JP2021092275A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

車両用動力伝達装置の制御装置 Download PDF

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政紀 志水
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Abstract

【課題】無段変速機構を介した第2動力伝達経路にてエンジンの動力を伝達して走行することが可能な第2走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチが係合された状態にあっても、NVの悪化を抑制しつつ、ドライバビリティーの低下を抑制する。【解決手段】ベルト走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合状態にあるときに、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致状態にある場合には、噛合式クラッチD1が解放されるので、噛合式クラッチD1における噛み合わせが解除され、噛合式クラッチD1におけるガタ打ち音の発生が回避される。一方で、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致状態にない場合には、噛合式クラッチD1の係合状態が維持されるので、ギヤ走行モードへの切替えに備えておくことができ、ベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替応答性の低下を防ぐことができる。【選択図】図7

Description

本発明は、動力源と駆動輪との間に並列に設けられた複数の動力伝達経路を備える車両用動力伝達装置の制御装置に関するものである。
ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置を介してエンジンの動力が伝達される入力回転部材と駆動輪へ前記動力を出力する出力回転部材との間に並列に設けられた、前記動力を前記入力回転部材から前記出力回転部材へ各々伝達することが可能な複数の動力伝達経路を有し、前記複数の動力伝達経路は、前記動力の伝達において直列に配置された第1摩擦係合装置及び噛合式クラッチの何れもの係合によって形成される、ギヤ段を有するギヤ機構を介した第1動力伝達経路、及び第2摩擦係合装置の係合によって形成される、無段変速機構を介した第2動力伝達経路である車両用動力伝達装置の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両の制御装置がそれである。この特許文献1には、前記噛合式クラッチが係合された状態で前記第1摩擦係合装置及び前記第2摩擦係合装置のうちの一方を解放すると共に他方を係合することによって、前記第1動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第1走行モードと前記第2動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第2走行モードとの間で走行モードを切り替えること、又、前記第2走行モードでの走行中には、前記第1走行モードへの切替え準備として、前記第1走行モードへの切替えが判断されるよりも前から予め前記噛合式クラッチを係合した状態としておくことが開示されている。
特開2019−152274号公報
ところで、上述したような車両用動力伝達装置では、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路のうちの一方の動力伝達経路にてエンジンの動力を伝達するときには、他方の動力伝達経路は動力伝達に関与せずに連れ回されるだけの遊転している状態になる、つまり無負荷の遊転状態になる。遊転状態にある動力伝達経路にエンジンの爆発振動が入力されると、例えば動力伝達経路における回転部材の噛み合わせ部分に形成されたガタにて衝突音すなわちガタ打ち音が発生する可能性がある。例えば、第2走行モードでの走行中には、第1動力伝達経路が遊転状態になる。この際、例えば第1走行モードへの切替え準備の為に第1動力伝達経路において噛合式クラッチが係合された状態にあると、噛合式クラッチの噛み合わせ部分でエンジンの爆発振動に起因するガタ打ち音が発生して、NVが悪化する可能性がある。このNVは、車両で生じる上記ガタ打ち音などの騒音や搭乗者が感じる振動の総称である。一方で、第2走行モードでの走行中において、第1走行モードへの切替え判断時に噛合式クラッチが係合された状態にないと、第2走行モードから第1走行モードへの切替応答性が低下して、ドライバビリティーが低下する可能性がある。尚、ロックアップクラッチが係合された状態にあるときは、エンジンの爆発振動が車両用動力伝達装置に直接的に入力されるので、ロックアップクラッチが解放された状態にあるときと比べて、エンジンの爆発振動が減衰され難い。その為、ロックアップクラッチが係合された状態にあるときは、上述したような課題が生じ易い。車両において、例えば燃費向上を図るという観点では、ロックアップクラッチを係合した状態とすることは有用である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第2走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチが係合された状態にあっても、NVの悪化を抑制しつつ、ドライバビリティーの低下を抑制することができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置を介してエンジンの動力が伝達される入力回転部材と駆動輪へ前記動力を出力する出力回転部材との間に並列に設けられた、前記動力を前記入力回転部材から前記出力回転部材へ各々伝達することが可能な複数の動力伝達経路を有し、前記複数の動力伝達経路は、前記動力の伝達において直列に配置された第1摩擦係合装置及び噛合式クラッチの何れもの係合によって形成される、ギヤ段を有するギヤ機構を介した第1動力伝達経路、及び第2摩擦係合装置の係合によって形成される、無段変速機構を介した第2動力伝達経路である車両用動力伝達装置の、制御装置であって、(b)前記噛合式クラッチが係合された状態で前記第1摩擦係合装置及び前記第2摩擦係合装置のうちの一方を解放すると共に他方を係合することによって、前記第1動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第1走行モードと前記第2動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第2走行モードとの間で走行モードを切り替える変速制御部と、(c)前記第2走行モードでの走行中において、前記ロックアップクラッチ及び前記噛合式クラッチが共に係合された状態にある場合には、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と、前記第1摩擦係合装置と前記噛合式クラッチとの間の動力伝達経路における中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にあるか否かを判定する状態判定部とを、含み、(d)前記変速制御部は、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と前記中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にあると判定された場合には、前記噛合式クラッチを解放する一方で、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と前記中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にないと判定された場合には、前記噛合式クラッチが係合された状態を維持することにある。
前記第1の発明によれば、入力回転部材の回転速度の変動周波数と中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にあると判定された場合には、噛合式クラッチが解放されるので、予め実験的に把握された、遊転状態にある噛合式クラッチの噛み合わせ部分でエンジンの爆発振動に起因するガタ打ち音が発生し易い状態のときには、噛合式クラッチの噛み合わせ部分における噛み合わせが解除され、噛合式クラッチにおけるガタ打ち音の発生が回避される。一方で、入力回転部材の回転速度の変動周波数と中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にないと判定された場合には、噛合式クラッチが係合された状態が維持されるので、予め実験的に把握された、遊転状態にある噛合式クラッチの噛み合わせ部分でエンジンの爆発振動に起因するガタ打ち音が発生し難い状態のときには、第1走行モードへの切替えに備えておくことができ、第2走行モードから第1走行モードへの切替応答性の低下を防ぐことができる。よって、第2走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチが係合された状態にあっても、NVの悪化を抑制しつつ、ドライバビリティーの低下を抑制することができる。
本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。 噛合式クラッチの構成及び切替作動を説明する為の図であって、噛合式クラッチの解放状態を示している。 図2の状態を外周側から見たスリーブの円筒部分を除く展開図である。 噛合式クラッチの構成及び切替作動を説明する為の図であって、噛合式クラッチの係合状態を示している。 図4の状態を外周側から見たスリーブの円筒部分を除く展開図である。 ロックアップクラッチ及び噛合式クラッチが共に係合状態とされたベルト走行モードでの走行中におけるタービン回転速度とC1回転速度とを比較する図表である。 電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、ベルト走行モードでの走行中においてロックアップクラッチが係合された状態にあってもNVの悪化を抑制しつつドライバビリティーの低下を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。
本発明の実施形態において、前記無段変速機構は、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に伝達要素が巻き掛けられた無段変速機である。入力側のプーリである前記プライマリプーリと出力側のプーリである前記セカンダリプーリとは、各々、例えば固定シーブと可動シーブとそれらの固定シーブ及び可動シーブの間の溝幅を変更する為の推力を付与する油圧アクチュエータとを有する。前記車両用動力伝達装置を備える車両は、前記油圧アクチュエータに供給される作動油圧としてのプーリ油圧をそれぞれ独立に制御する油圧制御回路を備える。この油圧制御回路は、例えば前記油圧アクチュエータへの作動油の流量を制御することにより結果的にプーリ油圧を生じるように構成されても良い。このような油圧制御回路により、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリにおける各推力(=プーリ油圧×受圧面積)が各々制御されることで、前記伝達要素の滑りを防止しつつ目標の変速が実現されるように変速制御が実行される。前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間に巻き掛けられた前記伝達要素は、無端環状のフープと、そのフープに沿って厚さ方向に多数連ねられた厚肉板片状のブロックであるエレメントとを有する無端環状の圧縮式の伝動ベルト、又は、交互に重ねられたリンクプレートの端部が連結ピンによって相互に連結された無端環状のリンクチェーンを構成する引張式の伝動ベルトなどである。前記無段変速機構は、公知のベルト式の無段変速機である。広義には、このベルト式の無段変速機の概念にチェーン式の無段変速機を含む。
また、前記車両用動力伝達装置、前記無段変速機構などにおける変速比(=ギヤ比)は、「入力側の回転部材の回転速度/出力側の回転部材の回転速度」である。例えば、前記無段変速機構の変速比は、「プライマリプーリの回転速度/セカンダリプーリの回転速度」である。又、前記車両用動力伝達装置の変速比は、「入力回転部材の回転速度/出力回転部材の回転速度」である。変速比におけるハイ側は、変速比が小さくなる側である高車速側である。変速比におけるロー側は、変速比が大きくなる側である低車速側である。例えば、最ロー側変速比は、最も低車速側となる最低車速側の変速比であり、変速比が最も大きな値となる最大変速比である。
また、前記エンジンは、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の機関である。又、前記車両は、動力源として、このエンジンに加えて、電動機等を備えていても良い。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源として機能するエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた車両用動力伝達装置16とを備えている。以下、車両用動力伝達装置16を動力伝達装置16という。
動力伝達装置16は、非回転部材としてのケース18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20、トルクコンバータ20に連結された入力軸22、入力軸22に連結された無段変速機構24、同じく入力軸22に連結された前後進切替装置26、前後進切替装置26を介して入力軸22に連結されて無段変速機構24と並列に設けられたギヤ機構28、無段変速機構24及びギヤ機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、カウンタ軸32、出力軸30及びカウンタ軸32に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置34、カウンタ軸32に相対回転不能に設けられたギヤ36、ギヤ36に連結されたデフギヤ38等を備えている。又、動力伝達装置16は、デフギヤ38に連結された左右の車軸40を備えている。入力軸22は、トルクコンバータ20を介してエンジン12の動力が伝達される入力回転部材である。出力軸30は、駆動輪14へエンジン12の動力を出力する出力回転部材である。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
このように構成された動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ20、前後進切替装置26、ギヤ機構28、減速歯車装置34、デフギヤ38、車軸40等を順次介して、左右の駆動輪14へ伝達される。又は、動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ20、無段変速機構24、減速歯車装置34、デフギヤ38、車軸40等を順次介して、左右の駆動輪14へ伝達される。
上述したように、動力伝達装置16は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路PTに並列に設けられた、ギヤ機構28及び無段変速機構24を備えている。具体的には、動力伝達装置16は、入力軸22と出力軸30との間の動力伝達経路PTに並列に設けられた、ギヤ機構28及び無段変速機構24を備えている。つまり、動力伝達装置16は、入力軸22と出力軸30との間に並列に設けられた、エンジン12の動力を入力軸22から出力軸30へ各々伝達することが可能な複数の動力伝達経路を備えている。複数の動力伝達経路は、ギヤ機構28を介した第1動力伝達経路PT1、及び無段変速機構24を介した第2動力伝達経路PT2である。すなわち、動力伝達装置16は、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2との複数の動力伝達経路を、入力軸22と出力軸30との間に並列に備えている。第1動力伝達経路PT1は、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ機構28を介して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。第2動力伝達経路PT2は、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機構24を介して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。
動力伝達装置16では、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達経路が、車両10の走行状態に応じて第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とで切り替えられる。その為、動力伝達装置16は、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とを選択的に形成する複数の係合装置を備えている。複数の係合装置は、第1クラッチC1、第1ブレーキB1、及び第2クラッチC2を含んでいる。第1クラッチC1は、第1動力伝達経路PT1に設けられており、第1動力伝達経路PT1を選択的に接続したり、切断したりする係合装置であって、前進時に、係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置である。第1ブレーキB1は、第1動力伝達経路PT1に設けられており、第1動力伝達経路PT1を選択的に接続したり、切断したりする係合装置であって、後進時に、係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置である。第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1又は第1ブレーキB1の係合によって形成される。第2クラッチC2は、第2動力伝達経路PT2に設けられており、第2動力伝達経路PT2を選択的に接続したり、切断したりする係合装置であって、係合されることで第2動力伝達経路PT2を形成する係合装置である。第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2の係合によって形成される。第1クラッチC1、第1ブレーキB1、及び第2クラッチC2は何れも、各々の油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式の湿式の摩擦係合装置である。第1クラッチC1は前進用の第1摩擦係合装置であり、第2クラッチC2は第2摩擦係合装置であり、第1ブレーキB1は後進用の第1摩擦係合装置である。第1クラッチC1及び第1ブレーキB1は、各々、後述するように、前後進切替装置26を構成する要素の1つである。前記複数の係合装置は、車両10に備えられた油圧制御回路42により調圧された油圧である各制御圧が各油圧アクチュエータへ供給されることにより、各々の係合状態や解放状態などの作動状態が切り替えられる。
エンジン12は、電子スロットル装置や燃料噴射装置や点火装置などのエンジン12の出力制御に必要な種々の機器を有するエンジン制御装置44を備えている。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、例えば運転者による車両10に対する駆動要求量に対応するアクセル開度θaccに応じてエンジン制御装置44が制御されることで、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
トルクコンバータ20は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、及び入力軸22に連結されたタービン翼車20tを備えている。トルクコンバータ20は、トルクコンバータ20内を流通する流体を介してエンジン12の動力を入力軸22へ伝達する流体式伝動装置である。又、トルクコンバータ20は、トルクコンバータ20の入力部材であるポンプ翼車20pと、トルクコンバータ20の出力部材であるタービン翼車20tとを連結する、すなわちトルクコンバータ20の入出力部材を連結する、直結クラッチとしてのロックアップクラッチLUを備えている。このように、トルクコンバータ20は、ロックアップクラッチLU付きの流体式伝動装置である。
ロックアップクラッチLUは、油圧制御回路42により調圧された油圧であるLU油圧が供給されることにより、作動状態が切り替えられる。ロックアップクラッチLUの作動状態としては、ロックアップクラッチLUが解放させられた完全解放状態すなわちロックアップオフ、ロックアップクラッチLUが滑りを伴ってスリップ作動させられたスリップ状態、及びロックアップクラッチLUが係合させられた完全係合状態すなわちロックアップがある。ロックアップクラッチLUがロックアップオフとされることにより、トルクコンバータ20はトルク増幅作用が得られるトルコン状態とされる。又、ロックアップクラッチLUがロックアップとされることにより、ポンプ翼車20p及びタービン翼車20tが一体回転させられてエンジン12の動力がトルクコンバータ20内の流体を介すことなく入力軸22へ伝達される。又、ロックアップクラッチLUのスリップ状態では、ロックアップクラッチLUにおけるスリップ量Nslpが目標スリップ量NslptgtとなるようにロックアップクラッチLUがスリップ作動させられる。スリップ量Nslpは、ロックアップクラッチLUの入出力回転速度差である入出力間の差回転速度(=エンジン回転速度Ne−タービン回転速度Nt)である。ロックアップクラッチLUがスリップ状態とされることにより、車両10が駆動状態のときには、エンジン回転速度Neの吹き上がりが抑制されたり、車内こもり音等が抑制される。一方で、車両10が被駆動状態のときには、目標スリップ量Nslptgtでエンジン12が入力軸22に対して追従回転させられて、例えばフューエルカット領域が拡大される。エンジン回転速度Neはエンジン12の回転速度であり、ポンプ翼車20pの回転速度と同意である。タービン回転速度Ntは、タービン軸の回転速度すなわちタービン翼車20tの回転速度であり、入力軸22の回転速度すなわち入力軸回転速度Ninと同意である。
車両10の駆動状態は、アクセルオンのパワーオン状態であり、例えばエンジン回転速度Neがタービン回転速度Ntよりも高いトルクコンバータ20の駆動状態である。車両10の被駆動状態は、アクセルオフのパワーオフ状態であり、例えばエンジン回転速度Neがタービン回転速度Ntよりも低いトルクコンバータ20の被駆動状態である。
動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pに連結された機械式のオイルポンプ46を備えている。オイルポンプ46は、エンジン12により回転駆動されることにより、無段変速機構24を変速制御したり、無段変速機構24におけるベルト挟圧力を発生させたり、前記複数の係合装置の各々の作動状態を切り替えたり、ロックアップクラッチLUの作動状態を切り替えたりする為の油圧の元圧となる作動油OILを、油圧制御回路42へ供給する。トルクコンバータ20内を流通する流体は、この作動油OILである。
前後進切替装置26は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置27、第1クラッチC1、及び第1ブレーキB1を備えている。遊星歯車装置27は、入力要素としてのキャリア27cと、出力要素としてのサンギヤ27sと、反力要素としてのリングギヤ27rとの3つの回転要素を有する差動機構である。キャリア27cは、入力軸22に連結されている。リングギヤ27rは、第1ブレーキB1を介してケース18に選択的に連結される。サンギヤ27sは、入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に相対回転可能に設けられた小径ギヤ48に連結されている。キャリア27cとサンギヤ27sとは、第1クラッチC1を介して選択的に連結される。
ギヤ機構28は、小径ギヤ48と、ギヤ機構カウンタ軸50と、ギヤ機構カウンタ軸50回りにそのギヤ機構カウンタ軸50に対して同軸心に相対回転不能に設けられて小径ギヤ48と噛み合う大径ギヤ51とを備えている。大径ギヤ51は、小径ギヤ48よりも大径である。又、ギヤ機構28は、ギヤ機構カウンタ軸50回りにそのギヤ機構カウンタ軸50に対して同軸心に相対回転可能に設けられたアイドラギヤ52と、出力軸30回りにその出力軸30に対して同軸心に相対回転不能に設けられてアイドラギヤ52と噛み合う出力ギヤ53とを備えている。出力ギヤ53は、アイドラギヤ52よりも大径である。従って、ギヤ機構28は、入力軸22と出力軸30との間の動力伝達経路PTにおいて、1つのギヤ段が形成される。ギヤ機構28は、ギヤ段を有するギヤ機構、つまり変速比(ギヤ比も同意)が固定された有段のギヤ機構である。ギヤ機構28は、更に、ギヤ機構カウンタ軸50回りに、大径ギヤ51とアイドラギヤ52との間に設けられて、これらの間の動力伝達経路を選択的に接続したり、切断したりする噛合式クラッチD1を備えている。噛合式クラッチD1は、第1動力伝達経路PT1を選択的に接続したり、切断したりする係合装置であって、係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置である。噛合式クラッチD1は、第1クラッチC1又は第1ブレーキB1と共に係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置であり、前記複数の係合装置に含まれる。
噛合式クラッチD1は、ギヤ機構カウンタ軸50回りにそのギヤ機構カウンタ軸50に対して同軸心に相対回転不能に設けられたクラッチハブ54と、アイドラギヤ52とクラッチハブ54との間に配置されてそのアイドラギヤ52に固設されたクラッチギヤ55と、クラッチハブ54に対してスプライン嵌合されることによりギヤ機構カウンタ軸50の軸心回りの相対回転不能且つその軸心と平行な方向の相対移動可能に設けられた円筒状のスリーブ56とを備えている。このように構成された噛合式クラッチD1では、クラッチハブ54と常に一体的に回転させられるスリーブ56がクラッチギヤ55側へ移動させられてそのクラッチギヤ55と噛み合わされることで、アイドラギヤ52とギヤ機構カウンタ軸50とが接続される。更に、噛合式クラッチD1は、スリーブ56とクラッチギヤ55とを嵌合する際に回転を同期させる、同期機構としての公知のシンクロメッシュ機構S1を備えている。噛合式クラッチD1は、動力伝達装置16に備えられたアクチュエータとしての油圧アクチュエータ57の作動によりスリーブ56がギヤ機構カウンタ軸50の軸心と平行な方向に摺動させられて係合状態と解放状態とが切り替えられる。このように、噛合式クラッチD1は、油圧アクチュエータ57により作動させられることで、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路を選択的に接続したり、切断したりするシンクロメッシュ機構S1付の噛合式クラッチである。以下、シンクロメッシュ機構S1をシンクロ機構S1という。
第1動力伝達経路PT1は、噛合式クラッチD1と、噛合式クラッチD1よりも入力軸22側に設けられた第1クラッチC1とが共に係合されることで形成される。第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1に替えて選択的に係合される、噛合式クラッチD1よりも入力軸22側に設けられた第1ブレーキB1、及び噛合式クラッチD1の係合によっても形成される。第1クラッチC1の係合により前進用の動力伝達経路が形成される一方で、第1ブレーキB1の係合により後進用の動力伝達経路が形成される。エンジン12の動力の伝達において直列に配置された第1クラッチC1及び噛合式クラッチD1の何れもの係合によって形成される第1動力伝達経路PT1は、前進用の第1動力伝達経路である。エンジン12の動力の伝達において直列に配置された第1ブレーキB1及び噛合式クラッチD1の何れもの係合によって形成される第1動力伝達経路PT1は、後進用の第1動力伝達経路である。動力伝達装置16では、第1動力伝達経路PT1が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ機構28を経由して出力軸30へ伝達することができる動力伝達可能状態とされる。一方で、第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が共に解放されると、又は、噛合式クラッチD1が解放されると、動力伝達が不能なニュートラル状態とされる。
無段変速機構24は、入力軸22と同軸心に設けられて入力軸22と一体的に連結されたプライマリ軸58と、プライマリ軸58に連結された有効径が可変のプライマリプーリ60と、出力軸30と同軸心に設けられたセカンダリ軸62と、セカンダリ軸62に連結された有効径が可変のセカンダリプーリ64と、それら各プーリ60、64の間に巻き掛けられた伝達要素としての伝動ベルト66とを備えている。無段変速機構24は、各プーリ60、64と伝動ベルト66との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる公知のベルト式の無段変速機であり、エンジン12の動力を駆動輪14側へ伝達する。前記摩擦力は、挟圧力も同意であり、ベルト挟圧力ともいう。このベルト挟圧力は、無段変速機構24における伝動ベルト66のトルク容量であるベルトトルク容量である。
プライマリプーリ60は、プライマリ軸58に連結された固定シーブ60aと、固定シーブ60aに対してプライマリ軸58の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ60bと、可動シーブ60bに対してプライマリ推力Wpriを付与する油圧アクチュエータ60cとを備えている。プライマリ推力Wpriは、固定シーブ60aと可動シーブ60bとの間のV溝幅を変更する為のプライマリプーリ60の推力(=プライマリ圧Ppri×受圧面積)である。つまり、プライマリ推力Wpriは、油圧アクチュエータ60cによって付与される伝動ベルト66を挟圧するプライマリプーリ60の推力である。プライマリ圧Ppriは、油圧制御回路42によって油圧アクチュエータ60cへ供給される油圧であり、プライマリ推力Wpriを生じさせるプーリ油圧である。又、セカンダリプーリ64は、セカンダリ軸62に連結された固定シーブ64aと、固定シーブ64aに対してセカンダリ軸62の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ64bと、可動シーブ64bに対してセカンダリ推力Wsecを付与する油圧アクチュエータ64cとを備えている。セカンダリ推力Wsecは、固定シーブ64aと可動シーブ64bとの間のV溝幅を変更する為のセカンダリプーリ64の推力(=セカンダリ圧Psec×受圧面積)である。つまり、セカンダリ推力Wsecは、油圧アクチュエータ64cによって付与される伝動ベルト66を挟圧するセカンダリプーリ64の推力である。セカンダリ圧Psecは、油圧制御回路42によって油圧アクチュエータ64cへ供給される油圧であり、セカンダリ推力Wsecを生じさせるプーリ油圧である。
無段変速機構24では、後述する電子制御装置90により駆動される油圧制御回路42によってプライマリ圧Ppri及びセカンダリ圧Psecが各々調圧制御されることにより、プライマリ推力Wpri及びセカンダリ推力Wsecが各々制御される。これにより、無段変速機構24では、各プーリ60、64のV溝幅が変化して伝動ベルト66の掛かり径(=有効径)が変更され、変速比γcvt(=プライマリ回転速度Npri/セカンダリ回転速度Nsec)が変化させられると共に、伝動ベルト66が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。つまり、プライマリ推力Wpri及びセカンダリ推力Wsecが各々制御されることで、伝動ベルト66の滑りであるベルト滑りが防止されつつ無段変速機構24の変速比γcvtが目標変速比γcvttgtとされる。プライマリ回転速度Npriは、プライマリ軸58の回転速度であって、プライマリプーリ60の回転速度でもあり、タービン回転速度Ntや入力軸回転速度Ninと同意である。セカンダリ回転速度Nsecは、セカンダリ軸62の回転速度であって、セカンダリプーリ64の回転速度でもある。
無段変速機構24では、プライマリ圧Ppriが高められると、プライマリプーリ60のV溝幅が狭くされて変速比γcvtが小さくされる。変速比γcvtが小さくされることは、無段変速機構24がアップシフトされることである。無段変速機構24では、プライマリプーリ60のV溝幅が最小とされるところで、最ハイ側変速比γminが形成される。この最ハイ側変速比γminは、無段変速機構24により形成できる変速比γcvtの範囲のうちの最も高車速側となる最高車速側の変速比γcvtであり、変速比γcvtが最も小さな値となる最小変速比である。一方で、無段変速機構24では、プライマリ圧Ppriが低められると、プライマリプーリ60のV溝幅が広くされて変速比γcvtが大きくされる。変速比γcvtが大きくされることは、無段変速機構24がダウンシフトされることである。無段変速機構24では、プライマリプーリ60のV溝幅が最大とされるところで、最ロー側変速比γmaxが形成される。この最ロー側変速比γmaxは、無段変速機構24により形成できる変速比γcvtの範囲のうちの最も低車速側となる最低車速側の変速比γcvtであり、変速比γcvtが最も大きな値となる最大変速比である。尚、無段変速機構24では、プライマリ推力Wpriとセカンダリ推力Wsecとによりベルト滑りが防止されつつ、プライマリ推力Wpriとセカンダリ推力Wsecとの相互関係にて目標変速比γcvttgtが実現されるものであり、一方の推力のみで目標の変速が実現されるものではない。プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecとの相互関係で、プライマリ推力Wpriとセカンダリ推力Wsecとの比の値である推力比τ(=Wsec/Wpri)が変更されることにより無段変速機構24の変速比γcvtが変更される。推力比τは、セカンダリ推力Wsecのプライマリ推力Wpriに対する比の値である。例えば、推力比τが大きくされる程、変速比γcvtが大きくされる、すなわち無段変速機構24はダウンシフトされる。
出力軸30は、セカンダリ軸62に対して同軸心に相対回転可能に配置されている。第2クラッチC2は、セカンダリプーリ64と出力軸30との間の動力伝達経路に設けられている。第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が係合されることで形成される。動力伝達装置16では、第2動力伝達経路PT2が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機構24を経由して出力軸30へ伝達することができる動力伝達可能状態とされる。一方で、第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が解放されると、ニュートラル状態とされる。無段変速機構24の変速比γcvtは、第2動力伝達経路PT2における変速比に相当する。
動力伝達装置16では、第1動力伝達経路PT1における変速比γgear(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)であるギヤ機構28の変速比ELは、第2動力伝達経路PT2における最大変速比である無段変速機構24の最ロー側変速比γmaxよりも大きな値に設定されている。すなわち、変速比ELは、最ロー側変速比γmaxよりもロー側の変速比に設定されている。ギヤ機構28の変速比ELは、動力伝達装置16における第1速変速比γ1に相当し、無段変速機構24の最ロー側変速比γmaxは、動力伝達装置16における第2速変速比γ2に相当する。このように、第2動力伝達経路PT2は、第1動力伝達経路PT1よりもハイ側の変速比が形成される。出力軸回転速度Noutは出力軸30の回転速度である。
車両10では、ギヤ走行モードでの走行とベルト走行モードでの走行とを選択的に行うことが可能である。ギヤ走行モードは、第1動力伝達経路PT1を用いて走行することが可能な走行モードであって、動力伝達装置16において第1動力伝達経路PT1が形成された状態とする走行モードである。つまり、ギヤ走行モードは、第1動力伝達経路PT1にてエンジン12の動力を伝達して走行することが可能な第1走行モードである。ベルト走行モードは、第2動力伝達経路PT2を用いて走行することが可能な走行モードであって、動力伝達装置16において第2動力伝達経路PT2が形成された状態とする走行モードである。つまり、ベルト走行モードは、第2動力伝達経路PT2にてエンジン12の動力を伝達して走行することが可能な第2走行モードである。ギヤ走行モードでは、前進走行を可能とする場合、第1クラッチC1及び噛合式クラッチD1が係合され且つ第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が解放される。ギヤ走行モードでは、後進走行を可能とする場合、第1ブレーキB1及び噛合式クラッチD1が係合され且つ第2クラッチC2及び第1クラッチC1が解放される。ベルト走行モードでは、第2クラッチC2が係合され且つ第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が解放される。このベルト走行モードでは前進走行が可能となる。
ギヤ走行モードは、車両停止中を含む比較的低車速領域において選択される。ベルト走行モードは、中車速領域を含む比較的高車速領域において選択される。ベルト走行モードのうちの中車速領域でのベルト走行モードでは噛合式クラッチD1が係合される一方で、ベルト走行モードのうちの高車速領域でのベルト走行モードでは噛合式クラッチD1が解放される。高車速領域でのベルト走行モードにて噛合式クラッチD1が解放されるのは、例えばベルト走行モードでの走行中のギヤ機構28等の引き摺りをなくすと共に、高車速領域においてギヤ機構28や遊星歯車装置27の構成部材である例えばピニオン等が高回転化するのを防止する為である。ギヤ機構28の高回転化が防止されると、例えば第1クラッチC1における入力側回転速度と出力側回転速度とでの差回転速度が大きくされることが防止されて、第1クラッチC1の摩擦材の耐久性が向上する。
図2−図5は、噛合式クラッチD1の構成、及び噛合式クラッチD1の係合状態と解放状態とを切り替える切替作動を説明する為の図である。図2は、噛合式クラッチD1の解放状態つまり噛合式クラッチD1が解放された状態を示している。図4は、噛合式クラッチD1の係合状態つまり噛合式クラッチD1が係合された状態を示している。図3、図5は、各々、図2、図4の状態を外周側から見たスリーブ56の円筒部分を除く展開図である。図2−図5において、シンクロ機構S1は、キースプリング68と、キースプリング68によってスリーブ56に係合させられたシフティングキー69と、所定の遊びを有する状態でシフティングキー69と共に回転させられるシンクロナイザリング70と、クラッチギヤ55に設けられたコーン部71とを含んでいる。スリーブ56の内周面には、クラッチハブ54とスプライン嵌合されるスプライン歯72が設けられている。このスリーブ56が図2に示す解放位置からクラッチギヤ55側(図2中の矢印A方向参照)に移動させられると、シフティングキー69を介してシンクロナイザリング70がコーン部71に押圧され、その間の摩擦によってクラッチギヤ55に動力伝達が行われるようになる。スリーブ56が更にクラッチギヤ55側に移動させられると、図4に示すように、スプライン歯72はシンクロナイザリング70に設けられたスプライン歯73、更にはクラッチギヤ55に設けられたスプライン歯74と噛み合わされて、スリーブ56が係合位置へ移動させられる。これにより、クラッチハブ54とクラッチギヤ55とが一体的に接続されて前後進切替装置26と出力軸30との間の動力伝達経路が形成される。上記解放位置は、噛合式クラッチD1を解放状態とするスリーブ56の位置であり、上記係合位置は、噛合式クラッチD1を係合状態とするスリーブ56の位置である。
油圧アクチュエータ57は、リターンスプリング57a、油室57b、フォークシャフト57c、シフトフォーク57dを備えている。噛合式クラッチD1は、油圧アクチュエータ57のリターンスプリング57aの付勢力により、スリーブ56を解放位置側(図2参照)へ押し付ける押付力がフォークシャフト57c及びシフトフォーク57dを介してスリーブ56に常時作用させられている。又、油圧制御回路42により調圧されたシンクロ制御圧Ps1が油室57bに供給されることにより、リターンスプリング57aの付勢力に対抗する押圧力が発生させられ、上記押付力に対抗してスリーブ56を係合位置側(図4参照)へ移動させる係合力がフォークシャフト57c及びシフトフォーク57dを介してスリーブ56に作用させられる。油室57bに所定油圧よりも大きなシンクロ制御圧Ps1が供給されるときは、係合位置にスリーブ56が移動させられる。この所定油圧は、例えば係合位置にスリーブ56を移動させる為の予め実験的に或いは設計的に求められて記憶されたすなわち予め定められたシンクロ制御圧Ps1の下限値である。
車両10は、動力伝達装置16の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、エンジン12の出力制御、無段変速機構24の変速制御やベルト挟圧力制御、前記複数の係合装置(C1、B1、C2、D1)の各々の作動状態を切り替える油圧制御、ロックアップクラッチLUの作動状態を切り替える油圧制御等を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばNEセンサ76、NTセンサ78、NSセンサ80、NOセンサ82、NC1センサ84、アクセル開度センサ86、スロットル弁開度センサ87、シフトポジションセンサ88など)による検出値や取得情報に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、タービン回転速度Nt(=入力軸回転速度Nin=プライマリ回転速度Npri)、セカンダリ回転速度Nsec、車速Vに対応する出力軸回転速度Nout、C1回転速度Nc1、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量としてのアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、車両10に備えられたシフトレバー89の操作ポジションPOSshなど)が、それぞれ供給される。C1回転速度Nc1は、第1クラッチC1と噛合式クラッチD1との間の動力伝達経路における中間回転部材としての小径ギヤ48の回転速度である。
シフトレバー89の操作ポジションPOSshは、例えばP、R、N、D操作ポジション等を含んでいる。P操作ポジションは、動力伝達装置16がニュートラル状態とされ且つ出力軸30が回転不能に機械的に固定された動力伝達装置16のPポジションを選択するパーキング操作ポジションである。動力伝達装置16のニュートラル状態は、例えば第1クラッチC1、第1ブレーキB1、及び第2クラッチC2が共に解放されることで実現される。つまり、動力伝達装置16のニュートラル状態は、第1動力伝達経路PT1及び第2動力伝達経路PT2が何れも形成されていない状態である。R操作ポジションは、ギヤ走行モードにて後進走行を可能とする動力伝達装置16のRポジションを選択する後進走行操作ポジションである。N操作ポジションは、動力伝達装置16がニュートラル状態とされた動力伝達装置16のNポジションを選択するニュートラル操作ポジションである。D操作ポジションは、ギヤ走行モードにて前進走行を可能とするか、又は、ベルト走行モードにて無段変速機構24の自動変速制御を実行して前進走行を可能とする動力伝達装置16のDポジションを選択する前進走行操作ポジションである。
又、電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置44、油圧制御回路42など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、無段変速機構24の変速やベルト挟圧力等を制御する為の油圧制御指令信号Scvt、前記複数の係合装置の各々の作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Scbd、ロックアップクラッチLUの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sluなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、演算手段すなわち演算部92、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部94、変速制御手段すなわち変速制御部96、及びロックアップクラッチ制御手段すなわちロックアップクラッチ制御部98を備えている。
演算部92は、例えば予め定められた駆動力マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する要求駆動力Fddemを算出する。演算部92は、例えば予め定められたエンジントルク演算式を用いて、要求駆動力Fddemを実現する為にエンジン12に要求される要求エンジントルクTedemを算出する。又、演算部92は、プライマリ回転速度Npriとセカンダリ回転速度Nsecとに基づいて無段変速機構24の実際の変速比γcvtである実変速比γcvt(=Npri/Nsec)を算出する。
エンジン制御部94は、例えば予め定められたエンジントルクマップを用いて、要求エンジントルクTedemが得られる目標スロットル弁開度θthtgtを算出する。エンジン制御部94は、要求エンジントルクTedemが得られるように、実際のスロットル弁開度θthを目標スロットル弁開度θthtgtとすると共に噴射信号や点火時期信号などを制御する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置44へ出力する。
変速制御部96は、車両停止中に、操作ポジションPOSshがP操作ポジション又はN操作ポジションである場合には、ギヤ走行モードへの移行に備えて、噛合式クラッチD1を係合する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。変速制御部96は、車両停止中に、操作ポジションPOSshがP操作ポジション又はN操作ポジションからD操作ポジションとされた場合、第1クラッチC1を係合する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。これにより、走行モードが前進走行を可能とするギヤ走行モードへ移行させられる。変速制御部96は、車両停止中に、操作ポジションPOSshがP操作ポジション又はN操作ポジションからR操作ポジションとされた場合、第1ブレーキB1を係合する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。これにより、走行モードが後進走行を可能とするギヤ走行モードへ移行させられる。
変速制御部96は、操作ポジションPOSshがD操作ポジションである場合、ギヤ走行モードとベルト走行モードとを切り替える切替制御を実行する。具体的には、変速制御部96は、ギヤ走行モードにおけるギヤ機構28の変速比ELに対応する第1速変速段と、ベルト走行モードにおける無段変速機構24の最ロー側変速比γmaxに対応する第2速変速段とを切り替える為の所定のヒステリシスを有した、予め定められた有段変速マップとしてのアップシフト線及びダウンシフト線に、車速V及びアクセル開度θaccを適用することで変速の要否を判断し、その判断結果に基づいて走行モードを切り替える。このように、変速制御部96は、車両10の走行状態に基づいて、ギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で走行モードを切り替える。
変速制御部96は、ギヤ走行モードでの走行中にアップシフトを判断してベルト走行モードへ切り替える場合、噛合式クラッチD1の係合状態において、第1クラッチC1を解放して第2クラッチC2を係合するようにクラッチを掴み替えるクラッチツゥクラッチ変速を行う油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。このように、変速制御部96は、第1クラッチC1の解放と第2クラッチC2の係合とによる有段変速制御によって、ギヤ走行モードからベルト走行モードへ切り替える動力伝達装置16のアップシフトすなわち有段アップシフトを実行する。
変速制御部96は、ベルト走行モードでの走行中にダウンシフトを判断してギヤ走行モードへ切り替える場合、噛合式クラッチD1の係合状態において、第2クラッチC2を解放して第1クラッチC1を係合するようにクラッチを掴み替えるクラッチツゥクラッチ変速を行う油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。このように、変速制御部96は、第2クラッチC2の解放と第1クラッチC1の係合とによる有段変速制御によって、ベルト走行モードからギヤ走行モードへ切り替える動力伝達装置16のダウンシフトすなわち有段ダウンシフトを実行する。
ギヤ走行モードとベルト走行モードとを切り替える切替制御では、噛合式クラッチD1の係合状態において上記クラッチツゥクラッチ変速によるトルクの受け渡しを行うだけで、走行モードが切り替えられるので、切替えショックが抑制される。本実施例では、ギヤ走行モードとベルト走行モードとを切り替える切替制御をクラッチツゥクラッチ変速制御すなわちCtoC変速制御と称する。ギヤ走行モードとベルト走行モードとを切り替える切替制御は、クラッチツゥクラッチ変速制御ではなく、第1クラッチC1及び第2クラッチC2のうちの一方の解放が完了した後に、他方の係合を開始してその他方を係合する順次クラッチ制御にて実施されても良い。このように、変速制御部96は、噛合式クラッチD1が係合された状態で第1クラッチC1及び第2クラッチC2のうちの一方を解放すると共に他方を係合することによって、ギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で走行モードを切り替える。
変速制御部96は、例えばエンジン12の始動完了後に、噛合式クラッチD1を係合する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。又、変速制御部96は、有段アップシフト後のベルト走行モードにおいて車速Vが上昇した場合には、噛合式クラッチD1を解放する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。一方で、変速制御部96は、噛合式クラッチD1を解放した後のベルト走行モードにおいて車速Vが低下した場合には、噛合式クラッチD1を係合する油圧制御指令信号Scbdを油圧制御回路42へ出力する。つまり、変速制御部96は、ベルト走行モードでの走行中において、所定車速Vfxを超える車速域では噛合式クラッチD1を解放状態とする一方で、所定車速Vfx以下となる車速域では噛合式クラッチD1を係合状態とする。この所定車速Vfxは、例えば有段ダウンシフトに備えて噛合式クラッチD1を係合状態としておくことが適切である予め定められた低車速域又は中車速域における上限車速である。所定車速Vfxがこのように設定されていることで、高車速領域におけるベルト走行モードでの走行中において、ギヤ機構28等の引き摺りが防止される共にギヤ機構28や遊星歯車装置27の構成部材の高回転化が防止される。
変速制御部96は、ベルト走行モードにおいては、無段変速機構24のベルト滑りが発生しないようにしつつ無段変速機構24の目標変速比γcvttgtを達成するように、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecとを制御する油圧制御指令信号Scvtを油圧制御回路42へ出力して、無段変速機構24の変速を実行する。
具体的には、変速制御部96は、例えば予め定められたCVT変速マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで目標プライマリ回転速度Npritgtを算出する。変速制御部96は、目標プライマリ回転速度Npritgtに基づいて目標変速比γcvttgt(=Npritgt/Nsec)を算出する。変速制御部96は、例えば予め定められたエンジントルクマップにスロットル弁開度θth及びエンジン回転速度Neを適用することでエンジントルクTeの推定値を算出する。変速制御部96は、例えば予め定められたトルクコンバータ20の特性とエンジントルクTeの推定値とに基づいてタービントルクTtの推定値を算出する。タービントルクTtは、無段変速機構24に入力されるトルクである。変速制御部96は、例えば予め定められた推力比マップを用いて、目標変速比γcvttgt及びタービントルクTtの推定値に基づいて、目標変速比γcvttgtを実現する為の推力比τを算出する。変速制御部96は、この推力比τを達成する為の目標プライマリ推力Wpritgt及び目標セカンダリ推力Wsectgtを算出する。変速制御部96は、目標プライマリ推力Wpritgt及び目標セカンダリ推力Wsectgtを、目標プライマリ圧Ppritgt(=Wpritgt/受圧面積)及び目標セカンダリ圧Psectgt(=Wsectgt/受圧面積)に各々変換する。変速制御部96は、目標プライマリ圧Ppritgt及び目標セカンダリ圧Psectgtが得られるように、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecとを制御する油圧制御指令信号Scvtを油圧制御回路42へ出力する。尚、上述した無段変速機構24の変速制御の説明では、便宜上、目標変速比γcvttgtを一定に維持する為の推力について述べた。無段変速機構24の変速過渡においては、目標のアップシフト或いは目標のダウンシフトを実現する為の推力がこの一定に維持する為の推力に加えられる。
ロックアップクラッチ制御部98は、ロックアップクラッチLUの作動状態を制御する。例えば、ロックアップクラッチ制御部98は、例えばロックアップオフ領域、スリップ作動領域、及びロックアップ領域を有する予め定められたロックアップ領域線図に、車速V(出力軸回転速度Nout等も同意)及びアクセル開度θacc(要求駆動力Fddemやスロットル弁開度θthなども同意)を適用することで何れの領域であるかを判断し、判断した領域に対応する作動状態が実現されるLU油圧をロックアップクラッチLUへ供給する為の油圧制御指令信号Sluを油圧制御回路42へ出力する。ロックアップクラッチLUがロックアップオフとされると、トルクコンバータ20はトルコン状態とされる。ロックアップクラッチLUがロックアップとされると、ポンプ翼車20p及びタービン翼車20tが一体回転させられる。
ところで、ロックアップクラッチLUがロックアップとされているときは、エンジン12の爆発振動が動力伝達装置16に直接的に入力される為、ロックアップオフ又はスリップ状態とされているときと比べて、動力伝達装置16内の遊転している各クリアランス部にてガタ打ち音が発生し易い。前記クリアランス部は、例えばギヤ歯の噛合い部やスプライン歯の噛み合わせ部分に形成されたガタである。具体的には、動力伝達装置16では、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とで動力伝達に用いる経路が切り替えられる為、ベルト走行モードのときには第1動力伝達経路PT1が遊転状態とされる。ベルト走行モードからギヤ走行モードへ切り替えるときには、噛合式クラッチD1を係合状態とした後に、第2クラッチC2を解放し、第1クラッチC1を係合する必要が有る。このような一連の切替時間を短縮させる為に、前述したように、所定車速Vfx以下となる車速域においては、ベルト走行モードでの走行中に予め噛合式クラッチD1を係合状態としてスタンバイしている。第1動力伝達経路PT1が遊転状態とされたベルト走行モードでの走行中に、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合状態にあると、無負荷の遊転状態となっている噛合式クラッチD1において、噛み合わせ部分となるスリーブ56のスプライン歯72とクラッチギヤ55のスプライン歯74との間に形成されたガタ(不図示)にてエンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が発生して、NVが悪化する可能性がある。一方で、ベルト走行モードでの走行中にギヤ走行モードへの切替えに備えた、噛合式クラッチD1を係合状態とするスタンバイを行わないと、ギヤ走行モードへの切替え判断時に先ず噛合式クラッチD1を係合しなければならず、ベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替応答性が低下して、ドライバビリティーが低下する可能性がある。他方で、車両10において、例えば燃費向上を図るという観点では、ロックアップクラッチLUをロックアップとすることは有用であるので、ロックアップクラッチLUをできるだけロックアップとしたい。
ここで、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合状態とされたベルト走行モードでの走行中に、エンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が発生するときには、入力軸22の回転変動周波数と、無負荷の遊転状態となっている噛合式クラッチD1の回転変動周波数とが一致又は略一致することが実験的に見出された。入力軸22の回転変動周波数は、タービン回転速度Nt(=入力軸回転速度Nin)の変動周波数すなわちNt変動周波数である。噛合式クラッチD1の回転変動周波数は、第1クラッチC1と噛合式クラッチD1との間の動力伝達経路における中間回転部材の回転速度の変動周波数であり、例えばC1回転速度Nc1の変動周波数すなわちNc1変動周波数である。
図6は、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合状態とされたベルト走行モードでの走行中におけるタービン回転速度NtとC1回転速度Nc1とを比較する図表である。図6において、エンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が噛合式クラッチD1の噛み合わせ部分にて発生するときは、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致している。一方で、エンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が噛合式クラッチD1の噛み合わせ部分にて発生しないときは、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致していない。そこで、電子制御装置90は、ガタ打ち音が発生し易くされるようなNt変動周波数とNc1変動周波数とが一致しているときだけ、噛合式クラッチD1を解放してガタ打ち音の発生を回避する。電子制御装置90は、ガタ打ち音が発生し難くされるようなNt変動周波数とNc1変動周波数とが一致していないときは、噛合式クラッチD1の係合状態を維持してベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替応答性の低下を防ぐ。
電子制御装置90は、ベルト走行モードでの走行中においてロックアップクラッチLUがロックアップとされていてもNVの悪化を抑制しつつドライバビリティーの低下を抑制するという機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部99を備えている。
状態判定部99は、ベルト走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチLUがロックアップとされているか、つまりロックアップクラッチLUが係合中であるか否かを判定する。又、状態判定部99は、ベルト走行モードでの走行中において、噛合式クラッチD1が係合状態とされているか、つまり噛合式クラッチD1が係合中であるか否かを判定する。
演算部92は、ベルト走行モードでの走行中において、状態判定部99により、ロックアップクラッチLUが係合中であると判定され且つ噛合式クラッチD1が係合中であると判定された場合には、すなわちロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合された状態にあると判定された場合には、NTセンサ78の信号であるタービン回転速度Nt及びNC1センサ84の信号であるC1回転速度Nc1に基づいて、Nt変動周波数及びNc1変動周波数を算出する。
状態判定部99は、ベルト走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合された状態にあると判定した場合には、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にあるか否かを判定する。例えば、状態判定部99は、Nt変動周波数とNc1変動周波数との周波数差の絶対値が所定周波数差以内であるか否かに基づいて、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にあるか否かを判定する。前記所定周波数差は、例えばエンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が発生していると判断できる程の、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態であることを判定する為の予め定められたガタ打ち音発生閾値である。
変速制御部96は、ベルト走行モードでの走行中において、状態判定部99により、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合された状態にあると判定され、更に、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にあると判定された場合には、噛合式クラッチD1を解放する、すなわち噛合式クラッチD1を係合状態から解放状態へ切り替える。変速制御部96は、ベルト走行モードでの走行中において、噛合式クラッチD1を係合状態から解放状態へ切り替えた場合には、予め定められた有段変速マップを用いて、ベルト走行モードからギヤ走行モードへ切り替える動力伝達装置16の有段ダウンシフトの指示が有るか否かを判断する。変速制御部96は、有段ダウンシフトの指示が有ると判断した場合には、先ず、噛合式クラッチD1を係合状態へ切り替える。変速制御部96は、噛合式クラッチD1の係合状態への切替えが完了した後に、第2クラッチC2の解放と第1クラッチC1の係合とによる有段変速制御を開始して、ベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替えを実行する。一方で、変速制御部96は、ベルト走行モードでの走行中において、状態判定部99により、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合された状態にあると判定され、更に、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にないと判定された場合には、噛合式クラッチD1が係合された状態を維持する。
図7は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、ベルト走行モードでの走行中においてロックアップクラッチLUが係合された状態にあってもNVの悪化を抑制しつつドライバビリティーの低下を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えばベルト走行モードでの走行中に繰り返し実行される。
図7において、先ず、状態判定部99の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、ロックアップクラッチLUが係合中すなわち係合された状態であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部99の機能に対応するS20において、噛合式クラッチD1が係合中すなわち係合された状態であるか否かが判定される。図7中の「シンクロ係合」は噛合式クラッチD1係合と同意である。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20の判断が肯定される場合は演算部92の機能に対応するS30において、NTセンサ78の信号であるタービン回転速度Nt及びNC1センサ84の信号であるC1回転速度Nc1に基づいて、Nt変動周波数及びNc1変動周波数が算出される。次いで、状態判定部99の機能に対応するS40において、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にあるか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。従って、この場合、噛合式クラッチD1の係合状態が維持される。上記S40の判断が肯定される場合は変速制御部96の機能に対応するS50において、噛合式クラッチD1が解放させられる。図7中の「シンクロ解放」は噛合式クラッチD1解放と同意である。次いで、変速制御部96の機能に対応するS60において、予め定められた有段変速マップを用いてベルト走行モードからギヤ走行モードへ切り替える有段ダウンシフトの指示が有るか否かが判断される。このS60の判断が否定される場合はこのS60が繰り返し実行させられる。このS60の判断が肯定される場合は変速制御部96の機能に対応するS70において、第2クラッチC2の解放と第1クラッチC1の係合とによる有段変速制御に先立って、噛合式クラッチD1が係合させられる。
上述のように、本実施例によれば、ベルト走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチLU及び噛合式クラッチD1が共に係合された状態にあるときに、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にあると判定された場合には、噛合式クラッチD1が解放されるので、予め実験的に把握された、遊転状態にある噛合式クラッチD1の噛み合わせ部分でエンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が発生し易い状態のときには、噛合式クラッチD1の噛み合わせ部分における噛み合わせが解除され、噛合式クラッチD1におけるガタ打ち音の発生が回避される。つまり、噛合式クラッチD1の解放により、ガタ打ち音発生部位となり得るスリーブ56のスプライン歯72とクラッチギヤ55のスプライン歯74とがギヤ機構カウンタ軸50の軸心と平行な方向に離されて接触しなくなるので、噛合式クラッチD1におけるガタ打ち音の発生が回避される。一方で、Nt変動周波数とNc1変動周波数とが一致した状態にないと判定された場合には、噛合式クラッチD1が係合された状態が維持されるので、予め実験的に把握された、遊転状態にある噛合式クラッチD1の噛み合わせ部分でエンジン12の爆発振動に起因するガタ打ち音が発生し難い状態のときには、ベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替えに備えておくことができ、ベルト走行モードからギヤ走行モードへの切替応答性つまり動力伝達装置16の有段ダウンシフトの変速応答性の低下を防ぐことができる。よって、ベルト走行モードでの走行中において、ロックアップクラッチLUが係合された状態にあっても、NVの悪化を抑制しつつ、ドライバビリティーの低下を抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、第1クラッチC1と噛合式クラッチD1との間の動力伝達経路における中間回転部材として小径ギヤ48を例示し、その中間回転部材の回転速度としてC1回転速度Nc1を例示したが、この態様に限らない。例えば、第1クラッチC1と噛合式クラッチD1との間の動力伝達経路における中間回転部材は、ギヤ機構カウンタ軸50や大径ギヤ51などであっても良く、中間回転部材の回転速度は、大径ギヤ51などの回転速度であっても良い。
また、前述の実施例では、第2クラッチC2は、セカンダリプーリ64と出力軸30との間の動力伝達経路に設けられていたが、この態様に限らない。例えば、セカンダリ軸62が出力軸30と一体的に連結されると共に、プライマリ軸58は第2クラッチC2を介して入力軸22と連結されても良い。つまり、第2クラッチC2は、プライマリプーリ60と入力軸22との間の動力伝達経路に設けられていても良い。
また、前述の実施例では、ギヤ機構28は、無段変速機構24の最ロー側変速比γmaxよりもロー側の変速比となる1つのギヤ段が形成されるギヤ機構であったが、この態様に限らない。例えば、ギヤ機構28は、固定された変速比が異なる複数のギヤ段が形成されるギヤ機構であっても良い。つまり、ギヤ機構28は2段以上に変速される有段変速機であっても良い。
また、前述の実施例では、動力伝達装置16の走行モードを、予め定められたアップシフト線及びダウンシフト線を用いて切り替えたが、この態様に限らない。例えば、要求駆動力Fddemを満たすことができる変速比を設定することで、動力伝達装置16の走行モードを切り替えても良い。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ20が用いられたが、この態様に限らない。例えば、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
16:車両用動力伝達装置
20:トルクコンバータ(流体式伝動装置)
22:入力軸(入力回転部材)
24:無段変速機構
28:ギヤ機構
30:出力軸(出力回転部材)
48:小径ギヤ(中間回転部材)
90:電子制御装置(制御装置)
96:変速制御部
99:状態判定部
C1:第1クラッチ(第1摩擦係合装置)
C2:第2クラッチ(第2摩擦係合装置)
D1:噛合式クラッチ
LU:ロックアップクラッチ
PT:動力伝達経路
PT1:第1動力伝達経路
PT2:第2動力伝達経路

Claims (1)

  1. ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置を介してエンジンの動力が伝達される入力回転部材と駆動輪へ前記動力を出力する出力回転部材との間に並列に設けられた、前記動力を前記入力回転部材から前記出力回転部材へ各々伝達することが可能な複数の動力伝達経路を有し、前記複数の動力伝達経路は、前記動力の伝達において直列に配置された第1摩擦係合装置及び噛合式クラッチの何れもの係合によって形成される、ギヤ段を有するギヤ機構を介した第1動力伝達経路、及び第2摩擦係合装置の係合によって形成される、無段変速機構を介した第2動力伝達経路である車両用動力伝達装置の、制御装置であって、
    前記噛合式クラッチが係合された状態で前記第1摩擦係合装置及び前記第2摩擦係合装置のうちの一方を解放すると共に他方を係合することによって、前記第1動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第1走行モードと前記第2動力伝達経路にて前記動力を伝達して走行することが可能な第2走行モードとの間で走行モードを切り替える変速制御部と、
    前記第2走行モードでの走行中において、前記ロックアップクラッチ及び前記噛合式クラッチが共に係合された状態にある場合には、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と、前記第1摩擦係合装置と前記噛合式クラッチとの間の動力伝達経路における中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にあるか否かを判定する状態判定部とを、含み、
    前記変速制御部は、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と前記中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にあると判定された場合には、前記噛合式クラッチを解放する一方で、前記入力回転部材の回転速度の変動周波数と前記中間回転部材の回転速度の変動周波数とが一致した状態にないと判定された場合には、前記噛合式クラッチが係合された状態を維持することを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
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