眼科において、眼手術、すなわち眼科手術では、毎年何万人もの患者の視力が確保され改善される。しかしながら、眼の実に僅かな変化および多くの眼構造の細かく微細な性質に対する視力の感度を考慮すると、眼科手術は実施するのが困難であり、軽度のまたは稀な手術ミスさえも減らすことおよび手術手技の精度の多少の向上により、手術後の患者の視力に大きな違いをもたらすことができる。
眼科手術は、眼および補助視覚構造に対して実施される。より具体的には、硝子体網膜手術は、硝子体液および網膜などの、眼の内部部分を含む種々の繊細な処置を包含する。黄斑上膜、糖尿病牽引性網膜剥離、硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、および白内障手術の合併症などを含む、多くの眼疾患の治療において視覚感覚機能を向上させるために、時としてレーザーを伴う、異なる硝子体網膜手術処置が使用される。
硝子体網膜手術中に、眼科医は、典型的には、角膜を通して眼底を視認するために手術用顕微鏡を使用し、その間に、様々な異なる処置のいずれかを実施するために強膜を貫通する手術器具が導入され得る。手術用顕微鏡は、硝子体網膜手術中に眼底を画像化しかつ任意選択に照明する。患者は、典型的には、硝子体網膜手術中に手術用顕微鏡下で仰臥しており、かつ眼瞼を開いた状態に保持することにより眼を露出させた状態に保つために検鏡が使用される。使用される光学系の種類に応じて、眼科医は、狭い視野から眼底の周辺領域に広がることのできる広い視野まで様々であり得る、眼底の所与の視野を有する。手術用顕微鏡を使用する多くの種類の硝子体網膜手術のために、外科医は、赤道を越えて鋸状縁にまで広がる眼底の非常に広い視野を有することを望む場合がある。硝子体網膜手術中に外科医に眼底の視野を提供する光学系は、特別な接眼レンズを含み得、典型的には3種類の接眼レンズ(すなわち、直接(プラノ、平面、または拡大)コンタクトレンズ、間接非接触レンズ、または間接コンタクトレンズ)が使用される。
コンタクトレンズは、角膜に物理的に接触し、それゆえ、角膜の凸面と一致する凹面を有する。典型的には少量の粘弾性ゲルまたは生理食塩水流体が、不要な外部界面反射を防止しかつ角膜の脱水を防ぐために角膜とコンタクトレンズとの間に存在する。
非接触レンズは、眼に触れず、眼から一定の作動距離をおいて配置される。
直接レンズは、眼水晶体の裏側でかつ眼底のほぼ正面に眼底の非反転虚像を生成する。外科医は、この非反転虚像(中間像面または焦点面とも称される)に直接焦点を合わせるために手術用顕微鏡を使用する。直接レンズは、外科医が眼底を直接視認することを可能にする。
間接レンズは眼水晶体の正面(眼水晶体と手術用顕微鏡との間)の中間像面に反転実像を生成し、かつ外科医は、この中間像面に焦点を合わせるために手術用顕微鏡を使用する。間接レンズは、外科医が中間像画面を通じて眼底を間接的に視認することを可能にする。手術用顕微鏡を覗く観察者に間接レンズ像が反転されるので、典型的には、硝子体網膜手術中の眼の物理的な向きと一致するように眼底像を再び反転させるために反転レンズが手術用顕微鏡に追加される。
直接コンタクトレンズは、眼の上に配置することができ、概して、硝子体網膜手術中に通常角膜上の定位置に留まるのに十分に軸方向に薄い。ある光学系において、直接コンタクトレンズは、手術中に直接コンタクトレンズが移動するのを防止するのを補助する基部延長部などの、レンズ上での自己安定化機能を有する。しかしながら、直接コンタクトレンズは、眼底内のおよび網膜の非常に広い視野を提供しない場合があり、かつ視野が約30度に制限され得る。
間接非接触レンズは、眼に接触せず、手術用顕微鏡に固定され得る。それゆえ、間接非接触レンズは、硝子体網膜手術中の位置不安定性および関連する追加の資源(レンズを保持または再配置する熟練した手術助手を有するなど)の問題を回避し得る。少なくともこれらの理由から、間接非接触レンズは、多くの眼科医により高い頻度で選択される眼科手術用レンズであり得る。しかしながら、間接非接触レンズは、硝子体網膜手術中に外科医に提供される眼底の視野が制限され得る。例えば、間接非接触レンズを使用する視野は、約140度(全角)未満に制限される場合があり、かつ広角コンタクトレンズの視野よりも狭い約10度であり得る。非接触レンズは、角膜の非球形性を排除するものではなく、結果として、周辺網膜を視認するために外科医が広角コンタクトレンズを用いて回転させるよりも更に眼を回転させることになり得る。
間接非接触レンズによって一度に視認可能な眼底の領域を見通すために、外科医は、硝子体網膜手術中に種々の手技を用い得る。例えば、外科医は、病変領域における眼底を視野内に押し込むために、強膜の周辺領域をくぼませてもよい。外科医は、視野を所望の周辺領域に向けるために眼を回転させて光軸から外してもよい。場合により、手技の組み合わせが用いられる。眼底の周辺領域を視認するために頻繁に眼を回転させるまたは強膜を圧迫することは、十分な視野を得る目的で実施される硝子体網膜手術中の外部操作である。強膜圧迫法は、眼に更なる外傷をもたらすことがあるとともに、手術の時間を増加させることがあり、少なくともこれらの理由で望ましくない場合がある。
間接(広角)コンタクトレンズは、他の種類の眼科手術用レンズの視野よりもはるかに大きな眼底視野を提供し得る。コンタクトレンズは、基本的に単一像において鋸状縁における角膜の最縁部まで広がる、最大約170度(全角)の視野を提供し得る。しかしながら、硝子体網膜手術中に角膜上に載置される、コンタクトレンズは、概して、コンタクトレンズの光学構造のために上部が重く、かつ典型的には、最初に眼の上に配置された後の角度配向および位置配向で移動する。コンタクトレンズはまた、手術中の患者の僅かな移動に比較的敏感であり、このことは望ましくない。それゆえ、外科医は、多くの場合、コンタクトレンズを定位置に持続的に保持するために、または硝子体網膜手術の最中にコンタクトレンズを何度も頻繁に再配置するために、助手の助けを必要とする。広視野が提供されるにもかかわらず、位置安定性の欠如と、レンズを位置決めする熟練した手術助手の更なる関与とが望ましくない場合がある。少なくともこれらの理由から、自立型コンタクトレンズは、硝子体網膜外科医の間では非接触システムよりもあまり一般的ではない選択肢である場合がある。
以下の説明では、開示される主題の論述を容易にするために、例として詳細を述べる。しかしながら、開示される実施形態が例示的なものであり、全ての可能な実施形態を包含するものではないことは当業者には明らかなはずである。
本明細書において使用される場合、ハイフンが付いた形式の参照番号は、要素の具体的な例を指し、ハイフンのない形式の参照番号は、集合的な要素を指す。したがって、例えば、装置「12−1」は、まとめて装置「12」と称されることもある、装置類の一例を指し、また、装置類の任意の1つが概して装置「12」と称されることもある。
上述したように、自立型間接コンタクトレンズは、他の種類の眼科手術用レンズよりもはるかに大きな眼底視野を提供するが、硝子体網膜手術中に外科医により頻繁には使用されない。間接コンタクトレンズは構造的に上部が重いので、このようなレンズは、手術中に患者の角膜上に載置されたときに位置不安定性を呈する場合がある。間接コンタクトレンズは、最初に眼の上に配置された後に容易に角度配向および位置配向を失う場合があり、その結果、手術中に再配置するための繰り返しのまたは連続した手作業を生じさせる。更にまた、典型的な間接コンタクトレンズの不安定性は、手術時に予測できない可能性があり、このことも望ましくない。
本開示は、眼科手術中にコンタクトレンズを機械的に支持するためのコンタクトレンズ装着用検鏡に関する。コンタクトレンズは、直接コンタクトレンズまたは間接コンタクトレンズであってもよい。本明細書に開示するコンタクトレンズ装着用検鏡は、コンタクトレンズを直立状態のままに、ひいては、手術中に手術用顕微鏡の光軸を通って患者の眼内へと広がる外科医の視野と位置合わせされた状態のままにする。本明細書に開示するコンタクトレンズ装着用検鏡は更に、コンタクトレンズが手術中に眼の位置と一致するように水平方向および垂直方向に大きな機械抵抗なしに移動することを可能にしてもよい。このように、本明細書に開示するコンタクトレンズ装着用検鏡は、手術中の患者の僅かな移動などによる、平行移動におけるある程度の柔軟性を保持しながら、コンタクトレンズを通して視認するための顕微鏡軸との位置合わせを維持してもよい。よって、本明細書に開示するコンタクトレンズ装着用検鏡は、追加の熟練した手術者を使用するなどの、機械的支持のない自立型間接コンタクトレンズの位置安定性の問題なしに、かつ眼底の所望の部分を視認するために眼を回転させるかまたは強膜をくぼませるなどの、手術中の外部操作を行わずに、眼科外科医が、間接コンタクトレンズにより提供される広角視認能力を享受することを可能にしてもよい。
更に詳細に説明するように、本明細書に開示するコンタクトレンズ装着用検鏡は、眼の回転または移動にもかかわらずレンズの接触および直交性を維持するためにコンタクトレンズを支持し水平移動に受動的に対応する適応型関節連結式レンズ装着システムを提供することにより、外科医が、補助なしにコンタクトレンズを通して眼底または周辺を手術中に視認することを可能にする。本明細書に開示する調整可能で適応型のコンタクトレンズ装着用検鏡は、2つの球面摩擦継手と、2つの円筒状自由回転平行継手と、円筒状自由回転平行継手の各端部に略平行部材を備えた関節リンク機構とで構成されてもよい。以下に説明するコンタクトレンズ装着用検鏡は、異なる患者の特性、レンズの高さ、検鏡ブレードの種類および他の装着のばらつきに対応するために外科医による単一ステップでのその場での取付調整を提供してもよい。以下に説明するコンタクトレンズ装着用検鏡はまた、外科医が眼を移動させ回転させるときに患者の眼に対するコンタクトレンズの接触を維持するために、摩擦のない、傾動しない受動的な横方向移動を手術中に提供し得る。追加的に、以下で説明するコンタクトレンズ装着用検鏡は、外科的アクセスを維持するために小型であり、かつ左眼または右眼に使用することができる。以下で説明するコンタクトレンズ装着用検鏡は、種々の市販の手術用コンタクトレンズ(直接および間接コンタクトレンズを含む)、ワイヤー検鏡ブレード、調整可能な検鏡ブレード、または他の装着用アダプタを受け入れてもよく、かつ手術用消耗品として比較的安価に製造可能であってもよい。
ここで図面を参照すると、図1および図2は、コンタクトレンズ120を支持するためのコンタクトレンズ装着用検鏡100の実施形態の選択された要素の異なる図を図示している。図面は、コンタクトレンズ装着用検鏡100に含まれる特定の要素がいくつかの実施形態では異なる大きさとされ得るように、一定の縮尺で描かれていないことがあるコンタクトレンズ装着用検鏡100の実施形態を図示している。図1では明確にするために患者が省略されているが、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、コンタクトレンズ120が患者の眼の上に載置されることを可能にする(図2および図3も参照)。
更に詳細に説明するように、図1は、コンタクトレンズ120が装着されたコンタクトレンズ装着用検鏡100の斜視図を示している。他の実施形態では、直接コンタクトレンズなどの異なる種類のコンタクトレンズが、コンタクトレンズ装着用検鏡100で使用され得ることに留意されたい。コンタクトレンズ装着用検鏡100は、金属、セラミック、およびポリマーを含む、様々な材料のいずれかを使用して作製されてもよい。コンタクトレンズ装着用検鏡100は、図示するように、テンプル支持パッド110と、第1の球面継手112と、本体118と、1対のワイヤー検鏡ブレード130と、第2の球面継手122と、第1の回転継手124と、延長アーム126と、第2の回転継手128と、関節リンク機構114と、コンタクトレンズ120を保持するための装着用リング116とで構成される。種々の実施形態において、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、便宜的に示されている、図1の例示的な実施形態に図示する構成部品よりも少ないまたは多い構成部品で実現されてもよい。
図1において、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、第1の球面継手112を介して本体118に結合されたテンプル支持パッド110を含む。テンプル支持パッド110は、直立状態のままでありかつ適所に留まるようにコンタクトレンズ装着用検鏡100を支持するのを補助してもよい。特に、テンプル支持パッド110は、患者の眼に接触している間にコンタクトレンズ120の重量のバランスを取ることによりコンタクトレンズ装着用検鏡100を安定させてもよい。テンプル支持パッド110は第1の球面継手112を使用して調整可能であるので、テンプル支持パッド110は、ワイヤー検鏡ブレード130の各々に加えて、第3の支持基点として、コンタクトレンズ装着用検鏡100の種々の不所望の動きを防止してもよい。このように、テンプル支持パッド110は、安定性を提供してもよく、かつコンタクトレンズ装着用検鏡100が種々の異なる実施態様のコンタクトレンズ120および他の種類のコンタクトレンズと共に使用されることを可能にしてもよい。第1の球面継手112は、患者に対するテンプル支持パッド110の柔軟な位置決めを可能にするための自在継手としての機能を果たしてもよい。第1の球面継手112において摩擦を発生させるために加えられる圧縮力の量が、テンプル支持パッド110の提供する特定の安定力のために設計され得ることに留意されたい。換言すれば、第1の球面継手112は、定位置を維持するのに十分な力で圧縮されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の球面継手112における圧縮力は、ねじ付き圧縮要素(図示せず)などにより、機械的に調整可能である。いくつかの実施形態において、第1の球面継手112における圧縮支持力は、ばねまたは他の可撓性付勢要素(図示せず)により提供され得るような、予荷重力により増大させる。
また図1では、第1のワイヤー検鏡ブレード130−1と第2のワイヤー検鏡ブレード130−2とを備えた状態で示される、ワイヤー検鏡ブレード130が本体118に結合されている。ワイヤー検鏡ブレード130は、硝子体網膜手術中に患者の眼瞼を開いた状態に保持するために使用される。ワイヤー検鏡ブレード130はまた、特に患者の眼瞼に適用された場合に、本体118の安定化に寄与することによりレンズ装着用検鏡100に機械的な支持および安定性を提供してもよい。その結果、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、手術中に患者の眼瞼を開いた状態に保持する機能と、異なる種類の交換レンズを支持する機能との両方を提供し、黄斑手術に使用される平面/プラノレンズと、複数のレンズを含む周辺網膜視認用の広角レンズとを含む。このようなレンズは、直接コンタクトレンズまたは間接コンタクトレンズを表し得る、図1におけるコンタクトレンズ120により表される。コンタクトレンズ装着用検鏡100がワイヤー検鏡ブレード130と共に示されているが、異なるタイプの検鏡ブレードが、ワイヤー検鏡ブレード130の代わりにまたはワイヤー検鏡ブレード130に加えてコンタクトレンズ装着用検鏡100に取り付けられてもよい。硝子体網膜手術中にコンタクトレンズ装着用検鏡100が使用されるときに、本体118が患者の上に載置され得ることに留意されたい。
上で説明した第1の球面継手112と同様であり得る、第2の球面継手122が本体118に追加的に取り付けられる。第2の球面継手122は、延長アーム126および関節リンク機構114を介した取り付けによってコンタクトレンズ120の移動軸の向きを定める手段を提供してもよい。第2の球面継手122において摩擦を発生させるために加えられる圧縮力の量が、コンタクトレンズ120の特定の安定力または安定度のために設計され得ることに留意されたい。換言すれば、第2の球面継手120は、定位置を維持するのに十分な力で圧縮されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の球面継手122における圧縮力は、ねじ付き圧縮要素(図示せず)などにより、機械的に調整可能である。いくつかの実施形態において、第2の球面継手122における圧縮支持力は、ばねまたは他の可撓性付勢要素(図示せず)により提供され得るような、予荷重力により増大される。
また図1において、第1の回転継手124は、延長アーム126が第1の回転継手124を中心に横方向に回転することを可能にするために第2の球面継手122と延長アーム126との間に位置する。延長アーム126の対向する端部において、第2の回転継手128は、関節リンク機構114が延長アーム126を中心に横方向に回転することを可能にする。第1の回転継手124および第2の回転継手128は、円筒状自由回転平行継手であってもよい。このように、第1の回転継手124および第2の回転継手128は、所望に応じて、コンタクトレンズ120の横方向の位置決めを可能してもよい。いくつかの実施形態において、第1の回転継手124および第2の回転継手128の少なくとも一方は、限られた角度範囲になど、ある程度の回転に抑えられるかまたは制限されてもよい。第1の回転継手124および第2の回転継手128における摩擦量が所望に応じて選択され得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、第1の回転継手124および第2の回転継手128には、実質的に摩擦がなくてもよい。図示するように、関節リンク機構114は、コンタクトレンズ120が、患者の解剖学的特性、異なるレンズ装着高さ、ならびに種々の形状および装着位置に対応するように、摩擦なしにまたは実質的に摩擦なしに検鏡ブレード130に対する患者の眼の垂直距離の範囲内に適合することを可能にする4棒リンク機構であってもよい。他の実施形態では、他の種類のリンク機構が関節リンク機構114の代わりに使用されてもよい。コンタクトレンズ120と患者の眼との接触は、眼にかかるごく少量の下向きの力がコンタクトレンズ装着用検鏡100の他の要素により生じている間に、眼の上に載置される、コンタクトレンズ120および装着用リング116の重量によりもたらされてもよい。
図1に示すように、装着用リング116は、第2の回転継手128と対向する関節リンク機構114端部に固定されてもよい。装着用リング116は、柔軟性のあるスナップ嵌めを使用するかまたはコンタクトレンズ120の対応するねじ山と噛み合う雌ねじ山を使用するなどにより、特定の型のコンタクトレンズ120を受け入れることが可能にされてもよい。いくつかの実施形態において、装着用リング116は、異なる種類のコンタクトレンズ120のために交換可能であってもよい。特定の実施形態において、装着用リング116は、2つ以上の種類のコンタクトレンズ120を受け入れることができる。他の実施形態において、装着用リング116は、コンタクトレンズ120を関節リンク機構114に固定的に結合するための、例えば、ねじ付きロッドまたは孔、留め具、インサートなどの、異なる種類の機械的結合機構であってもよい。
よって、患者に取り付けられたときに、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、手術用顕微鏡の対物レンズが、コンタクトレンズ120により生成された間接像を視認することと、間接像が生成される焦点面に焦点を合わせることとを可能にしてもよい。したがって、コンタクトレンズ120は、コンタクトレンズ装着用検鏡100を使用して患者に機械的に結合されるが、非常に低い摩擦を伴うある程度の水平方向および垂直方向の動きが依然として許容され、かつ異なる患者特性、異なる検鏡ブレード、異なるレンズ特性、および異なる装着位置に対応してもよい。コンタクトレンズ装着用検鏡100は、硝子体網膜手術中に眼の上にコンタクトレンズ120を安全に配置するためにかつコンタクトレンズ120を(眼の光軸と位置合わせされ得る)手術用顕微鏡の光軸(図3も参照)と位置合わせされた状態に保持するために使用されてもよい。
図1の図からは見えにくいが、コンタクトレンズ120は、光学結合剤が使用され得る、角膜の凸形状と噛み合う凹部分を含み得る。光学結合剤は、不要な反射を防止するとともに手術用顕微鏡の光軸に対する眼軸の傾斜角にかかわらず眼の光軸に沿った眼内の視認を可能にするために膜界面層として塗布されてもよい(図3も参照)。光学結合剤により生成された膜界面層は、レンズと角膜との界面における気泡を排除し、角膜が水分を失うのを防止し得る。したがって、膜界面層は、眼底の周辺領域の視認性の向上をもたらす光学ベースアウトプリズムとして機能し得る。
コンタクトレンズ120により焦点面に生成された間接像は、比較的広い視野に対応してもよく、かつ眼の赤道を越えて網膜が終端する鋸状縁まで広がってもよい。したがって、コンタクトレンズ装着用検鏡100により提供される視野は、網膜の全てまたはほとんどを含む、硝子体液で満たされた眼底の大部分を含み得る。このように、外科医には、眼に様々な手術手技のいずれかを実施するために安全で安定した視野が提供される。更にまた、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、手術中でさえも、所望に応じて、眼の上のコンタクトレンズ120の比較的迅速な取り外しおよび交換を可能にしてもよい。
修正、追加、または省略が、本開示の範囲から逸脱することなく、手術用顕微鏡アタッチメント100に対して行われてもよい。コンタクトレンズ装着用検鏡100の構成部品および要素は、本明細書で説明するように、特定の用途に応じて一体化または分離されてもよい。コンタクトレンズ装着用検鏡100は、いくつかの実施形態において、より多くの、より少ない、または異なる構成部品を使用して実現されてもよい。
図2は、患者201の眼の上に載置されたときのコンタクトレンズ装着用検鏡100の上面図200を示している。上面図200は、上で説明したように、コンタクトレンズ装着用検鏡100によりしっかりと固定されたコンタクトレンズ120を通して眼を覗き込み硝子体網膜手術を実施する外科医の視点に相当する。上面図200では、コンタクトレンズ120、装着用リング116、関節リンク機構114、第2の回転継手128、延長アーム126、第1の回転継手124、ワイヤー検鏡ブレード130、およびテンプル支持パッド110が視認可能である。
ここで図3を参照すると、手術用顕微鏡302とコンタクトレンズ120を支持するためのコンタクトレンズ装着用検鏡100とを使用する硝子体網膜手術300の実施形態の図が示されている。図3には、図2に示すようなコンタクトレンズ装着用検鏡100の使用が特許および外科医と共に示されている。図3は手術用顕微鏡302が患者よりも上方に位置する状態で示されているが、手術用顕微鏡302に対して患者を異なる向きに向けることが異なる実施形態で行われ得ることに留意されたい。
外科医が手術用顕微鏡102を使用して患者の眼底を視認している間に、患者は、コンタクトレンズ120に接触するコンタクトレンズ装着用検鏡100を使用して眼を露出させている。図1に関して上で解説した、関節リンク機構114が低摩擦運動をもたらす結果として、硝子体網膜手術300では患者の眼に垂直圧または水平圧がほとんどかからない。コンタクトレンズ120がまだ角膜上に自由に載置されるので、コンタクトレンズ120は、角膜の凸部分に移されたコンタクトレンズ120の重量により自己保持的であってもよく、角膜に対するコンタクトレンズ120の横滑りに抗する。コンタクトレンズ装着用検鏡100は、平行移動および高さ調整を可能にすることにより、眼を回転させたときでさえコンタクトレンズ120が患者の前頭面に対して平行な状態のままであることを確実にしてもよい。角膜およびコンタクトレンズ120がボールおよびソケット継手として噛み合うので、コンタクトレンズ120は、本明細書で説明した関節機構を使用して異なる横方向位置に調整可能である一方で、眼と共に回転しない。それゆえ、患者の眼が手術用顕微鏡302に対して僅かに移動したときに、コンタクトレンズ120は、患者の眼に留まり、手術用顕微鏡202に対して移動してもよい。しかしながら、先に解説したように、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、コンタクトレンズ120を直立状態に保ちかつ手術用顕微鏡302の光軸306に対するコンタクトレンズ120の光軸331の位置合わせを維持するのを補助してもよく、それにより、外科医のための有用な画像化が、熟練した外科技術者などによる、外部の介入なしに手術中に維持されることを可能にする。
光軸131が硝子体網膜手術中に手術用顕微鏡の光軸から僅かにずれたときでさえ、コンタクトレンズ装着用検鏡100は依然として、光軸331を手術用顕微鏡302の光軸306と位置合わせされた状態に保つことにより眼底の有用な画像化を可能にする。換言すれば、眼の光軸331が、例えば患者の眼の移動により、硝子体網膜手術中に光軸306から離れる方向に傾動したときでさえ、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、コンタクトレンズ120を使用して外科医が眼底を視認し続けることを可能にしてもよい。更にまた、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、さもなければ固定され接眼レンズの動きを全く許容しない光学構成により生じ得る患者の重大な負傷リスクなしに、外科医が眼底を視認し続けることを可能にしてもよい。
コンタクトレンズ120が最初に眼の上に配置されるときに、眼の光軸331は、概ね手術用顕微鏡202の光軸306と位置合わせされる。しかしながら、手術中に患者の眼が僅かに動いたときに、光軸331が光軸306と僅かに位置合わせされていない状態になる場合がある。光軸306がもはや光軸331と完全に位置合わせされていないときでさえ、コンタクトレンズ装着用検鏡100は、中断なしに手術中に眼底の有用な視認を可能にするために、コンタクトレンズ120を直立状態に保ち、光軸306を介して視認可能である。コンタクトレンズ装着用検鏡100を使用するこの方式では、本明細書に開示するように、眼底の周辺領域を視認するための外部操作が回避されてもよく、かつコンタクトレンズ120の位置安定性を維持するための追加の人員または手動作業が排除されてもよい。
手術用顕微鏡302で使用される対物レンズは、コンタクトレンズ120の焦点面に焦点を合わせる約175mm〜225mmの焦点距離を有し得る。手術用顕微鏡302が、コンタクトレンズ120を通して投影される眼底を照明し得ることに留意されたい。したがって、外科医は、手術用顕微鏡202を通じて十分な視野が提供されてもよく、様々な硝子体網膜手術処置(図示せず)のいずれかを安全に進め得る。
ここで図4を参照すると、硝子体網膜手術を実施するための方法400の実施形態の選択された要素のフローチャートが、本明細書で説明するように、フローチャート形式で示されている。方法400は、眼の眼底を視認するためにかつ眼底の視野に基づいて更なる手術処置を可能にするためにコンタクトレンズ120を備えたコンタクトレンズ装着用検鏡100(図1および図2を参照)を使用するためのステップおよび手順を説明している。方法400で説明するある動作は任意選択のものであり得るかまたは異なる実施形態において再構成され得ることに留意されたい。方法400は、外科医によりまたは他の医療従事者により実施されてもよい。いくつかの実施形態において、方法400の少なくともある部分は、手術用顕微鏡を上昇または下降させるなど、手術用顕微鏡のある態様と関連付けられた例えばサーボ機械制御装置を使用して、自動化されてもよい。
方法400は、ステップ402において、患者の眼の第2の光軸に沿って手術用顕微鏡の第1の光軸を位置決めすることにより開始してもよい。ステップ404において、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ装着用検鏡に含まれる装着用リングに設置されてもよい。ステップ406において、コンタクトレンズ装着用検鏡は患者に取り付けられ、その結果、コンタクトレンズ装着用検鏡が患者の眼瞼を開いた状態に保ってもよい。ステップ408において、テンプル装着用パッドが患者に適合するように調整され、その結果、テンプル装着用パッドが球面継手によってコンタクトレンズ装着用検鏡の本体に結合されてもよい。ステップ410において、コンタクトレンズがコンタクトレンズ装着用検鏡に機械的に結合されている間に、眼に接触するコンタクトレンズを使用して眼の内部部分が視認されてもよい。
本明細書に開示するように、コンタクトレンズは、硝子体網膜手術などの、眼科手術中に患者の眼に配置される。コンタクトレンズは、手術中に患者の眼の角膜上に載置され、かつ、手術用顕微鏡の光軸との位置合わせを可能にする一方で眼の僅かな移動に対応する複数の自由度を有するコンタクトレンズ装着用検鏡により支持される。コンタクトレンズ装着用検鏡は、異なる患者、検鏡ブレード、コンタクトレンズ(直接および間接)、ならびにレンズ装着位置で使用されてもよい。
上記の開示された主題は、例示的であって限定的ではないものと見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲に含まれる全てのかかる修正形態、改善形態、および他の実施形態を網羅することが意図されている。したがって、本開示の範囲は、法の許す最大限の範囲で、以下の特許請求の範囲およびその等価物の許容される最も広義の解釈により決定されるべきであり、前述の詳細な説明により制限または限定されないものとする。