JP2021107537A - 複合材料用部材、複合材料、移動体及びフィルムの製造方法 - Google Patents

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真保 蓮池
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Abstract

【課題】剛性、耐熱性及び生産性に優れる複合材料用部材並びにこれを用いた複合材料及び移動体、フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合材料用部材の厚みが15μm超であり、該複合材料が樹脂と数平均繊維長が5mm以上の強化繊維とを含む複合材料であることを特徴とする、複合材料用部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気・電子機器や自動車、航空機等における複合材料に適用することができるポリアリールエーテルケトンによる複合材料用部材並びにこの複合材料用部材を用いた複合材料及び移動体に関する。本発明はまた、フィルムの製造方法に関する。
近年、電気・電子機器や自動車、航空機等の用途におけるフィルムとして、耐熱性や機械特性、耐薬品性、耐久性に優れていることから、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミドスルホン(PEI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックが広く採用されるようになってきている。
なかでも、ポリエーテルエーテルケトンは、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れるため、繊維強化材料のマトリックス材として使用されている。これらの特性を充分に発揮するためには樹脂を結晶化させる必要があるが、ポリエーテルエーテルケトンは結晶化が遅い場合があり、結晶化した物品を得る際の生産性の高い材料が求められていた。
特許文献1では、ポリエーテルエーテルケトンをマトリックスとし、ポリエーテルスルホンによってサイジングされた繊維を強化材としてなる複合材料が開示されている。また、特許文献2では、特定の固有粘度を有するポリアリールケトン樹脂組成物を用いた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグが開示されている。
特開昭62−115033号公報 特開2019−147876号公報
しかしながら、特許文献1に記載のポリエーテルエーテルケトンでは分子量分布が狭いため、また、特許文献2に記載のポリアリールケトンは分子量が大きいため、より高い性能が求められる用途によっては、複合材料用部材を生産する際の生産性に問題が発生したり、得られる複合材料用部材の剛性、耐熱性が不充分となる場合があることが、本発明者らの検討で明らかとなった。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、優れた剛性、耐熱性を有し、生産性にも優れた複合材料用部材等を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記従来技術の課題を解決するための手段として、特定の分子量分布と分子量を有するポリアリールエーテルケトンを用いた複合材料用部材等を提供するものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[22]を提供するものである。
[1] ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合材料用部材の厚みが15μm超であり、該複合材料が樹脂と数平均繊維長が5mm以上の強化繊維とを含む複合材料であることを特徴とする、複合材料用部材。
[2] 前記ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである、[1]に記載の複合材料用部材。
[3] 前記樹脂成分中のポリアリールエーテルケトンの含有割合が90質量%超である、[1]又は[2]に記載の複合材料用部材。
[4] 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[5] 結晶融解熱量が43J/g以上60J/g以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[6] 結晶化温度が299℃以上320℃以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[7] 引張速度5mm/分の条件で測定される引張弾性率が3450MPa以上5000MPa以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[8] 厚み精度が7%以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[9] 少なくとも一面における表面の算術平均高さが0.001〜1μmである、[1]〜[8]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[10] 少なくとも一面における表面の最大高さが0.1〜10μmである、[1]〜[9]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[11] 少なくとも一面における表面の算術平均粗さが0.005〜1μmである、[1]〜[10]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[12] 少なくとも一面における表面の最大高さ粗さが0.05〜5μmである、[1]〜[11]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[13] 相対結晶化度が50%以上である、[1]〜[12]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[14] フィルムである、[1]〜[13]のいずれかに記載の複合材料用部材。
[15] [1]〜[14]のいずれかに記載の複合材料用部材を強化繊維と複合させてなる、複合材料。
[16] プリプレグである、[15]に記載の複合材料。
[17] [15]又は[16]に記載の複合材料を用いた、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両である移動体。
[18] ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合部材用部材が板状部材であり、該板状部材の厚みが15μm超であることを特徴とする、複合材料用部材。
[19] 前記ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである、[18]に記載の複合材料用部材。
[20] 前記板状部材がフィルムである、[18]又は[19]に記載の複合材料用部材。
[21] ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有するフィルムの製造方法であって、該樹脂成分として分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下の樹脂成分を準備して押出機で溶融混練し、口金から溶融樹脂を押出し、該溶融樹脂をキャストロールで冷却させることによりフィルム形状とし、冷却後のフィルムの結晶化温度を299℃以上320℃以下とし、引張速度5mm/分の条件で測定される引張弾性率を3450MPa以上5000MPa以下とすることを特徴とする、フィルムの製造方法。
[22] 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である、[21]に記載のフィルムの製造方法。
本発明によれば、剛性、耐熱性及び生産性に優れる複合材料用部材並びにこれを用いた複合材料及び移動体を提供することが可能となる。
フィルムの製造方法の実施形態を模式的に示す要部説明図である。
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
本発明において「主成分」とは、対象物中の最も多い成分をさし、好ましくは対象物中の50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
本発明の一実施形態である複合材料用部材は、樹脂と数平均繊維長が5mm以上の強化繊維とを含む複合材料用の部材であって、該部材がポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有し、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である。
また、本発明の他の実施形態である複合材料用部材は、ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合部材用部材が板状部材であり、該板状部材の厚みが15μm超である。
好ましくは、前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である。以下、詳細に説明する。
<樹脂成分>
本発明の複合材料用部材に含まれる樹脂成分は、ポリアリールエーテルケトンを主成分として含み、分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であれば特に制限はない。
樹脂成分の分子量分布は3.8以上であり、3.9以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、4.1以上であることがさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましく、4.5以上であることが最も好ましい。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭い場合と比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化の際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。分子量分布が広いと、結晶化の際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上すると考えられる。分子量分布が前記下限値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性や剛性、生産性の向上に繋がる。
一方、樹脂成分の分子量分布は8以下であり、7以下であることが好ましく、6.5以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることがよりさらに好ましく、5.1以下であることがよりさらに好ましく、4.9以下であることが特に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。分子量分布が前記上限値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる。
樹脂成分の質量平均分子量は86000以下であり、83000以下であることが好ましく、80000以下であることがより好ましく、75000以下であることがさらに好ましく、72000以下であることがよりさらに好ましく、70000以下であることが特に好ましく、68000以下であることがとりわけ好ましく、65000以下であることが殊に好ましく、63000以下であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記上限値以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
一方、樹脂成分の質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、58000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。
樹脂成分中のポリアリールエーテルケトン、なかでも好ましく用いられるポリエーテルエーテルケトンの含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%超であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトン以外の樹脂を含む場合、ポリアリールエーテルケトンの含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することが容易となる。
ポリアリールエーテルケトンの改質を目的としてその他の樹脂成分をブレンドする場合、その種類は特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、脂肪族ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー並びにこれらの共重合体及びこれらの混合物等を用いることができる。なかでも、ポリアリールエーテルケトンと成形温度が近く、溶融成形時の分解や架橋を抑制しやすいという観点から、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマーが好適に使用でき、特にポリエーテルイミドが好適に使用できる。ポリアリールエーテルケトンとポリエーテルイミドは相溶性が高く、分子レベルで混合するため、ポリアリールエーテルケトンのガラス転移温度を向上させたり、結晶性を制御したりすることが容易となる。
また、ポリアリールエーテルケトンとしてポリエーテルエーテルケトンを用いる場合、その改質を目的としてブレンドする他の樹脂成分としては、上記ポリアリールエーテルケトンの改質目的に使用される樹脂と同様のものを用いることができるが、ポリエーテルエーテルケトン以外のポリアリールエーテルケトン、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンを、ポリエーテルエーテルケトンと併せて用いることも好ましい。
[ポリアリールエーテルケトン]
以下、ポリアリールエーテルケトンについて説明する。
ポリアリールエーテルケトンは、1つ以上のアリール基、1つ以上のエーテル基及び1つ以上のケトン基を含むモノマー単位を含有する単独重合体又は共重合体である。例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン等や、これらの共重合体(例えば、ポリエーテルケトン−ポリエーテルジフェニルエーテルケトン共重合体)を挙げることができる。なかでも、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れる点で、ポリエーテルエーテルケトンが特に好ましい。
ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は3.8以上であることが好ましく、3.9以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、4.1以上であることがよりさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましく、4.5以上であることが最も好ましい。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭い場合と比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化の際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。分子量分布が広いと、結晶化の際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上すると考えられる。分子量分布が前記下限値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性や剛性、生産性の向上に繋がる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることがより特に好ましく、5.1以下であることがとりわけ好ましく、4.9以下であることが殊に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。分子量分布が前記上限値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる。
ポリアリールエーテルケトンの質量平均分子量は86000以下であることが好ましく、83000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましく、75000以下であることがよりさらに好ましく、72000以下であることが特に好ましく、70000以下であることがとりわけ好ましく、68000以下であることが殊に好ましく、65000以下であることが殊更に好ましく、63000以下であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記上限値以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる。
一方、質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、58000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。
以下、ポリアリールエーテルケトンの中でも好ましく用いられるポリエーテルエーテルケトンについて説明する。
[ポリエーテルエーテルケトン]
ポリエーテルエーテルケトンは、少なくとも2つのエーテル基とケトン基とを構造単位として有する樹脂であればよいが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性に優れることから、好ましくは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。
Figure 2021107537
(上記一般式(1)において、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立に炭素原子数6〜24のアリーレン基を表し、また、それぞれ置換基を有していてもよい)
上記一般式(1)において、Ar1〜Ar3のアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。Ar1〜Ar3のアリーレン基としては、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、これらのうちフェニレン基が好ましく、p−フェニレン基であることがより好ましい。
Ar1〜Ar3のアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。Ar1〜Ar3が置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
なかでも、ポリエーテルエーテルケトンは、下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するものが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性の観点から好ましい。
Figure 2021107537
ポリエーテルエーテルケトンの分子量分布は3.8以上であることが好ましく、3.9以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、4.1以上であることが特に好ましく、4.2以上であることがとりわけ好ましく、4.5以上であることが最も好ましい。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭い場合と比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化の際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。分子量分布が広いと、結晶化の際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上しやすくなると考えられる。分子量分布が前記下限値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性や剛性、生産性の向上に繋がりやすい傾向となる。
一方、ポリエーテルエーテルケトンの分子量分布は8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることが特に好ましく、5.1以下であることがとりわけ好ましく、4.9以下であることが殊に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。分子量分布が前記上限値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる。
ポリエーテルエーテルケトンの質量平均分子量は86000以下であることが好ましく、83000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましく、75000以下であることがよりさらに好ましく、72000以下であることが特に好ましく、70000以下であることがとりわけ好ましく、68000以下であることが殊に好ましく、65000以下であることが殊に好ましく、63000以下であることが最も好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの質量平均分子量が前記上限値以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
一方、質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、58000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。
前記の分子量及び分子量分布は、用いる樹脂成分が溶解する溶離液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることができる。例えば、溶離液としてクロロフェノールと、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン、ブロモトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジブロモベンゼン、ジブロモトルエン等のハロゲン化ベンゼン類との混合液や、溶離液としてペンタフルオロフェノールとクロロホルムの混合液を用いることができる。
具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができるが、例えば以下の方法で測定することができる。
(1)ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂成分の非晶状態のフィルムを得る。例えば、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂ペレットを、例えば350〜400℃でプレスした後急冷するか、押出機でフィルム化する場合はキャストロールの温度を低く、例えば20〜140℃で冷却して非晶状態のフィルムを得る。
(2)前記フィルム9mgに、ペンタフルオロフェノール3gを加える。
(3)ヒートブロックを用い、100℃で60分間加熱溶解する。
(4)続いてヒートブロックから取り出し、放冷後、常温(約23℃)のクロロホルム6gを少しずつ静かに加え穏やかに振り混ぜる。
(5)その後0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)カートリッジフィルターでろ過して得られた試料について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定する。
ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は339℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、341℃以上であることがさらに好ましく、342℃以上であることが特に好ましい。ポリアリールエーテルケトンは広い分子量分布を有するため結晶化速度が大きく、結晶化度が高い複合材料用部材、結果として結晶融解温度が高い複合材料用部材が得られやすい。結晶融解温度が前記下限値以上であれば、得られる複合材料用部材は耐熱性に優れる傾向となる。一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は370℃以下であることが好ましく、365℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましく、355℃以下であることが特に好ましく、350℃以下であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解温度が前記上限値以下であれば、複合材料用部材製造時等の溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
なお、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は43J/g以上であることが好ましく、44J/g以上であることがより好ましく、45J/g以上であることがさらに好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解熱量が前記下限値以上であれば、得られる複合材料用部材は高い結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は60J/g以下であることが好ましく、55J/g以下であることがより好ましく、50J/g以下であることがさらに好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解熱量が前記上限値以下であれば、結晶化度が高すぎないため、複合材料用部材製造時等の溶融成形性に優れる傾向となり、得られる複合材料用部材は耐久性、耐衝撃性に優れる傾向となる。
なお、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から求めることができる。
ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度は299℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、301℃以上であることがさらに好ましく、302℃以上であることが特に好ましい。ポリアリールエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が前記下限値以上であれば、結晶化速度が大きく、複合材料用部材の生産性に優れる傾向となる。具体的には、例えばフィルムを作製する場合であれば、キャストロールをガラス転移温度以上結晶融解温度以下の温度に設定することで、キャストロールに樹脂が接触している間に結晶化が促進され結晶化フィルムが得られるが、降温過程の結晶化温度が前記下限値以上であれば、結晶化速度が大きく、キャストロールで結晶化を終えることができるため弾性率が高くなり、結果としてロールへの貼り付きが抑えられ、フィルムの外観が良くなる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度は320℃以下であることが好ましく、315℃以下であることがより好ましく、312℃以下であることがさらに好ましく、310℃以下であることが特に好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が前記上限値以下であれば、結晶化が速すぎないため、フィルム等の複合材料用部材成形時の冷却ムラが少なくなり、均一に結晶化した高品質な複合材料用部材が得られる傾向となる。
なお、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲400〜25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から求めることができる。
分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下の、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の製法により製造することができる。製造にあたっては、目的の分子量分布、質量平均分子量とするための条件を適宜選択して採用すればよい。具体的には例えば、重合時に仕込むモノマー、重合開始剤、触媒、必要に応じて添加される連鎖移動剤等の種類・量・濃度、それぞれの添加の仕方を調整したり、重合温度、重合時間、重合圧力等の重合条件を調整したりする方法を採用することが挙げられる。また、重合条件を段階的に変えて重合を行う所謂多段重合を採用してもよい。
<複合材料用部材>
上述したポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンを主成分として含み、分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である樹脂成分は、樹脂と樹脂を強化するための繊維(強化繊維)とを含む複合材料を得るための材料部材である複合材料用部材(以下「本部材」という場合がある)として好適に用いることができ、なかでも、樹脂と数平均繊維長が5mm以上の強化繊維とを含む複合材料用の部材としてより好適に用いることができる。本部材は、特に、上述した特定の分子量分布と質量平均分子量を有するポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンを含むことにより、得られる複合材料用部材は、剛性、耐熱性、生産性に優れる傾向となる。特定のポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトンを含むことによるこれらの利点は、強化繊維として数平均繊維長が5mm以上のものと複合させる場合に特に顕著となる。
本部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、充填材等の各種添加剤が含まれていてもよい。
本部材中の樹脂成分の割合、特にポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの割合としては、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、70質量%以上であることがとりわけ好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。本部材に含まれる樹脂成分、特にポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの割合が前記下限値以上であれば、耐熱性と剛性に優れる部材となりやすい。一方、上限については特に制限はなく、耐熱性や剛性といった特性を充分に発揮するためには樹脂成分、特にポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの割合はできるだけ高い方が好ましいが、樹脂成分、特にポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの改質を目的として添加剤、充填材等をさらに含む場合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。本部材に含まれる樹脂成分、特にポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの割合が前記上限値以下であれば、添加剤、充填材等をさらに含む場合に、それらの効果が充分に発揮されやすい。
本部材は、完全に結晶化していない状態でもよく、結晶化している状態でもよい。目的に応じて、製造過程において公知の手法を用いて結晶性を適宜調整することも可能である。一般に、結晶化していない状態では靱性に優れ、結晶化した状態では耐熱性や剛性に優れる。耐熱性や剛性等のより高い機能が求められる用途では、完全に結晶化していることが好ましい。なお、完全に結晶化しているとは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、結晶化に伴う発熱ピークが確認されないことを意味する。
[結晶融解温度]
本部材の結晶融解温度は、339℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、341℃以上であることがさらに好ましく、342℃以上であることが特に好ましい。本部材の結晶融解温度が前記下限値以上であれば、耐熱性に優れる傾向となる。一方、結晶融解温度は370℃以下であることが好ましく、365℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましく、355℃以下であることが特に好ましく、350℃以下であることが最も好ましい。本部材の結晶融解温度が前記上限値以下であれば、本部材を用いて強化繊維との複合材料を製造する際の繊維への含浸性等の二次加工性に優れる傾向となる。
なお、本部材の結晶融解温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
[結晶融解熱量]
本部材の結晶融解熱量は43J/g以上であることが好ましく、44J/g以上であることがより好ましく、45J/g以上であることがさらに好ましい。本部材の結晶融解熱量が前記下限値以上であれば、充分な結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。また、強化繊維との複合材料とした場合も、耐熱性と剛性に優れる傾向となる。一方、本部材の結晶融解熱量は60J/g以下であることが好ましく、55J/g以下であることがより好ましく、50J/g以下であることがさらに好ましい。本部材の結晶融解熱量が前記上限値以下であれば、結晶化度が高すぎないため、強化繊維との複合材料を製造する際の強化繊維への含浸性等の二次加工性に優れる傾向となる。
なお、本部材の結晶融解熱量は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解時の融解ピークの面積から求めることができる。
[結晶化温度]
本部材の降温過程における結晶化温度は299℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、301℃以上であることがさらに好ましく、302℃以上であることが特に好ましい。本部材の降温過程における結晶化温度が前記下限値以上であれば、結晶化速度が大きく、強化繊維との複合材料を生産する際のサイクルを短くすることができ生産性に優れる傾向となる。
一方、降温過程における結晶化温度は320℃以下であることが好ましく、315℃以下であることがより好ましく、312℃以下であることがさらに好ましく、310℃以下であることが特に好ましい。本部材の降温過程における結晶化温度が前記下限値以下であれば、結晶化が速すぎないため、強化繊維との複合材料製造時の冷却ムラが少なくなり、均一に結晶化した高品質な複合材料が得られる傾向となる。加えて、強化繊維との複合材料製造の際に強化繊維に本部材を充分に含浸させることが容易となり、得られる複合材料も均一に結晶化した高品質のものとなりやすい利点もある。
なお、本部材の結晶化温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲400〜25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から求めることができる。
[引張弾性率]
本部材の引張弾性率は3450MPa以上であることが好ましく、3500MPa以上であることがより好ましく、3550MPa以上であることがさらに好ましく、3600MPa以上であることが特に好ましい。本部材に用いられるポリアリールエーテルケトンは、分子量分布が広いため、剛性の高い結晶領域の割合が大きくなり、結果として引張弾性率が高くなりやすい。引張弾性率が前記下限値以上であれば剛性に優れ、得られる複合材料も剛性や強度に優れるものとなりやすい。
一方、引張弾性率は5000MPa以下であることが好ましく、4500MPa以下であることがより好ましく、4000MPa以下であることがさらに好ましく、3900MPa以下であることが特に好ましく、3800MPa以下であることが最も好ましい。引張弾性率が前記上限値以下であれば、剛性が高すぎることがなく、また得られる複合材料の賦形等の二次加工性にも優れる傾向となる。
なお、引張弾性率は、引張速度5mm/分の条件で測定するが、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[厚み精度]
本部材の形状がフィルム、シート、板状等の長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さい薄い平らな形状である場合は、本部材の厚み精度は7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましく、2.5%以下であることがとりわけ好ましく、2%以下であることが最も好ましい。厚み精度がかかる範囲であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械的物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。厚み精度の下限は特に限定されるものではなく0%であることが好ましいが、通常0.1%であり、0.3%であってもよく、0.5%であってもよく、0.8%であってもよく、1%であってもよい。
なお、厚み精度は、測定されるフィルム厚みの平均値と標準偏差から、下記の式1により算出することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[式1]
厚み精度(%)=標準偏差(μm)/平均値(μm)×100
[表面粗さ]
本部材の形状がフィルム、シート、板状等の長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さい薄い平らな形状である場合は、少なくとも一面(片面)の表面粗さが特定の範囲であることが好ましい。具体的には、本部材の少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)が後記する特定の範囲であることが好ましい。また、本部材の両面の表面粗さが後記する特定の範囲であることも好ましい。
[算術平均高さ(Sa)]
本部材の少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)は0.001μm以上であることが好ましく、0.003μm以上であることがより好ましく、0.005μm以上であることがさらに好ましく、0.006μm以上であることが特に好ましく、0.007μm以上であることが最も好ましい。また、算術平均高さ(Sa)は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがよりさらに好ましく、0.08μm以下であることが特に好ましく、0.05μm以下であることがとりわけ好ましく、0.01μm以下であることが最も好ましい。
算術平均高さ(Sa)が前記下限値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れた複合材料用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、算術平均高さ(Sa)が前記上限値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械的物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、算術平均高さ(Sa)は、白色干渉顕微鏡を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[最大高さ(Sz)]
本部材の少なくとも片面の最大高さ(Sz)は0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、0.6μm以上であることが特に好ましく、0.7μm以上であることが最も好ましい。また、最大高さ(Sz)は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、3μm以下であることがよりさらに好ましく、2.5μm以下であることが特に好ましく、2μm以下であることがとりわけ好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。
最大高さ(Sz)が前記下限値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れた複合材料用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、最大高さ(Sz)が前記上限値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械的物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、最大高さ(Sz)は、白色干渉顕微鏡を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[算術平均粗さ(Ra)]
本部材の少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)は0.005μm以上であることが好ましく、0.008μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましく、0.015μm以上であることが特に好ましく、0.02μm以上であることが最も好ましい。また、算術平均粗さ(Ra)は1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.3μm以下であることがよりさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましく、0.15μm以下であることがとりわけ好ましく、0.1μm以下であることが最も好ましい。
算術平均粗さ(Ra)が前記下限値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れた複合材料用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、算術平均粗さ(Ra)が前記上限値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械的物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準拠し接触式表面粗さ計を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[最大高さ粗さ(Rz)]
本部材の少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)は0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましく、0.15μm以上であることが最も好ましい。また、最大高さ粗さ(Rz)は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、0.8μm以下であることがとりわけ好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。
最大高さ粗さ(Rz)が前記下限値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れた複合材料用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、最大高さ粗さ(Rz)が前記上限値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械的物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B0601:2013に準拠し接触式表面粗さ計を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[相対結晶化度]
本部材の相対結晶化度は30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることがよりさらに好ましく、70%以上であることがよりさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることがとりわけ好ましく、95%以上であることが最も好ましい。また、上限は、通常100%である。本部材の相対結晶化度が、前記下限値以上であると、本部材と強化繊維とを加熱圧着させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することが容易となり、また、耐熱性や剛性により優れたものとすることができる。
なお、相対結晶化度は、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から下記の式2を用いて算出することで得られる。
[式2]
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:本部材の10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:本部材の10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)
なお、再結晶化ピークが複数存在する場合はその熱量の合計をΔHcとし、結晶融解ピークが複数存在する場合はその熱量の合計をΔHmとして算出する。示差走査熱量計で測定した際に再結晶化ピークが見られないもの(ΔHc=0J/g)を結晶化した本部材、再結晶化ピークが見られるものを完全に結晶化していない本部材ということができる。
[比重]
本部材の比重は、1.24以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、1.27以上であることがさらに好ましく、1.28以上であることが特に好ましい。相対結晶化度と比重は相関があり、通常は、相対結晶化度が高いほど、比重が高いものとなりやすい。そのため、比重が前記下限値以上であると、本部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、また、耐熱性や剛性に優れたものとすることができる傾向となる。一方、本部材の比重は、1.35以下であることが好ましく、1.34以下であることがより好ましい。
なお、比重は、JIS K7112:1999(D法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件により測定した値である。
[加熱収縮率]
本部材の加熱収縮率は、3%以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましく、2.2%以下であることがよりさらに好ましく、1.8%以下であることがよりさらに好ましく、1.5%以下であることが特に好ましく、1.2%以下であることがとりわけ好ましく、0.8%以下であることが殊に好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。加熱収縮率を前記上限値以下とすることにより、本部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、得られる複合材料もシワ等の外観不良が発生しにくい傾向となる。本部材の加熱収縮率の下限は特に限定されるものではなく0%であることが好ましいが、0.1%であってもよく、0.2%であってもよい。
加熱収縮率は、フィルム状等とした本部材から切り出した大きさ120mm×120mmの試験片に、樹脂の流れ方向(MD)に直交する方向(TD)に100mm間隔の標線を付け、この試験片を200℃の環境下に10分間静置し、加熱前後の標線間距離から、下記の式3により求められる。
[式3]
加熱収縮率(%)=[(加熱前の標線間距離−加熱後の標線間距離)/加熱前の標線間距離]×100
[加熱収縮応力]
本部材の加熱収縮応力は、2mN以下であることが好ましく、1.7mN以下であることがより好ましく、1.5mN以下であることがさらに好ましく、1.2mN以下であることがよりさらに好ましく、1mN以下であることがより好ましく、0.8mN以下であることがさらに好ましく、0.5mN以下であることが特に好ましく、0.3mN以下であることが最も好ましい。加熱収縮応力を前記上限値以下とすることにより、本部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、得られる複合材料もシワ等の外観不良が発生しにくい傾向となる。本部材の加熱収縮応力の下限は特に限定されるものではなく0mNであることが好ましい。
加熱収縮応力は、以下の方法で求めることができる。
フィルム状等とした本部材から長さ10mm、幅3mmの短冊状の試験片を切り出し、熱機械分析装置(例えば、日立ハイテクサイエンス社製熱機械分析装置「TMA7100」)を用いて、試験片の一端を荷重検出器のチャックに、他端を固定チャックにセットし、荷重をかけない状態で室温(23℃)から340℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、145℃における応力値を測定する。樹脂の流れ方向(MD)とそれと直交する方向(TD)についてそれぞれ測定を行い、応力値が大きい方を本発明の加熱収縮応力とする。
本部材の形状としては特に限定はなく、フィルム、板、繊維、ボトル、チューブ、棒、ペレット等のいずれの形状であってもよいが、フィルム、板、繊維であることが好ましく、フィルム、板であることがより好ましく、フィルムであることがさらに好ましい。
本部材の厚みは15μm超であり、17μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることがとりわけ好ましく、60μm以上であることが最も好ましい。一方、本部材の厚みは500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましく、350μm以下であることがよりさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましく、250μm以下であることがとりわけ好ましく、200μm以下であることが最も好ましい。本部材の厚みがかかる範囲であれば、厚みが薄過ぎも厚過ぎもしないため、機械特性、製膜性、絶縁性等のバランス、強化繊維と複合する際の二次加工性に優れる傾向となる。
なお、本部材の厚みとは、具体的には実施例の方法により測定される平均厚みをいい、本部材の形状がフィルム、板、ボトル、チューブ等の場合はその平均厚み、本部材の形状が繊維、棒、ペレット等の場合は平均径をいい、これら平均値は実施例に記載の手法により算出することができる。
なお、本部材が板状部材である場合、板状部材の「板状」としては、最大厚みが任意の平らな形状をいい、厚み1mm以上のいわゆる板だけでなく、厚み1mm未満のフィルムも含む趣旨である。板状部材としては薄い板状が好ましく、その厚みは2mm以下が好ましく、1mm未満がより好ましく、500μm以下がさらに好ましく、400μm以下が特に好ましく、300μm以下がとりわけ好ましく、250μm以下が最も好ましい。下限値は通常3μmである。
また、ペレット等の形状のものを用いる場合は、原料の樹脂をそのまま用いてもよいし、ペレット状等に加工したものであってもよい。また、その他の形状である場合は、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、溶融流延法等の流延成形、プレス成形等によって成形して、各種形状、好ましくはフィルム、板等の部材に成形できる。それぞれの成形方法において、装置及び加工条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。特に、後述の強化繊維との複合材料とする際の加工性の観点から、押出成形法、特にTダイ法によってフィルムとされた複合材料用部材であることが好ましい。
なお、本発明においてフィルムは、シートを包含するものとする。一般的にフィルムとは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的にシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでないため、本発明においては、フィルムはシートを包含するものとする。よって、「フィルム」は「シート」であってもよい。
<フィルムの製造方法>
本部材がフィルムである場合、フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができる。複合材料を製造する際の二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、フィルムの配向を制御する目的で積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法等の押出成形等においてキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムや、延伸ロールでの延伸倍率が2倍未満であるフィルムも含むものとする。
無延伸フィルムの場合、フィルムの構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、320℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。溶融温度を前記下限値以上とすることで、ペレット等の原料の結晶が充分に融解しフィルムに残りにくくなるため、耐折回数、パンクチャー衝撃強度等が向上しやすくなる。一方、溶融温度は450℃以下であることが好ましく、430℃以下であることがより好ましく、410℃以下であることがさらに好ましく、390℃以下であることが特に好ましい。溶融温度を前記上限値以下とすることで、溶融成形時に樹脂が分解しにくく分子量が維持されやすいため、フィルムの耐熱性、引張弾性率が向上する傾向となる。
冷却は、例えば、冷却されたキャストロール等の冷却機に溶融樹脂を接触させることにより行うことができる。冷却温度(例えば、キャストロールの温度)は、結晶化したフィルムを作製するか、完全に結晶化していないフィルムを作製するかによって異なる。結晶化したフィルムを作製する場合、所望の結晶化度になるように冷却温度を適宜選択すればよい。前記冷却温度としては、本部材に含まれる樹脂成分のガラス転移温度から30〜150℃高い温度であることが好ましく、35〜140℃高い温度であることがより好ましく、40〜135℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を前記範囲とすることで、フィルムの冷却速度を遅くすることができ、相対結晶化度を高くすることができる傾向がある。
例えば、樹脂成分としてポリエーテルエーテルケトンを含む場合、冷却温度(キャストロール温度)は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。より高い結晶化度のフィルムを得る場合は、冷却温度(キャストロール温度)は210℃以上であることが特に好ましく、220℃以上であることが最も好ましい。一方、冷却温度(キャストロール温度)は300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることがさらに好ましく、260℃以下であることが特に好ましく、250℃以下であることがとりわけ好ましく、240℃以下であることが最も好ましい。
高分子材料の結晶化速度は、結晶の核形成速度と成長速度のバランスから、ガラス転移温度と結晶融解温度との間の温度域で最大化すると考えられる。相対結晶化度の高いフィルムを作製する場合に、冷却温度(キャストロール温度)の下限と上限がかかる範囲であれば、結晶化速度が最大となり、生産性に優れた結晶化フィルムが得られやすい。
一方、完全に結晶化していないフィルムを作製する場合には、溶融状態から一気にガラス転移温度以下に急冷し、結晶が成長できない領域まで分子の運動性を低下させることが重要である。この場合、冷却温度(例えば、キャストロール温度)は50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。一方、冷却温度(キャストロール温度)は150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましい。完全に結晶化していないフィルムを作製する場合、冷却温度(キャストロール温度)がかかる範囲であれば、急冷によるシワや貼り付き等のない、外観良好なフィルムが得られやすい。
なお、前記ガラス転移温度とは、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分の条件で測定される値をいう。また、複数種の樹脂の混合物でガラス転移温度が複数存在する場合は、最も高いガラス転移温度を樹脂成分のガラス転移温度とみなし、冷却温度を調整すればよい。
本部材の相対結晶化度を前記所望の範囲とするには、例えば、本部材がフィルムである場合、押出成形を採用し、フィルムを押し出す際の条件を適宜調整する方法が好ましいが、本発明においては、以下の(1)〜(4)の方法を採用することがより好ましい。これらの方法は、組み合わせて用いてもよい。なかでも、得られる複合材料によりシワが発生しにくく、エネルギー消費の少ない(1)の方法が好ましい。
(1)溶融樹脂を冷却しフィルム形状とする際の冷却条件を調整する方法。前記冷却は例えば、冷却機としてキャストロールを用い、押し出された溶融樹脂をキャストロールに接触させることにより行うことができるが、具体的には、以下の方法を採用することが好ましい。
冷却温度を樹脂成分のガラス転移温度より30〜150℃高い温度とする方法が挙げられる。冷却温度は樹脂成分のガラス転移温度より35〜140℃高い温度であることがより好ましく、40〜135℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を前記範囲とすることで、フィルムの冷却速度を遅くすることができ、相対結晶化度を高くすることができる傾向がある。
特に、樹脂成分としてポリエーテルエーテルケトンを主成分として含む場合、冷却温度は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、210℃以上であることが特に好ましい。
一方、冷却温度は300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましく、250℃以下であることが特に好ましく、240℃以下であることが最も好ましい。
(2)加熱ロールを用いフィルムを再加熱する方法。具体的には、縦延伸機等のキャストロールとは別のロールで加熱する方法が挙げられる。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
(3)オーブンでフィルムを再加熱する方法。具体的には、フローティングドライヤー、テンター、バンドドライヤー等の乾燥装置にフィルムを通し、熱風で加熱する方法が挙げられる。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
(4)赤外線でフィルムを再加熱する方法。具体的には、セラミックヒーター等の遠赤外線ヒーターをロール間に設置しロールtoロールでフィルムを加熱してもよいし、遠赤外線乾燥機にフィルムを通し加熱してもよい。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
なお、前記(2)〜(4)の処理は、フィルム製造ライン中にそのための設備を設けフィルム製造の際に同時に行ってもよいし、一度ロール状にフィルムを巻き取った後、このフィルムロールについて製造ライン外のこれら設備によって行ってもよい。
また、本部材の算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写等の転写処理、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、表面結晶化や、樹脂成分を支持体上に塗布、乾燥、熱処理することによって本部材を得る流延工程においては、支持体として用いる金属ロール、エンドレス金属ベルト、高分子フィルム等の表面粗さを研磨等により適宜調整する方法等種々の方法を用いることができる。なかでも、溶融樹脂をフィルム状に押し出しながら連続的に均一に表面粗さを調整しやすい点から、キャストロール等のロール上にフィルム状の溶融樹脂をキャスティングすることにより所望の粗さに調整する方法が好ましい。この場合、キャストロールの算術平均粗さ等の表面粗さを調整することにより、樹脂フィルムの表面粗さを調整することができる。
さらに、本部材の厚み精度を所望の範囲に調整する方法としては、特に制限はないが、例えば、本部材がフィルムである場合、押出成形を採用し、フィルムを押し出す際の条件を適宜調整すればよい。具体的には、例えば、
(1)Tダイ等のダイのリップボルトを機械的に回転させてリップ開度を調整する方法
(2)ダイリップに一定間隔で加熱装置を付けそれらを個別に温度調整して、溶融樹脂の粘度の温度変化を利用しフィルム厚みを調整する方法
(3)フィルム状に押し出された溶融樹脂の膜振動や脈動ができるだけ発生しないように、ダイとキャストロールとの距離を調整する方法
(4)フィルム状に押し出された溶融樹脂がキャストロールに接触する際に周囲の空気等の気体の流れにより脈動しないように、プレートや覆いを設置して空気の流れを遮断する方法
(5)フィルム状に押し出す際の吐出量の変動が起きないように調整する方法
(6)キャストロールの回転変動率を小さくしロールの回転むらを抑える方法
(7)フィルム状に押し出された溶融樹脂に高電圧を印加した電極より静電荷を付与し、静電気力でキャストロールに密着させる方法(静電密着法)
(8)フィルム状に押し出された溶融樹脂にカーテン状の圧縮空気を吹き付け、キャストロールに密着させる方法
(9)フィルム状に押し出された溶融樹脂をニップロールによってキャストロールに密着させる方法
等が挙げられる。
本部材をフィルムで使用する場合、フィルムの厚みには特に制限はないが、通常3μm以上であり、6μm以上であることが好ましく、9μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましく、15μm超であることがよりさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、35μm以上であることがとりわけ好ましく、50μm以上であることが殊に好ましく、60μm以上であることが最も好ましい。一方、フィルムの厚みは500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましく、350μm以下であることがよりさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましく、250μm以下であることがとりわけ好ましく、200μm以下であることが最も好ましい。フィルムの厚みがかかる範囲であれば、厚みが薄過ぎも厚過ぎもしないため、機械特性、製膜性、絶縁性等のバランス、強化繊維と複合する際の二次加工性に優れる傾向となる。
なお、フィルムの厚みは、具体的には実施例の方法により測定される平均厚みをいう。
また、本部材がフィルムである場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層を積層させた多層フィルムとすることもできる。多層化の方法は、例えば、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の公知の方法を用いることができる。
[用途・使用態様]
本部材は、剛性、耐熱性、生産性に優れるため、樹脂と強化繊維、特に数平均繊維長が5mm以上の強化繊維との複合用の材料として用いることができる。特に、本部材がフィルムである場合に、数平均繊維長が5mm以上の強化繊維との複合用の材料として好適に使用することができる。
数平均繊維長が5mm以上の強化繊維の種類は、特に限定されるものでないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、液晶ポリマー繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等の有機繊維、アルミニウム繊維、マグネシウム繊維、チタン繊維、SUS繊維、銅繊維、金属を被覆した炭素繊維等の金属繊維などが挙げられる。これらの中でも、剛性、軽量性の観点から、炭素繊維が好ましい。
炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等があるが、いずれの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維で、12000〜48000フィラメントのストランド又はトウが、工業的規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
数平均繊維長は5mm以上であり、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることが特に好ましく、50mm以上であることが最も好ましい。また、強化繊維は連続繊維であることも好ましい。数平均繊維長を前記下限値以上とすることで、得られる複合材料の機械特性を充分なものとしやすい傾向となる。数平均繊維長の上限は特に限定されないが、強化繊維の形状が後述するような織物、編物、不織布等の非連続繊維の場合は、数平均繊維長は500mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。数平均繊維長を前記上限値以下とすることにより、複合材料を用いて最終製品、特に複雑形状の最終製品を成形する際の複雑形状部への強化繊維の充填性を充分なものとし、当該部位の強度低下の発生を抑制しやすい傾向となる。
なお、強化繊維の数平均繊維長は、走査型電子顕微鏡等の電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて強化繊維を観察した際に、最も長さが長く観察される部分の平均長さをいう。具体的には、複合材料中に存在する強化繊維の長さ方向が観察可能な断面に対して観察を行い、測定された繊維長を数平均化することで求めることができる。
また別の方法として、溶媒等により樹脂成分を除去した強化繊維を適当な分散剤に分散させた分散液を薄膜ラミネートし、強化繊維をスキャナー等で撮影した画像を用いて、画像処理ソフト等により数平均繊維長を求める方法も挙げられる。
強化繊維の形状も、特に限定されるものではなく、チョップドストランド、ロービング等の繊維束や、平織、綾織等の織物、編物、不織布、繊維ペーパー、UD材(一方向性(uni directional)材)等の強化繊維シートのうちから、必要に応じて適宜選択することができる。
強化繊維と本部材との複合化の方法は特に制限はなく、樹脂フィルム含浸法(フィルムスタッキング法)、混織法、溶融法、溶剤法等、従来公知の方法を採用することにより、強化繊維束や強化繊維シート中に本部材を含浸又は半含浸させたプリプレグ等の複合材料を製造することができる。本発明においては、これらの中でも、樹脂フィルム含浸法(フィルムスタッキング法)を採用することが好ましい。
具体的には、前述の強化繊維シートの片面又は両面に本部材を重ね合わせて加熱・加圧することにより強化繊維シート中に本部材の樹脂成分を溶融・含浸させてプリプレグとすることができる。この際、加熱、加圧の条件を調整することにより、含有する空隙量を制御したプリプレグを得ることができる。なお、プリプレグには、加圧工程を省略して、強化繊維シートに本部材を熱融着により仮接着させる形態も含まれる。このように仮接着させたプリプレグ、特に空隙を多く含むものである場合は、製造にかかる時間を短縮でき製造コストの低減に繋がるとともに、柔軟性を有するため実形状に合わせて変形しやすいという利点がある。なお、上述の手法は、本部材がフィルムである場合に好適に用いることができる。
このプリプレグを、オートクレーブ成形、インフュージョン成形、ヒートアンドクールプレス成形、スタンピング成形、ロボットによる自動積層成形等の公知の工程に供することにより、複合材料製品を得ることができ、その成形条件は含有する空隙量により選択できる。プリプレグ作製時に使用するフィルム等の本部材には、強化繊維シートへの含浸性、熱融着性等の二次加工性に加え、強化繊維と複合する際の成形サイクルに優れることが求められるが、本部材は、特定の分子量分布、質量平均分子量のポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンを含み結晶化速度が速いため成形サイクルが短く生産性に優れ、得られる複合材料も剛性、耐熱性に優れるものとなるため、特に好適に使用できる。
このようにして得られる複合材料中の強化繊維の含有割合は、弾性率、強度の観点から、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることがさらに好ましい。一方、複合材料中の強化繊維の含有割合は90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましく、70体積%以下であることがさらに好ましい。
本部材と強化繊維とを複合させてなる複合材料は、その耐熱性、軽量性、機械的強度等から、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両といった移動体や、スポーツ用品、家電製品、建築資材等に好適に用いることができるが、特に、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両といった移動体の構成部材として工業的に有用である。
また、本発明では、樹脂成分としてポリアリールエーテルケトンを主成分として含有するフィルムの製造方法を開示する。なかでも、ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである場合に、下記製造方法を好適に採用することができる。
具体的には、分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下の樹脂成分を準備して押出機で溶融混練し、口金から溶融樹脂を押出し、該溶融樹脂をキャストロールで冷却させることによりフィルム形状とし、冷却後のフィルムの結晶化温度を299℃以上320℃以下とし、引張速度5mm/分の条件で測定される引張弾性率を3450MPa以上5000MPa以下とすることを特徴とする、フィルムの製造方法である。
さらに、本発明のフィルムの製造方法においては、前記冷却後のフィルムの結晶融解熱量を43J/g以上60J/g以下とするフィルムの製造方法も開示する。
上述の製造方法においては、前記ポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であることが好ましい。
上述のような結晶化温度、引張弾性率を有し、好ましくは結晶融解熱量が43J/g以上60J/g以下であるフィルムを製造するためには、原料として用いるポリアリールエーテルケトンの選定、フィルムを押し出す際の条件等を適宜調整すればよいが、本発明においては、以下の(1)〜(4)の方法を採用することが好ましい。
(1)原料として用いるポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンとして、分子量分布が3.8以上8以下であり、質量平均分子量が86000以下のものを用いる。その他、ポリアリールエーテルケトン、好ましくはポリエーテルエーテルケトンの物性等の詳細は、上述した複合材料用部材に用いるポリアリールエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンにおけるものと共通するので、ここでは説明を省略する。
(2)押出機での溶融混練の温度を調整する。具体的には、押出機の出口における樹脂温度を350℃以上とすることが好ましく、360℃以上とすることがより好ましく、370℃以上とすることがさらに好ましく、380℃以上とすることが特に好ましい。押出機出口における樹脂温度を前記下限値以上とすることで、ペレットが充分に溶融し吐出が安定するだけでなく、得られるフィルムの外観も優れたものになりやすい。一方、溶融温度は450℃以下とすることが好ましく、430℃以下とすることがより好ましく、410℃以下とすることがさらに好ましい。樹脂温度を前記上限値以下とすることで、溶融成形時に樹脂が分解しにくく分子量が維持されやすいため、引張弾性率が向上する傾向となる。
(3)溶融樹脂を冷却しフィルム形状とする際の冷却条件を調整する。冷却は例えば、冷却機としてキャストロールを用い、押し出された溶融樹脂をキャストロールに接触させることにより行うことができるが、具体的には、以下の(3−1)、(3−2)の方法を採用することが好ましい。
(3−1)キャストロールの温度を調整する。具体的には、キャストロールの温度をポリアリールエーテルケトンのガラス転移温度から30〜150℃高い温度とすることが好ましく、35〜140℃高い温度とすることがより好ましく、40〜135℃高い温度とすることが特に好ましい。より具体的には、ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである場合は、キャストロールの温度を180℃以上とすることが好ましく、190℃以上とすることがより好ましく、200℃以上とすることがさらに好ましい。一方、キャストロールの温度は280℃以下とすることが好ましく、270℃以下とすることがより好ましく、260℃以下とすることがさらに好ましく、250℃以下とすることが特に好ましく、240℃以下とすることが最も好ましい。
(3−2)溶融樹脂が口金から押し出されてから冷却が開始されるまでの時間を調整する。該時間は、例えば、口金からキャストロールまでの距離で調整可能であり、その距離を短くすることにより、溶融樹脂が押し出されてから冷却が開始されるまでの時間を短くすることができ、一方、その距離を長くすることにより冷却の開始を遅らせることができる。押し出された溶融樹脂の樹脂温度、キャストロールの温度等を鑑み、該距離を適宜調整すればよいが、該距離は5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましく、100mm以下であることが好ましく、70mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることがさらに好ましい。
(4)キャストロールを用いる場合、キャストロールへ溶融樹脂を接触させる際の接触角度θを調整する。キャストロールと圧着ロールとの接触点に垂直に溶融樹脂を落とすのではなく、図1に示すように、キャストロールの中心側に少しずらせて口金から溶融樹脂を落としキャストロールに接触させることにより、溶融樹脂を冷却させフィルム形状とする際の波打ちやしわ等の問題が発生しにくく、均一に結晶化したフィルムが得られやすくなる。なお、接触角度θとは、図1に示すように、圧着ロール3とキャストロール4との接触点と口金とを結ぶ直線と、該接触点からの鉛直線(図1の点線)とで形成される角度のことをいい、θは1°以上であることが好ましく、2°以上であることがより好ましく、3°以上であることがさらに好ましく、10°以下であることが好ましく、8°以下であることがより好ましく、5°以下であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法により得られるフィルムは、剛性、耐熱性、生産性に優れるため、樹脂と強化繊維、特に数平均繊維長が5mm以上の強化繊維との複合用の材料に好適である。また、本発明の製造方法により得られるフィルムを強化繊維と複合させてなる複合材料は、その耐熱性、軽量性、機械的強度等から、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両といった移動体や、スポーツ用品、家電製品、建築資材等に好適に用いることができるが、特に、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両といった移動体の構成部材として工業的に有用である。これらの事項の詳細は、上述した複合材料用部材及び複合材料におけるものと共通するので、ここでは説明を省略する。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.フィルムの製造
実施例及び比較例においては、表1に記載の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、結晶融解温度(Tm)、結晶融解熱量(ΔHm)、結晶化温度(Tc)を有するポリエーテルエーテルケトンを原料として用い、フィルムを製造した。
(実施例1及び比較例1、2)
表1に記載のポリエーテルエーテルケトンの原料ペレットをΦ40mm単軸押出機に投入して混練しながら溶融させ、口金(Tダイ)から押出し、キャストロール(算術平均粗さ(Ra)が0.03μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.34μm)に密着・冷却させ、厚み100μmの結晶化フィルムを得た。押出機、導管、口金(Tダイ)の温度は380℃とし、キャストロールの温度は210℃、ダイリップのリップクリアランスの調整を適宜行って製膜した。なお、押出機出口の樹脂温度は400℃であった。得られた厚み100μmの結晶化フィルムについて、下記記載の方法で結晶融解温度、結晶融解熱量、結晶化温度及び引張弾性率の評価を行った。
また、厚みを50μmとすること以外は同じ条件で別途厚み50μmの結晶化フィルムを作製し、このフィルムについて、厚み精度、表面粗さ、相対結晶化度、比重、加熱収縮率及び加熱収縮応力の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
(実施例2)
キャストロールの温度を140℃、厚みを50μmとする以外は実施例1と同様にして、厚み50μmのフィルムを作製し、各物性の評価を行った。その評価結果を表1に併せて示す。
2.樹脂原料及びフィルムの評価
上記実施例及び比較例で使用した樹脂原料及び上述の方法で得られたフィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。なお、フィルムの「縦」とは、口金(Tダイ)からフィルムが押し出されてくる方向(MD)を指し、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」(TD)とする。
(1)分子量分布(Mw/Mn)、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
原料樹脂ペレットについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(HLC−8320GPC(東ソー社製))を用いて、下記条件で測定した。
・カラム:TSKgel guardcolumn SuperH−H(4.6mmI.D.×3.5cm)+TSKgel SuperHM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本(東ソー社製)
・溶離液:ペンタフルオロフェノール/クロロホルム=1/2(質量比)
・検出器:示差屈折率計、polarity=(+)
・流速:0.6mL/分
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.1質量%
・試料注入量:20μL
・検量線:標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いた3次近似曲線
(2)結晶融解温度(Tm)
原料樹脂ペレット及び上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7121:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めた。
(3)結晶融解熱量(ΔHm)
原料樹脂ペレット及び上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7122:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から結晶融解熱量を求めた。
(4)結晶化温度(Tc)
原料樹脂ペレット及び上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7121:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲400〜25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から求めた。
(5)引張弾性率
上述の方法で得られたフィルムから長さ400mm、幅5mmの短冊状試験片を作製し、インテスコ社製「引張圧縮試験機205型」を用い、チャック間距離300mm、引張速度5mm/分の条件で、23℃における引張弾性率を測定し、剛性の指標とした。フィルムの縦方向、横方向でそれぞれ測定を行い、得られた測定値の平均値を採用した。
(6)厚み精度
1μm単位の分解能をもつマイクロメーターを用い、上述の方法で得られたフィルムの幅方向の中央部について、フィルム縦方向(樹脂の流れ方向:MD)に10mm間隔で30点、厚みを測定した。得られた測定結果の平均値と標準偏差から、下記の式1を用いて厚み精度を算出した。
[式1]
厚み精度(%)=標準偏差(μm)/平均値(μm)×100
(7)表面粗さ
(7−1)算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)
フィルム製膜の際にキャストロールに接した側の面について、BRUKER社製白色干渉顕微鏡「ContourGT-X」を用いて、接眼レンズ倍率1.0倍、対物レンズ倍率20倍、計測エリア縦235μm×横313μmの条件で測定を行い、ガウシアン関数でスムージング処理を実施した後に算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)を計算した。
(7−2)算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)
フィルム製膜の際にキャストロールに接した側の面について、小坂研究所社製接触式表面粗さ計「Surf Coder ET4000A」を用いて、触針先端半径0.5mm、測定長さ8.0mm、基準長さ8.0mm、カットオフ値0.8mm、測定速度0.2mm/秒の条件でフィルム縦方向(樹脂の流れ方向)に測定を行い、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を計算した。
(8)相対結晶化度
上述の方法で得られたフィルムについて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、フィルムを10℃/分の昇温速度で加熱し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から下記の式2を用いて、相対結晶化度を算出した。
[式2]
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:フィルムの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:フィルムの10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)
(9)比重
上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7112:1999(D法)に準拠して、温度23℃の条件により比重を測定した。
(10)加熱収縮率
上述の方法で得られたフィルムから切り出した大きさ120mm×120mmの試験片に、フィルムの横方向に100mm間隔の標線を付け、この試験片を200℃の環境下に10分間静置し、加熱前後の標線間距離から、下記の式3により求めた。
[式3]
加熱収縮率(%)=[(加熱前の標線間距離−加熱後の標線間距離)/加熱前の標線間距離]×100
(11)加熱収縮応力
上述の方法で得られたフィルムから長さ10mm、幅3mmの短冊状の試験片を切り出し、日立ハイテクサイエンス社製熱機械分析装置「TMA7100」を用いて、試験片の一端を荷重検出器のチャックに、他端を固定チャックにセットし、荷重をかけない状態で室温(23℃)から340℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、145℃における応力値を測定した。フィルムの縦方向と横方向についてそれぞれ測定を行い、応力値が大きい方向の値を加熱収縮応力(mN)とした。
なお、本測定方法において、加熱収縮応力がマイナスの値は、加熱収縮がないことを意味する。
Figure 2021107537
実施例1、2は、用いた樹脂成分の分子量分布が3.8以上であるため、冷却時の結晶化温度が高い、すなわち結晶化速度が速いため、キャストロールからフィルムが離れる際に充分に結晶化しており、生産性に優れていることが分かる。さらに、強化繊維と複合する際等においても、冷却時の結晶化速度が速い、すなわち成形サイクルが短いといった効果も得られる。加えて、得られたフィルムは結晶融解熱量が高い、すなわち結晶化度が高く、引張弾性率も高いことが分かる。また、結晶融解温度も高く、充分な耐熱性を有していることが分かる。
一方、比較例1は、用いた樹脂成分の分子量分布が3.8未満であるため、冷却時の結晶化温度が低い、すなわち結晶化速度が遅いため、生産性に劣ることが分かる。また、得られたフィルムは実施例1に比べ結晶融解熱量が小さい、すなわち結晶化度が低く、加えて引張弾性率も実施例1に比べ若干低くなった。また、結晶融解温度も2℃低い結果となった。
特に、実施例1と比較例1とを比較すると、比較例1の方が質量平均分子量が小さく結晶構造を取りやすいはずであるが、実施例1の方が結晶化温度、結晶融解温度ともに高く、結晶融解熱量も大きいことから、分子量分布の影響が強く反映されていることが分かる。
比較例2は、質量平均分子量が86000を超え大きいため、結晶融解温度が低く耐熱性に劣ることが分かる。また、結晶化温度も低く、結晶融解熱量も小さく、引張弾性率も低下していることが分かる。
なお、実施例1、比較例1、2のフィルムは、DSC昇温過程において結晶化に伴う発熱ピークが確認されず、完全に結晶化していること(相対結晶化度100%)を確認した。
1 ダイス
2 口金
3 圧着ロール
4 キャストロール
5 フィルム

Claims (22)

  1. ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合材料用部材の厚みが15μm超であり、該複合材料が樹脂と数平均繊維長が5mm以上の強化繊維とを含む複合材料であることを特徴とする、複合材料用部材。
  2. 前記ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである、請求項1に記載の複合材料用部材。
  3. 前記樹脂成分中のポリアリールエーテルケトンの含有割合が90質量%超である、請求項1又は2に記載の複合材料用部材。
  4. 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  5. 結晶融解熱量が43J/g以上60J/g以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  6. 結晶化温度が299℃以上320℃以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  7. 引張速度5mm/分の条件で測定される引張弾性率が3450MPa以上5000MPa以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  8. 厚み精度が7%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  9. 少なくとも一面における表面の算術平均高さが0.001〜1μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  10. 少なくとも一面における表面の最大高さが0.1〜10μmである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  11. 少なくとも一面における表面の算術平均粗さが0.005〜1μmである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  12. 少なくとも一面における表面の最大高さ粗さが0.05〜5μmである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  13. 相対結晶化度が50%以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  14. フィルムである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合材料用部材。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の複合材料用部材を強化繊維と複合させてなる、複合材料。
  16. プリプレグである、請求項15に記載の複合材料。
  17. 請求項15又は16に記載の複合材料を用いた、航空機、自動車、船舶又は鉄道車両である移動体。
  18. ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有する複合材料用部材であって、該樹脂成分の分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下であり、該複合部材用部材が板状部材であり、該板状部材の厚みが15μm超であることを特徴とする、複合材料用部材。
  19. 前記ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである、請求項18に記載の複合材料用部材。
  20. 前記板状部材がフィルムである、請求項18又は19に記載の複合材料用部材。
  21. ポリアリールエーテルケトンを主成分として含む樹脂成分を含有するフィルムの製造方法であって、該樹脂成分として分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下の樹脂成分を準備して押出機で溶融混練し、口金から溶融樹脂を押出し、該溶融樹脂をキャストロールで冷却させることによりフィルム形状とし、冷却後のフィルムの結晶化温度を299℃以上320℃以下とし、引張速度5mm/分の条件で測定される引張弾性率を3450MPa以上5000MPa以下とすることを特徴とする、フィルムの製造方法。
  22. 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.8以上8以下、質量平均分子量が86000以下である、請求項21に記載のフィルムの製造方法。
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