JP2021118446A - 導波路装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】異種金属からなる導波路と回路基板との接続箇所において位差腐食の発生を防止して安定した製品特性を取得し得る構造を提供する。【解決手段】、導波路装置は、第1の面および第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、少なくとも基板の第1の面側に配置されるグランド導体と、基板の第1の面側に配置されるマイクロストリップラインと、第1の面に対向する導電性表面を有し、導電性表面の少なくとも一部がグランド導体の一部に接触する導電部材と、マイクロストリップラインに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材とを備える。導波部材の導波面に垂直な方向から見て、導波部材の前記導波面の少なくとも一部と前記マイクロストリップラインの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備える。導波面とマイクロストリップラインとの間に、隙間または誘電体層がある。【選択図】図1
Description
本開示は、導波路装置に関する。
レーダシステムで用いられるマイクロ波(ミリ波を含む)は、回路基板に実装された集積回路(以下本明細書では「マイクロ波IC」と称する。)によって生成される。マイクロ波ICは、製法に応じて「MIC」(Microwave Integrated Circuit)、「MMIC」(Monolithic Microwave Integrated Circuit、又はMicrowave and Millimeter wave Integrated Circuit)とも呼ばれる。マイクロ波ICは、送信する信号波のもととなる電気信号を生成し、マイクロ波ICの信号端子に出力する。電気信号は、ボンディングワイヤ等の導体線、および、後述する基板上の導波路を経て、変換部に至る。変換部は、当該導波路と導波管との接続部、つまり異なる導波路の境界部に設けられる。
変換部は高周波信号発生部を含む。「高周波信号発生部」とは、マイクロ波ICの信号端子から導線で導かれた電気信号を、導波管の直前で高周波電磁界に変換するための構成を有する部位をいう。高周波信号発生部によって変換された電磁波は導波管に導かれる。つまり、導波管は、導波路を通じて回路基板上のマイクロ波ICに接続される。
ここで、導波管が、例えば、アルミニウム(Al)またはマグネシウム製(Mg)であるのに対し、回路基板のパターンが、例えば、銅箔で、パターン表面が金メッキ加工されている場合、該導波管と該パターンとの接続箇所において異種金属が接触することとなる。そのため、接触箇所周辺で結露等によって水滴がつくと、微小なものであっても、腐食電位の差に起因するガルバニック腐食が生ずる可能性がある。
例えば、下記の特許文献1には、導波管と誘電体基板の表面の導電体層との間に誘電体が挿入された接続装置が開示されている。当該装置によれば、導波管のフランジ形状や固定機構の位置を調整することで異種金属が接触することによる腐食を防止することが可能となっている。
また、近年では、電磁波の伝搬損失が小さい導波路構造としてWRG構造(以下、WRG:Waffle−iron Ridge waveGuideと称する場合がある。)が存在する(特許文献2)。WRG構造は、導電部材、導波部材、および人工磁気導体で構成される。WRG構造についても、回路基板上のMMIC(高周波集積回路)と接続する必要がある。WRG構造においては、例えばアルミニウム(Al)またはマグネシウム製(Mg)であるのに対し、回路基板のパターンには銅箔、または金メッキ加工が施されており、接続箇所で異種金属同士が接触する事になる。
上記特許文献1の接続装置によれば、異種金属同士の接触に起因する電食を防止しうるが、接続装置に用いられる導波管がステップ状構造のものとなっている。しかしながら、リッジ導波管やWRG構造を持つ導波路においては、依然として異種金属からなる導波路と回路基板との接続箇所において電位差腐食を防ぐことができない上、製品特性が安定しないという問題が生じ得る。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、異種金属からなる導波路と回路基板との接続箇所において、電位差腐食の発生を防止して安定した製品特性を取得し得る構造を提供することを目的とする。
本開示の一態様による導波路装置は、第1の面および第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、少なくとも基板の第2の面側に配置されるグランド導体と、基板の第1の面側に配置されるマイクロストリップラインと、第1の面に対向する導電性表面を有し、導電性表面の少なくとも一部がグランド導体の一部に接触する導電部材と、導電部材から突出するリッジ状の導波部材であって、マイクロストリップラインに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材と、を備え、導波部材の導波面に垂直な方向から見て、導波部材の前記導波面の少なくとも一部と前記マイクロストリップラインの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備え、導波部材の導波面とマイクロストリップラインとの間に、隙間または誘電体層があり、導波部材の導波面に沿って導波路が規定され、導波路は、マイクロストリップラインに接続される。
本開示の他の態様による導波路装置は、第1の面および第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、少なくとも基板の第2の面側に配置されるグランド導体と、基板の前記第1の面側に配置されるマイクロストリップラインと、第1の面に対向する導電性表面を有する板状の導電部材と、導電部材から突出するリッジ状の導波部材であって、マイクロストリップラインに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材と、導波部材の両側に配置される人工磁気導体と、を備え、導波部材の前記導波面に垂直な方向から見て、導波部材の導波面の少なくとも一部と、マイクロストリップラインの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備え、導波部材の導波面とマイクロストリップラインとの間に、隙間または誘電体層があり、導波部材の導波面に沿って導波路が規定され、導波路は、マイクロストリップラインに接続される。
本発明によれば、異種金属からなる導波路と回路基板との接続箇所において、電位差腐食の発生を防止して製品特性を安定させることができる。
図1〜図11を参照して、本発明の導波路装置の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX、Y、Z方向を示すXYZ座標を設定する。一例として、X軸とY軸とを含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。また、本明細書では、Y方向を第1の方向とし、X方向を第2の方向として、説明するものとする。
<第1の実施形態>
図1に示す導波路装置100は、導波路を有する1または2以上の導波路モジュールを有する装置であり、導波路が基板に電気的に接続される導波路装置の第1例である。高周波電磁界は、Y軸方向に平行に、換言するとXZ平面に垂直な方向に沿って伝搬する。
図1に示す導波路装置100は、導波路を有する1または2以上の導波路モジュールを有する装置であり、導波路が基板に電気的に接続される導波路装置の第1例である。高周波電磁界は、Y軸方向に平行に、換言するとXZ平面に垂直な方向に沿って伝搬する。
導波路装置100の導波路モジュールは、図2Aに示すように、第1の面および第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、少なくとも基板の第2の面側に配置されるグランド導体と、基板の第1の面側に配置されるマイクロストリップライン(MSL)と、第1の面に対向する導電性表面を有し、導電性表面の少なくとも一部がグランド導体の一部に接触する導電部材と、導電部材から突出するリッジ状の導波部材であって、MSLに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材(リッジ)とを備える。
「導波路モジュール」は、基板上に導波路を有するひとまとまりの構造体を言う。「導波路モジュール」は製造され、製品として流通し得る。基板は実装基板、IC実装基板、誘電体基板であり得る。
「IC実装基板」は、マイクロ波ICが搭載された状態の実装基板を意味し、構成要素として、「マイクロ波IC」と「実装基板」とを備えている。単なる「実装基板」は、実装用の基板を意味し、マイクロ波ICが搭載されていない状態にある。
本実施形態では、基板の第1の面が、上側を向いた+Z方向側の面であり、基板の第2の面は、下側を向いた−Z方向側の面である。本実施形態では、第1の面、および第2の面にそれぞれグランド導体があって、それがビアで接続されている。第2の面の側のグランド導体から第1の面まで達するビアを複数個並べ、導波管の端面(すなわち導電部材の導電性表面)に接触させる構成であってもよい。その場合は、第1の面側のグランド導体は必ずしも備える必要はない。また、基板の第1の面には、ストリップ状の導体が配置されている。このストリップ状導体と、これに対向するグランド導体とがMSLを構成する。本明細書において、ストリップ状導体そのものを「マイクロストリップライン」またはMSLと称することがある。MSLは、グランド導体とストリップ状の導体との間に導波路として形成される。そして、MSLに沿って高周波電磁界が伝搬される。基板のパターンは、例えば、銅箔で形成される。パターンの表面には、金メッキ加工が施されている。
導電部材は、例えば、リッジ導波管を含む。リッジ導波管は、第1の方向に延びる直方体形状を有しており、基板を覆うように配置されている。つまり、リッジ導波管の端面(導電性表面)がグランド導体を介して基板の第1の面に配置されている。
リッジ導波管のY方向における端部には、直方体形状の開口部が形成されている。図3に示すように、リッジ導波管の開口部は、リッジ導波管内の空間に繋がっている。リッジ導波管内の空間には、基板、グランド導体、MSL、及び導波部材(リッジ)が位置している。
リッジ導波管は、導波管内の導波路に接続する貫通孔(ポートとも称する)を備えている。貫通孔は、XY方向と直交するZ方向に延び、かつ、リッジ導波管の上端面から下端面にかけて貫通している。貫通孔の形状は、図4Aに示すように、例えば、U字形状を有しているが、かかる形状に限定されるものではない。貫通孔は不図示の電子回路に接続される。そのような電子回路は、送信回路または受信回路として機能する。電子回路は、例えば、ミリ波を生成するMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)などのマイクロ波集積回路を含み得る。電子回路は、マイクロ波集積回路に加えて、他の回路、例えば、信号処理回路をさらに含んでいてもよいし、通信回路を含んでいてもよい。
リッジ導波管およびリッジは、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などの金属材料、あるいはこれら金属を最多の成分とする合金から構成される。
図4Aに示すように、導波路装置100は、リッジの導波面に垂直な方向から見て、リッジの導波面の少なくとも一部とMSLの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備える。ここで、「重複部分」とは、物理的に接触しておらず、リッジの導波面に垂直な方向から見て、リッジとMSLとが、少なくとも一部において互いに対向して重なって位置している部分をいう。重複部分は、貫通孔に繋がっている。
MSLは、端部を含む部分に、第1の方向と交差する方向に幅が拡がる拡幅部を備える。この拡幅部の一部は重複部分と重なる。すなわち、リッジの導波面に垂直な方向から見て、拡幅部の直上にリッジの端部が位置している。リッジの端部が、拡幅部の基部に達していても良い。なお、本明細書において“リッジの端部”とは、リッジの長さ方向における端を意味する。この場合、拡幅部は全体がリッジの導波面と重なる。このように伝送線路を構成しても、高周波電磁界は伝搬可能である。但し、第1の方向における拡幅部の途中にリッジの端部を位置させた方が、MSLからリッジへの高周波電磁波の伝搬は円滑になる。
第1の方向と交差する方向における拡幅部の幅は、少なくとも重複部分における導波部材の幅よりも大きいことが望ましい。
図4Bは、拡幅部および重複部分の寸法の一例を示す図である。第1の方向における拡幅部の長さは、マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長の1/4よりも長く、空気中における電磁波の波長よりも短い値に設定され得る。但し、空気中における電磁波の波長の1/4よりも長い値が好適であり得る。マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長をλとすると、第1の方向における重複部分の長さは、例えば(1/8)λ以上(3/8)λ以下に設定され得る。このように、当該重複部分の長さは、λ/4に近い値に設定され得る。そのような条件を満たすように拡幅部および重複部分を設計することにより、伝送効率を向上させることができる。図4Bには、拡幅部の長さが1.2mm、重複部分の長さが0.7mm(=約λ/4)の例が示されている。拡幅部および重複部分の長さはこの寸法に限定されない。
導波路装置100は、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に隙間を備える。図2A及び図3の例では、リッジの導波面とMSLとの間に僅かな隙間が設けられている。隙間は、伝搬する高周波電磁界の波長に応じて決定され得る。例えば、ミリ波の波長を有する高周波電磁界であれば、隙間は10〜20マイクロメートル程度であり得る。隙間は、少なくとも重複部分に設けられることが望ましい。隙間の大きさは、例えば重複部分における導波部材の幅の10分の1よりも小さい。
また、導波路装置100は、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に誘電体層を備えるようにしてもよい。誘電体層は、例えばレジスト材料から構成される絶縁層であり得る。レジスト材料は特に限定されない。誘電体層の厚みは、10〜20マイクロメートル程度であり得る。誘電体層は、少なくとも重複部分に設けられることが望ましい。
一般的には、伝送効率は、2つの導波面が物理的に接触している場合が最も高く、隙間が開いている場合には低下する。しかし、導波路装置が上記の構成を採る事で、隙間が空いていても、伝送効率の低下幅は縮小する。ここで、リッジ導波管と基板とが異なる金属材料で構成されているため、2つの導波面の間に隙間またはレジスト層を設けることなく、物理的に接触させると、異種金属同士の接触に起因する電位差腐食が生じ得る。そこで、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に隙間または誘電体層を設けることによって、互いに異種の金属からなる2つの導波面を接触させることなく、高周波電磁波を伝搬させる事が可能である。これにより、導波面とMSLとの間で直流電流が流れることが防止されるため、上記電位差腐食の発生を防止することができる。
図2Bは、本実施形態の変形例を示している。この変形例では、導電部材の導電性表面と第1の面側のグランド導体との間に誘電体によるレジスト層が介在する。レジスト層に代えて、隙間を設けてもよい。このような構成によれば、導電部材とグランド導体との間でも直流電流が流れることを抑制できるため、当該箇所で生じ得るガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
<第2の実施形態>
図5に示す導波路装置200は、ワッフルアイアン構造を有する導波路(WRG導波路)を有する1または2以上の導波路モジュールを有する装置であり、WRG導波路が基板に電気的に接続される装置である。高周波電磁界は、Y軸方向に平行に、換言するとXZ平面に垂直な方向に沿って伝搬する。
図5に示す導波路装置200は、ワッフルアイアン構造を有する導波路(WRG導波路)を有する1または2以上の導波路モジュールを有する装置であり、WRG導波路が基板に電気的に接続される装置である。高周波電磁界は、Y軸方向に平行に、換言するとXZ平面に垂直な方向に沿って伝搬する。
導波路装置200の導波路モジュールは、図6に示すように、第1の面および第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、少なくとも基板の第2の面に配置されるグランド導体と、基板の第1の面側に配置されるマイクロストリップライン(MSL)と、第1の面に対向する導電性表面を有する板状の導電部材と、リッジ状の導波部材であって、MSLに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材(リッジ)と、導波部材の両側に配置される人工磁気導体とを備える。
導電部材は、例えば、板形状の導電プレートで構成される。導電部材およびリッジは、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などの金属材料、あるいはこれら金属を最多の成分とする合金から構成される。導電部材は、例えば金属板を加工して成型される。
導電部材は、WRG導波路に繋がる貫通孔(ポートとも称する)を備えている(不図示)。貫通孔は、XY方向と直交するZ方向に延び、かつ、導電部材の上端面から下端面にかけて貫通している。貫通孔の形状は、例えば、U字形状を有しているが、かかる形状に限定されるものではない。貫通孔は、第1例と同様に、不図示の電子回路に接続される。そのような電子回路は、送信回路または受信回路として機能する。電子回路の構成は、第1例と同様である。
人工磁気導体は、複数の導電性ロッドを備える。各導電性ロッドは、導電部材の導電性表面に接続された基部と、基板の第1の面側のグランド導体に対向する先端部とを有する。人工磁気導体によって高周波電磁界の漏洩が抑止される。つまり、電磁波(信号波)は人工磁気導体と導電部材の導電性表面との間の空間を伝搬できない。このため、導波面と導電部材の導電性表面との間の空間にWRG導波路が形成され、このWRG導波路を電磁波が伝搬する。なお、導電部材、複数の導電性ロッド、およびリッジは、連続した単一構造体の一部であってもよい。
図7に示すように、導電性ロッドは導電部材から−Z方向に伸びている。図6の例では、複数の導電性ロッドの長さは概ね同じである。導電性ロッドのグランド導体側の先端部から、導電部材の導電性表面までの距離は、λm/2未満である。ここでλmは、MSLおよびリッジに沿って伝搬する電磁波の周波数帯域における最高周波数の自由空間波長である。
図8及び図9に示すように、導波路装置200は、第1の実施形態と同様に、リッジの導波面に対して垂直方向から見て、リッジの導波面の少なくとも一部とMSLの端部とが重なり合う重複部分を備える。重複部分は、貫通孔に繋がっている。
MSLの端部には、第1の方向と交差する方向に幅が拡がる拡幅部を備える。この拡幅部の一部は重複部分となっている。すなわち、リッジの導波面に対して垂直な方向から見て、拡幅部の直上にリッジ端部が位置している。リッジの端部が、拡幅部の基部に達していても良い。この場合、拡幅部は全体がリッジの導波面と重なる。このように伝送線路を構成しても、高周波電磁界は伝搬可能である。但し、第1の方向における拡幅部の途中にリッジの端部を位置させた方が、MSLからリッジへの高周波電磁波の伝搬は円滑になる。
第1の方向と交差する方向における拡幅部の幅は、少なくとも重複部分における導波部材の幅よりも大きいことが望ましい。
導波路装置200は、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に隙間を備える。図6及び図7の例では、リッジの導波面とMSLとの間に僅かな隙間が設けられている。隙間は、伝搬する高周波電磁界の波長に応じて決定し得る。例えば、ミリ波の波長を有する高周波電磁界であれば、隙間は10〜20マイクロメートル程度であり得る。隙間は、少なくとも重複部分に設けられることが望ましい。
また、導波路装置200は、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に誘電体層を備えるようにしてもよい。誘電体層は、例えばレジスト材料から構成される絶縁層であり得る。レジスト材料は特に限定されない。誘電体層の厚みは、10〜20マイクロメートル程度であり得る。誘電体層は、少なくとも重複部分に設けられることが望ましい。
ここで、リッジと、基板とが異なる金属材料で構成されているため、2つの導波面の間に隙間またはレジスト層を設けることなく、物理的に接触させると、異種金属同士の接触に起因する電位差腐食が生じ得る。そこで、リッジの導波面とMSLとの間の少なくとも一部に隙間または誘電体層を設けることによって、2つの導波面の間を離間させることができる。これにより、電位差腐食の発生を防止し得る。
<他の構成例>
図10及び図11に示す導波路装置300は、導波路装置の第3例である。導波路装置300の導波路モジュールは、基板と、グランド導体と、基板の第1の面側に配置されるMSLと、導波管とを備える。導波管は、Z方向に延びる角柱形状を有しており、基板上の一部を覆うように配置されている。つまり、導波管の端面(導電性表面)がグランド導体を介して基板の第1の面に配置されている。
図10及び図11に示す導波路装置300は、導波路装置の第3例である。導波路装置300の導波路モジュールは、基板と、グランド導体と、基板の第1の面側に配置されるMSLと、導波管とを備える。導波管は、Z方向に延びる角柱形状を有しており、基板上の一部を覆うように配置されている。つまり、導波管の端面(導電性表面)がグランド導体を介して基板の第1の面に配置されている。
導波管のY方向端部には、直方体形状の開口部が形成されている。図11に示すように、導波管の開口部は、導波管内の空間に繋がっている。導波管内の空間には、基板、グランド導体、MSLが位置している。
導波管は、導波管内の導波路に繋がる貫通孔(ポートとも称する)を備えている。貫通孔は、XY方向と直交するZ方向に延び、かつ、導波管の上端面から下端面にかけて貫通している。貫通孔の形状は、例えば、I字形状を有しているが、かかる形状に限定されるものではない。貫通孔は、第1例と同様に、不図示の電子回路に接続される。そのような電子回路は、送信回路または受信回路として機能する。電子回路の構成は、第1例と同様である。
導波管は、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などの金属材料、あるいはこれら金属を最多の成分とする合金から構成される。
導波路装置300は、導波管の端面とグランド導体との間の少なくとも一部に隙間または誘電体層を備える。図11の例では、導波管の端面とグランド導体との間に僅かな厚みの誘電体層(レジスト層)が設けられている。誘電体層の厚みは、10〜20マイクロメートル程度であり得る。これにより、第1例及び第2例と同様に、電位差腐食の発生を防止し得る。
(WRG導波路の構成例)
次に、本開示の実施形態において用いられるワッフルアイアンリッジ導波路(WRG)の基本的な構成を説明する。
次に、本開示の実施形態において用いられるワッフルアイアンリッジ導波路(WRG)の基本的な構成を説明する。
前述の特許文献2に開示されているリッジ導波路は、人工磁気導体として機能するワッフルアイアン構造中に設けられている。このような人工磁気導体を、本開示に基づき利用するリッジ導波路は、マイクロ波またはミリ波帯において、損失の低いアンテナ給電路を実現できる。また、このようなリッジ導波路を利用することにより、アンテナ素子を高密度に配置することが可能である。このようなリッジ導波路を、本明細書において、ワッフルアイアンリッジ導波路(WRG)と称することがある。以下、ワッフルアイアンリッジ導波路の基本的な構成および動作の例を説明する。
人工磁気導体は、自然界には存在しない完全磁気導体(PMC: Perfect Magnetic Conductor)の性質を人工的に実現した構造体である。完全磁気導体は、「表面における磁界の接線成分がゼロになる」という性質を有している。これは、完全導体(PEC: Perfect Electric Conductor)の性質、すなわち、「表面における電界の接線成分がゼロになる」という性質とは反対の性質である。完全磁気導体は、自然界には存在しないが、例えば複数の導電性ロッドの配列のような人工的な構造によって実現され得る。人工磁気導体は、その構造によって定まる特定の周波数帯域において、完全磁気導体として機能する。人工磁気導体は、特定の周波数帯域(伝搬阻止帯域)に含まれる周波数を有する電磁波が人工磁気導体の表面に沿って伝搬することを抑制または阻止する。このため、人工磁気導体の表面は、高インピーダンス面と呼ばれることがある。
図12は、WRG構造を備える導波装置の構成例を模式的に示す斜視図である。図示されている導波装置100は、対向して平行に配置された板形状(プレート状)の導電部材110および120を備えている。導電部材120には複数の導電性ロッド124が配列されている。
図13Aは、導波装置100のXZ面に平行な断面の構成を模式的に示す図である。図13Aに示されるように、導電部材110は、導電部材120に対向する側に導電性表面110bを有している。導電性表面110bは、導電性ロッド124の軸方向(Z方向)に直交する平面(XY面に平行な平面)に沿って二次元的に拡がっている。この例における導電性表面110bは平滑な平面であるが、後述するように、導電性表面110bは平面である必要は無い。
図14は、わかり易さのため、導電部材110と導電部材120との間隔を極端に離した状態にある導波装置100を模式的に示す斜視図である。現実の導波装置100では、図12および図13Aに示したように、導電部材110と導電部材120との間隔は狭く、導電部材110は、導電部材120の全ての導電性ロッド124を覆うように配置されている。
図12から図14は、導波装置100の一部分のみを示している。導電部材110、120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124は、実際には、図示されている部分の外側にも拡がって存在する。導波部材122の端部には、前述のように、電磁波が外部空間に漏洩することを防止するチョーク構造が設けられる。チョーク構造は、例えば、導波部材122の端部に隣接して配置された導電性ロッドの列を含む。
再び図13Aを参照する。導電部材120上に配列された複数の導電性ロッド124は、それぞれ、導電性表面110bに対向する先端部124aを有している。図示されている例において、複数の導電性ロッド124の先端部124aは同一または実質的に同一の平面上にある。この平面は人工磁気導体の表面125を形成している。導電性ロッド124は、その全体が導電性を有している必要はなく、ロッド状構造物の少なくとも上面および側面に沿って拡がる導電層があればよい。この導電層はロッド状構造物の表層に位置してもよいが、表層が絶縁塗装または樹脂層からなり、ロッド状構造物の表面には導電層が存在していなくてもよい。また、導電部材120は、複数の導電性ロッド124を支持して人工磁気導体を実現できれば、その全体が導電性を有している必要はない。導電部材120の表面のうち、複数の導電性ロッド124が配列されている側の面120aが導電性を有し、隣接する複数の導電性ロッド124の表面が導電体によって電気的に接続されていればよい。導電部材120の導電性を有する層は、絶縁塗装や樹脂層で覆われていてもよい。言い換えると、導電部材120および複数の導電性ロッド124の組み合わせの全体は、導電部材110の導電性表面110bに対向する凹凸状の導電層を有していればよい。
導電部材120上には、複数の導電性ロッド124の間にリッジ状の導波部材122が配置されている。より詳細には、導波部材122の両側にそれぞれ人工磁気導体が位置しており、導波部材122は両側の人工磁気導体によって挟まれている。図14からわかるように、この例における導波部材122は、導電部材120に支持され、Y方向に直線的に延びている。図示されている例において、導波部材122は、導電性ロッド124の高さおよび幅と同一の高さおよび幅を有している。後述するように、導波部材122の高さおよび幅は、導電性ロッド124の高さおよび幅とは異なる値を有していてもよい。導波部材122は、導電性ロッド124とは異なり、導電性表面110bに沿って電磁波を案内する方向(この例ではY方向)に延びている。導波部材122も、全体が導電性を有している必要は無く、導電部材110の導電性表面110bに対向する導電性の導波面122aを有していればよい。導電部材120、複数の導電性ロッド124、および導波部材122は、連続した単一構造体の一部であってもよい。さらに、導電部材110も、この単一構造体の一部であってもよい。
導波部材122の両側において、各人工磁気導体の表面125と導電部材110の導電性表面110bとの間の空間は、特定周波数帯域内の周波数を有する電磁波を伝搬させない。そのような周波数帯域は「禁止帯域」と呼ばれる。導波装置100内を伝搬する電磁波(信号波)の周波数(以下、「動作周波数」と称することがある。)が禁止帯域に含まれるように人工磁気導体は設計される。禁止帯域は、導電性ロッド124の高さ、すなわち、隣接する複数の導電性ロッド124の間に形成される溝の深さ、導電性ロッド124の幅、配置間隔、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間隙の大きさによって調整され得る。
次に、図15を参照しながら、各部材の寸法、形状、配置等の例を説明する。
図15は、図13Aに示す構造における各部材の寸法の範囲の例を示す図である。導波装置は、所定の帯域(「動作周波数帯域」と称する。)の電磁波の送信および受信の少なくとも一方に用いられる。本明細書において、導電部材110の導電性表面110bと導波部材122の導波面122aとの間の導波路を伝搬する電磁波(信号波)の自由空間における波長の代表値(例えば、動作周波数帯域の中心周波数に対応する中心波長)をλoとする。また、動作周波数帯域における最高周波数の電磁波の自由空間における波長をλmとする。各導電性ロッド124のうち、導電部材120に接している方の端の部分を「基部」と称する。図15に示すように、各導電性ロッド124は、先端部124aと基部124bとを有する。各部材の寸法、形状、配置等の例は、以下のとおりである。
(1)導電性ロッドの幅
導電性ロッド124の幅(X方向およびY方向のサイズ)は、λm/2未満に設定され得る。この範囲内であれば、X方向およびY方向における最低次の共振の発生を防ぐことができる。なお、XおよびY方向だけでなくXY断面の対角方向でも共振が起こる可能性があるため、導電性ロッド124のXY断面の対角線の長さもλm/2未満であることが好ましい。ロッドの幅および対角線の長さの下限値は、工法的に作製できる最小の長さであり、特に限定されない。
導電性ロッド124の幅(X方向およびY方向のサイズ)は、λm/2未満に設定され得る。この範囲内であれば、X方向およびY方向における最低次の共振の発生を防ぐことができる。なお、XおよびY方向だけでなくXY断面の対角方向でも共振が起こる可能性があるため、導電性ロッド124のXY断面の対角線の長さもλm/2未満であることが好ましい。ロッドの幅および対角線の長さの下限値は、工法的に作製できる最小の長さであり、特に限定されない。
(2)導電性ロッドの基部から導電部材110の導電性表面までの距離
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110bまでの距離は、導電性ロッド124の高さよりも長く、かつλm/2未満に設定され得る。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110bとの間において共振が生じ、信号波の閉じ込め効果が失われる。
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110bまでの距離は、導電性ロッド124の高さよりも長く、かつλm/2未満に設定され得る。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110bとの間において共振が生じ、信号波の閉じ込め効果が失われる。
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110bまでの距離は、導電部材110と導電部材120との間隔に相当する。例えば導波路をミリ波帯である76.5±0.5GHzの信号波が伝搬する場合、信号波の波長は、3.8934mmから3.9446mmの範囲内である。したがって、この場合、λmは3.8934mmとなるので、導電部材110と導電部材120との間隔は、3.8934mmの半分よりも小さく設計される。導電部材110と導電部材120とが、このような狭い間隔を実現するように対向して配置されていれば、導電部材110と導電部材120とが厳密に平行である必要はない。また、導電部材110と導電部材120との間隔がλm/2未満であれば、導電部材110および/または導電部材120の全体または一部が曲面形状を有していてもよい。他方、導電部材110、120の平面形状(XY面に垂直に投影した領域の形状)および平面サイズ(XY面に垂直に投影した領域のサイズ)は、用途に応じて任意に設計され得る。
図13Aに示される例において、導電性表面120aは平面であるが、本開示の実施形態はこれに限られない。例えば、図13Bに示すように、導電性表面120aは断面がU字またはV字に近い形状である面の底部であってもよい。導電性ロッド124または導波部材122が、基部に向かって幅が拡大する形状をもつ場合に、導電性表面120aはこのような構造になる。このような構造であっても、導電性表面110bと導電性表面120aとの間の距離が波長λmの半分よりも短ければ、図13Bに示す装置は、本開示の実施形態における導波装置として機能し得る。
(3)導電性ロッドの先端部から導電性表面までの距離L2
導電性ロッド124の先端部124aから導電性表面110bまでの距離L2は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間を電磁波が往復する伝搬モードが生じ、電磁波を閉じ込められなくなるからである。なお、複数の導電性ロッド124のうち、少なくとも導波部材122と隣り合うものについては、先端が導電性表面110bとは電気的には接触していない状態にある。ここで、導電性ロッドの先端が導電性表面に電気的に接触していない状態とは、先端と導電性表面との間に空隙がある状態、あるいは、導電性ロッドの先端と導電性表面とのいずれかに絶縁層が存在し、導電性ロッドの先端と導電性表面が絶縁層を間に介して接触している状態、のいずれかを指す。
導電性ロッド124の先端部124aから導電性表面110bまでの距離L2は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間を電磁波が往復する伝搬モードが生じ、電磁波を閉じ込められなくなるからである。なお、複数の導電性ロッド124のうち、少なくとも導波部材122と隣り合うものについては、先端が導電性表面110bとは電気的には接触していない状態にある。ここで、導電性ロッドの先端が導電性表面に電気的に接触していない状態とは、先端と導電性表面との間に空隙がある状態、あるいは、導電性ロッドの先端と導電性表面とのいずれかに絶縁層が存在し、導電性ロッドの先端と導電性表面が絶縁層を間に介して接触している状態、のいずれかを指す。
(4)導電性ロッドの配列および形状
複数の導電性ロッド124のうちの隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間は、例えばλm/2未満の幅を有する。隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間の幅は、当該2つの導電性ロッド124の一方の表面(側面)から他方の表面(側面)までの最短距離によって定義される。このロッド間の隙間の幅は、ロッド間の領域で最低次の共振が起こらないように決定される。共振が生じる条件は、導電性ロッド124の高さ、隣接する2つの導電性ロッド間の距離、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間の空隙の容量の組み合わせによって決まる。よって、ロッド間の隙間の幅は、他の設計パラメータに依存して適宜決定される。ロッド間の隙間の幅には明確な下限はないが、製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、例えばλm/16以上であり得る。なお、隙間の幅は一定である必要はない。λm/2未満であれば、導電性ロッド124の間の隙間は様々な幅を有していてもよい。
複数の導電性ロッド124のうちの隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間は、例えばλm/2未満の幅を有する。隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間の幅は、当該2つの導電性ロッド124の一方の表面(側面)から他方の表面(側面)までの最短距離によって定義される。このロッド間の隙間の幅は、ロッド間の領域で最低次の共振が起こらないように決定される。共振が生じる条件は、導電性ロッド124の高さ、隣接する2つの導電性ロッド間の距離、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間の空隙の容量の組み合わせによって決まる。よって、ロッド間の隙間の幅は、他の設計パラメータに依存して適宜決定される。ロッド間の隙間の幅には明確な下限はないが、製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、例えばλm/16以上であり得る。なお、隙間の幅は一定である必要はない。λm/2未満であれば、導電性ロッド124の間の隙間は様々な幅を有していてもよい。
複数の導電性ロッド124の配列は、人工磁気導体としての機能を発揮する限り、図示されている例に限定されない。複数の導電性ロッド124は、直交する行および列状に並んでいる必要は無く、行および列は90度以外の角度で交差していてもよい。複数の導電性ロッド124は、行または列に沿って直線上に配列されている必要は無く、単純な規則性を示さずに分散して配置されていてもよい。各導電性ロッド124の形状およびサイズも、導電部材120上の位置に応じて変化していてよい。
複数の導電性ロッド124の先端部124aが形成する人工磁気導体の表面125は、厳密に平面である必要は無く、微細な凹凸を有する平面または曲面であってもよい。すなわち、各導電性ロッド124の高さが一様である必要はなく、導電性ロッド124の配列が人工磁気導体として機能し得る範囲内で個々の導電性ロッド124は多様性を持ち得る。
各導電性ロッド124は、図示されている角柱形状に限らず、例えば円筒状の形状を有していてもよい。さらに、各導電性ロッド124は、単純な柱状の形状を有している必要はない。人工磁気導体は、導電性ロッド124の配列以外の構造によっても実現することができ、多様な人工磁気導体を本開示の導波装置に利用することができる。なお、導電性ロッド124の先端部124aの形状が角柱形状である場合は、その対角線の長さはλm/2未満であることが好ましい。楕円形状であるときは、長軸の長さがλm/2未満であることが好ましい。先端部124aがさらに他の形状をとる場合でも、その差し渡し寸法は一番長い部分でもλm/2未満であることが好ましい。
導電性ロッド124(特に、導波部材122に隣接する導電性ロッド124)の高さ、すなわち、基部124bから先端部124aまでの長さは、導電性表面110bと導電性表面120aとの間の距離(λm/2未満)よりも短い値、例えば、λo/4に設定され得る。
(5)導波面の幅
導波部材122の導波面122aの幅、すなわち、導波部材122が延びる方向に直交する方向における導波面122aのサイズは、λm/2未満(例えばλo/8)に設定され得る。導波面122aの幅がλm/2以上になると、幅方向で共振が起こり、共振が起こるとWRGは単純な伝送線路としては動作しなくなるからである。
導波部材122の導波面122aの幅、すなわち、導波部材122が延びる方向に直交する方向における導波面122aのサイズは、λm/2未満(例えばλo/8)に設定され得る。導波面122aの幅がλm/2以上になると、幅方向で共振が起こり、共振が起こるとWRGは単純な伝送線路としては動作しなくなるからである。
(6)導波部材の高さ
導波部材122の高さ(図示される例ではZ方向のサイズ)は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110bとの距離がλm/2以上となるからである。
導波部材122の高さ(図示される例ではZ方向のサイズ)は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110bとの距離がλm/2以上となるからである。
(7)導波面と導電性表面との間の距離L1
導波部材122の導波面122aと導電性表面110bとの間の距離L1については、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導波面122aと導電性表面110bとの間で共振が起こり、導波路として機能しなくなるからである。ある例では、当該距離L1はλm/4以下である。製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、距離L1を、例えばλm/16以上とすることが好ましい。
導波部材122の導波面122aと導電性表面110bとの間の距離L1については、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導波面122aと導電性表面110bとの間で共振が起こり、導波路として機能しなくなるからである。ある例では、当該距離L1はλm/4以下である。製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、距離L1を、例えばλm/16以上とすることが好ましい。
導電性表面110bと導波面122aとの距離L1の下限、および導電性表面110bと導電性ロッド124の先端部124aとの距離L2の下限は、機械工作の精度と、上下の2つの導電部材110、120を一定の距離に保つように組み立てる際の精度とに依存する。プレス工法またはインジェクション工法を用いた場合、上記距離の現実的な下限は50マイクロメートル(μm)程度である。MEMS(Micro−Electro−Mechanical System)技術を用いて例えばテラヘルツ領域の製品を作る場合には、上記距離の下限は、2〜3μm程度である。
次に、導波部材122、導電部材110、120、および複数の導電性ロッド124を有する導波路構造の変形例を説明する。以下の変形例は、本開示の各実施形態におけるいずれの箇所のWRG構造にも適用され得る。
図16Aは、導波部材122の上面である導波面122aのみが導電性を有し、導波部材122の導波面122a以外の部分は導電性を有していない構造の例を示す断面図である。導電部材110および導電部材120も同様に、導波部材122が位置する側の表面(導電性表面110b、120a)のみが導電性を有し、他の部分は導電性を有していない。このように、導波部材122、導電部材110、120の各々は、全体が導電性を有していなくてもよい。
図16Bは、導波部材122が導電部材120上に形成されていない変形例を示す図である。この例では、導波部材122は、導電部材110と導電部材とを支持する支持部材(例えば、筐体の内壁等)に固定されている。導波部材122と導電部材120との間には間隙が存在する。このように、導波部材122は導電部材120に接続されていなくてもよい。
図16Cは、導電部材120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124の各々が、誘電体の表面に金属などの導電性材料がコーティングされた構造の例を示す図である。導電部材120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124は、相互に導電体で接続されている。一方、導電部材110は、金属などの導電性材料で構成されている。
図16Dおよび図16Eは、導電部材110、120、導波部材122、および導電性ロッド124の各々の最表面に、誘電体の層110c、120bを有する構造の例を示す図である。図16Dは、導体である金属製の導電部材の表面を誘電体の層で覆った構造の例を示す。図16Eは、導電部材120が、樹脂などの誘電体製の部材の表面を、金属などの導体で覆い、さらにその金属の層を誘電体の層で覆った構造を有する例を示す。金属表面を覆う誘電体の層は樹脂などの塗膜であってもよいし、当該金属が酸化する事で生成された不動態皮膜などの酸化皮膜であってもよい。
最表面の誘電体層は、WRG導波路によって伝播される電磁波の損失を増やす。しかし、導電性を有する導電性表面110b、120aを腐食から守ることができる。また、直流電圧や、WRG導波路によっては伝播されない程度に周波数の低い交流電圧の影響を遮断することができる。
図16Fは、導波部材122の高さが導電性ロッド124の高さよりも低く、導電部材110の導電性表面110bのうち、導波面122aに対向する部分が、導波部材122の側に突出している例を示す図である。このような構造であっても、図15に示す寸法の範囲を満たしていれば、前述の実施形態と同様に動作する。
図16Gは、図16Fの構造において、さらに、導電性表面110bのうち導電性ロッド124に対向する部分が、導電性ロッド124の側に突出している例を示す図である。このような構造であっても、図15に示す寸法の範囲を満たしていれば、前述の実施形態と同様に動作する。なお、導電性表面110bの一部が突出する構造に代えて、一部が窪む構造であってもよい。
図17Aは、導電部材110の導電性表面110bが曲面形状を有する例を示す図である。図17Bは、さらに、導電部材120の導電性表面120aも曲面形状を有する例を示す図である。これらの例のように、導電性表面110b、120aは、平面形状に限らず、曲面形状を有していてもよい。曲面状の導電性表面を有する導電部材も、「板形状」の導電部材に該当する。
上記の構成を有する導波装置100によれば、動作周波数の信号波は、人工磁気導体の表面125と導電部材110の導電性表面110bとの間の空間を伝搬することはできず、導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110bとの間の空間を伝搬する。このような導波路構造における導波部材122の幅は、中空導波管とは異なり、伝搬すべき電磁波の半波長以上の幅を有する必要はない。また、導電部材110と導電部材120とを厚さ方向(YZ面に平行)に延びる金属壁によって電気的に接続する必要もない。
図18Aは、導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110bとの間隙における幅の狭い空間を伝搬する電磁波を模式的に示している。図18Aにおける3本の矢印は、伝搬する電磁波の電界の向きを模式的に示している。伝搬する電磁波の電界は、導電部材110の導電性表面110bおよび導波面122aに対して垂直である。
導波部材122の両側には、それぞれ、複数の導電性ロッド124によって形成された人工磁気導体が配置されている。電磁波は導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110bとの間隙を伝搬する。図18Aは、模式的であり、電磁波が現実に作る電磁界の大きさを正確には示していない。導波面122a上の空間を伝搬する電磁波(電磁界)の一部は、導波面122aの幅によって区画される空間から外側(人工磁気導体が存在する側)に横方向に拡がっていてもよい。この例では、電磁波は、図18Aの紙面に垂直な方向(Y方向)に伝搬する。このような導波部材122は、Y方向に直線的に延びている必要は無く、不図示の屈曲部および/または分岐部を有し得る。電磁波は導波部材122の導波面122aに沿って伝搬するため、屈曲部では伝搬方向が変わり、分岐部では伝搬方向が複数の方向に分岐する。
図18Aの導波路構造では、伝搬する電磁波の両側に、中空導波管では不可欠の金属壁(電気壁)が存在していない。このため、この例における導波路構造では、伝搬する電磁波が作る電磁界モードの境界条件に「金属壁(電気壁)による拘束条件」が含まれず、導波面122aの幅(X方向のサイズ)は、電磁波の波長の半分未満である。
図18Bは、参考のため、中空導波管730の断面を模式的に示している。図18Bには、中空導波管730の内部空間723に形成される電磁界モード(TE10)の電界の向きが矢印によって模式的に表されている。矢印の長さは電界の強さに対応している。中空導波管730の内部空間723の幅は、波長の半分よりも広く設定されなければならない。すなわち、中空導波管730の内部空間723の幅は、伝搬する電磁波の波長の半分よりも小さく設定され得ない。
図18Cは、導電部材120上に2個の導波部材122が設けられている形態を示す断面図である。このように隣接する2個の導波部材122の間には、複数の導電性ロッド124によって形成される人工磁気導体が配置されている。より正確には、各導波部材122の両側に複数の導電性ロッド124によって形成される人工磁気導体が配置され、各導波部材122が独立した電磁波の伝搬を実現することが可能である。
図18Dは、参考のため、2つの中空導波管730を並べて配置した導波装置の断面を模式的に示している。2つの中空導波管730は、相互に電気的に絶縁されている。電磁波が伝搬する空間の周囲が、中空導波管730を構成する金属壁で覆われている必要がある。このため、電磁波が伝搬する内部空間723の間隔を、金属壁の2枚の厚さの合計よりも短縮することはできない。金属壁の2枚の厚さの合計は、通常、伝搬する電磁波の波長の半分よりも長い。したがって、中空導波管730の配列間隔(中心間隔)を、伝搬する電磁波の波長よりも短くすることは困難である。特に、電磁波の波長が10mm以下となるミリ波帯、あるいはそれ以下の波長の電磁波を扱う場合は、波長に比して十分に薄い金属壁を形成することが難しくなる。このため、商業的に現実的なコストで実現することが困難になる。
これに対して、人工磁気導体を備える導波装置100は、導波部材122を近接させた構造を容易に実現することができる。このため、複数のアンテナ素子が近接して配置されたアンテナアレイへの給電に好適に用いられ得る。
図19Aは、上記のような導波路構造を利用したアンテナ装置200の構成の一部を模式的に示す斜視図である。図19Bは、このアンテナ装置200におけるX方向に並ぶ2つのスロット112の中心を通るXZ面に平行な断面の一部を模式的に示す図である。このアンテナ装置200においては、第1導電部材110が、X方向およびY方向に配列された複数のスロット112を有している。この例では、複数のスロット112は2つのスロット列を含み、各スロット列は、Y方向に等間隔に並ぶ6個のスロット112を含んでいる。第2導電部材120には、Y方向に延びる2つの導波部材122が設けられている。各導波部材122は、1つのスロット列に対向する導電性の導波面122aを有する。2つの導波部材122の間の領域、および2つの導波部材122の外側の領域には、複数の導電性ロッド124が配置されている。これらの導電性ロッド124は、人工磁気導体を形成している。
各導波部材122の導波面122aと、導電部材110の導電性表面110bとの間の導波路には、不図示の送信回路から電磁波が供給される。Y方向に並ぶ複数のスロット112のうちの隣接する2つのスロット112の中心間の距離は、例えば、導波路を伝搬する電磁波の波長と同じ値に設計される。これにより、Y方向に並ぶ6個のスロット112から、位相の揃った電磁波が放射される。
図19Aおよび図19Bに示すアンテナ装置200は、複数のスロット112の各々をアンテナ素子(放射素子とも称する。)とするアンテナアレイである。このようなアンテナ装置200の構成によれば、アンテナ素子間の中心間隔を、例えば導波路を伝搬する電磁波の自由空間における波長λoよりも短くすることができる。複数のスロット112には、ホーンが設けられ得る。ホーンを設けることで、放射特性または受信特性を向上させることができる。
図20は、スロット112毎にホーン114を有するアンテナ装置200の構造の一部を模式的に示す斜視図である。このアンテナ装置200は、二次元的に配列された複数のスロット112および複数のホーン114を有する導電部材110と、複数の導波部材122Uおよび複数の導電性ロッド124Uが配列された導電部材120とを備える。図20は、導電部材110、120の相互の間隔を極端に離した状態を示している。導電部材110における複数のスロット112は、X方向およびY方向に配列されている。図20には、導波部材122Uの各々の中央に配置されたポート(貫通孔)145Uも示されている。導波部材122Uの両端部に配置され得るチョーク構造の図示は省略されている。本実施形態では、導波部材122Uの数は4個であるが、導波部材122Uの数は任意である。本実施形態では、各導波部材122Uは、中央のポート145Uの位置で2つの部分に分断されている。
図21Aは、図20に示す16個のスロットが4行4列に配列されたアンテナ装置200をZ方向からみた上面図である。図21Bは、図21AのC−C線断面図である。このアンテナ装置200における導電部材110は、複数のスロット112にそれぞれ対応して配置された複数のホーン114を備えている。複数のホーン114の各々は、スロット112を囲む4つの導電壁を有している。このようなホーン114により、指向性を向上させることができる。なお、各ホーン114は、図20に示す構造に代えて、例えば図1に示すように、一対のリッジと、一対の側壁を有する構造を有していてもよい。そのような構造によれば、前述の実施形態と同様、グレーティングローブの影響を抑制することができる。
図示されるアンテナ装置200においては、スロット112に直接的に結合する第1の導波部材122Uを備える第1の導波装置100aと、第1の導波装置100aの導波部材122Uに結合する第2の導波部材122Lを備える第2の導波装置100bとが積層されている。第2の導波装置100bの導波部材122Lおよび導電性ロッド124Lは、導電部材130上に配置されている。第2の導波装置100bは、基本的には、第1の導波装置100aの構成と同様の構成を備えている。
図21Aに示すように、導電部材110は、第1の方向(Y方向)および第1の方向に直交する第2の方向(X方向)に配列された複数のスロット112を備える。複数の導波部材122Uの導波面122aは、Y方向に延びており、複数のスロット112のうち、Y方向に並んだ4つのスロットに対向している。この例では導電部材110は、4行4列に配列された16個のスロット112を有しているが、スロット112の数および配列はこの例に限定されない。各導波部材122Uは、複数のスロット112のうち、Y方向に並んだ全てのスロットに対向している例に限らず、Y方向に隣接する少なくとも2つのスロットに対向していればよい。X方向に隣接する2つの導波面122aの中心間隔は、例えば波長λoよりも短く設定され、より好ましくは、波長λo/2よりも短く設定される。
図21Cは、第1の導波装置100aにおける導波部材122Uの平面レイアウトを示す図である。図21Dは、第2の導波装置100bにおける導波部材122Lの平面レイアウトを示す図である。これらの図に示すように、第1の導波装置100aにおける導波部材122Uは直線状に延びており、分岐部も屈曲部も有していない。一方、第2の導波装置100bにおける導波部材122Lは、分岐部および屈曲部の両方を有している。
第1の導波装置100aにおける導波部材122Uは、導電部材120が有するポート145Uを通じて第2の導波装置100bにおける導波部材122Lに結合する。言い換えると、第2の導波装置100bの導波部材122Lを伝搬してきた電磁波は、ポート145Uを通って第1の導波装置100aの導波部材122Uに達し、第1の導波装置100aの導波部材122Uを伝搬することができる。このとき、各スロット112は、導波路を伝搬してきた電磁波を空間に向けて放射するアンテナ素子として機能する。反対に、空間を伝搬してきた電磁波がスロット112に入射すると、その電磁波はスロット112の直下に位置する第1の導波装置100aの導波部材122Uに結合し、第1の導波装置100aの導波部材122Uを伝搬する。第1の導波装置100aの導波部材122Uを伝搬してきた電磁波は、ポート145Uを通って第2の導波装置100bの導波部材122Lに達し、第2の導波装置100bの導波部材122Lに沿って伝搬することも可能である。
図21Dに示すように、第2の導波装置100bの導波部材122Lは、1本の幹状部分と、幹状部分から分岐した4つの枝状部分を有する。導波部材122Lの幹状部分は、Y方向に延びており、ポート145Lに接続されている。ポート145Lは、任意の導波路を介して、高周波信号を生成または受信する電子回路290に接続される。
電子回路290は、特定の位置に限定されず、任意の位置に配置されていてよい。電子回路290は、例えば、導電部材130の背面側(図21Bにおける下側)の回路基板に配置され得る。そのような電子回路は、例えば、ミリ波を生成または受信するMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)などのマイクロ波集積回路を含み得る。電子回路290は、マイクロ波集積回路に加えて、他の回路、例えば、信号処理回路をさらに含んでいてもよい。そのような信号処理回路は、例えばアンテナ装置を備えたシステムの動作に必要な各種の処理を実行するように構成され得る。電子回路290は、通信回路を含んでいてもよい。通信回路は、アンテナ装置を備えた通信システムの動作に必要な各種の処理を実行するように構成され得る。
マイクロ波集積回路は、高周波信号を生成または処理するように構成される。マイクロ波集積回路は、送信機および受信機の少なくとも一方として機能する。電子回路290は、送信機に接続されたA/Dコンバータ、および受信機に接続されたD/Aコンバータの一方または両方を備えていてもよい。電子回路290は、さらに、A/DコンバータおよびD/Aコンバータの一方または両方に接続された信号処理回路を備えていてもよい。信号処理回路は、デジタル信号のエンコードおよびデジタル信号のデコードの少なくとも一方を実行する。そのような信号処理回路は、アンテナ装置が送信する信号の生成、またはアンテナ装置によって受信された信号の処理を行う。
なお、電子回路と導波路とを接続する構造は、例えば、米国特許出願公開第2018/0351261、米国特許出願公開第2019/0006743、米国特許出願公開第2019/0139914、米国特許出願公開第2019/0067780、米国特許出願公開第2019/0140344、および国際特許出願公開第2018/105513に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。
図21Aに示される導電部材110を「放射層」と呼ぶことができる。また、図21Cに示される導電部材120、導波部材122U、および導電性ロッド124Uの全体を含む層を「励振層」と呼び、図21Dに示される導電部材130、導波部材122L、および導電性ロッド124Lの全体を含む層を「分配層」と呼んでもよい。また「励振層」と「分配層」とをまとめて「給電層」と呼んでもよい。「放射層」、「励振層」および「分配層」は、それぞれ、一枚の金属プレートを加工することによって量産され得る。放射層、励振層、分配層、および分配層の背面側に設けられる電子回路は、モジュール化された1つの製品として製造され得る。
この例におけるアンテナアレイでは、図21Bからわかるように、プレート状の放射層、励振層および分配層が積層されているため、全体としてフラットかつ低姿勢(low profile)のフラットパネルアンテナが実現されている。例えば、図21Bに示す断面構成を持つ積層構造体の高さ(厚さ)を10mm以下にすることができる。
図21Dに示される導波部材122Lは、ポート145Lに接続される1本の幹状部分と、幹状部分から分岐した4つの枝状部分を有する。4つの枝状部分の先端部の上面に対向して、4つのポート145Uがそれぞれ位置している。貫通孔212から導電部材120の4つのポート145Uまでの、導波部材122Lに沿って測った距離は、全て等しい。このため、導電部材130の貫通孔212から、導波部材122Lに入力された信号波は、導波部材122UのY方向における中央に配置された4つのポート145Uのそれぞれに同じ位相で到達する。その結果、導電部材120上に配置された4個の導波部材122Uは、同位相で励振され得る。
なお、用途によっては、アンテナ素子として機能する全てのスロット112が同位相で電磁波を放射する必要はない。励振層および分配層における導波部材122Uおよび122Lのネットワークパターンは任意であり、図示される形態に限定されない。
励振層、分配層を構成するに当たっては、導波路における様々の回路要素を利用する事ができる。それらの例は、例えば米国特許第10042045、米国特許第10090600、米国特許第10158158、国際特許出願公開第2018/207796、国際特許出願公開第2018/207838、米国特許出願公開第2019/0074569に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。
本開示におけるアンテナ装置は、例えば車両、船舶、航空機、ロボット等の移動体に搭載されるレーダ装置またはレーダシステムに好適に用いられ得る。レーダ装置は、上述したいずれかの実施形態における導波装置を備えたアンテナ装置と、当該アンテナ装置に接続されたMMICなどのマイクロ波集積回路とを備える。レーダシステムは、当該レーダ装置と、当該レーダ装置のマイクロ波集積回路に接続された信号処理回路とを備える。本開示の実施形態におけるアンテナ装置と、小型化が可能なWRG構造とを組み合わせた場合、従来の中空導波管を用いた構成と比較して、アンテナ素子が配列される面の面積を小さくすることができる。このため、当該アンテナ装置を搭載したレーダシステムを、狭小な場所にも容易に搭載することができる。レーダシステムは、例えば道路または建物に固定されて使用され得る。信号処理回路は、例えば、マイクロ波集積回路によって受信された信号に基づき、到来波の方位を推定する処理等を行う。信号処理回路は、例えば、MUSIC法、ESPRIT法、およびSAGE法などのアルゴリズムを実行して、到来波の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成され得る。信号処理回路は、さらに、公知のアルゴリズムにより、到来波の波源である物標までの距離、物標の相対速度、物標の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成されていてもよい。
本開示における「信号処理回路」の用語は、単一の回路に限られず、複数の回路の組み合わせを概念的に1つの機能部品として捉えた態様も含む。信号処理回路は、1個または複数のシステムオンチップ(SoC)によって実現されてもよい。例えば、信号処理回路の一部または全部がプログラマブルロジックデバイス(PLD)であるFPGA(Field−Programmable Gate Array)であってもよい。その場合、信号処理回路は、複数の演算素子(例えば汎用ロジックおよびマルチプライヤ)および複数のメモリ素子(例えばルックアップテーブルまたはメモリブロック)を含む。または、信号処理回路は、汎用プロセッサおよびメインメモリ装置の集合であってもよい。信号処理回路は、プロセッサコアとメモリとを含む回路であってもよい。これらは信号処理回路として機能し得る。
本開示の実施形態におけるアンテナ装置は、無線通信システムにも利用され得る。そのような無線通信システムは、上述したいずれかの実施形態における導波装置を含むアンテナ装置と、当該アンテナ装置に接続された通信回路(送信回路または受信回路)とを備える。送信回路は、例えば、送信すべき信号を表す信号波をアンテナ装置内の導波路に供給するように構成され得る。受信回路は、アンテナ装置を介して受信された信号波を復調してアナログまたはデジタルの信号として出力するように構成され得る。
本開示の実施形態におけるアンテナ装置は、さらに、屋内測位システム(IPS:Indoor Positioning System)におけるアンテナとしても利用することができる。屋内測位システムでは、建物内にいる人、または無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)などの移動体の位置を特定することができる。アンテナ装置はまた、店舗または施設に来場した人が有する情報端末(スマートフォン等)に情報を提供するシステムにおいて用いられる電波発信機(ビーコン)に用いることもできる。そのようなシステムでは、ビーコンは、例えば数秒に1回、IDなどの情報を重畳した電磁波を発する。その電磁波を情報端末が受信すると、情報端末は、通信回線を介して遠隔地のサーバコンピュータに、受け取った情報を送信する。サーバコンピュータは、情報端末から得た情報から、その情報端末の位置を特定し、その位置に応じた情報(例えば、商品案内またはクーポン)を、当該情報端末に提供する。
WRG構造を有するスロットアレイアンテナを備えたレーダシステム、通信システム、および各種監視システムの応用例が、例えば米国特許第9786995号明細書および米国特許第10027032号に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。本開示のスロットアレイアンテナは、これらの文献に開示された各応用例に適用することができる。
本開示の導波路装置は、電磁波を利用するあらゆる技術分野において利用可能である。
例えばギガヘルツ帯域またはテラヘルツ帯域の電磁波の送受信を行う各種の用途に利用され得る。特に小型化が求められる車載レーダシステム、各種の監視システム、屋内測位システム、および無線通信システムなどに用いられ得る。
例えばギガヘルツ帯域またはテラヘルツ帯域の電磁波の送受信を行う各種の用途に利用され得る。特に小型化が求められる車載レーダシステム、各種の監視システム、屋内測位システム、および無線通信システムなどに用いられ得る。
100 200 300 導波路装置
Claims (12)
- 第1の面および前記第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、
少なくとも前記基板の前記第2の面側に配置されるグランド導体と、
前記基板の前記第1の面側に配置されるマイクロストリップラインと、
前記第1の面に対向する導電性表面を有し、前記導電性表面の少なくとも一部が前記グランド導体の一部に接触する導電部材と、
前記導電部材から突出するリッジ状の導波部材であって、前記マイクロストリップラインに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材と、
を備え、
前記導波部材の前記導波面に垂直な方向から見て、
前記導波部材の前記導波面の少なくとも一部と前記マイクロストリップラインの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備え、
前記導波部材の前記導波面と前記マイクロストリップラインとの間に、隙間または誘電体層があり、
前記導波部材の前記導波面に沿って導波路が規定され、
前記導波路は、前記マイクロストリップラインに接続される、
導波路装置。 - 前記導電部材は、リッジ導波管を含み、
前記リッジ導波管は、前記導波路に繋がる貫通孔を備え、
前記重複部分は、前記貫通孔に繋がる、
請求項1に記載の導波路装置。 - 前記マイクロストリップラインは、前記第1の方向と交差する方向における寸法が拡がる拡幅部を備え、
前記導波部材の前記導波面に垂直な方向から見て、前記拡幅部の一部は前記重複部分と重なる、
請求項1または2に記載の導波路装置。 - 前記第1の方向と交差する方向において、前記拡幅部の幅は、前記重複部分における前記導波部材の幅よりも大きい、
請求項3に記載の導波路装置。 - 前記第1の方向における前記拡幅部の長さは、前記マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長の1/4よりも長い、請求項3または4に記載の導波路装置。
- 前記マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長をλとするとき、
前記第1の方向における前記重複部分の長さは、(1/8)λ以上(3/8)λ以下である、
請求項3から5のいずれかに記載の導波路装置。 - 第1の面および前記第1の面の反対側の第2の面を有する基板と、
少なくとも前記基板の前記第2の面側に配置されるグランド導体と、
前記基板の前記第1の面側に配置されるマイクロストリップラインと、
前記第1の面に対向する導電性表面を有する板状の導電部材と、
前記導電部材から突出するリッジ状の導波部材であって、前記マイクロストリップラインに対向し第1の方向に沿って延びる導電性の導波面を有する導波部材と、
前記導波部材の両側に配置される人工磁気導体と、
を備え、
前記導波部材の前記導波面に垂直方向から見て、
前記導波部材の前記導波面の少なくとも一部と、前記マイクロストリップラインの端部を含む部分とが重なり合う重複部分を備え、
前記導波部材の前記導波面と前記マイクロストリップラインとの間に、隙間または誘電体層があり、
前記導波部材の前記導波面に沿って導波路が規定され、
前記導波路は、前記マイクロストリップラインに接続される、
導波路装置。 - 前記人工磁気導体は、
複数の導電性ロッドを備え、
前記導電部材は、前記導波路に繋がる貫通孔を有しており、
前記重複部分は、前記貫通孔に繋がる、
請求項7に記載の導波路装置。 - 前記マイクロストリップラインは、前記第1の方向と交差する方向における寸法が拡がる拡幅部を備え、
前記導波部材の前記導波面に垂直な方向から見て、前記拡幅部の一部は前記重複部分と重なる、
請求項7または8に記載の導波路装置。 - 前記第1の方向と交差する方向において、前記拡幅部の幅は、前記重複部分における前記導波部材の幅よりも大きい、
請求項9に記載の導波路装置。 - 前記第1の方向における前記拡幅部の長さは、前記マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長の1/4よりも長く、空気中における前記電磁波の波長よりも短い、請求項9または10に記載の導波路装置。
- 前記マイクロストリップラインに沿って伝搬する電磁波の波長をλとするとき、
前記第1の方向における前記重複部分の長さは、(1/8)λ以上(3/8)λ以下である、
請求項9から11のいずれかに記載の導波路装置。
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JP2020010766A JP2021118446A (ja) | 2020-01-27 | 2020-01-27 | 導波路装置 |
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WO2024070515A1 (ja) * | 2022-09-30 | 2024-04-04 | 太陽誘電株式会社 | 導波路装置 |
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- 2020-01-27 JP JP2020010766A patent/JP2021118446A/ja active Pending
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