JP2021126961A - 4輪駆動車の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】4輪駆動状態と2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車の緊急回避性を向上させる。【解決手段】駆動源の駆動力により左右前輪191,192及び左右後輪193,194を駆動可能な4輪駆動車1に搭載され、駆動力を伝達する回転部材間に設けられたメインクラッチ24を制御する制御装置3は、メインラッチ24が締結された状態での走行中に進行方向前方を走行する先行車8で緊急運転操作がなされたとき、メインクラッチ24の締結力を低減する。【選択図】図4

Description

本発明は、駆動源の駆動力により左右前輪及び左右後輪を駆動可能な4輪駆動車に搭載され、駆動力を伝達する回転部材間に設けられたクラッチを制御する制御装置に関する。
従来、衝突事故の発生を防ぎやすくするために緊急回避性を向上させた車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の危険回避支援システムは、前方車両を撮影するカメラの画像情報に基づいて、前方車両が急ブレーキをかけたことが検知されたとき、車両の動作モードを通常モードから最大支援モードに切り換える。最大支援モードでは、運転者がブレーキをかけたときには通常モードよりも大きなブレーキアシスト力を発生させ、運転者が操舵操作を行ったときには通常モードよりも大きな操舵アシスト力を発生させる。
特開2009−190686号公報
ところで、4輪駆動状態と2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車が4輪駆動状態で走行する際には、2輪駆動状態での走行時に比較して、直進安定性が高まる一方で回頭性が低下する。また、例えば運転者が緊急回避のために操舵操作を行ってから4輪駆動状態から2輪駆動状態に切り換える制御動作がなされたとしても、その切り替えが完了するまでの遅れ時間によって緊急回避中に回頭性が高まる効果が十分に発揮できないおそれがある。
そこで、本発明は、4輪駆動状態と2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車の緊急回避性を向上させることを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、駆動源の駆動力により左右前輪及び左右後輪を駆動可能な4輪駆動車に搭載され、駆動力を伝達する回転部材間に設けられたクラッチを制御する制御装置であって、前記クラッチが締結された状態での走行中に進行方向前方を走行する先行車で緊急運転操作がなされたとき、前記クラッチの締結力を低減する、4輪駆動車の制御装置を提供する。
本発明に係る4輪駆動車の制御装置によれば、本発明は、4輪駆動状態と2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車の緊急回避性を向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が搭載された4輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。 駆動力伝達装置の構成例を示す断面図である。 (a)及び(b)は、自車両が先行車の後方を走行している際に、別の他車両が先行車の前方を塞ぐように側道から出てきた際の状態を示す説明図である。 制御装置が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。 第2の実施の形態に係る4輪駆動車の構成例を示す概略構成図である。 第3の実施の形態に係る4輪駆動車の構成例を示す概略構成図である。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が搭載された4輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。
4輪駆動車1は、駆動源としてのエンジン11の駆動力を左右前輪191,192及び左右後輪193,194に配分可能な駆動力伝達系10を備えている。エンジン11の出力軸であるクランクシャフトの回転は、トランスミッション12によって変速される。なお、駆動源として電動モータを用いてもよく、エンジンと電動モータとを組み合わせて駆動源としてもよい。また、以下、4輪駆動車1を自車両1ということがある。
左右前輪191,192は、エンジン11の駆動力が常時伝達される主駆動輪である。左右後輪193,194は、駆動力伝達系10に設けられた駆動力伝達装置2を介してエンジン11の駆動力が配分される補助駆動輪である。左右前輪191,192ならびに左右後輪193,194には、車輪速センサ101〜104がそれぞれ対応して配置されている。駆動力伝達装置2は、後述するメインクラッチ24の締結力が制御装置3によって制御される。また、4輪駆動車1には、先行車を含む他車両との車車間通信が可能な車車間通信装置4が搭載されており、制御装置3と車車間通信装置4とが車載ネットワークを介して情報を送受信可能に接続されている。
4輪駆動車1は、エンジン11の駆動力が左右前輪191,192及び左右後輪193,194に配分される4輪駆動状態と、エンジン11の駆動力が左右前輪191,192のみに配分される2輪駆動状態とを切り替え可能である。4輪駆動状態での走行時には、駆動力伝達装置2によって左右前輪191,192と左右後輪193,194との差動が制限されるので、直進安定性が高まる一方、回頭性は低下する。
駆動力伝達系10は、前輪側に配置されたフロントディファレンシャル13及びトランスファ14と、車両前後方向に駆動力を伝達するプロペラシャフト15と、後輪側に配置されたリヤディファレンシャル16と、リヤディファレンシャル16に駆動力を伝達するピニオンギヤシャフト160と、左右の前輪側のドライブシャフト171,172と、左右の後輪側のドライブシャフト181,182とを有している。駆動力伝達装置2は、プロペラシャフト15とピニオンギヤシャフト160との間に配置され、左右後輪193,194に伝達される駆動力を調節可能である。
駆動力伝達装置2は、制御装置3から供給される電流に応じた駆動力をプロペラシャフト15からピニオンギヤシャフト160に伝達する。制御装置3は、車載ネットワークを介して、車輪速センサ101〜104によって検出される左右前輪191,192及び左右後輪193,194の回転速度を示す車輪速の情報や、アクセルペダルセンサ105によって検出されるアクセルペダル111の操作量を示すアクセル開度の情報、及び操舵角センサ106によって検出されるステアリングホイール112の回転角を示す操舵角の情報を取得可能である。車輪速、アクセル開度、及び操舵角の情報は、4輪駆動車1の車両状態を示す状態量の一例であり、制御装置3は、これらの状態量に基づいて駆動力伝達装置2のメインクラッチ24を制御し、左右前輪191,192及び左右後輪193,194への駆動力配分割合を調節する。
左右前輪191,192には、エンジン11の駆動力が、トランスミッション12、フロントディファレンシャル13、及び左右の前輪側のドライブシャフト171,172を介して伝達される。フロントディファレンシャル13は、左右の前輪側のドライブシャフト171,172にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ131,131と、一対のサイドギヤ131,131にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ132,132と、一対のピニオンギヤ132,132を支持するピニオンギヤシャフト133と、これらを収容するフロントデフケース134とを有している。
トランスファ14は、フロントデフケース134に固定されたリングギヤ141と、プロペラシャフト15の車両前方側の端部に連結されてリングギヤ141に噛み合うピニオンギヤ142とを有し、プロペラシャフト15に駆動力を伝達する。プロペラシャフト15の車両後方側の端部は、駆動力伝達装置2の入力回転部材であるハウジング20に連結されている。
駆動力伝達装置2は、ハウジング20と相対回転可能に配置された出力回転部材としてのインナシャフト23を有しており、インナシャフト23にピニオンギヤシャフト160が相対回転不能に連結されている。駆動力伝達装置2の詳細については後述する。プロペラシャフト15、駆動力伝達装置2、及びピニオンギヤシャフト160は、エンジン11から左右後輪193,194に至る駆動力の伝達経路中に直列に配置されている。ハウジング20及びインナシャフト23は、それぞれ駆動力を伝達する本発明の回転部材の一態様である。
リヤディファレンシャル16は、左右の後輪側のドライブシャフト181,182にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ161,161と、一対のサイドギヤ161,161にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ162,162と、一対のピニオンギヤ162,162を支持するピニオンギヤシャフト163と、これらを収容するリヤデフケース164と、リヤデフケース164に固定されてピニオンギヤシャフト160と噛み合うハイポイドギヤからなるリングギヤ165とを有している。
(駆動力伝達装置の構成)
図2は、駆動力伝達装置2の構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は駆動力伝達装置2の作動状態(トルク伝達状態)を、下側は駆動力伝達装置2の非作動状態(トルク非伝達状態)を、それぞれ示す。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
駆動力伝達装置2は、フロントハウジング21及びリヤハウジング22からなるハウジング20と、ハウジング20と同軸上で相対回転可能に支持された筒状のインナシャフト23と、ハウジング20とインナシャフト23との間に配置されたメインクラッチ24と、メインクラッチ24を押圧するスラスト力を発生させるカム機構25と、制御装置3から電流の供給を受けてカム機構25を作動させる電磁クラッチ機構26とを有して構成されている。ハウジング20の内部には、図略の潤滑油が封入されている。
フロントハウジング21は、円筒状の筒部21aと底部21bとを一体に有する有底円筒状であり、底部21bにプロペラシャフト15(図1参照)が例えば十字継手を介して連結される。筒部21aの内面には、軸方向に延びる複数の外側スプライン突起211が形成されている。リヤハウジング22は、径方向の一部がリング状の非磁性体221によって形成されており、フロントハウジング21と一体に回転する。
インナシャフト23は、軸受271,272によってハウジング20の内周に支持されており、軸方向に延びる複数の内側スプライン突起231を外周面に有している。また、インナシャフト23の一端部における内面には、ピニオンギヤシャフト160(図1参照)の一端部が相対回転不能に嵌合されるスプライン嵌合部232が形成されている。
メインクラッチ24は、軸方向に沿って交互に配置された複数のメインアウタクラッチプレート241及び複数のメインインナクラッチプレート242からなる。メインアウタクラッチプレート241は、外周側の端部がフロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合している。メインインナクラッチプレート242は、内周側の端部がインナシャフト23の内側スプライン突起231に係合している。
カム機構25は、電磁クラッチ機構26を介してハウジング20の回転力を受けるパイロットカム251と、メインクラッチ24を軸方向に押圧するメインカム252と、パイロットカム251とメインカム252との間に配置された複数の球状のカムボール253とを有して構成されている。パイロットカム251とメインカム252との対向面には、周方向に沿って軸方向の深さが変化する複数のカム溝251a,252aがそれぞれ形成されており、これらのカム溝251a,252aの間にカムボール253が配置されている。パイロットカム251とリヤハウジング22との間には、スラスト軸受254が配置されている。メインカム252は、インナシャフト23の内側スプライン突起231に相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合しており、リターンスプリングとしての皿ばね255によってパイロットカム251側に付勢されている。
電磁クラッチ機構26は、アーマチャ260と、複数のパイロットアウタクラッチプレート261と、複数のパイロットインナクラッチプレート262と、電磁コイル263とを有して構成されている。電磁コイル263は、軸受273によってリヤハウジング22に支持されたヨーク264に保持されている。電磁コイル263には、電線265を介して制御装置3からの励磁電流が供給される。
複数のパイロットアウタクラッチプレート261及びパイロットインナクラッチプレート262は、アーマチャ260とリヤハウジング22との間に、軸方向に沿って交互に配置されている。パイロットアウタクラッチプレート261及びアーマチャ260は、外周側の端部がフロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合している。パイロットインナクラッチプレート262は、内周側の端部がパイロットカム251に係合している。
制御装置3は、電磁コイル263に供給する電流を増減させることにより、駆動力伝達装置2から左右後輪193,194側に伝達される駆動力を調節可能である。駆動力伝達装置2は、電磁コイル263に供給される電流によって磁路Gに磁束が発生し、アーマチャ260がリヤハウジング22側に引き寄せられてパイロットアウタクラッチプレート261とパイロットインナクラッチプレート262とが摩擦接触し、パイロットカム251がメインカム252に対して相対回転し、カムボール253がカム溝251a,252aを転動してメインカム252にメインクラッチ24を押圧するスラスト力が発生する。そして、複数のメインアウタクラッチプレート241と複数のメインインナクラッチプレート242との間に摩擦力(締結力)が発生してハウジング20からインナシャフト23に駆動力が伝達される。
駆動力伝達装置2では、上記のように電磁クラッチ機構26及びカム機構25が順次作動してメインクラッチ24の複数のメインアウタクラッチプレート241と複数のメインインナクラッチプレート242との間に摩擦力が発生するので、電磁コイル263に電流が供給されてから左右後輪193,194に駆動力が伝達されるまでに時間的な遅れが発生する。
このため、例えばメインクラッチ24が締結された4輪駆動状態での走行中に運転者が前方に障害物を発見し、ステアリングホイール20が急操舵されてから2輪駆動状態への切り替えを行うために電磁コイル263への電流供給を遮断したとしても、実際に2輪駆動状態になるまでにはある程度の時間がかかり、障害物の地点に到達するまでに回頭性を高める効果が得られない場合がある。
図3(a),(b)は、自車両1が先行車8の後方を走行している際に、別の他車両9が先行車8の前方を塞ぐように側道から出てきた際の状態を示している。図3(a)では先行車8が第1車線Lの中央を走行している状態を示しており、図3(b)では他車両9を避けるために先行車8が急操舵を行って第1車線Lから第2車線Lにはみだすように車線境界線Lを越えた状態を示している。この急操舵は、回避対象との衝突を避けるための緊急運転操作の一態様である。
先行車8は車車間通信装置81を備えており、この車車間通信装置81により自車両1との車車間通信が可能である。また、先行車8は、車線逸脱警報装置82を備えており、この車線逸脱警報装置82の作動中に先行車8がウインカーを作動させることなく車線境界線を越えようとしたとき、先行車8の運転者に警報が発せられる。この警報は、例えばブザー音や音声メッセージの他、運転者の正面に配置されたインスツルメントパネルへの表示、あるいはステアリングホイールに走行車線を維持する方向の回転力あるいは振動を作用させるといった態様によっても行うことができる。
なお、先行車8の運転者は、例えばスイッチの操作によって車線逸脱警報装置82を非作動にすることもできる。車線逸脱警報装置82が非作動状態であれば、先行車8が車線を逸脱しても運転者に警報が発せられない。
車線逸脱警報装置82の作動中に先行車8が急操舵等の緊急運転操作を行い、その結果として車線を逸脱したとき、自車両1が車車間通信によって先行車8から得られる情報には、例えばGPS(Global Positioning System)によって得られた先行車8の現在位置の情報や、車線逸脱警報装置82が警報を発したことを示す情報などが含まれる。制御装置3は、先行車8から得られる情報に車線逸脱警報装置82が警報を発したことを示す情報が含まれるとき、電磁コイル263への電流供給を遮断し、メインクラッチ24の締結力を低減させる。なお、この際、電磁コイル263への電流供給を必ずしもゼロとしなくともよく、電磁コイル263に供給する励磁電流の電流値を自車両1の回頭性を高める効果が得られる程度の所定の低い値に設定してもよい。
制御装置3は、先行車8で緊急運転操作がなされた際にメインクラッチ24の締結力を低減させるための構成として、進行方向前方を走行する先行車の車両状態の情報を取得する先行車状態情報取得手段31と、先行車に緊急運転操作が発生したことを示す情報が取得した車両状態の情報に含まれるか否かを判定する判定手段32と、判定手段32によって緊急運転操作が発生したことを示す情報が含まれると判定されたとき、メインクラッチ24の締結力を低減させるクラッチ制御手段33とを備えている。
先行車状態情報取得手段31、判定手段32、及びクラッチ制御手段33の機能は、例えば制御装置3のCPU(演算処理装置)が予め記憶されたプログラムを実行することにより実現される。本実施の形態では、車車間通信によって得られる先行車の情報に当該先行車の車線逸脱警報装置が警報を発したことを示す情報が含まれる場合に、判定手段32が先行車に緊急運転操作が発生したと判定する。
図4は、制御装置3が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。制御装置3は、この一連の処理を所定の制御周期ごとに繰り返し実行する。
このフローチャートにおいて、制御装置3はまず、車車間通信によって先行車の車両状態の情報を取得する(ステップS1)。次に、制御装置3は、ステップS1で取得した情報に車線逸脱警報装置が警報を発したことを示す情報が含まれるか否かを判定する(ステップS2)。このステップS2の判定の結果が正(Yes)の場合、制御装置3は、自車両1が4輪駆動状態であるか否かを判定する(ステップS3)。このステップS3の判定の結果が正(Yes)である場合、制御装置3は、駆動力伝達装置2の電磁コイル263への電流供給を遮断する(ステップS4)。ステップS2又はS3の判定が否(No)の場合は、ステップS4の動作はなされない。
なお、ステップS1の処理は、判定手段32によって行われる処理であり、ステップS2の処理は、判定手段32によって行われる処理である。また、ステップS3,S4の処理は、クラッチ制御手段33によって行われる処理である。
このように、本実施の形態では、先行車で急操舵等の緊急運転操作がなされたときに駆動力伝達装置2のメインクラッチ24の締結力を低減する。すなわち、自車両1の運転者からは見えない障害物等の回避対象についても、予め駆動状態を2輪駆動状態にして回頭性を高めておくことができるので、緊急回避性を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の駆動力伝達装置2に替えて、駆動力配分装置5が4輪駆動車1Aに搭載されている。
図5は、第2の実施の形態に係る4輪駆動車1Aの概略の構成例を示す概略構成図である。図5及び後述する図6において、第1の実施の形態に係る4輪駆動車1と共通する部材等については、図1に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下の説明において、4輪駆動車1Aを自車両1Aともいう。
駆動配分装置5は、入力ギヤ50と、入力ギヤ50に噛み合うリングギヤ511を有する駆動軸51と、リングギヤ511と一体に回転する第1及び第2のクラッチハウジング52,53と、第1及び第2のクラッチハウジング52,53にそれぞれ収容された第1及び第2の多板クラッチ54,55と、第1及び第2の多板クラッチ54,55を介して駆動力が伝達される第1及び第2の出力シャフト56,57と、第1及び第2の多板クラッチ54,55を押圧する第1及び第2のアクチュエータ58,59とを有している。
入力ギヤ50には、プロペラシャフト15からエンジン11の駆動力が伝達され、この駆動力が駆動軸51に伝達される。第1の多板クラッチ54及び第2の多板クラッチ55は、本発明のクラッチの一態様である。第1のクラッチハウジング52及び第1の出力シャフト56、ならびに第2のクラッチハウジング53及び第2の出力シャフト57は、それぞれ本発明の回転部材の一態様である。
駆動軸51ならびに第1及び第2のクラッチハウジング52,53は、車幅方向に並んで配置され、車幅方向に沿った回転軸を中心として一体に回転する。第1の出力シャフト56は、ドライブシャフト181によって左後輪193に連結され、第2の出力シャフト57は、ドライブシャフト182によって右後輪194に連結されている。
第1の多板クラッチ54は、第1のクラッチハウジング52と一体に回転する複数のアウタクラッチプレート541、及び第1の出力シャフト56と一体に回転する複数のインナクラッチプレート542からなり、第1のアクチュエータ58の押圧力を受けてアウタクラッチプレート541とインナクラッチプレート542とが摩擦接触して駆動力を伝達する。
同様に、第2の多板クラッチ55は、第2のクラッチハウジング53と一体に回転する複数のアウタクラッチプレート551、及び第2の出力シャフト57と一体に回転する複数のインナクラッチプレート552からなり、第2のアクチュエータ59の押圧力を受けてアウタクラッチプレート551とインナクラッチプレート552とが摩擦接触して駆動力を伝達する。
第1及び第2のアクチュエータ58,59は、例えば第1の実施の形態と同様に、スラスト力を発生させるカム機構と、制御装置3から電流の供給を受けてカム機構を作動させる電磁クラッチ機構とによって構成される。第1のアクチュエータ58は、制御装置3から供給される電流に応じた押圧力で第1の多板クラッチ54を押圧し、第2のアクチュエータ58は、制御装置3から供給される電流に応じた押圧力で第2の多板クラッチ55を押圧する。
また、第1及び第2のアクチュエータ58,59として、例えば電動モータによって駆動される油圧ポンプから吐出される作動油を電磁制御弁を介してシリンダに供給し、このシリンダの油圧を受けて動作するピストンによって第1及び第2の多板クラッチ54,55を押圧する油圧ユニットを用いてもよい。この場合、電磁制御弁の弁開度が制御装置3から供給される電流によって変化し、第1及び第2の多板クラッチ54,55を押圧する押圧力が弁開度に応じて変化する。
制御装置3は、第1の実施の形態と同様、先行車状態情報取得手段31と、判定手段32と、クラッチ制御手段33とを有している。また、本実施の形態では、先行車状態情報取得手段31によって先行車から得られた情報に、緊急運転操作が発生したことを示す情報が含まれると判定手段32によって判定されたとき、クラッチ制御手段33が第1及び第2の多板クラッチ54,55の締結力を低減させる。これにより、4輪駆動車1Bの回頭性が高くなり、緊急回避性が向上する。
つまり、第1及び第2の多板クラッチ54,55が締結されていると、左後輪193と右後輪194の差動回転、ならびに左右前輪191,192と左右後輪193,194の差動回転が抑制されるので、直進安定性が高くなる一方、4輪駆動車1Bの回頭性が低下するが、本実施の形態では、先行車で緊急回避操作がなされたときに前もって、すなわち自車両1Aが回避対象に近づく前に、第1及び第2の多板クラッチ54,55の締結力を低減させて回頭性を高めるので、緊急回避性を向上させることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図6を参照して説明する。図6は、第3の実施の形態に係る4輪駆動車1Bの概略の構成例を示す構成図である。以下、4輪駆動車1Bを自車両1Bともいう。
第1及び第2の実施の形態では、4輪駆動車1,1Aが単一の駆動源としてのエンジン11の駆動力を左右前輪191,192及び左右後輪193,194に配分するように構成された場合について説明したが、本実施の形態に係る4輪駆動車1Bは、第1の駆動源としてのエンジン11によって左右前輪191,192を駆動し、第2の駆動源としての電動モータ6によって左右後輪193,194を駆動する。また、4輪駆動車1Bは、第2の実施の形態で説明した構成の駆動力配分装置5を備えており、この駆動力配分装置5が電動モータ6の駆動力を左右前輪191,192に伝達する。
電動モータ6の出力軸61の回転は、減速機構7によって減速されて駆動力配分装置5の駆動軸51に伝達される。減速機構7は、電動モータ6の出力軸61に連結されたピニオンギヤ71と、ピニオンギヤ71に噛み合う大径ギヤ72と、大径ギヤ72と一体に回転する小径ギヤ73とを有し、小径ギヤ73が駆動軸51のリングギヤ511に噛み合わされている。電動モータ6は、例えば運転者のアクセル操作に応じてモータ電流を出力する図略の駆動制御装置によって制御される。
制御装置3は、第1及び第2の実施の形態と同様に、先行車状態情報取得手段31と、判定手段32と、クラッチ制御手段33とを有している。クラッチ制御手段33は、先行車状態情報取得手段31によって先行車から得られた情報に緊急運転操作が発生したことを示す情報が含まれると判定手段32によって判定されたとき、第1及び第2の多板クラッチ54,55の締結力を低減させる。これにより、左後輪193と右後輪194とが差動回転しやすくなり、回頭性が高められて緊急回避性が向上する。
(付記)
以上、本発明を第1乃至第3の実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記第1乃至第3の実施の形態では、左右前輪191,192が主駆動輪であり、左右後輪193,194が補助駆動輪である場合について説明したが、これとは逆に、左右前輪を主駆動輪とし、左右後輪を補助駆動輪としてもよい。
1,1A,1B…4輪駆動車(自車両) 11…エンジン(駆動源)
191,192…左右前輪 193,194…左右後輪
24…多板クラッチ 3…制御装置
4…車車間通信装置 54,55…第1及び第2の多板クラッチ
6…電動モータ(駆動源) 8…先行車
81…車車間通信装置

Claims (3)

  1. 駆動源の駆動力により左右前輪及び左右後輪を駆動可能な4輪駆動車に搭載され、駆動力を伝達する回転部材間に設けられたクラッチを制御する制御装置であって、
    前記クラッチが締結された状態での走行中に進行方向前方を走行する先行車で緊急運転操作がなされたとき、前記クラッチの締結力を低減する、
    4輪駆動車の制御装置。
  2. 前記緊急運転操作として急操舵がなされたとき、前記クラッチの締結力を低減する、
    請求項1に記載の4輪駆動車の制御装置。
  3. 車車間通信により前記先行車から取得した情報に、前記先行車の車線逸脱警報装置が作動した情報が含まれるとき、前記緊急運転操作がなされたと判定して前記クラッチの締結力を低減する、
    請求項1又は2に記載の4輪駆動車の制御装置。
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