JP2021110341A - 転がり軸受の軌道輪 - Google Patents

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昌弘 山田
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直輝 藤村
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Abstract

【課題】軌道面における転動疲労特性を改善しつつ、反軌道面における耐クリープ性を改善することができる転がり軸受の軌道輪を提供する。【解決手段】焼入れが行われた鋼製であり、内周面及び外周面を備えている。内周面及び外周面の一方は、軌道面を有している。内周面及び前記外周面の他方は、反軌道面になっている。反軌道面における鋼中の残留オーステナイト量は、軌道面における鋼中の残留オーステナイト量よりも少ない。軌道面における鋼中の残留オーステナイト量と反軌道面における鋼中の残留オーステナイト量との差は、3体積パーセント以上である。軌道面における圧縮残留応力の最小値は、100MPa以上である。【選択図】図2

Description

本発明は、転がり軸受の軌道輪に関する。
例えば、特許文献1(特開2017−187104号公報)には、転がり軸受の内輪が記載されている。特許文献1の内輪は、焼入れの行われた鋼製である。特許文献1に記載の内輪は、内輪の内部にある内層部と、内部層の周囲全体を取り囲んでいる表層部とを有している。表層部は、軌道面を含む外周面側のみならず、内周面側(反軌道面側)にも存在している。表層部における鋼中の残留オーステナイト量は、内層部における鋼中の残留オーステナイト量よりも多い。
特開2017−187104号公報
上記のとおり、特許文献1に記載の内輪では、表層部が外周面側のみならず内周面側にも存在しているため、経時変化により、内径が拡大して軸との嵌め合いが緩まり、クリープが生じるおそれがある。また、特許文献1に記載の内輪では、軌道面における圧縮残留応力の最小値が低く、軌道面における転動疲労特性に改善の余地がある。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、軌道面における転動疲労特性を改善しつつ、反軌道面における耐クリープ性を改善することができる転がり軸受の軌道輪を提供するものである。
本発明の転がり軸受の軌道輪は、焼入れが行われた鋼製であり、内周面及び外周面を有する表面を備えている。内周面及び外周面の一方は、軌道面を含んでいる。内周面及び前記外周面の他方は、反軌道面になっている。反軌道面における鋼中の残留オーステナイト量は、軌道面における鋼中の残留オーステナイト量よりも少ない。軌道面における鋼中の残留オーステナイト量と反軌道面における鋼中の残留オーステナイト量との差は、3体積パーセント以上である。軌道面における圧縮残留応力の最小値は、100MPa以上である。
上記の転がり軸受の軌道輪では、鋼中における残留オーステナイト量の平均値が、10体積パーセント以下であってもよい。
上記の転がり軸受の軌道輪では、表面に浸窒層が形成されていてもよい。鋼中における残留オーステナイト量の平均値が、20パーセント以下であってもよい。
上記の転がり軸受の軌道輪では、軌道面における鋼の硬さ及び反軌道面における鋼の硬さが、700Hv以上であってもよい。
上記の転がり軸受の軌道輪では、反軌道面における鋼中の残留オーステナイト量が、5体積パーセント以下であってもよい。
上記の転がり軸受の軌道輪では、鋼が、JIS規格に定められた高炭素クロム軸受鋼SUJ2であってもよい。
本発明の転がり軸受の軌道輪によると、軌道面における転動疲労特性を改善しつつ、反軌道面における耐クリープ性を改善することができる。
内輪10の平面図である。 図1のII−IIにおける断面図である。 変形例に係る内輪10の断面図である。 内輪10の製造方法を示す工程図である。 焼き戻し工程S3を説明するための平面模式図である。 焼き戻し工程S3を説明するための断面模式図である。 加熱コイル30による加熱時間と内周面20c及び外周面20dにおける温度との関係についてのシミュレーション結果を示すグラフである。 内周面20cの加熱温度を変化させた際の外周面20dの加熱温度のシミュレーション結果を示すグラフである。
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
(実施形態に係る転がり軸受の軌道輪の構成)
以下に、実施形態に係る転がり軸受の軌道輪の構成を説明する。
実施形態に係る転がり軸受の軌道輪は、例えば、深溝玉軸受の内輪(以下においては、「内輪10」とする)である。但し、実施形態に係る転がり軸受の軌道輪は、これに限られるものではない。実施形態に係る転がり軸受の軌道輪は、深溝玉軸受の外輪であってもよく、深溝玉軸受以外の転がり軸受の軌道輪であってもよい。
内輪10は、焼入れが行われた鋼製である。すなわち、この鋼は、マルテンサイト結晶粒と、残留オーステナイト結晶粒とを含んでいる。この鋼は、マルテンサイト結晶粒及び残留オーステナイト結晶粒以外(例えば、フェライト結晶粒や炭化物粒)を含んでいてもよい。この鋼は、例えば、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定められた高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2である。
図1は、内輪10の平面図である。図2は、図1のII−IIにおける断面図である。図1及び図2に示されるように、内輪10は、環状の形状を有している。内輪10は、中心軸Aを有している。
内輪10は、第1端面10a及び第2端面10bと、内周面10cと、外周面10dとを有している。第1端面10a、第2端面10b、内周面10c及び外周面10dを合わせて、内輪10の表面ということがある。
第1端面10a及び第2端面10bは、中心軸Aに沿う方向(以下においては、「軸方向」という)における端面を構成している。第2端面10bは、軸方向における第1端面10aの反対面である。
内周面10cは、中心軸Aを中心とする円周に沿う方向(以下においては、「周方向」という)に延在している。内周面10cは、中心軸A側を向いている。内周面10cは、第1端面10a及び第2端面10bに連なっている。内輪10は、内周面10cにおいて軸(図示せず)に嵌め合わされる。
外周面10dは、周方向に延在している。外周面10dは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面10dは、中心軸Aに直交し、かつ中心軸Aを通る方向(以下において、「径方向」という)における内周面10cの反対面である。
外周面10dは、軌道面10daを有している。外周面10dは、軌道面10daにおいて、内周面10c側に窪んでいる。軌道面10daは、中心軸Aを通る断面視において円弧形状を有している。軌道面10daは、転動体(図示せず)に接触する面である。反軌道面とは、径方向において軌道面10daの反対側にある面である。内輪10においては、内周面10cが反軌道面になっている。
反軌道面である内周面10cにおける残留オーステナイト量は、軌道面10daにおける残留オーステナイト量よりも少ない。内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値は、10体積パーセント以下になっていることが好ましい。「内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値」とは、内輪10の径方向に沿って軌道面10daと内周面10cとの間に等間隔で配置された複数点の測定により得られた残留オーステナイト量の分布曲線を周方向に沿って積分するとともに、それを周方向に平行な軌道輪(内輪10)の断面積で除した値である。
内周面10cにおける残留オーステナイト量と軌道面10daにおける残留オーステナイト量との差は、3体積パーセント以上であることが好ましい。内周面10cにおける残留オーステナイト量は、5体積パーセント以下であることが好ましい。
なお、内輪10を構成している鋼中における残留オーステナイト量は、X線回折法により測定される。より具体的には、残留オーステナイト量は、X線を照射することにより得られた各相の回折ピークの強度を比較することにより得られる。
軌道面10daにおける圧縮残留応力の最小値は、100MPa以上である。軌道面10daからの距離が0.2mm以下となる領域において、圧縮残留応力が100MPa以下となっていることが好ましい。軌道面10daにおける残留応力は、X線回折法により測定される。より具体的には、軌道面10daにX線を照射した際の回折ピーク角の変化に基づいて、軌道面10daにおける残留応力が測定される。
軌道面10daにおける硬さは、内周面10cにおける硬さよりも高い。軌道面10daにおける硬さ及び内周面10cにおける硬さは、700Hv以上となっていることが好ましい。なお、軌道面10daにおける硬さ及び内周面10cにおける硬さは、JIS規格(JIS Z 2244:2009)に定められたビッカース硬さ試験法にしたがって測定される。
<変形例>
図3は、変形例に係る内輪10の断面図である。図3に示されるように、内輪10の表面には、浸窒層10eが形成されていてもよい。浸窒層10eに位置する鋼中の窒素濃度は、浸窒層10e以外に位置する鋼中の窒素濃度よりも高くなっている。なお、鋼中の窒素濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により測定される。
なお、内輪10の表面に浸窒層10eが形成されている場合、内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値は、20体積パーセント以下になっていることが好ましい。
(実施形態に係る転がり軸受の軌道輪の製造方法)
以下に、内輪10の製造方法を説明する。
図4は、内輪10の製造方法を示す工程図である。図4に示されるように、内輪10の製造方法は、準備工程S1と、焼入れ工程S2と、焼き戻し工程S3と、後処理工程S4とを有している。準備工程S1においては、焼入れ工程S2、焼き戻し工程S3及び後処理工程S4を経ることにより内輪10となる環状の加工対象部材20が準備される。
なお、内輪10の表面に浸窒層10eが形成される場合、焼入れ工程S2に先立って、加工対象部材20の表面に対して浸窒処理が行われる。浸窒処理は、例えば、窒素を含む雰囲気ガス(例えば、アンモニア(NH)ガス)中において加工対象部材20を所定温度で所定時間保持することにより行われる。
焼入れ工程S2においては、加工対象部材20に対する焼入れが行われる。焼入れ工程S2は、加熱工程S21と冷却工程S22とを有している。加熱工程S21においては、加工対象部材20がA点以上の温度に加熱され、所定時間保持される。A点は、鋼中のフェライトがオーステナイトへの変態を開始する温度である。加熱工程S21が行われることにより、加工対象部材20を構成している鋼中にオーステナイト結晶粒が生じる。
冷却工程S22は、加熱工程S21の後に行われる。冷却工程S22においては、加工対象部材20がMs点以下の温度に冷却される。Ms点は、オーステナイトからマルテンサイトへの変態が開始される温度である。そのため、冷却工程S22により、加工対象部材20を構成している鋼中のオーステナイト結晶粒の一部が、マルテンサイト結晶粒になる。
冷却工程S22においては、Ms点を下回り、Mf点以下又はその近傍の温度まで冷却される。Mf点は、オーステナイトからマルテンサイトへの変態が終了する温度である。すなわち、冷却工程S22においては、いわゆるサブゼロ処理(深冷処理)が行われる。これにより、加工対象部材20を肯定している鋼中の残留オーステナイト量が、相当程度減少する。
焼き戻し工程S3は、焼入れ工程S2の後に行われる。焼き戻し工程S3においては、加工対象部材20の焼き戻しが行われる。
図5は、焼き戻し工程S3を説明するための平面模式図である。図6は、焼き戻し工程S3を説明するための断面模式図である。図5及び図6に示されるように、焼き戻し工程S3における加熱は、例えば、誘導加熱により行われる。
より具体的には、加熱コイル30を加工対象部材20の内周面20cに沿って周方向に回転させて内周面20cを誘導加熱することにより行われる。加熱コイル30により内周面20cの加熱が行われている際、加工対象部材20の外周面20dは、噴射部31から噴射される水等の冷却液により冷却されている。
図7は、加熱コイル30による加熱時間と内周面20c及び外周面20dにおける温度との関係についてのシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図7中において、横軸は、加熱コイル30による加熱時間(単位:秒)であり、縦軸は、内周面20c及び外周面20dにおける温度(単位:℃)である。図7のシミュレーションは、内周面20cの加熱温度が420℃、外周面20dを水冷、内周面20cと外周面20dとの間の距離が3mmとの条件の下で行われた。図7に示されるように、焼き戻し工程S3においては、外周面20dの加熱温度は、内周面20cの加熱温度よりも低くなる。
図8は、内周面20cの加熱温度を変化させた際の外周面20dの加熱温度のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図8中において、横軸は、内周面20cの加熱温度(単位:℃)、縦軸は、外周面20dの加熱温度(単位:℃)である。図8のシミュレーションは、内周面20cの加熱温度を変化させたことを除き、図7のシミュレーションと同様の条件で行われた。図8に示されるように、外周面20dの加熱温度は、内周面20cの加熱温度の一次式となる。内周面20cの加熱温度をx、外周面20dの加熱温度をyとすると、y=a×x+b(aは1未満の正の数、bは正の数)となる(以下において、この式を「式1」という)。
例えば、特開平10−102137号公報に記載されているように、焼き戻し工程S3が行われた後における加工対象部材20を構成する鋼中の残留オーステナイトの体積比率(M)は、焼き戻し工程S3が行われる前における加工対象部材20を構成する鋼中の残留オーステナイトの体積比率(M)、加熱温度(T)及び加熱時間(t)を用いて、M=M×{A×exp(−Q/RT)×t}(A、Q及びnは定数、Rはガス定数)となる(以下において、この式を「式2」という)。
そのため、加熱コイル30による内周面20cの加熱温度及び加熱時間を適宜調整することにより、外周面20dの加熱温度を適宜調整することができ、それに伴い、内周面20cにおける残留オーステナイトの体積比率及び外周面20dにおける残留オーステナイトの体積比率を適宜調整することができる。
例えば参考文献(井上毅,「新しい焼き戻しパラメータとその連続昇温曲線に沿った焼き戻し積算法への応用」,鉄と鋼,66,10(1980),1533)に記載されているように、焼き戻し工程S3が行われた後における加工対象部材20を構成する鋼の硬さ(Hv)は、加熱時間(t)及び加熱温度(T)を用いて、Hv=c×logt+d/T+e(c、d及びeは定数)となる。そのため、加熱コイル30による内周面20cの加熱温度及び加熱時間を適宜調整することにより、内周面20cにおける硬さを適宜調整することができる。
後処理工程S4においては、加工対象部材20に対する後処理が行われる。この後処理には、加工対象部材20に対する研削加工、加工対象部材20に対する洗浄等が含まれている。以上により、内輪10の製造工程が完了する。
(実施形態に係る転がり軸受の効果)
以下に、内輪10の効果を説明する。
内輪10においては、反軌道面(内周面10c)における残留オーステナイト量が軌道面10daにおける残留オーステナイト量よりも少ないため、時間経過に伴って残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することによる内周面10cの寸法変化が小さい。そのため、内輪10においては、軸との嵌め合いが緩みにくく、反軌道面における耐クリープ性を改善することができる。
内輪10においては、内周面10cにおける残留オーステナイト量が軌道面10daにおける残留オーステナイト量よりも少ない(別の観点から言えば、内周面10cにおける残留オーステナイトの減少量が、軌道面10daにおける残留オーステナイトの減少量よりも多い)ため、焼き戻し工程S3の終了後における内周面10c側の収縮は、軌道面10da側よりも大きい。
この収縮量の違いに起因し、軌道面10daには圧縮残留応力が作用する。内輪10においては、内周面10cにおける残留オーステナイト量と軌道面10daにおける残留オーステナイト量との差が3体積パーセント以上になっているため、軌道面10daには、大きな圧縮残留応力(具体的には、最小値が100MPa以上)が作用する。そのため、内輪10によると、軌道面10daにおける転動疲労特性を改善することができる。
内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値が10体積パーセント以下になっている(浸窒層10eが形成されているときは、20体積パーセント以下になっている)場合には、時間経過に伴う残留オーステナイトのマルテンサイトへの変態が生じにくく、耐クリープ性をさらに改善することができる。
なお、冷却工程S22においてサブゼロ処理を行うことにより、内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値が10体積パーセント以下(浸窒層10eが形成されているときは、20体積パーセント以下)とすることができる。焼き戻し工程S3の前に鋼中の残留オーステナイト量の平均値を減少させておけば、焼き戻し工程S3に要する時間を短縮することができ、また焼き戻し工程S3での内周面10cの加熱温度を低下させることができる。その結果、軌道面10daのみならず、内周面10cにおいても硬さを維持することができる。
<実験例>
実験に供するサンプルとして、サンプル1〜サンプル4を準備した。サンプル1〜サンプル4は、JIS規格に定められたSUJ2により形成された環状の部材である。サンプル1及びサンプル2に対しては、表面に浸窒処理が行われていない。サンプル3及びサンプル4に対しては、表面に浸窒処理が行われている。サンプル1及びサンプル3に対しては、冷却工程S22においてサブゼロ処理が行われておらず、サンプル2及びサンプル4に対しては冷却工程S22においてサブゼロ処理が行われている。サンプル1〜サンプル4に対しては、焼き戻し工程S3が行われている。
表1に示されるように、サンプル1の軌道面における残留オーステナイト量は、11体積パーセントであった。他方、サンプル2の軌道面における残留オーステナイト量は、7体積パーセントであった。また、サンプル3の軌道面における残留オーステナイト量は31体積パーセントであった一方で、サンプル4の軌道面における残留オーステナイト量は16体積パーセントであった。
焼き戻し工程S3により加工対象部材20を構成している鋼中の残留オーステナイト量は軌道面から反軌道面に向かい減少するため、冷却工程S22においてサブゼロ処理を行うことにより、内輪10を構成している鋼中の残留オーステナイト量の平均値を、10体積パーセント以下(浸窒層10eが形成されている場合、20体積パーセント以下)にすることができる。
Figure 2021110341
サンプル2に対して、焼き戻し工程S3を行った。この際、サンプル2の内周面側における加熱温度は300℃とされ、サンプル2の外周面側は水冷された。加熱時間は、式1及び式2に基づいて、外周面における残留オーステナイト量と内周面における残留オーステナイトとの差が3体積パーセントとなるように設定された。
表2に示されるように、焼き戻し工程S3が行われる前のサンプル2においては、外周面に残留引張応力が作用していたが、焼き戻し工程S3が行われた後のサンプル2においては、外周面からの距離が0.2mmまでの位置に100MPa以上の圧縮残留応力が生じていた。このことから、内周面10cにおける残留オーステナイト量と軌道面10daにおける残留オーステナイト量との差が3体積パーセント以上になっていることにより軌道面10daに100MPa以上の圧縮残留応力が発生することが、実験的にも明らかにされた。
Figure 2021110341
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
上記の実施形態は、転がり軸受の軌道輪に特に有利に適用される。
10 内輪、10a 第1端面、10b 第2端面、10c 内周面、10d 外周面、10da 軌道面、10e 浸窒層、20 加工対象部材、20c 内周面、20d 外周面、30 加熱コイル、31 噴射部、A 中心軸、S1 準備工程、S2 焼入れ工程、S3 焼き戻し工程、S4 後処理工程、S21 加熱工程、S22 冷却工程。

Claims (6)

  1. 転がり軸受の軌道輪であって、
    前記軌道輪は、焼入れが行われた鋼製であり、内周面及び外周面を有する表面を備え、
    前記内周面及び前記外周面の一方は、軌道面を含み、
    前記内周面及び前記外周面の他方は、反軌道面になっており、
    前記反軌道面における前記鋼中の残留オーステナイト量は、前記軌道面における前記鋼中の残留オーステナイト量よりも少なく、
    前記軌道面における前記鋼中の残留オーステナイト量と前記反軌道面における前記鋼中の残留オーステナイト量との差は、3体積パーセント以上であり、
    前記軌道面における圧縮残留応力の最小値は、100MPa以上である、転がり軸受の軌道輪。
  2. 前記鋼中における残留オーステナイト量の平均値は、10体積パーセント以下である、請求項1に記載の転がり軸受の軌道輪。
  3. 前記表面には、浸窒層が形成されており、
    前記鋼中における残留オーステナイト量の平均値は、20パーセント以下である、請求項1に記載の転がり軸受の軌道輪。
  4. 前記軌道面における前記鋼の硬さ及び前記反軌道面における前記鋼の硬さは、700Hv以上である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受の軌道輪。
  5. 前記反軌道面における前記鋼中の残留オーステナイト量は、5体積パーセント以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受の軌道輪。
  6. 前記鋼は、JIS規格に定められた高炭素クロム軸受鋼SUJ2である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の転がり軸受の軌道輪。
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