以下、圃場を作業走行する田植機について説明する。
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)、すなわち、「左」(図2に示す矢印Lの方向)および「右」(図2に示す矢印Rの方向)は、それぞれ、機体の左方向および右方向を意味するものとする。
〔全体構造〕
図1〜図3に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4、および、苗植付装置3の後端部領域に設けられる薬剤散布装置18等を備える。苗植付装置3、施肥装置4および薬剤散布装置18は、作業装置の一例である。
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン2(「動力源」に相当)、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro−Static Transmission)であり、モータ斜板およびポンプ斜板の角度を調節することにより、エンジン2から出力される駆動力(回転数)を変速する。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。エンジン2からの動力は、無段変速装置9等を介して前輪12A、後輪12B、作業装置等に供給される。
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、縦送り機構23は、苗載せ台21が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(後述の図15のC5参照)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から駆動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗とも称す)を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
図1〜図3に示すように、施肥装置4は、横長のホッパ25、繰出機構26、電動式のブロワ27、複数の施肥ホース28、および、条毎に備えられた作溝器29を備える。ホッパ25は、粒状または粉状の肥料を貯留する。繰出機構26は、モータ(図示せず)から伝達される動力で作動し、ホッパ25から2条分の肥料を所定量ずつ繰り出す。
ブロワ27は、機体1に搭載されたバッテリ73からの電力で作動し、各繰出機構26により繰り出された肥料を圃場の泥面に向けて搬送する搬送風を発生させる。施肥装置4は、ブロワ27等の断続操作により、ホッパ25に貯留した肥料を所定量ずつ圃場に供給する作動状態と、供給を停止する非作動状態とに切り換えることができる。
各施肥ホース28は、搬送風で搬送される肥料を各作溝器29に案内する。各作溝器29は、各整地フロート15に配備される。そして、各作溝器29は、各整地フロート15と共に昇降し、各整地フロート15が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
図1〜図3に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A(「車速操作具」に相当)、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B(「車速操作具」に相当)、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11(「作業操作具」に相当)、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有する情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。
ステアリングホイール10は、非図示の操舵機構を介して前輪12Aと連結され、ステアリングホイール10の回転操作を通じて、前輪12Aの操舵角が調節される。
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場を田植作業する作業走行について図1〜図3を参照しながら、図4を用いて説明する。
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。手動走行と自動走行とは、自動・手動切替スイッチ7Cを切り替えることにより選択される。手動走行は、運転者が手動で、ステアリングホイール10、主変速レバー7A、副変速レバー7B、作業操作レバー11等の操作具を操作して作業走行を行うものである。自動走行は、あらかじめ設定された走行経路に沿って、田植機が自動制御で走行および作業を行うものである。また、自動走行は、運転者の搭乗を要する有人自動走行(有人自動走行モード)と、運転者の搭乗を要しない無人自動走行(無人自動走行モード)とを行うことができる。有人自動走行は、田植機から提供されるガイダンスに沿って一部の操作を運転者が行いながら、その他の走行および作業に伴う動作を田植機が自動制御するものである。無人自動走行では、運転者が搭乗することは要しないが、無人自動走行中に運転者が搭乗していても良い。また、無人自動走行は、運転者が自動走行の開始操作、例えば後述されるリモコン90(図33参照)による開始操作を行うことにより、自動制御で作業走行を開始し、あらかじめ設定された作業走行を自動制御で行うものである。有人自動走行が行われる有人自動モードと無人自動走行が行われる無人自動モードとは、情報端末5を用いて設定される。
田植機が植え付け作業を行う際には、まず、圃場の外周に沿って、運転者が手動操作で、作業を行わずに田植機を走行させる。この外周走行によって、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成され、圃場が外周領域OAと内部領域IAに区分けされる。また、この際、田植機が圃場に侵入する出入口Eが設定されると共に、圃場の外周辺のうちの一辺または指定された複数辺が、田植機にマット状苗や肥料、薬剤、燃料等を補給するための苗補給辺SLとして設定される。
圃場マップが生成される際には、田植機が作業走行を行う走行経路が設定される。内部領域IAでは、圃場の一つの辺に略平行な複数の経路を旋回経路で繋ぐ内部往復経路IPLが生成される。内部往復経路IPLは、開始点Sから終了点Gまで、内部領域IAの全体をくまなく走行する走行経路である。内部往復経路IPLが生成される際には、出入口Eの近傍に、誘導開始可能エリアGAが生成される。この誘導開始可能エリアGA内に田植機が停止されることにより、田植機は内部往復経路IPLの開始点Sまで自動走行により移行することが可能となる。なお、誘導開始可能エリアGAから行われる開始点誘導は専用の走行経路が設定されるが、この走行経路は複数設定されても良い。圃場の形状によっては、停車位置からの開始点誘導が困難な場合がある。複数の走行経路を設定しておくことにより、停車位置にかかわらず適切に開始点誘導される可能性が高まり好ましい。
外周領域OAでは、圃場の外周に沿って外周領域OA内を周回する、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLの2つの走行経路が生成される。内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを作業走行することにより、外周領域OAの全体の作業走行が行われる。内部往復経路IPLの作業走行(往復作業走行)が終了した後、内側周回経路IRLの作業走行開始位置までの移動は、別途設定された走行経路を走行して行われる。圃場の外形が複雑な場合、内部往復経路IPLの終点と内側周回経路IRLの開始点を離す必要がある場合がある。このような際には、内部往復経路IPLの終点から内側周回経路IRLの開始点に移動する走行経路として、圃場の任意の一辺に平行な経路を含む走行経路が設けられても良い。
自動走行を行う場合には、このように走行経路が生成された状態で、田植機は、まず、出入口Eから圃場に侵入し、誘導開始可能エリアGAに移動して停止する。誘導開始可能エリアGAで、自動走行が開始されると、田植機はいったん後進した後開始点Sに移動し(開始点誘導)、終了点Gに至るまで内部領域IAの内部往復経路IPLの自動走行が行われる。無人自動走行における走行車速は、あらかじめ設定された走行車速の最高速度に応じて制御される。
圃場の形状が複雑な場合、旋回に必要な領域が、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとの作業走行では作業しきれない場合がある。このような場合、内部往復経路IPLの一部を延長して作業走行する必要が生じる。この際、内部往復経路IPLの旋回の後、必要な距離だけ後進してから、前進による作業走行が開始されても良い。この時の後進走行は自動走行で行われ、特定の操作を要さない。ただし、前進時と異なり前輪による操向が困難なことから、後進時のみ手動操作に切り替えられるようにしても良い。
内部領域IAの作業走行が終了すると、外周領域OAの作業走行が行われる。まず、田植機は、内側周回経路IRLの開始点まで手動で移動され、その後、無人自動走行により、内側周回経路IRLの作業走行を行う。次に、田植機は、外側周回経路ORLの開始点まで手動で移動され、その後、有人自動走行により、外側周回経路ORLの作業走行を行う(周回作業走行)。有人自動走行においては、手動操作された走行車速で、走行経路に沿った自動走行が行われ、作業装置はガイダンス(運転アシスト)に応じて手動で操作される。また、旋回時には、所定の位置で自動的に機体1が一時停止され、ガイダンスに応じて手動で必要な作業装置の操作が行われると、自動走行で旋回走行が行われる。以上の作業走行により、圃場全体の植え付け作業が終了する。
なお、内部往復経路IPLおよび内側周回経路IRLは、無人の自動走行に限らず、有人の自動走行または手動走行で作業走行が行われても良い。また、外側周回経路ORLは、有人自動走行に限らず、手動走行で作業走行が行われても良く、無人自動走行で作業走行が行われても良い。さらに、内部往復経路IPLの終了点Gから内側周回経路IRLへの移動は、手動走行に限らず、有人または無人の自動走行で行われても良い。同様に内側周回経路IRLの終点から外側周回経路ORLへの移動も、手動走行に限らず、有人または無人の自動走行で行われても良い。
なお、有人自動走行は、少なくとも運転者が搭乗していることと、主変速レバー7Aが中立位置にあることとが自動走行の開始条件である。開始条件を満たした状態において、主変速レバー7Aが進行方向に移動されると自動走行が開始される。上記圃場の走行経路おいて、有人自動走行は、外側周回経路ORLでの作業走行の際に行われるが、その他の走行経路において行われても良い。また、有人自動走行において、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。例えば、内部往復経路IPLや内側周回経路IRLでの有人自動走行における作業走行では、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。ただし、外側周回経路ORLでの作業走行の際には、苗植付装置3の下降は手動操作により行われる。具体的には、外側周回経路ORLの旋回位置に機体1が到達すると、苗植付装置3は自動制御で上昇される。その状態で旋回が完了すると、機体1は停止し、手動操作により苗植付装置3を下降させることにより、自動走行による作業走行が継続される。外側周回経路ORLでは周囲に障害物が存在する可能性が他の走行経路より高い。円滑な作業走行を行うために、外側周回経路ORLでの作業走行では、障害物等が存在しないことが確認されたうえで、苗植付装置3の下降は手動操作により行われる。
また、無人自動走行は、リモコン90が操作されることにより自動走行が開始され、あらかじめ設定された走行経路で自動制御により作業走行が行われる。上記圃場の走行経路において、無人自動走行は、内部往復経路IPLおよび内側周回経路IRLでの作業走行の際に行うことができる。無人自動走行においても、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。
〔制御系〕
次に、図1〜図3を参照しながら図5を用いて、田植機の制御系について説明する。
田植機の制御系の中核をなす制御ユニット30は、田植機の走行制御や各種作業装置1Cの動作制御を行う。制御ユニット30は、手動走行の際には運転者が行う各種操作具1Bの操作に応じて制御を行い、自動走行の際には自車位置を取得しながら、自車位置に応じた制御を行う。
そのため、自動走行用マイコン6等を含む制御ユニット30は、自車位置を算出するための測位ユニット8、各種設定や操作を行うと共に各種情報を表示する情報端末5、田植機の各種状態を検出するセンサ群1A、各種操作具1B、各種作業装置1C、操舵に係る前輪12Aや無段変速装置9等を含む走行機器1D等と接続される。なお、操作具1Bの1つであるモード切替スイッチ7Eは、手動走行を行う手動走行モード、有人で自動走行を行う有人自動走行モード、無人で自動走行を行う無人自動走行モードのいずれかを選択ためのスイッチである。
測位ユニット8は、機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8Aと、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8Bが含まれている。
手動走行モードにおいて、制御ユニット30は、操作具1Bの操作や情報端末5の設定状態に応じて走行機器1Dを制御し、車速や操舵量を制御することにより、走行を制御する。また、制御ユニット30は、操作具1Bの操作や情報端末5の設定状態に応じて作業装置1Cの動作を制御する。
有人自動走行モードまたは無人自動走行モードにおいて、制御ユニット30は、測位ユニット8から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、機体1の地図座標(自車位置)を算出する。また、制御ユニット30は、圃場マップを取得し、圃場マップおよび情報端末5の設定や操作に応じて走行経路を設定する。同時に、制御ユニット30は、走行経路中の位置に応じた作業装置1Cの動作を決定する。そして、制御ユニット30は、自車位置に基づいて走行経路中の走行位置を算出し、走行経路中の走行位置および情報端末5の設定状態に応じて、走行機器1Dおよび作業装置1Cを制御する。このようにして、制御ユニット30は、自動走行モードでの作業走行を制御する。
また、制御ユニット30は、無人自動走行モードに比べて有人自動走行モードにおいて、車速を低減させ、加減速が緩やかに行われるように制御する。これにより、無人自動走行モードでは効率的に作業走行が行われ、有人自動走行モードでは搭乗する運転者の乗り心地を損なわないようにすることができる。
なお、制御ユニット30は、上述の機能を実現できれば任意の構成とすることができ、複数の機能ブロックから構成されても良い。また、制御ユニット30の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されても良い。ソフトウエアに係るプログラムは、任意の記憶部に記憶され、制御ユニット30が備えるECUやCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
〔無段変速装置の操作構成〕
次に、図1〜図3を参照しながら、図6〜図10を用いて、HST等の無段変速装置9のモータおよびポンプの斜板(以下、単に「斜板」と称す)の角度を操作する構成について説明する。
無段変速装置9は、主変速レバー7Aが操作されるのに伴って斜板の角度が調整され、前後進の切り替えや走行車速の調整を行う。主変速レバー7Aの操作領域は、ニュートラル位置を挟んで、直線状にあるいはクランク状に、前進操作領域および後進操作領域が配置される。前進操作領域および後進操作領域において、ニュートラル位置から離れる位置に主変速レバー7Aが操作されることにより、前進あるいは後進時の走行車速が早くなる。
主変速レバー7Aの操作位置は、ポテンショメータ40等の操作位置検出器により検出される。主変速レバー7Aの下端はレバー保持部42Aに固定される。ポテンショメータ40は、ステアリングシャフト(図示せず)を保護するシャフトカバー等に支持される。ポテンショメータ40は軸40Aを備える。ギア42は、機体1に保持された軸41に沿って揺動可能な構成で支持される。ギア42は、主変速レバー7Aの操作位置に応じて軸41を中心に揺動する。
ポテンショメータ40の軸40Aには回転伝達部40Bの一端が固定され、回転伝達部40Bの回動に伴って軸40Aが回転する。回転伝達部40Bの他端部にはピン40Cが設けられる。また、ギア42は回転伝達部42Bを備える。回転伝達部42Bの先端部分には穴42Cが設けられる。回転伝達部40Bは、ピン40Cが穴42Cを貫通するように配置される。主変速レバー7Aの操作位置が変位すると、ギア42が揺動する。回転伝達部42Bおよび回転伝達部40Bを介して、ギア42の揺動に応じてポテンショメータ40の軸40Aが回転する。ポテンショメータ40は、この角度を検出することにより、主変速レバー7Aの操作位置を検出する。
また、主変速レバー7Aの操作範囲を規定するレバーガイド43がパワーステアリングユニット44に支持される。レバーガイド43には、主変速レバー7Aの操作範囲を規定する形状の穴部43Bが設けられる。レバー保持部42Aにはロッド43Aが固定される。ロッド43Aは穴部43Bを貫通する。以上の構成により、主変速レバー7Aは、レバーガイド43の穴部43Bにより、操作範囲が規定される。
ギア42の一端の外周縁には、ギア42の揺動方向に沿って並ぶ複数の切欠き42Hが形成される。ギア42の揺動に伴って、いずれかの切欠き42Hが、パワーステアリングユニット44に支持される保持ピン42Iと係合する。切欠き42Hは、主変速レバー7Aが中立位置に操作されたときに保持ピン42Iと係合するものを挟んで、ギア42の揺動方向の両方にそれぞれ形成される。これらの切欠き42Hは、それぞれ、主変速レバー7Aが前進側に位置したときに保持ピン42Iと係合するものと、主変速レバー7Aが前進側に位置したときに保持ピン42Iと係合するものとに区別される。したがって、切欠き42Hは、中立位置に対応するものをはさんで、前進操作領域に対応するものと後進操作領域に対応するものが並んで配置される。
いずれかの切欠き42Hと保持ピン42Iが係合することにより、主変速レバー7Aを操作する運転者は、操作位置に応じて一定の手ごたえを感じることができる。これにより、運転者が主変速レバー7Aを操作する際の目安となり、主変速レバー7Aの操作性が向上する。
従来から、運転者は走行車速を、主変速レバー7Aの段数で認識していた。段数は、例えば、1速、2速・・・のように変速段数として表現される。本実施形態では無段変速装置9を採用しているため段数という概念は存在しないが、上記のような手ごたえの有無から、運転者は疑似的に段数を認識することができ、従来からの操作性と比べて違和感を感じ難くなる。
また、中立位置に対応する切欠き42Hは、他の切欠き42Hに比べて開口幅が広く形成されても良い。主変速レバー7Aの組付けや使用劣化により、主変速レバー7Aの中立位置が多少ずれたとしても、ある程度の幅を持って中立位置を規定することができ、主変速レバー7Aの操作性が向上する。
主変速レバー7Aの操作感を向上させるために、摩擦保持機構42D(「保持機構」に相当)や中立保持機構42Eが設けられても良い。摩擦保持機構42Dは、軸40Aの周囲の、軸40Aとギア42との間に設けられ、その摩擦力により、軸40Aに対してギア42が揺動する際の抵抗を生じさせる。摩擦保持機構42Dにより、主変速レバー7Aを操作する際に適度な抵抗が生じ、主変速レバー7Aを所望の操作位置に操作することが容易となる。なお、摩擦保持機構42Dはこのような構成に限らず、主変速レバー7Aの操作性を確保できる程度に、主変速レバー7Aの操作位置の移動に抵抗力を与えることができれば、任意の構成とすることができる。
中立保持機構42Eは、ギア42に固定されたロッド42Fと、ロッド42Fが挿通されるねじりコイルバネ42Gを備える。ねじりコイルバネ42Gは、一端がギア42に接し、他端がレバー保持部42Aの側部に接するように設けられ、ギア42が揺動する方向(主変速レバー7Aが前進操作領域または後進操作領域を移動する方向)と交差する方向にレバー保持部42Aを付勢する。ここで、レバーガイド43の穴部43Bがクランク状に形成されている場合、例えば、中立位置から前進位置に主変速レバー7Aが操作されるためには、主変速レバー7Aが中立位置からクランクに沿って横方向(ギア42が揺動する方向と交差する方向)に操作された後、前進位置に移動される必要がある。主変速レバー7Aが中立位置から前進領域に移動することを抑制する方向に、主変速レバー7Aが中立保持機構42Eによって付勢されるため、中立位置から前進領域に主変速レバー7Aを移動させるためには一定以上の力が必要になる。その結果、適切に主変速レバー7Aが中立位置に保持される。
無段変速装置9の斜板の角度は、主変速レバー7Aの操作位置に応じて変更される。主変速レバー7Aは機械的に無段変速装置9と接続されず、無段変速装置9の斜板の角度は、モータ45等から構成されるアクチュエータにより変更される。具体的には、無段変速装置9の斜板の角度を変更するためのアクチュエータは、モータ45、ギア48、およびリンク49を含んで構成される。モータ45によりギア48が駆動され、ギア48と無段変速装置9とに接続されるリンク49により、無段変速装置9の斜板の角度が変更される。無段変速装置9の斜板の角度は、ポテンショメータ46等の斜板角度検出器により検出され、ポテンショメータ40で検出した主変速レバー7Aの操作位置と無段変速装置9の斜板の角度との整合性が、上述の制御ユニット30等で確認される。つまり、制御ユニット30は、主変速レバー7Aの操作位置に対応する無段変速装置9の斜板の角度となるように、ポテンショメータ40およびポテンショメータ46の検出結果に基づいて、モータ45を制御する。
ポテンショメータ46およびモータ45は、ステー47を介してパワーステアリングユニット44に支持される。ポテンショメータ46は軸46Aを備え、軸46Aの回転角度を検出することができる。
ギア48は、軸46Aの回転に伴って搖動する構成で、軸46Aに固定される。モータ45は、ギア48を駆動して揺動させる。ギア48の揺動に伴ってポテンショメータ46の軸46Aが回転する。そのため、ポテンショメータ46はギア48の揺動角度を検出する。
ギア48の端部領域には、リンク49の一端が支持される。リンク49の他端は、無段変速装置9の斜板に接続される。そのため、ギア48の揺動に応じて、無段変速装置9の斜板の角度が変更される。より詳細には、リンク49は、ロッド49Aと操作部49Bとを備える。ロッド49Aの一端はギア48に支持される。操作部49Bの一端はロッド49Aの他端に支持され、操作部49Bの他端は無段変速装置9の斜板に接続される。
以上の構成により、ポテンショメータ40の検出値に応じてモータ45が駆動し、ギア48が搖動し、リンク49により無段変速装置9の斜板の角度が変更される。
なお、上記構成例では、主変速レバー7Aとモータ45とが非連結とされ、主変速レバー7Aの操作位置をポテンショメータ40で検出し、ポテンショメータ40の検出値に応じてモータ45が駆動される構成である。しかし、このような構成に限らず、主変速レバー7Aとモータ45が直接接続され、主変速レバー7Aの操作位置に応じて、直接モータ45が駆動される構成としても良い。
また、主変速レバー7Aとモータ45とが非連結である構成において、自動走行において、主変速レバー7Aの操作位置にかかわらず、モータ45を駆動して無段変速装置9の斜板の角度を変更することができる。機体1は無段変速装置9の斜板の角度に応じた走行状態で走行する。この際、主変速レバー7Aにもモータ等のアクチュエータが設けられ、無段変速装置9の斜板の角度に応じて、主変速レバー7Aの操作位置が変更されても良い。主変速レバー7Aは、中立位置においてクランク状に操作される。つまり、主変速レバー7Aの操作経路はクランク状に規制され、主変速レバー7Aは、前後進の切り替えの際に、中立位置で前後進方向と交差される方向に移動する。そのため、このアクチュエータが主変速レバー7Aと接続されていると、主変速レバー7Aが中立位置をまたいで前進側と後進側との間を移動できない。そのため主変速レバー7Aとこのアクチュエータとの間にクラッチが設けられ、中立位置ではクラッチが切れて、主変速レバー7Aを左右方向に操作できる機構にしても良い。さらに、主変速レバー7Aを左右方向に移動させる別のアクチュエータが設けられ、中立位置でのみクラッチの切替で左右方向に主変速レバー7Aを移動させる構成としても良い。また、主変速レバー7Aを中立位置から前進側に移動させるアクチュエータと、主変速レバー7Aを中立位置から後進側に移動させるアクチュエータとが、別々に設けられても良い。なお、これらのアクチュエータおよびクラッチは、制御ユニット30または、制御ユニット30に内蔵された主変速レバー制御部、あるいは、制御ユニット30の外部に設けられる主変速レバー制御部により、ポテンショメータ46にて検知される無段変速装置9の斜板の角度に応じて制御される。
上述のように、主変速レバー7Aとモータ45とが非連結であり、無段変速装置9の斜板の角度がモータ45の駆動によって変更される構成であると、モータ45が故障した際、無段変速装置9の斜板の角度を変更する術がなく、機体1を移動させることができなくなる。例えば、圃場の途中でモータ45が故障したとしても、機体1を移動させることができないと、修理を圃場内で行うことになり、非常に困難である。
そのため、所定のロッドを応急器具(図示せず)としてあらかじめ用意しておき、主変速レバー7Aと無段変速装置9の斜板とを直結できるようにすることが好ましい。例えば、応急器具は、ロッド43Fとギア48とを直結できる構成とし、好ましくは、機体1に常時装備する。応急器具でロッド43Fとギア48とを直結することにより、主変速レバー7Aの操作位置に応じてギア48が駆動し、無段変速装置9の斜板の角度を変更することが可能となる。
また、上記構成例では、モータ45、ギア48、およびリンク49を含んで構成される、斜板の角度を変更するためのアクチュエータは、主変速レバー7Aと無段変速装置9との間に配置される構成である。しかし、このアクチュエータの配置位置は任意であり、機体1内のステップ14Aより下方の領域に配置されても良い。
走行車速は、メインモニタ14Bや情報端末5等の表示装置に表示されても良い。この場合、走行車速が変速段数で表示されても良い。また、自動走行において、情報端末5等を用いて、あらかじめ作業時の走行車速を運転者が選択して設定されるが、この際の走行車速が変速段数により設定されても良い。これにより、運転者や監視者は、走行車速を感覚的に認識することができ、効率的に作業または設定を行うことができる。
また、手動走行あるいは有人の自動走行において、作業走行中に作業内容に応じた推奨走行車速が情報端末5等の表示装置に表示されても良い。作業内容として、畔越え時の走行、植付中の走行、旋回前の走行、旋回中の走行、旋回後の走行には、それぞれ適した走行車速がある。このような作業走行中、あるいは直前に、作業内容に応じた推奨走行車速が表示されることにより、運転者は、容易に作業内容に適した走行車速で作業走行を行うことができる。
推奨走行車速に限らず、作業内容に応じた推奨エンジン回転数が表示されても良い。エンジン回転数は、メインモニタ14B等の表示装置に表示される。作業内容によってエンジン負荷が異なり、エンジン負荷はエンジン回転数に依存する。運転者は、表示された推奨エンジン回転数となるように、メインモニタ14Bに表示されたエンジン回転数を確認しながら、主変速レバー7A等を操作する。これにより、運転者は、容易に作業内容に適したエンジン回転数で作業走行を行うことができる。
上述のように、植付作業は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることにより植付機構22が作動して行われる。植付機構22の動作速度は走行車速に応じて決まり、株間が一定になるように植付作業が行われる。そのため、植付作業中に植付クラッチが停止しているにもかかわらず、走行が継続されると、その間に植え付けられるべき苗が植え付けられず、欠株が生じる。欠株の発生を抑制するため、植付作業中に植付クラッチが遮断状態になると、無段変速装置9の斜板の角度を中立位置に移行させ、作業走行を停止する構成としても良い。機体1を停止させる際には、あらかじめ機体1を停止させる旨の警告が行われても良い。また、機体1を停車させる際には、急激に減速せず、機体が停車するまで徐々に減速が行われることが好ましい。
車速を操作する操作具として、さらに、アクセルレバー7Fが設けられても良い。走行車速は、主に主変速レバー7Aの操作位置に応じて、無段変速装置9の斜板の角度とエンジン回転数とでスケジュールされるマップに即して制御される。ここで、圃場の状態や作業状況により、走行車速を維持しながらエンジン回転数のみを上げたい場合や、燃費等を考慮してエンジン回転数を下げたい場合がある。このような場合、アクセルレバー7Fによりエンジン回転数が増減される。具体的には、アクセルレバー7Fの操作位置を変更することにより、無段変速装置9の斜板の角度が維持されながら、エンジン回転数のみを現在のエンジン回転数から増減させることができる。さらに、アクセルレバー7Fの操作位置を検知するポテンショメータ(「アクセル検出器」に相当)が設けられても良い。
上述のように、基本的には、主変速レバー7Aのポテンショメータ40の検出値に応じてエンジン回転数が決定される。ただし、このように決定されたエンジン回転数にかかわらず、アクセルレバー7Fのポテンショメータの検出値に応じて、このエンジン回転数は増減する。例えば、主変速レバー7Aのポテンショメータ40の検出値に応じて決定されたエンジン回転数で走行している際に、アクセルレバー7Fがエンジン回転数を上昇させる方向に操作されるとエンジン回転数は増大し、このエンジン回転数がアクセルレバー7Fで指示された最低限必要な指示回転数となる。
〔旋回時の走行車速制御〕
内部往復経路IPL(図4参照)の旋回走行を自動走行で行う際には、旋回走行時には、直進状経路での作業走行時(直進状走行)より走行車速が減速される。つまり、旋回走行は直進状走行より低速で走行される。旋回走行における走行車速はあらかじめ定められており(旋回車速)、主変速レバー7Aの操作位置にかかわらず旋回車速で走行する。
そのため、旋回経路に侵入する位置(旋回開始位置)から所定の距離だけ手前の位置で減速が開始される。ここで、直進状経路での作業走行における走行車速は、情報端末5等により設定される。例えば、自動走行の設定において、情報端末5を用いて、自動走行中の最大走行車速である最高車速が設定される。最高車速が設定されると、自動走行中の主変速レバー7A(図1参照)の操作位置にかかわらず、設定された最高車速より低速で走行が行われる。減速開始位置は、旋回開始位置よりあらかじめ定められた所定の距離だけ手前の位置でも良いが、走行車速に応じて異なる位置となっても良い。つまり、旋回経路の手前に設けられる減速区間の長さは、走行車速に応じて可変であっても良い。また、有人自動モードでは、情報端末5による設定車速を主変速レバー7Aで変更可能にし、変更された設定車速に基づき旋回車速が設定されても良い。
例えば、走行車速が速いほど減速区間が長く設定され、旋回開始位置より離れた位置から減速が開始される。走行車速は、実際に測定された走行車速を用いても良いし、情報端末5等により設定された走行車速を用いても良い。
自動走行として、有人自動走行と無人自動走行とが設定可能である。有人自動走行は必ず運転者が搭乗するが、無人自動走行では運転者が搭乗する必要がなく、実際、運転者が搭乗しない状態で作業走行が行われることがある。運転者が搭乗している場合、急激な減速が行われると、運転者の不快感が大きくなり、不適切である。他方、走行速度の加減速を、作業走行に支障がない範囲で急激に行う方が、作業効率の観点では有効である。そのため、減速開始位置を、有人自動走行の際と無人自動走行の際とで異ならせることが好ましい。なお、この際の減速は主変速レバー7A(図6参照)の操作位置にかかわらず行われる。そのため、走行車速が変更されても、主変速レバー7Aの操作位置は変更されない構成であっても良い。
有人自動走行の際には、減速区間が長く設定されて旋回開始位置より離れた位置から減速が開始されることが好ましい。これに加えて、無人自動走行の際には、減速区間が短く設定されて旋回開始位置に近い位置から減速が開始されることが好ましい。このような制御により、無人自動走行時には効率的に作業走行を行うことができ、有人自動走行時には運転者にとっても適切な作業走行を行うことができる。なお、減速開始位置の調整は、有人自動走行の際にのみ行い、無人自動走行の際には、あらかじめ定められた減速開始位置から減速を行う構成とすることもできる。また、苗補給辺SL側では減速区間が余裕をもって確保され、苗補給辺SL以外の辺での旋回時の減速開始位置を苗補給辺SL側より旋回開始位置に近い位置としても良い。
減速開始位置の調整を行う際に、調整効率を設定することが可能な構成としても良い。つまり、減速度を設定可能な構成とし、急激な減速を許容する設定にされた場合は減速区間が短くなるように減速開始位置が調整され、緩やかに減速するように設定にされた場合は減速区間が長くなるように減速開始位置が調整されても良い。これにより、状況に応じた適切な自動走行を選択することができる。
減速開始位置に近づいた際に、運転者に減速が開始されることが報知されても良い。例えば、情報端末5にその旨の表示が行われたり、音声により報知されたりすることができる。報知が行われることにより、運転者は減速に備えることができる。
上記のような減速開始位置の調整を行うか否かは、有人自動走行に設定されているか無人自動走行に設定されているかにより判断される場合に限らず、運転者が実際に搭乗しているか否かを判断して行っても良い。無人自動走行でも運転者が搭乗している場合には運転者の不快感を考慮することが適切であり、実際に運転者が搭乗していない場合に限り作業効率に重点を置くことが好ましい。
そのため、運転者が実際に搭乗しているか否かが判断され、搭乗していない場合には所定の位置から減速を開始し、搭乗している場合にのみ減速開始位置の調整が行われても良い。例えば、運転者が実際に搭乗しているか否かの判断は、運転座席16(図1参照)に設けられる着座センサ16A(図1)や人感センサ等(図5に示すセンサ群1Aの1つ)により行うことができる。他にも、運転者が保持するウェアラブル端末やスマートフォンの位置情報を検出し、この位置情報から検出された運転者の位置と機体1の位置とが所定の範囲内にあるか否かにより、運転者が実際に搭乗しているか否かが判断されても良い。
なお、有人自動走行においては、運転者が搭乗する必要がある。そのため、着座センサ16A等を備えて運転者が搭乗しているか否かを判断する。そして、運転者が搭乗していることが検知されることが、有人自動走行の開始条件とされる。また、有人自動走行において、運転者が搭乗していることが検知されない場合、運転者に着座(搭乗)をうながす警報が報知されても良い。この際、情報端末5にも警告が表示されても良い。また、これらの警告は、無人自動走行においても行われても良い。無人自動走行において行われる警告は、着座を促すことは要さず、単に運転者が着座していないことを報知するだけでも良い。また、運転者が着座いていないことを検知した場合、走行車速を減速したり、走行を停止したりする構成としても良い。機体1を減速・停車させる際には、あらかじめその旨の警告が報知されても良い。また、機体1を停車させる際には、急激に停車させず、徐々に減速して機体1を停車させることが好ましい。その後、運転者が着座したことを検出すると、走行を開始したり、走行車速を戻したりしても良い。これらの制御は、自動走行の際に限らず、手動走行の際に行われても良い。
また、運転者が着座いていないことを検知した場合、自動走行の開始や、一時停止後の自動走行の再開を行わない構成としても良い。例えば、有人自動走行の開始条件として着座センサ16Aが着座を検出していることを規定しても良い。この場合、有人自動走行の開始時に、着座センサ16Aが着座を検出していない場合、着座を求める報知を行っても良い。報知は音声や情報端末5への表示等により行う。さらに、作業走行における最高車速が設定されている場合、着座が確認できないと設定された最高車速を低減することもでき、着座が確認されている場合には、設定された最高車速を超えて作業走行を行うことが可能な構成にすることもできる。
また、無人自動走行において、運転者が搭乗する必要はないが、運転者が搭乗してはいけない訳ではない。ただし、無人自動走行は有人自動走行に比べて、走行車速が速く制御され、また、加減速も急峻に行われる。そのため、無人自動走行において、着座センサ16A等により運転者が運転座席16に着座していることが検知された後、運転者が立ち上がる等して着座が検知されなくなった場合、着座を促す報知が行われても良い。さらに、離席が検知されると自動走行が一時停止され、着座が確認されるまで、自動走行が再開されないように制御されても良い。
この他、有人自動走行あるいは無人自動走行において、旋回や後進が開始される際にも、運転者が着座しているか否かが確認され、着座していない際には、情報端末5への表示、ブザー等の発報、その他の警告により、着座が促されても良い。この際、機体1が減速あるいは停止されても良いが、作業者の利便性を考慮して、必ずしも機体1が減速あるいは停止されなくても良い。
上述のように、旋回開始位置において、主変速レバー7A(図1参照)の操作位置や、情報端末5等で設定された走行車速にかかわらず、旋回開始位置にて減速するように走行速度が調整される。このような、走行状況に応じた走行車速の制御は、旋回開始位置に限らず、畦際等の圃場の外周辺の近傍を走行する際等にも行われて良い。
圃場の耕盤が荒れている場合、走行経路を適切に走行できず、作業が適切に行われない場合がある。例えば、植付作業の場合、適切な走行経路上に、適切な条間で植え付けを行うことができず、植付不良が生じる場合がある。このような作業不良を抑制するため、耕盤が荒れている場合には、制御ユニット30は、植付不良が生じる可能性があることを報知させても良いし、走行車速を抑制するように制御しても良い。耕盤の荒れは機体1の移動等から検出することができ、例えば、作業リンクから作業装置のロールまたはピッチング方向の挙動を検出して判断できるし、フロートの揺動を検出して判断できるし、慣性計測モジュール8Bから機体1の傾きの変化を検出して判断することもできる。
自動走行においては、自動制御で旋回が行われ、自動制御で前進と後進との切り替えが行われる。旋回や進行方向の切り替えの際には、機体1が揺れ、運転者にショックが伝わり、ショックに備えることが適切である。そこで、旋回や進行方向の切り替えの際に、その旨を注意喚起したり、着座を促したりする報知が行われても良い。なお、報知は、情報端末5に表示されたり、リモコン90に表示されたり、メインモニタ14B(図2参照)に表示されたり、後述されるボイスアラーム発生装置100(図1参照)により報知されたり、積層灯71が点灯されたり、種々の方法で行われることができる。
着座センサ16Aは運転座席16(図1参照)内に設けられても良い。着座センサ16Aは、制御ユニット30等の制御用ECUとの間で信号の送受信が行われるため、信号配線や電源配線等の配線類が接続される場合がある。また、運転座席16は、座面に交差する方向の軸を中心に回動可能に構成されることがある。運転座席16が回動する場合、着座センサ16Aに接続される配線類が、運転座席16の回転軸等と接触し、あるいは絡み、破損する場合がある。配線類の破損を抑制するために、配線類は、運転座席16の回動支点である回転軸付近に沿って配置され、回動部付近にクランプされることが好ましい。また、着座センサ16Aは、例えば、圧力センサ等が用いられ、着座が確認できれば任意の構成であっても良い。
〔エンジン回転数制御〕
エンジン回転数は、手動走行においては主変速レバー7A(図1参照)の操作位置に応じ、自動走行においては自動走行ECU(図5の制御ユニット30等に相当または内蔵)の制御に応じて、エンジン回転数制御用マイコン(図5の制御ユニット30等に相当または内蔵)が、モータ45(図6参照)を駆動することにより制御される。
さらに、エンジン回転数制御用マイコンは、燃料タンク中の燃料の残量が所定の量以下になった場合、エンジン回転数または無段変速装置9(図6参照)の斜板の角度の少なくともいずれかを制御し、燃費効率の向上を図っても良い。例えば、燃費効率の向上を図るために、エンジン回転数制御用マイコンは、無段変速装置9の斜板の角度を高速側に変位させると共に、エンジン回転数を低減させる。燃料の残量は、例えば、燃料タンク中にセンサ等(図5に示すセンサ群1Aの1つ)を設け、このセンサ等により検出することができる。なお、無段変速装置9の斜板の角度は、専用の変速装置制御用マイコン(図5の制御ユニット30等に相当または内蔵)により制御されても良い。
田植機が畦越えを行うときやトラックの荷台に移動する際には、走行車速は低速でありながら、エンジン回転数を維持するために大きな駆動力が必要となる。そのため、田植機が畦越えを行うときやトラックの荷台に移動する際には、主変速レバー7A(図1参照)の操作位置や、アクセルレバー7F(図2参照)の操作位置、情報端末5等で設定された走行車速にかかわらず、無段変速装置9(図1参照)を低速側に変位させ、エンジン回転数を高めに設定することが好ましい。この際、主変速レバー7A等の操作位置にかかわらず、無段変速装置9の斜板の角度やエンジン回転数が調整されても良い。なお、田植機が畦越えを行うときやトラックの荷台に移動する状態であることの検出は、機体1の傾斜等を検出して判断することもでき、あるいは、操作具の一つとして畦越えモードスイッチ(図示せず)を設けて、手動で畦越えモードスイッチを操作して、田植機が畦越えを行うときやトラックの荷台に移動する状態であるとの設定を行っても良い。または、搭載した測位ユニット8が検出する機体1の高さ位置の変化から状態検出を行っても良い。
また、圃場が強湿田である場合も、エンジン2(図1参照)に負荷がかかり、大きな動力が必要となり、最悪の場合エンジン2が停止して作業が中断される。そのため、強湿田を作業走行する際には、エンジン回転数が引き上げられると共に、無段変速装置9の斜板の角度が低速側になるように自動制御されても良い。これにより、適切な作業走行を継続して行うことが可能となる。
このような作業負荷はエンジン回転数で判断され、作業負荷が大きい場合はエンジン回転数が引き上げられることが好ましい。これと同時に、無段変速装置9の斜板の角度が低速側になるように制御されても良い。これにより、作業負荷が大きくなっても、エンジン2が停止することが抑制され、作業走行を継続することができる。作業負荷が小さい場合はエンジン回転数が引き下げられることが好ましい。これと同時に、無段変速装置9の斜板の角度が高速側になるように制御されても良い。これにより、燃費効率の向上を図ることができる。以上により、適切なエンジン回転数で作業走行を継続することができる。
後進走行は、前進走行に比べて低速で行われる。そのため、後進走行時には、エンジン回転数の最大値が前進走行時に比べて低く抑えられても良い。
また、エンジン回転数制御用マイコンは、上述の制御ユニット30に内蔵されても良いが、別個設けられても良い。例えば、エンジン回転数制御用マイコンは、ステアリングシャフトの近傍に配置しても良い。エンジン回転数制御用マイコンや変速装置制御用マイコンは、エンジン2および無段変速装置9を制御する。そのため、エンジン回転数制御用マイコンや変速装置制御用マイコンは、エンジン2および無段変速装置9の近傍に配置されることが好ましい。
〔走行車速制御〕
次に、図1を参照しながら図11を用いて、走行車速の制御構成について説明する。
走行車速は主変速レバー7Aの操作位置に応じて操作され、無段変速装置9の斜板の角度とエンジン回転数とが制御されて、主変速レバー7Aの操作位置に応じた速度(操作速度)で機体1が走行する。無段変速装置9の斜板の角度が大きくなる程、つまり無段変速装置9の斜板の開度が大きくなる程、走行車速は速くなる。また、エンジン回転数が高くなる程走行車速は早くなる。
従来の走行車速の制御では、主変速レバー7Aにより操作された操作速度が速い程、操作速度に比例して、エンジン回転数を高くし、無段変速装置9の斜板の開度を大きくする。ここでは、このような制御を通常モードでの制御と称し、この関係は、図11の通常モードのグラフAで示される。例えば、通常モードでは、エンジン回転数は3000[rpm]が限度であり、このとき無段変速装置9の斜板の開度が100[%]に制御され、走行車速は、最大走行車速である1.8[m/s]となる。そして、通常モードのグラフAに則して、設定速度ES[m/s]を出力するために、制御ユニット30(図5参照)は、エンジン回転数をRo[rpm]、無段変速装置9の斜板の開度をr[%]に制御する。
本実施形態においては、通常モードではなく、燃費効率を優先させたエコモードにて走行車速の制御が行われる。エコモードは、無段変速装置9の斜板の開度を優先的に大きくし、その分エンジン回転数を低くしても設定速度を確保する制御であり、エンジン回転数を低く抑えることにより燃費効率の向上を図る制御である。
具体的には、ある速度O[m/s]から設定速度ES[m/s]に加速する場合、制御ユニット30(図5参照)は、無段変速装置9の斜板の開度をr[%]より大きなrE[%]とし、エンジン回転数を目標エンジン回転数RE[rpm]に向けて高めていく。無段変速装置9の斜板の開度がrE[%]である状態で、エンジン回転数がRE[rpm]となることにより、設定速度ES[m/s]で走行することが可能となる。
ただし、作業走行におけるエンジン負荷が大きい場合、エンジン回転数を上げようとしても、目標エンジン回転数REに到達しないことがある。この場合、目標エンジン回転数REを高く設定して、エンジン回転数がREに到達するように制御する。さらに、目標エンジン回転数REをエンジン回転数の限度である3000[rpm]に設定しても、エンジン回転数がREに到達しない場合、無段変速装置9の斜板の開度rEを小さくし、目標エンジン回転数REを高く設定することにより、走行車速が設定速度ESに到達できるように制御する。このような制御を行うことにより、設定速度ESで作業する際に、燃費効率の向上を図ることができる。
エンジン2は、ある限界以上の負荷がかかると、エンジン回転数を上げることができなくなり、エンジン2が停止してしまう場合がある。そのため、目標エンジン回転数REをエンジン回転数の限度である3000[rpm]に設定する以前であっても、所定の負荷以上の負荷がエンジン2にかかると、無段変速装置9の斜板の開度rEを小さく設定する制御が行われても良い。これにより、エンジン2が停止してしまうことを抑制して、継続的に作業走行を行うことが可能となる。
さらに、このように無段変速装置9の斜板の開度rEを小さく設定する制御が行われた際に、エンジン回転数を上げる状態になっても、無段変速装置9の斜板の開度を戻さないことが好ましい。これにより、走行車速の過度の増減を抑制して、スムーズな作業走行を維持することができる。
なお、本実施形態では、走行車速の制御をエコモードのみで行う構成を例に説明したが、エコモードと通常モードとを選択的に実施することができる構成としても良い。このような構成により、エコモードで作業走行を行うことにより、燃費効率の向上をさせることができ、通常モードで作業走行を行うことにより、機体1の性能を最大限発揮させて安定的な作業走行を行うことができ、状況に応じた最適な走行車速の制御を行うことができる。
〔エラー検知時等の走行制御〕
図示しないが、苗植付装置3(図1参照)や無段変速装置9(図1参照)、測位ユニット8等の各種装置には、必要に応じて動作状態を検出するセンサ(図5に示すセンサ群1A)が設けられる。自動走行において、これらのセンサがエラー状態を検知したり、センサ自身に不具合が生じていると判断される場合には、制御ユニット30は、自動走行を終了させて機体1を停止させても良いが、自動走行を維持しつつ、機体1を一時的に停止させても良い。
エラー等の不具合が生じた際には、不適切な作業が行われることを抑制するために、走行が停止されることが好ましい。自動走行を終了させて、不具合を解消した後に、自動走行の設定からやり直して走行を再開することが適切な場合もある。しかし、一時的な不具合の場合、自動走行の設定からやり直すことが効率的でない場合もある。
例えば、測位ユニット8が取得する衛星からの信号が一時的に微弱になることがあるが、これは一時的に電波の受信状態が低下しただけである場合も多く、すぐに状態が回復することも少なくない。このような状態になる度に自動走行を終了させていると、作業効率が悪くなる恐れがある。したがって、このような場合、自動走行は一時停止されて、走行のみを停止することが好ましい。しばらく待って、状況が改善されない場合に初めて自動走行を終了させて、必要な修理等が行われることが好ましい。
なお、機体1を停止させる際には、あらかじめ機体1を停止させる旨や不具合が生じたこと、不具合の内容等の警告を行っても良い。また、機体1を停車させる際には、急激に減速せず、機体が停車するまで徐々に減速が行われることが好ましい。
圃場の出入口等の傾斜地で機体1が停止した場合、機体1が傾斜を滑り落ちる場合がある。このような場合、無段変速装置9の斜板の角度を中立位置にするのではなく、傾斜を上る方向に無段変速装置9の斜板の角度が調整されても良い。例えば、圃場に侵入するために傾斜を下る途中で機体1を停止させた場合、制御ユニット30は、無段変速装置9の斜板の角度を後進方向に移動させる。これにより、機体1が滑り落ちる方向と逆向きに駆動されるため、機体1が滑り落ちることを抑制して、機体1を停止させることができる。
なお、機体1が停止されて無段変速装置9の斜板の角度が中立位置に操作されている場合、測位ユニット8を用いて算出された自車位置が移動していると、自車位置に応じて無段変速装置9の斜板の角度が調整され、停車状態が維持されるように制御されても良い。
さらに、傾斜地等での機体1の停止を維持するために、無段変速装置9の斜板の角度に加えて、エンジン回転数が合わせて制御されても良い。
〔バッテリ容量制御〕
田植機に搭載された各種装置には、バッテリ73(図2参照)から供給される電力で動作するものがある。これらの装置はそれぞれ動作に際し使用する電力量が異なる。例えば、施肥装置4(図1参照)のブロアは大量の電力を消費する。バッテリ73はエンジン2(図1参照)の動作中に充電される。しかし、消費電力の大きな装置が動作されている作業走行では、バッテリ73の充電量を超えて電力が消費される場合があり、バッテリ73の残量が少なくなることがある。このため、バッテリ73の残量が所定量より少なくなっている場合、エンジン2を停止する操作がなされても、バッテリ73を充電するために、しばらくの間エンジン2を動作させておくことが好ましい。
バッテリ73は充電量を測定するセンサ((図5に示すセンサ群1Aの1つ))を備える。エンジン2の停止と始動は、キー等の操作によって行われる。エンジン2を停止する操作が行われた際に、バッテリ73が備えるセンサにより充電量が所定の値以下の場合、制御ユニット30は、直ちにエンジン2を停止させず、エンジン2の動作を継続させてバッテリ73を充電し、その後エンジン2を停止させる。エンジン2の停止操作後、バッテリ73を充電している間(エンジン動作継続期間)は、エンジン2が動作しているとしても、走行および作業は停止する。つまり、この間、無段変速装置9の斜板は中立位置を維持し、植付クラッチ等は遮断され、ブレーキは制動状態とされる。また、主変速レバー7Aおよび副変速レバー7Bのうちの少なくとも一方が中立位置に維持されても良い。
エンジン動作継続期間は、所定の時間でも良いが、バッテリ73が備えるセンサにより充電量が所定の値以上になる期間でも良い。また、エンジン2を停止する操作が行われてもエンジン2を停止させない際には、その旨が報知れることが好ましい。
また、エンジン2の動作中に消費電力の大きな装置が使用された場合、あるいはバッテリ73の残量が低下した場合、エンジン回転数を上げる制御が行われても良い。エンジン回転数が上げられることにより、バッテリ73の充電が促進される。
なお、上述のバッテリ73の充電とエンジン2の操作に関する制御は、制御ユニット30が行っても良いが、制御ユニット30に内蔵され、または制御ユニット30とは別に設けられる、充電制御部(図示せず)等の機能ブロックが行っても良い。
〔副変速レバー〕
副変速レバー7B(図1参照)は、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。
通常、移動速は作業速に比べて走行車速が速い。また、苗植付装置3は、作業速において、圃場に植え付けられる株間が一定となるように制御される。その結果、移動速で植付作業が行われると所定の株間で植え付けが行われず、適切な植付作業ができないおそれがある。そのため、制御ユニット30は、副変速レバー7Bが作業速側に操作されていないと、作業が開始されないように制御されることが好ましい。例えば、制御ユニット30は、副変速レバー7Bが作業速側に操作されていないと、植付クラッチを接続しないように制御する。これにより、作業に適した走行車速で走行され、適切な作業を行うことができる。なお、副変速レバー7Bの操作位置を確認するために、副変速レバー7Bにもポテンショメータが設けられることが好ましい。
さらに、圃場間を移動した後、作業走行を開始する際には、副変速レバー7Bが中立位置に操作されていることがより好ましい。つまり、植付作業等の作業の開始操作は、副変速レバー7Bが中立位置に操作された状態でのみ有効となることが好ましい。具体的には、副変速レバー7Bが中立位置に操作された後、作業開始操作が行われ、その後、副変速レバー7Bが作業速に操作されることにより作業が開始される。また、作業開始の操作が行われた際に、副変速レバー7Bが中立位置にない場合、副変速レバー7Bを中立位置に操作することを促す報知が行われても良い。
なお、上述の、バッテリ73を充電するためにエンジン2の動作を継続させる際にも、副変速レバー7Bが中立位置をとるようにすることが好ましい。これにより、エンジン2の動作を継続中、およびその後のエンジン2の再起動の際に、副変速レバー7Bが中立位置となっているため、不用意に機体1が走行することが抑制される。他の実施形態として、主変速レバー7A、斜板が中立に位置されていたり、ブレーキ操作がなされたりした場合に副変速レバー7Bが自動的に中立に戻っても良い。
また、検査・メンテナンスの際に機体1が走行すると問題がある。そのため、検査・メンテナンスは、副変速レバー7Bが中立位置に操作されている場合に限り行うことができる構成とすることが好ましい。検査・メンテナンスを行う際に副変速レバー7Bが中立位置にないときは、副変速レバー7Bを中立位置に操作することを促す報知が行われても良い。
マット状苗を補給する際や薬剤を補給する際等には、機体1は、圃場の端部である畦に近接される。自動走行田植機は障害物検知を行っており、障害物を検知すると走行が停止する。そのため、圃場の端部に近接させようとしても、障害物として畦を検知してしまい、通常は走行できない。そこで、本実施形態の田植機は、圃場の端部に機体1を移動させる際に、一時的に障害物検知を停止させ、畦が障害物として検知されない状態で、圃場の端部に近接させることができる機能を備える。
〔ソナーの配置構成〕
図1〜図3、図12〜図14を用いて、ソナーの配置構成について説明する。
本実施形態の田植機は自動走行を行うことができる。自動走行による走行開始時や自動走行中に、進行方向の前方や機体1の周囲に障害物があると、走行や作業に問題が生じる場合がある。そのため、本実施形態の田植機は、機体1の周囲の障害物を検知する障害物検知装置(図5に示すセンサ群1Aの1つ)の一例としてソナーセンサ60を備える。障害物の検知は、基本的には自動走行中に行われるが、手動走行中に障害物の検知が行われる構成とすることもできる。
具体的には、例えば、ソナーセンサ60は、機体1の前方の領域の障害物を検知する4つの前ソナー61と、機体1の後方の領域の障害物を検知する2つの後ソナー62と、機体1の側方の領域の障害物を検知する2つの横ソナー63とから構成される。機体1が前進で直進走行する際の走行車速は、後進走行時および旋回走行時の走行車速より早い場合が多い。そのため、機体1の前方の領域の障害物を検知する前ソナー61の数が、後ソナー62や横ソナー63より多く設けられる。これにより、走行車速が速い前進直進走行の際にも、精度良く障害物を検知することができる。
前ソナー61のうちの2つは、ステップ14Aの前端部の側面に、機体1の左右方向に並んで設けられる。前ソナー61のうちの他の2つは、それぞれ、左右の予備苗支持フレーム17から前方に突出するステー61Aに支持される。4つの前ソナー61の対地高さは、略同じである。
図13に示すように、それぞれの前ソナー61の平面方向の検知範囲(平面視した検知範囲)は、前ソナー61から扇状に広がる。前ソナー61の前方方向の検知範囲は、最大の走行車速で走行した場合に、障害物を検知してから機体1が障害物の手前で停止できる長さが確保できるように調整される。隣り合う前ソナー61の水平方向の検知範囲の少なくとも一部が互いに重複するように、前ソナー61は配置される。これにより、障害物の検知精度が高められる。別の実施形態として、車速に応じてセンサの検知範囲が自動調節されても良い。これによって低速で走行する際に検知範囲を必要以上大きくせず、最適な検知範囲で障害物の検知を行うことができる。
図12に示すように、後ソナー62は、薬剤散布装置18を支持するために苗植付装置3等に支持された支持構造体62Aに支持される。2つの後ソナー62は、薬剤散布装置18より左右方向の側方のそれぞれに配置され、後ソナー62の対地高さは、薬剤散布装置18の上端部と略同じ高さである。
後ソナー62は、主に後進時の障害物を検知する。図13に示すように、それぞれの後ソナー62の平面方向の検知範囲は、後ソナー62から扇状に広がる。それぞれの後ソナー62は真後ろよりやや外向きに配置され、それぞれの後ソナー62の検知範囲はやや外向きに偏っている。これにより、機体1の後方において、機体1の左右方向に広い検知範囲を確保することができる。2つの後ソナー62の水平方向の検知範囲の少なくとも一部が互いに重複するように、後ソナー62は配置される。これにより、障害物の検知精度が高められる。
横ソナー63は、運転座席16の側方における、ステップ14Aより後方の機体1の両側端部(後部ステップ14C)の側面に設けられる。後部ステップ14Cはステップ14Aより高い位置に配置される。そのため、後輪等からの泥はねの影響を抑制することができる。その他の取付位置として、横ソナー63は、ステップ14Aの対面に位置する予備苗支持フレーム17に取り付けられても良い。
横ソナー63は、ステップ14Aの乗降領域周辺を検知し、機体1の側方の障害物を検出する。自動走行の開始時に、人物が運転部14に乗り降りしようとしていると問題がある。横ソナー63は、特に、運転部14に乗り降りしようとしている人物等を検出する。図12に示すように、それぞれの横ソナー63の平面方向の検知範囲は、前ソナー61から扇状に広がる。運転部14に乗り降りする人物は、主に運転座席16の側方およびそれより前方から乗り降りする。また、運転座席16より後方には施肥装置4等が設けられており、その方向から人物が乗り降りすることは考えにくい。そのため、横ソナー63の平面方向の検知範囲は、機体1の側方からやや前方寄りに傾く。また、機体1の前方には予備苗支持フレーム17が左右方向に突出している。横ソナー63が予備苗支持フレーム17または予備苗収納装置17Aを検知することがないように、横ソナー63の平面方向の検知範囲の前端は、予備苗支持フレーム17より後方になるように設定される。
ソナーセンサ60は、上述のように特定の検知範囲内に存在する物体を検知する。また、圃場の泥面が検知範囲に存在すると、ソナーセンサ60は泥面を障害物として検知してしまう。泥面が障害物として検知されると、自動走行が開始されず、走行が継続されない。そのため、ソナーセンサ60の検知範囲は、泥面を検知しないように調整される。
図14に示すように、ソナーセンサ60はやや上向きに支持されて、所定の検知距離を確保しながら、泥面を検知しないように調整される。つまり、所定の検知距離において、検知範囲の下端は、泥面に到達しないように、ソナーセンサ60は調整される。さらに、走行に伴い機体1は上下に揺れ動くため、上下動に伴い泥面を検知しやすくなる。また、枕地等には旋回時に発生した泥塊が存在し、泥面から突出した泥塊を誤検知する場合もある。そのため、泥面から検知範囲の下端までの距離は、ある程度のマージンが考慮されても良い。このように、ソナーセンサ60の垂直方向の検知範囲(側面視した検知範囲)は、必要な検知距離と、泥面等を検知しないこととを考慮して調整され、これにより、適切な検知範囲が確保される。
逆に、ソナーセンサ60は、やや下向きに支持されても良い。例えば、高さ方向の障害物が存在する可能性が低い状況や、しゃがんでいる人物等の比較的泥面からの高さが低い障害物の検出を優先させたい状況が考慮される場合、できるだけ機体1に近い位置の、高さの低い障害物を検知できるように、検知範囲が調整されることが好ましい。このような場合、ソナーセンサ60はやや下向きに支持され、機体1の近傍の下方領域を検知範囲に含めるように調整される。なお、この際、泥面等が必要以上に検知されることになる。そのため、泥面の検知パターンを解析して、検知した障害物が泥面であるか否かを判定し、泥面を検知しても障害物として認識しないように制御されることが好ましい。
なお、前ソナー61は、ステップ14Aや予備苗支持フレーム17に支持される構成に限らず、適切な検知範囲が確保できれば、任意の位置に配置できる。例えば、前ソナー61は、エンジンボンネット2Bに支持されても良く、機体1に支持された延長部材に支持されても良い。さらに、前ソナー61は測位ユニット8の近傍に設けられても良く、4つの前ソナー61に代えて、または4つの前ソナー61に加えて、測位ユニット8の近傍に設けられても良い。
また、ソナーセンサ60は、検知状態を安定させるために、障害物の検知中、配置位置が移動しないような位置に支持されることが好ましい。後ソナー62も配置位置が移動しない位置(非稼働部分)に配置されることが好ましいが、適切な検知範囲を確保できれば、任意の位置に配置することができる。例えば、後ソナー62は、作業装置を支持するツールバーや、苗植付装置3の植え付けケース、摺動板3A、摺動板ガード3B、苗載せ台21の支柱等に設けられても良い。
また、後ソナー62は後輪12Bからも近く、泥はねの影響を受けやすい。そのため、後ソナー62は、泥面から離れた対地高さの高い位置に設けられることが好ましい。例えば、後ソナー62は、苗載せ台21の上端部に設けられても良い。苗載せ台21は上に向かう程前方に傾く傾斜を有する。また、上述のように、後ソナー62は扇状の検知範囲を備える。そのため、後ソナー62を苗載せ台21の上端部に設けることにより、後ソナー62が苗載せ台21を誤検知することが抑制されながら、適切な検知範囲を効率的に確保することができる。
また、後ソナー62は、薬剤散布装置18に設けられる泥除けカバー18Aよりも上方の領域に設けられても良い。薬剤散布装置18は泥除けカバーを備える場合があり、後ソナー62が泥除けカバーよりも上方の領域に設けられることにより、後ソナー62に泥が付着することが抑制される。同様に、後ソナー62は、苗植付装置3の植付伝動ケース3Dの上端よりも上方の領域に設けられても良く、苗植付装置3が備える泥飛散防止カバー3Eよりも上方の領域に設けられるとより良い。また、後ソナー62の下方領域に専用のカバーが設けられても良い。さらに、施肥装置4や、殺虫殺菌剤・除草剤等の粉粒体供給機、あるいは直播機の上部あるいはこれらよりも上方の領域に後ソナー62が設けられても良い。
また、2つの後ソナー62は、それぞれ機体1のやや外向きに向けて配置される。そのため、2つの後ソナー62の水平方向の検知範囲は、互いに一部で重複しながら、広範囲に設けられる。また、3以上の後ソナー62が設けられ、互いの検知範囲が一部で重複されながら、広範囲の検知範囲が確保されても良い。この場合、それぞれの後ソナー62は機体1のやや外向きに向けて配置されることを要さず、それぞれの後ソナー62の配置方向は任意であり、一部または全部の後ソナー62は機体1のやや内向き、あるいは真後ろに向けて配置されても良い。例えば、複数の後ソナー62は、苗載せ台21に沿って並べて配置されても良い。
また、2つの後ソナー62は、薬剤散布装置18を挟む位置関係で配置される。これにより、薬剤散布装置18の周辺の人物等の障害物を適切に検知することができる。これらの後ソナー62の検知範囲は、薬剤散布装置18を誤検知しないようにするため、検知範囲に薬剤散布装置18を含まない領域に設定される。また、薬剤散布装置18は必ずしも田植機に備えられない。この場合、薬剤散布装置18が配置される領域は後ソナー62の検知範囲に入らない。少なくとも人がその領域に入ることを抑制するために、この領域に特定の部材が設けられても良い。
各ソナーセンサ60は、機体1の端部より機体1の内側に設けられても良い。各ソナーセンサ60の検知範囲は扇状に広がるため、機体1の端部より内側にソナーセンサ60が設けられることにより、機体1の周囲の検知範囲の死角が減少し、機体1の周囲のより近い領域の障害物の検知が容易となる。また、各ソナーセンサ60に泥が付着することを抑制するため、各ソナーセンサ60は、機体1の内側、つまり平面視で機体1、例えばステップ14Aと重複する位置に配置されることが好ましい。
逆に、各ソナーセンサ60は、機体1の先端部分に設けられても良い。各ソナーセンサ60が機体1の内側に設けられると、機体1自身を障害物と誤検知してしまう可能性がある。各ソナーセンサ60が機体1の先端部分に設けられると、機体1自身を障害物と誤検知してしまう可能性が低減される。この場合、各ソナーセンサ60の下部に泥除け部材が設けられることが好ましい。
また、前ソナー61は、機体1の車軸よりも上方に設けられても良く、好ましくは車軸の上端よりも上方、より好ましくはステップ14Aの下端よりも上方に配置されても良い。また、前ソナー61は、測位ユニット8の上端よりも下方に設けられても良く、好ましくはステアリングホイール10の上端よりも下方、より好ましくはステップ14Aの上端よりも下方に設けられても良い。また、前ソナー61は予備苗支持フレーム17に設けられても良い。このように前ソナー61を泥面から離れた位置に配置することにより、泥面の検知を抑制しながら、想定される障害物をより精度良く検知できる検知範囲が設定しやすくなる。また、前ソナー61がエンジンフレーム1Fあるいはステップフレーム1Gに設けられても良い。
さらに、前ソナー61は、配置位置が調整可能な構成で設けられても良い。例えば、前ソナー61はステーを介して支持され、ステーの前ソナー61を支持する位置が選択できる構成や、前ソナー61を支持したステーが、前ソナー61の配置位置を変更可能なように変形できる構成とされても良い。
また、ソナーセンサ60は、障害物検知状態では使用状態に姿勢変更され、障害物を検知していない状態では収納状態に姿勢変更される構成であっても良い。例えば、収納状態では、ソナーセンサ60の検知部が他の部材の裏に隠れたり、検知部が上を向いたりする構成とする。これにより、障害物を検知してない状態ではソナーセンサ60に泥等の汚れが付着することが抑制され、障害物検知状態において、適切に障害物の検知が行われる状態に維持しやすい。
また、隣り合う各ソナーセンサ60は、互いの検知範囲の少なくとも一部が重複する構成に限らず、検知範囲を適切に確保できれば、重複領域がない構成であっても良い。
機体1の前後方向において、機体1の左右方向の中央部分の領域の検知精度を高めたい場合がある。このような場合には、前ソナー61および後ソナー62の少なくともいずれかは、機体1の左右方向の中央寄りに寄せて配置されても良い。
また、各ソナーセンサ60の検知範囲は、機体1の位置や走行車速、操作状況に応じて変更されても良い。機体1の位置は、機体1の位置情報と圃場マップから判断され、畦との距離や、圃場の外周部からの距離、外側周回経路ORLであるか否か等である。圃場の外周部は、圃場の境界部分として圃場マップに規定された電子結界等である。また、各ソナーセンサ60の検知範囲は、あらかじめ定めた走行経路と圃場マップとから、次に走行する位置を求め、その走行経路の状況、または作業内容に応じて変更されても良い。
〔ソナーECU〕
図1〜図3を用いてソナーECUについて説明する。
ソナーセンサ60は、ソナーECU64(検知制御装置に相当)によって制御される。ソナーECU64は、ソナーセンサ60の動作を制御すると共に、検知結果を取得して制御ユニット30(図5参照)に送信する。本実施形態では、ソナーECU64として、前ソナーECU64Aと後ソナーECU64Bとが設けられる。4つの前ソナー61は、前ソナーECU64Aによって制御され、2つの後ソナー62および2つの横ソナー63は後ソナーECU64Bによって制御される。機体1の前側領域と後側領域との間には、多数の信号配線や電源配線等が配設されている。そのため、機体1の前寄りに配置されたソナーセンサ60(前ソナー61)に接続される前ソナーECU64Aと、機体1の後寄りよりに配置されたソナーセンサ60(後ソナー62および横ソナー63)に接続される後ソナーECU64Bとが、前後に振り分けて配置される。これにより、ソナーセンサ60とソナーECU64とに接続される信号配線や電源配線等の配線類が、機体1の前後にわたって配設されることが抑制され、機体1の配線効率が向上される。
前ソナーECU64Aは、機体1の前側領域に設けられ、例えば、予備苗支持フレーム17に支持される積層灯支持部材74の左横側面に支持される。前ソナーECU64Aと各前ソナー61とのデータ通信を行う通信配線や電源配線等の配線類は、各前ソナー61と接続される配線類を前ソナー61の近傍で1本にまとめ、まとめられた1本の配線類が前ソナーECU64Aと接続される。
また、前ソナーECU64Aは積層灯支持部材74の左横側面に支持されるため、機体1の外部から容易に着脱することが可能である。このため、前ソナー61を後付けすることが可能であり、さらに、前ソナーECU64Aの修理・交換も容易となる。
後ソナーECU64Bは、機体1の後側領域に設けられ、例えば、各後ソナー62および各横ソナー63に囲まれた領域に配置される。後ソナーECU64Bは、左側の横ソナー63の近傍である、運転座席16の下方領域の機体フレーム1Eの左横側面に支持される。また、後ソナーECU64Bと各後ソナー62および各横ソナー63とのデータ通信を行う通信配線や電源配線等の配線類は、各後ソナー62および各横ソナー63と接続される通信配線を1本にまとめ、まとめられた1本の配線類が前ソナーECU64Aと接続される。これらにより、各後ソナー62および各横ソナー63と後ソナーECU64Bとの配線が効率的に行われる。
また、機体1の右側領域には、油圧ホース等が配置される。そのため、後ソナーECU64Bが機体の左側領域に設けられることにより、後ソナーECU64Bおよび後ソナーECU64Bに接続される配線類が油圧ホース等と干渉せず、配線類の損傷を抑制し、加えて、配線類の着脱が容易となる。
また、後ソナーECU64Bは機体フレーム1Eの左横側面に支持されるため、機体1の外部から容易に着脱することが可能である。このため、後ソナー62および横ソナー63を後付けすることが可能であり、さらに、後ソナーECU64Bの修理・交換も容易となる。
ソナーECU64に接続可能なソナーセンサ60の数には制限がる。そのため、本実施形態ではソナーECU64が2つ設けられる。1つのソナーECU64で全てのソナーセンサ60の制御が可能である場合、1つのソナーECU64は、機体1の中央部に設けられることが好ましい。これにより、配線効率を最適化することができる。
また、搭載されるソナーセンサ60の総数は、ソナーECU64に接続可能なソナーセンサ60の制限数の整数倍とすることが好ましい。つまり、ソナーECU64の制限に対して最大限多くのソナーセンサ60を設けることが好ましい。これにより、障害物の検知精度を向上させることができる。
また、ソナーセンサ60の搭載可能数に余裕があれば、前ソナー61の数を後ソナー62の数より多くする必要がなく、同じ数とすることもできる。これにより、後ソナー62の障害物検知精度を向上させることができる。
なお、上記説明では、障害物検知装置としてソナーセンサ60を用いる構成例を説明したが、障害物検知装置はソナーセンサ60に限らず、障害物を検知できれば、任意の装置を用いることができる。
例えば、障害物検知装置として、レーザーセンサや接触センサを用いることができる。また、撮像装置にて機体1の周辺が撮影され、画像解析により障害物が検知される構成とされても良い。画像解析は、機械学習により生成した学習済みモデルを用いて行うこともでき、人工知能を用いた任意の手段で行うことができる。
〔ソナーセンサによる検知〕
図1〜図3、図12〜図14を用いて、ソナーセンサによる障害物を検知する構成および検知内容に応じた走行制御について説明する。
ソナーセンサ60は機体1の周囲の障害物を検知し、自動走行において、制御ユニット30(図5参照)は障害物の検知内容に応じて自動走行を制御する。具体的には、このような制御は、自動走行用マイコン6等を含む制御ユニット30に内蔵される自動走行制御部または障害物対応部等の機能ブロックが行うことができ、さらに、これらの機能ブロックは、制御ユニット30とは別に設けられても良い。
無人自動走行により機体1が発進する際(無人自動走行開始時)に、障害物が検知されると、発進が抑制されて走行は開始されない(発信抑制モード)。例えば、前進での無人自動走行開始時には、ソナーセンサ60のうち、前ソナー61および横ソナー63の検知結果が用いられ、前ソナー61および横ソナー63が障害物を検知すると、発進が抑制されて走行は開始されない。また、後進での無人自動走行開始時には、ソナーセンサ60のうち、後ソナー62および横ソナー63の検知結果が用いられ、後ソナー62および横ソナー63が障害物を検知すると、発進が抑制されて走行は開始されない。この際、横ソナー63は、運転者が搭乗する際に通過する搭乗領域である乗降ステップ(ステップ14A)の周囲が検知され、特に、運転部14に乗り降りしようとしている人物が検知される。
無人自動走行による走行中は障害物の検知が行われ、障害物が検知されると、自動走行の停止等の制御が行われる(障害物検知モード)。具体的には、無人自動走行による走行中にソナーセンサ60が障害物を検知すると、走行が停止され、あるいは走行車速が減速される。例えば、無人自動走行により機体1が直進走行する際には前ソナー61の検知結果が用いられ、無人自動走行により機体1が後進走行する際には後ソナー62の検知結果が用いられる。また、無人自動走行により旋回する際には、これらに加えて横ソナー63の検知結果が用いられても良く、旋回方向の横ソナー63のみの検知結果が用いられても良い。なお、走行が停止される際には、走行車速が徐々に減速されて、最終的に機体1が停止されても良い。なお、内部往復経路IPLを走行する往復作業走行の際に障害物検知が行われても良く、さらに、最外周植付時(最外周作業走行)にも障害物検知が行われても良い。
また、発信抑制モードおよび障害物検知モードにおいて、障害物が検知された場合、無段変速装置9の斜板の角度は中立状態に維持される。この際、エンジン回転数は低下されずに維持されることが好ましい。これにより、検知した障害物が走行に支障がないことが確認された場合や、障害物が排除された場合、速やかに走行を開始・再開することができる。また、ソナーセンサ60によって障害物が検知された場合、障害物が検知された旨が報知されても良い。例えば、制御ユニット30は、ボイスアラーム発生装置100を制御して、ボイスアラーム発生装置100に報知させる。また、障害物が検知された旨の報知は、後述される積層灯71やセンターマスコット20に所定の表示パターンで報知されても良く、作業車が保持するリモコン90やモバイル端末に報知されても、情報端末5等に報知されても良い。
また、ソナーセンサ60の検知結果を用いた走行の制御は、無人自動走行の場合に限らず、有人自動走行、あるいは手動走行の際に行われても良い。特に、外側周回経路ORL(図4参照)は、有人自動走行あるいは手動走行で作業走行が行われる。圃場の最外周には水口等の障害物が多くある。そのため、有人自動走行あるいは手動走行による最外周作業走行においても、ソナーセンサ60を用いた障害物検知が行われても良い。また、有人自動走行あるいは手動走行の際に、水口等の障害物が多くある領域のみで、ソナーセンサ60の検知結果を用いた走行の制御が行われても良い。また、運転部14に運転者が搭乗しているか否かを検知できる構成とし、有人自動走行あるいは手動走行であっても、運転部14に運転者が搭乗していることが検知できない場合には、ソナーセンサ60の検知結果を用いた走行の制御が行われても良い。なお、運転部14に運転者が搭乗しているか否かの検知は、着座センサ16A等により行うことができる。
上述のように、ソナーセンサ60は泥面を検知しないように検知範囲が設定される。圃場の状態は様々であるため、このように設定しても泥面を検知しやすい状況になる場合もある。ここで、無人自動走行開始時は機体1が静止しているため、検知された障害物が泥面であるか否かの判断は容易である。これを踏まえ、無人自動走行開始時において、制御ユニット30は、障害物を検知した場合、それが泥面であるか否かを判定し、泥面であると判定された場合には、障害物を検知していないと検知結果を修正(無視)しても良い。これにより、制御ユニット30は、泥面を検知しても障害物ではないと認定して自動走行を制御することができ、必要以上に障害物を検知して発進が抑制されることが少なくなり、スムーズな自動走行を行うことが可能となる。なお、泥面であるかの判定は障害物判定部が行っても良い。障害物判定部は、制御ユニット30に内蔵されても良いが、制御ユニット30の外部に設けられても良い。
また、無人自動走行開始時においては(発信抑制モード)、ソナーセンサ60が動いている人物等の変動物のみを検知した際に障害物を検知したとして制御されても良い。無人自動走行開始時において発進を抑制する必要がある状態は、人物が運転部14に乗降しようとしている状態が多い。そのため、人物等の移動物のみを検知対象(自動走行の際に考慮する障害物)とすることにより、誤検知が抑制されて、無人自動走行開始時の適切な制御を行うことができる。人物等の移動物であるか否かの判定は、障害物判定部が行う。障害物判定部は、障害物の判定を画像解析等によって行い、あるいは、機械学習された学習済みデータに、撮像画像を入力することによっても行うことができる。
また、走行状態に応じて検知結果が用いられないソナーセンサ60は、障害物の検知自体は継続されても良く、電源がOFFされる等の不使用状態にされても良い。
後ソナー62は苗植付装置3に支持され、苗植付装置3は植付作業走行に応じて昇降する。その結果、植付作業中は苗植付装置3が下降状態であり、後ソナー62は泥面を検知しやすい位置にある。また、植付作業中は前進状態であり、後方の障害物を検知する必要性は少ない。以上のことから、前進作業走行において、苗植付装置3が下降していることを条件として、後ソナー62が不使用状態にされても良い。苗植付装置3が下降している状態は、昇降リンク13aの状態を検知するセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)により検知することもでき、マーカ19の姿勢、整地フロート15が接地しているか否かで判断することもできる。
また、後ソナー62は、後進時には、近づいてくる物体のみを障害物と認識するように制御されても良い。この際、苗植付装置3が上昇位置にあると、泥面からの高さが高い位置にある障害物が検出されやすく、機体1の後方に侵入してくる障害物を検出しやすい。なお、障害物が近付いているか否かは、障害物判定部により判定することができる。
また、上述のように、横ソナー63は、予備苗支持フレーム17を障害物として誤検知しないように、他のソナーセンサ60に比べて、平面方向の検知範囲が狭く設定される。ただし、予備苗支持フレーム17の配置位置や横ソナー63の配置位置等に応じて、誤検知のおそれが少ない場合、横ソナー63の検知範囲は他のソナーセンサ60と同様以上であっても良い。
また、ソナーセンサ60の検知範囲の大きさは、発信抑制モードと障害物検知モードとで異なっても良い。例えば、ソナーセンサ60の検知範囲の大きさは、発信抑制モードの方が障害物検知モードより大きい。ソナーセンサ60の検知範囲が大きくなると垂直方向の検知範囲も大きくなり、泥面を検出しやすい。上述のように、発信抑制モードでは機体1が静止しているので、検知後の制御により泥面であるかを判断して、泥面を検知してもその後の制御において検知結果を無視することができる。これに対して障害物検知モードでは、機体1は走行状態であり、泥面を検知しやすく、検知した障害物が泥面であるか否の判断も困難である。よって、障害物検知モードでは、泥面を検知することを抑制するために、検知範囲を小さくすることが好ましい。
内部往復経路IPL(図4参照)における作業走行では、機体1は走行に伴って畦に近づくことになる。畦は泥面より高さが高くソナーセンサ60によって検知されやすい。自動走行においては畦を考慮して生成された旋回経路で旋回を行い、ソナーセンサ60が必要以上に畦を検知する必要はない。そのため、ソナーセンサ60の検知範囲の大きさは、任意に変更可能であっても良い。例えば、内部往復経路IPLでの作業走行において、機体1から畦までの距離が所定の距離以内に近づくと、畦までの距離が近くなる程、ソナーセンサ60の検知範囲の長さが短なるように制御される。
また、旋回走行時には旋回の内側に位置するソナーセンサ60の検知範囲が大きくされても良い。例えば、前進走行において、前ソナー61のうち、旋回の内側に位置する1または複数の前ソナー61の検知範囲が大きくされても良い。前ソナー61は、旋回走行によって機体1が通過する領域の障害物を検知できれば機体1が障害物と接触するリスクを十分に軽減できる。そのため、前ソナー61は、旋回に沿って描かれる機体1の前側最外端部の軌跡を検知できる構成であれば良い。例えば、機体1における前側最外端部が予備苗収納装置17Aの前側最外端部であった場合、予備苗収納装置17Aの前側最外端部が描く軌跡が検知範囲に含まれれば良い。これにより、検知漏れのリスクが低減される。
同様に、後進走行において、後ソナー62のうち、旋回の内側に位置する後ソナー62の検知範囲が大きくされても良い。機体1の後側最外端部は、摺動板ガード3Bの後側最外端部である。したがって、摺動板ガード3Bの後側最外端部が描く軌跡が検知範囲に含まれれば良い。畦での旋回時に補助作業者等が旋回方向と反対側の圃場内で待機することがしばしばある。このようなケースで前記構成を採用することで、検知範囲は補助作業者が待機する位置に対して機体1の反対側に広がることになり、補助作業者を障害物と誤検知して機体停止するおそれが少なくなる。
また、ソナーセンサ60は、使用時、例えば無人走行開始時に作動させる構成であっても良いが、エンジン2が始動されるとソナーセンサ60も作動して障害物が検知されるが、無人走行開始されるまで(使用時となるまで)検知結果を使用しない構成としても良い。検知結果を使用して自動走行が制御される際には、ボイスアラーム発生装置100等によりその旨の告知が報知される。
上述のように、ソナーセンサ60は、作業走行に支障のない物体でも障害物であると誤検知する場合がある。作業走行に支障のない物体であるか否かを監視者が確認できる場合、走行を開始し、あるいは走行を継続することが好ましい。そのため、監視者が、作業走行に支障のない物体であると判断できた場合、検知した障害物を一時的に考慮しないように操作できる構成としても良い。例えば、リモコン90に、検知した障害物を一時的に考慮しない(無視する)ようにできるボタン操作が用意される。検知した障害物を無視する期間は、あらかじめ定めた所定の時間であっても良いし、検知した障害物の考慮を再開するボタン操作が別途用意されても良いし、ボタン操作が継続されている間(ボタンの長押し状態)だけ無視する構成であっても良い。あるいは、検知した障害物を無視する期間は、あらかじめ定めた所定の距離だけ走行する期間であっても良い。これらのボタン操作は、通常のリモコン90の操作としては開示されない、隠しコマンドとしても良い。また、ボタン操作は、操作ミスを抑制するために、複雑な操作としても良い。例えば、頻繁に操作され、誤操作してもすぐにやり直すことができるような操作はリモコン90の1つのボタンで操作可能とし、自動走行開始等の一度誤操作してしまうと簡単にやり直すことのできない操作は2つ以上のボタンを同時に操作するようにしても良い。なお、2つ以上のボタンの一つはファンクションボタンとしても良い。
このような操作は、音声によるアナウンスが行われ、アナウンスを参照しながら行われる構成であっても良い。また、アナウンスがあった後にこのような操作が行われて初めて、操作が有効になる構成であっても良い。
ソナーセンサ60以外のセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)を別途設け、このセンサは障害物の大きさを検知することができるものとしても良い。このセンサは、撮像装置で撮影した画像を解析する構成であっても良いし、障害物に照射するレーザーセンサであっても良く、大きさを検知できれば任意である。そして、ソナーセンサ60が障害物を検知したとき、このセンサが障害物の大きさを検知し、所定の大きさ以下の場合には、障害物と認識しない構成とすることもできる。
また、リモコン90または情報端末5の操作により、ソナーセンサ60の動作を停止・開始させ、障害物の検知に伴った制御を行うか否かの開始・停止が選択される構成としても良い。
また、障害物が検出された際には、無段変速装置9の斜板の角度は中立に変位されるか、または中立を維持されるが、この状態では、ソナーセンサ60が障害物を検知しない、または検知しても無視する構成としても良い。さらに、その後所定の期間が経過した後に、ソナーセンサ60を用いた障害物の検知および処理が再開されても良い。このとき、畦際を走行しているような検出すべき障害物が多い状態では、検知および処理が再開されない構成であっても良い。障害物が多い状態であるか否かは、位置情報と圃場マップとから判断しても良いし、撮像装置を用いた画像解析により判断しても良い。
障害物の検知および処理は、自動的に再開されず、特定の人為的操作が行われて初めて再開されても良い。また、撮像装置を用いた画像解析によって適切に自動走行が開始しているか否かを判断し、適切に自動走行が開始されていると判断された場合に、障害物の検知および処理が再開されても良い。
〔苗補給時のソナー制御〕
図1〜図4、図12〜図14を用いて、苗補給時のソナーセンサ60の制御について説明する。
田植機は、苗切れが生じると苗補給を行う。苗補給時には、前進走行で、苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。苗補給が終了すると、機体1は後進し、走行経路に復帰する。
苗補給中は機体1の周囲を作業車が行き来する。そのため、苗補給中はソナーセンサ60に動作を停止させることが好ましい。あるいは、苗補給中はソナーセンサ60が障害物を検知しても無視することが好ましい。また、自動走行中に障害物が検知されたとしても、自動走行が終了されて、自動走行の設定情報等は消去される。苗補給中に障害物が検知された場合は、自動走行が終了せず、自動走行が一時停止状態に移行しても良い。これにより、迅速に作業走行を再開することができる。
そして、苗補給が終了し、走行経路に復帰する際には、ソナーセンサ60うちの少なくとも後ソナー62の動作を再開させ、あるいは検知した障害物を考慮した処理を行わせることが好ましい。さらに、苗補給が終了した直後は、機体1に作業車が近付く可能性が高い。そのため、苗補給が終了した後の後進時には、横ソナー63を動作させても良い。また、この後進時には、機体1の前方の近い位置に畦があることになる。そのため、少なくとも圃場の内部領域IAに到達するまでは、後進時であっても前ソナー61を動作させることが好ましい。なお、苗補給に限らず、その他の資材の補給の際にも同様の制御が行われても良い。
〔ソナーセンサの不具合検知〕
図1〜図5、図12〜図14を用いて、ソナーセンサ60の不具合を検知する構成について説明する。
ソナーセンサ60は、泥等が付着して、適切に障害物の検知が行えなくなる場合がある。走行の開始時には、ソナーセンサ60の動作確認が行われるが、走行中にソナーセンサ60に不具合が生じても、それを検出することは困難である。
そのため、後進時に、前ソナー61が泥面を検知しない場合、ソナーECU64または制御ユニット30は、前ソナー61に不具合が生じていると判断しても良い。後進時には前ソナー61が障害物を検知したとしても、障害物と認識しない制御が行われる。また、前ソナー61は、検知範囲に泥面を含み、障害物が泥面であるか否かを判断して、泥面である場合には障害物と認識しない制御が行われる。そのため、後進走行中に、前ソナー61が泥面を所定の期間検知しない場合、前ソナー61に不具合が生じていると判断することができる。
位置情報により畦際に接近していることがわかる場合、畦がソナーセンサ60の検知範囲に入ったとしても、進行方向前方の障害物を検知しているソナーセンサ60が障害物を検知しない場合、そのソナーセンサ60には不具合が生じていると判断することができる。
4つの前ソナー61の検知範囲の少なくとも一部が重複している場合、前ソナー61のうちの1つしか障害物を検知しない場合、いずれかの前ソナー61には不具合が生じていると判断することができる。
隣り合うソナーセンサ60が近接配置させ、一方のソナーセンサ60のみが障害物を検知した場合、他方のソナーセンサ60には不具合が生じていると判断しても良い。
〔薬剤補給時の走行制御〕
図1〜図5を用いて、薬剤補給時の走行制御について説明する。
田植機は、搭載された薬剤がなくなると薬剤の補給を行う。薬剤補給時には、後進走行で、苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。薬剤補給が終了すると、機体1は前進し、走行経路に復帰する。
薬補給時は有人自動走行では、自動状態を維持しながら、人の操作により旋回し、後進走行して苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。
無人自動走行では、旋回経路から内部往復経路IPLに移行する際に機体1が一時的に停止され、その間に人為的な操作を行うことにより、機体1が所定の速度で後進し(チョイ寄せ)、苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。この人為的な操作は、リモコン90等で行うことができる。なお、このような人為的な操作は、旋回の途中を走行している際に受け付けることができ、旋回が終了してから、機体1は所定の速度で後進する。
〔自動走行中の報知〕
図1〜図5を用いて、自動走行中の報知を制御する構成について説明する。
無人自動走行の自動運転開始直前には、苗切れや薬剤切れが生じていないかを確認することを、作業者に促す報知画面が情報端末5に表示される。また、苗や薬剤の残量を検出するセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)が設けられ、苗切れや薬剤切れが生じている場合、自動走行は開始されず、苗切れや薬剤切れが生じている旨、および苗や薬剤の補給を促す旨の少なくともいずれかが報知されても良い。このような報知は、情報端末5に表示されても良いし、ボイスアラーム発生装置100によって音声により報知されても良く、または積層灯71の点灯による報知やリモコン90等への報知でも良い。以上のような処理は、リモコン90により自動走行による走行を開始する操作が行われたときに行われ、報知画面の表示、苗切れや薬剤切れが生じている旨の報知、および苗や薬剤の補給を促す旨の報知の少なくともいずれかが行われる。さらに、苗切れや薬剤切れ以外の異常についても確認されても良く、異常が生じている旨の表示に加えて、異常を解消・回避することを促す報知、あるいはその手順が報知されても良い。
また、自動走行の開始時は、動き出す前にボイスアラーム等によって報知されても良い。その後、報知の終了後に機体1が動き出しても良いし、報知と共に機体1が動き出しても良い。
自動走行は、苗補給ありモードと苗補給なしモードが設定可能である。苗補給ありモードでは、旋回経路の手前の内部往復経路IPLの終端領域で、苗補給を行うか否かを選択するために、機体1は一時停車する。苗の補給が不要なときは、一時停車中にリモコン90が人為的に操作されることにより走行が再開され、リモコン90が操作されるまで停車状態で機体1は待機する。苗の補給が必要なときは、苗補給が必要である状態である旨の人為的な操作を行い、まずは機体1を畦に向かって所定距離だけ自動的に直進させて停止させる。その後、リモコン90による別の人為的な操作により機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。別実施形態として、苗補給場所は苗補給辺ではなく、圃場の外周辺上の特定の苗補給ポイントであっても良い。また、苗補給ありモードでは、苗補給辺や苗補給ポイントに向かって経路が生成され、経路に沿って自動走行されても良い。
また、苗補給なしモードでも、旋回経路と内部往復経路IPLとの境界で、制御の切り替えのために機体1は一時的に停車する。苗補給なしモードであっても、予期せぬ苗の補給が必要になったり、その他の事情が生じたりすることにより、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることが必要となる場合がある。この際、機体1が一時的に停車している間に、リモコン90等による人為的な操作により、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。あるいは、機体1が一時的に停車する前に徐々に減速され、その間に、リモコン90等による人為的な操作により、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。
なお、機体1が一時停車した後、所定の時間が経過することにより、走行が自動的に再開されても良いが、走行の再開に人為的な操作が要されても良い。
また、異常を報知する以外の、単なる前進する旨、後進する旨の報知は、設定により解除することもできる。
また、自動走行開始時に、ボイスアラーム発生装置100等の動作チェックが行われても良い。例えば、自動走行起動・停止スイッチ7Dが押下された際に、ボイスアラーム発生装置100等を流れる電流値が適正であるか否かにより、動作チェックが行われる。
〔自動走行中の制御における操作具の操作〕
図1〜図5を用いて、自動走行中の制御における操作具の操作について説明する。
無人自動走行においては、走行が開始された後は、基本的に作業者の操作は介入されず、主変速レバー7Aは中立位置のまま、走行および作業は制御ユニット30により制御される。
有人自動走行においては、運転者が主変速レバー7Aの操作を行うことにより走行が開始され、旋回走行や作業を行う際にも一定の手動操作が必要な場合がある。この際、運転者は、制御ユニット30の制御により行われるガイダンスを受け、ガイダンスに応じた操作を行うことにより、走行が開始され、旋回走行や作業が行われる。例えば、経路の進行方向に対して、主変速レバー7Aを進行方向に操作させるガイダンスが行われる。ガイダンスは、音声ガイダンスや情報端末5への表示等により行われ、主変速レバー7Aの操作や作業装置1Cの操作を促すガイダンスも含まれる。さらに、有人自動走行においては、走行の開始時や後進中、旋回中にその旨の報知が行われる。
有人自動走行において、主変速レバー7Aを中立位置にする操作は自動走行の開始のために必要であり、苗植付装置3の下降等の作業装置1Cの動作に係る操作は自動作業走行を継続するために必要である。例えば、旋回時に非作業状態にされた作業装置1Cは、旋回後に作業状態に移行させることが必要である。そのため、これらの操作を促す音声等によるガイダンスは、これら操作が行われない限り継続して行われる。例えば、有人自動走行による最外周植付作業において、手動操作により苗植付装置3が下降されないと自動走行は継続しない。そのため、主変速レバー7Aを中立位置にすることを促すガイダンスは、苗植付装置3が下降されるまで報知され続ける。
有人自動走行における旋回中または後進中に主変速レバー7Aが中立位置に操作された場合に主変速レバー7Aを操作位置に戻すガイダンスや、無人自動制御中に主変速レバーが前後進方向に操作された場合に主変速レバー7Aを中立位置に戻すガイダンス、自動作業走行中に作業者により上昇された苗植付装置3を下降させるガイダンス、最外周植付作業における各辺の始端部で苗植付装置3を昇降するガイダンスは、ガイダンスに沿った操作が行われるまで報知され続けることが好ましい。なお、有人自動走行における旋回中または後進中に主変速レバー7Aが中立位置に操作された場合に主変速レバー7Aを操作位置に戻すガイダンスや、無人自動制御中に主変速レバーが前後進方向に操作された場合に主変速レバー7Aを中立位置に戻すガイダンス、自動作業走行中に作業者により上昇された苗植付装置3を下降させるガイダンスは、あらかじめ設定された自動走行に反する操作であり、このような操作がされた場合は、設定された自動走行を行うのに適切な操作が行われるようにガイダンス(警告)されることになる。
この時、音声ガイダンスは所定回数、所定時間報知され、情報端末5への表示によるガイダンスのみが、上記操作が行われるまで継続される構成であっても良い。
なお、主変速レバー7Aを中立位置に操作する旨のガイダンスは、主変速レバー7Aの操作位置にかかわらず、無段変速装置9の斜板の角度が中立位置であるか否かを判断し、無段変速装置9の斜板の角度が中立位置にないと判断された場合に行われても良い。また、主変速レバー7Aが中立位置でない状態で、無段変速装置9の斜板の角度が中立位置と判断されて自動走行が開始された際には、無段変速装置9の斜板の角度が主変速レバー7Aの操作位置に対応する角度に変位されても良い。これにより、主変速レバー7Aの操作位置に応じた走行車速で走行され、走行車速を作業者の操作に沿わせることができる。
有人自動走行中は、主変速レバー7Aの操作等をガイダンスし、これに応じた操作に基づいた走行が行われる。ただし、最外周植付作業において、外側周回経路ORLの各辺をつなぐ旋回走行(方向転換)は、運転者の操作を要さずに前後進が切り替わる。そのため、有人自動走行であっても、このような操作を要さない走行時には、走行が切り替わるとしてもガイダンスを行わないことが好ましい。ただし、外側周回経路ORLの各辺をつなぐ旋回走行においても、作業装置1Cの動作には手動操作を要する構成としても良く、この際は、作業装置1Cの動作にかかる操作を行う旨のガイダンスが報知される。
有人自動走行中に操作された主変速レバー7Aは、自動走行中経路進行方向に維持され、途中で自動走行での方向転換(旋回)に伴う後進動作があったとしても主変速レバー7Aはその位置で維持される。また、主変速レバー7Aの操作位置を移動させるモータ等のアクチュエータを備える場合は、機体1の進行方向(無段変速装置9の斜板の角度)に応じて、主変速レバー7Aの操作位置が変化されても良い。同様に、ブレーキにより走行車速が変化する場合、ブレーキの操作あるいは走行車速(無段変速装置9の斜板の角度)に応じて、主変速レバー7Aの操作位置が変化されても良い。この際、アクチュエータの動作中およびに動作の前後に、動作状況が報知されても良い。
なお、自動走行の開始時は、開始点誘導を開始する場合、往復植付を開始する場合、資材補給から復帰する場合、内側周回経路IRLでの無人自動走行を開始する場合、有人自動走行で最外周植付を行う場合の各辺(旋回領域とつながり、圃場の外周辺と略平行な走行経路)の自動走行を開始する場合等である。
また、無人自動走行において、誤って主変速レバー7Aが中立位置から操作された場合、主変速レバー7Aを中立位置に戻すように促す報知・ガイダンスが行われる。
有人自動走行を開始する際に、自動走行を行うために必要な条件が整うと、自動運転許可状態に制御状態が変位する。この自動運転許可状態で主変速レバー7Aを所定の方向に操作された場合のみ自動走行が開始される。そのため、自動運転許可状態で主変速レバー7Aが、所定の方向と異なる方向に操作されても、機体1は動かない。
有人自動走行における開始点誘導は、ガイダンスに基づく手動操作により行われる。そのため、有人自動走行における開始点誘導の際には、まず後進のために主変速レバー7Aを後進側に操作するように報知が行われ、次に開始点Sまで前進走行で移動するために、主変速レバー7Aを前進側に操作するように報知が行われる。
有人自動走行が開始または継続される条件として、自動運転許可状態から自動走行が開始される際、または、自動走行中の一時停止状態から走行が再開する場合は、主変速レバー7Aが中立位置以外の位置にあるとしても良い。そのため、開始点誘導が開始される際、往復植付(内部往復経路IPLでの植付作業走行)が開始される際、苗補給後に走行が再開される際、往復植付後に内部往復経路IPLの開始点に自動誘導される前等には、運転者が主変速レバー7Aを中立位置から所定の方向に操作して自動走行が再開される。
有人自動走行である場合も、無人自動走行である場合も、自動走行開始前には、主変速レバー7Aが中立位置にあることを要しても良い。
有人自動走行は、モード切替スイッチ7E等により有人自動走行が選択された状態で、所定の条件が整ったうえで、自動走行起動・停止スイッチ7Dが押下されることにより開始され、主変速レバー7Aが前進方向に操作されることにより走行が開始される。また、無人自動走行は、所定の条件が整ったことにより開始され、リモコン90の操作で走行が開始され、リモコン90以外の操作では走行が開始されない。
有人自動走行において、自動走行は主変速レバー7Aを操作することにより開始される。また、有人自動走行では、旋回の終了後に手動操作により苗植付装置3が下降される。また、自動走行起動・停止スイッチ7Dの操作により、有人自動走行モードに移行される。
ただし、最外周植付時の旋回時の苗植付装置3の昇降は、ガイダンスに従って操作される。この場合でも、撮像装置を用いた画像解析等により、苗植付装置3を昇降しても問題ないことが確認できる場合は、苗植付装置3の昇降も自動制御で行われても良い。
なお、以上のガイダンスは、ボイスアラーム等によって行われる音声ガイダンスや、情報端末5による表示の他にも、積層灯71やリモコン90等を用いた様々な手段により報知されても良い。このようなガイダンスは、報知制御部等によって制御され、報知制御部は制御ユニット30であっても良いし、制御ユニット30に内蔵されても良く、制御ユニット30とは別に設けられても良い。
外側周回経路ORLは、畦等の周辺を走行することになるため、圃場の外周から所定の距離だけ内側に経路が設けられ、合わせて無人自動走行は行わない構成としても良いが、無人自動走行を可能としても良い。この場合、圃場の外周からの距離を、無人自動走行を行わない制限が付された場合より十分に大きく取り、無人自動走行を行ったとしても不測の事態が生じることを抑制することが好ましい。このように、外側周回経路ORLにおいても無人自動走行を可能とすることにより、内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLを、無人自動走行を続けて作業走行することができる。
ここで、外側周回経路ORLを含む走行経路は、最初に行われる圃場の外周に沿った非作業走行に基づいて決定される。圃場の外周に沿った非作業走行は、圃場の外周に近接させて走行しても良いし、圃場の外周から所定の距離離れて外周に沿って走行しても良い。圃場の外周に近接させて非作業走行を行った場合、外側周回経路ORLは非作業走行を行った経路より所定の距離だけ内側に設定され、外側周回経路ORLを基準として内側周回経路IRLおよび内部往復経路IPLが設定される。圃場の外周から所定の距離離れて非作業走行を行った場合、非作業走行を行った経路が外側周回経路ORLとして設定され、外側周回経路ORLを基準として内側周回経路IRLおよび内部往復経路IPLが設定される。
例えば、圃場の外周から所定の距離だけ離れて非作業走行を行う際には前マーカ(「隣接マーカ」に相当)が用いられる。前マーカが圃場の外周(例えば畦)と接するように非作業走行を行うことにより、前マーカの長さの分だけ、圃場の外周から離れて外周に沿って走行することとなる。
例えば、前マーカは3段階に切り替えられる構成とさる。1つめの段階は収納状態である。2つめの段階は通常の長さだけ突出する状態であり、植付部の最外端から条間分の長さだけ突出する長さである。3つ目の段階は、前マーカを圃場の外周(例えば畦)と接するように非作業走行を行った際に、機体1が圃場の外周から所定の距離離れて走行する長さだけ突出する状態である。また、3つ目の段階における前マーカの長さを可変とすることにより、所定の距離を任意に設定することもできる。所定の距離を任意に設定できる場合、外側周回経路ORLを走行することの走行車速が、所定の距離に応じて設定されても良い。
また、圃場の外周に沿った非作業走行は、外側周回経路ORLでの有人自動走行を考慮して、運転者が判断する距離だけ圃場の外周から離れて行われても良い。これにより、圃場中に必要な植付領域を確保すると共に、運転者の技量に応じて所定の距離を設定することができる。
なお、所定の距離は、所定の走行車速で走行している際に、障害物を含む異常が検知されて機体1を停止させる際に、異常を検知してから機体1が停止されるまでに機体1が走行する最低の距離またはそれにマージンを加えた距離とすることができる。
圃場の外周に沿った非作業走行が行われることにより、圃場の外周辺に係る位置情報が取得され、外周辺に基づいて圃場の外形マップ(圃場マップ)および走行経路が設定される。圃場の外周に沿った非作業走行は、圃場を構成する全辺を連続して走行し、連続した外周辺に係る位置情報が取得されても良いが、圃場を構成する各辺に係る位置情報が個別に取得されて圃場マップが生成されても良い。これにより、圃場の外周に沿った非作業走行の途中で走行を停止されたとしても、初めから非作業走行をやり直すことなく、走行を停止した辺から走行をやり直すことができる。辺毎に圃場マップが生成された場合、最外周植付は辺毎に行うことができる。
外側周回経路ORLは有人自動走行で作業走行が行われる。外側周回経路ORLの有人自動走行においては、自動走行による制御に従って作業走行が行われ、各辺の作業走行の間に旋回走行が行われる。旋回の際には、苗植付装置3の昇降等が必要となり、これはガイダンスに応じて手動で操作される。このような構成に限らず、苗植付装置3の昇降等も自動制御で行えるようにし、作業者が、手動操作を行うか自動制御で行うかを選択できる構成としても良い。自動制御は、例えば、旋回走行の開始前に苗植付装置3を上昇させ、旋回走行の終了後に苗植付装置3を下降させるようにする。
なお、圃場の外形マップ(圃場マップ)の生成、内部領域IAの設定、外周領域OAの設定、走行経路の設定、および圃場の外周辺から外側周回経路ORLまでの距離の調整は、制御ユニット30が行う。あるいは、制御ユニット30に内蔵され、または、制御ユニット30の外部に設けられる、走行経路生成部がこれらの処理を行っても良い。
〔苗切れ・肥料切れ等の際の制御〕
図1〜図5を用いて、苗切れ・肥料切れ等の際の制御について説明する。
苗植付装置3や施肥装置4、薬剤散布装置18、播種機等の各種資材を供給する装置には、それぞれの資材の残量を検出するセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)が設けられても良い。以下、苗の残量を検出する苗切れセンサを例に説明するが、肥料、薬剤、種籾等の各種資材にも適用できる。
苗切れセンサが、苗の残量が所定の量以下になっていることを検知すると、制御ユニット30は、情報端末5やボイスアラーム発生装置100等にその旨を報知させても良い。
また、作業走行の開始時、あるいは停車後の作業走行の再開時に、苗切れセンサが苗の残量が所定の量以下になっていることを検知すると、制御ユニット30は、走行が行われないように制御しても良い。苗の残量が不足する状態で植付作業が行われると、圃場の途中で欠株が生じる可能性がある。そのため、このような可能性がある状態では走行を行わない構成とすることにより、欠株の発生が抑制される。
走行経路の途中で苗の残量が所定の量以下になっていることが検知された場合、機体1が停止されても良いが、苗植付装置3を上昇させた状態で、苗補給辺SLまで走行させても良い。また、苗切れセンサが、苗補給辺SLに戻るのに必要な量が残る範囲の所定の量を検知する構成とし、苗切れセンサがこの量を検知した場合、作業走行を継続しながら苗補給辺SLまで走行する構成としても良い。また、苗補給辺SLに限らず、苗切れセンサが検知した位置によっては、苗補給が可能なその他の辺まで走行する構成としても良い。自動走行の際の、苗補給辺SLまたはその他の辺までの移動は、その場所からの走行経路が生成され、その走行経路に沿った自動走行であっても良い。
また、圃場の途中で苗がなくなったとしても、いずれにせよ、苗補給のために苗補給辺SLまで走行する必要がある。そのため、走行経路の途中で苗の残量が所定の量以下になっていることが検知されても、苗補給辺SLの近傍、例えば、内部往復経路IPLの旋回領域の手前までは、作業走行が継続されても良い。
条毎に苗が切れたことを検知する苗切れセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)がさらに設けられ、走行経路の途中で苗の残量が所定の量以下になっていることが検知された後の作業走行において、いずれかの条にて苗が切れた場合、苗植付装置3を上昇されて走行が行われても良い。苗が切れたことを検知する苗切れセンサは、例えば、撮像装置で閾値以下まで苗が減った事もって苗切れと判断する画像解析が行われる構成であっても良いし、機械学習された学習済みモデルに撮像画像を入力して苗切れを検知しても良い。また、苗が切れたことを検知する苗切れセンサは、苗載せ台21の苗送り部の終端部分に設けられた、苗の有無を検知する苗切れセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)であっても良い。
苗補給辺SLへの移動は、チョイ寄せ機能を用いることができるが、苗植付装置3を上昇させた状態(空作業)でのチョイ寄せ走行は、チョイ寄せの速度制限が解除されて、旋回領域の前後に行われるチョイ寄せに比較して、走行車速が速くても良い。これにより、苗補給辺SLから遠い位置で苗残量の低下が検知されたとしても、速やかに苗補給辺SLまで移動することができる。
内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLにおける自動走行の開始時には、苗の残量が所定の量以下であることが検知されると走行が開始されない。さらに、内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLの各辺において、旋回後の作業走行開始時にも、苗の残量が所定の量以下であることが検知されると走行が開始されない構成とされても良い。
苗の残量が所定の量以下になっていることが検知された箇所、条毎に苗が切れたことが検知された箇所の少なくともいずれかが、情報端末5等に表示されても良い。
内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLでの自動走行において、苗の残量が所定の量以下になっていることが検知された場合、各辺に沿った作業走行が終了後、旋回走行の前または後に機体1が一旦停車されても良い。この停車中に苗の補給を行うか否かを判断することができる。
苗等の資材、例えば、側条肥料・種籾・側条施薬等の詰まりや、燃料切れ、バッテリ73の残量等が検知される構成としても良い。これらが検出されると、機体1が停止される構成としても良い。例えば、肥料等の資材詰まりは、どの条で側条施薬が詰まっているのか判別することが困難であるため、条毎の施肥を停止することができず、機体1を停車させることが適切である。ただし、可能であれば、側条肥料・種籾・側条施薬等の詰まりを条毎に検知するセンサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)が設けられても良い。また、バッテリ73は、エンジン回転数を上げることによって充電することができる。そのため、バッテリ73の残量が所定量以下であることが検知されると、自動的にエンジン回転数が上昇される構成としても良い。
〔スリップ判定〕
図1〜図5を用いて、スリップを判定し、走行を制御する構成について説明する。
圃場の状態によって機体1が走行中にスリップし、車輪12(機体1)が沈没して作業走行が滞ることがある。そのため、機体1のスリップ率を測定することが好ましい。
スリップ率は、機体1が走行しようとしているのに機体1が走行していない状態である。そのため、スリップ率は、無段変速装置9の状態と、測位ユニット8から算出される自車位置とから算出することができる。また、無段変速装置9の状態に代えて、車輪12に設けられた、回転軸の回転数センサ(図5に示すセンサ群1Aの1つ)が用いられても良い。
このように算出されたスリップ率が所定の値以上であり、この状態が所定時間以上継続した場合、車輪12が沈没していると判定する。
車輪12が沈没していると判定された場合、機体1を一時停止させ、自動走行の場合は自動走行を終了させる。また、車輪12が沈没していると判定された場合、復帰動作を行っても良く、復帰動作をしても沈没が解消されない場合に機体1を一時停止させても良い。復帰動作は、例えば、デフをロックさせて左右いずれかの車輪12を駆動させても良いし、旋回中ならハンドルを戻してサイドクラッチを入れても良く、スラローム走行を行っても良い。
また、走行経路上で沈没個所が記憶され、沈没個所が障害物と認定され、走行経路の設定に反映されても良い。例えば、沈没個所を迂回するように走行経路が設定される。
〔作業クラッチ切り替え時の車速制御について〕
図1及び図2に示された苗植付装置3は、作業装置1Cの具体例である。苗植付装置3は、水田における作業を行う。より具体的には、苗植付装置3は、予め決められた条方向に沿って苗植付作業を行う。
尚、本発明はこれに限定されず、作業装置1Cの具体例として、予め決められた条方向に沿って播種作業を行う播種装置が備えられていても良い。即ち、作業装置1Cは、予め決められた条方向に沿って苗植付作業または播種作業を行う植播系作業装置であっても良い。
図15に示すように、本実施形態における田植機は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4を備えている。第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4により、各条クラッチECが構成されている。尚、各条クラッチECは、エンジン2からの動力伝達を入切することによって作業装置1Cの駆動状態を切り替える作業クラッチの一例である。
図15に示すように、エンジン2からの動力は、各条クラッチECを介して各植付機構22に分配される。各条クラッチECは、苗植付装置3による作業開始及び作業停止を所定条数毎に選択可能に構成されている。より具体的には、各条クラッチECは、苗植付装置3による作業開始及び作業停止を2条毎に選択可能に構成されている。
尚、本発明はこれに限定されず、各条クラッチECは、苗植付装置3による作業開始及び作業停止を、1条毎、又は3条以上毎に選択可能に構成されていてもよい。
以下では、各条クラッチECについて詳述する。8つの植付機構22は、4組に分かれた状態で設けられている。また、制御ユニット30は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4の入切状態を制御する。即ち、制御ユニット30は、各条クラッチECの入切状態を制御する。尚、制御ユニット30は、作業クラッチの入切状態を制御するクラッチ制御部の一例である。
第1クラッチC1が入状態である場合、4組の植付機構22のうち、左端の1組が駆動する。また、第1クラッチC1が切状態である場合、4組の植付機構22のうち、左端の1組が停止する。
第2クラッチC2が入状態である場合、4組の植付機構22のうち、左から2番目の1組が駆動する。また、第2クラッチC2が切状態である場合、4組の植付機構22のうち、左から2番目の1組が停止する。
第3クラッチC3が入状態である場合、4組の植付機構22のうち、右から2番目の1組が駆動する。また、第3クラッチC3が切状態である場合、4組の植付機構22のうち、右から2番目の1組が停止する。
第4クラッチC4が入状態である場合、4組の植付機構22のうち、右端の1組が駆動する。また、第4クラッチC4が切状態である場合、4組の植付機構22のうち、右端の1組が停止する。
また、図15に示すように、本実施形態における田植機は、植付クラッチC5を備えている。植付クラッチC5は、エンジン2からの動力伝達を入切することによって作業装置1Cの駆動状態を切り替える作業クラッチの一例である。
図15に示すように、エンジン2からの動力は、植付クラッチC5を介して各植付機構22に分配される。植付クラッチC5は、エンジン2からの動力伝達を入切することによって苗植付装置3の駆動状態を切り替える。
詳述すると、制御ユニット30は、植付クラッチC5の入切状態を制御する。植付クラッチC5が入状態である場合、エンジン2からの動力は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4へ伝達される。そして、このとき、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4が入状態であれば、4組の植付機構22が駆動する。これにより、苗植付装置3が駆動する。
また、植付クラッチC5が切状態である場合、エンジン2からの動力は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4の何れにも伝達されない。その結果、4組の植付機構22が停止する。これにより、苗植付装置3が停止する。
即ち、植付クラッチC5が入状態である場合には苗植付装置3が駆動し、植付クラッチC5が切状態である場合には苗植付装置3が停止する。
以上の構成により、本実施形態における田植機は、植付クラッチC5が切状態から入状態に切り替えられることによって苗植付装置3の駆動が開始し、且つ、植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられることによって苗植付装置3の駆動が停止するように構成されている。
また、図1に示された昇降リンク13aは、作業装置1Cの具体例である。制御ユニット30は、昇降リンク13aの駆動を制御する。昇降リンク13aが駆動することにより、苗植付装置3は昇降する。即ち、制御ユニット30は、苗植付装置3の昇降を制御する。尚、制御ユニット30は、苗植付装置3の昇降を制御する昇降制御部の一例である。
制御ユニット30は、苗植付装置3の駆動が停止される際に苗植付装置3を上昇させるように構成されている。これにより、田植機が畦際に位置していても、田植機はスムーズに旋回できる。
また、制御ユニット30は、苗植付装置3の駆動が開始される際に苗植付装置3を下降させるように構成されている。これにより、苗植付装置3による苗植付作業が確実に行われる。
また、制御ユニット30は、走行機器1Dを制御することにより、減速制御、及び、増速制御を実行することができる。減速制御とは、車速を低下させる制御である。また、増速制御とは、車速を上昇させる制御である。即ち、制御ユニット30は、車速を制御する。尚、制御ユニット30は、車速を制御する車速制御部の一例である。
ここで、本実施形態における田植機は、自動走行可能な作業機の一例である。この田植機が自動走行するとき、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、植付クラッチC5は、制御ユニット30によって自動的に制御される。
各条クラッチEC及び植付クラッチC5の入切のための制御が開始されてから、苗植付装置3の駆動状態が実際に切り替わるまでに、タイムラグがある。そのため、走行速度が速すぎると適切な位置で植付動作の開始及び終了が行われない場合がある。適切に植付作業を行うために、各条クラッチECまたは植付クラッチC5を入切する際に、走行車速が減速されることが好ましい。例えば、各条クラッチECまたは植付クラッチC5を入切する際に、あらかじめ定めた車速に走行車速が減速される。
また、各条クラッチECまたは植付クラッチC5の入切動作が終了した後、走行速度を回復させることが好ましい。これにより、植付作業の開始あるいは終了を適切に行いながら、植付作業またはその後の走行を効率的に行うことができる。
しかしながら、走行車速が短時間に繰り返し切り替わると、逆に作業が適切に行われない場合があり、また、スムーズな走行の妨げになる場合がある。そのため、各条クラッチECまたは植付クラッチC5が切状態となった後、各条クラッチECまたは植付クラッチC5が入状態となるまでに機体1が走行する距離が、所定の距離以下の時は、走行車速の回復を行わない構成としても良い。あるいは、各条クラッチECまたは植付クラッチC5が切状態となった後、各条クラッチECまたは植付クラッチC5が入状態に切り替えられるまでの時間が、所定の時間以下の時は、走行車速の回復を行わない構成としても良い。
なお、これらの所定の距離および時間は、任意に設定でき、作業条件に応じて変更することもできる。また、所定の距離および時間は、条毎に設定することもできる。また、減速および加速の際は、急激な速度の変更が行われず、緩やかに行われることが好ましい。
また、各条クラッチECまたは植付クラッチC5を入切する際に走行車速が減速される機能が、任意に無効とできるように構成されていても良い。
以下では、各条クラッチECの入切状態が切り替えられる場合における車速制御について、図16で示す自動走行を例に挙げて説明する。尚、以下では、各条クラッチECの入切状態を切り替える制御を「切替制御」と呼称する。
図16で示す例では、田植機は、まず、内部往復経路IPLに沿って走行しながら苗植付作業を行う。次に、田植機は、内側周回経路IRLに沿って走行しながら苗植付作業を行う。最後に、田植機は、外側周回経路ORLに沿って走行しながら苗植付作業を行う。
この例では、圃場における外周部に、障害物OBが位置している。そのため、外側周回経路ORLは、障害物OBを迂回する状態で生成されている。これにより、外側周回経路ORLの一部は、内側周回経路IRLへ向かって張り出している。
その結果、田植機が内側周回経路IRLに沿って走行するとき、4組の植付機構22のうちの左側の2組は、田植機が外側周回経路ORLに沿って走行する際に苗植付作業が行われる予定の領域を通過することとなる。そのため、4組の植付機構22のうちの左側の2組は、この領域を通過する間、停止される。
そして、制御ユニット30が切替制御を実行する場合、各条クラッチECの入切状態が切り替わる前に、制御ユニット30は、減速制御を実行する。また、切替地点を機体1が通過した後、制御ユニット30は、増速制御を実行する。尚、切替地点とは、制御ユニット30によって切替制御が実行される時点における機体位置である。
即ち、制御ユニット30が、各条クラッチECの入切状態を切り替える制御である切替制御を実行する場合、各条クラッチECの入切状態が切り替わる前に、制御ユニット30は、車速を低下させる制御である減速制御を実行する。
また、制御ユニット30によって切替制御が実行される時点における機体位置である切替地点を機体1が通過した後、制御ユニット30は、車速を上昇させる制御である増速制御を実行する。
詳述すると、田植機が図16に示す内側周回経路IRLに沿って走行するとき、まず、機体1は位置P1を通過する。このときの時刻を、時刻t1とする。
次に、機体1は、位置P2を通過した後、位置P3に到達する。このとき、制御ユニット30の制御により、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が、入状態から切状態に切り替えられる。その結果、4組の植付機構22のうちの左側の2組は停止する。
次に、機体1は、位置P4、P5、P6、P7を通過した後、位置P8に到達する。このとき、制御ユニット30の制御により、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が、切状態から入状態に切り替えられる。その結果、4組の植付機構22のうちの左側の2組の駆動が再開する。
その後、機体1は、位置P9、位置P10を通過する。
即ち、この例では、機体1が位置P3に到達するまで、4組の植付機構22は全て駆動する。そのため、機体1が位置P3に到達するまで、田植機は、走行しながら8条分の苗を植え付ける。
また、機体1が位置P3から位置P8の間に位置しているとき、田植機は、走行しながら右側の4条分のみの苗を植え付ける。
そして、機体1が位置P8を通過した後、田植機は、走行しながら8条分の苗を植え付ける。
図17では、図16に示す例において田植機が内側周回経路IRLに沿って走行する際の田植機の車速の推移が示されている。
尚、機体1が位置P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10に到達したときの時刻を、それぞれ、時刻t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8、t9、t10とする。
時刻t1まで、田植機の車速は第1車速V1である。そして、時刻t1に、機体1は位置P1に到達する。この例では、機体1が位置P3に到達した時点で切替制御が実行されることが予定されている。そのため、制御ユニット30は、時刻t1から時刻t2まで、減速制御を実行する。尚、本実施形態において、減速制御は、田植機の車速が所定の第2車速V2に達するまで実行される。尚、第2車速V2は、第1車速V1よりも低い。
これにより、機体1が位置P2に到達した時点で、田植機の車速は第2車速V2に達する。即ち、時刻t2に、車速は第2車速V2に達する。
時刻t3に、機体1は位置P3に到達する。このとき、上述の通り、制御ユニット30の制御により、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が、入状態から切状態に切り替えられる。即ち、このとき、制御ユニット30が切替制御を実行する。
ここで、上述の通り、減速制御は、時刻t1から時刻t2までの期間で既に実行されている。即ち、制御ユニット30は、各条クラッチECの入切状態が切り替わる前に、減速制御を既に実行している。
また、位置P3は切替地点である。そのため、制御ユニット30は、機体1が位置P3を通過した後、時刻t4から時刻t5まで、増速制御を実行する。尚、本実施形態において、増速制御は、田植機の車速が減速制御の実行前の車速に達するまで実行される。
これにより、機体1が位置P5に到達した時点で、田植機の車速は第1車速V1に達する。その後、時刻t6まで、田植機の車速は第1車速V1のままで維持される。
この例では、機体1が位置P8に到達した時点で切替制御が実行されることが予定されている。そのため、制御ユニット30は、時刻t6から時刻t7まで、減速制御を実行する。
これにより、機体1が位置P7に到達した時点で、田植機の車速は第2車速V2に達する。即ち、時刻t7に、車速は第2車速V2に達する。
時刻t8に、機体1は位置P8に到達する。このとき、上述の通り、制御ユニット30の制御により、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が、切状態から入状態に切り替えられる。即ち、このとき、制御ユニット30が切替制御を実行する。
ここで、上述の通り、減速制御は、時刻t6から時刻t7までの期間で既に実行されている。即ち、制御ユニット30は、各条クラッチECの入切状態が切り替わる前に、減速制御を既に実行している。
また、位置P8は切替地点である。そのため、制御ユニット30は、機体1が位置P8を通過した後、時刻t9から時刻t10まで、増速制御を実行する。
これにより、機体1が位置P10に到達した時点で、田植機の車速は第1車速V1に達する。その後、田植機の車速は第1車速V1のままで維持される。
尚、以上で説明した例では、機体1が位置P3を通過した後、制御ユニット30は増速制御を実行する。
しかしながら、本実施形態においては、機体1の走行経路上に、切替地点である第1地点と、切替地点である第2地点と、が位置しており、且つ、機体1が第1地点を通過した後で第2地点を通過することが予定されており、且つ、第1地点と第2地点との間の距離が所定の基準距離以下である場合、制御ユニット30は、機体1が第1地点を通過してから第2地点に到達するまでの間、増速制御を実行しない。
例えば、図16に示した例では、機体1の走行経路である内側周回経路IRL上に、切替地点である位置P3と、切替地点である位置P8と、が位置している。また、機体1が位置P3を通過した後で位置P8を通過することが予定されている。
従って、仮に、位置P3と位置P8との間の距離が所定の基準距離以下であれば、上述の例とは異なり、制御ユニット30は、機体1が位置P3を通過してから位置P8に到達するまでの間、増速制御を実行しない。この場合、機体1が位置P3を通過してから位置P8に到達するまでの間に、減速制御が実行されても良いし、減速制御が実行されなくても良い。減速制御が実行される場合、田植機の車速は第2車速V2よりも低くなっても良い。また、減速制御が実行される場合、位置P1から位置P5まで減速し続け、位置P5から位置P10まで増速し続けて、通常の作業速度である第1車速V1に戻る構成でも良い。
また、上述の例では、田植機が内側周回経路IRLに沿って走行している途中で、各条クラッチECの入切状態が切り替えられる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、田植機が内側周回経路IRLに沿って走行している途中で、植付クラッチC5の入切状態が切り替えられても良い。そして、制御ユニット30が、植付クラッチC5の入切状態を切り替える制御である切替制御を実行する場合、植付クラッチC5の入切状態が切り替わる前に、制御ユニット30は、車速を低下させる制御である減速制御を実行しても良い。
また、上述の例では、機体1が位置P3に到達した時点で、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が同時に入状態から切状態に切り替えられる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、まず第1クラッチC1が入状態から切状態に切り替えられ、その後、第2クラッチC2が入状態から切状態に切り替えられても良い。
また、上述の例では、機体1が位置P8に到達した時点で、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が同時に切状態から入状態に切り替えられる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、まず第2クラッチC2が切状態から入状態に切り替えられ、その後、第1クラッチC1が切状態から入状態に切り替えられても良い。
また、上述の例では、田植機が内側周回経路IRLに沿って走行する際に、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の入切状態が切り替えられ、第3クラッチC3及び第4クラッチC4は入状態のまま維持される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、田植機が内側周回経路IRLに沿って走行する際に、各条クラッチECのうちの何れのクラッチの入切状態が切り替えられても良い。
〔苗植付装置の昇降制御について〕
内部往復経路IPLは直進経路と旋回経路の繰り返し経路だが、直進経路の終点位置で制御ユニット30によって、植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられ、その後、苗植付装置3が上昇する。ここで、本実施形態においては、植付クラッチC5の入切状態の切替時点における機体位置から、機体1が所定距離D1を走行する間、苗植付装置3を下降した状態で維持するように構成されている。この構成により、各植付機構22における植付爪に苗が保持された状態で苗植付装置3が上昇し浮き苗が発生することを防止できる。
即ち、制御ユニット30は、制御ユニット30によって植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられた時点における機体位置から機体1が所定距離D1を走行する間、苗植付装置3を下降した状態で維持するように構成されている。
尚、別の実施形態として、直進経路の終点位置より所定距離D1だけ手前で植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられるように構成されていても良い。
また、所定距離D1は、機体1の走行方向に沿った苗の植付間隔以上である。即ち、所定距離D1は、株間以上である。
以下では、植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられる場合における苗植付装置3の昇降制御について、図18で示す自動走行を例に挙げて説明する。
図18で示す例では、田植機は、内部領域IAにおいて、内部往復経路IPLに沿って走行しながら苗植付作業を行う。そして、機体1は、位置P11に到達する。位置P11は、内部領域IAと外周領域OAとの境目に位置している。
機体1が位置P11に到達したとき、制御ユニット30は、植付クラッチC5を入状態から切状態に切り替える。即ち、位置P11は、制御ユニット30によって植付クラッチC5が入状態から切状態に切り替えられた時点における機体位置である。
その後、機体1は外周領域OAに進入し、位置P12に到達する。位置P11から位置P12までの機体1の走行距離は、所定距離D1である。そのため、機体1が位置P12に到達するまで、制御ユニット30は、苗植付装置3を下降した状態で維持する。
そして、機体1が位置P12を通過した後、制御ユニット30は、苗植付装置3を上昇させる。
尚、制御ユニット30は、機能毎に分割された状態で構成されていても良い。例えば、各条クラッチECを制御する機能部と、走行機器1Dを制御する機能部と、が各別に設けられると共に、制御ユニット30が、これらの機能部により構成されていても良い。
また、以上で説明した通り、制御ユニット30は、機体1の位置に基づいて、苗植付装置3の駆動状態と、車速と、苗植付装置3の昇降と、を制御する。ここで、制御ユニット30による制御においては、田植機のいかなる部位の位置が機体1の位置として取り扱われても良い。即ち、制御ユニット30による制御は、田植機のいかなる部位の位置に基づいて行われても良い。例えば、制御ユニット30による車速制御は、測位ユニット8の位置に基づいて行われても良いし、苗植付装置3の位置に基づいて行われても良い。
〔施肥作業の開始タイミング及び終了タイミング〕
施肥装置4(供給装置)は、肥料(薬剤やその他の農用資材)を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰出された肥料を搬送するとともに肥料を圃場に排出する施肥ホース28(ホース)と、を有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場へ排出される。このように、施肥装置4は圃場に肥料を供給する。ホッパ25及び繰出機構26は機体フレーム1Eに載置支持され、作溝器29は苗植付装置3の下端部に設けられている。施肥ホース28は繰出機構26と作溝器29とに亘って延び、肥料がホッパ25から圃場へ供給される際に、肥料は施肥ホース28を経由する。
施肥装置4による施肥作業は、植え付け作業と連動して行われる。例えば、図4に示されるように、内部領域IAに内部往復経路IPLが設定され、外周領域OAに旋回経路が設定されている。内部往復経路IPLは複数の平行経路であって、旋回経路は隣接の内部往復経路IPL同士を繋ぐ経路である。苗植付装置3による植え付け作業は内部往復経路IPLに沿って行われ、施肥装置4による施肥作業も内部往復経路IPLに沿って行われる。一方、外周領域OAの当該旋回経路では植え付け作業は行われず、施肥装置4による施肥作業も外周領域OAの当該旋回経路では行われない。
田植機が内部往復経路IPLに沿って内部領域IAを植え付け作業しながら走行すると、田植機は内部領域IAと外周領域OAとの境界領域に到達する。内部領域IAにおける当該境界領域が『終了位置』であって、この終了位置で植付機構22が停止し、苗植付装置3が上昇する。一般的には、植付機構22の停止または苗植付装置3の上昇と同時に繰出機構26が停止して施肥装置4による施肥作業が停止する。これにより、内部領域IAにおける一つの内部往復経路IPLに沿った植え付け作業及び施肥作業が完了する。この後、田植機は、外周領域OAへ移動して、隣接の内部往復経路IPLに移行するために外周領域OAで旋回走行する。
外周領域OAで旋回走行が完了すると、田植機は、再び内部領域IAに移動して、隣接の内部往復経路IPLに沿って植え付け作業及び施肥作業を開始する。内部領域IAのうちの内部領域IAと外周領域OAとの境界領域が『開始位置』であって、この開始位置で苗植付装置3が下降し、植付機構22が再び作動する。一般的には、苗植付装置3の下降または植付機構22の作動開始と同時に繰出機構26が動き始めて施肥装置4による施肥作業が開始される。
しかし、肥料がホッパ25から繰出機構26によって繰り出されてから実際に圃場に届くまでに、施肥ホース28の長さの分だけ遅れが生じる。このため、開始位置では、実際の圃場への肥料の供給の開始タイミングが植え付け作業の開始タイミングよりも遅れ、開始位置で施肥が十分に行われない虞がある。また、終了位置では、実際の圃場への肥料の供給の停止タイミングが植え付け作業の停止タイミングよりも遅れる虞がある。加えて、この終了位置で田植機が一旦停車すると、施肥ホース28に残留した肥料がそのまま終了位置に排出され、終了位置において肥料が過剰に供給されてしまう虞がある。このような不都合を解消するべく、本実施形態では、施肥装置4に対する以下の制御が行われる。
田植機の制御系の中核である制御ユニット30は、田植機の走行制御や各種作業装置1Cの動作制御を行う。作業装置1Cの一部に施肥装置4が含まれる。測位ユニット8は、航法衛星の測位信号に基づいて機体1の位置情報、即ち自車位置を取得する。制御ユニット30は、機体1の走行中に、測位ユニット8によって算出された自車位置に基づいて施肥装置4に対する制御を可能である。そして制御ユニット30は、予め設定された開始位置から作業走行を開始する場合に作業走行の開始前に施肥装置4を動作させ、予め設定された終了位置で作業走行を終了する場合に作業走行の終了前に施肥装置4を停止させるように構成されている。
肥料がホッパ25から繰出機構26によって繰り出されてから実際に圃場に排出されるまでに要する時間(以下、『肥料搬送所要時間』と称する)は、搬送風の風速や施肥ホース28の長さによって変化する。このため、オペレータが情報端末5を操作しながら肥料搬送所要時間を設定可能な構成であっても良い。また、オペレータが施肥ホース28の長さと、搬送風の風速と、を情報端末5で設定することによって、肥料搬送所要時間が制御ユニット30によって自動的に算出される構成であっても良い。なお、制御ユニット30は、肥料がホッパ25から繰出機構26によって繰り出されてから実際に圃場に排出されるまで田植機が走行する距離(以下、『以下、肥料搬送所要距離』)を算出しても良い。この場合、上述の肥料搬送所要時間に田植機の走行車速を掛け算することによって、肥料搬送所要距離が算出される。
旋回走行後の開始位置は既知であって、田植機の自車位置は測位ユニット8によって算出される。また、単位時間当たりの自車位置の変化量から走行車速が算出される。つまり、測位ユニット8は、機体1の走行車速(速度)を検出可能な『速度検出部』に相当する。なお、速度検出部は、車輪12に設けられた回転数センサ(図示しない)であっても良いし、無段変速装置9に設けられた回転数センサ(図示しない)であっても良い。開始位置と自車位置との距離を走行車速で割り算することによって、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が開始位置に到達するまでの時間(以下、『第1時間』と称する)が算出される。第1時間は、田植機が外周領域OAで次の内部往復経路IPLに向けて旋回走行している間や、当該旋回走行の完了後に田植機が外周領域OAから内部領域IAへ移動している間に、周期的に算出される。なお、第1時間に走行車速を掛け算することによって第1距離が算出される。第1距離は、機体1のうちの作溝器29の位置する箇所が開始位置に到達するまでの距離である(図19及び図20参照)。
また、終了位置は既知であるため、終了位置と自車位置との距離を走行車速で割り算することによって、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が終了位置に到達するまでの時間(以下、『第2時間』と称する)が算出される。第2時間は、田植機が内部領域IAを内部往復経路IPLに沿って植え付け作業しながら走行している間に、周期的に算出される。なお、第2時間に走行車速を掛け算することによって第2距離が算出される。第2距離は、機体1のうちの作溝器29の位置する箇所が終了位置に到達するまでの距離である(図21及び図22参照)。
図19及び図20に示されるように、田植機が外周領域OAで次の内部往復経路IPLに向けて旋回走行しているとき、または、田植機が旋回走行を完了して外周領域OAから内部領域IAへ移動しているときに、第1時間が周期的に算出される。この第1時間が肥料搬送所要時間以下になると、制御ユニット30は繰出機構26を作動させる。そして、施肥ホース28に沿って搬送される肥料が排出され始めるときに、作溝器29が開始位置に位置する。つまり、施肥装置4による施肥作業が開始位置で精度よく開始される。即ち、制御ユニット30は、自車位置(位置情報)に基づいて、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が開始位置に到達するまでの時間である第1時間を算出するとともに、第1時間が肥料搬送所要時間(予め設定された閾値)以下である場合に施肥装置4を動作させるように構成されている。また、制御ユニット30は、施肥ホース28沿って搬送される肥料が開始位置で排出され始めるように施肥装置4を動作させる。あるいは、制御ユニット30は、自車位置に基づいて、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が、機体1の旋回走行後の開始位置に到達するまでの距離である第1距離を算出するとともに、第1距離が肥料搬送所要距離(予め設定された閾値)以下である場合に施肥装置4を動作させても良い。
図21及び図22に示されるように、田植機が植え付け作業しながら内部領域IAを走行しているとき、第2時間が周期的に算出される。この第2時間が肥料搬送所要時間以下になると、制御ユニット30は繰出機構26を停止させる。そして、施肥ホース28に沿って搬送される肥料が排出され尽くすときに、作溝器29が終了位置に位置する。つまり、施肥装置4による施肥作業が終了位置で精度よく終了する。即ち、制御ユニット30は、自車位置に基づいて、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が終了位置に到達するまでの時間である第2時間を算出するとともに、第2時間が肥料搬送所要時間(予め設定された閾値)以下である場合に施肥装置4を停止させるように構成されている。また、制御ユニット30は、施肥ホース28に沿って搬送される肥料が終了位置で排出され尽くすように施肥装置4を停止させる。あるいは、制御ユニット30は、自車位置に基づいて、機体1のうち作溝器29の位置する箇所が終了位置に到達するまでの距離である第2距離を算出するとともに、第2距離が肥料搬送所要距離(予め設定された閾値)以下である場合に施肥装置4を停止させても良い。
図4に示された圃場は矩形の形状であるが、圃場は常に矩形の形状であるとは限らず、例えば台形形状であったり、不等辺の形状であったりする場合も考えられる。例えば図23に示されるように、外周領域OAと内部領域IAとの境界線が内部往復経路IPLに対して傾斜する場合も考えられる。内部領域IAに対する植え付け作業時に、外周領域OAにはみ出した状態で苗が植え付けられると好ましくない。このため、苗植付装置3が外周領域OAと内部領域IAとの境界に跨る状態では、苗植付装置3の条ごとに設けられた植付クラッチを用いることによって、内部領域IAに対してのみ植え付け作業が行われる。作業装置としての苗植付装置3は、圃場に対して苗を条ごとに植え付け可能なように構成されている。また、施肥装置4において繰出機構26は2条ごとに設けられているが、条ごとに設けられても良いし、3条以上の条ごとに設けられても良い。
図23に示される実施形態では、苗植付装置3のうちの右側箇所が内部領域IAに位置し、機体1が前進するほど、苗植付装置3のうちの内部領域IAに位置する箇所の割合が大きくなる。このため、苗植付装置3の右端が内部領域IAの内側に進入した時点で苗植付装置3の右端の植付クラッチだけが伝達状態であって、機体1が前進に伴って、左側の各植付クラッチが順番に伝達状態に切換えられる。
図23に示される例では、植え付け作業の開始位置が条ごとに異なる。このため、制御ユニット30は、開始位置に到達するまでの時間である第1時間を植え付け条ごとに算出するとともに、植え付け条ごとの第1時間が肥料搬送所要時間以下である場合に、施肥装置4における繰出機構26の夫々を植え付け条ごとに各別に動作させる。また、植え付け作業の終了位置が条ごとに異なる場合も考えられる。この場合、制御ユニット30は、終了位置に到達するまでの時間である第2時間を植え付け条ごとに算出するとともに、植え付け条ごとの第2時間が肥料搬送所要時間以下である場合に、施肥装置4における繰出機構26の夫々を植え付け条ごとに各別に停止させる。即ち、制御ユニット30は、苗植付装置3が苗を植え付ける条と連動して、施肥装置4を条ごとに動作または停止させるように構成されている。
上述の実施形態では、内部往復経路IPLに沿って田植機が植え付け作業を行った終了位置と、田植機が外周領域OAで次の内部往復経路IPLに向けて旋回走行を行った後の開始位置と、に基づいて施肥作業の開始タイミング及び終了タイミングを説明したが、この実施形態に限定されない。例えば終了位置が、外周領域OAにおける一つの内側周回経路IRLの終端部(田植機が次の内側周回経路IRLに向けて旋回する手前の端部)、または外側周回経路ORLの終端部(田植機が次の外側周回経路ORLに向けて旋回する手前の端部)であっても良い。田植機が内側周回経路IRL(または外側周回経路ORL)に沿って植え付け作業しながら走行しているとき、第2時間が周期的に算出される。そして、田植機が内側周回経路IRL(または外側周回経路ORL)の終了位置に接近して第2時間が肥料搬送所要時間以下になると、制御ユニット30は繰出機構26を停止させても良い。また、開始位置が次の内側周回経路IRLの始端部であって、田植機が外周領域OAで次の内側周回経路IRL(または外側周回経路ORL)に向けて旋回走行しているとき、第1時間が周期的に算出されても良い。そして、田植機が次の内側周回経路IRL(または外側周回経路ORL)の開始位置に接近して第2時間が肥料搬送所要時間以下になると、制御ユニット30は繰出機構26を作動させても良い。
上述したように、肥料がホッパ25から繰出機構26によって繰り出されてから実際に圃場に届くまでに、施肥ホース28の長さの分だけ遅れが生じる。このことから、走行速度が速すぎると適切な位置で圃場に対する施肥の開始または終了が行われない場合が考えられる。適切に施肥作業を行うために、制御ユニット30は、走行車速が予め設定された設定速度よりも速い場合に、施肥装置4を動作または停止させる前に機体1を減速させる。このとき、制御ユニット30は、設定速度に減速させても良いし、設定速度未満に減速させても良い。また、制御ユニット30は、走行車速が当該設定速度よりも遅い場合に、施肥装置4の動作または停止を開始するまで機体1をその走行車速のまま走行させても良い。さらに、制御ユニット30は、設定速度以下の走行車速の場合に、施肥装置4を動作または停止させる前に機体1を、施肥装置4の停止タイミングと合わせやすい任意の速度に増速させても良い。
上述の実施形態では、オペレータが情報端末5を操作することによって肥料搬送所要時間が設定される構成が示されているが、この実施形態に限定されない。例えば、繰出機構26の駆動回転速度やブロワ27の駆動回転速度が、走行車速と連動して変化する構成であっても良く、この場合、肥料搬送所要時間が制御ユニット30によって周期的に算出される構成であっても良い。この場合、走行車速が速くなるほど繰出機構26の駆動回転速度やブロワ27の駆動回転速度が速くなって、肥料搬送所要時間が短くなる構成であっても良い。制御ユニット30は、走行車速が速くなるほど開始位置に近づく側の位置で繰出機構26を動作させ始めても良いし、終了位置近くで肥料を少し多めに供給するために、走行車速が速くなるほど終了位置に近づく側の位置で繰出機構26を停止させても良い。即ち、制御ユニット30は、走行車速に基づいて施肥装置4を動作または停止させるタイミングを変更可能に構成されても良い。
なお、上述の実施形態では、農用資材として肥料が示されているが、農用資材は、液状や粉粒状の薬剤であっても良いし、液状や粉粒状の肥料であっても良い。また、上述の実施形態では、供給装置として施肥装置4が示されているが、供給装置は、圃場に薬剤を散布する薬剤散布装置であっても良い。また、上述の実施形態では作業装置として苗植付装置3が示されているが、作業装置は、例えば播種装置(圃場へのピンポイントの直播も含む)であっても良い。つまり、作業装置が圃場に対して種苗を条ごとに植播可能であれば良い。『種苗』は、発芽前の種子と発芽後の苗とを含むものである。『植播』は、圃場に対して発芽前の種子を種蒔きしたり、圃場に対して発芽後の苗を移植したりする作業の総称を意味する。また上述の構成とは別の実施形態として、施肥ホース28ののうちの圃場に近い部分に肥料を一時的に受け止める受け止め部が設けられ、機体1の位置情報に基づき間欠的に肥料を供給する構成であっても良い。
〔無段変速装置の斜板の中立戻し制御及びエンジンの始動制御〕
図24に示すように、制御ユニット30には、ブレーキ検出部80、キースイッチ81、中立センサ82、報知装置83等が接続されている。
ブレーキ検出部80は、ブレーキペダル84が踏み込まれたことを検出するものである。ブレーキペダル84は、車輪12を制動するブレーキ装置85を制動操作するものである。ブレーキペダル84は、運転部14に備えられている。ブレーキペダル84は、初期位置Piniから最大踏み込み位置Pmaxまで踏み込み可能に構成され、リンク機構(図示省略)を介してブレーキ装置85と連係されている。
ブレーキ装置85は、副変速装置(図示省略)、株間変速装置(図示省略)等を内装するミッションケース86内に設けられている。ブレーキ装置85には、ブレーキパッド(図示省略)と、前記ブレーキパッドを押圧操作する揺動式の操作アーム85aと、が備えられている。
ブレーキ検出部80には、踏み始めセンサ80aと、踏み終わりセンサ80bと、踏み込みセンサ80cと、が備えられている。
踏み始めセンサ80aは、ブレーキペダル84が初期位置Piniから踏み込まれたことを検出するものである。本実施形態では、踏み始めセンサ80aは、磁石センサによって構成されている。なお、踏み始めセンサ80aは、磁気センサ以外のセンサによって構成されていてもよい。
踏み終わりセンサ80bは、ブレーキペダル84が最大踏み込み位置Pmaxまで踏み込まれたことを検出するものである。本実施形態では、踏み終わりセンサ80bは、リミットスイッチによって構成されている。なお、踏み終わりセンサ80bは、リミットスイッチ以外のセンサによって構成されていてもよい。
踏み込みセンサ80cは、ブレーキペダル84が初期位置Piniと最大踏み込み位置Pmaxとの間に位置する途中位置Pmidまで踏み込まれたことを検出するものである。本実施形態では、踏み込みセンサ80cは、磁石センサによって構成されている。なお、踏み込みセンサ80cは、磁気センサ以外のセンサによって構成されていてもよい。
ここで、途中位置Pmidは、上述のように、初期位置Piniと最大踏み込み位置Pmaxとの間に位置するものであるが、初期位置Piniと最大踏み込み位置Pmaxとの間の中央位置に限るものではない。例えば、途中位置Pmidは、初期位置Piniから所定の踏み込みストロークを確保した位置に設定することができる。
キースイッチ81は、エンジン2を始動操作するものである。キースイッチ81は、運転部14に備えられている。
中立センサ82は、無段変速装置9の変速位置が中立位置であることを検出するものである。中立センサ82は、例えば、主変速レバー7Aが中立位置であることを検出するものでもよいし、あるいは、無段変速装置9の斜板9aが中立位置であることを検出するものでもよい。
制御ユニット30は、ブレーキペダル84が踏み込まれたことがブレーキ検出部80によって検出されると、ブレーキペダル84が最大踏み込み位置Pmaxに達するよりも手前の段階で無段変速装置9の斜板9aを中立位置に戻し始める。本実施形態では、制御ユニット30は、ブレーキペダル84が途中位置Pmidまで踏み込まれたことが踏み込みセンサ80cによって検出されると、無段変速装置9の斜板9aを中立位置に戻し始め、ブレーキペダル84が最大踏み込み位置Pmaxまで踏み込まれたことが踏み終わりセンサ80bによって検出されると、無段変速装置9の斜板9aを中立位置に戻し終える。
ここで、上述の構成に代えて、制御ユニット30は、ブレーキペダル84が初期位置Piniから踏み込まれたことが踏み始めセンサ80aによって検出されると、無段変速装置9の斜板9aを中立位置に戻し始め、ブレーキペダル84が途中位置Pmidまで踏み込まれたことが踏み込みセンサ80cによって検出されると、無段変速装置9の斜板9aを中立位置に戻し終えてもよい。
あるいは、上述の構成に代えて、ブレーキ検出部80に、ブレーキペダル84の踏み込み量を検出する踏み込み量センサ(図示省略)が備えられ、制御ユニット30は、前記踏み込み量センサによって検出されたブレーキペダル84の踏み込み量が増加するのに応じて、無段変速装置9の斜板9aを中立位置側に戻してもよい。この場合、前記踏み込み量センサは、ポテンショメータによって構成することができる。
あるいは、上述の構成に代えて、操作アーム85aの揺動角度を検出する揺動角度センサが設けられ、制御ユニット30は、前記揺動角度センサによって検出された操作アーム85aの揺動角度が大きくなるのに応じて、無段変速装置9の斜板9aを中立位置側に戻してもよい。
あるいは、上述の構成に代えて、制御ユニット30は、ブレーキペダル84が踏み込まれたことがブレーキ検出部80によって検出されると、主変速レバー7Aを中立位置に戻し、これに基づいて無段変速装置9の斜板9aを中立位置側に戻してもよい。
制御ユニット30は、キースイッチ81によってエンジン2が始動操作された際に、ブレーキペダル84が最大踏み込み位置Pmaxまで踏み込まれたことが踏み終わりセンサ80bによって検出され、かつ、無段変速装置9の変速位置が中立位置であることが中立センサ82によって検出された場合に、キースイッチ81の始動操作に基づいてエンジン2を始動する。
報知装置83は、エンジン2が始動されないことを報知するものである。ここで、キースイッチ81によってエンジン2が始動操作された際に、ブレーキペダル84が最大踏み込み位置Pmaxまで踏み込まれたことが踏み終わりセンサ80bによって検出されていない、あるいは、無段変速装置9の変速位置が中立位置であることが中立センサ82によって検出されていない場合は、キースイッチ81によってエンジン2が始動操作されても、エンジン2が始動されない。そこで、エンジン2が始動されない場合、エンジン2が始動されないことや、エンジン2が始動されない状況を解消する方法が、報知装置83によって報知されることになる。報知装置83による報知は、音声、画像(情報端末5等の画像表示)又はこれらの組み合わせによって行われる。
制御ユニット30は、ブレーキ装置85が車輪12を制動した時の走行情報に基づいて、ブレーキ装置85(前記ブレーキパッド)の損耗量を推定する。ここで、前記走行情報とは、例えば、後輪12Bの回転数、測位ユニット8の位置情報、無段変速装置9の出力軸の回転数である。
本田植機において、リモコンでもエンジン2を始動操作可能に構成されていてもよい。前記リモコンによってエンジン2を始動操作することにより、測位ユニット8等の作動準備やバッテリ73の充電を行うことができる。本田植機において、電装系に異常が生じてもエンジン2の始動のみは可能な直結回路やモード(制御モード)が設けられていてもよい。
図1,2,3に示されるように、前輪12A及び後輪12Bを駆動可能に有する機体1の前部側領域に、エンジン2、及び、エンジン2を覆うエンジンボンネット2Bを有する原動部2Aが備えられ、機体1の後部側領域に、運転部14が備えられて、自走車が構成されている。自走車は、原動部2Aの両横側方に設けられた予備苗収納装置17Aを有し、かつ、運転座席16の後側に設けられ、施肥装置4を構成するホッパ25及び繰出機構26などを有している。
左右の予備苗収納装置17Aは、機体フレーム1Eのうちのエンジンフレーム1Fに立設された支持フレームとしての予備苗支持フレーム17に支持されている。具体的には、左右の予備苗収納装置17Aは、上下4段の予備苗載せ台70と、予備苗載せ台70に対して予備苗支持フレーム17側に車体上下方向に沿う方向に延びる状態で設けられ、上下4段の予備苗載せ台70を支持する収納装置フレーム70aと、を有している。予備苗支持フレーム17は、図1に示されるように、エンジンフレーム1Fの両横側部から車体上方向きに延びる左右の下端側部17aと、左右の下端側部17aの上部に横架された上端側部17bとを有している。左右の下端側部17aは、上端側部17bよりも低い位置に位置している。左の予備苗収納装置17Aの収納装置フレーム70aが左の下端側部17aに支持されている。右の予備苗収納装置17Aの収納装置フレーム70aが右の下端側部17aに支持されている。左右の予備苗収納装置17Aにおける上下4段の予備苗載せ台70は、収納装置フレーム70aを介して予備苗支持フレーム17に支持されている。本実施形態では、左右の予備苗収納装置17Aは、上下4段の予備苗載せ台70を有しているが、これに限らない。例えば、上下3段以下、あるいは、上下5段以上の予備苗載せ台70を有するものであってもよい。
〔ソナー制御装置、積層灯、受信装置、バッテリ〕
図2,3に示されるように、ソナー制御装置としての前ソナーECU64A、制御ユニット30の制御モードを自走車の外部に表示する積層灯71、リモコン90(遠隔操縦装置)からの無線指令信号を受信し、受信した無線指令信号を電気信号に変換して制御ユニット30に送信する受信装置72は、自走車の両横側部のうち、右側の横側部に設けられている。ソナーECU64、積層灯71及び受信装置72に電力を供給するバッテリ73は、自走車の両横側部のうち、前ソナーECU64A、積層灯71及び受信装置72が設けられている方の横側部、すなわち、右側の横側部に設けられている。本実施形態では、前ソナーECU64A、積層灯71、受信装置72及びバッテリ73は、自走車の右側の横側部に設けられているが、自走車の左側の横側部に設けたものであってもよい。
詳述すると、前ソナーECU64A及び積層灯71は、図2,3に示されるように、右の予備苗収納装置17Aの上方箇所に設けられている。受信装置72は、図2,3に示されるように、運転部14の前上方領域における車体右端寄り箇所に設けられている。バッテリ73は、右の予備苗収納装置17Aの下方に設けられている。
〔積層灯の構成〕
積層灯71は、図2,3に示されるように、自走車の外周部としての右の予備苗収納装置17Aの上方領域における車体横方向内側寄り箇所に設けられている。積層灯71は、右の予備苗収納装置17Aにおける上下4段の予備苗載せ台70のうちの最上段の予備苗載せ台70よりも高い位置に設けられている。積層灯71は、測位ユニット8の受信を妨害しないように、測位ユニット8のアンテナ8pよりも低い位置に設けられ、かつ、受信装置72の受信を妨害しないように、受信装置72のアンテナ72pよりも低い位置に設けられている。
積層灯71は、図1に実線で示される如く長手方向が車体上下方向に沿った使用姿勢と、図1に二点鎖線で示される如く車体側面視で使用姿勢に対して傾斜し、使用姿勢に比して上部が低い位置に位置する格納姿勢と、に姿勢変更可能に支持されている。
具体的には、図1、図28に示されるように、予備苗支持フレーム17における右の下端側部17aの上部に、積層灯支持部材74が支持されている。図28に示されるように、積層灯71の下部に形成された連結部71aに、支軸71b及び姿勢決めアーム71cが備えられている。積層灯71は、支軸71bが積層灯支持部材74の支持穴74aに積層灯支持部材74の横外側方から装着されることにより、支軸71bを介して積層灯支持部材74に支持される。積層灯71は、図1及び図29に実線で示されるように、支軸71bを揺動支点にして揺動操作されて積層灯支持部材74に対して起立した状態にされることにより、使用姿勢になる。積層灯71は、図1及び図29に二点鎖線で示されるように、支軸71bを揺動支点にして揺動操作されて使用姿勢に対して車体前方側に倒れた傾斜状態にされることにより、格納姿勢になる。積層灯71を使用姿勢にした場合、セットボルト74bが積層灯支持部材74の横内側方から積層灯支持部材74のボルト穴74cを通して姿勢決めアーム71cのボルト穴に装着されることにより、積層灯71は、セットボルト74bによって使用姿勢に保持される。積層灯71を格納姿勢にした場合、積層灯支持部材74に支持されるカバー75に形成されている受止め部75aが積層灯71の遊端側部を下方から受け止め支持し、積層灯71は、カバー75によって格納姿勢に保持される。カバー75は、積層灯支持部材74に支持され、積層灯71の支持部、前ソナーECU64Aを横外側方から覆うように構成されている。
積層灯71は、自走車の外周部としての右の予備苗収納装置17Aの外周部に設けられているが、これに限らない。例えば、施肥装置4のホッパ25の上方に設けたものであってもよい。また、運転部14の両横外側方に設けられ、自走車の後部における外周部に位置する手摺り76(図1,2参照)に支柱を介して支持するものであってもよい。この場合、左右の手摺り76のそれぞれに支持するものであってもよい。本実施形態では、積層灯71は、予備苗支持フレーム17に支持されているが、これに限らず、積層灯71を支持する専用の支持フレームを設けたものであってもよい。積層灯71の取付け高さの変更を可能に構成すると、好適である。
本実施形態では、積層灯71には、図3、図28、図29に示されるように、桃色71P、緑色71G、青色71Bの表示灯部が積層されている。桃色71P、緑色71G、青色71Bの表示灯部は、桃色71Pの下に緑色71Gが位置し、緑色71Gの下に青色71Bが位置する順序で積層されているが、これに限らない。たとえば、桃色71Pが緑色71Gと青色71Bとの間に位置するなど、いかなる順序で積層するものであってもよい。また、3色の表示灯部に限らず、2色の表示灯部、あるいは、4色以上の表示部を備えるものであってもよい。
図1,2,3に示されるように、運転部14の前方にセンターマスコット20が設けられている。センターマスコット20のうち、運転部14から見通しやすい上部に、制御ユニット30の制御モードを表示する表示灯部20Aが形成されている。本実施形態では、表示灯部20Aには、図示しない赤色、緑色、アンバー右、アンバー左の表示灯が備えられている。本実施形態では、センターマスコット20に表示灯部20Aが形成されているが、表示灯部20Aが形成されていないものであってもよい。
本実施形態では、積層灯71、及び、センターマスコット20の表示灯部20Aは、制御ユニット30によって図30に示される表示状態に制御される。図30に示される「●」印は、積層灯71及び表示灯部20Aにおける点灯を示し、「−」は、積層灯71及び表示灯部20Aにおける消灯を示し、「●(点滅)」は、積層灯71における点滅を示す。
図30に示される表示灯部20Aの表示状態の一部を次に説明する。
表示灯部20Aにおいては、制御ユニット30が有人自動モードに選択された状態で、自動運転開始が可能であるとき、及び、制御ユニット30が有人自動モードに選択された状態で、自動運転再開が可能であるとき、赤色、緑色、アンバー右及びアンバー左の全てが点灯される。
表示灯部20Aにおいては、制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、自動運転開始条件が未成立のとき、赤色、緑色、アンバー右及びアンバー左の全てが消灯される。
図30に示される積層灯71の表示状態の一部を次に説明する。
積層灯71においては、制御ユニット30が有人自動モードに選択された状態で、自動運転開始が可能であるとき、及び、制御ユニット30が有人自動モードに選択された状態で、自動運転再開が可能であるとき、桃色71P、緑色71G及び青色71Bの全ての表示灯部が消灯される。
積層灯71においては、制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、自動運転開始条件が未成立であるとき、桃色71P、緑色71G及び青色71Bの全ての表示灯部が消灯される。制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、自動運転開始が可能なとき、及び、制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、自動運転再開が可能なとき、桃色71P、緑色71G及び青色71Bの全ての表示灯部が点灯される。制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、障害物が検知されたとき、及び、制御ユニット30が無人自動モードに選択された状態で、GPS測位が不可能なとき、桃色71Pの表示灯部のみが点灯される。
積層灯71は、無人自動モードでのみ使用される。自動運転開始のための条件調整の間は、いずれの表示灯部も点灯されない。自動運転中は、一番下の表示灯部のみが点灯され、自動運転許可状態(自動運転中の一時停止や、開始点誘導前状態)ならば、3色の表示灯部が点灯され、自動運転不可状態(障害物検知、機械エラー)ならば、一番上の表示灯部のみが点灯される。自動運転不可の情報が一番重要なため、自動運転不可のとき、一番高い位置に位置する表示灯部が点灯される。積層灯71は、制御ユニット30が有人自動モードに選択された状態において、点灯されるものであってもよい。積層灯71において、制御モードに対応させて点灯される表示灯部の組み合わせ、及び、制御モードに対応させて消灯される表示灯部の組み合わせは、図30に示される以外の組み合わせに変更可能である。自動運転モード以外では、積層灯71で表示されないようにしてもよい。積層灯71による各種の表示は、音声報知やバーチャル画面報知等と併せて行ってもよい。積層灯71においては、積層灯71の電流(電圧)を検知することによって積層灯71の異常を検知できる。
〔測位ユニット、アンテナ及び受信装置の支持〕
受信装置72には、リモコン90(遠隔操縦装置)からの無線指令信号を受信するアンテナ72pが連係されている。受信装置72による無線指令信号の受信は、アンテナ72pを介して行われる。測位ユニット8、アンテナ72p及び受信装置72は、図1,2,3に示されるように、予備苗支持フレーム17における上端側部17bに支持されている。
具体的には、上端側部17bは、図1,2,3に示されるように、運転部14の前上方箇所において車体横幅方向に延びるフレーム部17yと、フレーム部17yの両横端部から予備苗支持フレーム17における下端側部17aに向けて延ばされて下端側部17aの上部に支持されるアーム部17tと、を有している。図25に示されるように、フレーム部17yに載置台77が支持され、測位ユニット8及び受信装置72は、車体横幅方向に並ぶ状態で載置台77に載置され、載置台77に連結ボルトによって締め付け固定されるように構成されている。測位ユニット8及び受信装置72は、図2,3に示されるように、受信装置72が測位ユニット8よりも車体横外側方に位置する横並びで載置固定される。受信装置72のアンテナ72pは、図25に示されるように、受信装置72の前方に位置する状態で載置台77に備えられたアンテナ支持部77aに支持されるよう構成されている。アンテナ72pのアンテナ支持部77aへの支持は、アンテナ72pのベース部に備えられた磁石(図示せず)の吸着によって脱着可能に行われる。本実施形態では、磁石が採用されているが、これに限らない。たとえば、吸盤の採用が可能である。アンテナ72pが受信装置72から延びる場合、受信装置72の着脱を可能に構成することにより、アンテナ72pの脱着を可能にしてもよい。
図25,26,28に示されるように、予備苗支持フレーム17の上端側部17bにおける右のアーム部17tの延伸端部は、予備苗支持フレーム17における右の下端側部17aに形成された支持部78に枢支軸78aを介して支持されるよう構成されている。上端側部17bにおける左のアーム部17tは、右のアーム部17tが右の下端側部17aに支持される構成と同じ構成により、下端側部17aに支持されるよう構成されている。上端側部17bは、枢支軸78aを揺動支点にして揺動可能な状態で左右の下端側部17aに支持されるよう構成されている。上端側部17bは、枢支軸78aを揺動支点にして揺動操作されることにより、図1に実線に示される如くフレーム部17yが下端側部17aの上方に位置する上昇姿勢と、図1に二点鎖線で示される如くフレーム部17yが下端側部17aの後方に位置する下降姿勢と、に姿勢変更する。右のアーム部17tを持って上端側部17bを揺動操作するとき、右のアーム部17tが積層灯71よりも車体横方向内側を通り、積層灯71が障害にならない。
図1,3に実線に示されるように、上端側部17bが上昇姿勢に姿勢変更されることにより、アンテナ72p、受信装置72及び測位ユニット8は、上昇使用位置に位置し、下端側部17aよりも高い位置に位置する状態になる。図1,3に二点鎖線で示されるように、上端側部17bが下降姿勢に姿勢変更されることにより、受信装置72及び測位ユニット8は、下降格納位置に位置し、下端側部17aにおける上端部よりも低い、かつ、上昇使用位置よりも低い位置にする状態になる。受信装置72及び測位ユニット8が下降格納位置に位置すると、受信装置72及び測位ユニット8の上下向きが上昇使用位置に位置するときの上下向きと逆になる。受信装置72及び測位ユニット8を下降使用位置に下降させる際、アンテナ72pが周辺の部材に当って上端側部17bの下降揺動に対する障害などにならないように、アンテナ72pをアンテナ支持部77aから取り外すことができる。アンテナ72p、受信装置72及び測位ユニット8を上昇使用位置にした場合、図26に示されるように、アーム部17tと支持部78の第1ボルト穴78bとにわたってセットボルト79を装着することにより、上端側部17bがセットボルト79によって上昇姿勢に保持され、アンテナ72p、受信装置72及び測位ユニット8を上昇使用位置に保持できる。受信装置72及び測位ユニット8を下降格納位置にした場合、図27に示されるように、アーム部17tと支持部78の第2ボルト穴78cとにわたってセットボルト79を装着することにより、上端側部17bがセットボルト79によって下降姿勢に保持され、受信装置72及び測位ユニット8を下降格納位置に保持できる。
〔報知装置〕
制御ユニット30が実行する制御を報知する報知装置としてのボイスアラーム発生装置100は、図1,3,31に示されるように、発音部100aが運転部14に向かう状態で運転部14の前上方箇所に設けられている。ボイスアラーム発生装置100の下端は、運転座席16の上端、ステアリングホイール10の上端、エンジンボンネット2Bの上端よりも上方に位置している。本実施形態では、報知装置としてボイスアラーム発生装置100を採用しているが、これに限らない。たとえば、音や光によって報知を行う装置、あるいは、画像や文字によって報知を行う装置、など各種の報知装置の採用が可能である。
ボイスアラーム発生装置100は、図1,3,31に示されるように、測位ユニット8によって上方から覆われる状態で測位ユニット8の下方に設けられている。雨水や洗車水などがボイスアラーム発生装置100に上方からかかることが測位ユニット8によって防止される。
ボイスアラーム発生装置100は、図1に示されるように、予備苗支持フレーム17に支持されている。
具体的には、図1,31に示されるように、予備苗支持フレーム17における上端側部17bに、上端側部17bにおけるフレーム部17yに支持されて測位ユニット8が載置固定される載置台77が備えられている。載置台77から支持部材101が下向きに延ばされている。支持部材101の下部に形成されたボックス部101aの内部にボイスアラーム発生装置100が支持されている。ボイスアラーム発生装置100は、支持部材101及び載置台77を介し、予備苗支持フレーム17における上端側部17bに支持されている。
本実施形態では、ボイスアラーム発生装置100は、制御ユニット30によって制御され、図32に示されるボイスアラームを発生する。本実施形態では、ボイスアラーム発生装置100は、図32に示されるように、制御ユニット30が実行する制御を報知するボイスアラームを発生する他、自走車の走行に関する報知のためのボイスアラーム、苗植付装置3に関する報知のためのボイスアラームを発生する。尚、図32に示される[CH]は、チャンネルである。
旋回中、後進中、無人自動制御中に主変速レバー(ニュートラルへの操作、前後進操作)、植付部ダウン(作業者が自動運転中にアップした場合、最外周の各辺の始端部)ボイスアラームで報知し続ける。有人自動の場合は、経路の進行方向に対して、変速レバーを進行方向に操作させるボイスアラームを流す。自動運転の開示後から次の自動運転の開始までの間で、流れ(切り返しなどで)で一時的に前後進が入れ替わる(バックする)ときは、それに応じた主変速レバー操作をボイスアラームで求めない。無人自動の場合は、不意の主変速レバー中立以外への操作で、主変速レバー中立への操作をボイスアラームによって促す。苗切れ、肥料切れ(資材切れ)のときは、自動運転不可のままとする。このとき、ボイスアラーム発生装置100において、その状況を報知する。作業者に対応を促す。ボイスアラーム発生装置100においては、自動運転開始スイッチが入り操作されたときに異常がないかどうかチェックされる。異常がある場合、自動運転に入らないように牽制され、かつ、異常の解消方法、回避方法(手動作業を促す)が報知される。自動運転時は、動き出す前にボイスアラームによって報知する。その後、報知をやめて動き出す。または、報知とともに動く。報知手段として、ボイスアラーム発生装置100、積層灯71、センターマスコット20を採用する他、リモコン、スマートフォン、モバイルディバイス、バーチャル、作業機ライト、報知音、振動、を採用することが可能である。
運転部14の後方において、ホッパ25の上方、苗載せ台21の上部、手摺り76などにボイスアラーム発生装置100を設け、前進時には、前方のボイスアラーム発生装置100が作動し、後進時には、後方のボイスアラーム発生装置100が作動するよう構成してもよい。また、運転部14の前方、後方、左方、右方の計四方にボイスアラーム発生装置100を設けてもよい。ボイスアラーム発生装置100を、測位ユニット8のケース内に設けてもよい。また、ボイスアラーム発生装置100を専用ケースで囲ってもよく、その際に音声が周囲に十分伝達されるよう専用ケースに空洞部を設けてもよい。また、配線のしやすさを考慮し、ボイスアラーム発生装置100は、機体左右方向でバッテリ側の間に設けられても良い。ボイスアラーム発生装置100が故障したとき、リモコンに通知されるよう構成すると、好適である。
〔リモコン〕
この田植機には、図33に示されるリモコン90が備えられ、このリモコン90を用いて田植機を遠隔操縦することができる。このリモコン90は、7つのボタンと2つのインジケータを備えている。なお、本願明細書では、ボタンは広義に解釈されるべきであり、スイッチやキーなどの種々の操作体を含むものであり、さらにソフトウエアボタンやハードウエアボタンも含まれる。第1ボタン90aは、電源ON/OFFボタンである。第2ボタン90bは、単押し操作で自動走行モードを維持した状態で機体1を一時停止させる。さらに、第2ボタン90bは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を停止させ、自動走行モードを終了させる。その際、エンジンは停止させない。第3ボタン90cは、単押し操作で、機体1を加速させ、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を微速前進させる。第4ボタン90dは、単押し操作で、機体1を減速させ、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を微速後進させる。第5ボタン90eは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、自動走行を開始させる。第6ボタン90fは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、植付作業を開始させる。第1インジケータ90xは、バッテリ残量を示し、バッテリ残量が少なくなれば、表示色が緑から赤に変化する。第2インジケータ90yは、通信のON/OFFを示す。つまり、第2インジケータ90yは、リモコン90が操作されたことを示す。また、第2インジケータ90yは、リモコン90による操作が、田植機の制御系に受け付けられたことを示す表示を行うことも可能である。
ファンクションボタン90gとの同時押し操作で実現する各ボタンの機能は、各ボタンの長押し、あるいは2回押しでも実現するように構成してもよい。また、電源ボタンである第1ボタン90aによって機体1を停止させるように構成してもよい。機体1を自動走行モードのままで一時的に停止させる場合には、第2ボタン90bを単押し操作する。第2ボタン90bが長押しまたは2回押し操作で機体1を停止させ、自動走行モードを終了させてもよい。アイドリングストップのためのエンジン停止が行われ場合には、リモコン90のボタン操作でエンジンの再スタートが実現するようしてもよい。なお、ファンクションボタン90gと各ボタンとの同時押し操作で実現する機能と、各ボタンの機能と、各ボタンの単押し操作で実現する各ボタンの機能とは、入れ替えてもよい。なお、この実施形態では、リモコン90は7つのボタンと2つのインジケータとを備えていたが、それぞれの数は、任意に変更してもよい。
リモコン90のクレードル、あるいはリモコン90とデータ通信可能なコネクタが運転部14に設置されると、リモコン90が情報端末5や制御ユニット30とデータ交換可能となる。リモコン90のバッテリが充電可能な場合、クレードルを介して、充電できる。その際、クレードルが、リモコン90の装着時と非装着時とのいずれにおいても防水可能となるカバーを備えていると、田植機の洗車時に水被害を受けない。リモコン90と情報端末5との間でのデータ交換により、リモコン90の操作案内や操作結果をタッチパネル50に表示することができる。また、リモコン90と機体1との距離を管理し、当該距離が所定値を超えた場合、注意報知を行う機能を情報端末5、制御ユニット30、リモコン90の少なくとも1つに備えてもよい。同様に、情報端末5や制御ユニット30とリモコン90との間で通信不良が生じた場合に、注意報知を行う機能を情報端末5、制御ユニット30、リモコン90の少なくとも1つに備える。また、リモコン90に対する特定操作(実演モード操作など)により、田植機が予め設定されたシーケンシャルな動作を自律的に行うような構成を採用することも可能である。
リモコン90は種々の形態で構成することができる。例えば、携帯電話やタブレットコンピュータに相応なプログラムをインストールすることで、リモコン90として利用することも可能である。
〔情報端末〕
情報端末5は、運転座席16に着座した作業者(運転者や監視者などを含む)によって手動操作、視覚確認、音声確認できるように、運転部14に備えられている。情報端末5は、ネットワークコンピュータ機能を有する。図34に示されるように、ハウジング5Aにはタッチパネル50と、複数の操作キーからなるハードウエアボタン群5aとが組み込まれている。さらに、タッチパネル50にも実質的に同一の操作キーがソフトウエアボタン群50aとして表示される。タッチパネル50の表示内容、例えばマップ画面やルート画面を拡大キーの操作等により拡大した場合、ソフトウエアボタン群50aは消去されるが、ソフトウエアボタン群50aに対する操作は、ハードウエアボタン群5aにより代替可能である。このため、ソフトウエアボタン群50aとハードウエアボタン群5aとにおける各操作キーの位置が互いに対応している。作業者によるキー操作が要求される場合には、ソフトウエアボタン群50aのうちの対応する操作キーが点滅または点灯等で注意喚起される。その際、ハードウエアボタン群5aの操作キーでも有効な場合は、ハードウエアボタン群5aの対応する操作キーが点滅または点灯される。田植機は、基本的には野外での使用となるので、タッチパネル50に表示される文字は、可能な限り、白地に黒文字で表示される。
〔情報端末のグラフィックインターフェース〕
この田植機は、圃場における苗植付作業を自動走行で行うことができる。そのための必要となる情報は、情報端末5のタッチパネル50に表示される。この情報端末5には、タッチパネル50を通じて、作業者への情報表示及び作業者による操作入力を行うためのグラフィックインターフェースが備えられている。その際、タッチパネル50には田植機の走行状態を示すために田植機を模写したアイコンが表示される。この田植機は、有人での自動走行と無人での自動走行とを行うことができるので、それぞれの場合で、田植機アイコンの形状または色、あるいはその両方が変更される。作業者は、タッチパネル50の画面に表示される情報に案内されながら、種々の指令を入力する。自動作業走行では以下の処理、
(1)センサ・リモコンチェック処理、
(2)準備処理、
(3)マップ作成処理、
(4)ルート作成処理、
(5)作業走行設定処理、
(6)走行アシスト処理、
などが実施され、各処理のために必要な情報が情報端末5に表示される。
〔センサ・リモコンチェック処理〕
この田植機は、物体検出センサとして、4つの前ソナー61、2つの後ソナー62、2つの横ソナー63(これらの総称として、単にソナーSUが用いられる)が備えられている。このソナーSUに動作不良が生じていないかどうかをチェックするセンサチェックが適時に行われる。センサチェックでは、作業者が田植機の周囲を、疑似障害物となる反射体を持って歩く。ここでのソナーチェックは、ソナーSUに泥や水滴などの異物が付着することによる動作不良を見つけ出すことで、もし動作不良のソナーSUがあれば、作業者は付着した異物を除去する。
なお、物体検出センサには、ソナーSU以外に、レーザーセンサ、電磁波センサ、カメラセンサなどが含まれる。あるいは、2種類の物体検出センサを組み合わせてもよい。また、これらの物体検出センサを用いての、特にカメラセンサを用いての物体検出では、物体検出アルゴリズムとして機械学習を用いることが好都合である。従って、以下の説明は、ソナーSUに限定されるわけではなく、他の物体検出センサにも適用可能である。
このセンサチェックの制御を行うセンサチェック制御系が図35に示されている。このセンサチェックに用いられる機能要素は、制御ユニット30に組み込まれた機体位置算出部311、ソナーECU64に組み込まれた障害物検知部641、グラフィックディスプレイとしての情報端末5のタッチパネル50、情報端末5に組み込まれたセンサ管理部としてのソナー管理部51である。
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。障害物検知部641は、ソナーSUからの検出信号に基づいて障害物を検知する。ソナー管理部51はソナーの動作チェックを管理する。ソナー管理部51には、センサチェック実行部としてのソナーチェック実行部51aと有効性判定部51bが含まれている。ソナーチェック実行部51aは所定条件を満たした場合にソナーチェック処理を実行する。有効性判定部51bは、ソナーチェック処理を通じて全てのソナーSUの動作が確認されたことを示す動作確認フラグを記録(有効化)する。さらに、有効性判定部51bは、記録された動作確認フラグの維持(有効化)及び取り消し(無効化)を判定(有効性判定)する。
ソナーチェックにおける制御の流れの一例が、図36に示されている。この流れでは、田植機は、手動走行で圃場に向かい、圃場内では、自動走行で苗植付作業を行い、作業が終了すると、手動走行で圃場を離脱する。
最初に、田植機を起動させるため、メインスイッチがONにされる(#S01)。これにより、制御系の初期処理が行われ、有効性判定部51bは、動作確認フラグ(図36では単にフラグと記されている)に「0」をセットする(#S02)。ソナー管理部51は初期ソナーチェック要求指令(初期センサチェック要求指令)を出力し(#S03)、タッチパネル50の画面を通じて、ソナーチェックを実施するかどうかを、作業者に問う(#S04)。作業者がソナーチェックを行うことを指示すると(#S04Yes分岐)、ソナーチェック処理が実行される(#S05)。
ソナーチェック処理の流れは図37に示されている。まず、ソナー管理部51は、図38に示すような画面をタッチパネル50の画面に表示し、作業者が各ソナーSUの検出範囲内に疑似反射体を順次配置することを要請する(#C1)。この画面では、各ソナーの取付位置と各ソナーの検出範囲とが、実際に即して示されているので、作業者は、各ソナーの取付位置及び各ソナーの検出範囲を容易に把握することができる。作業者は、各ソナーSUから超音波を疑似反射体で反射させて、その反射波がソナーSUに受信されるように、疑似反射体の位置決め作業を始める(#C2)。図39に示すソナーチェック状態を示すチェック画面が表示され、ソナーSUが疑似反射体からの反射波を受信(確認)すると(#C3Yes分岐)、チェック画面における動作対象のソナー位置に第1視覚記号としての小さなチェック記号CI1が表示される(#C4)。同時に、音や光や振動で動作確認を報知デバイスを通じて報知してもよい。その際、音を用いる場合、ソナーSU毎に異なる音色を割り当てるとよい。光を用いる場合、積層灯や情報端末5を用いることができる。このソナーチェックの操作が、リモコン90や携帯電話によって行われる場合には、動作確認の報知のためにリモコンや携帯電話の振動機能を用いることができる。このような動作確認作業が各ソナーSUに対して順次行われる。
全てのソナーSUの動作が確認されると(#C5Yes分岐)、チェック画面における機体を示すイラスト内に第2視覚記号としての大きなチェック記号CI2が表示される(#C6)。このチェック記号CI2が表示されることで、作業者はソナーチェック処理が完了したことを把握する。このソナーチェック処理の完了の報知も、音や光や振動で行うことができる。全てのソナーSUの動作が確認されると、有効性判定部51bは、動作確認フラグ(図37では単にフラグと記されている)に「1」をセットする(#C7)。
個別のソナーSUの動作確認ごとに報知が行われるのではなく、全てのソナーSUの動作が確認されたときに、動作確認の報知が行われてもよい。
疑似反射体の位置決め作業として、作業者が疑似反射体を持って、田植機の周囲を一回りしてもよいし、運転部14で作業者が、疑似反射体を取り付けた釣り竿のような操作棒を操って、疑似反射体を一周させてもよい。また、ドローンに疑似反射体を取り付け、疑似反射体が田植機の周りを一周するように、ドローンを飛ばしてもよい。
図36の流れに戻ると、田植機が圃場の出入口に向かって手動走行すると、田植機が圃場の近傍に達しているかどうか、機体位置算出部311によって算出された機体位置に基づいてチェックされる(#S06)。なお、ステップ#S04で、作業者によってソナーチェックの実施がキャンセルされると(#S04No分岐)、ソナーチェック処理は行われずに、ステップ#S06にジャンプされる。機体位置が圃場の近傍に達していれば(#C6Yes分岐)、作業前ソナーチェック要求指令(作業前センサチェック要求指令)が出るので、最初に動作確認フラグが無効であるかどうか、つまり動作確認フラグに「0」がセットされているかどうかチェックされる(#S07)。動作確認フラグに「0」がセットされていれば(#S07Yes分岐)、自動走行を行う前にソナーチェックを完了させる必要があるので、ここで、再度、ソナー管理部51は、タッチパネル50の画面を通じて、ソナーチェックを実施するかどうかを、作業者に問う(#S08)。作業者がソナーチェックを行うことを指示すると(#S08Yes分岐)、ソナーチェック処理が実行される(#S09)。ソナーチェック処理が終了すると、走行モードが手動走行モードから自動走行モードに切り替えられるのを待つ(#S10)。ステップ#S07のチェックで、動作確認フラグに「1」がセットされている場合、あるいはステップ#S08で、作業者によって今回のソナーチェックの実施もキャンセルされると(#S08No分岐)、ソナーチェック処理は行われずに、ステップ#S10にジャンプされる。
走行モードが自動走行モードに切り替えられると(#S10Yes分岐)、動作確認フラグに「0」がセットされているかどうかチェックされる(#S11)。動作確認フラグに「0」がセットされていれば(#S11Yes分岐)、強制的にソナーチェック処理が実施される(#S12)。ソナーチェック処理が完了すると、自動作業走行が可能となる(#S13)。すでに田植機が起動してからこれまでの間にソナーチェック処理が実行されており、動作確認フラグに「1」がセットされている場合(#S11No分岐)、直ちに自動作業走行が可能となる(#S13)。
自動走行が開始されると、走行モードが自動走行モードから手動走行モードに切り換えられるかどうかがチェックされる(#S14)。走行モードが手動走行モードに切り換えられた場合(#S14Yes分岐)、自動走行の一時的な中断なのか、圃場作業の終了にともなう自動走行の終了なのかが、作業者に問われる(#S15)。自動走行の終了であれば(#S15終了分岐)、動作確認フラグに「0」がセットされ(#S16)、手動走行に移行する(#S17)。自動走行の中断であれば(#S15中断分岐)、動作確認フラグに「0」がセットされずに、そのまま、手動走行に移行する(#S17)。
手動走行に移行すると、走行モードが自動走行モードに切り換えられるかどうかのチェック(#S18)、及び田植機が圃場から離脱したかどうかのチェック(#S19)が行われる。自動走行モードに切り換えられると(#S18Yes分岐)、ステップ#S11にジャンプされ、動作確認フラグの状態がチェックされる。田植機が圃場から離脱すると(#S19Yes分岐)、動作確認フラグに「0」がセットされる(#S20)。さらに、田植機のメインスイッチがOFFされると(#S21Yes分岐)、このルーチンが終了する。
「1」にセット(有効化)した動作確認フラグの内容を「0」に置き換える動作確認フラグのリセット(無効化)は、上述した以外にも、設定された有効期限が切れることによっても行われてもよい。あるいは、夜中の自動走行以外では、動作確認フラグの有効化の日付が繰り上がったタイミング(日付が変わったタイミング)で、動作確認フラグの無効化が行われてもよい。また、圃場から離脱しない限りにおいて、1つの圃場で自動走行が行われている場合は、動作確認フラグの無効化が行われない設定、あるいは、予め決められた複数の圃場で自動走行が行われている場合は、動作確認フラグの無効化が行われない設定も、用意されると好都合である。
なお、図36での示されていないが、作業終了のための作業終了指令が与えられた場合には、動作確認フラグが取り消される(無効化)が、作業中断のための作業中断指令が与えられた場合には、動作確認フラグは維持される。
上述したソナーチェックとともに、リモコン90の動作チェックも行われる。なお、リモコン90の不使用が選択されると、このリモコンチェックは省略可能である。リモコンチェックの一例では、情報端末5のタッチパネル50に、順次リモコン90で操作すべきボタンが表示される。それに応じて、対応ボタンが操作されることで、動作チェックが進行する。全てのボタンの動作が確認されると、動作チェックが終了する。その際、ソナーチェックと同様に、各ボタンの動作完了の視覚記号や全ボタンの動作完了の視覚記号がタッチパネル50に表示されると好都合である。リモコン90の動作チェックが完了したことを示す動作確認フラグの無効化も、上述したソナーチェックにおける動作確認フラグの無効化を流用することができる。
自動走行の開始前に行われるチェック処理(ソナーチェック、リモコンチェック、積層灯チェック、ボイスアラームチェックなど)は、作業者の意思を確認して、キャンセルすることができるようにしてもよい。また、そのようなチェック処理のキャンセルは有人での自動走行に限定してもよい。
〔準備処理〕
準備処理では、図40に示す4つの注意喚起画面(それぞれに符号(a)、(b)、(c)、(d)が付与されている)が順次、表示される。(a)の画面は、機体1が許容範囲以上に傾斜する姿勢で、崖や水路に沿って自動走行を禁止する警告画面である。(b)の画面は、圃場の最外周に沿った苗植付作業を自動走行する場合には、必ず作業者が運転部14に乗り込んで、有人自動走行を行うことを要請する警告画面である。(c)の画面は、前回のマップを流用せずに、新たにマップ作成を行うことを要請する警告画面である。(d)の画面は、許容以上に変形した圃場や、圃場内部に走行障害物がある場合には、自動走行を禁止する警告画面である。各画面には「確認」ボタンが配置されており、「確認」ボタンを押すことにより次の画面が表示される。
これらの自動走行前の準備としての注意喚起画面は、自動走行モードが選択される毎に表示されるが、所定時間毎に、または日付が変わるごとに表示されるようにしてもよい。また、同じ作業者が自動走行を行う場合には、この注意喚起画面が、「確認」ボタンを押すことなしにアニメーション的に連続表示されるように構成してもよい。図40では、タッチパネル50に個別に表示される4つの注意喚起画面が示されていたが、これらの注意喚起画面は、任意に統合することができる。例えば、(a)の画面と(b)の画面とを統合して、1つの注意喚起画面としてもよい。
一般にタッチパネル50への情報表示とともに行われる各種処理は、「次」ボタンを押すことで次の処理に移行するが、この注意喚起画面を表示する処理では、全ての注意喚起画面の表示と「確認」ボタンの押し下げが行われるまで、「次」ボタンによる画面遷移が無効化されている。このため、作業者が全ての注意喚起画面を確認しない限り、次の処理に移行できない。ただし、同じ日の作業又は短時間の作業である場合や同じ作業者であることが判明した場合は、この「確認」操作を省略できる制御を入れても良い。
〔マップ選択処理〕
田植機におけるマップ選択処理について説明する。図41は、マップ選択処理における機能部を示す機能ブロック図である。図41に示されるように、本実施形態におけるマップ選択処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311が備えられ、情報端末5に、表示装置551(タッチパネル50)、マップ情報記憶部552、マップ情報表示部553、入力領域判定部554、入力位置情報算定部555、サムネイル表示部556、操作判定部557、面積算出部558、報知部559が備えられる。各機能部は、マップ選択に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
マップ情報記憶部552は、作業地の形状を示すマップ情報を、作業地の位置を示す位置情報とマップ情報が作成された時間を示す時間情報とに基づいて記憶する。作業地の形状とは、田植機が植え付け作業を行う圃場の形状であって、圃場の外形の形状にあたる。本実施形態では、このような圃場の外形の形状を示す情報は、マップ情報として扱われる。作業地の位置とは圃場の位置であって、圃場の外周部分の位置であっても良いし、圃場に田植機が出入りする出入口の位置であっても良い。更には、圃場の中央部分の位置であっても良い。また、マップ情報が作成された時間を示す時間情報とは、上述した位置情報が取得された時間を示すタイムスタンプであっても良いし、マップ情報がマップ情報記憶部552に記憶された時間を示すタイムスタンプであっても良い。マップ情報には、上述した圃場の位置を緯度情報、経度情報、及び高度情報等により規定した位置情報と共に、マップ情報が作成された時間を規定した時間情報とが含まれる。
表示装置551は表示画面を有する。本実施形態では表示装置551は情報端末5のタッチパネル50が相当する。本実施形態では、タッチパネル50が表示画面を兼ねる。このため、特に区別をしない場合には、表示画面をタッチパネル50として説明する。
マップ情報表示部553は、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報のうち、機体位置と位置情報と時間情報とに基づいて抽出したマップ情報を、タッチパネル50に表示させる。上述したように、マップ情報記憶部552にはマップ情報が記憶され、マップ情報には位置情報と時間情報とが含まれる。機体位置とは、機体位置算出部311により算出された実空間における機体1の位置であり、具体的には田植機の現在位置である。マップ情報表示部553は、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報の中から、田植機の現在位置を含む圃場の外形の形状を示すマップ情報であって、時間情報に基づいて最新のタイムスタンプを有するマップ情報を抽出し、当該抽出したマップ情報をタッチパネル50に表示させる。これにより、田植機が圃場内にいる場合には、自動で当該圃場の形状を示す最新のマップ情報をタッチパネル50に表示することが可能となる。
図42には、タッチパネル50に表示された田植機が現在存在する圃場に係るマップ情報が示される。理解を容易にするために、図42にあっては、マップ情報表示部553により表示されたマップ情報は、マップ情報5531として示される。また、図42には、マップ情報5531における田植機の現在位置に対応する位置に、田植機のイメージ画像560も示される。更に、図42には、マップ情報5531に対応する圃場に対して所定距離内にある圃場の形状を示すマップ情報5532も示される。マップ情報5532も、マップ情報表示部553がマップ情報記憶部552から抽出してタッチパネル50に表示すると好適である。
なお、田植機が圃場内に存在していない場合や、田植機の現在位置に応じたマップ情報がない場合には、田植機の現在位置に隣接する、あるいは近傍の圃場の形状を示すマップ情報をタッチパネル50に表示すると良い。
図42において、マップ情報5531は、イメージ画像560の下層(背面)に表示されている。すなわち、田植機はマップ情報5531に対応する圃場に存在している。係る場合、マップ情報5531を外縁部に沿って囲むように指標5533を設けると良い。また、図42では図示していないが、マップ情報5531が作成された日時を示す情報や、マップ情報5531に対応する圃場の面積をタッチパネル50に表示しても良い。
図41に戻り、入力領域判定部554は、表示画面に表示されたマップ情報において、利用者による操作入力が行われた入力領域を判定する。上述したように、本実施形態ではタッチパネル50にマップ情報が表示される。利用者とは作業者である。操作入力とは、本実施形態では、作業者がタッチパネル50に指で触れて行う入力が相当する。このため、入力領域とはタッチパネル50における作業者の指が触れた領域が相当する。したがって、入力領域判定部554は、タッチパネル50に表示されたマップ情報において、作業者がタッチパネル50に指で触れて行った入力時において、タッチパネル50における作業者の指が触れた領域を判定する。
入力位置情報算定部555は、入力領域判定部554により判定された入力領域に応じたマップ情報における位置情報を入力位置情報として算定する。入力領域判定部554により判定された入力領域とは、マップ情報が表示されているタッチパネル50に作業者が指で触れて入力を行った際に、タッチパネル50における作業者の指が触れた領域である。一方、マップ情報は、圃場の形状を示す情報であって、マップ情報上の座標と圃場の位置情報との間には互いに相関がある。そこで、入力位置情報算定部555は、タッチパネル50に表示されるマップ情報における作業者の指が触れた領域に対応する圃場の位置を算定する。この位置を示す情報である位置情報が入力位置情報に相当する。
サムネイル表示部556は、入力位置情報に基づいて、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報を抽出してタッチパネル50にサムネイルで表示させる。入力位置情報は、入力位置情報算定部555により算定され、伝達される。サムネイル表示部556は、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報の中から、伝達された入力位置情報により示される位置を含む圃場のマップ情報を抽出する。タッチパネル50にサムネイルで表示させるとは、タッチパネル50に縮小して表示することを意味する。ここでは、マップ情報表示部553により表示されたマップ情報よりも縮小して表示する。したがって、サムネイル表示部556は、マップ情報記憶部552から抽出したマップ情報を、マップ情報表示部553により表示されたマップ情報よりも縮小してタッチパネル50に表示させる。この時、タッチパネル50には、マップ情報表示部553により表示されたマップ情報と共に、サムネイル表示部556により抽出された、互いに時間情報が異なる複数のマップ情報が表示される。
換言すれば、マップ情報記憶部552には、時間情報毎に複数のマップ情報が積層状態で記憶され(レイヤー記憶され)、サムネイル表示部556は入力位置情報算定部555により算定された入力位置情報に基づいてレイヤー記憶されたマップ情報(複数のマップ情報)をサムネイルで表示させる。
この時、選択された圃場(入力位置情報算定部555により算定された入力位置情報に基づく圃場)と少なくとも一部が重複する(積層部分を有する)マップ情報を全て表示するように構成しても良い。
図43には、作業者が、田植機が存在する圃場とは異なる圃場の形状を示すマップ情報5532を選択した場合の例が示される。この場合、選択されたマップ情報5532の外周部が指標5533で囲まれ、マップ情報5532が選択されたことが明示される。更に、このマップ情報5532に対してレイヤー記憶されたマップ情報5534,5535,5536がサムネイルで表示されている。
この時、サムネイル表示部556は、サムネイルで表示されるマップ情報に基づく作業地において行われた作業の情報を示す作業情報も表示すると好適である。マップ情報に基づく作業地において行われた作業の情報とは、タッチパネル50に表示されるマップ情報に対応する圃場において田植機が過去に行った植え付け作業の内容を示す情報である。具体的には、植え付け作業を行った日時や、作業条件等が相当する。したがって、サムネイル表示部556は、タッチパネル50に縮小表示されるマップ情報と共に、当該マップ情報に対応する圃場において過去に行った植え付け作業の日時や作業条件等を表示する。これにより、例えば作業者がサムネイル表示されたマップ情報に関心がある場合には、当該マップ情報に触れることで、マップ情報記憶部552から抽出したマップ情報を、作業者が触れたマップ情報に置き換えて大きく表示することが可能となる。
図43には、このようなサムネイルで表示されるマップ情報の作業情報を表示した例も示される。すなわち、サムネイルでマップ情報が表示された状態でカーソル5537を操作して、マップ情報5534を選択すると、マップ情報5534が作成された日時を示す情報と、マップ情報5534に対応する圃場の面積とがタッチパネル50に表示される(図43にあっては不図示)。もちろん、カーソル5537による操作に代えて、直接マップ情報5534を指で触れて操作しても良い。
また、サムネイル表示部556は、タッチパネル50に縮小表示されるマップ情報と共に、圃場名や圃場面積(尺貫法等各国独自の単位を利用)や、圃場周辺の画像を表示しても良い。更には、前回の作業を行った作業者名や作業時間等を表示しても良い。
ここで、作業者がタッチパネル50に対して操作入力を行った場合、図44に示されるように、複数のマップ情報5538,5539に亘って作業者の指が触れることがある。本実施形態では、このような場合に、どのマップ情報が選択されたのかを適切に判定し、タッチパネル50に表示することができるように構成されている。以下、これについて説明する。
図41に戻り、操作判定部557は、タッチパネル50に複数のマップ情報が表示されている状態において、入力領域が少なくとも2以上のマップ情報に亘っているか否かを判定する。タッチパネル50に複数のマップ情報が表示されているとは、例えば図44のような場合である。入力領域は、上述した入力領域判定部554により判定され、タッチパネル50において作業者による操作入力が行われた領域である。操作判定部557は、このような操作入力が、少なくとも2つ以上のマップ情報に亘っているか否か、すなわち、タッチパネル50において作業者が触れた領域が、複数のマップ情報と重複しているか否かを判定する。
面積算出部558は、入力領域が少なくとも2以上のマップ情報に亘っていた場合に、夫々のマップ情報における入力領域の面積を算出する。入力領域が少なくとも2以上のマップ情報に亘っていることは、上述した操作判定部557の判定結果が面積算出部558に伝達されることで特定可能である。夫々のマップ情報における入力領域とは、タッチパネル50において作業者が触れた領域が複数のマップ情報と重複している場合において、マップ情報毎の作業者が触れた領域にあたる。したがって、面積算出部558は、タッチパネル50において作業者が触れた領域が複数のマップ情報と重複している場合には、マップ情報毎に、作業者が触れた領域の面積を算出する。
具体的には、図44のような、作業者による操作入力に係る入力領域5540と、当該入力領域5540の下層(背面)にあるマップ情報5538とが互いに重複する領域5541の面積を算出し、作業者による操作入力に係る入力領域5540と、当該入力領域5540の下層(背面)にあるマップ情報5539とが互いに重複する領域5542の面積を算出する。
係る場合、入力領域判定部554は、少なくとも2以上のマップ情報のうち、面積が最も広い入力領域のマップ情報を、操作入力が行われたマップ情報であるとする。すなわち、面積算出部558により算出された複数のマップ情報の夫々の面積において、最大の面積を有するマップ情報に対して、作業者が操作入力を行ったものとして判定する。図44の例では、領域5541の面積と領域5542の面積とを比較し、広い方の面積の領域5541を有するマップ情報5538に対して、操作入力が行われたと判定する。これにより、作業者が誤って複数のマップ情報に亘って操作入力を行った場合であっても、作業者による操作入力を適切に検出することが可能となる。
ここで、タッチパネル50には、上述したようにマップ情報表示部553によるマップ情報と、サムネイル表示部556による縮小されたマップ情報とが表示されることがある。また、図44のようにマップ情報表示部553によるマップ情報が複数表示されることもある。係る場合、複数のマップ情報の中に現在よりもかなり以前に作成されたマップ情報がある場合には、このようなマップ情報を植え付け作業の際に作業者が参考にすると情報が古すぎて支障をきたす可能性がある。
そこで、報知部559が、タッチパネル50に表示されるマップ情報に関する時間情報に基づいて、当該マップ情報が作成されてからの経過時間を算定し、当該経過時間に応じて当該マップ情報の再作成を報知するように構成すると好適である。マップ情報に関する時間情報とは、マップ情報が作成された日時を示すタイムスタンプである。マップ情報が作成されてからの経過時間とは、マップ情報が作成された時から現在に至るまでの時間である。マップ情報の再作成とは、マップ情報を作り直すことである。したがって、報知部559は、タッチパネル50に表示されるマップ情報が作成された日時を示すタイムスタンプを参照し、当該マップ情報が作成されてから現在に至るまでの時間を算定する。算定された時間が、予め設定された時間(例えば3カ月)よりも長い場合には、報知部559は、マップ情報の作り直しを促すように報知すると良い。この報知は、タッチパネル50に表示して行っても良いし、音声で行っても良い。これにより、圃場の変化のリスクを通知することが可能となる。更に、予め設定された時間(例えば3カ月)よりも長い時間(例えば1年)が経過している場合には、圃場変化のリスクを予め設定された時間(例えば3カ月)の場合よりも強く通知し(警告し)、マップ情報の再作成をより強く促すと好適である。
また、報知部559は、作業地においてこれまでに起こった災害を示す災害情報を取得し、災害情報とタッチパネル50に表示されるマップ情報に関する時間情報とに基づいて、当該マップ情報の作成後に当該マップ情報に基づく作業地において被災していると判定された場合には、当該マップ情報の再作成を報知するように構成しても良い。作業地においてこれまでに起こった災害とは、特に前回の作業後に発生した災害であって、例えば地震や、台風、風水害等が相当する。このような災害の発生状況については、例えば管理サーバやWEB等によって当該災害の種別と発生した日時に関する情報を含む災害情報を取得することが可能である。報知部559は、災害情報とタッチパネル50に表示されるマップ情報が作成された日時を示すタイムスタンプとを参照し、当該マップ情報が作成されてから現在に至るまでの間に、マップ情報により示される作業地において災害が発生したか否か、すなわち、作業地が被災したか否かを判定する。マップ情報が作成されてから現在に至るまでの間に、作業地において災害が発生していた場合には、報知部559は、マップ情報の作り直しを促すように報知すると良い。この報知は、タッチパネル50に表示して行っても良いし、音声で行っても良い。
また、例えばマップ情報が作成されてから現在に至るまでの間に、マップ情報の管理者や、作業地の管理者や、作業者の管理者が変更になっている場合にも、報知部559は、マップ情報の作り直しを促すように報知するように構成しても良い。係る場合、マップ情報に、マップ情報の管理者や、作業地の管理者や、作業者の管理者等を識別可能な情報を含ませておくと良い。
上記実施形態では、表示画面がタッチパネル50であるとして説明したが、表示画面はタッチパネル50でなくても良い。係る場合、作業者による操作入力は、例えばカーソルをタッチパッド等で操作して入力することが可能である。
上記実施形態では、入力領域判定部554は、作業者による入力領域が複数に亘っている場合に面積が最も広い入力領域のマップ情報を、作業者による操作入力が行われたマップ情報とするとして説明した。しかしながら、面積に関わらず、最初に触れた領域(位置)のマップ情報を、作業者による操作入力が行われたマップ情報とするとして構成しても良いし、複数のマップ情報のうち、最新のマップ情報を、作業者による操作入力が行われたマップ情報とするとして構成しても良い。また、入力領域を中心に、所定範囲内にある作業地を全て選択候補として作業者に選択させるように構成しても良い。更には、マップ情報に当該マップ情報の使用頻度を示す使用頻度情報を含ませ、使用頻度の高いマップ情報をサムネイルで表示されるマップ情報のうち、最上段に位置するように表示しても良い。
上記実施形態では、サムネイル表示部556が、サムネイルで表示されるマップ情報に基づく作業地において行われた作業の情報を示す作業情報も表示するとして説明したが、当該作業情報を表示しないように構成しても良い。
上記実施形態では、報知部559が、マップ情報が作成されてからの経過時間に応じて当該マップ情報の再作成を報知するとして説明したが、報知部559はマップ情報の再作成を報知しないように構成することも可能である。また、経過時間の算定は報知部559とは異なる機能部が行うように構成することも可能である。
上記実施形態では、報知部559が、マップ情報に基づく作業地において被災していると判定された場合に、マップ情報の再作成を報知するとして説明したが、作業地が被災している場合であっても報知部559はマップ情報の再作成を報知しないように構成することも可能である。
上記タッチパネル50に表示されるマップ情報には、圃場情報を追加できるように構成しても良い。この圃場情報の追加は、例えばスマートフォンや、情報端末5、管理サーバ、リモコン、音声入力により行うように構成することが可能である。また、マップ情報の並べ替えは、圃場情報の各項目(日時、圃場面積、圃場名、ユーザーキー等)で行えるように構成すると好適である。
上記実施形態ではマップ情報記憶部552にマップ情報が記憶されているとして説明したが、マップ情報はタッチパネル50を介して作業者が削除できるように構成することも可能である。係る場合、マップ情報の作成時の機体位置の検出精度(GPS感度)が悪かった場合や区画整理等を行って圃場形状が変更になった場合に対応可能となる。
また、マップ情報記憶部552に記憶されている複数のマップ情報は、一つのマップ情報として統合することができるように構成すると好適である。これにより、重複するマップ情報を統合して取り扱いを容易に行うことが可能となる。また、区画整理等により圃場形状が変更されている場合であっても、マップ情報の取得し直すことが不要となる。更には、作業に利用する資材の補給箇所が限定されている場合において実質的に一つの圃場として管理する必要がある場合であっても容易に対応できる。
〔圃場形状取得処理〕
田植機における圃場形状取得処理について説明する。図45は、圃場形状取得処理における機能部を示すブロック図である。図45に示されるように、本実施形態における圃場形状取得処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311が備えられ、情報端末5に、表示装置551(タッチパネル50)、位置情報算定部571、マップ情報作成部572、走行経路生成部573が備えられる。各機能部は、圃場形状取得に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
位置情報算定部571は、作業地の外周に沿って区切られた複数の領域の夫々を走行する際に、一つの領域における走行開始時は、機体位置と機体1における外周側の後方側端部の位置とに基づいて位置情報を算定する。作業地の外周とは、田植機が植え付け作業を行う圃場の外周部分であって、圃場を区画する畦の内周部分にあたる。作業地の外周に沿って区切られた複数の領域とは、例えば圃場の外形が多角形状である場合には、多角形の各辺が相当する。また、圃場の外形が少なくとも円弧状部を有する場合には、当該円弧状部を一つの領域として、複数の領域に区分けしても良い。もちろん、外形が多角形状である場合にも、一つの辺を分割して複数の領域に区分けしても良い。
以下では、理解を容易にするために、図46に示されるような圃場の外形が四角形であって、各辺が一つの領域を構成しているとして説明する。したがって、作業地の外周に沿って区切られた複数の領域とは、四角形状の外形を有する圃場の4つの辺が相当する。以下では、これらの4つの辺を、夫々、外周部分591−594として説明する。
一つの領域における走行開始時とは、田植機が、外周部分591−594の夫々において、走行を開始する時である。機体位置とは、田植機の位置であって、上述した機体位置算出部311により算出される。機体1における外周側の後方側端部の位置とは、図46の圃場の外周部分591−594の夫々を、反時計回りに走行する場合には、右側の摺動板ガード3Bが相当し、時計回りに走行する場合には、左側の摺動板ガード3Bが相当する。したがって、位置情報算定部571は、圃場の外周部分591−594の夫々において、走行を開始する時は、機体位置算出部311により算出された田植機の位置と、摺動板ガード3Bの位置とに基づいて、位置情報を算定する。
具体的には、位置情報算定部571は、測位ユニット8の位置と摺動板ガード3Bの位置との偏差を予め記憶しておき、田植機が圃場を走行する方向(反時計回り又は時計回り)に応じて、測位ユニット8から当該走行する方向に対応した摺動板ガード3Bとの偏差を機体位置に対して加算又は減算して位置情報を算定すると良い。
また、位置情報算定部571は、一つの領域における走行終了時は、機体位置と機体1における外周側の前方側端部の位置とに基づいて位置情報を算定する。一つの領域における走行終了時とは、田植機が、外周部分591−594の夫々において、走行を終了する時である。機体1における外周側の前方側端部の位置とは、図46の圃場の外周部分591−594の夫々を、反時計回りに走行する場合には、右側の予備苗収納装置17A(右側の予備苗収納装置17Aの右側端部)が相当し、時計回りに走行する場合には、左側の予備苗収納装置17A(左側の予備苗収納装置17Aの左側端部)が相当する。したがって、位置情報算定部571は、圃場の外周部分591−594の夫々において、走行を終了する時は、機体位置算出部311により算出された田植機の位置と、予備苗収納装置17Aの位置とに基づいて、位置情報を算定する。
具体的には、位置情報算定部571は、測位ユニット8の位置と予備苗収納装置17Aの位置との偏差を予め記憶しておき、田植機が圃場を走行する方向(反時計回り又は時計回り)に応じて、測位ユニット8から当該走行する方向に対応した予備苗収納装置17Aとの偏差を機体位置に対して加算又は減算して位置情報を算定すると良い。
ここで、田植機には、機体1に対して昇降自在に、対地作業を行う作業ユニットが設けられる。対地作業を行う作業ユニットとは、苗植付装置3である。係る場合、位置情報算定部571は、上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされた時点を走行開始時とし、下降状態にある苗植付装置3が上昇位置に戻された時点を走行終了時とすると好適である。上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされた時点とは、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面(圃場面)に対して苗の植付ができるように植付面に近づけられ、整地フロート15が接地した時点である。このような苗植付装置3の下降は、整地フロート15にセンサを設けて検出することも可能であるし、苗植付装置3の昇降操作を行う作業操作レバー11の位置を検出して行うことも可能である。
また、下降状態にある苗植付装置3が上昇位置に戻された時点とは、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面から遠ざけられ、整地フロート15が植付面から離間した時点である。このような苗植付装置3の上昇も、整地フロート15にセンサを設けて検出することも可能であるし、苗植付装置3の昇降操作を行う作業操作レバー11の位置を検出して行うことも可能である。
このように、位置情報算定部571は、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面に対して苗の植付ができるように植付面に近づけられ、整地フロート15が接地した時点を走行開始時とし、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面から遠ざけられ、整地フロート15が植付面から離間した時点を走行終了時とすることで、位置情報の算定を適切に行うことが可能となる。
なお、植付機構22が下降(整地フロート15が接地)しないと位置情報算定部571が位置情報の算定をすることができないように構成することも可能である。また、位置情報算定部571による算定の開始や終了は、整地フロート15の接地以外に、他の条件や複数の条件を組み合わせて判定するように構成しても良い(例えば、植付クラッチの入り切りや、マーカ作用位置や、リンクセンサや、ロータの入り切り等)。
ここで、例えば外周部分591を反時計回りに走行する際、外周部分591と外周部分592との交点近傍に差し掛かった際、機体1が走行と停止とを繰り返しながら走行する(機体位置を微調整しながら走行する)ことがある。係る場合、苗植付装置3の植付機構22も上昇と下降とが繰り返されることもあり得る。上述したように、位置情報算定部571は、上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされた時点を走行開始時とし、下降状態にある苗植付装置3が上昇位置に戻された時点を走行終了時とする。しかしながら、上記のように微調整をしながら走行した場合、例えば外周部分591の走行中に意図しない走行開始時の位置と走行終了時の位置とが複数検出される可能性がある。
そこで、位置情報算定部571は、前回の走行開始時の位置から次の走行開始時の位置までの間における機体1の移動距離が、予め設定された距離以下である場合には、前回の走行開始時の位置を無効とすると良い。すなわち、上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされてから、上昇位置に戻され、更に上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされるまでの間に田植機が走行した移動距離が、予め設定された距離(例えば数十cm)以下である場合には、微調整をしながらの走行の可能性が高いことから、前回の走行開始時の位置を無効とすると良い。なお、係る場合、前回の走行開始時の前に、苗植付装置3が上昇位置に戻されたことによる走行終了時の位置も無効とすると良い。
具体的には、図47に示されるような、T=1において上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされてから、T=2において上昇位置に戻され、更にT=3において上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされるまで田植機が走行した場合には、移動距離5991が予め設定された距離(例えば数十cm)より大きいことから、T=1における前回の走行開始時の位置を無効としない。一方、T=3において上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされてから、T=4において上昇位置に戻され、外周部分592を走行すべく、更にT=5において上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされるまでの間に田植機が走行した場合には、移動距離5992が予め設定された距離(例えば数十cm)以下であることから、T=3における前回の走行開始時の位置を無効とする。この時、無効としたT=3の直前のT=2において苗植付装置3が上昇位置に戻されたことによる走行終了時の位置も無効とすると良い。
また、位置情報算定部571は、一つの領域において走行を開始してから終了するまでの間は、機体1の重心位置595から機体1の幅方向に沿って仮想的に延長した第1線596と、機体1における機体1の幅方向に沿って最も突出した突出部から機体1の長さ方向に沿って仮想的に延長した第2線597とが交差する位置に基づいて位置情報を算定すると良い。一つの領域において走行を開始してから終了するまでの間とは、圃場の外周部分591−594の夫々について、走行を開始してから終了するまでに間である。機体1の重心位置595から機体1の幅方向に沿って仮想的に延長した第1線596とは、図48において、機体1の重心となる位置(重心位置595)から、機体1の幅方向である左右方向に平行に延長した線が相当する。機体1における機体1の幅方向に沿って最も突出した突出部とは、機体1において、機体1の幅方向である左右方向に沿って最も突出している部位が相当する。本実施形態では、図48に示されるように、摺動板ガード3Bが相当する。このため、機体1における機体1の幅方向に沿って最も突出した突出部から機体1の長さ方向に沿って仮想的に延長した第2線597とは、図48において、摺動板ガード3Bから、機体1の長さ方向である前後方向に平行に延長した線が相当する。
したがって、田植機が反時計回りに圃場の外周を走行する場合には、位置情報算定部571は、第1線596と右側の摺動板ガード3Bを基準に設定された第2線597との交点598Rの位置に基づいて位置情報を算定し、田植機が時計回りに圃場の外周を走行する場合には、位置情報算定部571は、第1線596と左側の摺動板ガード3Bを基準に設定された第2線597との交点598Lの位置に基づいて位置情報を算定する。なお、本実施形態では、第2線597が摺動板ガード3Bを基準に設定されているとしているが、摺動板ガード3Bに代えて、GPSアンテナから左右端を基準に設定しても良いし、前後輪等を基準にして設定しても良い。
図45に戻り、マップ情報作成部572は、位置情報に基づいて、作業地の形状を示すマップ情報を作成する。位置情報は、上述した位置情報算定部571により算定され、マップ情報作成部572に伝達される。作業地の形状を示すマップ情報とは、田植機が圃場の外周を走行して取得した位置情報により示される緯度情報及び経度情報からなる座標を連続的に繋いだ圃場の形状を示すマップにあたる。したがって、マップ情報作成部572は、位置情報算定部571により算定された位置情報により示される緯度情報及び経度情報からなる座標を連続的に繋いだ圃場の形状を示すマップを作成する。このようなマップ情報の作成は、公知の方法を利用して作成可能であるので、説明は省略する。なお、ここでは、作成途中のマップ情報も、単にマップ情報として説明する。
ここで、マップ情報作成部572がマップ情報を作成する際、タッチパネル50に作成状況を表示するように構成することも可能である。例えば、タッチパネル50において、マップ情報により示される圃場の形状を複数の指標を用いて明示するように構成することが可能である。指標とは表示画面に表示されるマーカである。したがって、マップ情報作成部572は、位置情報算定部571により算定された位置情報により示される座標に対応するように、タッチパネル50においてマーカを付すように構成することが可能である。
係る場合、表示画面において、走行開始時の位置と走行終了時の位置とが、走行開始時の位置及び走行終了時の位置以外の位置を示す指標と異なる指標で表示されるように構成すると好適である。これにより、表示画面を見た作業者に、走行開始時と走行終了時の双方の位置と、走行を開始してから走行を終了するまでの間における位置とを、直感的に把握させることが可能となる。
更には、表示画面において、走行開始時の位置と走行終了時の位置とが互いに異なる指標で表示されるように構成することも可能である。これにより、表示画面を見た作業者に、走行開始時の位置と走行終了時の位置とについても、直感的に把握させることが可能となる。
ここで、上述したようにマップ情報作成部572は、位置情報算定部571により算定された位置情報を用いてマップ情報を作成し、位置情報算定部571は、機体位置算出部311により算出された機体位置に基づき位置情報を算定する。マップ情報作成部572及び位置情報算定部571に対して、機体位置算出部311から機体位置が伝達されてくるが、マップ情報作成部572及び位置情報算定部571が、夫々、全ての機体位置を用いてマップ情報及び位置情報を作成すると、データ量が増大する可能性がある。
そこで、マップ情報作成部572は、位置情報算定部571により算定された位置情報のうち、マップ情報作成部572に伝達された位置情報のみを用いてマップ情報を作成すると好適である。これにより、機体位置算出部311から機体位置を位置情報算定部571が間引いて位置情報を算定し、当該間引いて作成した位置情報によりマップ情報を作成することができるので、データ量の増大を抑制することが可能となる。
また、マップ情報作成部572は、マップ情報に係るデータの量が予め設定された値以上になった場合に、作業地の形状の変化量が小さい部分に対応するデータを削除し、表示画面に当該削除したデータに対応する指標を他の指標と識別可能に明示すると好適である。マップ情報に係るデータの量が予め設定された値以上になった場合とは、マップ情報作成部572により作成されたマップ情報のデータ量が予め設定された値以上になった場合を意味する。作業地の形状の変化量が小さい部分とは、圃場の外形形状において、直線状である部分や、一定の曲率を有する円弧状の部分や、一定の変化率で変化する部分である。したがって、マップ情報作成部572は、マップ情報作成部572により作成されたマップ情報のデータ量が予め設定された値以上になった場合に、圃場の外形形状において、直線状である部分や、一定の曲率を有する円弧状の部分や、一定の変化率で変化する部分を示すデータを削除する。これにより、データ量の増大を抑制することが可能となる。また、データを削除した場合でも、タッチパネル50に表示される圃場の外形を示す指標そのものは削除せず、データを削除していない指標とは異なる指標で形状を示すと良い。これにより、作業者がタッチパネル50における圃場の形状を見た場合に、データが削除されているか否かを直感的に把握することが可能となる。なお、データを削除する場合には、取得済みのものから距離や角度変化が最も小さいものから順に削除するように構成しても良い。
上記構成により、田植機が圃場の外周を走行することで、マップ情報を作成することが可能となる。田植機は、このマップ情報に基づき苗植付作業を行うが、この際、走行経路生成部573により走行経路が生成される。この時、走行経路生成部573は、外周に沿って圃場を走行する際に、マップ情報により示される圃場の外周部に対して、圃場の中央側にオフセットした位置を基準として苗植付作業を行う際の走行経路を生成すると良い。すなわち、田植機が圃場において苗植付作業を行う際に走行する走行経路は、マップ情報により規定される外形よりも中央側に所定距離だけオフセットした位置を外形として苗植付作業を行うと良い。なお、走行経路生成部573は、後述する往復経路作成部522及び周回経路作成部524を含む。
また、田植機は、圃場の外周領域において苗植付作業を行う場合は、マップ情報を作成する際における機体速度と同じ速度で走行すると好適である。このため、マップ情報の作成時に、当該作成時の機体速度を記憶しておくと良い。これにより、マップ情報の作成時(空走り時)と圃場の外周部分における苗植付作業時(例えば、最終段階で行う圃場の周り植え時)とで機体速度を同じ速度にすることで、所期の位置(経路)から逸脱することなく、適切に苗植付作業を行うことが可能となる。
次に、タッチパネル50に表示される画像を用いて説明する。圃場形状の取得を行う際に、まず、図49のように作業者に対して確認事項(注意事項)の表示を行うと良い。具体的には、図49の(A)のような、圃場における開始点と終了点との設定に関する注意事項の表示、図49の(B)のような、走行に関する注意事項の表示、図49の(C)のような、圃場における走行方向に関する注意事項の表示を行うと良い。また、夫々の表示にあっては、注意事項と共に「確認」ボタンを表示し、作業者の押下を待って次の表示を行うようにすると良い。
注意事項の確認が終了し、田植機が上述した開始点への移動が完了すると、図50のように、作業者による「開始」ボタンの押下待ち状態とする表示を行うと良い。この時、作業者に田植機の右側が基準となっているか、あるいは左側が基準となっているかを示すサブ画像581を表示すると良い。図50では、サブ画像581に示される田植機の後方左端部に指標5811を付し、田植機の左側が基準になっていることを示している。
走行を開始すると、図51に示されるように、走行に応じてマップ情報が作成される。なお、この時、作成が完了した際に作業者が押下する「測位完了」ボタンや、作成を中断する「中断」ボタンを表示すると良い。また、田植機の右側が基準となっていることを示すサブ画像581及び指標5811も表示すると良い。
また、走行中は、図52に示されるように、第1線596と第2線597との交点598Lに基づいて指標が付され、圃場の一つの辺の測位が終了する時には、左側の予備苗収納装置17A(左側の予備苗収納装置17Aの左側端部)の位置に基づき指標が付される。次の外周部分の走行を行う場合には、図53に示されるように、後方左端部を基準に指標が付される。なお、図53に示されるように、先に走行した外周部分における終了時の位置と、次に走行した外周部分における開始時の位置の夫々には、他の指標と異なる指標を付すと良い。図54には、更に継続して走行して指標を付していった場合の表示が示される。このような指標を連続的に繋いで圃場の形状を示すマップ情報が作成される。
上記実施形態では、圃場の外周部分を走行してマップ情報を作成することについて説明したが、圃場の外周部分を植付しながらマップ情報の作成を行っても良い。係る場合、多少の苗の踏み付けが生じる可能性があるが、効率良く苗植付作業とマップ情報の作成を行うことが可能となる。
上記実施形態では、位置情報算定部571は、圃場の外周に沿って区切られた複数の領域毎に走行して、位置情報を算定するとして説明したが、例えば田植機が旋回中にあっては、旋回中心のみ位置情報を算定し、旋回開始前及び旋回終了後の位置情報を仮想的に繋いだ交点を圃場の角部としてみなしても良い。これにより、マップ情報を簡便に作成することが可能となる。
また、位置情報の算定中は、機体1の左右双方について算定し、左右のどちらの位置情報を採用するかについて切り替え可能に構成することも可能である。また、機体1の複数の位置(GPSアンテナ、前後輪、重心から左右端等)に基づいて算定した位置情報のうち、最もブレが少ない(誤差が少ない)ものを採用しても良い。
また、所謂倣い走行時も位置情報を算定するように構成しても良いし、一つの領域から他の領域に移行する際(切り返し旋回の際)も倣い制御を行っても良い。
作成されたマップ情報において、閉じられていない領域がある場合には、端点同士を繋ぐことでマップ情報を完成させることも可能である。また、閉じられていない領域がある場合には、機体1の情報(大きさ、位置、方位等)から圃場の形状を推定して圃場マップを完成させるように構成することも可能であるし、マップ情報の走行開始時の位置と走行終了時の位置との間で圃場の形状を補って完成させるように構成することも可能である。
〔ルート作成処理〕
自動走行の目標となる走行経路(ルート)は、圃場の内部領域IAの苗植付作業を行うための内部往復経路IPLと、圃場の外周領域OAの苗植付作業を行うための周回経路と、出入口Eの近傍に設定される誘導開始可能エリアGAから内部往復経路IPLの開始点(作業開始点)Sへの移動ための開始点誘導経路とからなる。なお、圃場の外周領域OAは周回経路に沿った走行によって苗植付作業が行われる領域であり、内部領域IAは、外周領域OAの内部に残される領域である。ここでの、ルート作成処理には、往復経路作成処理と、苗補給経路作成処理、周回経路作成処理と、開始点誘導経路作成処理とが含まれている。
ルート作成に関する各種処理のために必要な機能部は、図55に示されているように、情報端末5に構築されている。この情報端末5は、機体位置算出部311、走行制御部312、作業制御部313などの機能部を構築している制御ユニット30と車載LANなどの通信線を通じて接続している。制御ユニット30は、走行機器1Dや作業装置1Cとも接続している。情報端末5に構築されている機能部は、基準辺設定部521、往復経路作成部522、走行方向決定部523、補給辺設定部531、補給制御管理部532、周回経路作成部524、運転形態管理部525、開始点設定部541、開始点誘導経路作成部542である。
基準辺設定部521は、作業機の作業地である農場(圃場等)の外形の一辺を基準辺として設定する。往復経路作成部522は、基準辺に対して所定の方向で延びる複数の直進経路を含む内部往復経路IPLを作成する。走行方向決定部523は、内部往復経路IPLにおける走行方向を設定する。補給辺設定部531は、農場の外形の特定辺を作業機が消費する資材の資材補給辺として設定する。補給制御管理部532は、資材補給辺に向かって走行している内部往復経路IPLの直進経路の終端領域から、またはその次に走行する直進経路の始端領域から、あるいはその両方の領域から作業機を資材補給辺に寄せ付けるための補給走行制御を走行制御部312と連係して管理する。周回経路作成部524は、農場の外形を算出するために圃場の境界線に沿って走行する外形算出走行における走行軌跡に基づいて、農場の外周領域に少なくとも1本以上の周回経路を作成する。運転形態管理部525は、周回経路の運転形態として、有人自動走行、無人自動走行、手動走行からの選択を可能にする。開始点設定部541は、内部往復経路IPLを用いた作業走行の開始点Sを設定する。開始点誘導経路作成部542は、誘導条件を満たした作業機を開始点Sへ自動的に誘導するための開始点誘導経路SGLを作成する。
ルート作成に関する機能部を実現するプログラムは、上述したように、情報端末5にインストールされている。各種処理は、情報端末5のタッチパネル50の画面に表示される内容と、タッチパネル50に対する操作によって進行する。
内部領域IAでのルート作成では、図56に示すように、植付の基準辺の選択、及び、植付方向の選択が行われる。この例では、マップ作成処理によって得られた圃場の外形が四角形であり、その各辺と、出入口Eの出入辺が植付基準辺の候補となっている。植付基準辺の候補となる辺には、数値が付与されている。作業者は、所望の辺を基準辺として選択し、さらに、植付方向が基準辺に対して平行とするか、垂直とするかを選択する。この植付方向は、内部領域IAにおける往復走行での直進経路の方向となる。往復走行では直進経路と旋回経路とを組み合わせた経路が用いられるが、この直進経路は、直線状には限られず、大きな湾曲状、あるいは蛇行状であってもよい。
〔往復工程〕
植付方向の選択に関しては、基準辺が選択されると、自動的に往復走行での往復回数が少なくなる植付方向が自動的に選択されるように構成してもよい。また、同一圃場または類似圃場における初回の選択時は、圃場の最も長い辺に平行となるような植付方向がデフォルトとして設定され、それ以降の植付方向の選択時は、前回の選択結果がデフォルトとして設定されるように構成してもよい。
なお、圃場形状は、長方形に限らず、台形やひし形などの四角形でもよいし、さらに三角形や、五角形以上の多角形でもよい。従って、基準辺としては、長方形の四辺に限らず、対向する辺が非平行となる辺が選択されてもよい。また、湾曲された辺を基準辺として選択した場合は、その辺に沿った走行経路が設定されてもよいし、徐々に直線状に慣らされた経路が設定されてもよい。一方で、このような場合は誤差が大きくなるので基準辺に選択できないようにしてもよい。
〔苗補給〕
内部領域IAにおける往復走行での作業では、その作業途中に苗補給が必要となる。なお、ここでの苗補給はその他の資材補給(薬剤、肥料、燃料など)に読み替えられる。図57には、この苗補給に関する選択画面が示されている。苗補給では、田植機は、往復走行を中断して、畦に接近しなければならないが、この苗補給のための畦接近走行が可能となる位置での田植機の自動停止が可能である。この畦接近走行のための自動停止(苗補給辺自動停止)をするかしないかの選択がこの画面を通じて行うことができる。さらに、苗補給を行う辺は、往復走行での直進経路と交差する圃場辺であり、この辺を選択することもこの画面を通じて行うことができる。選択可能な辺は、1辺でもよいし、2辺でもよい。また、変形した圃場では、隣接する2つの辺が補給辺の候補となる可能性がある。
圃場が特殊な場合、資材補給辺の候補は、全ての圃場辺の中から選択可能にする必要がある。このため、そのような特殊圃場が考慮される場合、資材補給辺を全ての圃場辺の中から選択できるように構成する。
外周領域での周回経路に沿った作業走行(周り植え走行)においても、苗補給が必要な場合がある。この場合でも、機体1は圃場辺で自動停止させられる。その際、機体1が圃場辺から所定距離以上離れている場合、機体1を圃場辺に横寄せしてから、自動停止させられる。自動停止すると、補給を促す報知が行われる。
苗補給辺の選択に関して、基準辺が選択されることで、好ましくは自動的に周り植え走行での苗補給辺が決定されるように構成されてもよいし、苗補給辺を選択してから、好ましくは自動的に基準辺が決定されるように構成されてもよい。
苗補給では、一般的に、機体1の前部が畦(補給辺)に接近する必要があるので、旋回に入る前、あるいは旋回の途中で、畦に向かって前進する。補給後は、後進と旋回とによって、次の直進経路に入る。次の直進経路に入る際に行われる旋回制御では旋回半径を固定した制御が好都合である。この場合、機体1は、元の直進経路の通常の旋回走行が行われる位置まで後進で戻り、そこから通常の旋回走行により次の直進経路に入ることになる。薬剤補給などでは、機体1の後部が畦に接近する必要があるので、畦接近走行として、旋回してから後進する旋回後進畦寄せ走行が採用される。補給後は、前進で次の直進経路に入る。これらの一連の苗補給走行も、リモコン90等を用いた遠隔制御が可能である。
変形している畦の近くで苗補給が行われた場合、苗補給後に次の直線経路に戻る際に行われる旋回走行において、機体1が畦に接近する可能性がある。このような旋回走行では、通常行われる旋回に比べて、旋回開始位置を畦から遠い位置に設定したり、旋回半径を変更したりする。
資材補給経路に直進経路が含まれる場合、先行して行われた直進走行で得られた走行軌跡から基準線を作成し、この基準線に基づいて当該直進経路を自動走行することも可能である。
資材補給場所が、補給辺ではなく、限定した補給点である場合には、資材補給のための畦接近走行は、この補給点を目標点とする自動走行で行われる。
苗補給のための自動停止を選択した場合、補給辺側の外周領域(枕地とも称する)OAに自動走行で直進する。この自動走行のためには、内部往復経路IPLの直進経路を延長させることによって生成された延長経路が利用される。その延長経路の走行中は、植付・播種・施肥などの作業を行われず、畦に接近した処理位置で、機体1は自動停止する。
自動停止を選択せずに補給を行う場合には、旋回走行の前や旋回途中で、苗植付装置3が上昇している時に、手動操作またはリモコン90を用いた割込み制御によって、畦接近走行が可能となる。その場合は、補給後に次の開始点まで機体1を手動で走行させないと、自動運転の再開は不能となる。もちろん、補給が不要な場合には、自動停止を選択する必要はない。補給が不要となる例は、密苗、ロング(ロール)マット苗を採用している場合、苗植付装置3ではなく直播装置が装備されている場合、などである。補給とは関係なしに、リモコン90を用いた操作などによって、旋回走行の前や旋回途中で機体1を停止するように設定してもよい。
また、補給のための自動停止の要否選択にかかわらず、一時停止中に資材補給するかどうか作業者に判断させる時間を与えるために、自動的な一時停止と走行再開とを行う制御モードがあってもよい。この停止により、補給資材の残量を目視でチェックすることができる。
リモコン90等による遠隔操縦を行っている場合には、補給資材の残量チェックは、作業者による目視ではなく、残量センサを用いて行い、その検出結果または資材切れをリモコン90に送信する構成や、音声で周囲に報知する構成を採用してもよい。残量センサによって資材切れ(資材不足)が検出された場合には、自動停止することができる。このような自動停止や資材切れ(資材不足)の報知は、内部領域IAでの作業走行だけでなく、外周領域OAでの作業走行においても行うことができる。その際、資材補給位置までの資材補給経路が作成されるように構成してもよい。
残量センサは、カメラによる撮影画像を入力として苗などの資材残量を出力する機械学習モデルで構成することができる。また、資材残量が推定できる場合、資材補給するために自動停止する位置も推定できる。この推定位置に基づいて、資材補給のための自動停止を予約することができる。この予約は自動または手動で行うことができ、予約のキャンセルは手動で行うことができる。
資材残量が推定できる場合、推定された残量で、次の補給可能な位置まで走行可能であるかどうかの判定が行われる。この判定結果に基づいて、資材補強のために機体1が停止し、資材補給走行を開始するための予想位置の報知が行われる。
〔周り植え行程〕
この実施形態では、外周領域OAでの作業走行(周り植え走行)は、周回経路として、外周領域(枕地)OAの内側に位置する内側周回経路IRLと、外周領域OAの外側に位置する外側周回経路ORLとに沿っておこなわれる。内側周回経路IRLに沿った走行は、内側周回走行または内側周り走行と呼ばれ、外側周回経路ORLに沿った走行は、外側周回走行または外側周り走行と呼ばれる。マップ作成において機体1が走行した走行軌跡に実質的に一致するように作成される。内側周回経路IRLは、内部往復経路IPLと外側周回経路ORLの間にある経路である。内側周回走行及び外側周回走行は、有人自動、無人自動または手動で行うことができる。
図58は、この内側周回走行と外側周回走行とを自動と手動とのどちらで走行させるかを選択する画面である。画面右側には、自動・手動の選択領域が表示され、画面左側には、模式的な走行経路が表示されている。一周分の周回経路しか表示されていないが、この実施形態では、周回経路として、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとが表示される。
実際の作業走行においても、図58に類似する、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとが表示されるように構成されている。しかしながら手動走行が選択された周回経路は画面から消去される。作業済の領域は、植え跡として作業幅で塗りつぶされる。これに代えて、手動走行が選択された場合には、対応する周回経路が画面から消去されるとともに、植え跡も表示されないような構成であってもよい。さらには、手動走行される周回経路とその植え跡、及び自動走行される周回経路とその植え跡の表示形態を変えて、両方が識別可能に表示されてもよい。なお、画面における経路や植え跡の表示形態には、表示色や表示線種などが含まれている。異なる属性値を有する経路や植え跡は、その表示色や表示線種を変えることにより、識別可能となる。したがって、本願発明において、画面において色を変えるという表現には、線種を変えるということも含まれており、逆に画面において線種を変えると色を変えるということも含まれている。
内側周回経路IRLが手動走行に設定されると、外側周回経路ORLも手動走行に切り替わり、走行経路が表示されなくなる。但し、走行経路は、手動走行における案内の役割を果たすことができるので、手動走行であっても、少なくとも外側周回経路ORLは案内として利用するために表示させたままにしてもよい。
この実施形態では、外側周回経路ORLは自動走行であっても有人自動走行になるように規定されているが、外側周回経路ORLはマップ作成のティーチング走行の走行軌跡に基づいて、しかもその走行は苗植付装置3を下降させた状態での走行であるので、無人自動走行でも問題が生じる可能性は小さい。このことから、外側周回経路ORLに対しても無人自動走行が選択できるように構成してもよい。また、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLはそれぞれ別経路として設定されているのでアルゴリズムが複雑になりやすいが、最初から2つの経路のつなぎ経路を設けてもよい。または、内側周回経路IRLの終了時点でその終点から外側周回経路ORLの開始位置に向けて誘導する経路を設けてもよい。
この実施形態では、往復走行における旋回走行のためのスペースを十分にとるために、外周領域OAに形成される周回経路は、2周の周回経路と既定されている。しかしながら、機種や作業条数によっては、1周の周回経路で十分である。したがって、周回経路が1周の周回経路で形成されることを選択できるような構成にしてもよい。但し、周回経路が1周の周回経路で形成される場合、往復走行で用いられる旋回経路には、後進を用いた切り返し経路、あるいは作業幅を超えるつなぎ直進経路でアングル状の2つの旋回経路をつなぐつなぎ旋回経路を採用することが好ましい。その際、つなぎ直進経路の走行では、周回経路を倣うような走行制御が行われるが、畦との間隔を規定している越境判定の許容範囲を拡大するなどの特例措置が採用される。さらには、旋回途中で畦との干渉リスクがある場合に後進等を用いた複数回切り返しで徐々に旋回する旋回リトライ機能も採用される。
図59と図60には上述した特殊な旋回走行(旋回経路)が例示されている。図59は、つなぎ旋回の一例を示している。このつなぎ旋回は、1つの直進経路から隣接する直進経路ではなく、その次の次の直進経路に移行するための移行走行である。このつなぎ旋回は、ほぼ90度の方向転換を行う第1旋回経路(図59では符号Q1が付与されている)と、直線経路(図59では符号Q3が付与されている)と、第2旋回経路(図59では符号Q2が付与されている)とからなる。直線経路の長さは、移行先の直進経路の位置に応じて算定される。図60は、後進を用いた切り返し旋回の一例を示している。切り返し旋回は、走行している直進経路から旋回走行で隣接経路に移行する際に、その旋回走行のためのスペース(畦までの距離:外周領域OAの幅)が少ない場合に用いられる。図60で示された切り返し旋回は、第1旋回経路(図60では符号R1が付与されている)と、後進逆旋回経路(図60では符号R2が付与されている)と第2旋回経路(図60では符号R3が付与されている)とからなる。第1旋回経路と後進逆旋回経路とにより切り返しと称せられる走行が実現するが、この切り返しを増やすことで、旋回走行に必要なスペースを小さくすることができる。
旋回リトライ機能が実行されると、旋回時に機体1の旋回軌跡が推定され、推定された旋回軌跡に基づいて、限定されたスペース内で、あるいは畦まで所定の間隔をあけて、作業機が旋回可能であるかどうか判定される。その判定結果が旋回可能であればそのまま旋回が続行されるが、その判定結果が旋回不能であれば、判定結果が旋回可能になるまで、後進を用いた切り返し走行が行われる。その際、判定結果が旋回不能であれば、作業者に報知して、自動走行から手動走行に移行してもよいし、自動で、切り返し走行を行ってもよい。
周り植え走行は畦近くの走行となるので、その前に作業者が認識しておくべき情報がある。このため、周り植え走行が開始される前の段階で、作業者に注意を喚起する報知、少なくとも外側周回走行は、有人で行われることを報知する。周り植え走行の前に行われる往復走行での実績に基づく警告が好都合である。その際、少なくとも、情報端末5の画面で注意喚起する報知が行わることが好ましい。別形態として、外側周回走行を有人で行うか無人で行うかを選択できても良い。また、報知は音声や積層灯等を用いてもよい。
手動走行で外側周回走行が行われる場合、先に行われる内側周回走行時に外側周回走行の目安となるマーカを引くことが好ましい。このマーカ跡が外側周回走行を手動で行う作業者の操縦を助ける。
内側周回経路IRL及び外側周回経路ORLは、直進経路と方向転換経路との組み合わせである。これらの周回経路を用いて周り植え走行を行う際には、既に内部領域IAの苗植付が終了しているので、内部領域は既植領域となっている。従って、1つの直進経路での植付終了位置が、既植領域に揃う位置とすることで、当該植付終了位置と畦との間に既植領域と畦との間と同じ非植付スペースが生じる。この非植付スペースが次の直進経路を用いた走行のための方向転換走行(切り返し旋回)のためのスペースとして利用できるので、当該方向転換走行が容易となる。
内部領域IAの往復走行での直進経路の端部位置が他の直進経路の端部位置と異なっている領域、つまり内部領域IAのコーナ領域に凹部や凸部が存在する領域では、内側周回経路IRLがクランク状に折れ曲がることになる。このため、内側周回経路IRLの外側を被さるように延びる外側周回経路ORLでの走行による苗植付跡は、内側周回経路IRLに沿った走行での苗植付跡にオーバーハングすることになる。これを回避するために、オーバーハングとなる植付爪に対応する各条クラッチをオフする各条クラッチ制御が行われる。
ここで、図61を用いて、各条クラッチ制御を伴う植付作業走行を説明する。図61における(a)では、8条分の植付機構(植付爪)22の全てが作動状態であり(各条クラッチの全てがオン)、8条の植付跡が形成されている。(b)では、左側の2条分の植付機構22が非作動であり(各条クラッチのオフ)、6条の植付跡が形成されている。(c)では、左側の4条分の植付機構22が非作動であり(各条クラッチのオフ)、4条の植付跡が形成されている。このような各条クラッチ制御によって、種々の植付跡が形成可能である。例えば、図61における(d)では、左側から順次植付機構22を非作動にしていくことで、三角形状の植付跡が形成される。さらには、図61における(e)に示すように、左側から植付機構22を順次非作動にし、その後順次作動にしていくことで、湾曲した側面を有する植付跡が形成される。あるいは、図示されていないが、階段状、凸状、凹状の側面を有する植付跡の形成も可能である。
内側周回経路IRLは、往復走行での直進経路の各端部位置に沿うように作成され、その自動走行時には、内側周回経路IRLを目標経路として、目標経路からのずれを最小にする制御が行われる。これに対して、外側周回経路ORLは、マップ作成のためのティーチング走行での走行軌跡に基づいて作成されており、外側周回経路ORLを用いた自動走行の制御はティーチング走行に倣う制御である。この倣い制御が採用される外側周回経路ORLは、畦との接触を確実に防止できる。しかし、さらに接触リスクを下げるため、ティーチング走行での走行軌跡からさらに内側に後退(セットバック)させている。このセットバック量をゼロあるいは縮小することを選択する機能が設けられている。セットバック量の縮小に代えて、外側外周走行の制御が、ティーチング走行での走行軌跡に基づいて作成された外側周回経路ORLを目標とするのではなく、圃場外形(畦と圃場面との境界線)を目標とするように構成されてもよい。
上述したように、ルート作成処理には、往復経路作成処理、内側周回経路IRL作成処理、外側周回経路ORL作成処理、開始点誘導経路作成処理が含まれる。これらのすべての処理は一度に行われるが、各処理が個別に行われるような構成を採用してもよい。
往復経路作成処理と内側周回経路IRL作成処理とが外側周回経路ORLを考慮せずに行われた場合、外側周回経路ORLと内側周回経路IRLとが重なり合うため、正常な外側周回経路ORLが形成できない不都合が生じる。
〔開始点誘導〕
次に、開始点誘導について、図62を用いて説明する。開始点誘導とは、圃場における苗植付作業の開始となる内部往復経路IPLの始端である開始点Sまで、田植機を誘導することである。圃場マップ形成のためのティーチング走行が終了し、ルート作成処理も終了すると、田植機は、自動走行での苗植付作業を行う。自動走行での植付作業は、内部往復経路IPLの開始点Sから開始される。田植機を開始点Sまで自動走行させるための走行経路である開始点誘導経路SGLがルート作成処理において設定され、かつこの開始点誘導経路SGLを用いた自動走行を許可する自動走行開始可能条件が設定されている。この自動走行開始可能条件は、田植機の位置とその方位とが許容範囲に入っていることである。簡単には、田植機が誘導開始可能エリアGAに入っていることが自動走行開始可能条件であってもよい。この誘導開始可能エリアGAはタッチパネル50に表示される画面にも表示される。
自動走行開始のための操作を行った際に、田植機が誘導開始可能エリアGA内に位置している場合(または、田植機の位置とその方位とが許容範囲に入っている場合)、誘導開始可能エリアGA内に位置していない場合(または、田植機の位置とその方位とが許容範囲に入っていない場合)とでは、タッチパネル50に表示されている誘導開始可能エリアGAの表示色が異なる。田植機が誘導開始可能エリアGA内に位置しているかいないかは、ランプ点灯や音声等でも報知される。
例えば、図62に示すように、誘導開始可能エリアGA内に位置しておらず、自動走行開始可能条件が満たされていない場合は、自動走行開始可能条件が満たされるように報知される。その際、条件が満たされていない理由(例えば、位置ずれ、方位ずれなど)の報知、及びその解消方法(例えば、前後進指示、左右ハンドル操作指示など)の報知が行われる。この解消方法が行われ、図63に示すように、自動走行開始可能条件が満たされた場合、その旨の報知がなされ、自動走行での開始点誘導走行が開始される。図63では、2つの田植機の姿勢が示されている。一方の田植機の姿勢では、田植機が苗補給のために、その前部を畦に突き合わせており、この姿勢からは、所定の後進旋回と前進とを用いた切り返し走行FLでの開始点誘導経路SGLの捕捉によって、開始点誘導走行が行われる。他方の田植機の姿勢では、開始点誘導経路SGLの捕捉が可能であるので、農場に入ってそのまま、開始点誘導経路SGLに沿った開始点誘導走行が行われる。
誘導開始可能エリアGAを用いた自動走行開始可能条件の判定に関し、以下のことが追記される。
(1)機体1の大部分が誘導開始可能エリアGA内に入っていれば、少なくとも機体の前部、例えば前輪12Aの前ぐらいは誘導開始可能エリアGAから出ていてもエリア内と判定される。このことから、誘導開始可能エリアGAが圃場外(圃場境界線の外)にはみ出ていてもよい。
(2)基本的には、出入口E、内部往復経路IPLの開始点S、苗補給辺(苗補給畦)は、図63に示すように関係になるので、誘導開始可能エリアGAは、苗補給辺や圃場の出入口Eの近傍に設定される。もちろん、圃場外から出入口Eを通過して開始点Sに至る自動走行が可能な場合、誘導開始可能エリアGAは、圃場外に設定することができる。
(3)開始点誘導経路SGLは、実質的には、開始点Sにつながる旋回経路と、旋回経路につながる直進経路とからなるが、図62や図63に示すように、誘導開始可能エリアGAは直進経路の全てをカバーしていない。これは、自動走行開始可能条件(開始点誘導条件)として、スムーズに開始点誘導経路SGLを捕捉して進入するためには誘導開始可能エリアGAの中心点から開始点Sまでに所定距離(数m以上)だけ直進経路を確保することが望ましいからである。この所定条件は、一般的な田植機の旋回半径、2分の1ホイールベース距離に基づいており、このような仕様が異なった田植機では、この所定距離は変更される。
(4)開始点誘導経路SGLの直進経路の少なくとも一部は、誘導開始可能エリアGA内に入っている。誘導開始可能エリアGAの開始点誘導経路SGLの直進経路に沿った長さが長い方が、自動走行の開始エリア条件が緩まるので、好ましい。
(5)開始点誘導経路SGLは苗補給辺に平行に設定される。苗補給辺の候補が複数ある場合、出入り口に近い苗補給辺に第1候補となり、その苗補給辺に誘導開始可能エリアGAが設定される
(6)開始点誘導経路SGLは、外側周回経路ORLを流用し、この外側周回経路ORLに平行となるように生成されてもよい。開始点誘導経路SGLは、複数の畦辺にまたがって設けられてもよい。その場合、誘導開始可能エリアGAもこれらの複数の畦辺に対応して2つ設定してもよいし、これらを連結されて1つのエリアとしてもよい。例えば、隣接する2つの畦辺のそれぞれに誘導開始可能エリアGAが形成された場合、開始点Sから遠い方の誘導開始可能エリアGAから開始点Sに近い方の誘導開始可能エリアGAに至る補助開始点誘導経路が形成される。開始点Sから遠い方の誘導開始可能エリアGAに入った作業機は、補助開始点誘導経路を用いて開始点Sに近い方の誘導開始可能エリアGAに移動し、その後、開始点誘導経路SGLを用いて、開始点Sに達することができる。開始点誘導経路SGLは外周領域OAに形成されるので、開始点誘導経路SGLを用いた走行と、周回経路を用いた走行とによって生成される互いの轍が重複することによる圃場の荒れを回避するために、開始点誘導経路SGLは、外側周回経路ORL及び内側周回経路IRLと間隔をあけて設定することが好ましい。内側周回経路IRLを用いた苗植付作業が全条の作業幅より狭い作業幅で行われる場合、外周領域OAに設定される開始点誘導経路SGLは、内部領域IAの方に寄らせるとよい。但し、制御負担を軽くするためには、外側周回経路ORLまたは内側周回経路IRLが、そのまま流用(兼用)されて、開始点誘導経路SGLとして設定されてもよい。
(7)図62や図63では、外周領域OAに開始点誘導経路SGLが設定されたが、周回経路が1つしか生成されず、外周領域OAの幅が狭い場合、開始点誘導経路SGLが少なくとも部分的に内部領域IAに入り込んでもよい。
(8)外側周回経路ORLは、全条植えとして生成されているので、外側周回経路ORLによる植付跡と内部往復経路IPLによる植付跡との間は、内側周回経路IRLによる植付跡が占めることになる。そのために、内側周回経路IRLでの作業機の作業幅が調整される。あるいは、内部往復経路IPLにおける直進経路を外周領域OAまで延長し、直進走行による植付跡を拡大させてもよい。また、部分的に植付跡を調整しなければならない場合には、図61を用いて説明した各条クラッチ制御を用いた走行が実行される。
〔誘導開始可能エリアGAへの誘導〕
田植機が誘導開始可能エリアGAの外に位置しているときに、作業員が自動走行開始の操作を行うと、誘導開始可能エリアGAに移動するための案内画面がタッチパネル50に表示される。その他に、音声や積層灯、リモコン等も併せて報知させてもよい。報知しながら誘導開始可能エリアGAに自動走行してもよい。
案内画面の一例が、図64と図65とに示されている。図64では、田植機の機体位置が誘導開始可能エリアGAの外であり、機体方位も許容範囲外であることを示している。図64は、推薦される機体方位(苗補給方位)が案内矢印として示されている。なお、開始点Sを向いた機体1の方位が開始点誘導経路SGLの方位となる案内矢印も図示可能である。図65は、田植機の機体位置が誘導開始可能エリアGA内であり、機体方位も許容範囲内であることを示している。この姿勢において、自動走行開始のための画面に移行することができる。なお、図64では、誘導開始可能エリアGAは、機体位置が許容外であることを示す色、例えば赤色で描画されている。図65では、誘導開始可能エリアGAは、機体位置が許容内であることを示す色、例えば青色に変化している。
案内画面の他の例が、図66と図67と図68とに示されている。この例では、複数の誘導開始可能エリアGAが設定されており、苗補給辺に垂直な太い矢印で示されている。この矢印の方位が基準方位を示している。図66は、田植機の機体位置が誘導開始可能エリアGAの外であり、機体方位も許容範囲外であることを示している。図67は、機体方位は許容範囲内であるが、田植機の機体位置が誘導開始可能エリアGAの外であることを示している。図68は、田植機の機体位置が誘導開始可能エリアGA内であり、機体方位も許容範囲内であることを示している。ここでも、図66や図67では、機体位置が許容外であることを示す色、例えば赤色で描画されているが、図68では、誘導開始可能エリアGAは、機体位置が許容内であることを示す色、例えば青色に変化している。
誘導開始可能エリアGAから開始点Sを経て行われる自動走行での苗植付作業が要求されると、機体装備品に関する判定が行われる。この判定に用いられる条件項目は、通信、センサ、モータ、などである。判定結果において、満たされなかった条件は、タッチパネル50に表示される。その際、満たされなかった条件のリカバリ方法が表示されるようにしてもよい。また、判定結果において、満たされた条件も、表示してもよい。
自動走行で苗植付作業を行うための条件が全て満たされると、苗植付作業における基本設定確認画面(株間、苗取り量、横送り回数、施肥量、薬剤散布量など)が表示される。この基本設定確認画面で設定された内容で、作業シミュレーションが行われ、苗補給辺から離れた位置での資材補給作業が必要と推定されれば、有人での自動走行を勧める案内画面が出る。この案内画面は、実際の作業走行中においても表示される。具体的には、往復走行において、次の苗補給辺に戻ってくるまでに、苗一枚分では足りないと推定された場合に、この案内画面が表示され、対で、有人自動走行か無人自動走行かの選択画面が表示される。
補給が必要な資材の搭載量を検知する手段、つまり資材残量を検知する手段が投与資材毎に備えている場合には、この資材補給を考慮した有人自動走行か無人自動走行かの選択は、自動で行うことができる。資材搭載量検知手段は、苗切れセンサ(例えば、押圧式の苗切れセンサ)、ホッパの重量センサや光学式センサ、苗消費量検知エンコーダー(例えば、苗マットの移動量を回転量で検知する苗消費量検知エンコーダー)、カメラ(例えば、苗残量が所定値以下になっているかどうかを画像解析するカメラ)などで構成可能である。補給資材が燃料である場合、燃料の残量とそれ以降に走行しなければならない距離とに基づいて算出された最低限必要となる燃料補給が作業者に報知される。
作業走行の開始前に推定された走行当たりの燃料消費量は、実際に作業走行を開始してから算出された走行当たりの燃料消費量とは異なることが少なくない。このため、燃料補給の案内タイミングは、順次補正されることが好ましい。
〔自動運転の中断・終了、走行ライン先送り、自動運転の中断からの再開〕
自動走行の途中で自動走行が困難な状況が発生すると、自動走行は中断または終了され、走行制御は手動に移行する。自動走行が終了された場合には、自動走行での作業の再開は不可能となるが、自動走行が中断された場合には、自動走行での作業の再開は可能である。自動走行では、行われた自動走行の履歴(走破した走行経路など)が記録されている。自動停止の中断後、同じ機体位置で、あるいは手動走行で走行した後に、自動走行を再開する際には、自動走行が中断された機体位置及びその機体位置の走行経路のID等がメモリ等から読み出される。中断位置と再開位置が異なる場合において、中断位置と再開位置が同じライン上にある場合は、機体がライン上に重複した状態において、タッチパネルで再開指示可能である。中断位置と再開位置が異なるライン上にある場合は、タッチパネル50に表示される走行経路を用いて、設定されている走行経路を先送りし(ライン送りと称せられる)、機体1の現在位置に走行経路をマッチングさせる。表示領域が限られているタッチパネル50の画面で、このようなライン送りが行われる場合、特に周回経路や内部往復経路IPLが密集または重複している領域では各経路の識別が難しくなる。このため、各走行経路を色や線パターンなどで識別することが好ましい。
タッチパネル50における走行経路の画面表示に関して追記される事項は以下の通りである。
(1)自動運転が中断された走行経路が赤色などの特徴色で描画される。その際、色変更される経路区間は、直進経路単位が好ましいが、中断点を含む直進経路の一部区間でもよい。
(2)自動運転の中断点付近に複数の経路が存在する場合、作業者によって処理対象となる走行経路が選択される。
(3)走行経路は、その走行経路の作業属性に応じて色変更される。例えば、走行経路に沿って苗植付作業が完了した経路と、苗植付作業が行われている経路と、これから行われる経路、空走り経路と呼ばれる苗植付作業を行わずに走行された経路などは、それぞれ識別可能に色塗りされる。また、苗植付作業が完了した経路の周辺は、その作業幅(各条単位)で色塗りされてもよい。
(4)手動走行においても、その走行軌跡と走行経路マップとのマッチングが行われ、手動走行で走行した作業跡も既作業領域として表示される。
(5)自動走行が中断され、複数本の走行経路に沿った手動走行を経て、再度自動走行が再開される場合での走行経路の先送りを容易にするため、走行経路早送り、早戻し機能が用意されている。
(6)自動走行を再開する際には、再開する走行ラインを選択する必要がある。その選択作業を容易にするため、自動運転再開時は、中断した走行経路、中断した走行経路の次の走行経路、中断した走行経路のひとつ前の走行経路のいずれかがデフォルトの再開走行経路として設定される。
自動運転の終了は、自動運転の中断または終了を選択する選択画面を通じて、終了を選択することが確定する。この自動走行の終了に関して追記される事項は以下の通りである。
(1)終了ボタンを押してからの自動運転再開は不可能としている。これは、一般的に作業が終了していないにも関わらず、終了ボタンを押すのは外側周回走行の開始前後が想定され、最外周は少しずれると圃場外に行く可能性もあるためこの部分での自動運転再開は不可能としている。但し、外側走行経路に入る前までは終了ボタンを押しても自動運転再開できるようにしてもよい。
(2)自動走行を再開する際の走行経路の選択は、走行経路単位だけでなく、走行経路における1点、さらには複数ライン単位、あるいは内部往復経路IPLまたは周回経路単位で選択可能である。複数の経路を選択した場合、実際に自動走行を再開するための走行経路は、絞り込み選択可能である。
(3)自動走行での作業を中断した中断地点から、資材補給等のために作業機が移動した場合、その移動場所から自動走行で中断地点まで移動し、自動走行での作業を再開する構成を採用することも可能である。その際、自動走行を再開する地点までの自動走行は、開始点誘導走行の制御技術を流用することができる。
(4)自動走行から手動走行または手動走行から自動走行への移行時に不具合情報が検知されると、その対応策を含めてその報知が行われる。
(5)自動運転の終了を選択した場合でも、自動走行の中断または新規自動運転(走行経路の再生成)の選択肢が残されるような構成であってもよい。
(6)外側周回経路ORLの自動走行において、自動走行が中断された場合には、自動走行の再開はできず、有人手動走行のみが許可されるように構成されていたが、自動運転の再開が可能な構成が採用されてもよい。
〔空走り制御と条間調整〕
図4による基本的な走行経路図でも示されているように、一般的には、内部往復経路IPLの開始点Sと内部往復経路IPLの植付終了点である終了点Gは同じ側に位置し、かつ往復走行経路の終了点G及び内部往復経路IPLから周回経路への移行経路は、圃場の出入口の近傍に位置している。この条件を満足させるためには、内部往復経路IPLにおける直進経路の本数が偶数の場合は良いが、直進経路の本数が奇数の場合、内部往復経路IPLの終了点Gが出入口Eの反対側になる。この不都合を避けるため、図69に示すように、最終の直進経路(図69では符号Lnが付与されている)以外の直進経路、例えば、図69では符号Ln-1が付与されている直進経路を非作業(非苗植付作業)で空走行し、次の直進経路(図69では符号Lnが付与されている最終直進経路)を走行した後、空走行した直進経路を苗植付作業しながら走行する。これにより、最終直進経路の終了点Gが出入口側に反転される。図69の例では、終了点Gの位置が植付幅分だけ移動する。これを避けるには、他の直進経路を空走行直進経路として選択してするとよい。このように、旋回経路以外の走行経路(直進経路)を苗植付作業無しで走行することを空走行と称する。
もちろん、直進経路の本数が奇数の場合、内部往復経路IPLの開始点Sを内部往復経路IPLの終了点Gとは反対側に設定することで、空走行は不要となる。この場合は、内部往復経路IPLの開始点Sが出入口Eから遠く離れることになり、開始点誘導経路SGLが長くなる。この開始点誘導経路SGLの延長分が空走行の距離とみなすことができる。
空走行と類似するが、開始点誘導経路SGLの延長を回避するための有効な方法の1つが、直進経路の本数が偶数になるように、条間調整を行うことである。条間調整とは、作業幅(苗植付幅)を狭くすることである。例えば、所定作業幅で1本の直進経路を走行した際に作り出される作業済領域は、作業幅を所定作業幅の半分にした2本の直進経路を走行した際に作り出される作業済領域と同じとなる。全ての各条クラッチがオフでの走行は、各条クラッチの制御は伴わずに苗植付装置3を非作業位置に上昇させる空走行とは制御的には異なるが、作業結果的には同じである。条間調整を採用することにより、内部領域IAの直進経路の本数は偶数になる。但し、図61を用いて説明したような各条クラッチ制御を用いた条間調整(作業幅の調整)は、走行経路間隔の変更や各条クラッチのオフ制御などを伴うので、この条間調整の対象となる走行経路に進入する前、及び当該走行経路の走行中には、その旨の報知(音声、メッセージ表示、ランプなど)が行われる。
条間調整では、各条クラッチのオフ制御によって作業幅が条単位で変更されるので、空走行では不可能な調整が可能である。つまり、内部往復経路IPLが設定される内部領域IAの幅が作業幅の整数倍にならない場合、条間調整を用いることにより、直進経路の間隔を縮めて整数倍になるように直進経路が設定される。その際、一般的には、直進経路の間隔は均等に調節されるが、各経路の調整幅を変えて、例えば、出入口Eに近い部分は標準に近い間隔にして、出入口に遠い側に向かって徐々に狭めたりしてもよい。または、出入口Eから所定距離のところまでは標準に近い間隔で均等に調整して、所定距離以降は出入口E側よりも間隔を少し短くして均等に調整してもよい。いずれにせよ、内部領域IAの幅を作業幅の整数倍に一致させるための条間調整では、いずれかの直進経路の間隔を調整すればよい。ただし、収量を重要視する場合には、条間調整はできるだけ密植方向に調整(最大3cm程度)することが好ましい。逆に、工数や資材削減を重視する場合には、間調整は疎植方向に調整することが好ましい。
空走行や条間調整などが適用される経路に識別可能にタッチパネル50に表示される場合、画面解像度によっては、見づらい画面となる。このため、周回経路だけや内部往復経路IPLだけが表示されるようにしてもよい。往復工程があと少しで終わる場合は、現在位置をから判断して、次に作業する走行ラインとしての周回経路だけ表示させてもよい。また、自動走行の中断再開時には、既作業となっている走行経路だけを消してもよい。なお、中断再開時は直前の作業履歴を記憶し、再開時に同じ作業履歴に基づいて作業が行われ、作業の継続性が確保されるようにすることが好ましい。
空走行経路または条間調整される走行経路が設定されている場合、当該走行経路は、表示色の変更などを通じて識別可能できるように、タッチパネル50の画面に表示される。また、走行中において、空走行経路または条間調整された走行経路に近づいた場合には、タッチパネル50の画面には、「次の走行経路は空走り(条間調整走行)」といったメッセージが表示される。空走行経路または条間調整された走行経路の走行跡には、対応する作業幅分の塗りつぶしが行われる。もちろん、空走行の場合には、塗りつぶしは行われず、走行経路だけが表示される。
条間調整や空走行は、全ての作業走行経路において実施可能であるが、各条クラッチの制御を伴う条間調整は、周回経路だけに限定してもよい。
内部往復経路IPLの直進経路から旋回経路に移行する領域では、株間距離に近い長さをもつゼロ条植え経路が設定されている。ゼロ条植え経路とは、この短い経路の走行の間に、その時点で植付爪が保持している苗を確実に植え込むための経路であり、これにより浮き苗が抑制される。
〔変形圃場での走行経路〕
各辺の長さが異なるような変形圃場の場合、内側周回経路IRLも圃場形状に沿った経路で外側周回経路ORLに合わせることがある。この場合、内部領域IAが矩形であるとして内部往復経路IPLを生成すると、当該内部往復経路IPLを用いた場合の作業跡(内部往復経路IPLの直進経路で苗植付作業された領域)と内側周回経路IRLを用いた場合作業跡との間に、図70と図71に示されたような傾斜辺を有する変形の未作業領域または重複作業領域が生じてる。この問題を解消するためには、2つの方法がある。その1つは、内部往復経路IPLの直進経路の各終端が順次長くなるような内部往復経路IPLの生成であり、他の1つは、直進作業走行をしながら各条クラッチを制御することである。上述したように、各条クラッチが走行に伴なって順次オンまたはオフされることにより、作業跡(既植付領域)の1辺または両辺が傾斜辺となる。さらに、各条クラッチを細かく制御すれば、湾曲状の作業跡も可能である。
各終端の長さが異なる直進経路の走行方法の例が、図70と図71に示されている。図70は、直進経路の終端が順次に短くなっている例を示しており、図示された内部往復経路IPLは、先直進経路Y1と、旋回経路Y2と、次直進経路Y3とからなり、次直進経路Y3は、第1経路部分Y31と第2経路部分Y32とに区分けされる。先直進経路Y1と第2経路部分Y32とが苗植付走行であり、旋回経路Y2と第1経路部分Y31とが非苗植付走行である。図71は、直進経路の終端が徐々に長くなっている例を示しており、図示された内部往復経路IPLは、先直進経路W1と、旋回経路W2と、次直進経路W3とからり、次直進経路W3は第1経路部分W31と第2経路部分W32とを含んでいる。第1経路部分W31と第2経路部分W32とは、旋回経路W2の最終部分と重なり合っている。第1経路部分W31は後進経路である。先直進経路Y1と第2経路部分W32と次直進経路W3とが苗植付走行であり、旋回経路W2と第1経路部分W31とが非苗植付走行である。図71の例では、旋回経路は予め決められた所定の旋回半径で行われる経路としているので、直進経路が旋回経路に入り込んでおり、後進が必要となっているが、より小さな旋回半径が用いられた旋回、あるいは、特殊な旋回が行われる場合、旋回経路の距離が短くなるので、第1経路部分W31と第2経路部分W32とは不要となる。ここでの特殊な旋回とは、切り返し旋回や左右輪速度差を用いた旋回などであり、GPS座標、ステアリング角度、車輪回転数などに基づいた旋回制御によって実現可能である。
変形圃場の場合、外側周回経路ORLは圃場形状に沿った経路であることから、直線経路と次の直線経路との連結点(以下プロット点と称する)の数が多くなる。内側周回経路IRLがその外側周回経路ORLに沿うように生成する場合、内側周回経路IRLのプロット数は外側周回経路ORLのプロット数よりは、少なく設定されるが、通常の矩形の内部領域IAの外形に沿うように生成された内側周回経路IRLのプロット数よりは多くなる。
〔別実施形態〕
(1)走行経路は、圃場の外周に沿った非作業走行を行うことにより設定される。走行経路は、情報端末5または制御ユニット30にて生成することができる。この際、情報端末5または制御ユニット30に、独立した機能ブロックとして経路設定部が設けられる構成とすることができる。また、情報端末5および制御ユニット30の両方に経路設定部が設けられ、選択的に、情報端末5または制御ユニット30のいずれで経路設定を行うかを決定する構成とすることもできる。また、外部のサーバ等で走行経路を生成し、生成された走行経路を情報端末5または制御ユニット30が受信できる構成としても良い。作業機の作業走行で得られた各種データ(マップ形状取得処理やルート作成処理などで作成されたデータ、走行中の検出された障害物に関する障害物データ、走行中に得られた走行状態データ、作業状態データ、圃場状態データなど)は、外部に設置された中央コンピュータやクラウドサービス用コンピュータにアップロードされても良い。さらに、作業前に、登録されているそのようなデータはダウンロードされても良い。
(2)制御ユニット30は、任意の機能ブロックに細分化できる。例えば、自動走行の際の走行を制御する自動走行制御部、手動走行の際の走行を制御する手動走行制御部、各種の作業装置を制御する作業装置制御部、情報端末5やその他の機器との間で情報の送受信を行う通信部、ソナーセンサ60を制御し、障害物を検知する障害物検知部、障害物の検知結果に応じて自動走行制御部や手動走行制御部に指令を出す障害制御部、積層灯71を制御する積層灯制御部、主変速レバー7Aやモータ45等を制御する変速機操作部等が、制御ユニット30の機能ブロックとして個別に設けられても良い。
(3)上記各実施形態において、田植機が行う各種の報知を行う報知装置は情報端末5やボイスアラーム発生装置100に限らず、種々の報知装置を用いて行うことができる。例えば、リモコン90にLEDを設けて点灯パターンにより種々の情報が報知されても良いし、リモコン90にモニタを設けて種々の情報が表示されても良い。また、積層灯71やセンターマスコット20、ライト、その他の発光体の点灯パターン、作業者が所持するスマートフォンやモバイル端末、パーソナルコンピュータ等への表示や振動、リモコン90等の振動等により報知することができる。また、報知装置が行う各種報知は、制御ユニット30、または制御ユニット30に内蔵される報知制御部、あるいは制御ユニット30の外部に設けられる報知制御部により、走行状態、作業状態、各種センサの検知状態等に応じて制御される。
(4)図72に示すように、圃場形状取得処理により取得された圃場のマップ情報によって示される圃場の外周輪郭線LL0を圃場の中央側に所定のオフセット量でオフセットした修正外周輪郭線LL1に基づいて、走行経路が形成される。修正外周輪郭線LL1は、最外周の周回経路である外側周回経路ORLと実質的に同一である。外側周回経路ORLの内側に内側周回経路IRL及び内部往復経路IPLが作成される。その際、図72に示すように、圃場外形に凸部ZAが存在していると、外側周回経路ORLや内側周回経路IRLも凸部ZAの形状に倣った屈曲形状を示すことになる。しかしながら、凸部ZAの圃場への突き出し量が小さければ、少なくとも内側周回経路IRLは、屈曲形状を直線に置き換えてもよい。このように、屈曲形状を直線に置き換える対象となる領域は、ここでは、特別植付領域SNAと称せられる。この特別植付領域SNAが複数ある圃場形状は複雑な多角形となるが、この特別植付領域SNAにおける屈曲形状の経路部分が直線に置き換えることができると、圃場形状はシンプルな形状となる。その結果、内側周回経路IRLは直線状に形成することができ、さらに内部往復経路IPLの包絡線も直線状となる。その際、外側周回経路ORLや内側周回経路IRLとの走行において、苗植付が重複する場合、外側周回経路ORLでの走行は空走りとしてもよいし、あるいは重ね植えとしてもよい。このような特別植付領域SNAは、圃場のコーナ領域、特に出入口Eに発生することが多いが、特別植付領域SNAにおける経路を直線化することで、経路設計が簡単となる。但し、この特別植付領域SNAにおける経路の直線化は、作業者によって選択可能とすることが好ましい。
なお、前述の屈曲形状の大きさが所定以上のときは前述の直線化が難しくなる。つまり、直線化した内側周回経路IRLが外側周回経路ORLに入り込むことになり、特別植付領域SNAが外側周回経路ORLと内側周回経路IRLの両方に含まれる重複特別植付領域となる。この場合には、この重複特別植付領域に対する植付作業は、内側周回経路IRLでの走行で行われる。また、外側周回経路ORLでのこの重複特別植付領域の走行は空植えで走行して、重複特別植付領域を通過する。なお、重複特別植付領域が出入口Eの周辺で発生している場合には、内側周回経路IRLを用いた走行で植付が行われ、外側周回経路ORLは、この重複特別植付領域を通過せずに、そのまま出入口Eを通過して圃場を脱出する。
(5)燃料切れ、バッテリ切れ、植付苗、肥料、薬剤などの資材切れ(資材不足)が発生した位置、あるいはそれらの発生が予測される位置が算出された場合には、その報知において、資材切れ(資材不足)の位置をタッチパネル50に、好ましくは走行経路上に表示する構成としてもよい。
(6)上記各実施形態では、田植機を例に説明したが、本発明は、田植機を始め、直播機、管理機(薬剤や肥料等の散布を行う)、トラクタ、収穫機等の各種農作業機、さらに、作業地を作業走行する各種作業機に適用することができる。