JP2021089214A - 分光装置 - Google Patents

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Kaoru Kojima
薫 小嶋
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Abstract

【課題】 高い応答性を有する検出器を用いて、ノイズが低減された吸光スペクトルを音響的に取得することが可能な分光装置を提供する。【解決手段】 検体において音響波を発生させる様に検体の所定領域に光を照射する照射部と、光の波数を変更する波数変更部と、検体に対する距離が調整可能な一端と他端とを有し検体に対して照射部の反対側に配置されているカンチレバーと、カンチレバーの振動を検出し検出信号を出力する検出部と、検体と離間して配置されたカンチレバーを介して音響的に取得した検出信号に基づいて検体の吸光特性値を取得する処理部とを、有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、検体の光学的特性のスペクトル情報を取得する分光装置に関する。
検体の赤外吸収分光を利用する分光分析技術が知られている。物質に赤外線を照射すると、物質は赤外線の一部を吸収する。官能基に特有な波数の赤外線が吸収されることから、波数と吸収された赤外線の量から物質中に含まれる官能基の種類と量を調べることができる。一方、吸収された赤外線は物質中の分子の振動や回転などの運動を励起するので、赤外線が照射された吸光物質を膨張と収縮を伴う可逆的な弾性変形が生ずる。かかる光照射により発生する弾性波は、光音響波として知られている。光音響波は、対象物の光学的特性を反映するため、対象物のイメージング、分光情報を取得する技術に適用されている。カンチレバーの先端を検体に接触させた状態で、検体に照射した赤外パルス光に応じて検体で発生した光音響波をカンチレバーで受信し、照射光の波数と対応づけて、分光分析するフーリエ変換型の赤外分光装置(FT−IR)が知られている。
特許文献1は、赤外吸収測定を行うためにカンチレバーと光照射部とを有する走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)が開示されている。特許文献1のSPMは、検体に赤外光を照射したことによるカンチレバー先端の試料厚み方向の変位により検体の熱膨張量をとらえることで赤外吸収測定を行う。特許文献1に記載の光照射部は、検体に対してカンチレバーと同側に配置されている。
非特許文献1は、カンチレバーの先端を間欠的に検体に接触させるタッピングモードにより、検体の厚み方向の膨張量を読み取ることで赤外分光スペクトルを取得する原子間力顕微鏡が開示されている。かかる非特許文献1は、カンチレバーを静的に接触し続けるコンタクトモードが苦手とする軟性材料、粘着性材料に対しても、カンチレバーを励振することで赤外分光スペクトルが得られることを開示している。また、非特許文献1に記載の光照射部は、検体に対してカンチレバーと同側に配置されている。
特開2014−202677号公報
Bruker社 Application note #201 "High−Resolution Chemical Imaging"、Anirban Roy et.al.,April01、2019
特許文献1ならびに非特許文献1に開示されているカンチレバーを用いた分光技術は、カンチレバーを静的または間欠的に検体に接触させて測定するため、光照射に伴う検体の弾性変形に対するカンチレバーの応答性が制限される。具体的には、弾性波(光音響波)に対して、カンチレバーの振動の低周波領域では振幅が、カンチレバーの振動の高周波領域では周波数特性が制限されるおそれがあった。
また、特許文献1ならびに非特許文献1に開示されている技術は、検体に対してカンチレバーと同側に照射部を配置しているため、照射部からの直接光または散乱光がカンチレバーに照射されカンチレバー自体に光音響波が発生するおそれがあった。カンチレバーで発生する光音響波は、検体の光学特性に基づかない音響波成分を含むため吸光スペクトルを取得する際にノイズ成分となり軽減が望まれている。
本発明の目的は、高い応答性を有する検出器を用いて、ノイズが低減された吸光スペクトルを音響的に取得することが可能な分光装置を提供するものである。
上記目的を達成するために本発明の実施形態に係る分光装置は、検体において音響波を発生させる様に前記検体の所定領域に光を照射する照射部と、前記光の波数を変更する波数変更部と、前記検体に対する距離が調整可能な一端と他端とを有し前記検体に対して前記照射部の反対側に配置されているカンチレバーと、前記カンチレバーの振動を検出し検出信号を出力する検出部と、前記検体と離間して配置された前記カンチレバーを介して音響的に取得した前記検出信号に基づいて前記検体の吸光特性値を取得する処理部とを、有することを特徴とする。
本発明によれば、高い応答性を有する検出器を用いて、ノイズが低減された吸光スペクトルを音響的に取得することが可能な分光装置を提供することが可能となる。
第1の実施形態に係る分光装置100の概略構成を示す図である。 第1の実施形態に係るカンチレバーの1次〜3次の固有振動モードを示す図(a)〜(c)である。 第1の実施形態に係る音響波信号の振幅の時間変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る音響波信号の周波数スペクトルを示すグラフである。 第1の実施例に係る二次、三次モードの固有振動に基づき取得したポリスチレンの吸光スペクトルを示すグラフである。 実施例1、2に係るカンチレバーの加振、非加振を対比するポリスチレンの吸光スペクトルを示すグラフである。 実施例4と参考例に係る流動性の検体に対する吸光スペクトルの取得結果を示すグラフである。 第1の実施形態に係る音響波信号の到達時間の伝搬距離依存性を示すグラフである。 第1の実施形態に係る吸光スペクトルの伝搬距離依存性を示すグラフである。
以下に本発明の実施形態についての具体的な説明をする。本発明の要旨を超えない限り、以下に示す形態に限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1を用いて、本発明の第1の実施形態に係る分光装置100の構成を説明する。本実施形態に係る分光装置100は、検体103において音響波109を発生させる様に検体103の所定領域に光102を照射する照射部101を有する。また、分光装置100は、照射部101から照射される光102の波数を変更する波数変更部106を有する。さらに、分光装置100は、かかる検体103に対する距離が調整可能な一端104aと他端104bとを有し検体103に対して照射部101の反対側に配置されているカンチレバー104を有する。分光装置100は、カンチレバー104の振動を検出し検出信号を出力する検出部110と、検体103と離間して配置されたカンチレバー104を介して音響的に取得した検出信号に基づき検体103の吸光特性値を取得する処理部111とを、有する。
検体103は、載置部105に載置され、カンチレバー104、照射部101に対して所定の位置に配置される。本実施形態の載置部105は、照射部101からの光102に対して透光性を有するプリズムである。光102が照射される所定領域は、載置部105に対向する側の検体103の表面である。所定領域は、検体103と載置部105との界面であると換言される。なお、照射部101と載置部105との間には、所定の照射領域を定める開口を有する不図示光学系を配置して良い。載置部105は、透光性を有する材料で構成しても良いし、照射部101からの光102が通過する通過孔を有する中空構造としても良い。載置部105を構成する材料は、照射部101が背面照射配置をとる点において、赤外線に対して透光性を有するシリコン、ゲルマニウム、ダイヤモンド、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、等が選択される。
照射部101は、検体103で光音響波を発生させるために、検体103が所定の吸光感度を有するスペクトル成分を含む光102を照射する。照射部101は、スペクトル成分を含む光を発生する不図示の光源と光学的に結合している形態と、スペクトル成分を含む光を発生する不図示の光源を内蔵する形態とを含む。検体103が所定の吸光感度を有するスペクトル成分を含む光は、可視光〜赤外光から選択される。また、光音響波は、照射光の立ち上がり、立ち下がりに対応して、検体103の少なくとも一部が弾性的に膨張、収縮することで発生する弾性波であるため、照射光102は、低い強度の期間またはブランキング期間を含むパルス光が選ばれる。ブランキングは、光源の発振、不図示のチョッパの開閉等により実現することができる。照射部101が備えるか照射部101が光学的に結合する不図示の光源は、後述する波数変更部106により波数を変更可能な光源が採用され、レーザ光源、LED光源、ハロゲンランプ等が選択される。照射部101または光源が分光ユニットを備えても良い。
波数変更部106は、照射部101が備える不図示の波長可変光源を制御することで、照射部101からの照射光102の波数を変更する。波数変更部106は、制御部108からの指令により制御される。波数変更部106は、光102の波数を回折格子やプリズムで分光して変更する。波数変更部106が偏向する光102の波数は、300 cm−1から10000 cm−1の領域が選択される。
カンチレバー104は、一端104aと他端104bとの間に梁状の振動部104cを有している。カンチレバー104は、検体103から伝搬する音響波109の振動エネルギーの一部を受けて振動する振動部104cを備える。振動部104cは、梁の長さ、幅、厚み、弾性、比重等により定まる所定の周波数で共鳴する固有振動を備える。
本実施形態のカンチレバー104は、他端104bを境に振動部104cと反対側は支持部150で固定されている片持ち梁である。カンチレバー104、検体103の表面の高さプロファイルを検出するプローブとして用いる形態が含まれる。すなわち、カンチレバー104は、走査型プローブ顕微鏡のプローブを兼ねることができる。
本実施形態のカンチレバー104は、平板型(短冊状)の態様であるが、一端104aに突起を備える突起型の形態とすることができる。突起の形状は、棒状、針状、錐体状等が選ばれる。また突起を、チップ、ティップと言い換える場合がある。
カンチレバー104の材質は、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等を含むシリコン化合物、ゲルマニウム等を用いることが出来る。カンチレバー104の表面には、金、アルミ、白金、白金イリジウムなどの金属をつけることもできる。
カンチレバー104は、式(1)で示されるn次の固有振動数fnを持つ。
Figure 2021089214
ここで、nは振動モードの次数、kはモードに依存した係数で、例えばkは1.875、kは4.694、kは7.855である。また、tはカンチレバー104の厚さ、Lはカンチレバー104の長さ、Eはカンチレバー104のヤング率、ρはカンチレバー104の材料の密度である。カンチレバー104の振動モードは、図2に示す様に、基本振動である一次モード201、高次の振動モードとして二次モード202、三次モード203を含む。図2では省略しているが、4次以上の高次モードの固有振動を含む。
距離調整部107は、カンチレバー104と検体103の間の距離を制御するために、検体103の鉛直方向(z方向)を含むXYZ3軸、傾き(チルト)角、回転角(アジマス)を調整することができるように構成されている。距離調整部107は、ステッピングモータやピエゾ素子を駆動源として備えることが出来る。また、距離調整部107は、カンチレバー104と検体103との少なくともいずれかを動かす構成とすることが出来る。距離調整部107は、制御部108が備える距離取得部118が取得し検体103とカンチレバー104との距離情報を含む取得結果に応じてかかる距離を調整可能に構成されている。検体103とカンチレバー104との距離は、ワーキングディスタンスと換言する場合がある。
本実施形態の分光装置100は、カンチレバー104を検体表面103s(検体103の表面)に仮想的に射影した射影が、照射部101が検体表面103sに形成する光照射領域と重なる部分を有するように構成されている。光照射領域は、照射部101から入射角θで入射するビーム径(直径)φの光102が検体表面103sに形成する短径φ、長径φ/cosθの楕円領域である。一方で、局所的に照射された光照射領域からの光音響波は、球面波として検体103および検体外の空間に伝搬するため、距離の二乗に反比例する幾何減衰を少なくとも受ける。
このことから、カンチレバー104は、ワーキングディスタンスが一定の条件下であれば、光照射領域の法線方向上に配置されたとき、幾何減衰が低減されて効率よく音響波109を受信することが可能となる。従って、検体表面103s上への光照射領域とカンチレバー104の射影とが重なるように構成することで、幾何減衰する音響波109を効率よくカンチレバー104で受信することができる。また、図9に示すように、カンチレバー104は、検体103と接触させない条件下であって可能な範囲で検体103に近接させたときに、検体103によるダンピングの影響と幾何減衰の影響を軽減して効率よく音響波109を受信することが可能となる。
図8は、ワーキングディスタンスを7水準設定し、照射部101に光照射を指令した時刻からチップレスのカンチレバー104で検体からの音響波信号を受信するまでの時刻の差分に基づいて取得した検出信号の伝搬時間特性を示すものである。得られた検出信号の伝搬時間特性は良い線形性を呈しており、線形回帰分析から、伝搬速度は329.6 m/秒と測定環境の空気中の音速と推定された。
なお、図9は、本実施形態のチップを有するカンチレバー104を用いワーキングディスタンスを9水準設定して音響的に取得したポリスチレンの吸光スペクトルを示すものである。なお、Zaは、加振によるカンチレバー104の一端104aの検体103の厚み方向の振れ幅Zaであって、本検討では100nm程度に設定されている。図9において、各スペトルのベースラインは、理解のために、所定量オフセットされている。なお、吸光スペクトルは、検体に対する入射光の波長から赤外分光スペクトル、または、分光スペクトル、と換言される場合がある。
また、分光装置100は、吸光特性値の分布情報を取得するために、走査部160を備えている。走査部160は、照射部101とカンチレバー104は、検体103に対して一体的に相対移動するように構成されている。また、載置部150は、照射部101とカンチレバー104とに対して共通する移動量で相対移動するように構成されている。
距離取得部118は、機械的、光学的、電気的、磁気的、静電的な手法の少なくともいずれかで検体103とカンチレバー104との距離に関する情報を取得する。距離取得部118は、カンチレバーを加振させた状態で認識するエアダンピング効果に基づいて距離を取得することもできる。すなわち、距離取得部118は、カンチレバー104が励振部140により励振されている期間の検出信号の変化に基づいて距離(ワーキングディスタンス)を取得すると換言される。
照射部101から検体103に光102が入射されるとそのエネルギーの一部を吸収することによって検体103は弾性的に熱膨張と収縮し音響波109を発生させる。音響波109は、弾性波、光音響波と換言される場合がある。この検体103の熱膨張と収縮により音響波109が発生する。音響波109は検体103とカンチレバー104の間の空隙にある不図示の伝搬物質を伝搬してカンチレバー104に到達する。伝搬物質は、ガス、液体、ジェル等の流体が含まれる。カンチレバー104は、到達した音響波109のエネルギーに対応した振動が伝搬し振動する。カンチレバー104は、検体103からの光音響波109に共鳴していると換言される。
検出部110は、カンチレバー104の振動を検出し処理部111に検出信号を出力する。検出信号は、電気信号、光信号等が含まれる。本実施形態の検出部110は、光学的に測距するために、測距用光源110aと測距用光センサ110bとを備える。検出部110は、カンチレバー104の一端104aの近傍からの反射光を検出し電気信号として出力する。測距用の光源110aからの光は、照射部101からの光109と峻別するために、光109とは、波長、偏光角、コヒーレンシー、変調等が異なるものとされていることが好ましい。検出部110は、固定端となる他端104bとは異なる部分においてカンチレバー104の変位を検出することが好ましい。
本実施形態の分光装置100は、カンチレバー104を励振させる励振部140をさらに備えている。検出部110は、他の態様として、カンチレバー104の一部あるいは全体に圧電体を担持し、カンチレバー104の変形を圧電体が出力する電気信号に基づいてカンチレバーの変位を検出する焦電的な方式を用いることが出来る。
処理部111は、検出部110からの検出信号をフーリエ変換し周波数成分に分解する。処理部111に送られてきた検出信号を模式的に図3に示す。検出信号は、光102の照射命令が出された時刻を基準時刻301とすると、基準時刻301から信号の立ち上がり点302までは有意な信号(振幅)が認められない。検出信号は、立ち上がり点を過ぎると信号が立ち上がり、振動しながら減衰する減衰曲線303を描く。減衰曲線303は、リングダウンカーブと称する場合がある。かかる減衰曲線をフーリエ変換すると、図4に示すようにカンチレバーの固有振動の一次モード401、二次モード402、三次モード403、さらに高次のモードに対応する周波数にピークが現れる。処理部110は、これらの振動モードから一つ、若しくは複数を選択して、検出信号の周波数成分からピーク強度と波数変更部で変更した照射光102の波数と対応付けて不図示のストレージに記録する。以上のように、処理部111は、検出信号に対して離散フーリエ解析を行うことで、カンチレバー104の固有振動の周波数に対応する音響波の振幅を取得することで、前記吸光特性値を取得する。
光102の波長を波数変更部106で変化させながら、選択したモードのピーク強度を記録することで吸光スペクトルを得ることが出来る。処理部111は、照射光102の波数とフーリエ解析に得た振幅とに基づき検体103の吸光スペクトルを取得することができる。処理部111は、変更した波数毎に取得した振幅に基づき検体103の吸光スペクトルを取得すると換言される。
高次の振動モードは、ピーク強度が小さくなるので、一次モード、二次モード、三次モードのいずれか、若しくは複数個を用いるのが望ましい。取得された吸光スペクトルは、表示部112に表示しても良い。
観測雰囲気中の水分と反応して性状が変化する検体103を測定できるように、分光装置全体あるいは検体103とカンチレバー104を含む装置一部をガス雰囲気置換できる構成としてもよい。変化する性状には、膨潤、物理吸着、化学吸着、水和物形成、およびこれらに伴う密度、組成等の変化が含まれる。置換ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどの不活性ガスを用いることが出来る。
なお、分光装置100は、カンチレバー104、載置部105、照射部101が、検体103の厚み方向において、この順に位置する背面照射配置をとっている。このような背面照射配置をとることにより、照射部101からの直接光または散乱光が、カンチレバー104に照射されカンチレバーの振動部104c自体が振動しないように構成されている。
また、本実施形態の分光装置100は、カンチレバー104と照射部101との間に遮光部130が配置されている。遮光部130は、照射部101からの光102がカンチレバー104に、より一層確実に照射されないように選択的に配置された要素である。すなわち、遮光部130は、載置部105の遮光性により代替することができる。例えば、載置部105、支持部150等が、照射部101の光のカンチレバー104へ照射しないようにする遮光機能を有する形態が本発明の他の実施形態に含まれる。
<実施例1>
検体103は、クライオミクロトームを用いて、厚さ300ナノメートルに切り出したポリスチレン切片を用いた。かかる検体103を、ZnSで構成されたプリズムの上に載置した。プリズムは、検体103の載置部105である。
本実施例は、第1の実施形態に係る分光装置100で、準備したポリスチレン検体103の吸光スペクトルを取得した。
ただし、カンチレバーは、一端104aに錐体状のチップを有するカンチレバー104を用いた。また、照射部101は、パルス状の赤外光を発生するレーザー光源と光学的に結合されている。照射部101は、波数変更部106により、波数950 cm−1から3500 cm−1の赤外光を掃引させることが出来る構成されている。検出器110は、測距用光源110aと測距用光センサ110bとを備える、ワーキングディスタンスを光学的に検出できる構成としている。処理部111は、検出信号を処理するパーソナルコンピュータを用いる。移動機構にはブルカー・エイエックスエス社製のnanoIRのプローブ顕微鏡の機能を用いた。カンチレバーには日立ハイテクサイエンス社製のAFM用プローブであるSI−DF20を用いた。カンチレバー104の一次の固有振動数を測定すると124kHzであった。
距離調整部107を用いてカンチレバー104と検体103とを接近させ、カンチレバー104のチップを検体103に接触させてワーキングディスタンスZを=0(μm)としワーキングディスタンスの基準点とした。
次に、距離調整部107を用いて、検体103からカンチレバー104を離してZ=4(μm)のワーキングディスタンスを調整した。載置部105上の検体103の載置部105と接する面に、波数変更部で2920 cm−1に波数を固定したパルス状の赤外光を照射光102として検体103の表面103sに照射した。照射光102の検体103への照射開始のタイミング301以降に検出されたカンチレバー104の振動の時間変化は、検出部110の検出信号から図3のように取得された。図3は、時刻301〜302の間の音響波の伝搬と音響波303が確認された。音響波303は、パルス光の立ち上がりと立下り速度により発生した弾性波が熱容量と熱拡散により制限されながら増加している増大期間303aと、パルス光が停止されて熱拡散により弾性振動が減衰している減衰期間303bとが読みとられる。
また、この音響波303を処理部111でフーリエ解析したところ、図4の様に、振動数が124kHz、775kHz、2148kHzにピークが確認された。式(1)より、カンチレバーの固有振動の周波数の理論値は一次モードの124kHzに対して、二次モードが777kHz、三次モードが2176kHzである。この値は測定された値に非常に近い値であることから、カンチレバーには固有振動が励起されていることが示された。
次に、ワーキングディスタンス4μmを維持した状態で、カンチレバー104を約10nmの振幅で加振させて、波数変更部106により2700 cm−1から3200 cm−1まで波数を変更させて、ポリスチレン検体の吸光スペクトルを取得した。この結果を図5に示す。図5には、二次モードおよび三次モードの固有振動に対応する音響波信号の振幅から得た2つの吸光スペクトル501、502が示されている。
いずれの吸光スペクトル501、502も、ポリスチレン骨格のビニル基由来のC−H伸縮振動、2848 cm−1、2920 cm−1が認められ、芳香属環に由来するC−H伸縮振動が、2980 cm−1から3120 cm−1の範囲に認められる。
吸光により失活したエネルギーが弾性波として取得しているため、高い吸光度を示す試料に対してもノイズの影響を受け難く、良好な吸光スペクトルが得られている。
以上、実施例1により、第1の実施形態に係る分光装置100により、高い応答性を有する検出器(カンチレバー104)を用いて、ノイズが低減された赤外域の吸光スペクトルを音響的に取得できることが判った。
<実施例2>
次に、実施例1とカンチレバー104の加振を行わないこと以外は同じ条件で、ポリスチレン検体の吸光スペクトルを2次の固有振動モードに対応する振動数の振幅から取得した。この結果を、実施例1の結果と合わせて図6に示す。図6には、2次の固有振動モードに対応する振動数の音響波信号から得た2つの吸光スペクトル502、602が示されている。
以上、実施例2により、第1の実施形態に係る分光装置100により、高い応答性を有する検出器(カンチレバー104)を用いて、カンチレバーの加振、非加振に関係なく、ノイズが低減された赤外域の吸光スペクトルを音響的に取得できることが判った。
<実施例3>
実施例3は、洗剤液Aを検体103として、第1の実施形態に係る分光装置100を用いて、音響的に赤外分光測定をおこなった。検体103は、界面活性剤成分を水に分散させた洗剤液Aを、ZnSプリズムに綿棒を用いて付着させることで載置部105に載置した。
本実施例では、波数変更部106によりを波数950 cm−1から3500 cm−1の範囲で掃引し、洗剤液Aを検体103とし、カンチレバー104をチップレス構成として、第1の実施形態に示す分光装置100を用いて音響的手法で分光測定を行った。
また、距離調整部107は、ブルカー・エイエックスエス社製のnanoIRのプローブ顕微鏡の機能を用いた。カンチレバー104は、マイクロマッシュ社製のAFM用プローブであるNSC12/tipless/Cr−Auを用いた。カンチレバー104の固有振動数の一次モードを測定すると、133kHzであった。
カンチレバー104を、固有振動数の一次モードで励振しながら、距離調整部107を用いて載置部105を移動させ、カンチレバー104と検体103とのワーキングディスタンスを調整した。カンチレバー104と検体103との間の空気による減衰(ダンピング)を受けてカンチレバー104の励振振幅が小さくなり始めた段階で載置部105の移動を止めた。この段階でカンチレバー104の励振も停止した。このときワーキングディスタンスは、約4μmであった。
波数変更部で2920cm−1に波数を固定したパルス状赤外光を照射部から入射させた。赤外光の検体103への入射に伴いカンチレバー104の振動が検出部110により検出された。検出部110で検出された検出信号は図3に示されるような減衰曲線であった。また、この減衰曲線を処理部111でフーリエ解析すると、振動数が133kHz、875kHzにピークが確認された。式(1)により得たカンチレバー104の固有振動の周波数の理論値は、一次モードが133kHz、二次モードが833kHzである。これらの値は測定された値に非常に近い値であることから、カンチレバーには固有振動が励起されていることが示された。
<実施例4>
本実施例は、実施例3で準備した洗剤液Aを用いて、吸光スペクトルの取得方法が異なる参考例と対比した。洗剤液Aを検体103とする参考例と実施例4の吸光スペクトルを701、702として図7に示す。すなわち、図7は、実施例4と参考例に係る流動性の検体に対する吸光スペクトルの取得結果を示すものである。
吸光スペクトル701は、チップレスの板状のカンチレバー104を加振しながら波数範囲1100 cm−1から1800 cm−1で実施形態1の分光装置100を用いて音響的に取得した吸光スペクトルである。本実施例では、カンチレバー104の二次の固有振動モードの振動周波数875kHzの検出信号を用いた。
一方、吸光スペクトル702は、701と共通する入射光の波数域で、日本分光製のフーリエ変換型赤外吸収分光装置 FT/IR−6600を用いて、全反射測定法で光学的に測定した吸光スペクトルであって参考例に該当する。本参考例の検体は、Specac社製の全反射測定用のアタッチメントであるGoldenGateを載置部として用いていた。
吸光スペクトル701、702は、いずれも、1640 cm−1、1465 cm−1、1250 cm−1、1220 cm−1に吸光ピークが認められる。本実施例により、流動性の検体103に対しても、音響的に吸光スペクトルを取得可能であることが示された。
100 分光装置
101 照射部
102 光
103 検体
104 カンチレバー
104a 一端
104b 他端
106 波数変更部
109 音響波
110 検出部
111 処理部

Claims (20)

  1. 検体において音響波を発生させる様に前記検体の所定領域に光を照射する照射部と、前記光の波数を変更する波数変更部と、前記検体に対する距離が調整可能な一端と他端とを有し前記検体に対して前記照射部の反対側に配置されているカンチレバーと、前記カンチレバーの振動を検出し検出信号を出力する検出部と、前記検体と離間して配置された前記カンチレバーを介して音響的に取得した前記検出信号に基づいて前記検体の吸光特性値を取得する処理部とを、有することを特徴とする分光装置。
  2. 前記カンチレバーは、前記照射部からの前記光が照射されないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分光装置。
  3. 前記カンチレバーと前記照射部との間に、前記照射部からの前記光が前記カンチレバーに照射されないように配置された遮光部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の分光装置。
  4. 前記照射部から前記検体に前記光が照射されるように前記検体が載置される載置部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分光装置。
  5. 前記検体の厚み方向において、前記カンチレバー、前記載置部、前記照射部は、この順に位置していることを特徴とする請求項4に記載の分光装置。
  6. 前記距離を調整する距離調整部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分光装置。
  7. 前記距離を取得する距離取得部をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の分光装置。
  8. 前記距離調整部は、前記距離取得部が取得した取得結果に応じて前記距離を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の分光装置。
  9. 前記処理部は、前記検出信号に対して離散フーリエ解析を行うことで、前記固有振動の周波数に対応する前記音響波の振幅を取得することで、前記吸光特性値を取得することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分光装置。
  10. 前記処理部は、前記波数と前記振幅とに基づき前記検体の吸光スペクトルを取得することを特徴とすることを特徴とする請求項9に記載の分光装置。
  11. 前記処理部は、前記変更した波数毎に取得した前記振幅に基づき前記検体の吸光スペクトルを取得することを特徴とする請求項9または10に記載の分光装置。
  12. 前記検出部は、前記他端とは異なる部分において前記カンチレバーの変位を検出することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の分光装置。
  13. 前記検出部は、光学的、焦電的に前記変位を検出することを特徴とする請求項12に記載の分光装置。
  14. 前記カンチレバーを励振させる励振部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の分光装置。
  15. 前記距離を取得する距離取得部をさらに有し、
    前記距離取得部は、前記カンチレバーが前記励振部により励振されている期間の前記検出信号の変化に基づいて、前記距離を取得することを特徴とする請求項14に記載の分光装置。
  16. 前記光は、パルス光であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の分光装置。
  17. 前記光は、赤外光を含むことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の分光装置。
  18. 前記照射部と前記カンチレバーは、前記検体に対して一体的に相対移動するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の分光装置。
  19. 前記載置部は、前記照射部と前記カンチレバーとに対して共通する移動量で相対移動するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の分光装置。
  20. 前記カンチレバーを前記検体表面に仮想的に射影した射影は、前記照射部が前記検体表面に形成する光照射領域と重なる部分を有することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の分光装置。
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