JP2021097292A - エコーキャンセル装置、エコーキャンセル方法およびエコーキャンセルプログラム - Google Patents

エコーキャンセル装置、エコーキャンセル方法およびエコーキャンセルプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行いかつ処理の負荷を軽減する。【解決手段】再生する周波数帯域が互いに異なるスピーカ16、17の出力を入力とするマイク18からの信号を取得する。入力される音声データのうち、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、フィルタ101、102でそれぞれ通過させる。それぞれ通過した互いに異なる周波数帯域の信号成分を、スピーカ16、17それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させた後、音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、加算データに対応する信号をスピーカ16、17へ出力する。除去処理部105は、音声データを参照データとし、マイク18から取得した信号に対応する入力デジタルデータから参照データに対応する成分を除去する。【選択図】図3

Description

本発明は、エコーキャンセル装置、エコーキャンセル方法およびエコーキャンセルプログラムに関する。
カーオーディオには、ユーザーの音声を検出するシステムとして、ハンズフリーと呼ばれるシステム(以下、ハンズフリーシステムと呼ぶ)を有するものがある。ハンズフリーシステムでは、マイクロホンを用いて集音した運転者の音声をデジタルデータに変換する。マイクロホンは、ハンドル、ルームミラー、ピラーなどに設置される。集音した音声は電話機を通して先方の通話者に送られる。また、先方の発話した音声は電話機を通しカーオーディオのスピーカから鳴らす。
ここで、複数のスピーカを含むマルチチャンネル対応の拡声通話系システムにおいて、チャンネル間の音量バランスを設定する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1では、チャンネルごとに適応フィルタを設けてエコーキャンセル処理を行っている。また、スピーカとマイクとの距離分の時間遅延の測定方法が特許文献2に記載されている。さらに、複数のスピーカについて適用した、エコーキャンセル装置が特許文献3に記載されている。
特開2009−094707号公報 特開平5−297881号公報 特開2019−165276号公報
ハンズフリーシステムでは、エコー除去装置を設けて音響エコーを除去することがある。特許文献1に記載の技術によると、処理の負荷を軽減する観点から見ると改善の余地がある。
また、特許文献2、特許文献3に記載の技術は、全周波数帯域を含んだ音声を想定している。このため、特許文献2、特許文献3に記載の技術は、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカについては、適用できない。例えば、ツイータとウーファとが別々の場所に配置される、セパレートツイータタイプの2ウェイスピーカについて、特許文献2に記載の技術は適用できない。すなわち、音声周波数の帯域を分割した音が別々の場所から出力される場合において、特許文献2に記載の技術では正しくエコーキャンセルの効果が得られないため、改善の余地がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行い、かつ、処理の負荷を軽減できるエコーキャンセル装置、エコーキャンセル方法およびエコーキャンセルプログラムを提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるエコーキャンセル装置は、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカの出力を入力とするマイクロホンからの信号を取得する取得部と、入力される音声データのうち、互いに異なる前記周波数帯域の信号成分を、それぞれ通過させる複数のフィルタ部と、前記複数のフィルタ部をそれぞれ通過した互いに異なる周波数帯域の信号成分を、前記複数のスピーカそれぞれから前記マイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる遅延部と、互いに異なる前記周波数帯域のうち、前記音声データに含まれていない周波数帯域について、前記信号成分のレベルを指定するレベル指定部と、前記遅延部によってそれぞれ遅延された信号成分のレベルを、前記レベル指定部によって指定されたレベルに基づいてそれぞれ調整するレベル調整部と、前記レベル調整部によってレベルがそれぞれ調整された信号成分を加算する第1加算部と、前記第1加算部による加算データに対応する信号を前記複数のスピーカへ出力する出力部と、前記音声データを参照データとし、前記取得部が取得した信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する処理を行う除去処理部と、を含む。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるエコーキャンセル方法は、入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分ける工程と、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる工程と、それぞれ遅延させた前記信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、加算したデータに対応する音を前記複数のスピーカから出力する工程と、前記マイクロホンからの信号を取得する工程と、前記入力される音声データを参照データとし、前記マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する工程と、を含む。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるエコーキャンセルプログラムは、コンピュータを、入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分けるフィルタ部、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる遅延部、それぞれ遅延させた前記信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、前記複数のスピーカから出力する加算部、前記入力される音声データを参照データとし、前記マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する除去処理部、として機能させるためのエコーキャンセルプログラムである。
本発明によれば、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行い、かつ、処理の負荷を軽減できる。
図1は、比較例によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。 図2は、各スピーカから入るマイク遅延構成のイメージ図である。 図3は、第1実施形態によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。 図4は、除去処理部の構成を示す図である。 図5は、2ウェイスピーカに適用する場合における、分析部の動作原理を示す概念図である。 図6は、第2実施形態によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。 図7は、第3実施形態によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。 図8は、レベル指定部が参照する、テーブルの内容の例を示す図である。 図9は、第4実施形態によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。 図10は、エコーキャンセル装置によって実現されるエコーキャンセル方法を示すフローチャートである。 図11は、3ウェイスピーカに適用する場合における、分析部の動作原理を示す概念図である。 図12は、第3実施形態において、通話相手がAIアシスタントである場合における、テーブルの内容の例を示す図である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明において、同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。なお、実施形態により本発明が限定されるものではない。また、実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
以下、各実施形態について説明するが、各実施形態の理解を容易にするため、先に比較例について説明する。
(比較例)
図1は、比較例によるエコーキャンセル装置の構成を示す図である。図1を参照すると、比較例によるエコーキャンセル装置10は、2つのスピーカ16、17と、マイクロホン(以下、マイクと略称する)18と、ハイパスフィルタ(HPF)19とに接続される。
スピーカ16、17は、入力されるアナログの音声信号を、音声に変換する。スピーカ16は、例えばウーファーであり、低域または中低音域の音声信号を出力する。スピーカ17は、例えばツイータであり、高音域の音声信号を出力する。
エコーキャンセル装置10からの1チャンネルの出力の信号線は2つに分岐され、スピーカ16に向かう信号線とスピーカ17に向かう信号線とに分かれる。スピーカ17に向かう信号線には、ハイパスフィルタ19が挿入されている。ハイパスフィルタ19は、音声信号に含まれる高音域の部分を通過させる。ハイパスフィルタ19は、例えば、インダクタとキャパシタとの直列回路によって実現できる。
2つのスピーカ16、17は、セパレートツイータタイプの2ウェイスピーカとして機能する。カーオーディオシステムの場合、スピーカ17は車両の場合、Aピラーなど運転者などの耳に近い位置に配置されることがある。スピーカ16は、車両のドアの下部に配置されることがある。
マイク18は、車両の音声を取得する。マイク18は、取得した音声をアナログの音声信号に変換する。
また、図1において、比較例によるエコーキャンセル装置10は、信号処理部100と、増幅部(Amplifier;以下、AMPと呼ぶ)11および15と、アナログデジタル変換部(Analog Digital Converter;以下、ADCと呼ぶ)12と、デジタルアナログ変換部(Digital Analog Converter;以下、DACと呼ぶ)13と、音量制御部14と、を有する。
信号処理部100は、デジタルの音声データに対して、エコー等の、対象の音声以外を除去する除去処理部105を有する。
AMP11は、マイクアンプである。AMP11は、マイク18から出力されるアナログの音声信号を増幅する。
ADC12は、入力されるアナログの音声信号をデジタルの音声データに変換する変換部である。ADC12によって変換されたデジタルの音声データは、信号処理部100に入力される。
DAC13は、入力されるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換する。DAC13によって変換されたアナログの音声信号は、音量制御部14に入力される。
音量制御部14は、スピーカ16、17から出力する音の出力レベルすなわち音量を調整する。音量制御部14によって音量が調整されたアナログの音声信号は、AMP15に入力される。
AMP15は、スピーカアンプである。AMP15は、入力されるアナログの音声信号を増幅する。AMP15が増幅したアナログの音声信号は、スピーカ16、17に入力される。
電話機20は、音声信号401を通話相手側に送信すると共に、通話相手側からの音声信号400を受信する。電話機20は、例えば、移動電話機やスマートフォンである。
また、図1のように、セパレートツイータタイプの2ウェイスピーカを用いる場合、オーディオ機器からの1チャンネルの出力線は分岐され、スピーカ16に向かう信号線とスピーカ17に向かう信号線とに分かれる。スピーカ16とスピーカ17とは同じ位置に置かれることが少なく、特にカーオーディオ装置においては、スピーカ16とスピーカ17とが異なる位置に設置される。このため、スピーカ16とマイク18との距離と、スピーカ17とマイク18との距離とが異なり、エコーキャンセルを適切に行うことが難しい。エコーキャンセルを適切に行うためには、高音域の音声信号、低域または中低音域の音声信号の2チャンネルのスピーカそれぞれに関してエコーキャンセル処理を行う必要があり、処理の負荷を軽減する観点から見ると改善の余地がある。
図2は、各スピーカ16、17からマイク18への入力を模式的に示す図である。図2に示すように、各スピーカ16、17から出力される音声は、1つのマイク18に入力される。各スピーカ16、17からマイク18までの音の到達時間は互いに異なる。このため、各スピーカ16、17から同時に音を出力しても、出力された音はマイク18と各スピーカ16、17との距離分の遅延時間を持ってマイク18に入力される。図2に示すように、マイク18に入力される信号301は、各スピーカ16、17から出力された信号が時間軸上でずれて重畳された状態になる。
このため、図2に示すように、異なる遅延時間を持ってマイク18に入力された音声信号についてエコーを除去する処理を行う場合、複数のスピーカ16、17それぞれについてエコーをキャンセルする必要がある。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態について説明する。
図3は、第1実施形態によるエコーキャンセル装置の構成例を示す図である。図3において、本実施形態によるエコーキャンセル装置10Aは、セパレートツイータタイプのスピーカを使用している。図3は、ハンズフリーシステムに適用したエコーキャンセル装置の例を示す。
図3に示すエコーキャンセル装置10Aは、比較例によるエコーキャンセル装置10の信号処理部100とは異なる信号処理部100Aを有する。信号処理部100Aは、デジタルの音声データに対して、エコー等の、対象の音声以外を除去する処理等を行う。信号処理部100Aは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)を利用して実現することができる。信号処理部100Aは、SOC(System−on−a−chip)によって実現してもよい。信号処理部100Aは、DSPとSOCとの両方を利用して実現してもよい。なお、エコーキャンセル装置10Aまたは信号処理部100Aは、音声データを入力する入力部を有する。
[信号処理部]
信号処理部100Aは、ハイパスフィルタ(HPF)101と、ローパスフィルタ(LPF)102と、遅延部(Delay)103、104と、除去処理部105と、可変増幅部106、107と、加算部108と、分析部110と、レベル指定部111と、を有する。これらは例えば、DSPを利用して実現することができる。
第1加算部である加算部108は電話機から入ってくる「高域再生用のツイータ」の信号と、「低域再生用のウーファー」の信号とを加算し、1チャンネルの信号にする。可変増幅部106、107は、増幅度を変化させることができる。具体的には、可変増幅部106、107の増幅度は、レベル指定部111からの制御信号によって、変化させることができる。可変増幅部106、107の増幅度を変化させ、増幅度のバランスを調整することにより、「高域再生用のツイータ」の音量と、「低域再生用のウーファー」の音量との関係によって、加算部108の加算するバランスを変える。
高域をカットするLPFや、低域をカットするHPFは、急峻な特性を持てず緩やかに音量が下がる特性を持つ。よって、低域カットしても設定した周波数以下が完全に出力されないことはなく、低域の音はレベルが下がるが出力される。よって、HPF101およびLPF102によって、スピーカ17、スピーカ16への信号の帯域を分割しても、分割した帯域付近では、スピーカ17およびスピーカ16両方から同じ音が出ることになる。カーオーディオシステムの場合、スピーカ17は、車両のドアのAピラーと呼ばれる場所に設置されることが多い。その場合、ハンドルなどに設置されるマイクの位置では、高域の直進性が高いため、ツイータの向きによってマイクに入ってくる音量が大きく変化する。このため、マイク18の位置や取り付け方によって、スピーカ16からマイク18に入力されるレベルとスピーカ17からマイク18に入力されるレベルとに差が生じる。そこで、可変増幅部106、107のうち、音が大きい方(すなわち、エコー音声が大きい方)の増幅度を小さくし、加算部108における加算量を調整する。これにより、適切にエコーキャンセルを行うことができる。
除去処理部105は、デジタルの音声データを参照データとして入力する。参照データは、電話機20からの音声である。除去処理部105は、マイク18に入力された音声信号を変換したデジタルの音声データから、参照データに対応する成分を除去するエコー除去処理を行う。エコー除去処理とは、マイク18に入力された音声信号を変換したデジタルの音声データから、参照データに対応する成分を差し引く処理である。このエコー除去処理を行うことにより、スピーカ16、17から出力される音声が通話相手に出力する音声に含まれないようにすることができる。
[遅延部]
遅延部103、104は、HPF101とLPF102とで帯域分割された音声に対して遅延処理を行う。スピーカ16、17と同じ周波数帯域を取り出すように、HPF101およびLPF102のカットオフ周波数を決定しておく。遅延部103、104は、スピーカ17、16への出力信号に対応しており、スピーカ17からマイク18までの距離とスピーカ16からマイク18までの距離との差を調整するための遅延部として機能する。遅延部103、104には、電話機20から入力される音声が入力される。遅延部103、104は、スピーカ17、16それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、通信相手からの音声を、それぞれ遅延させる。スピーカ16、17への出力信号に対応する通信相手からの音声を、スピーカ16、17それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる。
遅延部103、104は、信号処理部100Aによって実現することができる。遅延部103、104は、信号処理部100Aによって実現するのではなく、信号処理部100Aの外部に設けてもよい。信号処理部100Aの外部に遅延部103、104を設ける場合、可変ディレイラインを用いてもよい。その後段の加算部108はオペアンプなどによって構成し、アナログ信号として加算しても良い。
[遅延量の調整]
図3を参照すると、スピーカ16、17については、マイク18との距離が互いに異なるため、各スピーカ16、17からマイク18までの音の到達時間が互いに異なる。
そこで、遅延部103、104について、例えば、次のように異なる遅延量を設定する。各スピーカ16、17からマイク18までのそれぞれの距離を測定する。距離の測定は、例えば、巻尺を用いて行うことができる。測定した距離を音速で除算することにより、各スピーカ16、17からマイク18までの音の到達時間を算出できる。このように算出した到達時間に基づき、マイク18での音の到達時間を同じになるように各遅延部103、104の遅延量を設定する。
また、遅延部103、104について、次のように遅延量を設定してもよい。インパルス信号を1つのスピーカから出力し、マイク18に入力する。インパルス信号の波形とマイク18への入力信号の波形とを比較する。インパルス信号の波形のピーク点からマイク18への入力信号の波形のピーク点までの時間を、スピーカからマイクまでの音の到達時間とする。マイク18の位置に音が同じタイミングで到達するように、各スピーカ16、17から出力する前に到達時間に基づいて遅延させる。なお、インパルス信号を各スピーカ16、17から同時に出力し、各スピーカ16、17から出力したインパルス信号の波形が重なるように遅延量を調整してもよい。
この処理を各スピーカ16、17について行うことにより、複数のスピーカ16、17それぞれについて、マイク18までの音の到達時間を算出する。上記のように算出した到達時間に基づき、各遅延部103、104の遅延量を設定する。エコーキャンセル装置10Aの稼働前に遅延量を1度設定すれば、各スピーカまたはマイク18の位置を変更しないかぎり、遅延量を再度設定する必要はない。
HPF101は、低音域の周波数成分をカットした高音域の周波数成分を通過させる。高音域の周波数成分は、スピーカ17から出力される。LPF102は、高音域の周波数成分をカットした低音域の周波数成分を通過させる。低音域の周波数成分は、スピーカ16から出力される。HPF101およびLPF102におけるカットオフ周波数は、スピーカの公証特性を参考にして設定しても良いし、ホワイトノイズなどの測定音を用いてカットされ始める周波数を調査して設定しても良い。
[除去処理部]
図4は、除去処理部105の構成例を示す図である。図4に示すように、除去処理部105は、適応フィルタ1051と、減算部1052とを有する。
適応フィルタ1051は、各スピーカ16、17の出力からマイク18への入力までの空間すなわちエコーパスの特性に基づいて参照データを処理してキャンセルデータを生成する。より具体的には、適応フィルタ1051は、エコーパスの特性を模擬した特性情報を、参照データに掛けてキャンセルデータを生成する。適応フィルタ1051は、適応フィルタ係数で畳み込み処理を行い、キャンセルデータを生成する。適応フィルタ1051は、生成したキャンセルデータを減算部1052に入力する。
減算部1052は、マイク18に入力される音声信号に対応する音声データすなわち入力デジタルデータからキャンセルデータを減算する。減算部1052の出力は誤差データとして適応フィルタ1051に入力される。適応フィルタ1051は、フィルタ係数を更新し、誤差信号が最小になるように収束させる動作を行う。
上記のようにHPFでツイータ領域をLPFでウーファー領域を分割し、各遅延部103、104の遅延量を設定し、帯域分割した音声を加算することで戻し各スピーカから出力し、マイク18への入力タイミングを調整することにより、除去処理部105を複数設ける必要はなく、単一の除去処理部105によってエコー除去処理を実現できる。
[分析部など]
分析部110は、通話相手側からの音声データである音声信号400の周波数帯域を分析する。分析部110は、ウーファであるスピーカ16に対応する周波数帯域と、ツイータであるスピーカ17に対応する周波数帯域と、のうち、音声信号400に含まれていない周波数帯域を検出する。分析部110は、スピーカ16に対応する周波数帯域とスピーカ17に対応する周波数帯域とのクロスオーバー周波数(すなわちカットオフ周波数)に基づいて、音声信号400に含まれていない周波数帯域を検出する。
ツイータであるスピーカ17の出力周波数帯域によっては、発話されている声が出力周波数帯域外の場合がある。入ってくる発話音声の帯域がツイータであるスピーカ17から出力されるか否かによって、可変増幅部106、107の増幅度を制御し、加算部108において加算するバランスを変える。ツイータであるスピーカ17から声が出ない場合は2通りある。すなわち、周波数が低い声であり高域があまり含まれていない場合と、スピーカ17の出力周波数帯域が高く、声の帯域はクロスオーバー周波数より低いためにカットされてしまう場合である。これらの場合のように、スピーカ17から声が出力されない場合は、加算部108において加算する必要がない。そこで、分析部110において、互いに異なる周波数帯域のうち、音声信号400に含まれていない周波数帯域を検出する。そして、分析部110によって検出された、音声信号400に含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを、レベル指定部111が指定する。具体的には、レベル指定部111から制御信号を出力し、可変増幅部106、107の増幅度を制御する。レベル指定部111は、互いに異なる前記周波数帯域のうち、分析部110によって検出された、音声信号400に含まれていない周波数帯域について、信号成分のレベルを指定する。これにより、可変増幅部106、107の増幅度を変化させる。例えば、可変増幅部106の増幅度を低下させる。このように、レベル指定部111は、可変増幅部106または107を制御して加算部108において加算するレベルを調整する。
図5は、2ウェイスピーカに適用する場合における、分析部110の動作原理を示す概念図である。図5は、スピーカ16およびスピーカ17の周波数特性を示す図である。図5において、横軸は周波数、縦軸は信号のレベルである。
図5に示すように、スピーカ16の周波数特性SP16は低い周波数帯域に対応し、スピーカ17の周波数特性SP17は高い周波数帯域に対応する。周波数特性SP16と周波数特性SP17との、クロスオーバー周波数を周波数fc1とする。分析部110は、音声信号400について周波数分析を行う際、周波数fc1を基準とし、周波数fc1より高い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、周波数fc1より低い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、を検出することができる。
ここで、周波数fc1より低い周波数の音が音声信号400に含まれているが、周波数fc1より高い周波数の音が音声信号400に含まれていないことを分析部110が検出した場合を考える。その場合、スピーカ16からは音が出力されるが、スピーカ17からは音が全く出力されないか、またはわずかに出力される程度である。そこで、その場合、スピーカ17に対応する周波数帯域については、可変増幅部106の増幅度を変化させ、加算部108において加算するレベルを低下させる。加算部108において加算するレベルを低下させるため、レベル指定部111は可変増幅部106の増幅度を低下させる制御信号を出力する。このように、スピーカ17から音が全く出力されないか、またはわずかに出力される程度である場合に、加算部108において加算するレベルを低下させることにより、除去処理部105におけるエコー除去処理の負担を軽減することができる。
また、周波数fc1より低い周波数の音および周波数fc1より高い周波数の音の両方が音声信号400に含まれていないことを分析部110が検出した場合については、以下のようにする。すなわち、レベル指定部111は可変増幅部106、107の増幅度を変化させることなく、加算部108において同等のレベルで加算するための制御信号を出力する。
可変増幅部106、107は、遅延部103、104によってそれぞれ遅延された信号成分のうち、レベル指定部111から指定された周波数帯域の信号成分のレベルを調整するレベル調整部として機能する。
[動作]
次に、ハンズフリーシステムの動作について説明する。ハンズフリーシステムの動作については、エコーキャンセル装置10Aの動作を中心に説明する。
除去処理部105は、電話機20から出力されるデジタルの音声データすなわち受信データを参照データとして入力することで、参照データに対応する成分を除去する。マイク18から入力するスピーカ16、17からの音声を消すことで、エコーの無い音が除去処理部105の出力から得られる。
通話相手側への送話側の経路は、以下のようになる。すなわち、マイク18は、音声を取得する。マイク18は、取得した音声をアナログの音声信号に変換する。マイク18によって変換された音声信号は、AMP11に入力される。AMP11は、音声信号の電圧レベルを増幅する。AMP11は、後段でクリップしない程度に、音声信号の電圧レベルを調整する。ADC12は、AMP11によってレベルが調整されたアナログの音声信号をデジタルの音声データに変換する。ADC12によって変換されたデジタルの音声データは、信号処理部100Aに入力される。信号処理部100Aは、デジタルの音声データについて、エコーを除去する処理を行う。信号処理部100Aによってエコーが除去された音声データは、信号処理部100Aから出力される。信号処理部100Aから出力された音声データは、電話機20に入力される。電話機20は、音声データを通話相手側の図示しない電話機に送信する。
通話相手側の電話機からの受話側の経路は、以下のようになる。すなわち、電話機20は、通話相手側の電話機から受信した、デジタルの音声データを出力する。エコーキャンセル装置10Aは、電話機20から出力されるデジタルの音声データを入力する。エコーキャンセル装置10Aは、信号処理部100Aにおいてデジタルの音声データについて必要な処理を行う。信号処理部100Aは、デジタルの音声データを出力する。信号処理部100Aが出力するデジタルの音声データは、DAC13に入力される。DAC13は、入力されるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換する。DAC13によって変換されたアナログの音声信号は、AMP15に入力される。AMP15は、音声信号の電圧レベルを増幅する。AMP15によって電圧レベルが増幅された音声信号は、スピーカ16、17に入力される。スピーカ16、17は、音声を出力する。なお、AMP15は、加算部108による加算データに対応する信号を複数のスピーカ16、17へ出力する出力部として機能する。
ここで、スピーカ16、17とマイク18とが設けられている。このため、スピーカ16、17が出力した音声は、マイク18に入力される。その場合、エコーが発生し聞き取りづらくなることがある。そこで、信号処理部100Aの除去処理部105において、エコー除去処理を行う。
除去処理部105は、デジタルの音声データを参照データとして入力する。参照データであるデジタルの音声データは、HPF101、LPF102や遅延部103、104で遅延させる前の音声データである。除去処理部105は、マイク18に入力された音声信号を変換したデジタルの音声データから、参照データに対応する成分を差し引くエコー除去処理を行う。このエコー除去処理を行うことにより、スピーカ16、17から出力される音声が、通話相手に出力する音声に含まれないようにすることができる。また、スピーカ17から音が全く出力されないか、またはわずかに出力される程度である場合に、加算部108において加算するレベルを低下させる。こうすることにより、除去処理部105におけるエコー除去処理の負担を軽減することができる。
以上説明したように、本実施形態では、複数のスピーカ16、17それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、通信相手からの声を、それぞれ遅延させることにより、チャンネル数が複数であっても適応フィルタの数が増加せずに、エコーキャンセルを実現できる。また、複数のスピーカ16、17から出力された音がマイク18に入力される際、各スピーカ16、17からの音が時間軸上でずれて重畳されることはなく、正確なエコーキャンセルを実現できる。
本実施形態のエコーキャンセル装置10Aは、各遅延部103、104において遅延量を設定し、歪などを伴う非線形処理を行っていない。このため、本実施形態のエコーキャンセル装置10Aによれば、本来の音が維持される。また、マイク18への入力信号に対して追加処理を行っていないため、マイク18の入力信号について劣化が発生しない。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態によるエコーキャンセル装置の構成例を示す図である。図6において、本実施形態によるエコーキャンセル装置10Bは、信号処理部100Bを有する。信号処理部100Bは、図3の信号処理部100Aに、発話区間検出部112を追加した構成である。発話区間検出部112は、音声信号400について、通話相手の発話区間検出(VAD:Voice Activation Detect)を行う。
理想的な環境では通話相手から送られてくる音は声のみだが、現実は通話相手の声だけではなく周りの雨音、風切り音、車両の走行ノイズなども含まれている。発話以外は余分な音なので、できるだけ発話以外の音をスピーカ16、17から出力させないようにしたい。そこで、本実施形態では、発話区間検出部112によって発話区間を検出する。発話区間検出部112による発話区間の検出結果はレベル指定部111に入力される。
レベル指定部111は、発話区間において、第1実施形態と同様に、可変増幅部106および107を制御して信号成分のレベルを調整する。一方、レベル指定部111は、発話区間以外の区間において、レベル指定部111から制御信号を出力し、可変増幅部106および107を制御して信号成分のレベルを低下させる。これにより、発話区間以外の区間においてはスピーカ16および17から音が出力されることはなく、除去処理部105におけるエコー除去処理の負担を軽減することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態によるエコーキャンセル装置の構成例を示す図である。図7において、本実施形態によるエコーキャンセル装置10Cは、信号処理部100Cを有する。信号処理部100Cは、図3の分析部110およびレベル指定部111の代わりに、レベル指定部111Aを有する。レベル指定部111Aは、テーブル113を有する。レベル指定部111Aは、音声データである音声信号400の発信元に関するデータ402を入力とする。
テーブル113は、音声信号400の発信元に関するデータ402と可変増幅部106および107に設定すべきレベルの値とを対応付けるテーブルである。図8は、レベル指定部111Aが参照する、テーブル113の内容の例を示す図である。図8に示すように、本例のテーブル113において、ある発信元である「090−XXXX−YYYY」に対して可変増幅部106の増幅度が「5dB」、可変増幅部107の増幅度が「0dB」である。また、本例のテーブル113において、他の発信元である「080−ZZZZ−QQQQ」に対して可変増幅部106の増幅度が「5dB」、可変増幅部107の増幅度が「5dB」である。
例えば、発信元である「090−XXXX−YYYY」に対応する通話相手は、例えば、低い周波数の声を発する人物であることが予め分かっているとする。このため、ウーファーであるスピーカ16に対応する可変増幅部107の増幅度を「5dB」とし、ツイータであるスピーカ17に対応する可変増幅部106の増幅度を低下させて「0dB」とする。ツイータから音(つまり、声)が出ない場合は、フィルタ101によって帯域分割した後に遅延部103によって遅延させても、そもそも音が出ないので加算部108において加算する必要もない。このため、ツイータ17の出力周波数特性が、発話されている声の帯域外の場合には、可変増幅部106への出力信号の増幅度を絞る。
また、発信元である「080−ZZZZ−QQQQ」に対応する通話相手は、例えば、低い周波数および高い周波数の両方を含む声を発する人物であることが予め分かっているとする。このため、ウーファーであるスピーカ16に対応する可変増幅部107の増幅度を「5dB」とし、ツイータであるスピーカ17に対応する可変増幅部106の増幅度を「5dB」とする。
図7に戻り、レベル指定部111Aは、データ402に基づいてテーブル113を参照することによって、可変増幅部106および107に設定すべきレベルの値を得ることができる。レベル指定部111Aは、テーブル113を参照して得たレベルの値になるように制御信号を出力し、可変増幅部106および107の増幅度を変化させる。これにより、通話相手に応じて、加算部108において加算するバランスを適切に設定することができる。
以上のように通話相手によって、レベルの値を予めテーブルに記憶しておけば、通話相手側からの音声信号400の周波数帯域を分析することなく、可変増幅部106および107の増幅度を適切に制御することができる。なお、本実施形態において、レベル指定部111Aの内部にテーブル113が設けられているが、これに限定されることはなく、レベル指定部111Aの外部にテーブル113が設けられていてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。上記の各スピーカ16、17は、カーオーディオなどから出力される音楽の出力のためにも用いられることがある。つまり、スピーカが、電話機20による通話用と音楽鑑賞用とに用いられることがある。カーオーディオなどから出力される音楽についてエコーキャンセルを行わない場合、音楽と通話に関する音声とを分離し、音楽については遅延部により遅延処理を行わず、通話に関する音声のみ遅延処理を行えばよい。以下、このように音楽と通話とを分離した、第4実施形態によるエコーキャンセル装置について説明する。
図9は、第4実施形態によるエコーキャンセル装置10Dの構成例を示す図である。図9において、第4実施形態によるエコーキャンセル装置10Dは、図3に示すエコーキャンセル装置10Aに、第2加算部である加算部161を追加した構成である。加算部161には、音楽データ160が入力される。
加算部161は、加算部108から出力されるデータに、音楽データ160を加算する。音楽データ160が加算されたデータは、DAC13、音量制御部14、AMP15を経由して、各スピーカ16、17への出力信号として出力される。加算部161は、信号処理部100Dによって実現してもよい。
図9に示すエコーキャンセル装置10Dにおいて、各遅延部103、104についての遅延量の設定については、図3に示すエコーキャンセル装置10Aの場合と同様である。
図9に示すエコーキャンセル装置10Dによるエコーキャンセルの動作は、図3に示すエコーキャンセル装置10Aと同様である。音楽と通話に関する音声とを分離し、音楽については遅延部103および104による遅延処理を行わず、通話に関する音声について遅延部103および104で遅延させてマイク18の位置に音が同じタイミングで到達する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数のスピーカ16、17それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、通信相手からの声を、それぞれ遅延させることにより、チャンネル数が複数であっても適応フィルタの数が増加せずに、エコーキャンセルを実現できる。また、複数のスピーカ16、17から出力された音がマイク18に入力される際、各スピーカ16、17からの音が時間軸上でずれて重畳されることはなく、正確なエコーキャンセルを実現できる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、レベル指定部111が可変増幅部106または107を制御する際に、時定数をもってゆっくり変化させる。
上述したように、レベル指定部111は、可変増幅部106または107を制御してレベルを調整する。その調整の際、現在のレベルが目標のレベルに一致するように、可変増幅部106または107を制御する。本実施形態では、目標のレベルに徐々に近づくように可変増幅部106または107を制御する。例えば、現在のレベルとその目標のレベルとの差が5dBである場合、5dBの差がなくなるように可変増幅部106または107を制御するのではなく、例えばレベルを1dBずつ制御する。つまり、可変増幅部106または107の増幅度を急激に変化させるのではなく、ゆるやかに変化させる制御すなわち時定数制御を行う。このように制御することによって、加算部108における加算量は、時定数をもってゆっくり変化する。このため、車両内の通話音声に違和感が生じることなくエコーキャンセルを実現できる。
[エコーキャンセル方法]
上記エコーキャンセル装置10A、10B、10C、10Dにより、以下のエコーキャンセル方法が実現される。図10は、上記エコーキャンセル装置によって実現されるエコーキャンセル方法を示すフローチャートである。
図10に示すように、エコーキャンセル方法は、入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分ける工程(ステップS701)と、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる工程(ステップS702)と、それぞれ遅延させた信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算する工程(ステップS703)と、加算したデータに対応する音を複数のスピーカから出力する工程(ステップS704)と、マイクロホンからの信号を取得する工程(ステップS705)と、入力される音声データを参照データとし、マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する工程(ステップS706)と、を含む。このエコーキャンセル方法によれば、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行い、かつ、処理の負荷を軽減できる。
[エコーキャンセルプログラム]
上記エコーキャンセル装置10A、10B、10C、10Dは、コンピュータを、入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分けるフィルタ部、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる遅延部、それぞれ遅延させた前記信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、前記複数のスピーカから出力する加算部、前記入力される音声データを参照データとし、前記マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する除去処理部、として機能させるためのエコーキャンセルプログラムを利用して実現してもよい。このエコーキャンセルプログラムを利用すれば、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行い、かつ、処理の負荷を軽減できる。
(変形例)
上述した各実施形態では、再生する周波数帯域が互いに異なる2つのスピーカを含む2ウェイスピーカに適用する場合について説明したが、再生する周波数帯域が互いに異なる3つのスピーカを含む3ウェイスピーカに適用することもできる。例えば、ミッドレンジを3ウェイスピーカや、重低音を出力するスーパーウーファを含む3ウェイスピーカで再生する場合、についても、再生する各周波数帯域に対応するフィルタを用意すればよい。
再生する周波数帯域が互いに異なる3つのスピーカを含む3ウェイスピーカに適用する場合、図3中の分析部110は、音声信号400について周波数分析を行う際に、2つのクロスオーバー周波数を基準とする。
図11は、3ウェイスピーカに適用する場合における、分析部110の動作原理を示す概念図である。図11に示すように、スピーカ16の周波数特性SP16’は低い周波数帯域に対応し、スピーカ17の周波数特性SP17は高い周波数帯域に対応する。また、ミッドレンジのスピーカ(図示せず)の周波数特性SPmは周波数特性SP16’と周波数特性SP17との間の周波数帯域に対応する。周波数特性SPmと周波数特性SP17とのクロスオーバー周波数を周波数fc1とし、周波数特性SP16’と周波数特性SPmとのクロスオーバー周波数を周波数fc2とする。
分析部110は、2つのクロスオーバー周波数fc1、fc2を基準として周波数分析を行う。分析部110は、音声信号400について周波数分析を行うことにより、周波数fc1より高い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、周波数fc1より低い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、周波数fc2より高い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、周波数fc2より低い周波数の音が音声信号400に含まれているのか否か、を検出することができる。
また、上述した各実施形態によるエコーキャンセル装置は、帯域が分割され、かつ、スピーカ出力後に分岐された複数のスピーカとマイクとを有する装置について適用することができる。例えば、インカーコミュニケーションをはじめとする自動車内でのハンズフリーシステムの他、テレビ電話、移動電話機やスマートフォンを用いたハンズフリー通話、テレビ会議システム、カラオケ装置について適用できる。また、通話相手が音声認識装置やAI(Artificial Intelligence)アシスタントである場合であっても上述した各実施形態によるエコーキャンセル装置を適用することができる。
図12は、第3実施形態において、通話相手がAIアシスタントである場合における、テーブル113Aの内容の例を示す図である。図12に示すように、本例のテーブル113Aにおいて、発信元であるAIアシスタントAI1に対して可変増幅部106の増幅度が「5dB」、可変増幅部107の増幅度が「0dB」である。また、本例のテーブル113Aにおいて、他の発信元であるAIアシスタントAI2に対して可変増幅部106の増幅度が「5dB」、可変増幅部107の増幅度が「5dB」である。
例えば、発信元であるAIアシスタントAI1が男声など低い周波数の声であることが予め分かっているとする。このため、ウーファー16に対応する可変増幅部107の増幅度を「5dB」とし、ツイータ17に対応する可変増幅部106の増幅度を低下させて「0dB」とする。また、発信元であるAIアシスタントAI2が女声など低い周波数および高い周波数の両方を含む声であることが予め分かっているとする。このため、ウーファー16に対応する可変増幅部107の増幅度を「5dB」とし、ツイータ17に対応する可変増幅部106の増幅度を「5dB」とする。
図7を参照して説明した第3実施形態の場合と同様に、データ402に基づいてテーブル113Aを参照することによって、可変増幅部106および107に設定すべきレベルの値を得ることができる。レベル指定部111Aは、テーブル113Aを参照して得たレベルの値になるように制御信号を出力し、可変増幅部106および107の増幅度を変化させる。これにより、AIアシスタントの声の周波数に応じて、加算部108において加算するバランスを適切に設定することができる。
(まとめ)
以上説明したように、入力される音声データのうち、互いに異なる周波数帯域の信号成分を、ハイパスフィルタ101、ローパスフィルタ102でそれぞれ通過させる。それぞれ通過した互いに異なる周波数帯域の信号成分を、スピーカ16、17それぞれからマイク18までの音の到達時間に基づいて、遅延部103、104でそれぞれ遅延させた後で音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算する。加算したデータに対応する信号をスピーカ16、17へ出力する。入力される音声データを参照データとし、マイク18から取得した信号に対応する入力デジタルデータから参照データに対応する成分を除去する。こうすることにより、再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカに関してエコーキャンセル処理を行い、かつ、処理の負荷を軽減できる。
10、10A、10B、10C、10D エコーキャンセル装置
11、15 増幅部
12 アナログデジタル変換部
13 デジタルアナログ変換部
14 音量制御部
16、17 スピーカ
18 マイクロホン
19 ハイパスフィルタ
20 電話機
100、100A、100B、100C、100D 信号処理部
101 ハイパスフィルタ
102 ローパスフィルタ
103、104 遅延部
105 除去処理部
106、107 可変増幅部
108、161 加算部
110 分析部
111、111A レベル指定部
112 発話区間検出部
113,113A テーブル
1051 適応フィルタ
1052 減算部

Claims (10)

  1. 再生する周波数帯域が互いに異なる複数のスピーカの出力を入力とするマイクロホンからの信号を取得する取得部と、
    入力される音声データのうち、互いに異なる前記周波数帯域の信号成分を、それぞれ通過させる複数のフィルタ部と、
    前記複数のフィルタ部をそれぞれ通過した互いに異なる周波数帯域の信号成分を、前記複数のスピーカそれぞれから前記マイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる遅延部と、
    互いに異なる前記周波数帯域のうち、前記音声データに含まれていない周波数帯域について、前記信号成分のレベルを指定するレベル指定部と、
    前記遅延部によってそれぞれ遅延された信号成分のレベルを、前記レベル指定部によって指定されたレベルに基づいてそれぞれ調整するレベル調整部と、
    前記レベル調整部によってレベルがそれぞれ調整された信号成分を加算する第1加算部と、
    前記第1加算部による加算データに対応する信号を前記複数のスピーカへ出力する出力部と、
    前記音声データを参照データとし、前記取得部が取得した信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する処理を行う除去処理部と、を含むエコーキャンセル装置。
  2. 前記音声データの周波数帯域を分析して前記音声データに含まれていない周波数帯域を検出する分析部をさらに含み、
    前記レベル指定部は、前記分析部によって検出された、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを指定する、
    請求項1に記載のエコーキャンセル装置。
  3. 前記入力される音声データの発話区間を検出する発話区間検出部をさらに含み、
    前記レベル調整部は、前記発話区間検出部が検出した発話区間において前記信号成分のレベルを調整し、かつ、前記発話区間検出部が検出した発話区間以外の区間において前記信号成分のレベルを低下させる請求項1または請求項2に記載のエコーキャンセル装置。
  4. 前記レベル指定部は、前記音声データの発信元に基づいて、前記音声データの発信元に関する情報と前記レベル調整部に指定すべきレベルとを対応付けるテーブルを参照し、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを指定する、
    請求項1に記載のエコーキャンセル装置。
  5. 前記レベル調整部は、前記信号成分のレベルを調整する際、
    調整の目標のレベルに向けて徐々に近づくように、前記信号成分のレベルを調整する、
    請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のエコーキャンセル装置。
  6. 前記遅延部は、前記マイクロホンと前記複数のスピーカそれぞれとの距離に基づいて算出される、前記音の到達時間に基づいて遅延量が設定される請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のエコーキャンセル装置。
  7. 前記第1加算部から出力されるデータに、音楽データを加算して前記スピーカへの出力信号として出力する第2加算部をさらに含む請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のエコーキャンセル装置。
  8. 前記除去処理部は、
    前記参照データが入力され、前記スピーカの出力から前記マイクロホンへの入力までの空間の特性に基づいて前記参照データを処理して生成したキャンセルデータを出力する適応フィルタと、
    前記キャンセルデータを前記入力デジタルデータから減算する減算部と、を含む請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のエコーキャンセル装置。
  9. 入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分ける工程と、
    互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる工程と、
    それぞれ遅延させた前記信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、加算したデータに対応する音を前記複数のスピーカから出力する工程と、
    前記マイクロホンからの信号を取得する工程と、
    前記入力される音声データを参照データとし、前記マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する工程と、
    を含むエコーキャンセル方法。
  10. コンピュータを、
    入力される音声データについて、互いに異なる周波数帯域の信号成分に分けるフィルタ部、
    互いに異なる周波数帯域の信号成分を、複数のスピーカからマイクロホンまでの音の到達時間に基づいて、それぞれ遅延させる遅延部、
    それぞれ遅延させた前記信号成分について、前記音声データに含まれていない周波数帯域の信号成分のレベルを変化させて加算し、前記複数のスピーカから出力する加算部、
    前記入力される音声データを参照データとし、前記マイクロホンからの信号に対応する入力デジタルデータから前記参照データに対応する成分を除去する除去処理部、
    として機能させるための
    エコーキャンセルプログラム。
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