JP2021094834A - 記録装置、制御方法、及びプログラム - Google Patents

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麻紀 加藤
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麻紀 加藤
三隅 義範
Yoshinori Misumi
義範 三隅
譲 石田
Yuzuru Ishida
譲 石田
翼 船橋
Tsubasa Funabashi
翼 船橋
松居 孝浩
Takahiro Matsui
孝浩 松居
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Abstract

【課題】液体吐出ヘッドにおける熱作用部である第1電極の溶出量を制御すること。【解決手段】本発明の一実施形態は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口に連通する液室と、前記吐出口に対向して設けられる発熱抵抗素子と、前記発熱抵抗素子を被覆する絶縁層と、前記液室内に配され、前記絶縁層の一部であって少なくとも前記発熱抵抗素子を被覆している部分を更に被覆し、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極と、前記液室内に配され、前記液体を介して前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、前記液室内の前記液体を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を流すことにより、前記第1電極に付着するコゲを除去するクリーニング手段と、を有し、前記クリーニング手段は、所定値の電流を流す定電流電源を含むことを特徴とする記録装置である。【選択図】図7

Description

本発明は、記録装置、制御方法、及びプログラムに関する。
従来、発熱抵抗体に電圧を印加して液体(具体的にはインク)中に膜沸騰を生じさせ、泡の成長エネルギーによって液体を吐出する方式の液体吐出ヘッドにおいて、インクを吐出する場合に、コゲーションが問題となる場合がある。コゲーションは、発熱抵抗体において発生する熱によって、熱溶解性のインク成分が分解したり変性したりして、発熱抵抗体の表面に付着する現象であり、発熱抵抗体の熱伝導性を変化させ、発泡ひいては吐出動作を不安定にする要因となる。
特許文献1には、電気化学反応によってインク中に溶出可能な材料(イリジウムやルテニウム等)を用いて発熱抵抗体の上部保護層を形成することで、その材料層に付着したコゲを電気化学反応によって除去する技術が開示されている。特許文献1に示される、コゲ除去のクリーニング方法では、材料層に正の電圧を印加することにより、インク中へ材料層を溶出させると同時にコゲを除去している。
材料層は、インク吐出時のキャビテーション衝撃やインクによる化学的作用から発熱抵抗体を守るため、所定値以上の膜厚である必要がある。クリーニングによる材料層の溶出に伴い、材料層の膜厚は薄くなる。材料層の膜厚が規定値を下回ったところで液体吐出ヘッドを交換できるように、コゲ除去による材料層の溶出量を制御しなければならない。
材料層の溶出量は、材料層を通過する電気量(クーロン量)に依存しており、インクの導電率が変わらなければ、材料層に一定電圧を印加した場合における材料層の溶出量も変わらない。そのため、クリーニング後の材料層の膜厚は、コゲ除去の回数により算出可能である。
ただし、クリーニング時に隣接ノズルからのインクの混色等によりインクの導電率が変わってしまうと、同じ電圧を印加しても導電率が変わる前後で材料層の溶出量が変わってしまう。
このような導電率の変化により、材料層の溶出量が変化し、クリーニングを行っても十分にコゲが除去されず、記録品位が回復しない場合や、過剰にクリーニングを行ってしまい想定より早くヘッド寿命に達する場合がある。つまり、予め設定した条件に従ってクリーニングを行うクリーニング方法では、材料層の溶出量を十分に制御できない場合がある。
そのため、特許文献2には、クリーニング時の液体、特にインクの導電率が変化しても、コゲ除去のクリーニング前にその導電率を測定してクリーニング条件を決定することで、材料層の溶出量を、把握することができる技術が開示されている。
特開2008−105364号公報 特開2015−221498号公報
しかしながら、特許文献2に記載のクリーニング処理を行ったとしても、コゲの付き具合に差がある場合に、材料層の溶出量に微少なばらつきが生じる。この材料層の溶出量の微少なばらつきが積み重なると、材料層の膜厚が所定値を下回ってしまう可能性がある。材料層の膜厚が所定値を下回った状態で液体吐出ヘッドの使用を続けると、液体吐出ヘッドの吐出特性の低下や低寿命化の恐れが生じる。
そこで本発明の一実施形態は、液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極の溶出量を制御することを目的とする。
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口に連通する液室と、前記吐出口に対向して設けられる発熱抵抗素子と、前記発熱抵抗素子を被覆する絶縁層と、前記液室内に配され、前記絶縁層の一部であって少なくとも前記発熱抵抗素子を被覆している部分を更に被覆し、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極と、前記液室内に配され、前記液体を介して前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、前記液室内の前記液体を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を流すことにより、前記第1電極に付着するコゲを除去するクリーニング手段と、を有し、前記クリーニング手段は、所定値の電流を流す定電流電源を含むことを特徴とする記録装置。
本発明の一実施形態によると、液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極の溶出量を制御することができる。
インクジェット記録装置100の概略構成図 ヘッドユニット101の外観斜視図 インクジェット記録装置100における制御系の構成を示すブロック図 吐出ヘッド2の断面斜視図 基板41の平面図 発熱抵抗素子502と第1電極313と第2電極314との周辺の積層構成を示す図 第1電極313及び第2電極314を有する回路の構成図 クリーニング処理開始後の電流値及び電圧値を示す図 記録処理及びその後のクリーニング処理を含む一連の処理のフローチャート
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、以下に記載されている構成要素の内容、相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<インクジェット記録装置100の構成>
以下、本実施形態におけるインクジェット記録装置100(以下、記録装置100)について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における記録装置100の概略構成図である。シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッドユニット101が装着されるキャリッジ102は、駆動プーリ103Aと従動プーリ103Bとの周囲に架け渡された無端ベルト104の一部に取り付けられている。キャリッジモータ105を駆動源とする駆動プーリ103Aが回転すると、無端ベルト104は駆動プーリ103Aと従動プーリ103Bとの周囲を回動し、キャリッジ102はガイドシャフト106に案内支持されながら図1のA方向に往復移動される。尚、以降では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色については、C、M、Y、Kとそれぞれ一文字で表す。
キャリッジ102にはエンコーダセンサ107が取り付けられており、エンコーダセンサ107は図1のA方向に延在するリニアスケール108のスリットを検出する。記録装置100の制御部30(図3参照)は、エンコーダセンサ107がリニアスケール108を検出した結果に基づいて、図1のA方向におけるキャリッジ102の位置を認識することができる。
記録媒体Pは、記録媒体Pの搬送方向(図1のB方向)上流側の搬送ローラ対109と下流側の搬送ローラ対110とにニップされ、ヘッドユニット101の吐出口面に対向する位置における記録媒体Pの平滑性が維持されている。上流側の搬送ローラ対109と下流側の搬送ローラ対110とは、図1では不図示の搬送モータ111(図3参照)によって回転し、記録媒体PをB方向に搬送する。
このような構成のもと、記録装置100の制御部30は、キャリッジモータ105を駆動させながら、エンコーダセンサ107の検出結果に基づいて、吐出データをヘッドユニット101に送信する。ヘッドユニット101は吐出データに従って記録媒体Pにインクを吐出する。これにより、1バンド分の画像(具体的にはインク像)が記録媒体Pに記録される記録主走査が行われる。その後、制御部30は搬送モータ111を駆動させ、1バンド分の距離だけ記録媒体Pを図1のB方向に搬送する。以上のような記録主走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的にインク像が記録される。
記録装置100において図1のA方向の端部に位置するホームポジションには、ヘッドユニット101に配された液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うための回復ユニット112が配備されている。回復ユニット112には、液体吐出ヘッドの吐出口面を保護するためのキャップ部材113や、キャップ部材113内を負圧にして吐出口より強制的にインクを排出させるための吸引ポンプ114等が配されている。尚、液体吐出ヘッドについては図2を用いて後述する。
<ヘッドユニット101の構成>
以下、本実施形態におけるヘッドユニット101について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における1色分のヘッドユニット101の外観斜視図である。ヘッドユニット101は、内部に液体を収容するタンク201と、液体を吐出するための液体吐出ヘッド2(以下、吐出ヘッド2)とを有する。ヘッドユニット101の一部周囲には、吐出ヘッド2に吐出データや電力を供給するための配線テープ202が配されている。また、配線テープ202には、ヘッドユニット101がキャリッジ102に装着されたときに記録装置100と電気的に接続するための接点203が形成されている。尚、吐出ヘッド2とタンク201とは分離されていてもよい。この場合、吐出ヘッド2のみがキャリッジ102に搭載され、記録装置100内の何れかの位置に固定されたタンク201より、チューブ等を介して吐出ヘッド2にインクを供給してもよい。この場合、吐出ヘッド2自体は、4色のインクに対応した1チップとしてもよい。更に、対応可能なインクの種類及びインクの数は1色のみであってもよいし、4色より多くの種類のインクを備える形態であってもよい。
<記録装置100における制御系の構成>
以下、本実施形態における記録装置100の制御系の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態における記録装置100における制御系の構成を示すブロック図である。
インターフェース301は、記録装置100と記録装置100に接続されたホスト装置300との間で、情報の授受を行う。具体的には、インターフェース301は、印刷コマンドや画像データを含む印刷ジョブ等をホスト装置300から受信したり、記録装置100のステータス情報をホスト装置300に提供したりする。尚、ホスト装置300は、コンピュータの他、デジタルカメラやスキャナ、携帯端末等であってもよい。ホスト装置300で印刷コマンドが発生すると、印刷コマンドが画像データと共に、インターフェース301を介して記録装置100に入力される。
制御部30はMPU302、ROM303、DRAM304、EEPROM305、及びゲートアレイ306を有し、記録装置100を制御している。EEPROM305は、電源がOFFにされた状態でも、次に電源がONになった時に、記録装置100に必要な情報を記憶しておくためのメモリである。ゲートアレイ306は、MPU302の指示のもと、インターフェース301と、MPU302と、DRAM304との間でデータ転送制御を行う。
MPU302は、ROM303に記憶されているプログラムやパラメータに従って、DRAM304をワークエリアとして、様々な制御を行う。例えば、MPU302は、CRモータドライバ307を介してキャリッジモータ105を駆動させることにより、キャリッジ102を図1のA方向に移動させる。この際、MPU302は、ヘッドドライバ308を介して、DRAM304より吐出データを吐出ヘッド2へ転送し、吐出ヘッド2よりインクを吐出させることによって、記録媒体Pに1バンド分のインク像が記録される。また、MPU302は、1バンド分の記録主走査が行われる度にLFモータドライバ309を介して搬送モータ111を駆動させ、記録媒体Pを1バンド分の距離だけ図1のB方向に搬送する。このような記録主走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、ホスト装置300から受信した画像データに基づいたインク像を、記録媒体Pに記録する。
記録媒体P1枚分の記録動作が終了した後等の適宜なタイミングで、MPU302は、回復モータドライバ310を介して回復系モータ311を駆動させ、吐出ヘッド2に対する吸引回復処理を実行する。
更に、MPU302は、電界調整器312を介して、吐出ヘッド2内に配置された第1電極313と、第2電極314との電位調整を行う。検出装置315は、これら電極の間に流れる電流の電圧値を検出し、検出結果を制御部30に提供する。第1電極313と、第2電極314と、電界調整器312とについては後に詳しく説明する。
以上に説明したような様々な制御をMPU302が行うために、ROM303にはMPU302が使用する様々なパラメータが記憶されている。例えば、吐出ヘッド2内の発熱抵抗素子502に印加する電圧パルスの形状や、第1電極313及び第2電極314に流す電流値、第1電極313及び第2電極314に電圧を印加するタイミング等が、ROM303には記憶されている。更に、ROM303には、記録媒体Pの搬送速度やキャリッジ102の走査速度等も記憶されている。
<吐出ヘッド2の構成>
以下、本実施形態における吐出ヘッド2(以下、記録素子基板40とも称する)について図4を用いて説明する。図4は、本実施形態における吐出ヘッド2の断面斜視図である。
記録素子基板40には、液体供給路401及び液体回収路402が形成された基板41(吐出ヘッド2用基板)、基板41の吐出面側に配された流路形成部材42、並びに基板41の吐出面の逆側に配されたカバープレート43が形成されている。流路形成部材42には、吐出口列が形成されている。基板41には、液体供給路401及び液体回収路402が設けられている。液体供給路401及び液体回収路402は、吐出口列の方向に沿って延在している。また、基板41には、液体供給路401と連通する供給口403aが吐出口列の方向に沿って複数設けられており、液体回収路402と連通する回収口403bが吐出口列の方向に沿って複数設けられている。
図4に示すように、基板41には、流路形成部材42に設けられた各吐出口404に対応する位置に、熱作用部405が設けられている。熱作用部405には、熱作用部405に対応する発熱抵抗素子502(図6参照)が設けられている。熱作用部405は、インクを記録媒体Pに吐出させて記録を行うための記録素子である。また、熱作用部405は、後述する第1電極313としても用いられる。流路形成部材42には、熱作用部405を内部に備える圧力室406が区画されている。発熱抵抗素子502は、基板41に設けられた電気配線(不図示)によって、端子407と電気的に接続されている。発熱抵抗素子502は、外部の配線基板(不図示)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱する。熱作用部405は、圧力室406内のインクと接触し、発熱抵抗素子502において発生した熱エネルギーを利用してインクを沸騰させる。記録素子基板40は、この沸騰によってインクを発泡させることで、吐出口404よりインクを吐出する。
カバープレート43には、液体供給路401に連通する開口408及び液体回収路402に連通する開口408が設けられている。インクは、図4の矢印C1に示すように、タンク201より開口408、液体供給路401、供給口403aを順に通って圧力室406へと供給される。また、圧力室406に供給されたインクは、図4の矢印C2に示すように、回収口403b、液体回収路402、開口408を通ってタンク201に回収される。
<基板41の構成>
以下、本実施形態における基板41について図5を用いて説明する。図5は、本実施形態における基板41の平面図である。図5(a)は、本実施形態における基板41の平面模式図を示す。また、図5(b)は、図5(a)において点線で示す領域A内を拡大した平面模式図を示す。
基板41と流路形成部材42との間には、インクが流れる空間である液室501(流路)が形成されている。液室501には、圧力室406が含まれる。また、液室501には、発熱抵抗素子502を被覆するように積層された第1電極313と、第2電極314とが配されている。第1電極313はそれぞれ、第1電極用の共通配線503を介して端子407に接続されており、第2電極314はそれぞれ、第2電極用の共通配線504を介して端子407に接続されている。また、図5(b)に示すように、第1電極313は、個別配線505とヒューズ部506とを介して共通配線503に接続されている。基板41は、端子407を介して外部から両電極に電圧を印加し、液室501内のインクを介して両電極間に電流を流す構成となっている。尚、本実施形態において両電極は、導電性材料により形成される。また、発熱抵抗素子502を保護する保護層507(被覆部507とも称する)においてインクと接触する部分が、第1電極313(熱作用部405)として機能する。
尚、第2電極314の面積は、図5(b)に示すように第1電極313の面積と比較して小さくてもよい。また、第2電極314の配置個数は、第1電極313の配置個数と同じであっても、少なくてもよい。近年、記録画像の高画質化に伴い液室面積が小さくなり第2電極314を配置できるスペースも小さくなっている。そのため、第2電極314の面積は小さくなる傾向がある。
<発熱抵抗素子502と電極の構成>
以下、本実施形態における発熱抵抗素子502と、第1電極313と、第2電極314との構成について図6を用いて説明する。図6に発熱抵抗素子502と第1電極313と第2電極314との周辺の積層構成を模式的に示す。図6は、図5(a)に示された基板41に流路形成部材42が接合された吐出ヘッド2(記録素子基板40)のVI−VI線における断面図を示している。簡単のため回路・配線類は省略されているが、第2絶縁層604に設けられた発熱抵抗素子502と、第1電極313と、第2電極314とはそれぞれ、発熱とコゲの抑制とコゲ除去処理とに必要な電力を得るための配線に電気的に接続されている。
以下、吐出ヘッド2の積層構成について説明する。尚、下記で挙げる構成や材料は一例であり、下記に限定されるものではない。
駆動素子や駆動素子駆動用の配線(不図示)が形成された、シリコンからなる基材601の吐出面側は、SiO等からなる第1絶縁層602により被覆されている。第1絶縁層602の吐出面側には、アルミニウムと銅の合金等からなる配線パターン603が設けられている。配線パターン603は、発熱抵抗素子502に電圧を印加するための配線である。
配線パターン603及び第1絶縁層602は、SiO等からなる第2絶縁層604により被覆されている。第2絶縁層604には、配線パターン603と発熱抵抗体層605とを接続するためのプラグ606が設けられている。プラグ606の材料には、タングステン(W)等が用いられる。第2絶縁層604の吐出面側は、CMP法等を用いて平坦化された面となっている。
第2絶縁層604の吐出面側には、TaSiN等からなる発熱抵抗体層605が設けられている。発熱抵抗体層605の内、プラグ606を介して電流が流れる部分が発熱抵抗素子502として機能する。発熱抵抗体層605は、例えば、SiNからなる厚さ200nmの第3絶縁層607により覆われている。第3絶縁層607は、保護層507により覆われている。発熱抵抗素子502と保護層507とは、第3絶縁層607によって電気的に絶縁されている。本実施形態では、保護層507は、一例として、第3絶縁層607の側から順に30nmのタンタル(Ta)層と、60nmのイリジウム(Ir)層との2層により形成されている。保護層507の内、Ir層のインクと接する部分は、第1電極313として機能し、Ta層は、第3絶縁層607とIr層との密着性を高める役割を有している。
また、第3絶縁層607の吐出面側には、個別配線505と、共通配線503とが設けられている。本実施形態では、プロセスコストを抑えるために、個別配線505と、共通配線503とは、同じ材料を用いて同じ層として形成されている。
本実施形態では、個別配線505と共通配線503との間に、ヒューズ部506を配しているが、ヒューズ部506は必ずしも必要ではない。尚、本実施形態において、ヒューズ部506と、個別配線505と、共通配線503とは、同じ材料にて形成されている。
第3絶縁層607の吐出面側には、第2電極314が設けられている。第2電極314には、第2電極用の共通配線504(図5参照)が接続されている。本実施形態では、第2電極314と第1電極313とは、同じ層として形成されている。また、第2電極用の共通配線504と、個別配線505と、第1電極用の共通配線503とは、同じ層として形成されている。
<第1電極313及び第2電極314>
次に、本実施形態における2種類の電極について説明する。
本実施形態において、第1電極313は、発熱抵抗素子502を被覆する電極である。記録装置100が記録動作を行う間、第1電極313は陰極として機能し、第2電極314は陽極として機能する。第1電極313は陰極として機能する間、主にインク中の陰イオンや陰性を有するコロイド粒子を遠ざけ、第2電極314は陽極として機能する間、主にインク中の陰イオンや陰性を有するコロイド粒子を引き寄せる。その結果、熱作用部405におけるコゲーションが抑制される。第1電極313には、発熱抵抗素子502を物理的及び化学的衝撃から保護する保護層507としての役割と、発熱抵抗素子502において発生する熱を瞬時にインクに伝達する熱伝導性とが求められる。そのため、第1電極313は、700℃程度の加熱により強固な酸化膜を形成しない材料により形成されることが求められる。
本実施形態において、第1電極313からインクを介して第2電極314へ向かう電流を流し、第2電極314に対して第1電極313の電位が高い状態とすることで、第1電極313を溶出させると同時に熱作用部405に付着したコゲを除去する。尚、電気化学反応による金属の溶出の有無は、一般に種々の金属の電位−pH図を見れば把握することが可能である。本実施形態における第1電極313の材料としては、Ir又はRu(ルテニウム)の単体、Irと他の金属との合金、Ruと他の金属との合金等が挙げられる。
本実施形態において、コゲ除去(以下、クリーニングとも称する)処理を行う際は、第1電極313から第2電極314へ向かう電流を継続して流すことで、第1電極313をインク中へ溶出させる反応を継続させる。本実施形態における第2電極314は、第1電極313と第2電極314との間の電流値を安定して維持するため、導電率が低い酸化膜が形成され難い材料により形成されることが好ましい。
また、クリーニング動作時に、特許文献1に開示されているように、第1電極313と第2電極314との極性を反転させると、第1電極313の表面に吸着又は引き寄せられた陰イオンや陰性を有するコロイド粒子をインク中に放出することが可能となる。その結果、効率的なクリーニング処理が可能となる。この際、第1電極313と同様に、第2電極314自体が溶出するという懸念は生じる。しかし、クリーニング処理の回数を重ねるにつれ第2電極314の膜厚が徐々に減少したとしても、電極としての機能が損なわれない限りにおいて、問題は生じない。
<電極を有する回路の構成>
以下、本実施形態における第1電極313及び第2電極314を有する回路の構成について図7を用いて説明する。図7は、第1電極313及び第2電極314を有する回路の構成図である。
第1電極313及び第2電極314は、定電圧電源701及びスイッチ702を有する配線経路703によって電気的に接続される。これにより、第1電極313と第2電極314との間の液室501内のインク中に電界を形成可能な電気的な閉回路が形成されている。このような閉回路を、本実施形態ではコゲ抑制手段704と称する。コゲ抑制手段704の内、第1電極313、第2電極314、及び配線経路703の一部を有する配線層は、吐出ヘッド2に設けられ、残りの配線経路703、スイッチ702、及び定電圧電源701は、吐出ヘッド2の外部に設けられている。但し、スイッチ702は、吐出ヘッド2に設けられてもよい。
コゲ抑制手段704において、スイッチ702が閉じられると、第2電極314に対して第1電極313の電位は低くなる。これにより、液室501内のインク中の陰イオンや陰性を有するコロイド粒子は、第1電極313から反発して遠ざけられると共に第2電極314に引き寄せられる。インク中にこのような電界が形成されている状態では、発熱抵抗素子502が急激に発熱しても、コゲを形成するインク成分(陰イオンや陰性を有するコロイド粒子)は熱作用部405に付着し難いためコゲーションは抑制される。コゲ抑制の際には、第1電極313と第2電極314との間の電位差はインクを介して両電極間に電流が流れない程度であることが好ましい。
また、第1電極313及び第2電極314は、定電流電源705及びスイッチ706を有する配線経路707によって電気的に接続され、第1電極313から第2電極314へ液室501内のインク中を通電することにより電気的な閉回路が形成されている。このような閉回路を、本実施形態ではクリーニング手段708と称する。クリーニング手段708の内、第1電極313、第2電極314、及び配線経路707の一部を有する配線層は、吐出ヘッド2に設けられ、残りの配線経路707、スイッチ706、及び定電流電源705は、吐出ヘッド2の外部に設けられている。但し、スイッチ706を、吐出ヘッド2に設けてもよい。
クリーニング手段708のスイッチ706が閉じられると、第1電極313から、インク中を通り、第2電極314へ電流が流れる。その結果、第1電極313は陽極となり、第2電極314は陰極となる。これにより第1電極313の材料がインク中へ溶出するとともに熱作用部405に付着したコゲが除去される。
<コゲ抑制手段704及びクリーニング手段708>
本実施形態においては、記録装置100が記録動作を行っている間、制御部30は、コゲ抑制モードとして、スイッチ702を閉じスイッチ706を開く。これにより、インクが熱作用部405により加熱されても、コゲーションは抑制される。
制御部30は、所定回数の吐出動作が行われたか判定し、所定回数の吐出動作が行われた場合に、第1電極313のクリーニング処理が必要とみなす。制御部30は、記録動作が行われない適切なタイミングにおいて、クリーニング処理を行う。クリーニング処理は、スイッチ702を開きスイッチ706を閉じることで行われる。これにより、第1電極313に付着したコゲは除去される。
また、クリーニング処理中に、第1電極313及び第2電極314の極性を、適宜或いは周期的に逆転させてもよい。その場合、スイッチ706のa側とb側とを繰り返し切り替え、極性を繰り返し反転させることにより、帯電したインク成分を何れの電極にも付着させず、インク中に遊離させておくことが期待できる。また、第1電極313と第2電極314との面積や個数が異なる場合は、第1電極313と第2電極314との総面積比に応じ、通常時と極性の反転時とに流れる電流のパルス幅をそれぞれ調整することで、それぞれの電極におけるIrの溶出量を調整できる。
これにより、一方の電極においてIrが過剰に溶出し、電極としての機能が失われるといった事態を回避できる。例えば、図5(b)に示すように、第2電極314の総面積が、第1電極313の総面積に対し小さい場合は、極性を反転させた時に流れる電流のパルス幅を狭くすることで第2電極314におけるIrの溶出量を減少させることができる。その結果、記録動作の間、インク中にコゲ抑制用の電界が形成されずコゲ抑制が不十分となったり、クリーニング処理時に電流が流れず除去しきれないコゲが発生したり、といった事態を回避することができる。
本実施形態では、クリーニング処理時、第1電極313と第2電極314とは定電流電源705に接続されている。これにより、インクの混色や蒸発、ロットバラつき等によりインクの導電率が変化した場合においても流れる電流値が変わらない。このような構成にすることで、第1電極313の溶出量を一定に制御することができ、クリーニング処理が不足して記録品位が低下したり、過剰なクリーニング処理により第1電極313のIr層の膜厚が所定値を下回ったり、といった事態を回避できる。
また、ヘッドの長寿命化によりクリーニング処理の回数が増加しても、クリーニング処理後の第1電極313におけるIr層の膜厚を正確に把握できるため、Ir層の膜厚が所定値を下回る前の適切なタイミングで吐出ヘッド2を交換できる。
また、クリーニング動作中は、電気化学反応により水素や酸素が発生したり、インク中へ第1電極313の材料が溶け込んだりする。これら気体や、第1電極313の材料が溶け込んだインクは、直ちに液室501外へ排出することが望ましい。そのため、クリーニング動作を行う間は、吐出面からの吸引処理を行っている。本実施形態においては、クリーニング処理には定電流電源705を用いてこれら気体の生成速度や、第1電極313の材料の溶出速度を一定に制御しているため、吸引処理の吸引速度を最初に設定すれば、吸引処理により確実に排出することができる。万が一、水素の生成速度が増加して液室501内に取り込まれてしまうと、液室501内の金属材料に少量ずつ吸蔵され、その積み重ねにより金属材料の脆化をもたらすことがある。そのため、液室501内の水素を確実に排出本実施形態は、長寿命が求められる液体吐出ヘッドに好適である。
<クリーニング処理開始後の電流値及び電圧値>
以下、本実施形態におけるクリーニング処理開始後の電流値及び電圧値について図8を用いて説明する。図8(a)は、クリーニング処理開始後に、クリーニング手段に流す電流のパルス信号を示す。図8(b)は、クリーニング処理開始後の電圧値の変化を示す。クリーニング手段708内に、電圧計801(図7参照)を設け、クリーニング処理時の電圧値の変化をモニタリングすることで、コゲがなくなったタイミングを知ることができる。コゲ除去が進み、第1電極313の全面がインクと接触するようになると、反転初期の電気二重層の充電時間が経過した後の電圧値は、所定の閾値以下で一定となる。電圧値が所定の閾値以下となったことを検出したタイミングでコゲ除去スイッチ706を開けば、第1電極313におけるIrの不要な溶出を抑えることができる。尚、本実施形態では、クリーニング処理には定電流電源が用いられるため、図8(a)に示すようにクリーニング処理時に電流値は変化しない。
<記録処理及びその後のクリーニング処理>
以下、本実施形態において実行するクリーニング処理について、図9を用いて説明する。図9は、ホスト装置300より印刷コマンドが入力された際に、制御部30のMPU302が、ROM303に記憶されているプログラムに従って実行する、記録処理及びその後のクリーニング処理を含む一連の処理のフローチャートである。
ホスト装置300より印刷コマンドが入力されると、まずステップS901において、MPU302は、インターフェース301経由で受信した画像データを、ゲートアレイ306を介してDRAM304に展開する。以降、「ステップS〜」を「S〜」と略記する。
S902において、MPU302は、電界調整器312を介してスイッチ702を閉じ、スイッチ706を開く。これにより、吐出ヘッド2において、第1電極313が陰極となり第2電極314が陽極となる。この結果、熱作用部405におけるコゲーションが抑制される。
S903において、MPU302は、DRAM304に展開した画像データに基づいて、記録動作を行う。この際、MPU302は、吐出ヘッド2の吐出回数Cをカウントする。
所定の記録動作が完了した後、S904において、MPU302は、DRAM304に記憶されている累積吐出回数Sを読み出す。
S905において、MPU302は、S904で読み出した累積吐出回数SにS903で取得した吐出回数Cを加算し、加算した結果の値を新たな累積吐出回数Sとする。
S906において、MPU302は、S905で得られた累積吐出回数Sが予め記憶されている閾値T以上(所定の回数以上)であるか判定する。本実施形態において、閾値Tは、第1電極313に付着するコゲ成分が多くなりクリーニング処理が必要と判定される吐出回数に相当する。本ステップの判定結果が真の場合、S907に進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、S913に進む。
S907において、MPU302は、吸引回復動作を実施する。具体的には、MPU302は、CRモータドライバ307を介してキャリッジモータ105を駆動し、キャリッジ102をホームポジションに移動させる。その後、MPU302は、吐出ヘッド2の吐出口面にキャップ部材113を当接させた状態で、回復モータドライバ310を介して回復系モータ311を駆動し、吐出口404よりインクを強制的に排出させる。
S908において、MPU302は、クリーニング処理を実行する。具体的には、MPU302は、スイッチ702を開き、スイッチ706を閉じ、その状態を所定時間維持する。その結果、吐出ヘッド2において、第1電極313から第2電極314へ、所定値の電流が流れることにより、一定のスピードで第1電極313を形成する材料がインク中に溶出し、第1電極313に付着したコゲが除去される。S908におけるクリーニング処理は、S907の吸引回復動作を実施しながら、実行される。
S907の吸引回復動作とS908のクリーニング処理とによって、第1電極313に付着したコゲが除去され、第1電極313より溶出した成分を含む液室501内のインクは一掃され、新たなインクが流入される。
S909において、MPU302は、検出装置315を用いてクリーニング手段における電圧値Vを検出する。
S910において、MPU302は、S909で検出した電圧値Vが所定の閾値Tv以下か判定する。本ステップの判定結果が真の場合、第1電極313に付着したコゲが除去されたとみなし、S911へと進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、再度、S907へ戻り、MPU302は、電圧値Vが閾値Tv以下となるまで、吸引回復動作及びクリーニング処理を続行する。
S911において、MPU302は、クリーニング処理を終了し、S912に進む。
S912において、MPU302は、累積吐出回数Sの値及び吐出回数Cのカウント値をリセットする。
S913において、MPU302は、現在の累積吐出回数SをDRAM304に記憶(上書き保存)し、S914へ進む。
S914において、MPU302は、スイッチ702とスイッチ706とを共に開放し、液室501内の電界をリセットする。以上で、MPU302は、一連の処理を終了する。
<本実施形態の効果等>
以上説明した本実施形態によれば、吐出ヘッド2において、クリーニング処理時の第1電極におけるIrの溶出量を制御することができ、これにより安定した吐出特性を長期間維持することが可能となる。
尚、図9で説明したフローチャートでは、累積吐出回数Sに基づく判定結果に応じて、クリーニング処理を行うか否かを決定したが、本実施形態はこのような形態に限定されるものではない。例えば、前回クリーニング処理を行ったタイミングから所定時間が経過した場合にクリーニング処理を行うようにしてもよい。
本実施形態のように、4色分の吐出ヘッド2を用いる場合、S907の吸引回復動作及びS908のクリーニング処理は、4つの吐出ヘッド2に対し一括して行うことが効率的である。従って、何れか1つの吐出ヘッドで累積吐出回数Sが閾値Tを超えた場合、又は、何れか1つの吐出ヘッド2で検出装置315が検出した電圧値Vが所定値以下になった場合に、S907の吸引回復動作が実行されるようにすればよい。
以上では、図4に示した吐出ヘッド2を、図1に示すように4色分用意し、図1のA方向に移動するキャリッジ102に搭載するシリアル型のインクジェット記録装置の実施形態について説明したが、本実施形態はこのような形態に限定されるものではない。例えば、吐出ヘッド2は、1色のインクを吐出する吐出ヘッド2ではなく、複数色のインクを吐出する吐出ヘッド2としてもよい。また、吐出ヘッド2は、図4に示したようなヘッド用の基板41と流路形成部材42とを更に直列に繋ぎ、同色又は異色のインクを吐出する長尺の吐出ヘッド2としてもよい。1色のインクを吐出する長尺の吐出ヘッド2とした場合、この長尺の吐出ヘッド2を4色分用意して記録装置内に固定し、搬送される記録媒体に対し所定の周波数でインクを吐出するフルライン型のインクジェット記録装置とすることもできる。
本発明は、前述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以下、本実施形態の効果を確認するために行った複数の検証例を比較例と共に説明する。
(検証例1)温調蒸発
<吐出ヘッド2の構成>
図6に示す、吐出ヘッド用の基板41を作製した。第3絶縁層607上に、保護層507として、Ta層を100nm形成した後Ir層を50nm形成した。Ta層とIr層とをパターニングして、第1電極313と第2電極314とを形成し、ヘッド用の基板41とした。この際、全ての第1電極313の面積の和と、全ての第2電極314面積の和とが、1:1となる吐出ヘッド2を作製した。更に、流路形成部材42を形成し、その他必要な端子を形成することにより、吐出ヘッド2を完成させた。
<クリーニング処理>
上記の吐出ヘッド2に、顔料Cインクが収容されたタンク201を接続して形成されるヘッドユニット101を記録装置100のキャリッジ102に装着した。そして、第1電極313と第2電極314との間に、第2電極314が陽極になるように1Vの電圧を印加し、その状態で吐出ヘッド2に(1×10^9)回の吐出動作を行わせた。この動作をコゲつけ駆動とする。この際、吐出ヘッド2の温調を50℃とした。その後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405には、コゲの付着が確認された。
続いて、液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、吐出ヘッド2の吸引回復動作を行いながら、第1電極313と第2電極314との間に、定電流電源705を用い、0.1mAの電流を、1秒ずつ極性を反転させながら60秒間流した。この動作をクリーニング動作とする。その後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察した。すると、熱作用部405に付着していたコゲは除去されていた。
続いて、液室501内を再度顔料Cインクで置換した後「インクタンクセット、コゲつけ駆動、クリーニング動作、記録品位確認」を1シーケンスとし、このシーケンスを10サイクル行った。
10サイクル終了後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405に発生していたコゲが除去されていることが確認された。液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、記録動作を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。また、第1電極313におけるIr層の膜厚を確認したところ、Ir層の膜厚は約30nmであり、ほぼ想定通りの膜厚であった。
(検証例2)混色コゲ除去実験
検証例1と同様にして、複数色対応の吐出ヘッド2を作製した。この吐出ヘッド2を用いて、コゲ除去実験を実施した。吐出及びコゲ除去を行うノズル列に顔料Mインクを用いて、それと隣接するノズル列には顔料Cインクを用いた。
実験方法は、まずMインクを用いて、熱作用部405表面上にコゲが堆積するように、所定条件で発熱抵抗素子502を駆動させてコゲつけ駆動を行った。コゲつけ駆動後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405の表面には、ほぼ均一にコゲが付着していた。吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、この状態の吐出ヘッド2を用いて記録動作を行うと、コゲの付着により記録品位が低下していることが確認された。
その後、同一のキャップ部材113を用いて吐出ノズル列と隣接ノズル列とを同時に吸引しながら、M列の第1電極313と第2電極314との間に、定電流電源705を用いて、0.1mAの電流を、1秒ずつ極性を反転させながら60秒間流した。この動作をクリーニング動作とする。その後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察した。すると、熱作用部405に付着していたコゲは除去されていた。
続いて、吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、「インクタンクセット、コゲつけ駆動、クリーニング動作、記録品位確認」を1シーケンスとし、このシーケンスを10サイクル行った。
10サイクル終了後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405に付着していたコゲが除去されていることが確認された。吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、記録動作を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。また、第1電極313のIr層の膜厚を確認したところ、Ir層の膜厚は約30nmであり、ほぼ想定通りの膜厚であった。
(検証例3)面積比2:1
検証例1と同様にして、複数色対応の吐出ヘッド2を作製した。この際、図5(b)に示すように、第1電極313が2個配される場合に対し、これらの第1電極313に対応する第2電極314が1個配されるようにマスクを設計した。これにより、全ての第1電極313の面積の和と、全ての第2電極314面積の和とが、2:1となる吐出ヘッド2を作製した。この吐出ヘッド2を用いて、コゲ除去実験を実施した。
<クリーニング処理>
上記の吐出ヘッド2に、顔料Cインクが収容されたタンク201を接続して形成されるヘッドユニット101を記録装置100のキャリッジ102に装着した。そして、第1電極313と第2電極314との間に、第2電極314が陽極になるように1Vの電圧を印加し、その状態で吐出ヘッド2に(1×10^9)回の吐出動作を行わせた。この動作をコゲつけ駆動とする。この際、吐出ヘッド2の温調を50℃とした。その後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405にコゲの付着が確認された。
続いて、液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、吐出ヘッド2の吸引回復動作を行いながら、第1電極313と第2電極314との間に、定電流電源705を用いてクリーニング処理を行った。この際、図7に示す切り替えスイッチ706をa側に閉じてパルス幅を1秒として電流を流し、その後b側に閉じてパルス幅を0.5秒として電流を流すことを繰り返し、極性を反転させながらトータルで45秒間流した。この動作をクリーニング動作とする。この際、定電流電源705の電流の設定値を0.1mAとした。その後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察した。すると、熱作用部405に付着していたコゲは除去されていた。
続いて、液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、「インクタンクセット、コゲつけ駆動、クリーニング動作、記録品位確認」を1シーケンスとし、このシーケンスを13サイクル行った。
13サイクル終了後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405に付着していたコゲは除去されていることが確認された。液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、記録動作を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。また、第1電極313及び第2電極314のIr層の膜厚を確認したところ、双方のIr層の膜厚は約24nmであり、ほぼ想定通りの膜厚であった。すなわち、本検証例では、クリーニング処理の際に第1電極と第2電極との面積比に応じたパルス幅で電流を流すことで、双方のIr層を同程度に膜減りさせることができた。本検証例によると、いずれかの電極が先に消失することによってヘッド寿命が制限される恐れを抑制できるので、ヘッドのさらなる高寿命化を図ることができることがわかった。
(比較例1)
検証例1と同様の吐出ヘッド2と顔料Cインク及び記録装置100を用いて、検証例1と同じ条件にて、(1×10^9)回の吐出動作を行わせた。この動作をコゲつけ駆動とする。この際、ヘッドの温調温度は50℃とした。その後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405には、コゲの付着が確認された。
液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、吐出ヘッド2の吸引回復動作を行いながら、第1電極313と第2電極314との間に、定電圧電源701を用いて、5Vの電圧を1秒ずつ、極性を反転させながら60秒間印加した。この動作をクリーニング動作とする。その後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察した。すると、熱作用部405に付着していたコゲは除去されていた。
続いて、液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、「インクタンクセット、コゲつけ駆動、クリーニング動作、記録品位確認」を1シーケンスとし、このシーケンスを10サイクル行った。
10サイクル終了後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、除去しきれなかったコゲが確認された。液室501内を再度顔料Cインクで置換した後、記録動作を行うと、初期の状態から品位の劣化した出力画像が確認された。また、第1電極313の膜厚を確認したところ、膜厚は約38nmであり、想定より厚い膜厚であった。
本比較例においては、吐出ヘッド2の温調によりインク成分が蒸発してインクの導電率が低くなり、クリーニング動作時の第1電極313におけるIrの溶出量が検証例1と比較して減少した。その結果、十分なコゲ除去ができておらず、記録品位の劣化が生じた。
(比較例2)
検証例2と同様に、コゲ除去を行うノズル列に顔料Mインクを用いて、それと隣接するノズル列には顔料Cインクを用いた。記録装置100を用いて、検証例2と同じ条件にて、(1×10^9)回の吐出動作を行わせた。その後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、熱作用部405には、コゲの付着が確認された。
再度、吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、同一のキャップ部材113を用いて吐出ノズル列と隣接ノズル列とを同時に吸引しながら、M列の第1電極313と第2電極314との間に、定電圧電源701を用いて、5Vの電圧を1秒ずつ、極性を反転させながら60秒間印加した。この動作をクリーニング動作とする。その後、液室501内を再びクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察した。すると、第1電極313に付着していたコゲは除去されていた。
続いて、吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、「インクタンクセット、コゲつけ駆動、クリーニング動作、記録品位確認」を1シーケンスとし、このシーケンスを10サイクル行った。
10サイクル終了後、液室501内をクリアインクで置換して熱作用部405の表面状態を観察すると、付着していたコゲは除去されていることが確認された。また、第1電極313及び第2電極314において、双方のIr層の膜厚が薄くなっている様子が観察された。更に、吐出及びコゲ除去を行うノズル列に関してはクリアインクから顔料Mインクに置換し、それと隣接するノズル列に関してはクリアインクから顔料Cインクに置換した。その後、画像データに基づく記録動作を行ったところ、吐出を開始してすぐの段階で断線が発生した。液室内をクリアインクで置換して熱作用部405付近を観察すると、キャビテーションによる断線が生じていた。
本比較例においては、熱作用部405のコゲの除去を確認できた。しかしながら、第1電極313及び第2電極314のそれぞれにおいてIrが過剰に溶出し、その結果、熱作用部405におけるキャビテーション断線が発生してしまった。
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、定電流電源705を用いることで適切な溶出量によるコゲ除去が可能となった。その結果、長期にわたり安定した吐出動作を維持することが可能となった。
100 インクジェット記録装置
313 第1電極
314 第2電極
404 吐出口
501 液室
502 発熱抵抗素子
607 第3絶縁層
705 定電流電源

Claims (10)

  1. 液体を吐出する吐出口と、
    前記吐出口に連通する液室と、
    前記吐出口に対向して設けられる発熱抵抗素子と、
    前記発熱抵抗素子を被覆する絶縁層と、
    前記液室内に配され、前記絶縁層の一部であって少なくとも前記発熱抵抗素子を被覆している部分を更に被覆し、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極と、
    前記液室内に配され、前記液体を介して前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、
    前記液室内の前記液体を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を流すことにより、前記第1電極に付着するコゲを除去するクリーニング手段と、
    を有し、
    前記クリーニング手段は、所定値の電流を流す定電流電源を含むことを特徴とする記録装置。
  2. 前記クリーニング手段において、前記第1電極から前記第2電極に前記所定値の電流を流した場合、前記第1電極の溶出量は一定となることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記クリーニング手段は、電流の向きを反転させるスイッチを更に有し、
    前記スイッチを用いて、前記第2電極から前記第1電極に電流を流した場合、前記第1電極に吸着した前記液体の成分を前記液体に放出することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  4. 前記液室内の前記液体を前記吐出口から強制的に排出させる吸引ポンプを更に有し、
    前記クリーニング手段によるクリーニング処理とともに、前記吸引ポンプによる吸引回復動作を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の記録装置。
  5. 前記第1電極と前記第2電極との間の電圧値を検出する検出手段を更に有し、
    前記クリーニング手段によるクリーニング処理の際に前記検出手段によって検出された電圧値が所定の閾値以下の場合、前記クリーニング処理を終了することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の記録装置。
  6. 記録動作における累積吐出回数が所定の回数以上か判定し、
    前記累積吐出回数が所定の回数以上の場合、前記クリーニング手段によるクリーニング処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の記録装置。
  7. 前記クリーニング処理を終了する場合は、前記累積吐出回数をリセットすることを特徴とする請求項6の記録装置。
  8. 前記クリーニング手段によるクリーニング処理を終了した後、所定時間が経過した場合に前記クリーニング処理を行うことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
  9. 液体を吐出する吐出口と、
    前記吐出口に連通する液室と、
    前記吐出口に対向して設けられる発熱抵抗素子と、
    前記発熱抵抗素子を被覆する絶縁層と、
    前記液室内に配され、前記絶縁層の一部であって少なくとも前記発熱抵抗素子を被覆している部分を更に被覆し、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で形成される第1電極と、
    前記液室内に配され、前記液体を介して前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、
    前記液室内の前記液体を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を流すことにより、前記第1電極に付着するコゲを除去するクリーニング手段と、
    を備える記録装置の制御方法であって、
    前記クリーニング手段に含まれる定電流電源により、所定値の電流を流すステップを有することを特徴とする制御方法。
  10. コンピュータに請求項9に記載の方法を実行させるためのプログラム。
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