JP2021115994A - パワートレーンシステム - Google Patents

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Shuntaro Okazaki
俊太郎 岡崎
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Abstract

【課題】応答性の異なる第1及び第2トルクデバイスを備える場合であっても、複数の制約条件を満たしつつ操作量を演算量の増加を抑制しつつ適切に決定し、かつ汎用性の高い制御構造を構築する。【解決手段】パワートレーンシステムは、第1トルクデバイスとこれより応答遅れの大きな第2トルクデバイスと制御装置とを備える。制御装置は、複数の制約条件を満たす範囲内で目標状態量を最大限実現する操作量を決定して出力する操作量決定部と、トルクデバイス制御部とを含む。操作量上下限算出部は、第2トルクデバイスの最大操作量及び最小操作量に対して応答遅れを反映し、予測最大操作量及び予測最小操作量を第2操作量の上下限制約値として算出する。操作量修正部は、次の時間ステップにおいて操作量決定部による決定値を実現する第2操作量となるように修正後第2操作量を算出する。操作量決定部は、修正後第2操作量をトルクデバイス制御部に出力する。【選択図】図1

Description

この発明は、パワートレーンシステムに関し、より詳細には、車両の駆動力の制御に関係する複数のトルクデバイスを備えるパワートレーンシステムに関する。
例えば、特許文献1には、車両制御装置が開示されている。この車両制御装置では、車両の複数種類の制御パラメータに対して、個々の目的を有する複数の制御ロジックの各々から要求が出力される。ここでいう制御パラメータとは、例えば、内燃機関のトルク及び空燃比であり、個々の目的とは、例えば、排気エミッション低減及び燃費低減である。出力された要求は制御パラメータの種類毎に調停され、その結果、各制御パラメータの目標値が決定される。また、各々の制御ロジックから、上記の要求の間の優先順位に関する情報も出力される。したがって、上記車両制御装置によれば、各制御パラメータの目標値を決定する際に、出力された優先順位に基づいて複数の制御ロジックからの要求が調停される。
特開2009−047099号公報
車両の駆動力の制御に関係する複数のトルクデバイス(例えば、内燃機関とモータジェネレータ)を備えるパワートレーンシステムが知られている。このようなパワートレーンシステムでは、制御対象の複数の状態量(例えば、車両駆動トルクとバッテリの充放電量)のそれぞれの目標状態量を最大限実現するように複数のトルクデバイスの複数の操作量(例えば、エンジントルクとモータトルク)を決定することが望まれる。
ここで、パワートレーンシステムにおける状態量と操作量は、様々な制約を有する。したがって、そのような制約内で目標状態量を最大限実現するように操作量を決定できるようにすることが望まれる。そして、構築されるトルクデバイス制御の基礎となる制御構造は、構成の異なる他のパワートレーンシステムに容易に適用可能な汎用性を備えていることも望まれる。
上述の要求を満たすために、制御対象の複数の状態量と複数のトルクデバイスの複数の操作量との関係を規定する線形の状態方程式に基づいて、パワートレーンシステムの複数の制約条件を満たす範囲内で複数の目標状態量を最大限実現する最適な操作量の組み合わせを、線形計画問題を解くことにより決定することが考えられる。その一方で、上述の複数のトルクデバイスは、第1トルクデバイス(例えば、モータジェネレータ)と、第1トルクデバイスと比べて出力の応答遅れの大きな第2トルクデバイス(例えば、内燃機関)とを含む場合がある。このように応答性に差がある第1トルクデバイスと第2トルクデバイスとを含む場合においてすべての操作量を同時に適切に決定するために、次のような手法を採用することが考えられる。
すなわち、まず、上述のような線形計画問題を解くことにより、第1トルクデバイスと第2トルクデバイスの最適な操作量の組み合わせを算出する。そして、応答遅れの大きな第2トルクデバイスには算出した操作量を指示しつつ、この操作量に対して第2トルクデバイスの出力の応答遅れを反映した予測操作量を算出する。そのうえで、この予測操作量を代入した状態方程式に基づいて、残りの第1トルクデバイスの最適な操作量を、再び線形計画問題を解くことにより決定することが考えられる。しかしながら、このような手法では、すべての第1及び第2トルクデバイスの最適な操作量の組み合わせを決定するために、再計算(最適な操作量の探索)を2回行うことが必要になる。このことは、制御装置の演算量の増加(計算負荷の増加)に繋がる。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、応答性の異なる第1及び第2トルクデバイスを備える場合であっても、複数の制約条件を満たしつつ複数の目標状態量を最大限実現するように当該第1及び第2トルクデバイスのそれぞれの操作量を演算量の増加を抑制しつつ適切に決定でき、かつ、汎用性の高い制御構造(制御プラットフォーム)を構築可能なパワートレーンシステムを提供することを目的とする。
本発明に係るパワートレーンシステムは、車両の駆動力の制御に関係する第1及び第2トルクデバイスと、第1及び第2トルクデバイスを制御する制御装置とを備える。第2トルクデバイスは、第1トルクデバイスと比べて出力の応答遅れが大きい。
制御装置は、
パワートレーンシステムの制御対象の複数の状態量と第1及び第2トルクデバイスのそれぞれの操作量である第1及び第2操作量との関係を規定する線形の状態方程式に基づいて、パワートレーンシステムの複数の制約条件を満たす範囲内で複数の状態量の目標値である複数の目標状態量を最大限実現する第1及び第2操作量を、線形計画問題を解くことにより決定して出力する操作量決定部と、
操作量決定部から出力された第1及び第2操作量に従って第1及び第2トルクデバイスを制御するトルクデバイス制御部と、
を含む。
複数の制約条件は、第2操作量の上下限制約値を含む。
制御装置は、現在の時間ステップにおける第2トルクデバイスの運転条件の下で第2トルクデバイスが出力可能な最大操作量及び最小操作量に対して第2トルクデバイスの出力の応答遅れを反映することによって、次の時間ステップにおける第2トルクデバイスの予測最大操作量及び予測最小操作量を、第2操作量の上下限制約値として算出する操作量上下限算出部をさらに含む。
操作量決定部は、線形計画問題を解くことにより決定した第2操作量の決定値を修正する操作量修正部を含む。
操作量修正部は、上記の次の時間ステップにおいて決定値を実現する第2操作量となるように、第2トルクデバイスの応答遅れ特性の逆特性に従って決定値を修正することによって修正後第2操作量を算出する。
操作量決定部は、修正後第2操作量をトルクデバイス制御部に出力する。
本発明によれば、パワートレーンシステムの制御対象の状態量と第1及び第2トルクデバイスの操作量との関係を規定する線形の状態方程式に基づいて線形計画問題を解くことにより、制約条件を満たしつつ目標状態量を最大限実現するように第1及び第2トルクデバイスの操作量(第1及び第2操作量)を決定することができる。そして、決定した第1及び第2操作量に従って第1及び第2トルクデバイスを制御できるようになる。
そして、本発明によれば、線形で表現された状態方程式が、パワートレーンシステムの駆動系における状態量(制御量)と第1及び第2操作量との関係を規定するために用いられている。パワートレーンシステムの駆動系の状態方程式は、システム構成に依らずに線形となる。したがって、状態方程式に代入される状態量及び第1及び第2操作量の内容及び数を適宜変更するだけで、任意の第1及び第2トルクデバイスを備える他のパワートレーンシステムに容易に適用可能となる汎用性の高い制御構造を構築可能となる。
また、本発明によれば、パワートレーンシステムの制約条件は、第2操作量の上下限制約値を含んでいる。具体的には、上述の最大操作量及び最小操作量に対して第2トルクデバイスの出力の応答遅れを反映することによって、次の時間ステップにおける第2トルクデバイスの予測最大操作量及び予測最小操作量が、上記の上下限制約値として算出される。このような上下限制約値を利用することで、操作量決定部は、次の時間ステップにおいて到達可能な第2操作量の範囲(すなわち、上記の上下限制約値によって特定される範囲)内で第2操作量を選択しつつ、第2操作量を含むすべての操作量(第1及び第2操作量)を適切に決定できるようになる。すなわち、第2トルクデバイスの応答遅れを考慮しつつ、最適な操作量の探索を一度行うだけで(つまり、演算量の増加を抑制しつつ)すべての操作量を適切に決定できるようになる。
さらに、本発明に係る操作量修正部によれば、次の時間ステップにおいて上述の決定値を実現する第2操作量となるように、第2トルクデバイスの応答遅れ特性の逆特性に従って決定値を修正することによって修正後第2操作量が算出される。これにより、操作量修正部を備えない例と比べて、第2トルクデバイスの最適な操作量(すなわち、上記の決定値)を、次の時間ステップにおいてより確実に実現できるようになる。
本発明の実施の形態1に係るパワートレーンシステムの構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態1に係るトルクデバイス制御に関連する制御装置の機能構成を示すブロック図である。 指示トルクTereqの変化に対する内燃機関の出力(実トルクTrqe)の応答遅れを表したグラフである。 本発明の実施の形態1に係るトルクデバイス制御に関する処理のルーチンを示すフローチャートである。 最大及び最小トルクTrqemax、Trqemin、上下限制約値Temxr、Temnr、並びに修正後の指示トルクTereq’を説明するためのタイムチャートである。 エンジン回転数Ne及びエンジン水温THwと、最大トルクTrqemaxとの関係を表したグラフである。 エンジントルクTeの増大に伴う加速時におけるエンジン回転数Ne、実トルクTrqe、最大トルクTrqemax及び上限制約値Temxrの変化の一例を表したタイムチャートである。 優先度P〜Pを考慮しつつ操作量の最適解を探索するアルゴリズムの概要を説明するための概念図である。 優先順位(優先度)の設定の有無に応じた操作量の決定手法の違いを説明するための概念図である。 本発明の実施の形態2に係るパワートレーンシステムの構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態3に係るパワートレーンシステムの構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態4に係るパワートレーンシステムの構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態5に係るパワートレーンシステムの構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態8に係るトルクデバイス制御に関する処理のルーチンを示すフローチャートである。 ステップS204の処理において利用される制約値の拡大手法の一例に関するルーチンを示すフローチャートである。 図15に示す拡大手法によって各制御量の各制約値が変化していく様子の一例を表したタイムチャートである。 ステップS204の処理において利用される制約値の拡大手法の他の一例に関するルーチンを示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ただし、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
1.実施の形態1
まず、図1〜図9を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
1−1.パワートレーンシステムの構成例
図1は、本発明の実施の形態1に係るパワートレーンシステム10の構成例を説明するための模式図である。図1に示すパワートレーンシステム10は、車両の動力源として、内燃機関20とともに2つのモータジェネレータ(MG)1及びモータジェネレータ(MG)2を備えている。すなわち、パワートレーンシステム10は、一例としてハイブリッド車両に適用されている。
内燃機関20は、一例として、火花点火式エンジンである。しかしながら、本発明の対象となる内燃機関は、圧縮着火式エンジンであってもよく、また、その気筒数及び気筒配置は特に限定されない。内燃機関20は、エンジントルクTeを制御するためのアクチュエータとして、スロットルバルブ22と燃料噴射弁24と点火装置26とを備えている。スロットルバルブ22は、吸気通路(図示省略)に配置され、吸入空気流量を制御する。燃料噴射弁24は、各気筒に配置され、例えば気筒内に直接燃料を噴射する。点火装置26は、各気筒に配置された点火プラグを用いて、気筒内の混合気に点火する。また、内燃機関20は、各種エンジン制御に用いられる各種センサを備えている。ここでいう各種センサは、クランク角に応じた信号を出力するクランク角センサ28を含む。
MG1及びMG2は、共に発電可能な電動機である。すなわち、MG1及びMG2は、例えば、供給された電力によりトルクを出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備える交流同期型のモータジェネレータである。図1に示すパワートレーンシステム10では、MG1は、主に発電機として用いられ、MG2は、主に車両を駆動する電動機として用いられる。
内燃機関20、MG1及びMG2は、動力分割機構34及び減速機構36を介して車輪38と連結されている。動力分割機構34は、例えばプラネタリギヤユニットであり、内燃機関20から出力されるエンジントルクTeをMG1と車輪38とに分割する。より詳細には、動力分割機構34において、サンギヤはMG1の出力軸1aに連結され、キャリアは内燃機関20のクランクシャフト20aに連結され、リングギヤはMG2の出力軸1aに連結されている。内燃機関20から出力されるエンジントルクTe又はMG2から出力されるMG2トルクTmは、減速機構36を介して車輪38に伝達される。すなわち、内燃機関20及びMG2は、車両の駆動力を生じさせ、かつ、車両の駆動力を制御する。MG1は、動力分割機構34を介して内燃機関20から供給されたエンジントルクTeにより電力を回生発電可能である。このため、MG1も車両の駆動力を制御するために用いられる。また、MG2は、車両減速時には発電機として機能し、車両運動エネルギを回収して電力に変換する。
MG1及びMG2は、インバータ40及び昇圧コンバータ42を介してバッテリ44と電力の授受を行う。インバータ40は、バッテリ44に蓄えられた電力を直流から交流に変換してMG2に供給するとともに、MG1及びMG2によって生成される電力を交流から直流に変換してバッテリ44に蓄える。このため、バッテリ44は、MG1及びMG2で生じた電力によって充電され、MG2で消費される電力により放電される。昇圧コンバータ42は、バッテリ44の電圧を必要に応じて昇圧させる。
本実施形態のパワートレーンシステム10は、さらに、パワートレーン(内燃機関20、MG1及びMG2)を制御するための制御装置50を備えている。制御装置50は、プロセッサ50aとメモリ50bとを有する電子制御ユニット(ECU)である。メモリ50bは、パワートレーンシステム10を制御するためのプログラムを記憶している。プロセッサ50aは、メモリ50bからプログラムを読み出して実行する。制御装置50は、パワートレーンを制御するための各種センサからセンサ信号を取り込む。また、プロセッサ50aは、取り込まれたセンサ信号を用いて各種プログラムを実行し、パワートレーンの各種アクチュエータを操作するための操作信号を出力する。
制御装置50には、上述したクランク角センサ28等のエンジン制御のための各種センサに加え、エンジン水温センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキポジションセンサ、車速センサ、並びに、MG1及びMG2のそれぞれの電流センサ及び回転角センサを含むセンサ類52等、パワートレーンの制御に用いられる各種センサが電気的に接続されている。制御装置50は、クランク角センサ28からの信号を用いてエンジン回転数Neを算出できる。また、制御装置50は、MG1を介して検出される内燃機関20のトルク反力からエンジントルクTe(実トルクTrqe)を算出できる。
また、制御装置50には、上述した内燃機関20(スロットルバルブ22、燃料噴射弁24及び点火装置26)、MG1及びMG2を含むパワートレーンを制御するための各種アクチュエータが電気的に接続されている。また、制御装置50は、複数のECUから構成されていてもよい。
1−2.実施の形態1に係るトルクデバイス制御
1−2−1.トルクデバイス制御の概要
パワートレーンシステム10が備えるトルクデバイスは、上述のように、内燃機関20、MG1及びMG2である。図2は、本発明の実施の形態1に係るトルクデバイス制御に関連する制御装置50の機能構成を示すブロック図である。制御装置50は、トルクデバイス制御を行うために、「操作量決定部58」と「トルクデバイス制御部60」と「操作量上下限算出部62」とを含む。操作量決定部58は、操作量演算部58aと、操作量修正部58bとによって構成されている。
本実施形態においてパワートレーンシステム10によって制御される状態量(すなわち、制御量)の一例は、駆動トルクTp、充放電量Pchg及び回転数変化率dNgである。駆動トルクTpは、車両駆動力に相関する車輪38の駆動トルク(Nm)のことである。充放電量Pchgは、バッテリ44の充放電量(W)であり、ここでは充電時に負となり、放電時に正となるものとする。回転数変化率dNgは、MG1の回転数変化率(Rad/s)である。
なお、図1に示す動力分割機構34を利用する例では、MG2の回転数Nmは車速に応じて定まるため、MG1の回転数Ngが決まれば、エンジン回転数Neが定まるという関係がある。このため、本実施形態では、制御対象の状態量(制御量)の1つとして回転数変化率dNgが含められている。また、MG1の回転数変化率dNgに代え、エンジン回転数変化率dNeが制御量の一つとして用いられてもよい。上記の関係があるので、この例によっても、MG1回転数変化率dNgの利用時と同様の制御を実現できる。また、回転数変化率dNg、dNeに代え、例えば、MG1回転数Ng又はエンジン回転数Ne(rad/s)自体が用いられてもよい。
(操作量決定部)
操作量決定部58に含まれる操作量演算部58aは、上述の状態量(Tp、Pchg、dNg)をそれぞれの目標値(目標状態量)に近づくように制御するための最適な操作量を決定する。このため、操作量決定部58は、最適操作量探索器としての機能を有する。本実施形態において用いられる操作量の例は、エンジントルクTe、MG1トルクTg及びMG2トルクTmである。
以下の(1)式は、制御量(Tp、Pchg、dNg)と操作量(Te、Tg、Tm)との関係を表した状態方程式である。この(1)式に示されるように、パワートレーンシステム10における制御量と操作量との関係は、線形(一次式)で表現することができる。
Figure 2021115994
(1)式において、c(c11、c12、…)は、充放電量PchgとトルクTg、Tmとに関するc22及びc23を除き、パワートレーンシステム10のハードウェア諸元(例えば、各部のイナーシャ及びギヤ比)に応じて定まる定数である。c22及びc23については、運転中の回転数Ng、Nmの変化に応じて変化する。
操作量演算部58aは、(1)式の状態方程式に基づいて、パワートレーンシステム10の制約条件を満たす範囲内で目標状態量を最大限実現するトルクデバイスの操作量を、線形計画問題を解くことにより決定する。そして、操作量演算部58aは、決定した操作量のうち、操作量Tg、Tmについては、トルクデバイス制御部60に指示トルクTgreq、Tmreqとして出力(指示)する。一方、操作量Teの指示トルクTereqについては、ステップS118において後述の操作量修正部58bによって指示トルクTereq’に修正された後にトルクデバイス制御部60に出力(指示)される。
さらに、本実施形態の操作量演算部58aでは、操作量の決定のために、3つの目標状態量(Tp、Pchg、dNg)の優先度が考慮される。具体的には、3つの目標状態量(Tp、Pchg、dNg)のそれぞれを優先度が高い順に最大限実現する操作量が、上記制約条件を満たす範囲内で線形計画問題を解くことにより決定される。このため、図2に示すように、操作量演算部58aの入力には、目標状態量及び各種制約値(制約条件)とともに、優先度が含まれている。また、操作量演算部58aの入力には、c22及びc23の決定のために、現在の回転数情報(MG1回転数Ng(又はエンジン回転数Ne)とMG2回転数Nm(又は車速))が含まれている。
(トルクデバイス制御部)
図2に示すトルクデバイス制御部60は、操作量決定部58によって決定された操作量(Tereq’、Tgreq、Tmreq)に従ってそれぞれのトルクデバイス(内燃機関20、MG1、MG2)を制御する。具体的には、内燃機関20に関しては、トルクデバイス制御部60は、操作量決定部58によって決定されたエンジントルクTereq’を実現するために必要なスロットル開度、燃料噴射量及び点火時期の各目標値を決定する。その結果、エンジントルク制御のためのアクチュエータ(スロットルバルブ22、燃料噴射弁24及び点火装置26)は、トルクデバイス制御部60によって決定された各目標値が実現されるように制御される。MG1及びMG2に関しても同様に、トルクデバイス制御部60は、操作量決定部58によって決定されたMGトルクTgreq、Tmreqを実現するために必要な電流値及び周波数等の所定の制御パラメータの各目標値を決定する。その結果、MG1及びMG2は、インバータ40の制御によって、トルクデバイス制御部60によって決定された各目標値が実現されるように制御される。
(目的関数)
次に、操作量決定部58において操作量を決定するために用いられる線形計画問題の目的関数(評価関数)f1について説明する。以下の(2)式は、目的関数f1の一例を示している。より詳細には、この線形計画問題は、目的関数f1を制約条件の下で最小にする解を求める最小化問題である。以下、説明の便宜上、目的関数f1に関する本線形計画問題のことを「線形計画問題F」とも称する。
Figure 2021115994
(2)式において、P、P、Pは、それぞれ、目標状態量Tp、Pchg、dNgの優先度に相当する。本実施形態では、一例として、駆動トルクTpの優先度Pが最も高く、次いで回転数変化率dNgの優先度Pが高く、充放電量Pchgの優先度Pが最も低くなるように優先度が決定されている。本実施形態では、優先度は、車両運転中に変化しないものとして扱われるが、パワートレーンシステムの構成、又は選択される目標状態量次第では、目標状態量間の優先度の高低は、車両運転中に変更されてもよい。
本実施形態では、優先度P〜Pは、一例として、優先順位として与えられる。具体的には、優先順位の例では、優先度P〜Pの値は、各目標状態量の優先順位に対応した絶対順位係数に相当する。本実施形態の例では、絶対順位係数Pは、絶対順位係数Pよりも絶対的に大きいという性質を持った係数であり、かつ、絶対順位係数Pは、絶対順位係数Pよりも絶対的に大きいという性質を持った係数である(P>>>P>>>P)。付け加えると、「PがPよりも絶対的に大きい」とは、Pに対してどのような大きな自然数nを掛けたとしても、PがP以下となることはないという関係が満たされることをいう。なお、優先順位としての優先度P〜Pを考慮して目標状態量を最大限実現する操作量(すなわち、最適な操作量)を探索する手順の詳細については、ステップS116の処理とともに後述される。
また、(2)式において、y とy は、目標値(目標状態量の値)に対する駆動トルクTpの不足量と超過量である(ともに正の値)。したがって、これらの値の和(y +y )は、目標値に対する駆動トルクTpの乖離量に相当する。y とy は、目標値に対する充放電量Pchgの不足量と超過量であり、y とy は、目標値に対する回転数変化率dNgの不足量と超過量であり、以下、同様である。(2)式によれば、目標値に対する状態量の乖離量が小さいことは、目的関数f1の値が小さくなることを意味する。
(制約条件)
上述の制約条件の一例は、以下の(3)〜(13)式のように表される。
Figure 2021115994
上記の各式中の変数x、x及びxは、それぞれ、操作量であるエンジントルクTe、MG1トルクTg及びMG2トルクTmに対応している。(3)〜(5)式中のg、g及びgは、それぞれ、状態量である駆動トルクTpの目標値、充放電量Pchgの目標値及び回転数変化率dNgの目標値(目標状態量の具体的な値)である。これらの(3)〜(5)式によれば、目標値に対する状態量の乖離量を示す項(y +y )を含めて操作量と目標状態量との関係が表されている。
(6)式中のTpmn及びTpmxは、それぞれ、駆動トルクTpの下限制約値及び上限制約値である。(7)式中のWin及びWoutは、それぞれ、充放電量Pchgの下限制約値及び上限制約値である。(8)式中のdNgmn及びdNgmxは、それぞれ、MG1回転数変化率dNgの下限制約値及び上限制約値である。すなわち、(6)〜(8)式によれば、それぞれの状態量(Tp、Pchg、dNg)の制約範囲が表されている。
パワートレーンシステム10で用いられるトルクデバイスは、内燃機関20、MG1及びMG2である。図3は、指示トルクTereqの変化に対する内燃機関20の出力(実トルクTrqe)の応答遅れを表したグラフである。内燃機関20の吸気系の遅れ及び燃焼の遅れ等の各種の遅れ要因の影響により、実トルクTrqeは、図3に示すように指示トルクTereq(操作量)の変化に対して遅れを伴って変化する。このため、トルクデバイスの指示値に対する実値の応答遅れは、内燃機関20の方がMG1及びMG2と比べて大きい。なお、MG1及びMG2は、本発明に係る「第1トルクデバイス」の一例に相当し、内燃機関20は、本発明に係る「第2トルクデバイス」の一例に相当する。そして、MG1トルクTg及びMG2トルクTmが、本発明に係る「第1操作量」の一例に相当し、エンジントルクTeが、本発明に係る「第2操作量」の一例に相当する。
制御装置50によるパワートレーンシステム10の制御は、所定の時間ステップ毎に(すなわち、所定の制御周期で)実行される。(9)式中のTemxr及びTemnrは、それぞれ、ステップS102及びS104において後述の操作量上下限算出部62によって算出される予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクであり、これらがエンジントルクTeの上下限制約値として用いられる。
予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクは、内燃機関20の応答遅れを考慮しつつ算出される値であり、ある時間ステップにおいて指示トルクTereqをトルクデバイス制御部60に出力した際に、次の時間ステップにおいて実現可能なエンジントルクTeの最大値及び最小値に相当する。つまり、このようなトルク値Temxr及びTemnrによって、ある時間ステップにおいてエンジントルクTereqを指示した際に次の時間ステップにおいて実現可能なエンジントルク範囲が特定される。なお、予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルク(上下限制約値Temxr及びTemnr)は、本発明に係る「予測最大操作量及び予測最小操作量」の一例に相当する。
(10)式中のTemxは、エンジントルクTeの上限制約値であり、その下限制約値の一例はゼロである。(10)式中のTemx及びゼロは、内燃機関20の作動保証(故障防止)のためのエンジントルクTeの上下限値に相当する。なお、(10)式中の下限値は、ゼロに代えて任意の負の値でもよい。(11)式中のTgmn及びTgmxは、それぞれ、MG1トルクTgの下限制約値及び上限制約値である。(12)式中のTmmn及びTmmxは、それぞれ、MG2トルクTmの下限制約値及び上限制約値である。これらのTgmn、Tgmx、Tmmn及びTmmxも、それぞれ、MG1及びMG2の作動保証(故障防止)のためのMG1トルクTg及びMG2トルクTmの上下限値に相当する。上述の(9)〜(12)式によれば、それぞれの操作量(Te、Tg、Tm)の制約範囲が表されている。また、(13)式は、目標値に対する各状態量の不足量y 及び超過量y がそれぞれ負の値でないことを表している。
制約内で優先度P〜Pに応じて目標状態量(Tp、Pchg、dNg)を最大限実現する操作量(Te、Tg、Tm)を探し出すという問題(線形計画問題F)は、上述のように、(2)式の目的関数f1と(3)〜(13)式に示す制約条件とによって整理して表すことができる。
(等式標準形の線形計画問題への同値変換の例)
以下の(14)〜(31)式は、上述の制約条件((3)〜(12)式)を等式条件((14)〜(29)式)と変数の非負条件((30)、(31)式)のみで表現するために、当該制約条件の各式に対して新たな変数x’、x”、x’、x”及びx(i=4〜16)を加えて変形することによって得られたものである。なお、既述した変数xは変数x’と変数x”との差(x’−x”)に等しく、変数xは変数x’と変数x”との差(x’−x”)に等しい。
Figure 2021115994

Figure 2021115994
このように各式を変形することにより、上述の線形計画問題Fを、等式標準形(すなわち、目的関数(評価関数)は線形関数であって、制約条件は等式条件と非負条件のみとなる形式)で記述できるようになる。このように記述された線形計画問題Fは、以下に図4を参照して説明するように、例えば単体法(シンプレックス法)を用いて解くことができる。なお、線形計画問題Fの解法として、公知の他の任意の解法(例えば、内点法)が用いられてもよい。
1−2−2.制御装置による処理
図4は、本発明の実施の形態1に係るトルクデバイス制御に関する処理のルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、パワートレーンシステム10の起動中に所定の制御周期で繰り返し実行される。より詳細には、本実施形態の「操作量決定部58」は、以下のステップS100、S106〜S118の処理を実行する。より詳細には、操作量演算部58aがステップS100、S106〜S116の処理を実行し、操作量修正部58bがステップS118の処理を実行する。また、「トルクデバイス制御部60」は、ステップS120の処理を実行する。操作量上下限算出部62は、ステップS102及びS104の処理を実行する。
図4に示すルーチンでは、制御装置50は、まず、ステップS100において、目標状態量(g〜g)、目標状態量の優先度P〜P(ここでは、優先順位)、状態量及び操作量の各制約値((6)〜(12)式中のTpmn等)、及び現在回転数情報(図2参照)を取得する。より詳細には、車両のドライバからの要求に応じて、車両の運転状態が変化する。例えば運転状態が変化すると、目標状態量及び制約値も変化する。このため、ステップS100では、制御装置50に接続された各種センサからの情報と所定のマップとに基づいて、車両の運転状態に応じた目標状態量及び制約値が取得される。その後、処理はステップS102に進む。
ステップS102では、制御装置50(操作量上下限算出部62)は、現在(今回の時間ステップ)のエンジン運転条件の下で出力可能な最大トルクTrqemax及び最小トルクTrqeminを算出する。なお、最大及び最小トルクTrqemax、Trqeminは、本発明に係る「最大操作量及び最小操作量」の一例に相当する。
図5は、最大及び最小トルクTrqemax、Trqemin、上下限制約値Temxr、Temnr、並びに修正後の指示トルクTereq’を説明するためのタイムチャートである。図5に示されるように、上述の最大トルクTrqemaxは、現在のエンジン運転条件の下でスロットルバルブ22を全開とした際に発生し得るエンジントルクTeに相当し、最小トルクTrqeminは、当該エンジン回転数Neの下でスロットルバルブ22を全閉にし、かつ燃料カットを行った際に発生し得るエンジントルクTe(負トルク)に相当する。
最大トルクTrqemaxは、各種エンジン運転条件のうち、主にエンジン回転数Neとエンジン水温THwに依存する。図6は、エンジン回転数Ne及びエンジン水温THwと、最大トルクTrqemaxとの関係を表したグラフである。また、図7は、エンジントルクTeの増大に伴う加速時におけるエンジン回転数Ne、実トルクTrqe、最大トルクTrqemax及び上限制約値Temxrの変化の一例を表したタイムチャートである。なお、図6中の実トルクTrqeの波形は、最大トルクTrqemaxよりも低い指示トルクTereqに従い、実トルクTrqeが応答遅れを伴って上昇していく様子を表している。
制御装置50は、図6に示すような関係をマップとして記憶している。本ステップS102では、制御装置50は、そのようなマップから、図7に示すように推移するエンジン回転数Neの現在値、及びエンジン水温THwの現在値に応じた最大トルクTrqemaxを算出する。なお、最大トルクTrqemaxは、エンジン回転数Ne及びエンジン水温THwだけでなく、例えば大気圧に基づいて算出されてもよい。また、ここでは図示を省略するが、最小トルクTrqeminは、例えばエンジン回転数Neと最小トルクTrqeminとの関係を定めたマップを利用して算出できる。
ステップS102に続き、処理はステップS104に進む。ステップS104では、制御装置50(操作量上下限算出部62)は、ステップS102において算出した最大及び最小トルクTrqemax、Trqeminに対して内燃機関20の応答遅れを反映することによって、次の時間ステップにおける予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクを、エンジントルクTe(第2操作量)の上下限制約値Temxr、Temnrとして算出する。
図5に示すように、上限制約値Temxrは、現在の時間ステップにおいて最大トルクTrqemaxを指示した際に、次の時間ステップにおいて実現(到達)可能なエンジントルクTeの値に相当する。同様に、下限制約値Temnrは、現在の時間ステップにおいて最小トルクTrqeminを指示した際に、次の時間ステップにおいて実現(到達)可能なエンジントルクTeの値に相当する。
上限制約値Temxr(予測最大エンジントルク)は、例えば、エンジントルクTeの応答遅れを一次遅れとして模擬したエンジンモデル(一次遅れモデル)を利用して算出できる。以下の(32)式は、そのような一次遅れモデルの式の一例である。(32)式において、τauは、エンジントルクTeの応答時定数であり、内燃機関20の出力(Te)の応答遅れ特性を反映した値として事前に実験等により決定されている。τsは、所定の制御周期(2つの時間ステップの間隔)である。(32)式によれば、図6に例示されるように実トルクTrqeと最大トルクTrqemaxとの間に位置する上限制約値Temxrを、応答時定数τauを考慮しながら、現在の実トルクTrqe及び最大トルクTrqemaxに応じた値として算出できる。なお、ここでは、説明を省略するが、下限制約値Temnrについても、上限制約値Temxrと同様の手法で、現在の実トルクTrqe及び最小トルクTrqeminに応じた値として算出できる。
Figure 2021115994
ステップS104に続き、処理はステップS106に進む。ステップS106では、制御装置50は、(1)式で表される連立方程式に対してステップS100で取得した目標状態量を代入し、当該連立方程式を解くことにより、目標状態量を実現する(換言すると、目標状態量に対応する)操作量(Te、Tg、Tm)を算出する。このような操作量(Te、Tg、Tm)の算出についても、目標状態量を最大限実現する操作量の決定の例に相当する。その後、処理はステップS108に進む。
ステップS108では、制御装置50は、ステップS100において取得した各目標状態量と、ステップS106において算出した各操作量とが制約範囲内(すなわち、それぞれの制約値(ステップS100及びS106にて取得された値)の範囲内)にあるか否かを判定する。より詳細には、本ステップS108では、上記の連立方程式が唯一の解を持ち、かつ、その解が制約値の範囲内にあるか否かが数学的な手法に従って判定される。
ステップS108の判定結果が肯定的である場合には、処理は、後述のステップS118に進む。一方、ステップS108の判定結果が否定的である場合には、制御装置50は、制約内で目標状態量を最大限実現する操作量(すなわち、操作量の最適解)を探索して決定するために、ステップS110〜S116の処理を実行する。具体的には、まず、本ルーチンの対象となる線形計画問題Fの初期基底解を得るために、処理はステップS110に進む。
ステップS110では、制御装置50は、状態量及び操作量の上下限制約値(Tpmn、Tpmx、Win、Wout、dNgmn、dNgmx、Temxr、Temnr、Temx、Tgmn、Tgmx、Tmmn、Tmmx)の符号と、これらに対応するスラック変数x〜x16((17)〜(29)式参照)の係数の符号とがすべて同じであるか否かを判定する。なお、スラック変数x〜x16の何れかに対応する制約値(Tpmn等)がゼロの場合には、その制約値の符号はゼロであるが、ステップS110では、当該制約値の符号は、それに対応するスラック変数x〜x16の係数の符号と同じであると判断される。
ステップS110の判定結果が肯定的である場合には、処理はステップS112に進む。ステップS112では、制御装置50は、以下に説明する手法で、各変数x、x’、x’’、x’、x’’、y 、y (i=1〜3)、及び各スラック変数x〜x16の初期基底解を設定する。
すなわち、以下の(33)〜(35)式に示されるように、変数x、x’、x’’、x’、x’’はゼロとされる。y 、y (i=1〜3)の値は、状態量の各目標値(目標状態量の値)g、g、gの符号に応じて変更される。具体的には、目標値gがゼロ以上の場合には、変数y は目標値gと同じ値とされ、変数y はゼロとされる。一方、目標値gが負の場合には、変数y はゼロとされ、変数y は目標値gと同じ値とされる。このことは、他の変数y 、y 、y 、y と目標値g、gとの関係についても同様である。また、スラック変数xは、−Tpmnと同じ値とされる(Tpmnがゼロの場合には、スラック変数xはゼロとされる)。このことは、他のスラック変数x〜x16についても同様である。このように初期基底解を設定可能な理由は、各制約値の符号とスラック変数の係数の符号がすべて同じとなる場合には、本ステップS112において初期基底解として設定された各変数x等の値の組み合わせが、(13)〜(31)式で表される制約条件式によって生成される凸多面体(例えば、後述の図8参照)の頂点の1つに対応することが分かるためである。
Figure 2021115994
一方、ステップS110の判定結果が否定的である場合、つまり、各制約値とこれらに対応するスラック変数の係数とのすべての組み合わせにおいて符号が同じにはならない場合には、処理はステップS114に進む。ステップS114では、制御装置50は、各変数x、x’、x’’、x’、x’’、y 、y (i=1〜3)、及び各スラック変数x〜x16の初期基底解を得るために、以下に示す制約条件を満たしつつ(36)式で表される目的関数(評価関数)zを最小にするという他の線形計画問題を解くための処理を行う。以下、説明の便宜上、このように初期基底解を得るための線形計画問題のことを「線形計画問題Z」と称する。
Figure 2021115994
より詳細には、t(i=1〜16)は、初期基底解(実行可能解)を求めるために導入された人為変数である。上記の制約条件では、人為変数tのそれぞれは、上記(14)〜(29)式の左辺を右辺に移動して得られる右辺の値と等しい値として表されている。ステップS114では、制御装置50は、この線形計画問題Zを解くために、例えば単体法を用いて目的関数zをゼロとする(つまり、人為変数tをすべてゼロにする)各変数x、x’、x’’、x’、x’’、y 、y (i=1〜3)、及び各スラック変数x〜x16の値(つまり、初期基底解)を探索して決定する。なお、目的関数zがゼロにならない場合(つまり、人為変数tがすべてゼロにならない場合)には、制約条件を満たす実行可能解がないということになる。パワートレーンシステム10では、このように実行可能解がないという事態が生じないように各制約値が決定されている。
ステップS112又はS114の処理によって初期基底解が取得された後に、処理はステップS116に進む。ステップS116では、制御装置50は、制約条件((13)〜(31)式参照)を満たす範囲内で優先度P〜Pに応じて目標状態量(Tp、Pchg、dNg)を最大限実現する操作量(Te、Tg、Tm)、すなわち、操作量の最適解を探索して決定する。具体的には、制御装置50は、ステップS112又はS114の処理により取得された初期基底解を用いて、(2)式の目的関数f1と制約条件((13)〜(31)式参照)とによって整理された上述の線形計画問題Fを解くための処理を行う。
図8は、優先度P〜Pを考慮しつつ操作量の最適解を探索するアルゴリズムの概要を説明するための概念図である。図8は単体法を利用する例を示している。操作量が3つである本実施形態の線形計画問題Fの例では、制約条件を満たす領域は、図8に示すような凸多面体によって三次元的に表される。より詳細には、このような凸多面体内の領域では、すべての制約条件が満たされる。
操作量の最適解は、凸多面体の何れかの頂点において得られることになる。一例として単体法を利用する本アルゴリズムでは、凸多面体の各頂点を辿りつつ最適解が探索される。そして、本実施形態では、優先度P〜Pの具体例として、上述のように優先順位が用いられる。優先順位を考慮した最適解の探索は、次のような手順で実行される。
図8中の頂点A1は、初期基底解と対応している。最適解の探索はこの頂点A1から開始される。本実施形態の例において最も優先順位が高い目標状態量は、駆動トルクTpの目標値gである。このため、まず、目標値gからの駆動トルクTpの乖離量(y +y )を頂点A1と比べて減らせる頂点A2が探索される。この探索は、ある頂点からどの方向に移動しても乖離量(y +y )を減らせなくなる頂点が得られるようになるまで継続される。図8では、頂点A3はそのような頂点の例に相当する。なお、このような探索の過程で乖離量(y +y )を減らせる頂点が複数ある場合は、最小添字規則(Blandの規則)を用いて移動先の頂点を選ぶことにより、探索が有限回で終了することを担保すればよい。
本アルゴリズムでは、次に、優先順位の最も高い駆動トルクTpの乖離量(y +y )を増やさないようにしつつ、2番目に優先順位の高い目標状態量である回転数変化率dNgの目標値gに対する乖離量(y +y )を減らせる頂点A4が探索される。この探索についても、ある頂点からどの方向に移動しても乖離量(y +y )を減らせなくなる頂点が得られるようになるまで継続される。図8では、頂点A4はそのような頂点の例に相当する。
頂点A4が得られた後は、同様に、駆動トルクTpの乖離量(y +y )及び回転数変化率dNgの乖離量(y +y )をともに増やさないようにしつつ、最も優先順位の低い目標状態量である充放電量Pchgの目標値gに対する乖離量(y +y )を減らせる頂点の探索が行われる。図8に示す例では、頂点A5が、乖離量(y +y )及び(y +y )をともに増やさないようにしつつ、乖離量(y +y )を最も減らせる頂点に相当する。
本アルゴリズムによれば、上記の頂点A5の操作量の値が最適解として決定される。このようなアルゴリズムを利用する本実施形態の操作量決定部58によれば、制約条件を満たす範囲内で優先順位の最も高いものから順に目標状態量を最大限実現するトルクデバイスの操作量を、線形計画問題Fを解くことにより決定することができる。
本ルーチンの処理は、上述のようにステップS108の判定結果が肯定的である場合、又はステップS116の後にステップS118に進む。ステップS118では、制御装置50(操作量修正部58b)は、ステップS106又はS116の処理により決定された操作量Te(すなわち、指示トルクTereq)を修正することによって修正後指示トルクTereq’を算出する。なお、この指示トルクTereqは、本発明に係る「線形計画問題を解くことにより決定した第2操作量の決定値」の一例に相当する。
修正後指示トルクTereq’の算出は、例えば、次のような手法を用いて行うことができる。すなわち、修正後指示トルクTereq’は、トルクデバイス制御部60に最終的に出力されるエンジントルク指示値に相当する。この指示トルクTereq’は、以下の(37)式を用いて算出される。(37)式において、Tereqsmは、操作量演算部58aの出力(すなわち、指示トルクTereq)の一例であり、より詳細には、所定の平滑化処理が施された後の操作量演算部58aの出力である。
Figure 2021115994
(37)式による算出は、エンジントルクTeの応答遅れを一次遅れとして模擬したエンジンモデルの逆モデル演算を行うことに相当する。(37)式によれば、次の時間ステップにおいて指示トルクTereqを実現するために必要とされる修正後指示トルクTereq’を算出できる。本ステップS118において算出された修正後指示トルクTereq’は、トルクデバイス制御部60に出力される。なお、修正後指示トルクTereq’は、本発明に係る「修正後第2操作量」の一例に相当する。
上述のように、本ステップS118の処理を実行する操作量修正部58bによれば、次の時間ステップにおいて指示トルクTereqを実現する操作量となるように、内燃機関20の応答遅れ特性の逆特性に従って指示トルクTereqを修正することによって修正後指示トルクTereq’が算出される。なお、トルクデバイス制御部60に出力される指示トルクTereq’の値は、ステップS102において算出された最大及び最小トルクTrqemax、Trqeminを超えないように制限される。
ステップS118に続き、処理はステップS120に進む。ステップS120では、制御装置50は、MG1及びMG2の操作量(Tg、Tm)については、ステップS106又はステップS116の処理において決定された操作量に従って第1トルクデバイス(MG1及びMG2)を制御する。一方、内燃機関20の操作量(Te)については、制御装置50は、ステップS118の処理により算出(決定)された修正後指示トルクTereq’に従って第2トルクデバイス(内燃機関20)を制御する。その後、今回の処理サイクルが終了する。
以上説明した本ルーチンの処理により、第1及び第2トルクデバイスが、決定された操作量(Te、Tg、Tm;最適解)に従って制御される。
1−3.効果
以上説明した本実施形態のトルクデバイス制御によれば、制御される状態量(制御量)とトルクデバイスの操作量との関係を規定する線形の状態方程式に基づいて上述の線形計画問題Fを解くことにより最適な操作量を決定する処理が操作量決定部58によって実行される。これにより、制約条件を満たしつつ目標状態量を最大限実現するようにトルクデバイスの操作量を決定し、決定した操作量に従ってトルクデバイスを制御できるようになる。
そして、本実施形態のトルクデバイス制御によれば、パワートレーンシステム10の駆動系における状態量(制御量)と操作量との関係が線形の状態方程式で表現されている。パワートレーンシステムの駆動系の状態方程式は、システム構成に依らずに線形となる。したがって、状態方程式に代入される状態量及び操作量の内容及び数を適宜変更するだけで、任意の第1及び第2トルクデバイスを備える他のパワートレーンシステムに容易に適用可能となる汎用性の高い制御構造(制御プラットフォーム)が構築可能となる。換言すると、制御構造を変えることなく、他の構成のパワートレーンシステム(例えば、後述の実施の形態2〜6参照)に適用可能なトルクデバイス制御を提供できるようになる。
また、本実施形態のパワートレーンシステム10が備える複数のトルクデバイスのうち、内燃機関20(第2トルクデバイス)の出力の応答遅れは、MG1及びMG2(第1トルクデバイス)と比べて大きい。ここで、線形計画法を利用した各トルクデバイスの最適操作量の決定には、特別な配慮がなされていないと、トルクデバイスの出力の応答遅れは考慮されない。しかしながら、このように応答性に差がある第1トルクデバイスと第2トルクデバイスとを含むパワートレーンシステムでは、すべてのトルクデバイスの操作量を同時に最適化するためには、第2トルクデバイスの応答遅れを考慮しつつ各トルクデバイスの最適な操作量を決定できることが望まれる。そして、そのような最適な操作量の決定は、制御装置の演算量(計算負荷)の増加を抑制しつつ実現されることが望まれる。
上述の課題に関し、本実施形態のトルクデバイス制御によれば、パワートレーンシステム10の制約条件は、上限制約値Temxr及び下限制約値Temnrを含んでいる。具体的には、最大及び最小トルクTrqemax、Trqeminに対して内燃機関20の応答遅れを反映することによって、次の時間ステップにおける予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクが、エンジントルクTe(第2操作量)の上下限制約値Temxr、Temnrとして算出される。このような手法によれば、操作量決定部58は、次の時間ステップにおいて実現(到達)可能なエンジントルク範囲(すなわち、下限制約値Temnrから上限制約値Temxrまでの範囲)内の操作量(Te)を選択しつつ、すべての操作量(Te、Tg、Tm)を最適化できるようになる。すなわち、内燃機関20の応答遅れを考慮しつつ、最適な操作量の探索を一度行うだけですべての操作量を最適化できるようになる。
以上のように、本実施形態のトルクデバイス制御によれば、内燃機関20のように他のトルクデバイスと比べて応答遅れの大きなトルクデバイスが含まれていても、すべての操作量の最適化のための演算量(計算負荷)の増加を抑制しつつ、すべてのトルクデバイスの適切な操作量を決定できるように線形計画法を利用できるようになる。
さらに、本実施形態の操作量決定部58は、操作量修正部58bを備えている。操作量修正部58bによれば、次の時間ステップにおいて指示トルクTereqを実現する操作量となるように、内燃機関20の応答遅れ特性の逆特性に従って指示トルクTereqを修正することによって修正後指示トルクTereq’が算出される。これにより、操作量修正部58bを備えない例と比べて、操作量演算部58aが決定した第2トルクデバイス(内燃機関20)の最適な操作量(すなわち、指示トルクTereq)を、次の時間ステップにおいてより確実に実現できるようになる。
さらに、本実施形態のトルクデバイス制御のように複数の目標状態量を利用する例では、複数の目標状態量間の優先度の違いをも考慮して最適な操作量を決定できることが望ましい。この点に関し、本実施形態の操作量決定部58によれば、複数の目標状態量のそれぞれを優先順位が高い順に最大限実現する操作量が、制約条件を満たす範囲内で線形計画問題Fを解くことにより決定される。このため、操作量決定部58の利用により、制御構造を変えることなく目標状態量の優先度に応じた操作量を決定できるようになる。また、操作量決定部58によれば、複数の目標状態量間で優先度(優先順位)の高低を適宜変更することにより、任意の目標状態量を最大限実現するように各操作量を決定できるようになる。付け加えると、線形の状態方程式によって各制御量(状態量)と各操作量との関係が表現される本実施形態によれば、各制御量に対する各操作量の影響が多軸的に扱われることになる。
優先順位を考慮した操作量の決定に関して、以下に補足的に説明する。図9は、優先順位の設定の有無に応じた操作量の決定手法の違いを説明するための概念図である。図9では、説明を分かり易くするために、2つの目標状態量A、Bと2つの操作量X1、X2の例が用いられている。
操作量が2つの例では、制約条件を満たす領域は、図9に示すように多角形によって表される。図9中の直線L1は目標状態量Aを満たす直線(状態方程式)に相当し、直線L2は目標状態量Bを満たす直線(状態方程式)に相当する。したがって、これらの直線L1、L2の交点C1は、目標状態量A及びBの双方を満たす点に相当する。
図9に示すように、交点C1は、制約条件を満たす領域の外にある。頂点C2は、図9に示す多角形の頂点のうちで、目標状態量A(直線L1)に対する乖離量が最も小さな頂点に相当する。そして、頂点C2では、目標状態量Aに対する乖離量(直線L1に対する距離)D1は、目標状態量Bに対する乖離量D2よりも小さい。もう1つの頂点C3では、頂点C2とは逆に、目標状態量Bに対する乖離量D3の方が目標状態量Aに対する乖離量D4よりも小さい。また、交点C1に対する距離としては、頂点C3の距離D5の方が頂点C2の距離D6よりも短い。
ここで、図9に示す制約条件の下で目標状態量Aの優先順位が目標状態量Bの優先順位よりも高められた例において、一例として単体法を利用して操作量決定部58による処理が行われると、結果は次のようになる。すなわち、頂点C2の操作量X1、X2の値が最適解として決定される。その理由は、交点C1に対する距離は、頂点C2の距離D6の方が頂点C3の距離D5よりも長いが、優先順位の最も高い目標状態量Aの直線L1との距離は、頂点C2の距離D1の方が他の5つの頂点(頂点C3を含む)から直線L1までの何れの距離よりも短くなるためである。一方、優先順位を考慮せずに探索が例えば単体法によって行われた場合には、交点C1に対する距離が相対的に短い頂点C3の操作量X1、X2の値が最適解として決定されると考えられる。
その一方で、上記の例とは逆に目標状態量Bの優先順位の方が相対的に高い例であれば、優先順位の有無によらずに、最適解の決定のために頂点C3が選択されることになると考えられる。
以上の説明から分かるように、優先順位をも考慮して最適解を探索可能な本実施形態の操作量決定部58によれば、優先順位の最も高いものから順に目標状態量を最大限実現する操作量を、制約条件の各頂点と各目標状態量を満たす直線との位置関係に依らずに確実に選択できるようになる。
1−4.優先度に関する他の具体的な利用例
上述した実施の形態1においては、優先度P〜Pの具体的な利用例の1つとして、優先順位が挙げられた。しかしながら、本発明に係る「優先度」は、優先順位の例に代え、重みとして与えられてもよい。このことは、他の実施の形態2〜8についても同様である。
具体的には、重みの例では、優先度P〜Pの値は、優先度が高いほど大きくされる。これにより、優先度が高い項の方が、優先度が低い項と比べて、目的関数f1の値に与える影響が大きくなる。より詳細には、重みの例では、線形計画問題Fを解くことによって優先度の最も高いものから順に目標状態量を最大限実現する操作量が得られるように、優先度P〜Pの値が適切に決定されればよい。
2.実施の形態2
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係るパワートレーンシステム90の構成例を説明するための模式図である。図10に示すパワートレーンシステム90は、内燃機関20とともに、発電機92及び電動機94を備えている。この例では、実施の形態1と同様に、発電機92及び電動機94が「第1トルクデバイス」に相当し、内燃機関20が「第2トルクデバイス」に相当する。
また、パワートレーンシステム90は、これらの第1及び第2トルクデバイスを制御する制御装置96を備えている。発電機92は、制御装置96によるインバータ98の制御によって、エンジントルクTeを用いた発電を行う。発電機92によって生成された電力は、バッテリ100に蓄えられる。電動機94は、制御装置96によるインバータ98の制御によって、バッテリ100に蓄えられた電力を利用して車輪38を駆動する。このように、パワートレーンシステム90は、いわゆるシリーズ方式のハイブリッドシステムである。付け加えると、図10に示す例では、内燃機関20及び発電機92は車両の駆動力を直接的に発生させるものではない。しかしながら、内燃機関20が発生したトルクを発電機92が吸収することによって車両の駆動に用いられる電力を生成するので、この例における内燃機関20及び発電機92も「車両の駆動力の制御に関係する」トルクデバイスの例に相当する。
パワートレーンシステム90によって制御される状態量(制御量)の一例は、パワートレーンシステム10と同様に、駆動トルクTp、充放電量Pchg及び回転数変化率dNgである。そして、本実施形態のトルクデバイスの操作量についても、パワートレーンシステム10と同様に、エンジントルクTe、発電機92のトルクTg及び電動機94のトルクTmである。本実施形態で用いられる制御量と操作量との関係についても、以下の(38)式に示すように、線形の状態方程式で表すことができる。
Figure 2021115994
上述したパワートレーンシステム90を対象として、(38)式に示す状態方程式と線形計画法とを利用して、実施の形態1と同様のトルクデバイス制御が実行されてもよい。なお、目的関数は、(2)式と同様の考え方に基づいて決定すればよい。制約条件についても、実施の形態1と同様の考え方に従って、上述の予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクである上限制約値Temxr及び下限制約値Temnrを含み、かつ、状態量と操作量のそれぞれに関して適宜設定すればよい。(38)式中のc(c11、c12、…)は、実施の形態1において説明したように、基本的にはハードウェア諸元に応じて定まる定数である。これらのことは、以下の実施の形態3〜6についても同様である。
3.実施の形態3
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図11は、本発明の実施の形態3に係るパワートレーンシステム110の構成例を説明するための模式図である。図11に示すパワートレーンシステム110では、有段式の自動変速機112と組み合わされた内燃機関20と、モータジェネレータ114とが並列に連結されている。この例では、実施の形態1と同様に、モータジェネレータ114が「第1トルクデバイス」に相当し、内燃機関20及び自動変速機112が「第2トルクデバイス」に相当する。すなわち、この例では、第2トルクデバイスは複数である。付け加えると、自動変速機112は、変速を行いながらエンジントルクTeを車輪38に伝達する。このように「トルクを伝達する」自動変速機112は、「トルクを発生させる」内燃機関20とともに、本発明に係る「車両の駆動力の制御に関係する」トルクデバイスの例に相当する。
より詳細には、車輪38は、自動変速機112を介して内燃機関20から伝達されたトルクと、モータジェネレータ114のトルクTmgとによって駆動可能である。モータジェネレータトルクTmgの発生に必要な電力は、バッテリ118から供給される。モータジェネレータ114は、各トルクデバイスを制御する制御装置116によるインバータ120の制御によって、内燃機関20を用いた発電及び車両減速時の回生発電を行う。その結果として生成された電力はバッテリ118に蓄えられる。このように、パワートレーンシステム110は、いわゆるパラレル方式のハイブリッドシステムである。
次に、制御装置116によって線形計画法を用いた操作量の決定に用いられる線形の状態方程式について説明する。ここで、自動変速機112は、複数のクラッチ112aを内蔵しており、これらのクラッチ112aの係合/解放を制御することによりギヤ段を切り替えるように構成されている。パワートレーンシステム110によって制御される状態量(制御量)及び操作量の一例は、以下に説明するように、通常時(非変速時)と変速時とで異なるものとなる。
具体的には、以下の(39)式に示すように、通常時(非変速時)に用いられる状態量は、駆動トルクTpと充放電量Pchgであり、操作量は、エンジントルクTeとモータジェネレータトルクTmgである。なお、以下の(39)、(40)式中のc(c11、c12、…)のうちの一部は、ギヤ段が変更されるとイナーシャ及びギヤ比が変わるので変化する。このことは、後述の(41)〜(46)式についても同様である。
Figure 2021115994
一方、以下の(40)式に示すように、変速時に用いられる状態量は、駆動トルクTp及び充放電量Pchgとともに、回転数変化率dωを含む。回転数変化率dωの一例は、エンジン回転数変化率dNeであり、或いは、これに代えて自動変速機112の入力軸の回転数変化率でもよい。また、操作量は、エンジントルクTe及びモータジェネレータトルクTmgとともに、TcrとTceとを含む。Tcrは、自動変速機112の上記複数のクラッチ112aのうちで変速時に解放側になるクラッチのトルク容量である。Tceは、変速時に係合側となるクラッチのトルク容量である。
Figure 2021115994
上述したパワートレーンシステム110を対象として、(39)及び(40)式に示す状態方程式と線形計画法とを利用して、実施の形態1と同様のトルクデバイス制御が実行されてもよい。第2トルクデバイスの1つである内燃機関20に関する制約条件には、実施の形態1と同様の考え方に基づき、上述の予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクである上限制約値Temxr及び下限制約値Temnrが含まれる。また、もう1つの第2トルクデバイスである自動変速機112に関する制約条件には、内燃機関20の例と同様の考え方に基づいて算出される予測最大トルク容量及び予測最小トルク容量が、上下限制約値として含まれてもよい。具体的には、例えば、現在(今回の時間ステップ)の自動変速機112の運転条件の下で出力可能な最大及び最小トルク容量が、これらと関係性の高い任意のパラメータに基づいて、マップ等を用いて算出されてもよい。そして、上記(32)式と同様の一次遅れモデルの式を利用することによって、算出された最大及び最小トルク容量と現在の推定トルク容量とに応じた予測最大トルク容量及び予測最小トルク容量が、上下限制約値として算出されてもよい。現在の推定トルク容量は、公知の任意の手法を用いて算出できる。また、制御装置116が備える操作量修正部によって、上記(37)式と同様の逆モデル演算の式を利用することによって、実施の形態1の内燃機関20の例と同様の手法で、トルク容量Tcr、Tceの指示値が修正されてもよい。
4.実施の形態4
次に、図12を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。図12は、本発明の実施の形態4に係るパワートレーンシステム130の構成例を説明するための模式図である。図12に示すパワートレーンシステム130が備えるトルクデバイスは、パワートレーンシステム10と同様に、内燃機関20(第2トルクデバイス)、MG1及びMG2(第1トルクデバイス)である。パワートレーンシステム130は、動力分割機構132の構成において、パワートレーンシステム10と相違している。動力分割機構132は、第1プラネタリギヤユニット134、第2プラネタリギヤユニット136、低速用クラッチ138、高速用クラッチ140及び減速機構142を含む。制御装置144は、上記トルクデバイスを制御する。なお、図12では、インバータ及びバッテリの図示は省略されている。
より詳細には、第1プラネタリギヤユニット134は、第1サンギヤ134a(S1)と第1キャリア134b(C1)と第1リングギヤ134c(R1)とを含む。第2プラネタリギヤユニット136は、第2サンギヤ136a(S2)と第2キャリア136b(C2)と第2リングギヤ136c(R2)とを含む。第1サンギヤ134aはMG1に連結され、第1キャリア134bは内燃機関20に連結されている。第1リングギヤ134cは、図1に示す動力分割機構34とは異なり、第2サンギヤ136aに連結されており、これと一体的に回転自在である。
低速用クラッチ138は、第2サンギヤ136aと第2キャリア136bとを連結可能に構成されている。高速用クラッチ140は、第2キャリア136bと第2リングギヤ136cとを連結可能に構成されている。これらのクラッチ138、140の一例はドグクラッチである。第2リングギヤ136cは、減速機構142に連結されている。また、MG2も、減速機構142に連結されている。減速機構142は、第2リングギヤ136cの出力軸の回転に対してMG2の回転を減速させるように構成されている。第2リングギヤ136cからのトルクとMG2トルクTmは、減速機構142及び減速機構36を介して車輪38に伝達される。以上のように、パワートレーンシステム130は、パワートレーンシステム10と同様に、動力分割方式のハイブリッドシステムである。
上述したパワートレーンシステム130によれば、クラッチ138、140の係合/解放を制御することにより変速を行うことができる。具体的には、低速用クラッチ138が係合されると、第2サンギヤ136aと第2キャリア136bとが一体的に回転可能となり、一方、高速用クラッチ140が係合されると、第2キャリア136bと第2リングギヤ136cとが一体的に回転可能となる。第2プラネタリギヤユニット136は、高速用クラッチ140が係合され、かつ低速用クラッチ138が解放された場合(高速モード)には、低速用クラッチ138が係合され、かつ高速用クラッチ140が解放された場合(低速モード)と比べて増速するように構成されている(各ギヤ比が選定されている)。
次に、制御装置144によって線形計画法を用いた操作量の決定に用いられる線形の状態方程式について説明する。本パワートレーンシステム130によって制御される状態量(制御量)及び操作量についても、以下に示す一例のように、通常時(非変速時)と変速時とで異なっている。
具体的には、以下の(41)式に示すように、通常時(非変速時)に用いられる制御量は、パワートレーンシステム10と同様に、駆動トルクTpと充放電量PchgとMG1回転数変化率dNgであり、操作量は、エンジントルクTeとMG1トルクTgとMG2トルクTmである。
Figure 2021115994
一方、以下の(42)式に示すように、変速時に用いられる制御量は、駆動トルクTp、充放電量Pchg及びMG1回転数変化率dNgとともに、TxlとTxhとを含む。Txlは、低速モードが選択されている時に低速用クラッチ138が受け持つ必要のある伝達トルク(分担トルク)であり、Txhは、高速モードが選択されている時に高速用クラッチ140が受け持つ必要のある伝達トルク(分担トルク)である。操作量は、通常時のそれと同じである。
Figure 2021115994
付け加えると、(42)式に示す変速時の例では、制御量の数は5つであり、操作量の数は3つである。このように制御量の数が操作量の数よりも多い例であっても、5つの制御量のすべてに優先順位を付けつつ線形計画問題を数学的に解くことは可能である。このため、(42)式の通りに5つの状態量のすべてを目標状態量として用いる線形計画問題を解くこととしてもよい。その一方で、陽に(直接的に)制御可能な制御量の数は操作量の数と同じ3つである。そこで、4、5番目の優先順位の制御量を(42)式から除外したうえで(すなわち、制御量の数と操作量の数とを揃えたうえで)、線形計画問題を解くようにしてもよい。その結果、演算負荷を低減しつつ最適な操作量を決定できるようになる。このことは、次の実施の形態5の変速時の線形計画問題の例((44)式参照)についても同様である。
上述したパワートレーンシステム130を対象として、(41)及び(42)式に示す状態方程式と線形計画法とを利用して、実施の形態1と同様のトルクデバイス制御が実行されてもよい。内燃機関20に関する制約条件には、実施の形態1と同様の考え方に基づき、上述の予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクである上限制約値Temxr及び下限制約値Temnrが含まれる。
5.実施の形態5
次に、図13を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。図13は、本発明の実施の形態5に係るパワートレーンシステム150の構成例を説明するための模式図である。図13に示すパワートレーンシステム150は、制御装置152により制御されるトルクデバイスとして、内燃機関20、MG1、MG2及び自動変速機112を備えている。なお、図13では、インバータの図示は省略されている。この例では、MG1及びMG2が「第1トルクデバイス」に相当し、内燃機関20及び自動変速機112が「第2トルクデバイス」に相当する。
より詳細には、MG1は、内燃機関20と自動変速機112との間に配置されている。自動変速機112の出力軸は、デファレンシャルギヤ154を介して後輪156と連結されている。後輪156は、内燃機関20によって駆動可能である。また、後輪156は、電動機として機能するMG1によっても駆動可能である。MG1は、発電機として機能し、内燃機関20を用いた発電及び車両減速時の回生発電を行うこともできる。一方、MG2は、減速機構158及びデファレンシャルギヤ160を介して前輪162と連結されている。減速機構158とデファレンシャルギヤ160との間には、ドグクラッチ164が配置されている。MG2は、電動機として機能した時に前輪162を駆動可能であり、車両減速時には発電機として機能して回生発電を行うこともできる。バッテリ118は、発電機として機能するMG1及びMG2から電力の供給を受け、電動機として機能するMG1及びMG2に対して電力を供給する。このように、パワートレーンシステム150は、いわゆるシリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステムである。
次に、制御装置152によって線形計画法を用いた操作量の決定に用いられる線形の状態方程式について説明する。本パワートレーンシステム150によって制御される状態量(制御量)及び操作量については、以下に示す一例のように、通常時(非変速時)とクラッチ操作を伴う変速時とで異なっている。
具体的には、以下の(43)式に示すように、通常時(非変速時)に用いられる制御量は、前輪162の駆動トルクTpf、後輪156の駆動トルクTpr、及び充放電量Pchgである。操作量は、エンジントルクTeとMG1トルクTmg1とMG2トルクTmg2である。
Figure 2021115994
一方、以下の(44)式に示すように、クラッチ操作を伴う変速時に用いられる制御量は、駆動トルクTpf、Tpr及び充放電量Pchgとともに、MG1回転数変化率dNgとMG2回転数変化率dNmとTxとを含む。Txは、ドグクラッチ164が受け持つ必要のある伝達トルク(分担トルク)である。また、操作量は、エンジントルクTe、MG1トルクTmg1及びMG2トルクTmg2とともに、自動変速機112の各トルク容量Tcr及びTceを含む。
Figure 2021115994
上述したパワートレーンシステム150を対象として、(43)及び(44)式に示す状態方程式と線形計画法とを利用して、実施の形態1と同様のトルクデバイス制御が実行されてもよい。第2トルクデバイスの1つである内燃機関20に関する制約条件には、実施の形態1と同様の考え方に基づき、上述の予測最大エンジントルク及び予測最小エンジントルクである上限制約値Temxr及び下限制約値Temnrが含まれる。また、もう1つの第2トルクデバイスである自動変速機112に関する制約条件には、内燃機関20の例と同様の考え方に基づいて算出される予測最大トルク容量及び予測最小トルク容量が、上下限制約値として含まれてもよい。
6.実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について説明する。本実施形態のパワートレーンシステム(図示省略)は、車両の動力源として内燃機関20のみを備えている。より詳細には、このパワートレーンシステムでは、内燃機関20は、一例として自動変速機112(図11参照)と組み合わされているものとする。
次に、本実施形態の制御装置によって線形計画法を用いた操作量の決定に用いられる線形の状態方程式について説明する。以下の(45)式に示すように、通常時(非変速時)に用いられる状態量は、駆動トルクTpであり、操作量は、エンジントルクTeである。一方、以下の(46)式に示すように、変速時に用いられる制御量は、駆動トルクTpとともに、エンジン回転数変化率dNeを含む。また、操作量は、エンジントルクTeとともに、自動変速機112の変速時に解放側となるクラッチのトルク容量Tcrと、変速時に係合側となるクラッチのトルク容量Tceとを含む。この例では、内燃機関20は、実施の形態1と異なり、「第1トルクデバイス」に相当する。自動変速機112は、第1トルクデバイス(内燃機関20)と比べて出力の応答遅れの大きな「第2トルクデバイス」に相当する。
Figure 2021115994
上述した本実施形態のパワートレーンシステムを対象として、(45)及び(46)式に示す状態方程式と線形計画法とを利用して、実施の形態1と同様のトルクデバイス制御が実行されてもよい。第2トルクデバイスである自動変速機112に関する制約条件には、内燃機関20の例と同様の考え方に基づいて算出される予測最大トルク容量及び予測最小トルク容量が、上下限制約値として含まれる。
7.実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
7−1.実施の形態1〜6に係るパワートレーンシステムの課題
実施の形態1(実施の形態2〜6も同様)では、各制御量(Tp、Pchg、dNg)の目標値からの乖離を最小化しながら((2)式参照)操作量(Te、Tg、Tm)を算出する際に、各制御量の上下限に関する制約条件((6)〜(8)式参照)を常に守ることが要求される。その結果、各操作量をその制約条件((9)〜(12)式参照)を満たす範囲内でどのように動かしても、制御量の上下限に関する制約条件を守れなくなることが起こり得る。このように操作量の算出の際に制御量の上下限に関する制約条件を守れない場合には、線形計画問題Fの解(実行可能解)が無い状態となる。したがって、線形計画問題Fを解く最適操作量探索器(実施の形態1の例では、操作量決定部58)は、操作量を決定できなくなる。
7−2.実施の形態7に係る目的関数及び制約条件の設定例
実施の形態7に係るパワートレーンシステムは、以下に説明する点において、実施の形態1に係るパワートレーンシステム10と相違している。具体的には、上述の課題に鑑み、本実施形態では、操作量(Te、Tg、Tm)を決定するために用いられる目的関数及び制約条件の定式化の手法が、実施の形態1に対して次のように変更される。
次の(47)式は、本実施形態において操作量決定部58が操作量を決定するために用いる線形計画問題の目的関数(評価関数)f2の一例を示している。また、以下の(3)〜(5)、(9)〜(12)、(48)〜(54)式は、この目的関数f2とともに用いられる制約条件の一例を示している。
Figure 2021115994
上記のように、本実施形態で用いられる制約条件では、各制御量(Tp、Pchg、dNg)の上下限制約値に関する(48)〜(53)式が、実施の形態1で用いられる(6)〜(8)式に対して変更されている。そして、これに付随して、(13)式が(54)式のように変更されている。より詳細には、(48)〜(53)式中のy 及びy (i=4〜9)は次の通りである。
:下限制約値Tpmnに対する駆動トルクTpの超過量
:下限制約値Tpmnに対する駆動トルクTpの余裕量
:上限制約値Tpmxに対する駆動トルクTpの余裕量
:上限制約値Tpmxに対する駆動トルクTpの超過量
:下限制約値Winに対する充放電量Pchgの超過量
:下限制約値Winに対する充放電量Pchgの余裕量
:上限制約値Woutに対する充放電量Pchgの余裕量
:上限制約値Woutに対する充放電量Pchgの超過量
:下限制約値dNgmnに対する回転数変化率dNgの超過量
:下限制約値dNgmnに対する回転数変化率dNgの余裕量
:上限制約値dNgmxに対する回転数変化率dNgの余裕量
:上限制約値dNgmxに対する回転数変化率dNgの超過量
上記のy 及びy (i=4〜9)を用いる(48)〜(53)式により、制御量の上下限制約が、(6)〜(8)式による不等式制約から等式制約に変更されている。なお、本実施形態においても、実施の形態1等と同様に、操作量(Te、Tg、Tm)の上下限に関する制約条件(上述の(9)〜(12)式参照)を常に守ることが要求される。
そのうえで、本実施形態の目的関数f2は、(2)式の右辺と同じ3つの項(目標値に対する各制御量の乖離量の3つの項)とともに、制約値に対する各制御量の超過量に関する3つの項を有している。より詳細には、後者の3つの項に関し、2つの超過量y とy との和(y とy )は、上下限制約値Tpmn又はTpmxに対する駆動トルクTpの超過量をまとめて表現したものである。Pは、この超過量(y とy )の優先度に相当する。同様に、和(y とy )は上下限制約値Win又はWoutに対する充放電量Pchgの超過量に相当し、Pはこの超過量(y とy )の優先度に相当する。和(y とy )は上下限制約値dNgmn又はdNgmxに対する回転数変化率dNgの超過量に相当し、Pはこの超過量(y とy )の優先度に相当する。
また、本実施形態では、優先度P〜Pの高低は、一例として次のように設定されている。すなわち、各制約値(複数の制約条件)を守ることに関する優先度P〜Pが、各制御量の目標値の達成に関する優先度P〜Pよりも高くなるように設定されている(P〜P>P〜P)。優先度P〜Pの間での優先度の高低、及び、優先度P〜Pの間での優先度の高低の設定は任意である。一例として、優先度P〜Pに関しては、駆動トルクTpの優先度Pが最も高く、次いで回転数変化率dNgの優先度Pが高く、充放電量Pchgの優先度Pが最も低くなるように設定されている(P>P>P)。優先度P〜Pの高低の設定の一例は、実施の形態1と同じである(P>P>P)。
本実施形態の目的関数f2における優先度P〜Pの具体例は、実施の形態1と同様の考え方に基づく優先順位である。また、優先度P〜Pの他の具体例として、既述したように、重みが用いられてもよい。そのうえで、(47)式の目的関数f2及び(3)〜(5)、(9)〜(12)、(48)〜(54)式に示す制約条件を利用する本実施形態の線形計画問題を解いて操作量(Te、Tg、Tm)を決定する手法としては、例えば、実施の形態1で説明した手法を用いることができる。
7−3.作用効果
上述した本実施形態の目的関数f2及び制約条件の利用により、操作量決定部58は、上述の優先度P〜Pが高い順で(47)式の各項が小さくなるように操作量(Te、Tg、Tm)を決定する。このような操作量(Te、Tg、Tm)の決定に関しては、制約値に関する3つの超過量の項(P(y +y )、P(y +y )及びP(y +y ))に着目すると、次のことがいえる。すなわち、優先度P〜Pが高い順で各超過量の最小化が図られる。換言すると、優先度P〜Pが低い順で各超過量が最小化されにくくなることになる。その結果、操作量が決定された際の各超過量は、優先度(P〜P)が低い順で大きくなる。
したがって、本実施形態によれば、制御量の上下限に関する複数の制約条件を守ると操作量が定まらない場合(より詳細には、実施の形態1の(6)〜(8)式を守ると操作量が定まらない場合)には、操作量決定部58は、次のような処理を実行する。すなわち、優先度P〜Pが低い順で当該複数の制約条件を緩めつつ、操作量(Te、Tg、Tm)が決定される。このように制約条件を必要に応じて緩めることにより、操作量が決まらないことを回避できる。
(定式化の変更の意義の補足)
付け加えると、制約条件を必要に応じて緩めるために定式化の変更を利用する本実施形態によれば、以下に説明する理由によって操作量が決まらないことを回避できる。すなわち、本実施形態では、(48)〜(53)式の利用により、制御量の上下限制約が(6)〜(8)式による不等式制約から等式制約に変更されている。そして、これらの等式制約によれば、(48)式を例に挙げると、制約値(Tpmn)に対する制御量(Tp)の正の超過量(y )を制御量の組み合わせ(c11+c12+c13)に加え、かつ、この組み合わせから正の余裕量(y )を引いて得られる値が制約値(Tpmn)になる。このような等式制約であれば、制御量のある組み合わせが与えられたときに、超過量(y 等)又は余裕量(y 等)がどのような値であっても各等式が成立することになる。したがって、線形計画問題の解が無い(すなわち、操作量が決まらない)という事態を回避できる。
(制御量の超過量の最小化)
また、(47)式で表される目的関数f2の利用により、各制約値に関する制約条件を緩める場合には、既述したように、優先度P〜Pが高い順で各超過量の最小化が図られることになる。つまり、操作量決定部58によれば、複数の制約条件のそれぞれに対応する上限制約値又は下限制約値に対する超過量を優先度が高い順で最小化させつつ当該複数の制約条件が緩められる。このように、本実施形態によれば、優先度を考慮しながら制御量の超過量を適宜最小化(最適化)しつつ、操作量が決まらないことを回避できる。
(優先度の設定:P〜P>P〜P
さらに、本実施形態では、制御量の各制約値を守る際の優先度P〜Pが、各制御量の目標値の達成に関する優先度P〜Pよりも高くなるように設定されている。このような設定によれば、各制御量の目標値の達成よりも各制御量の上下限制約値の超過を抑制しつつ、制約条件を守れない場合には優先度P〜Pが低い順で制約条件を緩める(上下限制約値の超過を許容する)ことが可能となる。
7−4.変形例
実施の形態7において説明した定式化の変更手法は、他の実施の形態2〜6に係るパワートレーンシステムに対して適用されてもよい。
(定式化の他の変更例)
上述した実施の形態7における(47)式では、同一の制御量に対する上下限制約値のそれぞれの超過量には、同じ優先度P、P又はPが与えられている。しかしながら、制御量の上下限制約値の超過量に対する優先度の与え方は、上記の例に限らず、例えば、以下の(55)式に示す手法であってもよい。すなわち、(55)式に示す目的関数f3では、超過量y 、y 、y 、y 、y 及びy に対し、それぞれ優先度P〜Pが与えられている。このように、同一の制御量に対する上限制約値の超過量と下限制約値の超過量のそれぞれに優先度が個別に与えられてもよい。
Figure 2021115994
また、実施の形態7における(48)〜(53)式に示す制約条件の例では、各制御量の上下限制約値のそれぞれの数は、それぞれ1つである。しかしながら、同一の制御量に対する上限制約値又は下限制約値の数は、2つ以上であってもよい。換言すると、同一の上限制約値又は下限制約値に対して2つ以上の制約条件(制約式)が設定されてもよい。
より詳細には、例えば、同一の制御量に対する上限制約値及び下限制約値のそれぞれの数が2つの例では、2つの上限制約値及び2つの下限制約値のそれぞれに対して個別に優先度が与えられてもよい。また、この例では、2つの上限制約値(例えば、Tpmx1及びTpmx2)及び2つの下限制約値(例えば、Tpmn1及びTpmn2)のうち、一対の上下限制約値(Tpmx1とTpmn1)に対して1つの優先度が与えられ、かつ、他の一対の上下限制約値(Tpmx2とTpmn2)に対して他の1つの優先度が与えられてもよい。
また、以下の(56)式は、上述の後者の例における優先度の与え方を具体的に例示したものである。また、(56)式に示す目的関数f4中の優先度P〜Pの高低の一例は、P>P>P>P>P>P>P>P>Pである。なお、(56)式に示す例では、駆動トルクTpは、2つの下限制約値Tpmn1及びTpmn2(Tpmn2<Tpmn1)と、2つの上限制約値Tpmx1及びTpmx2(Tpmx2>Tpmx1)とを有する。そして、超過量y 及びyは、それぞれ、下限制約値Tpmn1及びTpmn2に対する駆動トルクTpの超過量である。超過量y 及びyは、それぞれ、上限制約値Tpmx1及びTpmx2に対する駆動トルクTpの超過量である。このことは、他の充放電量Pchgの2つの下限制約値Win1、Win2(Win2<Win1)及び2つの上限制約値Wout1、Wout2(Wout2>Wout1)と、超過量y 、y、y 、yとの関係についても同様である。また、上記は、回転数変化率dNgの2つの下限制約値dNgmn1、dNgmn2(dNg2mn2<dNgmn1)及び2つの上限制約値dNgmx1、dNgmx2(dNgmx2>dNgmx1)と、超過量y 、y、y 、yとの関係についても同様である。
Figure 2021115994
以上例示したように、実施の形態8に係る定式化の変更手法に関し、目的関数(評価関数)の形及び優先度の与え方、並びに制約条件の数(上下限制約値の数)は任意に決定することができる。付け加えると、上述した定式化の変更手法の要点は、制御量の上下限制約値を不等式制約ではなく等式制約で扱うとともに、目的関数において上下限制約値の超過量に対して優先度に応じたペナルティを与えることである。
8.実施の形態8
次に、図14〜図17を参照して、本発明の実施の形態8及びその変形例について説明する。本実施形態は、上述の項目7−1.に記載の課題への対策の他の例に相当する。ただし、本実施形態では、実施の形態7のような定式化は行われない。本実施形態に係るパワートレーンシステムは、以下に説明する処理が追加的に行われる点において、実施の形態1に係るパワートレーンシステム10と相違している。なお、以下に説明する処理は、他の実施の形態2〜6に係るパワートレーンシステムに対して適用されてもよい。
8−1.概要
本実施形態では、操作量決定部58は、制御量(Tp、Pchg、dNg)の上下限制約値に関する複数の制約条件((6)〜(8)式)を守ると操作量(Te、Tg、Tm)が定まらない場合には、優先度(より詳細には、例えば優先順位)が低い順で制約値を順番に拡大する。なお、ここでいう「制約値を拡大する」とは、上限制約の場合は値を大きくすることを意味し、下限制約の場合は値を小さくすることを意味する。
本実施形態では、操作量(Te、Tg、Tm)をどのように動かしても制御量の制約値に関する複数の制約条件を守れない場合には、上記のような制約値の拡大を利用して、優先順位が低い順で複数の制約条件のうちの1つを緩めつつ操作量が決定される。
8−2.制御装置の処理
図14は、本発明の実施の形態8に係るトルクデバイス制御に関する処理のルーチンを示すフローチャートである。なお、図14に示すルーチン中のS100〜S112、及び、S116〜S120の処理については、実施の形態1において既述した通りである。
図14に示すルーチンの処理は、ステップS110の判定結果が否定的である場合にはステップS200に進む。ステップS200では、制御装置50(操作量決定部58)は、ステップS116と同様の処理によって、初期基底解を探索する。
次いで、ステップS202では、操作量決定部58は、初期基底解があるか否かを判定する。この判定は、目的関数z(実施の形態1の(36)式参照)がゼロになるか否か(つまり、人為変数tがすべてゼロになるか否か)に基づいて行われる。その結果、ステップS202の判定結果が肯定的である場合(目的関数zがゼロになる場合)には、初期基底解を取得したうえで、処理はステップS118に進む。
一方、ステップS202の判定結果が否定的である場合(目的関数zがゼロにならない場合)には、初期基底解がない(制約条件を満たす実行可能解がない)と判定される。その後、処理はステップSS204に進む。
ここで、制御量(Tp、Pchg、dNg)の各制約値(上下限制約値Tpmn、Tpmx、Win、Wout、dNgmn、dNgmx)には、それぞれ優先順位(優先度)P〜Pが与えられているものとする。優先順位P〜Pの高低は、実施の形態7において説明したように任意に設定可能である。ステップS204では、操作量決定部58は、優先順位P〜Pに応じて(より詳細には、優先順位P〜Pが低い順で)制約値を拡大させる。なお、ステップS204の処理は、ステップS202の判定結果が肯定的になるまで、必要に応じて繰り返し実行される。
図15は、ステップS204の処理において利用される制約値の拡大手法の一例に関するルーチンを示すフローチャートである。本実施形態で用いられる制御量の制約値の数は上述のように6つであるが、ここでは、説明の簡素化のために、2つの制約値A、Bのみが用いられ、かつ、制約値Bよりも制約値Aの優先順位が高い例を挙げて、制約値の拡大手法が説明される。
図15に示すルーチンでは、操作量決定部58は、まず、ステップS300において、優先順位が相対的に低い制約値Bを任意の所定量だけ拡大する。次いで、ステップS302では、操作量決定部58は、制約値Bの総拡大量が判定値c以下であるか否かを判定する。ここでいう制約値Bの総拡大量は、例えば、本ルーチンの処理の開始時の制約値B(初期値)に対する現在の制約値Bの差に相当する。或いは、この総拡大量は、後述のステップS312の処理によって判定値cが更新された際にゼロにリセットされてもよい。
ステップS302の判定結果が肯定的である場合(制約値Bの総拡大量≦判定値c)には、処理はステップS304に進む。ステップS304では、操作量決定部58は、ステップS300の処理による拡大後の値で制約値Bを更新する。その後、今回の処理サイクルが終了される。
一方、ステップS302の判定結果が否定的である場合、つまり、制約値Bの総拡大量が判定値cを超えた場合(制約値Bの総拡大量>判定値c)には、処理はステップS306に進む。ステップS306では、操作量決定部58は、制約値Bに代え、優先順位が相対的に高い制約値Aを任意の所定量だけ拡大する。次いで、ステップS308では、操作量決定部58は、制約値Aの総拡大量が判定値d以下であるか否かを判定する。ステップS308の判定処理は、ステップS302のそれと同様の考え方に基づいている。ただし、判定値dは、判定値cと同じでもよいし、異なっていてもよい。
ステップS308の判定結果が肯定的である場合(制約値Aの総拡大量≦判定値d)には、処理はステップS310に進む。ステップS310では、操作量決定部58は、ステップS306の処理による拡大後の値で制約値Aを更新する。その後、今回の処理サイクルが終了される。なお、制約値Bに関しては、このように処理がステップS310に進んだ場合には、ステップS300の処理による拡大後の値を用いた制約値Bの更新は行われない。
一方、ステップS308の判定結果が否定的である場合(制約値Aの総拡大量>判定値d)、つまり、制約値Bの総拡大量が判定値cを超えているだけでなく、制約値Aの総拡大量も判定値dを超えた場合には、処理はステップS312に進む。ステップS312では、操作量決定部58は、判定値c、dをそれぞれ所定量だけ拡大することによって、これらの判定値c、dを更新する。なお、判定値cと判定値dとは、同じ所定量だけ拡大されてもよいし、互いに異なる所定量によって拡大されてもよい。ステップS312の処理の後に、処理はステップS304に進む。すなわち、このように処理がステップS308及びS312を経由してステップS304に進んだ場合には、ステップS300の処理による拡大後の値を用いた制約値Bの更新が再開される。
8−3.作用効果
上述した図15に示す制約値の拡大手法によれば、まず、優先順位が相対的に低い制約値Bが徐々に増やされる。その結果として制約値Bが判定値cを超えた場合には、次に、優先順位が相対的に高い制約値Aが徐々に増やされる。その結果として制約値Aが判定値dを超えた場合には、判定値c、dが拡大される。その後は、拡大された判定値cを超えるまで、再び制約値Bが徐々に増やされる。以下、同様である。
上述のように、本拡大手法によれば、ステップS202において初期基底解がない(すなわち、複数の制約条件を守ると操作量が定まらない)と判定された場合には、優先順位が低い順で順番に制約値を拡大できるようになる。そして、本拡大手法は、2つの制約値A、Bの例に代え、3つ以上の制約値の例に対しても拡張して適用可能である。したがって、例えば本拡大手法を応用することにより、ステップS204において本実施形態で用いられる6つの制約値(Tpmn等)を対象として、優先順位P〜Pが低い順で制約値を順番に拡大できることが分かる。
以上説明したように、本実施形態によれば、Tpmn等の6つの制約値(すなわち、複数の制約条件)を守れない場合には、優先順位(優先度)P〜Pが低い順で制約値を順番に拡大しつつ(すなわち、当該複数の制約条件のうちの1つを順番に緩めつつ)、操作量(Te、Tg、Tm)を決定できるようになる。このため、本実施形態においても、このように制約条件を必要に応じて緩めることにより、操作量が決まらないことを回避できる。
付け加えると、図15に示す制約値の拡大手法によれば、各制約値は、優先順位が低い順で徐々に拡大される。このため、各制約値に対する制御量の超過量を最小限に抑えつつ、操作量が決定不能となることを回避できるようになる。
(制約値の変化の具体例)
次に、図16を参照して、図15に示す拡大手法による各制約値の変化の例について補足する。図16は、図15に示す拡大手法によって各制御量の各制約値が変化していく様子の一例を表したタイムチャートである。
図16に示す例で用いられる制御量は、実施の形態8とは異なり、駆動トルクTpと充放電量Pchgとエンジン回転数Neである。また、この例で用いられる制御量の制約値は、駆動トルクTpの上限制約値Tpmxと、充放電量Pchgの2つの下限制約値Win1、Win2(Win2<Win1)と、エンジン回転数Neの2つの上限制約値Nemx1、Nemx2(Nemx2>Nemx1)の5つである。この例における各制約値の優先順位の高低の一例は、Nemx2>Win2>Tpmx>Nemx1>Win1である。なお、図16では、各制約値はすべて一点鎖線で表されており、実線は各制御量の実値に相当する。
図16は、ハイブリッド車両(図1参照)が連続的に坂を下っている連続降坂時における制約値の変化の例を示している。このように坂を下っている時には、アクセルペダルがオフとされ、ハイブリッド車両には高い車両制動力が要求されている。この要求を受け、図16に示す例では、駆動トルクTpの上限制約値Tpmxが時間経過とともに減少している。高い車両制動力の実現のためには、エンジン回転数Neを高めてエンジンブレーキ力を高めることと、MG2の負トルクを高めて回生ブレーキ力を高めることが効果的である。そこで、この例では、操作量決定部58は、上記のように減少していく上限制約値Tpmx付近で駆動トルクTpを制御しつつ、エンジン回転数Neが高くなり、かつ、回生発電のために充放電量Pchgが下限制約値Win1付近となるように、操作量(Te、Tg、Tm)を決定している。
そのうえで、連続降坂中の時点t11においては、駆動トルクTpが上限制約値Tpmxに近接し、かつ、充放電量Pchgが下限制約値Win1に近接している状況下において、エンジン回転数Neが上限制約値Nemx1に到達している。エンジン回転数Neが上限制約値Nemx1を超えると、操作量を決定できなくなる。そこで、この制御例では、時点t11の経過に伴い、最も優先順位の低い下限制約値Win1が下限制約値Win2に拡大されている。その結果、上限制約値Tpmx及び上限制約値Nemx1を守りつつ、操作量の決定を継続できている。
その後の時点t12は、下限制約値Win2にまで下限制約値Winを下げても、上限制約値Tpmx及び上限制約値Nemx1の双方を守れなくなる時点に相当する。この制御例では、時点t12の経過に伴い、下限制約値Win1の次に優先順位の低い上限制約値Nemx1が上限制約値Nemx2に拡大されている。その結果、上限制約値Tpmx及び下限制約値Win2を守りつつ、操作量の決定を継続できている。
その後の時点t13においては、駆動トルクTpが上限制約値Tpmxに近接し、かつ、充放電量Pchgが下限制約値Win2に近接している状況下において、エンジン回転数Neが上限制約値Nemx2に到達している。エンジン回転数Neが上限制約値Nemx2を超えると、操作量を決定できなくなる。そこで、この制御例では、時点t13の経過に伴い、上限制約値Nemx1の次に優先順位の低い上限制約値Tpmxが所定量だけ拡大されている。その結果、図16に示す連続降坂の例では、上限制約値Nemx2及び下限制約値Win2を守りつつ、所望の車両制動力が得られるように操作量の決定を継続できている。
上述した図16に示す制御例からも分かるように、実施の形態8に係る対策によれば、各制約値は、優先順位が低い順で徐々に拡大される。このため、既に述べたように、各制約値に対する制御量の超過量を最小限に抑えつつ、操作量が決定不能となることを回避できるようになる。また、優先度が相対的に高い制約値(図16に示す例では、上限制約値Nemx2及び下限制約値Win2)を守ることを重視しつつ、操作量が決定不能となることを回避できるようになる。
8−4.制約値の拡大手法の他の例
図15に示すルーチンの処理では、優先順位が低い順で制約値が1つずつ拡大されていく(すなわち、一度に複数の制約条件のうちの1つが緩められる)。しかしながら、このような例に代え、優先順位が低い順で2つ以上の制約値が同時に拡大されてもよい(すなわち、2つ以上の制約条件が同時に緩められてもよい)。より詳細には、例えば、同一の制御量の上限制約値と下限制約値とが同時に拡大されてもよい。以下に図17を参照して説明する手法は、優先順位(優先度)に応じて異なる拡大量で2つ以上の制約値を同時に拡大する手法の一例に相当する。
図17は、ステップS204(図14参照)の処理において利用される制約値の拡大手法の他の一例に関するルーチンを示すフローチャートである。図17に示す例においても、図15に示す例と同様に、説明の簡素化のために、2つの制約値A、Bのみが用いられ、かつ、制約値Bよりも制約値Aの優先順位が高い例が取り挙げられている。
図17に示すルーチンでは、操作量決定部58は、ステップS400の処理を実行する。ステップS400では、優先度(優先順位)に応じた拡大量で制約値A、Bが拡大され、拡大後の値で制約値A、Bが更新される。具体的には、ステップS400では、優先度が相対的に高い制約値Aの拡大量は、優先度が相対的に低い制約値Bの拡大量よりも小さい。このように、優先度に応じて拡大量に差を付けつつ同時に複数の制約値が拡大されてもよい。そして、このような手法によっても、実施の形態7と同様に、「複数の制約条件のそれぞれに対応する上限制約値又は下限制約値に対する超過量を優先度が高い順で最小化させつつ複数の制約条件を緩める処理」を行うことが可能となる。なお、図17に示す例とは異なり、同時に拡大される際の複数の制約値の拡大量は同じであってもよい。
付け加えると、図15に示す手法と図17に示す手法とが組み合わされてもよい。そのような組み合わせの具体的な説明のために、4つの制約値A、B、C、Dが用いられ、かつ、各制約値の優先度の高低がC>D>A>Bである例を取り挙げる。この例では、まず、制約値A、Bの拡大量がA<Bとされ、かつ、制約値C、Dの拡大量がC<Dとされてもよい。そして、図15に示すルーチンの手法と同様の考え方で、優先度が相対的に低い制約値A、Bの組が、制約値C、Dの組よりも先に拡大されてもよい。
9.他の実施の形態
上述した実施の形態1における「操作量決定部58」では、トルクデバイスの最適な操作量を決定するために、複数の目標状態量に対して優先度P〜Pが設定されている。しかしながら、本発明に係る「操作量決定部」は、必ずしも優先度を利用する例に限られない。したがって、操作量決定部58は、優先度を設定せずに複数の目標状態量を最大限実現する操作量を決定するものであってもよい。具体的には、優先度を設定しない例では、複数の制御量(目標状態量)に対して所定の正規化を行ったうえで、以下の(57)式に示されるように優先度P〜Pを含まない目的関数f5を制約条件の下で最小にする解を求めるようにしてもよい。ここでいう正規化は、例えば、各制御量の最大値を1とし、その最小値を0にすることによって行うことができる。
Figure 2021115994
また、実施の形態7及び8では、各制御量(制御対象の状態量)の複数の制約値(複数の制約条件)に対して優先度P〜P等が設定されている。しかしながら、上述の目標状態量の例と同様に、本発明に係る「操作量決定部」は、複数の状態量(制御量)の上限制約値及び下限制約値の少なくとも一方に関する複数の制約条件に対して必ずしも優先度を利用する例に限られない。
以上説明した各実施の形態に記載の例及び他の各変形例は、明示した組み合わせ以外にも可能な範囲内で適宜組み合わせてもよいし、また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形してもよい。
1、2 モータジェネレータ(MG)
10、90、110、130、150 パワートレーンシステム
20 内燃機関
28 クランク角センサ
34、132 動力分割機構
38 車輪
40、98、120 インバータ
44、100、118 バッテリ
50、96、116、144、152 制御装置
92 発電機
94 電動機
112 自動変速機
112a 自動変速機のクラッチ
114 モータジェネレータ
138 低速用クラッチ
140 高速用クラッチ
156 後輪
162 前輪
164 ドグクラッチ

Claims (1)

  1. 車両の駆動力の制御に関係する第1及び第2トルクデバイスと、
    前記第1及び第2トルクデバイスを制御する制御装置と、
    を備えるパワートレーンシステムであって、
    前記第2トルクデバイスは、前記第1トルクデバイスと比べて出力の応答遅れが大きく、
    前記制御装置は、
    前記パワートレーンシステムの制御対象の複数の状態量と前記第1及び第2トルクデバイスのそれぞれの操作量である第1及び第2操作量との関係を規定する線形の状態方程式に基づいて、前記パワートレーンシステムの複数の制約条件を満たす範囲内で前記複数の状態量の目標値である複数の目標状態量を最大限実現する前記第1及び第2操作量を、線形計画問題を解くことにより決定して出力する操作量決定部と、
    前記操作量決定部から出力された前記第1及び第2操作量に従って前記第1及び第2トルクデバイスを制御するトルクデバイス制御部と、
    を含み、
    前記複数の制約条件は、前記第2操作量の上下限制約値を含み、
    前記制御装置は、
    現在の時間ステップにおける前記第2トルクデバイスの運転条件の下で前記第2トルクデバイスが出力可能な最大操作量及び最小操作量に対して前記第2トルクデバイスの出力の応答遅れを反映することによって、次の時間ステップにおける前記第2トルクデバイスの予測最大操作量及び予測最小操作量を、前記第2操作量の前記上下限制約値として算出する操作量上下限算出部をさらに含み、
    前記操作量決定部は、前記線形計画問題を解くことにより決定した前記第2操作量の決定値を修正する操作量修正部を含み、
    前記操作量修正部は、前記次の時間ステップにおいて前記決定値を実現する第2操作量となるように、前記第2トルクデバイスの応答遅れ特性の逆特性に従って前記決定値を修正することによって修正後第2操作量を算出し、
    前記操作量決定部は、前記修正後第2操作量を前記トルクデバイス制御部に出力する
    ことを特徴とするパワートレーンシステム。
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