JP2021094434A - 光干渉を利用して涙液層厚を測定する方法及び装置 - Google Patents

光干渉を利用して涙液層厚を測定する方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】干渉信号のフーリエ変換により分解されないほどに薄い対象の厚さを求める。【解決手段】干渉信号のフーリエ変換により分解されないほどに薄い対象の厚さを求める干渉計測法は、干渉信号の包絡線に対するハーモニック周波数変調の適用を含む。対象が涙液層である場合、涙液層の油層の厚さを求めるためにこの方法を使用することができる。【選択図】図3

Description

(関連出願の相互参照)
この出願は、2019年3月29日に出願された「METHOD AND APPARATUS FOR MEASURING TEAR FILM THICKNESS USING OPTICAL INTERFERENCE」と題する米国仮特許出願第62/826,495号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
ドライアイは、眼科医の診察における最も一般的な原因の1つになっている。ドライアイは、涙液層に関連する眼表面の多因子性疾患であり、その眼は、眼を潤滑化し栄養を与えるための十分な涙液を有しない。ドライアイを診断する1つの方法は、涙液層の厚さを測定して涙液の量を評価することである。図1に示されるように、涙液層100は、外側の油層102と、中間の水層104と、内側のムチン(粘液)層106とを含む。油層102の厚さは約50nmであり、水層104の厚さは約950nmであり、ムチン層106の厚さは約500nmである。角膜は、ムチン層の内側にて涙液層に隣接している。
現在、ドライアイの診断及び涙液層に関する他の状態の診断を客観的に支援するために涙液の層を画像化及び解析する(例えば、涙液層自体の厚さを決定する、及びその中の層の厚さを決定する)技術はほとんど存在しない。干渉技術を利用する場合、涙液の複数の層からの反射光の間の干渉は、反射率スペクトル(干渉信号)に振動の形として現れることがある。干渉信号から深さプロファイルを復元するには、干渉信号にフーリエ変換が適用される。しかしながら、油層は薄すぎるため、干渉信号から深さプロファイルを再構成するために使用されるフーリエ変換では分解できない場合がある。これは、検出された干渉信号の長さ(又は測定期間)が干渉期間に比べて比較的短い場合には、周波数領域における油層の干渉信号がDC項(直流項)に近くなりすぎてDC項やノイズと区別できないためである。このことは、インターフェログラム信号の深さプロファイルの例を表す図2に示されている。油層と水層とを合わせた厚さに対応する信号の部分は、おおよそ1μmにおけるピークとして明確に識別することができる。ただし、油層に対応する信号の部分は、深さプロファイルでは識別できない。すなわち、約50nmの油層の深さにおいて別個のピークは現れない。これにより、フーリエ変換などの解析手法を直接に使用して、結果として得た深さプロファイルから油層の厚さを決定することが困難になる。
したがって、油層の厚さを推定するために、様々なシミュレーション及び較正(キャリブレーション)で決定された事前計算されたテーブルとの比較やカーブフィッティングなどの技術を用いることが試みられてきた。しかし、これらの既存の方法(カーブフィッティング、事前計算されたテーブルなど)は、正確な油層の厚さを一貫して提供するために、或る制限を受ける場合がある。例えば、カーブフィッティング法は、解に収束しない場合がある(厚さ測定)。また、事前計算されたテーブルは、予め決定された測定分解能の影響を受ける場合がある。
第1の例によれば、干渉計測法は、第1の層及び第2の層を有する対象から干渉信号を取得し、前記干渉信号は干渉撮像システムにより生成され、前記干渉信号を取得した後、前記第1の層の深さに対応する前記干渉信号の第1の干渉信号成分を求め、前記第2の層の深さに対応する前記干渉信号の第2の干渉信号成分を求め、前記第1の干渉信号成分を求めた後、前記第1の干渉信号成分に基づいて前記第1の層の厚さを求め、前記第1の層の前記厚さと前記第2の干渉信号成分とに基づいて前記第2の層の厚さを求める。
上記の例の様々な実施形態は以下のいずれかの構成を有する。前記対象は第3の層を更に有し、前記第2の層は前記第1の層と前記第3の層との間に存在し、更に、前記干渉信号を取得した後、前記第3の層の深さに対応する前記干渉信号の第3の干渉信号成分を求め、前記第1、第2、及び第3の干渉信号成分を求めた後、前記第2の干渉信号成分と前記第3の干渉信号成分とに基づいて前記第3の層の厚さを求める。前記第1の干渉信号成分を求めるステップは、前記干渉信号の包絡線を計算し、前記包絡線に対してハーモニック周波数変調を所定の回数繰り返し適用することにより時間領域変調信号を生成し、前記時間領域変調信号のフーリエ変換を実行することにより周波数領域変調信号を生成し、最大強度を有する前記周波数領域変調信号の周波数を特定し、更に、前記特定された周波数を深さに変換し、前記深さは前記第1の層の前記深さに対応する、又は、前記周波数領域変調信号を深さプロファイルに変換し、更に、最大強度を有する前記深さプロファイルの深さを特定し、前記最大強度を有する前記深さは前記第1の層の前記深さに対応する。この方法は、更に、前記ハーモニック周波数変調による前記時間領域変調信号の減衰を補償する。前記第1の層の前記厚さは、前記第1の層の前記深さに等しい。この方法は、更に、前記時間領域変調信号及び/又は前記周波数領域変調信号に基づいて、前記対象の光学特性及び/又は流体特性を解析又は推定する。前記第2の干渉信号成分を求めるステップは、前記干渉信号のフーリエ変換を実行することにより周波数領域干渉信号を生成し、最大強度を有する前記周波数領域干渉信号の周波数を特定し、更に、前記特定された周波数を深さに変換し、前記深さは前記第2の層の前記深さに対応する、又は、前記周波数領域干渉信号を深さプロファイルに変換し、更に、最大強度を有する前記深さプロファイルの深さを特定し、前記最大強度を有する前記深さは前記第2の層の前記深さに対応する。前記第2の層の前記厚さは、前記第1の層の前記深さと前記第2の層の前記深さとの差に等しい。この方法は、更に、前記第1及び第2の干渉信号成分を求める前に前記干渉信号の前処理を実行する。前記前処理は、前記干渉信号のDC項の抑制を含む。前記対象は、眼の涙液層である。前記第1の層は油層であり、前記第2の層は水層又はムチン層である。前記第1の層は、前記干渉信号のフーリエ変換又はDC項が抑制された前記干渉信号のフーリエ変換により分解されないほどに薄い。
第2の例によれば、対象の厚さを求める方法は、前記対象から干渉信号を取得し、前記干渉信号の包絡線を計算し、前記包絡線に対してハーモニック周波数変調を所定の回数繰り返し適用することにより時間領域変調信号を生成し、前記変調信号のフーリエ変換を実行することにより周波数領域変調信号を生成し、最大強度を有する前記周波数領域変調信号の周波数を特定し、更に、前記特定された周波数を深さに変換し、前記深さは前記対象の前記厚さに対応する、又は、前記周波数領域変調信号を深さプロファイルに変換し、更に、最大強度を有する前記深さプロファイルの深さを特定し、前記最大強度を有する前記深さは前記対象の前記厚さに対応する。
上記の第2の例の様々な例は以下のいずれかの構成を有する。この方法は、更に、前記ハーモニック周波数変調による前記時間領域変調信号の減衰を補償する。この方法は、更に、前記干渉信号の前記包絡線を計算する前に前記干渉信号の前処理を実行する。前記前処理は、前記干渉信号のDC項の抑制を含む。前記対象は眼の涙液層であり、前記厚さは前記涙液層の油層の厚さである。前記第1の層は、前記干渉信号のフーリエ変換又はDC項が抑制された前記干渉信号のフーリエ変換により分解されないほどに薄い。この方法は、更に、前記時間領域変調信号及び/又は前記周波数領域変調信号に基づいて、前記対象の光学特性及び/又は流体特性を解析又は推定する。
図1は、涙液層を模式的に表す。
図2は、インターフェログラム信号の例示的な深さプロファイルを示す。
図3は、油層の厚さ、水層の厚さ、及びムチン層の厚さのそれぞれを求めるための本開示の例示的な方法を示す。
図4は、油層の厚さを求めるための本開示の例示的な方法を示す。
図5は、油層と水層とを合わせた深さ及び油層と水層とムチン層とを合わせた深さを求めるための本開示の例示的な方法を示す。
図6は、図3〜図5の例示的な方法において求められた例示的な信号を示す。 図7は、本開示の例示的な方法を実行するための例示的なシステムを示す。
上記を考慮し、本開示は、前述した制約を克服する涙液層厚決定に関連する。干渉計測技術を用いて(例えば、低コヒーレンストモグラフィ又は光コヒーレンストモグラフィシステムを用いて)厚さ測定を行う場合、複数の干渉信号は、測定される涙液層の各位置から検出された入射光の異なる複数の波長に対応する。これらの干渉信号は、以下に示す油層厚成分(L)、水層厚成分(A)、及びムチン層厚成分(M)に関連して定義される。
Figure 2021094434
Figure 2021094434
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ここで、OpticalInterference#1は油層/水層境界からの干渉信号であり(油層の厚さ/深さに対応する)、OpticalInterference#2は水層/ムチン層境界からの干渉信号であり(油層の厚さ/深さと水層の深さとの和に対応する)、OpticalInterference#3はムチン層の底部(base)からの干渉信号である(油層の厚さ/深さと水層及びムチン層の深さとの和に対応する)。換言すると、油層厚はOpticalInterference#1の周波数に対応する深さに等しく、水層厚はOpticalInterference#2の周波数に対応する深さとOpticalInterference#1の周波数に対応する深さとの差に等しく、ムチン層厚はOpticalInterference#3の周波数に対応する深さとOpticalInterference#2の周波数に対応する深さとの差に等しい。
Figure 2021094434
Figure 2021094434
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双方の厚さL+A及びL+A+Mは、OpticalInterference#3とOpticalInterference#2とのフーリエ変換を行うことによって分解及び計算することが可能である。これは、水層及びムチン層の双方の厚さが、干渉信号のそのような解析によって理解されるのに相対的に十分な厚さであることによる。しかしながら、前述したように、油層の厚さは薄すぎるため、このように分解されない。また、OpticalInterference#2は油層厚成分を含んでいるため、水層の実際の厚さを十分に決定することはできない。OpticalInterference#3も油層厚成分を含んでおり、上に示したように、OpticalInterference#3からL+A(これはOpticalInterference#2から既知である)を減算して油層厚を得ることなくムチン層厚を求めることはできない。
本開示の方法は、油層、水層、及びムチン層のそれぞれの厚さを求めることが可能である。この方法の1つの例が図3〜図5のフローチャートに示されている。簡単に言うと、OpticalInterference#2に対応する深さ及びOpticalInterference#3に対応する深さがフーリエ変換により分解され、更に並行して、ハーモニック周波数変調法により油層厚(OpticalInterference#1)が求められる。最後に、この決定された油層厚から水層厚及びムチン層厚が算出される。
より詳細には、図3に示すように、この方法は、まず、干渉信号をロードし前処理を実行する(300)(ここで、「干渉信号」は、前処理が施された干渉信号及び前処理が施されていない干渉信号の双方を示すものとして用いられる)。図6は、例示的な干渉信号600を示している。干渉信号を取得しロードした後、干渉信号の前処理が行われる。例えば、前処理は、干渉信号のDC項を抑制するものである。干渉信号のDC項は、DCオフセットレベル(周波数ゼロ)に近い低周波信号を表す。したがって、DC項の抑制は、フィルタ(例えば、アナログ及び/又はデジタルローパスフィルタ、メディアンフィルタ、平均値フィルタ、バンドパスフィルタ、移動平均フィルタ、又は他の同様のフィルタ)を適用することによってなされる。他の実施形態において、検出された干渉信号の1次微分を取ることによってDC項を抑制することができる。もちろん、他の類似の信号処理手法を用いて、対応する周波数の除去、DCレベルの減算(サブトラクション)、又は他の同様の処理を行うことができ、また、他のノイズを除去及び/又は抑制することができる。例えば、波数の関数としての背景ノイズ、システムの較正(キャリブレーション)手順から測定される背景ノイズ、又は他の類似の背景ノイズを、ロードされた又はさもなければ取得された干渉信号600から単純に差し引くことにより、背景ノイズを除去することができる。更に言うと、背景ノイズ抑制手順の前、後、又は最中に、他の種類のノイズを抑制することができる。各タイプのノイズ抑制は、平均値フィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、メディアンフィルタなどの様々なタイプのアナログ及び/又はデジタルフィルタにより実現することができ、及び/又は、ソフトウェア処理を用いて実現することができる。
前処理(300)に続いて、(上記したような)OpticalInterference#1に対応する深さ測定(302)と、(同じく上記したような)OpticalInterference#2及びOpticalInterference#3の深さ測定(304)とが、並行して行われる。
OpticalInterference#1を測定する方法の例を図4に示す。本例では、まず、干渉信号(例えば、抑制されたDC項を持つ干渉信号)の包絡線が求められる(400)。それにより得られた包絡線信号の例602を図6に示す(図6の干渉信号600の包絡線を表している)。幾つかの実施形態において、検出された干渉信号600に多項式曲線をフィッティングして干渉信号の部分OpticalInterference#1を取得することができる。その結果得られた包絡線信号を任意の信号(例えば、正弦関数又は余弦関数)としてモデル化することができる。
次いで、ハーモニック周波数によって包絡線信号を変調し(以下においてより詳細に説明されるハーモニック周波数変調)(402)、その結果得られた信号に変調402によって生じた減衰を補償する(404)。この変調及び補償は、反復処理として(N回)繰り返される。変調の回数(N)は、望ましい結果にしたがって予め決定されてよい。この望ましい結果は、例えば、少なくとも変調信号からDC項が識別可能となるまでであり、又は、信号対雑音比が望ましいレベル若しくは最大レベルに到達するまでである。上記の望ましい結果又は変調の具体的な回数は、ユーザによって選択されてもよいし、自動化されてもよい。幾つかの実施形態において、3回の反復が好ましい可能性がある。このハーモニック変調402、404により、後段のフーリエ変換408によって油層を分解することが可能となる。なお、幾つかの実施形態において、N回の変調が適用された後に減衰補償404を実行してもよい。
ハーモニック周波数変調は、リング変調の信号処理関数の特別な場合であり、一般的には音楽合成及び音響効果のために用いられる。リング変調は、2つの信号を乗算することによって実行される。ここで、2つの信号の一方は、通常は正弦波又は他の簡単な波形であり(変調信号(modulating signal))であり、他方は、変調を受ける信号(包絡線信号)である。ハーモニック周波数変調を用いることで、乗算される2つの信号は、好ましくは同じ周波数を有するが、異なる位相及び/又は異なる振幅を有していてよい(例えば、これらの信号の位相は90度ずれていてよい)。このようなハーモニック周波数変調の概念は、以下に示す例示的な等式に説明されており、これらの信号は左辺において乗算され、その結果得られる変調信号(変調された信号)が右辺に示されている。
Figure 2021094434
Figure 2021094434
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これらの例から分かるように、乗算された信号(正弦関数及び余弦関数で表現されている)の周波数が等しい場合、結果として得られる変調信号は、元の信号の周波数の2倍の周波数を有する。よって、変調の反復回数をNとすると、制限無しに、結果として得られる周波数シフトは2Nに等しい。2つの信号の周波数が異なる場合、2N未満の低調波(subharmonic)周波数シフトが依然として観測される。上記の等式は三角関数の積の恒等式に基づくものであるが、例えば、積−和の恒等式(積和公式、和積公式)、角度の和及び角度の差の恒等式(加法定理)、2倍の角度の恒等式(倍角公式)、和の恒等式といった他の三角関数の恒等式(又は特性)を考慮して、ハーモニック周波数変調の同様の結果を導くことができる。
特に、上記の例示的な等式から分かるように、変調を反復する度に、ハーモニック周波数が変調された信号の振幅が、入力された元の包絡線信号から半分に減衰される。よって、変調ごとの信号減衰の割合が大きい場合には、変調された信号に定数値を乗算することによって、変調ごとの減衰量を補償することができる。或いは、例えば、包絡線信号の2倍の振幅(又は、同様のファクタ)を有する信号を用いて変調を行うことにより、変調と同時に減衰補償を行うことが可能である。しかしながら、幾つかの実施形態においては、入力された包絡線信号の振幅が比較的大きい場合、信号の減衰量は、補償を正当化できるほど大きくなくてもよい。前述したように変調信号(modulated signal)の周波数及び振幅を制御する変調用の信号(modulating signal)に加え、変調用の信号の位相を包絡線信号に対して変化させることより変調信号の位相を制御してもよい。
前述したように、正弦関数や余弦関数として包絡線信号をモデル化することが可能である。包絡線信号に乗算されるハーモニック変調用信号(harmonic modulating signal)を任意の方法で形成することができる。例えば、包絡線信号と周波数が同じであるが位相が例えば90度異なるハーモニック変調用信号を生成するためにヒルベルト変換又は1次微分法を用いることができる。ハーモニック変調用信号に包絡線信号を乗算した結果が、ハーモニック周波数変調包絡線信号(harmonic frequency modulated envelope signal)である。同じく前述したように、他のハーモニック変調用信号の乗算によって、このハーモニック周波数変調包絡線信号の振幅を再び補償及び/又は変調してもよい。この補償は、結果として得られたハーモニック周波数変調包絡線信号に、ユーザにより決定されたスケール因子(scaling factor)又は所定の最適値に基づき決定されたスケール因子を乗算することによって適用されてよい。スケール因子は、例えば、望ましい信号対雑音比を維持するように選択されてよい。
図4の参照に戻る。包絡線信号が変調され、変調に起因する減衰が補償された後、時間領域においてハーモニック周波数変調包絡線信号にフーリエ変換が実行される(408)。このフーリエ変換は、周波数領域(又は、光コヒーレンストモグラフィでは空間領域)における変調包絡線信号のパワースペクトルを生成する。次に、(例えばピーク検出法を用いて)最も高いピーク(この変調信号における最大の周波数成分)が特定され(410)、これに対応する周波数が深さに変換される(412)。この変換は、干渉信号を取得した撮像システムの初期較正に基づくものであってよい。例えば、涙液層と同等の厚さ(複数の厚さ)及び屈折率を有する涙液層を模した較正用試料を用いたシステム較正により、この較正用試料の厚さと対応する周波数とを関連付けることができる。特定された深さは、OpticalInterference#1に相当し、油層厚(L)に等しい。周波数領域における変調包絡線信号の深さプロファイル606(全ての周波数が深さに変換されている)が図6に示されている。図6の例において、入力された干渉信号は、3回変調され、更に、元の信号対雑音比を保つために各回の変調の後に一定のスケール因子により増幅された。図6から分かるように、油層深さプロファイル606において特定された最大ピークに対応する深さは、48.525nmである。或いは、周波数領域の変調信号は、まず深さプロファイル606に変換されてよく、更に、この周波数領域の変調信号ではなく深さプロファイルから最大ピークを特定してもよい。そして、特定された深さを、後の解析のために保存することができる(414)。
図3の参照に戻る。OpticalInterference#1及び油層厚と並行して、OpticalInterference#2(L+A)に対応する深さ及びOpticalInterference#3(L+A+M)に対応する深さが特定される(304)。OpticalInterference#2及びOpticalInterference#3を求める処理は、ハーモニック周波数変調を除いて、前述したOpticalInterference#1を求める処理と同様である。そのような処理の例を図5に示す。同処理において、(例えば、抑制されたDC項を有する)干渉信号に対してフーリエ変換が直接に実行される(500)。更に、(例えば、ピーク検出法によって)2つの最大ピークを有する周波数(干渉信号における最大周波数成分)が特定され(502)、これらの周波数が(例えば、前述した初期較正又は同様の手法に基づいて)深さに変換される(504)。上記と同様に、他の実施形態は、最大ピークを特定する前に、信号全体を深さに変換してもよい。最も大きい成分の周波数での深さは、OpticalInterference#2の深さ(油層と水層とを合わせた深さ、水層とムチン層との境界の深さ)に相当し、2番目に大きい成分の周波数での深さは、OpticalInterference#3の深さ(油層と水層とムチン層とを合わせた深さ)に相当する。なお、幾つかの例において、一般に、光反射の低さのために、ムチン層からの第2番目のピークが見つからないことがある。前述したハーモニック周波数変調により測定された深さプロファイル604が図6に示されており、OpticalInterference#2に対応する最大ピークは990.2nmに位置している。しかしながら、ムチン層の深さについては、前述した(そして以下においても説明するように)深さと干渉信号との関係を考慮することにより水層の深さと油層の深さとに基づいて求めてもよい。そして、これらの深さは、後の解析のために保存される(506)。
図3の参照に戻る。(例えば、図4及び図5の方法にて保存されたように)全てが既知のOpticalInterference#1に対応する深さ、OpticalInterference#2に対応する深さ、及びOpticalInterference#3に対応する深さを用いて、各層の個々の深さを求めることができる。各光干渉についての上記等式に基づくと次のようになる。
油層厚(L)=OpticalInterference#1(図4の処理にて保存されたもの)
水層厚(A)=OpticalInterference#2(図4の処理にて保存されたもの)−OpticalInterference#1(図4の処理にて保存されたもの)
ムチン層厚(M)=OpticalInterference#3(図5の処理にて保存されたもの)−OpticalInterference#2(図4の処理にて保存されたもの)
換言すると、OpticalInterference#2及びOpticalInterference#3から求められた油層+水層+ムチン層の厚さ及び/又は油層+水層の厚さから油層厚を減算することによって、水層厚とムチン層厚とを算出することができる。図6の例を用いると、油層厚(L)(OpticalInterference#1)は48.525nmであり、油層の深さプロファイル606における最大ピークの深さである。よって、水層厚(A)は、水層+油層の厚さ(OpticalInterference#2)に対応する深さと、OpticalInterference#1との差分である。すなわち、水層厚は、990.2nm−48.525nm=941.675nmに等しい。本例では、入力された干渉信号は、3回変調され、更に、元の信号対雑音比を保つために各回の変調の後に一定のスケール因子により増幅された。
図4に対応する上記の処理と図5に対応する上記の処理とは並行して行われるように説明したが、これらを同時に実行する必要はない。むしろ、OpticalInterference#1(油層厚)の決定は、簡便に、OpticalInterference#2及びOpticalInterference#3(油層と水層とを合わせた厚さ、及び、油層と水層とムチン層とを合わせた厚さ)とは別に行われる。これにより、図5の処理の前又は後に図4の処理を行うことができるが、干渉信号のロード/取得及び処理の後に双方の処理が完了され、また、従来技術が最終的に水層厚とムチン層厚とを求める。
最後に、各層厚が算出された後、後の使用のために最終結果を表示及び/又は保存することができ、また、干渉信号から得た付加的情報を解析、保存、表示、又は同様のために抽出することができる(308)。そのような付加的情報は、光干渉信号の光学位相を含んでいてよく、又は、粘度、流速、並びに/又は媒質の変形、振動及び/若しくは変化などの流体特性を含んでいてもよい。
より具体的には、ハーモニック変調信号(例えば、油層厚を求める場合には図4の方法にしたがい導かれたようなもの)は、元の干渉信号の光学位相(θ)の情報をまだ持っていてよい。この位相情報は、涙液層の光学特性及び流体特性(例えば、粘度、粒子の動き、温度、屈折率、及び同様の特性)を推定及び解析するために有用である。変調された干渉信号のフーリエ変換を行うことによって光学位相情報を抽出することが可能である。一般に、光学位相の知識(情報)。
一般に、光干渉信号I(x、ν、t)は次式のように表される。
Figure 2021094434
ここで、νは、検出された光の周波数である。距離情報(範囲情報;range information)は、撮像されるサンプルにより後方散乱された光の伝搬時間τによって与えられ、R(x、τ、t)は、(x、τ)における正規化された後方散乱強度であり、S(ν)は、光源のスペクトル密度である。例えば余弦関数で変調される場合、減衰補償後の変調された干渉信号は、三角関数の恒等式について前述したように、次式に相当する。
Figure 2021094434
νについてのフーリエ変換を干渉信号に施すことにより、サンプルについての深さ情報が取得される。このフーリエ変換は、次式のように表される。
Figure 2021094434
ここで、光学位相Φ(x、z、t)は一般にランダムであるが、位置(x、z)におけるサンプルの静的散乱(static scatters)について固定される。
しかしながら、連続する2つのBスキャンの間の時間間隔Δtの間における瞬間的な距離Δd(x、z)の散乱の移動(translation)により、Φ(x、z、t)=4πnΔd(x、z、t)/λで与えられる反射光の光学位相の測定値の局所的変化が引き起こされる。ここで、λは光源の中心波長であり、nはサンプルの屈折率である。測定されるΦ(x、z、t)は、(−π、π)ラジアンの範囲にラップ(wrap)される。よって、位相アンラッピング法(phase−unwrapping)法を用いて実際の光学位相の変化を求めることができ、また、光線方向における局所化された涙液層速度を
ν(x、z、t)=ΔΦ(x、z、t)λ(4πnΔt)−1から導くことができる。そして、深さ分解された瞬間的な変位及び速度を用いて、ひずみ速度や粘度といったサンプルの特性を算出することができる。
更に、図7に示すハーモニック周波数変調システム(HFMS)700などのシステムにおいて上記の方法を実行してもよい。本例において、コントローラ702は、光源704及び検出器706を含む近くのデバイスを制御するように構成されている。加えて、コントローラ702はプロセッサ708と通信を行う。プロセッサ708は、ハーモニック周波数変調法を用いて求められたような、涙液層厚測定などで求められた特性の表示を制御することによって、及び、適当な信号処理、演算などを実行することによって、前述した方法を実行する。コントローラ702及びプロセッサ708はともに、コンピュータ(例えば、メモリ、記憶装置(例えば、フラッシュ記憶装置、ハードディスクドライブ)、入力/出力ヒューマンインターフェイス装置(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ディスプレイ)、などを更に含む)を構成する。
例えば、光源704及び検出器706を用いた低コヒーレンス干渉法(LCI)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、又は同様の手法など、サンプル710(例えば、被検眼)の干渉計測イメージング技術/システムを用いて、本明細書で説明した干渉信号を取得してもよい。幾つかの実施形態において、検出器706は、分光器、ハイパースペクトル検出器/撮像装置、又は同様のデバイスであってよい。涙液層厚測定の場合、例えば、眼科スクリーニングにおいて被検眼にLCI又はOCTスキャンを行うことによって干渉信号を取得することができる。
プロセッサ708及びコントローラ702は、LCIシステム又はOCTシステムと統合されていてもよいし(例えば、共通のコンピュータ及び周辺機器を共有している)、或いは、別々であってもよい(例えば、互いに離れて配置されている)。このような統合にかかわらず、説明された方法は、干渉計測イメージングスキャンの実行の直後に(又は、これに次いで)実行されてもよく、或いは、実質的に後の時間に実行されてもよい。また、説明された方法は、臨床医の診療室にて行われてもよいし(例えば、臨床医がOCTスキャンを行う)、又は、集中化された場所にて行われてもよい。
また、様々な信号処理は、ハードウェア(例えば、ディスクリート回路)として実装されてもよいし、又は、プロセッサ又はコントローラにプログラムされたソフトウェアとして実装されてもよい。例えば、時計回り又は反時計回りに向き付けられた複数のダイオードを有するブリッジ整流器としてハーモニック変調回路を具現化してもよい。
以上を考慮すると、本明細書で説明された方法及びシステムは、現在の涙液層イメージング技術及び涙液層解析技術を、少なくとも以下の点において向上させる;1)各涙液層についての厚さ測定を提供できること;2)非常に薄い層を測定できること(光源の中心波長よりずっと薄い層でもよい);3)実施や実装が容易であること;4)層厚の測定だけでなく、光干渉信号の光学位相も測定できること;5)粘度、流速、媒質の変形/振動/変化といった流体特性及び光学特性を評価できること。
上記の説明は涙液層厚測定に関するものであるが、本開示は任意の層厚の測定に関連するものであり、特に、正確且つ高い信頼性で分解するには薄すぎる厚さの層を含む多層構造を対象とする。また、そのような多層構造は、3層に限定されず、2層だけでもよいし、他の実施形態では3層を超えてもよい。

Claims (2)

  1. 対象の厚さを求める方法であって、
    前記対象から干渉信号を取得し、
    前記対象からの前記干渉信号から背景ノイズを差し引き、
    前記背景ノイズが差し引かれた前記干渉信号の包絡線を計算し、
    前記包絡線に対してハーモニック周波数変調を所定の回数繰り返し適用することにより時間領域変調信号を生成し、
    前記変調信号のフーリエ変換を実行することにより周波数領域変調信号を生成し、
    最大強度を有する前記周波数領域変調信号の周波数を特定し、
    前記特定された周波数を深さに変換し、
    前記深さは前記対象の前記厚さに対応する、
    方法。
  2. 対象の厚さを求める方法であって、
    前記対象から干渉信号を取得し、
    前記対象からの前記干渉信号から背景ノイズを差し引き、
    前記背景ノイズが差し引かれた前記干渉信号の包絡線を計算し、
    前記包絡線に対してハーモニック周波数変調を所定の回数繰り返し適用することにより時間領域変調信号を生成し、
    前記変調信号のフーリエ変換を実行することにより周波数領域変調信号を生成し、
    前記周波数領域変調信号を深さプロファイルに変換し、
    最大強度を有する前記深さプロファイルの深さを特定し、
    前記最大強度を有する前記深さは前記対象の前記厚さに対応する、
    方法。
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