以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
すなわち、本明細書では、レーザ加工装置の一例としてのレーザマーカについて説明するが、ここに開示する技術は、レーザ加工装置及びレーザマーカという名称に拘わらず、レーザ応用機器一般に適用することができる。
また、本明細書においては、加工の代表例として印字加工について説明するが、印字加工に限定されず、画像のマーキング等、レーザ光を使ったあらゆる加工処理において利用することができる。
<全体構成>
図1は、レーザ加工システムSの全体構成を例示する図であり、図2は、レーザ加工システムSにおけるレーザ加工装置Lの概略構成を例示する図である。図1に例示するレーザ加工システムSは、レーザ加工装置Lと、これに接続される操作用端末800及び外部機器900と、を備えている。
そして、図1及び図2に例示するレーザ加工装置Lは、マーカヘッド1から出射されたレーザ光を、被加工物としてのワークWへ照射するとともに、そのワークWの表面上で3次元走査することによって加工を行うものである。なお、ここでいう「3次元走査」とは、レーザ光の照射位置をワークWの表面上で走査する2次元的な動作(いわゆる「2次元走査」)と、レーザ光の焦点位置を調整する1次元的な動作と、の組み合わせを総称した概念を指す。
特に、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、ワークWを加工するためのレーザ光として、1064nm付近の波長を有するレーザ光を出射することができる。この波長は、近赤外線(Near-InfraRed:NIR)の波長域に相当する。そのため、以下の記載では、ワークWを加工するためのレーザ光を「近赤外レーザ光」と呼称して、他のレーザ光と区別する場合がある。もちろん、他の波長を有するレーザ光を、ワークWの加工に用いてもよい。
また、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、マーカヘッド1に内蔵された測距ユニット5を介してワークWまでの距離(ワークWの高さ)を測定するとともに、その測定結果を利用して近赤外レーザ光の焦点位置を調整することができる。
図1及び図2に示すように、レーザ加工装置Lは、レーザ光を出射するためのマーカヘッド1と、マーカヘッド1を制御するためのマーカコントローラ100と、を備えている。
マーカヘッド1及びマーカコントローラ100は、この実施形態においては別体とされており、電気配線を介して電気的に接続されているとともに、光ファイバーケーブルを介して光学的に結合されている。
より一般には、マーカヘッド1及びマーカコントローラ100の一方を他方に組み込んで一体化することもできる。この場合、光ファイバーケーブル等を適宜省略することができる。
操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)及びメモリを有しており、マーカコントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字設定など、種々の加工条件(印字条件ともいう)を設定するとともに、レーザ加工に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。この操作用端末800は、ユーザに情報を表示するための表示部801と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部802と、種々の情報を記憶するための記憶装置803と、を備えている。
具体的に、表示部801は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELパネルにより構成されている。表示部801には、レーザ加工に関連した情報として、レーザ加工装置Lの動作状況及び加工条件等が表示される。一方、操作部802は、例えばキーボード及び/又はポインティングデバイスにより構成されている。ここで、ポインティングデバイスには、マウス及び/又はジョイスティック等が含まれる。操作部802は、ユーザによる操作入力を受け付けるように構成されており、マーカコントローラ100を介してマーカヘッド1を操作するために用いられる。
上記のように構成される操作用端末800は、ユーザによる操作入力に基づいて、レーザ加工における加工条件を設定することができる。この加工条件には、例えば、ワークWに印字されるべき文字列、並びに、バーコード及びQRコード(登録商標)等の図形の内容(マーキングパターン)と、レーザ光に求める出力(目標出力)と、ワークW上でのレーザ光の走査速度(スキャンスピード)と、のうちの1つ以上が含まれる。
また、本実施形態に係る加工条件には、前述の測距ユニット5に関連した条件及びパラメータ(以下、これを「測距条件」ともいう)も含まれる。そうした測距条件には、例えば、測距ユニット5による検出結果を示す信号と、ワークWの表面までの距離と、を関連付けるデータ等が含まれる。
操作用端末800により設定される加工条件は、マーカコントローラ100に出力されて、その条件設定記憶部102に記憶される。必要に応じて、操作用端末800における記憶装置803が加工条件を記憶してもよい。
なお、操作用端末800は、例えばマーカコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになるが、少なくとも本実施形態においては、操作用端末800とマーカコントローラ100は互いに別体とされている。
外部機器900は、必要に応じてレーザ加工装置Lのマーカコントローラ100に接続される。図1に示す例では、外部機器900として、画像認識装置901及びプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)902が設けられている。
具体的に、画像認識装置901は、例えば製造ライン上で搬送されるワークWの種別及び位置を判定する。画像認識装置901として、例えばイメージセンサを用いることができる。PLC902は、予め定められたシーケンスに従ってレーザ加工システムSを制御するために用いられる。
レーザ加工装置Lには、上述した機器や装置以外にも、操作及び制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を接続することもできる。この場合の接続は、例えば、IEEE1394、RS−232、RS−422及びUSB等のシリアル接続、又はパラレル接続としてもよい。あるいは、10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、磁気的、又は光学的な接続を採用することもできる。また、有線接続以外にも、IEEE802等の無線LAN、又は、Bluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続でもよい。さらに、データの交換や各種設定の保存等を行うための記憶装置に用いる記憶媒体としては、例えば、各種メモリカード、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等を利用することができる。
以下、マーカコントローラ100及びマーカヘッド1それぞれのハード構成に係る説明と、マーカコントローラ100によるマーカヘッド1の制御に係る構成と、について順番に説明をする。
<マーカコントローラ100>
図2に示すように、マーカコントローラ100は、上述した加工条件を記憶する条件設定記憶部102と、これに記憶されている加工条件に基づいてマーカヘッド1を制御する制御部101と、レーザ励起光(励起光)を生成する励起光生成部110と、を備えている。
(条件設定記憶部102)
条件設定記憶部102は、操作用端末800を介して設定された加工条件を記憶するとともに、必要に応じて、記憶された加工条件を制御部101へと出力するように構成されている。
具体的に、条件設定記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等を用いて構成されており、加工条件を示す情報を一時的又は継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をマーカコントローラ100に組み込んだ場合には、記憶装置803が条件設定記憶部102を兼用するように構成することができる。
(制御部101)
制御部101は、条件設定記憶部102に記憶された加工条件に基づいて、少なくとも、マーカコントローラ100における励起光生成部110、並びに、マーカヘッド1におけるレーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4、測距ユニット5、並びに同軸カメラ6及び広域カメラ(非同軸カメラ)7を制御することにより、ワークWの印字加工等を実行する。
具体的に、制御部101は、CPU、メモリ、入出力バスを有しており、操作用端末800を介して入力された情報を示す信号、及び、条件設定記憶部102から読み込んだ加工条件を示す信号に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をレーザ加工装置Lの各部へと出力することにより、ワークWに対する印字加工、及び、ワークWまでの距離の測定を制御する。
例えば、制御部101は、ワークWの加工を開始するときには、条件設定記憶部102に記憶された目標出力を読み込んで、その目標出力に基づき生成した制御信号を励起光源駆動部112へと出力し、レーザ励起光の生成を制御する。
また、制御部101は、実際にワークWを加工する際には、例えば条件設定記憶部102に記憶されている加工パターン(マーキングパターン)を読み込むとともに、その加工パターンに基づき生成した制御信号をレーザ光走査部4へと出力し、近赤外レーザ光を2次元走査する。
このように、制御部101は、近赤外レーザ光の2次元走査を実現するようにレーザ光走査部4を制御することができる。制御部101は、本実施形態における「走査制御部」の例示である。
(励起光生成部110)
励起光生成部110は、駆動電流に応じたレーザ光を生成する励起光源111と、その励起光源111に駆動電流を供給する励起光源駆動部112と、励起光源111に対して光学的に結合された励起光集光部113と、を備えている。励起光源111と励起光集光部113は、不図示の励起ケーシング内に固定されている。詳細は省略するが、この励起ケーシングは、熱伝導性に優れた銅等の金属で構成されており、励起光源111から効率よく放熱させることができる。
以下、励起光生成部110の各部について順番に説明する。
励起光源駆動部112は、制御部101から出力された制御信号に基づいて、励起光源111へ駆動電流を供給する。詳細は省略するが、励起光源駆動部112は、制御部101が決定した目標出力に基づいて駆動電流を決定し、そうして決定した駆動電流を励起光源111へ供給する。
励起光源111は、励起光源駆動部112から駆動電流が供給されるとともに、その駆動電流に応じたレーザ光を発振する。例えば、励起光源111は、レーザダイオード(Laser Diode:LD)等で構成されており、複数のLD素子を直線状に並べたLDアレイやLDバーを用いることができる。励起光源111としてLDアレイやLDバーを用いた場合、各素子から発振されるレーザ光は、ライン状に出力されて励起光集光部113に入射する。
励起光集光部113は、励起光源111から出力されたレーザ光を集光するとともに、レーザ励起光(励起光)として出力する。例えば、励起光集光部113は、フォーカシングレンズ等で構成されており、レーザ光が入射する入射面と、レーザ励起光を出力する出射面と、を有している。励起光集光部113は、マーカヘッド1に対し、前述の光ファイバーケーブルを介して光学的に結合されている。よって、励起光集光部113から出力されたレーザ励起光は、その光ファイバーケーブルを介してマーカヘッド1へ導かれることになる。
なお、励起光生成部110は、励起光源駆動部112、励起光源111及び励起光集光部113を予め組み込んだLDユニットあるいはLDモジュールとすることができる。また、励起光生成部110から出射される励起光(具体的には、励起光集光部113から出力されるレーザ励起光)は、無偏光とすることができ、これにより偏光状態の変化を考慮する必要がなく、設計上有利となる。特に、励起光源111周辺の構成については、複数のLD素子を数十個配列したLDアレイから各々得られる光を光ファイバーでバンドルして出力するLDユニット自体に、出力光を無偏光とする機構を備えることが好ましい。
(他の構成要素)
マーカコントローラ100はまた、測距ユニット5を介してワークWまでの距離を測定する距離測定部103を有している。距離測定部103は、測距ユニット5と電気的に接続されており、測距ユニット5による測定結果に関連した信号(少なくとも、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置を示す信号)を受信可能とされている。
また、後述のように、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、同軸カメラ6と、非同軸カメラとしての広域カメラ7と、を備えている。このレーザ加工装置Lは、同軸カメラ6及び広域カメラ7の少なくとも一方を作動させることで、ワークWの表面を撮像することができる。
マーカコントローラ100は、同軸カメラ6及び広域カメラ7の少なくとも一方によって撮像された画像に基づく処理を行うべく、対応関係補正部108と、表示制御部109と、を備えている。
マーカコントローラ100はまた、マーキングパターンに係る情報を設定する設定部107を備えている。設定部107における設定内容は、走査制御部としての制御部101が読み込んで使用する。
なお、距離測定部103、対応関係補正部108及び表示制御部109は、制御部101によって構成してもよい。例えば、制御部101が対応関係補正部108を兼用してもよい。
距離測定部103、対応関係補正部108及び表示制御部109の詳細は後述する。
<マーカヘッド1>
前述のように、励起光生成部110により生成されたレーザ励起光は、光ファイバーケーブルを介してマーカヘッド1へ導かれる。このマーカヘッド1は、レーザ励起光に基づいてレーザ光を増幅・生成して出力するレーザ光出力部2と、レーザ光出力部2から出力されたレーザ光をワークWの表面へ照射して2次元走査を行うレーザ光走査部4と、レーザ光出力部2からレーザ光走査部4へ至る光路を構成するレーザ光案内部3と、レーザ光走査部4を介して投光及び受光した測距光に基づいてワークWの表面までの距離を測定するための測距ユニット5と、ワークWの表面を撮像する同軸カメラ6及び広域カメラ7と、を備えている。
ここで、本実施形態に係るレーザ光案内部3は、単に光路を構成するばかりでなく、レーザ光の焦点位置を調整するZスキャナ(焦点調整部)33、ガイド光を出射するガイド光源36、及び、ワークWの表面を撮像する同軸カメラ6など、複数の部材が組み合わされてなる。
また、レーザ光案内部3はさらに、レーザ光出力部2から出力される近赤外レーザ光とガイド光源36から出射されるガイド光を合流せしめる上流側合流機構31と、レーザ光走査部4へ導かれるレーザ光と測距ユニット5から投光される測距光を合流せしめる下流側合流機構35と、を有している。
図3A〜図3Bはマーカヘッド1の概略構成を例示するブロック図であり、図4はマーカヘッド1の外観を例示する斜視図である。図3A〜図3Bのうち、図3Aは近赤外レーザ光を用いてワークWを加工する場合を例示し、図3Bは測距ユニット5を用いてワークWの表面までの距離を測定する場合を例示している。
図3A〜図4に例示するように、マーカヘッド1は、少なくともレーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5が内部に設けられた筐体10を備えている。この筐体10は、図4に示すような略直方状の外形を有している。筐体10の下面は、板状の底板10aによって区画されている。この底板10aには、マーカヘッド1から該マーカヘッド1の外部へレーザ光を出射するための透過ウインドウ19が設けられている。透過ウインドウ19は、底板10aを板厚方向に貫く貫通孔に対し、近赤外レーザ光、ガイド光及び測距光を透過可能な板状の透明部材を嵌め込むことによって構成されている。
なお、以下の記載では、図4における筐体10の長手方向を単に「長手方向」又は「前後方向」と呼称したり、同図における筐体10の短手方向を単に「短手方向」又は「左右方向」と呼称したりする場合がある。同様に、図4における筐体10の高さ方向を単に「高さ方向」又は「上下方向」と呼称する場合もある。
図5は、レーザ光走査部4の構成を例示する斜視図である。また、図6はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5の構成を例示する断面図であり、図7はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5を結ぶ光路を例示する断面図であり、図8はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5を結ぶ光路を例示する斜視図である。
図5〜図6に例示するように、筐体10の内部には仕切部11が設けられている。筐体10の内部空間は、この仕切部11によって長手方向の一側と他側に仕切られている。
具体的に、仕切部11は、筐体10の長手方向に対して垂直な方向に延びる平板状に形成されている。また、仕切部11は、筐体10の長手方向においては、同方向における筐体10の中央部に比して、長手方向一側(図4における前側)に寄せた配置とされている。
よって、筐体10内の長手方向一側に仕切られるスペースは、長手方向他側(図4における後側)に仕切られるスペースよりも、長手方向の寸法が短くなっている。以下、筐体10内の長手方向他側に仕切られるスペースを第1スペースS1と呼称する一方、その長手方向一側に仕切られるスペースを第2スペースS2と呼称する。
この実施形態では、第1スペースS1の内部には、レーザ光出力部2と、レーザ光案内部3における一部の部品と、レーザ光走査部4と、測距ユニット5が配置されている。一方、第2スペースS2の内部には、レーザ光案内部3における主要な部品が配置されている。
詳しくは、第1スペースS1は、略平板状のベースプレート12によって、短手方向の一側(図4の左側)の空間と、他側(図4の右側)の空間と、に仕切られている。前者の空間には、主に、レーザ光出力部2を構成する部品が配置されている。
さらに詳しくは、レーザ光出力部2を構成する部品のうち、光学レンズや光学結晶など、可能な限り気密状に密閉することが求められる光学部品21については、第1スペースS1における短手方向一側の空間において、ベースプレート12等によって包囲された収容空間の内部に配置されている。
対して、レーザ光出力部2を構成する部品のうち、電気配線や、図5に示すヒートシンク22など、必ずしも密閉することが求められない部品については、光学部品21に対し、ベースプレート12を挟んで反対側(第1スペースS1における短手方向他側)に配置されている。
また、図5及び図6に例示するように、レーザ光走査部4は、レーザ光出力部2における光学部品21と同様に、ベースプレート12を挟んで短手方向の一側に配置することができる。具体的に、この実施形態に係るレーザ光走査部4は、長手方向においては前述の仕切部11に隣接するとともに、上下方向においては筐体10の内底面に沿って配置されている。
また、図6に示すように、測距ユニット5は、レーザ光出力部2におけるヒートシンク22と同様に、第1スペースS1における短手方向他側の空間に配置されている。
また、レーザ光案内部3を構成する部品は、主に第2スペースS2に配置されている。この実施形態では、レーザ光案内部3を構成する大部分の部品は、仕切部11と、筐体10の前面を区画するカバー部材17と、により包囲された空間に収容されている。
なお、レーザ光案内部3を構成する部品のうち、下流側合流機構35については、第1スペースS1における仕切部11付近の部位に配置されている(図5を参照)。すなわち、この実施形態では、下流側合流機構35は、第1スペースS1と第2スペースS2との境界付近に位置することになる。
またベースプレート12には、該ベースプレート12を板厚方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。この貫通孔を通じて、レーザ光案内部3及びレーザ光走査部4と、測距ユニット5とが光学的に結合されることになる。
以下、レーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5の構成について順番に説明をする。
(レーザ光出力部2)
レーザ光出力部2は、励起光生成部110により生成されたレーザ励起光に基づいて印字加工用の近赤外レーザ光を生成するとともに、その近赤外レーザ光をレーザ光案内部3へと出力するように構成されている。
具体的に、レーザ光出力部2は、レーザ励起光に基づき所定の波長を有するレーザ光を生成するとともに、これを増幅して近赤外レーザ光を出射するレーザ発振器21aと、レーザ発振器21aから発振された近赤外レーザ光の一部を分離させるためのビームサンプラー21bと、ビームサンプラー21bによって分離せしめた近赤外レーザ光が入射するパワーモニタ21cと、を備えている。
詳細は省略するが、本実施形態に係るレーザ発振器21aは、レーザ励起光に対応した誘導放出を行ってレーザ光を出射するレーザ媒質と、レーザ媒質から出射されるレーザ光をパルス発振するためのQスイッチと、Qスイッチによりパルス発振されたレーザ光を共振させるミラーと、を有している。
特に本実施形態では、レーザ媒質としてロッド状のNd:YVO4(イットリウム・バナデイト)が用いられている。これにより、レーザ発振器21aは、レーザ光として、1064nm付近の波長を有するレーザ光(前述の近赤外レーザ光)を出射することができる。ただし、この例に限らず、他のレーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、YLF、GdVO4等を用いることもできる。レーザ加工装置Lの用途に応じて、様々な固体レーザ媒質を用いることができる。
また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光の波長を任意の波長に変換することもできる。また、固体レーザ媒質としてバルクに代わってファイバーを発振器として利用した、いわゆるファイバーレーザを利用してもよい。
さらには、Nd:YVO4等の固体レーザ媒質と、ファイバーとを組み合わせてレーザ発振器21aを構成してもよい。その場合、固体レーザ媒質を用いたときのように、パルス幅の短いレーザを出射してワークWへの熱ダメージを抑制する一方で、ファイバーを用いたときのように、高出力化を実現してより早い印字加工を実現することが可能となる。
パワーモニタ21cは、近赤外レーザ光の出力を検出する。パワーモニタ21cは、マーカコントローラ100と電気的に接続されており、その検出信号を制御部101等へ出力することができる。
(レーザ光案内部3)
レーザ光案内部3は、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光をレーザ光走査部4へと案内するレーザ光路Pの少なくとも一部を形成する。レーザ光案内部3は、そうしたレーザ光路Pを形成するためのベンドミラー34に加えて、Zスキャナ(焦点調整部)33及びガイド光源(ガイド光出射部)36等を備えている。これらの部品は、いずれも筐体10の内部(主に第2スペースS2)に設けられている。
レーザ光出力部2から入射した近赤外レーザ光は、ベンドミラー34によって反射され、レーザ光案内部3を通過する。ベンドミラー34へ至る途中には、近赤外レーザ光の焦点位置を調整するためのZスキャナ33が配置されている。Zスキャナ33を通過してベンドミラー34によって反射された近赤外レーザ光が、レーザ光走査部4に入射することになる。
レーザ光案内部3により構成されるレーザ光路Pは、焦点調整部としてのZスキャナ33を境として2分することができる。詳しくは、レーザ光案内部3により構成されるレーザ光路Pは、レーザ光出力部2からZスキャナ33へ至る上流側光路Puと、Zスキャナ33からレーザ光走査部4へ至る下流側光路Pdと、に区分することができる。
さらに詳しくは、上流側光路Puは、筐体10の内部に設けられており、レーザ光出力部2から、前述の上流側合流機構31を経由してZスキャナ33に至る。
一方、下流側光路Pdは、筐体10の内部に設けられており、Zスキャナ33から、ベンドミラー34と、前述の下流側合流機構35と、を順番に経由してレーザ光走査部4における第1スキャナ41に至る。
このように、筐体10の内部においては、上流側光路Puの途中に上流側合流機構31が設けられているとともに、下流側光路Pdの途中に下流側合流機構35が設けられている。
以下、レーザ光案内部3に関連した構成について順番に説明をする。
−ガイド光源36−
ガイド光源36は、筐体10内部の第2スペースS2に設けられており、所定の加工パターンをワークWの表面上に投影するためのガイド光を出射する。そのガイド光の波長は、可視光域に収まるように設定されている。その一例として、本実施形態に係るガイド光源36は、ガイド光として、655nm付近の波長を有する赤色レーザ光を出射する。よって、マーカヘッド1からガイド光が出射されると、使用者は、そのガイド光を視認することができる。
なお、本実施形態では、ガイド光の波長は、少なくとも近赤外レーザ光の波長と相違するように設定されている。また後述のように、測距ユニット5における測距光出射部5Aは、ガイド光及び近赤外レーザ光とは異なる波長を有する測距光を出射する。よって、測距光と、ガイド光と、レーザ光と、は互いに異なる波長を有するようになっている。
具体的に、ガイド光源36は、第2スペースS2において上流側合流機構31と略同じ高さに配置されており、筐体10の短手方向の内側に向かって可視光レーザ(ガイド光)を出射することができる。ガイド光源36はまた、該ガイド光源36から出射されるガイド光の光軸と、上流側合流機構31と、が交わるような姿勢とされている。
なお、ここでいう「略同じ高さ」とは、筐体10の下面をなす底板10aから見て、高さ位置が実質的に等しいことを指す。他の記載においても、底板10aから見た高さを指す。
よって、例えば近赤外レーザ光による加工パターンを使用者に視認させるべく、ガイド光源36からガイド光が出射されると、そのガイド光は、上流側合流機構31へ至る。上流側合流機構31は、光学部品としてのダイクロイックミラー(不図示)を有している。後述のように、このダイクロイックミラーは、ガイド光を透過させつつも、近赤外レーザ光を反射させる。これにより、ダイクロイックミラーを透過したガイド光と、同ミラーにより反射された近赤外レーザ光とが合流して同軸になる。
なお、本実施形態に係るガイド光源36は、制御部101から出力された制御信号に基づいて、ガイド光を出射するように構成されている。
−上流側合流機構31−
上流側合流機構31は、ガイド光出射部としてのガイド光源36から出射されたガイド光を、上流側光路Puに合流させる。上流側合流機構31を設けることで、ガイド光源36から出射されたガイド光と、上流側光路Puにおける近赤外レーザ光と、を同軸にすることができる。
前述のように、ガイド光の波長は、少なくとも近赤外レーザ光の波長と相違するように設定されている。そのため、上流側合流機構31は、前述のように、例えばダイクロイックミラーを用いて構成することができる。このダイクロイックミラーによって同軸化された近赤外レーザ光及びガイド光は、下方に向かって伝搬し、Zスキャナ33を通過してベンドミラー34へ至る。
−Zスキャナ33−
焦点調整部としてのZスキャナ33は、レーザ光案内部3が構成する光路の途中に配置されており、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光の焦点位置を調整することができる。
具体的に、Zスキャナ33は、筐体10の内部において、レーザ光路Pのうち、ガイド光合流機構としての上流側合流機構31からレーザ光走査部4までの光路の途中に設けられている。
詳しくは、本実施形態に係るZスキャナ33は、図3A〜図3Bに示すように、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光を透過させる入射レンズ33aと、入射レンズ33aを通過した近赤外レーザ光を通過させるコリメートレンズ33bと、入射レンズ33a及びコリメートレンズ33bを通過した近赤外レーザ光を通過させる出射レンズ33cと、入射レンズ33aを移動させるレンズ駆動部33dと、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b、出射レンズ33cを収容するケーシング33eと、を有している。
入射レンズ33aは平凹レンズからなり、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは平凸レンズからなる。入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは、各々の光軸が互いに同軸になるように配置されている。
また、Zスキャナ33においては、レンズ駆動部33dが光軸に沿って入射レンズ33aを移動させる。これにより、Zスキャナ33を通過する近赤外レーザ光に対し入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33c各々の光軸を同軸に保ちつつ、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの相対距離を変更することができる。そのことで、ワークWに照射される近赤外レーザ光の焦点位置が変化する。
以下、Zスキャナ33を構成する各部について、より詳細に説明する。
ケーシング33eは、略円筒形状を有している。図3A〜図3Bに示すように、ケーシング33eの両端部には、近赤外レーザ光を通過させるための開口33fが形成されている。ケーシング33eの内部では、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cが、この順番で上下方向に並んでいる。
そして、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cのうち、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは、ケーシング33eの内部に固定されている。一方、入射レンズ33aは、上下方向に移動可能に設けられている。レンズ駆動部33dは、例えばモータを有しており、入射レンズ33aを上下方向に移動させる。これにより、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの相対距離が変更される。
例えば、レンズ駆動部33dによって、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの間の距離が、相対的に短く調整されたものとする。この場合、出射レンズ33cを通過する近赤外レーザ光の集光角が相対的に小さくなるため、近赤外レーザ光の焦点位置は、マーカヘッド1の透過ウインドウ19から遠ざかることになる。
一方、レンズ駆動部33dによって、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの間の距離が、相対的に長く調整されたものとする。この場合、出射レンズ33cを通過する近赤外レーザ光の集光角が相対的に大きくなるため、近赤外レーザ光の焦点位置は、マーカヘッド1の透過ウインドウ19に近付くことになる。
なお、Zスキャナ33においては、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cのうち、入射レンズ33aをケーシング33eの内部に固定して、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cを上下方向に移動可能としてもよい。あるいは、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cを全て、上下方向に移動可能としてもよい。
こうして、焦点調整部としてのZスキャナ33は、近赤外レーザ光を上下方向に走査するための手段として機能することになる。以下、Zスキャナ33による走査方向を「Z方向」と呼称する場合がある。
なお、Zスキャナ33を通過する近赤外レーザ光は、前述のように、ガイド光源36から出射されるガイド光と同軸とされている。そのため、Zスキャナ33を作動させることにより、近赤外レーザ光ばかりでなく、ガイド光の焦点位置も併せて調整することができる。
なお、本実施形態に係るZスキャナ33、特にZスキャナ33におけるレンズ駆動部33dは、制御部101から出力された制御信号に基づいて作動するように構成されている。
−ベンドミラー34−
ベンドミラー34は、下流側光路Pdの途中に設けられており、該光路Pdを折り曲げて後方に指向させるように配置されている。図6に示すように、ベンドミラー34は、下流側合流機構35における光学部材35aと略同じ高さに配置されており、Zスキャナ33を通過した近赤外レーザ光及びガイド光を反射することができる。
ベンドミラー34によって反射された近赤外レーザ光及びガイド光は、後方に向かって伝搬し、下流側合流機構35を通過してレーザ光走査部(具体的には第1スキャナ41)4へ至る。
−下流側合流機構35−
下流側合流機構35は、測距ユニット5における測距光出射部5Aから出射された測距光を、前述の下流側光路Pdに合流させることによりレーザ光走査部4を介してワークWへ導く。加えて、下流側合流機構35は、ワークWにより反射されてレーザ光走査部4及び下流側光路Pdの順に戻る測距光を、測距ユニット5における測距光受光部5Bへ導く。
下流側合流機構35を設けることで、測距光出射部5Aから出射された測距光と、下流側光路Pdにおける近赤外レーザ光及びガイド光と、を同軸にすることができる。それと同時に、下流側合流機構35を設けることで、マーカヘッド1から出射されてワークWにより反射された測距光のうち、マーカヘッド1に入射した測距光を測距光受光部5Bまで導くことができる。
前述のように、測距光の波長は、近赤外レーザ光及びガイド光の波長と相違するように設定されている。そのため、下流側合流機構35は、上流側合流機構31と同様に、例えばダイクロイックミラーを用いて構成することができる。
具体的に、本実施形態に係る下流側合流機構35は、測距光及びガイド光の一方を透過させ、他方を反射するダイクロイックミラー35aを有している(図6及び図7を参照)。より詳細には、ダイクロイックミラー35aは、ベンドミラー34と略同じ高さ位置で、かつベンドミラー34の後方に配置されており、筐体10内の短手方向の左側のスペースに配置される。
ダイクロイックミラー35aはまた、図6等に示すように、その一方側の鏡面をベンドミラー34に向け、かつ他方側の鏡面をベースプレート12に向けた姿勢で固定されている。よって、ダイクロイックミラー35aにおける一方側の鏡面には近赤外レーザ光及びガイド光が入射する一方、他方側の鏡面には測距光が入射することになる。
そして、本実施形態に係るダイクロイックミラー35aは、測距光を反射し、かつ近赤外レーザ光とガイド光とを透過させることができる。これにより、例えば測距ユニット5から出射された測距光がダイクロイックミラー35aに入射したときには、その測距光を下流側光路Pdに合流させ、近赤外レーザ光及びガイド光と同軸にすることができる。そうして同軸化された近赤外レーザ光、ガイド光及び測距光は、図3A〜図3Bに示すように第1スキャナ41へ至る。
一方、ワークWにより反射された測距光は、レーザ光走査部4へ戻ることにより下流側光路Pdに至る。下流側光路Pdへ戻った測距光は、下流側合流機構35におけるダイクロイックミラー35aにより反射されて測距ユニット5に至る。
なお、測距ユニット5からダイクロイックミラー35aに入射する測距光、及び、ダイクロイックミラー35aにより反射されて測距ユニット5に入射する測距光は、図7に示すように、双方とも、筐体10を平面視したときの左右方向(筐体10の短手方向)に沿って伝搬するようになっている。
(レーザ光走査部4)
図3Aに示すように、レーザ光走査部4は、レーザ光出力部2から出射されてレーザ光案内部3により案内されたレーザ光(近赤外レーザ光)をワークWへ照射するとともに、そのワークWの表面上で2次元走査するように構成されている。
図5に示す例では、レーザ光走査部4は、いわゆる2軸式のガルバノスキャナとして構成されている。すなわち、このレーザ光走査部4は、レーザ光案内部3から入射した近赤外レーザ光を第1方向に走査するための第1スキャナ41と、第1スキャナ41により走査された近赤外レーザ光を第2方向に走査するための第2スキャナ42と、を有している。
ここで、第2方向は、第1方向に対して略直交する方向を指す。よって、第2スキャナ42は、第1スキャナ41に対して略直交する方向に近赤外レーザ光を走査することができる。本実施形態では、第1方向は前後方向(筐体10の長手方向)に等しく、第2方向は左右方向(筐体10の短手方向)に等しい。以下、第1方向を「X方向」と呼称し、これと直交する第2方向を「Y方向」と呼称する。X方向とY方向は、双方とも前述のZ方向と直交している。
第1スキャナ41は、その先端に第1ミラー41aを有している。第1ミラー41aは、ベンドミラー34及び光学部材35aと略同じ高さ位置で、かつ光学部材35aの後方に配置されている。よって、図5に示すように、ベンドミラー34と、光学部材35aと、第1ミラー41aは、前後方向(筐体10の長手方向)に沿って一列に並ぶようになっている。
第1ミラー41aはまた、第1スキャナ41に内蔵されたモータ(不図示)によって回転駆動される。このモータは、上下方向に延びる回転軸まわりに第1ミラー41aを回転させることができる。第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、第1ミラー41aによる近赤外レーザ光の反射角を調整することができる。
同様に、第2スキャナ42は、その先端に第2ミラー42aを有している。第2ミラー42aは、第1スキャナ41における第1ミラー41aと略同じ高さ位置でかつ、この第1ミラー41aの右方に配置されている。よって、図6に示すように、第1ミラー41aと、第2ミラー42aは、左右方向(筐体10の短手方向)に沿って並ぶようになっている。
第2ミラー42aはまた、第2スキャナ42に内蔵されたモータ(不図示)によって回転駆動される。このモータは、前後方向に延びる回転軸まわりに第2ミラー42aを回転させることができる。第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、第2ミラー42aによる近赤外レーザ光の反射角を調整することができる。
よって、下流側合流機構35からレーザ光走査部4へ近赤外レーザ光が入射すると、その近赤外レーザ光は、第1スキャナ41における第1ミラー41aと、第2スキャナ42における第2ミラー42aとによって順番に反射され、透過ウインドウ19を介してマーカヘッド1の外部へ出射することになる。
そのときに、第1スキャナ41のモータを作動させて第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で近赤外レーザ光を第1方向に走査することが可能となる。それと同時に、第2スキャナ42のモータを作動させて第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で近赤外レーザ光を第2方向に走査することが可能になる。
また前述のように、レーザ光走査部4には、近赤外レーザ光ばかりでなく、下流側合流機構35の光学部材35aを通過したガイド光、又は、同部材35aによって反射された測距光も入射することになる。本実施形態に係るレーザ光走査部4は、第1スキャナ41及び第2スキャナ42をそれぞれ作動させることで、そうして入射したガイド光又は測距光を2次元走査することができる。
なお、第1ミラー41a及び第2ミラー42aが取り得る回転姿勢は、基本的には、第2ミラー42aによって近赤外レーザ光が反射されたときに、その反射光が透過ウインドウ19を通過するような範囲内に設定される(図7〜図8も参照)。
こうして、本実施形態に係るレーザ光走査部4は、走査制御部としての制御部101によって電気的に制御されることにより、ワークWの表面上に設定される加工領域R1に近赤外レーザ光を照射して、その加工領域R1内に所定の加工パターン(マーキングパターン)を形成することができる。
(同軸カメラ6)
同軸カメラ6は、レーザ光出力部2からレーザ光走査部4までのレーザ光路Pから分岐した撮像光軸A1を有する(図3A及び図3B参照)。同軸カメラ6は、レーザ光走査部4を介してワークWを撮像することにより、加工領域R1の少なくとも一部を含んだ撮像画像Pwを生成することができる。同軸カメラ6は、本実施形態における「撮像部」の例示である。
同軸カメラ6は、加工用の近赤外レーザ光と同軸化された撮像手段として構成されている。同軸カメラ6は、広域カメラ7よりも視野サイズこそ狭いが、撮像画像Pwとして、加工領域R1を相対的に高倍率で拡大した同軸画像を生成したり、レーザ光走査部4を介して撮像領域を2次元走査したり、することができる。同軸カメラ6は、例えば、加工領域R1の一部を局所的に拡大して撮像するために用いられる。
同軸カメラ6によって生成された撮像画像Pwは、その少なくとも一部を拡大縮小した状態で、表示部801上に表示することができる。
本実施形態に係る同軸カメラ6は、筐体10に内蔵されている。具体的に、同軸カメラ6は、レーザ光案内部3において、ベンドミラー34と略同じ高さに配置されている。同軸カメラ6は、レーザ光走査部4からレーザ光案内部3へと入射した反射光を受光する。同軸カメラ6は、ワークWの印字点において反射された反射光が、ベンドミラー34を介して入射するように構成されている。同軸カメラ6は、そうして入射した反射光を結像することで、ワークWの表面を撮像することができる。なお、同軸カメラ6のレイアウトは、適宜、変更可能である。例えば、同軸カメラ6及びベンドミラー34の高さを互いに異ならせてもよい。
同軸カメラ6が結像に用いる反射光は、前述の下流側光路Pdから分岐して伝搬する。よって、レーザ光走査部4を適宜作動させることで、図12に例示する加工領域R1を2次元的に走査することができる。
なお、本実施形態に係る同軸カメラ6は、ガイド光源36等と同様に、制御部101から出力された制御信号に基づいて作動するように構成されている。
(広域カメラ7)
広域カメラ7は、レーザ光路Pから分岐した撮像光軸A2を有する(図12参照)。広域カメラ7は、レーザ光走査部4の非介在下でワークWを撮像することにより、同軸カメラ6により生成される画像よりも視野サイズの広い撮像画像Pwを生成することができる。
広域カメラ7は、加工用の近赤外レーザ光と非同軸化された撮像手段として構成されている。広域カメラ7は、レーザ光走査部4を介した2次元走査こそできないが、同軸カメラ6よりも視野サイズが広く、撮像画像Pwとして、加工領域R1を相対的に広視野で撮像した広域画像を生成することができる。広域カメラ7は、加工領域R1の少なくとも一部を含んだ撮像画像Pwを生成することができ、同軸カメラ6と同様に、本実施形態における「撮像部」を例示している。広域カメラ7は、例えば、加工領域R1全体を一度に撮像するために用いられる。
広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwは、その少なくとも一部を拡大縮小した状態で、表示部801上に表示することができる。表示部801は、広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwと、同軸カメラ6によって生成された撮像画像Pwと、を並べて表示したり、2種類の撮像画像Pwのうちの一方を択一的に表示したり、することができる。
本実施形態に係る広域カメラ7は、透過ウインドウ19の直上方に配置されており、その撮像レンズを下方に向けた姿勢で固定されている。前述のように、広域カメラ7の撮像光軸A2は、前述した近赤外レーザ光の光軸Azと同軸化されていない(図3A、図3B及び図12を参照)。
(測距ユニット5)
図3Bに示すように、測距ユニット5は、レーザ光走査部4を介して測距光を投光し、それをワークWの表面に照射する。測距ユニット5はまた、ワークWの表面により反射された測距光を、レーザ光走査部4を介して受光する。
測距ユニット5は、主に、測距光を投光するためのモジュールと、測距光を受光するためのモジュールと、に大別される。具体的に、測距ユニット5は、測距光を投光するためのモジュールとして構成された測距光出射部5Aと、測距光を受光するためのモジュールとして構成された測距光受光部5Bと、を備えている。
このうち、測距光出射部5Aは、筐体10の内部に設けられており、レーザ加工装置Lにおけるマーカヘッド1からワークWの表面までの距離を測定するための測距光を、レーザ光走査部4に向けて出射する。
一方、測距光受光部5Bは、測距光出射部5Aと同様に筐体10の内部に設けられており、ワークWの表面上で反射されてレーザ光走査部4及び下流側合流機構35を介して戻った測距光を受光する。
さらに、測距ユニット5は、測距光出射部5A及び測距光受光部5Bを下方から支持する支持台50を備えており、この支持台50を介して筐体10の内部に固定されている。
前述のように、測距ユニット5は、第1スペースS1における短手方向他側の空間に設けられている。図7に示すように、測距ユニット5は、筐体10の長手方向に沿って前方に測距光を出射するとともに、同長手方向に沿って略後方に伝搬する測距光を受光する。
また、測距ユニット5は、前述の光学部材35aを介してレーザ光案内部3と光学的に結合される。前述のように、測距ユニット5は、筐体10の長手方向に沿って測距光を投光する。それに対し、光学部材35aは、筐体10の長手方向ではなく、その短手方向に沿って伝搬した測距光を反射するようになっている。
そこで、測距ユニット5と光学部材35aを結ぶ光路を構成するべく、筐体10の内部にはベンドミラー59が設けられている(図6及び図7を参照)。
よって、測距光出射部5Aからベンドミラー59に入射した測距光は、同ミラー59によって反射された光学部材35aに入射する。一方、レーザ光走査部4に戻って光学部材35aによって反射された測距光は、ベンドミラー59に入射するとともに、同ミラー59によって反射されて測距光受光部5Bに入射する。
以下、測距ユニット5を成す各部の構成について、順番に説明をする。
−測距光出射部5A−
測距光出射部5Aは、筐体10の内部に設けられており、レーザ加工装置Lにおけるマーカヘッド1から、ワークWの表面までの距離を測定するための測距光を出射するよう構成されている。
具体的に、測距光出射部5Aは、前述の測距光源51及び投光レンズ52と、これらを収容するケーシング53と、投光レンズ52によって集光された測距光を案内する一対のガイドプレート54L、54Rと、を有している。測距光源51、投光レンズ52及びガイドプレート54L、54Rは筐体10の後側から順番に並んでおり、それらの並び方向は、筐体10の長手方向と実質的に等しい。
ケーシング53は、筐体10及び支持台50の長手方向に沿って延びる筒状に形成されており、同方向における一側、すなわち筐体10の後側に対応する一端部には測距光源51が取り付けられている一方、筐体10の前側に対応する他端部には投光レンズ52が取り付けられている。測距光源51と投光レンズ52との間の空間は、略気密状に密閉されている。
測距光源51は、制御部101から入力された制御信号に従って、筐体10の前側に向かって測距光を出射する。詳しくは、測距光源51は、測距光として、可視光域にあるレーザ光を出射することができる。特に、本実施形態に係る測距光源51は、測距光として、690nm付近の波長を有する赤色レーザ光を出射する。
測距光源51はまた、測距光として出射される赤色レーザ光の光軸Aoが、ケーシング53の長手方向に沿うような姿勢で固定されている。よって、測距光の光軸Aoは、筐体10及び支持台50の長手方向に沿うこととなり、投光レンズ52の中央部を通過してケーシング53の外部に至る。
投光レンズ52は、支持台50の長手方向においては、測距光受光部5Bにおける一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、の間に位置している。投光レンズ52は、測距光の光軸Aoが通過するような姿勢とされている。
投光レンズ52は、例えば平凸レンズとすることができ、球面状の凸面をケーシング53の外部に向けた姿勢で固定することができる。投光レンズ52は、測距光源51から出射された測距光を集光し、ケーシング53の外部に出射する。ケーシング53の外部に出射された測距光は、ガイドプレート54L、54Rの間に至る。
ガイドプレート54L、54Rは、支持台50の短手方向に並んだ一対の部材として構成されており、それぞれ、支持台50の長手方向に延びる板状体とすることができる。一方のガイドプレート54Lと、他方のガイドプレート54Rとの間には、測距光を出射するためのスペースが区画される。ケーシング53の外部に出射された測距光は、そうして区画されたスペースを通過して出力される。
よって、測距光源51から出射された測距光は、ケーシング53内部の空間、投光レンズ52の中央部、ガイドプレート54L、54Rの間のスペースを通過して、測距ユニット5の外部に出力される。そうして出力された測距光は、ベンドミラー59と、下流側合流機構35における光学部材35aと、によって反射されて、レーザ光走査部4に入射する。
レーザ光走査部4に入射した測距光は、第1スキャナ41の第1ミラー41aと、第2スキャナ42の第2ミラー42aと、によって順番に反射され、透過ウインドウ19からマーカヘッド1の外部へ出射することになる。
レーザ光走査部4の説明に際して記載したように、第1スキャナ41の第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で測距光を第1方向に走査することができる。それと同時に、第2スキャナ42のモータを作動させて第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で測距光を第2方向に走査することが可能になる。
そうして走査された測距光は、ワークWの表面上で反射される。そうして反射された測距光の一部(以下、これを「反射光」ともいう)は、透過ウインドウ19を介してマーカヘッド1の内部に入射する。マーカヘッド1の内部に入射した反射光は、レーザ光走査部4を介してレーザ光案内部3に戻る。反射光は、測距光と同じ波長を有することから、レーザ光案内部3における下流側合流機構35の光学部材35aによって反射され、ベンドミラー59を介して測距ユニット5に入射する。
−測距光受光部5B−
測距光受光部5Bは、筐体10の内部に設けられており、測距光出射部5Aから出射されてワークWにより反射された測距光(前述の「反射光」に等しい)を受光するよう構成されている。
具体的に、測距光受光部5Bは、一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、を有している。一対の受光素子56L、56Rは、それぞれ支持台50の後端部に配置されている一方、受光レンズ57は、それぞれ支持台50の前端部に配置されている。したがって、一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、は実質的に筐体10及び支持台50の長手方向に沿って並ぶようになっている。
一対の受光素子56L、56Rは、筐体10の内部において、測距光出射部5Aにおける測距光の光軸Aoを挟むように各々の光軸が配置されている。一対の受光素子56L、56Rは、レーザ光走査部4へ戻った反射光をそれぞれ受光する。
詳しくは、一対の受光素子56L、56Rは、測距光出射部5Aの光軸Aoに直交する方向に並んでいる。この実施形態では、一対の受光素子56L、56Rの並び方向は、筐体10及び支持台50の短手方向、すなわち左右方向に等しい。同方向において、一方の受光素子56Lが測距光源51の左側に配置され、他方の受光素子56Rが測距光源51の右側に配置されている。
そして、一対の受光素子56L、56Rは、それぞれ、斜め前方に指向せしめた受光面を有しており、各受光面における反射光の受光位置を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)を出力する。各受光素子56L、56Rから出力される検出信号は、マーカコントローラ100に入力されて距離測定部103に至る。
各受光素子56L、56Rとして使用可能な素子としては、例えば、相補型MOS(Complementary MOS:CMOS)から成るCMOSイメージセンサ、電荷結合素子(Charge-Coupled Device:CCD)から成るCCDイメージセンサ、光位置センサ(Position Sensitive Detector:PSD)等が挙げられる。
本実施形態では、各受光素子56L、56Rは、CMOSイメージセンサを用いて構成されている。この場合、各受光素子56L、56Rは、反射光の受光位置ばかりでなく、その受光量分布(受光波形)を検出することができる。すなわち、CMOSイメージセンサを用いて各受光素子56L、56Rを構成した場合、各々の受光面には、少なくとも左右方向に画素が並ぶことになる。この場合、各受光素子56L、56Rは、画素毎に信号を読み出して増幅し、外部に出力することができる。各画素における信号の強度は、反射光が受光面上でスポットを形成したときに、そのスポットにおける反射光の強度に基づき決定される。
なお、CMOSイメージセンサのように、受光量分布(受光波形)を検出可能な素子を用いて各受光素子56L、56Rを構成した場合、各受光素子56L、56Rにおける受光量の大きさは、測距光の強度、すなわち測距光出射部5Aから出射される測距光の強度(以下、これを「投射光量」ともいう)と、画素毎に信号を増幅する際のゲイン(以下、これを「受光ゲイン」ともいう)と、を用いて調整することができる。また、ゲインの他にも、各受光素子56L、56Rにおける露光時間を用いて調整することができる。
本実施形態に係る一対の受光素子56L、56Rは、少なくとも、反射光の受光位置を示すピーク位置と、その反射光の受光量を検出することができる。受光量を示す指標としては、例えば、反射光の受光量分布における、ピークの高さを用いることができる。これに代えて、受光量分布の合算値、平均値、積分値を用いてもよい。
また、反射光の受光位置を示す指標としては、本実施形態では受光量分布のピーク位置(スポットのピーク位置)を用いているが、これに代えて、受光量分布の重心位置を用いてもよい。
受光レンズ57は、筐体10の内部において一対の受光素子56L、56Rそれぞれの光軸が通過するように配置されている。受光レンズ57はまた、下流側合流機構35と一対の受光素子56L、56Rとを結ぶ光路の途中に設けられており、下流側合流機構35を通過した反射光を、一対の受光素子56L、56Rそれぞれの受光面に集光させることができる。
受光レンズ57は、レーザ光走査部4へ戻った反射光を集光し、各受光素子56L、56Rの受光面上に反射光のスポットを形成させる。各受光素子56L、56Rは、そうして形成されたスポットのピーク位置と、受光量を示す信号を距離測定部103に出力する。
レーザ加工装置Lは、基本的には、受光素子56L、56R各々の受光面における反射光の受光位置(本実施形態ではスポットのピークの位置)に基づいて、ワークWの表面までの距離を測定することができる。距離の測定手法としては、いわゆる三角測距方式が用いられる。
−距離の測定手法について−
図9は、三角測距方式について説明する図である。図9においては、測距ユニット5のみが図示されているが、以下の説明は、前述のようにレーザ光走査部4を介して測距光が出射される場合にも共通である。
図9に例示するように、測距光出射部5Aにおける測距光源51から測距光が出射されると、その測距光は、ワークWの表面に照射される。ワークWによって測距光が反射されると、その反射光(特に拡散反射光)は、仮に正反射の影響を除いたならば、略等方的に伝搬することになる。
そうして伝搬する反射光には、受光レンズ57を介して受光素子56Lに入射する成分が含まれるものの、マーカヘッド1とワークWとの距離に応じて、その入射光の受光素子56Lへの入射角が増減することになる。受光素子56Lへの入射角が増減すると、その受光面56aにおける受光位置が変位することになる。
このように、マーカヘッド1とワークWとの距離と、受光面56aにおける受光位置と、は所定の関係を以て関連付いている。したがって、その関係を予め把握しておくとともに、例えばマーカコントローラ100に記憶させておくことで、受光面56aにおける受光位置から、マーカヘッド1とワークWとの距離を算出することができる。このような算出方法は、いわゆる三角測距方式を用いた手法に他ならない。
すなわち、前述の距離測定部103が、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置に基づいて、三角測距方式によりレーザ加工装置LからワークWの表面までの距離を測定する。
具体的に、前述の条件設定記憶部102には、受光面56aにおける受光位置と、マーカヘッド1からワークWの表面までの距離との関係が予め記憶されている。一方、距離測定部103には、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置、詳しくは測距光の反射光が、受光面56a上に形成するスポットのピークの位置を示す信号が入力される。
距離測定部103は、そうして入力された信号と、条件設定記憶部102が記憶している関係と、に基づいて、ワークWの表面までの距離を測定する。そうして得られた測定値は、例えば制御部101に入力されて、制御部101によるZスキャナ33等の制御に用いられる。
例えば、レーザ加工装置Lは、ワークWの表面のうち、マーカヘッド1による加工対象となる部位(印字点)を自動又は手動で決定する。続いて、レーザ加工装置Lは、印字加工を実行するに先だって、各印字点(より正確には、印字点周辺に設定した測距点)までの距離を測定するとともに、測定された距離に見合う焦点位置となるようにZスキャナ33の制御パラメータを決定する。レーザ加工装置Lは、そうして決定された制御パラメータに基づいてZスキャナ33を作動させた後に、近赤外レーザ光によってワークWに印字加工を施す。
−加工基準面について−
測距光及び近赤外レーザ光は、いずれも透過ウインドウ19を透過してワークWに至る。ここで、近赤外レーザ光が照射されるべき印字点は、ワークWの表面上に設定される加工領域R1内に設けられる。加工領域R1の設定は、マーカコントローラ100が実行する。加工領域R1を設定することで、各ワークWにおいて加工が施されるべき部位を指定することができる。しかし、複数のワークWに対して印字加工を施す場合、凹凸等の表面状態次第では、ワークW毎に印字点、ひいては加工領域R1の場所がずれる可能性がある。
そのため、測距光、及び、近赤外レーザ光を精密に走査するためには、ワークWの表面状態とは無関係な指標が必要となる。そこで、本実施形態に係るレーザ加工装置L(特に、走査制御部としての制御部101)は、図15A等に例示するように、筐体10の外部に設けられる加工基準面Rbを基準とした位置情報に基づいて、測距光、及び、近赤外レーザ光を走査させるように構成されている。
この加工基準面Rbは、透過ウインドウ19を挟んでレーザ光走査部4の反対側に位置しており、レーザ光走査部4から所定の間隔を開けて設定されている。具体的に、加工基準面Rbは、透過ウインドウ19の下方に設けられており、この透過ウインドウ19との距離が所定値となる位置に配置されている。このように配置した結果、レーザ光走査部4は、透過ウインドウ19越しに加工基準面Rbと向い合うことになる
そして、加工領域R1内に照射されるレーザ光は、加工基準面Rbを基準とした位置情報、例えば加工基準面Rb上における近赤外レーザ光、及び、測距光の照射位置に基づいて制御される。具体的に、本実施形態に係る制御部101は、加工基準面Rbを基準とした位置情報に基づいて、その加工基準面Rbに平行な方向に沿って近赤外レーザ光及び測距光を2次元走査する。加工基準面Rbを用いることで、例えば、高さの異なる複数のワークWに対し、共通の加工パターンを容易に形成することができる。そのことで、ワークW間で印字精度、印字品質等にバラツキが生じるのを抑制することができる。
以下、レーザ加工システムSの具体的な使用方法について説明をする。
<レーザ加工システムSの使用方法について>
図10は、レーザ加工システムSの使用方法を示すフローチャートである。また、図11は、印字設定、サーチ設定及び測距設定の作成手順を例示するフローチャートであり、図12は、加工領域R1と設定面R4の関係を例示する図であり、図13は、表示部801における表示内容を例示する図である。
また、図14は、レーザ加工装置Lの運用手順を例示するフローチャートである。
レーザマーカとして構成されたレーザ加工装置Lを備えたレーザ加工システムSは、例えば、工場の製造ライン上に設置して運用することができる。その運用に際しては、まず、製造ラインの稼働に先だって、そのラインを流れることになるワークWの設置位置、並びに、そのワークWに照射する近赤外レーザ光及び測距光の出力等の条件設定を作成する(ステップS1)。
このステップS1において作成された設定内容は、マーカコントローラ100、及び/又は、操作用端末800等に転送されて記憶されたり、作成直後にマーカコントローラ100が読み込んだりする(ステップS2)。
そして、製造ラインの稼働に際して、マーカコントローラ100は、予め記憶されていたり、作成直後に読み込まれたりした設定内容を参照する。レーザ加工装置Lは、参照された設定内容に基づいて運用され、ライン上を流れる各ワークWに対して印字加工を実行する(ステップS3)。
図11は、図10のステップS1における具体的な処理を例示している。
まず、ステップS11において、レーザ加工装置Lに内蔵されている同軸カメラ6又は広域カメラ7は、加工領域R1の少なくとも一部を含んだ撮像画像Pwを生成する。同軸カメラ6又は広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwは、操作用端末800に出力される。
操作用端末800における表示部801は、加工領域R1に対応付けられた設定面R4を表示するとともに、その設定面R4に撮像画像Pwを重ねて表示する(図12及び図13参照)。これにより、表示部801における設定面R4上に規定される座標系(印字座標系)と、撮像画像Pw上に規定される座標系(カメラ座標系)と、を対応付けることができる。例えば、ユーザが撮像画像Pwを見ながら印字点を指定することで、設定面R4を介して加工領域R1上に印字することができるようになる。撮像画像Pwは、設定面R4を通じて種々の設定を行う際の背景画像として機能する。
続くステップS12において、設定部107が加工条件を設定する。設定部107は、条件設定記憶部102等における記憶内容を読み出したり、操作用端末800を介した操作入力等を読み込んだりすることで、加工条件を設定する。
加工条件には、印字内容等を示す印字パターン(マーキングパターン)Pm、及び、この印字パターンPmの位置を示す印字ブロックBが含まれる。印字ブロックB、印字パターンPmのレイアウト、サイズ、回転姿勢等の調整に用いることができる。また、印字ブロックBは、後述の測距位置Iと紐付けられて用いられる。
表示部801は、印字パターンPm及び印字ブロックBを撮像画像Pwと重ね合わせて表示することができる。例えば、図13では、ワークWの表面上に、「123」という数字からなる印字パターンPmと、これを取り囲む矩形状の印字ブロックBと、が設定面R4上に配置されており、表示部801は、そうして配置された印字パターンPm及び印字ブロックBを、撮像画像Pwと重ね合わせて表示する。
なお、印字パターンPmは「加工パターン」の例示であり、印字ブロックBは「加工ブロック」の例示である。「印字パターン」及び「印字ブロック」という名称は、便宜的なものに過ぎず、その用途を限定することを意図したものではない。
また、図示は省略したが、設定面R4上に複数のワークWを表示してもよいし、図13に例示するように、1つのワークWのみを表示してもよい。また、1つのワークW上に、複数の印字ブロックBを配置してもよい。印字パターンPmについても、例えばQRコード(登録商標)等、文字列以外のパターンを用いることができる。
図11のステップS12に戻ると、同ステップでは、例えばユーザが手動で印字ブロックBを作成し、その印字ブロックBを設定面R4上に配置する。前述のように設定面R4と撮像画像Pwとが関連付いているため、ユーザは、撮像画像Pwを視認しながら印字ブロックBを配置することができる。
そうして、1つ又は複数の印字ブロックBが配置されると、ユーザは、印字ブロックB毎に印字パターンPmを決定する。印字パターンPmの決定は、例えば、ユーザが操作部802を操作するとともに、その際の操作入力に基づいて、操作部802がマーカコントローラ100に印字パターンPmを入力することによって実行される。
設定部107は、そうして配置された印字ブロックB、及び、印字ブロックB毎に決定された印字パターンPmを読み込んで、それを加工条件として設定する。本実施形態に係る設定部107は、設定面R4上での印字ブロックBの座標(印字座標系での座標)等を、条件設定記憶部102等に一時的に又は継続的に記憶させる。
前述のように、設定面R4は、撮像画像Pwと重ね合わせて表示されることから、本実施形態に係る設定部107は、撮像画像Pwと重ね合わせるようにして、設定面R4上に印字ブロックBを設定することになる。設定部107は、本実施形態における「加工ブロック設定部」の例示である。
なお、加工条件には、近赤外レーザ光に係る条件(以下、「レーザ条件」という)も含まれる。このレーザ条件には、近赤外レーザ光の出射位置、近赤外レーザ光の目標出力(レーザパワー)、レーザ光走査部4による近赤外レーザ光の走査速度(スキャンスピード)、近赤外レーザ光の繰り返し周波数(パルス周波数)、近赤外レーザ光のレーザスポットを可変にするか否か(スポット可変)、及び、近赤外レーザ光が印字パターンPmをなぞる回数(印字回数)のうちの少なくとも1つが含まれる。図13の右下に表示されるメニューD1に例示するように、こうした加工条件は、印字ブロックB毎に設定することができる。
また、一般に、製造ラインを稼働させた際に順次加工されることになる各ワークWには、それぞれX方向及びY方向(XY方向)に位置ズレが生じることになる。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、種々の手法を用いることで、そうした位置ズレを補正することができる。
そこで、ステップS12から続くステップS13では、設定部107は、XY方向の位置ズレを補正するための条件設定(サーチ設定)を作成する。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、XY方向における位置ズレを補正するための手法として、例えば、パターンサーチを用いることができる。
パターンサーチを用いる場合、設定部107は、パターンサーチに係る条件(サーチ条件)として、ワークWの位置を特定するためのパターン領域(不図示)と、パターン領域(不図示)の移動範囲として定義されるサーチ領域(不図示)と、を撮像画像Pw上に設定する。
設定部107によって設定されたサーチ条件は、サーチ設定として条件設定記憶部102等に記憶される。サーチ設定の作成が完了すると、設定部107は、ステップS13からステップS14へ進む。
また一般に、製造ラインを稼動させた際に順次加工されることになる各ワークWには、それぞれ、Z方向に位置ズレが生じることになる。そうした位置ズレは、近赤外レーザ光の焦点位置のズレを招くため望ましくない。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、測距ユニット5を備えているため、ワークWの表面までの距離に基づいて、Z方向の位置ズレを検知することができる。これにより、Z方向の位置ズレ、ひいては焦点位置のズレを補正することができる。そのために、ステップS13から続くステップS14では、Z方向の位置ズレを補正するための条件設定(測距設定)を作成する。
具体的に、このステップS14では、測距ユニット5に係る条件(測距条件)が決定される。本実施形態に係る設定部107は、測距条件として、少なくとも、マーカヘッド1からワークWの表面までの距離を測定するための測距位置Iを、撮像画像Pw上に設定する(図13の星印を参照)。この測距位置Iは、基本的にはワークWの表面と重なり合うように設定されるものであり、測距光が照射されるべき座標を示している。
なお、設定部107は、複数の印字ブロックBが設定されている場合には、印字ブロックB毎に測距条件を設定することができる。この場合、設定部107は、各印字ブロックB内に測距位置Iを設定することができる(図13の星印を参照)。これに代えて、設定部107は、各印字ブロックBの外部に測距位置Iを設定してもよい。
設定部107によって設定された測距条件は、測距設定として条件設定記憶部102等に記憶される。測距設定の作成が完了すると、設定部107は、ステップS14からステップS15に進む。設定部107は、全ての設定が作成されたものとしてステップS15からリターンする。
(印字加工の実行)
図14は、図10のステップS3における具体的な処理を例示している。すなわち、図14に示す処理は、製造ラインを稼働させたときに流れてくる各ワークWに対して順番に実行されるようになっている。
まず、図14に示す各ステップに先だって、図10のステップS1と、図11のステップS11〜ステップS15と、を用いて説明したように、マーカコントローラ100は、所定のワークWについて、印字パターンPm及び印字ブロックB等の設定(印字設定)と、パターン画像等の設定(サーチ設定)と、測距位置I等の設定(測距設定)と、を予め作成する。
各設定の作成が完了することで、マーカコントローラ100は、図14に例示した制御プロセスを実行可能な状態となる。この制御プロセスは、主なプロセスとして、XYトラッキング(XY方向におけるパターンサーチ)を実行するための制御プロセスと、Zトラッキング(Z方向における高さ測定)を実行するための制御プロセスと、を含んだ構成とされている。
まず、図14のステップS31において、PLC902等からマーカコントローラ100にトリガ入力される。測距設定をはじめとする種々の設定に用いたワークWと同種のワークWが搬送される。
ステップS31から続くステップS32において、マーカコントローラ100は、同軸カメラ6又は広域カメラ7を介して撮像画像(カメラ画像)Pwを生成し、生成された撮像画像Pwを設定面R4と重ね合わせて表示する。
そして、ステップS32から続くステップS33において、マーカコントローラ100は、サーチ対象とした印字ブロックBの各々について、サーチ設定(サーチ条件)を読み込む。
そして、ステップS33から続くステップS34において、マーカコントローラ100がパターンサーチを実行する。パターンサーチを実行することで、印字設定、サーチ設定及び測距設定の作成に用いたワークWと、運用時に新たに搬送されてきたワークWと、の間のXY方向における位置ズレが検出される。
続いて、ステップS35において、マーカコントローラ100は、測距対象とした印字ブロックBの各々について、測距設定(測距条件)を読み込む。
そして、ステップS35から続くステップS36において、距離測定部103は、測距ユニット5を作動させることによって、マーカヘッド1から測距位置Iまでの距離、ひいては、その測距位置IにおけるワークWの高さを測定する。
続いて、ステップS37において、マーカコントローラ100は、ステップS34の検出結果に基づいて、XY方向におけるワークWの位置ズレを補正する。具体的に、このステップS37では、XY方向におけるワークWの位置ズレを減殺するように、設定面R4上での印字ブロックBの位置を補正する。
続いて、ステップS38において、マーカコントローラ100は、ステップS36の検出結果に基づいて、Z方向におけるワークWの位置ズレを補正する。具体的に、このステップS38では、Z方向におけるワークWの位置ズレに基づいて、近赤外レーザ光の焦点位置を補正する。
続いて、ステップS39において、マーカコントローラ100は、マーカヘッド1を介してワークWに対する印字加工を実行してリターンする。
<画角補正処理について>
図15Aは、カメラ座標系での撮像画像Pwの表示サイズを示す図である。また、図15Bは、印字座標系での撮像画像Pwの表示サイズを示す図であり、図15Cは、撮像画像Pwの表示サイズをカメラ座標系と印字座標系とで比較して示す図である。
さらに、図16は、画角補正処理を説明するための図である。
以下の説明において、“ファー面”とは、前述の加工基準面Rbに比して、マーカヘッド1から離間した平面を指す。また、“ニア面”とは、その加工基準面Rbに比して、マーカヘッド1に近接した平面を指す。また、“センター面”とは、加工基準面Rbと略同じ距離に設定される平面を指す(図15A、図15B参照)。
図13に例示したように、撮像画像Pw上に印字パターンPmを重ねて表示することで、その印字パターンPmの位置及び大きさを加工前の設定時に確認することができる。
ところが、例えば、所定の高さを有するワークWに印字パターンPmを形成する場合、撮像手段としての同軸カメラ6又は広域カメラ7における画角θvの広がりに起因して、加工前の設定時に表示される印字パターンPmの位置及び大きさと、実際に加工される印字パターンPmの位置及び大きさと、の間にズレが生じる可能性がある。そうしたズレは、加工精度を高く保つには不都合である。
具体的に、図15Aに例示するように、撮像画像Pwのサイズは、ワークWの表面までの距離に応じて変化することになる。例えば、ワークWの表面までの距離が相対的に長い“ファー面”の場合は、その距離が相対的に短い“センター面”及び“ニア面”の場合に比して、同軸カメラ6又は広域カメラ7の撮像視野が広くなる。この場合、撮像視野の大きさは、ワークWの表面までの距離が長くなるに従って、画角θvに応じて広がっていくことになる。
ゆえに、撮像視野が広くなった分だけ、その画角θvの内側に入り込むワークWのサイズは相対的に縮小することになる。そうしたワークWを撮像することによって生成される撮像画像Pwは、その撮像画像Pwの中央部を中心として、相対的にズームダウンしていくことになる。
また、撮像視野内に映り込むワークWのサイズが変化するに伴い、そのワークW上に設定される任意点の位置も変化することになる。この場合、ワークW、ひいては撮像画像Pw上に設定される任意点(例えば、図15Aにおける星印の角部)は、ワークWの相対的なズームダウンに伴って、見かけ上、撮像画像Pwの中央部に接近していくことになる。
このように、撮像画像Pw上に規定されるカメラ座標系は、そのワークWの表面までの距離に応じて変化していくことになる。例えば2次元のXY座標系であれば、X方向の単位ベクトルの長さと、Y方向の単位ベクトルの長さと、がズームアップに伴い長くなり、ズームダウンに伴い短くなる。
一方、設定面R4上に規定される印字座標系は、ワークWの表面までの距離に関係なく定義される座標系であり、一般には、距離に関係なく一定となる。よって、その設定面R4上に配置される印字ブロックBのサイズ及び位置は、図15Bに例示するように、ワークWの表面までの距離に関係なく一定となる。
すなわち、図15Cに例示するように、カメラ座標系におけるセンター面Xcのサイズと、印字座標系におけるセンター面Xc’のサイズと、が一致すると仮定した場合、カメラ座標系におけるファー面Xfのサイズは、撮像画像Pwがズームダウンしたことによって、印字座標系におけるファー面Xf’のサイズよりも小さくなる。また、この場合、カメラ座標系におけるニア面Xnのサイズは、撮像画像Pwがズームアップしたことによって、印字座標系におけるニア面Xn’のサイズよりも大きくなる。
しかし、ワークWの表面までの距離に応じて、印字座標系における設定面R4上で印字ブロックBのサイズ及び位置が一定となる一方で、カメラ座標系における撮像画像Pwのサイズ及び位置が変化してしまっては、ユーザが撮像画像Pwを見ながら印字ブロックBを設定したときに、表示部801上でのる印字パターンPmの位置及び大きさと、実際に形成される印字パターンPmの位置及び大きさと、の間にズレを生む可能性があるため不都合である。
対して、本実施形態に係るマーカコントローラ100は、測距ユニット5による測定結果を利用して、画角θvに起因したズレを補正することができる。以下、そうしたズレを補正するための処理を「画角補正処理」と呼称するとともに、その画角補正処理について詳細に説明する。
なお、画角補正処理の実行タイミングとしては、印字設定時(例えば、図11においてステップS12を実行するタイミング)としてもよいし、レーザ加工装置Lの運用時(例えば、図13においてS39を実行する直前のタイミング)としてもよい。前者の実行タイミングを採用した場合、ユーザによる印字ブロックBの設定を補助することができる。後者の実行タイミングを補助した場合、ユーザに認識させずにバックグラウンドで実行することができる。
画角補正処理が開始されると、まず、走査制御部としての制御部101は、測距光出射部5Aから出射された測距光が、印字ブロックBに対応付けられた加工領域R1内の任意点Icに照射されるよう、レーザ光走査部4を制御する。ここで、任意点Icは、印字ブロックBの内側(例えば、印字ブロックBの中央部)に設定してもよいし、印字ブロックBの外側に設定してもよい。また、印字ブロックBが複数設定されている場合は、印字ブロックBごとに任意点Icを設定してもよいし、複数の印字ブロックBに共通の任意点Icを設定してもよい。
次いで、測距光受光部5Bは、その任意点Icで反射されてレーザ光走査部4を介して戻った測距光を受光する。そして、距離測定部103は、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置に基づいて、三角測距方式によりレーザ加工装置Lから任意点Icまでの距離を測定する。この測定によって、ワークWの高さがファー面Xfに相当するのか、ニア面Xnに相当するのか、あるいは、センター面Xcに相当するのかを決定することができる。
そして、対応関係補正部108は、距離測定部103による測定結果に基づいて、表示部801上での撮像画像Pwに対する印字ブロックBの相対的な位置及び大きさのうちの少なくとも一方からなる対応関係を補正する。より詳細には、対応関係補正部108は、距離測定部103により測定された任意点Icまでの距離と、加工基準面Rbまでの距離と、の大小関係に応じて、対応関係を補正する。対応関係補正部108によって補正された対応関係は、表示制御部109へと入力される。表示制御部109は、補正された対応関係を反映するように、表示部801における表示態様を制御する。
ここで、対応関係を補正するためには、撮像画像Pwの位置及び大きさを変更してもよいし、印字ブロックBの相対的な位置及び大きさを変更してもよい。適宜、いずれかの構成を採用すればよい。
以下、後者の構成を採用した場合について説明する。この場合、対応関係補正部108は、表示部801上で印字ブロックBの移動及びサイズ変更のうちの少なくとも一方を実行することにより、対応関係を補正することができる(図16参照)。
例えば、任意点Icまでの距離が加工基準面Rbまでの距離よりも長い場合は、その任意点Icは、ファー面Xf上に存在することになる。ここで、図16の下段に例示するように、印字座標系において、撮像画像Pwにおける左上の隅部の内側に印字ブロックBを配置する場合を考える。
任意点Icがファー面Xf上に存在する場合、カメラ座標系では、印字座標系に比して撮像画像Pwが相対的にズームダウンすることと、印字ブロックB自身はサイズ変更も移動もしないことと、に起因して、撮像画像Pwの隅部から印字ブロックBがはみ出すとともに、撮像画像Pwに比して印字ブロックBが相対的に大きくなる。
任意点Icがファー面Xf上に存在する場合、対応関係補正部108は、図16の下段に例示するように、表示部801上で印字ブロックBと設定面R4の中央部Pcとが接近し、かつ印字ブロックBが相対的に小さくなるように、対応関係を補正する。
この場合、対応関係の補正は、表示部801上で印字ブロックBの移動及びサイズ変更を実行することによって行われる(印字ブロックBの位置及びサイズが、表示上、変更される)。具体的に、印字ブロックBは、設定面R4の中央部Pcに接近するように移動させられるとともに、より小さなサイズに変更される。印字ブロックBの移動及びサイズ変更に伴って、その印字ブロックBに対応付いた印字パターンPmについても移動及びサイズ変更が実行される。カメラ座標系で補正された印字ブロックB’は、印字座標系と同様に、撮像画像Pwにおける左上の隅部からはみ出すことなく配置されるようになる。
一方、任意点Icまでの距離が加工基準面Rbまでの距離よりも短い場合は、その任意点Icは、ニア面Xn上に存在することになる。ファー面Xfについての説明と同様に、印字座標系において、撮像画像Pwにおける左上の隅部の内側に印字ブロックBを配置した場合を考える(図16の上段を参照)。
任意点Icがニア面Xn上に存在する場合、カメラ座標系では、印字座標系に比して撮像画像Pwが相対的にズームアップすることと、印字ブロックB自身はサイズ変更も移動もしないことと、に起因して、撮像画像Pwの隅部から離間して設定面R4の中央部Pcに近接するように印字ブロックBが相対移動するとともに、撮像画像Pwに比して印字ブロックBが相対的に小さくなる。
任意点Icがニア面Xn上に存在する場合、対応関係補正部108は、図16の上段に例示するように、表示部801上で印字ブロックBと設定面R4の中央部Pcとが離間し、かつ印字ブロックBが相対的に大きくなるように、対応関係を補正する。
この場合、対応関係の補正は、表示部801上で印字ブロックBの移動及びサイズ変更を実行することによって行われる。具体的に、印字ブロックBは、設定面R4の中央部Pcから離間するように移動させられるとともに、より大きなサイズに変更される。印字ブロックBの移動及びサイズ変更に伴って、その印字ブロックBに対応付いた印字パターンPmについても移動及びサイズ変更が実行される。カメラ座標系で補正された印字ブロックB’は、印字座標系と同様に、撮像画像Pwにおける左上の隅部付近に配置されることになる。
一方、任意点Icまでの距離が加工基準面Rbまでの距離に一致する場合は、その任意点Icは、センター面Xc上に存在することになる。この場合、前述の如き補正は不要となる。よって、対応関係補正部108は、任意点Icがセンター面Xc上に存在する場合、対応関係を非補正とする(対応関係を補正しない)。
−画角補正処理の具体例−
続いて、画角補正処理の具体例について詳細に説明する。図17は、画角補正処理の具体例を示すフローチャートであり、図18は、画角補正処理における算出手順を説明するための図であり、図19は、画角補正処理を施した後の表示内容を例示する図である。また、図20は、複数の印字ブロックBを有するワークWを例示する図であり、図21は、台形補正について説明するための図である。
図17に例示する制御プロセスは、例えば印字設定時に実行される。まず、ステップS101において、対応関係補正部108は、画角補正処理による補正対象とする印字ブロックBを選択する。続くステップS102において、対応関係補正部108は、距離測定部103を介することで、ステップS101で選択された印字ブロックBにおける任意点Ic(図17の例では、印字ブロックBの中心点)までの距離を測定し、その任意点IcにおけるワークWの高さを測定する。
続くステップS103において、対応関係補正部108は、ステップS102で得られた測定値(ワークWの高さの測定値)と、加工基準面Rbの高さと、に基づいて、印字ブロックBの移動量と、その拡大率又は縮小率と、を算出する。
このステップS103では、例えば、以下の処理を実行することができる。
まず、加工基準面Rb(センター面Xc)上での撮像画像Pwの表示サイズ(表示部801上に表示されるサイズ)をS0とし、同軸カメラ6又は広域カメラ7から加工基準面Rbまで距離をdとし、Z方向(高さ方向)における加工基準面Rbからの変位量をz(加工基準面Rbを原点とした場合の高さ)とすると、対応関係補正部108は、例えば下式(1)に基づいて、加工基準面Rbに対して高さ方向にzだけ変位した平面上での撮像画像Pwの表示サイズS(z)を算出する。
S(z)=S0×d/(d−z) …(1)
例えば、加工基準面Rbに比して+Δz(>0)だけマーカヘッド1に近接したニア面では、表示倍率はd/(d−Δz)となり、1を超えることになる。この場合、撮像画像Pwは、表示部801上で拡大されることになる。
一方、加工基準面Rbに比して−Δz(<0)だけマーカヘッド1から離間したファー面では、表示倍率はd/(d+Δz)となり、1を下回ることになる。この場合、撮像画像Pwは、表示部801上で縮小されることになる。
次いで、加工基準面Rb上でのXY方向(水平方向)における表示位置をxy0(撮像画像Pwの中央部Pcからの変位量)とすると、対応関係補正部108は、例えば下式(2)に基づいて、加工基準面Rbに対して高さ方向にzだけ変位した平面上での、画角の広がりを考慮した表示位置xy(z)を算出する。
xy(z)=xy0×d/(d−z) …(2)
例えば、加工基準面Rbに比して+Δz(>0)だけマーカヘッド1に近接したニア面では、表示位置の差分Δxyは、を下式(3)によって与えることができる。
Δxy=xy(+Δz)−xy(0)
=xy0×Δz/(d−Δz)
>0 …(3)
Δxyの符号が示すように、ニア面Xnでは、撮像画像Pwの中央部Pcから離間するように表示位置が移動することになる。
また、加工基準面Rbに比して−Δz(<0)だけマーカヘッド1に離間したファー面では、座標位置の差分Δxyは、下式(4)によって与えることができる。
Δxy=xy(−Δz)−xy(0)
=xy0×(−Δz)/(d+Δz)
<0 …(4)
Δxyの符号が示すように、ファー面Xfでは、撮像画像Pwの中央部Pcに接近するように表示位置が移動することになる。
ステップS103から続くステップS104において、対応関係補正部108は、ステップS103で算出された移動量と、拡大率又は縮小率と、を用いて表示部801上での対応関係を補正するとともに、表示制御部109を介することで、そうして補正された対応関係を、表示部801上での印字ブロックBの表示態様に反映する。印字ブロックBの表示態様が補正されると、それに対応付いた印字パターンPmの表示態様も補正される。
画角補正処理を行うことで、図19に例示するように、表示部801上には、少なくとも、補正後の印字ブロックB’と、補正後の印字パターンPm’と、が表示される。ユーザは、補正後の印字ブロックB’を視認しつつ、そのサイズ、配置等を整えることができるようになる。
ステップS104から続くステップS105において、マーカコントローラ100は、全ての印字ブロックBに係る対応関係を補正したか否かを判定し、その判定がYESの場合はリターンする一方、NOの場合はステップS101へ戻る。
対応関係の補正内容は、印字ブロックB毎に異ならせることができる。例えば、図20に例示するように、1つのワークW上に4つの印字ブロックB1,B2,B3,B4と、各印字ブロックB1〜B4に対応付いた4つの印字パターンPm1,Pm2,Pm3,Pm4と、が設定される場合を考える。なお、図20は、画角補正処理を施した後の状態を例示する図である。
この場合、印字ブロックB2は、印字ブロックB1に比してニア面側に位置することになり、印字ブロックB3は、印字ブロックB2に比してニア面側に位置することになり、印字ブロックB4は、印字ブロックB3に比してニア面側に位置することになる。
したがって、画角補正処理を施すことで、図20に例示するように、印字ブロックB1(印字パターンPm1)、印字ブロックB2(印字パターンPm2)、印字ブロックB3(印字パターンPm3)及び印字ブロックB4(印字パターンPm4)の順で、撮像画像Pwの中央部から離れるように(画像上での上側へ向かって)移動するよう補正されるとともに、印字ブロックB1(印字パターンPm1)、印字ブロックB2(印字パターンPm2)、印字ブロックB3(印字パターンPm3)及び印字ブロックB4(印字パターンPm4)の順で、各印字ブロックBが徐々に拡大されることになる。
また、例えばワークWの表面が傾斜している場合には、印字ブロックB毎に台形補正を行ってもよい。この場合、例えば図21に示すように、印字ブロックBの四隅をなす測距位置I1,I2,I3,I4について高さ測定し、その測定結果に基づいて、各測距位置I1〜I4を四隅とするように台形補正すればよい。この場合、測距位置I1,I2,I3,I4が、それぞれ、補正位置I1’,I2’,I3’,I4’に変換される。
以上説明したように、本開示に係る対応関係補正部108は、距離測定部103による測定結果に基づいて、撮像画像Pwに対する印字ブロックBの相対的な位置及び大きさのうちの少なくとも一方からなる対応関係を補正する。
そうした対応関係を補正することで、所定の高さを有するワークWに印字パターンPmを形成する場合、つまり、図20に例示したように、ワークWの表面までの距離が必ずしも一定とはならない場合であっても、その設定時における印字パターンPmの表示態様と、実際に加工される印字パターンPmと、のズレを低減し、ひいては加工精度を高く保つことができるようになる。
また、図16等に例示するように、対応関係補正部108は、任意点Icまでの距離と、加工基準面Rbまでの距離と、の大小関係に応じて対応関係を補正する。この構成は、対応関係をより適切に補正し、ひいては、加工精度を高く保つ上で有効である。
また、図18等に例示するように、対応関係補正部108は、画角θvの広がりを利用して、対応関係を補正する。この構成は、対応関係をより適切に補正し、ひいては、加工精度を高く保つ上で有効である。
また、図16等に例示するように、対応関係補正部108は、印字ブロックBの移動及びサイズ変更を実行することによって対応関係を補正する。このように構成することで、設定面R4上に複数の印字ブロックBが設定される場合であっても、印字ブロックB毎に対応関係を補正することができる。このことは、対応関係をより適切に補正し、ひいては、加工精度を高く保つ上で有効である。
<画角補正処理の別例について>
図22は、画角補正処理の別例を説明するための図であり、図23は、画角補正処理の別例を示すフローチャートである。
前記実施形態では、対応関係補正部108は、表示部801上で印字ブロックBの移動及びサイズ変更のうちの少なくとも一方を実行することにより、対応関係を補正するように構成されていたが、本開示は、この構成には限定されない。印字ブロックBに代えて、撮像画像Pwの位置及び大きさを変更してもよい。
すなわち、対応関係補正部108は、表示部801上で撮像画像Pwの移動及びサイズ変更のうちの少なくとも一方を実行することにより、前述した対応関係を補正することもできる。
ここで、印字座標系において、撮像画像Pwにおける左上の隅部の内側に印字ブロックBを配置する例を考える。図22の下段に例示するように、任意点Icがファー面Xf上に存在する場合、カメラ座標系では、撮像画像Pwの隅部から印字ブロックBがはみだすばかりでなく、撮像画像Pwに比して印字ブロックBが相対的に大きくなる。
任意点Icがファー面Xf上に存在する場合、対応関係補正部108は、前記実施形態と同様に、表示部801上で印字ブロックBと設定面R4の中央部Pcとが接近し、かつ印字ブロックBが相対的に小さくなるように、対応関係を補正する。
この場合、対応関係の補正は、表示部801上で撮像画像Pwの移動及びサイズ変更を実行することによって行われる。具体的に、撮像画像Pwは、設定面R4の中央部Pcから離間するように引き延ばされる。撮像画像Pwを引き延ばすことによって、印字ブロックBは、印字座標系と同様に、撮像画像Pwにおける左上の隅部からはみだすことなく配置されるようになる。
一方、図22の上段に例示するように、任意点Icがファー面Xf上に存在する場合、カメラ座標系では、撮像画像Pwの隅部から離間して設定面R4の中央部Pcに近接するように印字ブロックBが移動するばかりでなく、撮像画像Pwに比して印字ブロックBが相対的に小さくなる。
任意点Icがニア面Xn上に存在する場合、対応関係補正部108は、前記実施形態と同様に、表示部801上で印字ブロックBと設定面R4の中央部Pcとが離間し、かつ印字ブロックBが相対的に大きくなるように、対応関係を補正する。
この場合、対応関係の補正は、表示部801上で撮像画像Pwの移動及びサイズ変更することによって行われる。具体的に、撮像画像Pwは、設定面R4の中央部Pcへ向かって縮小される。撮像画像Pwを縮小することによって、印字ブロックBは、印字座標系と同様に、撮像画像Pwにおける左上の隅部付近に配置されるようになる。
一方、任意点Icまでの距離が加工基準面Rbまでの距離に一致する場合は、その任意点Icは、センター面Xc上に存在することになる。この場合、対応関係補正部108は、対応関係を非補正とする(対応関係を補正しない)。
図22に例示する制御プロセスは、例えば印字設定時に実行される。まず、ステップS101’において、対応関係補正部108は、画角補正処理による補正対象とする印字ブロックBを選択し、そうして選択された印字ブロックBの中心を任意点Icに設定する。そして、対応関係補正部108は、距離測定部103を介して任意点Icの高さを測定する。
続くステップS102’において、対応関係補正部108は、ステップS101’で得られた測定値(ワークWの高さの測定値)と、加工基準面Rbの高さと、に基づいて、撮像画像Pwの移動量と、その拡大率又は縮小率と、を算出する。
続くステップS103’において、対応関係補正部108は、ステップS102’で算出された移動量と、拡大率又は縮小率と、を用いて表示部801上での対応関係を補正するとともに、表示制御部109を介することで、そうして補正された対応関係を撮像画像Pwの表示態様に反映する。
ここで、撮像画像Pwの生成に同軸カメラ6を用いた場合、表示制御部109は、走査制御部としての制御部101を介して撮像光軸A1を走査するとともに、走査後の同軸カメラ6によって生成された撮像画像Pwを適宜拡大又は縮小する。一方、撮像画像Pwの生成に広域カメラ7を用いた場合、表示制御部109は、広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwを適宜拡大又は縮小する。
また、例えばワークWの表面が傾斜している場合には、背景画像としての撮像画像Pwに台形補正を行ってもよい。
以上説明したように、対応関係補正部108は、図21等に示した例では、撮像画像Pwの移動及びサイズ変更を実行することによって対応関係を補正する。このように構成は、対応関係をより適切に補正し、ひいては、加工精度を高く保つ上で有効である。
なお、本実施形態では、距離測定部103による測定結果に基づいて、撮像画像Pwに対する加工ブロック(印字ブロックB)の相対的な位置及び大きさのうち少なくとも一方からなる対応関係を補正することとしているが、このような補正を行う第1モードを用意するとともに、所定長さ(例えば2mmや3mm等)からなる実寸を指定する第2モードを用意し、これら第1モードと第2モードとをユーザ選択可能に構成してもよい。つまり、レーザ加工装置Lは、操作用端末800におけるユーザ操作に基づいて、少なくとも第1モードと第2モードのいずれかを選択するモード選択部を備えてもよい。モード選択部によって第2モードが選択されている場合には、距離測定部103による測定結果によって加工ブロック(印字ブロックB)の相対的な位置及び大きさは変化しない。なお、第2モードの対象となる加工ブロックは、「文字列」と「ロゴ」のみに限定してもよい。また、実寸を指定する方法として、ブロックサイズを直接入力する以外にも、バーコードのモジュール幅、2次元コードのセルサイズ、フォト写真における画素分解能など、実寸指定につながる様々なサイズパラメータを指定することができる。
第2モードについて別の言い方をすれば、見た目優先モードと呼ぶこともできる。見た目優先モードは、特定の領域内に印字したい、所定範囲に収まる中で文字列が最も大きくなるよう印字したい、といったように、ワークWの余白サイズに合わせて印字サイズを決定したいユーザニーズを満たすものである。見た目優先モードでは、ワークWの高さが変わった場合に、加工ブロック(印字ブロックB)のサイズも併せて変える。すなわち、ワークWの高さが高くなった分だけ、今度は加工ブロック(印字ブロックB)のサイズを小さくすることで、見た目の変化を相殺する。より具体的には、幅5mmの加工ブロックのZ座標が高くなり、10%大きく見える場合、見た目上のサイズは、5mm×1.1=5.5mmに変化することになる。これを5mmに戻すため、加工ブロックのサイズを4.55mmに変更する。その結果、見た目上のサイズは、4.55mm×1.1=5mmとなる。このように、位置合わせをしてから高さを変更しても、見た目で合わせた調整結果が維持されることになる。