JP2021099330A - トランジスタセンサ及び生体物質検出方法 - Google Patents

トランジスタセンサ及び生体物質検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高感度で検出限界値が低く、検出の高安定性を実現し、更には低コストで迅速且つ簡便に生体物質の検出を行うことができるトランジスタセンサを提供する。【解決手段】基板と、前記基板の一方の面の上に設けられたチャネル層と、前記基板と前記チャネル層の間又は前記チャネル層の前記基板側と反対側の面の上に設けられた固体電解質層と、を有し、前記チャネル層は無機半導体を含み、前記固体電解質層は無機固体電解質を含み、前記チャネル層及び前記固体電解質層のうちいずれか一方又はその双方の少なくとも一部が外部に露出している露出部を備える、トランジスタセンサ。【選択図】図1

Description

本発明は、トランジスタセンサ及び生体物質検出方法に関する。
薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)センサなどのトランジスタセンサを用いたDNAセンサは、広く知られており、これまでに様々なトランジスタセンサを用いたDNAセンサが報告されている。例えば、ホモオリゴマーDNA鎖を3−アミノプロピルエトシキシランを用いて固定し、一定のドレイン電流下におけるゲート電位の変位によって、上記オリゴマー鎖とのハイブリダイゼーションを直接的に検出する方法が報告されている(非特許文献1)。
また、mRNA/DNAの従来の測定方法として、PCR法(polymerase chain reaction)や次世代シーケンシング(next generation sequencing)を用いる方法がある。PCR法は、DNA配列上の特定の領域(目的領域)を、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて増幅させる方法であり、DNA1分子から検出可能であるため、DNAの特定配列を高感度で検出することが可能となっている。また、次世代シーケンシングは、DNAを断片化してライブラリーを調製し、ライブラリーのDNA断片を並列にシーケンスする方法であり、DNAの全ての配列を1分子から網羅的に解読することが可能となっている。
J.Phys.Chem.B,1997,101,2980−2985
しかしながら、非特許文献1の技術では、検出限界が1μg/mL程度とそれ程高くなく、また、実サンプルでは共存する物質によって検出値が変化することから、検出限界や選択性が不十分である。また、従来のトランジスタを用いたDNAセンサは、水分や塩の影響を受けやすく、水分や塩の存在下での検出が不安定となる。
検出限界を高めるには、高感度であるかあるいは低ノイズであることが必要である。トランジスタセンサの感度は、(移動度)×(ゲート容量)とSファクタとで決定されるが、従来のトランジスタセンサの感度はそれ程高くない。よって、検出限界を高めるためには、低濃度での検出の安定性が重要となるが、従来のトランジスタセンサは、水溶液中、とくにタンパク質等が共存している実生体サンプル溶液中での安定性が低い。
一方、上記PCR法では、高感度であり、DNA1分子から検出可能であるものの、増幅処理が必要であるため、検出時間、手間、コストが掛かる。また、上記次世代シーケンシングでは、検出時間、コストがより一層掛かる。近年、医療分野における臨床検査のニーズが年々高まっており、特に、感染症、新規癌マーカー、個の遺伝子、エクソソーム、白血球中のmRNA、cell-freeRNA/DNA等の解析において、迅速且つ高感度な検出、測定が求められている。
本発明の目的は、高感度で検出限界値が低く、検出の高安定性を実現し、更には低コストで迅速且つ簡便に生体物質の検出を行うことができる、トランジスタセンサ及び生体物質検出方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、基板と、その基板の一方の面の上に設けられたチャネル層と、上記基板と上記チャネル層の間又は上記チャネル層の上記基板側と反対側の面の上に設けられたゲート絶縁層(固体電解質層)と、を有し、上記チャネル層及び上記固体電解質層のうちいずれか一方又はその双方の少なくとも一部が外部に露出している露出部を備えるトランジスタセンサにおいて、上記チャネル層が無機半導体を含み、上記固体電解質層が無機固体電解質を含むことによって、生体物質出を高感度で検出でき、検出限界値が低く、検出の安定性が向上し、更には生体物質の検出を低コストで迅速且つ簡便に行うことが可能となることを見出した。また、特定の複数の金属元素を含む複合金属酸化物をトランジスタセンサのゲート絶縁層(固体電解質層)として用いると共に、特定の1又は複数の金属元素を含む金属酸化物(無機半導体)をチャネル層として用い、更に上記ゲート絶縁層(固体電解質層)中に含まれる炭素及び水素の含有量を所定の範囲内とすることで、従来のトランジスタセンサよりも高感度で検出限界値が大幅に低くなると共に、水分等の存在下での安定性が高くなり、更には従来よりも検出時間、手間、コストを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[1]基板と、前記基板の一方の面の上に設けられたチャネル層と、前記基板と前記チャネル層の間又は前記チャネル層の前記基板側と反対側の面の上に設けられた固体電解質層と、を有し、前記チャネル層は無機半導体を含み、
前記固体電解質層は無機固体電解質を含み、
前記チャネル層及び前記固体電解質層のうちいずれか一方又はその双方の少なくとも一部が外部に露出している露出部を備える、トランジスタセンサ。
[2]前記固体電解質層は、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかで形成されており、前記チャネル層は、少なくともインジウム(In)を含む金属酸化物で形成されており、前記固体電解質層中の炭素(C)の含有率が、0.5atom%以上15atom%以下であり、且つ、前記固体電解質層中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下である、上記[1]に記載のトランジスタセンサ。
[3]前記固体電解質層は、イオン伝導率が1×10−8S/cm以上であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のトランジスタセンサ。
[4]前記露出部の表面は、生体物質を直接的又は間接的に捕捉する捕捉場を有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のトランジスタセンサ。
[5]前記捕捉場は、前記生体物質を捕捉するためのプローブ分子が固定されている、上記[4]に記載のトランジスタセンサ。
[6]さらに、前記露出部の上部に、生体物質を含む液体を保持可能な保持部を備える、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のトランジスタセンサ。
[7]さらに、前記固体電解質層の少なくとも一部に接触している導電性材料層を備え、前記導電性材料層は前記固体電解質層以外とは電気的に絶縁されている、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のトランジスタセンサ。
[8]さらに、前記チャネル層に接続されているソース電極及びドレイン電極と、
前記露出部に接するように生体物質を含む液体を配置したときに、前記生体物質を含む液体中に挿入される参照電極と、
前記ソース電極との間の電圧と、前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流とに基づいて、前記生体物質を検出する検出部とを有する、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のトランジスタセンサ。
[9]上記[8]に記載のトランジスタセンサを用いた生体物質検出方法であって、
前記露出部に、生体物質を含む液体を供給する工程と、
前記生体物質を含む液体中に前記参照電極を挿入する工程と、
前記参照電極と前記トランジスタセンサの前記ソース電極との間に電圧を印加すると共に、前記トランジスタセンサの前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流を測定し、前記参照電極−前記ソース電極間の電圧と、前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流とに基づいて前記生体物質を検出する工程と、を含む、生体物質検出方法。
本発明によれば、高感度で検出限界値が低く、また、検出の高安定性を実現し、更には低コストで迅速且つ簡便に生体物質の検出を行うことができる。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の一例を示す断面図(図1(b)の線I−Iに沿う断面図)であり、図1(b)は、平面図である。 図2(a)〜図2(d)は、図1(a)のトランジスタセンサの製造方法の工程の一例を示す断面図である。 図3は、図1(a)のトランジスタセンサを用いたDNAの検出方法を示す模式図である。 図4は、本発明例1のトランジスタセンサのVTG−IDS特性を示すグラフである。 図5は、従来のトランジスタセンサのVTG−IDS特性を示すグラフである。 図6は、ゲート絶縁層(固体電解質層)とバックゲート電極(導電性材料層)の作用を説明するトランジスタセンサの断面図である。 図7(a)〜図7(d)は、図1のトランジスタセンサを用いて標的DNAの検出を繰り返して行う検出方法の一例を示す模式図である。 図8(a)及び図8(b)は、図1のトランジスタセンサにおけるチャネル層の幅を変えた際のトップゲート電圧VTGとドレイン電流IDSとの関係を示すグラフである。 図9(a)〜図9(d)は、チャネル層上にプローブDNAを固定せずに標的DNAの検出を行う比較実験の一例を示す模式図である。 図10は、図9の比較実験を用いて、標的DNAの濃度を変化させた際のトップゲート電圧VTGとドレイン電流IDSとの関係を示すグラフである。 図11(a)は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の別の一例を示す断面図(図11(b)の線II−IIに沿う断面図)であり、図11(b)は、平面図である。 図12は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図13は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図14は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図15は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図16は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図17は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す断面図である。 図18(a)〜図18(f)は、実施例におけるトランジスタセンサ上に、測定対象である生体物質を捕捉するためのプローブDNAを担持させる工程を示す模式図である。 図19(a)は、実施例におけるトランジスタセンサのリン酸バッファ中での安定度評価を示すグラフであり、図19(b)は、血清中での安定度評価を示すグラフである。 図20は、実施例で作製したトランジスタセンサで測定したVTG−IDS特性を示すグラフである。 図21は、図20のグラフにおける試料の標的DNA濃度を横軸とし、図20のグラフから読み取ったIDSが1μAに到達したときのVTGの値を縦軸としてプロットしたグラフである。 図22は、本発明例12で作製したトランジスタセンサの平面図である。 図23は、本発明例15で測定された固体電解質のインピーダンスをコール・コールプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。
[トランジスタセンサの構成]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の一例を示す断面図(図1(b)の線I−Iに沿う断面図)であり、図1(b)は、平面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、トランジスタセンサ10は、基板11、バックゲート電極(導電性材料層)12、ゲート絶縁層(固体電解質層)13、チャネル層14、ソース電極15及びドレイン電極16をこの順に備える。本実施形態のトランジスタセンサ10では、基板11もしくはバックゲート電極(導電性材料層)12とチャネル層14との間、特にバックゲート電極(導電性材料層)12とチャネル層14との間に、固体電解質のゲート絶縁層(固体電解質層)13が形成されている。ゲート絶縁層(固体電解質層)13、チャネル層14は、外部に露出した露出部17を形成している。バックゲート電極(導電性材料層)12は無くてもよい。
基板11は、例えば、高耐熱ガラス、SiO/Si基板(すなわち、シリコン基板上に酸化シリコン膜を形成した基板。以下、単に「基板」ともいう)、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板等、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板等)等、種々の絶縁性基板で構成されることができる。基板11の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上1mm以下である。
バックゲート電極12は、導電性材料を含む導電性材料層である。バックゲート電極(導電性材料層)12は、導電性材料のみから形成されていてもよい。バックゲート電極(導電性材料層)12は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、チタン(Ti)などの金属、その金属を含む合金等の金属材料、及び、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化ルテニウム(RuO)などの金属酸化物のうちのいずれかで形成されることができる。バックゲート電極(導電性材料層)12は、例えば、上記金属、その合金等の金属材料及び金属酸化物のうちのいずれかで形成される単層、又は、それらを積層させた複層で構成されることができる。バックゲート電極(導電性材料層)12の厚みは、特に限定されないが、例えば50nm以上200nm以下である。バックゲート電極(導電性材料層)12は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13以外とは電気的に絶縁されていてもよい。
ゲート絶縁層13は、固体電解質を含む固体電解質層である。ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、固体電解質のみから形成されていてもよい。ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、例えば、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかで形成されることができる。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)の含有率は、0.5atom%以上15atom%以下であり、且つ、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下であってもよい。ゲート絶縁層(固体電解質層)13が上記金属酸化物で構成され、且つゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)及び水素(H)の含有率が共に上記範囲内であると、チャネル層14を構成する後述の金属酸化物との組み合わせによって、トランジスタセンサ10が高感度となって検出限界が大幅に低くなり、また、水分等の存在下での検出の安定性が高くなる。
ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、イオン伝導率が1×10−8S/cm以上であることが好ましい。ゲート絶縁層(固体電解質層)13のイオン伝導率は1×10−2S/cm以下であってもよい。具体的には、ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、例えば、以下の(A1)〜(A5)のうちのいずれかで形成されることができる。
(A1)ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物
(A2)ランタン(La)とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物
(A3)セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びイットリウム(Y)からなる群から選択されるいずれかの金属元素と、ジルコニウム(Zr)またはタンタル(Ta)とを含む金属酸化物
(A4)ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素を含む金属酸化物
(A5)ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)を含有する酸化物
例えば、ゲート絶縁層(固体電解質層)13が、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物で形成される場合(A1)、ゲート絶縁層(固体電解質層)13におけるランタン(La)とジルコニウム(Zr)との原子数比は、特に限定されないが、例えば、ランタン(La)を1としたときにジルコニウム(Zr)が、0.43以上2.33以下であることが好ましく、1以上2.33以下であることが更に好ましい。ゲート絶縁層(固体電解質層)13におけるランタン(La)とジルコニウム(Zr)との原子数比が上記範囲内であることにより、高いセンシング性能(代表的には、高い電界効果移動度、高いゲートキャパシタ容量)を得ることができる。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)13が、ランタン(La)とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物で形成される場合(A2)、ゲート絶縁層(固体電解質層)13におけるランタン(La)とタンタル(Ta)との原子数比についても、特に限定されない。更に、ゲート絶縁層(固体電解質層)13が上記(A3)〜(A5)のいずれかの金属酸化物で形成される場合も、各金属元素の原子数比は、特に限定されない。
上記各種の原子組成比は、ラザフォード後方散乱分光法(RBS法)等を用いて、元素分析を行うことにより求める。特に、炭素(C)と水素(H)の含有率については、National Electrostatics Corporation 製 Pelletron 3SDHを用いて、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS分析法)、水素前方散乱分析法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS分析法)、及び核反応解析法(Nuclear Reaction Analysis:NRA分析法)を用いて元素分析を行うことにより求める。
ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、例えば、上記金属酸化物のうちのいずれかで形成される単層で構成されることができる。ゲート絶縁層(固体電解質層)13がランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる金属酸化物の層で構成される場合、LZO層とも呼ばれる。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)13がランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる金属酸化物の層で構成される場合、LTO層とも呼ばれる。
ゲート絶縁層(固体電解質層)13の厚みは、特に限定されないが、例えば50nm以上300nm以下である。ゲート絶縁層(固体電解質層)13の厚みが300nmを超えると、チャネル層14の界面特性に影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。一方、その厚みが50nm未満であると、リーク電流増加や膜の基板への被覆性劣化などの観点から好ましくない。
チャネル層14は、無機半導体を含む無機半導体層である。チャネル層14は、無機半導体のみから形成されていてもよい。無機半導体としては、広く使われているSiの他、例えば、酸化亜鉛、少なくともインジウム(In)を含むIn含有金属酸化物を用いることができる。チャネル層14が上記の酸化亜鉛やIn含有金属酸化物で形成されることで、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上記金属酸化物、特に当該ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)及び水素(H)の含有率との組み合わせによって、トランジスタセンサ10の感度を大幅に向上し、また、水分等の存在下での検出の安定性を高くすることが可能となる。
In含有金属酸化物の例としては、以下の(B1)〜(B6)の酸化物を挙げることができる。
(B1)インジウム(In)からなる金属酸化物
(B2)インジウム(In)と錫(Sn)とを含む金属酸化物
(B3)インジウム(In)と亜鉛(Zn)とを含む金属酸化物
(B4)インジウム(In)とジルコニウム(Zr)と亜鉛(Zn)とを含む金属酸化物
(B5)インジウム(In)とガリウム(Ga)とを含む金属酸化物
(B6)インジウム(In)と亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とを含む金属酸化物
例えば、チャネル層14が、インジウム(In)と錫(Sn)とを含む金属酸化物で形成される場合(B2)、インジウム(In)を1としたときに0.001以上0.03以下の原子数比となる錫(Sn)を含むことができる。チャネル層14が、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とを含む金属酸化物で形成される場合(B3)、インジウム(In)を1としたときに0.001以上0.75以下の原子数比となる亜鉛(Zn)を含むことができる。チャネル層14が、インジウム(In)とジルコニウム(Zr)と亜鉛(Zn)とを含む金属酸化物で形成される場合(B4)、インジウム(In)を1としたときに0.001以上0.75以下の原子数比となる亜鉛(Zn)と、0.015以上0.075以下の原子数比となるジルコニウム(Zr)とを含むことができる。
また、チャネル層14が、インジウム(In)とガリウム(Ga)とを含む金属酸化物で形成される場合(B5)、インジウム(In)を1としたときに0.001以上0.75以下の原子数比となるガリウム(Ga)を含むことができる。チャネル層14が、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とを含む金属酸化物で形成される場合(B6)、インジウム(In)を1としたときに0.001以上0.75以下の原子数比となる亜鉛(Zn)と、0.001以上0.75以下の原子数比となるガリウム(Ga)とを含むことができる。
チャネル層14の材料である上記金属酸化物は、アモルファス相あるいはナノ結晶相であることも確認されている。従って、チャネル層14に接するアモルファス相であるゲート絶縁層(固体電解質層)13との良好な界面状態が得られると考えられる。その結果、良好な電気特性を備えたトランジスタセンサ10が形成され得る。
チャネル層14は、例えば上記金属酸化物で形成された単層で構成されることができる。チャネル層14の厚みは、特に限定されないが、確度高くゲート絶縁層(固体電解質層)13等を覆う観点、及びチャネル層14の導電性の変調を容易にする観点から、例えば5nm以上80nm以下であるのが好ましい。
尚、チャネル層14がインジウム(In)からなる金属酸化物の層で構成される場合(B1)、InO層とも呼ばれる。また、チャネル層14がインジウム(In)と錫(Sn)とを含む金属酸化物の層で構成される場合(B2)、ITO(Indium Tin Oxide)層とも呼ばれる。チャネル層14がインジウム(In)と亜鉛(Zn)とを含む金属酸化物の層で構成される場合(B3)、IZO層とも呼ばれる。チャネル層14がインジウム(In)、亜鉛(Zn)及びジルコニウム(Zr)を含む金属酸化物の層で構成される場合(B4)、ZIZO層とも呼ばれる。
チャネル層14の幅W(図1(b))は、より大きい方がノイズの観点で有利であるが、例えば100μm以上であり、一例としては1000μm以下である。チャネル層14の長さLは、例えば50μm以上200μm以下である。
また、本実施形態では、チャネル層14は、ソース電極15及びドレイン電極16のいずれよりも薄い膜厚を有しているが、これに限らず、ソース電極15及びドレイン電極16を同じ膜厚を有してもよいし、或いはそれらよりも厚い膜厚を有してもよい。
ソース電極15及びドレイン電極16は、例えばゲート絶縁層(固体電解質層)13上であってチャネル層14の両側に配置されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、特に限定されないが、例えば、白金(Pt)などの高融点金属、その高融点金属を含む合金等の金属材料、及びインジウム錫酸化物(ITO)、酸化ルテニウム(RuO)などの金属酸化物のうちのいずれかで形成されることができる。ソース電極15は、上記金属、その合金等の金属材料及び金属酸化物のうちのいずれかで形成される単層、又は、それらを積層させた複層で構成されることができる。ドレイン電極16も、上記金属、その合金等の金属材料及び金属酸化物のうちのいずれかで形成される単層、又は、それらを積層させた複層で構成されることができる。なお、本実施形態では、ソース電極15は、第1ソース電極15xと第2ソース電極15yを積層させた複層で構成されている。また、ドレイン電極16は、第1ドレイン電極16xと第2ドレイン電極16yを積層させた複層で構成されている。ソース電極15の厚み及びドレイン電極16の厚みは、特に限定されないが、例えば50nm以上1000nm以下である。
[トランジスタセンサの製造方法]
図2(a)〜図2(d)は、図1(a)のトランジスタセンサ10の製造方法の工程の一例を示す断面図である。
(1)バックゲート電極(導電性材料層)の形成
先ず、図2(a)に示すように、公知のスパッタリング法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、基材であるSiO/Si基板(以下、単に「基板」ともいう)11上に、バックゲート電極(導電性材料層)12を形成する。
(2)ゲート絶縁層(固体電解質層)の形成
次に、バックゲート電極(導電性材料層)12上に、公知のスピンコーティング法により、希土類元素を含む前駆体及びジルコニウム(Zr)を含む前駆体を溶質とするゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液、又は希土類元素を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とするゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液を出発材とするゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層を形成する。本実施形態では、例えば、ランタン(La)を含む前駆体及びジルコニウム(Zr)を含む前駆体を溶質とするゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液を出発材とするゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層を形成する。
このとき、最終的に形成されるゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)の含有率が0.5atom%以上15atom%以下となり、且つ、そのゲート絶縁層(固体電解質層)13中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下となるように、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液が調整されていてもよい。具体的には、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液を次の(2−1)〜(2−3)に示す方法で調整してもよい。
(2−1)110℃で30分間の加熱によって、プロピオン酸に酢酸ランタンを溶解させ、0.2mol/kgの溶液を得る。
(2−2)110℃で30分間の加熱によって、プロピオン酸にジルコニウムブトキシドを溶解させ、0.2mol/kgの溶液を得る。
(2−3)上記(2−1)及び(2−2)の各溶液を室温において混合する。
尚、トランジスタセンサとしての特性をより向上させる観点から、上述の炭素(C)の含有率が1atom%以上10atom%以下となり、且つ、そのゲート絶縁層(固体電解質層)13中の水素(H)の含有率が5atom%以上18atom%以下にしてもよい。
ランタン(La)を含む前駆体の例としては、酢酸ランタンが挙げられる。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。
また、ジルコニウム(Zr)を含む前駆体の例としては、ジルコニウムブトキシドが挙げられる。その他の例として、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、又はその他の各種のジルコニウムアルコキシド(例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムメトキシエトキシド)が採用され得る。
また、タンタル(Ta)を含む前駆体の例としては、タンタルブトキシドが挙げられる。その他の例として、硝酸タンタル、塩化タンタル、又はその他の各種のタンタルアルコキシド(例えば、タンタルイソプロポキシド、タンタルブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルメトキシエトキシド)が採用され得る。
セリウム(Ce)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Ce、硝酸Ce等が挙げられる。プラセオジム(Pr)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Pr、硝酸Pr等が挙げられる。ネオジム(Nd)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Nd、硝酸Nd等が挙げられる。サマリウム(Sm)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Sm、硝酸Sm等が挙げられる。ユウロピウム(Eu)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Eu、硝酸Eu等が挙げられる。ガドリニウム(Gd)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Gd、硝酸Gd等が挙げられる。テルビウム(Tb)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Tb、硝酸Tb等が挙げられる。ジスプロシウム(Dy)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Dy、硝酸Dy等が挙げられる。ホルミウム(Ho)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Ho、硝酸Ho等が挙げられる。エルビウム(Er)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Er、硝酸Er等が挙げられる。ツリウム(Tm)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Tm、硝酸Tm等が挙げられる。イッテルビウム(Yb)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Yb、硝酸Yb等が挙げられる。ルテチウム(Lu)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Lu、硝酸Lu等が挙げられる。イットリウム(Y)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Y、硝酸Y等が挙げられる。
また、ハフニウム(Hf)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Hf、硝酸Hf、Hfブトキサイド等が挙げられる。アルミニウム(Al)を含む前駆体の例としては、オクチル酸Al、硝酸Al、Alブトキサイド等が挙げられる。
その後、予備焼成として、所定時間、80℃以上250℃以下で加熱する。この予備焼成により、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層中の溶媒を十分に蒸発させるとともに、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。前述の観点をより確度高く実現する観点から言えば、予備焼成温度は、100℃以上250℃以下が好ましい。また、この温度範囲は、他の材料における予備焼成の好ましい温度範囲でもある。
尚、この予備焼成は、酸素雰囲気中又は大気中(以下、総称して、「酸素含有雰囲気」ともいう。)で行われる。本実施形態では、最終的に十分なゲート絶縁層(固体電解質層)13の厚み(例えば、120nm)を得るために、前述のスピンコーティング法によるゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層の形成と予備焼成を複数回繰り返す。
さらにその後、本焼成として、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層を、酸素含有雰囲気中(例えば酸素含有量が100体積%であるが、これに限定されない。以下の「酸素含有雰囲気」についても同じ。)、所定時間、250℃以上450℃以下の範囲で加熱する。これにより、図2(b)に示すように、バックゲート電極(導電性材料層)12上に、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかであるゲート絶縁層(固体電解質層)13を形成する。
(3)ソース電極及びドレイン電極の形成
その後、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされた不図示のレジスト膜を形成する。そして、ゲート絶縁層(固体電解質層)13及びレジスト膜上に、公知のスパッタリング法により、第1電極層及び第2電極層を形成する。本実施形態では、例えば、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上にITO層とPt層とをこの順に形成して、ITO層及びPt層で構成される第1電極層と、ITO層及びPt層で構成される第2電極層とを形成する。ITO層を形成する場合、例えば、5wt%酸化錫(SnO)を含有するITO層ターゲット材を用いることができる。その後、レジスト膜を除去して、図2(c)に示すように、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上に、第1ソース電極(ITO層)15xと第2ソース電極(Pt)15yとからなるソース電極15及び第1ドレイン電極(ITO層)16xと第2ドレイン電極(Pt)16yとからなるドレイン電極16を形成する。
(4)チャネル層の形成
更にその後、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上に、公知のスピンコーティング法により、少なくともインジウム(In)を溶質とするチャネル層用前駆体溶液を出発材とするチャネル層用前駆体層を形成する。本実施形態では、例えば、以下の(C1)〜(C6)のいずれかに示すチャネル層用前駆体溶液の出発材とするチャネル層用前駆体層を形成する。
(C1)インジウム(In)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
(C2)インジウム(In)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
(C3)インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
(C4)インジウム(In)を含む前駆体、ジルコニウム(Zr)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
(C5)インジウム(In)を含む前駆体及びガリウム(Ga)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
(C6)インジウム(In)を含む前駆体、亜鉛(Zn)を含む前駆体、及びガリウム(Ga)を含む前駆体を溶質とするチャネル層用前駆体溶液
加えて、上述のチャネル層用前駆体溶液は、さらに、アセチルアセトネート、尿素、及び酢酸アンモニウムの群から選択される少なくとも1種類の助焼成剤と、酸化剤とを含んでいる。なお、酸化剤の一例は、硝酸塩、過酸化物、又は過塩素酸塩である。
インジウム(In)を含む前駆体の例としては、硝酸インジウムが挙げられる。その他の例として、インジウムアセチルアセトナート、酢酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。
錫(Sn)を含む前駆体の例は、塩化錫である。その他の例として、硝酸錫、酢酸錫、又は各種の錫アルコキシド(例えば、錫イソプロポキシド、錫ブトキシド、錫エトキシド、錫メトキシエトキシド)が採用され得る。
また、亜鉛(Zn)を含む前駆体の例としては、塩化亜鉛が挙げられる。その他の例として、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、又は各種の亜鉛アルコキシド(例えば、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド)が採用され得る。
ジルコニウム(Zr)を含む前駆体の例としては、ジルコニウムブトキシドが挙げられる。その他の例として、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、又はその他の各種のジルコニウムアルコキシド(例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムメトキシエトキシド)が採用され得る。
ガリウム(Ga)を含む前駆体の例としては、ガリウムイソプロポキシドが挙げられる。その他の例として、ガリウムメトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムn-プロポキシド、ガリウムブトキシド、硝酸ガリウム、オクチル酸ガリウムが採用され得る。
その後、予備焼成として、チャネル層用前駆体層を所定時間、80℃以上250℃以下の範囲で加熱する。さらにその後、本焼成として、チャネル層用前駆体層を、酸素含有雰囲気中、所定時間、250℃以上400℃以下の範囲で加熱する。これにより、図2(d)に示すように、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上に、少なくともインジウム(In)を含む金属酸化物であるチャネル層14を形成する。
図3は、図1のトランジスタセンサ10を用いたDNAの検出方法を示す模式図である。
図3に示すように、先ず、必要に応じて、トランジスタセンサ10の露出部17(チャネル層14)を囲むように壁部22を載置する。これにより、少なくともチャネル層14の上部であって且つ壁部22の内側に、生体物質を含む液体Lqを保持可能な液体保持部18を形成することができる。壁部22は、例えば、チャネル層14と、ソース電極15の少なくとも一部と、ドレイン電極16の少なくとも一部とを囲むように配置される。
次に、チャネル層14上に、特定の生体物質(生体分子)を捕捉するためのプローブ分子を固定化する。プローブ分子は、特に制限されないが、例えば抗体や一本鎖DNAである。このとき、チャネル層14上のみならず、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上にもプローブ分子を固定化してもよい。
このように、トランジスタセンサ10は、チャネル層14上に、測定対象である生体物質(例えば、標的DNA)を間接的に捕捉する捕捉場を有する。この捕捉場は、生体物質を捕捉する捕捉表面とも称することができ、チャネル層14の表面に捕捉表面が形成されている。上記捕捉場あるいは上記捕捉表面には、上記生体物質を捕捉するためのプローブ分子(例えば、プローブDNA)が固定されている。
尚、上述したプローブ分子の固定化方法は一例であり、上記以外の他の方法でトランジスタセンサ10上にプローブ分子を固定してもよい。また、上記以外の他の方法でチャネル層14上に捕捉場を形成してもよい。
上記のように生体物質をプローブ分子に固定した後、チャネル層14上(あるいはチャネル層14及びゲート絶縁層(固体電解質層)13上)に、非特異的な結合を抑制するためのブロッキング処理を施すのが好ましい。
次いでチャネル層14(或いは、チャネル層14及びゲート絶縁層(固体電解質層)13)に接するように生体物質を含む液体を配置し、前記液体に含まれる生体物質のうち測定対象となる生体物質を上記プローブ分子に特異的に結合させる。生体物質は、特に制限されないが、例えばDNAやmRNAなどの核酸である。本実施形態では、例えばチャネル層14上に、生体物質を含む液体Lq(緩衝液と、核酸を含む血清との混合液等)を供給し、液体保持部18に液体Lqを保持する。
その後、プローブ分子に結合されなかった生体物質、測定対象でない生体物質、或いは非特異的に結合している生体物質等を洗浄液で洗浄するのが好ましい。洗浄後、チャネル層14上(あるいはチャネル層14及びゲート絶縁層(固体電解質層)13上)に、緩衝液などの測定液を供給する。これにより、チャネル層14と参照電極21とが測定液を介して電気的に接続可能となる。
次いで、参照電極21を液体Lq中に挿入して参照電極21とソース電極15とを電気的に接続し、第2電圧供給部24を用いて参照電極21−ソース電極15間に電圧VTGを印加する。その後、トランジスタセンサ10のソース電極15とドレイン電極16とを電気的に接続して、第1電圧供給部23を用いてソース電極15−ドレイン電極16間に電圧VDSを印加し、ソース電極15−ドレイン電極16間に流れる電流IDSを測定する。そして、参照電極21−ソース電極15間の電圧VTG(以下、トップゲート電圧ともいう)と、ソース電極15−ドレイン電極16間の電流IDS(以下、ドレイン電流ともいう)と、に基づいて生体物質を検出する。
このトランジスタセンサ10では、所謂トップゲート構造が形成されており、参照電極21からチャネル層14に電圧VTGが印加される。そして、チャネル層14上に捕捉されたプローブ分子に測定対象の生体物質が特異的に結合すると、電荷が変化することで電流IDSが変化し、電流IDSの変化に応じてVTG−IDS特性の変化が検出される。これにより、測定対象である特定の生体物質の量を検出することができる。
尚、本実施形態では、バックゲート電極(導電性材料層)12に電圧を印加していないが、これに限らず、不図示の第3電圧供給部を用いてバックゲート電極(導電性材料層)12に電圧VBGを印加してもよい。また、バックゲート電極(導電性材料層)12がフローティング電極で構成されてもよい。更に、バックゲート電極(導電性材料層)12自体が設けられなくてもよい。
図4は、図1のトランジスタセンサ10のVTG−IDS特性を示すグラフである。図4では、トランジスタセンサ10の一例として、表1に示す条件で本発明例1の薄膜トランジスタを作製し、上記の方法にて電圧VTG及び電流IDSの測定値から得られたVTG−IDS特性を示す。なお、本発明例1のトランジスタセンサの製造方法は、後述の実施例にて説明する。
Figure 2021099330
図4に示すように、本実施形態のトランジスタセンサ10では、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の形成時の加熱温度及びチャネル層14の形成時の加熱温度がそれぞれ300℃、400℃、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)と水素(H)の含有率が、それぞれ2.3atom%、10.8atom%であると、トップゲート電圧VTGが0.6V〜1.5Vの範囲で、標的DNAの濃度に対してVTG−IDS曲線が低電圧側にシフトし、且つほぼ直線的に応答していることが分かった。特に、標的DNAが1pg/mLである場合でも、ドレイン電流IDSがトップゲート電圧VTGの増加に伴って直線的に増大していた。このことから、トランジスタセンサ10では、標的DNAの低濃度領域においても液体中での検出の安定性が高く、標的DNAを検出可能な濃度範囲は、少なくとも1pg/mL以上の範囲であることが分かる。
図5は、従来のトランジスタセンサのVTG−IDS特性を示すグラフである。図5では、従来のトランジスタセンサの一例として、表1に示す条件でトランジスタ(TFTセンサ)を作製し、上記の方法にて電圧VTG及び電流IDSの測定値から得られたVTG−IDS特性を示す。なお、従来のTFTセンサの製造方法は、後述の実施例にて説明する。
図5に示すように、従来のトランジスタセンサでは、ゲート絶縁層(絶縁体層)の形成時の加熱温度及びチャネルの形成時の加熱温度がそれぞれ550℃、500℃であり、ゲート絶縁層(絶縁体層)中の炭素(C)と水素(H)の含有率は、それぞれ0.4atom%、1.8atom%であり、標的DNAの濃度に対してVTG−IDS曲線にばらつきが生じた。特に、標的DNAの濃度が1ng/mL、100pg/mL、10pg/mL及び1pg/mLであると、VTG−IDS曲線に乱れが生じた。このことから、従来のトランジスタセンサでは、標的DNAが1ng/mL以下での液体中での検出が不安定であり、標的DNAを検出可能な濃度範囲は、1ng/mLよりも大きい範囲であることが分かる。
すなわち、従来のトランジスタセンサ(従来のTFTセンサ)では標的DNAの検出限界が1ng/mL程度であるのに対し、本実施形態のトランジスタセンサ10(本発明例1)では標的DNAの検出限界が1pg/mLであり、トランジスタセンサ10の検出限界が、従来のトランジスタセンサの検出限界に対して1000倍程度以上高いことが分かる。
このように、本実施形態のトランジスタセンサ10では、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)と水素(H)の含有率のそれぞれが、特定の範囲内とすることによって非常に高感度な検出、測定を実現できる場合があると推察される。
また、本実施形態のトランジスタセンサ10では、ゲート絶縁層(固体電解質層)13を有することによって、標的DNA32に対する感度と、標的DNAの検出可能範囲を広くして検出の安定性がより向上する。ゲート絶縁層(固体電解質層)の作用を、図6を参照して説明する。
図6は、ゲート絶縁層(固体電解質層)とバックゲート電極(導電性材料層)の作用を説明するトランジスタセンサの断面図である。
従来のトランジスタセンサでは、チャネル層14の表面に固定されたプローブDNA31が標的DNA32を捉えた際、標的DNA32が持つ電荷が作る電界よって、チャネル層14を流れる電流、もしくはI−V特性などの電気特性が変化するものであった。この場合は、チャネル層14の表面に捕捉される標的DNA32しか変化に寄与できない。一方、本実施形態のトランジスタセンサ10では、チャネル層14の表面に固定されたプローブDNA31に捕捉された標的DNA32の電荷が作る電界(矢印D1)とともに、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の内部をイオンが動くことで、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の表面に固体されたプローブDNA31に捕捉された標的DNA32の電荷が作る電界(矢印D2)がチャネル層14に伝わり、電気特性の変化に寄与できる(アンテナ効果)。これにより、より多くの標的DNA32の電荷が作る電界がチャネル層14に集積することで、感度と安定性が向上する。また、本実施形態のトランジスタセンサ10ではゲート絶縁層(固体電解質層)13に接触する形で、電子伝導性を持つバックゲート電極(導電性材料層)12を有することもできる。これは、より早く、より遠く、より多くの捕捉された標的DNA32の電荷が作る電界をチャネルに伝える効果がある。
図7(a)〜図7(d)は、図1のトランジスタセンサ10を用いて標的DNAの検出を繰り返して行う検出方法の一例を示す模式図である。
プローブDNAの濃度が所定値となるように調整した液体をチャネル層14上に供給し、図3に示す方法にて、チャネル層14上にプローブDNA31を固定する(図7(a))。チャネル層14上にプローブDNA31を固定する際に、ゲート絶縁層(固体電解質層)13上にもプローブDNA31を固定してもよい。次いで、ハイブリダイゼーションにより標的DNA32を捕捉する(図7(b))。その後、図3に示す方法にて、VTG−IDS特性を測定する。
繰り返して測定を行う場合、その後、チャネル層14上にPBSなどの緩衝液を供給し、例えば90℃、5分間の加熱によって、標的DNA32を緩衝液に遊離させてもよい(図7(c))。更に純水でチャネル層14上を洗浄し、標的DNA32をチャネル層14から除去してもよい(図7(d))。この場合、プローブDNA31の濃度が異なるように調整した液体をチャネル層14上に供給することにより、上記と同様にしてVTG−IDS特性を測定することができる(図7(a)〜図7(b))。これらの工程を繰り返すことにより、プローブDNA31の濃度が異なる複数の液体を用い、各濃度に対するトップゲート電圧VTGとドレイン電流IDSとを測定することができる。
図8(a)及び図8(b)は、図1のトランジスタセンサ10におけるチャネル層14の幅Wを変えた際のトップゲート電圧VTGとドレイン電流IDSとの関係を示すグラフである。図8(a)では、一例として、ゲート絶縁層(固体電解質層)13がLZO、チャネル層14が酸化インジウム(In)で形成されたトランジスタセンサ10を用いている。また、チャネル層14の幅Wは200μm、長さLは50μm、標的DNAの濃度は、1pg/mL、10pg/mL、100pg/mL及び1000pg/mLである。図8(b)では、チャネル層14の幅Wを400μmに変えたこと以外は、図8(a)と同様の条件で測定している。
図8(a)に示すように、トップゲート電圧VTGが0以上の範囲で(0≦VTG)、VTG−IDS特性が、標的DNAの濃度の増大に伴って全体的に右下にシフトしていることが分かる。特に、標的DNAの濃度が1pg/mLと極微量である場合のVTG−IDS特性が、他の濃度でのVTG−IDS特性と同様の傾向を示しており、トップゲート電圧VTGの増大に伴ってドレイン電流IDSが増大している。
また、図8(b)に示すように、チャネル層14の幅Wが図8(a)のチャネル層14の幅Wに対して2倍である場合にも、トップゲート電圧VTGが0以上の範囲で(0≦VTG)、VTG−IDS特性が、標的DNAの濃度の増大に伴って全体的に右下にシフトしていることが分かる。
よって、図8(a)及び図8(b)の結果から、トランジスタセンサ10では、ハイブリダイゼーションの検出範囲は少なくとも1pg/mL〜1ng/mLであることが分かる。上記のように構成されるトランジスタセンサ10の検出限界が1pg/mLと非常に高いのは、例えば電子移動度とゲートキャパシタンスとの積が高いことに起因すると推察される。
図9(a)〜図9(d)は、チャネル層14上にプローブDNAを固定せずに標的DNAの検出を行う比較実験の一例を示す模式図である。
比較実験としては、例えば図2に示す方法と同様の方法にてトランジスタセンサ10を作製し(図9(a))、標的DNA32などの生体物質を含む液体を、ピペットなどでチャネル層14上(或いは、チャネル層14及びゲート絶縁層(固体電解質層)13上)に供給する(図9(b))。その後、必要に応じて、例えば30分間で生体物質を培養する。このとき、標的DNA32などの生体物質は、物理吸着によってチャネル層14の表面14aに吸着する(図9(c))。
上記のように構成されるトランジスタセンサ10は、チャネル層14上に、生体物質を直接的に捕捉する捕捉場を有していない。よって、その後に純水等でチャネル層14上を洗浄すると、標的DNA32などの生体物質がチャネル層14の表面14aから容易に脱離する(図9(d))。
図10は、図9の比較実験を用いて、標的DNAの濃度を変化させた際のトップゲート電圧VTGとドレイン電流IDSとの関係を示すグラフである。図10では、一例として、ゲート絶縁層(固体電解質層)13がLZO、チャネル層14が酸化インジウム(In)で形成されたトランジスタセンサ10を用いている。また、標的DNAの濃度は、1nM/mL及び1μM/mLである。
図10に示すように、標的DNAの濃度が1nM/mLの場合のVTG−IDS特性は、標的DNAを含まない液体を用いた場合のVTG−IDS特性と殆ど変わらない。また、標的DNAの濃度が1nM/mLの場合も同様、VTG−IDS特性の変化は殆ど見られない。これは、チャネル層14上の洗浄により、非特異的に結合している生体物質等がチャネル層14上から除去され、その結果、非特異的に結合している生体物質等は検出されず、特異的に結合する生体物質のみが検出されることが確認できる。
上述したように、本実施形態によれば、チャネル層14は無機半導体を含み、ゲート絶縁層(固体電解質層)13は無機固体電解質を含むので、増幅を必要とせず、高感度で検出限界値が低く、また、検出の高安定性を実現し、更には低コストで迅速且つ簡便に生体物質の検出を行うことが可能となる。ゲート絶縁層(固体電解質層)13が、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかで形成されており、チャネル層14が、少なくともインジウム(In)を含む金属酸化物で形成されており、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)の含有率が、0.5atom%以上15atom%以下であり、且つ、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下である場合は、特に、高感度で検出限界値が低いことから、従来よりも短時間で、標的DNAを1分子単位で検出することが可能となり、感染症、新規癌マーカー、個の遺伝子、エクソソーム、白血球中のmRNA、cell-freeRNA/DNA等の解析を行う際、短時間で高精度な検出を実現することができる。また、医療分野において、患者の診察中に当該患者に関する生体物質を検出することが可能となり、その検出結果に基づいて迅速且つ適切な診断、治療を施すことが可能となる。更に、上記の製造方法によれば、工業性や量産性に優れたトランジスタセンサ10を提供することができる。
また、本実施形態によれば、トランジスタセンサ10のチャネル層14上に標的DNAなどの生体物質を含む液体を供給し、生体物質を含む液体中に挿入される参照電極21とトランジスタセンサ10のソース電極15との間に電圧を印加すると共に、トランジスタセンサ10のソース電極15−ドレイン電極16間の電流を測定し、参照電極21−ソース電極15間の電圧と、ソース電極15−ドレイン電極16間の電流とに基づいて生体物質を検出するので、本検出方法により、従来と同様の簡単な操作、従来と同等のコストで、短時間、高感度で生体物質の検出を行うことが可能となる。
また、本実施形態のトランジスタセンサ10を複数配置したマルチ構造あるいはアレイ構造を有する生体物質検出装置を提供することができる。更に、本実施形態のトランジスタセンサ10と、公知のカーボンセンサなどの他の電気化学センサの双方を備える生体物質検出装置を提供することができる。これにより、短時間で高精度な検出を実現することができ、また、mRNA/DNAなどの生体物質とバイオマーカーなどの他の生体物質の双方を同時期あるいは同時に検出することができ、1回の検出作業で得られた複数の生体物質の検出結果を用いて、様々な観点からの分析が可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本実施形態のトランジスタセンサ10においては、参照電極21が、ソース電極15及びドレイン電極16から離れた構成とされているが、参照電極21の配置はこれに限定されるものではない。参照電極21は、ソース電極15及びドレイン電極16と同一の部材に配置されていてもよい。
参照電極21が、基板11にソース電極15及びドレイン電極16と同一の部材に配置されているトランジスタセンサ10の例を、図11に示す。図11(a)は、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の別の一例を示す断面図(図11(b)の線II−IIに沿う断面)であり、図11(b)は、平面図である。
図11(a)及び図11(b)に示すように、トランジスタセンサ10aは、基板11の上に備えられた3つのバックゲート電極(導電性材料層)12と、バックゲート電極(導電性材料層)12を被覆するゲート絶縁層(固体電解質層)13とを有する。ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上には、一つの参照電極21が備えられている。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上には、ソース電極15、ドレイン電極16及びチャネル層14を含むセンサ片が3つ備えられている。3つのセンサ片はそれぞれ、3つのバックゲート電極(導電性材料層)12の上方に配置されている。参照電極21から各センサ片までの距離を一定にするため、センサ片及びバックゲート電極(導電性材料層)12は参照電極21を中心とした同心円上に配置されている。参照電極21は参照電極引き出し線21aに接続している。各センサ片のソース電極15は、一つのソース電極引き出し線15aに接続している。各センサ片のドレイン電極16は、それぞれ別のドレイン電極引き出し線16aに接続している。
また、本実施形態のトランジスタセンサ10においては、基板11、バックゲート電極(導電性材料層)12、ゲート絶縁層(固体電解質層)13、チャネル層14、ソース電極15及びドレイン電極16をこの順に備え、露出部17がチャネル層14の少なくとも一部とされた構成であるが、この構成に限定されるものではない。図12〜図17に、本発明の第1実施形態に係るトランジスタセンサの構成の更に別の一例を示す。図12〜図14に示すトランジスタセンサ10b〜10dは、露出部17がチャネル層14の少なくとも一部またはチャネル層14とゲート絶縁層(固体電解質層)13の少なくとも一部とすることができる構成とされている。図15〜図17に示すトランジスタセンサ10e〜10gは、露出部17がゲート絶縁層(固体電解質層)13の少なくとも一部となる構成とされている。
図12に示すトランジスタセンサ10bにおいては、基板11の上にゲート絶縁層(固体電解質層)13が配置されている。ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上に、チャネル層14が配置され、ソース電極15及びドレイン電極16は、チャネル層14の上に形成されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、その端部がゲート絶縁層(固体電解質層)13の端部よりも内側となるサイズとされている。
図13に示すトランジスタセンサ10cにおいては、基板11の上に、ソース電極15及びドレイン電極16が配置されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13で覆われている。チャネル層14は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上に形成されている。チャネル層14は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13に設けられた貫通孔20を介してソース電極15及びドレイン電極16と接続している。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)13には、ソース電極15及びドレイン電極16を外部電源と接続するための貫通孔20が設けられている。
図14に示すトランジスタセンサ10dにおいては、基板11の上にゲート絶縁層(固体電解質層)13が配置されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上に配置されている。トランジスタセンサ10eは、図1に示すトランジスタセンサ10において、バックゲート電極(導電性材料層)12を備えない構成を示している。
図15に示すトランジスタセンサ10eにおいては、基板11の上にチャネル層14が配置され、ソース電極15及びドレイン電極16は、チャネル層14の上に形成されている。チャネル層14、ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13で覆われている。ゲート絶縁層(固体電解質層)13には、ソース電極15及びドレイン電極16を外部電源と接続するための貫通孔20 が設けられている。
図16に示すトランジスタセンサ10fにおいては、基板11の上に、チャネル層14が配置されている。チャネル層14は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13で覆われている。ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の上に形成されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13に設けられた貫通孔20を介してチャネル層14と接続している。
図17に示すトランジスタセンサ10gにおいては、基板11の上にソース電極15及びドレイン電極16が配置され、チャネル層14は、ソース電極15及びドレイン電極16の上に形成されている。チャネル層14、ソース電極15及びドレイン電極16は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13で覆われている。ゲート絶縁層(固体電解質層)13には、ソース電極15及びドレイン電極16を外部電源と接続するための貫通孔20 が設けられている。
また、本実施形態のトランジスタセンサ10においては、バックゲート電極(導電性材料層)12は、基板11とゲート絶縁層(固体電解質層)13との間に配置されているが、バックゲート電極(導電性材料層)12の配置はこれに限定されるものではない。ただし、バックゲート電極(導電性材料層)12は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の少なくとも一部に接触していることが好ましい。また、バックゲート電極(導電性材料層)12は、ゲート絶縁層(固体電解質層)13以外とは電気的に絶縁されていてもよい。バックゲート電極(導電性材料層)12は、例えば、ゲート絶縁層(固体電解質層)13の内部に配置されていてもよい。
さらに、本実施形態のトランジスタセンサ10は、基板11もしくはバックゲート電極(導電性材料層)12とチャネル層14との間に固体電解質のゲート絶縁層(固体電解質層)13が形成されたトランジスタセンサであって、ゲート絶縁層(固体電解質層)13は、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかで形成されており、チャネル層14は、少なくともインジウム(In)を含む金属酸化物で形成されており、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の炭素(C)の含有率が、0.5atom%以上15atom%以下であり、且つ、ゲート絶縁層(固体電解質層)13中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下である薄膜トランジスタセンサであってもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1〜2]
上述した製造方法を用い、表1に示す材料及び厚さで、図1に示すような形状の基板、ゲート電極、ゲート絶縁層(固体電解質層)、チャネル層、ソース電極及びドレイン電極を形成し、トランジスタセンサを作製した。ゲート絶縁層(固体電解質層)の材料をLZO、チャネル層の材料を酸化インジウム(In)とし、チャネル層の幅Wを300μm、長さLを50μmとした。また、ゲート絶縁層(固体電解質層)を形成する際の加熱温度を400℃、チャネル層を形成する際の加熱温度を300℃とした。
ゲート絶縁層(固体電解質層)中の炭素(C)と水素(H)の含有率を、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS分析法)、水素前方散乱分析法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS分析法)、及び核反応解析法(Nuclear Reaction Analysis:NRA分析法)(National Electrostatics Corporation 製 Pelletron 3SDH)によりそれぞれ測定したところ、炭素(C)の含水率は、2.0atom%、水素(H)の含有率は10.1atom%であった。
次に、上述の製造方法に従ってチャネル層を形成した後(図18(a))、エタノールと純水でチャネル層の表面を洗浄した。次に、過酸化水素、アンモニウム水及び水を、体積比(v/v)1:1:5で混合した溶液で、室温で10分間、表面処理を行い、その後純水ですすぎ、110℃で10分間、チャネル層の表面を乾燥させた(図18(b))。
次いで、エタノールに3−アミノプロピルトリエトキシシランを10体積%で混合したエタノール溶液で、室温で30分間、表面処理を行い、その後、純水で洗浄し、120℃で20分間、乾燥させた(図18(c))。そして、リン酸バッファにグルタルアルデヒドを2.5体積%で溶かした溶液で、室温で30分間、表面処理を行い、純水で洗浄する(図18(d))。その後、プローブDNAを含む液体をチャネル層の表面に供給し、化学的結合によりプローブDNAを固定した(図18(e))。これにより、チャネル層上に、一本鎖の標的DNAなどの生体物質を、プローブDNAを介して間接的に捕捉する捕捉場を形成した。プローブDNAには、5’側にアミノ基と6個の炭素からなるリンカーが付いている一本鎖のプローブDNA(6C−DNAともいう)を使用し、「20 bases; 6232 MW; Tm 57oC、5’-[AmC6]CC TA TC GC TG CT AC CG TG AA-3’」で示される配列を有していることを確認した。
その後、プローブDNAに対する相補的DNAを構成する標的DNA(cDNAともいう)を供給し、プローブDNAと標的DNAとのハイブリダイゼーションにより、チャネル層上に、標的DNAを捕捉した(図18(f))。標的DNAは、「20 bases; 6182 MW; Tm 57oC、5’-TT CA CG GT AG CA GC GA TA GG-3’」で示される配列を有することを確認した。
(実施例1)
リン酸バッファ(PBS)をチャネル層上に供給し、ソース電極−バックゲート電極(導電性材料層)間に印加する電圧VBGを1.0V、ソース電極−ドレイン電極間に印加する電圧VDSを0.5Vとし、VTG−IDS特性を測定した。結果を図19(a)に示す。
図19(a)の結果から、10回の測定を繰り返して行った場合でも、VTG−IDS特性に殆ど変化が見られず、トランジスタセンサがリン酸バッファ中で検出の高安定性を示すことが分かった。
(実施例2)
リン酸バッファに対する血清の濃度がそれぞれ1%、2%、3%、5%、7%である複数の混合液をチャネル層上に供給し、電圧VBGを1.0V、電圧VDSは0.2Vとし、VTG−IDS特性を測定した。結果を図19(b)に示す。
図19(b)の結果から、混合液中の血清の濃度を1%から7%の範囲で変化させても、VTG−IDS特性に殆ど変化が見られなかった。よって、トランジスタセンサが血清を含む混合液中でも検出の高安定性を示すことが分かった。
実施例において、トランジスタセンサが、リン酸バッファ中及び血清を含む混合液中の双方で検出の高安定性を示すのは、本トランジスタセンサが水溶液中で非常に安定であり、また、ゲート絶縁層(固体電解質層)及び/又はチャネル層での非特異的結合を効果的に抑制しているためと推察される。
[実施例3]
(本発明例1)
上記の表1に示す条件でトランジスタを作製した。具体的には、次のようにしてトランジスタを作製した。
シリコン基板上に、厚さ500nmの酸化シリコン(SiO)膜を形成したSiO/Si基板を用意した。このSiO/Si基板の酸化シリコン膜上に、厚さ10nmのチタン(Ti)層と厚さ100nmの白金(Pt)層とを、この順にスパッタリング法により成膜して、Pt/Tiの2層構造の導電性材料層からなるバックゲート電極(導電性材料層)を形成した。
得られたバックゲート電極(導電性材料層)の上に、ゾルゲル法によりゲート絶縁層(固体電解質層)を形成した。まず、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてLa0.5Zr0.5O溶液をスピンコーティング法により塗布して、ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層を形成した。次いで、そのゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層を酸素含有雰囲気で、250℃で予備焼成した後、400℃で本焼成して、厚さ120μmのLa0.5Zr0.5O層(固体電解質層)からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成した。なお、La0.5Zr0.5O溶液は、次のようにして調製した。
酢酸ランタン1.5水和物とジルコニウムブトキシドとを1:1(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をLa0.5Zr0.5O濃度に換算して0.2mol/kgとなるようにプロピオン酸に溶解させた。得られた混合溶液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、0.2mol/kgのLa0.5Zr0.5O溶液を得た。
得られたゲート絶縁層(固体電解質層)の上に、フォトリソグラフィー法によって、ソース電極とドレイン電極の形状にパターニングされたレジスト膜を形成した。次いで、そのレジスト膜を形成したゲート絶縁層(固体電解質層)の上に、厚さ50nmのITO層と、厚さ100nmの白金(Pt)層とを、この順にスパッタリング法により成膜した後、レジスト膜を除去した。Pt/ITOの2層構造のソース電極とドレイン電極とを形成した。ソース電極とドレイン電極のサイズは、それぞれ幅320μm×長さ200μmとし、ソース電極とドレイン電極の間隔は50μmとした。
次に、ゲート絶縁層(固体電解質層)の上に、フォトリソグラフィー法によって、チャネル層の形状にパターニングされたレジスト膜を形成した。次いで、そのレジスト膜を形成したゲート絶縁層(固体電解質層)の上に、チャネル層用前駆体溶液としてIn溶液をスピンコーティング法により塗布して、チャネル層用前駆体層を形成した。次いで、そのチャネル層用前駆体層を250℃で予備焼成した後、酸素含有雰囲気中、300℃で本焼成して、厚さ20μmのIn(無機半導体)からなるチャネル層を形成した。チャネル層のサイズは、幅300μm×長さ50μmとした。なお、In溶液は、次のようにして調製した。
硝酸インジウム3水和物を、In濃度に換算して0.2mol/kgとなるように2−メトキシエタノールに溶解させた。得られた溶液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.2mol/kgのIn溶液を得た。
(従来のTFTセンサ)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体層の本焼成の温度を550℃とし、チャネル層用前駆体層の本焼成温度を500としたこと以外は、本発明例1と同様にして、従来のTFTセンサを作製した。
(本発明例2)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてSm0.1Zr0.9O溶液を用いて、Sm0.1Zr0.9O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例2のトランジスタセンサを作製した。なお、Sm0.1Zr0.9O溶液は、次のようにして調製した。
酢酸サマリウム四水和物とジルコニウムブトキシドとを1:9(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をSm0.1Zr0.9O濃度に換算して0.2mol/kgとなるようにプロピオン酸に溶解させた。得られた混合液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.2mol/kgのSm0.1Zr0.9O溶液を得た。
(本発明例3)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてSm0.3Zr0.7O溶液を用いて、Sm0.3Zr0.7O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例3のトランジスタセンサを作製した。なお、Sm0.3Zr0.7O溶液は、酢酸サマリウム四水和物とジルコニウムブトキシドとを3:7(モル比)の割合で混合したこと以外は、本発明例3と同様にして調製した。
(本発明例4)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてDy0.1Zr0.9O溶液を用いて、Dy0.1Zr0.9O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例4のトランジスタセンサを作製した。なお、Sm0.1Zr0.9O溶液は、次のようにして調製した。
酢酸ジスプロシウム四水和物とジルコニウムブトキシドとを1:9(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をDy0.1Zr0.9O濃度に換算して0.2mol/kgとなるようにプロピオン酸に溶解させた。得られた混合液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.2mol/kgのDy0.1Zr0.9O溶液を得た。
(本発明例5)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてDy0.3Zr0.7O溶液を用いて、Dy0.3Zr0.7O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例5のトランジスタセンサを作製した。なお、Dy0.3Zr0.7O溶液は、酢酸ジスプロシウム四水和物とジルコニウムブトキシドとを3:7(モル比)の割合で混合したこと以外は、本発明例5と同様にして調製した。
(本発明例6)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてLa0.3Ta0.7O溶液を用いて、La0.3Ta0.7O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例6のトランジスタセンサを作製した。なお、La0.3Ta0.7O溶液は、次のようにして調製した。
酢酸ランタン1.5水和物とタンタルブトキシドとを3:7(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をLa0.3Ta0.7O濃度に換算して0.2mol/kgとなるようにプロピオン酸に溶解させた。得られた混合液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.2mol/kgのLa0.3Ta0.7O溶液を得た。
(本発明例7)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてLa0.3Ta0.7O溶液を用いて、La0.3Ta0.7O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと、チャネル層用前駆体溶液として、ZnO溶液を用いて、ZnO層からなるチャネル層を形成したこと、さらにチャネル層のサイズを幅50μm×長さ10μmとしたこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例7のトランジスタセンサを作製した。なお、La0.3Ta0.7O溶液は、酢酸ランタン1.5水和物とジルコニウムブトキシドとを3:7(モル比)の割合で混合したこと以外は、本発明例1と同様にして調製した。
また、ZnO溶液は、次のようにして調製した。
酢酸亜鉛2水和物と、アセチルアセトンと、酢酸アンモニウムとをそれぞれ1:1:1(モル比)となるように混合し、得られた混合物を、ZnO濃度に換算して0.4mol/kgとなるように2−メトキシエタノールに溶解させた。得られた溶液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.4mol/kgのZnO溶液を得た。
(本発明例8)
チャネル層のサイズを幅300μm×長さ50μmとしたこと以外は、本発明例7と同様にして、本発明例8のトランジスタセンサを作製した。
(本発明例9)
チャネル層用前駆体溶液として、In0.33Ga0.33Zn0.33O溶液を用いて、In0.33Ga0.33Zn0.33O層からなるチャネル層を形成したこと以外は、本発明例7と同様にして、本発明例10のトランジスタセンサを作製した。なお、In0.33Ga0.33Zn0.33O溶液は、次のようにして調製した。
硝酸インジウム3水和物と、硝酸ガリウムn水和物(n=7〜9)と、酢酸亜鉛2水和物とをそれぞれ1:1:1(モル比)となるように混合し、得られた混合物を、In0.33Ga0.33Zn0.33O濃度に換算して0.3mol/kgとなるように2−メトキシエタノールに溶解させた。得られた溶液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.4mol/kgのIn0.33Ga0.33Zn0.33O溶液を得た。
(本発明例10)
チャネル層のサイズを幅300μm×長さ50μmとしたこと以外は、本発明例9と同様にして、本発明例10のトランジスタセンサを作製した。
(比較例1)
バックゲート電極(導電性材料層)とゲート絶縁層(固体電解質層)を設けなかったこと、すなわち、SiO/Si基板の酸化シリコン膜上に、ソース電極と、ドレイン電極と、チャネル層を形成した以外は、本発明例1と同様にして、比較例1のトランジスタセンサを作製した。
(評価)
本発明例2〜10で作製したトランジスタセンサについて、ゲート絶縁層(固体電解質層)中の炭素(C)と水素(H)の含有率を上述の方法により測定した。本発明例2〜10及び比較例1で作製したトランジスタセンサについてはセンシング特性を下記の方法により測定した。その結果を、下記の表2に示す。
(センシング特性の測定方法)
チャネル層を中心として、フォトリソグラフィー法によりレジスト膜を形成して、
750μm×750μmの正方形状のDNAプローブ担持エリア(担持部)を形成した。DNAプローブ担持エリア(担持部)は、ゲート絶縁層(固体電解質層)とチャネル層とを含む。さらに、DNAプローブ担持エリア(担持部)の外周に、壁部を設けて、チャネル層とゲート絶縁層(固体電解質層)とを含む液体保持部を形成した。次に、DNAプローブ担持エリア(担持部)に測定対象である生体物質を捕捉するためのプローブDNAを上述の方法により担持させた。
試料として、標的DNA濃度が10ag/mL、1fg/mL、100fg/mLの標的DNA溶液及びブランクを用意した。液体保持部に各試料を供給してVTG−IDS特性を測定した。VTG−IDS特性の測定は、ソース電極−ドレイン電極間に印加する電圧VDSを0.2Vの条件で行った。この測定によって得られたVTG−IDS特性の一例を図20に示す。図20のグラフから、IDSが1μAに到達したときのVTGの値を読み取った。そして、試料の標的DNA濃度を横軸とし読み取ったVTG値を縦軸としてプロットしたグラフを、図21に示す。図21に示すプロットした点を結ぶ線の傾きをセンシング特性(単位:mV/桁)とした。センシング特性の値が大きいことは感度が高いことを示す。標的DNAに対する感度と、標的DNAの検出可能範囲を広くして検出の安定性とを向上させる観点から、センシング特性は10mV/decade以上であることが好ましく、20mV/decade以上であることが特に好ましい。
Figure 2021099330
表2に示す結果から、ゲート電極層が無機固体電解質を含む固体電解質層とされている本発明例2〜10のトランジスタセンサは、センシング特性が10mV/decade以上であり、標的DNAに対する感度と検出の安定性が向上することが分かる。
(本発明例11〜14)
ゲート絶縁層(固体電解質層)用前駆体溶液としてLa0.3Zr0.7O溶液を用いて、La0.3Zr0.7O層からなるゲート絶縁層(固体電解質層)を形成したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例11〜14のトランジスタセンサを作製した。なお、La0.3Zr0.7O溶液は、次のようにして調製した。
酢酸ランタン1.5水和物とジルコニウムブトキシドとを3:7(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をLa0.3Zr0.7O濃度に換算して0.2mol/kgとなるようにプロピオン酸に溶解させた。得られた混合液を110℃のオイルバスで30分間還流を行った後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、濃度が0.2mol/kgLa0.3Zr0.7O溶液を得た。
本発明例11〜14では、得られたトランジスタセンサについて、プローブDNAを担持させて、標的DNAを捕捉するためのDNAプローブ担持エリア(担持部)のサイズ、すなわち標的DNA溶液と接触する部分のサイズを変えて、センシング特性を測定した。DNAプローブ担持エリアのサイズは、フォトリソグラフィー法によりトランジスタセンサの表面にレジスト膜を形成することによって調整した。図22は、本発明例12で作製したトランジスタセンサの平面図である。図22に示すように、トランジスタセンサ10hは、チャネル層14と、チャネル層14に接続されているソース電極15及びドレイン電極16を備える。ソース電極15はソース電極引き出し線15aに接続し、ドレイン電極16はドレイン電極引き出し線16aに接続している。チャネル層14の周囲、ソース電極15とソース電極引き出し線15a及びドレイン電極16とドレイン電極引き出し線16aはレジスト膜19aで被覆されており、レジスト膜19aで被覆されてない部分がDNAプローブ担持エリア19b、すなわち標的DNA溶液と接触する部分である。チャネル層14のサイズは300μm×50μmであり、DNAプローブ担持エリア19bのサイズは500μm×500μmである。本発明例11では、DNAプローブ担持エリア19bのサイズを300μm×50μmとし、チャネル層14以外をレジスト膜19aで被覆した。本発明例13では、DNAプローブ担持エリア19bのサイズを750μm×750μmとした。本発明例14では、レジスト膜19aで被覆しなかった。
Figure 2021099330
表3に示す結果から、DNAプローブ担持エリア19b(担持部)の面積が大きくなるに従って、センシング特性が向上していることが分かる。これは、ゲート絶縁層(固体電解質層)のプローブDNAに捕捉された標的DNAの電荷が作る電界がチャネル層に伝わることによって電気特性の変化量が大きくなる効果(アンテナ効果)が高くなるためであると考えられる。
(本発明例14)
本実施例で使用した希土類元素(R)とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物(RZrO)が固体電解質膜であること、すなわちイオン伝導性を示すことは、以下の通り、交流インピーダンス測定を行って確認した。
測定用サンプルを次のようにして作製した。まず、本発明例1と同様にして、SiO/Si基板にスパッタリング法でTi/Pt電極膜(下部電極膜)を形成した。次いで、下部電極膜の上にゾルゲル法によりRZrO膜を120nmの厚さで形成した。このRZrO膜付きSiO/Si基板を20×20mmの正方形に切り出し、RZrO膜の上に、中央に5×5mmの正方形の孔部を有するステンレス製のコンタクトマスクを配置して、面積が5×5mmの正方形のITO/Pt電極膜(上部電極膜)をスパッタリング法で形成した。こうして、SiO/Si基板、下部電極膜、RZrO膜、上部電極膜が、この順で積層された測定用サンプルを作製した。
測定は、交流インピーダンス測定装置(バイオロジック社製、SP−300)を用いて行った。上記の測定用サンプルの下部電極膜及び上部電極膜と交流インピーダンス測定装置は、Alタブ電極テープを用いて接続し、下部電極膜及び上部電極膜とAlタブ電極テープは、Agペーストを用いて接着した。測定条件は、交流周波数範囲:0.1〜7MHz、交流電圧振幅:0.1mVとした。RZrO膜が希土類LaとZrを含むLaZrO膜(LaZrO、La:Zr=3:7)であるサンプルで測定した交流インピーダンスの実数部と虚数部について、コール・コールプロットを行ったグラフを図23に示す。図23に示すように、プロファイルに円弧が現れ、その円弧の解析から、伝導率は6.0×10−7S/cmとなった。他のRZrO膜についても同様にしてイオン伝導率の測定を行い、本発明例で使用したRZrO膜は、いずれも1.0×10−8S/cm以上の値となることを確認した。
10、10a、10b、10c、10e、10f、10g、10h トランジスタセンサ
11 基板
12 バックゲート電極(導電性材料層)
13 ゲート絶縁層(固体電解質層)
14 チャネル層
14a 表面
15 ソース電極
15a ソース電極引き出し線
16 ドレイン電極
16a ドレイン電極引き出し線
17 露出部
18 液体保持部
19a レジスト膜
19b DNAプローブ担持エリア
20 貫通孔
21 参照電極
21a 参照電極引き出し線
22 壁部
23 第1電圧供給部
24 第2電圧供給部
31 プローブDNA
32 標的DNA

Claims (9)

  1. 基板と、前記基板の一方の面の上に設けられたチャネル層と、前記基板と前記チャネル層の間又は前記チャネル層の前記基板側と反対側の面の上に設けられた固体電解質層と、を有し、
    前記チャネル層は無機半導体を含み、
    前記固体電解質層は無機固体電解質を含み、
    前記チャネル層及び前記固体電解質層のうちいずれか一方又はその双方の少なくとも一部が外部に露出している露出部を備える、トランジスタセンサ。
  2. 前記固体電解質層は、希土類元素とジルコニウム(Zr)とを含む金属酸化物、及び希土類元素とタンタル(Ta)とを含む金属酸化物のうちのいずれかで形成されており、前記チャネル層は、少なくともインジウム(In)を含む金属酸化物で形成されており、前記固体電解質層中の炭素(C)の含有率が、0.5atom%以上15atom%以下であり、且つ、前記固体電解質層中の水素(H)の含有率が2atom%以上20atom%以下である、請求項1に記載のトランジスタセンサ。
  3. 前記固体電解質層は、イオン伝導率が1×10−8S/cm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のトランジスタセンサ。
  4. 前記露出部の表面は、生体物質を直接的又は間接的に捕捉する捕捉場を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトランジスタセンサ。
  5. 前記捕捉場は、前記生体物質を捕捉するためのプローブ分子が固定されている、請求項4に記載のトランジスタセンサ。
  6. さらに、前記露出部の上部に、生体物質を含む液体を保持可能な保持部を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトランジスタセンサ。
  7. さらに、前記固体電解質層の少なくとも一部に接触している導電性材料層を備え、前記導電性材料層は前記固体電解質層以外とは電気的に絶縁されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のトランジスタセンサ。
  8. さらに、前記チャネル層に接続されているソース電極及びドレイン電極と、
    前記露出部に接するように生体物質を含む液体を配置したときに、前記生体物質を含む液体中に挿入される参照電極と、
    前記ソース電極との間の電圧と、前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流とに基づいて、前記生体物質を検出する検出部とを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のトランジスタセンサ。
  9. 請求項8に記載のトランジスタセンサを用いた生体物質検出方法であって、
    前記露出部に、生体物質を含む液体を供給する工程と、
    前記生体物質を含む液体中に前記参照電極を挿入する工程と、
    前記参照電極と前記トランジスタセンサの前記ソース電極との間に電圧を印加すると共に、前記トランジスタセンサの前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流を測定し、前記参照電極−前記ソース電極間の電圧と、前記ソース電極−前記ドレイン電極間の電流とに基づいて前記生体物質を検出する工程と、を含む、生体物質検出方法。
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