JP2021101026A - フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法 - Google Patents

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【課題】 本発明は、染色可能なポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】 ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上で、0〜100℃のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜3kPaの減圧下で、接触させる、X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層を有することを特徴とする、フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法である。【選択図】 図1

Description

本発明は、フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、染色可能なフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法に関する。
ポリカーボネートは、強度が高いため、その強度を利用し、眼鏡用レンズや建材、各種生活道具等に利用されている。このポリカーボネートが使用される種々の用途で、着色の要求がある。
しかし、各種樹脂材料の中で、ポリカーボネートは難染色性の材料であり、現在、ポリカーボネー着色するためには、顔料や染料の練り込みや、界面活性剤を用いた比較的高温での染色、表面に着色樹脂フィルムを貼り付ける等の方法が行われている(特許文献1、2等)。
特開平7−331104号公報 特表2005−508459号公報
上述のように、ポリカーボネートは、そのままでは染色が困難である。また、吸水性が低く、十分な量の極性溶媒を、表面に担持することができない。従来、ポリカーボネートを染色するためには、界面活性剤等を利用した上で、高温にする等の量産に適さない製造条件が、必要であった。
したがって、本発明は、染色可能なポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材、およびフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法に関する。
〔1〕X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層を有することを特徴とする、フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材。
〔2〕X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層の厚さが、10〜5000nmである、上記〔1〕記載のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材。
〔3〕X線光電分光法分析で、535〜540eVの領域にカーボネート基またはフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来の、半値幅が5eV以下のピークが少なくともひとつ存在し、535〜540eVの半値幅が5eV以下のピーク高さを1としたとき、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、0.5〜1.5である表面層を有する、上記〔1〕または〔2〕記載のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材。
〔4〕X線光電分光法分析で、535〜540eVの領域にカーボネート基またはフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来の、半値幅が5eV以下のピークが少なくともひとつ存在し、535〜540eVの半値幅が5eV以下のピーク高さを1としたとき、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、0.5〜1.5である表面層の厚さが、10〜5000nmである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材。
〔5〕ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜50kPaの減圧下で、接触させるフッ素処理の60分後の水との接触角をθwと、グリセリンとの接触角をθG1とし、フッ素処理の72時間後の水との接触角をθw72グリセリンとの接触角をθG72としたとき、〔(θw72)/(θw0)〕/〔(θG72)/(θG0)〕が、1.1〜10である表面層を有する、フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材。
〔6〕ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜3kPaの減圧下で、接触させる、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法。
〔7〕ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの温度が、0〜100℃である、上記〔6〕記載のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法。
本発明〔1〕によれば、親水性であり、染色可能な表面を有するポリカーボネート樹脂基材を提供することができる。本発明〔6〕によれば、従来技術より低温で、かつ界面活性剤等の助剤の添加を使用せずに、親水性で、染色可能な表面を有するポリカーボネート樹脂を製造することができる。
本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材のX線光電分光法分析の結果の一例である。 本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材のX線光電分光法分析の結果の一例である。 比較例1の接触角の測定結果を示す図である。 実施例1の接触角の測定結果を示す図である。 比較例1と、実施例1〜7の接触角測定の結果をまとめたグラフである。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法〕
本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法は、ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜3kPaの減圧下で、接触させる。ポリカーボネート樹脂基材の表面を、適切な条件下でフッ素化し、場合によりエージングすることにより、数百ナノメートル程度の親水層を表面に形成することができ、これに染色液を担持することが可能であることから、これまでよりも低温で、かつ界面活性剤等の助剤の添加を必要とせずに、染色を行うことができる。また、吸い込んだ溶液は平面方向には素早く広がらないことから、部分的な着色も容易に実現することができる。このフッ素化された表面は、染色に加えて、印刷、防曇、めっき性、徐放性、自己修復膜等(以下、染色等という)の用途への応用も可能である。
本発明の表面が改質されたポリカーボネート系樹脂基材の製造方法は、純度が70%以上のフッ素ガスを用い、0.1〜3kPaの減圧下で当該フッ素ガスとポリカーボネート系樹脂基材とを接触させる。
ポリカーボネート樹脂は、特に、限定されない。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる、重合体または共重合体が挙げられ、代表的なものとしては、ジヒドロキシジアリール化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を用いて製造されたポリカーボネート樹脂等が、挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂基材の形態は、用途に応じて適宜決定すればよく、特に、限定されない。ポリカーボネート系樹脂基材の形態としては、例えば、フィルム、プレート、ロッド、所定形状に成形されたポリカーボネート系樹脂からなる成形体の形状等が、挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂基材の表面に、汚れが付着している場合には、あらかじめ洗浄を行うと、好ましい。ポリカーボネート系樹脂基材の表面に洗浄を行う方法は、特に、限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等の水溶性有機溶媒を用いて洗浄する方法、界面活性剤を用いて洗浄する方法等が、挙げられる。なお、ポリカーボネート系樹脂基材の表面に汚れが付着していないのであれば、当該ポリカーボネート系樹脂基材に、洗浄を行わなくてもよい。
ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる方法は、特に、限定されないが、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる際に、フッ素ガスが大気中に放出されることを防止する観点から、密閉式のバッチ式反応装置等の反応装置を用いると、好ましい。
以下、反応装置を用いてポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる場合の一実施態様について説明するが、本発明は、この実施態様に限定されない。
反応装置を用いてポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる場合には、反応装置内にポリカーボネート系樹脂基材を入れた後、反応装置内にフッ素ガスを導入すると、好ましい。この場合、ポリカーボネート系樹脂基材の表面の改質を促進させる観点から、反応装置内にポリカーボネート系樹脂基材を入れ、その後、反応装置内を脱気したり、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスで置換したりした後に、反応装置内にフッ素ガスを導入すると、好ましい。フッ素ガスは、酸化力があると好ましく、Fガス(以下に使用するフッ素ガスである)、BrF,BrF、IF、IF等が、挙げられる。
反応装置内に入れられるポリカーボネート系樹脂基材の大きさは、ポリカーボネート系樹脂基材の用途、反応装置の大きさ等によって異なるため、一概には決めることができない。したがって、ポリカーボネート系樹脂基材の大きさは、その用途、反応装置の大きさ等に応じて、適宜、決定すればよい。
次に、反応装置内にフッ素ガスを導入することにより、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる。このとき、ポリカーボネート系樹脂基材の表面の少なくとも改質させる部分に、フッ素ガスが接触するように、反応装置内にフッ素ガスを導入すると、好ましい。
本発明においては、フッ素ガスとして、純度が70%(容量%、以下、フッ素ガスについては、同じである)以上であるフッ素ガス、換言すれば、フッ素ガスの含有率が70%以上であるフッ素ガスを用いることが、1つの大きな特徴である。本発明においては、このように純度が70%以上であるフッ素ガスが用いられているため、ポリカーボネート系樹脂基材の表面に、染色可能なフッ素含有表面層を形成させることができる。
フッ素ガスの純度は、ポリカーボネート系樹脂基材の表面の改質性の観点から、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。したがって、本発明においては、フッ素ガスとして、一般に、市販品として、容易に入手することができるフッ素ガスを、希釈せず、そのまま用いることができるため、従来のように、煩雑なフッ素ガスと酸素ガスや不活性ガスとを所定比率となるように混合する、という操作を避けることができる。なお、高純度(例えば、99%以上)のフッ素ガスを用いるときには、必要に応じて、所定の純度になるように、不活性ガスで、フッ素ガスを希釈してもよい。この不活性ガスは、特に、限定されないが、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させるときのフッ素ガスの圧力は、0.1〜50kPaとなるように、調節する。本発明においては、このようにポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させるときのフッ素ガスの圧力を0.1〜50kPaに調整する点も、1つの大きな特徴である。
従来、フッ素ガスまたはフッ素ガスと不活性ガスとの混合ガスは、そのガスの圧力が低いと、基材表面をフッ素化させる効率が低下する、と考えられているため、通常、常圧(大気圧:約101.3kPa)程度で用いられている。本発明では、大気圧よりも格段に低い圧力(0.1〜50kPa)下で、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる、という方法であるため、純度が70%以上であるフッ素ガスを用いることとの相乗効果で、ポリカーボネート系樹脂基材の表面に、染色可能なフッ素含有表面層を形成させることができる。
フッ素ガスとポリカーボネート樹脂基材とを接触させる際のフッ素ガスの圧力は、ポリカーボネート系樹脂基材の表面を効率よく改質させる観点から、0.1kPa以上、好ましくは0.5kPa以上、さらに好ましくは1kPa以上であり、ポリカーボネート系樹脂基材の表面に染色性等に優れたフッ素含有表面層を形成させる観点から、50kPa以下、好ましくは30kPa以下、さらに好ましくは20kPa以下である。
フッ素ガスとポリカーボネート樹脂基材とを接触させる際のフッ素ガスの温度は、効率よくポリカーボネート系樹脂基材を改質させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、安全性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。このように、本発明においては、あえて加熱または冷却しなくても、室温(常温)でポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させることにより、ポリカーボネート系樹脂基材を改質させることができるため、本発明の製造方法は、工業的生産性にも優れている。なお、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの温度は、ポリカーボネート系樹脂基材の変形等を防止する観点から、ポリカーボネート系樹脂基材に用いられているポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度より低い温度となるように、調節することが好ましい。
ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させるのに要する時間は、ポリカーボネート系樹脂基材の表面が改質されるのに要する時間であり、ポリカーボネート系樹脂基材に用いられているポリカーボネート系樹脂の種類、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの圧力およびその温度等によって異なるため、一概には決定することができない。ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させるのに要する時間は、ポリカーボネート系樹脂基材の表面を十分に改質させる観点から、通常、1分間〜1時間程度であるが、要求される染色性等を考慮して、適宜、決定することが好ましい。このように、本発明においては、ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを、短時間で接触させることにより、ポリカーボネート系樹脂基材を改質させることができる点で、本発明の製造方法は、工業的生産性に優れている。
ポリカーボネート系樹脂基材とフッ素ガスとを接触させた後には、安全性の観点から、不活性ガスを反応装置内に導入し、反応装置内の内部雰囲気を不活性ガスで置換すると、好ましい。不活性ガスは、特に、限定されないが、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられる。
次に、フッ素ガスによって改質されたポリカーボネート系樹脂基材は、反応装置から取り出した後、例えば、染色等の処理が、行われる。
なお、表面が改質されたポリカーボネート系樹脂基材の表面は、必要により、洗浄してもよい。ポリカーボネート系樹脂基材の表面を洗浄する方法は、特に、限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等の水性有機溶媒を用い、洗浄する方法、界面活性剤を用い、洗浄する方法等が、挙げられる。
このように、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法によれば、染色性等に優れた表面を有するフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材を製造することができる。
〔フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材〕
本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、上述のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法(以下、フッ素処理という)により、製造ずることができる。このフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、染色等の用途に、非常に有用である。
上述のフッ素処理により製造されたフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の表面層の詳細については、不明な部分が多く、詳細な微細構造、有用な特性の全てを説明することはできないが、以下、特性の一部を説明する。
本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層を有する。
図1に、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材のX線光電分光法分析の結果の一例を示す。図1では、未処理のポリカーボネート樹脂基材は、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、約0.07である。一方、フッ素処理済みのポリカーボネート樹脂基材は、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、約6〜36である。このように、フッ素処理により、ポリカーボネート層が、フッ素を有することがわかる。
また、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、X線光電分光法分析で、535〜540eVの領域にカーボネート基またはフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来の、半値幅が5eV以下のピークが少なくともひとつ存在し、その高さの、同試料について292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さに対する比率が、0.5〜1.5である表面層を有すると、好ましい。
図2に、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材のX線光電分光法分析の結果の一例を示す。図2では、未処理のポリカーボネート樹脂基材は、535〜537eVに示されるカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さ1に対して、538〜540eVに示されるフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来の結合のピーク高さが、約0.08である。一方、フッ素処理済みのポリカーボネート樹脂基材は、535〜537eVに示されるカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さ1に対して、538〜540eVに示されるフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来の結合のピーク高さが、約2.0〜3.5である。
また、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層の厚さが、10〜5000nmであると、ポリカーボネート樹脂基材の染色性等の観点から、好ましい。
また、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、X線光電分光法分析で、535〜537eVに示されるカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さ1に対して、538〜540eVに示されるフッ素化による影響を受けたカーボネート期に含まれる酸素の1s軌道電子由来の結合のピーク高さが、1.5〜4.0である表面層の厚さが、10〜5000nmであると、好ましい。
以下、上述とは、別の視点から説明する。本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜50kPaの減圧下で、接触させるフッ素処理の60分後の水との接触角をθwと、グリセリンとの接触角をθG1とし、フッ素処理の72時間後の水との接触角をθw72グリセリンとの接触角をθG72としたとき、〔(θw72)/(θw0)〕/〔(θG72)/(θG0)〕が、1.1〜10、好ましくは、1.3〜5.0、より好ましくは、1.5〜2.5である表面層を有する。なお、この説明を特許請求の範囲に記載すると、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するが、経時変化について説明するためには、製造方法の文言を含まずに、説明することができない。本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、経時変化により、水との接触角は、小さくなる一方、グリセリンとの接触角は、大きく変化しない。ここで、接触角は、協和界面科学(株)製接触角計(型番:DM−701)を用い、室温(約25℃)で測定する。接触角については、後述する実施例で、詳細に説明する。
以下に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔比較例1〕
ポリカーボネート系樹脂基材として、ポリカーボネート樹脂からなる表面が平滑な樹脂プレート(縦:30mm、横:10mm、厚さ:1mm)を使用した。この未処理の樹脂プレートに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、協和界面科学(株)製接触角計(型番:DM−701)を用い、室温(約25℃)で、滴下30秒後の水の接触角を測定した。他の実施例、比較例においても、接触角は、同様に測定した。図3に、結果を示す。図3に示された結果から、この未処理の樹脂プレートの水の接触角は、92°であることがわかった。
〔実施例1〕
次に、この樹脂プレートを、ニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
次に、反応管内に、フッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で1時間静置することにより、フッ素ガスと樹脂プレートとを接触させ、樹脂プレートの表面を改質させた。その後、この樹脂プレートを反応管から取り出した。このようにして作製された表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)の水、およびグリセリンとの60分後の接触角を、測定した。図4に、結果を示す。図4に示された結果から、水の接触角は、54°であることがわかった。
〔実施例2〜7〕
実施例2〜7は、実施例1の経時変化を観察した。実施例2は、フッ素処理後、1日目である。実施例3は、フッ素処理後、3日目である。実施例4は、フッ素処理後、7日目である。実施例5は、フッ素処理後、14日目である。実施例6は、フッ素処理後、30日目である。実施例7は、フッ素処理後、60日目である。表1と図5に、比較例1、実施例1〜7の接触角測定の結果をまとめた表とグラフを示す。
Figure 2021101026
表1、図5からわかるように、未処理の比較例1は、水との接触角が非常に大きかった。これに対して、実施例1〜7は、水との濡れ性が向上した。また、経時変化により、濡れ性が向上した。なお、実施例1〜7では、測定中の時間経過により、水が表面層から内部に浸透していくことがわかった。また、〔(θw72)/(θw0)〕/〔(θG72)/(θG0)〕は、約1.67であった。
実施例1〜7の表面を、X線光電分光法分析で、観察した。図1、2に、結果を示す。
図1では、未処理のポリカーボネート樹脂基材(比較例1)は、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、約0.07であった。一方、フッ素処理済みのポリカーボネート樹脂基材(実施例1〜7)は、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、約6〜36であった。このように、フッ素処理により、ポリカーボネート層が、フッ素を有することがわかった。
図2では、未処理のポリカーボネート樹脂基材(比較例1)は、535〜537eVに示されるカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さ1に対して、538〜540eVに示されるフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さが、約0.08であった。一方、フッ素処理済みのポリカーボネート樹脂基材(実施例1〜7)は、535〜537eVに示されるカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さ1に対して、538〜540eVに示されるフッ素化による影響を受けたカーボネート基に含まれる酸素の1s軌道電子由来のピーク高さが、約2.0〜3.5であった。
〔実施例8〜11〕
実施例8〜11では、反応管内のフッ素ガスの圧力以外は、実施例1と同様にして、表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)を、作製した。実施例8では4.00kPa、実施例9では6.67kPa、実施例10では13.3kPa、実施例11では48.0kPaにした。
作製した表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)を、目視で観察した。実施例1は青色、実施例8、9は緑色、実施例10、11は、桃色であった。また、実施例1、8〜11の表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)のフッ素含有表面層の厚さを、断面観察した。断面観察は、極低加速電圧対応走査型電子顕微鏡(ZEISS社製、型番:ULTRA55)で行った。実施例1、8〜11のフッ素含有表面層の厚さは、300nm(実施例1)、500nm(実施例8、9)、600nm(実施例10、11)であった。
〔染色性試験〕
実施例1、8〜11の表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)を、超純水で、15分間、超音波洗浄した後、染色液に5分間浸漬した後、60℃で30分間乾燥した。その後、超純水に5分間浸漬した後、60℃で60分間乾燥した。その後、目視で、着色を観察した。染色液には、メチレンブルー、メチルオレンジ、ローダミンBの3種を用い、濃度は全て5.0×10−5mol/dmであった。
比較例2として、まず、未処理のポリカーボネート樹脂基材について、染色性試験を行った。3種類全ての染色液で、染色ができなかった。
実施例1、8〜11では、3種類全ての染色液で、染色を確認できた。また、実施例1、8〜11の順に、染色が濃くなっていることを確認できた。また、純水で洗浄しても、染色が落ちないことも確認した。
〔マーキング性試験〕
実施例1、8〜11の表面が改質された樹脂プレート(フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材)と、比較例2の未処理のポリカーボネート樹脂基材の表面に、油性インキのペンで字を書き(部分的な着色に該当する)、目視で観察した。
実施例1、8〜11の表面には、滲みのない描写ができた。また、油性インキは、表面から内部に浸透するため、時間が経過しても滲みの発生はなかった。
以上のように、本発明のフッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材は、親水性で、染色可能であり、マーキング性も良好であった。

Claims (1)

  1. ポリカーボネート樹脂基材とフッ素ガスとを、純度が70%以上で、0〜100℃のフッ素ガス雰囲気下、0.1〜3kPaの減圧下で、接触させる、X線光電分光法分析で、286〜288eVに示されるC−C結合のピーク高さ1に対して、292〜294eVに示されるC−F結合のピーク高さが、2〜50である表面層を有することを特徴とする、フッ素含有表面層を有するポリカーボネート樹脂基材の製造方法。
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