JP2021098357A - 積層体 - Google Patents

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規文 三羽
謙介 八尋
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謙介 八尋
純平 大橋
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純平 大橋
康之 石田
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康之 石田
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Abstract

【課題】伸縮性を持ちながら、後加工性に優れる積層体を提供する。【解決手段】樹脂層2の少なくとも一方の面に、表面層1を有する積層体であって、前記表面層1の25℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上であって、前記積層体のヘイズが10%以下であって、前記積層体の復元率が50%以上であることを特徴とする、積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、伸縮性と後加工適性を両立する積層体に関する。
近年、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューターおよび液晶テレビ等、ディスプレイ搭載機器や、様々なデバイスの普及が広く進んでおり、それらの構成部材として、合成樹脂等からなるフィルムやシート材料が多数用いられている。このような状況の中、近年ではフレキシブルデバイス・ウェアラブルデバイスの研究開発が活発に行われており、変形可能な機器や部材の開発が進められている。
このような状況のため、従来のディスプレイやデバイスに使用されてきた材料では適用困難な技術領域が新たに生まれると考えられるため、高い柔軟性や伸縮性を有する新しい材料へのニーズが高まっていくものと予想される。
一方、柔軟性や伸縮性を有する既存材料の例として、特許文献1には「第1のポリエチレンからなる層と、前記第1のポリエチレンからなる層に積層された熱可塑性ポリウレタン層と、前記熱可塑性ポリウレタン層に積層された第2のポリエチレンからなる層と、を少なくとも有する積層体であって、前記第1のポリエチレンの結晶化熱量が前記第2のポリエチレンの結晶化熱量よりも大きいことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン層を有する積層体。」が提案されている。
また、非特許文献1にはいわゆる「シリコーン材料」が挙げられており、シリコーン材料の一例としてシリコーンゴムを使ったシート材料が提案されている。
また、特許文献2には「スチレン成分が65〜95質量%含まれるスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−A)と、スチレン成分が5〜40質量%含まれるスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−B)を、(SBS−A)/(SBS−B)=75/25〜95/5の組成比で混合したSBS樹脂組成物と、前記SBS樹脂組成物100質量部に対して20〜45質量部の割合で配合されたフィラー(C)とを含み、比重が1.10〜1.32とされていることを特徴とする弾性フィルム。」が提案されている。
また、特許文献3には「ウレタン樹脂、有機溶剤、水およびフッ素系界面活性剤の混合物をポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはメチルペンテンポリマーフィルムのいずれか一種のフィルムであって、片面に粘着剤を有する基材に塗布、加温することにより得られる発泡体を前記基材上に有する発泡ウレタンシートであって、前記有機溶剤がトルエンとメチルエチルケトンの混合溶液であり、前記発泡体が連続通気構造の微細セルで構成されることを特徴とする発泡ウレタンシート。」が提案されている。
また、単に高い柔軟性を有する材料ということであれば、伸縮性を有する材料とはいえないものの、非特許文献2に記載される粘着材料を挙げることができる。
特開2013−91223号公報 特開2008−88293号公報 特開2014−231170号公報
シリコーンハンドブック 株式会社日刊工業新聞社 1990 初歩から学ぶ粘着剤−なぜ付くの?なぜ剥がれるの?− 丸善出版株式会社
しかしながら、特許文献1に提案されている材料について本発明者らが確認したところ、一定の伸縮性は確認できたものの、高温時の耐熱性が不足しており、ディスプレイやデバイスの部材として適用するために必要な、加熱を伴う後加工に不適であった。また、塗布を伴う後加工には不向きであるとともに、異素材への接着性が乏しい材料であった。
また、非特許文献1に提案されているシリコーンゴム材料については、一定の伸縮性やタック防止性も得られたが、異素材への接着性が乏しく、後加工に不向きであった。また、伸縮性も十分と言えるものではなかった。
次に、特許文献2に提案されている材料については、一定の柔軟性は確認できたものの、伸縮性や透明性が不十分であることが分かった。
さらに、特許文献3に提案されている材料については、一定の柔軟性や伸縮性は確認できたものの、透明性が不十分であった。また、発泡部分の存在により、塗布を伴う後加工工程においても不適であることが分かった。
また、非特許文献2に提案されている材料については、一定の柔軟性は確認できたものの、伸縮性を示す材料ではなかった。また、粘着材料であるため後加工に不向きであるとともに、タック防止性を示さなかった。
そこで、本発明の目的は伸縮性を持ちながら、後加工性に優れる積層体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
<1>
樹脂層の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、
前記表面層の25℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上であって、
前記積層体のヘイズが10%以下であって、
前記積層体の復元率が50%以上であることを特徴とする、積層体。
本発明によれば、伸縮性を持ちながら、後加工適性に優れる積層体を得ることができる。
本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の形成方法の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の形成方法の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の形成方法の一例を示す断面図である。
本発明の実施形態を説明する前に、従来技術の問題点、すなわち伸縮性と後加工適性の両立について、本発明者の視点で考察する。
[本発明と従来技術の比較]
従来技術において、伸縮性を示す材料は存在するが、伸縮性を有するために、タック防止性やリワーク性が不足していた。そのため、伸縮性の観点からは適した材料であっても、ディスプレイ・デバイス・センサー等のような用途において、フィルム材料は様々な後加工が行われた上で使用されることが多いため、上手く加工を行うことができず、実際に適用するのは困難であった。また、ウェアラブルセンサーや衛生材料のように、このような伸縮性を示す材料が直接人肌に触れる用途において、その伸縮性によりタック性を帯びるため、人肌に触れると不快感を生じることや、貼り付け位置を修正する際に上手く剥離をすることができない場合があり、リワーク性が不足することがあった。
また、伸縮性を示す材料は溶媒を吸収して膨潤を示すため、塗布を伴う後加工に不向きであった。一方、伸縮性を示しながら溶媒吸収が比較的少ない材料として、シリコーンゴム材料を例示することができるが、シリコーンゴム材料は塗布工程における塗液を弾きやすいため後加工が困難であり、また、何とか塗布できたとしても異素材との密着性が乏しいため、好ましいといえる材料ではなかった。
そこで、本発明者らはこのような伸縮性を示す材料について、その特性を活かしながら、前述のようなタック防止性やリワーク性を付与する方法を検討した。このような手法として、伸縮性の表面に特定の形状を付与する方法や、表面を粗面化する方法でも効果が得られた。しかし、表面の形状が平滑な状態ではなくなることや、表面形状に由来する光散乱により樹脂層が白化することから、一部の印刷加工や透明性が求められる用途において、不適となる可能性があった。そのため、本発明者らが前述以外の方法を探索したところ、伸縮層に一定以上の硬さを有する表面層を形成するのが有効であることを見出した。このとき、表面層が樹脂層と十分に密着性を有することで、樹脂層が本来持つ伸縮性を損なうことなく、樹脂層と表面層の積層体としても伸縮性を発現でき、また、良好な透明性を両立できることが分かった。さらに、本発明者らが上記表面層について詳細を検証したところ、表面層の硬さに好ましい範囲があることを見いだした。前述のように、伸縮性を示す材料が表面層を有することで後加工適性を向上することができるが、この効果は表面層に一定以上の硬さが必要であることが分かった。
具体的には、樹脂層の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、前記表面層の貯蔵弾性率が1,000MPa以上であって、前記積層体のヘイズが10%以下であることを特徴とする、積層体とすることが好ましい。また、積層体の復元率が50%以上であることが好ましい。
さらに、本発明者らが積層体の構成について検証したところ、樹脂層の硬さを一定以下にすることで、積層体としての伸縮性を向上することができることを見出した。
具体的には、樹脂層の25℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることや、樹脂層の5%歪み応力が300MPa以下であることが好ましい。
さらに、本発明者らは積層体を検討するに当たり、樹脂層を構成する樹脂の種類についても検証した。伸縮性を示す材料としては熱可塑性樹脂や架橋性樹脂が挙げられ、そのような熱可塑性樹脂の例として、熱可塑性ウレタン、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。しかし、熱可塑性を有するということは塑性変形を生じやすいことを意味する。すなわち、塑性変形は樹脂を構成する高分子構造に由来する性質であり、加熱により大きな塑性変形が生じることが熱可塑性の特徴であるが、加熱は塑性変形を促進するにすぎず、室温や低温環境においても塑性変形は生じうる。特に、外部から長時間歪みを与え続けるような状況や大きな変形を与える状況においては、たとえ加熱を伴わない状況においても塑性変形を生じてしまう。塑性変形が生じてしまうと、樹脂層が変形後、応力を開放しても元の形状に戻らないことを意味するため、復元性を損なう結果となる。したがって、様々な環境において高い復元性が求められる用途において、熱可塑性樹脂は不適な材料であると考えられる。
一方、伸縮性を示す材料のうち、架橋性樹脂であれば、上記の様なことはなく、様々な環境において高い復元性が求められる用途において、より好ましいことが分かった。伸縮性を示す材料として、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーンゴム材料等が挙げられ、本発明の積層体における樹脂層を構成する樹脂も架橋性樹脂である。なお、前述の様にシリコーンゴム材料は別の理由により好ましいと言える材料ではなかったが、様々な環境において高い復元性を示すという点に関しては、好ましい材料ということができる。
具体的には、樹脂層が架橋性樹脂で構成されていることが好ましい。
さらに、本発明者らが後加工性を検討するにあたり、本発明の積層体を作成するにあたり、離型フィルムの上に積層体を形成した後、離型フィルムを剥離することにより積層体を作成することが好ましいことが分かった。この方法により、離型フィルムは積層体のキャリアとして機能するため、後加工におけるハンドリング性が向上する。さらに、積層体の表面層が接する面が離型フィルムであると、任意のタイミングで離型フィルムを剥離することにより表面層を露出させることができるため、表面層を外的負荷から保護することができ、また、後加工のタイミングに合わせて表面層を露出させることができる。
具体的には、前記積層体に、さらに支持基材を有する積層体であって、表面層の樹脂層とは反対の面に支持基材が接しており、樹脂層と表面層からなる積層体を支持基材から剥離可能であることが好ましい。
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
樹脂層の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、
前記表面層の25℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上であって、
前記積層体のヘイズが10%以下であって、
前記積層体の復元率が50%以上であることを特徴とする、積層体。
貯蔵弾性率、ヘイズ、復元率の測定方法は後述する。
本発明の積層体は、表面層の貯蔵弾性率が1,000MPa以上であることが好ましいが、より好ましくは1,500MPa以上である。
表面層の25℃における貯蔵弾性率について、貯蔵弾性率5%歪み応力が1,000MPa以上であると、良好なタック防止性を示し、後加工適性が向上する。5%歪み応力が高いほどタック防止性は向上するが、樹脂材料における上限値は10,000MPa程度と考えられる。一方で、貯蔵弾性率が1,000MPaに満たない場合、タック防止性が不足し、後加工適性が十分でない場合がある。
透明性の観点から、本発明の積層体のヘイズは10%以下であることが好ましいが、より好ましくは5%以下である。
積層体のヘイズにについて、ヘイズが10%以下であると、積層体が良好な透明性を示す。ヘイズが低いほど透明性は向上するが、ヘイズの下限は0%である。一方で、ヘイズが10%超過の場合、透明性が要求される用途で不適となる場合がある。
伸縮性の観点から、積層体の復元率が50%以上であることが好ましいが、より好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。
積層体の復元率について、復元率が50%以上であると、積層体に負荷をかけて変形した場合でも、負荷を除くと元の形状に戻る効果が大きくなるため好ましい。復元率は高いほど上記の効果は大きくなるが、復元率の上限は100%である。
さらに、伸縮性の観点から、前記積層体は以下の条件2を満たすことが好ましい。
条件1: 樹脂層の25℃における貯蔵弾性率が100MPa以下。
伸縮性の観点から、本発明の積層体において、樹脂層の25℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは50MPa以下である。
樹脂層の25℃における貯蔵弾性率について、貯蔵弾性率が100MPa以下であると、積層体が良好な伸縮性を示す。貯蔵弾性率の下限は特に限定されず、低いほど伸縮性は向上するが、極端に低いと積層体の剛性が不足する場合があるため下限値は0.01MPa程度と考えられる。一方で、貯蔵弾性率が100MPaを超える場合、用途により積層体の伸縮性が不足する場合がある。
樹脂層の貯蔵弾性率を100MPa以下とするためには、例えば、後述する材料を使用することで可能となる。
さらに、伸縮性の観点から、前記積層体は以下の条件2を満たすことが好ましい。
条件2: 樹脂層の5%歪み応力が100MPa以下。
伸縮性の観点から、本発明の積層体において、樹脂層の5%歪み応力が100MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは50MPa以下である。
樹脂層の5%歪み応力について、5%歪み応力が100MPa以下であると、積層体が良好な伸縮性を示す。5%歪み応力の下限は特に限定されず、低いほど伸縮性は向上するが、極端に低いと積層体の剛性が不足する場合があるため下限値は0.01MPa程度と考えられる。一方で、5%歪み応力が100MPaを超える場合、用途により積層体の伸縮性が不足する場合がある。
樹脂層の5%歪み応力を100MPa以下とするためには、例えば、後述する材料を使用することで可能となる。
さらに、復元性の観点から、前記積層体は以下の条件3を満たすことが好ましい。
条件3: 樹脂層が架橋性樹脂で構成されている。
本発明の樹脂層において、架橋性樹脂で構成されていることが好ましい。樹脂層が架橋性樹脂で構成されていると、前述の効果により、様々な環境において高い復元性を示すことができる。
さらに、後加工性の観点から、前記積層体に、さらに支持基材を有する積層体であって、
表面層の樹脂層とは反対の面に支持基材が接しており、
樹脂層と表面層からなる積層体を支持基材から剥離可能であることが好ましい。
本発明の積層体において、前記積層構成であると、樹脂層と表面層の密着性や積層体のヘイズ抑制や品位向上の観点から好ましいく、また、表面層に後加工を行う際、任意のタイミングで離型フィルムを剥離することにより表面層を露出させることができるため好ましい。
さらに、前記積層体の製造方法において、
支持基材の一方の面に表面層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程を有し、
さらに、表面層の支持基材とは反対の面に、樹脂層を構成する成分を含む塗料組成物を
塗布する工程を有することを特徴とする、積層体の製造方法であることが好ましい。
[離型フィルム]
本発明に用いられる離型フィルムは、それ自身が離型性を有する樹脂で構成される基材フィルムを離型フィルムとして用いても良いし、基材フィルムの表面に離型層を形成することで離型性を付与した基材フィルムを離型フィルムとして用いても良い。離型層を形成するための材料は、市販されている汎用の離型性を有する樹脂や、汎用の離型塗料を用いることができる。
本発明の離型フィルムに用いられる基材フィルムを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、表面に凹凸構造を形成するための成型性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。特に、それ自身が離型性を有する樹脂として、ポリオレフィン樹脂であることが特に好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
また、基材フィルムには、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
基材フィルムの表面には、前記積層体を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
また、基材フィルムの表面には、本発明の積層体とは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層、離型層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、本発明の積層体においては、基材フィルムと積層体の剥離力を低下させるため、特に離型層を設けることが好ましい。
前述の離型層が設けられたポリエステル樹脂により構成されたフィルムの例として、東レフィルム加工株式会社製の“セラピール”(登録商標)、ユニチカ株式会社製の“ユニピール”(登録商標)、パナック株式会社製の“パナピール”(登録商標)、東洋紡株式会社製の“東洋紡エステル”(登録商標)、帝人株式会社製の“ピューレックス”(登録商標)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[積層体]
本発明の積層体は、前述の物性を有していれば平面状態、または成形された後の3次元形状のいずれであってもよい。前記積層体の層数は2層以上であれば特に限定はなく、2層から形成されていてもよいし、3層以上の層から形成されていてもよい。
前記積層体の厚みは特に限定はないが、その下限値として1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、その上限値として、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。前記積層体の厚みは、前述した他の機能に応じてその厚みを選択することができる。
前記積層体は、本発明の課題としている伸縮性やタックの他に、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、易接着等の他の機能を有してもよい。
また、前記積層体の上に、さらに1つ以上の層を形成してもよく、例えば前述の機能を有する機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、本発明の積層体は、離型フィルムの表面に、樹脂層および表面層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程、必要に応じて乾燥する工程、および、前記成分を硬化する工程を経て得ることができる。ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の離型フィルム上に塗布し、溶媒を乾燥工程で揮発、除去、硬化することにより樹脂層および表面層を形成可能な材料を指す。
ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
[塗料組成物A]
また、本発明の積層体において、以下の塗料組成物Aを用い、離型フィルム上に塗布することにより樹脂層を形成することが好ましい。
塗料組成物Aは、本発明の樹脂層を構成するのに適した成分を含む液体であり、溶質として次の(1)から(2)のセグメントを含む樹脂もしくは前駆体を含むことが好ましい。また、(3)のセグメントを含む樹脂もしくは前駆体を含んでいてもよい。
(1)ポリカプロラクトンセグメント、ポリカーボネートセグメントおよびポリアルキレングリコールセグメントからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むセグメント
(2)ウレタン結合
(3)ポリシロキサンセグメントまたはポリジメチルシロキサンセグメントの少なくとも一つ。
この樹脂層を構成する成分が含む各セグメントについては、TOF−SIMS、FT−IR等により確認することできる。
また、塗料組成物中に含まれる前記(1)、(2)、(3)の質量部は、(1)/(2)/(3)= 95/5/1 〜 50/50/15 が好ましく、(1)/(2)/(3)= 90/10/1 〜 60/40/10 がより好ましい。以下、(1)、(2)、(3)の詳細について説明する。
前記(1)ポリカプロラクトンセグメント、ポリカーボネートセグメントおよびポリアルキレングリコールセグメントの詳細については後述するが、前記樹脂層を構成する成分がこれらのセグメントを有することで、樹脂層の伸縮性や柔軟性を向上させることができる。また、積層体の耐久性の観点から、樹脂層を構成する成分がポリアルキレングリコールセグメントを有することが特に好ましい。
前記ウレタン結合の詳細については後述するが、前記樹脂層の表面におけるA層を構成する樹脂がこの結合を有することで、積層体の強靭性や伸縮性を向上させることができる。
前記ポリシロキサンセグメントおよびポリジメチルシロキサンセグメントの詳細については後述するが、樹脂層を構成する成分がこれらを含むことにより最表面に低表面エネルギーを示す分子を高密度に存在させることができ、積層体の耐溶剤性を向上させることができる。
他にも、塗料組成物の溶質として好ましい樹脂の一例として、ウレタンアクリレートが挙げられる。ウレタンアクリレートは様々な汎用品が入手でき、また、目的に応じて様々な物性を持つ材料を合成することも可能となる。
本発明において、より好ましい形態の一つとして、樹脂層のガラス転移温度を下げる方法が挙げられるが、その手段の一つとしてウレタンアクリレートの種類を選択することができる。また、同様により好ましい形態の一つとして、一定の数平均分子量を有するウレタンアクリレートを硬化させてなる成分を樹脂層に用いることが挙げられるが、その手段の一つとしてウレタンアクリレートの種類を選択することができる。
ウレタンアクリレートの市販されている例としては、亜細亜工業株式会社製のウレタンアクリレート、共栄社化学株式会社製のウレタンアクリレート、新仲村化学工業株式会社製のウレタンアクリレート、大成ファインケミカル株式会社製のウレタンアクリレート、第一工業製薬製の“ニューフロンティア”(登録商標)、ダイセル・オルネクス株式会社製の“EBECRYL”(登録商標)、日本合成株式会社製の“紫光”(登録商標)、DIC株式会社製のウレタンアクリレートなどを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
また、塗料組成物Aは、(4)のポリエーテルセグメントを含む樹脂もしくは前駆体を含むことが好ましい。(1)から(3)のセグメントを含む樹脂もしくは前駆体を含め、これらは1種類のポリマー、またはオリゴマー内に全て存在していてもよいし、それぞれを含む別のポリマー、オリゴマーの混合物であってもよい。
本発明の積層体では、樹脂層の柔軟性や伸縮性など機械的な性質が重要である。そのため、樹脂層を形成するポリマーの構造を制御できる方法が好ましい。また、本発明の積層体は、樹脂層に対して、高いレベルでの外観品位や厚みの平滑性が求められるため、後述する積層体の製造方法において、塗料組成物Aの粘度には好ましい範囲がある。さらに、本発明の積層体は、後工程にて加工されるため、できるだけ溶媒等への耐久性がある方が好ましい。
そのため、塗料組成物Aは、化学式3のポリエーテルセグメントと化学式1の(メタ)アクリルセグメントと化学式2のウレタンセグメントを含む前駆体を分子量が制御できる状況で重合したオリゴマーを作り、次いで、これに、各種添加剤を添加して、塗料組成物Aを作成し、これを後述する積層体の製造方法において、支持基材上に塗布、架橋させることで、樹脂層にすることが好ましい。
Figure 2021098357
Figure 2021098357
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具体的には、ポリエーテルポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、アクリル変性ポリエーテルポリオールとイソシアネート基を含有する化合物などをあらかじめ重合して、ウレタンアクリレートオリゴマーを作り、これに適宜添加剤を加えて、積層体形成用塗料組成物とすることが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの、ポリアルキレングリコールやその各種誘導体が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が例示される。
[ポリカプロラクトンセグメント、ポリカーボネートセグメント、ポリアルキレングリコールセグメント]
まず、ポリカプロラクトンセグメントとは化学式4で示されるセグメントを指す。ポリカプロラクトンには、カプロラクトンの繰り返し単位が1(モノマー)、2(ダイマー)、3(トライマー)のようなものや、カプロラクトンの繰り返し単位が35までのオリゴマーも含む。
Figure 2021098357
ここで、nは1〜35の整数である。
ポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂は、少なくとも1以上の水酸基(ヒドロキシル基)を有することが好ましい。水酸基はポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂の末端にあることが好ましい。
ポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂としては、特に2〜3官能の水酸基を有するポリカプロラクトンが好ましい。具体的には、化学式5で示されるポリカプロラクトンジオール、
Figure 2021098357
ここで、m+nは4〜35の整数で、m、nはそれぞれ1〜34の整数、RはC、COCまたはC(CH(CH
または化学式6で示されるポリカプロラクトントリオール、
Figure 2021098357
ここで、l+m+nは3〜30の整数で、l、m、nはそれぞれ1〜28の整数、RはCHCHCH、CHC(CHまたはCHCHC(CH
などのポリカプロラクトンポリオールや化学式7で示されるポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
Figure 2021098357
ここで、nは1〜25の整数で、RはHまたはCHなどの活性エネルギー線重合性カプロラクトンを用いることができる。他の活性エネルギー線重合性カプロラクトンの例として、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらに本発明において、ポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂は、ポリカプロラクトンセグメント以外に、他のセグメントやモノマーが含有(あるいは、共重合)されていてもよい。たとえば、後述するポリジメチルシロキサンセグメントやポリシロキサンセグメント、イソシアネート化合物を含有する化合物が含有(あるいは、共重合)されていてもよい。
また、本発明において、ポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂中の、ポリカプロラクトンセグメントの重量平均分子量は500〜2,500であることが好ましく、より好ましい重量平均分子量は1,000〜1,500である。ポリカプロラクトンセグメントの重量平均分子量が500〜2,500であると、伸縮性や柔軟性がより向上するため好ましい。
次にポリアルキレングリコールセグメントとは、化学式8で示されるセグメントを指す。ポリアルキレングリコールには、アルキレングリコールの繰り返し単位が2(ダイマー)、3(トライマー)のようなものや、アルキレングリコールの繰り返し単位が11までのオリゴマーも含む。
Figure 2021098357
nは2〜4の整数、mは2〜11の整数である。
ポリアルキレングリコールセグメントを含有する樹脂は、少なくとも1以上の水酸基(ヒドロキシル基)を有することが好ましい。水酸基はポリアルキレングリコールセグメントを含有する樹脂の末端にあることが好ましい。
ポリアルキレングリコールセグメントを含有する樹脂としては、弾性を付与するために、末端にアクリレート基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートであることが好ましい。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのアクリレート官能基(またはメタクリレート官能基)数は限定されないが、硬化物の伸縮性や柔軟性の点から単官能であることが最も好ましい。
積層体を形成するために用いる塗料組成物中に含有されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。それぞれ次の化学式9、化学式10、化学式11に代表される構造である。
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート:
Figure 2021098357
ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート:
Figure 2021098357
ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート:
Figure 2021098357
化学式11、化学式12、化学式13で、Rは水素(H)またはメチル基(−CH)、mは2〜11となる整数である。
本発明では、好ましくは、後述するイソシアネート基を含有する化合物と(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの水酸基を反応させてウレタン(メタ)アクリレートとして積層体に用いることにより、積層体を構成する成分が、(2)ウレタン結合および(3)(ポリ)アルキレングリコールセグメントを有することができ、結果として積層体の強靱性を向上させると共に伸縮性や柔軟性を向上することができて好ましい。
イソシアネート基を含有する化合物とポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとのウレタン化反応の際に同時に配合するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が例示される。
次に、ポリカーボネートセグメントとは化学式12で示されるセグメントを指す。ポリカーボネートには、カーボネートの繰り返し単位が2(ダイマー)、3(トライマー)のようなものや、カーボネートの繰り返し単位が16までのオリゴマーも含む。
Figure 2021098357
nは2〜16の整数である。
は炭素数1〜8までのアルキレン基またはシクロアルキレン基を指す。
ポリカーボネートセグメントを含有する樹脂は、少なくとも1以上の水酸基(ヒドロキシル基)を有することが好ましい。水酸基は、ポリカーボネートセグメントを含有する樹脂の末端にあることが好ましい。
ポリカーボネートセグメントを含有する樹脂としては、特に2官能の水酸基を有するポリカーボネートジオールが好ましい。具体的には化学式13で示される。
ポリカーボネートジオール:
Figure 2021098357
nは2〜16の整数である。Rは炭素数1〜8までのアルキレン基またはシクロアルキレン基を指す。
ポリカーボネートジオールは、カーボネート単位の繰り返し数がいくつであってもよいが、カーボネート単位の繰り返し数が大きすぎるとウレタン(メタ)アクリレートの硬化物の強度が低下するため、繰り返し数は10以下であることが好ましい。なお、ポリカーボネートジオールは、カーボネート単位の繰り返し数が異なる2種以上のポリカーボネートジオールの混合物であってもよい。
ポリカーボネートジオールは、数平均分子量が500〜10,000のものが好ましく、1,000〜5,000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な伸縮性が得難くなる場合があり、また数平均分子量が10,000を超えると耐熱性や耐溶剤性が低下する場合があるので前記程度のものが好適である。
また、本発明で用いられるポリカーボネートジオールとしては、UH−CARB、UD−CARB、UC−CARB(宇部興産株式会社)、PLACCEL CD−PL、PLACCEL CD−H(ダイセル化学工業株式会社)、クラレポリオールCシリーズ(株式会社クラレ)、デュラノールシリーズ(旭化成ケミカルズ株式会社)など製品を好適に例示することができる。これらのポリカーボネートジオールは、単独で、または二種類以上を組合せて用いることもできる。
さらに本発明において、ポリカプロラクトンセグメントを含有する樹脂は、ポリカプロラクトンセグメント以外に、他のセグメントやモノマーが含有(あるいは、共重合)されていてもよい。たとえば、後述するポリジメチルシロキサンセグメントやポリシロキサンセグメント、イソシアネート化合物を含有する化合物が含有(あるいは、共重合)されていてもよい。
本発明では、好ましくは、後述するイソシアネート基を含有する化合物とポリカーボネートジオールの水酸基を反応させてウレタン(メタ)アクリレートとして積層体に用いることにより、積層体を構成する成分が、前述の(2)ウレタン結合および(1)ポリカーボネートジオールセグメントを有することができ、結果として積層体の強靱性を向上させると共に伸縮性や柔軟性を向上させることができる。
[ウレタン結合、イソシアネート基を含有する化合物]
本発明において、「ウレタン結合」とは前述の化学式2で示される結合を指す。
前記積層体を構成する成分がこの結合を有することで、積層体全体の強靭性や伸縮性を向上させることができる。
塗料組成物が市販のウレタン変性樹脂を含むことにより、積層体を構成する成分がウレタン結合を有することが可能となる。また、積層体を形成する際に前駆体としてイソシアネート基を含有する化合物と水酸基を含有する化合物とを含む塗料組成物を塗布、乾燥、硬化することにより、ウレタン結合を生成させて、積層体にウレタン結合を含有させることもできる。
本発明ではイソシアネート基と水酸基とを反応させてウレタン結合を生成させることにより、積層体を構成する成分にウレタン結合を導入することが好ましい。イソシアネート基と水酸基とを反応させてウレタン結合を生成させることにより、積層体の強靱性を向上させると共に伸縮性を向上させることができる。
また、前述したポリカプロラクトンセグメント、ポリカーボネートセグメント、ポリアルキレングリコールセグメントを含有する樹脂や、水酸基を有する場合は、熱などによってこれら樹脂と前駆体としてイソシアネート基を含有する化合物との間にウレタン結合を生成させることも可能である。
イソシアネート基を含有する化合物と、後述する水酸基を有するポリシロキサンセグメントを含有する樹脂や、水酸基を有するポリジメチルシロキサンセグメントを含有する成分を用いて積層体を形成すると、積層体の強靱性および伸縮性に加えて、表面のすべり性を高めることができ、また、耐溶剤性の観点からもより好ましい。
本発明において、イソシアネート基を含有する化合物とは、イソシアネート基を含有する樹脂や、イソシアネート基を含有するモノマーやオリゴマーを指す。イソシアネート基を含有する化合物は、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などの(ポリ)イソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。
これらのイソシアネート基を含有する化合物の中でも、脂環族や芳香族のイソシアネートに比べて脂肪族のイソシアネートが、伸縮性や柔軟性が高く好ましい。イソシアネート基を含有する化合物は、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートである。また、イソシアネート基を含有する化合物は、イソシアヌレート環を有するイソシアネートが耐熱性の点で特に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が最も好ましい。イソシアヌレート環を有するイソシアネートは、伸縮性と耐熱特性を併せ持つ積層体を形成する。
[ポリシロキサンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメント]
本発明の積層体において、積層体を構成する成分が、ポリシロキサンセグメントおよびポリジメチルシロキサンセグメントからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むセグメントを有していてもよい。
さらに、ポリシロキサンセグメントおよびポリジメチルシロキサンセグメントからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むセグメントを含む樹脂、もしくは前駆体を含む塗料組成物を、積層体を形成する塗料組成物の一つに用いることにより、積層体を構成する成分がこれらを有することができる。
以下、ポリシロキサンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメントについて説明する。
ポリシロキサンセグメントについて述べる。本発明においてポリシロキサンセグメントとは、後述の化学式14で示されるセグメントを指す。
ここで、ポリシロキサンには、シロキサンの繰り返し単位が100程度である低分子量のもの(いわゆるオリゴマー)およびシロキサンの繰り返し単位が100を超える高分子量のもの(いわゆるポリマー)の両方が含まれる。
Figure 2021098357
、Rは、水酸基または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、式中においてそれぞれを少なくとも1つ以上有するものであり、nは100〜300の整数である。
前記ポリシロキサンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメントの詳細については後述するが、前記積層体を構成する成分がこれらのセグメントを有することで耐熱性、耐候性の向上や、積層体の潤滑性による滑り性を向上することができる。より好ましくは後述する化学式20で表されるポリジメチルシロキサンセグメントを含むことが潤滑性の面から好ましい。
本発明では、加水分解性シリル基を含有するシラン化合物の部分加水分解物、オルガノシリカゾルまたは該オルガノシリカゾルにラジカル重合体を有する加水分解性シラン化合物を付加させた塗料組成物を、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂として用いることができる。
ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂は、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシランなどの加水分解性シリル基を有するシラン化合物の完全もしくは部分加水分解物や有機溶媒に分散させたオルガノシリカゾル、オルガノシリカゾルの表面に加水分解性シリル基の加水分解シラン化合物を付加させたものなどを例示することができる。
また、本発明において、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂は、ポリシロキサンセグメント以外に、他のセグメント等が含有(共重合)されていてもよい。たとえば、ポリカプロラクトンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメントを有するモノマー成分が含有(共重合)されていてもよい。
ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂が水酸基を有する共重合体である場合、水酸基を有するポリシロキサンセグメントを含有する樹脂(共重合体)とイソシアネート基を含有する化合物とを含む塗料組成物を用いて積層体を形成すると、効率的に、ポリシロキサンセグメントとウレタン結合とを有する積層体とすることができる。
次にポリジメチルシロキサンセグメントについて述べる。本発明において、ポリジメチルシロキサンセグメントとは、化学式15で示されるセグメントを指す。ポリジメチルシロキサンには、ジメチルシロキサンの繰り返し単位が10〜100である低分子量のもの(いわゆるオリゴマー)およびジメチルシロキサンの繰り返し単位が100を超える高分子量のもの(いわゆるポリマー)の両方が含まれる。
Figure 2021098357
mは10〜300の整数である。
積層体を構成する成分が、ポリジメチルシロキサンセグメントを有すると、ポリジメチルシロキサンセグメントが積層体の表面に配位することとなる。ポリジメチルシロキサンセグメントが積層体の表面に配位することにより、積層体表面の潤滑性が向上し、摩擦抵抗を低減することができる。また、耐溶剤性の観点からも好ましい。
本発明においては、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂としては、ポリジメチルシロキサンセグメントにビニルモノマーが共重合された共重合体を用いることが好ましい。
積層体の強靱性を向上させる目的で、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂は、イソシアネート基と反応する水酸基を有するモノマー等が共重合されていることが好ましい。
ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂が水酸基を有する共重合体である場合、水酸基を有するポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂(共重合体)とイソシアネート基を含有する化合物とを含む塗料組成物を用いて積層体を形成すると、効率的にポリジメチルシロキサンセグメントとウレタン結合とを有する積層体とすることができる。
ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂が、ビニルモノマーとの共重合体の場合は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂がビニルモノマーとの共重合体の場合、これを、ポリジメチルシロキサン系共重合体という。ポリジメチルシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などにより製造することができるが、生産性を考慮すると高分子開始剤法、高分子連鎖移動法を用いるのが好ましい。
高分子開始剤法を用いる場合には化学式16で示される高分子アゾ系ラジカル重合開始剤を用いて他のビニルモノマーと共重合させることができる。またペルオキシモノマーと不飽和基を有するポリジメチルシロキサンとを低温で共重合させて過酸化物基を側鎖に導入したプレポリマーを合成し、該プレポリマーをビニルモノマーと共重合させる二段階の重合を行うこともできる。
Figure 2021098357
mは10〜300の整数、nは1〜50の整数である。
高分子連鎖移動法を用いる場合は、例えば、化学式17に示すシリコーンオイルに、HS−CHCOOHやHS−CHCHCOOH等を付加してSH基を有する化合物とした後、SH基の連鎖移動を利用して該シリコーン化合物とビニルモノマーとを共重合させることでブロック共重合体を合成することができる。
Figure 2021098357
mは10〜300の整数である。
ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を合成するには、例えば、化学式18に示す化合物、すなわちポリジメチルシロキサンのメタクリルエステルなどとビニルモノマーとを共重合させることにより容易にグラフト共重合体を得ることができる。
Figure 2021098357
mは10〜300の整数である。
ポリジメチルシロキサンとの共重合体に用いられるビニルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセチトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコールなどを挙げることができる。
また、ポリジメチルシロキサン系共重合体は、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などを単独もしくは混合溶媒中で溶液重合法によって製造されることが好ましい。
必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリルなどの重合開始剤を併用する。重合反応は50〜150℃で3〜12時間行うことが好ましい。
本発明におけるポリジメチルシロキサン系共重合体中の、ポリジメチルシロキサンセグメントの量は、積層体の潤滑性や耐溶剤性の点で、ポリジメチルシロキサン系共重合体の全成分100質量%において1〜30質量%であることが好ましい。またポリジメチルシロキサンセグメントの重量平均分子量は1,000〜30,000とすることが好ましい。
本発明において、積層体を形成するために用いる塗料組成物として、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂を使用する場合は、ポリジメチルシロキサンセグメント以外に、他のセグメント等が含有(共重合)されていてもよい。たとえば、ポリカプロラクトンセグメントやポリシロキサンセグメントが含有(共重合)されていてもよい。
積層体を形成するために用いる塗料組成物には、ポリカプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメントの共重合体、ポリカプロラクトンセグメントとポリシロキサンセグメントとの共重合体、ポリカプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメントとポリシロキサンセグメントとの共重合体などを用いることが可能である。このような塗料組成物を用いて得られる積層体は、ポリカプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメントおよび/またはポリシロキサンセグメントとを有することが可能となる。
ポリカプロラクトンセグメント、ポリシロキサンセグメントおよびポリジメチルシロキサンセグメントを有する積層体を形成するために用いる塗料組成物中の、ポリジメチルシロキサン系共重合体、ポリカプロラクトン、およびポリシロキサンの反応は、ポリジメチルシロキサン系共重合体合成時に、適宜ポリカプロラクトンセグメントおよびポリシロキサンセグメントを添加して共重合することができる。
[塗料組成物B]
本発明の積層体において、以下の塗料組成物Bを用い、離型フィルム上または樹脂層上に塗布することにより表面層を形成することが好ましい。
塗料組成物Bは、本発明の表面層を構成するのに適した成分を含む液体であり、表面層を形成するのに適した樹脂、または前駆体を含む。
塗料組成物Bは特に制限されるものではないが、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂が好ましく、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂のいずれでもよく、2種類以上のブレンドであってもよい。
本発明における熱硬化型樹脂は、水酸基を含有する樹脂とポリイソシアネート化合物を含むことが好ましく、水酸基を含有する樹脂としてアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ウレタンポリオール等が挙げられ、これらは1種類、もしくは2種類以上のブレンドであってもよい。これらのアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ウレタンポリオール等は水酸基を含有することが好ましい。
水酸基を含有する樹脂の水酸基価は1〜200mgKOH/gの範囲であれば、塗膜としたときの耐久性、耐加水分解性、密着性の観点から好ましい。水酸基価が1より小さい場合は塗膜の硬化がほとんど進まず、耐久性や強度が低下する場合がある。一方、水酸基が200より大きい場合は、硬化収縮が大きすぎるために、密着性を低下させる場合がある。
本発明におけるアクリルポリオールとは、例えば、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを成分として重合して得られる。この様なアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを成分として、必要に応じて(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル酸基含有モノマーを共重合することで容易に製造することができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。この様なアクリルポリオールとしては、例えば、DIC株式会社;(商品名“アクリディック”(登録商標)シリーズなど)、大成ファインケミカル株式会社;(商品名“アクリット”(登録商標)シリーズなど)、株式会社日本触媒;(商品名“アクリセット”(登録商標)シリーズなど)、三井化学株式会社;(商品名“タケラック”(登録商標)UAシリーズ)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明におけるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールあるいはトリオール、ポリブチレングリコールあるいはトリオール、ポリテトラメチレングリコールあるいはトリオール、さらには、これら炭素数の異なるオキシアルキレン化合物の付加重合体やブロック共重合体等が挙げられる。この様なポリエーテルポリオールとしては、旭硝子株式会社;(商品名“エクセノール”(登録商標)シリーズなど)、三井化学株式会社;(商品名“アクトコール”(登録商標)シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明におけるポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールと、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、スベリン酸、アゼライン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸との必須原料成分として反応させた脂肪族ポリエステルポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた芳香族ポリエステルポリオールが挙げられる。
このようなポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社;(商品名“ポリライト”(登録商標)シリーズなど)、株式会社クラレ;(商品名“クラレポリオール”(登録商標)シリーズなど)、武田薬品工業株式会社;(商品名“タケラック”(登録商標)Uシリーズ)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明におけるポリオレフィン系ポリオールとしては、ブタジエンやイソプレンなどの炭素数4から12個のジオレフィン類の重合体および共重合体、炭素数4から12のジオレフィンと炭素数2から22のα−オレフィン類の共重合体のうち、水酸基を含有している化合物である。水酸基を含有させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ジエンモノマーを過酸化水素と反応させる方法がある。さらに、残存する二重結合を水素結合することで、飽和脂肪族化してもよい。このようなポリオレフィン系ポリオールとしては、日本曹達株式会社;(商品名“NISSO−PB”(登録商標)Gシリーズなど)、出光興産株式会社;(商品名“Poly bd”(登録商標)シリーズ、“エポール”(登録商標)シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明におけるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸ジアルキルと1,6−ヘキサンジオールのみを用いて得たポリカーボネートポリオールを用いることもできるが、より結晶性が低い点で、ジオールとして、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールとを共重合させて得られるポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
このようなポリカーボネートポリオールとしては、共重合ポリカーボネートポリオールである旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“T5650J”、“T5652”、“T4671”、“T4672”など)、宇部興産株式会社;(商品名“ETERNACLL”(登録商標)UMシリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における水酸基を含有するウレタンポリオールとは、例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも2個の水酸基を含有する化合物とを、水酸基がイソシアネート基に対して過剰となるような比率で反応させて得られる。その際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。また、1分子中に少なくとも2個の水酸基を含有する化合物としては、多価アルコール類、ポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
本発明における熱硬化型樹脂に用いられるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を含有する樹脂や、イソシアネート基を含有するモノマーやオリゴマーを指す。イソシアネート基を含有する化合物は、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などの(ポリ)イソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。この様な熱硬化型樹脂に用いられるポリイソシアネート化合物としては、三井化学株式会社;(商品名“タケネート”(登録商標)シリーズなど)、日本ポリウレタン工業株式会社;(商品名“コロネート”(登録商標)シリーズなど)、旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“デュラネート”(登録商標)シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“バーノック”(登録商標)シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における紫外線硬化型樹脂としては、特に制限されるものではないが、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、日本合成化学工業株式会社;(商品名“SHIKOH”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
また、前述の特性を付与するために、アクリルポリマーを用いてもよい。該アクリルポリマーは不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000〜200,000であり、ガラス転移温度が20℃以上200℃以下であることがより好ましい。アクリルポリマーのガラス転移温度が20℃未満では硬度が低下する場合があり、200℃を超えるとの伸度が十分でない場合がある。より好ましいガラス転移温度の範囲は50℃以上150℃以下である。
また、前記アクリルポリマーは親水性官能基を有することで、硬度を付与することができる。具体的には、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、間レイン酸等、あるいは水酸基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の親水性官能基を有する不飽和単量体を前記不飽和単量体と共重合することにより、アクリルポリマーに親水性官能基を導入することができる。
前記アクリルポリマーの重量平均分子量は5,000〜200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000未満である場合、硬度が不十分となる場合があり、重量平均分子量が200,000を超える場合、塗工性を含めた成型性や強靱性が不十分となる場合がある。また、重量平均分子量は重合触媒、連鎖移動剤の配合量および使用する溶媒の種別により調整できる。
前記アクリルポリマー含有割合は、塗料組成物Bの総固形分中1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上30質量%以下である。1質量%以上とすることで伸度が顕著に向上し、50質量%以下にすることで硬度を維持できるため好ましい。
[溶媒]
前記塗料組成物は溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。
ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
さらに、溶媒を含む場合には以下の特性を示す溶媒であることが好ましい。
条件1 酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))が最も低い溶媒を溶媒Bとした際に、溶媒Bの相対蒸発速度が0.4以下。
ここで、溶媒の酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度とは、ASTMD3539−87(2004)に準拠して測定される蒸発速度である。具体的には、乾燥空気下で酢酸n−ブチルが90質量%蒸発するのに要する時間を基準とする蒸発速度の相対値として定義される値である。
前記溶媒の相対蒸発速度が0.4よりも大きい場合には、前述のポリシロキサンセグメントおよび/またはポリジメチルシロキサンセグメント、およびフッ素化合物セグメントの積層体中の最表面への配向に要する時間が短くなるため、得られる積層体における積層体の耐溶剤性の低下を生じる場合がある。また、前記溶媒の相対蒸発速度の下限は、乾燥工程において蒸発して塗膜から除去できる溶媒であれば問題なく、一般的な塗布工程においては、0.005以上であればよい。
溶媒としては、イソブチルケトン(相対蒸発速度:0.2)、イソホロン(相対蒸発速度:0.026)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(相対蒸発速度:0.004、)、ジアセトンアルコール(相対蒸発速度:0.15)、オレイルアルコール(相対蒸発速度:0.003)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(相対蒸発速度:0.2)、ノニルフェノキシエタノール(相対蒸発速度:0.25)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(相対蒸発速度:0.1)、シクロヘキサノン(相対蒸発速度:0.32)などがある。
[塗料組成物中のその他の成分]
また、前記塗料組成物は、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、積層体の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
また、前記塗料組成物は、アルコキシメチロールメラミンなどのメラミン架橋剤、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系架橋剤、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアミン系架橋剤などの他の架橋剤を含むことも可能である。
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2−フェニル−2−オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、塗料組成物にレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、積層体はレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、前述の特性を有する積層体の製造方法であって、本発明の積層体から、離形フィルムを剥離する工程を有する、積層体の製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の積層体の製造方法として、本発明の積層体から離型フィルムを剥離する工程を有する方法を採用することで、積層体を離型フィルムから剥離するまでの間、積層体の表面を外的負荷から保護することができる。
本発明の積層体を離型フィルム上に形成するにあたり、特に限定されないが、離形フィルムの表面に、樹脂層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程、及び、前記成分を硬化する工程と、表面層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程、及び、前記成分を硬化する工程を有し、さらに、離型フィルムを剥離する工程を有する製造法によって製造することが好ましい。
もしくは、離型フィルムの表面に、表面層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程、及び、前記成分を硬化する工程と、さらに表面層の上に、樹脂層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程、及び、前記成分を硬化する工程を有し、さらに、離型フィルムを剥離する工程を有する製造方法によって製造することが好ましい。
前述の樹脂層を形成する工程と表面層を形成する工程の順番はどちらでもよく、先に樹脂層を形成してその上に表面層を形成する方法、先に表面層を形成してその上に樹脂層を形成する方法のどちらでも良い。樹脂層と表面層の密着性や積層体のヘイズ抑制や品位向上の観点からは、離型フィルム表面に先に表面層を形成し、その上に樹脂層を形成する順番の方がより好ましい。また、離型フィルム表面に先に表面層を形成し、その上に樹脂層を形成する順番の製造方法であると、表面層に後加工を行う際、任意のタイミングで離型フィルムを剥離することにより表面層を露出させることができるため好ましい。
以下、各塗料組成物を塗布する工程を塗布工程、乾燥する工程を乾燥工程、硬化する工程を硬化工程と記述する。塗料組成物として、2種類以上の塗料組成物を逐次にまたは同時に塗布して、2層以上の層からなる積層体を形成してもよい。
ここで「逐次に塗布する」とは、離型フィルム上に、一種類の塗料組成物を塗布し、乾燥し、硬化した後、その上に、他の塗料組成物を、塗布し、乾燥し、硬化することにより2層以上の層からなる積層体を形成することを意味している。用いる塗料組成物の種類を適宜選択することにより、積層体の柔軟性や伸縮性の大小などを制御することができる。さらに塗料組成物の種類、組成、乾燥条件および硬化条件を適宜選択することにより、積層体内の柔軟性や伸縮性の分布の形態を段階的、または連続的に制御することができる。
また、「同時に塗布する」とは塗布工程において、離型フィルム上に、二種類以上の塗料組成物を同時に塗布した後、乾燥および硬化することを意味している。
塗布工程において、塗料組成物を塗布する方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材に塗布することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法としてより好ましい。
また、2種類以上の塗料組成物を同時塗布する場合には、特に限定されないが、多層スライドダイコート、多層スロットダイコート、ウェット−オン−ウェットコートなどの方法を用いることができる。
多層スライドダイコートの例を図4に示す。多層スライドダイコートにおいては、2種類以上の塗料組成物からなる液膜を、多層スライドダイ31を用いて順に積層した後、支持基材または離型フィルム上に塗布する。
多層スロットダイコートの例を図5に示す。多層スロットダイコートにおいては、2種類以上の塗料組成物からなる液膜を、多層スロットダイ32を用いて、支持基材または離型フィルム上に塗布と同時に積層する。
ウェット−オン−ウェットコートの例を図6に示す。ウェット−オン−ウェットコートにおいては、支持基材上に、単層スロットダイ33から吐出された塗料組成物からなる1層の液膜を形成した後、該液膜が未乾燥の状態で、他の単層スロットダイ8から吐出された他の塗料組成物からなる液膜を積層させる。
塗布工程に次いで、乾燥工程によって、離型フィルムの上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去する観点から、乾燥工程は、液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥工程における加熱方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などの方法が挙げられる。この中でも、精密に幅方向も乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方法が好ましい。
好ましい乾燥速度が得られるならば、特に限定されないが、上記乾燥速度を得るためには、温度が15℃から129℃であることが好ましく、50℃から129℃であることがより好ましく、50℃から99℃であることが特に好ましい。
乾燥工程に続いて、熱または活性エネルギー線を照射することによる、さらなる硬化操作(硬化工程)を行うことが好ましい。
活性エネルギー線としては、汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)が好ましい。紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化することがより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が弱くなり、靭性が低くなる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いる場合、紫外線の照度が好ましくは100〜3,000mW/cm、より好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが良い。紫外線の積算光量は、好ましくは100〜3,000mJ/cm、より好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが良い。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[用途例]
本発明の積層体は、光学特性、柔軟性、伸縮性、タック防止性、搬送性、リワーク性(繰り返しの貼合・剥離)、追従性に優れるといった利点を活かし、これらの特性が求められる用途に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[ウレタン(メタ)アクリレート]
〔ウレタン(メタ)アクリレート1の合成〕
トルエン100質量部、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート(協和発酵キリン株式会社製 LDI)50質量部およびポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業株式会社製 “プラクセル”(登録商標)CD−210HL)119質量部を混合し、40℃にまで昇温して8時間保持した。それから、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトエステルHOA)28質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社製 M−400)5質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を加えて70℃で30分間保持した後、ジブチル錫ラウレート0.02質量部を加えて80℃で6時間保持した。そして、最後にトルエン97質量部を加えて固形分濃度50質量%のウレタン(メタ)アクリレート1のトルエン溶液を得た。ウレタン(メタ)アクリレート1の数平均分子量は5,800であった。
〔ウレタン(メタ)アクリレート2〕
ウレタン(メタ)アクリレート2として数平均分子量4,600であるSUA−017(亜細亜工業株式会社製 固形分濃度100質量%)を使用した。
[光ラジカル重合開始剤]
〔光ラジカル重合開始剤1〕
光ラジカル重合開始剤1として“イルガキュア“(登録商標)184(BASFジャパン株式会社製 固形分濃度100質量%)を使用した。
[アクリルポリオール]
〔アクリルポリオール1〕
アクリルポリオール1として、水酸基を含有するアクリルポリオール(“タケラック”(登録商標)UA−702 三井化学株式会社製 固形分濃度50質量% 水酸基価:50mgKOH/g)を使用した。
〔アクリルポリオール2〕
アクリルポリオール2として、水酸基を含有するアクリルポリオール(“アクリディック”(登録商標)A−823 DIC株式会社製 固形分濃度50質量% 水酸基価30mgKOH/g)を使用した。
[イソシアネート化合物]
〔イソシアネート化合物1〕
イソシアネート化合物1として、トリレンジジイソシアネート(“コロネート”(登録商標)L 日本ポリウレタン工業株式会社 固形分濃度75質量% NCO含有量13.5質量%)を使用した。
[アクリルポリマー]
〔アクリルポリマー1〕の合成]
ジラウロイルパーオキサイド(“パーロイル”(登録商標)L 日油株式会社製)24質量部をメチルエチルケトン495質量部に加えて70℃で30分間加温して溶解させ、メタクリル酸50質量部、ブチルアクリレート90質量部、メチルメタクリレート100質量部および4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1(“ノフマー”(登録商標)MSD 日油株式会社製)2.4質量部を混合した溶液を4時間かけて滴下して撹拌重合させた。その後、さらに80℃で2時間撹拌を行い、親水性官能基を含有した固形分濃度35質量%のアクリルポリマー1のメチルエチルケトン溶液(重量平均分子量6,000)を得た。
[離型フィルム]
〔離型フィルム1〕
離型フィルム1として、“セラピール”(登録商標)SY(厚み38μm、東レフィルム加工株式会社製)を使用した。
[塗料組成物Aの調合]
〔塗料組成物A1〕
以下の材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の塗料組成物A1を得た。
・ウレタン(メタ)アクリレート1溶液 : 100質量部
・光ラジカル重合開始剤1 : 1.5質量部。
〔塗料組成物A2〕
以下の材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の塗料組成物A2を得た。
・ウレタン(メタ)アクリレート2溶液 : 50質量部
・光ラジカル重合開始剤1 : 1.5質量部。
〔塗料組成物A3〕
以下の材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の塗料組成物A3を得た。
・ウレタン(メタ)アクリレート1溶液 : 50質量部
・ウレタン(メタ)アクリレート2溶液 : 25質量部
・光ラジカル重合開始剤1 : 1.5質量部。
[塗料組成物Bの調合]
〔塗料組成物B1〕
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度20質量%の塗料組成物B1を得た。
・アクリルポリオール1 100質量部
・イソシアネート化合物1 18.8質量部
・アクリルポリマー1 9.6質量部。
〔塗料組成物B2〕
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度20質量%の塗料組成物B2を得た。
・アクリルポリオール2 100質量部
・イソシアネート化合物1 11.8質量部
・アクリルポリマー1 8.8質量部。
[積層体、樹脂フィルムの作成方法]
以下の手順に従い、積層体および樹脂フィルムの作成を行った。使用する塗料組成物の組み合わせは、表1に記載の通りである。
[作成方法1]
離型フィルムの上に、塗料組成物をスロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、乾燥後の樹脂層の厚みが指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布した。
塗布から乾燥、硬化までの間に液膜にあたる乾燥風の条件は以下の通りである。
その後、樹脂層からなる樹脂フィルムを離型フィルムから剥離した。
〔乾燥工程〕
送風温湿度 : 温度:80℃、相対湿度:1%以下
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
〔硬化工程〕
照射出力 : 400W/cm
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 0.1体積%。
[作成方法2]
離型フィルムの上に、塗料組成物をスロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布した。
塗布から乾燥、硬化までの間に液膜にあたる乾燥風の条件は以下の通りである。
〔乾燥工程〕
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
さらに、上記で得られた表面層上に塗料組成物を同装置を用い、乾燥後の樹脂層の厚みが指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布した。
塗布から乾燥、硬化までの間に液膜にあたる乾燥風の条件は以下の通りである。
その後、表面層と樹脂層からなる積層体を、離型フィルムから剥離した。
〔乾燥工程〕
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
〔硬化工程〕
照射出力 : 400W/cm
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
Figure 2021098357
[積層体、樹脂層、表面層の評価]
積層体、樹脂層、表面層について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2〜3に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
〔積層体、樹脂層の厚み〕
電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察することにより、積層体、樹脂層、表面層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。積層体または樹脂フィルムの断面の切片をSEMにより3,000倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ)にて各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を、測定値とした。
〔復元率〕
積層体または樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を積層体または樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(エー・アンド・ディ製RTG−1210)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度50mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。その際、歪み量10mm(=20%)までサンプルを伸張後、サンプルへの引張荷重を解放した。
測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から、弾性復元率z%を算出した。
復元率:z=(1−(L−50)/20)×100 (%)。
〔貯蔵弾性率〕
JIS K7244(1998)の引張振動−非共振法に基づき(これを動的粘弾性法とする)、セイコーインスツルメンツ株式会社製の動的粘弾性測定装置“DMS6100”を用いて樹脂層の貯蔵弾性率と損失弾性率を求めた。
なお、表面層を有する積層体においては、前述の製造方法における表面層を製造する工程を省略し、樹脂層のみを製造し、試験片とした。
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
試験片の幅:10mm
周波数:1Hz
歪振幅:10μm
力振幅初期値:40mN
測定温度:−100℃から100℃まで
昇温速度:5℃/分
損失正接:(損失弾性率)/(貯蔵弾性率)。
〔ヘイズ〕
積層体または樹脂フィルムを100mm幅×100mm長に切り出し、試験片とした。ヘイズ測定はJIS K 7136(2000)に基づき、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH−5000)を用いて測定した。なお、測定の際、積層体または樹脂フィルムから離型フィルムを剥離して測定を行った。
〔5%歪み応力〕
積層体または樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し、試験片とした。なお、150mm長の方向を積層体または樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(エー・アンド・ディ製RTG−1210)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
チャック間距離がa(mm)のときのサンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ量x(%)と応力y(N/mm2)を算出した。ただし、試験前のサンプル厚みをk(mm)とする。
ひずみ量:x=((a−50)/50)×100
応力:y=b/(k×10)。
上記で得られたデータのうち、歪み量5%での応力を5%歪み応力とした。
〔伸縮性の評価1〕
積層体または樹脂フィルムに対して手で引張を行い、以下の基準に則り判定を行った。
10点: 非常に軽い力で変形することができる。
7点: 軽い力をかければ、変形することができる。
4点: やや強めの力をかければ、変形することができる。
1点: その他(変形するのに強い力が必要、等)。
〔伸縮性の評価2〕
積層体または樹脂フィルムに対して手で軽い力をかけて引張変形を与え、以下の基準に則り判定を行った。
10点: 変形後に負荷を除けば、元の形状に復元する。
7点: 変形後に負荷を除けば、ほとんど元の形状に復元する。
4点: 変形後に負荷を除けば、少し元の形状に復元する。
1点: その他(全く復元しない、等)。
〔タック防止性およびリワーク性の評価〕
積層体または樹脂フィルムをガラス板に載せ、積層体または樹脂フィルムの垂直方向へ負荷をかけて押し当てた。その後、積層体または樹脂フィルムをその平面方向へ引張、その時の挙動を、以下の基準に則り判定を行った。なお、表面層を有する積層体については、ガラス板に押し当てる面を表面層を有する面とした。
10点: ほとんど無抵抗で剥離でき、位置修正ができる。
7点: 僅かな力で剥離でき、位置修正ができる。
4点: 少し強い力で剥離でき、位置修正ができる。
1点: その他(剥離できるが必要な力が大きい、剥離できない、等)。
表2〜3に最終的に得られた積層体または樹脂フィルムの評価結果をまとめた。
Figure 2021098357
Figure 2021098357
1 表面層
2 樹脂層
3 表面層
4 樹脂層
5 離型フィルム
6 樹脂層
7 表面層
8 離型フィルム
21 多層スライドダイ
22 多層スライドダイ
23 単層スロットダイ
本発明の積層体は、光学特性、柔軟性、伸縮性、タック防止性、搬送性、リワーク性(繰り返しの貼合・剥離)、追従性に優れるといった利点を活かし、これらの特性が求められる用途に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 樹脂層の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、
    前記表面層の25℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上であって、
    前記積層体のヘイズが10%以下であって、
    前記積層体の復元率が50%以上であることを特徴とする、積層体。
  2. 以下の条件1を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
    条件1: 樹脂層の25℃における貯蔵弾性率が100MPa以下。
  3. 以下の条件2を満たすことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の積層体。
    条件2: 樹脂層の5%歪み応力が100MPa以下。
  4. 以下の条件3を満たすことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体。
    条件3 樹脂層が架橋性樹脂で構成されている。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の積層体に、さらに支持基材を有する積層体であって、
    表面層の樹脂層とは反対の面に支持基材が接しており、
    樹脂層と表面層からなる積層体を支持基材から剥離可能であることを特徴とする、積層体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
    支持基材の一方の面に表面層を構成する成分を含む塗料組成物を塗布する工程を有し、
    さらに、表面層の支持基材とは反対の面に、樹脂層を構成する成分を含む塗料組成物を
    塗布する工程を有することを特徴とする、積層体の製造方法。
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