JP2021095544A - 硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】硬化開始温度が低く、加工性に優れる硬化性組成物を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物。[式中、R1、R2は、同一又は異なって、反応性官能基を示し、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L1は、二種の特定の構造を含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。][式中、R3は、R1及びR2のうちの少なくとも一方に対して求核反応性を有する基を示し、R4は、R1及びR2のうちの少なくとも他方に対して求核反応性を有する基を示し、D3、D4は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L2は、二種の特定の構造を含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。]【選択図】なし
Description
本発明は、硬化性組成物、及びその硬化物又は半硬化物を含む構造体に関する。
エンジニアリングプラスチックは高い耐熱性と機械特性とを併せ持つ高性能材料であり、各種部品の小型化、軽量化、高性能化、高信頼性化に必須の材料として重用されている。
しかし、例えばポリイミドはエンジニアリングプラスチックの1つであるが、溶剤に溶解し難く、且つ融解し難いため用途に応じた成形体を得ることが困難であった(特許文献1参照)。
特に、スーパーエンジニアリングプラスチックとも呼ばれるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、連続使用温度が260℃で、耐熱性、難燃性、及び電気特性に優れた性能を有する熱可塑性樹脂であるが、融点が343℃であるためとりわけ融解し難く、溶剤にも溶解し難いため、加工性に劣ることから、成形体を得ることが困難であった(特許文献2参照)。
一方、PEEK骨格を有する硬化物を成形可能である硬化性化合物が知られている。当該硬化性化合物は、融解しやすく、また溶剤溶解性に優れるため、取り扱い性及び加工性が良好であり、容易にPEEK骨格を有する硬化物及び成形体を得ることができる(特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に開示の硬化性化合物は、硬化開始温度が230℃以上であり、硬化物を形成する際にはこれ以上の温度を加えることが必要であった。このため、硬化物の形成にあたり、硬化開始温度が低いなど、さらに加工性に優れる材料が求められることがある。
従って、本発明の目的は、硬化開始温度が低く、加工性に優れる硬化性組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の二種の硬化性化合物を含む硬化性組成物によれば、硬化開始温度が低く、加工性に優れることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物を提供する。
[式中、R1、R2は、同一又は異なって、反応性官能基を示し、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L1は、下記式(I)で表される構造と下記式(II)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。
(式中、Ar1〜Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X1は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y1は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n1は0以上の整数を示す)]
[式中、R3は、上記式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも一方に対して求核反応性を有する基を示し、R4は、上記式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも他方に対して求核反応性を有する基を示し、D3、D4は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L2は、下記式(III)で表される構造と下記式(IV)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。
(式中、Ar4〜Ar6は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X2は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y2は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n2は0以上の整数を示す)]
式(1)中のR1、R2は、同一又は異なって、R1及び/又はR2と反応性を有することが好ましい。特に、式(1)中のR1、R2は、同一又は異なって、マレイミド構造を有することが好ましい。
式(2)中のR3、R4は、同一又は異なって、アミノ基、ヒドロキシ基、又はメルカプト基であることが好ましい。
式(I)及び式(II)中のAr1〜Ar3は、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であり、
式(III)及び式(IV)中のAr4〜Ar6は、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
式(III)及び式(IV)中のAr4〜Ar6は、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
式(I)で表される構造及び式(III)で表される構造は、同一又は異なって、ベンゾフェノン由来の構造であることが好ましい。
式(1)で表される化合物全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であり、式(2)で表される化合物全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であることが好ましい。
式(II)で表される構造及び式(IV)で表される構造は、同一又は異なって、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造であることが好ましい。
式(1)で表される化合物全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であり、
式(2)で表される化合物全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であることが好ましい。
式(2)で表される化合物全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であることが好ましい。
また、本発明は、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物を反応させ、上記硬化性組成物を硬化させて成形体を得る、成形体の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記硬化性組成物を含む接着剤を提供する。
また、本発明は、上記硬化性組成物を含む塗料を提供する。
また、本発明は、上記硬化性組成物を含む封止剤を提供する。
また、本発明は、上記硬化性組成物を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を含む硬化性化合物を硬化させて、上記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を得る、積層体の製造方法を提供する。
上記積層体の製造方法では、プラスチック製の支持体上に、上記硬化性組成物の溶融物を塗布し、固化して、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を含む薄膜を得、得られた薄膜を、上記支持体から剥離して基板上に積層し、加熱処理を施してもよい。
本発明の硬化性組成物は、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物が反応して硬化する際の硬化開始温度が低く、加工性に優れる。このため、本発明の硬化性組成物を硬化することにより、容易に硬化物を形成することができる。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、後述の式(1)で表される化合物(以後、「化合物(1)」と称する場合がある)と、式(2)で表される化合物(以後、「化合物(2)」と称する場合がある)とを含む。化合物(1)及び化合物(2)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
本発明の硬化性組成物は、後述の式(1)で表される化合物(以後、「化合物(1)」と称する場合がある)と、式(2)で表される化合物(以後、「化合物(2)」と称する場合がある)とを含む。化合物(1)及び化合物(2)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
式(1)中、R1、R2は、同一又は異なって、反応性官能基を示し、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L1は、下記式(I)で表される構造と下記式(II)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。
(式中、Ar1〜Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X1は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y1は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n1は0以上の整数を示す)
式中、R1、R2は、反応性官能基を示す。R1、R2は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。具体的には、R1及びR2は、同一又は異なって、化合物(2)におけるR3及び/又はR4と反応性を有する基である。これにより、本発明の硬化性組成物の硬化時に、化合物(1)と化合物(2)とが反応して結合を形成することにより、硬化物及び成形体を形成することができる。
また、R1、R2は、同一又は異なって、R1及び/又はR2と反応性を有することが好ましい。この場合、化合物(1)が自己反応性を有し、本発明の硬化性組成物の硬化時に、化合物(1)同士が反応して結合を形成することができる。
R1、R2としての反応性官能基は、カルボニル基及び当該カルボニル基を構成する炭素原子に隣接する炭素原子を含む基が好ましい。また、化合物(1)が自己反応性を有する観点から、ラジカル反応性官能基を含むことが好ましく、より好ましくはラジカル反応性炭素−炭素不飽和結合を含む。
R1、R2としての反応性官能基は、中でも、環状イミド構造を有する反応性官能基が好ましく、イミド基を構成する炭素原子がラジカル反応性炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子である環状イミド構造を有することがより好ましい。このような反応性官能基としては、下記式(r)で表される基が挙げられる。
(式中の窒素原子から伸びる結合手は、D1又はD2と結合する)
上記式(r)中、n’は0以上の整数(例えば0〜3の整数、好ましくは0又は1)である。R5〜R8は、同一又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基(好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基)、芳香族炭化水素基(好ましくは、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基)、又は上記飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基から選択される2個以上の基が結合した基を示す。R5〜R8から選択される2つの基は、互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
R5〜R8から選択される2つの基が互いに結合して、隣接する炭素原子と共に形成していてもよい環としては、例えば、炭素数3〜20の脂環、炭素数6〜14の芳香環が挙げられる。上記炭素数3〜20の脂環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜8員)程度のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロへキセン環等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケン環;パーヒドロナフタレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。上記炭素数6〜14の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。
上記式(r)で表される基としては、中でも、マレイミド構造を有する基が好ましく、特に好ましくはマレイミド基、3−フェニルマレイミド基である。なお、上記マレイミド構造を有する基は、マレイミド構造を構成する窒素原子が式(1)中のD1又はD2と結合する。
上記マレイミド基及び3−フェニルマレイミド基には一種又は二種以上の置換基が結合していてもよい。上記置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
上記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
上記炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t−ブチルオキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
式(1)中、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、これらが複数個連結した基などが挙げられる。
上記2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基などが挙げられる。炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基などが挙げられる。
上記2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基などが挙げられ、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6〜14のアリーレン基などが挙げられ、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基、1,8−ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基などが挙げられる。
上記2価の複素環式基を構成する複素環としては、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が挙げられる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも一種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)を有する3〜10員環(好ましくは4〜6員環)、及びこれらの縮合環が挙げられる。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ−ブチロラクトン環等の5員環;4−オキソ−4H−ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4−オキソ−4H−クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4−オキソ−4H−チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)などが挙げられる。2価の複素環式基は上記複素環の構造式から2個の水素原子を除いた基である。
上記D1、D2としては、中でも、特に優れた耐熱性を有する硬化物が得られる点で、2価の芳香族炭化水素基を含むことが好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくは下記式(d-1)〜(d-4)で表される基から選択される基であり、特に好ましくは下記式(d-1)で表される基(1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、又は1,4−フェニレン基)である。なお、下記式中の結合手の付き位置は、特に限定されない。
また、上記D1、D2は、上記2価の芳香族炭化水素基と共に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、及びイミド結合からなる群より選択される少なくとも1つが連結した基が好ましく、上記2価の芳香族炭化水素基にエーテル結合が連結した基が特に好ましい。カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、及びイミド結合からなる群より選択される少なくとも1つが連結した基である場合、これらの基又は結合は、式(1)中のL1と結合することが好ましい。
式(1)中のL1は、上記式(I)で表される構造と上記式(II)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。式(I)、及び式(II)中のAr1〜Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X1は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y1は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n1は0以上の整数を示し、例えば0〜5の整数、好ましくは1〜5の整数、特に好ましくは1〜3の整数である。
上記芳香環としては、芳香族炭化水素環が挙げられ、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素環が挙げられる。中でも炭素数6〜10の芳香族炭化水素環が好ましい。
上記連結基としては、例えば、炭素数1〜5の2価の炭化水素基や、炭素数1〜5の2価の炭化水素基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基などが挙げられる。
上記炭素数1〜5の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基;ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基等の炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、1−メチルプロピニレン等の炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキニレン基などが挙げられる。中でも、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、特に炭素数1〜5の分岐鎖状アルキレン基が好ましい。
従って、上記Ar1〜Ar3としては、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は、炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましく、特に、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は、炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
式(I)中のAr1、Ar2としては、中でも、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基が好ましく、特に、上記式(a-1)又は(a-2)で表される基が好ましい。また、X1としては、中でも、−CO−又は−SO2−が好ましい。式(I)で表される構造としては、特に、ベンゾフェノン由来の構造を含むことが好ましい。
化合物(1)全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜62重量%、特に好ましくは15〜60重量%である。
式(II)中のAr3としては、中でも、上記式(a-1)、(a-4)、及び(a-5)で表される基から選択される基が好ましい。また、Y1としては、中でも、−S−、−O−、又は−SO2−が好ましい。式(II)で表される構造としては、特に、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造を含むことが好ましく、特に、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造を含むことが好ましい。
化合物(1)全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜53重量%である。
また、化合物(1)全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜53重量%である。
上記式(L-1)中のmは、分子鎖(=上記式(L-1)で表される2価の基)中に含まれる丸括弧内に示される繰り返し単位の数の平均値、すなわち、平均重合度であり、例えば2〜50、好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜10である。mが2以上であると、得られる硬化物の強度や耐熱性が高くなる傾向がある。一方、mが50以下であると、溶剤溶解性が向上する傾向がある。また、溶融温度が低い傾向もある。なお、mの値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。また、上記式(L-1)中のn1’は、分子鎖(=上記式(L-1)で表される2価の基)中に含まれる内側の角括弧内に示される繰り返し単位の数であり、0以上の整数を示す。Ar1〜Ar3は上記に同じである。なお、上記式(L-1)中の複数のAr1は同じ基を示す。Ar2、Ar3についても同様である。
上記式中のm1、m2は、分子鎖(=上記式(L-1-1)又は(L-1-2)で表される2価の基)中に含まれる丸括弧内に示される繰り返し単位の数の平均値、すなわち、平均重合度であり、例えば2〜50、好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜10である。なお、m1、m2の値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。
化合物(1)の窒素原子含有量は、例えば2.8〜0.10重量%、好ましくは2.5〜0.15重量%、より好ましくは2.0〜0.20重量%、さらに好ましくは1.8〜0.40重量%、特に好ましくは1.5〜0.70重量%である。窒素原子含有量は、例えばCHN元素分析により求めることができる。窒素原子含有量が上記範囲であると、溶剤溶解性に優れ、靱性や耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。
化合物(1)の発熱ピーク温度は、硬化性官能基の種類に依存するが、例えば170〜450℃、好ましくは200〜430℃、特に好ましくは220〜420℃である。発熱ピーク温度は、DSC測定により求められる。
化合物(1)の数平均分子量(Mn)は、例えば1000〜15000、好ましくは1000〜14000、さらに好ましくは1100〜12000、特に好ましくは1200〜10000である。上記数平均分子量が上記範囲内であると、溶剤への溶解性は高く、溶融粘度は低く、成形加工が容易であるとともに、硬化後の成形体が高い靱性を発現する。なお、Mnはゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定(溶剤:クロロホルム、標準ポリスチレン換算)に付して求められる。
化合物(1)全量に占める芳香環由来の構造の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜80重量%である。上記割合が上記範囲内であると、高い溶剤溶解性と低い溶融粘度を有し、その硬化物は熱安定性を有する。
化合物(1)のガラス転移温度(Tg)は、例えば280℃以下であり、好ましくは80〜280℃、より好ましくは80〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。上記Tgが上記範囲内であると、溶融成形性に優れる。なお、TgはDSC法で測定することができる。
化合物(1)は溶剤溶解性に優れ、その溶解度は、25℃において溶剤100gに対して、例えば1g以上、好ましくは5g以上、特に好ましくは10g以上である。
化合物(1)は、例えば、国際公開第2018/107453号に記載されている合成法を利用して製造することができる。
式(2)中、R3は、式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも一方に対して求核反応性を有する基を示し、R4は、式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも他方に対して求核反応性を有する基を示し、D3、D4は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。L2は、下記式(III)で表される構造と下記式(IV)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。
(式中、Ar4〜Ar6は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X2は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y2は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n2は0以上の整数を示す)
式中、R3は式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも一方(すなわちR1及び/又はR2)に対して求核反応性を有する基を示す。また、R4は、式(1)におけるR1及びR2のうちの少なくとも他方に対して求核反応性を有する基を示す。すなわち、R3がR1に対して求核反応性を有しR2に対して求核反応性を有しない場合、R4は少なくともR2に対して求核反応性を有する。また、R3がR2に対して求核反応性を有しR1に対して求核反応性を有しない場合、R4は少なくともR1に対して求核反応性を有する。また、R3がR1及びR2に対して求核反応性を有する場合、R4はR1及び/又はR2に対して求核反応性を有する。
R3、R4は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。具体的には、R3及びR4は、同一又は異なって、R1及びR2とは異なる基であり、化合物(1)におけるR1及び/又はR2と反応性を有する基である。これにより、本発明の硬化性組成物の硬化時に、化合物(1)と化合物(2)とが反応して結合を形成することにより、硬化物及び成形体を形成することができる。
R3、R4としての求核反応性を有する基としては、R1及び/又はR2に対して求核反応が可能であるように、R1及びR2に応じて適宜選択される。R3、R4としては、中でも、アミノ基、ヒドロキシ基、又はメルカプト基が好ましい。この場合、R1、R2がカルボニル基及び当該カルボニル基を構成する炭素原子に隣接する炭素原子を含む基であると、求核反応が進行しやすく、本発明の硬化性組成物の硬化開始温度がより低くなる傾向がある。
上記アミノ基は、窒素原子上に1個又は2個の水素原子を有していればよく、窒素原子上に有機基(=D3又はD4以外の有機基)が置換していてもよい。中でも、化合物(1)と化合物(2)の立体障害を抑制し反応性がより高くなる観点から、窒素原子上に有機基が置換されていない無置換アミノ基であることが好ましい。
式(2)中、D3、D4は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。上記連結基としては、上述のD1、D2における連結基として例示及び説明されたものが挙げられる。
上記D3、D4としては、中でも、特に優れた耐熱性を有する硬化物が得られる点で、2価の芳香族炭化水素基を含むことが好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくは上記式(d-1)〜(d-4)で表される基から選択される基であり、特に好ましくは上記式(d-1)で表される基(1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、又は1,4−フェニレン基)である。なお、上記式中の結合手の付き位置は、特に限定されない。
また、上記D3、D4は、上記2価の芳香族炭化水素基と共に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、及びイミド結合からなる群より選択される少なくとも1つが連結した基が好ましく、上記2価の芳香族炭化水素基にエーテル結合が連結した基が特に好ましい。カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、及びイミド結合からなる群より選択される少なくとも1つが連結した基である場合、これらの基又は結合は、式(2)中のL2と結合することが好ましい。
特に、上記D3及びD4の組み合わせは、上記D1及びD2の組み合わせと同じであることが好ましい。すなわち、D1とD3が同じであり且つD2とD4が同じであるか、又は、D2とD3が同じであり且つD1とD4が同じであることが好ましい。この場合、化合物(1)と化合物(2)の構造がより近くなる。
式(2)中のL2は、上記式(III)で表される構造と上記式(IV)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。式(III)、及び式(IV)中のAr4〜Ar6は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。X2は−CO−、−S−、又は−SO2−を示し、Y2は、同一又は異なって、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を示す。n2は0以上の整数を示し、例えば0〜5の整数、好ましくは1〜5の整数、特に好ましくは1〜3の整数である。
上記芳香環としては、上述のAr1〜Ar3における芳香環として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、炭素数6〜14の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環がより好ましい。
上記連結基としては、上述のAr1〜Ar3に含まれ得る連結基として例示及び説明されたものが挙げられる。
従って、上記Ar4〜Ar6としては、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は、炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましく、特に、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は、炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
上記Ar4〜Ar6としては、特に、同一又は異なって、上記式(a-1)〜(a-5)で表される基から選択される基が好ましい。なお、式中の結合手の付き位置は、特に限定されない。
式(III)中のAr4、Ar5としては、中でも、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基が好ましく、特に、上記式(a-1)又は(a-2)で表される基が好ましい。また、X2としては、中でも、−CO−又は−SO2−が好ましい。式(III)で表される構造としては、特に、ベンゾフェノン由来の構造を含むことが好ましい。
特に、上記Ar4及びAr5の組み合わせは、上記Ar1及びAr2の組み合わせと同じであることが好ましい。また、上記X2は上記X1と同じであることが好ましい。すなわち、式(I)と式(III)は同じであることが好ましい。この場合、化合物(1)と化合物(2)の構造がより近くなる。
化合物(2)全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜62重量%、特に好ましくは15〜60重量%である。
式(IV)中のAr6としては、中でも、上記式(a-1)、(a-4)、及び(a-5)で表される基から選択される基が好ましい。また、Y2としては、中でも、−S−、−O−、又は−SO2−が好ましい。式(IV)で表される構造としては、特に、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造を含むことが好ましく、特に、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造を含むことが好ましい。
特に、上記Ar6は上記Ar3と同じであることが好ましい。また、上記Y2は上記Y1と同じであることが好ましい。また、上記n2は上記n1と同じであることが好ましい。すなわち、式(II)と式(IV)は同じであることが好ましい。この場合、化合物(1)と化合物(2)の構造がより近くなる。
化合物(2)全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜53重量%である。
また、化合物(2)全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜53重量%である。
上記式(L-2)中のkは、分子鎖(=上記式(L-2)で表される2価の基)中に含まれる丸括弧内に示される繰り返し単位の数の平均値、すなわち、平均重合度であり、例えば2〜50、好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜10である。kが2以上であると、得られる硬化物の強度や耐熱性が高くなる傾向がある。一方、kが50以下であると、溶剤溶解性が向上する傾向がある。また、溶融温度が低い傾向もある。なお、kの値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。また、上記式(L-2)中のn2’は、分子鎖(=上記式(L-2)で表される2価の基)中に含まれる内側の角括弧内に示される繰り返し単位の数であり、0以上の整数を示す。Ar4〜Ar6は上記に同じである。なお、上記式(L-2)中の複数のAr4は同じ基を示す。Ar5、Ar6についても同様である。
上記式中のk1、k2は、分子鎖(=上記式(L-2-1)又は(L-2-2)で表される2価の基)中に含まれる丸括弧内に示される繰り返し単位の数の平均値、すなわち、平均重合度であり、例えば2〜50、好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜10である。なお、k1、k2の値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。
特に、上記L2は上記L1と同じであることが好ましい。この場合、化合物(1)と化合物(2)の構造がより近くなる。
したがって、本発明の硬化性組成物において、化合物(1)と化合物(2)は、R1〜R4を除き、類似の構造(最も好ましくは同じ構造)であることが好ましい。すなわち、D1とD3、D2とD4、L1とL2は、それぞれ、同じであることが最も好ましい。化合物(1)と化合物(2)が、R1〜R4を除き、近い構造であるほど、化合物(1)と化合物(2)の配向性がより近くなるものと推測され、化合物(1)と化合物(2)の反応物が均一に分散された硬化物が得られる傾向がある。
化合物(2)の窒素原子含有量は、例えば2.8〜0.10重量%、好ましくは2.5〜0.15重量%、より好ましくは2.0〜0.20重量%、さらに好ましくは1.8〜0.50重量%、特に好ましくは1.5〜0.70重量%である。窒素原子含有量は、例えばCHN元素分析により求めることができる。窒素原子含有量が上記範囲であると、溶剤溶解性に優れ、靱性や耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。
化合物(2)の数平均分子量(Mn)は、例えば1000〜15000、好ましくは1000〜14000、さらに好ましくは1100〜12000、特に好ましくは1200〜10000である。上記数平均分子量が上記範囲内であると、溶剤への溶解性は高く、溶融粘度は低く、成形加工が容易であるとともに、硬化後の成形体が高い靱性を発現する。なお、Mnはゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定(溶剤:クロロホルム、標準ポリスチレン換算)に付して求められる。
化合物(2)全量に占める芳香環由来の構造の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜80重量%である。上記割合が上記範囲内であると、高い溶剤溶解性と低い溶融粘度を有し、その硬化物は熱安定性を有する。
化合物(2)のガラス転移温度(Tg)は、例えば280℃以下であり、好ましくは80〜280℃、より好ましくは80〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。上記Tgが上記範囲内であると、溶融成形性に優れる。なお、TgはDSC法で測定することができる。
化合物(2)は溶剤溶解性に優れ、その溶解度は、25℃において溶剤100gに対して、例えば1g以上、好ましくは5g以上、特に好ましくは10g以上である。
化合物(2)は、例えば、国際公開第2018/107453号に記載されている合成法を利用して化合物(1)を製造する際、化合物(1)を製造する過程で得ることができる。
本発明の硬化性組成物における化合物(1)と化合物(2)の質量比(前者/後者)は、例えば1/10〜10/1であり、好ましくは1/5〜5/1重量%、より好ましくは1/2〜2/1、特に好ましくは0.8〜1.2である。
本発明の硬化性組成物は、化合物(1)及び化合物(2)以外の硬化性化合物を含有していてもよいが、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物の総量(100重量%)における化合物(1)及び化合物(2)の占める合計割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。なお、上限は100重量%である。
本発明の硬化性組成物は化合物(1)及び化合物(2)以外に、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。他の成分としては公知乃至慣用の添加剤を使用することができ、例えば、化合物(1)及び化合物(2)以外の硬化性化合物、触媒、フィラー、有機樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーが挙げられる。上記フィラーの原料としては、例えば、炭素材(例えば、カーボンブラック、人造黒鉛、膨張黒鉛、天然黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等)、炭素化合物(炭化ケイ素、炭化フッ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン等)、窒素化合物(窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化炭素、窒化ケイ素等)、鉱物又はセラミックス類(タルク、マイカ、ゼオライト、フェライト、トルマリン、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト等)、金属単体又は合金(例えば、金属シリコン、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレス等)、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化ベリリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)などが挙げられる。
上記フィラーの含有量は、本発明の硬化性組成物に含まれる硬化性化合物の総量100重量部に対して、例えば0.1〜95重量部の範囲であり、用途に応じて適宜調整することができる。
本発明の硬化性組成物は化合物(1)及び化合物(2)が溶剤に溶解した溶剤溶解物であってもよい。上記溶剤としては、硬化性化合物が良溶解性を示す溶剤が好ましく、例えば、ケトン、アミド、ハロゲン化炭化水素、スルホキシド、エーテル、エステル、ニトリル、トルエン等の芳香族炭化水素、及びこれらの二種以上の混合液が好ましく、特に、エーテル、ケトン、アミド、ハロゲン化炭化水素、スルホキシド、及び芳香族炭化水素から選択される少なくとも一種の溶剤が好ましく、中でも、エーテル、アミド、ハロゲン化炭化水素、スルホキシド、及び芳香族炭化水素から選択される少なくとも一種の溶剤が好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は架橋剤や硬化促進剤を含有せずとも、例えば、本発明の硬化性組成物全量における架橋剤及び硬化促進剤の合計含有量が3重量%以下、好ましくは1重量%未満であっても、比較的低い温度で速やかに硬化物を形成することができる。また、硬化物中において、未反応の硬化促進剤や、硬化促進剤の分解物の含有量を極めて低く抑制することができるため、これらに由来するアウトガスの発生を抑制することができる。
本発明の硬化性組成物は、加熱処理を施すことにより化合物(1)と化合物(2)とが反応し、さらには場合によって化合物(1)同士が反応することで硬化して、硬化物を形成する。加熱処理を施す前に、乾燥処理を施して溶剤を揮発させる工程を設けてもよい。また、加熱処理は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。
加熱処理温度は、硬化性組成物に含まれる化合物(1)が含有する反応性官能基と化合物(2)が含有する求核反応性を有する基との組み合わせによって適宜調整することができる。例えば、化合物(1)におけるR1及びR2がマレイミド基であり、化合物(2)におけるR3及びR4が無置換アミノ基である場合、200℃程度の温度で加熱することで硬化物を形成することができる。
なお、加熱は温度を一定に保持した状態で行ってもよく、段階的に変更して行ってもよい。加熱温度は、加熱時間に応じて適宜調整することができ、例えば、加熱時間の短縮を所望する場合は加熱温度を高めに設定することが好ましい。化合物(1)及び化合物(2)は芳香環由来の構造の割合が高いため、高温で加熱しても分解することなく硬化物(詳細には、超耐熱性を有する硬化物)を形成することができ、高温で短時間加熱することにより優れた作業性で効率よく硬化物を形成することができる。なお、加熱手段は特に限定されることがなく、公知乃至慣用の手段を利用することができる。
さらに、本発明の硬化性組成物は硬化反応を中途で一旦停止して、半硬化物(Bステージ)を形成することもできる。半硬化物は、加熱により一時的に流動性を発現し、段差に追従させることができる。また、さらに加熱処理を施すことにより、超耐熱性、難燃性、及び良好な誘電特性を有する硬化物を形成することができる。
上記半硬化物の硬化度は、例えば85%以下(例えば10〜85%、特に好ましくは15〜75%、さらに好ましくは20〜70%)である。
なお、半硬化物の硬化度は、硬化前(未硬化)の硬化性組成物の発熱量、及びその半硬化物の発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1−(半硬化物の発熱量/未硬化の硬化性組成物の発熱量)]×100
硬化度(%)=[1−(半硬化物の発熱量/未硬化の硬化性組成物の発熱量)]×100
本発明の硬化性組成物の硬化物は耐熱性に優れ、昇温速度10℃/分(窒素中)で測定される5%重量減少温度(Td5)は、例えば300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは450℃以上である。5%重量減少温度(Td5)の上限は、例えば600℃、好ましくは550℃、特に好ましくは530℃である。なお、5%重量減少温度は、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定)により測定できる。
従って、本発明の硬化性組成物は、周知慣用の成形方法により成形し、その後(必要に応じて、乾燥処理を施し)加熱処理を施すことにより、上記硬化性組成物の硬化物若しくは半硬化物からなる成形体を製造することができる。
本発明の硬化性組成物を成形し、必要に応じて乾燥することにより、上記硬化性組成物の固化物(好ましくは、化合物(1)と化合物(2)の固化物)に所望の形状を付与することができ、上記固化物からなる成形体が得られる。上記固化物からなる成形体は、加熱により一時的に流動性若しくは接着性を発現し、二次成形や他の部材との接着が可能となる。また、所望の形状が付与された固化物を加熱処理に付すと、上記硬化性組成物の硬化物若しくは半硬化物(好ましくは、化合物(1)と化合物(2)の硬化物若しくは半硬化物)からなる成形体が得られる。なお、成形体の形状は特に制限がなく、用途に応じた形状を適宜選択することができる。
また、本発明の硬化性組成物は、基板に塗布して加熱処理を施すことにより、基板に対する密着性に優れる硬化物が得られる。上記基板と硬化物との引張りせん断力(JIS K6850(1999)準拠)は、例えば1MPa以上、好ましくは5MPa以上、特に好ましくは10MPa以上である。なお、引張りせん断力は、引張リ試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を使用して、引張り速度300mm/分、剥離角度180°で測定できる。
本発明の硬化性組成物は、例えば、電子情報機器、家電、自動車、精密機械、航空機、宇宙産業用機器、エネルギー分野(油田掘削パイプ/チューブ、燃料容器)等の過酷な環境温度条件下で使用される複合材(繊維強化プラスチック、プリプレグ等)の成形材料や、遮蔽材料、伝導材料(例えば、熱伝導材料等)、絶縁材料、接着剤(例えば、耐熱性接着剤等)などの機能材料として好ましく使用することができる。その他、封止剤、塗料、インク、シーラント、レジスト、造形材、形成材[スラストワッシャー、オイルフィルター、シール、ベアリング、ギア、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナー、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品;基材、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ、シリコンウェハキャリアー、ICチップトレイ、電解コンデンサトレイ、絶縁フィルム等の半導体・液晶製造装置部品;レンズ等の光学部品;ポンプ、バルブ、シール等のコンプレッサー部品;航空機のキャビン内装部品;滅菌器具、カラム、配管等の医療器具部品や食品・飲料製造設備部品;パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材等の形成材]などとして好ましく使用できる。
本発明の硬化性組成物は、特に、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆するなどの、超耐熱性が求められる環境下で使用する封止剤として好ましく使用することができる。
本発明の硬化性組成物は、接着剤[例えば、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体を積層する用途などの、超耐熱性が求められる環境下で使用する接着剤等]として好ましく使用することができる。
また、本発明の硬化性組成物は、塗料[例えば、半導体材料、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属用の塗料;高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)等の超耐熱性が求められる環境下で使用される塗料等]として好ましく使用することができる。
また、本発明の硬化性組成物は複合材の形成材料としても好ましく使用することができる。本発明の硬化性組成物を使用すれば、化合物(1)及び化合物(2)又はその硬化物若しくはその半硬化物と、繊維と、を含む複合材を容易に製造することができる。上記複合材の形状としては、繊維状やシート状など特に限定されない。
上記繊維としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。上記繊維は、糸状であっても、又シート状に加工されたもの(織布又は不織布)であってもよい。
複合材の製造方法としては特に限定されないが、例えば、本発明の硬化性組成物に繊維を浸漬して、繊維に上記硬化性組成物を含浸させ、その後、必要に応じて含浸させた硬化性組成物を乾燥して溶剤を揮発させる方法などが挙げられる。乾燥後は、加熱処理を施すことで、含浸させた硬化性組成物に含まれる化合物(1)及び化合物(2)を硬化若しくは半硬化させることができ、硬化性組成物の硬化物若しくはその半硬化物と繊維とを含む複合材が得られる。化合物(1)及び化合物(2)の半硬化物と繊維とを含む複合材は、プリプレグなどの中間加工品として好ましく使用できる。
このようにして得られる複合材は、繊維の空隙に上記硬化性化合物が入り込んで硬化した構成を有し、軽量で高強度であり、さらに耐熱性、難燃性、及び絶縁性に優れる。そのため、住宅・建築、スポーツ用具、自動車、航空・宇宙産業分野において、鉄やアルミニウムなどの金属に替わる材料として好ましく使用できる。その他、例えば、消防用被服(防火衣、活動服、救助服・耐熱服)材料;高層建築物、地下街、劇場、車輌などの消防法により難燃化が義務づけられている場所に設置するカーテンや敷物材料;2次電池用セパレーター、燃料電池用セパレーター等のセパレーター;産業用フィルター、車載用フィルター、医療用フィルター等のフィルター;宇宙材料などとして好ましく使用することができる。
[積層体]
本発明の積層体は、化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の硬化物若しくは半硬化物と、基板と、が積層された構成を有する。本発明の積層体には、上記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物/基板、及び基板/上記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物/基板の構成が含まれる。
本発明の積層体は、化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の硬化物若しくは半硬化物と、基板と、が積層された構成を有する。本発明の積層体には、上記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物/基板、及び基板/上記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物/基板の構成が含まれる。
上記基板の素材としては、例えば、半導体材料(例えば、セラミック、SiC、窒化ガリウム等)、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミ合金、銅)などが挙げられる。
上記積層体は、例えば上記硬化性組成物を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物を硬化させて製造することができる。
上記積層体の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
1.化合物(1)及び化合物(2)が固体である場合は固体(例えば、粉末状固体)のまま基板上に載置し、その後加熱処理を施す方法
2.化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の薄膜を基板上にて形成し、その後加熱処理を施す方法
3.化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の薄膜を基板上に積層し、その後加熱処理を施す方法
1.化合物(1)及び化合物(2)が固体である場合は固体(例えば、粉末状固体)のまま基板上に載置し、その後加熱処理を施す方法
2.化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の薄膜を基板上にて形成し、その後加熱処理を施す方法
3.化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の薄膜を基板上に積層し、その後加熱処理を施す方法
加熱処理条件は上述の硬化性組成物の硬化条件と同様の範囲内において適宜設定することができる。
上記方法2の薄膜は、例えば、基板上に化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の溶剤溶解物、或いは溶剤分散物を塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより製造することができる。また、上記薄膜は、基板上に上記硬化性化合物の溶融物を塗布し、得られた塗膜を冷却することにより製造することもできる。
上記方法3において、基板上に積層する薄膜としては、例えば、支持体上に化合物(1)及び化合物(2)を含む硬化性化合物の溶剤溶解物、或いは溶剤分散物を塗布し、得られた塗膜を乾燥した後、支持体から剥離したものを使用することができる。また、上記薄膜として、支持体上に上記硬化性化合物の溶融物を塗布し、得られた塗膜を冷却した後、支持体から剥離したものを使用することもできる。
上記硬化性化合物の溶剤溶解物としては、溶剤を含む本発明の硬化性組成物を好ましく使用することができる。本発明の硬化性組成物を使用した場合、上記硬化性組成物を塗布し、乾燥することで、上記硬化性化合物の固化物からなる薄膜が得られる。
支持体上で形成した薄膜を、支持体から容易に剥離するためには、上記支持体の形成材料として、上記薄膜を形成する温度では融解しない材料を使用する必要がある。例えば硬化性化合物としてPEEKを使用した場合、PEEKは溶剤に溶解し難いので、PEEKの溶融物を基板上に塗布して薄膜を形成する必要があるが、PEEKの融点は343℃であり極めて高温である。そのため、プラスチック製の支持体を使用することは困難であり、金属やガラス製の支持体などが用いられていた。しかし、化合物(1)及び化合物(2)は、室温(1〜30℃)において優れた溶剤溶解性を示す。また、化合物(1)及び化合物(2)は、ポリイミドやフッ素樹脂等のプラスチックが融解しない温度で溶融する。例えば、式(1)中のR1、R2がマレイミド基であり、式(2)中のR3、R4が無置換アミノ基である硬化性化合物の場合、200℃程度で硬化を開始させることができる。そのため、プラスチック製の支持体(例えば、ポリイミド又はフッ素樹脂製の支持体)を使用することができ、例えばプラスチック製ベルトを備えたベルトコンベアにおける上記ベルトを支持体として利用すれば、ベルトコンベアを含む製造ライン上に上記積層体を連続的に製造することができる。
また、化合物(1)及び化合物(2)は硬化収縮が小さく、形状安定性に優れる。そのため、化合物(1)及び化合物(2)の溶融物、溶剤溶解物、或いは溶剤分散物を支持体上等に均一に塗布すれば、表面が平滑な薄膜が得られ、この薄膜を硬化すれば、表面平滑性に優れた硬化物又は半硬化物を形成することができる。そのため、上記硬化物又は半硬化物は、可とう性や形状追従性が低い基板の表面にも良好に密着して、基板と強固に接着することができる。
上記積層体は、電子回路基板に好ましく使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
調製例1(ジアミン(1)の製造)
撹拌装置、窒素導入管、及びディーンスターク装置を備えた500mL(三ツ口)フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを27.50g、レゾルシノールを11.56g、無水炭酸カリウムを21.77g、N−メチル−2−ピロリドンを154mL、およびトルエン77mLを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら加熱し、130〜140℃で4時間トルエンを還流させた。その後、さらに加熱して170〜180℃でトルエンを留去した。さらに、170〜180℃で10時間撹拌を継続した後、室温に戻した。
撹拌装置、窒素導入管、及びディーンスターク装置を備えた500mL(三ツ口)フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを27.50g、レゾルシノールを11.56g、無水炭酸カリウムを21.77g、N−メチル−2−ピロリドンを154mL、およびトルエン77mLを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら加熱し、130〜140℃で4時間トルエンを還流させた。その後、さらに加熱して170〜180℃でトルエンを留去した。さらに、170〜180℃で10時間撹拌を継続した後、室温に戻した。
得られた生成物が入ったフラスコに、4−アミノフェノールを5.04g、無水炭酸カリウムを6.39g、N−メチル−2−ピロリドンを20mL、トルエンを100mL添加した。再び、窒素雰囲気下で撹拌しながら加熱し、130〜140℃で3時間トルエンを還流させた。その後、加熱して170〜180℃でトルエンを留去し、さらに170〜180℃を保持しつつ4時間撹拌を継続した。その後、室温まで冷却し、反応液を3000mLのメタノールに添加、ろ過することで粉末状固体を得た。この粉末状固体をメタノールおよび水で繰返し洗浄した後、100℃で8時間減圧乾燥して、粉末状固体を得た(ジアミン(1)、下記式で表される化合物、収率:95%)。得られた粉末状固体をGPC測定(溶剤THF、標準ポリスチレン換算)に付して求めた数平均分子量は2070、重量平均分子量は3500、及び平均重合度(m−1)は5.8であった。
調製例2(ビスマレイミド(1)の製造)
撹拌装置、窒素導入管、及び乾燥管を備えた1000mL(三ツ口)フラスコに、無水マレイン酸を5.88g、N−メチル−2−ピロリドンを50mL、トルエンを200mL入れ、窒素置換した。そこへ、上記で得られたジアミン(1)26.76gをNMP250mLに溶解させた溶液を添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その後、パラトルエンスルホン酸一水和物0.761gを添加し、140℃に加熱して、8時間撹拌を継続し、トルエンを還流して水分を除去した。反応液を室温に戻した後、反応液を3000mLのメタノールに添加、ろ過することで粉末状固体を得た。この粉末状固体をメタノール及び水で繰返し洗浄した後、100℃で8時間減圧乾燥して、粉末状固体(ビスマレイミド(1)、下記式で表される化合物、芳香環由来の構造の割合:72重量%、収率:90%)を得た。200℃における粘度をレオメーターにより測定したところ、7Pa・sであった。
撹拌装置、窒素導入管、及び乾燥管を備えた1000mL(三ツ口)フラスコに、無水マレイン酸を5.88g、N−メチル−2−ピロリドンを50mL、トルエンを200mL入れ、窒素置換した。そこへ、上記で得られたジアミン(1)26.76gをNMP250mLに溶解させた溶液を添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その後、パラトルエンスルホン酸一水和物0.761gを添加し、140℃に加熱して、8時間撹拌を継続し、トルエンを還流して水分を除去した。反応液を室温に戻した後、反応液を3000mLのメタノールに添加、ろ過することで粉末状固体を得た。この粉末状固体をメタノール及び水で繰返し洗浄した後、100℃で8時間減圧乾燥して、粉末状固体(ビスマレイミド(1)、下記式で表される化合物、芳香環由来の構造の割合:72重量%、収率:90%)を得た。200℃における粘度をレオメーターにより測定したところ、7Pa・sであった。
実施例1〜2
上記で得られたジアミン(1)とビスマレイミド(1)とをトルエン中で混合し、その後60℃8時間真空乾燥することで硬化性組成物を得た。混合割合は、実施例1ではジアミン(1)20重量%、ビスマレイミド(1)80重量%とし、実施例2ではジアミン(1)40重量%、ビスマレイミド(1)60重量%とした。
上記で得られたジアミン(1)とビスマレイミド(1)とをトルエン中で混合し、その後60℃8時間真空乾燥することで硬化性組成物を得た。混合割合は、実施例1ではジアミン(1)20重量%、ビスマレイミド(1)80重量%とし、実施例2ではジアミン(1)40重量%、ビスマレイミド(1)60重量%とした。
比較例1
ジアミン(1)を添加せずビスマレイミド(1)のみを比較例1の硬化性組成物とした。
ジアミン(1)を添加せずビスマレイミド(1)のみを比較例1の硬化性組成物とした。
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物について、下記条件でDSC測定を行った。得られたDSC測定のスペクトルを図1に示す。
<測定条件>
装置:DSC Q2000(TA Instruments社製)
昇温速度:20℃/min
温度範囲:20〜400℃程度
雰囲気:窒素雰囲気
<測定条件>
装置:DSC Q2000(TA Instruments社製)
昇温速度:20℃/min
温度範囲:20〜400℃程度
雰囲気:窒素雰囲気
図1に示すとおり、ジアミン(1)を含まない場合(比較例1)、258℃に発熱ピークが観測され、硬化開始温度が258℃であると確認された。これに対し、ジアミン(1)を20重量%の割合で含む硬化性組成物(実施例1)は発熱ピーク(硬化開始温度)が235℃、ジアミン(1)を40重量%の割合で含む硬化性組成物(実施例2)は発熱ピーク(硬化開始温度)が227℃であった。この結果から、ジアミン(1)とビスマレイミド(1)を含む硬化性組成物は、ジアミン(1)を含まずビスマレイミド(2)からなる硬化性組成物に対して硬化開始温度が低いことが確認された。
また、TG/DTAを用いて、上記DSC測定時に得られた硬化物の熱重量減少分析を行ったところ、実施例1および実施例2の硬化物の5%重量減少温度(Td5)は、ともに450℃以上であった(実施例1は465℃、実施例2は457℃)。
<TG/DTA測定条件>
装置:NETZSCH TG209F3
昇温速度:20℃/min
雰囲気:窒素雰囲気
<TG/DTA測定条件>
装置:NETZSCH TG209F3
昇温速度:20℃/min
雰囲気:窒素雰囲気
Claims (17)
- 下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物を含む硬化性組成物。
- 式(1)中のR1、R2が、同一又は異なって、R1及び/又はR2と反応性を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
- 式(1)中のR1、R2が、同一又は異なって、マレイミド構造を有する、請求項2に記載の硬化性組成物。
- 式(2)中のR3、R4が、同一又は異なって、アミノ基、ヒドロキシ基、又はメルカプト基である、請求項1〜3に記載の硬化性組成物。
- 式(I)及び式(II)中のAr1〜Ar3が、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基であり、
式(III)及び式(IV)中のAr4〜Ar6が、同一又は異なって、炭素数6〜14の芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は炭素数6〜14の芳香環の2個以上が、単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。 - 式(I)で表される構造及び式(III)で表される構造が、同一又は異なって、ベンゾフェノン由来の構造である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 式(1)で表される化合物全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であり、式(2)で表される化合物全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合が5重量%以上である、請求項7に記載の硬化性組成物。
- 式(II)で表される構造及び式(IV)で表される構造が、同一又は異なって、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールAから選択される少なくとも一種の化合物由来の構造である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 式(1)で表される化合物全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合が5重量%以上であり、
式(2)で表される化合物全量における、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、及びビスフェノールA由来の構造単位の占める割合が5重量%以上である、請求項9に記載の硬化性組成物。 - 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物を反応させ、請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物中の硬化性化合物を硬化させて成形体を得る、成形体の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含む接着剤。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含む塗料。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含む封止剤。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を含む硬化性化合物を硬化させて、前記硬化性化合物の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
- プラスチック製の支持体上に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物の溶融物を塗布し、固化して、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を含む薄膜を得、得られた薄膜を、前記支持体から剥離して基板上に積層し、加熱処理を施す、請求項15に記載の積層体の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む複合材。
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