図1及び図2は、本発明の作業車両を適用した乗用田植機の全体側面図及び全体平面図である。本乗用田植機は、前輪1,1及び後輪2,2を備えた走行機体3と、該走行機体3の後部に昇降リンク4を介して昇降自在に連結された植付作業機6と、該植付作業機6と後輪2との間に配置された整地作業機7と、圃場側にペースト状の肥料を散布する施肥装置8とを備えている。
前記走行機体3は、前側に配置されたボンネット9と、該ボンネット9の後方で各種操作具が配置された操縦部11とを備えている。また、該走行機体3の前部側には、測位衛星から前記走行機体3の位置情報を取得(受信)するGNSSユニット(GPSユニット、受信ユニット)12が設けられている(図1及び図2参照)。
前記操縦部11には、オペレータが着座する座席13と、該座席13の前方に配置された操向操作具であるステアリングハンドル14と、該ステアリングハンドル14の左右一方(左)側に配置された主変速レバー16と、該ステアリングハンドル14の左右他方(右)側に配置された副変速レバー17と、床面を形成するフロアステップ18とが設けられている。
該ステアリングハンドル14に連結されたステアリング軸側には、ステアリングハンドル14の操作位置を検出する操作位置検出センサ(操舵角センサ)19と、該ステアリングハンドル14を自動的に操作可能な操舵ユニット(操舵装置)21とが設けられている。詳しくは後述する。
上記主変速レバー16は、前後揺動操作によって走行変速を操作できる他、該主変速レバー16上端側の把持部内側には、前記植付作業機の昇降作動を操作するための上昇スイッチと、下降スイッチとが上下に配置されている。
上記副変速レバー17は、前後揺動操作されることにより、圃場面等での作業走行に適した低速状態と、路上走行に適した高速状態とに切換えることができるように構成されており、各状態に応じて、前記主変速レバー16によって変速操作可能な速度域が切換えられるように構成されている。
前記GNSSユニット12は、前記操縦部11のボンネット9を左右方向に跨ぐように設けられた門型のフレーム部材22と、該フレーム部材22の上辺側に左右一対設けられた受信アンテナ(GNSSアンテナ)である受信装置23,23と、後述するRTK基地局24からの補正情報を取得する補正信号受信装置26とを備えている。該受信装置23は、コントロールエリアネットワーク(CAN)等を介して後述する制御部50に接続されており、該制御部50に測位衛星システムから取得された前記走行機体3の位置情報、方位情報等を入力することができるように構成されている。
上記受信装置23は、前記フレーム部材22によって前記ボンネット9の上方側に配置されたことにより、衛星からの位置情報が取得し易くなる。また、該受信装置23が左右方向のフレーム部材22上に左右一対設けられたことにより、走行機体3の位置情報をより正確に取得することができる。
上記補正信号受信装置26は、作業走行する圃場面からある程度離れた場所に設置されたRTK基地局24(補正情報出力装置)から補正情報(具体的には、該RTK基地局24の座標データと、走行機体とRTK基地局24との間の距離データ)を受信するように構成されている。これにより、前記受信装置23によって取得された位置情報を、上記補正情報で補正することによって、前記走行機体3(GNSSユニット12)の位置情報の精度をセンチメートル単位まで向上させることができる。
また、該GNSSユニット12は、無線通信(Bluetooth(登録商標)等)を介してタブレット端末等の情報端末27が接続可能に構成されており、該情報端末27にはナビゲーションソフトがインストールされている。ちなみに、該情報端末27は、例えば操舵ユニット21側に設けたUSBソケット等を介して、前記GNSSユニット12側に有線接続されるように構成しても良い。
該構成により、前記制御部50は、前記GNSSユニット12の受信装置23から取得された走行機体3の位置情報に基づいて、前記走行機体3を予め演算・設定された圃場面上の作業経路に沿って走行させるように前記ステアリングハンドル14の操作を制御する自動操舵制御と、該自動操舵制御の実行中に走行機体3が畦等の障害物に接触することを回避するための衝突回避制御とが実行可能に構成されている。また、該制御部50は、詳しくは後述する内周経路と外周経路からなる作業経路を自動的に算出するティーチング走行制御(及び衝突回避制御)が実行可能に構成されている。詳しくは後述する。
ちなみに、前記情報端末27によって、ティーチング走行制御によって作業走行が行われる圃場の範囲(走行エリア)や、圃場面内に設定された前記作業経路の他、走行機体3の現在位置や走行状況等を確認することができるように構成されている。詳しくは後述する。
前記植付作業機6は、左右方向に延設されて主フレームをなす横フレーム31と、該横フレーム31の真後側近傍から前方に向かって上方傾斜されて背面側に苗が載置される苗載台32と、該苗載台32の下端側からマット苗を掻き取って圃場に植付ける植付部33と、上記苗載台32の下方に配置されて圃場面に接地される前後方向のフロート34とを備え、昇降シリンダ10によって走行機体3の後部側に昇降作動可能に連結されている。
左右方向に複数並べた上記フロート34のうち、中央に配置されたセンターフロート34Aは、圃場面からの土圧を感知する感知体として機能する。これにより、該センターフロート34Aが圃場面と接地した際に圃場から受ける土圧(圃場の状態)に応じて、前記植付作業機6の昇降位置(植付作業する植付高さ)を制御することができる。
次に、図1乃至7に基づき、前記操舵ユニット21と、前記制御部50によるティーチング走行制御(内周経路設定制御)と、自動操舵制御の制御内容について説明する。図3(A)は、操舵ユニットの取付状態を示した要部斜視図であり、図3(B)は、操作パネルを示した正面図であり、図4(A)乃至(C)は、タブレット端末の表示例を示したモデル図である。
前記操舵ユニット21は、前記ステアリング軸に軸装される減速ギヤを介して該ステアリング軸を回転駆動させるギヤ機構(図示しない)と、該ギヤ機構側に噛合う出力ギヤを駆動させるアクチュエータであるステアリングモータ36と、前記自動操舵制御の実行を操作する操作パネル37と、報知ブザー38や各種ランプ等の報知表示部39等からなる報知手段と、前記制御部50とを備え、前記ステアリング軸側に着脱可能に取付けられるように構成されている(図3参照)。
前記操作パネル37は、左右方向のパネル状に形成されて前記ステアリングハンドル14の真下側に配置されており、該操作パネル37には、前記制御部50による自動操舵制御の実行と停止を操作する自動操舵スイッチ41と、前記ティーチング走行制御による始点(A点)を設定する始点(A点)登録スイッチ42Aと、終点(B点)を設定する終点(B点)登録スイッチ42Bと、詳しくは後述する目標線切換スイッチ43とが左右方向に並べて配置されている。また、各スイッチの上方側には各スイッチのON・OFF状態を報知する報知ランプが設けられている。
上記自動操舵スイッチ41は、図示する例では、前記操作パネル37の左端側に配置されており、上下で自動操舵制御の実行(ON)状態と、自動操舵制御の停止(OFF)状態とに切換えるスイッチが上下に設けられている。
また、各スイッチ41,42,43の近傍(図示する例では右側)には、作業者に作業車両の各種状況を報知する報知ランプ(報知表示部)39が設けられている。具体的には、作業走行中の走行機体3が予め設定された規制速度を超えていることを報知する速度超過ランプ39Aと、作業走行中に前記主変速レバー16による増速操作が許容された状態であることを報知する増速許容ランプ39Bと、前記走行機体3が自動操舵制御の実行中に後述する目標ライン上を走行している状態であることを報知する目標ライン走行ランプ39Cと、走行機体3が畦等の障害物に所定以上接近したことを報知する衝突回避ランプ39Dとが設けられている(図3(B)参照)。
このとき、作業者は、各報知ランプ39により報知される情報を前記情報端末27からも取得することができるように構成されている(図4(A)乃至(C)参照)。具体的に説明すると、まず、前記内周経路上を作業走行中に所定条件下で車速が予め定めた規則速度を超えた場合には、前記速度超過ランプ39Aの点灯とともに、その旨を情報端末27上に表示することができる(図4(A)参照)。
また、前記走行機体3が前記目標ライン(作業経路)上に乗ったことにより走行機体3の車速の増速が許容された場合には、前記増速許容ランプ39Bと目標ライン走行ランプ39Cが点灯するとともに、その旨を情報端末27上に表示することができる(図4(B)参照)。さらに、走行機体3が畦等の障害物と所定距離以上近づいたことが検出されて走行機体3が自動的に停止した(後述の衝突回避制御が実行された)場合には、前記衝突回避ランプ39Dが点灯するとともに、その旨を情報端末27上に表示することができる(図4(C)参照)。
次に、図5乃至14に基づいて、前記制御部50による自動操舵制御について説明する。図5は、制御部のブロック図である。前記制御部50の出力側には、前記ステアリングモータ36と、前記報知ブザー38と、上述の各種報知ランプ等からなる前記報知表示部39とが接続されている。
その一方で、前記制御部50の入力側には、前記始点登録スイッチ42Aと、前記終点登録スイッチ42Bと、前記自動操舵スイッチ41と、前記目標線切換スイッチ42と、前記主変速レバー16と、前記副変速レバー17と、前記ステアリングハンドル14による操舵角を検出する前記操舵角センサ19と、前記走行機体3の車速を検出する車速センサ46と、前記走行機体3の走行距離をカウントする回転センサ47と、前記走行機体3から畦等の障害物までの距離を検出する距離センサ48とが接続されている。
また、該制御部50の入力側には、前記GNSSユニット12が接続されており、該GNSSユニット12には、前記走行機体3の位置データと、方位データとを取得する前記受信装置23,23と、タブレット等の前記情報端末27と、RTK基地局24からの補正情報を受信する前記補正信号受信装置26とが接続されている。
次に、図6乃至9に基づき、前記ティーチング走行制御と前記自動操舵制御の制御内容について説明する。図6は、作業経路と作業走行を行う走行順を示したモデル図であり、図7は、内周経路の設定方法を示したモデル図であり、図8は、外周経路の設定方法を示したモデル図であり、図9は、別実施例の外周経路の設定方法を示したモデル図である。
前記制御部50は、前記自動操舵制御によって前記ステアリングハンドル14による操向操作を制御することにより、前記走行機体3を複数の仮想線によって構成される作業経路に沿って作業走行させることができるように構成されている。また、該作業経路は、圃場面の内側で折返し走行を繰返す内周経路と、該内周経路の外側を囲うように走行する外周経路(枕地経路)とから構成されおり、図示する例によれば、内周経路(1)→外周経路(2),(3)の順番で作業走行が行われる(図6参照)。
該自動操舵制御では、前記GNSSユニット12により検出された走行機体3の現在位置に基づいて、前記作業経路を構成する仮想線の中から走行機体3から最も距離が近い仮想線を検出し、検出された仮想線を目標ライン(目標線)として設定し、前記走行機体3が目標ライン上に沿って作業走行するように前記操舵ユニット(前記ステアリングモータ36)を制御するように構成されている。
すなわち、該自動操舵制御は、例えば、枕地となる目標ライン(仮想線)の端部側まで作業走行し終わって、該走行機体3を枕地旋回することにより隣接する仮想線に移動する場合には、移動先の仮想線を新たな目標ラインと設定して作業走行を再開することができる。この作業を繰返すことにより、前記操舵ユニット21によりステアリング操作を制御しながら圃場面上に張り巡らされた作業経路上を隈なく作業走行することができる(図6参照)。
ちなみに、該制御部50は、前記作業経路を構成する複数の仮想線から前記目標ラインを設定する際には、前記走行機体3から最も距離が近い仮想線であって且つ、該仮想線の向きが前記走行機体3の向きと同じ方向の場合に、新たな前記目標ラインとして設定されるように構成されている。これにより、目標ラインが他の仮想線に切換った際に、前記操舵ユニット21により前記走行機体3が急旋回される事態を防止することができる。
また、前記制御部50は、前記目標線切換スイッチ43により内側(内周モード、内周経路)が選択されている場合には、内周経路を構成する仮想線の中から走行機体3に最も近い仮想線(前記目標ライン)を検索し、前記目標線切換スイッチ43により枕地側(外周モード、外周経路)が選択されている場合には、外周経路を構成する仮想線の中から走行機体3に最も近い仮想線(前記目標ライン)を検索するように構成されている。これにより、内周経路(1)から外周経路(2)への切換えをよりスムーズに行うことができる。
ちなみに、該目標線切換スイッチ43によって、内周モードに切換えられている場合には、目標線切換ランプ43Aが消灯(又は点滅)し、前記目標線切換スイッチ43によって、外周モードに切換えられている場合には、目標線切換ランプ43Aが点灯するように構成されている(図3(B)参照)。このとき、自動操舵制御が実行中の場合には、前記目標線切換スイッチ43の外周枠が点灯するように構成しても良い。
また、該制御部50は、前記自動操舵制御によってステアリング操作が制御されている最中に、前記距離センサ48によって前記走行機体3が畦等の障害物と予め定めた所定距離(リミッター距離Kl)より近づいたことが検出された場合には、走行機体3を停止させることによって障害物と衝突することを回避する衝突回避制御が実行可能に構成されている。
なお、前記制御部50は、前記内周経路を、後述するティーチング走行制御(内周経路設定制御)によって演算・設定することができるように構成されている。その一方で、前記制御部50は、前記衝突回避制御を実行しながら内周経路上を作業走行させることによって、前記外周経路が自動的に演算・設定されるように構成されている(以下、衝突回避・仮想線生成制御A,B)。以下、説明する。
前記ティーチング走行制御は、圃場面の内側に一本の基準線L0を設定することにより、該基準線L0の位置情報と、該基準線L0と交差する方向の圃場の幅や、圃場端から基準線L0の始点Aまでの距離(枕地の幅)、走行機体3(植付作業機6)の左右幅等の情報に基づいて、該基準線L0に平行な内側仮想線L1,L2,・・・を所定間隔で複数並べて配置することにより構成される前記内周経路を自動的に演算・設定することができる(図7及び図8参照)。
具体的に説明すると、該基準線L0は、図7等に示されるように、まず、前記走行機体3を圃場の出入口から内周経路の開始地点となる始点Aまで移動し、前記操作パネル37の始点登録スイッチ42Aを押操作することによって、前記基準線L0の始点(A点)を登録し、その後、圃場端に向けて直線状に作業(ティーチング)走行し、枕地側で旋回走行する前に前記終点登録スイッチ42Bを押操作することによって、前記基準線L0の終点(B点)を登録する。これにより、前記制御部50は、始点と終点とを結ぶことにより内周経路の端部を構成する前記基準線L0を特定(設定)することができる。
このとき、前記制御部50は、前記走行機体3を圃場の出入口から前記基準線L0の始点Aまで移動させる際に、前記作業機(植付作業機6)の駆動を停止した状態で、前記回転センサ47により走行距離をカウントしながら圃場端に沿ってL字状に走行する準備走行(空歩き)を行うことによって、圃場の縦幅と横幅とを計測することができる(図7参照)。
また、前記制御部50は、前記基準線L0を設定する際に、前記回転センサ46や前記距離センサ48を用いて、始点Aから圃場端までの距離、言い換えると、枕地(外周経路)の幅を予め計測することができる(図7参照)。
前記衝突回避・仮想線生成制御Aは、内周経路上を作業走行する前記走行機体3が枕地側で隣接する仮想線に向けて枕地旋回する際に、前記GNSSユニット12により走行機体3が隣接する仮想線に向けて枕地旋回を開始した旋回開始地点Pの座標データを取得するとともに、前記距離センサ48により枕地旋回を開始した旋回開始地点Pから圃場端の畦までの距離Kを検出し、これらの情報に基づいて畦の座標データPaを演算し、該座標データPaを記憶装置に記憶するように構成されている。
該衝突回避・仮想線生成制御Aは、この作業を内周経路の作業走行時に枕地旋回する度に実行して畦の位置を示す座標データPaを蓄積し、記憶装置に蓄積された畦を示す座標データPa群に基づいて、圃場の外形を示す畦ラインを演算(生成)することができるように構成されている(図8参照)。前記制御部50は、この畦ラインと内周経路の外形との間に、前記外周経路を構成する複数の仮想線(外周仮想線・枕地仮想線)を演算・設定することができるように構成されている(図8参照)。該外周仮想線は、前記内周経路を1周又は2周(図示する例では2周)回るように設定される。
ちなみに、衝突回避・仮想線生成制御Aは、前記旋回開始地点Pの他に、枕地旋回を開始する直前の旋回直前地点P−1と、枕地旋回を開始した直後の旋回直後地点P+1についても、同様に走行機体の座標データPと、畦までの距離Kに基づいて、畦の座標Paを演算するように構成されている(図8等参照)。これにより、畦ラインを演算するための畦の座標データPaをより数多く蓄積できるため、畦ラインの精度をより向上させることができる。
該構成によれば、作業走行を行う圃場の外形データを予め取得したり、圃場の外形データを取得するために圃場の外周縁を一周走行したりすることなく、前記衝突回避制御を実行しながら前記内周経路を作業走行するついでに前記外周経路を効率的に演算・設定することができる。
次に、図9に基づいて、前記衝突回避・仮想線生成制御の別実施例について上述の例と異なる点を説明する。
図9に示される例では、前記距離センサ48が前記走行機体3の前端と、該走行機体3(具体的には左右に張出した前記植付作業機6)の左右端側の計3か所に設けられている。このため、前記走行機体3は、圃場の外周縁側を走行した場合に、前記距離センサ48によって走行機体3の側方側から畦までの距離Kを検出することができるように構成されている。
これにより、前記衝突回避・仮想線生成制御Bは、前記ティーチング走行制御の前に行う前記準備走行(空歩き)する際に、圃場端の畦の座標データPaを演算することができる。具体的に説明すると、前記衝突回避・仮想線生成制御Bは、前記準備走行によって該走行機体3を圃場端に沿ってL字状に走行させる際に、前記距離センサ48とGNSSユニット12により、走行機体3側方と圃場端の畦との間の距離Kと、このときの走行機体3の座標データPとを取得し、これらのデータから畦の座標データPaを連続的に演算することができるように構成されている(図9参照)。
該構成によれば、枕時旋回時に畦の座標データPaを演算するものと比較して、畦の座標データPaをより細かい間隔で連続的に演算することができるため、圃場の外形を示す前記畦ラインをより高精度に計算することができる。
また、前記衝突回避・仮想線生成制御Bは、図9に示されるように、上述の例と同様に前記内周経路の作業走行時における枕地旋回時に、前記基準線L0や内周仮想線L1,L2・・の延設方向と交差する畦の座標データPaを演算することができる。
さらに、該前記衝突回避・仮想線生成制御Bは、図9に示されるように、内周経路を構成する最後の内周仮想線Lz上を作業走行する場合には、前記走行機体3の側方側と圃場端の畦側とが近接するため、前記走行機体3の側方側の前記距離センサ48と前記GNSSユニット12とによって、準備走行時に取得した畦とは反対側の畦の座標データPaを連続的に演算することができる。
以上より、上述の衝突回避・仮想線生成制御Bによれば、内周経路上を作業走行する前の前記準備走行中と、内周経路上の作業走行時における枕時での旋回走行時と、内周経路を構成する最後の内側仮想線Lz上の作業走行時とで、それぞれ圃場を囲繞する前記畦全体の座標データPaを演算・取得することができるため、圃場の外形データをより高精度に得ることができる。以下、前記制御部によるティーチング走行制御と、自動操舵制御の制御フローついて説明する。
次に、図10に基づいて、前記ティーチング走行制御のフローについて説明する。図10は、ティーチング走行制御を示したフロー図である。前記ティーチング走行制御の処理フローが開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、圃場(走行エリア)内において前記始点登録スイッチ42Aの押操作が検出された地点を始点(A点)として登録し、前記終点登録スイッチ42Bの押操作が検出された地点を終点(B点)として登録し、ステップS2に進む。
ステップS2では、登録された始点(A点)と終点(B点)を基に、前記基準線(基準ライン)L0を演算し、ステップS3に進む。
ステップS3では、前記基準線L0、該基準線と直交する方向の圃場面の幅(距離)、前記植付作業機6の左右幅や走行機体の旋回半径等の情報に基づいて、該圃場内における次工程以降の目標ラインとなる前記仮想線(L1,L2,L3,・・・)を演算し、その後、リターンする。
すなわち、該構成のティーチング制御によれば、前記始点登録スイッチ42Aと終点登録スイッチ42Bとで圃場内に一本の基準線L0を設定することによって、圃場内を作業走行する際の目印(目標ライン)となる複数の仮想線(L1,L2,・・・)からなる前記内周経路を自動的に演算・設定することができる。
次に、図11に基づいて、前記自動操舵制御のメインフローについて説明する。図11は、自動操舵制御を示したフロー図である。前記自動操舵制御の処理フローが開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、前記ティーチング走行制御によって算出された複数の仮想線の中から、前記受信装置23により取得された走行機体3の現在位置から最も近い仮想線Lを検出して目標ラインとして設定し、ステップS12に進む。
ステップS12は、前記衝突回避・仮想線生成制御(A又はB)のサブルーチンが実行されることにより、前記走行機体が障害物に接触することを回避しつつ、前記外周経路を構成する仮想線を生成し、その後、ステップS13に進む。各衝突回避・仮想線生成制御については後述する。
ステップS13では、前記目標仮想線の切換え制御が実行され、その後、ステップS14に進む。詳しくは後述する。
ステップS14では、前記自動操舵スイッチ41が、自動操舵制御が実行される自動操舵ON状態に切換操作された状態か否かが確認され、自動操舵ON状態であることが検出された場合には、ステップS15に進む。なお、ステップS16において、自動操舵ON状態が検出されなかった(自動操舵OFF状態が検出された)場合には、その後、リターンする。
ステップS15では、前記GNSSユニット12により、前記走行機体3と前記目標ラインLとの間における左右方向のズレであるズレ幅Dが、予め設定された許容ズレ幅Dt内に収まっているかが確認され、ズレ幅D≦許容ズレ幅Dtであることが検出された場合には、ステップS16に進む。
ステップS16では、前記走行機体3の進行方向と前記目標ラインとの間の角度のズレであるズレ角θが、予め設定された許容ズレ角θt内に収まっているか否かが確認され、ズレ角θ≦許容ズレ角θtであることが検出された場合には、ステップS17に進む。
ステップS17では、前記報知表示部39や報知ブザー38によって、前記走行機体3の速度アップが許容される状態であることを作業者に報知し、その後、リターンする。
すなわち、前記自動操舵制御の実行中に、前記走行機体3が前記目標ライン上を所定の範囲内で走行していること(適正状態)が検出された場合には、前記主変速レバー16による走行機体3の増速操作が許容される状態となるため、その旨が作業者に報知される。
また、ステップS15において、前記ズレ幅D>前記許容ズレ幅Dtであることが検出された場合、又は、ステップS16において、前記ズレ角θ>許容ズレ角θtであることが検出された場合には、何れもステップS18に進む。
ステップS18では、検出された前記ズレ幅Dと、前記ズレ角θに基づいて、前記走行機体3を目標ライン上に戻すために必要なステアリングハンドル14の操作量である修正操舵角θsを演算・出力する。さらに、得られた修正操作舵角θsの分だけ前記ステアリングハンドル14が操向操作されるように前記ステアリングモータ36を駆動させ、その後、ステップS19に進む。
ステップS19では、前記車速センサ46によって検出された前記走行機体3の車速Vが前記操舵ユニット21による自動操舵中に許容される予め設定された所定の車速(警告速度)Vtを超えているか否かが確認され、検出された車速V≧予め設定された所定の車速Vtであることが検出された場合には、ステップS20に進む。
ステップS20では、前記走行機体3が自動操舵の実行中に許容されている速度Vtを超過している旨が作業者に報知され、その後、リターンする。
なお、ステップS19において、検出された車速<予め設定された所定の車速Vtが検出された場合には、その後、リターンする。
上記によれば、目標ラインに沿って作業走行をする前記走行機体3が、該目標ライン上からズレている場合には、前記走行機体3の車速Vが前記警告速度Vtを超えているか否かが判断され、走行機体3が所定の警告速度Vtより早くならないように構成されている。すなわち、前記走行機体3を目標ライン上に乗せるために前記操舵ユニット21による自動操舵が実行されている最中は、走行機体3の車速を抑えることができるため、安全性が向上する。
次に、図12に基づいて、前記衝突回避・仮想線生成制御Aについて説明する。図12は、衝突回避・仮想線生成制御Aを示したフロー図である。衝突回避・仮想線生成制御Aの処理フローが開始されると、ステップS21に進む。ステップS21では、前記走行機体3の前端に設けた前記距離センサ48により、走行機体3前端から畦までの距離Kを検出し、ステップS22に進む。
ステップS22では、前記距離センサ48によって検出された走行機体3から畦までの距離Kが、予め定めた衝突回避距離(リミッター距離)Klより大きいか否かが確認され、距離K>衝突回避距離Klが検出された場合には、ステップS23に進む。
ステップS23では、前記距離センサ48によって検出された距離Kが、予め設定された旋回開始地点での走行機体と畦との間の距離K2を示すか否か、又は、旋回開始地点の前後での走行機体と畦との間の距離を示す距離K1、K3であるか否かが確認され、前記距離センサ48で検出された距離Kが、距離K1,K2,K3であることが検出された場合、言い換えると、前記走行機体が旋回開始位置か、その前後位置であることが検出された場合には、ステップS24に進む。なお、ステップS23において、前記距離センサ48が距離K1,K2,K3を検出しなかった場合、すなわち、走行機体が旋回開始位置、又は旋回開始位置の前後位置でなかった場合には、その後、リターンする。
ちなみに、ステップS23は、前記操舵角センサ19によって所定以上のステアリング操舵が検出された際に、前記距離センサ48が検出した距離Kを、旋回開始地点における走行機体と畦との間の距離K2と設定しても良い。
ステップS24では、前記制御部50は、前記距離センサ48によって検出された前記走行機体3から畦までの距離Kと、前記距離センサ48により距離Kが検出されたときに前記GNSSユニット12により取得された前記走行機体3の位置情報(座標データ)P(P−1,P0,P+1)とを記憶し、前記制御部50は、取得された走行機体の位置情報Pと、走行機体から畦までの距離Kとから、走行機体から最も距離が近い畦の座標データPaを演算し、記憶する。
さらに、該ステップS24では、前記制御部50は、記憶された複数の畦の座標データPaの集合から圃場端の畦の形状を示す畦ラインとなる近似線を演算し、得られた畦ライン(圃場の外形データ)に基づいて、前記外周経路となる複数の枕地仮想線を演算し、その後、リターンする。
該構成によれば、前記自動操舵制御による自動操舵によって内周経路上を作業走行することにより、自動的に圃場端の畦の座標Paを蓄積して畦全体の形状を示す畦ラインを取得することができる。これにより、圃場の外形データがない場合であっても、内周経路上を作業走行するだけで、前記外周経路を設定することができる。
また、ステップS22において、前記距離センサ48によって検出された走行機体3から畦までの距離K≦衝突回避距離Klが検出された場合には、ステップS25に進む。
ステップS25では、走行機体3の前進走行を停止し、前記報知ブザー38による警告音と、前記衝突回避ランプ39Dの点灯によって衝突回避制御による走行機体3の自動停止が実行されたことを作業者に報知し、自動操舵OFF状態に切換えて前記操舵ユニット21による前記ステアリングハンドル14の操向制御を停止し、その後、リターンする。
すなわち、前記制御部50は、前記距離センサ48によって前記走行機体3前端と畦等の障害物との間の距離が予め定めた所定の衝突回避距離Klよりも短くなったことが検出された場合には、走行機体3の作業走行を自動的に停止することにより、走行機体が畦等に衝突することを確実に防止することができる。
次に、図13に基づいて、前記衝突回避・仮想線生成制御Bについて説明する。図13は、衝突回避・仮想線生成制御Bを示したフロー図である。衝突回避・仮想線生成制御Bの処理フローが開始されると、ステップS31に進む。ステップS31では、前記走行機体3に設けた各距離センサ48により、走行機体3前端又は左右端から畦までの距離Kを検出し、ステップS32に進む。
ステップS32では、前記距離センサ48によって検出された走行機体3から畦までの距離Kが、予め定めた衝突回避距離(リミッター距離)Klより大きいか否かが確認され、距離K>衝突回避距離Klが検出された場合には、ステップS33に進む。
ステップS33では、所定時間(又は所定距離)以上の作業(植付)走行が検知されていない(作業経路に沿った作業走行が開始されていない)状態か否か、言い換えると、前記準備走行(空歩き)中であるか否かが検出され、圃場内での準備走行中であることが確認された場合には、ステップS34に進む。
ステップS34では、前記制御部50は、前記GNSSユニット12により取得された前記走行機体3の位置情報(座標データ)Pと、前記距離センサ48によって検出された前記走行機体3から畦までの距離Kとを記憶し、前記制御部50は、新たに取得された走行機体の位置情報Pと、走行機体から畦までの距離Kとから、走行機体から最も近い箇所の畦の座標データPaを演算し、記憶する。
さらに、該ステップS34では、前記制御部50は、記憶された複数の畦の座標データPaの集合から畦ラインと設定される近似線を演算し、得られた畦ライン(圃場の外形データ)に基づいて、前記外周経路となる複数の枕地仮想線と、前記内側経路とを演算し、その後、リターンする。
また、ステップS33において、前記自動操舵制御によって作業経路(具体的には内周経路)に沿った作業走行が開始されていることが検出された場合には、ステップS35に進む。
ステップS35では、前記距離センサ48によって検出された走行機体の前側と畦ラインが未取得側の畦との間の距離Kが、予め設定された旋回開始地点での走行機体と畦との間の距離K2を示すか否か、又は、旋回開始地点の前後での走行機体と畦との距離を示す距離K1、K3であるか否かが確認され、前記距離センサ48で検出された距離Kが、距離K1,K2,K3であることが検出された場合、言い換えると、前記走行機体が畦ライン未取得側での旋回開始位置か、その前後位置であることが検出された場合には、ステップS36に進む。
ちなみに、該ステップS35は、前記操舵角センサ19によって所定以上のステアリング操舵が検出された際に、前記距離センサ48によって検出された走行機体の前側と畦との間の距離Kを、旋回開始地点における走行機体と畦との間の距離K2と設定しても良い。
ステップS36では、前記制御部50は、前記距離センサ48によって検出された前記走行機体3から畦までの距離Kと、前記距離センサ48により距離Kが検出されたときに前記GNSSユニット12により取得された前記走行機体3の位置情報(座標データ)P(P−1,P0,P+1)とを記憶し、前記制御部50は、取得された走行機体の位置情報Pと、走行機体から畦までの距離Kとから、走行機体から最も距離が近い畦の座標データPaを演算し、記憶する。
さらに、該ステップS36では、前記制御部50は、記憶された複数の畦の座標データPaの集合から畦ラインと設定される近似線を演算し、得られた畦ライン(圃場の外形データ)に基づいて、前記外周経路となる複数の枕地仮想線を演算し、演算された枕地仮想線を上書きして記憶し、その後、リターンする。
また、ステップS35において、前記距離センサ48で検出された距離Kが、距離K1,K2,K3であることが検出されなかった場合、言い換えると、前記走行機体が畦ライン未取得側での旋回開始位置か、その前後位置であることが検出されなかった場合には、ステップS37に進む。
ステップS37では、前記走行機体3の側方側に設けられた前記距離センサ48によって、畦ラインが演算されていない方向の畦が予め定めた所定距離以内にあることが検出されたか否かが確認され、前記走行機体3の側方側に畦ラインが演算されていない畦が所定距離以内に検出された場合には、ステップS38に進む。
ステップS38では、前記制御部50は、前記GNSSユニット12により取得された前記走行機体3の位置情報(座標データ)Pと、前記距離センサ48によって検出された前記走行機体3から畦までの距離Kとを記憶し、前記制御部50は、新たに取得された走行機体の位置情報Pと、走行機体から畦までの距離Kとから、走行機体から最も近い箇所の畦の座標データPaを演算し、記憶する。
さらに、該ステップS38では、前記制御部50は、記憶された複数の畦の座標データPaの集合から畦ラインと設定される近似線を演算し、得られた畦ライン(圃場の外形データ)に基づいて、前記外周経路となる複数の枕地仮想線を演算し、演算された枕地仮想線を上書きして記憶し、その後、リターンする。
また、ステップS32において、前記距離センサ48によって検出された走行機体3から畦までの距離K≦衝突回避距離Klが検出された場合には、ステップS39に進む。
ステップS39では、走行機体3の作業走行を停止し、前記報知ブザー38による警告音と、前記衝突回避ランプ39Dの点灯によって衝突回避制御による走行機体3の自動停止が実行されたことを作業者に報知し、自動操舵OFF状態に切換えて前記操舵ユニット21による前記ステアリングハンドル14の操向制御を停止し、その後、リターンする。
次に、図14に基づいて、目標仮想線の切換制御について説明する。図14は、目標仮想線の切換制御を示したフロー図である。目標仮想線の切換制御の処理フローが開始されると、ステップS41に進む。ステップS41では、前記目標線切換スイッチ43によって、前記目標ラインが前記内周経路を構成する仮想線から検出する状態であるか否かが確認され、前記目標線切換スイッチ43によって前記自動操舵制御が内周経路上を作業走行する状態に切換えられていることが検出された場合には、ステップS42に進む。
ステップS42では、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作の有無を確認し、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作が検出された場合には、ステップS43に進む。なお、該ステップS42で、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
ステップS43では、前記走行機体から最も近い仮想線となる前記目標ラインを、内周経路を構成する仮想線から外周経路を構成する仮想線(枕地仮想線)に変更し、その後、リターンする。
また、ステップS41において、前記目標線切換スイッチ43によって前記自動操舵制御が外周経路上を作業走行する状態に切換えられていることが検出された場合には、ステップS44に進む。
ステップS44では、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作の有無を確認し、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作が検出された場合には、ステップS45に進む。なお、該ステップS45で、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
ステップS45では、前記走行機体から最も近い仮想線となる前記目標ラインを、外周経路を構成する仮想線から内周経路を構成する仮想線に変更し、その後、リターンする。
該構成によれば、前記目標ライン上に沿って作業走行を行うように自動操作する前記自動操舵制御を実行する際に、内周経路上を作業走行か、外周経路上を作業走行するかの切換を、前記目標線切換スイッチ43のスイッチ操作によってスムーズに切換えることができる。
これに対し、前記自動操舵制御について、内周経路を構成する仮想線と外周経路を構成する仮想線との区別をなくし、全ての仮想線で前記作業経路全体が構成されるようにしても良い。この場合、前記自動操舵制御は、常に前記GNSSユニット12によって取得された前記走行機体3の位置から最も近い仮想線を目標ラインと設定するように構成されるため、旋回移動等によって最も近い仮想線が切換ると、内周経路、外周経路を問わず自動的に前記目標ラインの設定も変更される。