JP2021114920A - 果汁含有飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】果汁感が良好な果汁含有飲料を提供すること。【解決手段】果汁含有飲料は、果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料であって、ヘキサン酸エチルを含み、ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbである。果汁含有飲料中のヘキサン酸エチルの含有量は0.1ppb以上100ppb未満であってもよい。果汁含有飲料の果汁率は10〜50質量%であってもよい。果汁含有飲料の糖度は1〜10であってもよい。果汁含有飲料はソフトフルーツの果汁を含んでいてもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、果汁含有飲料に関する。
果物の果汁や果汁の香りを有する飲料(以下、「果汁含有飲料」という。)は、嗜好性の高い飲料のひとつとして、消費者に幅広く受け入れられている。このような飲料は、果実由来の果汁感等の風味によって、飲用したときに果実の風味が得られるという特徴がある。
果汁含有飲料において、飲んだときに感じられるこのような風味を増強するためには、果汁の含有率をなるべく高くすることが本質的な解決方法である。しかしながら、原料に使用するコストの制約などの理由により、低果汁領域において果汁の含有率を固定したままでもこのような風味の強さを調整できることが好ましい。低果汁飲料において感じられる果汁感やコクを高める方法としては、例えば特許文献1等が知られている。
商品設計の自由度の観点から、様々な方法により果汁感を高められることが好ましく、そのため、更なる新規な方法が求められている。
特開2016−73275号公報
本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、果汁感が良好な果汁含有飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定の果汁率の果汁含有飲料が所定の濃度のヘキサン酸エチルを含むことで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
<1> 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料であって、ヘキサン酸エチルを含み、上記ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbである、果汁含有飲料。
<2> 上記ヘキサン酸エチルの含有量が0.1ppb以上100ppb未満である、<1>に記載の果汁含有飲料。
<3> 上記果汁率が10〜50質量%である、<1>又は<2>に記載の果汁含有飲料。
<4> 糖度が1〜10である、<1>〜<3>のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
<5> ソフトフルーツの果汁を含む、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
<6> 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料に、ヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加することを含む、果汁含有飲料の製造方法。
<7> 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料に、ヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加することを含む、上記果汁含有飲料を飲んだときに感じられる果汁感を高める方法。
<8> ヘキサン酸エチルを含み、果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料中に、上記ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加される、風味増強剤。
本発明によれば、果汁感が良好な果汁含有飲料を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「X〜Y(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
<1.果汁含有飲料>
果汁含有飲料は、果汁率が1〜80質量%であって、ヘキサン酸エチルを含み、ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbである。当該構成を満足することで、果汁感が良好な果汁含有飲料となる。
なお、本明細書において、「果汁感」とは「由来する果物を想起する風味」を意味する。また、「コク」とは「深みのある濃い味わい」を、「フレッシュ感」とは「新鮮さを想起する風味」を、それぞれ意味する。
本明細書において「果汁含有飲料」とは、任意の果実からの搾汁(果汁)を含む飲料を意味する。果汁は、全果(皮等も含めた果実全体)をインライン搾汁機等を用いて果汁分と果皮を含む残渣とに圧搾分離し、この圧搾分離した果汁を殺菌及び冷却する方法、あるいは全果を果皮部と果肉部とに分離し、または半切した後果肉部だけを搾汁し、殺菌及び冷却を行う方法等、果実飲料の原料用果汁として一般的に製造されている方法によって製造される。果汁には果実の搾汁を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁を希釈した還元果汁を含む。果実の搾汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、皮、種子等を除去したピューレ等を指す。
果汁を処理する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。
果汁は清澄処理した透明果汁でもよく、混濁果汁でもよい。
果汁としては市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用いてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種又は2種以上を果汁含有飲料調製のために用いることができる。
果汁含有飲料に含まれる果汁の由来となる果物は、特に限定されないが、例えば、ブドウ、マスカット、桃、マンゴー、リンゴ、パッションフルーツ、イチゴ、バナナ、梅、サクランボ、カシス、メロン、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、梨、ライチ、ユズ等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの内、本発明の効果が奏されやすいという観点から、果汁含有飲料にはソフトフルーツの果汁が含有されることが好ましく、ソフトフルーツの中でもブドウであることがより好ましく、赤ブドウであることが特に好ましい。なお、本明細書において、「ソフトフルーツ」とは柑橘系以外の果実を指すものと定義することができる。
果汁含有飲料に含まれる果汁の調製に用いることのできる果物について、その品種、産地、熟度、大きさなどは特に限定されない。例えば果汁として赤ブドウ果汁を用いる場合の品種としては、コンコード、巨峰、紅マスカット、デラウェア、安芸クイーン、サニードルチェ、サニールージュ、ピオーネ、藤稔、ナガノパープル、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラーズ、キャンベル・アーリー、スチューベン等が挙げられるが、本発明の効果が奏されやすいという観点から、コンコードを含むことが好ましい。白ブドウ果汁を用いる場合の品種としては、例えば、マスカット(マスカットオブアレキサンドリア)、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、ピッテロビアンコ、シャルドネ、トムソン・シードレス等が挙げられる。これらの品種は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[果汁率]
果汁含有飲料の果汁率は1〜80質量%の範囲であれば特に限定されないが、本発明の効果が奏されやすいという観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、果汁含有飲料の果汁率は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
ここで、果汁率とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(Brix値)又は酸度(Ac)に基づいて換算される。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100mL中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100mL)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁率をBrix値又は酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果
物の種類ごとに定められている。例えば、ブドウはBrix値に基づいて算出する。果汁含有率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
例えば、ブドウについては基準Brix値がBx11°であるから、Brix値がBx55°の濃縮ブドウジュースを飲料中10質量%配合した場合、50%の果汁率の飲料を得ることができる。
[ヘキサン酸エチル]
果汁含有飲料に含まれるヘキサン酸エチルは、香気成分である。ヘキサン酸エチルとしては、特に限定されないが化合物の市販品を用いて配合したり、ヘキサン酸エチルが含まれる天然物やその抽出液を配合することができる。
果汁含有飲料中のヘキサン酸エチルの含有量は、0.0001〜100ppbの範囲である。ヘキサン酸エチルの含有量をこのような範囲に調整することで、果汁感が良好な果汁含有飲料を得ることができる。また、このような風味をより良好なものとする観点から、ヘキサン酸エチルの含有量は、0.1ppb以上であることが好ましく、10ppb以上であることがより好ましく、25ppb以上であることが更に好ましく、50ppb以上であることが特に好ましい。
他方で、フレッシュ感もより良好とする観点から、ヘキサン酸エチルの含有量は100ppb未満であることが好ましく、90ppb以下であることがより好ましく、80ppb以下であることが更に好ましい。
本明細書において、ヘキサン酸エチルの含有量は、ヘキサン酸エチルの添加量としてもよく、次の方法による分析値としてもよい。
果汁含有飲料におけるヘキサン酸エチルの含有量は、固相マイクロ抽出−質量分析計付きガスクロマトグラフィー(Solid Phase MicroExtraction−Gas Chromatography−Mass Spectrometry:SPME−GC−MS)法により測定することができる。具体的な分析条件の例は以下のとおりである。
(香気成分含有量の分析条件)
分析対象である飲料10mLを、あらかじめ3.5gのNaClを入れた固相マイクロ抽出(SPME)用バイアルに入れ、密栓する。各バイアルを70℃で1分撹拌した後、SPME用ファイバー(DVB/CAR/PDMS,Stableflex 23Ga(Gray)50/30μm:SIGMA−ALDRICH社製)をバイアル中のヘッドスペースに露出させる。70℃で10分間、揮発性成分をファイバーに吸着させた後、注入口で10分間脱着させ、GC/MSにより分析を行う。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いる。
(GC/MSの分析条件)
GC:Agilent Technologies社製 7890A。MS:Agilent Technologies社製5975C MSD。カラム:AgilentTechnologies社製 DB−WAX UI 30m×0.25mm、膜厚0.25μm。流量:1.0ml/min。注入法:スプリットレス。キャリアガス:He。
注入口温度:250℃。トランスファーライン:250℃。オーブン温度:40℃(5min)→5℃/min→240℃(5min)、ポストラン240℃(5min)。MS条件:SIM 13.3minヘキサン酸エチル m/z88、18.8min シクロヘキサノール(内標) m/z57。
[糖度]
果汁含有飲料の糖度は特に限定されないが、本発明の効果が奏されやすいという観点から、1〜10の範囲であることが好ましく、3〜8の範囲であることがより好ましく、4〜6の範囲であることが更に好ましい。
糖度は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。糖度の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、本明細書において、特に断りがなければ「糖度」と「Brix」は同一のものとする。
[甘酸比]
果汁含有飲料の甘酸比は特に限定されないが、本発明の効果が奏されやすいという観点から、5〜60の範囲であることが好ましく、10〜40の範囲であることがより好ましく、20〜30の範囲であることが更に好ましい。
ここで、甘酸比とは、甘味度をクエン酸換算酸度(%)で割った値のことである。本明細書において、甘味度とは、ショ糖の甘味の強さを標準とし、甘味の強さが同じショ糖水溶液のショ糖濃度に相当する。例えば、甘味度1とは、20℃における1g/100mL ショ糖水溶液と同じ甘味の強度であることを意味する。高甘味度甘味料を配合した飲料では、配合した高甘味度甘味料の甘味度の換算係数と配合比率に基づいて算出することができる。各甘味料の甘味度の換算係数は、ショ糖が1であり、ブドウ糖は0.7、果糖は1.3、乳糖は0.3、アセスルファムカリウムは200、総アスパルテームは200、スクラロースは600、エリスリトールは0.8、ステビアは400、ステビオサイドは200、レバウジオサイドAは270である。また、酸度とは、クエン酸相当酸度、すなわち飲料中に含まれる全ての酸をクエン酸と仮定した場合のクエン酸の重量体積パーセント濃度のことをいう。酸度は、日本農林規格(平成18年8月8日農水告第1127号)に定められた酸度の測定方法に基づいて算出し、以下の式で算出する。
酸度(%)=A×f×100/V×0.0064
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
V:試料体積(mL)
0.0064:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLに相当する無水クエン酸の重量(g)
[その他の成分]
果汁含有飲料には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的な飲料に通常用いられる他の原材料や添加剤を適宜配合することができる。配合量は得ようとする効果に応じて適宜設定できる。
果汁含有飲料に配合し得る成分としては、下記のものが挙げられる;糖類(砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖、オリゴ糖)、糖アルコール(エリスリトールやマルチトール等)、異性化糖(果糖ぶどう糖液糖等)、高甘味度甘味料(ステビア、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、増粘安定剤(大豆多糖類、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム等)、酸化防止剤(トコフェロール、塩酸システイン等)、色素(カロチノイド色素、アントシアニン色素、カラメル色素、各種合成着色料等)、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE等)やミネラル類(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等)、食物繊維等。
果汁含有飲料は、水等の溶媒を含んでいてもよい。また、果汁含有飲料の形態は特に限定されず、果汁をベースとしたソフトドリンク、炭酸を含む炭酸飲料、アルコールを含むアルコール飲料、ゲル化剤を含むゼリー飲料等であってもよい。
<2.果汁含有飲料の製造方法>
果汁含有飲料は常法に従って製造することができる。例えば、濃縮果汁を原料として用い、これを水等で果汁率が1〜80質量%となる量で希釈する。次いで、当該希釈液にヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加し、更にその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして果汁含有飲料を調製する。
果汁、ヘキサン酸エチル等の配合の順序や配合方法などは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、ヘキサン酸エチルを添加するにあたっては、香料(果汁等の濃縮物、化学合成された化合物等)として添加する方法、ヘキサン酸エチルを含む食品素材(果汁、エキス等)を添加する方法等が挙げられる。
製造された果汁含有飲料は、例えば容器に封入し、容器詰飲料とすることができる。容器への封入方法なども特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶等が挙げられる。
また、容器詰飲料とするにあたり、必要に応じて、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理することで製造できる。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
<3.飲んだときに感じられる果汁感を高める方法>
上記のとおり、本発明によれば、果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料に、ヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加することで、飲んだときに感じられる果汁感を高めることができる。
<4.風味増強剤>
風味増強剤は、ヘキサン酸エチルを含み、果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料中に、上記ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加される。
風味増強剤は、本分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。また、風味増強剤にヘキサン酸エチル以外の成分が含まれる場合、その種類及び含量は、得ようとする効果に応じて適宜設計できる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す原料と水とを混合してベース液を調製した。なお、表1に示すベース液にはグレープ果汁(68°グレープ透明果汁(コンコード))を配合した。該ベース液について糖度、酸度を測定し、また、甘酸比を算出した。なお、糖度は糖用屈折計(ATAGO RX−5000α)を用いて測定した。その後、該ベース液にヘキサン酸エチルを添加して、試験サンプルである果汁含有飲料を作製した。
Figure 2021114920
[試験1:ヘキサン酸エチルの含有量の違いによる検証]
ベース液Aに、表2に示す含有量となるようにヘキサン酸エチルを添加して果汁含有飲料を作製し、専門パネル6名による官能評価を実施した。かかる評価は、ヘキサン酸エチル未添加の飲料(比較例1−1)を対照として、「果汁感」、「コク」、「フレッシュ感」、「異味」について比較評価することで行った。なお、本明細書において、「果汁感」、「コク」、「フレッシュ感」は上述した意味を示しており、「異味」とは「由来する果物から想起する風味とは違う風味」を意味する。各評価点数は、下記の採点基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。
1点:対照と比較して非常に低い
2点:対照と比較して低い
3点:対照と比較して僅かに低い
4点:対照と全く同じ
5点:対照と比較して僅かに高い
6点:対照と比較して高い
7点:対照と比較して非常に高い
(結果)
下記表2に試験1の結果を示す。なお、果汁感、コク、フレッシュ感については点数が大きくなるほど果汁感、コク、フレッシュ感が増しており評価が高いことを意味する。また、異味については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
Figure 2021114920
表2に示されるとおり、ヘキサン酸エチルを含有させることで、果汁感、コク、フレッシュ感が増強された。特に、実施例1−3及び1−4の飲料では、それらの風味の増強が高い傾向にあることがわかった。一方で、比較例1−2のように、ヘキサン酸エチルの含有量が所定の量より多くなると、果汁感、コク、フレッシュ感は高まるものの、異味も増加してしまうことが示された。
[試験2:果汁率の違いによる検証]
ベース液A〜Dにヘキサン酸エチルを50ppbとなるように添加して果汁含有飲料(実施例2−1〜2−4)を作製し、試験1と同様の方法及び採点基準を用いて官能評価を行った。かかる評価は、果汁率が同一でありヘキサン酸エチル未添加の飲料(比較例2−1〜2−4)の点数を対照として行った。
(結果)
下記表3に試験2の結果を示す。
Figure 2021114920
表3に示されるとおり、果汁率が異なるいずれの実施例の飲料についても、各比較例と比較して果汁感、コク、フレッシュ感が増強されていることが示された。特に、実施例2−1〜2−3の飲料ではそれらの風味の増強が高い傾向にあることがわかった。
[試験3:糖度の違いによる検証]
ベース液E〜Hにヘキサン酸エチルを50ppbとなるように添加して果汁含有飲料(実施例3−1〜3−4)を作製し、試験1と同様の方法及び採点基準を用いて官能評価を行った。かかる評価は、糖度が同一でありヘキサン酸エチル未添加の飲料(比較例3−1〜3−4)の点数を対照として行った。
(結果)
下記表4に試験3の結果を示す。
Figure 2021114920
表4に示されるとおり、甘酸比は同一であるが糖度が異なるいずれの実施例の飲料についても、各比較例と比較して果汁感、コク、フレッシュ感が増強されていることが示された。特に、実施例3−1〜3−3の飲料では、それらの風味の増強が高い傾向にあることがわかった。
[試験4:甘酸比の違いによる検証]
ベース液I〜Lにヘキサン酸エチルを50ppbとなるように添加して果汁含有飲料(実施例4−1〜4−4)を作製し、試験1と同様の方法及び採点基準を用いて官能評価を行った。かかる評価は、甘酸比が同一でありヘキサン酸エチル未添加の飲料(比較例4−1〜4−4)の点数を対照として行った。
(結果)
下記表5に試験4の結果を示す。
Figure 2021114920
表5に示されるとおり、甘酸比が異なるいずれの実施例の飲料についても、各比較例と比較して果汁感、コク、フレッシュ感が増強されていることが示された。
[試験5:果物の違いによる検証]
表6に示す原料と水とを混合してベース液M及びNを調製した。なお、ベース液Mには
リンゴ果汁(リンゴ透明濃縮果汁)を配合し、ベース液Nにはオレンジ果汁(メキシコ産オレンジ濃縮果汁(バレンシア))を配合した。該ベース液M及びNについて上述のベース液A等と同様に糖度、酸度を測定し、また、甘酸比を算出した。
Figure 2021114920
ベース液M及びNにヘキサン酸エチルを50ppbとなるように添加して果汁含有飲料(実施例5−1〜5−2)を作製し、試験1と同様の方法及び採点基準を用いて官能評価を行った。かかる評価は、由来の果物が同一でありヘキサン酸エチル未添加の飲料(比較例5−1〜5−2)の点数を対照として行った。
(結果)
下記表7に試験5の結果を示す。
Figure 2021114920
表7に示されるとおり、果汁の由来となる果物をリンゴやオレンジとした場合でも、果汁感、コク、フレッシュ感が増強されることが示された。なお、ブドウ果汁を用いて同一の果汁率である実施例2−1も含めて比較すると、ブドウやリンゴといったソフトフルーツの果汁を用いた場合は、オレンジのようなソフトフルーツ以外の果汁を用いた場合に比べて果汁感やフレッシュ感が増強される傾向にあった。また、ソフトフルーツの中でもブドウ果汁を用いた場合に、より高い効果が得られることがわかった。
[試験6:香気成分の違いによる検証]
表8に示す原料と水とを混合してベース液Pを調製した。なお、ベース液Pにはグレープ果汁(68°グレープ透明果汁(コンコード))を配合した。該ベース液Pについて上述のベース液A等と同様に糖度、酸度を測定し、また、甘酸比を算出した。
Figure 2021114920
ベース液Pに酢酸2−フェニルエチル又はテルピノレンを50ppbとなるように添加して果汁含有飲料(比較例6−2〜6−3)を作製し、試験1と同様の方法及び採点基準を用いて官能評価を行った。かかる評価は、いずれの香気成分も添加していない飲料(比較例6−1)の点数を対照として行った。
(結果)
下記表9に試験6の結果を示す。
Figure 2021114920
表9に示されるとおり、酢酸2−フェニルエチルを果汁含有飲料に添加した場合には、ヘキサン酸エチルを添加した場合(実施例2−1)と異なり、果汁感やコクの増強が確認されなかった。また、テルピノレンを果汁含有飲料に添加した場合も、果汁感の増強が確認されなかった。

Claims (8)

  1. 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料であって、
    ヘキサン酸エチルを含み、
    前記ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbである、
    果汁含有飲料。
  2. 前記ヘキサン酸エチルの含有量が0.1ppb以上100ppb未満である、
    請求項1に記載の果汁含有飲料。
  3. 前記果汁率が10〜50質量%である、
    請求項1又は2に記載の果汁含有飲料。
  4. 糖度が1〜10である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の果汁含有飲料。
  5. ソフトフルーツの果汁を含む、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の果汁含有飲料。
  6. 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料に、ヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加することを含む、
    果汁含有飲料の製造方法。
  7. 果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料に、ヘキサン酸エチルをその含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加することを含む、
    前記果汁含有飲料を飲んだときに感じられる果汁感を高める方法。
  8. ヘキサン酸エチルを含み、
    果汁率が1〜80質量%である果汁含有飲料中に、前記ヘキサン酸エチルの含有量が0.0001〜100ppbとなるように添加される、
    風味増強剤。
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