JP2021091811A - タイヤの繊維被覆用ゴム組成物、タイヤ用繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤ - Google Patents

タイヤの繊維被覆用ゴム組成物、タイヤ用繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】良好な硬度と伸びとを両立することが可能な、タイヤの層状部材に用いることができるゴム組成物を提供する。【解決手段】ジエン系ゴムと、樹脂とを含有し、前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含み、前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上である、ことを特徴とする、タイヤの繊維被覆用ゴム組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤの繊維被覆用ゴム組成物、繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤに関する。
タイヤには、トレッド部の外周面に、1層又は2層以上からなるベルト層と、更に当該ベルト層の外周側に位置する1層又は2層以上からなるベルト補強層とを備えるものがある。このようなタイヤにおいて、上記のベルト層及びベルト補強層は、通常、スチールコードや繊維コード等のコードにゴムを被覆してなる繊維コード−ゴム複合体で構成される。
ここで、近年のタイヤ軽量化のニーズから、上述のタイヤにおいても、トレッド部の周面に配設される層の数を削減することが望まれている。しかしながら、単に層数を削減しただけでは、タイヤが備えるべき性能が悪化してしまうので、何らかの工夫が求められる。
ベルト補強層自体の軽量化については、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1には、ベルト補強層の補強コードとして有機繊維の片撚りコードを用いるとともに、当該コードの打ち込み密度の適正化を図ることで、軽量化が達成できたことが開示されている。
特開2013−244930号公報
そして、上述した軽量化のニーズの中、ベルト層やベルト補強層に用いられる被覆ゴムについても、改良の余地がある。この点、従来のタイヤ構造と同等の物性を損なうことなく、トレッド部の周面に配設される層の数を削減するためには、当該層に用いられる被覆ゴムの硬度を高める必要がある。しかし、ゴムの硬度を配合成分の調整によって高めた場合には、タイヤ部材に求められる伸びが悪化するという、二律背反の問題がこれまであった。
そこで、本発明は、良好な硬度と伸びとを両立することが可能な、タイヤの層状部材に用いることができるゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上述したゴム組成物を用いたタイヤ用繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
即ち、本発明のゴム組成物は、タイヤの繊維被覆用ゴム組成物であって、
ジエン系ゴムと、樹脂とを含有し、
前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含み、
前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、
前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、
前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上である、
ことを特徴とする。かかるタイヤの繊維被覆用ゴム組成物は、良好な硬度と伸びとを両立することができ、タイヤの層状部材に用いることができる。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを更に含有し、前記カーボンブラックの含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して70質量部超85質量部以下であることが好ましい。この場合、硬度をより向上させることができるとともに、高粘度化による加工性の悪化を抑制することができる。
本発明のゴム組成物は、一層良好な硬度及び伸びを得る観点から、前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下であり、且つ、前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
本発明のゴム組成物においては、一層良好な硬度及び伸びを得る観点から、前記樹脂が、フェノール系樹脂であることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、加工性を保持する観点、及び伸びの悪化を効果的に抑制する観点から、前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して60質量部以下であることが好ましい。
また、本発明のタイヤ用繊維コード−ゴム複合体は、繊維コードを、上述した繊維被覆用ゴム組成物で被覆してなる、ことを特徴とする。
また、本発明のタイヤは、トレッド部に、上述したタイヤ用繊維コード−ゴム複合体からなるベルト層を備える、ことを特徴とする。かかるタイヤは、軽量化を図ることができる上、転がり抵抗が低い。
本発明のタイヤは、前記トレッド部に、コードが相互に交差するように積層されてなる2層以上からなる交差ベルト層を備えないことが好ましい。この場合、一層の軽量化を図れる、製造を簡便化できる、ベルトの厚みが薄くなってその分トレッドゴムの厚みを厚くすることができる、等の利点がもたらされる。
本発明によれば、良好な硬度と伸びとを両立することが可能な、タイヤの層状部材に用いることができるゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上述したゴム組成物を用いたタイヤ用繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤを提供することができる。
本発明の一実施形態のタイヤの断面図である。 本発明の別の実施形態のタイヤの断面図である。
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
(タイヤの繊維被覆用ゴム組成物)
本発明の一実施形態のタイヤの繊維被覆用ゴム組成物(以下、「本実施形態のゴム組成物」と称することがある。)は、ジエン系ゴムと、樹脂とを含有し、前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含み、前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上である、ことを特徴とする。また、本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック、その他の成分などを適宜含有することができる。
本実施形態のゴム組成物は、上述のように、天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを所定の割合で含有する上、ある程度多量の樹脂を含有するため、これまで到達し得なかった高硬度を発現するとともに、十分な伸びを発現することができる。なお、この理由としては、明らかではないが、上述した成分が混練されると、NRを多く含む相(NR相)とSBRを多く含む相(SBR相)とが形成されるとともに、樹脂が主に上記SBR相に導入されて、ポリマー内に樹脂の連続層が好適に形成されるためであると考えられる。
本実施形態のゴム組成物は、タイヤにおける、繊維にゴムを被覆してなる任意の層状部材の作製に用いることができる。また、本実施形態のゴム組成物は、上述の通り高硬度及び十分な伸びを発現できるため、特にタイヤのトレッド部におけるベルト層の作製に用いることで、従来トレッド部の周面に配設する必要があった層の数を削減することができる。
<ジエン系ゴム>
本実施形態のゴム組成物は、必須のゴム成分、特には必須のジエン系ゴムとして、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含有することを要する。
本実施形態のゴム組成物においては、ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下である。上記天然ゴムの割合が30質量%未満であると、良好な硬度を得ることができない。また、上記天然ゴムの割合が70質量%超であると、硬度及び伸びが悪化する。同様の観点から、ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合は、40質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物においては、ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下である。上記スチレン−ブタジエンゴムの割合が30質量%未満であると、硬度及び伸びが悪化する。また、上記スチレン−ブタジエンゴムの割合が70質量%超であると、良好な硬度を得ることができない。同様の観点から、ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合は、40質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
また、本実施形態のゴム組成物においては、一層良好な硬度及び伸びを得る観点から、ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下であり、且つ、ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態のゴム組成物は、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムや、非ジエン系ゴム(ジエン系ゴム以外のゴム成分)を含有することができる。天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
<樹脂>
本実施形態のゴム組成物は、樹脂を含有する。また、本実施形態のゴム組成物は、上記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上である。上記樹脂の含有量40質量部未満であると、硬度を向上させる効果が十分に得られない。
また、本実施形態のゴム組成物における樹脂の含有量は、加工性を保持する観点、及び伸びの悪化を効果的に抑制する観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
ここで、樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、本実施形態においては、熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂等が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、例えば、未変性フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、カシュー油変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等が挙げられる。フェノール系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メラミン系樹脂としては、例えば、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。メラミン系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ユリア系樹脂としては、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。ユリア系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、本実施形態のゴム組成物における樹脂は、上述したものの中でも、一層良好な硬度及び伸びを得る観点から、フェノール系樹脂であることが好ましい。また、本実施形態のゴム組成物においては、硬度及び伸びのバランスをより向上させる観点から、フェノール系樹脂として、未変性フェノール樹脂、カシュー油変性フェノール樹脂及びトール油変性フェノール樹脂から選択される少なくともいずれかを用いることがより好ましく、未変性フェノール樹脂及びトール油変性フェノール樹脂を併用することが更に好ましい。
未変性フェノール樹脂及びトール油変性フェノール樹脂を併用する場合、これらの合計含有量における未変性フェノール樹脂の割合は、硬度及び伸びのバランスをより向上させる観点から、40質量%以上60質量%以下であることが好ましく、また、合計含有量におけるトール油変性フェノール樹脂の割合は、硬度及び伸びのバランスをより向上させる観点から、40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
<カーボンブラック>
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラックを更に含有することが好ましい。カーボンブラックを用いることで、ポリマー内における樹脂の連続層を補強して、より良好なバランスで高硬度及び伸びを発現することができる。また、本実施形態のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、上記カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して70質量部超、85質量部以下であることが好ましい。上記カーボンブラックの含有量が70質量部超であれば、硬度をより向上させることができる。また、上記カーボンブラックの含有量が85質量部以下であれば、高粘度化による加工性の悪化を抑制することができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、硬度及び伸びのバランスをより良好にする観点から、68m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましく、114m/g以上であることが更に好ましい。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、150m/g以下であることが好ましく、135m/g以下であることがより好ましい。カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよいし、比表面積が互いに異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217−2に準拠して測定することができる。
カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸収量は、硬度及び伸びのバランスをより良好にする観点から、100ml/100g以上であることが好ましく、120ml/100g以上であることがより好ましい。また、カーボンブラックのDBP吸収量は、140ml/100g以下であることが好ましく、130ml/100g以下であることがより好ましい。
なお、カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K 6217−4(2008)に準拠して測定することができる。
<その他の成分>
本実施形態のゴム組成物は、上述したゴム成分、樹脂及び任意のカーボンブラックに加えて、目的を損なわない範囲で、カーボンブラック以外の充填剤、硫黄などの加硫剤、硬化剤、加硫促進剤、ステアリン酸などの加硫助剤、亜鉛華などの加硫促進助剤、リターダー、老化防止剤、酸化防止剤、プロセスオイルなどの軟化剤、発泡剤、可塑剤、作業性改良剤等の添加剤をそれぞれ適量含有することができる。
カーボンブラック以外の充填剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。カーボンブラック以外の充填剤を用いる場合、当該充填剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本実施形態のゴム組成物は、硬度及び伸びのバランスの観点から、上記シリカを含有しないことが好ましく、カーボンブラック以外の上記充填剤を含有しないことがより好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、上述した組成を有するため、好ましくは、周囲温度25℃における歪1%での動的貯蔵弾性率(1%E’)が250MPa以上であり、また、450MPa以下である。また、本実施形態のゴム組成物の上記1%E’は、290MPa以上とすることができ、300MPa以上とすることができ、また、410MPa以下とすることができる。
本実施形態のゴム組成物は、上述した組成を有するため、好ましくは、周囲温度25℃におけるASTM D3182に準拠して測定される引張時の破断歪(Eb)が10%以上100%以下である。また、本実施形態のゴム組成物の上記Ebは、12%以上とすることができ、30%以上とすることができ、50%以上とすることができ、また、90%以下とすることができる。
なお、上述した動的貯蔵弾性率(1%E’)及び破断歪(Eb)を有するゴム組成物は、少なくともタイヤの繊維コードを被覆する用途としては、これまで存在しておらず、新規である。
本実施形態のゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、常法に従ってゴム組成物を調製することができる。例えば、上述した各成分を配合して混練した後、熱入れ、押出等を行うことで、本実施形態のゴム組成物を調製することができる。なお、混練に際しては、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー等の混練機を用いることができる。
(タイヤ用繊維コード−ゴム複合体)
本発明の一実施形態のタイヤ用繊維コード−ゴム複合体(以下、「本実施形態の繊維コード−ゴム複合体」と称することがある。)は、繊維コードを、上述したゴム組成物で被覆してなる、ことを特徴とする。
繊維コードとしては、無機繊維コード及び有機繊維コードが挙げられる。
無機繊維コードとしては、炭素繊維製コード、ガラス繊維製コードなどが挙げられる。
有機繊維コードとしては、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート製コード;ナイロン6、ナイロン66等のナイロン製コード;アラミド製コード;アラミドとナイロンとのハイブリッドコード;レーヨン製コード;半芳香族ポリアミド製コード;などが挙げられる。特に、本実施形態の繊維コード−ゴム複合体をタイヤのベルト層に用いる場合、繊維コードは、アラミド製コードとすることが好ましい。
本実施形態の繊維コード−ゴム複合体は、例えば、繊維コードを、上述したゴム組成物に埋設させることにより作製することができる。その際、繊維コードとゴム組成物との接着性を向上させるため、あらかじめ、繊維コードを、レゾルシン、ホルムアルデヒド及びラテックスを混合してなる接着剤組成物(RFLとも称される)で処理しておいてもよい。更に、あらかじめ、繊維コードの表面に対し、電子線、マイクロ波、コロナ放電、プラズマ等により前処理を施してもよい。
そして、本実施形態の繊維コード−ゴム複合体は、例えば、後述するタイヤにおける、ベルト層、ベルト補強層等の層状部材の作製に用いることができる。特に、本実施形態の繊維コード−ゴム複合体は、上述の通り高硬度及び十分な伸びを発現できるゴム組成物を備えるため、タイヤのトレッド部におけるベルト層に用いることで、従来トレッド部の周面に配設する必要があった層の数を削減することができる。
(タイヤ)
本発明の一実施形態のタイヤ(以下、「本実施形態のタイヤ」と称することがある。)は、トレッド部に、上述したタイヤ用繊維コード−ゴム複合体からなるベルト層を備える、ことを特徴とする。本実施形態のタイヤは、上述したベルト層を備えるため、軽量化を図ることができる上、転がり抵抗が低い。
図1に、本実施形態のタイヤを示す。図1に示すタイヤ100は、トレッド部11と、トレッド部11の側部に連続してタイヤ径方向内方へ延びるサイドウォール部12と、サイドウォール部12のタイヤ径方向内方に連続するビード部13とを備える。また、タイヤ100においては、ビードコア14がビード部13に埋設され、カーカス15が一対のビードコア14間にトロイド状に延びる。また、トレッド部11におけるカーカス15の外周側には、ベルト層16が配設され、このベルト層16のタイヤ径方向外方に、トレッド踏面17を形成するトレッドゴム18が配設されている。そして、タイヤ100においては、上記ベルト層16が、上述した繊維コード−ゴム複合体からなる。
なお、本実施形態のタイヤは、図2に示すように、トレッド部11におけるカーカス15とベルト層16との間に、1層又は2層以上からなる(図2では2層からなる)内部ベルト層20を更に備えてもよい。この内部ベルト層20は、例えば、スチール等のコードが相互に交差するように積層されてなる2層以上からなる交差ベルト層などとすることができる。このような構成では、上記内部ベルト層20は典型的に「ベルト層」と称され、上記ベルト層16は典型的に「ベルト補強層」と称される。しかしながら、本実施形態においては、ベルト層16におけるゴム組成物が十分な硬度及び伸びをもたらすため、トレッド部11には、上述した内部ベルト層20、特には上述した交差ベルト層を備えないことが好ましい。内部ベルト層20を備えない場合には、一層の軽量化を図れる、製造を簡便化できる、ベルトの厚みが薄くなってその分トレッドゴム18の厚みを厚くすることができる、等の利点がある。
上記ベルト層16において、繊維コード−ゴム複合体を構成する繊維コードは、タイヤ周方向に対する傾斜角度が5°以下であることが好ましい。この場合、タイヤ周方向の引張剛性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、繊維コードの上記傾斜角度は、3°以下であることがより好ましい。
上記ベルト層16は、トレッド部におけるカーカス5又は任意に配設される内部ベルト層20の外周面に対して、上述した繊維コード−ゴム複合体をタイヤ周方向に螺旋状に重なることなく一定のピッチで巻回し、その後、他の未加硫ゴム部材とともに加硫を行うことにより、形成することができる。そして、このようなベルト層16は、実質的に1本からなる繊維コード−ゴム複合体を用いて形成することができる(但し、実際には5〜10本の繊維コード−ゴム複合体を用いてベルト層16を形成することが多い)。
そして、本実施形態のタイヤは、トレッド部に上述したベルト層を形成すること以外、特に制限されず、公知のタイヤの製造方法に従って製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
表1に示す配合処方に従って、バンバリーミキサーを用いてゴム組成物を調製した。調製したゴム組成物について、以下の手順に従って評価した。
<動的貯蔵弾性率(1%E’)>
ゴム組成物を厚み2.0mmのゴムシートに加工した後、145℃、40分の加硫を行った。次いで、粘弾性スペクトロメーター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、チャック間距離10mm、周囲温度25℃、周波数52Hz、歪1%の条件にて、動的貯蔵弾性率(1%E’)を測定した。なお、測定は2回行い、2回目のデータを採用した。結果を表1に示す。
<引張時の破断歪(Eb)>
ゴム組成物を厚み2.0mmのゴムシートに加工した後、145℃、40分の加硫を行った。次いで、東洋精機製作所製「ストログラフAE」を用いて、ASTM D3182−89に準拠して、周囲温度25℃、引張速度500mm/分の条件にて、引張時の破断歪(Eb)を測定した。結果を表1に示す。
実施例1及び11、並びに比較例1〜4においては、次いで、アラミド製の繊維コードを準備し、常法に従って、当該繊維コードの表面を上述した各ゴム組成物で被覆して、繊維コード−ゴム複合体を作製した。そして、この繊維コード−ゴム複合体をベルト層16の作製に用い、図1に示すようなトレッド部11の層構造を有する225/45R17サイズのタイヤを製造した。製造したタイヤについて、以下の手順に従って評価した。
<転がり抵抗>
実施例1及び11、並びに比較例1〜4のタイヤを、回転ドラムにより80km/hrの速度で回転させ、荷重を4.82kNとして、測定器によって、転がり抵抗係数を測定した。その他の実施例、比較例に関しては、上記の測定結果から転がり抵抗係数を推測した。
従来例として、スチールコードが相互に交差するように積層されてなる2層からなる交差ベルト層(内部ベルト層20)と、その外面のベルト補強層(ゴム成分は主として天然ゴムを含む)(ベルト層16)とを配設した、図2に示すようなトレッド部11の層構造を有するタイヤの転がり抵抗係数を100として、指数表示した。結果を表1に示す。指数値が小さいほど、転がり抵抗が小さい(良好である)ことを示す。
Figure 2021091811
*1 天然ゴム:RSS#3
*2 スチレン−ブタジエンゴム:JSR株式会社製、「JSR 1500Z」
*3 カーボンブラック(ISAF):キャボットジャパン株式会社製、「シヨウブラックN234」、窒素吸着比表面積:117m/g、DBP吸収量:125ml/100g
*4 カーボンブラック(HAF):旭カーボン株式会社製、「旭♯70K」、窒素吸着比表面積:68m/g、DBP吸収量:104ml/100g
*5 フェノール系樹脂a:住友ベークライト株式会社製「スミライトレジンPR−55886」、カシュー油変性フェノール樹脂
*6 フェノール系樹脂b:住友ベークライト株式会社製「スミライトレジンPR−51587」、トール油変性フェノール樹脂
*7 フェノール系樹脂c:住友ベークライト株式会社製「スミライトレジンPR−50235」、未変性フェノール樹脂
*8 オイル:JXTGエネルギー株式会社製、「スーパーオイルY22」
*9 ステアリン酸:新日本理化株式会社製、「ステアリン酸50S」
*10 亜鉛華:ハクスイテック株式会社製、「酸化亜鉛2種、粉末品」
*11 老化防止剤:大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック224」
*12 作業性改良剤:大内新興化学工業株式会社製、「ノクラックNS−6」
*13 加硫促進剤:川口化学工業株式会社製「アクセルDZ−G」及び三新化学工業株式会社製「サンセラーDM−TG」の混合品
*14 硫黄:Eastman MFG Japan製、「CRYSTEX HS 0T20」
*15 リターダー:東レ・ファインケミカル株式会社製、「リターダーCTP」
表1より、本発明に従う実施例のゴム組成物はいずれも、動的貯蔵弾性率(1%E’)及び破断歪(Eb)の両方ともが高いことが分かる。そのため、良好な硬度と伸びとを両立することができ、上記ゴム組成物を備える繊維コード−ゴム複合体をタイヤのトレッド部におけるベルト層に用いることで、従来トレッド部の周面に配設する必要があった層の数を削減できることが示唆される。
また、表1より、本発明に従うゴム組成物で繊維コードの表面を被覆して繊維コード−ゴム複合体を作製し、この繊維コード−ゴム複合体をベルト層の作製に用いてなるタイヤは、比較例のタイヤ、並びに、従来の2層からなる交錯ベルト層(内部ベルト層20)及びベルト層16を備えるタイヤと比較して、転がり抵抗が低いことが推察される。
本発明によれば、良好な硬度と伸びとを両立することが可能な、タイヤの層状部材に用いることができるゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上述したゴム組成物を用いたタイヤ用繊維コード−ゴム複合体、及びタイヤを提供することができる。
100 タイヤ;11 トレッド部;12 サイドウォール部;13 ビード部;14 ビードコア;15 カーカス;16 ベルト層;17トレッド踏面;18トレッドゴム;20、20A、20B 内部ベルト層

Claims (8)

  1. ジエン系ゴムと、樹脂とを含有し、
    前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含み、
    前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、
    前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上70質量%以下であり、
    前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上である、
    ことを特徴とする、タイヤの繊維被覆用ゴム組成物。
  2. カーボンブラックを更に含有し、前記カーボンブラックの含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して70質量部超85質量部以下である、請求項1に記載の繊維被覆用ゴム組成物。
  3. 前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下であり、且つ、
    前記ジエン系ゴムにおけるスチレン−ブタジエンゴムの割合が、40質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の繊維被覆用ゴム組成物。
  4. 前記樹脂が、フェノール系樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維被覆用ゴム組成物。
  5. 前記樹脂の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して60質量部以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維被覆用ゴム組成物。
  6. 繊維コードを、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維被覆用ゴム組成物で被覆してなる、ことを特徴とする、タイヤ用繊維コード−ゴム複合体。
  7. トレッド部に、請求項6に記載のタイヤ用繊維コード−ゴム複合体からなるベルト層を備える、ことを特徴とする、タイヤ。
  8. 前記トレッド部に、コードが相互に交差するように積層されてなる2層以上からなる交差ベルト層を備えない、請求項7に記載のタイヤ。

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