[1]実施形態
トンネルの建設現場に安全制御システムを適用した実施形態について、具体的に説明する。
[1−1]概要
図1は、トンネルの建設現場を横から見て示した概念図であり、図2は、当該建設現場を上から見て示した概念図である。トンネルの建設現場では、発破による岩石の破砕と、発破後の岩石や土砂の排出(ずり出し)と、が繰り返し行われることにより、トンネルの掘削が進められる。また、工事中のトンネル内には、発破時に飛散する岩石や爆風から作業者を保護するために、発破用の爆薬が設置される掘削現場(切羽100A)からトンネルの入口(坑口100B)へ所定距離(例えば、40〜50m)だけ後退した位置に、防護壁101が設けられる。そして工事中のトンネル内には、トンネルが掘り進められるのに従って、防護壁101を、切羽100Aからの距離を一定に保ちつつトンネルの奥へ向けて移動させることが可能となるように、防護壁101は、トンネル内に敷設されたレール(不図示)によって移動可能に支持されている。
本実施形態では、防護壁101は、バルーンを膨らませて壁を形成するトラベルクリーンカーテンである。尚、図1及び図2では、バルーンの図示が省略されており、当該バルーンを保持する保持枠101Aだけが図示されている。尚、防護壁101は、トラベルクリーンカーテンに限らず、開閉式の扉など、発破時に飛散する岩石や爆風から作業者を保護できる様々な壁に変更されてもよい。
このようなトンネルの建設現場において、切羽100Aから防護壁101までのエリアは、発破時においては、岩石の飛散や爆風の影響が大きいエリアであるが故に危険であり、また、ずり出し時においては、岩石や土砂を掻き集めて搬出する作業が、ショベルカー、ホイールローダ、ダンプカーなどの重機によって行われるエリアであるが故に、危険である(以下、このエリアを「危険エリアRd」と称す)。尚、当該危険エリアRdで作業する重機には、ショベルカー、ホイールローダ、ダンプカーなどの車両型重機に限らず、建設現場に設置されるベルトコンベアなどの設置型重機や、建設現場に作業者や資材を搬送する作業用車両なども含まれる。
一方、防護壁101から坑口100Bまでのエリアは、発破時においては、防護壁101によって岩石の飛散や爆風から保護されるエリアになるが故に安全であり、また、ずり出し時においては、ダンプカーなどの通行以外には重機による作業が殆ど行われないエリアであるが故に、作業者にとっては比較的安全である(以下、このエリアを「安全エリアRs」と称す)。
上述した危険エリアRdは、発破時においては、そのエリアに作業者が居ること自体が危険であり、また、ずり出し時においては、そのエリア内で作業者が重機から降りた場合や、そのエリアに作業者が重機に乗車せずに入った場合に、作業中の重機と接触する虞があるため、作業者にとっては危険である。
そこで本実施形態では、そのような危険エリアRdが存在する建設現場に安全制御システムが適用されることにより、当該建設現場での高い安全性が実現される。以下、安全制御システムの詳細について、具体的に説明する。
[1−2]安全制御システムの構成
図3は、上述したトンネルの建設現場に適用される安全制御システムの構成を概念的に示したブロック図である。安全制御システムは、作業者及び重機のそれぞれの位置を検出する位置検出システム1と、照明制御システム2と、重機制御システム3と、管理サーバ4と、によって構成されており、これらがネットワークを介して通信可能に接続されている。
<位置検出システム>
位置検出システム1は、作業者及び重機の位置検出に用いられるシステムであり、ビーコン信号を発信する発信器11と、ビーコン信号を受信する受信器12と、で構成されている(図3参照)。
発信器11には、建設現場で作業する作業者(例えば、ヘルメットや作業服など)に取り付けられる発信器11Aと、建設現場で作業する重機に取り付けられる発信器11Bとが含まれている。そして、各発信器11が発信するビーコン信号には、当該発信器11を識別するための第1識別情報Ip1が含まれている。ここで、第1識別情報Ip1は、作業者及び重機のそれぞれに1対1の関係で対応付けられており、ビーコン信号がどの作業者又は重機から発信されたものであるのかを特定するために用いられる。尚、作業者は、発信器11をポケットなどに入れて所持してもよい。
受信器12には、安全エリアRsにおいてトンネルの内壁に設置される受信器12A(図1及び図2参照)と、建設現場で作業する重機に設置される受信器12B(図3参照)とが含まれている。そして、各受信器12は、当該受信器12を識別するための第2識別情報Ip2を有しており、第2識別情報Ip2は、受信器12の位置やその位置に対応する領域(本実施形態では、後述する検出領域Q)などを特定する際に用いられる。
本実施形態では、安全エリアRsが坑口100Bから所定間隔ごとに区切られることにより、1つ以上の検出領域Qが安全エリアRsに設定されている(図1及び図2参照)。図2では、検出領域Qは、坑口100Bに最も近いものを1番目(n=1)として順にナンバリングされている。そして受信器12Aは、検出領域Qごとに、当該検出領域Qに入った作業者や重機(それらに取り付けられている発信器11)が発信するビーコン信号の受信強度が、他の検出領域Qに設置された受信器12Aよりも高くなるように、トンネルの内壁に設置されている。即ち、受信器12Aは、検出領域Qごとに、その検出領域Qと1対1で対応するように設置されている。図2の例では、トンネルの内壁のうちの片方の側面(図2では、坑口100Bからトンネル内部を見たときの右側面)において、各検出領域Qの中央又はその付近に受信器12Aが設置されている。
従って、安全エリアRs内において発信源(作業者及び重機)の何れか1つから発信されたビーコン信号が、1つ又は複数の受信器12Aによって受信された場合には、当該ビーコン信号を受信した受信器12Aから受信強度が最も高いものを抽出し、且つ、抽出した受信器12を識別するための第2識別情報Ip2に基づいて、当該受信器12に対応する検出領域Qを特定することにより、ビーコン信号の発信源の位置がどの検出領域Q内であるのかを検出することが可能になる(発信源の位置検出)。また、そのビーコン信号に含まれている第1識別情報Ip1に基づいて、発信源がどの作業者又は重機であるのかを特定することが可能になる(発信源の特定)。
尚、受信器12Aは、左側面に設置されてもよいし、天井に設置されてもよい。また、受信器12Aは、検出領域Qのそれぞれにおいて右側面と左側面の両方に設置されてもよい。このように両側面に受信器12Aが設置された場合、各受信器12Aにおけるビーコン信号の受信精度が向上する。また、各受信器12Aから得られる第2識別情報Ip2によれば、当該受信器12Aがどの検出領域Qに対応したものであるのかを特定することが可能になるだけでなく、その受信器12Aが当該検出領域Qのうちの中央線より右側の領域又は左側の領域のどちらに対応したものであるのかを特定することが可能になり、位置検出の精度が向上する。
受信器12Bは、重機のそれぞれにおいて所定位置に設置されている(図3参照)。ここで、当該所定位置は、作業者が重機に乗車している場合に、その作業者が発信するビーコン信号を受信でき、且つ、そのときの受信強度が比較的高くなる位置である。
従って、受信器12Bがビーコン信号を受信した場合には、当該受信器12Bを識別するための第2識別情報Ip2に基づいて、どの重機でビーコン信号が受信されたのかを特定することが可能になる(重機の特定)。また、そのときの受信強度に基づいて、当該ビーコン信号の発信源である作業者が重機に乗車しているか否かを判断することが可能になる(重機への作業者の乗車検出)。更に、「乗車している」と判断した後に、改めて作業者が重機に乗車しているか否か判断することにより、作業者が乗車したままであるのか、或いは、作業者が重機から降車したのかを判断することが可能になる(重機からの作業者の降車検出)。
このように本実施形態の安全制御システムでは、作業者が発信するビーコン信号を受信器12(受信器12A及び12B)が受信し、そのビーコン信号に基づいて作業者の位置が検出されることから、受信器12は、建設現場で作業する作業者ごとに当該作業者の位置を検出する作業者検出部として機能するものであると言える。また、重機が発信するビーコン信号を受信器12Aが受信し、そのビーコン信号に基づいて重機の位置が検出されることから、受信器12Aは、建設現場で使用される重機ごとに当該重機の位置を検出する重機検出部としても機能するものであると言える。
更に本実施形態では、安全エリアRsにおいてトンネルの内壁に、受信器12Aがネットワークに接続可能となるように、受信器12Aとネットワークとの間の通信を中継する通信中継器102A(ゲートウェイなど)が設置されている。具体的には、全ての受信器12Aがネットワークに接続できるように、2つの受信器12Aに対して1つの割合で通信中継器102Aが配置されている。尚、通信中継器102Aは、3つ以上の受信器12Aに対して1つの割合で配置されてもよい。また、各重機には、当該重機に設置されている受信器12Bがネットワークに接続可能となるように、受信器12Bとネットワークとの間の通信を中継する通信中継器102B(ゲートウェイなど)が更に設置されている。これにより、受信器12A及び12Bは、管理サーバ4とのネットワーク通信が可能になっている。
そして、受信器12(受信器12A及び12B)は、ビーコン信号を受信した場合に、そのときの受信強度と、当該ビーコン信号に含まれている第1識別情報Ip1と、自身を識別するための第2識別情報Ip2と、を管理サーバ4に送信する。管理サーバ4は、受信器12から送信されてくる情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)に基づいて、上述した発信源の特定、当該発信源の位置検出、重機の特定、当該重機への作業者の乗車検出、及び当該重機からの作業者の降車検出などを行う。尚、管理サーバ4の詳細については後述する。
<照明制御システム>
照明制御システム2は、危険エリアRdの照明に用いられるシステムであり、作業に適した色(例えば、白色など)の光で危険エリアRdを照明する作業用照明装置21と、警告色(例えば、赤色など)の光で危険エリアRdを照明する警告用照明装置22と、これらの照明装置を制御する制御装置23と、で構成されている(図1〜3参照)。また、制御装置23には、当該制御装置23とネットワークとの間の通信を中継する通信中継器102C(ゲートウェイなど)が接続されている(図3参照)。これにより、制御装置23は、管理サーバ4とのネットワーク通信が可能になっている。
作業用照明装置21及び警告用照明装置22は、防護壁101の保持枠101Aに固定されている。本実施形態では、防護壁101は、バルーンを膨らませて壁を形成するトラベルクリーンカーテンであり、作業用照明装置21及び警告用照明装置22は、バルーンを膨らませた場合に、発破用の爆薬が設置された掘削現場(切羽100A)からバルーンで隠れるように、バルーンが膨縮する場所から安全エリアRs側へずれた位置に設けられている。尚、防護壁101がトラベルクリーンカーテン以外の壁である場合にも、作業用照明装置21及び警告用照明装置22は、防護壁101を閉じた場合にその扉で掘削現場(切羽100A)から隠れるように当該防護壁101に取り付けられてもよい。
制御装置23は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)を含んだ制御盤であり、管理サーバ4からの指令に応じて作業用照明装置21及び警告用照明装置22のそれぞれの照明動作を制御する。
具体的には、制御装置23は、管理サーバ4からの指令に従って作業用照明装置21を点灯させることにより、危険エリアRdを明るく照らす。これにより、危険エリアRdでの視認性が向上し、当該危険エリアRdでの作業が容易になる。尚、作業用照明装置21は、作業者によるスイッチ操作などによって強制的に点灯させることも可能な照明装置であってもよい。
また、制御装置23は、管理サーバ4からの指令(警告開始指令)に従って警告用照明装置22に点灯又は点滅を開始させることにより、危険エリアRd内への警告を行う。これにより、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRdに作業者が重機に乗車せずに入ったことや、危険エリアRd内で作業者が重機から降車したことなど)を知らせて注意を促すことが可能になる。
尚、防護壁101には、警告音を危険エリアRdへ向けて発する警告用スピーカ(不図示)などが更に取り付けられてもよい。この場合、制御装置23は、管理サーバ4からの指令に従って警告用スピーカから警告音を発することにより、危険エリアRd内への警告を行うことができる。尚、警告音は、警告用照明装置22の点灯又は点滅に代えて発せられてもよいし、警告用照明装置22の点灯又は点滅と共に発せられてもよい。
<重機制御システム>
重機制御システム3は、各重機に設けられ、当該重機の制御に用いられるシステムである(図3参照)。本実施形態では、重機制御システム3は主に、危険エリアRd内で作業者が重機から降車した場合に、当該危険エリアRd内への警告として、他の重機に乗って作業している作業者に対して警告を行うための制御を行うものである。そして重機制御システム3は、周囲への警告を行う警告装置31と、当該警告装置31を制御する制御装置32と、で構成されている。
警告装置31は、警告色(例えば、赤色など)の光で周囲への警告を行う装置(例えば、赤色灯など)であり、各重機に対して、当該重機を外部から見たときに目立つ位置(例えば、重機の天井など)に設置される。尚、警告装置31は、警告色の光で警告を行う装置に限らず、警告音を発する装置(例えば、スピーカなど)であってもよい。
制御装置32は、例えばPLCを含んだ制御盤である。また制御装置32は、各重機に搭載されており、当該重機に設置された通信中継器102Bに接続されている。これにより、制御装置32は、管理サーバ4とのネットワーク通信が可能になっている。尚、制御装置32と管理サーバ4との関係では、制御装置32を、重機のそれぞれに搭載される第1制御部と把握し、管理サーバ4を、当該第1制御部とのネットワーク通信が可能な第2制御部と把握できる。
そして各重機において、制御装置32は、管理サーバ4からの指令(警告開始指令)に従って警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて当該重機の周囲に対して警告を行う。これにより、危険エリアRd内で他の重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRd内で作業者が重機から降車したことなど)を知らせて注意を促すことが可能になる。
ここで、トンネルの建設現場における危険エリアRdには、ネットワーク通信のための通信中継器(例えば、ゲートウェイなど)を設置することが困難である。なぜなら、危険エリアRdは、発破時において岩石の飛散や爆風の影響が大きいエリアであるが故に、通信中継器を設置したとすると、岩石の飛散や爆風によって当該通信中継器が故障する可能性が高いからである。このように危険エリアRdに通信中継器を設置することが困難な状況においては、危険エリアRd内での電波状況が悪くなり、当該危険エリアRd内で作業中の各重機の制御装置32を管理サーバ4から遠隔で制御することが難しくなる。このため、危険エリアRd内で作業者が重機から降車した場合でも、それを管理サーバ4で検出して他の重機に警告できるとは必ずしも言えず、建設現場において作業者の安全を確保することが難しくなる。
そこで本実施形態では、制御装置32は、管理サーバ4からの指令に応じて警告装置31を制御する他律制御(即ち、管理サーバ4からの指令に基づいた他律制御)だけでなく、管理サーバ4から独立(自律)して警告装置31を制御する自律制御を行うことが可能である。そして制御装置32は、他律制御と自律制御とを切り替えて行うことが可能であり、当該制御装置32が搭載されている重機の位置又はネットワーク通信の電波状況に応じて、警告装置31に対する制御を他律制御と自律制御との間で切り替える(切替処理)。
ここで、他律制御の選択時においては、受信器12Bからの情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)は、通信中継器102Bを介して管理サーバ4に送信される。管理サーバ4は、受信器12Bから受信した情報(受信情報)に基づいて、重機から作業者が降車したか否かを判断する。そして管理サーバ4は、「降車した」と判断した場合に、その重機に搭載されている制御装置32に、警告装置31に対する制御を実行させるために指令(警告開始指令)を送信する。制御装置32は、管理サーバ4からの指令(警告開始指令)に従って警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて重機の周囲に対して警告を行う。
一方、自律制御の選択時においては、受信器12Bからの情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)は制御装置32に送信され、制御装置32は、受信器12Bから受信した情報(受信情報)に基づいて、重機から作業者が降車したか否かを判断する。そして制御装置32は、「降車した」と判断した場合に、警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて重機の周囲に対して警告を行う。
このように重機の位置又はネットワーク通信の電波状況に応じて他律制御と自律制御との間での切替えが行われることにより、危険エリアRd内で作業者が重機から降車した場合に、当該作業者の降車を確実に検出して、他の重機に乗って作業している作業者に対して警告を行うことが可能になる。
上述した自律制御及び他律制御、並びにこれらの切替処理は、制御装置32内に回路を構築することによってハードウェアで構成された処理部で実行されてもよいし、制御装置32が備えるPLCやCPU等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される処理部で実行されてもよい。そして、当該プログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものが制御装置32の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
<管理サーバ>
管理サーバ4(図3参照)は、ネットワーク通信を用いて建設現場での作業者及び重機の位置を遠隔で監視し、当該建設現場の危険エリアRd内において作業者と重機とが接触する危険が発生した場合に、当該危険エリアRd内への警告を行う。
具体的には、管理サーバ4は、建設現場での作業者及び重機の位置を遠隔で監視するべく、第1対応データD1と第2対応データD2とを備える。ここで、第1対応データD1では、発信器11ごとに、当該発信器11を識別するための第1識別情報Ip1と、その発信器11が取り付けられる作業者又は重機を特定できる情報(名前や番号など)と、が対応付けられている。また、第2対応データD2では、受信器12ごとに、当該受信器12を識別するための第2識別情報Ip2と、その受信器12の設置位置(受信器12Aに対応した検出領域Qや、受信器12Bが設置されている重機)を特定できる位置情報(番号など)と、が対応付けられている。
そして、管理サーバ4は、受信器12から情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)を受信した場合に、受信した情報(受信情報)と、その情報に基づいて第1対応データD1及び第2対応データD2から適宜読み出した各種情報とを用いて、発信源の特定、当該発信源の位置検出、重機の特定、当該重機への作業者の乗車検出、及び当該重機からの作業者の降車検出を行う(検出処理)。
更に、管理サーバ4は、作業者ごとに上記検出処理を実行しつつ、その検出処理で得られる検出結果に基づいて、当該作業者が安全エリアRs内に居るか又は危険エリアRd内での安全な場所に居るか(即ち、重機に乗車しているか)否かを判断する(判断処理)。そして管理サーバ4は、作業者の少なくとも何れか1人について「安全エリアRs内に居ない」又は「危険エリアRd内での安全な場所に居ない」と判断した場合には、危険エリアRd内への警告を行うことにより、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に対して、建設現場内に危険が発生したことを知らせて注意を促す(警告処理)。
また、管理サーバ4は、重機ごとに上述の検出処理を実行しつつ、その検出処理で得られる検出結果に基づいて、当該重機が危険エリアRdに入ったか否かを判断する(判断処理)。そして、管理サーバ4は、重機の少なくとも何れか1つについて「危険エリアRdに入った」との判断を行った場合には、その判断結果(本実施形態では、判断結果として切替開始信号)を、当該重機に搭載されている制御装置32に送信する。制御装置32は、管理サーバ4から切替開始信号(判断結果)を受信した場合には、少なくとも管理サーバ4とのネットワーク通信が切断されるまでのタイミングで、当該制御装置32が搭載されている重機に対する制御(警告装置31に対する制御)を他律制御から自律制御に切り替える。
上述した検出処理、判断処理、及び警告処理はそれぞれ、管理サーバ4内の検出処理部41、判断処理部42、及び警告処理部43によって実行される(図3参照)。これらの処理部は、管理サーバ4内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよいし、管理サーバ4が備えるCPU等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成されてもよい。そして、当該プログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものが管理サーバ4の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
[1−3]安全制御システムで実行される制御処理
上述した安全制御システムで実行される制御処理を、フローチャートを用いて説明する。図4A及び図4Bは、管理サーバ4で実行される制御処理(以下、「第1安全制御処理」と称す)を示したフローチャートである。図5は、各重機に搭載された制御装置32で実行される制御処理(以下、「第2安全制御処理」と称す)を示したフローチャートである。
<第1安全制御処理>
第1安全制御処理(図4A及び図4B参照)は、建設現場に作業者が入場した場合(例えば、読取装置などによって建設現場への入場が記録された場合)に管理サーバ4で開始される。第1安全制御処理が開始されると、管理サーバ4は、受信器12から受信する情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)に基づいて、ビーコン信号の発信源(作業者及び重機)の特定及び当該発信源の位置検出を検出処理部41で行いつつ、作業者ごとに図4A及び図4Bに示される以下の処理を実行することにより、建設現場内の作業者を監視する。
ここで、第1安全制御処理は、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がある場合に、当該作業者の安全を確保するためのものである。そして、そのような危険が発生する前提として、危険エリアRd内に重機が存在していることが必要である。そこで先ずは、判断処理部42が、建設現場内の重機ごとに検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、重機が危険エリアRd内に存在するか否かを判断する(ステップS101)。そして、ステップS101にて判断処理部42が「存在しない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、現時点では危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がないと判断できる。
一方、ステップS101にて判断処理部42が「存在する(Yes)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険が発生する虞があると判断できる。そこで、そのような危険が発生したか否かを判断するべく、判断処理部42は更に、そのときの監視対象である作業者について検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、当該作業者が安全エリアRsから危険エリアRdに入ったか否かを判断する(ステップS102)。尚、ステップS102では、判断処理部42は、作業者が危険エリアRdに入ったか否かを判断することに代えて、作業者が安全エリアRs内に居るか否かを判断してもよい。
ステップS102にて判断処理部42が「入っていない(No)」との判断を行った場合(或いは、「安全エリアRs内に居る(Yes)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、現時点では危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がないと判断できる。
一方、ステップS102にて判断処理部42が「入った(Yes)」との判断を行った場合(或いは、「安全エリアRs内に居ない(No)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、もし作業者が重機に乗車していなかったとすると、危険エリアRd内において当該作業者が重機と接触する危険があると判断できる。
そこで、ステップS102にて判断処理部42が「入った(Yes)」と判断した場合には、判断処理部42は更に、そのときの監視対象である作業者について検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、当該作業者が重機に乗車しているか否かを判断する(ステップS103)。
ステップS103にて判断処理部42が「乗車していない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRdに作業者が重機に乗車せずに入ったと判断でき、従って、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険があると判断できる。
そこで、ステップS103にて判断処理部42が「乗車していない(No)」との判断を行った場合には、警告処理部43が、危険エリアRd内への警告を照明制御システム2に実行させるための指令信号(警告開始信号)を、当該照明制御システム2の制御装置23に送信する(ステップS104)。そして制御装置23は、管理サーバ4から警告開始信号を受信した場合には、警告用照明装置22を点灯又は点滅させることにより、危険エリアRd内への警告を行う。
このような危険エリアRd内への警告によれば、当該危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRdに作業者が重機に乗車せずに入ったこと)を知らせて注意を促すことができる。そして、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者は、上記警告によって注意が促された場合には、例えば重機を停止させて作業を中断することにより、危険エリアRdに入った作業者との接触を避けることができる。よって、建設現場での高い安全性が実現される。
その後、判断処理部42は、そのときの監視対象である作業者について検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、当該作業者が安全エリアRsに戻ったか否かを判断する(ステップS105)。そして、ステップS105にて判断処理部42が「戻った(Yes)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がなくなったと判断できる。
そこで、ステップS105にて判断処理部42が「戻った(Yes)」と判断した場合には、警告処理部43は、照明制御システム2の制御装置23に、危険エリアRd内への警告を停止させるための指令信号(警告停止信号)を送信する(ステップS106)。そして制御装置23は、管理サーバ4から警告停止信号を受信した場合には、警告用照明装置22の点灯又は点滅を停止させることにより、危険エリアRd内への警告を停止する。
一方、ステップS105にて判断処理部42が「戻っていない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、作業者は危険エリアRdに入ったままであり、危険エリアRd内において当該作業者が重機と接触する危険が続いていると判断できる。その場合、危険エリアRd内への警告を継続させることが好ましいため、判断処理部42は、ステップS106(警告停止信号の送信)を実行できるようになるまで(即ち、ステップS105にて「戻った(Yes)」と判断できるまで)、ステップS105を繰り返し実行する。
このような処理の流れにおいて、ステップS101にて「存在しない(No)」、ステップS102にて「入っていない(No)」、ステップS105にて「戻った(Yes)」との判断が行われた場合には、それらの判断を以て、現時点では危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がないと判断できる。
この場合、判断処理部42は、そのときの監視対象である作業者の監視を継続すべきか否かを判断するべく、当該作業者が建設現場から退場したか否かを判断する(ステップS115)。そして、ステップS115にて判断処理部42が「退場していない(No)」と判断した場合には、管理サーバ4は、再びステップS101からの処理を実行することにより、作業者の監視を継続する。一方、ステップS115にて判断処理部42が「退場した(Yes)」と判断した場合には、管理サーバ4は、退場した作業者についての監視を終了する(第1安全制御処理の終了)。
ステップS103にて判断処理部42が「乗車している(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRdに作業者が重機に乗って入ったと判断でき、従って、作業者は危険エリアRd内での安全な場所に居ると判断できる。よって、その場合は、危険エリアRd内への警告を行う必要がない。一方、危険エリアRdに作業者が重機に乗って入ったとしても、その後、当該危険エリアRd内において、重機が故障した場合などに当該重機から作業者が降車する虞がある。危険エリアRd内において重機から作業者が降車した場合には、危険エリアRd内において作業者が他の重機と接触する危険がある。その場合には、危険エリアRd内への警告が必要になる。
しかし、重機が危険エリアRdに入った場合には、ネットワーク通信の電波状況が悪くなるため、管理サーバ4は、危険エリアRd内で作業者が重機から降車した場合でも当該作業者の降車を検出できず、管理サーバ4からでは、危険エリアRdへの警告の開始を指令できないといった状況が生じ得る。
そこで、重機が危険エリアRdに入った場合に、当該重機に搭載されている制御装置32での自律制御の実行が可能となるように、管理サーバ4は、危険エリアRdに作業者が重機に乗って入ったことを検出したときに、当該重機に搭載されている制御装置32に、他律制御から自律制御への切替えを可能にするための指令信号(切替開始信号)を送信する(ステップS107)。そして制御装置32は、切替開始信号を受信することにより、少なくとも管理サーバ4とのネットワーク通信が切断されるまでのタイミングで、重機に対する制御(本実施形態では、警告装置31に対する制御)を他律制御から自律制御に切り替えることが可能になる。尚、制御装置32で実行される制御処理(第2安全制御処理)の詳細については後述する。
ステップS107の後、管理サーバ4は、危険エリアRdに入った重機に設置されている受信器12Bから情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)を受信できるか否かを判断する(ステップS108)。ここで、ネットワーク通信の電波状況が悪化して、制御装置32が、重機に対する制御を他律制御から自律制御に切り替えた場合(自律制御を選択した場合)には、受信器12Bからの情報は制御装置32に送信されるため、管理サーバ4は、当該受信器12Bから情報を受信できなくなる。よって、ステップS108にて管理サーバ4が「受信できない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、制御装置32にて他律制御から自律制御に切り替えられたと判断できる。
そこで管理サーバ4は、ステップS108にて「受信できない(No)」と判断した場合には、危険エリアRd内にて重機から作業者が降車した場合に当該危険エリアRd内への警告を行うための処理(判断処理及び警告処理)を、制御装置32が行う自律制御に委ね、受信器12Bからの情報を再び受信できるようになるまでステップS108を繰り返し実行する。一方、管理サーバ4は、ステップS108にて「受信できる(Yes)」と判断した場合には、上記処理を自身で行う。具体的には、以下のとおりである。
ステップS108にて管理サーバ4が「受信できる(Yes)」と判断した場合には、更に判断処理部42が、そのときの監視対象である作業者について検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、当該作業者が重機から降車したか否かを判断する(ステップS109)。尚、ステップS109では、判断処理部42は、作業者が重機から降車したか否かを判断することに代えて、作業者が重機に乗車しているか否かを判断してもよい。
そして、ステップS109にて判断処理部42が「降車した(Yes)」との判断を行った場合(或いは、「乗車していない(No)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、作業者は危険エリアRd内での安全な場所に居ないと判断でき、従って、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険があると判断できる。
そこで、ステップS109にて判断処理部42が「降車した(Yes)」と判断した場合には、警告処理部43が、そのときの監視対象である作業者が乗車していた重機に搭載されている制御装置32に、危険エリアRd内への警告を実行させるための指令信号(警告開始信号)を送信する(ステップS110)。そして制御装置32は、管理サーバ4から警告開始信号を受信した場合には、警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて重機の周囲に対して警告を行う。
このような危険エリアRd内への警告によれば、当該危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRd内で作業者が重機から降車したこと)を知らせて注意を促すことができる。そして、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者は、上記警告によって注意が促された場合には、例えば重機を停止させて作業を中断することにより、危険エリアRdで重機から降車した作業者との接触を避けることができる。よって、建設現場での高い安全性が実現される。
尚、ステップS110では、警告処理部43は、照明制御システム2の制御装置23にも警告開始信号を送信してもよい。そして制御装置23は、管理サーバ4から警告開始信号を受信した場合には、警告用照明装置22を点灯又は点滅させることにより、危険エリアRd内への警告を行ってもよい。これにより、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したことを確実に知らせることが可能になる。
ステップS110の後、判断処理部42は、そのときの監視対象である作業者について検出処理部41から得られる検出結果に基づいて、当該作業者が重機に再び乗車したか否かを判断する(ステップS111)。そして、ステップS111にて判断処理部42が「再び乗車した(Yes)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がなくなったと判断できる。
そこで、ステップS111にて判断処理部42が「再び乗車した(Yes)」と判断した場合には、警告処理部43は、重機に搭載されている制御装置32に、危険エリアRd内への警告を停止させるための指令信号(警告停止信号)を送信する(ステップS112)。そして制御装置32は、管理サーバ4から警告停止信号を受信した場合には、警告装置31に警告動作を停止させることにより、危険エリアRd内への警告を停止する。その後、管理サーバ4は、作業者への監視を継続するために、ステップS108からの処理を再び実行する。
尚、ステップS112では、警告処理部43は、照明制御システム2の制御装置23にも警告停止信号を送信してもよい。そして制御装置23は、管理サーバ4から警告停止信号を受信した場合には、警告用照明装置22の点灯又は点滅を停止させることにより、危険エリアRd内への警告を停止してもよい。
一方、ステップS111にて判断処理部42が「再び乗車していない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、作業者は重機から降車した状態のままであり、危険エリアRd内において当該作業者が重機と接触する危険が続いていると判断できる。その場合、危険エリアRd内への警告を継続させることが好ましいため、判断処理部42は、ステップS112(警告停止信号の送信)を実行できるようになるまで(即ち、ステップS111にて「再び乗車した(Yes)」と判断できるまで)、ステップS111を繰り返し実行する。
ステップS109にて判断処理部42が「降車していない(No)」との判断を行った場合(或いは、「乗車している(Yes)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、現時点では危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がないと判断できる。この場合、判断処理部42は、そのときの監視対象である作業者が乗車している重機が安全エリアRsに戻ったか否かを判断する(ステップS113)。
ここで、重機が安全エリアRsに戻った場合には、ネットワーク通信の電波状況が良くなる。よって、ステップS113にて判断処理部42が「戻った(Yes)」との判断を行った場合には、管理サーバ4は、安全エリアRsに戻った重機に搭載されている制御装置32に、他律制御から自律制御への切替えを抑止するための指令信号(切替停止信号)を送信する(ステップS114)。そして制御装置32は、切替停止信号を受信した場合、重機に対する制御(本実施形態では、警告装置31に対する制御)を他律制御でのみ行う状態に再び戻る。一方、ステップS113にて判断処理部42が「戻っていない(No)」と判断した場合には、管理サーバ4は、作業者への監視を継続するために、ステップS108からの処理を再び実行する。
<第2安全制御処理>
第2安全制御処理(図5参照)は、建設現場において重機がエンジン始動した場合(建設現場に重機が入場した場合を含む)に、当該重機に搭載されている制御装置32で開始される。第2安全制御処理が開始されると、制御装置32は先ず、管理サーバ4から切替開始信号(図4BのステップS107参照)を受信したか否かを判断する(ステップS201)。
そして、制御装置32は、ステップS201にて「受信した(Yes)」と判断した場合には、重機に対する制御(本実施形態では、警告装置31に対する制御)を他律制御から自律制御に切り替えることが可能になる。一方、制御装置32は、ステップS201にて「受信していない(No)」と判断した場合には、重機に対する制御を他律制御で行う。尚、図5では、自律制御は、ステップS203〜S208の処理で構成され、他律制御は、ステップS209〜S212の処理で構成されている。具体的には、以下のとおりである。
制御装置32は、ステップS201にて「受信した(Yes)」と判断した場合、更に、ネットワーク通信の電波状況が悪化したか否かを判断する(ステップS202)。ここで、ネットワーク通信の電波状況が悪化した場合には、管理サーバ4との通信が困難になり、重機に対する制御を他律制御で行うことが困難になる可能性が高くなる。
そこで、制御装置32は、ステップS202にて「悪化した(Yes)」との判断した場合には、重機に対する制御を他律制御から自律制御(ステップS203〜S208)に切り替える。一方、制御装置32は、ステップS202にて「悪化していない(No)」と判断した場合には、重機に対する制御を他律制御で行う。
自律制御では、制御装置32は、受信器12Bからの情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)に基づいて、作業者が重機から降車したか否かを判断する(ステップS203)。尚、ステップS203では、制御装置32は、作業者が重機から降車したか否かを判断することに代えて、作業者が重機に乗車しているか否かを判断してもよい。
そして、ステップS203にて制御装置32が「降車した(Yes)」との判断を行った場合(或いは、「乗車していない(No)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、作業者は危険エリアRd内での安全な場所に居ないと判断でき、従って、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険があると判断できる。
そこで、制御装置32は、ステップS203にて「降車した(Yes)」と判断した場合(或いは、「乗車していない(No)」と判断した場合)には、警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて重機の周囲に対して警告を行う(ステップS204)。
このような危険エリアRd内への警告によれば、当該危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRd内で作業者が重機から降車したこと)を知らせて注意を促すことができる。そして、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者は、上記警告によって注意が促された場合には、例えば重機を停止させて作業を中断することにより、危険エリアRdで重機から降車した作業者との接触を避けることができる。よって、建設現場での高い安全性が実現される。
その後、制御装置32は、受信器12Bからの情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)に基づいて、作業者が重機に再び乗車したか否かを判断する(ステップS205)。そして、ステップS205にて制御装置32が「再び乗車した(Yes)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がなくなったと判断できる。
そこで、制御装置32は、ステップS205にて「再び乗車した(Yes)」と判断した場合には、警告装置31に警告動作を停止させることにより、危険エリアRd内への警告を停止する(ステップS206)。その後、制御装置32は、ステップS207へ移行する。
一方、ステップS205にて制御装置32が「再び乗車していない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、作業者は重機から降車した状態のままであり、危険エリアRd内において当該作業者が重機と接触する危険が続いていると判断できる。その場合、危険エリアRd内への警告を継続させることが好ましいため、制御装置32は、ステップS206(警告動作の停止)を実行できるようになるまで(即ち、ステップS205にて「再び乗車した(Yes)」と判断できるまで)、ステップS205を繰り返し実行する。
ステップS203にて制御装置32が「降車していない(No)」との判断を行った場合(或いは、「乗車している(Yes)」との判断を行った場合)には、その判断を以て、現時点では危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がないと判断できる。この場合、制御装置32は、危険エリアRd内への警告(ステップS204〜S206)を行う必要がないため、ステップS207へ移行する。
ステップS207では、制御装置32は、管理サーバ4から切替停止信号(図4BのステップS114参照)を受信したか否かを判断する。そして、制御装置32は、ステップS207にて「受信した(Yes)」と判断した場合には、重機に対する制御を他律制御でのみ行う状態に再び戻り、ステップS213へ移行する。
ステップS213では、制御装置32は、建設現場において重機がエンジン停止した(建設現場から重機が退場した場合を含む)か否かを判断する。そして、制御装置32は、ステップS213にて「エンジン停止していない(No)」と判断した場合には、再びステップS201からの処理を実行する。一方、制御装置32は、ステップS213にて「エンジン停止した(Yes)」と判断した場合には、制御処理(第2安全制御処理)を終了する。
ステップS207にて制御装置32が「受信していない(No)」と判断した場合には、制御装置32は、自律制御と他律制御との間での切替えが可能なまま維持されることになる。そこで、制御装置32は、ネットワーク通信の電波状況に応じた切替えを行うべく、ネットワーク通信の電波状況が回復したか否かを判断する(ステップS208)。
そして、制御装置32は、ステップS208にて「回復した(Yes)」と判断した場合には、重機に対する制御を自律制御から他律制御へ切り替える。一方、制御装置32は、ステップS208にて「回復していない(No)」と判断した場合には、重機に対する制御を自律制御のまま維持し、ステップS203からの処理を再び実行する。
他律制御では、制御装置32は、管理サーバ4から警告開始信号を受信したか否かを判断する(ステップS209)。そして、制御装置32は、ステップS209にて「受信していない(No)」と判断した場合には、ステップS201へ戻る。一方、制御装置32は、ステップS209にて「受信した(Yes)」と判断した場合には、警告装置31に警告動作を開始させることにより、危険エリアRd内にて重機の周囲に対して警告を行う(ステップS210)。このような危険エリアRd内への警告によれば、当該危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に、建設現場内に危険が発生したこと(危険エリアRd内で作業者が重機から降車したこと)を知らせて注意を促すことができる。
その後、制御装置32は、管理サーバ4から警告停止信号を受信したか否かを判断する(ステップS211)。そして、ステップS211にて制御装置32が「受信した(Yes)」との判断を行った場合には、その判断を以て、危険エリアRd内において作業者が重機と接触する危険がなくなったと判断できる。
そこで、制御装置32は、ステップS211にて「受信した(Yes)」との判断を行った場合には、警告装置31に警告動作を停止させることにより、危険エリアRd内への警告を停止する(ステップS212)。その後、制御装置32は、ステップS213へ移行する。
一方、ステップS211にて制御装置32が「受信していない(No)」との判断を行った場合には、その判断を以て、作業者は重機から降車した状態のままであり、危険エリアRd内において当該作業者が重機と接触する危険が続いていると判断できる。その場合、危険エリアRd内への警告を継続させることが好ましいため、制御装置32は、ステップS212(警告動作の停止)を実行できるようになるまで(即ち、ステップS211にて「受信した(Yes)」と判断できるまで)、ステップS211を繰り返し実行する。
このような第2安全制御処理によれば、重機が危険エリアRdに入ることでネットワーク通信の電波状況が悪化した場合でも、重機の位置又はネットワーク通信の電波状況に応じて他律制御から自律制御に切り替えられるため、危険エリアRd内での重機からの作業者の降車が確実に検出されて危険エリアRd内への警告が行われる。よって、建設現場での高い安全性が実現される。
[2]変形例
[2−1]第1変形例
上述した安全制御システムにおいて、安全エリアRs内に設置される受信器12Aのうちの危険エリアRdとの境界付近に設置される受信器12Aの位置には、ビーコン信号の受信方向に指向性を有する指向性受信器12Cが設置されてもよい(図1及び図2参照)。
一例として、指向性受信器12Cは、自身の設置位置から切羽100A又は坑口100Bへ向かう方向から送信されてくるビーコン信号のみを受信できるように設置される。このような指向性受信器12Cによれば、当該指向性受信器12Cがビーコン信号を受信したときの受信強度は、上記方向における指向性受信器12Cの設置位置からの距離に比例することになる。よって、管理サーバ4の検出処理部41は、指向性受信器12Cから送信されてくる情報(受信強度、第1識別情報Ip1、第2識別情報Ip2)を用いることにより、危険エリアRdと安全エリアRsとの境界からビーコン信号の発信源(作業者及び重機)までの距離を検出することが可能になる。
そこで、このような検出処理部41の検出結果を用いることにより、管理サーバ4の判断処理部42は、安全エリアRs内の作業者が重機に乗車せずに境界に近づいた場合に、その作業者までの上記境界からの距離がどの程度であるのかを判断することができる。また、判断処理部42は、作業者が境界を越えて危険エリアRdに入った場合には、その作業者が境界から侵入した距離(侵入距離)がどの程度であるのかを判断することができる。
そして、管理サーバ4の警告処理部43は、危険エリアRd内への警告方法を、判断処理部42が判断した上記距離の程度に応じて段階的に変化させることができる。例えば、警告処理部43は、境界から作業者までの距離が小さくなるのに従って、警告用照明装置22の照度を段階的に大きくしていってもよいし、警告用照明装置22の点滅スピードを速くしていってもよい。そして、警告処理部43は、作業者が危険エリアRdに入った場合に、警告用照明装置22の照度や点滅スピードを最大にしてもよい。また、警告処理部43は、境界から作業者までの距離が小さくなるのに従って、警告用スピーカから発せられる警告音の音量を大きくし、作業者が危険エリアRdに入った場合に、警告音の音量を最大にしてもよい。
また、危険エリアRdに作業者が入る前及び入った直後においては、当該作業者にのみ警告し、危険エリアRdに作業者が入った後、その作業者の侵入距離が大きくなった場合に、危険エリアRd内への警告を行うことにより、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に対して危険の発生を知らせてもよい。
これにより、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者に対して、重機に乗車せずに危険エリアRd又は当該危険エリアRd内の重機に近づこうとしている作業者が居ることを知らせて注意を促すと共に、その作業者がどの程度近づいているのかを知らせることが可能になる。よって、危険エリアRd内で重機に乗って作業している作業者は、危険エリアRdに無断で入ろうとする又は入った作業者の位置を把握すると共に、その作業者の位置に応じて、当該作業者との接触を避けるための行動を段階的に変化させること(様子見→減速→中断など)が可能になる。
[2−2]第2変形例
上述した安全制御システムにおいて、発信源(作業者及び重機)のそれぞれの位置は、どの検出領域Q内にあるかで特定される場合に限らず、各発信源が発信する同じビーコン信号について3つ以上の受信器12Aから有効な情報を取得できる場合には、それらの情報から正確に特定されてもよい。
また、発信源の位置検出には、ビーコン技術に限らず、RFID(Radio Frequency Identifier)技術など、様々な近距離無線通信技術を用いることができる。
[2−3]第3変形例
上述した安全制御システムでは、危険エリアRdへの警告は、作業者が安全エリアRs内に居ない(具体的には、危険エリアRdに作業者が重機に乗車せずに入った)との判断、及び、作業者が安全な場所に居ない(具体的には、危険エリアRd内で作業者が重機から降車した)との判断、の何れが行われた場合にも実行されるが、これに限らず、危険エリアRdへの警告は、何れか一方の判断が行われた場合にのみ実行されてもよい。
[2−4]第4変形例
上述した安全制御システムにおいて、重機に搭載される制御装置32での自律制御と他律制御との間での切替えは、警告装置31に対する制御に限らず、制御装置32で実行できる重機に対する種々の制御にも適用できる。
また、上記切替えのタイミングは、ネットワーク通信の電波状況が悪化したタイミングに限らず、ネットワーク通信が完全に切断される前であれば、重機の位置又はネットワーク通信の電波状況に応じた種々のタイミングを適用できる。一例として、危険エリアRdと安全エリアRsとの境界から切羽100Aへ向けて所定距離だけ重機が進んだタイミングで、上記切替えが実行されてもよい。
[2−5]他の変形例
上述した安全制御システムは、トンネルの掘削現場に限らず、危険エリア(即ち、作業者が無断で入った場合に作業中の重機と接触する虞のあるエリア)が存在する様々な建設現場に適用できる。
上述した安全制御システムにおいて、作業者に取り付けられている発信器11Aが故障してビーコン信号を発信できなくなった場合にも、当該作業者が安全エリアRs内に居ないと判断して、危険エリアRd内への警告を行ってもよい。
上述した安全制御システムにおいて、危険エリアRd内への警告は、危険エリアRd内で重機に乗って作業する作業者を対象にしたものに限らず、重機に乗車せずに危険エリアRdに入った作業者をも対象とするものであってもよい。例えば、警告用照明装置22には、前者の作業者を対象にして切羽100Aに向けて警告色の光を発するものと、後者の作業者を対象として危険エリアRdと安全エリアRsとの境界付近に向けて警告色の光を発するものと、が含まれていてもよい。また、警告は、危険エリアRd内に対して実行されるだけでなく、安全エリアRs内に対しても行われてもよい。
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、本発明には、上述した安全制御システムのように、位置検出システム1、照明制御システム2、重機制御システム3、及び管理サーバ4の全てを構成要素として含んだものに限らず、それらの一部又はそれらが備える各種の装置や処理部の一部を、各種課題を解決するために必要な安全制御システムの最低限の構成要素として抽出したものも含まれる。更に本発明には、安全制御システムを対象としたものに限らず、当該安全システムの構成要素をそれぞれ個別に発明として捉えたものや、それらの構成要素が備える各種の装置や処理部をそれぞれ個別に発明として捉えたものも含まれる。