JP2021107141A - フィルムの製造方法 - Google Patents

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上田 忠
Tadashi Ueda
忠 上田
大輔 齋藤
Daisuke Saito
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Abstract

【課題】摩擦係数が大きい樹脂ペレットであっても円滑な押出を行うことができ、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる、フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】ペレット状の樹脂を、フィード装置から単軸の押出機に供給する供給工程、及び供給された前記樹脂を前記押出機により押出す押出工程を含む、フィルムの製造方法。前記フィード装置は、定量フィーダーを含み、前記押出機は、バレル、及び前記バレル内に設けられたスクリューを含み、前記押出工程は、前記スクリューを回転させることにより前記樹脂を前記バレルの上流側から下流側へ押し出すことを含み、前記バレルは、上流から順に、供給部、圧縮部、及び計量部をこの順に含み、前記製造方法においては、前記圧縮部における前記バレル内圧力及びその他の条件を制御する。【選択図】 図1

Description

本発明はフィルムの製造方法に関する。
光学フィルム等の各種の用途に用いるフィルムとしては、複数の層を組み合わせた多層構造を有する多層フィルムが用いられる場合がある。かかる多層フィルムの例としては、2層以上の単層フィルムと、それらの間に介在し、それらの貼合を維持する機能を発現する中間膜としてのフィルムを備えるものが挙げられる。
中間膜として用いられるもの等の各種のフィルムの製造方法の一つに、溶融押出成形による製造方法がある。一般的な溶融押出成形の工程は、樹脂を押出機に供給する供給工程、及び供給された樹脂を押出機により押出す押出工程を含む。供給工程において供給される樹脂としては、ペレット等の取り扱いが容易な形状の固体の樹脂が用いられる。押出工程においては、押出機内で樹脂を溶融させ、溶融状態の樹脂を押出機から押し出す。これをさらにダイ等の成形装置に通し、それにより樹脂をフィルムの形状に成形する。
一般的な押出機の例としては、単軸押出機及び二軸押出機が挙げられる。溶融押出成形によるフィルムの製造においては特に、樹脂のせん断による変性を抑制することができ、且つ簡便な装置としうるという観点から、単軸押出機が好ましく用いられる。一般的な単軸押出機は、円筒形の内腔を有するバレル、及びバレル内に設けられたスクリューを含み、スクリューの回転により樹脂をバレルの上流側から下流側に押し出す構造を有している。
フィルムの材料となる樹脂としては、様々な樹脂が挙げられ、近年様々な新しい樹脂が提案されている。例えば、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位と鎖状炭化水素化合物水素化物単位とを含むブロック共重合体を含む樹脂は、その粘着力の高さ、位相差発現性の低さ、柔軟性の高さ等の特性を有する樹脂として提案されている(例えば特許文献1)。
特開2018−97121号公報
フィルムの材料として近年提案されている新しい樹脂の中には、従来に無い特性を有するものがある。例えば、上に述べた特定のブロック共重合体を含む樹脂のペレットを、単軸押出機で押出す場合、バレル内壁とペレットとの間の摩擦係数が大きいことに起因して、スクリューによるペレットの供給に不具合が生じ、押出工程の実施が困難となり得る。具体的には、押出機圧縮部における樹脂の詰まり、スクリューへのトルクが過大となることによる押出の操作の中断、といった不具合が生じ得る。
従って、本発明の目的は、摩擦係数が大きい樹脂ペレットであっても円滑な押出を行うことができ、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる、フィルムの製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するため検討した結果、本発明者は、押出工程において使用する装置及び押出の条件として特定のものを採用することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
〔1〕 ペレット状の樹脂を、フィード装置から単軸の押出機に供給する供給工程、及び供給された前記樹脂を前記押出機により押出す押出工程を含む、フィルムの製造方法であって、
前記フィード装置は、定量フィーダーを含み、
前記押出機は、バレル、及び前記バレル内に設けられたスクリューを含み、前記押出工程は、前記スクリューを回転させることにより前記樹脂を前記バレルの上流側から下流側へ押し出すことを含み、
前記バレルは、上流から順に、供給部、圧縮部、及び計量部をこの順に含み、
前記押出工程は、前記供給部におけるバレル内壁材料と前記ペレットとの動摩擦係数μが、1.00以上となる条件で行い、
前記供給工程における前記樹脂の供給量は、前記定量フィーダーにより、前記押出工程における前記圧縮部における前記バレル内圧力が40MPa以下となるよう制御し、
前記スクリューの前記供給部の溝深さHfは下記式(1):
7.0mm≦Hf≦10.0mm ・・・・・式(1)
を満たし、前記スクリューの圧縮比CRは下記式(2):
2.5≦CR≦4.0 ・・・・・式(2)
を満たす、フィルムの製造方法。
〔2〕 前記押出機の前記供給部における前記バレル内壁の算術平均粗さが0.5μm以上10μm以下である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記供給工程が、前記ペレット状の樹脂と共に、ブロッキング防止材を供給することを含み、前記ブロッキング防止材の供給量が、前記ペレット状の樹脂及び前記ブロッキング防止材の合計100重量%中0.5重量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記樹脂が、脂環式構造含有重合体、セルロース系重合体、ポリエチレンテレフタレート系重合体、アクリル系重合体、及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明のフィルムの製造方法によれば、摩擦係数が大きい樹脂ペレットであっても円滑な押出を行うことができ、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる。
図1は、本発明の製造方法に用いる溶融押出成形機の一例を概略的に示す側面図である。 図2は、動摩擦係数μの測定装置を概略的に示す縦断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
〔1.フィルムの製造方法の概要〕
本発明のフィルムの製造方法は、ペレット状の樹脂を、フィード装置から単軸の押出機に供給する供給工程、及び供給された樹脂を押出機により押出す押出工程を含む。フィード装置は、定量フィーダーを含む。押出機は、バレル、及びバレル内に設けられたスクリューを含む。押出工程は、スクリューを回転させることにより樹脂をバレルの上流側から下流側へ押し出すことを含む。
本発明の製造方法に用いる溶融押出成形機、及びそれを用いた供給工程及び押出工程の例を、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の製造方法に用いる溶融押出成形機の一例を概略的に示す側面図である。図1においては、図示の便宜のため、溶融押出成形機100の構成要素のうち、バレル114は、スクリュー113の中心軸113AXを通る面で切断した縦断面を示す。また、スクリュー113、バレル114及びスクリュー130以外の部材は、スクリュー130の中心軸130AXを通る面で切断した縦断面を示す。
図1において、溶融押出成形機100は、フィード装置、及びフィード装置に連結された押出機を含む。フィード装置は、ホッパー110、及びホッパー110の下部に連結された定量フィーダーを含む。定量フィーダーとは、押出機へ供給される、ペレットの供給速度を、ある値に調整しうる装置である。この例において定量フィーダーは、バレル114及びその内部に設けられたスクリュー113を含むスクリューフィーダーである。
押出機は、バレル120、及びバレル120の内部に設けられたスクリュー130を含む。以下の説明において、区別の便宜のため、定量フィーダーにおけるバレル及びスクリューを、「定量フィーダーバレル」及び「定量フィーダースクリュー」と呼ぶ場合がある。同様に、押出機におけるバレル及びスクリューを「押出機バレル」及び「押出機スクリュー」と呼ぶ場合がある。
ホッパー110は、その下部が定量フィーダーバレル114の上流部分に嵌合した状態で設けられる。ホッパー110の上部開口111から投入された樹脂のペレット201は、ホッパー110の下部開口から流出し、定量フィーダーバレル114内に供給される。定量フィーダースクリュー113を、その中心軸113AXを中心に回転させることにより、定量フィーダーバレル114内のペレット201を、下流に搬送することができる。
図1においては、定量フィーダーを構成するスクリューフィーダーとして、1本のみのスクリューフィーダーを図示しているが、フィード装置における定量フィーダーの態様はこれに限られず、例えばスクリューフィーダーを二本以上備えるものであってもよく、例えば、並列したスクリューフィーダー2本の組み合わせを含む二軸フィーダーであってもよい。二軸フィーダーを採用することにより、ホッパーから多量のペレットを安定的に受容し、円滑で供給量の可変幅の大きい供給を容易に達成することができる。また、溶融押出の工程とは異なり、ペレットの供給の工程では、樹脂の溶融温度より十分低い温度での操作が可能であるため、樹脂のせん断による変性等の不具合の発生について配慮する必要が無い。
また、定量フィーダーの態様は、スクリューフィーダーを有するものに限られず、ペレットの供給速度を調整可能な任意の態様としうる。
供給工程では、ペレット状の樹脂のみを供給してもよいが、ペレット状の樹脂に加えて、それ以外の任意の材料を併せて供給してもよい。かかる任意の材料の例としては、押出を円滑に行うための添加剤が挙げられる。添加剤の例としては、ブロッキング防止材が挙げられる。ブロッキング防止材の例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、飽和脂肪酸ビスアミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられ、飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく、エチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。エチレンビスステアリン酸アミドの商品名としてカオーワックス EB−FFが挙げられる。ブロッキング防止材の供給量は、ペレット状の樹脂及びブロッキング防止材の合計100重量%中、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上としうる。ブロッキング防止材の供給量の上限は、特に限定されないが1.0重量%以下としうる。かかるブロッキング防止材は、本発明の製造方法の実施により得られるフィルム中に含有されていてもよい。
定量フィーダーバレル114の下流に搬送されたペレット201は、フィード装置の下流開口112から落下し、押出機バレル120の樹脂投入口121から押出機バレル120内に流入し、これにより供給工程が達成される。供給されたペレット201は、押出機バレル120及び押出機スクリュー130による押出工程に供される。
押出機スクリュー130は、シャフト131と、シャフトの周囲に設けられたフライト132とを備える。スクリュー130は、そのフライト132の外周部がバレル120の内壁に接して、バレル120に嵌合する形状を有する。押出機スクリュー130が、中心軸130AXを中心に回転することにより、押出機バレル120内のペレット201が、押出機バレル内の上流から下流に押し出される。フライト132は、らせん状の構造を有し、従って押出機スクリュー130の回転により押出機バレル120の内容物を下流に押し出すことができる。図1の例では、押出機スクリュー130のフライト132のらせんのピッチPは、上流(即ち供給部側)端部から下流(即ち計量部側)端部まで一定である。
押出機バレル120内には、押出機スクリュー130のシャフト131の太さにより、供給部120F、圧縮部120C、及び計量部120Mが、上流側からこの順に規定される。供給部120Fは、供給工程により押出機バレル内に供給されたペレット201を、圧縮部に供給する部分であり、圧縮部120Cは、ペレット201を加圧し且つ加熱し、それによりペレット201を均一な溶融樹脂にする部分であり、計量部120Mは、溶融樹脂を、押出機よりさらに下流の工程に一定の流速で押し出す部分である。
供給部120F及び計量部120Mにおいては、シャフト131は、それぞれ一定の太さSf及びSmを有する。かかる一定の太さのシャフトを備える構成は、一定の流速で押出を行うことを意図した構成である。例えば計量部120Mでは、シャフト131の太さSmが一定であり、且つフライト132のらせんのピッチが一定であることにより、一定の流速で樹脂を押出機バレル吐出口129から押出すことができる。
圧縮部120Cにおいては、シャフト131は、上流側で細く下流側で太いテーパー形状であり、従ってここでのシャフトは円錐台形状の形状を有する。圧縮部120Cにおけるシャフトの太さは、上流端では供給部シャフト太さSfと同じ太さであり、下流端では計量部シャフト太さSmと同じ太さであり、したがって、供給部120Fにおける細いシャフト太さSfは、圧縮部120Cにおいてテーパー状に遷移し、計量部120Mにおいて太いシャフト太さSmに至る。圧縮部120Cでは、押出機スクリュー130がこのようなテーパー形状のシャフト131を備え、且つフライト132のらせんのピッチが一定であることにより、樹脂が下流に押し出されるのに伴い樹脂が圧縮される。供給部120Fから、樹脂を一定の供給速度で安定的に圧縮部に供給し、且つ圧縮部において圧縮と押出機バレル120の外側からの適切な加熱を行うことにより、ペレット状の樹脂を均一に加熱し溶融させることができる。その結果、空気の混入等が少なく且つ未溶融のゲル等の混入が少ない、良好な溶融状態の樹脂の押出を達成することができる。
図1の装置とは異なり、フィード装置が定量フィーダーを伴わず、ホッパーから押出機へのペレットの供給が、ペレットの自重による落下のみによって行われる場合、ペレットは押出機のバレル120の供給部120F内に充填される。充填されたペレットは、その全てが、供給部120Fから圧縮部120Cへの押出しに供される。したがって、例えば、ホッパーから押出機へのペレットの供給速度を、供給部120Fにおけるスクリューの押出しの能力より少ない速度とすることは出来ない。これに対して、フィード装置が定量フィーダーを備え、定量フィーダーで計量されたペレットが押出機の供給部に落下することにより、押出機の供給部における押出の速度及び圧力と分離した状態で押出機へのペレットの供給を行うことができ、ひいてはフィード装置から押出機へのペレットの供給速度を、押出機の供給部における押出速度に拘わらず制御することができ、例えば、フィード装置から押出機へのペレットの供給速度を、供給部120Fにおけるスクリューの押出しの能力より少ない速度とすることが可能となる。
押出機バレル120内の供給部120Fにおける樹脂の押出しは、圧縮部120Cにおける圧縮を伴う押出しと近接した工程であるため、圧縮部120Cにおける押出の条件に影響されるのに対し、定量フィーダーにおけるペレット201の搬送は、その条件を、圧縮とは無関係に設定しうる。例えば、定量フィーダーバレル114と押出機バレル120とが別のバレルとして設けられていることにより、これらの温度は独立して調整することができる。したがって、定量フィーダー内での搬送の円滑性の便宜のため、定量フィーダー内での搬送温度は、樹脂のガラス転移温度より十分低い温度(例えば室温)とすることが可能である。また、定量フィーダーバレル114内で定量的に搬送されたペレットが押出機バレル120内に落下するようこれらが設けられているため、定量フィーダースクリュー113は、圧縮部120Cにおける圧縮のような高い圧縮に耐える形状及び強度を有する必要は無い。したがって、定量フィーダースクリュー113は、シャフトとして細いシャフトを有するスクリューであってもよく、又はシャフトレスのスクリューであってもよい。したがって、定量フィーダーバレル114内のペレットを搬送する空間を広い空間とすることができる。その結果、安定した搬送を容易に達成することができる。
〔スクリューの形状〕
本発明の製造方法に用いる押出機スクリューは、その供給部の溝深さHf及び圧縮比CRが、特定の範囲である。
押出機スクリューの供給部溝深さHfは、下記式(1)を満たす。
7.0mm≦Hf≦10.0mm ・・・・・式(1)
押出機スクリューの圧縮比CRは下記式(2)を満たす。
2.5≦CR≦4.0 ・・・・・式(2)
供給部溝深さHfは、7.0mm以上、好ましくは8.0mm以上であり、一方10.0mm以下、好ましくは9.0mm以下である。圧縮比CRは、2.5以上、好ましくは3.0以上であり、一方4.0以下、好ましくは3.5以下である。
本発明者が見出したところによれば、このような寸法の押出機スクリューを採用し、且つ供給部におけるバレル内壁材料とペレットとの動摩擦係数μ、及び圧縮部におけるバレル内圧力を特定の範囲に制御することにより、摩擦係数が大きい樹脂ペレットであっても円滑な押出を行うことができ、圧縮部樹脂詰まり、供給部へのペレットの巻き付き、スクリュー過負荷による不具合、未溶融ゲルの発生等の不具合を抑制し、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる。
図1の例を参照して具体的に説明すると、供給部の溝深さHfは、供給部120Fにおけるシャフト131の外周面から、フライト132の外周部までの高さをいう。また、計量部の溝深さHmは、計量部120Mにおけるシャフト131の外周面から、フライト132の外周部までの高さをいう。押出機スクリュー130は、そのフライト132の外周部がバレル120の内壁に接してバレル120に嵌合する形状を有しているので、供給部の溝深さHf、供給部のシャフト太さSf及びバレル内径Dは、D=2Hf+Sfの関係を有する。同様に、計量部の溝深さHm、計量部のシャフト太さSm及びバレル内径Dは、D=2Hm+Smの関係を有する。
圧縮比CRは、供給部120Fにおける1ピッチ当たりの押出機内腔体積Vfと、計量部120Mにおけるそれに対応するピッチ当たりの押出機内腔体積Vmとの比率であり、式CR=Vm/Vfで求められる値である。図1の例のように、ピッチPが一定のスクリューの場合、圧縮比CRは、下記式(3)により求められる。
CR=Hf(D−Hf)/Hm(D−Hm) ・・・・・式(3)
〔供給工程及び押出工程における制御〕
本発明の製造方法では、押出工程を、供給部におけるバレル内壁材料とペレットとの動摩擦係数μが1.00以上となる条件で行う。
さらに、本発明の製造方法では、押出工程における圧縮部におけるバレル内圧力が40MPa以下となるよう、供給工程における樹脂の供給量を定量フィーダーにより制御する。
供給部では、圧縮部における適切な圧縮及び加熱を達成するため、樹脂のペレットを一定の流速で下流に押出し、圧縮部に安定的に供給することが求められる。しかしながら、フィルムの材料として近年提案されている新しい樹脂の中には、ペレット状に成形した場合において、圧縮部におけるバレル内壁表面を構成する金属材料等の材料との動摩擦係数が、従来用いられている樹脂に比べて非常に高い1.00以上といった値となる場合がある。そのようなペレットを押出す場合、バレル内壁とペレットとの間の摩擦係数が大きいことに起因して、圧縮部への押出しが過剰となり得る。かかる過剰な押出しが起こると、押出機スクリューへの過負荷による運転停止、樹脂の溶融が不完全なことによる未溶融ゲルの発生等の不所望な現象が起こりうる。本発明者が見出したところによれば、このような場合において、フィード装置として定量フィーダーを含むものを採用し、押出工程における圧縮部におけるバレル内圧力が40MPa以下となるよう、供給工程における樹脂の供給量を定量フィーダーにより制御し、さらに、押出機スクリューとして上に述べた特定の形状を有するものを採用することにより、過剰な押出しを抑制し、円滑な押出が可能になる。圧縮部におけるバレル内圧力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下としうる。圧力の下限は、特に限定されないが例えば5MPa以上としうる。圧縮部においては、その上流端から下流端にかけて一定でない場合があり、圧縮が進む下流側の圧力が、上流側の圧力に比べて大きくなりうる。この場合、圧縮部の上流端及び下流端の双方から等しい距離にある中央部において、圧力を測定し、当該測定値を、圧縮部バレル内圧力として採用しうる。
図1の例を参照して具体的に説明すると、定量フィーダースクリュー113の操作速度を調整することにより、フィード装置から押出機へのペレット供給速度を、供給部120Fにおけるスクリューの押出しの能力より少ない速度に制御することができる。かかる制御を行うことにより、供給部120Fから圧縮部120Cへの押出しが過剰になることを抑制することができる。したがって、このような構成を採用することにより、μが大きく押出しが過剰になる傾向が高いペレットを使用する場合であっても、過剰な押出しを抑制し、円滑な押出しを行うことができる。かかる制御は、圧縮部120Cにおけるバレル内圧力値を、バレル120に設けた適当な圧力検出装置(不図示)により検出し、当該装置により検出された圧力値に基づき行いうる。具体的には、検出圧力値が設定値より高くなった場合に定量フィーダーからのペレット供給速度を低下させ、検出圧力値が設定値より低くなった場合に定量フィーダーからのペレット供給速度を上昇させる制御としうる。かかる設定値を、40MPa以下の所望の値に設定して制御を行うことにより、圧縮部におけるバレル内圧力を、所望の値とすることができる。
動摩擦係数μを支配する因子は、ペレットを構成する樹脂の種類、バレル内壁表面を構成する金属材料等の材料の種類及び粗さ等の表面形状、並びに供給部におけるバレル内壁の温度Tである。温度Tは、好ましくは(Tg−60)℃であり、好ましくは(Tg+10)℃以下である。温度Tが前記好ましい範囲内であることにより、圧縮部におけるペレットの温度を所望の温度に円滑に昇温することができ、且つ、供給部における押出機スクリューへの樹脂の溶着、圧縮部における樹脂の詰まり等の不所望な現象を、さらに良好に低減することができる。
押出工程に際しての、圧縮部におけるバレル内壁の温度T、及び計量部におけるバレル内壁の温度Tは、特に限定されず、押出工程の実施に適した温度に適宜調整しうる。具体的には、圧縮部におけるバレル内壁の温度Tは、好ましくは(Tg−50)℃以上、より好ましくは(Tg−40)℃以上であり、好ましくは(Tg+80)℃以下、より好ましくは(Tg+50)℃以下である。計量部におけるバレル内壁の温度Tは、好ましくは(Tg)℃以上、より好ましくは(Tg+30)℃以上であり、好ましくは(Tg+100)℃以下、より好ましくは(Tg+80)℃以下である。
バレル内壁の温度は、バレルの外側からの、加熱装置による加熱により調整しうる。図1の例を参照して具体的に説明すると、バレル120の供給部120F、圧縮部120C、及び計量部120Mのそれぞれにおいて、バレルの外側に、適切な加熱装置(不図示)を配置し、それによりバレルを加熱することにより、バレル内壁の温度を所望の温度に昇温しうる。さらに、熱電対等の温度測定装置をバレル内壁表面又はその近傍に設け、バレル内壁の温度をモニターし、モニターされた温度に基づいて加熱装置の出力を調整することにより、バレル内壁の温度を所望の値に調整することができる。
本発明の製造方法において、動摩擦係数μは、1.00以上であり、1.10以上、あるいは1.20以上、さらには1.30以上といった値としうる。μがこのように大きい値であっても、本発明によれば、円滑な押出が可能であり、従って円滑なフィルムの製造を行いうる。動摩擦係数μの上限は、特に限定されないが例えば2.00以下としうる。
動摩擦係数μは、温度Tにおける動摩擦係数であり、且つ、供給部におけるバレル内壁材料と、ペレットとの動摩擦係数である。「供給部におけるバレル内壁材料」とは、供給部におけるバレル内壁そのもの、またはペレットとの動摩擦係数の測定において供給部におけるバレル内壁と同等の性質を有する材料である。例えば、バレルの内壁の大部分がHCrステンレス鋼により構成されている場合、HCrステンレス鋼の板材を、「供給部におけるバレル内壁材料」として使用しうる。表面粗さは、算術平均粗さにより規定しうる。バレルの内壁の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは0.8〜1.6μmとしうるので、供給部におけるバレル内壁材料の算術平均粗さRaも、それと同等のものとしうる。表面粗さは、粗さ測定器(例えば、ミツトヨ製 小型表面粗さ測定器 サーフテストSJ310)にて測定しうる。
動摩擦係数μの測定は、本発明の実施に用いるペレット、及び供給部におけるバレル内壁材料であって溝を有しない表面形状を有するものを用いた測定系において測定しうる。動摩擦係数μの測定系を、図2を参照して説明する。図2は、動摩擦係数μの測定装置を概略的に示す縦断面図である。図2において、測定装置300は、円盤状の回転テーブル310、回転テーブル310の上面に載置された円盤状の金属板320、及び金属板320の上側に設置されたプローブ330を備える。回転テーブル310は、ベース311と、金属板320を把持する把持子312とを備え、複数の把持子312は中心軸310AXに向かって付勢された状態で金属板320に圧接され、それにより金属板320は回転テーブル310に固着される。回転テーブル310はさらにシャフト313を備える。適切な回転装置(不図示)により、シャフト313を介して回転テーブル310に回転力を与えると、回転テーブルは中心軸310AXを中心に回転する。測定装置300はさらに温度調整装置(不図示)を含み、それにより、金属板320の温度が一定の所望の温度に保たれる。金属板320は、供給部におけるバレル内壁材料に相当する。プローブ330は、ペレット201を収容する円筒331、及び円筒331の内部に設置された荷重トランスデューサー332を備え、これらにより、ペレット201を、金属板320に対して一定の圧力で接触させる。金属板320の温度を温度Tに保ち、回転テーブル310を軸310AXを中心に回転させ、トランスデューサー332でペレット201に圧力を加え、圧力とシャフト313へのトルクとを測定し、これらの測定結果から、動摩擦係数μを求めることができる。
バレルを構成する材料は、通常はステンレス鋼等の金属であり、特に、HCrステンレス鋼(表面に硬質クロムめっき処理を施したステンレス鋼)が、耐圧性及び表面における耐擦傷性等の観点から好ましい。また、バレル内部観察のため、バレルの一部が、硬質ガラス、石英ガラス等の透明な材料であってもよい。
押出機バレルの内部の寸法は、押出工程に適した寸法を適宜選択しうる。バレルの内径Dは、40〜120mmとしうる。バレルの長さLは、1,200〜3,600mmとしうる。バレルの長さとは、別に断らない限り内腔の長さである。バレルの径Dに対するバレルの長さLの比即ちL/Dは、26〜34としうる。バレルの長さ、又はバレルの一部の長さは、バレルの径Dに対する相対値として表現されうる。例えば、L/Dが30であるバレルの長さは30Dと表現されうる。バレルの内径Dが40mmである場合、長さ30Dのバレルは、長さが1,200mmのバレルである。
押出機バレルの供給部の長さL、圧縮部の長さL、及び計量部Lの長さのそれぞれは、適宜、押出工程に適した長さとしうる。例えば、Lは5D〜12D、Lは9D〜14D、Lは9D〜13Dといった範囲内の長さとしうる。
押出機バレルの供給部の長さL、及び圧縮部の長さLは、好ましくは、下記式(2):
×1.5≦L ・・・(2)
を満たす。L及びLが式(2)を満たすことにより、圧縮部におけるバレル内圧力を、より容易に、所望の値に制御することができる。
〔押出工程より下流の工程〕
押出工程において溶融され押し出された樹脂を、さらに、バレル吐出口に連結されたダイ等の適切な装置に通し、フィルム状の形状に成形することにより、溶融押出成形によるフィルムの製造を達成することができる。樹脂を連続的に供給することにより、溶融押出成形によるフィルムの製造を連続的に行うことができ、その結果、フィルムとして長尺状のフィルムを得ることができる。「長尺状」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、例えば5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。得られたフィルムは、必要に応じて、マスキングフィルム、又は本発明の製造方法により製造されるフィルムで構成される層の形成対象である別のフィルム(例えば、2の層と、その間の中間膜とを備える複層フィルムの製造を行う場合において、中間膜を本発明の製造方法で得る場合であれば、かかる2の層のいずれか又は両方)の上に貼合させた上で、フィルムロール等の保存及び運搬に適した形状とし、さらなる工程に供しうる。
本発明の製造方法では、押出工程が、上記特定の特徴を有することにより、摩擦係数が大きい樹脂ペレットであっても円滑な押出を行うことができ、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる。具体的には、樹脂として、粘着力の高さ、位相差発現性の低さ、柔軟性の高さ等の良好な性質を有する一方、動摩擦係数μが大きく、供給部における安定した樹脂の搬送が困難である樹脂を材料として採用した場合であっても、かかる樹脂を、供給部から圧縮部への押出を、樹脂の詰まり等を伴わず円滑に行い、未溶融のゲル等の混入が少ない、良好な溶融状態の樹脂の押出を達成することができる。かかる円滑な押出により溶融樹脂をダイに供給し、成形を行うことにより、良好なフィルムの製造を効率的に行うことができる。
〔ペレット状の樹脂〕
本発明の製造方法においては、フィルムの材料として、ペレット状の樹脂を使用する。「ペレット状」の樹脂とは、供給工程において固体である、粒状の形状の樹脂である。ペレットの具体的な形状は、ストランドを切断して得られる概略円柱形の形状が一般的であるが、本発明はこれに限られず、任意の形状のペレットを使用しうる。例えば、球形、楕円球形、直方体といった各種の形状、及びこれらの混合物としうる。また例えば、樹脂をこれらの形状に成形する際に生じた破砕物を、ペレットの範疇に含めてもよい。「円柱形」の形状とは、底面が円形の柱体であり、底面径より高さが小さい、所謂円盤形の形状をも包含する。
ペレットの寸法は、本発明の製造方法に適した寸法に適宜調整しうる。適切な流動性を得る観点及び取扱いの容易さの観点から、ペレットの寸法は、その長径の数平均で、2mm〜5mmであることが好ましい。「長径」とは、ペレットを粒子として観察した場合の最も長い径である。ストランドを切断して得られた概略円盤状の形状のペレットの場合、「長径」は、通常は、底面径及び高さにより寸法が規定される円柱形における底面径に該当する。この場合、円柱の底面径は、数平均で2mm〜5mmであることが好ましく、円柱の高さは、数平均で1mm〜4mmであることが好ましい。
ストランドを切断して円柱形のペレットとする場合、かかる切断は、空気等の気体中で行ってもよく、水等の液体中で行ってもよい。円盤形のペレットを調製する場合には、アンダーウォーターカット方式、即ち水中での切断を行うことが好ましい。水中での切断を行うことにより、円盤形の形状のペレットを、自動的な装置で容易に形成することができ、切断時の異物の混入が少なく品質を安定させることができる。
本発明において用いるペレット状の形状を有する樹脂は、重合体と、必要に応じて含みうる任意成分とを含むものとしうる。樹脂を構成する重合体の例としては、脂環式構造含有重合体、セルロース系重合体、ポリエチレンテレフタレート系重合体、アクリル系重合体、スチレン系エラストマー及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーのより具体的な例としては、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、及びスチレン−(エチレン/ブタジエン)−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。
脂環式構造含有重合体の例としては、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン単量体単位とを含む共重合体の水素化物が挙げられる。水素化物の前駆体である共重合体の構造は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、テーパードブロック共重合体、などの何れであってもよい。得られるフィルムの低温衝撃強度および引張強度の観点から、共重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを含有するブロック共重合体であることが好ましい。
共重合体が「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た共重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。「芳香族ビニル単量体単位」は、「芳香族ビニル単量体(芳香族ビニル化合物)に由来する構造単位」を意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位」は、「鎖状共役ジエン単量体(鎖状共役ジエン化合物)に由来する構造単位」を意味する。但し、本願において、構造単位は、その製造方法によっては限定されない。
「芳香族ビニル単量体単位を主成分とする」は、「芳香族ビニル単量体単位を50重量%超含有する」ことを意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする」は、「鎖状共役ジエン単量体単位を50重量%超含有する」ことを意味する。
テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体部分のみならずランダム共重合部分を含むブロック共重合体、または、ブロック共重合体部分の組成比が連続的に変化するブロック共重合体を意味する。なお、テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成のランダム共重合部分を含むブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成が連続的に組成変化するブロック共重合体であってもよい。
以下、共重合体が上述したブロック共重合体である場合の組成および構造について詳述するが、共重合体の構造は、ブロック共重合体に限定されるものではなく、この記載に限定されるものではない。
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。かかる範囲内の重合平均分子量及び分子量分布を有することにより、フィルムへの成形を容易にすることができ、得られるフィルムの特性をも良好なものとすることができる。重合体の「重量平均分子量」および「分子量分布」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
芳香族ビニル単量体単位を形成しうる芳香族ビニル単量体としては、スチレンおよびその誘導体が挙げられ、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、および4−フェニルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないもの、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、および4−フェニルスチレンが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
鎖状共役ジエン単量体単位を形成しうる鎖状共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[A]中の全繰り返し単位を100重量%とした場合に、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合が80重量%以上であれば、共重合体水素化物中の重合体ブロック[A]由来のミクロ相分離ドメインを維持することができ、引張強度および芳香族単量体ブロックの耐熱性を維持することができる。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、鎖状共役ジエン単量体単位であってもよい。また、その他の単量体単位を形成しうる単量体としては、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンが挙げられる。
ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[A]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[A]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[B]中の全繰り返し単位を100重量%とした場合に、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%である。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合が60重量%以上であれば、共重合体中の重合体ブロック[B]由来のガラス転移温度(Tg)を得ることができ、低温における衝撃強度を好ましい高さに維持することができる。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、芳香族ビニル単量体単位であってもよいし、その他の単量体単位は「重合体ブロック[A]」の項で上述した鎖状オレフィン、環状オレフィンから形成されてもよい。
ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[B]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[B]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
ブロック共重合体は、2つ以上の重合体ブロック[A]と、1つ以上の重合体ブロック[B]とを含有する重合体としうる。ブロック共重合体中の重合体ブロック[A]の数は、通常5つ以下、好ましくは4つ以下、より好ましくは3つ以下であり、更に好ましくは2つである。ブロック共重合体中の重合体ブロック[B]の数は、通常4つ以下、好ましくは3つ以下、より好ましくは2つ以下、また、更に好ましくは1つである。
ブロック共重合体中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、ブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン単量体単位がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、好ましくは20:80〜60:40、より好ましくは、25:75〜60:40、更に好ましくは、40:60〜60:40である。wA:wBをこの範囲とすることにより、得られるフィルムの低温耐衝撃性、剛性等を向上させることができる。
wA:wBは、ブロック共重合体を製造する過程において、ブロック共重合体の重合に用いた芳香族ビニル単量体、鎖状共役ジエン単量体およびその他のビニル系化合物の量と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定されたブロック共重合体の各ブロックの重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率により、各単量体単位の重量分率を算出することができる。
ブロック共重合体である共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。また、ブロック共重合体である共重合体は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合した構造(すなわち、A−B−Aの順に並んだ構造)を1箇所以上において有することが好ましい。
ブロック共重合体である共重合体の特に好ましい形態としては、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合してなるトリブロック共重合体(A−B−A)、および、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該2つの重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合してなるペンタブロック共重合体(A−B−A−B−A)が挙げられ、トリブロック共重合体(A−B−A)が最も好ましい。
上述した共重合体中の不飽和結合(例えば、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素−炭素不飽和結合などを含む)を水素化することで、共重合体水素化物を得ることができる。共重合体水素化物は、例えばブロック共重合体を水素化して得られる構造を有するブロック共重合体水素化物としうる。
水素化による得られる共重合体水素化物の水素化率は、90モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることが好ましく、99モル%以上であることがより好ましい。水素化率が90モル%以上であれば、耐候性を改良することができる。「水素化率」とは、共重合体に含まれる全不飽和結合のうち水素化された不飽和結合の割合を示す。水素化物全体の水素化率、鎖状共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素不飽和結合の水素化率、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、共重合体および共重合体水素化物のH−NMRを測定することにより、求めることができる。
共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、7以下であることが好ましく、6以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。かかる範囲内の重合平均分子量及び分子量分布を有することにより、フィルムへの成形を容易にすることができ、得られるフィルムの特性をも良好なものとすることができる。
ブロック共重合体水素化物は、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した物質であってもよいし、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した物質であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、通常95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上であり、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
ここで、「主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における鎖状共役ジエン化合物に由来の二重結合を水素化すること」を意味し、「芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における芳香環に由来の二重結合を水素化すること」を意味する。
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する場合、水素化率は、全炭素−炭素不飽和結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
上記得られた共重合体水素化物と、エチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応(シラン変性)させて、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入してもよい。
導入されるアルコキシシリル基は、シラン変性に用いられる後述のエチレン性不飽和シラン化合物に対応する、各種の構造を有する基としうる。特に、得られるフィルムと他の部材との接着性及びその他の特性を好ましいものとする観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましく、メトキシシリル基がより好ましい。ここで、アルコキシシリル基は、共重合体水素化物に直接結合されてもよく、アルキレン基やアルキレンオキシカルボニルアルキレン基などの2価の有機基を介して結合されてもよい。
シラン変性に用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、共重合体水素化物と反応(例えばグラフト重合)して、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入しうるものを適宜選択しうる。このようなエチレン性不飽和シラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましく、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、共重合体水素化物100重量当たり、通常0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは0.2重量部以上5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以上3重量部以下である。
シラン変性に用いる過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
過酸化物の使用量は、共重合体水素化物100重量部当たり、通常0.05重量部以上2重量部以下、好ましくは0.1重量部以上1重量部以下、より好ましくは0.2重量部以上0.5重量部以下である。
シラン変性を行うことにより共重合体水素化物に導入されるアルコキシシリル基の量は、共重合体水素化物100重量部当たり、0.1重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることが更に好ましく、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、3重量部以下であることが更に好ましい。
上記シラン変性により得られた共重合体水素化物(シラン変性体)の重量平均分子量(Mw)は、通常、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いた共重合体水素化物のそれと大きくは変わらず、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。シラン変性体の重合平均分子量が7000以上であれば、シラン変性体の機械的強度を高めることができ、190000以下であれば、シラン変性体の加工性を確保することができる。
また、シラン変性体の分子量分布は、7.5以下であることが好ましく、6.5以下であることが好ましく、5.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が7.5以下であれば、共重合体水素化物から得られるシラン変性体の加工性や機械的強度を高めることができる。
シラン変性体の分子量分布(Mw/Mn)は、過酸化物の存在下でシラン変性を行うため、重合体の架橋反応、切断反応が併発することにより、原料として用いた共重合体水素化物のそれよりも大きくなる傾向がある。
共重合体水素化物の製造方法は、特に限定されず、既知の方法を適宜組み合わせた製造方法としうる。例えば、特開2018−97121号公報に記載される製造方法、又は当該製造方法を、必要に応じて適宜改変した製造方法としうる。
ペレットを構成する樹脂における、脂環式構造含有重合体の割合は、所望の特性を有するフィルムを得る観点から、所望の割合に調整しうる。かかる割合は、好ましくは80重量%〜100重量%、より好ましくは90重量%〜100重量%、更に好ましくは95重量%〜100重量%、特に好ましくは98重量%〜100重量%である。
セルロース系重合体の例としてはトリアセチルセルロース(Tg(ガラス転移温度):160〜180℃)が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート系重合体の例としてはポリエチレンテレフタレート(Tg:70℃、Tc:250〜255℃)が挙げられる。アクリル系重合体の例としてはポリメタクリル酸メチル(Tg:90℃)、ポリメタクリル酸エチル(Tg:100℃)が挙げられる。
ペレットを構成する樹脂は、前記した重合体に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例としては、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;及び帯電防止剤が挙げられる。これらの任意の成分としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、本発明の効果を顕著に発揮させる観点からは、任意の成分の含有割合は少ないことが好ましい。例えば、任意の成分の合計の割合は、重合体の100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下が更に好ましく、5重量部以下が特に好ましい。また、樹脂に含まれる任意の成分が少ないことにより、任意の成分のブリードアウトを抑制することができる。
〔フィルム〕
本発明の製造方法により得られるフィルムは、複数の層を組み合わせた多層構造を有する多層フィルムの構成要素として用いうる。例えば、2層以上の単層フィルムと、それらの間に介在し、それらの貼合を維持する機能を発現する中間膜を備える多層フィルムにおいて、かかる中間膜として、本発明の製造方法により得られるフィルムを用いうる。かかる多層フィルムの例としては、偏光子と位相差フィルムとを貼合した複合光学フィルム等が挙げられる。このような多層フィルムは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置、タッチパネル付き表示装置、太陽電池等といった各種の光学的な装置を構成する部材として有用に用いうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔評価方法〕
(共重合体、及びその水素化物の重量平均分子量および分子量分布)
テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、40℃において、0.6cc/分の速度で測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel SuperH G5000HLX、G4000HLX,G2000HLX3本を直列につなぎ、ポリマー量4mg/1ccの濃度に調整し測定した。
(共重合体水素化物の水素化率)
共重合体水素化物の水素化率(モル%)は、H−NMR測定(測定溶媒:CDCl)を実施し、共重合体中に存在した全不飽和結合のうち消失した不飽和結合の割合を算出することで導出した。
(ガラス転移温度の測定)
JIS K 7121−1987(プラスチックの転移温度測定方法)に従い、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tgを求めた。
(表面粗さ)
表面粗さは、JIS B0633:2001に従い、粗さ測定器(ミツトヨ製 小型表面粗さ測定器 サーフテストSJ310)にて測定した。
〔製造例1:ペレットの製造〕
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n−ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n−ブチルリチウム(15%n−ヘキサン溶液)を0.90部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。この反応により、ブロック共重合体溶液を得た。
得られたブロック共重合体溶液中のブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が42900であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.03であり、S−I−S(スチレンブロック−イソプレンブロック−スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
得られたブロック共重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T−8400RL、クラリアント触媒(株)社製)5部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、20分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。20分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行った(水素化率:99.5%)。これにより、水素化ブロック共重合体溶液を得た。
得られた水素化ブロック共重合体溶液中の水素化ブロック共重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が1.66であり、重量平均分子量(Mw)が37800であり、ガラス転移温度が110℃であった。
得られた水素化ブロック共重合体100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合した後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。二軸押出機を用いた熱溶融押出し成形により、樹脂をストランド状の成形体にした後、アンダーウォーターカット方式(水中)にて細断して、樹脂(a1)のペレットを得た。得られたペレットの寸法は、高さ及び底面径数平均が、それぞれ1mm及び4mmの概略円盤形の形状であった。
前記の二軸押出機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=220〜230℃
・ダイ設定温度=200℃
・スクリュー回転数=145rpm
・フイーダー回転数=50rpm
〔実施例1〕
製造例1で得た樹脂(a1)のペレットを、図1に概略的に示す溶融押出成形機に供給した。溶融押出成形機100は、フィード装置、フィード装置に連結された押出機、及びその下流に接続されたTダイ(不図示)を備えるものであった。フィード装置は、ホッパー110、及びホッパー110の下部に連結された定量フィーダーを含む。定量フィーダーは、バレル114及びその内部に設けられたスクリュー113を含むスクリューフィーダーを、2本並列に備える二軸スクリューフィーダーであった。但し図1は側面図であるため、手前側の1本のスクリューフィーダーのみを図示している。押出機は、バレル120、及びバレル120の内部に設けられたスクリュー130を含む。
溶融押出成形機100における押出機としては、単軸可視化押出機(プラスチック工学研究所製、バレル内径D=40.00mm、バレル内長L=1200.00mm(即ちL/D=30))を用いた。
押出機バレル120内には、押出機スクリュー130のシャフト131の太さにより供給部120F、圧縮部120C、及び計量部120Mが規定され、供給部120Fの長さL、圧縮部120Cの長さL、及び計量部120Mの長さLは、それぞれ、6D(即ち240.00mm)、12D(即ち480.00mm)及び12D(即ち480.00mm)であった。
押出機バレル120の内壁は、一部分はバレル内観察のための、硬質ガラス(パイレックス(登録商標))製の観察窓であり、それ以外の大部分(面積80%以上)は、HCr鍍金ステンレス鋼であった。バレル120の内壁であって溝122及び観察窓部分以外の部分の無い表面の算術平均粗さRaは、1.2μmであった。
スクリュー130は、そのフライト132の外周部がバレル120の内壁に接して、バレル120に嵌合する形状を有していた。スクリュー130のフライト132のピッチPは、上流(即ち供給部側)端部から下流(即ち計量部側)端部まで一定であり、40mmであった。供給部120Fにおけるスクリュー130のシャフト131の太さSfは24.00mmであり、従って溝の深さHfは8.00mmであった。計量部120Mにおけるスクリュー130のシャフト131の太さSmは35.50mmであり、従って溝の深さHmは2.25mmであった。したがって、圧縮比CRは3.0であった。圧縮部120Cにおけるシャフト131は、テーパー状に太さが遷移する形状、即ち、太さが上流端ではSf、下流端ではSmとなる円錐台形状とした。
フィード装置のホッパー110の上部開口111に、ペレット201及びブロッキング防止材(カオーワックス EB−FF)の混合物を投入した。当該混合物において、ブロッキング防止材量は、ペレット201及びブロッキング防止材の合計100重量%中0.55重量%であった。投入された混合物は、定量フィーダーバレル114に落下し、定量フィーダーバレル114の上流部分に充填された。定量フィーダースクリュー113を回転させることにより、混合物を、定量フィーダーバレル114の上流から下流に搬送した。定量フィーダーバレル114下流に搬送された混合物は、下流開口112から落下し、押出機バレル120の樹脂投入口121から押出機バレル120内に流入した(供給工程)。
スクリュー130を30rpmで回転させることにより、ペレット201及びブロッキング防止材の混合物を、バレル120の上流側から下流側に押し出す、押出工程を実施した。押出工程においては、バレル120の供給部120F、圧縮部120C及び計量部120Mのそれぞれを一定の温度に調整することにより、ペレット201を加熱し溶融させた。温度は、供給部120Fにおけるバレル内壁温度Tを50℃、圧縮部120Cにおけるバレル内壁温度Tを90℃、計量部120Mにおけるバレル内壁温度Tを160℃とした。各部におけるバレル内壁温度の調整は、バレル外側に設けた加熱装置によりバレルを加熱し、バレル内壁表面近傍に設けた熱電対によりバレル内壁の温度をモニターし、モニターされた温度に基づいて加熱装置の出力を調整することにより行った。圧縮部120Cの中央部(圧縮部120Cの上流端及び下流端の双方から等しい距離にある位置)において、バレル内壁に設けた圧力計により、バレル内圧力を測定し、その値が設定値より大きい場合は定量フィーダースクリュー113の回転速度を減速し、設定値より小さい場合は定量フィーダースクリュー113の回転速度を加速し、それにより圧縮部120Cにおける圧力を設定値に保った。本実施例では、設定値を25MPaとした。溶融された樹脂はバレル吐出口129から吐出された。吐出された樹脂をダイに供給し、ダイからフィルムの形状に押し出すことにより、フィルムを連続的に製造した。ダイの開口及びその他の操作条件を調整することにより、フィルムの厚みは100μmとした。
押出工程において、押出の状態を、下記の観点から観察し評価した。評価結果を表2に示す。
(A)圧縮部120Cにおける樹脂の詰まりの有無
(B)供給部120Fにおける、樹脂のスクリューへの巻き付きの有無
(C)スクリュー過負荷(トルク60N・m超)による押出機停止の有無
(D)バレル吐出口129から吐出された樹脂中における未溶融ゲルの有無
(E)総合評価:
○:良好((A)〜(D)いずれも「無」)。
×:不良((A)〜(D)のいずれか1以上が「有」)
さらに、図2に概略的に示す測定装置を用いて、動摩擦係数μの測定を行った。図2において、測定装置300は、円盤状の回転テーブル310、回転テーブル310の上面に載置された円盤状の金属板320、及び金属板320の上側に設置されたプローブ330を備える。複数の把持子312を、中心軸310AXに向かって付勢された状態で金属板320に圧接し、それにより金属板320を回転テーブル310に固着した。金属板320としては、ペレット201に対する摩擦係数の発現に関し、押出工程において用いたバレル120の内壁と同等の材質のものを選択した。即ち、回転テーブル320としては、SUS304の上面に硬質クロムめっき処理を施したものを用いた。回転テーブル320の上側の表面の算術平均粗さRaは1.2μmであり、ビッカース硬度は約1,100Hvであった。温度調整装置(不図示)を用い、金属板320の温度をT(即ち50℃)に保った。円筒331内に、層をなす程度の量のペレット201を入れ、その上部にトランスデューサー332をセットし、ペレット201の層と金属板320の上面との界面に、2Nの圧力を加えた。この状態で、回転テーブル310を、周速0.03cm/sで回転させた。この状態で、軸部342へのトルクを測定することにより、動摩擦係数μを測定した。その結果、動摩擦係数μは、1.3であった。
〔実施例2〜3及び比較例1〜5〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、フィルムの製造及び評価並びに摩擦係数の測定を行った。結果を表2に示す。
・実施例2〜3及び比較例1〜4では、スクリュー130を交換し、実施例1とは形状の異なる、代替のスクリューを用いた。代替のスクリューでは、その供給部及び計量部のシャフト太さSf及びSmの一方又は両方が、実施例1におけるスクリュー130とは異なる太さであった。その結果、供給部溝深さHf及び圧縮比CRは表2に示す通りであった。代替のスクリューの圧縮部におけるシャフトは、実施例1におけるスクリュー130と同様に、テーパー状に太さが遷移する形状、即ち、太さが上流端部ではSf、下流端部ではSmとなる円錐台形状とした。
・実施例2〜3並びに比較例1及び4では、圧縮部120Cにおける圧力の設定値を、表1に示す値に変更した。比較例2〜3及び比較例5では、フィード装置として、定量フィーダーを有さず、ホッパーに投入されたペレットが、ホッパー下部の開口から、押出機バレル120の樹脂投入口121に直接流入する構造のものを用いた。したがって、定量フィーダーの制御による圧力の制御を行わない状態で、バレル内壁に設けた圧力計により、圧縮部120Cの中央部においてバレル内圧力を測定した。
・実施例2〜3及び比較例1〜4では、ブロッキング防止剤の量が、添加の操作時に変動したため、ブロッキング防止剤の割合が、表1に示す通りに変化した。比較例5では、ブロッキング防止剤を添加しなかった。
Figure 2021107141
1)制御を行わず、圧力の測定を行った測定値。
Figure 2021107141
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、バレル内壁とペレットとの動摩擦係数が1.00以上と高い場合における押出でも、供給部におけるバレル内壁の温度Tを特定の範囲に調整し、圧縮部におけるバレル内圧力を特定の範囲に調整し、且つ押出機スクリューとして特定範囲の供給部溝深さHf及び圧縮比CRを有するものを使用することにより、押出機圧縮部における樹脂の詰まり、スクリューへのトルクが過大となることによる押出の操作の中断等の不具合の少ない、良好な押出を達成することができる。
100:溶融押出成形機
110:ホッパー
111:ホッパー上部開口
112:フィード装置下流開口
113:定量フィーダースクリュー
113AX:中心軸
114:定量フィーダーバレル
120:押出機バレル
120C:圧縮部
120F:供給部
120M:計量部
121:樹脂投入口
129:吐出口
130:押出機スクリュー
130AX:中心軸
131:シャフト
132:フライト
201:ペレット
300:測定装置
310:回転テーブル
310AX:中心軸
311:ベース
312:把持子
313:シャフト
320:金属板
330:プローブ
331:円筒
332:荷重トランスデューサー
D:押出機バレル内径
Hf:供給部溝深さ
Hm:計量部溝深さ
P:押出機スクリューピッチ
Sf:供給部シャフト太さ
Sm:計量部シャフト太さ

Claims (4)

  1. ペレット状の樹脂を、フィード装置から単軸の押出機に供給する供給工程、及び供給された前記樹脂を前記押出機により押出す押出工程を含む、フィルムの製造方法であって、
    前記フィード装置は、定量フィーダーを含み、
    前記押出機は、バレル、及び前記バレル内に設けられたスクリューを含み、前記押出工程は、前記スクリューを回転させることにより前記樹脂を前記バレルの上流側から下流側へ押し出すことを含み、
    前記バレルは、上流から順に、供給部、圧縮部、及び計量部をこの順に含み、
    前記押出工程は、前記供給部におけるバレル内壁材料と前記ペレットとの動摩擦係数μが、1.00以上となる条件で行い、
    前記供給工程における前記樹脂の供給量は、前記定量フィーダーにより、前記押出工程における前記圧縮部における前記バレル内圧力が40MPa以下となるよう制御し、
    前記スクリューの前記供給部の溝深さHfは下記式(1):
    7.00mm≦Hf≦10.00mm ・・・・・式(1)
    を満たし、前記スクリューの圧縮比CRは下記式(2):
    2.5≦CR≦4.0 ・・・・・式(2)
    を満たす、フィルムの製造方法。
  2. 前記押出機の前記供給部における前記バレル内壁の算術平均粗さが0.5μm以上10μm以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記供給工程が、前記ペレット状の樹脂と共に、ブロッキング防止材を供給することを含み、前記ブロッキング防止材の供給量が、前記ペレット状の樹脂及び前記ブロッキング防止材の合計100重量%中0.005重量%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記樹脂が、脂環式構造含有重合体、セルロース系重合体、ポリエチレンテレフタレート系重合体、アクリル系重合体、スチレン系エラストマー及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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