以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、第1アクセスポイントがビーコンを送信し、これに応じて通信端末が送信したプローブ要求を受信した後、ビーコンを送信しない複数の第2アクセスポイントの中から通信端末との接続対象を決定する。接続対象となった第2アクセスポイントは、通信端末から送信されるアソシエーション要求に応答し、通信端末との接続を確立する。
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、無線通信システム100は、1つの第1アクセスポイント110と、複数の第2アクセスポイント120とを備える。かかる無線通信システム100は、駅構内、学校の校舎、会社の社屋等の建物内に設置される。第1及び第2アクセスポイント110,120は、有線LAN等の有線ネットワーク4に接続され、相互に通信可能である。また、第1及び第2アクセスポイント110,120は、無線規格IEEE802.11a/b/g/n/acによる無線通信が可能である。かかる第1及び第2アクセスポイント110,120により、無線LAN(WLAN)が構成される。
次に、第1及び第2アクセスポイント110,120の構成について説明する。図2は、第1アクセスポイント110の構成を示すブロック図である。図2に示すように、第1アクセスポイント110は、第1無線通信部111と、第1有線通信部112と、制御部113とを備える。
第1無線通信部111は、IEEE802.11a/b/g/n/acによる無線通信を可能とする通信モジュールであり、複数の無線通信用のアンテナ111aを有している。通信端末6(図1参照)は、第1無線通信部111との間でIEEE802.11a、b、g、n、又はacによる無線通信を行うことができる。
第1有線通信部112は、Ethernetの通信モジュールであり、有線ネットワーク4を介して、当該有線ネットワーク4に接続された他の機器(図1の場合は第2アクセスポイント120)との間で通信を行うことができる。
制御部113は、マイクロプロセッサ、メモリ等を備えており、第1無線通信部111及び第1有線通信部112による通信を制御する。また、制御部113は、通信端末6との接続対象の第2アクセスポイント120を決定する。
図3は、第2アクセスポイント120の構成を示すブロック図である。図3に示すように、第2アクセスポイント120は、第2無線通信部121と、第2有線通信部122と、制御部123とを備える。第2無線通信部121は、複数の無線通信用のアンテナ121aを有している。なお、第2無線通信部121、第2有線通信部122、制御部123のそれぞれの構成は、第1無線通信部111、第1有線通信部112、制御部113のそれぞれの構成と同様であるため、その説明を省略する。
上記のような第1アクセスポイント110の第1無線通信部111と全ての第2アクセスポイント120の第2無線通信部121とは、同一の無線通信用の周波数帯域(チャネル)に設定されている。このため、通信端末6は、このチャネルを用いることで、第1及び第2アクセスポイント110,120と無線通信を行うことができる。また、第1無線通信部111と全ての第2無線通信部121とには、同一のMACアドレス(以下、「共通MACアドレス」という)及びSSID(Service Set Identifier)が設定されている。
一方、第1アクセスポイント110の第1有線通信部112と全ての第2アクセスポイント120の第2有線通信部122とは、互いに異なるMACアドレス(以下、「有線通信用MACアドレス」という)が設定されている。この有線通信用MACアドレスにより、第1及び第2アクセスポイント110,120間における有線通信では、第1及び第2アクセスポイント110,120の全てを個別に特定できる。
また、制御部113,123のそれぞれは、無線通信によりビーコンを送信する第1モードと、ビーコンを送信しない第2モードとの何れかに設定可能である。本実施の形態では、第1アクセスポイント110の制御部113は第1モードに設定され、第2アクセスポイント120の制御部123は第2モードに設定される。これにより、第1アクセスポイント110は定期的にビーコンを送信し、第2アクセスポイント120はビーコンを送信しないように機能する。かかる第1アクセスポイント110の制御部113を第1モードから第2モードへ設定変更し、1つの第2アクセスポイント120の制御部123を第2モードから第1モードへ設定変更すれば、ビーコンの送信元を変更できる。
次に、本実施の形態に係る無線通信システム100の動作について説明する。図4A及び図4Bは、本実施の形態に係る無線通信システム100の動作の手順を示すフローチャートであり、図5は、通信端末との接続確立までの無線通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。
まず、第1アクセスポイント110の制御部113は、第1無線通信部111に定期的にビーコンをブロードキャストさせる(ステップS101)。図6は、IEEE802.11に規定されるフレームフォーマット(以下、「IEEE802.11フレームフォーマット」という)の構成を示す概念図である。IEEE802.11フレームフォーマットは、物理ヘッダとMACフレームとから構成され、MACフレームにはMACヘッダとデータ(ペイロード)のフィールドとが含まれる。MACヘッダは、フレーム制御、デュレーション/ID、アドレス1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御、アドレス4等の各フィールドを含んでいる。フレームは、管理フレーム、制御フレーム、及びデータフレームの3種に分類され、このフレーム種類はフレーム制御フィールドで特定される。無線ノード間(例えば、アクセスポイントと通信端末間)のみでの通信の場合(つまり、アクセスポイントを介したデータ転送でない場合)、アドレス1フィールドには宛先のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールドには送信元のMACアドレスが格納され、アドレス3フィールドにはBSSID(Basic Service Set Identifier)が格納され、アドレス4フィールドはNULLとされる。ここで、BSSIDはアクセスポイントの無線通信用のMACアドレスである。図7は、ビーコンフレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。ビーコンフレームは管理フレームの1つであり、またブロードキャストされるため特定の宛先がない。よって、ビーコンフレームのアドレス1フィールドはブロードキャスト(BC)アドレス(FF:FF:FF:FF:FF:FF)とされ、アドレス2フィールド及びアドレス3フィールドには共通MACアドレスが格納される。
図5を参照する。通信端末6は、第1アクセスポイント110が使用するチャネルにて上記のビーコンを受信し、このビーコンに応じてプローブ要求を送信する。図8は、プローブ要求フレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。プローブ要求フレームは、上述した管理フレームの1つであり、アドレス1フィールドには宛先として共通MACアドレス(つまり、ビーコンフレームのアドレス2フィールドに格納されたMACアドレス)が格納され、アドレス2フィールドには送信元として通信端末6自身のMACアドレスが格納される。また、アドレス3フィールドには上記のBSSIDが格納される。プローブ要求フレームのデータフィールドには、通信端末6に設定されているSSID等が格納される。また、通信端末6がビームフォーミングに対応している場合、プローブ要求フレームには、ビームフォーミングに対応していることを示す情報が付加される。
再び図4A及び図5を参照する。第1アクセスポイント110の第1無線通信部111は、通信端末6から送信されたプローブ要求を受信し(ステップS102)、制御部113は、プローブ要求に含まれるSSIDを参照し、要求を受け付けるか否か(つまり、自身のSSIDと一致するか否か)を判定する(ステップS103)。要求を受け付けない場合(ステップS103においてNO)、制御部113は処理を終了する。他方、要求を受け付ける場合(ステップS103においてYES)、制御部113は、プローブ要求フレームのアドレス2フィールドに含まれる通信端末6のMACアドレスに対して、接続対象の第2アクセスポイント120を決定する(ステップS104)。この処理では、制御部113が全ての第2アクスポイント120の中から無作為に接続対象を決定したり、所定の順番で接続対象となる第2アクセスポイント120を決定したりするなど、適宜の方法で接続対象を決定できる。なお、プローブ要求は、第1アクセスポイント110だけでなく、第2アクセスポイント120によっても受信されるが、第2アクセスポイント120はプローブ要求に対して何等処理を行わない。
次に、制御部113は、接続対象として決定された第2アクセスポイント120の有線通信用MACアドレスに対応付けて通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS105)。制御部113のメモリには接続対象リストの領域が設けられている。図9は、接続対象リストの構成を示す概念図である。接続対象リストには、その時点において接続対象とされている全ての第2アクセスポイント120の有線通信用MACアドレスに対応付けて、それぞれの接続相手の通信端末6のMACアドレスが記憶される。この接続対象リストによって、制御部113は第2アクセスポイント120の接続状況を管理する。
なお、第2アクセスポイント120のそれぞれは、同時に接続可能な通信端末6の数の上限(例えば、4機)が定められている。ステップS104の接続対象の決定処理において、制御部113は、接続対象リストを確認し、通信端末6の接続数が上限に達していないアクセスポイント120の中から接続対象を決定する。
再び図4A及び図5を参照する。次に、制御部113は、接続対象に決定された第2アクセスポイント120へ、接続対象であることの通知データを第1有線通信部112に送信させ(ステップS106)、処理を終了する。この通知データには、接続相手の通信端末6のMACアドレスが含まれる。これにより、接続処理が第1アクセスポイント110から接続対象に決定された第2アクセスポイント120に引き継がれる。共通MACアドレス及びSSIDは第1アクセスポイント110と第2アクセスポイント120との間で同一であるので、通信端末6からはあたかも第1アクセスポイント110と無線通信しているように、第2アクセスポイント120と無線通信を行うことができる。
第2アクセスポイント120の第2有線通信部122が、通知データを受信し(ステップS107)、この第2アクセスポイント120の制御部123が、通知データに含まれる通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS108)。上述したように第2アクセスポイント120はプローブ要求を受信している。制御部123は、プローブ要求を参照し、通信端末6がビームフォーミングに対応可能であるか否かを判定し(ステップS109)、ビームフォーミングに対応可能である場合(ステップS109においてYES)、プローブ要求の受信状態から通信端末6への伝搬路を推定する(ステップS110)。他方、ビームフォーミングに対応不可である場合(ステップS109においてNO)、制御部123は、処理をステップS111へと移す。
制御部123は、記憶された通信端末6のMACアドレスを宛先として、第2無線通信部121にプローブ応答を送信させる(ステップS111)。以降の無線通信処理では、第2アクセスポイント120が受信した無線LANフレームに含まれる送信元のMACアドレスが、記憶されたMACアドレスと一致した場合に、制御部123は通信相手からの送信フレームであると判断する。また、通信端末6がビームフォーミングに対応可能である場合、通信端末6の位置において電波強度が最大となるように第2無線通信部121の各アンテナ121aから送信される信号の位相を制御する。
図10は、プローブ応答フレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。プローブ応答フレームは、管理フレームの1つであり、アドレス1フィールドには宛先の通信端末6のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールドには送信元として第2アクセスポイント120のMACアドレスである共通MACアドレスが格納される。また、アドレス3フィールドにはBSSIDとして共通MACアドレスが格納される。プローブ応答フレームのデータフィールドにはSSID、チャネル、データレート等の無線接続に必要なパラメータが格納される。
再び図4A及び図5を参照する。通信端末6はプローブ応答を受信し、プローブ応答に含まれるパラメータにて無線接続の設定を行った後、認証要求を送信する。認証要求フレームは、パスワード等、予め定められた認証方式にしたがったデータにより接続認証を行うための管理フレームである。認証要求フレームにおけるMACヘッダの内容は、プローブ要求フレームにおけるMACヘッダの内容と同一であるので、その説明を省略する。
接続対象の第2アクセスポイント120の第2無線通信部121は、認証要求を受信し(ステップS112)、制御部123は、認証要求に含まれるデータを参照し、認証処理を実行する。なお、ここでは認証処理に失敗した場合についての説明を省略する。認証に成功した場合、制御部123は、第2無線通信部121に認証応答を送信させる(ステップS113)。認証応答フレームは、認証処理の成功を示す管理フレームである。認証応答フレームにおけるMACヘッダの内容は、プローブ応答フレームにおけるMACヘッダの内容と同一であるので、その説明を省略する。
上記のような認証要求及び認証応答の授受を行う認証フェーズを終了すると、通信端末6は、共通MACアドレスを宛先としたアソシエーション要求(図5では「ASReq」)を送信する。アソシエーション要求フレームは、アクセスポイントに対して接続を要求するための管理フレームである。アソシエーション要求フレームにおけるMACヘッダの内容は、プローブ要求フレームにおけるMACヘッダの内容と同一である。つまり、アソシエーション要求フレームのアドレス1フィールドには宛先として共通MACアドレスが格納され、アドレス2フィールドには送信元として通信端末6自身のMACアドレスが格納される。また、アドレス3フィールドにはBSSIDとしてアドレス1フィールドと同一の共通MACアドレスが格納される(図8参照)。
再び図4B及び図5を参照する。接続対象の第2アクセスポイント120の第2無線通信部121は、アソシエーション要求を受信し(ステップS114)、制御部123は、通信端末6との接続を許可するか否かを判定する。制御部123は、この判定結果にしたがって、第2無線通信部121にアソシエーション応答(図5では「ASRes」)を送信させる(ステップS115)。なお、ここでは通信端末6との接続を拒否する場合についての説明を省略する。アソシエーション応答フレームにおけるMACヘッダの内容は、プローブ応答フレームにおけるMACヘッダの内容と同一である。つまり、アソシエーション応答フレームのアドレス1フィールドには宛先の通信端末6のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールドには送信元として共通MACアドレスが格納される。また、アドレス3フィールドにはBSSIDとしてアドレス2フィールドと同一の共通MACアドレスが格納される(図10参照)。
通信端末6がアソシエーション応答を受信することで、通信端末6と第2アクセスポイントとの接続が確立する。これにより、通信端末6が、有線ネットワーク4に接続された他の通信機器、又は有線ネットワーク4を介してインターネット上の他の通信機器(以下、「外部通信機器」という)との間で通信が可能となる。
通信端末6は、外部通信機器との間でデータ通信を行う場合、接続された第2アクセスポイント120へデータフレームを送信する。図11は、無線ノードから有線ノードへ送信されるデータフレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。無線ノードから有線ノードへ通信する場合の無線LANフレームにおいては、アドレス1フィールドにBSSIDが格納され、アドレス2フィールドに送信元のMACアドレスが格納され、アドレス3フィールドに宛先のMACアドレスが格納され、アドレス4フィールドがNULLとされる。通信端末6から外部通信機器へ通信する場合、図11に示すように、データフレームのMACヘッダにおいて、アドレス1フィールドにはBSSIDとして共通MACアドレスが格納される。また、アドレス2フィールドには送信元として通信端末6自身のMACアドレスが格納され、アドレス3フィールドには宛先として外部通信機器のMACアドレスが格納される。また、データフレームのデータフィールドには、外部通信機器へ送信するデータ本体が格納される。
再び図4A及び図5を参照する。接続対象の第2アクセスポイント120は、第2無線通信部121によってデータフレームを受信し(ステップS116)、制御部123がデータフレームをEthernetフレームへ変換し、第2有線通信部122によって外部通信機器へと転送する(ステップS117)。
また、外部通信機器から通信端末6へとデータ(Ethernetフレーム)が送信される場合、第2アクセスポイント120の第2有線通信部122によってEthernetフレームが受信される(ステップS118)。第2アクセスポイント120の制御部123がEthernetフレームを無線LANのデータフレームへと変換し、第2無線通信部121によって通信端末6へ転送する(ステップS119)。図12は、有線ノードから無線ノードへ送信されるデータフレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。有線ノードから無線ノードへ通信する場合の無線LANフレームにおいては、アドレス1フィールドに宛先のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールドにBSSIDが格納され、アドレス3フィールドに送信元のMACアドレスが格納され、アドレス4フィールドがNULLとされる。外部通信機器から通信端末6へ通信する場合、図12に示すように、データフレームのMACヘッダにおいて、アドレス1フィールドには宛先として通信端末6のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールドにはBSSIDとして共通MACアドレスが格納される。また、アドレス3フィールドには送信元として外部通信機器のMACアドレスが格納される。
本実施の形態に係る無線通信システム100においては、ビーコンを送信した第1アクセスポイント110ではなく、ビーコンを送信していない第2アクセスポイント120が通信端末6との無線接続を確立する。図1には、本実施の形態に係る無線通信システム100に対し、複数の通信端末6を接続した状態を示している。第1及び第2アクセスポイント110,120が同一のチャネル、SSID、第1及び第2無線通信部111,121のMACアドレスを共用するため、通信端末6からは全ての第2アクセスポイント120が、ビーコンを送信した第1アクセスポイント110のように認識される。よって、通信端末6があたかも第1アクセスポイント110に対して無線通信を行うように動作することで、実際には通信端末6と第2アクセスポイント120との間で通信が行われる。かかる無線通信システム100では、ビーコンに応答した複数の通信端末6をデータ転送用の第2アクセスポイント120のそれぞれに割り振ることができるため、第2アクセスポイント120の台数を増やすことで、通信端末6の接続台数を増やすことができる。
本実施の形態に係る無線通信システム100にあっては、第1アクセスポイント110しかビーコンを送信せず、第2アクセスポイント120はデータ転送用であるため、ビーコンの単位時間当たりの送信数は第2アクセスポイント120の台数によらず一定であり、システム全体におけるビーコンの送信時間を抑制できる。
また、ビームフォーミングを利用することで、第2アクセスポイント120と通信端末との間における通信のS/N比が向上し、これにより通信効率が向上する。また、ビームフォーミングにより同時に複数の通信端末6との高精度な無線通信が可能となり、システム全体でのスループットがさらに向上する。
(実施の形態2)
本実施の形態では、第1アクセスポイントがビーコンを送信し、これに応じて通信端末から送信されたプローブ要求を受信した第2アクセスポイントのうちの1つが、自身が接続対象となることを宣言する。接続対象となった第2アクセスポイントは、通信端末から送信されるアソシエーション要求に応答し、通信端末との接続を確立する。
本実施の形態に係る無線通信システムの構成は、実施の形態1に係る無線通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、第1及び第2アクセスポイント110,120の第1及び第2無線通信部111,121の全てが、同一のチャネル、同一のSSID、及び同一のMACアドレス(共通MACアドレス)に設定されている。
本実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。図13A及び図13Bは、本実施の形態に係る無線通信システムの動作の手順を示すフローチャートであり、図14は、そのシーケンス図である。第1アクセスポイント110の制御部113は、第1無線通信部111に定期的にビーコンをブロードキャストさせる(ステップS201)。このビーコンフレームは、実施の形態1で説明したものと同様に、アドレス1フィールドに宛先としてブロードキャストアドレスを、アドレス2フィールド及びアドレス3フィールドのそれぞれに送信元及びBSSIDとして共通MACアドレスを含んでいる。
通信端末6は、上記のビーコンを受信し、これに応じてプローブ要求を送信する。このプローブ要求フレームは、実施の形態1で説明したものと同様に、アドレス1フィールド(宛先)に共通MACアドレスを、アドレス2フィールド(送信元)に通信端末6自身のMACアドレスを、アドレス3フィールド(BSSID)に共通MACアドレスをそれぞれ含んでいる。
通信端末6から送信されたプローブ要求は、1又は複数の第2アクセスポイント120によって受信される(ステップS202)。第2アクセスポイント120の制御部123は、プローブ要求に含まれるSSIDを参照し、要求を受け付けるか否か(つまり、自身のSSIDと一致するか否か)を判定する(ステップS203)。要求を受け付けない場合(ステップS203においてNO)、制御部123は処理を終了する。他方、要求を受け付ける場合(ステップS203においてYES)、制御部123は、第2有線通信部122が、他の第2アクセスポイント120からの宣言データを受信したか否かを判定する(ステップS204)。宣言データは、その送信元の第2アクセスポイント120が通信端末6との接続対象となることを宣言するためのデータであり、宣言データを送信した第2アクセスポイント120が通信端末6との通信権を獲得する。つまり、第2アクセスポイント120が、他の第2アクセスポイント120から送信された宣言データを受信した場合(ステップS204においてYES)、その第2アクセスポイント120には通信端末6との通信権がなく、制御部123は処理を終了する。
他方、第2アクセスポイント120が宣言データを受信していない場合(ステップS204においてNO)、制御部123は、例えばブロードキャスト又はマルチキャストによって、他の全てのアクセスポイント120へ向けて宣言データを第2有線通信部122に送信させる(ステップS205)。これにより、当該第2アクセスポイント120が通信端末6との通信権を獲得する。なお、複数の第2アクセスポイント120が同時に宣言データを送信すると、それぞれが送信した宣言データが衝突する。このような衝突を回避するために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)、RTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)等の公知の衝突回避方法を採用することができる。
通信権を獲得した第2アクセスポイント120の制御部123は、通信相手となる通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS206)。その後、制御部123は、ビームフォーミングのための伝搬路推定、プローブ応答の送信、認証要求及び認証応答の送受信、並びにアソシエーション要求及び応答の送受信を行い、通信端末6との接続を確立する。なお、ステップS207以降の処理は、実施の形態1において説明したステップS109以降の処理と同様であるので、その説明を省略する。
本実施の形態においては、最も早く宣言データを送信した第2アクセスポイント120が通信端末6との通信権を獲得する。また、通信端末6との同時接続数が上限に達した第2アクセスポイント120は、ステップS203においてプローブ要求を受け付けないように判定すればよい。これにより、この第2アクセスポイント120が上記の上限を超えて通信端末6との接続を試みることがなくなる。
以上のような構成としたことにより、データ転送用の第2アクセスポイント120の台数を増やすことで、通信端末6の接続台数を増やすことができる。また、第1アクセスポイント110しかビーコンを送信しないため、システム全体におけるビーコンの送信時間を抑制できる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、第1アクセスポイントがビーコンを送信し、これに応じて通信端末から送信されたプローブ要求を複数の第2アクセスポイントが受信する。複数の第2アクセスポイントのうち、プローブ要求の受信状態が最良のものが接続対象として決定される。接続対象となった第2アクセスポイントは、通信端末から送信されるアソシエーション要求に応答し、通信端末との接続を確立する。
本実施の形態に係る無線通信システムの構成は、実施の形態1に係る無線通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、第1及び第2アクセスポイント110,120の第1及び第2無線通信部111,121の全てが、同一のチャネル、同一のSSID、及び同一のMACアドレス(共通MACアドレス)に設定されている。
本実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。図15A及び図15Bは、本実施の形態に係る無線通信システムの動作の手順を示すフローチャートであり、図16は、そのシーケンス図である。第1アクセスポイント110の制御部113は、第1無線通信部111に定期的にビーコンをブロードキャストさせる(ステップS301)。このビーコンフレームは、実施の形態1で説明したものと同様に、アドレス1フィールドに宛先としてブロードキャストアドレスを、アドレス2フィールド及びアドレス3フィールドのそれぞれに送信元及びBSSIDとして共通MACアドレスを含んでいる。
通信端末6は、上記のビーコンを受信し、これに応じてプローブ要求を送信する。このプローブ要求フレームは、実施の形態1で説明したものと同様に、アドレス1フィールド(宛先)に共通MACアドレスを、アドレス2フィールド(送信元)に通信端末6自身のMACアドレスを、アドレス3フィールド(BSSID)に共通MACアドレスをそれぞれ含んでいる。
通信端末6から送信されたプローブ要求は、1又は複数の第2アクセスポイント120によって受信される(ステップS302)。第2アクセスポイント120の制御部123は、プローブ要求に含まれるSSIDを参照し、要求を受け付けるか否か(つまり、自身のSSIDと一致するか否か)を判定する(ステップS303)。要求を受け付けない場合(ステップS303においてNO)、制御部123は処理を終了する。他方、要求を受け付ける場合(ステップS303においてYES)、制御部123は、第2有線通信部122に受信状態データを第1アクセスポイント110へと送信させる(ステップS304)。この受信状態データは、第2アクセスポイント120におけるプローブ要求の受信強度を示しており、通信端末6のMACアドレスを含む情報である。
第1アクセスポイント110の第1有線通信部112は、第2アクセスポイント120から送信された受信状態データを受信する(ステップS305)。第1アクセスポイント110の制御部113は、各第2アクセスポイント120から受信した受信状態データを参照し、受信強度が最大の第2アクセスポイント120を接続対象として決定する(ステップS306)。
次に、制御部113は、接続対象リストに、接続対象として決定された第2アクセスポイント120の有線通信用MACアドレスと通信端末6のMACアドレスとを対応付けて記憶し(ステップS307)、接続対象に決定された第2アクセスポイント120へ、接続対象であることの通知データを第1有線通信部112に送信させ(ステップS308)、処理を終了する。接続対象リスト及び通知データは、実施の形態1で説明した接続対象リスト及び通知データと同様であるので、その説明を省略する。
第2アクセスポイント120の制御部123は、第2有線通信部122が通知データを受信したか否かを判定する(ステップS309)。通知データを受信しなかった場合(ステップS309においてNO)、制御部123は、処理を終了する。他方、通知データを受信した場合(ステップS309においてYES)、制御部123は、通知データに含まれる通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS310)。その後、制御部123は、ビームフォーミングのための伝搬路推定、プローブ応答の送信、認証要求及び認証応答の送受信、並びにアソシエーション要求及び応答の送受信を行い、通信端末6との接続を確立する。なお、ステップS311以降の処理は、実施の形態1において説明したステップS109以降の処理と同様であるので、その説明を省略する。
本実施の形態においては、プローブ要求の受信状態が最良であった第2アクセスポイント120が通信端末6との接続対象として決定される。これにより、通信端末6との通信状態が良好な第2アクセスポイント120を接続対象とすることができる。
なお、本実施の形態ではプローブ要求の受信強度を通信状態の指標として使用し、通信状態が最良の第2アクセスポイント120を接続対象として決定したが、これに限定されるものではない。データ誤り又はパケットの衝突に伴うデータの再送率を通信状態の指標とし、再送率が最も低い第2アクセスポイント120を接続対象として決定してもよい。
以上のような構成としたことにより、データ転送用の第2アクセスポイント120の台数を増やすことで、通信端末6の接続台数を増やすことができる。また、第1アクセスポイント110しかビーコンを送信しないため、システム全体におけるビーコンの送信時間を抑制できる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、複数の第2アクセスポイントのそれぞれが個別のMACアドレスを設定される。第1アクセスポイントが送信元のMACアドレスを切り替えながら繰り返しビーコンを送信する。送信元のMACアドレスは、各第2アクセスポイントに設定された個別のMACアドレスである。ビーコンを受信した通信端末がこのビーコンに送信元として設定されているMACアドレスに対してプローブ要求を送信し、当該MACアドレスが設定されている第2アクセスポイントがプローブ要求を受信する。プローブ要求を受信した第2アクセスポイントは、通信端末から送信されるアソシエーション要求に応答し、通信端末との接続を確立する。
図17は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す模式図である。本実施の形態に係る無線通信システム400は、1つの第1アクセスポイント110と、複数の第2アクセスポイント120a〜120dとを備える。第2アクセスポイント120a〜120dそれぞれの第2無線通信部121には、互いに異なるMACアドレス(以下、「個別MACアドレス」という)が設定されている。また、第1及び第2アクセスポイント110,120a〜120dの第1及び第2無線通信部111,121の全てが、同一のチャネル、同一のSSIDに設定されている。なお、第1及び第2アクセスポイント110,120a〜120dの構成は、実施の形態1で説明した第1及び第2アクセスポイント110,120の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
第1アクセスポイント110は、送信元のMACアドレスを切り替えながら、複数のビーコンを順次送信する。各ビーコンには、第2アクセスポイント120a〜120dの個別MACアドレスが送信元として各別に含まれる。例えば、送信元として第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスが含まれるビーコンが送信された後、送信元として第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスが含まれるビーコンが送信される。
次に、本実施の形態に係る無線通信システム400の動作について説明する。図18A及び図18Bは、本実施の形態に係る無線通信システム400の動作の手順を示すフローチャートであり、図19は、通信端末との接続確立までの無線通信システム400の動作の流れを示すシーケンス図である。以下の説明では、第2アクセスポイント120a〜120dを、第2アクセスポイント120とも表記する。
第1アクセスポイント110の制御部113は、第1無線通信部111に、個別MACアドレスを送信元として含むビーコンを送信させる(ステップS401)。ビーコンについてさらに具体的に説明する。図20は、ビーコンフレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。図20に示すように、ビーコンフレームのアドレス1フィールドはブロードキャストアドレス(FF:FF:FF:FF:FF:FF)とされ、アドレス2フィールド及びアドレス3フィールドには個別MACアドレスが格納される。
再び図18Aを参照する。次に制御部113は、送信元のMACアドレスを次の第2アクセスポイント120の個別MACアドレスに切り替え(ステップS402)、ステップS401へ処理を戻す。以降、ステップS401,S402の処理を繰り返すことで、第1アクセスポイント110は、送信元のMACアドレスを切り替えつつ、順次ビーコンを送信する。
通信端末6は、上記のビーコンを受信し、これに応じてプローブ要求を送信する。図21は、プローブ要求フレームにおけるMACヘッダの構成を示す概念図である。プローブ要求フレームにおけるアドレス1フィールド及びアドレス3フィールドのそれぞれには、ビーコンにおける送信元の個別MACアドレスが宛先及びBSSIDとして格納される。また、アドレス2フィールドには送信元として通信端末6自身のMACアドレスが格納される。例えば、送信元に第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスを含むビーコンを通信端末6aが受信した場合、通信端末6aは、第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスを宛先として含むプローブ要求を送信する。一方、送信元に第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスを含むビーコンを通信端末6bが受信した場合、通信端末6bは、第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスを宛先として含むプローブ要求を送信する(図17及び図19参照)。
再び図18Aを参照する。通信端末6から送信されたプローブ要求は、宛先とされる個別MACアドレスが設定される第2アクセスポイント120の第2無線通信部121によって受信される(ステップS403)。例えば、宛先として第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスを含むプローブ要求は、第2アクセスポイント120aによって受信される。一方、宛先として第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスを含むプローブ要求は、第2アクセスポイント120bによって受信される(図17及び図19参照)。
再び図18A及び図18Bを参照する。第2アクセスポイント120の制御部123は、プローブ要求に含まれるSSIDを参照し、要求を受け付けるか否か(つまり、自身のSSIDと一致するか否か)を判定する(ステップS404)。要求を受け付けない場合(ステップS404においてNO)、制御部123は処理を終了する。他方、要求を受け付ける場合(ステップS404においてYES)、制御部123は、通信相手となる通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS405)。その後、制御部123は、ビームフォーミングのための伝搬路推定、プローブ応答の送信、認証要求及び認証応答の送受信、並びにアソシエーション要求及び応答の送受信を行い、通信端末6との接続を確立する。なお、ステップS406以降の処理は、実施の形態1において説明したステップS109以降の処理と同様であるので、その説明を省略する。但し、通信端末6から第2アクセスポイント120へ送信されるフレームにおいて、実施の形態1では共通MACアドレスとされた宛先又はBSSIDが個別MACアドレスとされる。また、第2アクセスポイント120から通信端末6へ送信されるフレームにおいて、実施の形態1では共通MACアドレスとされた送信元又はBSSIDが個別MACアドレスとされる。例えば、アソシエーション応答フレームでは、アドレス1フィールドに宛先の通信端末6のMACアドレスが格納され、アドレス2フィールド及びアドレス3フィールドに送信元及びBSSIDとして個別MACアドレスが格納される(図22参照)。
本実施の形態においては、第2アクセスポイント120a〜120dの個別MACアドレスを送信元とするビーコンを、第1アクセスポイント110が時分割により送信する。このため、各々の個別MACアドレスを含む複数のビーコンを衝突することなく効率的に送信できる。また、データ転送用の第2アクセスポイント120の台数を増やすことで、通信端末6の接続台数を増やすことができる。かかる無線通信システム400では、第1アクセスポイント110しかビーコンを送信しないため、システム全体におけるビーコンの送信時間を抑制できる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、複数の第2アクセスポイントのそれぞれが個別のMACアドレスを設定される。第1アクセスポイントが互いに異なる複数方向のそれぞれにビーコンを同時送信する。ビーコンを送信する方向には第2アクセスポイントが配置され、ビーコンにはその送信方向に配置された第2アクセスポイントのMACアドレスが送信元として含まれる。ビーコンを受信した通信端末がこのビーコンに送信元として設定されているMACアドレスに対してプローブ要求を送信し、当該MACアドレスが設定されている第2アクセスポイントがプローブ要求を受信する。プローブ要求を受信した第2アクセスポイントは、通信端末から送信されるアソシエーション要求に応答し、通信端末との接続を確立する。
図23は、本実施の形態に係る無線通信システム500の構成を示す模式図である。第1アクセスポイント110は、指向性アンテナ111aを有し(図2参照)、任意の方向に向けて電波を放射可能である。第1アクセスポイント110の周囲には複数のビーコン送信エリア501a〜501fが設けられており、第1アクセスポイント110は、ビーコン送信エリア501a〜501fのそれぞれに向けて個別にビーコンを送信する。ビーコン送信エリア501a〜501fのそれぞれには、第2アクセスポイント120a〜120fが配置されている。なお、第1及び第2アクセスポイント110,120a〜120fの構成は、実施の形態4で説明した第1及び第2アクセスポイント110,120a〜120dの構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
第1アクセスポイント110は、複数のビーコンをビーコン送信エリア501a〜501fのそれぞれに向けて同時に送信する。各ビーコンには、その送信方向に配置された第2アクセスポイント120a〜120fの個別MACアドレスが送信元として含まれる。例えば、ビーコン送信エリア501aに向けて送信されたビーコンには、送信元として第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスが含まれ、ビーコン送信エリア501bに向けて送信されたビーコンには、送信元として第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスが含まれる。
本実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。図24A及び図24Bは、本実施の形態に係る無線通信システムの動作の手順を示すフローチャートであり、図25は、そのシーケンス図である。上記のように、第1アクセスポイント110の制御部113は、第1無線通信部111に、各ビーコン送信エリア501a〜501fに向けて、個別MACアドレスを送信元として含むビーコンを同時送信させる(ステップS501)。本実施の形態におけるビーコンフレームの構成は、実施の形態4において説明したビーコンフレームの構成と同様であるので、その説明を省略する。
通信端末6は、ビーコン送信エリア501a〜501fのうち、自身が位置するエリアに向けて送信されたビーコンを受信し、これに応じてプローブ要求を送信する。例えば、ビーコン送信エリア501aに位置する通信端末6aは、第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスを送信元に含むビーコンを受信し、当該個別MACアドレスを宛先に含むプローブ要求を送信する。一方、ビーコン送信エリア501bに位置する通信端末6bは、第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスを送信元に含むビーコンを受信し、当該個別MACアドレスを宛先に含むプローブ要求を送信する(図23及び図25参照)。本実施の形態におけるプローブ要求フレームの構成は、実施の形態4において説明したプローブ要求フレームの構成と同様であるので、その説明を省略する。
再び図24Aを参照する。通信端末6から送信されたプローブ要求は、宛先とされる個別MACアドレスが設定される第2アクセスポイント120によって受信される(ステップS502)。例えば、宛先として第2アクセスポイント120aの個別MACアドレスを含むプローブ要求は、第2アクセスポイント120aによって受信される。一方、宛先として第2アクセスポイント120bの個別MACアドレスを含むプローブ要求は、第2アクセスポイント120bによって受信される(図23及び図25参照)。
再び図24A及び図24Bを参照する。第2アクセスポイント120の制御部123は、プローブ要求に含まれるSSIDを参照し、要求を受け付けるか否か(つまり、自身のSSIDと一致するか否か)を判定する(ステップS503)。要求を受け付けない場合(ステップS503においてNO)、制御部123は処理を終了する。他方、要求を受け付ける場合(ステップS503においてYES)、制御部123は、通信相手となる通信端末6のMACアドレスを記憶する(ステップS504)。その後、制御部123は、ビームフォーミングのための伝搬路推定、プローブ応答の送信、認証要求及び認証応答の送受信、並びにアソシエーション要求及び応答の送受信を行い、通信端末6との接続を確立する。なお、ステップS505以降の処理は、実施の形態1において説明したステップS109以降の処理と同様であるので、その説明を省略する。但し、通信端末6から第2アクセスポイント120へ送信されるフレームにおいて、実施の形態1では共通MACアドレスとされた宛先又はBSSIDが個別MACアドレスとされる。また、第2アクセスポイント120から通信端末6へ送信されるフレームにおいて、実施の形態1では共通MACアドレスとされた送信元又はBSSIDが個別MACアドレスとされる。
本実施の形態においては、第2アクセスポイント120a〜120fの個別MACアドレスを送信元とするビーコンを、第1アクセスポイント110が空間分割により送信する。このため、各々の個別MACアドレスを含む複数のビーコンを衝突することなく効率的に送信できる。また、データ転送用の第2アクセスポイント120の台数を増やすことで、通信端末6の接続台数を増やすことができる。かかる無線通信システム500では、第1アクセスポイント110しかビーコンを送信しないため、システム全体におけるビーコンの送信時間を抑制できる。
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態1乃至5においては、第1アクセスポイント110をビーコン送信用としたが、これに限定されるものではない。第1アクセスポイント110を、ビーコン送信及びデータ通信の両方を行う構成とすることもできる。この場合、第1アクセスポイント110及び全ての第2アクセスポイント120のうちの何れかが、通信端末6との接続対象となる。
また、実施の形態1乃至5においては、第1モードと第2モードの何れかに設定可能なアクセスポイントが、第1モードに設定された場合に第1アクセスポイント110として機能し、第2モードに設定された場合に第2アクセスポイント120として機能する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1アクセスポイント110を、ビーコン送信機能のみを有する構成とすることもできるし、第2アクセスポイント120を、データ通信機能のみを有する構成とすることもできる。
また、実施の形態1においては、ビーコンに応じて通信端末6から送信されるプローブ要求を第1アクセスポイント110が受信し、通信端末6の接続対象となる第2アクセスポイント120を決定し、接続対象となった第2アクセスポイント120がプローブ応答以降の通信処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではない。接続を確立するためのアソシエーション応答の送信より前の通信処理(プローブ応答の送信、認証要求の受信、認証応答の送信、及びアソシエーション要求の受信)については第1アクセスポイント110が実行することもできる。例えば、第1アクセスポイント110がプローブ応答を送信し、認証要求を受信した後、接続対象となる第2アクセスポイント120が認証応答の送信、アソシエーション要求の受信、及びアソシエーション応答の送信を実行することもできる。
また、実施の形態1においては、第1アクセスポイント110の制御部113が、受信されたプローブ要求を用いて、これに送信元として含まれる通信端末6のMACアドレス毎に、接続対象の第2アクセスポイント120を決定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。プローブ要求以外の要求データ(認証要求、アソシエーション要求)を使用して接続対象の第2アクセスポイント120を決定し、要求データに対応する応答データ(認証応答、アソシエーション応答)を第2アクセスポイント120が通信端末6へ送信する構成としてもよい。例えば、上記のように認証要求を第1アクセスポイント110が受信し、これに送信元として含まれる通信端末6のMACアドレス毎に、接続対象の第2アクセスポイント120を決定することもできる。この場合、プローブ応答は第1アクセスポイント110から送信され、応答データである認証応答は第2アクセスポイント120から送信される。
つまり、無線通信システムは、次の何れの構成であってもよい。
(1)第1アクセスポイント110がビーコンを送信する。接続対象として決定された第2アクセスポイント120が、通信端末6から送信されたプローブ要求に応じてプローブ応答を送信し、通信端末6から送信された認証要求に応じて認証応答を送信し、通信端末6から送信されたアソシエーション要求に応じてアソシエーション応答を送信する。
(2)第1アクセスポイント110がビーコンを送信し、通信端末6から送信されたプローブ要求に応じてプローブ応答を送信する。接続対象として決定された第2アクセスポイント120が、通信端末6から送信された認証要求に応じて認証応答を送信し、通信端末6から送信されたアソシエーション要求に応じてアソシエーション応答を送信する。
(3)第1アクセスポイント110がビーコンを送信し、通信端末6から送信されたプローブ要求に応じてプローブ応答を送信し、通信端末6から送信された認証要求に応じて認証応答を送信する。接続対象として決定された第2アクセスポイント120が、通信端末6から送信されたアソシエーション要求に応じてアソシエーション応答を送信する。
また、実施の形態2においては、第2アクセスポイント120が通信端末6からのプローブ要求を受信した場合に、宣言データを送信する構成について述べたが、これに限定されるものではない。プローブ要求以外の要求データ(認証要求、アソシエーション要求)を受信した場合に、宣言データを送信し、要求データに対応する応答データ(認証応答、アソシエーション応答)を第2アクセスポイント120が通信端末6へ送信する構成としてもよい。例えば、第2アクセスポイント120が通信端末6からの認証要求を受信した場合に、宣言データを送信することもできる。この場合、プローブ応答は第1アクセスポイント110から送信され、応答データである認証応答は第2アクセスポイント120から送信される。
また、実施の形態3においては、第2アクセスポイント120におけるプローブ要求の受信状態に基づいて、接続対象となる第2アクセスポイント120を決定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。通信端末6からのプローブ要求以外の要求データ(認証要求、アソシエーション要求)の受信状態に基づいて、接続対象となる第2アクセスポイント120を決定し、要求データに対応する応答データ(認証応答、アソシエーション応答)を第2アクセスポイント120が通信端末6へ送信する構成としてもよい。例えば、第2アクセスポイント120における認証要求の受信状態に基づいて、接続対象となる第2アクセスポイント120を決定することもできる。この場合、プローブ応答は第1アクセスポイント110から送信され、応答データである認証応答は第2アクセスポイント120から送信される。
また、実施の形態1においては、接続対象リストに第2アクセスポイント120の有線通信用MACアドレスを記憶することで、接続対象の管理を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。管理に使用される情報は、第2アクセスポイント120のそれぞれを個別に特定できるものであれば有線通信用MACアドレスに限られず、例えば、各第2アクセスポイント120に互いに異なる名称を与え、これを使用してもよいし、各第2アクセスポイント120の第2有線通信部122に割り当てられたIPアドレスを使用してもよい。