preBCR+細胞の増加させることを示している。
同じように調製したpro−B細胞1x107個を、致死量以下の放射線を照射(2Gy)した免疫不全NSG(NOD scid gamma)マウス(8〜10週齢、雌、各々n=5)に静脈注射によって移植した。生存率のカプラン・マイヤー分析は、R packages survival(バージョン2.44-1.1)を使用して行った(図1B)。
移植から120日後に、MEF2D−BCL9を発現していない対照のpro−B細胞を移植した個体は健常なのに対して(点線)、MEF2D−BCL9を発現しているpro−B細胞を移植した個体は、すでに死亡したか、又はひん死の状態であった(実線)。
MEF2D−BCL9を発現するpro−B細胞を投与された2匹のマウス(マウスA及びマウスB)を死亡前に検査したところ、脾臓が肥大していることと骨髄中に多数のリンパ芽球が存在することが観察された(図1C)。そして、骨髄中の細胞を抗体を用いたフローサイトメトリーで分類分けしたところ、90%以上がGFP+CD19+B細胞であり、preBCRを発現していた(図1D)。
これは、MEF2D−BCL9を発現したpro−B細胞の投与がALLの病態(リンパ芽球の浸潤、脾臓などの腫大)を引き起こすことを示す。
移植から120日後に、MEF2D−BCL9を発現していない対照のpro−B細胞を移植した個体は健常なのに対して(点線)、MEF2D−BCL9を発現しているpro−B細胞を移植した個体は、すでに死亡したか、又はひん死の状態であった(実線)。
MEF2D−BCL9を発現するpro−B細胞を投与された2匹のマウス(マウスA及びマウスB)を死亡前に検査したところ、脾臓が肥大していることと骨髄中に多数のリンパ芽球が存在することが観察された(図1C)。そして、骨髄中の細胞を抗体を用いたフローサイトメトリーで分類分けしたところ、90%以上がGFP+CD19+B細胞であり、preBCRを発現していた(図1D)。
これは、MEF2D−BCL9を発現したpro−B細胞の投与がALLの病態(リンパ芽球の浸潤、脾臓などの腫大)を引き起こすことを示す。
2.MEF2D−ALL細胞における、preBCRの発現とMEF2D融合タンパク質の必要性
preBCRの構成分子であるIg膜型μ鎖、CD79A、およびCD79BのshRNA(shIgm/Fw、shCD79A/Fw、shCD79B/Fw)をコードする二本鎖DNAをそれぞれ、ヒトCD8の細胞外ドメインを共発現させるCSIIhU6PGKhCD8ベクターのhU6プロモーターの下流のBamHI/ClaI部位に挿入することにより、各shRNAを発現するレンチウイルスベクターを作製した。それぞれのレンチウイルスベクターをウィルスエンベロープにパッケージングし、Centriprep-10K(Merk-Millipore、Darmstadt、Germany)を使用してレンチウイルスを濃縮した。得られたレンチウイルスをKasumi−7細胞に各々感染させ、MACS磁気細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)と抗ヒトCD8抗体(HIT8a; Biolegend、San Diego、CA、USA)を用いてshRNAが導入された細胞を分離した。
その結果、hCD8陽性細胞の増殖は、Ig膜型μ鎖、CD79A、およびCD79Bの発現を各々抑制することにより、抑えられた(図2A)。
preBCRの構成分子であるIg膜型μ鎖、CD79A、およびCD79BのshRNA(shIgm/Fw、shCD79A/Fw、shCD79B/Fw)をコードする二本鎖DNAをそれぞれ、ヒトCD8の細胞外ドメインを共発現させるCSIIhU6PGKhCD8ベクターのhU6プロモーターの下流のBamHI/ClaI部位に挿入することにより、各shRNAを発現するレンチウイルスベクターを作製した。それぞれのレンチウイルスベクターをウィルスエンベロープにパッケージングし、Centriprep-10K(Merk-Millipore、Darmstadt、Germany)を使用してレンチウイルスを濃縮した。得られたレンチウイルスをKasumi−7細胞に各々感染させ、MACS磁気細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)と抗ヒトCD8抗体(HIT8a; Biolegend、San Diego、CA、USA)を用いてshRNAが導入された細胞を分離した。
その結果、hCD8陽性細胞の増殖は、Ig膜型μ鎖、CD79A、およびCD79Bの発現を各々抑制することにより、抑えられた(図2A)。
GFPに対するshRNA(shRNA−GFP−1及びshRNA−GFP−2;表4)をコードする二本鎖DNAを、CSIIhU6PGKhCD8ベクターに挿入した。GFPshRNA発現レンチウイルスベクターをウィルスエンベロープにパッケージングし、Centriprep-10K(Merk-Millipore、Darmstadt、Germany)を使用してレンチウイルスを濃縮した。レンチウイルスをK7−HA−GFP細胞に感染させ、MACS磁気細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)と抗ヒトCD8抗体(HIT8a; Biolegend、San Diego、CA、USA)を用いてGFPshRNAを発現する細胞を分離した。コントロールとして(Ctr)、ルシフェラーゼに対するshRNAをコードする二本鎖DNAを代わりに用いて実験を行った(shRNA−Luci)。K7−HA−GFP細胞では、MEF2D−HNRNPUL1とGFPが一本のmRNAとして発現するので、GFPのshRNAによってMEF2D−HNRNPUL1の発現を抑制することができる。
このようにしてMEF2D−HNRNPUL1の発現を抑制した結果、K7−HA−GFP細胞のCD8陽性画分でのみGFPが減少した(図2B)。なお、CD8陽性画分の細胞では、preBCRの発現が減少し(図2C上段)、細胞増殖の抑制が生じており(図2C下段)、さらに細胞死(図2D)が生じていた。
これはMEF2D融合タンパク質の存在がpreBCRの発現増強を介して、MEF2D−ALLの症状(すなわち白血病細胞の増加)を引き起こし、MEF2D融合タンパク質の発現を抑制することにより、MEF2D−ALLの症状が抑えられることを示している。
このようにしてMEF2D−HNRNPUL1の発現を抑制した結果、K7−HA−GFP細胞のCD8陽性画分でのみGFPが減少した(図2B)。なお、CD8陽性画分の細胞では、preBCRの発現が減少し(図2C上段)、細胞増殖の抑制が生じており(図2C下段)、さらに細胞死(図2D)が生じていた。
これはMEF2D融合タンパク質の存在がpreBCRの発現増強を介して、MEF2D−ALLの症状(すなわち白血病細胞の増加)を引き起こし、MEF2D融合タンパク質の発現を抑制することにより、MEF2D−ALLの症状が抑えられることを示している。
3.Ex vivo薬物感受性アッセイ
本実施例では、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖が、チロシンキナーゼ阻害剤またはカルシニューリン阻害剤によって抑制されることを示す。
まず、preBCR−細胞株(AT2、NALL−1、NALM−1及びReh)、preBCR+非MEF2D融合型細胞株(Kasumi−2,NAGL−2及びNALM−6)、及びpreBCR+MEF2D融合型細胞株(Kasumi−7、Kasumi9及びTS−2)を、1×105個/mlの密度で培養皿に播種し、各チロシンキナーゼ阻害剤(ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、及びイブルチニブ)、カルシニューリン阻害剤(タクロリムス)または溶媒(DMSO)の存在下で3日間培養した。生細胞数を顕微鏡下でカウントし、生存細胞の割合を、対照を1として計算した。グラフはRパッケージggplot2(バージョン3.2.0)を使用して作成した(図3A)。その結果、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、およびイブルチニブはいずれも、pre−BCR陽性細胞の増殖を阻害したのに対し、preBCR陰性細胞の増殖は阻害しなかった。このことは、これらの化合物が、pre−BCRの下流のシグナル伝達経路をターゲットにして効果を発揮していることを示す。一方、タクロリムス(FK506)は、preBCR+非MEF2D融合型細胞株の増殖は阻害せず、他のシグナル伝達因子の阻害剤とは細胞増殖阻害のメカニズムが違うものと考えられた。
臨床検体由来の細胞(case−1、case−2)を用いた同様の実験でも、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、イブルチニブ及びタクロリムスによって、これらの細胞の細胞増殖が阻害された(図3B)。
一方、対照実験においては、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などに投与されるヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるボリノスタットやパノビノスタットはすべての細胞株の増殖を阻害した(図3C)。
このように、これらのチロシンキナーゼ阻害剤またはカルシニューリン阻害剤は、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖を阻害する。このことは、これらの薬剤が、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
本実施例では、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖が、チロシンキナーゼ阻害剤またはカルシニューリン阻害剤によって抑制されることを示す。
まず、preBCR−細胞株(AT2、NALL−1、NALM−1及びReh)、preBCR+非MEF2D融合型細胞株(Kasumi−2,NAGL−2及びNALM−6)、及びpreBCR+MEF2D融合型細胞株(Kasumi−7、Kasumi9及びTS−2)を、1×105個/mlの密度で培養皿に播種し、各チロシンキナーゼ阻害剤(ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、及びイブルチニブ)、カルシニューリン阻害剤(タクロリムス)または溶媒(DMSO)の存在下で3日間培養した。生細胞数を顕微鏡下でカウントし、生存細胞の割合を、対照を1として計算した。グラフはRパッケージggplot2(バージョン3.2.0)を使用して作成した(図3A)。その結果、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、およびイブルチニブはいずれも、pre−BCR陽性細胞の増殖を阻害したのに対し、preBCR陰性細胞の増殖は阻害しなかった。このことは、これらの化合物が、pre−BCRの下流のシグナル伝達経路をターゲットにして効果を発揮していることを示す。一方、タクロリムス(FK506)は、preBCR+非MEF2D融合型細胞株の増殖は阻害せず、他のシグナル伝達因子の阻害剤とは細胞増殖阻害のメカニズムが違うものと考えられた。
臨床検体由来の細胞(case−1、case−2)を用いた同様の実験でも、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ、イブルチニブ及びタクロリムスによって、これらの細胞の細胞増殖が阻害された(図3B)。
一方、対照実験においては、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などに投与されるヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるボリノスタットやパノビノスタットはすべての細胞株の増殖を阻害した(図3C)。
このように、これらのチロシンキナーゼ阻害剤またはカルシニューリン阻害剤は、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖を阻害する。このことは、これらの薬剤が、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
4.生体内薬物感受性アッセイ
preBCR+MEF2D融合型細胞であるKasumi−7細胞に、ルシフェラーゼ−IRES−GFPを発現するレトロウイルス(MIG-Luciferase-IRES-GFP:Addgene#75021)を感染させ、GFP発現細胞を選別した。一方、NSGマウスに、24時間間隔で20mg/体重kgのブスルファン(B2635、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、USA)を2回、腹腔内注射することにより造血幹細胞を死滅させる前処理を行なった。このNSGマウスに、5×106個のGFP発現細胞を静脈注射することによって移植した。このGFP発現細胞を移植したマウスに、30mg/体重kg/日のダサチニブ(Dasatinib;Dasa)、25mg/体重kg/日のイブルチニブ(Ibrutinib;Ibr)又はこれらの対照(Ctr;溶媒のみ)を、経口胃管栄養法により移植後35日間毎日与えた。ルシフェラーゼ活性をバイオルミネセンスイメージングにより観察した(図4A)。
生存率のカプラン・マイヤー分析は、R packages survival(バージョン2.44-1.1)を使用して行った(図4B)。
その結果、ダサチニブ及びイブルチニブを投与した個体は、ルシフェラーゼ発現細胞数が減少し、生存率も上昇した。このように、チロシンキナーゼ阻害薬は、in vivoにおいても、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖を阻害する。このことは、これらのチロシンキナーゼ阻害薬が、in vivoでも、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
preBCR+MEF2D融合型細胞であるKasumi−7細胞に、ルシフェラーゼ−IRES−GFPを発現するレトロウイルス(MIG-Luciferase-IRES-GFP:Addgene#75021)を感染させ、GFP発現細胞を選別した。一方、NSGマウスに、24時間間隔で20mg/体重kgのブスルファン(B2635、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、USA)を2回、腹腔内注射することにより造血幹細胞を死滅させる前処理を行なった。このNSGマウスに、5×106個のGFP発現細胞を静脈注射することによって移植した。このGFP発現細胞を移植したマウスに、30mg/体重kg/日のダサチニブ(Dasatinib;Dasa)、25mg/体重kg/日のイブルチニブ(Ibrutinib;Ibr)又はこれらの対照(Ctr;溶媒のみ)を、経口胃管栄養法により移植後35日間毎日与えた。ルシフェラーゼ活性をバイオルミネセンスイメージングにより観察した(図4A)。
生存率のカプラン・マイヤー分析は、R packages survival(バージョン2.44-1.1)を使用して行った(図4B)。
その結果、ダサチニブ及びイブルチニブを投与した個体は、ルシフェラーゼ発現細胞数が減少し、生存率も上昇した。このように、チロシンキナーゼ阻害薬は、in vivoにおいても、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖を阻害する。このことは、これらのチロシンキナーゼ阻害薬が、in vivoでも、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
5.pBCRシグナルのMEF2D融合タンパク質の発現への影響
プレB細胞受容体の各構成分子(CD79A,Ig膜型μ鎖及びCD79B);プレB細胞受容体シグナルの下流因子であるSYK(Spleen tyrosine kinase;非受容体型タンパク質チロシンキナーゼ)及び BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ);さらに下流の因子であるCREB(cAMP response element binding protein)の発現を阻害するshRNAをコードする二本鎖DNA(表4)を、ヒトCD8の細胞外ドメインを共発現したCSIIhU6PGKhCD8ベクターのhU6プロモーターの下流のBamHI/ClaI部位に挿入することにより、各shRNAを発現するレンチウイルスベクターを作製した。ベクターをウィルスエンベロープにパッケージングし、Centriprep-10K(Merk-Millipore、Darmstadt、Germany)を使用してレンチウイルスを濃縮した。Kasumi−7細胞にレンチウイルスを感染後、所定時間培養し、培養後の細胞に存在する各タンパク質をウェスタンブロッティングで検出した。
その結果、CD79A,Ig膜型μ鎖、CD79B、SYK及びBTKの発現をshRNAを用いて抑制することにより、それぞれの下流分子のリン酸化(CREBのリン酸化を含む)が減少し、さらにMEF2D融合タンパク質量及びその転写量も減少し(図5A、図5B)、細胞の増殖そのものも抑制された(図5C)。また、CREBの発現をshRNAを用いて抑制しても、MEF2D融合タンパク質の発現が減少した(図5D)。チロシンキナーゼ阻害剤をKasumi−7細胞に投与すると、リン酸化CREBの量も減少した(図5E)。
このように、preBCRの構成分子やpreBCRシグナルの構成因子の発現を抑制することによって、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖が抑制される。このことは、preBCRの構成分子やpreBCRシグナルの構成因子の発現を抑制する分子が、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
プレB細胞受容体の各構成分子(CD79A,Ig膜型μ鎖及びCD79B);プレB細胞受容体シグナルの下流因子であるSYK(Spleen tyrosine kinase;非受容体型タンパク質チロシンキナーゼ)及び BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ);さらに下流の因子であるCREB(cAMP response element binding protein)の発現を阻害するshRNAをコードする二本鎖DNA(表4)を、ヒトCD8の細胞外ドメインを共発現したCSIIhU6PGKhCD8ベクターのhU6プロモーターの下流のBamHI/ClaI部位に挿入することにより、各shRNAを発現するレンチウイルスベクターを作製した。ベクターをウィルスエンベロープにパッケージングし、Centriprep-10K(Merk-Millipore、Darmstadt、Germany)を使用してレンチウイルスを濃縮した。Kasumi−7細胞にレンチウイルスを感染後、所定時間培養し、培養後の細胞に存在する各タンパク質をウェスタンブロッティングで検出した。
その結果、CD79A,Ig膜型μ鎖、CD79B、SYK及びBTKの発現をshRNAを用いて抑制することにより、それぞれの下流分子のリン酸化(CREBのリン酸化を含む)が減少し、さらにMEF2D融合タンパク質量及びその転写量も減少し(図5A、図5B)、細胞の増殖そのものも抑制された(図5C)。また、CREBの発現をshRNAを用いて抑制しても、MEF2D融合タンパク質の発現が減少した(図5D)。チロシンキナーゼ阻害剤をKasumi−7細胞に投与すると、リン酸化CREBの量も減少した(図5E)。
このように、preBCRの構成分子やpreBCRシグナルの構成因子の発現を抑制することによって、preBCR+MEF2D融合型細胞の増殖が抑制される。このことは、preBCRの構成分子やpreBCRシグナルの構成因子の発現を抑制する分子が、MEF2D−ALL型の白血病の治療に有効であることを示す。
6.チロシンキナーゼ阻害剤のMEF2D融合型細胞への影響
preBCR+MEF2D−ALL型細胞株である、Kasumi−7、Kasumi−9及びTS−2、ならびに臨床検体細胞に、チロシンキナーゼ阻害剤を投与した。72時間培養後の細胞に存在するMEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現をウェスタンブロッティングで調べた。
図6Aに示すように、ダサチニブ(Dasa)、PRT062607(PRT)及びイブルチニブ(Ibr)は、MEF2D融合タンパク質の発現を抑制した。また、図6Bに示すように、ダサチニブ、PRT062607及びイブルチニブは、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株において、preBCRの発現を抑制したものの、preBCR+非MEF2D−ALL型細胞株においては、preBCRの発現を抑制しなかった。
このように、チロシンキナーゼ阻害剤は、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株において、MEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現を抑制する。これは、チロシンキナーゼ阻害剤がMEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現を抑制することを介して、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株の細胞の増殖を阻害し得ることを示す。
preBCR+MEF2D−ALL型細胞株である、Kasumi−7、Kasumi−9及びTS−2、ならびに臨床検体細胞に、チロシンキナーゼ阻害剤を投与した。72時間培養後の細胞に存在するMEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現をウェスタンブロッティングで調べた。
図6Aに示すように、ダサチニブ(Dasa)、PRT062607(PRT)及びイブルチニブ(Ibr)は、MEF2D融合タンパク質の発現を抑制した。また、図6Bに示すように、ダサチニブ、PRT062607及びイブルチニブは、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株において、preBCRの発現を抑制したものの、preBCR+非MEF2D−ALL型細胞株においては、preBCRの発現を抑制しなかった。
このように、チロシンキナーゼ阻害剤は、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株において、MEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現を抑制する。これは、チロシンキナーゼ阻害剤がMEF2D融合タンパク質およびpreBCRの発現を抑制することを介して、preBCR+MEF2D−ALL型細胞株の細胞の増殖を阻害し得ることを示す。
本発明により、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療方法及び治療剤を提供することができる。
Claims (9)
- プレB細胞受容体シグナル阻害剤を有効成分として含む、MEF2D融合型急性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物。
- 前記MEF2D融合型急性リンパ性白血病が、MEF2D-BCL9融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-HNRNPUL1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D-DAZAP1融合型急性リンパ性白血病、MEF2D−SS18融合型急性リンパ性白血病、またはMEF2D-CSF1R融合型急性リンパ性白血病である、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
- 前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)阻害剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
- 前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、カルシニューリン阻害剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
- 前記プレB細胞受容体シグナル阻害剤が、Ig膜型μ鎖、CD79A、CD79B、SYK、BTK又はCREBのアンチセンスRNA、miRNA又は抗体である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
- 前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、PRT062607、イデラリシブ又はイブルチニブである、請求項3に記載の医薬組成物。
- 前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、請求項5に記載の医薬組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有する、MEF2D融合型急性リンパ性白血病の治療剤。
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