JP2021113160A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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琢次 畠山
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Yasuhiro Kondo
靖宏 近藤
亮介 川角
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亮介 川角
晃平 松井
Kohei Matsui
晃平 松井
梨香 久田
Rika Hisada
梨香 久田
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Abstract

【課題】有機EL素子等の有機デバイス材料として有用な新規材料の提供。【解決手段】芳香環をホウ素、窒素、リン、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物、またはその構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体の提供。例えば、式(4−37)の化合物。これらの化合物は大きなHOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)と高い三重項励起エネルギー(ET)を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物と、これを用いた有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」ということがある。)は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の一つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で近年、発光層用材料としてホウ素を含む多環芳香族化合物が開発され、それを用いた有機EL素子が報告されている(特許文献1および2)
国際公開第2015/102118号 特開2018−43984号公報
上述するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。本発明は、有機EL素子等の有機デバイス材料として有用な新規材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特許文献1および2に記載の化合物と類似の、ホウ素原子と窒素原子などで複数の芳香族環を連結した構造を有する新規な多環芳香族化合物の製造に成功した。また、この多環芳香族化合物を含有する層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物またはその多量体、さらには以下のような多環芳香族化合物またはその多量体を含む有機EL素子用材料を提供する。
<1>式(1)で表される多環芳香族化合物、または式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
Figure 2021113160
(式(1)中、
A環、B環、C環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
ただし、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環は単環のアリール環、単環のヘテロアリール環、およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環であり、この縮合環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、またはGe−Rであり、前記Si−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、
1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
前記>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合によりA環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環と結合していてもよく、
式(1)で表される化合物または構造における、アリール環およびヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
式(1)で表される化合物またはその多量体における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。)
<2>前記縮合環は硫黄原子または酸素原子を含有するヘテロアリール環を含むか、または前記縮合環はナフタレンである、<1>に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
<3>前記縮合環は式(1a)または式(1b)で表される環である、<1>に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
Figure 2021113160
(式(1a)中、
4およびX5は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、
前記>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルであり、
a1〜Ra8は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただしRa1〜Ra8のうちの隣接する3つは式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となり、前記の3つ以外のRa1〜Ra8のいずれかの隣接する2つは互いに結合して置換基を有していてもよいベンゼン環を形成していてもよく、
n1およびn2は、それぞれ独立して、0または1であり、共に0であることはなく、
式(1b)中、
a9〜Ra16は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし少なくとも一組の隣接する3つのRa9〜Ra16は、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。)
<4>式(1a)で表される環は、式(1a−1)〜式(1a−14)で表されるいずれかの環である、<3>に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(1a−3)、式(1a−9)、式(1a−13)、および式(1a−14)中、N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
式(1a−4)、式(1a−5)、および(1a−11)〜(1a−13)中、>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
式(1a−1)〜式(1a−14)中、
a1〜Ra8およびRaa1〜Raa4は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし、Ra1〜Ra8およびRaa1〜Raa4のうちの隣接する3つは、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。
<5>式(1a)で表される環は、式(1a−1)または式(1a−2)で表される環である、<4>に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
<6>式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)からなる群より選択されるいずれかで表される多環芳香族化合物または式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)からなる群より選択されるいずれかで表される構造を複数有する、<1>に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
(式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)、中、
1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、またはGe−Rであり、前記Si−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
1、X2、X3、X4、X5、X6、およびX7は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
前記>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合により環と結合していてもよく、
環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
b1〜Rb13は、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、
式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)それぞれで表される化合物またはその多量体における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
<7>Y1がBであり、X2およびX3がいずれもC(−R)2である、<1>〜<6>のいずれかに記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
<8>Y1がBであり、X2がC(−R)2であり、X3が>N−Rである、<1>〜<6>のいずれかに記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
<9>下記構造式のいずれかで表される、<1>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
<10><1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物またはその多量体に反応性置換基が置換した、反応性化合物。
<11><10>に記載の反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、または、当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体。
<12> 主鎖型高分子に<10>に記載の反応性化合物を置換させたペンダント型高分子化合物、または、当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体。
<13><1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物またはその多量体を含有する、有機デバイス用材料。
<14><10>に記載の反応性化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<15><11>に記載の高分子化合物または高分子架橋体を含有する、有機デバイス用材料。
<16><12>に記載のペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体を含有する、有機デバイス用材料。
<17>前記有機デバイス用材料が、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、<13>〜<16>のいずれかに記載の有機デバイス用材料。
<18>前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、<17>に記載の有機デバイス用材料。
<19><1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物またはその多量体と、有機溶媒とを含む、組成物。
<20><10>に記載の反応性化合物と有機溶媒とを含む組成物。
<21>主鎖型高分子と<10>に記載の反応性化合物と有機溶媒とを含む組成物。
<22><11>に記載の高分子化合物または高分子架橋体と有機溶媒とを含む組成物。
<23><12>に記載のペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体と有機溶媒とを含む組成物。
<24>陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、<1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物もしくはその多量体、<10>に記載の反応性化合物、<11>に記載の高分子化合物もしくは高分子架橋体、または、<12>に記載のペンダント型高分子化合物もしくはペンダント型高分子架橋体を含有する有機層とを有する、有機電界発光素子。
<25>陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、<1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物もしくはその多量体、<10>に記載の反応性化合物、<11>に記載の高分子化合物もしくは高分子架橋体、または、<12>に記載のペンダント型高分子化合物もしくはペンダント型高分子架橋体を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。
<26>前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物、その多量体、反応性化合物、高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体とを含む、<25>に記載の有機電界発光素子。
<27>前記ホストが、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物またはジベンゾクリセン系化合物である、<26>に記載の有機電界発光素子。
<28>前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体、およびアゾリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<24>〜<27>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
<29>前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<28>に記載の有機電界発光素子。
<30>正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層のうちの少なくとも1つの層が、各層を形成し得る低分子化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくは、当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体、または、各層を形成し得る低分子化合物を主鎖型高分子と反応させたペンダント型高分子化合物、もしくは、当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体を含む、<24>〜<29>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
<31><24>〜<29>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
本発明の好ましい態様によれば、例えば有機EL素子用材料として用いることができる、新規な多環芳香族化合物を提供することができ、この多環芳香族化合物を用いることで優れた有機EL素子を提供することができる。
有機EL素子を示す概略断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
なお、本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
1.多環芳香族化合物およびその多量体
本発明者らは、芳香環をホウ素、窒素、リン、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した式(1)で表される多環芳香族化合物、または式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体が、大きなHOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)と高い三重項励起エネルギー(ET)を有することを見出した。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香族性が低いため、共役系の拡張に伴うHOMO−LUMOギャップの減少が抑制されること、ヘテロ元素の電子的な摂動により三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2が局在化することが原因となっていると考えられる。また、本発明に係るヘテロ元素を含有する多環芳香族化合物は、三重項励起状態(T1)におけるSOMO1およびSOMO2の局在化により、両軌道間の交換相互作用が小さくなるため、三重項励起状態(T1)と一重項励起状態(S1)のエネルギー差が小さく、熱活性型遅延蛍光を示すため、有機EL素子の蛍光材料としても有用である。また、高い三重項励起エネルギー(ET)を有する材料は、燐光有機EL素子や熱活性型遅延蛍光を利用した有機EL素子の電子輸送層や正孔輸送層としても有用である。更に、これらの多環芳香族化合物は、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。
式(1)で表される多環芳香族化合物、またはその多量体は、好ましくは、下記式(2)で表される多環芳香族化合物、または下記式(2)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 2021113160
式(1)におけるA環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよく、ただし、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環は単環のアリール環、単環のヘテロアリール環およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環であり、この縮合環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。この置換基は、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、またはジアリールアミノがあげられる。
また、上記アリール環またはヘテロアリール環は、Y1、X1、X2およびX3から構成される式(1)中央の縮合3環構造(以下、この構造を「D構造」とも言う)と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合3環構造(D構造)」とは、式(1)の中央に示した、Y1、X1、X2およびX3を含んで構成される3つの飽和炭化水素環が縮合した構造を意味する。また、「縮合3環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば上記式(2)で示すように前記D構造に縮合したa環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、前記D構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(1)において、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環は単環のアリール環、単環のヘテロアリール環およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環である。本発明者らはこのような縮合環を有する多環芳香族化合物を発光層用材料として有機EL素子を構成することにより、発光効率および素子寿命を向上させることができることを見出した。
縮合環を構成する環の数は特に限定されないが、2〜5であることが好ましく、2また〜4であることがより好ましく、3または4であることがさらに好ましく、3であることが特に好ましい。縮合環の構成例としては、単環であるアリール環2つと単環であるヘテロアリール環1つとの縮合環、単環であるアリール環2つとシクロペンタジエン環1つとの縮合環、単環であるアリール環2つと単環であるヘテロアリール環1つとの縮合環、単環であるアリール環2つとシクロペンタジエン環1つとの縮合環などがあげられる。このときの単環であるアリール環はベンゼン環であることが好ましい。単環であるヘテロアリール環としてはフラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環などがあげられる。また、チアントレン環、フェノキサチイン環の中央の環なども単環であるヘテロアリール環の例としてあげられる。
縮合環は6員環と5員環との組み合わせ、または複数の6員環の組み合わせであることが好ましい。このとき、6員環が上記の縮合3環構造と結合を共有していてもよく、5員環が上記の縮合3環構造と結合を共有していてもよいが、6員環が上記の縮合3環構造と結合を共有していることが好ましい。なお、縮合環はシクロペンタジエン環のみで構成されることはない。シクロペンタジエン環は1,1−ジメチル−2,4−シクロペンタジエン環であることが好ましい。
式(1)において、A環、B環、およびC環のうち、縮合環であるもの以外は、単環であるアリール環または単環であるヘテロアリール環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式(1)におけるA環(またはB環、C環)は、式(2)におけるa環とその置換基R1〜R3(またはb環とその置換基R4〜R6、c環とその置換基R7〜R9)に対応する。すなわち、式(2)は、式(1)のA〜C環として「6員環を有するA〜C環」が選択された式に対応する。その意味で、式(2)の各環を小文字のa〜cで表した。
式(2)では、a環、b環、およびc環の置換基R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、ただし、a環、b環、およびc環からなる群より選択される少なくとも1つの環は置換基R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合することにより、単環のアリール環、単環のヘテロアリール環、およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環を形成しており、この縮合環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。したがって、式(2)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(2−1)および式(2−2)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA'環、B'環およびC'環は、式(1)におけるそれぞれA環、B環およびC環に対応する。
Figure 2021113160
式(2−1)および式(2−2)中のA'環、B'環およびC'環は、式(2)で説明すれば、置換基R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成した縮合環を示す。また、上記式(2−1)および式(2−2)から分かるように、例えば、a環のR3とb環のR4、b環のR6とc環のR7、c環のR9とa環のR1などは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
なお、式では示してはいないが、a環、b環のいずれか一方のみが縮合環(それぞれ、A'環、B'環)である構造であってもよく、a環、b環、およびc環の全てが縮合環(それぞれ、A'環、B'環およびC'環)である構造であってもよい。
これらの構造のうち、B'環およびC'環から選択される少なくとも1つの縮合環を有する構造が好ましく、式(2−1)で示す構造がより好ましい。
式1における「単環のアリール環、単環のヘテロアリール環およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環」、または上記A'環、B'環およびC'環である縮合環としては、式(1a)および式(1b)で表される縮合環があげられる。
Figure 2021113160
式(1a)において、X4およびX5は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルであり、Ra1〜Ra8は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし少なくとも一組の隣接する3つのRa1〜Ra8は、式(1)、式(2−1)、または式(2−2)中のY1、X1、X2またはX3との結合手となり、前記の3つ以外のRa1〜Ra8のいずれかの隣接する2つは互いに結合して置換基(式(1a−8)のびRaa1〜Raa4を参照できる。)を有していてもよいベンゼン環を形成していてもよく、n1およびn2は、それぞれ独立して、0または1であり、共に0であることはない。
式(1b)において、Ra9〜Ra16は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし少なくとも一組の隣接する3つのRa9〜Ra16は、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。
式(1a)におけるRa1〜Ra8、および式(1b)におけるRa9〜Ra16の具体例は、後述の式(1)の第1の置換基および第2の置換基の記載を参照できる。
式(1a)で表される構造の具体例を以下に示す。しかし、これら構造に限定されるわけではない。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(1a−3)、式(1a−9)、式(1a−13)、および式(1a−14)中、N―RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
式(1a−4)、式(1a−5)、および(1a−11)〜(1a−13)中、>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
式(1a−1)〜式(1a−14)において、
a1〜Ra8およびRaa1〜Raa4は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし少なくとも一組の隣接する3つのRa1〜Ra8およびRaa1〜Raa4は、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。式(1a−1)〜式(1a−14)におけるRa1〜Ra8およびRaa1〜Raa4が表す各置換基については、後述の式(1)の第1の置換基および第2の置換基の記載を参照できる。
a1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)がいずれも水素である骨格構造に対し、以下のようにRa1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)のいずれかが置換基(水素以外の基)である構造が例としてあげられる。素子駆動時における安定性の観点からは、発光層においてエミッターがホールトラップ型の再結合を起こす場合、ラジカルカチオン(ホール)に対して安定であることが好ましく、X4および/またはX5が、>O、>N−R、>S、または>Seであるとき、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)における置換基はX4またはX5に対してo位またはp位にあることが好ましく、同様に、X4および/またはX5が、>C(−R)2または>Si(−R)2であるとき、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)における置換基はX4またはX5に対してm位にあることが好ましい。
合成の観点からは、合成時の対称性が高くおよび/または分子量が低いほうが、反応の選択性が高いまたは昇華温度が低いため好ましい。合成における最終工程だけではなく、部分構造の合成についても、対称性が高いほうが好ましく、対称性の高い合成ルートを選ぶことができる。
分子間の相互作用の低減の観点からは立体障害が大きいことが好ましく、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)のいずれかである置換基は、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリル、フェノキシ、シクロヘキシルおよびシクロヘキシルの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニルおよびアダマンチルであることが好ましく、メチル、t−ブチル、t−アミル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチルであることがさらに好ましい。
式(1a−1)〜式(1a−14)において、後述の素子材料として用いた場合、その効率および寿命を向上させる観点から、式(1a−1)および式(1a−2)が好ましい。
式(1a)および式(1b)で表される縮環構造を含む、式(1)で表される多環芳香族化合物および式(2)で表される多環芳香族化合物の例として、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)で表される多環芳香族化合物があげることができる。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、およびX7は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合により環と結合していてもよい。X1、X2、X3、およびX4についてはさらに後述する。X4、X5、X6、およびX7は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、または>Sであることが好ましく、X4およびX6は、それぞれ独立して、>Oまたは>Sであることがより好ましい。
式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)において、Rb1〜Rb13は、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換シリルまたは、シアノである。Rb1〜Rb13が表す各置換基については、後述の式(1)の第1の置換基および第2の置換基の記載を参照できる。
a1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)がいずれも水素である骨格構造に対し、以下のようにRa1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)のいずれかが置換基(水素以外の基)である構造が例としてあげられる。素子駆動時における安定性の観点からは、発光層においてエミッターがホールトラップ型の再結合を起こす場合、ラジカルカチオン(ホール)に対して安定であることが好ましく、X4および/またはX5が、O、N−R、SまたはSeであるとき、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)における置換基はX4またはX5に対してo位またはp位にあることが好ましく、同様に、X4および/またはX5が、C(−R)2またはSi(−R)2であるとき、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)における置換基はX4またはX5に対してm位にあることが好ましい。さらに、同様に、Y1に対してp位に置換基を有することが好ましい。
合成の観点からは、合成時の対称性が高くおよび/または分子量が低いほうが、反応の選択性が高いまたは昇華温度が低いため好ましい。合成における最終工程だけではなく、部分構造の合成についても、対称性が高いほうが好ましく、対称性の高い合成ルートを選ぶことができる。つまり、前述の対称性の観点から、式(3)、式(4)、式(7)、式(8)、式(12)、式(13)または式(15)が好ましく、式(3)、式(4)、式(7)、式(12)または式(13)がより好ましい。さらには、これらの化合物は発光波長に合わせて構造を調節でき、発光波長を短くする場合は、Xが互いにm位にあることが好ましく、発光波長を短くする場合は、Xがo位またはp位にあることが好ましい。
分子間の相互作用の低減の観点からは立体障害が大きいことが好ましく、Ra1〜Ra8(およびRaa1〜Raa4)のいずれかである置換基は、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリル、フェノキシ、シクロヘキシルおよびシクロヘキシルの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニルおよびアダマンチルであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチルである。
式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)において、Y1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、またはGe−Rであり、前記Si−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキル、またはシクロアルキルである。Y1が、P=O、P=S、Si−R、またはGe−Rの場合には、A環、B環、またはC環と結合する原子はP、Si、またはGeである。
短波長での発光の観点からは、Y1はP、P=O、またはP=Sであることが好ましく、長波長での発光の観点からはY1はBであることが好ましい。発光材料としての用途の観点からは、X1〜X3との組み合わせにもよるがY1はBであることが好ましい。電荷輸送の観点からは、Y1はB、P、P=O、またはP=Sであることが好ましく、発光層または発光層に隣接する用途としては安定性とエネルギーギャップの観点からY1はBであることが好ましい。
式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)において、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合により環と結合していてもよい。
上記連結基としては、−O−、−S−、−C(−R)2−、>N−R、または、炭素数6〜30のアリーレンが好ましい。なお、前記「−C(−R)2−」のRは水素、アルキルまたはアリールである。また、前記「>N−R」のRはアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいアリールである。
短波長での発光の観点からは、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2または>Sが好ましく、>Oまたは>C(−R)2がより好ましい。または、同様に短波長での発光の観点からは、X1、X2、およびX3はいずれも同じであることが好ましい。発光効率の高さの観点からは、X1、X2、およびX3は、>O、>N−R、>C(−R)2または>Sのうち少なくとも2種類であることが好ましく、>O、>N−Rまたは>C(−R)2のうち少なくとも2種類であることがより好ましい。発光スペクトルの細さ(半値幅の狭さ)の観点からは、多重共鳴効果を強めるほうが好ましく、X1、X2、およびX3は、>O、>N−R、>C(−R)2または>Sであることが好ましく、>O、>N−Rまたは>C(−R)2であることがより好ましく、>Oまたは>N−Rであることがさらに好ましく、>N−Rがいっそう好ましい。高い三重項エネルギーの観点からは、X1、X2、およびX3は、>N−Rが好ましく、また、同様の観点から、X1、X2、およびX3がいずれも同じであることが好ましい。一方、低い三重項エネルギーの観点からは、>O、>C(−R)2または>Sが好ましく、また、同様の観点から、X1、X2、およびX3が少なくとも2種類であることが好ましい。
また、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、>O、>N−R、または>C(−R)2であることが好ましい。特に、X1、X2、およびX3は、いずれか1つが>C(−R)2であることが好ましい。X1およびX2のいずれか1つが>C(−R)2であることがより好ましく、X1およびX2がいずれも>C(−R)2であることがさらに好ましい。X1およびX2のいずれか1つが>C(−R)2であり、かつX3が>N−Rであることも、好ましい。
ここで、式(1)における「N−RのRは連結基または単結合により環と結合している」との規定における環は式(1)においては、A環、B環および/またはC環、式(2)においてはa環、b環、および/またはc環である。
この規定は、下記式(2−3−1)で表される、X2やX1が縮合環B’および縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、例えば式(2)におけるb環(またはc環)であるベンゼン環に対してX2(またはX1)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’ ’環(またはC’’環)を有する化合物である。形成されてできた縮合環B’’(または縮合環C’’)は例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環またはフェノホスファジン環である。
また、上記規定は、下記式(2−3−2)や式(2−3−3)で表される、X1および/またはX2が縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、例えば式(2)におけるa環であるベンゼン環に対してX1(および/またはX2)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるA’環を有する化合物である。形成されてできた縮合環A’’は例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環またはフェノホスファジン環である。
Figure 2021113160
具体的には説明しなかったが、上記規定には、X3のN−RのRが連結基や単結合でB環および/またはC環(b環および/またはc環)と結合した形態も含まれる。例えば式(2)におけるb環(またはc環)であるベンゼン環に対してX3を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’’環(またはC’’環)を有する化合物である。例えば後述する具体的化合物として列挙した、式(1−70)または式(1−71)などで表されるような化合物に対応し、形成されてできた縮合環B’(または縮合環C’’)は例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環またはフェノホスファジン環である。
また、上記規定には、X1、X2、またはX3がいずれかの縮合環に取り込まれた形態が複合した形態も含まれる。
式(1)のA環、B環、およびC環である「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。なお、この「アリール環」は、式(2)で規定された「R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数9が下限の炭素数となる。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ベンゾフルオレン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環やベンゾフルオレン環には、フルオレン環やベンゾフルオレン環がスピロ結合した構造も含まれる。
式(1)のA環、B環およびC環である「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環などがあげられる。なお、この「ヘテロアリール環」は、式(2)で規定された「R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環(無置換、メチルなどのアルキル置換またはフェニルなどのアリール置換)、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ナフトベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトベンゾチオフェン環、ベンゾホスホール環、ジベンゾホスホール環、ベンゾホスホールオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環などがあげられる。
上記「アリール環」、「ヘテロアリール環」、および「単環のアリール環、単環のヘテロアリール環およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環」のそれぞれにおける少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「ジアリールボリル」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「アリールスルホニル」、置換または無置換の「ジアリールホスフィン」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンオキシド」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」または、置換シリルで置換されていてもよいが、この第1の置換基としての「アリール」や「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリール、「ジアリールボリル」の「アリール」、「アリールオキシ」のアリール、「アリールスルホニル」のアリール、「ジアリールホスフィン」のアリール、「ジアリールホスフィンオキシド」のアリール、「ジアリールホスフィンスルフィド」のアリールとしては上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。
また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜6のシクロアルキルである。この説明は、A環、B環およびC環の少なくとも1つに縮合し得るシクロアルキルの説明としても引用できる。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニル、ビシクロ[1.0.1]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
また第1の置換基としての「置換シリル」としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される3つの置換基で置換されたシリルがあげられる。例えば、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、トリアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、およびアルキルジアリールシリルがあげられる。
「トリアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−アミルなどがあげられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、トリt−アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、t−アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、t−アミルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリル、t−アミルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述した第1の置換基における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的なトリシクロアルキルシリルとしては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
2つのアルキルと1つのアリールが置換したジアルキルアリールシリル、1つのアルキルと2つのアリールが置換したアルキルジアリールシリル、および3つのアリールが置換したトリアリールシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびアリールから選択される基が置換したシリルがあげられる。
第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「ジアリールボリル」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「アリールスルホニル」、置換または無置換の「ジアリールホスフィン」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンオキシド」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」は、置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルがあげられ、それらの具体例は、上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基、また第1の置換基としての「アルキル」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールには、それらにおける少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリール(具体例は上述した基)やメチルなどのアルキル(具体例は上述した基)で置換された基も含まれる。その一例としては、第2の置換基がカルバゾリルの場合には、9位における少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリールやメチルなどのアルキルで置換されたカルバゾリルも第2の置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
置換基(第1置換基、第2置換基、および第1置換基と第2置換基との組み合わせ)の構造の立体障害性、電子供与性および電子吸引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルである。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「tOct」はt−オクチルを表す。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(2)のR1〜R9、式(1a)、式(1a−1)〜式(1a−15)のR、Ra1〜Ra8、Raa1〜Raa4、および式(1b)のR、Ra9〜Ra16、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)および式(15)のRb1〜Rb13におけるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノのアリール、ジヘテロアリールアミノのヘテロアリール、アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリール、またはアリールオキシのアリールとしては、式(1)で説明した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。また、式(2)のR1〜R9、式(1a)、式(1a−1)〜式(1a−15)のR、Ra1〜Ra8、および式(1b)のR、Ra9〜Ra16、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)および式(15)のRb1〜Rb13におけるにおけるアルキルまたはアルコキシとしては、上述した式(1)の説明における第1の置換基としての「アルキル」や「アルコキシ」の説明を参照することができる。さらに、これらの基への置換基としてのアリール、ヘテロアリールまたはアルキルも同様である。
式(1)のY1におけるSi−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキル、またはシクロアルキルであるが、このアリール、アルキル、およびシクロアルキルの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数6〜12のアリール、炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)、が好ましい。この説明は式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)および式(15)におけるY1でも同じである。
式(1)のX1、X2、およびX3における>C(−R)2、>Si(−R)2のRは、水素、上述した第2の置換基で置換されていてもよいアリール、第2の置換基で置換されていてもよいアルキル、または第2の置換基で置換されていてもよいシクロアルキルである。このアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。式(1)のX1、X2、およびX3における>C(−R)2におけるRはメチルであることが好ましい。この説明は式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)におけるX1、X2、およびX3でも同じである。
式(1)のX1、X2、およびX3におけるN−RのRは上述した第2の置換基で置換されていてもよいアリール、第2の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール、第2の置換基で置換されていてもよいアルキル、または第2の置換基で置換されていてもよいシクロアルキルである。このアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2〜15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。X1、X2、およびX3におけるN−RのRとしては、特に、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、または2,4,6−メシチルが好ましい。この説明は式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)におけるX1、X2、およびX3でも同じである。
式(1)における連結基である「−C(−R)2−」のRは水素、アルキルまたはアリールであり、「>N−R」のRはアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいアリールであるが、このアルキルやアリールの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数1〜6のアルキルや炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)、炭素数1〜6のアルキルや炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール(フェニル、ナフチルなど)が好ましい。この説明は式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)における連結基である「−C(−R)2−」や「>N−R」でも同じである。
また、式(1)における連結基である「アリーレン」や「炭素数6〜30のアリーレン」としては上述したアリールと同じ構造の2価の基があげられる。この説明は式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)における連結基である「炭素数6〜12のアリーレン」でも同じである。
式(1)で表される単位構造を2つ有する多環芳香族化合物の多量体は、二量体であることが好ましい。二量体は、好ましくは、式(3)〜(15)のいずれかで表される単位構造を2つ有する多環芳香族化合物の二量体である。二量体は、一つの化合物の中に上記単位構造を2つ有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1〜3のアルキレン、フェニレン、ナフチレンなどの連結基で2つ結合した形態に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環等)を2つの単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環)同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。
このような二量体としては、例えば、下記式(2−4)、式(2−5)または式(2−6)で表される二量体があげられる。すなわち、式(2)で説明すれば、a環であるベンゼン環を共有するようにして、2つの式(2)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。また、下記式(2−5)で表される二量体は、式(2)で説明すれば、a環であるベンゼン環とX2を共有するようにして、2つの式(2)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。また、下記式(2−6)で表される二量体は、式(2)で説明すれば、例えばある単位構造のa環(またはb環、c環)であるベンゼン環とある単位構造のa環(またはb環、c環)であるベンゼン環とが縮合するようにして、2つの式(2)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。なお、下記式におけるY1、X1、X2、X3、R1およびR3〜R9の定義は式(2)のそれらの定義と同一である。
Figure 2021113160
また、式(1)、式(2)〜(15)のいずれかで表される多環芳香族化合物およびその多量体の化学構造中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。例えば、式(1)においては、A環、B環、C環(A〜C環はアリール環またはヘテロアリール環)、A〜C環への置換基、Y1がSi−RまたはGe−RであるときのR、ならびに、X1、X2およびX3がる>C(−R)2またはN−RであるときのRにおける水素がシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素が、シアノ、ハロゲン、または重水素で置換された態様があげられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくは塩素である。
式(1)〜(15)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の化学構造中のアリール環およびヘテロアリール環よりなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
例えば、A環、B環、C環、a環、b環、c環、縮合環中のアリール環およびヘテロアリール環、第1および第2の置換基としてのアリール(アリール、ジアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリルまたはアリールオキシにおけるアリール部分)およびヘテロアリール(ヘテロアリール、ジヘテロアリールアミノまたはアリールヘテロアリールアミノにおけるヘテロアリール部分)、Y1であるSi−RおよびGe−RのRとしてのアリール(上記と同様)、ならびに、X1、X2、X3である>N−R、>Si(−R)2および>C(−R)2のRとしてのアリール(上記と同様)およびヘテロアリール(上記と同様)のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3〜24のシクロアルカン、炭素数3〜20のシクロアルカン、炭素数3〜16のシクロアルカン、炭素数3〜14のシクロアルカン、炭素数5〜10のシクロアルカン、炭素数5〜8のシクロアルカン、炭素数5〜6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロ[1.0.1]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.0.1]ペンタン、ビシクロ[1.2.1]ヘキサン、ビシクロ[3.0.1]ヘキサン、ビシクロ[2.1.2]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
これらの中でも、例えばシクロアルカンのα位の炭素(芳香族環または複素芳香族環に縮合するシクロアルキルにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)における少なくとも1つの水素が置換された構造が好ましく、α位の炭素における2つの水素が置換された構造がより好ましく、2つのα位の炭素における合計4つの水素が置換された構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
1つのアリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンの数は、1〜3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。式(Cy−1−4)および式(Cy−2−4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2021113160
シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の−CH2−が−O−で置換された例を以下に示す。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2021113160
シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、置換シリル、重水素、シアノまたはハロゲンがあげられ、これらの詳細は、上述した第1の置換基の説明を引用することができる。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1〜6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3〜14のシクロアルキル)、ハロゲン(例えばフッ素)および重水素などが好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、この例を以下に示す。
Figure 2021113160
シクロアルカン縮合の他の形態としては、式(1)〜(15)で表される多環芳香族化合物およびその多量体が、例えば、Rがシクロアルカンで縮合されたアリールである>N−R、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(このアリール部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたベンゾカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)を有する例があげられる。「ジアリールアミノ」については上記「第1の置換基」として説明した基があげられる。
また、さらに具体的な例としては、式(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体におけるR2が、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(このアリール部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)である例があげられる。
本発明の多環芳香族化合物およびその多量体は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。特に、有機電界発光素子においては、発光層のドーパント材料として、Y1がBであり、かつX1、X2、およびX3がN−Rである化合物、Y1がBであり、かつX1、X2、およびX3のうち1つがOであり、他がN−Rである化合物、Y1がBであり、かつX1、X2、およびX3のうち2つがOであり、他がN−Rである化合物、Y1がBであり、かつX1、X2、およびX3のうち2つが>C(−R)2であり、他がN−Rである化合物、Y1がBであり、かつX1、X2およびX3のうち2つが>C(−R)2であり、他がOである化合物が好ましく、発光層のホスト材料として、Y1がBまたはP=Oであり、かつX1、X2、およびX3がN−Rである化合物、Y1がBまたはP=Oであり、かつX1、X2、およびX3のうち1つがOであり、他がN−Rである化合物、Y1がBまたはP=Oであり、かつX1、X2およびX3のうち2つがOであり、他がN−Rである化合物が好ましく、電子輸送材料として、Y1がBまたはP=Oであり、かつX1、X2、およびX3がOである化合物、Y1がBまたはP=Oであり、X1、X2、およびX3がSである化合物、Y1がBまたはP=Oであり、かつX1、X2、およびX3が>C(−R)2である化合物、Y1がBまたはP=Oであり、X1、X2、およびX3のうち2つがOであり、他がN−Rである化合物が好ましく用いられる。
本発明の多環芳香族化合物のさらに具体的な例としては、例えば以下の化学構造式で表される化合物があげられる。なお、化学構造式中、Meはメチル、tBuはtert−ブチル、tAmはt−アミルである。
Figure 2021113160
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本発明に係る式(1)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物(この高分子化合物を得るための前記モノマーは重合性置換基を有する)、もしくは当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体(この高分子架橋体を得るための前記高分子化合物は架橋性置換基を有する)、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物(このペンダント型高分子化合物を得るための前記反応性化合物は反応性置換基を有する)、もしくは当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体(このペンダント型高分子架橋体を得るための前記ペンダント型高分子化合物は架橋性置換基を有する)としても、有機デバイス用材料、例えば、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料に用いることができる。
上述した反応性置換基(前記重合性置換基、前記架橋性置換基、および、ペンダント型高分子を得るための反応性置換基を含み、以下、単に「反応性置換基」とも言う)としては、上記多環芳香族化合物またはその多量体を高分子量化できる置換基、そのようにして得られた高分子化合物をさらに架橋化できる置換基、また、主鎖型高分子にペンダント反応し得る置換基であれば特に限定されないが、以下の構造の置換基が好ましい。各構造式中の*は結合位置を示す。
Figure 2021113160
Xは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、>C=O、−O−C(=O)−、炭素数1〜12のアルキレン、炭素数1〜12のオキシアルキレンおよび炭素数1〜12のポリオキシアルキレンである。上記置換基の中でも、式(XLS−1)、式(XLS−2)、式(XLS−3)、式(XLS−9)、式(XLS−10)または式(XLS−17)で表される基が好ましく、式(XLS−1)、式(XLS−3)または式(XLS−17)で表される基がより好ましい。
このような高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物およびペンダント型高分子架橋体(以下、単に「高分子化合物および高分子架橋体」とも言う)の用途の詳細については後述する。
2.多環芳香族化合物およびその多量体の製造方法
式(1)や(2)で表される多環芳香族化合物およびその二量体は、基本的には、まずA環(a環)とB環(b環)およびC環(c環)とを結合基(X1、X2、X3含む基)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を結合基(Y1を含む基)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト−ハートウィッグ反応といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。なお、以下のスキームにおいてY1、X1、X2、X3、R1〜R9およびRの定義は式(1)または式(2)のそれらの定義と同一である。
第2反応は、下記スキーム(1)や(2)に示すように、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を結合するY1を導入する反応であり、例としてY1がホウ素原子、X1、X2、X3が>N−Rの場合を以下に示す。まず、X1、X2、X3の間の水素原子をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウム等でオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム−ホウ素の金属交換を行った後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
Figure 2021113160
なお、上記スキーム(1)や(2)は、式(1)や(2)で表される多環芳香族化合物の製造方法を主に示しているが、その二量体については、複数のA環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を有する中間体を用いることで製造することができる。詳細には下記スキーム(3)〜(4)で説明する。この場合、使用するブチルリチウム等の試薬の量を2倍量とすることで目的物を得ることができる。
Figure 2021113160
上記スキームにおいては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(5)および(6)のようにリチウムを導入したい位置にハロゲン原子(Hal)を導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。
Figure 2021113160
また、スキーム(3)やスキーム(4)で説明した二量体の製造方法についても、上記スキーム(5)および(6)のようにリチウムを導入したい位置に臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる(下記スキーム(7)および(8))。
Figure 2021113160
この方法によれば、置換基の影響でオルトメタル化ができないようなケースでも目的物を合成することができ有用である。
上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、Y1がホウ素原子、X1、X2およびX3が窒素原子である多環芳香族化合物およびその二量体を合成することができる。
次に、例としてY1がホウ素原子、X1およびX2が窒素原子であり、X3が酸素原子の場合を下記スキーム(9)および(10)に示す。X1、X2、X3すべてが窒素原子である場合と同様に、リチウムを導入したい位置に臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入し、n−ブチルリチウム等を作用させハロゲン−メタル交換によってメタル化する。次いで、三臭化ホウ素等を加え、リチウム−ホウ素の金属交換を行った後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。ここでは反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
Figure 2021113160
また、Y1がホウ素原子、X1およびX2が窒素原子であり、X3が酸素原子の場合の二量体についても、上記スキーム(7)および(8)のようにリチウムを導入したい位置に臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる(下記スキーム(11)および(12))。
Figure 2021113160
次に、例としてY1がリンスルフィド、リンオキサイドまたはリン原子であり、X1、X2、X3すべてが窒素原子である場合を下記スキーム(13)〜(16)に示す。これまでと同様に、まずリチウムを導入したい位置に臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入し、ハロゲン−メタル交換によってメタル化する。次いで、三塩化リン、硫黄の順に添加し、最後に三塩化アルミニウム等のルイス酸およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムホスファフリーデルクラフツ反応させ、Y1がリンスルフィドである化合物を得ることができる。また、得られたリンスルフィド化合物をm−クロロ過安息香酸(m−CPBA)で処理することでY1がリンオキサイドである化合物を得ることができ、得られたリンオキサイド化合物をトリエチルホスフィンで処理することでY1がリン原子である化合物を得ることができる。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
また、Y1がリンスルフィド、X1、X2、X3すべてが窒素原子である場合の二量体についても、上記スキーム(7)および(8)のようにリチウムを導入したい位置に臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる(下記スキーム(17)および(18))。また、このようにしてY1がリンスルフィド、X1、X2、X3すべてが窒素原子である場合の二量体も、上記スキーム(15)および(16)のようにして、リンスルフィド化合物をm−クロロ過安息香酸(m−CPBA)で処理することでY1がリンオキサイドである化合物を得ることができ、得られたリンオキサイド化合物をトリエチルホスフィンで処理することでY1がリン原子である化合物を得ることができる。
Figure 2021113160
ここでは、Y1が、B、P、P=OまたはP=Sであり、X1、X2およびX3がN−RまたはOである例を記載したが、原料を適宜変更することで、Y1が、P(−R)2、Al、Ga、As、Si−R、Ge−R、Sn−R、Sb、Sb=O、Sb=S、Sb(−R)2、オルトクロラニルが結合したSb、Bi、Bi=O、Bi=S、Bi(−R)2またはオルトクロラニルが結合したBiであったり、X1、X2およびX3がSである化合物も合成することができる。また、Y1がSn−Rの化合物からSnを他の遷移金属へ変換することも可能である。
以上の反応で用いられる溶媒の具体例は、t−ブチルベンゼンやキシレンなどである。
また、式(2)では、a環、b環およびc環の置換基R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。したがって、式(2)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記スキーム(19)および(20)の式(2−1)および式(2−2)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。これらの化合物は下記スキーム(19)および(20)に示す中間体に上記スキーム(1)〜(18)で示した合成法を適用することで合成することができる。
Figure 2021113160
上記式(2−1)および式(2−2)中のA'環、B'環およびC'環は、置換基R1〜R9のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環を示す(a環、b環またはc環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。なお、式では示してはいないが、a環、b環およびc環の全てがA'環、B'環およびC'環に変化した化合物もある。
また、式(2)における「N−RのRは−O−、−S−、−C(−R)2−、>N−R、アリーレン、単結合または縮合により前記a環、b環および/またはc環と結合している」との規定は、下記スキーム(21)の式(2−3−1)で表される、X1やX2が縮合環B'および縮合環C'に取り込まれた環構造を有する化合物や、式(2−3−2)や式(2−3−3)で表される、X1やX2が縮合環A'に取り込まれた環構造を有する化合物で表現することができる。これらの化合物は下記スキーム(21)に示す中間体に上記スキーム(1)〜(18)で示した合成法を適用することで合成することができる。
Figure 2021113160
また、上記スキーム(1)〜(14)および(17)〜(21)の合成法では、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加える前に、X1、X2、X3の間の水素原子(またはハロゲン原子)をブチルリチウム等でオルトメタル化することで、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応させた例を示したが、ブチルリチウム等を用いたオルトメタル化を行わずに、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等の添加により反応を進行させることもできる。
また、Y1がリン系の場合には、下記スキーム(22)や(23)に示すように、X1とX2およびX3(下記式では>NR)の間の水素原子(またはハロゲン原子)をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウム等でオルトメタル化し、次いで、ビスジエチルアミノクロロホスフィンを加え、リチウム−リンの金属交換を行った後、三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えることで、タンデムホスファフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。この反応方法は国際公開第2010/104047号公報(例えば27頁)にも記載されている。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
なお、上記スキーム(22)や(23)においても、ブチルリチウム等のオルトメタル化試薬を中間体1のモル量に対して2倍のモル量を使用することで二量体を合成することができる。また、リチウム等のメタルを導入したい位置にあらかじめ臭素原子や塩素原子等のハロゲンを導入しておき、ハロゲン−メタル交換することで所望の位置へメタルを導入することができる。
なお、上記スキーム(1)〜(23)で使用するオルトメタル化試薬としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ化合物があげられる。
なお、上記スキーム(1)〜(23)で使用するメタル−Y1の金属交換試薬としては、Y1の三フッ化物、Y1の三塩化物、Y1の三臭化物、Y1の三ヨウ化物などのY1のハロゲン化物、CIPN(NEt22などのY1のアミノ化ハロゲン化物、Y1のアルコキシ化物、Y1のアリールオキシ化物などがあげられる。
なお、上記スキーム(1)〜(23)で使用するブレンステッド塩基としては、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2,6−ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、Ar4BNa、Ar4BK、Ar3B、Ar4Si(なお、Arはフェニルなどのアリール)などがあげられる。
上記スキーム(1)〜(23)で使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などがあげられる。
上記スキーム(1)〜(23)では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、Y1の三フッ化物、Y1の三塩化物、Y1の三臭化物、Y1の三ヨウ化物などのY1のハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、Y1のアミノ化ハロゲン化物、Y1のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
上記では、X1、X2、X3が>N−Rである場合を主に示したが、X1、X2、X3が>C(−R)2である化合物については、原料の化合物を変更し、YamaguchiらによるOrganic & Biomolecular Chemistry,2019,17,5500−5504に記載の方法で合成することができる。
また、本発明の多環芳香族化合物やその多量体には、少なくとも一部の水素原子がシアノで置換されている化合物などや、重水素で置換されている化合物などや、フッ素や塩素などのハロゲンで置換されている化合物なども含まれるが、このような化合物などは所望の箇所がシアノ化、重水素化、フッ素化または塩素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
3.有機デバイス
本発明の化合物(式(1)で表される多環芳香族化合物およびその多量体、上記いずれかに反応性置換基が置換した、反応性化合物、上記いずれかを高分子化させた高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物、またはペンダント型高分子架橋体)は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
3−1.有機電界発光素子
本発明の化合物は、例えば、有機電界発光素子の材料として用いることができる。以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
3−1−1.有機電界発光素子の構造
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
3−1−2.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
3−1−3.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
3−1−4.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、N4,N4,N4',N4'−テトラ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、4,4',4"−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
上述した正孔注入層用材料および正孔輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、正孔層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
3−1−5.有機電界発光素子における発光層
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物が好ましい。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
本発明の化合物は発光層用材料として用いることが好ましく、特にドーパント材料として用いることが好ましい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999質量%であり、より好ましくは80〜99.95質量%であり、さらに好ましくは90〜99.9質量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体などがあげられる。特に、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物またはジベンゾクリセン系化合物が好ましい。
<<ホスト材料>>
<アントラセン系化合物>
ホストとしてのアントラセン系化合物は、例えば下記式(H3)で表される化合物である。
Figure 2021113160
式(H3)中、
XおよびAr4は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオまたは置換されていてもよいシリルであり、全てのXおよびAr4は同時に水素になることはなく、
式(H3)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、重水素または置換されていてもよいヘテロアリールで置換されていてもよい。
また、式(H3)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(H3)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
上記アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオまたはシリルの詳細は、以下の好ましい態様の欄で説明する。また、これらへの置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオまたはシリルなどがあげられ、これらの詳細も以下の好ましい態様の欄で説明する。
上記アントラセン系化合物の好ましい態様を以下に説明する。下記構造における符号の定義は上述する定義と同じである。
Figure 2021113160
式(H3)では、Xはそれぞれ独立して上記式(3−X1)、式(3−X2)または式(3−X3)で表される基であり、式(3−X1)、式(3−X2)または式(3−X3)で表される基は*において式(H3)のアントラセン環と結合する。好ましくは、2つのXが同時に式(3−X3)で表される基になることはない。より好ましくは2つのXが同時に式(3−X2)で表される基になることもない。
また、式(H3)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(H3)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3−X1)および式(3−X2)におけるナフチレン部位は1つのベンゼン環で縮合されていてもよい。このようにして縮合した構造は以下のとおりである。
Figure 2021113160
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、上記式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar1またはAr2が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環と結合する。
Ar3は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、上記式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル基およびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar3が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X3)中の直線で表される単結合と結合する。すなわち、式(H3)のアントラセン環と式(A)で表される基が直接結合する。
また、Ar3は置換基を有していてもよく、Ar3における少なくとも1つの水素はさらに炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、上記式(A)で表される基(カルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)で置換されていてもよい。なお、Ar3が有する置換基が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X3)中のAr3と結合する。
Ar4は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、または炭素数1〜4のアルキル(メチル、エチル、t−ブチルなど)および/もしくは炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されているシリルである。
シリルに置換する炭素数1〜4のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数1〜4のアルキルで置換されているシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
シリルに置換する炭素数5〜10のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルネニル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのシクロアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されているシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
置換されているシリルとしては、2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルもあり、置換するアルキルおよびシクロアルキルの具体例としては上述した基があげられる。
また、式(H3)で表されるアントラセン系化合物の化学構造中の水素は上記式(A)で表される基で置換されていてもよい。式(A)で表される基で置換される場合は、式(A)で表される基はその*において式(H3)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する。
式(A)で表される基は、式(H3)で表されるアントラセン系化合物が有しうる置換基の1つである。
Figure 2021113160
上記式(A)中、Yは−O−、−S−または>N−R29であり、R21〜R28はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
21〜R28における「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいシクロアルキル」の「シクロアルキル」としては、炭素数3〜24のシクロアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数3〜16のシクロアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数5〜6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどがあげられる。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜4のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニル、ビシクロ[1.0.1]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。
具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリル、p−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾチエニル、フラザニル、オキサジアゾリル、チアントレニル、ナフトベンゾフラニル、ナフトベンゾチエニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアルコキシ」の「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的な「アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリールオキシ」の「アリールオキシ」としては、−OH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリールチオ」の「アリールチオ」としては、−SH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21〜R28における「トリアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述したR21〜R28における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜4のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチルなどがあげられる。
具体的な「トリアルキルシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
21〜R28における「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述したR21〜R28における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアミノ」の「置換されたアミノ」としては、例えば2つの水素がアリールやヘテロアリールで置換されたアミノ基があげられる。2つの水素がアリールで置換されたアミノがジアリール置換アミノであり、2つの水素がヘテロアリールで置換されたアミノがジヘテロアリール置換アミノであり、2つの水素がアリールとヘテロアリールで置換されたアミノがアリールヘテロアリール置換アミノである。このアリールやヘテロアリールは上述したR21〜R28における「アリール」や「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
具体的な「置換されたアミノ」としては、ジフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、フェニルナフチルアミノ、ジピリジルアミノ、フェニルピリジルアミノ、ナフチルピリジルアミノなどがあげられる。
21〜R28における「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
21〜R28として説明した基のうち、いくつかは上述するように置換されてもよく、この場合の置換基としてはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールがあげられる。このアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは上述したR21〜R28における「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
Yとしての「>N−R29」におけるR29は水素または置換されていてもよいアリールであり、このアリールとしては上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができ、またその置換基としてはR21〜R28に対する置換基として説明した基を引用することができる。
21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A−1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A−2)〜式(A−14)で表される基があげられる。なお、式(A−1)〜式(A−14)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアリール置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよい。
Figure 2021113160
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環としては上述したR21〜R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は上記式(A−1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基としては、例えば上記式(A−1)〜式(A−14)のいずれかで表される基があげられ、上記式(A−1)〜式(A−5)および式(A−12)〜式(A−14)のいずれかで表される基が好ましく、上記式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基がより好ましく、上記式(A−1)、式(A−3)および式(A−4)のいずれかで表される基がさらに好ましく、上記式(A−1)で表される基が特に好ましい。
式(A)で表される基は、式(A)中の*において、式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合、式(3−X3)中のAr3と結合し、また式(H3)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換することは上述したとおりだが、これらの結合形態の中でも式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合および/または式(3−X3)中のAr3と結合した形態が好ましい。
また、式(A)で表される基の構造中で、式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合、式(3−X3)中のAr3が結合する位置、また、式(A)で表される基の構造中で、式(H3)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する位置は、式(A)の構造中のいずれの位置であってもよく、例えば式(A)の構造中の2つのベンゼン環のいずれかや、式(A)の構造中のR21〜R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環や、式(A)の構造中のYとしての「>N−R29」におけるR29中のいずれかの位置で結合することができる。
式(A)で表される基としては、例えば以下の基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義である。
Figure 2021113160
また、式(H3)で表されるアントラセン系化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
アントラセン系化合物の具体的な例としては、例えば、下記式(H3−1)〜式(H3−72)で表される化合物があげられる。なお、下記構造式中の「Me」はメチル、「D」は重水素、「tBu」はt−ブチルを示す。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(H3)で表されるアントラセン系化合物は、アントラセン骨格の所望の位置に反応性基を有する化合物と、X、Ar4および式(A)の構造などの部分構造に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング、その他の公知のカップリング反応を応用して製造することができる。これらの反応性化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第2014/141725号の段落[0089]〜[0175]における合成法を参考にすることができる。
<フルオレン系化合物>
式(H4)で表される化合物は基本的にはホストとして機能する。
Figure 2021113160
上記式(H4)中、
1からR10は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して上記式(H4)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8またはR9とR10がそれぞれ独立して結合して縮合環またはスピロ環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、そして、
式(H4)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
上記式(H4)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
1からR10におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜30のアルケニルがあげられ、炭素数2〜20のアルケニルが好ましく、炭素数2〜10のアルケニルがより好ましく、炭素数2〜6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2〜4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(4−Ar1)、式(4−Ar2)、式(4−Ar3)、式(4−Ar4)または式(4−Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2021113160
式(4−Ar1)から式(4−Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN−Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、
上記式(4−Ar1)から式(4−Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、上記式(H4)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(H4)におけるフルオレン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−などがあげられる。
また、式(H4)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7またはR7とR8がそれぞれ独立して結合して縮合環を、R9とR10が結合してスピロ環を形成していてもよい。R1からR8により形成された縮合環は、式(H4)におけるベンゼン環に縮合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、式(H4)におけるベンゼン環を含めた構造としてはナフタレン環やフェナントレン環などがあげられる。R9とR10により形成されたスピロ環は、式(H4)における5員環にスピロ結合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、フルオレン環などがあげられる。
式(H4)で表される化合物は、好ましくは、下記式(4−1)、式(4−2)または式(4−3)で表される化合物であり、それぞれ、式(H4)においてR1とR2が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(H4)においてR3とR4が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(H4)においてR1からR8のいずれもが結合していない化合物である。
Figure 2021113160
式(4−1)、式(4−2)および式(4−3)におけるR1からR10の定義は式(H4)において対応するR1からR10と同じであり、式(4−1)および式(4−2)におけるR11からR14の定義も式(H4)におけるR1からR10と同じである。
式(H4)で表される化合物は、さらに好ましくは、下記式(4−1A)、式(4−2A)または式(4−3A)で表される化合物であり、それぞれ、式(4−1)、式(4−1)または式(4−3)においてR9とR10が結合してスピロ−フルオレン環が形成された化合物である。
Figure 2021113160
式(4−1A)、式(4−2A)および式(4−3A)におけるR2からR7の定義は式(4−1)、式(4−2)および式(4−3)において対応するR2からR7と同じであり、式(4−1A)および式(4−2A)におけるR11からR14の定義も式(4−1)および式(4−2)におけるR11からR14と同じである。
また、式(H4)で表される化合物における水素は、その全てまたは一部がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
<ジベンゾクリセン系化合物>
ホストとしてのジベンゾクリセン系化合物は、例えば下記式(H5)で表される化合物である。
Figure 2021113160
上記式(H5)中、
1からR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して上記式(H5)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R1からR16のうち隣接する基同士が結合して縮合環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、そして、
式(H5)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
上記式(5)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
上記式(H5)の定義におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜30のアルケニルがあげられ、炭素数2〜20のアルケニルが好ましく、炭素数2〜10のアルケニルがより好ましく、炭素数2〜6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2〜4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)または式(5−Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2021113160
式(5−Ar1)から式(5−Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN−Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、
上記式(5−Ar1)から式(5−Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、上記式(H5)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(H5)におけるジベンゾクリセン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−などがあげられる。
式(H5)で表される化合物は、好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13およびR16は水素である。この場合、式(H5)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、上記式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)もしくは式(5−Ar5)の構造を有する1価の基(当該構造を有する1価の基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−を介して、上記式(H5)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであることが好ましい。
式(H5)で表される化合物は、より好ましくは、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12、R13、R15およびR16は水素である。この場合、式(H5)中のR3、R6、R11およびR14の少なくとも1つ(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)は、単結合、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−を介した、上記式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)または式(5−Ar5)の構造を有する1価の基であり、
前記少なくとも1つ以外(すなわち、前記構造を有する1価の基が置換した位置以外)は水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、あるいは、ブチルで置換されていてもよい。
また、式(H5)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15として、上記式(5−Ar1)から式(5−Ar5)で表される構造を有する1価の基が選択された場合には、当該構造における少なくとも1つの水素は式(H5)中のR1からR16のいずれかと結合して単結合を形成していてもよい。
上述した発光層用材料(ホスト材料およびドーパント材料)は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、発光層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
<高分子ホスト材料の一例>
Figure 2021113160
式(SPH−1)において、
MUはそれぞれ独立して2価の芳香族化合物、ECはそれぞれ独立して1価の芳香族化合物であり、MU中の2つの水素がECまたはMUと置換され、kは2〜50000の整数である。
より具体的には、
MUは、それぞれ独立して、アリーレン、ヘテロアリーレン、ジアリーレンアリールアミノ、ジアリーレンアリールボリル、オキサボリン−ジイル、アザボリン−ジイルであり、
ECは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、
MUおよびECにおける少なくとも1つの水素はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルおよびシクロアルキルで置換されていてもよく、
kは2〜50000の整数である。
kは20〜50000の整数であることが好ましく、100〜50000の整数であることがより好ましい。
式(SPH−1)中のMUおよびECにおける少なくとも1つの水素は、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−または−Si(CH32−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける式(SPH−1)中のECに直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
MUとしては、例えば、以下のいずれかの化合物から任意の2つの水素原子を除いて表される2価の基があげられる。
Figure 2021113160
より具体的には、以下のいずれかの構造で表される2価の基があげられる。これらにおいて、MUは*において他のMUまたはECと結合する。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
また、ECとしては、例えば以下のいずれかの構造で表される1価の基があげられる。これらにおいて、ECは*においてMUと結合する。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式(SPH−1)で表される化合物は、溶解性および塗布成膜性の観点から、分子中のMU総数(k)の10〜100%のMUが炭素数1〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30〜100%のMUが炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましく、分子内のMU総数(k)の50〜100%のMUが炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)を有することがさらに好ましい。一方、面内配向性および電荷輸送の観点からは、分子中のMU総数(k)の10〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキル(炭素数7〜24の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましい。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
<<アシスティングドーパント>>
発光層はさらにアシスティングドーパントを含んでいてもよい。このとき、本発明の化合物はエミティンングドーパントとして機能する。アシスティングドーパントの例としては下記化合物があげられる。下記式において、Meはメチルを表し、tBuはt−ブチルを表し、Phはフェニルを表し、波線は結合位置を表す。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
3−1−6.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9'−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4'−(2,2':6'2"−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
<ボラン誘導体>
ボラン誘導体は、例えば下記式(ETM−1)で表される化合物であり、詳細には特開2007−27587号公報に開示されている。
Figure 2021113160
式(ETM−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
式(ETM−1)で表される化合物の中でも、下記式(ETM−1−1)で表される化合物や下記式(ETM−1−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2021113160
式(ETM−1−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
Figure 2021113160
式(ETM−1−2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
1の具体的な例としては、下記式(X−1)〜式(X−9)のいずれかで表される2価の基があげられる。
Figure 2021113160
(各式中、Raは、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたは置換されていてもよいフェニルであり、*は結合位置を表す。)
このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ピリジン誘導体>
ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM−2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)で表される化合物である。
Figure 2021113160
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
式(ETM−2−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。
式(ETM−2−2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。
各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されていてもよい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルなどがあげられ、メチルが好ましい。また、ピリジン系置換基はフェニレンやナフチレンを介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。
Figure 2021113160
ピリジン系置換基は、式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であるが、これらの中でも、下記式(Py−21)〜式(Py−44)のいずれかであることが好ましい。
Figure 2021113160
各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。
11〜R18における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
ピリジン系置換基に置換する炭素数1〜4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。
11〜R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
11〜R18における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、単環系アリールであるフェニル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる。
好ましい「炭素数6〜30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどがあげられ、さらに好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはフェナントリルがあげられ、特に好ましくはフェニル、1−ナフチルまたは2−ナフチルがあげられる。
式(ETM−2−2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<フルオランテン誘導体>
フルオランテン誘導体は、例えば下記式(ETM−3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号に開示されている。
Figure 2021113160
式(ETM−3)中、X12〜X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
<BO系誘導体>
BO系誘導体は、例えば下記式(ETM−4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM−4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 2021113160
1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、式(ETM−4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(ETM−4)における置換基や環形成の形態の説明については、式(1)または式(1−a)等で表される多環芳香族化合物の説明を引用することができる。
このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<アントラセン誘導体>
アントラセン誘導体の一つは、例えば下記式(ETM−5)で表される化合物である。
Figure 2021113160
Ar1は、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。
Ar2は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o−,m−,p−)トリル、(2,3−,2,4−,2,5−,2,6−,3,4−,3,5−)キシリル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、(o−,m−,p−)クメニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン−(1−,2−,9−)イル、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、テトラセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イルなどがあげられる。「炭素数6〜10のアリール」の具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールである。
1〜R4における炭素数1〜6のアルキルについては直鎖および分岐鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1〜6の直鎖アルキルまたは炭素数3〜6の分岐鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、または2−エチルブチルなどがあげられ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt−ブチルがより好ましい。
1〜R4における炭素数3〜6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
1〜R4における炭素数6〜20のアリールについては、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、Ar2における「炭素数6〜20のアリール」の具体例を引用することができる。好ましい「炭素数6〜20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはm−テルフェニル−5'−イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルまたは2−ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ベンゾフルオレン誘導体>
ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM−6)で表される化合物である。
Figure 2021113160
Ar1は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、式(ETM−5)のAr2における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
Ar2は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、2つのAr2は結合して環を形成していてもよい。
Ar2における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルなどがあげられる。
Ar2における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
Ar2における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
2つのAr2は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ホスフィンオキサイド誘導体>
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号および国際公開第2013/079678号にも記載されている。
Figure 2021113160
5は、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜16のシクロアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
6は、CN、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜16のシクロアルキル、炭素数1〜20のヘテロアルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数5〜20のヘテロアリール、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数6〜20のアリールオキシであり、
7およびR8は、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
9は酸素または硫黄であり、
jは0または1であり、kは0または1であり、rは0〜4の整数であり、qは1〜3の整数である。
ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−2)で表される化合物でもよい。
Figure 2021113160
1〜R3は、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールエーテル(アリールエーテル基)、アリールチオエーテル(アリールチオエーテル基)、アリール、複素環基、ハロゲン、シアノ、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、シリル、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
Ar1は、同じでも異なっていてもよく、アリーレンまたはヘテロアリーレンである。Ar2は、同じでも異なっていてもよく、アリールまたはヘテロアリールである。ただし、Ar1およびAr2のうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0〜3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。
これらの置換基の内、アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル、アリール、複素環基等をあげることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキルの炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1〜20の範囲である。
また、シクロアルキルとは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。
また、アラルキルとは、例えば、ベンジル、フェニルエチルなどの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルケニルとは、例えば、ビニル、アリル、ブタジエニルなどの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、シクロアルケニルとは、例えば、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセンなどの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
また、アルキニルとは、例えば、アセチレニルなどの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、アルコキシとは、例えば、メトキシなどのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシの炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルキルチオとは、アルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、シクロアルキルチオとは、シクロアルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールエーテルとは、例えば、フェノキシなどのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテルの炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、アリールチオエーテルとは、アリールエーテルのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールとは、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、フェナントリル、テルフェニリル、ピレニルなどの芳香族炭化水素基を示す。アリールは、無置換でも置換されていてもかまわない。アリールの炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、複素環基とは、例えば、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、ピリジル、キノリニル、カルバゾリルなどの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
アルデヒド、カルボニル、アミノには、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。
また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。
シリルとは、例えば、トリメチルシリルなどのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリルの炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、Ar1とR2、Ar1とR3、Ar2とR2、Ar2とR3、R2とR3、Ar1とAr2等の間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR1同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ピリミジン誘導体>
ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM−8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−8−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号にも記載されている。
Figure 2021113160
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<アリールニトリル誘導体>
アリールニトリル誘導体は、例えば下記式(ETM−9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国出願公開第2014/0197386号明細書に記載されている。
Figure 2021113160
Arniは、速い電子輸送性の観点からは炭素数が多いことが好ましく、高いT1の観点からは炭素数が少ないことが好ましい。Arniは、具体的には、発光層に隣接する層に用いるには高いT1であることが好ましく、炭素数6〜20のアリールであり、好ましくは炭素数6〜14のアリール、より好ましくは炭素数6〜10のアリールである。また、ニトリル基の置換個数nは、高いT1の観点からは多いことが好ましく、高いS1の観点からは少ないことが好ましい。ニトリル基の置換個数nは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2の整数であり、さらに好ましくは1である。
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。高いS1および高いT1の観点からドナー性のヘテロアリールであることが好ましく、電子輸送層として用いるためドナー性のヘテロアリールは少ないことが好ましい。電荷輸送性の観点からは炭素数の多いアリールまたはヘテロアリールが好ましく、置換基を多く有することが好ましい。Arの置換個数mは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
アリールニトリル誘導体は、式(ETM−9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。
このアリールニトリル誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このアリールニトリル誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<トリアジン誘導体>
トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM−10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−10−1)で表される化合物である。詳細は米国特許出願公開第2011/0156013号明細書に記載されている。
Figure 2021113160
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜3の整数であり、好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021113160
このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ベンゾイミダゾール誘導体>
ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−11)で表される化合物である。
Figure 2021113160
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジルがベンゾイミダゾリルに置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
Figure 2021113160
上記ベンゾイミダゾリルにおけるR11は、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数6〜30のアリールであり、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)におけるR11の説明を引用することができる。
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。
このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールなどがあげられる。
Figure 2021113160
このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<フェナントロリン誘導体>
フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM−12)または式(ETM−12−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2006/021982号に記載されている。
Figure 2021113160
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
各式のR11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。また、式(ETM−12−1)においてはR11〜R18のいずれかがアリール環であるφと結合する。
各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
11〜R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、式(ETM−2)におけるR11〜R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式があげられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルであり、*は、結合位置を表す。
Figure 2021113160
このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9'−ジフルオロ−ビ(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロイン、1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンや下記構造式で表される化合物などがあげられる。
Figure 2021113160
このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<キノリノール系金属錯体>
キノリノール系金属錯体は、例えば下記式(ETM−13)で表される化合物である。
Figure 2021113160
式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シアノ、アルコキシまたはアリールであり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどがあげられる。
このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体>
チアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−1)で表される化合物である。
Figure 2021113160
ベンゾチアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−2)で表される化合物である。
Figure 2021113160
各式のφは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「チアゾール系置換基」や「ベンゾチアゾール系置換基」は、式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジルが下記のチアゾリルやベンゾチアゾリルに置き換わった置換基であり、チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
Figure 2021113160
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。
これらのチアゾール誘導体またはベンゾチアゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<シロール誘導体>
シロール誘導体は、例えば下記式(ETM−15)で表される化合物である。詳細は特開平9−194487号公報に記載されている。
Figure 2021113160
XおよびYは、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリール、ヘテロアリールであり、これらは置換されていてもよい。これらの基の詳細については、式(1)および式(1−a)等における説明、さらに式(ETM−7−2)における説明を引用できる。また、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシは、それぞれアルコキシにおけるアルキル部分がアルケニルまたはアルキニルに置き換わった基であり、これらのアルケニルおよびアルキニルの詳細については式(ETM−7−2)における説明を引用できる。
また、XとYが結合してシクロアルキル環(およびその一部が不飽和になった環)を形成していてもよく、このシクロアルキル環の詳細は式(1)および式(1−a)等におけるシクロアルキルの説明を参照することができる。
1〜R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アゾ基、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、スルフィニル、スルフォニル、スルファニル、シリル、カルバモイル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、ニトロ、ホルミル、ニトロソ、ホルミルオキシ、イソシアノ、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、または、シアノであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはハロゲンで置換されていてもよく、隣接置換基との間に縮合環を形成していてもよい。
1〜R4における、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、アルケニルおよびアルキニルの詳細については、式(1)および式(1−a)等における説明を引用できる。
1〜R4における、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシ中の、アルキル、アリールおよびアルコキシの詳細についても、式(1)および式(1−a)等における説明を引用できる。
シリルとしては、シリル、および、シリルの3つの水素の少なくとも1つが、それぞれ独立して、アリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換された基があげられ、トリ置換シリルが好ましく、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリルおよびアルキルジシクロアルキルシリル等があげられる。これらにおける、アリール、アルキルおよびシクロアルキルの詳細については、式(1)および式(1−a)等における説明を引用できる。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、R1とR2、R2とR3、R3とR4等の間で形成された共役または非共役の縮合環である。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
ただし、好ましくは、R1およびR4がフェニルの場合、XおよびYは、アルキルまたはフェニルではない。また、好ましくは、R1およびR4がチエニルの場合、XおよびYは、アルキルを、R2およびR3は、アルキル、アリール、アルケニルまたはR2とR3が結合して環を形成するシクロアルキルを同時に満たさない構造である。また、好ましくは、R1およびR4がシリルの場合、R2、R3、XおよびYは、それぞれ独立して、水素または炭素数1から6のアルキルではない。また、好ましくは、R1およびR2でベンゼン環が縮合した構造の場合、XおよびYは、アルキルおよびフェニルではない。
これらのシロール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<アゾリン誘導体>
アゾリン誘導体は、例えば下記式(ETM−16)で表される化合物である。詳細は国際公開第2017/014226号に記載されている。
Figure 2021113160
式(ETM−16)中、
φは炭素数6〜40の芳香族炭化水素に由来するm価の基または炭素数2〜40の芳香族複素環に由来するm価の基であり、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよく、
Yは、それぞれ独立して、−O−、−S−または>N−Arであり、Arは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールで置換されていてもよく、R1〜R5はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、前記>N−ArにおけるArおよび前記R1〜R5のうちのいずれか1つはLと結合する部位であり、
Lは、それぞれ独立して、下記式(L−1)で表される2価の基、および下記式(L−2)で表される2価の基からなる群から選ばれ、
Figure 2021113160
式(L−1)中、X1〜X6はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X1〜X6のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X1〜X6のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
式(L−2)中、X7〜X14はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X7〜X14のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X7〜X14のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよく、
mは1〜4の整数であり、mが2〜4であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一であっても異なっていてもよく、そして、
式(ETM−16)で表される化合物中の少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
具体的なアゾリン誘導体は、下記式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)で表される化合物である。
Figure 2021113160
式(ETM−16−1)および式(ETM−16−2)中、
φは炭素数6〜40の芳香族炭化水素に由来するm価の基または炭素数2〜40の芳香族複素環に由来するm価の基であり、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよく、
式(ETM−16−1)中、Yは、それぞれ独立して、−O−、−S−または>N−Arであり、Arは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールで置換されていてもよく、
式(ETM−16−1)中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、またR3とR4は同一であり、
式(ETM−16−2)中、R1〜R5はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、またR3とR4は同一であり、
式(ETM−16−1)および式(ETM−16−2)中、
Lは、それぞれ独立して、下記式(L−1)で表される2価の基、および下記式(L−2)で表される2価の基からなる群から選ばれ、
Figure 2021113160
式(L−1)中、X1〜X6はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X1〜X6のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X1〜X6のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
式(L−2)中、X7〜X14はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X7〜X14のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X7〜X14のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよく、
mは1〜4の整数であり、mが2〜4であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一であっても異なっていてもよく、そして、
式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)で表される化合物中の少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
好ましくは、φは、下記式(φ1−1)〜式(φ1−18)で表される1価の基、下記式(φ2−1)〜式(φ2−34)で表される2価の基、下記式(φ3−1)〜式(φ3−3)で表される3価の基、および下記式(φ4−1)〜式(φ4−2)で表される4価の基からなる群から選択され、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよい。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
式中のZは、>CR2、>N−Ar、>N−L、−O−または−S−であり、>CR2におけるRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Rは互いに結合して環を形成していてもよく、>N−ArにおけるArは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、>N−LにおけるLは式(ETM−16)、式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)におけるLである。式中の*は、結合位置を表す。
好ましくは、Lは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、およびプテリジンからなる群から選択される環の2価の基であり、Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよい。
好ましくは、YまたはZとしての>N−ArにおけるArは、フェニル、ナフチル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、およびプテリジニルからなる群から選択され、Yとしての>N−ArにおけるArの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールで置換されていてもよい。
好ましくは、R1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であり、またR1〜R4の全てが同時に水素になることはなく、そして、mは1または2であり、mが2であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一である。
アゾリン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを表す。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
より好ましくは、φは、下記式(φ2−1)、式(φ2−31)、式(φ2−32)、式(φ2−33)および式(φ2−34)で表される2価の基からなる群から選択され、φの少なくとも1つの水素は炭素数6〜18のアリールで置換されていてもよく、
Figure 2021113160
Lは、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、およびトリアジンからなる群から選択される環の2価の基であり、Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜14のヘテロアリールで置換されていてもよく、
Yとしての>N−ArにおけるArは、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、およびトリアジニルからなる群から選択され、当該Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールで置換されていてもよく、
1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であり、またR1〜R4の全てが同時に水素になることはなく、そして、
mは2であり、アゾリン環とLとで形成される基は同一である。
アゾリン誘導体の他の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを表す。
Figure 2021113160
このアゾリン誘導体を規定する上記各式中の、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールの詳細については、式(1)および式(1−a)等における説明を引用できる。
このアゾリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<還元性物質>
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<その他>
上述した電子輸注入層用材料および電子輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、電子層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
3−1−7.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
3−1−8.各層で用いてもよい結着剤
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
3−1−9.有機電界発光素子の作製方法
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50〜+400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、下層の発光層の溶解を防ぐ手段があったり、また上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段などを用いることで、電子輸送層用材料や電子注入層用材料を含む層形成用組成物として準備して、それらを湿式成膜法により成膜できる。
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンクを作製する一連の工程もあげられる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
バンクに用いられる材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマーがあげられるが、それだけに限定されない。
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である多環芳香族化合物(またはその高分子化合物)と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
<有機溶媒>
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
(1)有機溶媒の物性
少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃〜300℃であり、140℃〜270℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。有機溶媒は、良好なインクジェットの吐出性、成膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、有機層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
さらに、有機溶媒が溶質の少なくとも1種に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、構成が特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
溶解度の差(SGS−SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS−BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)−30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
(2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、オクタン−2−オール、デカン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、s−ブチルベンゼン、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、シメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、3−フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、n−アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n−ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2−メチルビフェニル、3−フェノキシトルエン、2,2'−ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
<任意成分>
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
(1)バインダー
有機層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該有機層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、があげられるが、それだけに限定されない。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
(2)界面活性剤
有機層形成用組成物は、例えば、有機層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該有機層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックF−477、メガファックF−479、メガファックF−553、メガファックF−554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩をあげることができる。
また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<有機層形成用組成物の組成および物性>
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。例えば、発光層形成用組成物の場合には、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0001質量%〜2.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0999質量%〜8.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、90.0質量%〜99.9質量%が好ましい。
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.005質量%〜1.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.095質量%〜4.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、95.0質量%〜99.9質量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.5質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.25質量%〜2.5質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、97.0質量%〜99.7質量%である。
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
有機層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3〜3mPa・sであることが好ましく、1〜3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
有機層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における表面張力が20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
<架橋性高分子化合物:式(XLP−1)で表される化合物>
次に、上述した高分子化合物が架橋性置換基を有する場合について説明する。このような架橋性高分子化合物は例えば下記式(XLP−1)で表される化合物である。
Figure 2021113160
式(XLP−1)において、
MUx、ECxおよびkは上記式(SPH−1)におけるMU、ECおよびkと同定義であり、ただし、式(XLP−1)で表される化合物は少なくとも1つの架橋性置換基(XLS)を有し、好ましくは架橋性置換基を有する1価または2価の芳香族化合物の含有量は、分子中0.1〜80質量%である。
架橋性置換基を有する1価または2価の芳香族化合物の含有量は、0.5〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
架橋性置換基(XLS)としては、上述した高分子化合物をさらに架橋化できる基であれば特に限定されないが、以下の構造の置換基が好ましい。各構造式中の*は結合位置を示す。
Figure 2021113160
Yは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、>C=O、−O−C(=O)−、炭素数1〜12のアルキレン、炭素数1〜12のオキシアルキレンおよび炭素数1〜12のポリオキシアルキレンである。上記置換基の中でも、式(XLS−1)、式(XLS−2)、式(XLS−3)、式(XLS−9)、式(XLS−10)または式(XLS−17)で表される基が好ましく、式(XLS−1)、式(XLS−3)または式(XLS−17)で表される基がより好ましい。
架橋性置換基を有する2価の芳香族化合物としては、例えば下記部分構造を有する化合物があげられる。
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
Figure 2021113160
<高分子化合物および架橋性高分子化合物の製造方法>
高分子化合物および架橋性高分子化合物の製造方法について、上述した式(SPH−1)で表される化合物および(XLP−1)で表される化合物を例にして説明する。これらの化合物は、公知の製造方法を適宜組み合わせて合成することができる。
反応で用いられる溶媒としては、芳香族溶媒、飽和/不飽和炭化水素溶媒、アルコール溶媒、エーテル系溶媒などがあげられ、例えば、ジメトキシエタン、2−(2−メトキシエトキシ)エタン、2−(2−エトキシエトキシ)エタン等があげられる。
また、反応は2相系で行ってもよい。2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えてもよい。
式(SPH−1)の化合物および(XLP−1)の化合物を製造する際、一段階で製造してもよいし、多段階を経て製造してもよい。また、原料を反応容器に全て入れてから反応を開始する一括重合法により行ってもよいし、原料を反応容器に滴下し加える滴下重合法により行ってもよいし、生成物が反応の進行に伴い沈殿する沈殿重合法により行ってもよく、これらを適宜組み合わせて合成することができる。例えば、式(SPH−1)で表される化合物を一段階で合成する際、モノマーユニット(MU)およびエンドキャップユニット(EC)を反応容器に加えた状態で反応を行うことで目的物を得る。また、式(SPH−1)で表される化合物を多段階で合成する際、モノマーユニット(MU)を目的の分子量まで重合した後、エンドキャップユニット(EC)を加えて反応させることで目的物を得る。多段階で異なる種類のモノマーユニット(MU)を加え反応を行えば、モノマーユニットの構造について濃度勾配を有するポリマーを作ることができる。また、前駆体ポリマーを調製した後、あと反応により目的物ポリマーを得ることができる。
また、モノマーユニット(MU)の重合性基を選べばポリマーの一次構造を制御することができる。例えば、合成スキームの1〜3に示すように、ランダムな一次構造を有するポリマー(合成スキームの1)、規則的な一次構造を有するポリマー(合成スキームの2および3)などを合成することが可能であり、目的物に応じて適宜組み合わせて用いることができる。さらには、重合性基を3つ以上有するモノマーユニットを用いれば、ハイパーブランチポリマーやデンドリマーを合成することができる。
Figure 2021113160
本発明で用いることのできるモノマーユニットとしては、特開2010−189630号公報、国際公開第2012/086671号、国際公開第2013/191088号、国際公開第2002/045184号、国際公開第2011/049241号、国際公開第2013/146806号、国際公開第2005/049546号、国際公開第2015/145871号、特開2010−215886号、特開2008−106241号公報、特開2010−215886号公報、国際公開第2016/031639号、特開2011−174062号公報、国際公開第2016/031639号、国際公開第2016/031639号、国際公開第2002/045184号に記載の方法に準じて合成することができる。
また、具体的なポリマー合成手順については、特開2012−036388号公報、国際公開第2015/008851号、特開2012−36381号公報、特開2012−144722号公報、国際公開第2015/194448号、国際公開第2013/146806号、国際公開第2015/145871号、国際公開第2016/031639号、国際公開第2016/125560号、国際公開第2016/031639号、国際公開第2016/031639号、国際公開第2016/125560号、国際公開第2015/145871号、国際公開第2011/049241号、特開2012−144722号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
3−1−10.有機電界発光素子の応用例
有機EL素子は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10−335066号公報、特開2003−321546号公報、特開2004−281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003−257621号公報、特開2003−277741号公報、特開2004−119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
3−2.その他の有機デバイス
本発明の化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されない。
合成例(1):化合物(4−37)
Figure 2021113160
[第1段]
3−ブロモジベンゾ[b,d]フラン[r−1](24.7g、100mmol)、2、6−ジメチルアニリン[r−2](29.6g、308mmol)、炭酸セシウム(65.1g)、塩化銅(I)(0.99g)およびキシレン(200ml)をフラスコに入れ、24時間還流した。反応後、反応液に水とトルエンを加えて攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラム(溶離液:酢酸エチル/トルエン=1/5(容量比))で精製した後、目的物を含むフラクションを濃縮することで、オイル状のN−(ジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン−3−アミン[r−3](19.2g)を得た。
Figure 2021113160
[第2〜3段]
第1段で得た化合物[r−3](19.2g、42.3mmol)をクロロベンゼン(50mL)に溶解させ、三臭化ホウ素(31.8g、127mmol)を加えて室温で8時間撹拌した。100℃に昇温および減圧し、揮発性を取り除いた。目的物[r−4]を含む反応混合物は精製を行わず、次の工程に進んだ。反応混合物に、2、6−ジ(プロペンー2−イル)フェニルリチウム(6.3g、38mmol)およびN−ブチルリチウム(30mL、1.1mmol)を溶解したクロロベンゼン(100mL)を加えて100℃で24時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え撹拌し、トルエンを用いて抽出した。反応液はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)を用いて、目的物を含むフラクションのみを回収し、15−(2,6−ジ(プロパン−1−エン−2−イル)フェニル)−7−(2,6−ジメチルフェニル)−7,15−ジヒドロベンゾ[2,3]ベンゾフロ[6,5−b]ベンゾ[2,3]ベンゾフロ[5,6−e][1,4]アザボリニン[r−5](10.7g)を得た。
Figure 2021113160
[第4段]
第3段で合成した15−(2,6−ジ(プロパン−1−エン−2−イル)フェニル)−7−(2,6−ジメチルフェニル)−7,15−ジヒドロベンゾ[2,3]ベンゾフロ[6,5−b]ベンゾ[2,3]ベンゾフロ[5,6−e][1,4]アザボリニン[r−5](10.7g、17.3mmol)およびスカンジウムトリフラート(8.5g、17.3mmol)をクロロベンゼン(200ml)に溶解させ100℃で7時間加熱撹拌を行った。飽和炭酸水素ナトリウムを加え、トルエンを用いて抽出した。減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/ヘキサン=1/4(容量比))で精製することで、11−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4,18,18−テトラメチル−11,18−ジヒドロ−4H−9,13−ジオキサ−11−アザ−3a2−ボラベンゾ[jk]フルオレノ[2,3,4−fg]インデノ[1,2−a]ピレン[化合物(4−37)](6.4g、収率60%)を得た。
Figure 2021113160
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.70(s,12H),2.11(s,6H),6.68−6.74(m,6H),6.82(dd,2H),7.04(m,2H),7.27(m,2H)、7.81(m,2H).
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法およびYamaguchiらによるOrganic & Biomolecular Chemistry,2019,17,5500−5504を参考に、本発明の他の化合物を合成することができる。
次に、本発明の化合物の基礎物性の評価と本発明の化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。
(1)蒸着型有機EL素子の作製と評価
実施例および比較例に係る有機EL素子を作製し、電圧を印加して電流密度、輝度、色度および外部量子効率などを測定する。作製した有機EL素子の構成として、以下の構成A(表1)、構成B(表2)、構成C(表3)および構成D(表4)の4つを選定して評価する。構成A、CおよびDは熱活性型遅延蛍光用材料に適合した構成であり、構成BはTTFを用いた一般的な構成である。構成Aは文献(Adv. Mater. 2016, 28, 2777-2781)で示された高い効率を期待できる素子構成である。構成Cは文献(Scientific Reports, 6, 2016, 22463)で示された比較的高い効率と長期間の駆動安定性を期待できる素子構成である。構成Dは熱活性型遅延蛍光をアシスティングドーパントとする素子である。ただし、本発明の化合物の適用はこれらの構成に限定されず、各層の膜厚や構成材料は本発明の化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
<実施例1>
Figure 2021113160
表1において、「NPD」はN,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニルであり、「TcTa」は4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、「mCP」は1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼンであり、「mCBP」は3,3'−ビス(N−カルバゾリル)−1,1'−ビフェニルであり、「TSPO1」はジフェニル[4−(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
<構成A:化合物(4−37)をドーパントとした素子>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、mCP、mCBP、化合物(4−37)およびTSPO1をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層を形成する。次に、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成する。次に、mCPを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成する。次に、mCBPと化合物(4−37)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成する。mCBPと化合物(4−37)の質量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節する。次に、TSPO1を加熱して膜厚40nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得る。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1〜10nm/秒になるように調節する。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定できる。
<実施例2>
Figure 2021113160
表2において、「HI−1」はN4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミンであり、「HAT−CN」は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT−1」はN−([1,1'−ビフェニル]−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミンであり、「HT−2」はN,N−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル)−[1,1':4',1"−テルフェニル]−4−アミンであり、「EMH2」は9−フェニル−10−(4−フェニルナフタレン−1−イル)アントラセンであり、「ET−1」は4,6,8,10−テトラフェニル[1,4]ベンゾキサボリニノ[2,3,4−kl]フェノキサボリニンであり、「ET−2」は3,3'−((2−フェニルアントラセン−9,10−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(4−メチルピリジン)であり、「Liq」と共に以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
<構成B:化合物(4−37)をドーパントとした素子>
構成Aと同様の手順で表2の構成材料や膜厚に従って構成BのEL素子を得る。ただし、発光層のEMH2と化合物(4−37)の質量比はおよそ99対1になるように、電子輸送層2のET−2とLiqの質量比はおよそ1対1になるように蒸着速度を調節する。また、銀とマグネシウムの質量比は1:9になるように蒸着速度を調節する。
ITO電極を陽極、銀マグネシウム合金電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定できる。
<実施例3>
Figure 2021113160
表3において、「Tris−PCz」は9,9',9"−トリフェニル−9H,9H',9H"−3,3’,6’,3”−テルカルバゾールであり、「T2T」は2,4,6−トリ[[1,1'−ビフェニル]−3−イル]−1,3,5−トリアジンであり、「BPy−TP2」は2,7−ジ([2,2'−ビピリジン]−5−イル)トリフェニレンである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
<構成C:化合物(4−37)をドーパントに用いた素子>
スパッタリングにより製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、HAT−CN、Tris−PCz、mCBP、化合物(4−37)、T2TおよびBPy−TP2をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、LiFおよびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を2.0×10-4Paまで減圧し、まず、HAT−CNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、次いで、Tris−PCzを加熱して膜厚30nmになるように蒸着することで2層からなる正孔層を形成する。次に、mCBPと化合物(4−37)を同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して発光層を形成する。mCBPと化合物(4−37)の質量比がおよそ90対10になるように蒸着速度を調節する。次に、T2Tを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、BPy−TP2を30nmになるように蒸着して2層からなる電子輸送層を形成する。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得ることができる。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定できる。
<実施例4>
Figure 2021113160
表4において、「3Cz2DPhCzBN」は、2,4,6−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)−3,5−ビス(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)ベンゾニトリルである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
<構成D:アシスティングドーパントに3Cz2DPhCzBNを、エミッティングドーパントに化合物(4−37)を用いた素子>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、HAT−CN、Tris−PCz、mCBP、3Cz2DPhCzBN、化合物(4−37)、T2TおよびBPy−TP2をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、Liq、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HAT−CNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、次に、Tris−PCzを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して2層からなる正孔層を形成する。次に、ホストとしてmCBP、アシスティングドーパントとして3Cz2DPhCzBNおよびエミッティングドーパントとして化合物(4−37)を同時に加熱して膜厚30nmになるように共蒸着して発光層を形成する。ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントの質量比がおよそ80対19対1になるように蒸着速度を調節する。次に、T2Tを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、ついで、BPy−TP2とLiqの質量比がおよそ70対30になるように加熱して膜厚30nmまで蒸着し、電子輸送層1および2を形成する。以上の各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒とする。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得る。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1〜10nm/秒になるように調節する。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定できる。
<実施例5、比較例1>
(有機EL素子の構成B1)
有機EL素子の構成B1は、前述の有機EL素子の構成Bにおけるホストおよび陰極の材料を変更した構成である。
Figure 2021113160
表5において、「EMH3」は2−(10−フェニルアントラセン−9−イル)ジベンゾ[b,d]フランであり、「BD1」は4,8,12−トリフェニル−8,12−ジヒドロ−4H−4,8,12−トリアザ−3a2−ボラジベンゾ[cd,mn]ピレンである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
<構成B1:化合物(4−37)をドーパントとした素子(実施例5)>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI−1、HAT−CN、HT−1、HT−2、EMH3、化合物(4−37)、ET−1、ET−2およびLiqをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HI−1を加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、さらにHAT−CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して、二層からなる正孔注入層を形成した。次いで、HT−1を加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、さらにHT−2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、二層からなる正孔輸送層を形成した。次に、EMH3と化合物(4−37)を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成した。EMH3と化合物(4−37)の質量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ET−1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、さらに、ET−2およびLiqを加熱して膜厚25nmになるように蒸着して、二層からなる電子輸送層を形成した。ET−2およびLiqの質量比がおよそ1:1になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成して、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1〜10nm/秒になるように調節した。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加したところ、輝度1000cd/m2のとき、発光ピーク波長は450nm、発光半値幅は30nm、外部量子効率は5.5%であった。また、初期輝度1000cd/m2で連続駆動させたときのLT90(輝度が900cd/m2になるまでの時間)は32時間であった。
<構成B1:化合物(BD1)をドーパントとした素子(比較例1)>
ドーパントに化合物(4−37)の代わりに化合物(BD1)を用いた以外は、実施例5と同様の手順で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加したところ、輝度1000cd/m2のとき、発光ピーク波長は405nm、発光半値幅は24nm、外部量子効率は1.5%であった。また、初期輝度1000cd/m2で連続駆動させたときのLT90は1時間以下であった。
以下に実施例5、および比較例1の特性をまとめた。本発明の化合物を用いた有機EL素子では外部量子効率や素子寿命が比較例に対して優れていた。
Figure 2021113160
(2)発光層形成用組成物の調製と評価
<実施例S−1〜実施例S−3および比較例S−1>
表7に記載のとおり、第1成分のホストを0.99質量%、第2成分のドーパントを0.01質量%および第3成分の溶媒を99質量%混合して、固形分濃度1質量%の発光層形成用組成物をそれぞれ調製した。
Figure 2021113160
上記表7において、「EMH4」は9−(7−([1,1’:3’,1”:3”,1’”−クアトロフェニル]−3−イル)ナフタレン−2−イル)−10−フェニルアントラセンである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021113160
また、発光層形成用組成物の調製に際して使用した溶媒は以下のとおりである。
「Tol / DHNp (9/1)」
トルエン/デカヒドロナフタレン=9/1(容量比)の混合溶液
「3PxT / c6B (7/3)」
3−フェノキシトルエン/シクロヘキシルベンゼン=7/3(容量比)の混合溶液
調製した発光層形成用組成物について、以下の評価を行った。これらの結果は表8に示すとおりであった。
<溶解性の評価>
調製した発光層形成用組成物の濁りおよび沈殿の有無を確認することで溶解性の評価を行った。濁りおよび沈殿のない組成物を「A」、濁りまたは沈殿が起きた組成物を「F」とした。
<成膜性の評価>
溶解性の評価が「A」であった発光層形成用組成物に関して、下記の操作に沿って、スピンコート成膜後またはインクジェット印刷後に得られた膜を観察し、ピンホール、化合物の析出またはムラのいずれかがある膜を「C」、ピンホール、化合物の析出およびムラのすべてがない膜を「B」、評価「B」に加えてされに平滑性が高い(Ra<5nm)膜を「A」とした。
(スピンコートによる成膜方法)
厚み0.5mm、サイズ28×26mmの清浄なガラス基板に、照射エネルギー1000mJ/cm2(低圧水銀灯(254ナノメートル))を照射することでUV−O3処理を行った。次いで、0.3〜0.6mlの発光層形成用組成物をガラス上に滴下し、スピンコート(スロープ(5秒間で所定の回転数まで上げる)→500〜5000rpmで塗布(所定の回転数で10秒間維持)→スロープ(5秒間で回転数を下げ、回転数を0rpmとする))を行った。さらに、120℃のホットプレート上で10分間乾燥させて成膜した。
(インクジェットによる成膜方法)
インクジェットを用いて、100ppiのピクセル内に発光層形成用組成物を吐出し、120℃で乾燥させて成膜した。
<インクジェット吐出安定性の評価>
溶解性の評価が「A」であった発光層形成用組成物に関して、インクジェットを用いて、100ppiのピクセル内に発光層形成用組成物を吐出し、吐出開始直後と24時間連続運転後におけるそれぞれのインクジェットの吐出安定性を評価した。なお、評価に際して、5割未満の吐出孔より吐出できる場合(吐出できない場合を含む)は「C」、5割以上9割未満の吐出孔から吐出できる場合は「B」、9割以上の吐出孔から吐出できる場合は「A」とした。
Figure 2021113160
(3)塗布型有機EL素子の作製と評価
次に、有機層を塗布形成して得られる有機EL素子について説明する。
<高分子正孔輸送化合物:XLP−101の合成>
特開2018−61028号公報に記載の方法に従い、XLP−101を合成した。M4の隣にはM5またはM6が結合した共重合体が得られ、仕込み比より各ユニットは40:10:50(モル比)であると推測される。なお、下記式において、Bpinはピナコラートボリルである。
Figure 2021113160
<高分子正孔輸送化合物:XLP−101溶液の調製>
特開2018−61028号公報に記載の方法に従い合成したXLP−101を0.7質量%になるように3−フェノキシトルエン/シクロヘキシルベンゼン=7/3(容量比)の混合溶液)に溶解させた。
<実施例SD−1および比較例SD−1の有機EL素子の作製>
有機EL素子における、各層の材料構成を表9に示す。
Figure 2021113160
上記表9における、正孔注入層の形成材料である「PEDOT:PSS」としては、市販のPEDOT:PSS溶液(Clevios(TM) P VP AI4083、下記式で表されるPEDOT:PSSの水分散液、Heraeus Holdings社製)を用いた。
Figure 2021113160
<実施例SD−1>
ITOが50nmの厚さに蒸着されたガラス基板上に、PEDOT:PSS溶液をスピンコートし、200℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚40nmの正孔注入層を成膜した。次いで、XLP−101溶液をスピンコートし、80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、200℃のホットプレート上で1時間焼成することで、発光層形成用組成物に不溶な膜厚30nmの正孔輸送層を成膜した。次いで、実施例S−3で調製した発光層形成用組成物をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚20nmの発光層を成膜した。
作製した多層膜を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ET−1、ET−2、LiqおよびLiFをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。真空槽を5×10-4Paまで減圧した後、ET−1を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成した。次いで、ET−2およびLiqを加熱して膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成した。ET−2およびLiqの質量比がおよそ1:1になるように蒸着速度を調節した。電子輸送層を形成する際の蒸着速度は1nm/秒とした。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成した。このようにして有機EL素子を得た。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、1000cd/m2発光時の特性を測定したところ、発光面は均一であり、発光スペクトルはピーク波長452nm、半値幅38nmであった。また、1000cd/m2発光時の外部量子効率は2.1%であった。
<比較例SD−1>
実施例S−2の代わりに比較例S−1を成膜した以外は実施例SD−1と同様の手順および構成にて有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、1000cd/m2発光時の特性を測定したところ、発光面に輝点が見られ、化合物の結晶化が起きている予想された。発光スペクトルはピーク波長425nmおよび半値幅67nmであった。また、1000cd/m2発光時の外部量子効率は0.2%であった。
表10に実施例SD−1および比較例SD−1の結果をまとめた。本発明の化合物を使用した実施例SD−1においてより高い効率が得られた。
Figure 2021113160
本発明では、新規な多環芳香族化合物を提供することで、有機EL素子用材料の選択肢を増やすことができる。また、新規な多環芳香族化合物を有機電界発光素子用材料として用いることで、優れた有機EL素子、それを備えた表示装置およびそれを備えた照明装置などを提供することができる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (31)

  1. 式(1)で表される多環芳香族化合物、または式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
    Figure 2021113160
    (式(1)中、
    A環、B環、C環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    ただし、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環は単環のアリール環、単環のヘテロアリール環、およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環であり、この縮合環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、またはGe−Rであり、前記Si−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、
    1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
    前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    前記>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合によりA環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環と結合していてもよく、
    式(1)で表される化合物または構造における、アリール環およびヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
    式(1)で表される化合物またはその多量体における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。)
  2. 前記縮合環は硫黄原子または酸素原子を含有するヘテロアリール環を含むか、または前記縮合環はナフタレンである、請求項1に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
  3. 前記縮合環は式(1a)または式(1b)で表される環である、請求項1に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
    Figure 2021113160
    (式(1a)中、
    4およびX5は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
    前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    前記>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    a1〜Ra8は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただしRa1〜Ra8のうちの隣接する3つは式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となり、前記の3つ以外のRa1〜Ra8のいずれかの隣接する2つは互いに結合して置換基を有していてもよいベンゼン環を形成していてもよく、
    n1およびn2は、それぞれ独立して、0または1であり、共に0であることはなく、
    式(1b)中、
    a9〜Ra16は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし少なくとも一組の隣接する3つのRa9〜Ra16は、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。)
  4. 式(1a)で表される環は、式(1a−1)〜式(1a−14)で表されるいずれかの環である、請求項3に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
    式(1a−3)、式(1a−9)、式(1a−13)、および式(1a−14)中、N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    式(1a−4)、式(1a−5)、および(1a−11)〜(1a−13)中、>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    式(1a−1)〜式(1a−14)中、
    a1〜Ra8およびRaa1〜Raa4は、それぞれ独立して、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、ただし、Ra1〜Ra8およびRaa1〜Raa4のうちの隣接する3つは、式(1)中のY1、X1、X2、またはX3との結合手となる。
  5. 式(1a)で表される環は、式(1a−1)または式(1a−2)で表される環である、請求項4に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
  6. 式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)からなる群より選択されるいずれかで表される多環芳香族化合物または式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)からなる群より選択されるいずれかで表される構造を複数有する、請求項1に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
    (式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)、中、
    1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、またはGe−Rであり、前記Si−RおよびGe−RのRは、アリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、
    1、X2、X3、X4、X5、X6、およびX7は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>C(−R)2、>S、>Si(−R)2、>S(=O)2、または>Seであり、
    前記>N−RのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    前記>C(−R)2および>Si(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    前記>N−R、>C(−R)2、および>Si(−R)2のRは連結基または単結合により環と結合していてもよく、
    環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
    b1〜Rb13は、水素、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、または置換シリルであり、
    式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、および式(15)それぞれで表される化合物またはその多量体における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
  7. 1がBであり、X2およびX3がいずれもC(−R)2である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
  8. 1がBであり、X2がC(−R)2であり、X3が>N−Rである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物またはその多量体。
  9. 下記構造式のいずれかで表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
    Figure 2021113160
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物またはその多量体に反応性置換基が置換した、反応性化合物。
  11. 請求項10に記載の反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、または、当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体。
  12. 主鎖型高分子に請求項10に記載の反応性化合物を置換させたペンダント型高分子化合物、または、当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物またはその多量体を含有する、有機デバイス用材料。
  14. 請求項10に記載の反応性化合物を含有する、有機デバイス用材料。
  15. 請求項11に記載の高分子化合物または高分子架橋体を含有する、有機デバイス用材料。
  16. 請求項12に記載のペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体を含有する、有機デバイス用材料。
  17. 前記有機デバイス用材料が、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の有機デバイス用材料。
  18. 前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、請求項17に記載の有機デバイス用材料。
  19. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物またはその多量体と、有機溶媒とを含む、組成物。
  20. 請求項10に記載の反応性化合物と有機溶媒とを含む組成物。
  21. 主鎖型高分子と請求項10に記載の反応性化合物と有機溶媒とを含む組成物。
  22. 請求項11に記載の高分子化合物または高分子架橋体と有機溶媒とを含む組成物。
  23. 請求項12に記載のペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体と有機溶媒とを含む組成物。
  24. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物もしくはその多量体、請求項10に記載の反応性化合物、請求項11に記載の高分子化合物もしくは高分子架橋体、または、請求項12に記載のペンダント型高分子化合物もしくはペンダント型高分子架橋体を含有する有機層とを有する、有機電界発光素子。
  25. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物もしくはその多量体、請求項10に記載の反応性化合物、請求項11に記載の高分子化合物もしくは高分子架橋体、または、請求項12に記載のペンダント型高分子化合物もしくはペンダント型高分子架橋体を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。
  26. 前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物、その多量体、反応性化合物、高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物またはペンダント型高分子架橋体とを含む、請求項25に記載の有機電界発光素子。
  27. 前記ホストが、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物またはジベンゾクリセン系化合物である、請求項26に記載の有機電界発光素子。
  28. 前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体、およびアゾリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項24〜27のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  29. 前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項28に記載の有機電界発光素子。
  30. 正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層のうちの少なくとも1つの層が、各層を形成し得る低分子化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくは、当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体、または、各層を形成し得る低分子化合物を主鎖型高分子と反応させたペンダント型高分子化合物、もしくは、当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体を含む、請求項24〜29のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  31. 請求項24〜29のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
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